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特表2022-510407多重反応同位体分子種反応モニタリングによる、サンプル内検量線を用いた分析方法
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  • 特表-多重反応同位体分子種反応モニタリングによる、サンプル内検量線を用いた分析方法 図1
  • 特表-多重反応同位体分子種反応モニタリングによる、サンプル内検量線を用いた分析方法 図2A
  • 特表-多重反応同位体分子種反応モニタリングによる、サンプル内検量線を用いた分析方法 図2B
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  • 特表-多重反応同位体分子種反応モニタリングによる、サンプル内検量線を用いた分析方法 図4A
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  • 特表-多重反応同位体分子種反応モニタリングによる、サンプル内検量線を用いた分析方法 図5A
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】多重反応同位体分子種反応モニタリングによる、サンプル内検量線を用いた分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 27/62 20210101AFI20220119BHJP
   G01N 33/53 20060101ALI20220119BHJP
   G01N 33/68 20060101ALI20220119BHJP
   G01N 30/72 20060101ALI20220119BHJP
   G01N 30/04 20060101ALI20220119BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20220119BHJP
   G01N 30/86 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
G01N27/62 X
G01N33/53 N
G01N33/68
G01N30/72 C
G01N30/04 P
G01N30/88 E
G01N30/86 J
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531713
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 US2019064299
(87)【国際公開番号】W WO2020117849
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】62/775,318
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】391015708
【氏名又は名称】ブリストル-マイヤーズ スクイブ カンパニー
【氏名又は名称原語表記】BRISTOL-MYERS SQUIBB COMPANY
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100126778
【弁理士】
【氏名又は名称】品川 永敏
(74)【代理人】
【識別番号】100162695
【弁理士】
【氏名又は名称】釜平 双美
(74)【代理人】
【識別番号】100156155
【弁理士】
【氏名又は名称】水原 正弘
(74)【代理人】
【識別番号】100162684
【弁理士】
【氏名又は名称】呉 英燦
(72)【発明者】
【氏名】グ・フイドン
(72)【発明者】
【氏名】ユエ・ジャオ
(72)【発明者】
【氏名】ジアニン・ゼン
【テーマコード(参考)】
2G041
2G045
【Fターム(参考)】
2G041CA01
2G041EA04
2G041EA12
2G041FA11
2G041FA12
2G041FA22
2G041FA23
2G041FA24
2G041FA25
2G041GA03
2G041GA09
2G041HA01
2G041JA05
2G041LA09
2G045AA25
2G045DA36
2G045FA33
2G045FB06
2G045FB08
(57)【要約】
本開示は、LC-MS/MS分析におけるいくつかの方法を提供する:(1)サンプルの分析物濃度を決定するための、LC-MS/MS分析技術の方法、ここで、多重同位体分子種反応モニタリング(MIRM)モードにおいて、MS/MSを介して、それぞれのサンプルに追加した安定同位体標識(SIL)分析物の、多重同位体分子種トランジションをモニターすることによって、外部検量線の代わりにサンプル内検量線(ISCC)が用いられる;(2)サンプルの分析物濃度を決定するための、LC-MS/MS分析の方法、ここで、1つのサンプル多点外部検量線(OSMECC)が、マルチサンプル外部検量線の代わりに用いられる;および(3)分析物濃度がアッセイのULOQを超えているサンプルの分析物濃度を決定するための、LC-MS/MS分析の方法、ここで、モニターしたMIRMチャンネルの同位体存在率の計算に基づいて、サンプル調製においてサンプルを物理的に希釈する代わりに、同位体サンプル希釈が用いられる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
サンプル中の少なくとも1つの分析物の濃度を定量化する方法であって、少なくとも1つの分析物を含むサンプルに、1つ以上の既知の分量の安定同位体標識(SIL)分析物を添加し、それぞれの添加したSIL分析物の多重同位体分子種反応モニタリング(MIRM)によって、1つ以上のサンプル内検量線(ISCC)を構築することを含む方法であって、SIL分析物のMIRMとは、SIL分析物の複数の同位体トランジションの多重反応モニタリングをいい;それぞれの分析物のISCCは、MIRMトランジションにおいて計算した理論上の同位体存在率(分析物濃度当量)と、対応するMIRMトランジションにおいて測定したタンデム質量分析(MS/MS)との関係に基づいて、サンプル内で構築され;確立されたISCC、および液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)工程からの分析物について測定したピーク面積を用いて、サンプル中の少なくとも1つの分析物の濃度を定量化し;タンデム質量分析計は、多重反応モニタリングモードにおいて操作する、方法。
【請求項2】
(i)分析物、SIL分析物、およびSIL分析物の天然に存在する同位体分析種は、質量分析計においてイオン化されて、分析物、SIL分析物、およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種のプロトン化(または脱プロトン化)親イオンを生じ;
(ii)質量分析計において、分析物の親イオン、SIL分析物の親イオン、およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の親イオンは、同じ開裂部位においてフラグメント化され、ニュートラルロスおよび娘イオンを生じ;
(iii)分析物の親イオンから娘イオンへのトランジションを、質量分析計においてモニターし;
(iv)分析物の親イオンから娘イオンへのトランジションについてのピーク面積を測定し;
(v)SIL分析物の親イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の親イオンから、SIL分析物の娘イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の娘イオンへの選択された多重トランジションを、質量分析計においてモニターし(「多重同位体分子種反応モニタリング」または「MIRM」);
(vi)それぞれのMIRMトランジションのピーク面積を測定し、ここで、MIRMトランジションは、SIL分析物の親イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の親イオンから、SIL分析物の娘イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の娘イオンへの選択されたトランジションを含む、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
SIL分析物、およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の、MIRMトランジションにおいて測定したピーク面積と、それぞれのMIRMトランジションと同等の分析物濃度の関係に基づき、サンプル内検量線をさらに作成する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
それぞれのMIRMトランジションと同等の分析物濃度を、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションの理論上の同位体存在率から計算する、請求項3に記載の方法であって、理論上の同位体存在率は、Analytical Chemistry, 2012, 84(11), 4844-4850において公開されている方法を用いて計算し、当該方法は、SIL分析物のニュートラルロスおよび娘イオンの同位体分布に基づいて計算する、方法。
【請求項5】
SIL分析物およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の、(p+Z+α)/Zから(d+Z+β)/ZのそれぞれのMIRMトランジション(m/z)についての理論上の同位体存在率を、式(I):
(p+Z+α)/Z→(d+Z+β)/ZのMIRMトランジションにおける同位体存在率=
[(d+Z+β)の質量における、娘イオンの相対同位体分布]*
[n+(α-β)の質量における、ニュートラルロスの相対同位体分布]
(I)
[式中、
m/zは質量電荷比であり
pはSIL分析物の親分子のモノアイソトピック質量であり
は親イオンの電荷数であり
dはSIL分析物の娘フラグメントのモノアイソトピック質量であり
は娘イオンの電荷数であり
nはSIL分析物のニュートラルロスのモノアイソトピック質量であり
p=d+n
αおよびβは整数であり、それらはそれぞれ親イオンおよび娘イオンにおけるさらなる中性子の数であり、α0、β0、およびαβであり
およびZは整数である]
に基づいて計算する、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
同位体分布計算機が、worldwideweb.sisweb.com/mstools/isotope.html(2019年11月10日にアクセス)である、請求項4および5に記載の方法。
【請求項7】
最大の分析物濃度当量(ISCCの「定量上限」または「ULOQ」)を、式(II):
(M/V)*(M分析物/MSIL分析物)ng/mL (II)
[式中、
M(ng)は、サンプルに添加したSIL分析物の総量であり;
Vは、SIL分析物を添加する前のサンプル体積(mL)であり;
分析物は、分析物の分子量であり;
SIL分析物は、SIL分析物の分子量である]
に基づいて計算する、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
MIRMトランジションにおける、1つ以上の他の分析物濃度当量を、式(III):
*ULOQ(ng/mL) (III)
[式中、Iは、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種のMIRMトランジションの、計算した理論上の同位体存在率である]
に基づいて計算する、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
分析物がタンパク質またはペプチドである、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
SIL分析物が安定同位体標識タンパク質またはペプチドである、請求項1~9のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
SIL分析物の親イオンが、少なくとも約3個のアミノ酸、少なくとも約4個のアミノ酸、少なくとも約5個のアミノ酸、少なくとも約6個のアミノ酸、少なくとも約7個のアミノ酸、少なくとも約8個のアミノ酸、少なくとも約9個のアミノ酸、少なくとも約10個のアミノ酸、少なくとも約11個のアミノ酸、少なくとも約12個のアミノ酸、少なくとも約13個のアミノ酸、少なくとも約14個のアミノ酸、少なくとも約15個のアミノ酸、少なくとも約16個のアミノ酸、少なくとも約17個のアミノ酸、少なくとも約18個のアミノ酸、少なくとも約19個のアミノ酸、または少なくとも約20個のアミノ酸を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
SIL分析物の親イオンが、4~20個のアミノ酸、4~15個のアミノ酸、5~15個のアミノ酸、4~14個のアミノ酸、5~14個のアミノ酸、5~13個のアミノ酸、5~12個のアミノ酸、6~15個のアミノ酸、6~14個のアミノ酸、6~13個のアミノ酸、6~12個のアミノ酸、6~11個のアミノ酸、6~10個のアミノ酸、6~9個のアミノ酸、6~8個のアミノ酸、7~15個のアミノ酸、7~14個のアミノ酸、7~13個のアミノ酸、7~12個のアミノ酸、7~11個のアミノ酸、7~10個のアミノ酸、または7~9個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む、請求項10または11に記載の方法。
【請求項13】
分析物が抗体である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項14】
分析物が融合タンパク質である、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項15】
分析物が、PD-1、PD-L1、CD73、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CD73抗体、またはこれらの任意の組み合わせである、請求項1~12のいずれか1項に記載の方法。
【請求項16】
分析物が小分子である、請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項17】
小分子が、少なくとも約100g/mol、少なくとも約200g/mol、少なくとも約300g/mol、少なくとも約400g/mol、少なくとも約500g/mol、少なくとも約600g/mol、少なくとも約700g/mol、少なくとも約800g/mol、少なくとも約900g/mol、少なくとも約1000g/mol、少なくとも約1100g/mol、少なくとも約1200g/mol、少なくとも約1300g/mol、少なくとも約1400g/mol、少なくとも約1500g/mol、少なくとも約1600g/mol、少なくとも約1700g/mol、少なくとも約1800g/mol、少なくとも約1900g/mol、または少なくとも約2000g/molのモル質量を有する、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
SIL分析物が、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、または少なくとも約20個の安定な同位体標識を含む、請求項1~17のいずれか1項に記載の方法。
【請求項19】
SIL分析物が、約3~約20個の同位体標識、約3~約19個の同位体標識、約3~約15個の同位体標識、約3~約10個の同位体標識、約3~約8個の同位体標識、約3~約7個の同位体標識、約3~約6個の同位体標識、約4~約15個の同位体標識、約4~約10個の同位体標識、約4~約8個の同位体標識、約4~約7個の同位体標識、約4~約6個の同位体標識、約5~約8個の同位体標識、約5~約7個の同位体標識、約6~約10個の同位体標識、約6~約8個の同位体標識、約7~約16個の同位体標識、約7~約16個の同位体標識、約8~約16個の同位体標識、約8~約15個の同位体標識、約9~約15個の同位体標識、約9~約14個の同位体標識、約10~約14個の同位体標識、約10~約13個の同位体標識、または約11~約13個の同位体標識を含む、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
MIRMトランジションにおいて測定されたそれぞれの相対ピーク面積が、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて、計算した理論上の同位体存在率から15%未満の偏差を有する、請求項2~19のいずれか1項に記載の方法。
【請求項21】
MIRMトランジションにおいて測定した少なくとも1つの相対ピーク面積が、SIL分析物の対応するMIRMトランジション、またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種において計算した理論上の同位体存在率から、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、または0.0001%未満の偏差を有する、請求項20に記載の方法。
【請求項22】
MIRMトランジションにおいて測定した相対ピーク面積の少なくとも1つが、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するトランジションにおいて計算した理論上の同位体存在率の1%から15%の間の偏差を有する、請求項21に記載の方法。
【請求項23】
MIRMトランジションの数が、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20である、請求項22に記載の方法。
【請求項24】
MIRMトランジションの数が、2から20の間である、請求項23に記載の方法。
【請求項25】
最大のMIRMおよび最小のMIRMの分析物濃度当量が、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約1100、少なくとも約1200、少なくとも約1300、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600、少なくとも約1700、少なくとも約1800、少なくとも約1900、または少なくとも約2000倍異なる、請求項2~24のいずれか1項に記載の方法。
【請求項26】
2つの選択したMIRMトランジションの計算した理論上の同位体存在率が、少なくとも0.01%、少なくとも0.05%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも1.5%、少なくとも2%、少なくとも2.5%、少なくとも3%、少なくとも3.5%、少なくとも4%、少なくとも4.5%、少なくとも5%、少なくとも5.5%、少なくとも6%、少なくとも6.5%、少なくとも7%、少なくとも7.5%、少なくとも8%、少なくとも8.5%、少なくとも9%、少なくとも9.5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも約50%離れている、請求項4~25のいずれか1項に記載の方法。
【請求項27】
SIL分析物が、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、または0.1%未満の非標識分析物を含む、請求項1~26のいずれか1項に記載の方法。
【請求項28】
標識がH、13C、15N、33S、34S、36S、17O、または18Oである、請求項1~27のいずれか1項に記載の方法。
