(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】筒状のセルローススパンボンド不織布を生産するための方法およびデバイス
(51)【国際特許分類】
D04H 3/07 20120101AFI20220119BHJP
B01D 39/16 20060101ALI20220119BHJP
B01D 39/18 20060101ALI20220119BHJP
D04H 3/16 20060101ALI20220119BHJP
D04H 3/015 20120101ALI20220119BHJP
D01D 7/00 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
D04H3/07
B01D39/16 A
B01D39/18
D04H3/16
D04H3/015
D01D7/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531705
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-06-03
(86)【国際出願番号】 EP2019083692
(87)【国際公開番号】W WO2020115141
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】ザゲレル-フォリク,イブラヒム
【テーマコード(参考)】
4D019
4L045
4L047
【Fターム(参考)】
4D019AA01
4D019AA02
4D019AA03
4D019BA12
4D019BB03
4D019BC04
4D019BC05
4D019BC06
4D019BC10
4D019CA03
4D019CB03
4D019CB06
4D019DA02
4D019DA03
4L045AA02
4L045BA03
4L045DA27
4L045DA34
4L045DA35
4L045DA36
4L045DC01
4L047AA08
4L047AB03
4L047BA08
4L047CC12
(57)【要約】
継ぎ目のない筒状のセルローススパンボンド不織布を生産するためのデバイスであって、紡糸塊生成システム(8)、紡糸システム(2)、凝固システム(4)、スパンボンド不織布を堆積させかつ脱水するための堆積部分(3)、スパンボンド不織布を移送方向に移送するための移送デバイス(13、22)、洗浄システム(5)、および乾燥システム(6)を備え、堆積部分(3)が、回転可能であり、堆積部分(3)の回転軸が移送方向に位置する、デバイス。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
継ぎ目のない筒状のセルローススパンボンド不織布を生産するためのデバイスであって、
・ 紡糸液製造部(8)、
・ 紡糸システム(2)、
・ 凝固システム(4)、
・ 前記スパンボンド不織布を堆積させかつ脱水するための堆積セクション(3)、
・ 前記スパンボンド不織布を移送方向に運び去るための移送デバイス(13、22)、
・ 洗浄システム(5)、および
・ 乾燥システム(6)
を備え、
前記堆積セクション(3)が、前記堆積セクション(3)の回転軸が前記移送方向に沿って位置する状態で回転可能であるように設計されることを特徴とする、デバイス。
【請求項2】
少なくとも1つの吸引デバイス(17)が、前記堆積セクション(3)に関連付けられることを特徴とする、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記吸引デバイス(17)が、少なくともいくつかのセクションにおいて傾斜されることを特徴とする、請求項2に記載のデバイス。
【請求項4】
切断ユニット(7)を特徴とする、請求項1から3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
セルロースで作られた継ぎ目のない多層の筒を生産する方法であって、セルロースが、紡糸液に加工され、続いてフィラメントを形成するために紡糸システムを用いて押し出されて、熱気によって引き出され、前記引き出されたフィラメントが、堆積中に前記引き出されたフィラメント間の場所におよび/またはいくつかの層にわたって接着部が形成されるように、前記堆積の前に凝固液で湿らされ、それから、場合により所々で互いに密着された前記引き出されたフィラメントが、回転トレイ上に堆積され、脱水され、洗浄され、かつ乾燥される、方法。
【請求項6】
溶媒が、前記スパンボンド不織布から洗い出されて回収部に供給されることを特徴とする、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
プロセス空気が、抽出されて前記溶媒回収部に供給されることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