【請求項29】
1つ以上のプロトン化または脱プロトン化分子イオンが、1価、2価、3価、またはそれ以上である、請求項1~28のいずれか1項に記載の方法。
【請求項30】
質量分析計が、Q1、Q2、およびQ3を含むトリプル四重極質量分析計である、請求項1~29のいずれか1項に記載の方法。
【請求項31】
Q1およびQ3について用いられる分解能が単位分解能である、請求項30に記載の方法。
【請求項32】
Q1およびQ3について用いられる分解能が異なる、請求項30に記載の方法。
【請求項33】
Q1について用いられる分解能が、Q3の単位分解能よりも高い、請求項30に記載の方法。
【請求項34】
サンプル調製の前または間に、サンプル内検量線(ISCC)組成物を加える、請求項1~33のいずれか1項に記載の方法。
【請求項35】
機器の総実行時間を短縮する、請求項1~34のいずれか1項に記載の方法。
【請求項36】
外部検量線を用いない、請求項1~35のいずれか1項に記載の方法。
【請求項37】
分析物がバイオマーカーである、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項38】
分析物が代謝物である、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項39】
サンプルが、血清、組織、生検組織、ホルマリン固定/パラフィン包埋(FFPE)、血漿、唾液、脳脊髄液、涙、尿、滑液、乾燥血液スポット、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項1~36のいずれか1項に記載の方法。
【請求項40】
分析物がCD73またはその一部である、請求項1~12、および18~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項41】
SIL分析物が、V[Ile(1315N)]YPAVEGR(配列番号:1)であるSILペプチドである、請求項40に記載の方法。
【請求項42】
分析物が、PD-1またはその一部である、請求項1~12および18~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項43】
SIL分析物が、LAAFPED[Arg(1315)](配列番号:2)であるSILペプチドである、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
分析物が、PD-L1またはその一部である、請求項1~12および18~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項45】
SIL分析物が、LQDAG[Val(1315N)]YR(配列番号:3)であるペプチドである、請求項44に記載の方法。
【請求項46】
分析物がダクラタスビルである、請求項1~8および16~39のいずれか1項に記載の方法。
【請求項47】
SIL分析物が13 15-ダクラタスビルである、請求項46に記載の方法。
【請求項48】
生物学的マトリックスから分析物を分離することができる、少なくとも1つの液体クロマトグラフィーカラムを含む、液体クロマトグラフィー;
目的の分析物を含むサンプル;
サンプルに添加した少なくとも1つの安定同位体標識分析物;および
分析物および安定同位体標識分析物に特異的な、1つ以上のプロトン化または脱プロトン化親イオンおよび娘イオンをイオン化し、フラグメント化し、検出することができる、質量分析計
を含む、液体クロマトグラフィー-質量分析系。
【請求項49】
ISCCが安定同位体標識分析物を含む、サンプル内検量線(ISCC)を含む組成物。
【請求項50】
ブランクマトリックスサンプルに、1つ以上の既知の分量の1つ以上の分析物を加えて、添加したそれぞれの分析物の多重同位体分子種反応モニタリング(MIRM)によって、1つ以上の1サンプル多点外部検量線(OSMECC)を作成すること含む、1サンプル多点外部検量線を用いる、定量LC-MS/MSバイオアナリシス方法であって、分析物のMIRMは、分析物の多重同位体トランジションの多重反応モニタリングを意味し;それぞれの分析物のOSMECCは、MIRMトランジションにおける、計算した理論上の同位体存在率(分析物濃度当量)と、対応するMIRMトランジションにおける、測定したタンデム質量分析(MS/MS)ピーク面積(または、アッセイに内部標準が用いられる場合は、ピーク面積比)との関係に基づいて、ブランクマトリックスサンプル中で構築され;研究サンプルにおける少なくとも1つの分析物の濃度は、ブランクマトリックスサンプルにおいて確立したOSMECC、および液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)工程から、研究サンプルにおける分析物について測定されたピーク面積(または、アッセイに内部標準が用いられる場合は、ピーク面積比)を用いて定量し;分析物のピーク面積比は、分析物のピーク面積を内部標準のピーク面積で割ったものであり;タンデム質量分析計は、多重反応モニタリングモードで操作する、方法。
【請求項51】
それぞれのMIRMトランジションについての分析物濃度当量を、分析物または分析物の天然に存在する同位体種の、対応するMIRMトランジションの理論上の同位体存在率から計算する、請求項50に記載の方法であって、理論上の同位体存在率は、Analytical Chemistry, 2012, 84(11), 4844-4850において公開されている方法を用いて計算し、当該方法は、分析物のニュートラルロスおよび娘イオンの同位体分布に基づいて計算される、方法。
【請求項52】
分析物および分析物の天然に存在する同位体分子種の(p+Z+α)/Zから(d+Z+β)/ZのそれぞれのMIRMトランジション(m/z)についての理論上の同位体存在率を、式(I):
(p+Z+α)/Z→(d+Z+β)/ZのMIRMトランジションにおける同位体存在率=
[(d+Z+β)の質量における、娘イオンの相対同位体分布]*
[n+(α-β)の質量におけるニュートラルロスの相対同位体分布]
(I)
[式中、
m/zは質量電荷比であり
pは分析物の親分子のモノアイソトピック質量であり
は親イオンの電荷数であり
dは分析物の娘フラグメントのモノアイソトピック質量であり
は娘イオンの電荷数であり
nは分析物のニュートラルロスのモノアイソトピック質量であり
p=d+n
αおよびβは整数であり、それらはそれぞれ親イオンおよび娘イオンにおけるさらなる中性子の数であり、α0、β0、およびαβであり
およびZは整数である]
に基づいて計算する、請求項51に記載の方法。
【請求項53】
同位体分布計算機が、worldwideweb.sisweb.com/mstools/isotope.html(2019年11月10日にアクセス)である、請求項51または52に記載の方法。
【請求項54】
最大分析物濃度当量(ISCCの「定量上限」または「ULOQ」)を、式(II):
(M/V)*ng/mL (IV)
[式中、
M(ng)は、サンプルに添加した分析物の総量であり;
Vは、分析物を添加する前のサンプル体積(mL)である]
に基づいて計算する、請求項53に記載の方法。
【請求項55】
MIRMトランジションにおける、1つ以上の他の分析物濃度当量を、式(III):
*ULOQ(ng/mL) (III)
[式中、Iは、分析物または分析物の天然に存在する同位体種のMIRMトランジションの、計算した理論上の同位体存在率である]
に基づいて計算する、請求項54に記載の方法。
【請求項56】
分析物がタンパク質またはペプチドである、請求項50~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項57】
分析物の親イオンが、少なくとも約3個のアミノ酸、少なくとも約4個のアミノ酸、少なくとも約5個のアミノ酸、少なくとも約6個のアミノ酸、少なくとも約7個のアミノ酸、少なくとも約8個のアミノ酸、少なくとも約9個のアミノ酸、少なくとも約10個のアミノ酸、少なくとも約11個のアミノ酸、少なくとも約12個のアミノ酸、少なくとも約13個のアミノ酸、少なくとも約14個のアミノ酸、少なくとも約15個のアミノ酸、少なくとも約16個のアミノ酸、少なくとも約17個のアミノ酸、少なくとも約18個のアミノ酸、少なくとも約19個のアミノ酸、または少なくとも約20個のアミノ酸を含む、請求項56に記載の方法。
【請求項58】
分析物の親イオンが、4~20個のアミノ酸、4~15個のアミノ酸、5~15個のアミノ酸、4~14個のアミノ酸、5~14個のアミノ酸、5~13個のアミノ酸、5~12個のアミノ酸、6~15個のアミノ酸、6~14個のアミノ酸、6~13個のアミノ酸、6~12個のアミノ酸、6~11個のアミノ酸、6~10個のアミノ酸、6~9個のアミノ酸、6~8個のアミノ酸、7~15個のアミノ酸、7~14個のアミノ酸、7~13個のアミノ酸、7~12個のアミノ酸、7~11個のアミノ酸、7~10個のアミノ酸、または7~9個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む、請求項56または57に記載の方法。
【請求項59】
分析物が抗体である、請求項50~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項60】
分析物が融合タンパク質である、請求項50~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項61】
分析物がPD-1、PD-L1、CD73、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CD73抗体、またはそれらの任意の組み合わせである、請求項50~58のいずれか1項に記載の方法。
【請求項62】
分析物が小分子である、請求項50~55のいずれか1項に記載の方法。
【請求項63】
小分子が、少なくとも約100g/mol、少なくとも約200g/mol、少なくとも約300g/mol、少なくとも約400g/mol、少なくとも約500g/mol、少なくとも約600g/mol、少なくとも約700g/mol、少なくとも約800g/mol、少なくとも約900g/mol、少なくとも約1000g/mol、少なくとも約1100g/mol、少なくとも約1200g/mol、少なくとも約1300g/mol、少なくとも約1400g/mol、少なくとも約1500g/mol、少なくとも約1600g/mol、少なくとも約1700g/mol、少なくとも約1800g/mol、少なくとも約1900g/mol、または少なくとも約2000g/molのモル質量を有する、請求項62に記載の方法。
【請求項64】
MIRMトランジションの数が、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20である、請求項51~63のいずれか1項に記載の方法。
【請求項65】
MIRMトランジションの数が、2~20の間である、請求項64に記載の方法。
【請求項66】
最大のMIRMおよび最小のMIRMの分析物濃度当量が、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約1100、少なくとも約1200、少なくとも約1300、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600、少なくとも約1700、少なくとも約1800、少なくとも約1900、または少なくとも約2000倍異なる、請求項51~65のいずれか1項に記載の方法。
【請求項67】
2つの選択したMIRMトランジションの計算した理論上の同位体存在率が、少なくとも0.01%、少なくとも0.05%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも1.5%、少なくとも2%、少なくとも2.5%、少なくとも3%、少なくとも3.5%、少なくとも4%、少なくとも4.5%、少なくとも5%、少なくとも5.5%、少なくとも6%、少なくとも6.5%、少なくとも7%、少なくとも7.5%、少なくとも8%、少なくとも8.5%、少なくとも9%、少なくとも9.5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも約50%離れている、請求項52~66のいずれか1項に記載の方法。
【請求項68】
LC-MS/MSバイオアナリシスにおいて、分析物濃度がアッセイULOQよりも高いサンプルを定量するための、同位体サンプル希釈方法であって、それぞれのMIRMチャンネルにおける同位体存在率を、正確に計算し測定することができるため、研究サンプルについて最も豊富なMIRMチャンネルに加えて、分析物の1つまたはいくつかのMIRMチャンネルをモニターするだけで、同位体サンプル希釈を達成することができる方法であって、最も豊富なMIRMチャンネル(100%の同位体存在率)が、アッセイ検量線範囲内の濃度を有するサンプルの定量に用いられるが、あまり豊富でないMIRMチャンネル(IA%の同位体存在率)を、アッセイの定量上限(ULOQ)を超える濃度を有するサンプルの定量に用いることができ、それによって100%/IA%の同位体希釈因子(IDF)を生じる方法であって、本アプローチが、LC-MS/MSの定量分析において、研究サンプルを物理的に希釈する必要をなくすための代替的方法として機能する、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮出願第62/775,318号(2018年12月4日出願)の優先権を主張する。米国仮出願第62/775,318号の全体的な内容は、参照によって本明細書に援用される。
【0002】
EFS-WEBによって電子的に提出する配列表の参照
本願は、EFS-Webによって電子的に提出される配列表(名前:「3338_148PC01_SL_ST25.txt」;サイズ:844bytes;および作成日:2019年12月3日)を含み、これはその全体が参照によって本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
探索医学研究の近年の急速な発展に伴い、前臨床および臨床試験におけるバイオマーカーの定量的決定、および定量的プロテオミクスは、分子および細胞生物学研究、医薬品探索および開発において、潜在的バイオマーカーの特定および検証、患者の層別化および用量選択を可能にすること、代替エンドポイントとしての機能、および作用部位におけるPK/PD関係の構築などの、ますます重要な役割を有するようになっている。発生した研究サンプルと同じ生物学的マトリックスにおいて作成した外部検量線の使用、およびアッセイの内部標準として、外部検量線および発生した研究サンプルの両方における、安定に同位体標識した(SIL)分析物の使用は、生物学的マトリックスにおける小分子薬物および生物学的薬物の定量的決定のための、正確で安定した液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)アッセイの開発において、重要であることは周知である。
【0004】
しかしながら、前臨床および臨床試験におけるバイオマーカー測定では、バイオマーカーの内在的な性質により、真のマトリックスにおける真の参照標準を用いた外部検量線の使用が、多くの場合不可能である。真のマトリックスにおけるSIL代替分析物によって外部検量線を作成することは、代替策の1つであり、SIL代替分析物と真の分析物は、サンプル抽出、クロマトグラフィー分離、MSイオン化、フラグメント化、および検出に関して、「同一の」物理化学的性質を有しているため、真のマトリックスにおける真の分析物を用いたアッセイと、同様のアッセイ性能を提供することができる。しかしながらSIL分析物の別のバージョンがアッセイの内部標準として必要であり、SIL分析物の2つのバージョンへのアクセスは、特にタンパク質の分析について、非常にコストと時間がかかるため、このアプローチは容易に利用することはできない。そのため、薬物の開発の前臨床または臨床段階において、バイオマーカー、薬物、またはその代謝物の定量的LC-MS/MS分析のための他のアプローチを開発する必要がある。
【発明の概要】
【0005】
本開示は、サンプル中の少なくとも1つの分析物の濃度を定量するための、LC-MS/MS技術に関するものであり、当該方法は、1つ以上の既知の分量の安定同位体標識(SIL)分析物を、少なくとも1つの分析物を含むサンプルに加え、添加したそれぞれのSIL分析物の多重同位体分子種反応モニタリング(MIRM)によって、1つ以上のサンプル内検量線(ISCC)を構築することを含み、ここで、SIL分析物のMIRMとは、SIL分析物の複数の同位体トランジションの多重反応モニタリングをいい;それぞれの分析物のISCCとは、MIRMトランジションにおいて計算した理論上の同位体存在率(分析濃度当量)と、対応するMIRMトランジションにおいて測定したタンデム質量分析(MS/MS)ピーク面積との関係に基づいて、サンプル内で構築され;確率されたISCC、および液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)工程からの分析物について測定したピーク面積を用いて、サンプル中の少なくとも1つの分析物の濃度を定量化し;タンデム質量分析計は、多重反応モニタリングモードにおいて操作する。
【0006】
いくつかの局面において、分析物、SIL分析物、およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種を、質量分析計においてイオン化し、分析物、SIL分析物、およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の、プロトン化(または脱プロトン化)した親イオンを生成する。いくつかの局面において、分析物の親イオン、SIL分析物の親イオン、およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の親イオンは、質量分析計において、同じ開裂部位においてフラグメント化され、ニューラルロスおよび娘イオンを生じる。
【0007】
いくつかの実施態様において、分析物の親イオンから娘イオンへのトランジションは、質量分析計においてモニターされ、分析物の親イオンから娘イオンへのトランジションについてのピーク面積を測定する。いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の親イオンから、SIL分析物の娘イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の娘イオンへの、選択した多重トランジションを、質量分析計においてモニターする(「多重同位体分子種反応モニタリング」または「MIRM」)。
【0008】
いくつかの局面において、それぞれのMIRMトランジションのピーク面積が測定され、ここで、MIRMトランジションは、SIL分析物の親イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の親イオンから、SIL分析物の娘イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の娘イオンへの選択されたトランジションを含む。
【0009】
いくつかの局面において、SIL分析物およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種のMIRMトランジションにおける測定されたピーク面積と、それぞれのMIRMトランジションについての分析物濃度当量との関係に基づいて、サンプル内検量線を作成する。
【0010】
いくつかの局面において、それぞれのMIRMトランジションについての分析物濃度当量は、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の、対応するMIRMトランジションの理論上の同位体存在率から計算され、ここで、理論上の同位体存在率は、Analytical Chemistry, 2012, 84(11), 4844-4850において公開されている方法を用いて計算し、当該方法は、SIL分析物のニューラルロスおよび娘イオンの同位体分布に基づいて計算される。別の局面において、単位分解能トリプル四重極質量分析計について、SIL分析物およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の、(p+Z+α)/Zから(d+Z+β)/ZのそれぞれのMIRMトランジション(m/z)についての理論上の同位体存在率を、式(I):
(p+Z+α)/Z→(d+Z+β)/ZのMIRMトランジションにおける同位体存在率=
[(d+Z+β)の質量における、娘イオンの相対同位体分布]*
[n+(α-β)の分子量におけるニュートラルロスの動態同位体分布]
(I)
[式中、
m/zは質量電荷比であり
pはSIL分析物の親分子のモノアイソトピック質量であり
は親イオンの電荷数であり
dはSIL分析物の娘フラグメントのモノアイソトピック質量であり
は娘イオンの電荷数であり
nはSIL分析物のニュートラルロスのモノアイソトピック質量であり
p=d+n
αおよびβは整数であり、それらはそれぞれ親イオンおよび娘イオンにおけるさらなる中性子の数であり、α0、β0、およびαβであり
およびZは整数である]
に基づいて計算する。
【0011】
いくつかの局面において、同位体存在率計算機は、worldwideweb.sisweb.com/mstools/isotope.html(2019年11月10日にアクセス)に存在する。いくつかの局面において、最大の分析物濃度当量(ISCCの「定量上限」または「ULOQ」)を、式(II):
(M/V)*(M分析物/MSIL分析物)ng/mL (II)
[式中、
M(ng)は、サンプルに添加したSIL分析物の総量であり;
Vは、SIL分析物を添加する前のサンプル体積(mL)であり;
分析物は、分析物の分子量であり;
SIL分析物は、SIL分析物の分子量である]
に基づいて計算する。
【0012】
いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける、1つ以上の他の分析物濃度当量を、式(III):
*ULOQ(ng/ml) (III)
[式中、Iは、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種のMIRMトランジションの、計算した理論上の同位体存在率である]
に基づいて計算する。
【0013】
本開示の方法は、対応するSIL分析物を用いて、タンパク質である分析物を検出または定量するのに有用である。いくつかの局面において、分析物はタンパク質またはペプチドである。いくつかの局面において、SIL分析物は、安定同位体標識タンパク質またはペプチドである。いくつかの局面において、分析物の親イオン、およびSIL分析物の親は、少なくとも約3個のアミノ酸、少なくとも約4個のアミノ酸、少なくとも約5個のアミノ酸、少なくとも約6個のアミノ酸、少なくとも約7個のアミノ酸、少なくとも約8個のアミノ酸、少なくとも約9個のアミノ酸、少なくとも約10個のアミノ酸、少なくとも約11個のアミノ酸、少なくとも約12個のアミノ酸、少なくとも約13個のアミノ酸、少なくとも約14個のアミノ酸、少なくとも約15個のアミノ酸、少なくとも約16個のアミノ酸、少なくとも約17個のアミノ酸、少なくとも約18個のアミノ酸、少なくとも約19個のアミノ酸、または少なくとも約20個のアミノ酸を含む。
【0014】
いくつかの局面において、分析物の親イオンおよびSIL分析物の親イオンは、4~20個のアミノ酸、4~15個のアミノ酸、5~15個のアミノ酸、4~14個のアミノ酸、5~14個のアミノ酸、5~13個のアミノ酸、5~12個のアミノ酸、6~15個のアミノ酸、6~14個のアミノ酸、6~13個のアミノ酸、6~12個のアミノ酸、6~11個のアミノ酸、6~10個のアミノ酸、6~9個のアミノ酸、6~8個のアミノ酸、7~15個のアミノ酸、7~14個のアミノ酸、7~13個のアミノ酸、7~12個のアミノ酸、7~11個のアミノ酸、7~10個のアミノ酸、または7~9個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む。いくつかの局面において、分析物は抗体である。別の局面において、分析物は融合タンパク質である。いくつかの局面において、分析物はタンパク質および異種部位を含む、融合タンパク質である。別の局面において、分析物はFc融合タンパク質である。いくつかの局面において、分析物は、PD-1、PD-L1、CD73、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CD73抗体、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0015】
本開示の方法はまた、小分子である分析物の検出または定量に有効である。いくつかの局面において、分析物は小分子である。いくつかの局面において、SIL分析物は、安定同位体標識小分子である。いくつかの局面において、小分子は、少なくとも約100g/mol、少なくとも約200g/mol、少なくとも約300g/mol、少なくとも約400g/mol、少なくとも約500g/mol、少なくとも約600g/mol、少なくとも約700g/mol、少なくとも約800g/mol、少なくとも約900g/mol、少なくとも約1000g/mol、少なくとも約1100g/mol、少なくとも約1200g/mol、少なくとも約1300g/mol、少なくとも約1400g/mol、少なくとも約1500g/mol、少なくとも約1600g/mol、少なくとも約1700g/mol、少なくとも約1800g/mol、少なくとも約1900g/mol、または少なくとも約2000g/molのモル質量を有する。
【0016】
本開示の方法は、同位体により標識されたSIL分析物の使用に関する。いくつかの局面において、SIL分析物は、少なくとも約3個、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、または少なくとも約20個の安定な同位体標識を含む。
【0017】
いくつかの局面において、SIL分析物は、約3~約20個の同位体標識、約3~約19個の同位体標識、約3~約15個の同位体標識、約3~約10個の同位体標識、約3~約8個の同位体標識、約3~約7個の同位体標識、約3~約6個の同位体標識、約4~約15個の同位体標識、約4~約10個の同位体標識、約4~約8個の同位体標識、約4~約7個の同位体標識、約4~約6個の同位体標識、約5~約8個の同位体標識、約5~約7個の同位体標識、約6~約10個の同位体標識、約6~約8個の同位体標識、約7~約16個の同位体標識、約7~約16個の同位体標識、約8~約16個の同位体標識、約8~約15個の同位体標識、約9~約15個の同位体標識、約9~約14個の同位体標識、約10~約14個の同位体標識、約10~約13個の同位体標識、または約11~約13個の同位体標識を含む。
【0018】
測定のためのMIRMトランジションの選択は、安定で正確なアッセイ性能を確立するための、本開示の方法の重要な要素である。いくつかの局面において、SIL分析物のMIRMトランジションにおいて測定した相対ピーク面積のそれぞれは、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて計算した理論上の同位体存在率から15%未満の偏差を有する。
【0019】
いくつかの局面において、MIRMトランジションにおいて測定した相対ピーク面積の少なくとも1つは、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて計算した理論上の同位体存在率から、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.1%未満、0.01%未満、0.001%未満、または0.0001%未満の偏差を有する。
【0020】
いくつかの局面において、MIRMトランジションの数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20である。いくつかの局面において、MIRMトランジションの数は、4~15である。
【0021】
いくつかの局面において、SIL分析物の最大のMIRMトランジションおよび最小のMIRMトランジションの分析物濃度当量は、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約1100、少なくとも約1200、少なくとも約1300、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600、少なくとも約1700、少なくとも約1800、少なくとも約1900、または少なくとも約2000倍異なる。
【0022】
いくつかの局面において、2つの選択したMIRMトランジションの計算した理論上の同位体存在率は、少なくとも0.01%、少なくとも0.05%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも1.5%、少なくとも2%、少なくとも2.5%、少なくとも3%、少なくとも3.5%、少なくとも4%、少なくとも4.5%、少なくとも5%、少なくとも5.5%、少なくとも6%、少なくとも6.5%、少なくとも7%、少なくとも7.5%、少なくとも8%、少なくとも8.5%、少なくとも9%、少なくとも9.5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも約50%離れている。
【0023】
いくつかの局面において、SIL分析物は、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、または0.1%未満の非標識分析物を含む。
【0024】
いくつかの局面において、標識は、H、13C、15N、33S、34S、36S、17O、または18Oである。
【0025】
本開示の方法は、分析物(分子)をイオン化するためのイオン源が用いられる質量分析に関する。いくつかの局面において、1つ以上のプロトン化または脱プロトン化分子は、1価に帯電している、2価に帯電している、3価に帯電している、またはそれ以上である。いくつかの局面において、質量分析計は、Q1、Q2、およびQ3を含むトリプル四重極質量分析計である。いくつかの局面において、Q1およびQ3について用いられる分解能は単位分解能である。別の局面において、Q1およびQ3について用いられる分解能は、単位分解能よりも高い。別の局面において、Q1およびQ3について用いられる分解能は異なる。別の局面において、Q1について用いられる分解能は、Q3の単位分解能よりも高い。
【0026】
いくつかの局面において、サンプル調製の前または間に、サンプル内検量線(ISCC)組成物(すなわち、既知の量のSIL分析物)を加える。
【0027】
本開示の方法は、特に外部検量線を機器上で実行する必要がない場合に、非常に有効であり、必要な機器時間の合計を改善する。いくつかの局面において、当該方法は機器の総実行時間を減少させる。いくつかの局面において、外部検量線を用いない。いくつかの局面において、分析物はバイオマーカーである。いくつかの局面において、分析物は代謝物である。いくつかの局面において、分析物は小分子薬物である。いくつかの局面において、分析物はペプチドである。いくつかの局面において、分析物はタンパク質である。
【0028】
本開示の方法は、生物源などの、様々な供給源からの分析物の検出または定量に有効である。いくつかの局面において、サンプルは、血清、組織、生検組織、ホルマリン固定/パラフィン包埋(FFPE)、血漿、唾液、脳脊髄液、涙、尿、滑液、乾燥血液スポット、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0029】
いくつかの局面において、分析物はCD73またはその一部である。いくつかの局面において、SIL分析物はV[Ile(1315N)]YPAVEGR(配列番号:1)である。いくつかの局面において、分析物はPD-1またはその一部である。いくつかの局面において、SIL分析物はLAAFPED[Arg(1315)](配列番号:2)である。いくつかの局面において、分析物はPD-L1またはその一部である。いくつかの局面において、SIL分析物はLQDAG[Val(1315N)]YR(配列番号:3)である。いくつかの局面において、分析物はダクラタスビルである。いくつかの局面において、SIL分析物は13 15-ダクラタスビルである。
【0030】
本開示の方法は、サンプル内検量線(ISCC)を含む組成物を開示し、ここで、ISCCは、安定同位体標識分析物の多重同位体分子種反応モニタリング(MIRM)によって構築される。
【0031】
本開示の方法はまた、研究サンプルにおける少なくとも1つの分析物の濃度を定量するための方法であって、ブランクマトリックスサンプルに、1つ以上の既知の分量の1つ以上の分析物を加えて、添加したそれぞれの分析物の多重同位体分子種反応モニタリング(MIRM)によって、1つ以上の1サンプル多点外部検量線(OSMECC)を作成することを含む方法を開示し、ここで、分析物のMIRMは、分析物の多重同位体トランジションの多重反応モニタリングを意味し;それぞれの分析物のOSMECCは、MIRMトランジションにおける、計算した理論上の同位体存在率(分析物濃度当量)と、対応するMIRMトランジションにおける、測定したタンデム質量分析(MS/MS)ピーク面積(または、アッセイに内部標準が用いられる場合は、ピーク面積比)との関係に基づいて、ブランクマトリックスサンプル中で構築され;研究サンプルにおける少なくとも1つの濃度は、確立したOSMECC、および液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)工程から、分析物について測定されたピーク面積(または、アッセイに内部標準が用いられる場合は、ピーク面積比)を用いて定量し;分析物のピーク面積比は、分析物のピーク面積を内部標準のピーク面積で割ったものであり;タンデム質量分析は、多重反応モニタリングモードで操作する。
【0032】
いくつかの局面において、分析物のそれぞれのMIRMトランジションについての分析物濃度当量は、分析物または分析物の天然に存在する同位体種の、対応するMIRMトランジションの理論上の同位体存在率から計算し、ここで、理論上の同位体存在率は、Analytical Chemistry, 2012, 84(11), 4844-4850において公開されている方法を用いて計算し、当該方法は、分析物のニュートラルロスおよび娘イオンの同位体分布に基づいて計算する。
【0033】
いくつかの局面において、単位分解トリプル四重極質量分析計について、分析物および分析物の天然に存在する同位体分子種の(p+Z+α)/Zから(d+Z+β)/ZのそれぞれのMIRMトランジション(m/z)についての理論上の同位体存在率を、式(I):
(p+Z+α)/Z→(d+Z+β)/ZのMIRMトランジションにおける同位体存在率=
[(d+Z+β)の質量における、娘イオンの相対同位体分布]*
[n+(α-β)の質量におけるニュートラルロスの相対同位体分布]
(I)
[式中、
m/zは質量電荷比であり
pは分析物の親分子のモノアイソトピック質量であり
は親イオンの電荷数であり
dは分析物の娘フラグメントのモノアイソトピック質量であり
は娘イオンの電荷数であり
nは分析物のニュートラルロスのモノアイソトピック質量であり
p=d+n
αおよびβは整数であり、α0、β0、およびαβ
およびZは整数である]
に基づいて計算する。
【0034】
いくつかの局面において、同位体分布計算機は、worldwideweb.sisweb.com/mstools/isotope.html(2019年11月10日にアクセス)である。いくつかの局面において、最大分析物濃度当量(ISCCの「定量上限」または「ULOQ」)を、式(II):
(M/V)*ng/mL (IV)
[式中、
M(ng)は、サンプルに添加した分析物の総量であり;
Vは分析物を添加する前のサンプル体積(mL)である]
に基づいて計算する。
【0035】
いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける、1つ以上の他の分析物濃度当量は、式(III):
*ULOQ(ng/mL) (III)
[式中、Iは、分析物または分析物の天然に存在する同位体分子種のMIRMトランジションの、計算した理論上の同位体存在率である]
に基づいて計算する。
【0036】
いくつかの局面において、分析物はタンパク質またはペプチドである。いくつかの局面において、分析物の親イオンは、少なくとも約3個のアミノ酸、少なくとも約4個のアミノ酸、少なくとも約5個のアミノ酸、少なくとも約6個のアミノ酸、少なくとも約7個のアミノ酸、少なくとも約8個のアミノ酸、少なくとも約9個のアミノ酸、少なくとも約10個のアミノ酸、少なくとも約11個のアミノ酸、少なくとも約12個のアミノ酸、少なくとも約13個のアミノ酸、少なくとも約14個のアミノ酸、少なくとも約15個のアミノ酸、少なくとも約16個のアミノ酸、少なくとも約17個のアミノ酸、少なくとも約18個のアミノ酸、少なくとも約19個のアミノ酸、または少なくとも約20個のアミノ酸を含む。いくつかの局面において、分析物の親イオンは、4~20個のアミノ酸、4~15個のアミノ酸、5~15個のアミノ酸、4~14個のアミノ酸、5~14個のアミノ酸、5~13個のアミノ酸、5~12個のアミノ酸、6~15個のアミノ酸、6~14個のアミノ酸、6~13個のアミノ酸、6~12個のアミノ酸、6~11個のアミノ酸、6~10個のアミノ酸、6~9個のアミノ酸、6~8個のアミノ酸、7~15個のアミノ酸、7~14個のアミノ酸、7~13個のアミノ酸、7~12個のアミノ酸、7~11個のアミノ酸、7~10個のアミノ酸、または7~9個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む。いくつかの局面において、分析物は抗体である。いくつかの局面において、分析物は融合タンパク質である。いくつかの局面において、分析物はPD-1、PD-L1、CD73、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CD73抗体、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの局面において、分析物は小分子である。
【0037】