引き出されたセルロースフィラメントのいくつかの層からなる継ぎ目のない筒であって、前記セルロースフィラメントが、各層において所々で互いに密着され、個々の前記層が、所々で互いに密着され、前記筒が、結合剤を基本的に含まない、継ぎ目のない筒。
【請求項9】
請求項8に記載の筒を備える、フィルタ。
【請求項10】
食品産業、化学産業、製薬産業、自動車産業、電気産業、石油産業、石油化学産業、および化粧品産業における、気体、液体、および乳濁液からの物質の吸着、化学結合、もしくは吸収のための、乳濁液の分離のための、排ガスの除塵のための、また、液体の脱色、気体および液体の消毒、飲用水処理、硬水軟化、気体からの油の分離、乳濁液の分離、および消臭のための液滴分離器としての、請求項9に記載のフィルタの使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、紡糸液製造部、紡糸システム、凝固システム、スパンボンド不織布を堆積させかつ脱水するための堆積セクション、スパンボンド不織布を移送方向に運び去るための移送デバイス、洗浄システム、および乾燥システムを備える、筒状のセルローススパンボンド不織布を生産するためのデバイスに関する。さらに、本発明は、筒状のセルローススパンボンド不織布を生産する方法、およびそのようなスパンボンド不織布の様々な使用に関する。
【背景技術】
【0002】
セルロースは、特異的な性質を有し、さらに、80℃を超える温度において使用され得るので、様々なフィルタシステムにおいてフィルタ媒体として使用される。従来技術によれば、加圧セルロースフィルタカートリッジ、または、接着剤で接合されかつセルロースあるいはセルロース繊維で被覆される不織布が存在し、また、不織布では、例えばフェノール樹脂が、典型的には熱可塑性の不織フィルタウェブ上にセルロースを結合するために使用される。したがって、フィルタ材料の生産は、継ぎ目のない濾過筒およびフィルタカートリッジと比較して、すでに非常に複雑である。米国特許第7,081,201号および米国特許出願公開第2010/0089819号で説明されているフィルタカートリッジは、いくつかの部品からなり、したがって、それらの製造は、継ぎ目のないフィルタカートリッジの製造よりも複雑である。液体および気体でのフィルタ材料としてのセルロースの使用は、これまで、念入りな圧縮または被覆プロセス、接着剤の使用、ならびに複雑な支持構造および装置を必要としてきた。接着のために使用される樹脂および接着剤は、それらが濾過されるべき媒体に適合しない場合、あるいはフィルタ材料と濾過されるべき媒体との間に望ましくない化学反応が起こり得る場合に、フィルタの適用領域を制限する可能性がある。また、圧縮されたセルロースフィルタカートリッジでは、短いセルロース繊維が解けて、さらなるプロセスにおいて望ましくない影響をもたらす場合がある。したがって、これまで、結合剤を伴わずに継ぎ目のない濾過筒およびフィルタカートリッジをセルロースから直接に生産することは不可能であった。
【0003】
例えば、セルロース繊維は、ライオセルプロセス(例えば、米国特許第4,246,221号、米国特許第6,306,334号および米国特許第5,779,737号で説明されているような)に従って生産され、次いで、複数の工程ステップを介して不織布に加工され得る。ステープル繊維の繊維径は、通常10μmを上回るので、ステープル繊維から生産される不織布は、非常に穴が多く、限られた領域における濾過用途にのみ使用され得る。
【0004】
米国特許第6,358,461号、米国特許第8,029,259号、米国特許第8,366,988号、米国特許第6,306,334号で説明されているようなライオセル紡糸液からのスパンボンド不織布の生産のための方法は、2次元的な平面状の組立体または不織布の生産および後処理のそれぞれに関係している。それらの不織布は、液体および気体の濾過のためのフィルタ材料として使用されることを可能にする必須の細かさおよび孔隙率を有するが、不織布は、依然として、費用のかかる後処理を受けなければならず、場合により、キャリヤウェブに接続され、折り畳まれ、かつ、濾過カートリッジに組み込まれなければならない。これまで知られているライオセルスパンボンド不織布の生産のためのデバイスは、シート製品およびそれらの特性のためだけに設備が開発されてきたので、濾過筒またはフィルタカートリッジの生産には使用され得ない。
【0005】