いくつかの局面において、小分子は、少なくとも約100g/mol、少なくとも約200g/mol、少なくとも約300g/mol、少なくとも約400g/mol、少なくとも約500g/mol、少なくとも約600g/mol、少なくとも約700g/mol、少なくとも約800g/mol、少なくとも約900g/mol、少なくとも約1000g/mol、少なくとも約1100g/mol、少なくとも約1200g/mol、少なくとも約1300g/mol、少なくとも約1400g/mol、少なくとも約1500g/mol、少なくとも約1600g/mol、少なくとも約1700g/mol、少なくとも約1800g/mol、少なくとも約1900g/mol、または少なくとも約2000g/molのモル質量を有する。いくつかの局面において、MIRMトランジションの数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20である。いくつかの局面において、MIRMトランジションの数は2~20の間である。いくつかの局面において、最大のMIRMおよび最小のMIRMの分析物濃度当量は、少なくとも約10、少なくとも約100、少なくとも約200、少なくとも約300、少なくとも約400、少なくとも約500、少なくとも約600、少なくとも約700、少なくとも約800、少なくとも約900、少なくとも約1000、少なくとも約1100、少なくとも約1200、少なくとも約1300、少なくとも約1400、少なくとも約1500、少なくとも約1600、少なくとも約1700、少なくとも約1800、少なくとも約1900、または少なくとも約2000倍異なる。いくつかの局面において、2つの選択したMIRMトランジションの計算した理論上の同位体存在率は、少なくとも0.01%、少なくとも0.05%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも1.5%、少なくとも2%、少なくとも2.5%、少なくとも3%、少なくとも3.5%、少なくとも4%、少なくとも4.5%、少なくとも5%、少なくとも5.5%、少なくとも6%、少なくとも6.5%、少なくとも7%、少なくとも7.5%、少なくとも8%、少なくとも8.5%、少なくとも9%、少なくとも9.5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも約50%離れている。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1図1は、例として、PD-L1の代理ペプチドを使用する、MIRM-ISCC-MS/MS方法論のスキーム図を示す。SIL分析物の量は、適切な検量線を作成するために、分析物の予想濃度に基づいて追加する。ライン1は、SIL分析物MIRMチャンネル1を示す(m/z:464.2→686.4)、同位体存在率100%:100ng/mLのSIL分析物濃度(99.4ng/mLの分析物濃度当量);ライン2は、SIL分析物MIRMチャンネル2を示す(m/z:464.7→687.4)、同位体存在率30.0%:30.0ng/mLのSIL分析物濃度(29.8ng/mLの分析物濃度当量);ライン3は、SIL分析物MIRMチャンネル3を示す(m/z:465.2→688.4)、同位体存在率6.63%:6.63ng/mLのSIL分析物濃度(6.59ng/mLの分析物濃度当量);ライン4は、分析物選択反応モニタリング(SRM)チャンネルを示す(m/z:461.2→680.4)、測定濃度:56.8ng/mL。
【0039】
図2図2Aおよび2Bは、SIL CD73ペプチドの10個のMIRMチャンネル、およびCD73ペプチドの1個の選択反応モニタリング(SRM)チャンネルの体表的なクロマトグラムを示す。これらの10個のMIRMチャンネルは、CD73の定量分析のためのISCCを構築するために用いられる。図2Aは縮小図であり;図2Bは拡大図である。
【0040】
図3図3は、1サンプル多点外部検量線(OSMECC)および同位体サンプル希釈についての、LC-MS/MSバイオアナリシスワークフローを示す。
【0041】
図4図4Aおよび4B.図4Aは、ダクラタスビルの測定について、マルチサンプル外部検量線、1サンプル多点外部検量線(OSMECC)、サンプル内検量線(ISCC)、および同位体サンプル希釈についてモニターした、MRMおよびMIRMトランジションの概要を示す。図4Bは、使用される2つのマルチサンプル外部検量線および2つの1サンプル多点外部検量線、並びに2つのISCCについて、検量線の性能を示す。
【0042】
図5図5Aおよび5B.図5Aは、マルチサンプル外部検量線、1サンプル多点外部検量線、およびISCCを用いて定量化した、QCサンプルについてのデータの正確性および精度を示す。検量線範囲内の濃度(1、3、40、500、および800ng/mL)を有するQCサンプル、および検量線範囲を超える濃度(5000および20000ng/mL)を有するQCサンプルの両方を試験した。しかしながら、5000および20000ng/mLのQCサンプルは、サンプル調製の間に、検量線範囲内に物理的に希釈した(それぞれ、100および200倍)。図5Bは、同位体サンプル希釈を用いて定量したQCサンプルについてのデータの正確性および精度を示す。検量線範囲を超える濃度(5000、20000、および50000ng/mL)のQCサンプルのみを試験した。
【0043】
発明の詳細な説明
本開示は、LC-MS/MSを介して分析物の濃度を定量するための、非常に効果的なアプローチを提供する。具体的には、当該アプローチは、サンプル中の分析物の濃度を測定するために、安定標識同位体(SIL)を用いたサンプル内検量線(ISCC)を用いる。本開示の特徴は、外部検量線の代わりに、ISCCを用いることによって、LC-MS/MS機器の総実行時間を減少させることができる。さらに、ISCCはサンプル自体の中に存在するため、本開示の方法は、外部検量線を作成するために本物の生物学的マトリックスを用いる必要がなくなり、定量的なLC-MS/MSバイオアナリシス工程が簡素化される。
【0044】
実施例に示されるように、当該アプローチは、同位体トランジションのMIRMモニタリングを介して、分析物濃度を定量化し、濃度曲線を生成するのに有効である。いくつかの局面において、本開示は、分析物を含むサンプルにSIL分析物を添加する方法を提供し、ここで、分析物は、SIL分析物の「多重同位体分子種反応モニタリング」または「MIRM」から生成したISCCによって定量化することができる。いくつかの局面において、本開示は、安定同位体標識タンパク質またはタンパク質フラグメントを用いることによって、タンパク質分析物を解析する方法を提供する。いくつかの局面において、本開示は、抗体の濃度を定量する方法を提供する。別の局面において、本開示は、小分子の安定同位体標識バリアントを用いて、小分子を解析する方法を提供する。
【0045】
I.用語
本明細書において用いられる用語「および/または」は、他の有無に関わらず、2つの特定の特徴または構成要素のそれぞれについての、具体的な開示であると解釈されるべきである。したがって、本明細書において「Aおよび/またはB」などの句において用いられる用語「および/または」は、「AおよびB」、「AまたはB」、「A」(単体)、および「B」(単体)を含むことが意図される。同様に、「A、B、および/またはC」などの句において用いられる用語「および/または」は、以下の局面のそれぞれを含むことが意図される:A、B、およびC;A、B、またはC;AまたはC;AまたはB;BまたはC;AおよびC;AおよびB;BおよびC;A(単体);B(単体);およびC(単体)。
【0046】
局面が「含む」という言葉によって本明細書において記載されている場合は常に、「~から成る」および/または「本質的に~から成る」に関して記載されている別の類似の局面もまた提供されることが理解される。
【0047】
別段の定義がない限り、本明細書において用いられる全ての技術的および科学的用語は、本開示が関連する技術分野における当業者によって一般に理解されるのと同じ意味を有する。例えば、the Concise Dictionary of Biomedicine and Molecular Biology, Juo, Pei-Show, 2nd ed., 2002, CRC Press; The Dictionary of Cell and Molecular Biology, 3rd ed., 1999, Academic Press;および the Oxford Dictionary Of Biochemistry And Molecular Biology, Revised, 2000, Oxford University Pressは、本開示において使用される多くの用語についての一般的な辞書を当業者に提供する。
【0048】
単位、接頭辞、および記号は、国際単位系(SI)で受け入れられている形式において示される。数値範囲は、範囲を定義する数値を含む。本明細書において提供される見出しは、本開示の様々な局面を限定するものではなく、本開示の様々な局面は、明細書全体を参照することによって把握することができる。したがって、直下において定義される用語は、明細書全体を参照することによって、さらに完全に定義される。
【0049】
選択肢の使用(例えば、「または」)は、選択肢の1つ、両方、またはそれらの任意の組み合わせのいずれかを意味することが理解されるべきである。本明細書において用いられる不定冠詞「a」または「an」は、記載されるまたは列挙される任意の要素の「1つ以上」を意味することが理解されるべきである。
【0050】
用語「約」または「本質的に~から成る」は、当業者によって決定される特定の値または組成について、許容される誤差範囲内である、値または組成をいい、これは、当該値または組成の測定方法または決定方法、すなわち検出系の制限に部分的に依存するであろう。例えば、「約」または「本質的に~から成る」は、当技術分野における実施ごとに、1以内または1を超える標準偏差であることを意味しうる。あるいは、「約」または「本質的に~から成る」は、最大10%の範囲を意味しうる。さらに、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、当該用語は、最大で1桁違いまたは最大で5倍の値を意味しうる。特定の値または組成が本願および特許請求の範囲に示されている場合、特に言及されない限り、「約」または「本質的に~から成る」の意味は、その特定の値または組成物の許容誤差範囲内であると推測されるべきである。
【0051】
本明細書で用いられる、任意の濃度範囲、パーセント範囲、比率範囲、または整数範囲は、特に言及されない場合、列挙された範囲内の任意の整数値、および適切な場合、その分数(整数の10分の1および100分の1など)を含むことが理解されるべきである。
【0052】
本明細書で用いられる「バイオマーカー」は、タンパク質、ペプチド、プロテオグリカン、糖タンパク質、リポタンパク質、炭水化物、脂質、核酸(例えば、cDNAまたは複製DNAなどのDNA、またはmRNAなどのRNA)、有機または無機化学物、天然または合成ポリマー、小分子(例えば、代謝物)、または生物学的サンプルに存在する、または由来する、前記のいずれかの識別分子もしくは識別フラグメント、または正常な生物学的プロセス、病原性プロセス、または治療的介入に対する薬学的応答、またはそれらの症状として客観的に測定し評価される、任意の他の特徴などの、実質的に任意の検出可能な化合物である。
【0053】
本明細書において用いられる「代謝物」は、代謝の任意の中間体および生成物をいう。薬物代謝物の存在は、人がその代謝物の「親」薬物を使用したことを示す、信頼できる指標である。代謝物はバイオマーカーでありうる。
【0054】
本明細書において用いられる「代謝プロファイル」は、別のサンプルまたはサンプル群から得られた参照値またはプロファイルとの比較に用いることができる、代謝物の定量結果の任意の規定の値の一式をいう。
【0055】
本明細書において用いられる用語「同位体分子種」は、少なくとも1つの原子が異なる中性子の数を有する点が親分子と異なる組成物をいう。
【0056】
本明細書において用いられる用語「分析物」は、分析または定量化が望まれる混合物中に存在する、任意の分子またはタンパク質(天然または組換えのいずれか)を含む、その最も広い意味で用いられる。そのような分析物としては、限定されないが、小分子、酵素、ホルモン、増殖因子、サイトカイン、ペプチド、免疫グロブリン(例えば、抗体)、および/または任意の融合タンパク質が挙げられる。
【0057】
本明細書で用いられる用語「同位体」および「同位体分子種」は同義で用いられ、親分子と比較して、異なる同位体組成を有する分子をいう。
【0058】
本明細書で用いられる用語「分析物当量」または「分析物濃度当量」は、SIL分析物と分析物の質量の差を調節した後の、サンプル内検量線(ISCC)を構築するのに用いられる、SIL分析物の計算された濃度をいう。ISCC検量線は、それぞれのMIRMのピーク面積の決定と並行して、SIL分析物のMIRM測定に基づいて構築される。計算された濃度曲線は、同位体存在率について調整しながら、SIL分析物と非標識分析物との質量の差に起因する、これらのわずかな質量の差を考慮して調整する必要がある。代表的なISCC濃度曲線は、図1に示され、ここで、SIL分析物濃度は、質量と同位体存在率の差を考慮して調整される。濃度曲線の最大濃度(定量上限「ULOQ」)について、分析物当量を計算するためのサンプルの調整は、図1において点1として表され、式(II):
(M/V)*(M分析物/MSIL分析物)ng/mL (II)
[式中、
M(ng)は、サンプルに添加したSIL分析物の総量であり;
Vは、SIL分析物を添加する前のサンプル体積(mL)であり;
分析物は、分析物の分子量であり;
SIL分析物は、SIL分析物の分子量である]
に基づいて計算する。
【0059】
例えば、SIL分析物が100ng/mLの既知の濃度で添加され、MIRMが100%の同位体存在率を有する場合、図1においてデータ点1として示されるように、分析物濃度当量は99.4ng/mLであり、これはULOQでもある。濃度曲線の残りの分析物濃度当量についてのサンプルの調整は、図1の点2および3に示され、式(III):
*ULOQ(ng/ml) (III)
[式中、Iは、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種のMIRMトランジションの計算した理論上の同位体存在率である]
に基づいて計算する。
【0060】
本明細書で用いられる用語「親イオン」または「前駆体イオン」は、解離してフラグメントを生成しうる帯電した分子部分をいい、その1つ以上は帯電し、1つ以上は中性種でありうる。親イオンは、分子イオンまたは分子イオンの帯電フラグメントでありうる。
【0061】
本明細書において用いられる用語「娘イオン」は、特定の親(前駆体)イオンの反応の帯電した生成物をいう。一般に、そのようなイオンは、特定の前駆体イオンと直接関係があり、前駆体イオンの固有の状態に関係し得る。反応はフラグメント化を含む必要はないが、例えば、帯電する電荷の数の変化を伴う場合がある。したがって、フラグメントイオンは娘イオンであるが、全ての娘イオンがフラグメントイオンであるとは限らない。
【0062】
本明細書で用いられる用語「ニュートラルロス」は、質量分析計の動作中の特定の親(前駆体)イオンの反応中に失われる、中性電荷の質量をいう。
【0063】
本明細書において用いられる用語「非ペプチド分子」は、最も広い意味を意図し、小分子および小分子薬物を含みうる。「小分子」または「小分子薬物」は、一般に約1000-2000g/mol未満の分子量を有する、有機、無機、または有機金属化合物を指すために、本明細書において広く用いられるが、この特徴は、本発明の目的を限定することを意図するものではない。「小分子」はまた、実験室で合成された、または天然に存在する、非ペプチド性、非オリゴマー性の有機化合物をいう場合もある。「小分子」の例としては、限定されないが、タキソール、クロピドグレル、およびアピキサバンが挙げられる。小分子の別の例としては、ダパグリフロジン、サクサグリプチン、テムサビル(temsavir)、レジパスビル、ソフォスブビル、およびロスバスタチンが挙げられる。
【0064】
用語「クロマトグラフィー」は、混合物中に存在する他の分子(例えば、夾雑物)から分子(例えば、抗体)を分離する、任意の種類の技術をいう。通常、移動相の影響下で、または結合および溶出プロセスにおいて、定常溶媒を介して混合物の個々の分子が移動する速度の差の結果として、分子は他の分子(例えば、夾雑物)から分離される。用語「マトリックス」または「クロマトグラフィーマトリックス」は、本明細書において同義で用いられ、分離プロセスにおいて、分子を混合物中に存在する他の分子から分離する、任意の種類の吸着剤、樹脂、または固相をいう。限定されない例としては、カラムまたはカートリッジにおいて用いることができる、粒子状、一枚岩状、または繊維状樹脂ならびに膜が挙げられる。マトリックスを形成する物質の例としては、多糖(アガロースおよびセルロースなど);並びにシリカ(例えば、制御細孔ガラス)、ポリ(スチレンジビニル)ベンゼン、ポリアクリルアミド、セラミック粒子、および上記のいずれかの誘導体などの、他の機械的に安定なマトリックスが挙げられる。本開示の方法に適切な典型的なマトリックスの種類の例は、カチオン交換樹脂、親和性樹脂、アニオン交換樹脂、または混合相樹脂である。「リガンド」は、クロマトグラフィーマトリックスに結合し、マトリックスの結合特性を決定する官能基である。「リガンド」の例としては、限定されないが、イオン交換基、疎水性相互作用基、親水性相互作用基、チオ親和性(thiophilic)相互作用基、金属親和性基、親和性基、生体親和性基、および混合相基(前記の組み合わせ)が挙げられる。本明細書において用いることができるいくつかの好ましいリガンドとしては、限定されないが、スルホプロピル、スルホン酸などの強カチオン交換基;塩化トリメチルアンモニウムなどの強アニオン交換基;カルボン酸などの弱カチオン交換基;N5NジエチルアミノまたはDEAなどの弱アニオン交換基;フェニル、ブチル、プロピル、ヘキシルなどの疎水性相互作用基;およびタンパク質A、タンパク質G、およびタンパク質Lなどの親和基が挙げられる。本開示をさらに容易に理解できるようにするために、いくつかの用語を最初に定義する。本明細書において用いられるように、本明細書で明示的に規定される場合を除いて、以下のそれぞれの用語は、以下に記載される意味を有するものとする。さらなる定義は、明細書を通して記載される。
【0065】
用語「親和性クロマトグラフィー」は、分子(例えば、Fc領域含有分子または抗体)が、分子に特異的なリガンドに特異的に結合する、タンパク質分離技術をいう。そのようなリガンドは一般に、生体特異性リガンドという。いくつかの局面において、生体特異性リガンド(例えば、タンパク質A、またはその機能的バリアント)は、クロマトグラフィーマトリックス物質に共有結合し、溶液がクロマトグラフィーマトリックスに接触している時に、溶液中の分子に接触可能である。分子は一般に、クロマトグラフィーステップの間、生体特異性リガンドに特異的な結合親和性を有するが、混合物中の他の溶質および/またはタンパク質は、リガンドに感知可能な程度にまたは特異的に、結合しない。固定化されたリガンドへの分子の結合は、夾雑タンパク質またはタンパク質不純物が、クロマトグラフィーマトリックスを通過することを可能にし、その間分子は、固相物質の固定化されたリガンドに特異的に結合したままである。次いで、特異的に結合した分子は、適切な条件下(例えば、低pH、高pH、高塩、競合リガンドなど)において、固定化リガンドから活性型で除去され、以前にカラムを通過することができた夾雑タンパク質またはタンパク質不純物を含まない、溶出緩衝液と共にクロマトグラフィーカラムを通過する。それぞれの特異的な結合タンパク質、例えば抗体を精製するために、任意の成分をリガンドとして用いることができる。しかしながら、本開示のさまざまな方法において、Fc領域含有標的タンパク質について、タンパク質Aがリガンドとして用いられる。標的タンパク質(例えば、Fc領域含有タンパク質)の生体特異性リガンド(例えば、タンパク質A)からの溶出条件は、当業者によって容易に決定することができる。いくつかの局面において、タンパク質Gまたはタンパク質Lまたはその機能的バリアントは、生体特異性リガンドとして用いられうる。いくつかの局面において、タンパク質Aなどの生体特異性リガンドは、Fc領域含有タンパク質への結合、洗浄、または生体特異性リガンド/標的タンパク質結合体の再平衡化について、5~9のpH範囲で用いられ、次いで少なくとも1つの塩を含有する、約4以下のpHを有する緩衝液によって溶出する。
【0066】
用語「精製する」、「分離する」、または「単離する」は、本明細書において同義で用いられ、分子および1つ以上の不純物を含む組成物またはサンプルからの、分子の純度を高めることをいう。一般に、分子の純度の程度は、組成物からの少なくとも1つの不純物を(完全にまたは部分的に)除去することによって増加する。
【0067】
本明細書において、クロマトグラフィーに関連して用いられる用語「クロマトグラフィーカラム」または「カラム」は、しばしば、クロマトグラフィーマトリックスまたは樹脂が充填された、シリンダーまたは中空柱の形態の容器をいう。クロマトグラフィーマトリックスまたは樹脂は、精製に用いられる物理的および/または化学的特性を提供する物質である。
【0068】
用語「イオン交換」および「イオン交換クロマトグラフィー」は、対象の溶質が、混合物中の溶質不純物または夾雑物よりも、多かれ少なかれ、帯電した化合物と非特異的に相互作用するように、対象のイオン化可能な溶質(例えば、混合物中の分子)は、固相イオン交換物質に結合した(例えば、共有結合によって)、反対に帯電したリガンドと、適切なpHおよび伝導率の条件下で相互作用する、クロマトグラフィー工程をいう。混合物中の夾雑溶質は、イオン交換物質のカラムから洗い流すことができ、あるいは、対象の溶質よりも早くまたは遅く、樹脂に結合させるか、または樹脂から排除する。「イオン交換クロマトグラフィー」としては、具体的には、カチオン交換(CEX)、アニオン交換(AEX)、および混合相クロマトグラフィーが挙げられる。
【0069】
「カチオン交換樹脂」または「カチオン交換膜」は、負に帯電し、固相の上または通過した水溶液中のカチオンと交換するための遊離カチオンを有する、固相をいう。カチオン交換樹脂を形成するのに適切な固相に結合した、任意の負に帯電したリガンド、例えば、カルボキシレート、スルホネート、および以下に記載される他のものを用いることができる。市販のカチオン交換樹脂としては、限定されないが、例えば、スルホネートに基づく基(例えば、GE Healthcare からのMonoS, MiniS, Source 15S および 30S, SP SEPHAROSE(登録商標) Fast Flow, SP SEPHAROSE(登録商標) High Performance, TosohからのTOYOPEARL(登録商標) SP-650S および SP-650M, BioRadからのMACRO-PREP(登録商標) High S, Pall Technologies からのCeramic HyperD S, TRISACRYL(登録商標) M および LS SP および Spherodex LS SP);スルホエチルに基づく基(例えば、EMDからのFRACTOGEL(登録商標) SE, Applied BiosystemsからのPOROS(登録商標) S-10 および S-20);スルホプロピルに基づく基(例えば、Tosoh からのTSK Gel SP 5PW および SP-5PW-HR, Life TechnologiesからのPOROS(登録商標) HS-20, HS 50, および POROS(登録商標) XS);スルホイソブチルに基づく基(例えば、EMDからのFRACTOGEL(登録商標) EMD SO3 );スルホキシエチルに基づく基(例えば、WhatmanからのSE52, SE53 および Express-Ion S);カルボキシメチルに基づく基(例えば、GE HealthcareCからのM SEPHAROSE(登録商標) Fast Flow, Biochrom Labs Inc.からのHydrocell CM, BioRadからのMACRO-PREP(登録商標) CM, Pall TechnologiesからのCeramic HyperD CM, TRISACRYL(登録商標) M CM, TRISACRYL(登録商標) LS CM, MilliporeMからのMatrx CELLUFINE(登録商標) C500 および C200, WhatmanCからのM52, CM32, CM23 および Express-Ion C, TosohからのTOYOPEARL(登録商標) CM-650S, CM-650M および CM-650C);スルホン酸およびカルボン酸に基づく基(例えば、J. T. BakerからのBAKERBOND(登録商標) Carboxy-Sulfon);カルボン酸に基づく基(例えば、J. T BakerからのWP CBX, Dow Liquid SeparationsからのDOWEX(登録商標). MAC-3, Sigma-AldrichからのAMBERLITE(登録商標) Weak Cation Exchangers, DOWEX(登録商標) Weak Cation Exchanger, および DIAION(登録商標) Weak Cation Exchangers, およびEMDからのFRACTOGEL(登録商標) EMD COO--);スルホン酸に基づく基(例えば、Biochrom Labs Inc.からのHydrocell SP, Dow Liquid SeparationsからのDOWEX(登録商標) Fine Mesh Strong Acid Cation Resin, J. T. BakerからのUNOsphere S, WP Sulfonic, SartoriusからのSARTOBIND(登録商標) S membrane, Sigma-AldrichからのAMBERLITE(登録商標) Strong Cation Exchangers, DOWEX(登録商標) Strong Cation および DIAION(登録商標) Strong Cation Exchanger);またはオルトフォスフェートに基づく基(例えば、WhatmanからのP11)を有するものが挙げられる。
【0070】
他のカチオン交換樹脂としては、Poros HS, Poros XS, カルボキシメチルセルロース, BAKERBOND ABXTM, アガロースに固定したスルホプロピルおよびアガロースに固定したスルホニル, MonoS, MiniS, Source 15S, 30S, SP SEPHAROSE(登録商標), CM SEPHAROSE(登録商標), BAKERBOND Carboxy-Sulfon, WP CBX, WP Sulfonic, Hydrocell CM, Hydrocel SP, UNOsphere S, Macro-Prep High S, Macro-Prep CM, Ceramic HyperD S, Ceramic HyperD CM, Ceramic HyperD Z, Trisacryl M CM, Trisacryl LS CM, Trisacryl M SP, Trisacryl LS SP, Spherodex LS SP, DOWEX Fine Mesh Strong Acid Cation Resin, DOWEX MAC-3, Matrex Cellufine C500, Matrex Cellufine C200, Fractogel EMD SO3-, Fractogel EMD SE, Fractogel EMD COO-, Amberlite Weak and Strong Cation Exchangers, Diaion Weak and Strong Cation Exchangers, TSK Gel SP-5PW-HR, TSK Gel SP-5PW, Toyopearl CM (650S, 650M, 650C), Toyopearl SP (650S, 650M, 650C), CM (23, 32, 52), SE(52, 53), P11, Express-Ion C, またはExpress-Ion Sが挙げられる。
【0071】
「アニオン交換樹脂」または「アニオン交換膜」は、正に帯電し、それらに結合する1つ以上の正に帯電したリガンドを有する、固相をいう。アニオン交換樹脂を形成するのに適切な、固相に結合した任意の正に帯電したリガンド、4級アミノ基などを用いることができる。市販のアニオン交換樹脂としては、Applied BiosystemsからのDEAEセルロース, POROS(登録商標) PI 20, PI 50, HQ 10, HQ 20, HQ 50, D 50, SartoriusからのSARTOBIND(登録商標) Q, MonoQ, MiniQ, Source 15Q および 30Q, Q, DEAE および ANX SEPHAROSE(登録商標) Fast Flow, Q SEPHAROSE(登録商標) High Performance, QAE SEPHADEX(登録商標) および FAST Q SEPHAROSE(登録商標) (GE Healthcare), J. T. BakerからのWP PEI, WP DEAM, WP QUAT, Biochrom Labs Inc.からのHydrocell DEAE および Hydrocell QA, BioradからのUNOsphere Q, MACRO-PREP(登録商標). DEAE および MACRO-PREP(登録商標) High Q, Pall TechnologiesからのCeramic HyperD Q, ceramic HyperD DEAE, TRISACRYL(登録商標) M および LS DEAE, Spherodex LS DEAE, QMA SPHEROSIL(登録商標) LS, QMA SPHEROSIL(登録商標). M および MUSTANG(登録商標) Q, Dow Liquid SeparationsからのDOWEX(登録商標) Fine Mesh Strong Base Type I および Type II Anion Resins および DOWEX(登録商標) MONOSPHER E 77, weak base anion, MilliporeからのINTERCEPT(登録商標) Q membrane, Matrex CELLUFINE(登録商標) A200, A500, Q500, および Q800, EMDからのFRACTOGEL(登録商標) EMD TMAE, FRACTOGEL(登録商標) EMD DEAE および FRACTOGEL(登録商標) EMD DMAE, Sigma-AldrichからのAMBERLITE(登録商標) weak strong anion exchangers type I および II, DOWEX(登録商標) weak and strong anion exchangers type I および II, DIAION(登録商標) weak and strong anion exchangers type I および II, DUOLITE(登録商標), TosohからのTSK gel Q および DEAE 5PW および 5PW-HR, TOYOPEARL(登録商標) SuperQ-650S, 650M および 650C, QAE-550C および 650S, DEAE-650M および 650C, WhatmanからのQA52, DE23, DE32, DE51, DE52, DE53, Express-Ion D または Express-Ion Q, およびSARTOBIND(登録商標) Q (Sartorius Corporation, New York, USA)が挙げられる。
【0072】
他のアニオン交換樹脂としては、POROS HQ, Q SEPHAROSE(登録商標) Fast Flow, DEAE SEPHAROSE(登録商標) Fast Flow, SARTOBIND(登録商標) Q, ANX SEPHAROSE(登録商標) 4 Fast Flow (high sub), Q SEPHAROSE(登録商標) XL, Q SEPHAROSE(登録商標) big beads, DEAE Sephadex A-25, DEAE Sephadex A-50, QAE Sephadex A-25, QAE Sephadex A-50, Q SEPHAROSE(登録商標) high performance, Q SEPHAROSE(登録商標) XL, Sourse 15Q, Sourse 30Q, Resourse Q, Capto Q, Capto DEAE, Mono Q, Toyopearl Super Q, Toyopearl DEAE, Toyopearl QAE, Toyopearl Q, Toyopearl GigaCap Q, TS gel SuperQ, TS gel DEAE, Fractogel EMD TMAE, Fractogel EMD TMAE HiCap, Fractogel EMD DEAE, Fractogel EMD DMAE, Macroprep High Q, Macro-prep-DEAE, Unosphere Q, Nuvia Q, PORGS PI, DEAE Ceramic HyperD, またはQ Ceramic HyperDが挙げられる。
【0073】
「質量分析」(「MS」または「mass-spec」)は、質量電荷比イオンの測定に用いられる分析技術である。これは、サンプルをイオン化し、異なる分子量のイオンを分離し、イオン流量の強度を測定することにより、その相対量を記録することによって達成する。一般的な質量分析計は3つの部位を含む:イオン源、質量分析計、および検出系。イオン源は、分析対象の物質(分析物)をイオン化する、質量分析計の一部である。次いで、イオン源を磁場または電場によって質量分析計に輸送し、そこで質量電荷比(m/z)に従ってイオンが分離される。多くの質量分析計は、タンデム質量分析(MS/MS)に2つ以上の質量分析計を用いる。検出器は、イオンが表面を通過するか、表面に衝突したときに誘導される電荷、または生成される電流を記録する。質量分析は、質量分析計によってm/zイオンをスキャンするときに、検出器において生成するシグナルを測定した結果である。
【0074】
本明細書において用いられる用語「サンプル内検量線(ISCC)」は、例えば、LC-MS/MS分析を実行するために伝統的に用いられる外部検量線ではなく、サンプルマトリックス自体に存在する検量線をいう。
【0075】
本明細書において用いられる用語「SIL分析物」または「安定同位体標識分析物」は、1つ以上の位置に同位体要素を含むように修飾された、分析物またはそのフラグメントである化合物をいう。最も一般的な標識技術は、安定な同位体として13Cまたは15Nを用い、化合物を1つ以上の位置で標識することができる。他の適切な安定な同位体としては、H、33S、34S、36S、17O、または18Oが挙げられる。
【0076】
用語「多重同位体分子種反応モニタリング」またはMIRMは、親イオンおよびその同位体分子種イオン(異なる中性子を有する親イオン)から、同じ開裂部位を有するその生成物イオンへの、特定の多重反応モニタリング(MRM)トランジションを追跡するために、質量分析計を調整することによる工程をいい、「MIRMチャンネル」または「MIRMトランジション」ともいう。さらに一般には、質量分析計を用いて単一のイオンのみを測定する場合、当該工程は選択反応モニタリング(SRM)とも呼ばれる。複数の反応がSRMによって測定され、複数の生成物イオンが1つ以上の前駆体イオンから生成される場合、この工程は多重反応モニタリング(MRM)として当技術分野において知られている。トリプル四重極質量分析計におけるSRM実験において、最初の四重極(Q1)は、サンプル中の予想される化学種の特定のm/z(前駆体イオン)のみを通過させるように設定されている。2番目の四重極(すなわち、Q2または衝突室)は、Q1を通過したイオンをフラグメント化するために用いられる。3番目の四重極(Q3)は、期待される化学種の予想されるフラグメント化生成物に対応する特定のm/zのイオン(フラグメントイオン)のみを検出器に通すように設定されている。多くのSRM実験が実行される場合、その工程は多重反応モニタリング(「MRM」)と呼ばれる。
【0077】
本明細書で用いられる用語「MIRMトランジション」、あるいは親-娘イオントランジション対「PDITP」は、追跡するm/z値の対をいう。簡単にいうと、娘イオンD(d+1.00783*Zのモノアイソトピック質量、Zは娘イオンの電荷数)およびニュートラルロスN(nのモノアイソトピック質量)を有する親イオンP(p+1.00783*Zのモノアイソトピック質量、Zは親イオンの電荷数であり、水素のモノアイソトピック質量は1.00783Daである)について、最も豊富な(100%)MIRMチャンネル(m/z)は、以下に示す通りである:
(p+1.00783*Z)/Z→(d+1.00783*Z)/Z
【0078】
最も一般的に用いられる電荷状態(1価、2価、および3価イオン)を用いる単位分解能トリプル四重極質量分析計について、このMIRMチャンネル(m/z)は、以下のように単純化することができる:
(p+Z)/Z→(d+Z)/Z
【0079】
隣接するMIRMチャンネル(m/z)における同位体存在率(m/z):
(p+Z+α)/Z→(d+Z+β)/Z
は、以下のように計算することができる:
(p+Z+α)/Z→(d+Z+β)/Zの隣接するMIRMチャンネルにおける同位体存在率=
[(d+Z+β)の質量における、娘イオンの相対同位体分布]*
[n+(α-β)の分子量におけるニュートラルロスの相対同位体分布]
[式中、
(1)p=d+n
(2)αおよびβは整数であり、それらはそれぞれ、親イオンおよび娘イオンにおけるさらなる中性子の数であり、α0、β0、およびαβであり
(3)ZおよびZは整数であり、
(4)分子の同位体分布は、オンライン計算機(worldwideweb.sisweb.com/mstools/isotope.html, 2019年11月10日にアクセス)を用いて得ることができ、
(5)それぞれd(α=0)およびn(α-β=0)の質量において、娘イオンおよびニュートラルロスの相対同位体分布は100%である]。
【0080】
αおよびβの異なる組み合わせを用いることによって、(p+Z+α)/Z→(d+Z+β)/Zの異なる隣接するMIRMチャンネル(m/z)における同位体存在率を正確に計算し測定することができる。
【0081】
本開示の様々な局面は、以下のサブセクションにおいてさらに詳細に説明する。
【0082】
II.定量方法
本開示は、多重同位体分子種反応モニタリング-サンプル内検量線補正-LC-MS/MS(MIRM-ISCC-LC-MS/MS)法に関し、これは、外部検量線を用いることなく、それぞれの個々のサンプルを即座に正確に測定することを可能にし、それによって本物の生物学的マトリックスを用いる必要がなくなり、定量的LC-MS/MSバイオアナリシスプロセスを単純化し、機器時間が大幅に短縮される。MIRM-ISCC-LC-MS/MS法は、創薬および開発における通常の薬物動態(PK)サンプル分析に適用することができるが、この方法は、例えばバイオマーカー測定および定量的プロテオミクスなどの、本物のマトリックスがほとんど利用できない場合、および、例えば臨床診断研究室における臨床診断などの、低スループットと長い転換時間が、LC-MS/MS技術の使用を妨げる主な問題である場合、および、例えば新鮮な凍結FFPE組織分析などの、検量線作成が厄介である場合について、特に有用である。さらに、ISCCはまた、ブランクマトリックスにおける既知量の非標識分析物をスパイクすることによって、外部検量線として使用することができ、それによって外部検量線は1つのサンプルのみにおいて作成することができ、外部検量線のために複数のサンプルを調製する必要がない。
【0083】