筒状の継ぎ目のないスパンボンド不織布は-米国特許第3,905,736号に示されるように-ポリマー融液をメルトブローンノズルから押し出し、それらを熱気によって引き出し、そしてそれらを回転表面上に堆積させることによるメルトブローンプロセスにより、熱可塑性融液からのみ生産され得る。熱可塑性フィラメントはなおも高温であるので、接着点は、堆積中に、個々の層の間で、フィラメント間の接触点に現れる。堆積表面の回転、および説明された接着効果により、継ぎ目のないスパンボンド不織布筒が、相互接続された複数の不織布層から形成され、この筒は、連続的に引き出され、続いて、不織ウェブに加工され得る。フィルタカートリッジへの加工は、米国特許第3.801,400号および米国特許第3,933,557号で説明されており、濾過筒への加工は、米国特許第3,905,734号および米国特許第4,032,688号で説明されている。
【0006】
スパンボンド不織布筒は、米国特許第8,231,752号で説明されているように、様々な配置における1つまたはいくつかのノズルによって生産され得る。米国特許第5,409,642号によれば、フィラメント径は、濾過効果を高めるために、個々の層の間で変更され得る。スパンボンド不織布筒の生産は、バッチ式に行われるか、または-米国特許第3,933,557号で説明されているように-連続的に行われ得る。以前の方法は、主として熱可塑性材料からのスパンボンド不織布筒の生産に使用されており、デバイスは、それらの原材料に最適化されてきた。上述の変形可能性に基づくと、例えば、高い分離効率および高いフィルタ容量を持つフィルタカートリッジを生産することが可能である。今までのところ、説明された方法には主に熱可塑性物質が使用され得るので、適用領域は、高温(>80℃)に制限される。
【0007】
熱可塑性の筒状スパンボンド不織布の生産は、押出しフィラメントの温度を変更することによってのみ接着が調整され得る乾式紡糸プロセスであるので、今までに知られているデバイスおよび方法は、濾過筒の成形のみに役立つ。対照的に、セルロース紡糸液は、熱可塑性物質と同じ程度で温度効果が利用され得ないセルロース溶液であるが、接着部を生じさせる他の方法が見出されなければならない。さらに、セルローススパンボンド不織布の生産中に押出しフィラメント上に凝固液が吹き付けられ、その後、経済、環境、および安全上の理由から、凝固剤および溶媒の両方が、スパンボンド不織布筒および排気から除去されかつ回収されなければならない。熱可塑性物質のための知られたデバイスとは対照的に、セルローススパンボンド不織布筒はまた、製品中の溶媒の量を最小限に抑えるために、また、生産されている筒の形状を安定させるために、堆積の直後に脱水され、洗浄され、かつ乾燥される必要がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従来、継ぎ目のない濾過筒およびフィルタカートリッジを結合剤なしでセルロース紡糸液から直接生産することは、不可能であった。今までに知られているデバイスおよび方法は、上述の要求を満たすことができないので、本発明の目的は、セルローススパンボンド不織布筒を生産するためのデバイスおよび方法を提供することである。具体的には、例えばフィルタのための、継ぎ目がなく多層で結合剤を含まない筒状のセルローススパンボンド不織布の直接生産が、可能とされるはずである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前述の目的は、筒状のセルローススパンボンド不織布を生産するためのデバイスであって、
・ 紡糸液製造部、
・ 紡糸システム、
・ 凝固システム、
・ スパンボンド不織布を堆積させかつ脱水するための堆積セクション、
・ スパンボンド不織布を移送方向に運び去るための移送デバイス、
・ 洗浄システム、および
・ 乾燥システム
を備え、
堆積セクションが、堆積セクションの回転軸が移送方向に沿って位置する状態で回転可能であるように設計されることを特徴とする、デバイスによって達成される。
【0010】
さらに、吸引デバイスが堆積セクションに関連付けられることが、実現され得る。
【0011】
吸引デバイスは、堆積されるフィラメントに起因する筒の厚さの増大を考慮に入れるために、少なくともいくつかのセクションにおいて傾斜され得る。
【0012】
吸引デバイスは、スパンボンド不織布の吸引あるいは脱水、ならびにプロセス空気の抽出および除去の両方のために使用され得る。
【0013】
さらなる実施形態では、溶媒を多く含むプロセス空気流を抽出してそれを溶媒回収部に供給するために、複数の吸引デバイスが、回転可能な堆積セクションの下に-例えば真下に-または1から100cm、好ましくは10から50cm、より好ましくは20から40cm離れて配置され得る。
【0014】
さらに、デバイスは、溶媒を多く含む排気が大規模吸引デバイスによりエンクロージャ内から除去され得、周囲のプラント空間の汚染が防止されるように、封入され得る(以下の
図2参照)。
【0015】
さらに、切断ユニットが設けられ得る。
【0016】
切断ユニットは、乾燥システムの下流に配置されることが好ましい。
【0017】