通常、分析物の最も豊富なMIRMチャンネルは、定量分析のためにLC-MS/MSアッセイにおいてモニターする。元素の天然に存在する同位体によって、最も豊富なMIRMチャンネルにおいて観察されるMS/MS応答に加えて、最も豊富なMIRMチャンネルに隣接する同位体MIRMチャンネルにおける同位体存在率は、LC-MS/MSによって正確に計算し、測定することができる。簡単にいえば、娘イオンD(d+1.00783*Zのモノアイソトピック質量、Zは娘イオンの電荷数)およびニュートラルロスN(nのモノアイソトピック質量)を有する、親イオンP(p+1.00783*Zのモノアイソトピック質量、Zは親イオンの電荷数であり、水素のモノアイソトピック質量は1.00783Da)について、最も豊富な(100%)MIRMチャンネル(m/z)は、以下に示す通りである:
(p+1.00783*Z)/Z→(d+1.00783*Z)/Z
【0084】
最も一般的に用いられる電荷状態(1価、2価、および3価イオン)を用いる単位分解能トリプル四重極質量分析計について、このMIRMチャンネル(m/z)は、以下のように単純化することができる:
(p+Z)/Z→(d+Z)/Z
【0085】
隣接するMIRMチャンネル(m/z)における同位体存在率:
(p+Z+α)/Z→(d+Z+β)/Z
は、以下のように計算することができる:
(p+Z+α)/Z→(d+Z+β)/Zの隣接するMIRMチャンネルにおける同位体存在率=
[(d+Z+β)の質量における、娘イオンの相対同位体分布]*
[n+(α-β)の分子量におけるニュートラルロスの相対同位体分布]
[式中、
(1)p=d+n
(2)αおよびβは整数であり、それらはそれぞれ親イオンおよび娘イオンにおけるさらなる中性子の数であり、α0、β0、およびαβであり
(3)ZおよびZは整数であり、
(4)分子の同位体分布は、オンライン計算機(worldwideweb.sisweb.com/mstools/isotope.html(2019年11月10日アクセス))を用いて得ることができ、
(5)それぞれd(α=0)およびn(α-β=0)の質量において、娘イオンおよびニュートラルロスの相対同位体分布は100%である]
【0086】
αおよびβの異なる組み合わせを用いることによって、(p+Z+α)/Z→(d+Z+β)/Zの異なる隣接するMIRMチャンネル(m/z)における同位体存在率を正確に計算し測定することができる。最も豊富なMIRMチャンネル(α=0およびβ=0)から最も少ないMIRMチャンネルへの同位体存在率は、5~6桁高くなりうる。理論的には、これらの同位体存在率が娘イオンおよびニュートラルロスの異なる同位体の組み合わせから生じ、これらが「同一の」物理化学的性質を有するため、全範囲にわたり、隣接するMIRMチャンネルの全てにおいて、MS/MS応答(ピーク面積)および計算した理論上の同位体存在率の間には、線形関係が存在するはずである。しかしながら、この線形関係は、質量分析計の検出限界、並びにほとんどの質量分析計の線形範囲によって制限を受ける。この線形関係を維持するために、SIL分析物について用いられる全てのMIRMチャンネル、および分析物について用いられるSRMチャンネルに関して、滞留時間、衝突エネルギー(CE)、およびデクラスタリングポテンシャル(DP)など、同じ質量分析計パラメーターを設定する必要がある。
【0087】
本方法は、定量LC-MS/MSバイオアナリシスのために、多重同位体分子種反応モニタリング(MIRM)チャンネルにおける同位体存在率を用いて、各研究サンプルにおいてサンプル内検量線(ISCC)を構築する、完全に新しい方法を実証する。小分子、ペプチド、タンパク質、バイオマーカー、定量プロテオミクス、臨床診断研究、および他の分野での定量分析における使用などの、MIRM-ISCC-LC-MS/MS法の多くの潜在的な応用が存在する。
【0088】
同位体希釈原理を用いた、LC-MSプロテオミクスにおける絶対定量は、各研究サンプルに、既知量のSILペプチド(AQUAアプローチ)またはタンパク質(PSAQアプローチ)をスパイキングすることによって達成した。研究サンプルのペプチド(またはタンパク質)濃度は、非標識ペプチド(またはタンパク質)のピーク面積と、標識ペプチド(またはタンパク質)のピーク面積との比を用いて、計算することができた。しかしながら、この定量アプローチは、原点を通過する線形関係が、MS応答(または応答比)と対応する濃度との間に存在することを前提とした、1つの較正点のみに基づく。
【0089】
近年、この問題に取り組むために、Chiva et al. (66th ASMS Conference on Mass Spectrometry and Allied Topics, June 3-7, 2018, San Diego, CA, p ThP 481)は、ホルマリン固定/パラフィン包埋(FFPE)サンプルにおける標的ペプチドの絶対定量のために、各研究サンプルに検量線をスパイクすることによって、正確で安定したアッセイを開発したことを報告した。この検量線は、2~200fmolの異なる濃度において、5つの異なるSILペプチド分析物(および、それぞれのSILペプチド分析物について、10、16、23、33、および39の総標識部位)を用いて、事前に作成された。しかしながら、30~40もの標識部位を有する、複数の異なる標識ペプチド分析物が、1つの標的ペプチドの解析に必要であるため、この方法は、特に複数の標的ペプチドの定量プロテオミクスについて、非常にコストと時間がかかる。
【0090】
本開示において有用な方法は、サンプル中の少なくとも1つの分析物の存在を検出し、および/または濃度を定量化することに関し、当該方法は、少なくとも1つの分析物を含むサンプルに、1つ以上の既知の分量の安定同位体標識(SIL)分析物を添加し、それぞれの添加したSIL分析物の多重同位体分子種反応モニタリング(MIRM)によって、1つ以上のサンプル内検量線(ICSS)を構築することを含み、ここで、SIL分析物のMIRMは、SIL分析物の複数の同位体トランジションの多重反応モニタリングをいい;ここで、それぞれの分析物のISCCは、MIRMトランジションにおいて計算した理論上の同位体存在率(分析物濃度当量)と、対応するMIRMトランジションにおいて測定したタンデム質量分析(MS/MS)ピーク面積との関係に基づいて、サンプル内で構築され;ここで、確立されたICSS、および液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)工程からの分析物について測定したピーク面積を用いて、サンプル中の少なくとも1つの分析物の濃度を定量化し;ここで、タンデム質量分析計は、多重反応モニタリングモードにおいて操作する。
【0091】
いくつかの局面において、分析物、SIL分析物、およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種は、質量分析計においてイオン化されて、分析物、SIL分析物、およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種のプロトン化(または脱プロトン化)親イオンを生じる。いくつかの局面において、質量分析計において、分析物の親イオン、SIL分析物の親イオン、およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の親イオンは、同じ開裂部位においてフラグメント化され、ニュートラルロスおよび娘イオンを生じる。
【0092】
いくつかの局面において、分析物の親イオンから娘イオンへのトランジションを、質量分析計においてモニターし、分析物の親イオンから娘イオンへのトランジションについてのピーク面積を測定する。いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の親イオンから、SIL分析物の娘イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の娘イオンへの選択された多重トランジションを、質量分析計においてモニターする(「多重同位体分子種反応モニタリング」または「MIRM」)。
【0093】
いくつかの局面において、それぞれのMIRMトランジションのピーク面積を測定し、ここで、MIRMトランジションは、SIL分析物の親イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の親イオンから、SIL分析物の娘イオンおよびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の娘イオンへの選択されたトランジションを含む。
【0094】
いくつかの局面において、SIL分析物、およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の、MIRMトランジションにおいて測定したピーク面積と、それぞれのMIRMトランジションと同等の分析物濃度との関係に基づき、サンプル内検量線を作成する。
【0095】
いくつかの局面において、それぞれのMIRMトランジションと同等の分析物濃度を、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションの理論上の同位体存在率から計算し、ここで、理論上の同位体存在率は、Analytical Chemistry, 2012, 84(11), 4844-4850において公開されている方法を用いて計算し、ここで、当該方法は、SIL分析物のニュートラルロスおよび娘イオンの同位体分布に基づいて計算する。別の局面において、SIL分析物およびSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の、(p+Z+α)/Zから(d+Z+β)/ZのそれぞれのMIRMトランジション(m/z)についての理論上の同位体存在率を、式(I):
(p+Z+α)/Z→(d+Z+β)/ZのMIRMトランジションにおける同位体存在率=
[(d+Z+β)の質量における、娘イオンの相対同位体分布]*
[n+(α-β)の質量における、ニュートラルロスの相対同位体分布]
(I)
[式中、
m/zは質量電荷比であり
pはSIL分析物の親分子のモノアイソトピック質量であり
は親イオンの電荷数であり
dはSIL分析物の娘フラグメントのモノアイソトピック質量であり
は娘イオンの電荷数であり
nはSIL分析物のニュートラルロスのモノアイソトピック質量であり
p=d+n
αおよびβは整数であり、それらはそれぞれ、親イオンおよび娘イオンにおけるさらなる中性子の数であり、α0、β0、およびαβであり
およびZは整数である]
に基づいて計算する。
【0096】
いくつかの局面において、同位体存在率計算機が、worldwideweb.sisweb.com/mstools/isotope.html(2019年11月10日にアクセス)に存在する。いくつかの局面において、最大の分析物濃度当量(ISCCの「定量上限」または「ULOQ」)を、式(II):
(M/V)*(M分析物/MSIL分析物)ng/mL (II)
[式中、
M(ng)は、サンプルに添加したSIL分析物の総量であり;
Vは、SIL分析物を添加する前のサンプル体積(mL)であり;
分析物は、分析物の分子量であり;
SIL分析物は、SIL分析物の分子量である]
に基づいて計算する。
【0097】
いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける、1つ以上の他の分析物濃度当量を、式(III):
*ULOQ(ng/ml) (III)
[式中、Iは、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種のMIRMトランジションの、計算した理論上の同位体存在率である]
に基づいて計算する。
【0098】
本開示において有用な方法は、分析物を含むサンプルに添加した、安定同位体標識(SIL)分析物の使用に関する。このSIL分析物は、次いでMIRM技術によってモニターし、濃度検量線を構築して、サンプル中に存在する分析物の濃度を定量することができる。いくつかの局面において、分析物はタンパク質またはペプチドであり、SIL分析物は安定同位体標識タンパク質またはペプチドである。いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンは、少なくとも約3個のアミノ酸、少なくとも約4個のアミノ酸、少なくとも約5個のアミノ酸、少なくとも約6個のアミノ酸、少なくとも約7個のアミノ酸、少なくとも約8個のアミノ酸、少なくとも約9個のアミノ酸、少なくとも約10個のアミノ酸、少なくとも約11個のアミノ酸、少なくとも約12個のアミノ酸、少なくとも約13個のアミノ酸、少なくとも約14個のアミノ酸、少なくとも約15個のアミノ酸、少なくとも約16個のアミノ酸、少なくとも約17個のアミノ酸、少なくとも約18個のアミノ酸、少なくとも約19個のアミノ酸、または少なくとも約20個のアミノ酸、少なくとも約21個のアミノ酸、少なくとも約22個のアミノ酸、少なくとも約23個のアミノ酸、少なくとも約24個のアミノ酸、少なくとも約25個のアミノ酸、少なくとも約26個のアミノ酸、少なくとも約27個のアミノ酸、少なくとも約28個のアミノ酸、少なくとも約29個のアミノ酸、少なくとも約30個のアミノ酸、少なくとも約31個のアミノ酸、少なくとも約32個のアミノ酸、少なくとも約33個のアミノ酸、少なくとも約34個のアミノ酸、少なくとも約35個のアミノ酸、少なくとも約36個のアミノ酸、少なくとも約37個のアミノ酸、少なくとも約38個のアミノ酸、少なくとも約39個のアミノ酸、または少なくとも約40個のアミノ酸を含む。
【0099】
いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンは、4~40個のアミノ酸、4~35個のアミノ酸、5~35個のアミノ酸、4~34個のアミノ酸、5~34個のアミノ酸、5~33個のアミノ酸、5~32個のアミノ酸、6~35個のアミノ酸、6~34個のアミノ酸、6~33個のアミノ酸、6~32個のアミノ酸、6~31個のアミノ酸、6~30個のアミノ酸、6~29個のアミノ酸、6~28個のアミノ酸、7~35個のアミノ酸、7~34個のアミノ酸、7~33個のアミノ酸、7~32個のアミノ酸、7~31個のアミノ酸、7~30個のアミノ酸、または7~29個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む。いくつかの局面において、分析物またはSIL分析物の親イオンは、7~11個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む。いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンは、8~11個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む。いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンは、8~10個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む。いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンは、8~9個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む。いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンは、6~9個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む。いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンは、6~10個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む。
【0100】
いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンは、4~30個のアミノ酸、4~25個のアミノ酸、5~25個のアミノ酸、4~24個のアミノ酸、5~24個のアミノ酸、5~23個のアミノ酸、5~22個のアミノ酸、6~25個のアミノ酸、6~24個のアミノ酸、6~23個のアミノ酸、6~22個のアミノ酸、6~21個のアミノ酸、6~20個のアミノ酸、7~25個のアミノ酸、7~24個のアミノ酸、7~23個のアミノ酸、7~22個のアミノ酸、7~21個のアミノ酸、または7~20個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む。
【0101】
いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンは、4~20個のアミノ酸、4~15個のアミノ酸、5~15個のアミノ酸、4~14個のアミノ酸、5~14個のアミノ酸、5~13個のアミノ酸、5~12個のアミノ酸、6~15個のアミノ酸、6~14個のアミノ酸、6~13個のアミノ酸、6~12個のアミノ酸、6~11個のアミノ酸、6~10個のアミノ酸、6~9個のアミノ酸、6~8個のアミノ酸、7~15個のアミノ酸、7~14個のアミノ酸、7~13個のアミノ酸、7~12個のアミノ酸、7~11個のアミノ酸、7~10個のアミノ酸、または7~9個のアミノ酸のアミノ酸配列を含む。
【0102】
いくつかの局面において、SIL分析物は、安定同位体標識タンパク質またはペプチドである。いくつかの局面において、SIL分析物の親イオンは、少なくとも約3個のアミノ酸、少なくとも約4個のアミノ酸、少なくとも約5個のアミノ酸、少なくとも約6個のアミノ酸、少なくとも約7個のアミノ酸、少なくとも約8個のアミノ酸、少なくとも約9個のアミノ酸、少なくとも約10個のアミノ酸、少なくとも約11個のアミノ酸、少なくとも約12個のアミノ酸、少なくとも約13個のアミノ酸、少なくとも約14個のアミノ酸、少なくとも約15個のアミノ酸、少なくとも約16個のアミノ酸、少なくとも約17個のアミノ酸、少なくとも約18個のアミノ酸、少なくとも約19個のアミノ酸、または少なくとも約20個のアミノ酸を含む。
【0103】
いくつかの局面において、分析物は抗体である。別の局面において、分析物は融合タンパク質である。別の局面において、分析物は、タンパク質および異種部位を含む融合タンパク質である。別の局面において、分析物はFc融合タンパク質である。いくつかの局面において、分析物は、PD-1、PD-L1、CD73、抗PD-1抗体、抗PD-L1抗体、抗CD73抗体、またはそれらの任意の組み合わせである。いくつかの局面において、分析物は、抗GITR抗体、抗CXCR4抗体、抗TIGIT抗体、抗OX40抗体、抗LAG3抗体、抗TIM3抗体、抗IL8抗体、またはそれらの任意の組み合わせである。
【0104】
本開示の方法は、対応するSIL分析物を用いて、タンパク質である分析物を検出し、定量するのに有効である。いくつかの局面において、分析物は抗体である。いくつかの局面において、分析物はCD73または抗CD73抗体、またはそのフラグメントである。いくつかの局面において、分析物は、PD-1、またはニボルマブなどの抗PD-1抗体、またはそのフラグメントである。いくつかの局面において、分析物は、PD-L1、またはイピリムマブなどの抗PD-L1抗体、またはそのフラグメントである。いくつかの局面において、分析物は、抗OX40(CD134、TNFRSF4、ACT35、および/またはTXGP1Lとしても知られている)抗体(例えば、BMS986178、またはMDX-1803)、またはそのフラグメントである。いくつかの局面において、分析物はウロクプルマブ、またはそのフラグメントである。いくつかの局面において、分析物はBMS-986156、またはそのフラグメントである。いくつかの局面において、分析物は、BMS-986016、またはそのフラグメントである。いくつかの局面において、分析物は、BMS-986207、またはそのフラグメントである。いくつかの局面において、分析物は、BMS-986253、またはそのフラグメントである。いくつかの局面において、分析物は、BMS-986258、またはそのフラグメントである。