さらに、目的は、セルロースで作られた好ましい継ぎ目のない多層の筒を生産する方法によって達成され、この方法では、セルロースが、紡糸液に加工され、続いてフィラメントを形成するための紡糸システムによって押し出され、熱気によって引き出され、引き出されたフィラメントは、それらの間の所々で接着部が形を成すように、堆積の前に凝固液で湿らされ、それから、所々で密着された引き出されたフィラメントは、回転トレイ上に堆積され、凝固液により、回転トレイ上にすでに配置されたフィラメントとのさらなる接着部が形成される。
【0018】
接着の程度は、凝固(凝固液の量、温度、濃度、液体ミストの表面)、すなわちセルロースの再生によって特に影響を受ける可能性があることが示された。これに関連して、いくつかの個別のフィラメントのそれらの接触点における融合は、接着と呼ばれる。フィラメントは、トレイに衝突する前に、それらが部分的に液体のままである範囲内でのみ凝固液で湿らされて、接触すると融合し、それにより、接着部が作られる。意外にも、接着効果は、空中にある間、すなわちスパンボンド不織布層において接着部がもたらされ得るのみならず、衝突時にすでに堆積されたフィラメントと衝突している最中のフィラメントとの間にも接着部がもたらされ得るように調節されることが可能であり、したがって、いくつかの層にわたって密着された、湿っているが寸法的に安定した筒が作り出された。本発明によれば、極端な場合には凝固液が適用されず、それにより、最大限の接着部がもたらされる。この場合、接着部は、例えば球形、あるいは平坦であってよく、また、10μmから500μm、好ましくは30μmから300μm、より好ましくは50から200μmの直径を有し得る。凝固液は、プロセス空気中に直接射出されるか、または、様々な吹付けおよび噴霧システムを介してフィラメントカーテン上に吹き付けられ得る。例えばNMMO/水混合物(N-メチルモルホリン-N-オキサイド)などの、水と様々な溶媒との混合物が、凝固液として使用され得る。凝固液中のNMMOの濃度は、0~45%の間、好ましくは10から40%、より好ましくは20から30%の間であり得る。凝固液の温度は、5℃から90℃の間、好ましくは10℃から70℃の間、より好ましくは20℃から60℃の間であり得る。
【0019】
本発明の1つの態様は、所々で密着された引き出されたフィラメントのいくつかの層からなる継ぎ目のないセルロース筒に関する。接着点の数およびサイズは、どちらも、全ての層にわたって互いに並行にもしくは互いに無関係にほぼ一定であってもよく、外側から内側に向かって増大してもよく、外側から内側に向かって減少してもよく、または、筒内で数回変更されてもよい。例えば、接着部の数は、外側から内側に向かって増大してもよく、筒の直径の半分で最大限に達し、次いで減少してもよい。前述の変化により、筒の強度および通気度は、それぞれの用途に合わせて調節され得る。継ぎ目のないセルロース筒は、結合剤を含まずに済む。
【0020】
本発明の1つの態様は、所々で密着された引き出されたフィラメントのいくつかの層からなる継ぎ目のないセルロース筒に関する。フィラメントの数および平均直径は、どちらも、全ての層にわたって互いに並行にもしくは互いに無関係にほぼ一定であってもよく、外側から内側に向かって増大してもよく、外側から内側に向かって減少してもよく、または、筒内で数回変更されてもよい。例えば、フィラメントの平均フィラメント径は、外側から内側に向かって減少してもよく、筒の直径の半分で最小値に達し、次いで増大してもよい。また、この場合、フィルタの吸収能力、分離の程度、および通気度は、前述の変化により、それぞれの用途に合わせて調節され得る。
【0021】
本発明の1つの態様は、上述の変形可能性を有する、セルロース系かつ熱可塑性のスパンボンド不織布で作られた継ぎ目のない筒に関する。
【0022】
本発明の1つの態様は、セルローススパンボンド不織布で作られた、継ぎ目がなく部分的にまたは全面的に炭化あるいは活性化された筒に関する。上述の変形可能性が含まれる。
【0023】
本発明の1つの態様は、筒を備えるフィルタに関する。
【0024】
最後に、本発明は、食品産業、化学産業、製薬産業、自動車産業、電気産業、石油産業、石油化学産業、化粧品産業における、気体、液体、および乳濁液から物質を吸着、化学結合、または吸収するための、乳濁液の分離のための、排ガスの除塵のための、液滴分離器としての、液体の脱色のための、気体および液体の消毒のための、飲用水処理のための、硬水軟化のための、気体から油を分離するための、乳濁液を分離するための、脱臭のための、フィルタの使用に関する。
【0025】
本発明は、層の数、接着点、フィラメント径、筒径、および筒の長さに関する多くの変形可能性により様々な用途に対して特に濾過用途に対して申し分なく調節され得る、継ぎ目のない多層の筒状セルローススパンボンド不織布の直接生産のための方法に関する。
【0026】
本発明をより良く示すために、本質的な特徴が、本発明によるデバイスの好ましい実施形態に基づいて以下の図に示される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【
図2】フィルタカートリッジを生産するための本発明によるデバイスを概略的に示す側面図である。
【
図3】濾過筒を生産するための本発明によるデバイスを概略的に示す側面図である。
【
図4】回転堆積セクションを概略的に示す斜視図および正面図である。
【
図5】巻き芯材を含まないセルローススパンボンド不織布筒の連続生産のための本発明によるデバイスを示す側面図である。
【
図6】巻き芯材を含むセルローススパンボンド不織布筒の連続生産のための本発明によるデバイスを示す側面図である。
【
図7】巻き芯材を含むセルローススパンボンド不織布筒のバッチ式生産のための本発明によるデバイスを示す側面図である。
【
図8】スパンボンド不織布筒の断片あるいはフィルタカートリッジを概略的に示す図である。
【
図9】互いに密着された多くの表面およびそれらの間の開気孔を含むスパンボンド不織布層を示す図である。
【
図10】少数の接着部を含むスパンボンド不織布層を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
図1は、セルロース紡糸液が微細なフィラメントを形成するためのメルトブローンノズルから押し出されかつ熱気によって引き出される、本発明による方法のブロック図を示す。本発明によれば、引き抜かれたフィラメントは、それらが回転シリンダ上に堆積される前であっても、個々のフィラメントと生産されるスパンボンド不織布筒の個々の層との間に接着部が形を成す範囲内でのみ、凝固液で湿らされる。これらの接着部は、洗浄および乾燥後のスパンボンド不織布筒に十分な安定性を付与し、それにより、スパンボンド不織布筒が最終的に巻き取られるかまたは個々の筒片に切断され得ることが、示された。したがって、いくつかの層間での個々のフィラメントの接着部、および乾燥後のセルロースの顕著な水素結合が、層にわたって生産されるスパンボンド不織布筒に十分な安定性および凝集性を付与し、それによりスパンボンド不織布筒が例えば様々な濾過の領域で使用され得るので、結合剤の追加は、必要ではなかった。
【0029】
本発明による方法、およびフィルタカートリッジの生産を行うために、
図2で説明されているような本発明によるデバイス1が使用され得る。本発明によるデバイス1は、紡糸液製造部8、紡糸システム2、および、スパンボンド不織布を堆積させるための堆積セクション3、凝固システム4、洗浄システム5(あるいは、後処理)、(場合により、炭化および活性化のための)乾燥システム6、切断ユニット7、および、熱気供給部9を備える。本発明によるデバイス1によれば、フィラメント10は、スパンボンド不織布を堆積させるための回転堆積セクション3上で押し出され、引き抜かれ、凝固されて、スパンボンド不織布筒11に形成され得る。連続的に生産されるスパンボンド不織布は、洗浄システム5および乾燥システム6の下流で、フィルタカートリッジ12に巻かれるか、または、
図3に示されるように、濾過筒18に巻かれ得る。
図3によるデバイスは、巻きに違いがあるが、
図2のデバイスと本質的に同じ構造を有する。
【0030】
芯材を含まない本発明による製品の連続生産は、
図5に示されるように、駆動されるテークオフローラ13によって可能とされ得る。回転堆積セクション3がピカピカに磨かれた軸である場合、濾過筒は、テークオフローラ13により軸から引き抜かれ、ノズルの下での回転する筒の線形移動が可能とされる。回転堆積セクション3はまた、前方から後方まで、表面上に少なくとも1つの螺旋状スレッドを有し得る。
図3に示されたスパンボンド不織布筒の外部表面上での吸引ユニット17との摩擦、および、筒の内部における回転する螺旋状スレッドとの摩擦により、筒は、洗浄システム5に向かう方向に(ねじコンベヤまたは押出機の送達原理と同様に)一様に搬送される。しかし、あるいは、
図6に示されるように、フィルタカートリッジを生産するために、スパンボンド不織布の堆積に芯材23も使用され得る。この場合、多孔巻き芯材23が、一つ一つ供給され、接続され、かつ、駆動ローラ22を介して継続的にさらに移送される。また、別の変形は、巻き芯材23を用いたバッチ式生産であり、これは、
図7に示されている。この場合、フィラメントは、スパンボンド不織布を堆積させるための2つの回転堆積セクション3上に交互に吹き付けられる。スパンボンド不織布を堆積させるための堆積セクション3が紡糸システム2のノズルの下で吹き付けられている間、芯材23を含むスパンボンド不織布筒11は、スパンボンド不織布を堆積させるための第2の堆積セクション3から引き出されて、空の芯材23を取り付けられる。次いで、スパンボンド不織布筒は、洗浄され(場合により、化学物質で後処理され)、乾燥され(場合により、炭化および活性化され)、加工され、あるいは例えば切断されて、フィルタカートリッジ12にされる。好ましい設計における本デバイスおよび変形形態により、芯材を含むまたは含まない、継ぎ目のない多層のセルロース濾過筒あるいはフィルタカートリッジが生産され得ることが示された。