【0105】
いくつかの局面において、分析物は抗PD-1抗体である。いくつかの局面において、抗PD-1抗体は、ニボルマブ(OPDIVO(登録商標)、5C4、BMS-936558、MDX-1106、およびONO-4538としても知られている)、ペムブロリズマブ(Merck;KEYTRUDA(登録商標)、lambrolizumab、およびMK-3475としても知られている;WO2008/156712を参照)、PDR001(Novartis;WO 2015/112900を参照)、MEDI-0680(AstraZeneca;AMP-514としても知られている;WO 2012/145493を参照)、セミプリマブ(Regeneron;REGN-2810としても知られている; WO 2015/112800を参照)、JS001(TAIZHOU JUNSHI PHARMA;Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)を参照)、BGB-A317(Beigene; WO 2015/35606およびUS 2015/0079109を参照)、INCSHR1210(Jiangsu Hengrui Medicine;SHR-1210としても知られている;WO 2015/085847;Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)を参照)、TSR-042(Tesaro Biopharmaceutical;ANB011としても知られている;WO2014/179664を参照)、GLS-010(Wuxi/Harbin Gloria Pharmaceuticals;WBP3055としても知られている; Si-Yang Liu et al., J. Hematol. Oncol. 10:136 (2017)を参照)、AM-0001(Armo)、STI-1110(Sorrento Therapeutics;WO 2014/194302を参照)、AGEN2034(Agenus;WO 2017/040790を参照)、MGA012(Macrogenics、WO 2017/19846を参照)、およびIBI308(Innovent;WO 2017/024465、WO 2017/025016、WO 2017/132825、およびWO 2017/133540を参照)から成る群から選択される。
【0106】
いくつかの局面において、分析物は抗PD-L1抗体である。いくつかの局面において、抗PD-L1抗体は、BMS-936559(12A4、MDX-1105としても知られている;例えば、米国特許第7,943,743およびWO 2013/173223)、アテゾリズマブ(Roche;TECENTRIQ(登録商標);MPDL3280A、RG7446としても知られている;US 8,217,149を参照;Herbst et al. (2013) J Clin Oncol 31(suppl):3000もまた参照)、デュルバルマブ(AstraZeneca;IMFINZI(登録商標)、MEDI-4736としても知られている;WO 2011/066389を参照)、アベルマブ(Pfizer;BAVENCIO(登録商標)、MSB-0010718Cとしても知られている;WO 2013/079174を参照)、STI-1014(Sorrento;WO 2013/181634を参照)、CX-072(Cytomx;WO 2016/149201を参照)、KN035(3D Med/アルファマブ;Zhang et al., Cell Discov. 7:3(March 2017)を参照、LY3300054(Eli Lilly Co.;例えば、WO 2017/034916を参照)、およびCK-301(Checkpoint Therapeutics;Gorelik et al., AACR:Abstract 4606(Apr 2016)を参照)から成る群から選択される。
【0107】
いくつかの局面において、分析物はCD73またはその一部である。いくつかの局面において、SIL分析物は、V[Ile(1315N)]YPAVEGR(配列番号:1)である。いくつかの局面において、分析物はPD-1またはその一部である。いくつかの局面において、SIL分析物はLAAFPED[Arg(1315)](配列番号:2)である。いくつかの局面において、分析物はPD-L1またはその一部である。いくつかの局面において、SIL分析物はLQDAG[Val(1315N)]YR(配列番号:3)である。いくつかの局面において、分析物はダクラタスビルである。いくつかの局面において、SIL分析物は13 15-ダクラタスビルである。
【0108】
いくつかの局面において、分析物は非ペプチド分子である。いくつかの局面において、分析物は、少なくとも100g/mol、少なくとも200g/mol、少なくとも300g/mol、少なくとも400g/mol、少なくとも500g/mol、少なくとも600g/mol、少なくとも700g/mol、少なくとも800g/mol、少なくとも900g/mol、少なくとも1000g/mol、少なくとも1100g/mol、少なくとも1200g/mol、少なくとも1300g/mol、少なくとも1400g/mol、少なくとも1500g/mol、少なくとも1600g/mol、少なくとも1700g/mol、少なくとも1800g/mol、少なくとも1900g/mol、または少なくとも2000g/molの分子量を有する。
【0109】
いくつかの局面において、分析物は抗菌剤または抗ウイルス剤である。いくつかの局面において、分析物は、肝炎B、肝炎C、HIV、梅毒、またはそれらの任意の組み合わせに対する薬剤である。別の局面において、抗HCV活性を有する分析物は、HCVまたはフラビウイルス感染の治療のために、HCVメタロプロテアーゼ、HCVセリンプロテアーゼ、HCVポリメラーゼ、HCVヘリカーゼ、HCV NS4Bタンパク質、HCV侵入、HCV会合、HCV放出、HCV NS5Aタンパク質、およびIMPDH、および/またはシクロスポリン類似体、および/またはヌクレオシド類似体から選択される標的の機能を阻害するのに有用なものである。
【0110】
選択的HCVセリンプロテアーゼ阻害剤として、本開示において用いることのできる分析物の中には、特許WO/1999/007733、WO/2005/007681、WO/2005/028502、WO/2005/035525、WO/2005/037860、WO/2005/077969、WO/2006/039488、WO/2007/022459、WO/2008/106058、WO2008/106139、WO/2000/009558、WO/2000/009543、WO/1999/064442、WO/1999/007733、WO/1999/07734、WO/1999/050230、およびWO/1998/017679号において開示されるペプチド化合物がある。NS5Bポリメラーゼ阻害剤もまた、活性を示した。これらの薬剤としては、限定されないが、例えば、WO01/90121(A2)、米国特許第6,348,587B1号、またはWO01/60315、またはWO01/32153に記載される、ヌクレオシド型ポリメラーゼ阻害剤、またはEP162196A1またはWO02/04425において記載されるベンゾイミダゾールポリメラーゼ阻害剤などの、非ヌクレオシド阻害剤などの、HCV RNA依存性RNAポリメラーゼの他の阻害剤が挙げられる。
【0111】
PEG化アルファ-インターフェロンおよびリバビリンの組み合わせに加えて、HCVウイルス複製を選択的に阻害するHCV感染患者の治療に有用な化合物の他の組み合わせが望まれている。特に、NS5Aタンパク質の機能を阻害するのに有効な薬剤と、他のウイルス標的を阻害するのに有効な薬剤との組み合わせが望まれている。HCV NS5A タンパク質は、例えば、Tan, S.-L.; Katzel, M. G. Virology (2001) 284, 1-12、およびPark, K.-J.; Choi, S.-H, J. Biological Chemistry (2003)において記載されている。HCV NS5A阻害剤の合成を記載する、関連する特許開示は、以下の通りである:US2009/0202478;US2009/0202483;WO2009/020828;WO2009/020825;WO2009/102318;WO2009/102325;WO2009/102694;WO2008/144380;WO2008/021927;WO2008/021928;WO2008/021936;WO2006/133326;WO2004/014852;WO2008/070447;WO2009/034390;WO2006/079833;WO2007/031791;WO2007/070556;WO2007/070600;WO2008/064218;WO2008/154601;WO2007/082554;WO2008/048589;WO2010/017401;WO2010/065668;WO2010/065674;WO2010/065681、これらのそれぞれの内容は、参照によって本明細書に明示的に組み込まれる。
【0112】
いくつかの局面において、分析物は小分子である。いくつかの局面において、分析物はタキソール、クロピドグレル、アピキサバン、ダパグリフロジン、サクサグリプチン、テムサビル、レジパスビル、ソフォスブビル、またはロスバスタチンである。いくつかの局面において、分析物はタキソールである。いくつかの局面において、分析物はクロピドグレルである。いくつかの局面において、分析物はアピキサバンである。いくつかの局面において、分析物はダパグリフロジンである。いくつかの局面において、分析物はサクサグリプチンである。いくつかの局面において、分析物はテムサビルである。いくつかの局面において、分析物はレジパスビルである。いくつかの局面において、分析物はソフォスブビルである。いくつかの局面において、分析物はロスバスタチンである。
【0113】
別の局面において、分析物は、核酸分子、例えば、DNA、RNA、例えば、mRNAである。いくつかの局面において、核酸分子は、少なくとも約10個の核酸、少なくとも約15個の核酸、少なくとも約20個の核酸、少なくとも約25個の核酸、少なくとも約30個の核酸、少なくとも約40個の核酸、少なくとも約50個の核酸、少なくとも約100個の核酸、少なくとも約200個の核酸、少なくとも約300個の核酸、少なくとも約400個の核酸、少なくとも約500個の核酸、少なくとも約600個の核酸、少なくとも約700個の核酸、少なくとも約800個の核酸、少なくとも約900個の核酸、少なくとも約1000個の核酸、少なくとも約1200個の核酸、少なくとも約1400個の核酸、少なくとも約1600個の核酸、少なくとも約1800個の核酸、少なくとも約2000個の核酸、少なくとも約2200個の核酸、少なくとも約2400個の核酸、少なくとも約2600個の核酸、少なくとも約2800個の核酸、または少なくとも約3000個の核酸である。
【0114】
いくつかの局面において、分析物はアンチセンスオリゴヌクレオチドである。別の局面において、分析物はsiRNAまたはmiRNAである。別の局面において、分析物は遺伝子治療ベクターまたはプラスミドである。
【0115】
いくつかの局面において、SIL分析物は、少なくとも約4個、少なくとも約5個、少なくとも約6個、少なくとも約7個、少なくとも約8個、少なくとも約9個、少なくとも約10個、少なくとも約11個、少なくとも約12個、少なくとも約13個、少なくとも約14個、少なくとも約15個、少なくとも約16個、少なくとも約17個、少なくとも約18個、少なくとも約19個、少なくとも約20個の同位体標識、少なくとも約21個、少なくとも約22個、少なくとも約23個、少なくとも約24個、少なくとも約25個、少なくとも約26個、少なくとも約27個、少なくとも約28個、少なくとも約29個、少なくとも約30個、少なくとも約31個、少なくとも約32個、少なくとも約33個、少なくとも約34個、少なくとも約35個、少なくとも約36個、少なくとも約37個、少なくとも約38個、少なくとも約39個、または少なくとも約40個の同位体標識を含む。
【0116】
測定のためのMIRMトランジションの選択は、安定で正確なアッセイ性能を確保するために、本開示の方法の重要な要素である。いくつかの局面において、MIRMトランジションにおいて測定された相対ピーク面積のそれぞれは、SIL分析物またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて計算した理論上の同位体存在率から15%未満の偏差を有する。
【0117】
いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける測定された相対ピーク面積のうち少なくとも1つは、SIL分析物、またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて、計算した理論上の同位体存在率から、14%未満、13%未満、12%未満、11%未満、10%未満、9%未満、8%未満、7%未満、6%未満、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、0.1%未満、0.09%未満、0.08%未満、0.07%未満、0.06%未満、0.05%未満、0.04%未満、0.03%未満、0.02%未満、0.01%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、0.001%未満、0.009%未満、0.008%未満、0.007%未満、0.006%未満、0.005%未満、0.004%未満、0.003%未満、0.002%未満、または0.0001%未満の偏差を有する。いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける測定された相対ピーク面積の全ては、SIL分析物、またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて、計算した理論上の同位体存在率から14%未満の偏差を有する。いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける測定された相対ピーク面積の全ては、SIL分析物、またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて、計算した理論上の同位体存在率から13%未満の偏差を有する。いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける測定された相対ピーク面積の全ては、SIL分析物、またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて、計算した理論上の同位体存在率から12%未満の偏差を有する。いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける測定された相対ピーク面積の全ては、SIL分析物、またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて、計算した理論上の同位体存在率から11%未満の偏差を有する。いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける測定された相対ピーク面積の全ては、SIL分析物、またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて、計算した理論上の同位体存在率から10%未満の偏差を有する。いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける測定された相対ピーク面積の全ては、SIL分析物、またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて、計算した理論上の同位体存在率から9%未満の偏差を有する。いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける測定された相対ピーク面積の全ては、SIL分析物、またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて、計算した理論上の同位体存在率から8%未満の偏差を有する。いくつかの局面において、MIRMトランジションにおける測定された相対ピーク面積の全ては、SIL分析物、またはSIL分析物の天然に存在する同位体分子種の対応するMIRMトランジションにおいて、計算した理論上の同位体存在率から7%未満の偏差を有する。
【0118】
いくつかの局面において、MIRMトランジションの数は、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、少なくとも12、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも17、少なくとも18、少なくとも19、または少なくとも20である。いくつかの局面において、MIRMトランジションの数は、4~15の間、4~14の間、5~13の間、5~12の間、6~12の間、6~11の間、7~11の間、7~10の間、8~10の間、または8~9の間である。いくつかの局面において、MIRMトランジションの数は、4~10の間、4~9の間、5~9の間、6~9の間、6~8の間、または7~8の間である。いくつかの局面において、MIRMトランジションの数は6である。いくつかの局面において、MIRMトランジションの数は7である。いくつかの局面において、MIRMトランジションの数は10である。いくつかの局面において、MIRMトランジションの数は15である。
【0119】
いくつかの局面において、最大のMIRMチャンネルおよび最小のMIRMチャンネルの分析物濃度当量が、少なくとも約10倍、少なくとも約100倍、少なくとも約200倍、少なくとも約300倍、少なくとも約400倍、少なくとも約500倍、少なくとも約600倍、少なくとも約700倍、少なくとも約800倍、少なくとも約900倍、少なくとも約1000倍、少なくとも約1100倍、少なくとも約1200倍、少なくとも約1300倍、少なくとも約1400倍、少なくとも約1500倍、少なくとも約1600倍、少なくとも約1700倍、少なくとも約1800倍、少なくとも約1900倍、少なくとも約2000倍、少なくとも約2100倍、少なくとも約2200倍、少なくとも約2300倍、少なくとも約2400倍、少なくとも約2500倍、少なくとも約2600倍、少なくとも約2700倍、少なくとも約2800倍、少なくとも約2900倍、少なくとも約3000倍、少なくとも約3100倍、少なくとも約3200倍、少なくとも約3300倍、少なくとも約3400倍、少なくとも約3500倍、少なくとも約3600倍、少なくとも約3700倍、少なくとも約3800倍、少なくとも約3900倍、少なくとも約4000倍、少なくとも約4100倍、少なくとも約4200倍、少なくとも約4300倍、少なくとも約4400倍、少なくとも約4500倍、少なくとも約4600倍、少なくとも約4700倍、少なくとも約4800倍、少なくとも約4900倍、少なくとも約5000倍、少なくとも約5100倍、少なくとも約5200倍、少なくとも約5300倍、少なくとも約5400倍、少なくとも約5500倍、少なくとも約5600倍、少なくとも約5700倍、少なくとも約5800倍、少なくとも約5900倍、または少なくとも約6000倍異なる。
【0120】