【0031】
図8は、中央の中空空間および周囲のスパンボンド不織布層を含むフィルタカートリッジを概略的に示す。スパンボンド不織布11は、吹付け中にフィラメント10とともに移動されるので、層は、移動に従って紡糸システム2の下で徐々に累積される。この場合、1つの紡糸システム2が使用されてもよく、または、等しいまたは異なるフィラメント径とともに、いくつかの紡糸システム2が使用されてもよい。接着剤は、紡糸システムに応じて変更されてよく、結果として、異なる層、フィラメント径、および細孔サイズを有するフィルタ材料、したがって様々な濾過特性を有するフィルタ材料が生産され得ることが、示された。
図9は、多くの接着部を含むスパンボンド不織布層を示し、一方で、
図10におけるスパンボンド不織布は、多くの個別のフィラメントを有する。セルロース層および非セルロース層を含む筒状製品を生産し、それにより筒状製品の特性に影響を与えるために、例えば熱可塑性融液である非セルロース紡糸液を含む追加の紡糸システム2を使用することも可能である。
【0032】
本発明による製品は、とりわけ、セルロースで作られた継ぎ目のない多層の濾過筒を含み、これは、例えばフィルタカートリッジおよび濾過筒に加工され得る。本発明による製品はまた非セルロース層を含むことができ、化学的に後処理されるかあるいは機能化されることが可能であり、濾過性能を増大させること、難燃性を高めること、イオン交換を可能にすること、および濾過媒体に対する耐化学性を増大させることのための添加物を含むことができる。さらに、濾過筒は、表面活性および吸着特性を増大させるために、部分的または全面的に炭化および/または活性化され得る。本発明による製品は、例えば、液体および気体の濾過、分離、イオン交換、消毒、乳濁液の分離、油分離、ならびに当業者に知られている濾過筒およびフィルタカートリッジのための他の用途に使用され得る。
【0033】
本発明による方法の場合、様々なパルプ、溶媒、およびそれらから作製されるセルロース紡糸液が使用され得る。紡糸液とは、セルロースが例えばイオン性液体、好ましくは第3級アミンオキシド、より好ましくはNMMO/水混合物である適切な溶媒によって可溶化され、したがって押出し可能および紡糸可能となる、複数物質系であると理解される。ライオセル紡糸液の場合のパルプ含量は、4から15%の間、好ましくは6%から14%の間、より好ましくは7%から13%の間であり得る。ライオセル紡糸液の場合、温度は、80℃から160℃の間、好ましくは90℃から150℃の間、より好ましくは100℃から140℃の間であり得る。
【0034】
紡糸液は単列および多列の両方のメルトブローンノズル(紡糸システム2)によって押し出されかつ引き出され得ることが、示された。いくつかの連続して配置された紡糸システム2が、異なるフィラメント径の層を作製するために使用され得る。1つの紡糸システム2だけが使用される場合、押出し穴幾何形状は、ノズルの一方の側からノズルの他方の側まで、内側層に微細なフィラメントを作製し外側層に粗いフィラメントを作製するために、または、内側の円形フィラメントおよび外側の中空繊維を作製するために、サイズおよび幾何形状の両方において変化し得る(例えば、穴は、ノズルに沿って大きくなっていき、最初は円形であり、終わりにはY形状である)。サイズ、勾配、および幾何形状のさらなる組合せが、所望の製品特性に応じて可能である。この場合、高温のプロセス空気は、ノズル設計に応じて、押出し開口部の隣りもしくは周りの隙間または穴から現れて、紡糸液フィラメントを同伴する。フィラメントは加速され、直径は縮小される。続いて、フィラメントは、プロセス空気の乱流によって旋回されて、回転表面上にスパンボンド不織布として堆積され得る。ノズル長は、50mmから2000mmの間、好ましくは100mmから1000mmの間、より好ましくは200mmから500mmの間であり得る。セルロース流量は、1kg/h/mから500kg/h/mノズル長の間、好ましくは15kg/h/mから250kg/h/mの間、より好ましくは20kg/h/mから100kg/h/mの間であり得る。ノズルの押出し穴は、0.05mmから3mmの間、好ましくは0.2mmから1mmの間、より好ましくは0.3mmから0.6mmの間であり得る。押出し穴ごとのパルプ流量は、0.001g/穴/minから30g/穴/minの間、好ましくは0.1g/穴/minから20g/穴/minの間、より好ましくは1g/穴/minから10g/穴/minの間であり得る。単列スロットノズルの場合、空隙幅は、0.5mmから5mmの間、好ましくは1mmから3mmの間、より好ましくは1.5mmから2mmの間であり得る。多列ノズルの場合、空気出口直径は、0.5mmから5mmの間、好ましくは1mmから3mmの間、より好ましくは1.5mmから2mmの間であり得る。使用されるプロセス空気過剰圧力は、0.1バールから10バールの間、好ましくは0.3バールから5バールの間、より好ましくは0.5バールから2バールの間であり得る。それにより、20mmのノズル距離における空気出口速度は、50m/sから300m/s、好ましくは70m/sから250m/s、より好ましくは100m/sから200m/sになる。50mmから1000mm、好ましくは200mmから800mm、より好ましくは300mmから600mmの、ノズルと回転トレイとの間の距離において、個々の繊維の直径は、0.1μmから100μm、好ましくは0.5μmから50μm、より好ましくは1μmから30μmの間になる。
【0035】
接着の程度は、凝固、すなわちセルロースの再生によって特に影響を受ける可能性があることが示された。これに関連して、いくつかの個別のフィラメントのそれらの接触点における融合は、接着と呼ばれる。フィラメントは、トレイに衝突する前に、それらが部分的に液体の状態のままである範囲内でのみ凝固液で湿らされて、接触すると融合し、それにより、接着がなされる。本発明によれば、極端な場合には凝固液が適用されず、それにより最大限の接着がもたらされる。この場合、接着部は、例えば球状、あるいは平坦であってよく、また、10μmから500μm、好ましくは30μmから300μm、より好ましくは50から200μmの直径を有し得る。凝固液は、プロセス空気中に直接射出されるか、または、様々な吹付けおよび噴霧システムを介してフィラメントカーテン上に吹き付けられ得る。例えばNMMO/水混合物などの、水と様々な溶媒の混合物が、凝固液として使用され得る。凝固液中のNMMOの濃度は、0~45%の間、好ましくは10から40%まで、より好ましくは20から30%の間であり得る。凝固液の温度は、5℃から90℃の間、好ましくは10℃から70℃の間、より好ましくは20℃から60℃の間であり得る。
【0036】
凝固の後、フィラメントは、スパンボンド不織布を堆積させるための回転堆積セクション3上に堆積される。スパンボンド不織布を堆積させるための回転堆積セクション3は、被動軸、あるいは金属で作られたマンドレルのようなものであり得る。回転トレイの直径は、1cmから100cmの間、好ましくは1.5cmから50cmの間、より好ましくは2cmから30cmの間であり得る。ノズル長に応じて、回転トレイは、芯材を含まない連続生産(
図5)の場合、25cmから500cm、好ましくは50から400cm、より好ましくは100から300cmの長さを有し得る。
図6に示されるような芯材を伴う連続的な芯材作製では、巻き芯材は、回転トレイとして使用される。どちらの場合でも、駆動ローラ22およびテークオフローラ13が、ノズル長に沿ったスパンボンド不織布筒の線形移動を可能にするために、連続生産に使用され得る。
図7に示されるようなバッチ生産では、回転トレイ全体が、芯材にスパンボンド不織布の層を載せるために、紡糸システムの下で移動される。芯材が被覆されると、その芯材はノズルから離れる方向へ引っ張られて、新たな芯材と置き換えられる。次いで、後者は、この場合も先と同様に、スパンボンド不織布筒が形成されるまで、ノズルに沿って直線的に移動される。これらの全ての場合において、紡糸システム2の下での回転トレイ3の線形移動は、スパンボンド不織布筒が内側から外側へ作り上げられるという事実の原因となる。したがって、紡糸口金に沿ったフィラメント細さの変化は、様々な層の孔隙率あるいは通気度が変更され得るという効果を有する。このタイプの製品の変形は、濾過用途に特に望ましい。濾過筒は、少なくとも1つの層からなる。層の数、したがって生産される濾過筒の厚さは、ノズルを通る処理量、回転トレイ3の回転速度、または駆動ローラおよびテークオフローラそれぞれのテークオフ速度のいずれかを調節することにより用途に応じて変更され得ることが、示された。
【0037】
本発明によれば、堆積は、真空24下に配置された有孔パイプを回転トレイとして使用することによっても影響され得る。そうすることで、フィラメントは、特に吸引され、かつ、それと同時に脱水される。過剰な凝固液は、
図2に示されるように排液されて排液トレイで収集され得るか、または、
図4aに示されるように吸引ユニットを介して積極的に除去され得る。
図4aに示された回転可能な堆積セクション13は、凝固液、プロセス空気、および洗浄における洗浄液を除去するために使用され得る吸引ユニットを有する。この場合、スパンボンド不織布筒は、プーリ19によって支持され、かつ/または、
図4aに示されるようにコンベヤベルト20によって支持される。それにより、プーリ19、あるいはコンベヤベルト20は、回転トレイ3あるいはスパンボンド不織布筒11と同じ速度で回転する。プーリ19間とコンベヤベルト20の下には、吸引ユニット21が存在する。スパンボンド不織布筒は、吸引ユニットによって脱水される。
図4bに示されるように、脱水効果は、テークオフローラ13によって強化することができ、テークオフローラ13は、この場合、加圧ローラとして機能する。含水量は、脱水ユニットによって30%まで低減され得る。
図3に示されるように、脱水箱からの液体は、凝固コンテナ15または洗浄システムコンテナ14に到達する。凝固コンテナ15からの液体は、溶媒回収に供給され、一方で、洗浄システムコンテナからの液体は、凝固システム4のために使用され得る。
【0038】
不織布の形成後、スパンボンド不織布筒は、洗浄される。それにより、残存する溶媒は、スパンボンド不織布筒から除去される。スパンボンド不織布筒は、水が向流で供給されかつ溶媒が排出される吹付けノズルまたは他の水まき機の下で、たらいまたは浴槽を通って案内され得るか、あるいは、例えば水がスパンボンド不織布筒上に向流で吹き付けられて滴り落ちるか吸引ユニット17によって除去される、いくつかの連続した段階を通じて案内される。洗浄は、所望の純度が得られるまで向流抽出が繰り返される、いくつかの洗浄段階で構成され得る。洗浄液の温度は、20から90℃の間、好ましくは30から85℃の間、より好ましくは40から80℃の間であり得る。温度は、様々な洗浄段階に対して変更されてもよい。例えば、第1の洗浄段階は、最後の洗浄段階よりも温かくてよい。洗浄の向流原理に基づき、スパンボンド不織布筒内の溶媒の濃度は低減し、一方で、洗浄水は濃縮される。次いで、濃縮された洗浄水は、凝固のために使用され得る。洗浄において、スパンボンド不織布筒の特性は、例えば官能基により耐温度性、耐薬品性、寸法安定性、および濾過性能を増大させるために、化学物質の追加に影響され得る。さらに、消毒剤および難燃性含浸剤も追加され得る(化学的後処理)。
【0039】
洗浄の後、スパンボンド不織布筒11は、なおも乾燥される必要がある。その際に、フロードライヤ(対流乾燥機)、放射乾燥機(IR、UV、マイクロ波)、および加熱ローラを含む接触乾燥機が使用され得る。この場合、含水量は、2から14%、好ましくは4から12%、より好ましくは6から10%まで低減される。スパンボンド不織布筒はまた、洗浄時における適切な含浸時に部分的または全面的に炭化および/または活性化され得ることが示された。結果として、製品の比表面積、吸収特性、および吸着特性が、著しく増大される。
【0040】
連続生産において、スパンボンド不織布筒は、より小さなユニットに切断される(
図2)か、筒状ロールとして巻き取られる(
図3)。
【0041】
説明されたような洗浄(化学的後処理)および乾燥(あるいは、炭化)は、バッチ生産ではバッチ式に行われる。
【0042】
製造される製品は、食品産業、化学産業、製薬産業、自動車産業、電気産業、石油産業、石油化学産業、化粧品産業、および民間部門において、難燃性および耐温度性を増大させるためにまた例えば気体、液体、および乳濁液からの物質の吸着、化学結合、および吸収を改善するために化学的に後処理された、純セルローススパンボンド不織布筒、セルロース/熱可塑性物質スパンボンド不織布筒、炭化スパンボンド不織布筒、もしくは活性化スパンボンド不織布筒として使用され、または、気体および液体から固体を分離するために、気体から液体を分離するために、乳濁液を分離するために、もしくは排ガスの除塵のために、フィルタクロス、フィルタカートリッジ、濾過筒、もしくはバッグフィルタとして使用され、または、液体の脱色、ガスおよび液体の消毒、飲用水処理、硬水軟化、気体からの油の分離、乳濁液の分離、もしくは消毒のための液滴分離器として、使用され得る。
【0043】
さらに、本発明による製品は、実験室における抽出スリーブとして、また、機器分析のためのフィルタとして、使用され得る。濾過筒はまた、例えばティーバッグおよびコーヒーフィルタに加工され得る。
【0044】
化粧品部門では、濾過筒は、例えば、化粧品(クリーム、パウダー、…)を塗布あるいは除去するためのフィンガチューブとして使用され得る。セルロース濾過筒は、果物および野菜のための生分解性包装材料として商業的に使用され得る。セルロースの水分吸収により、本発明による製品はまた、包装に適し、かつ、輸送および保管のための金属部品の腐食保護物として適する。農業部門では、本発明の製品は、機械的攻撃、乾燥、虫、および動物から植物を保護するために、または、植物に栄養物を供給するために、使用され得る。
【0045】
スパンボンド不織布筒はまた、治療分野または医療分野において、筋肉組織を支持するための包帯として、湿度調整および創傷治癒の促進のための創傷被覆材として、支持包帯として、使用され得る。
【国際調査報告】