いくつかの局面において、2つの選択したMIRMトランジションの計算した理論上の同位体存在率は、少なくとも0.01%、少なくとも0.05%、少なくとも0.1%、少なくとも0.5%、少なくとも1%、少なくとも1.5%、少なくとも2%、少なくとも2.5%、少なくとも3%、少なくとも3.5%、少なくとも4%、少なくとも4.5%、少なくとも5%、少なくとも5.5%、少なくとも6%、少なくとも6.5%、少なくとも7%、少なくとも7.5%、少なくとも8%、少なくとも8.5%、少なくとも9%、少なくとも9.5%、少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも約50%離れている。
【0121】
いくつかの局面において、SIL分析物は、痕跡量の非標識分析物を含む。いくつかの局面において、SIL分析物は、5%未満、4%未満、3%未満、2%未満、1%未満、0.9%未満、0.8%未満、0.7%未満、0.6%未満、0.5%未満、0.4%未満、0.3%未満、0.2%未満、または0.1%未満の非標識分析物を含む。
【0122】
いくつかの局面において、SIL分析物は、1つ以上の安定な同位体によって1つ以上の部位において標識されている。いくつかの局面において、安定な同位体標識は、H、13C、15N、33S、34S、36S、17O、または18Oである。いくつかの局面において、安定な同位体標識は、13Cおよび/または15Nである。いくつかの局面において、安定な同位体標識は、13Cである。いくつかの局面において、安定な同位体標識は、15Nである。
【0123】
一般に、トリプル四重極質量分析計における実験について、最初の四重極(Q1)は、サンプル内の予想される化学種の特定のm/zのイオン(前駆体イオン)のみのイオンを通過させるように設定されている。2番目の四重極(すなわち、Q2または衝突室)は、Q1を通過するイオンをフラグメント化するために用いられる。3番目の四重極(Q3)は、予想される化学種の予想されるフラグメント化生成物に対応する、特定のm/zのイオン(フラグメントイオン)のみを検出器に通すように設定されている。いくつかの局面において、サンプルは質量分析計においてイオン化されて、1つ以上のプロトン化または脱プロトン化された分子イオンを生成する。いくつかの局面において、1つ以上のプロトン化または脱プロトン化された分子は、1価、2価、3価、またはそれ以上である。いくつかの局面において、質量分析計はトリプル四重極質量分析計である。いくつかの局面において、Q1およびQ3について用いられる分解能は、単位分解能である。別の局面において、Q1およびQ3について用いられる分解能は異なる。別の局面において、Q1について用いられる分解能は、Q3について用いられる単位分解能よりも高い。
【0124】
高速液体クロマトグラフィーによる分離の有用性は、低分子量から高分子量までの範囲の分子の分析および精製などの、幅広い応用について実証されている。液体クロマトグラフィーにおいて、特に分析に必要な時間から生じる大きな制限がある。本開示の方法は、特に外部検量線を機器で実行する必要がない場合において、非常に効果的であり、必要な総機器時間を改善する。いくつかの局面において、当該方法は機器の総実行時間を短縮する。いくつかの局面において、外部検量線は用いない。いくつかの局面において、分析物はバイオマーカーである。いくつかの局面において、分析物は代謝物である。
【0125】
本開示の方法は、生物源などの様々な供給源からの分析物を検出または定量化するのに有効である。いくつかの局面において、サンプルは、血清、組織、生検組織、ホルマリン固定/パラフィン包埋(FFPE)、血漿、唾液、脳脊髄液、涙、尿、滑液、乾燥血液スポット、またはその任意の組み合わせである。いくつかの局面において、サンプルは血清である。いくつかの局面において、サンプルは組織である。いくつかの局面において、サンプルは生検組織である。いくつかの局面において、サンプルはホルマリン固定/パラフィン包埋(FFPE)である。いくつかの局面において、サンプルは血漿である。いくつかの局面において、サンプルは唾液である。いくつかの局面において、サンプルは脳脊髄液である。いくつかの局面において、サンプルは涙である。いくつかの局面において、サンプルは尿である。いくつかの局面において、サンプルは滑液である。いくつかの局面において、サンプルは乾燥血液スポットである。
【0126】
本開示の方法はまた、生物学的マトリックスから分析物を分離することができる、少なくとも1つの液体クロマトグラフィーカラム、対象の分析物を含むサンプル、サンプルに添加された少なくとも1つの安定同位体標識分析物、並びに1つ以上プロトン化された、または脱プロトン化された親イオン、分析物に固有の娘イオン、および安定同位体標識分析物をイオン化し、フラグメント化し、検出することができる質量分析計を含む、液体クロマトグラフィーを含む、液体クロマトグラフィー-質量分析系を構築するのにも有用である。一般に、クロマトグラフィーは、混合物中に存在する他の分子(例えば、夾雑物)から分子(例えば、抗体)を分離する、任意の種類の技術である。
【0127】
液体クロマトグラフィー(LC)は、その後の分析および/または同定のために、流体混合物の成分を分離するための、十分に確立された分析技術であり、その中で、カラム、マイクロ流体チップに基づくチャンネル、またはチューブは、一般に数ミクロンの直径の小粒子などの微細に粉砕された固体またはゲルである、固定相物質が充填されている。小さな粒子径は、固定相を生成する様々な化学物質によって修飾することができる、大きな表面積を提供する。液体溶出液は、カラムの寸法および粒子径に基づいて、望ましい流量において、液体クロマトグラフィーカラム(「LCカラム」)に送られる。この液体溶出液は、時に移動相といわれる。分析されるサンプルは、LCカラムの前に、移動相の流れに少量で導入(例えば、注入)される。サンプル中の分析物の移動速度は、カラムの長さを横切る際の、固定相の特定の化学的および/または物理的相互作用によって影響される。特定の分析物がカラムの終端から溶出または出てくる時間は、保持時間または溶出時間と呼ばれ、特に、特定の分析物の正確な分子量などの他の分析特性と組み合わせた場合、特定の分析物の特性を合理的に同定することができる。分離された成分は、液体クロマトグラフィーカラムから、さらなる分析のための他の種類の分析機器に送られてもよく、例えば、液体クロマトグラフィー-質量分析(LC/MSまたはLC/MS/MS)は、化合物が質量分析計のイオン源に導入される前に、化合物をクロマトグラフィーで分離する。
【0128】
質量分析(「MS」または「質量分析」)は、質量電荷比イオンを測定するために用いられる、分析技術である。これは、サンプルをイオン化し、異なる質量のイオンを分離し、イオン流量の強度を測定することによって、その相対的な存在量を記録することによって実現される。一般的な質量分析計は、3つの部分:イオン源、質量分析計、および検出系を含む。イオン源は、分析対象物質(分析物)をイオン化する、質量分析計の一部である。次いで、イオンは磁場または電場によって質量分析器に送達され、そこで質量電荷比(m/z)に従ってイオンが分離される。多くの質量分析計は、タンデム質量分析(MS/MS)に2つ以上の質量分析計を用いる。検出器は、イオンが表面を通過するか、表面に衝突したときに誘導される電荷、または生成される電流を記録する。質量分析は、質量分析計によってm/zイオンをスキャンするときに、検出器において生成するシグナルを測定した結果である。
【0129】
本開示の方法は、サンプル内検量線(ISCC)を含む組成物を開示し、ここで、ISCCは安定同位体標識分析物の多重同位体分子種反応モニタリング(MIRM)を含む。安定同位体標識分析物のMIRMを含むISCCを生成する本開示の方法は、バイオマーカーの分析に有用である。バイオマーカーは、例えば、生物学的サンプルから単離されるか、生物学的サンプルにおいて直接測定されるか、または生物学的サンプルにおいて検出されるか、生物学的サンプル中にあると決定されうる。バイオマーカーは、機能的、部分的に機能的、または非機能的でありうる。バイオマーカーがタンパク質またはそのフラグメントである場合、それを配列決定することができ、そのコード遺伝子は、十分に確立された技術を用いてクローニングすることができる。本開示の方法はまた、代用エンドポイントとして規制当局の承認のための、バイオマーカーの開発および/または検証にも有用である。代用エンドポイントは、臨床エンドポイントの代替として規制当局に承認されたバイオマーカーであり、臨床的に意味のあるエンドポイントの代替として用いることが意図される。代用エンドポイントが承認される前に、臨床的利益を予想する、またはそれと関連することが信頼できることを示す、広範な証拠が必要である。
【0130】
本開示の方法はまた、バイオマーカー、代謝物、または代謝プロファイルの分析にも有用である。バイオマーカーまたは代謝物の分析は、健康または疾患の生物学的状態の精度の高い尺度を示す。それぞれの個人に固有の、変化した代謝フィンガープリントは、システム生物学をさらに理解し、様々な疾患の潜在的なリスクを検出し、または特定し、最終的には個別化医療(すなわち、適切な薬を、適切な用量で、適切な時に、適切な人に)の目標を達成するのに役立つ、新たな手段を提供する。本発明において用いられる代謝物プロファイルは、別のサンプルまたはサンプル群から得られた参照値またはプロファイルと比較するために用いることができる、代謝物の定量的結果の任意の定義された値の一覧であると理解されるべきである。例えば、疾患を有する患者からのサンプルの代謝物プロファイルは、同様に一致した健康な患者からのサンプルの代謝物プロファイルとは、大幅に異なる可能性がある。代謝物プロファイルは、プロファイルを参照または標準プロファイルと比較することによって、障害に対する患者の感受性を予想するのに役立ちうる。
【0131】
本開示の方法はまた、特定の患者のための最適な治療プロトコルおよび/または最適な薬物選択、組み合わせ、および用量の推奨または選択に関する。各投与の後の薬物のピーク濃度を測定することができる。各投与後の薬物のトラフ濃度もまた測定することができる。その間の変動を含む投与間隔(時間)は、バイオマーカーまたは代謝物の分析から判別される情報に基づいて最適化することができる。
【0132】
本開示はまた、本明細書に記載される方法によって用いられる、液体クロマトグラフィー-質量分析系を含む。いくつかの局面において、LC-MS/MSは、
(i)生物学的マトリックスから分析物を分離することができる、少なくとも1つの液体クロマトグラフィーカラムを含む、液体クロマトグラフィー;
(ii)対象の分析物を含むサンプル;
(iii)サンプルに添加した少なくとも1つの安定同位体標識分析物;および
(iv)分析物および安定同位体標識分析物に固有の、1つ以上プロトン化された(または脱プロトン化された)親イオンおよび娘イオンをイオン化し、フラグメント化し、および検出することができる、質量分析計
を含む。
【0133】
別の局面において、本開示は、サンプル内検量線(ISCC)を含む組成物を含み、ここで、ISCCは安定同位体標識分析物を含む。
【0134】
本開示はまた、1サンプル多点外部検量線(OSMECC)の作成に関する。このアプローチでは、安定標識同位体(SIL)分析物を使用せず、代わりに、ブランクマトリックスサンプルに、既知量の分析物をスパイクすることを含む。ブランクマトリックスは、対象の分析物を含まない、マトリックスの種類である。1つのブランクマトリックスサンプルに既知量の分析物をスパイクすることによって、分析物の対応するMIRMチャンネルにおいて、計算した理論上の同位体存在率(分析物濃度当量)と測定したMS/MSピーク面積(または、アッセイに内部標準が用いられる場合、ピーク面積比)との関係に基づいて、ブランクマトリックスサンプルの1サンプル多点外部検量線を確立することができる。この1サンプル多点外部検量線は、定量LC-MS/MSに基づくバイオアナリシスのための従来のマルチサンプル外部検量線と同じ方法において、用いることができる。このアプローチは、LC-MS/MS定量分析において、従来のマルチサンプル外部検量線を作成する必要がない、代替方法として機能する。
【0135】
それぞれのMIRMチャンネルにおける同位体存在率を正確に計算し、測定することができるため、同位体サンプル希釈は、試験サンプルの最も豊富なMIRMチャンネルに加えて、1つまたは数個の分析物のMIRMチャンネルを単に追跡することによって達成することができる。最も豊富なMIRMチャンネル(同位体存在率100%)は、アッセイ検量線範囲内の濃度を有するサンプルの定量に用いられるが、あまり豊富でないMIRMチャンネル(IA%の同位体存在率)は、アッセイの定量上限(ULOQ)を超える濃度を有するサンプルの定量に用いることができ、100%/IA%の同位体希釈因子(IDF)を生じる。このアプローチは、LC-MS/MS定量分析で試験サンプルを物理的に希釈する必要をなくすための、代替方法として機能する。
【0136】
いくつかの局面において、本開示は、研究サンプル中の少なくとも1つの分析物の濃度を定量する方法に関し、ここで、当該方法は、ブランクマトリックスサンプルに、1つ以上の既知の分量の1つ以上の分析物を添加して、それぞれの添加された分析物の多重同位体分子種反応モニタリング(MIRM)によって、1つ以上の1サンプル多点外部検量線(OSMECC)を構築することを含み、ここで、分析物のMIRMは、分析物の複数の同位体トランジションの多重反応モニタリングをいい;ここで、それぞれの分析物のOSMECCは、MIRMトランジションにおいて計算した理論上の同位体存在率(分析物濃度当量)と、対応するMIRMトランジションにおいて測定したタンデム質量分析(MS/MS)ピーク面積(または、アッセイに内部標準が用いられる場合、ピーク面積比)との関係に基づいて、ブランクマトリックスサンプル中に構築され;ここで、研究サンプルにおける少なくとも1つの分析物の濃度は、確立したOSMECC、および液体クロマトグラフィー-タンデム質量分析(LC-MS/MS)工程からの分析物について測定したピーク面積(または、アッセイに内部標準が用いられている場合、ピーク面積比)を用いて定量し;ここで、分析物についてのピーク面積比は、分析物のピーク面積を内部標準のピーク面積で割ったものであり、ここで、タンデム質量分析計は、多重反応モニタリングにおいて操作する。
【0137】
本開示はさらに、以下の実施例によって説明されるが、これはさらなる限定として解釈されるべきではない。本出願全体にわたって引用される全ての文献の内容は、参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【実施例
【0138】
実施例1
MIRM-ISCC-LC-MS/MS分析のための、SIL分析物の調製
ギ酸(SupraPur grade)を、EMD Chemicals(Gibbstown, NJ, USA)から購入した。HPLCグレードのメタノールおよびアセトニトリルは、J.T. Baker(Phillipsburg, NJ, USA)から購入した。LCグレードの重炭酸アンモニウムおよび0.05%tween(PBST)を含むリン酸緩衝生理食塩水は、Sigma-Aldrich(St. Louis, MO, USA)から購入した。Dynabeads(登録商標) M-280 ストレプトアビジンは、Invitrogen(Carlsbad, CA, USA)から購入した。シーケンシンググレードの修飾トリプシンは、Promega Corporation(Madison, WI, USA)から購入した。分化クラスター73(CD73)の全ての非標識および標識代替ペプチド:VIYPAVEGR(配列番号:1)およびV[Ile(1315N)]YPAVEGR(配列番号:1);プログラム細胞死タンパク質1(PD-1):LAAFPEDR(配列番号:2)およびLAAFPED[Arg(1315)](配列番号:2);並びにプログラム細胞死リガンド1(PD-L1):LQDAGVYR(配列番号:3)およびLQDAG[Val(1315N)]YR(配列番号:3)は、Genscript(Piscataway, NJ, USA)から購入した。脱イオン水は、Barnstead International(Dubuque, IA, USA)からのNANOpure Diamond ultrapure water systemを用いて生成した。組み換えヒトCD73(61,084Da)、抗ヒトCD73モノクローナル抗体(mAb)、小分子薬ダクラタスビル、およびSIL薬、13 15-ダクラタスビルを作成した。
【0139】
用いたLC-MS/MS系は、Nexera UPLC系(Shimadzu, Columbia, MD)と結合した、トリプル四重極6500質量分析計(AB Sciex, Foster City, CA)であった。UPLC系は、2つのLC-30ADポンプ、1つのSIL-30ACMP オートサンプラー、および1つのCTO-30AS カラムヒーターから成る。分離は、Acquity HSS T3 分析カラム(2.1mmx50mm、粒子径1.8μm)(Waters, Milford, MA)において、0.01%ギ酸/水(A)および0.01%ギ酸/アセトニトリル(B)の移動相を用いた勾配溶出によって、行った。LC-MS/MSデータは、Analyst(登録商標) Software(1.6.2)によって取得した。
【0140】
追跡のためのMIRMチャンネルの選択
図1は、例として、プログラム死リガンド1(PD-L1)ペプチド LQDAGVYR(配列番号:3)の定量分析を用いた、一般的なMIRM-ISCC-LC-MS/MS法を示す。それぞれの100μLの研究サンプルに、既知量のSIL分析物 LQDAG[Val(1315N)]YR(配列番号:3)(20μLの500ng/mL=10ng)をスパイクすることによって、この標識された分析物のMIRMチャンネル中の計算した理論上の同位体存在率を、対応するMIRMチャンネル中のSIL分析物の同位体濃度(または、分析物濃度当量)に変換することができる。したがって、それぞれの研究サンプルにおいて、理論上の同位体濃度(または、分析物濃度当量)と、測定したMS/MS応答との間のISCCを確立することができ、このサンプルの分析物濃度は、確立した検量線と分析物のピーク面積に基づいて、すぐに計算することができる。
【0141】
ヒトおよびサル血清における、内因性CD73のMIRM-ISCC-LC-MS/MS定量
CD73は70kDaのタンパク質であり、多くの腫瘍において高い発現を示す。ヒトおよびサル血清におけるCD73の定量分析は、用量選択に役立ち、抗CD73前臨床および臨床薬剤開発のための薬力学的情報を提供するために必要である。当初は、代替マトリックスにおける組み換えCD73参照標準(61,084Da)の段階希釈による、従来の外部検量線を用いた免疫捕捉LC-MS/MSアッセイを開発し、検証した。抗CD73 mAbをCD73の免疫捕捉に用い、次いで変性、トリプシン消化、LC-MS/MS分析を行った。LC-MS/MSアッセイにおいてモニターした代替ペプチド(ヒトおよびサルCD73の両方に固有)は、二価の親イオンからy6イオン(502.3++→628.3)へのSRMトランジション(m/z)を伴う、VIYPAVEGR(配列番号:1)であった。10μLの体積のSIL代替ペプチド、V[Ile(1315N)]YPAVEGR(配列番号:1)を、100ng/mLの濃度で、トリプシン消化の後、それぞれのサンプルに加えた。このアッセイの元の血清サンプル体積は100μLであったため、これは10ng/mL([10μL・100ng/mL]/100μL)の元の血清サンプル中のSILペプチド、または604.792ng/mLの組み換えCD73(10ng/mL・[61,084Da/1010Da])に相当する。この実験において、この標識ペプチドは外部検量線と共にアッセイの内部標準として使用しただけでなく、それぞれの個々の研究サンプルについてのISCCとしてもまた使用した。これにより、外部検量線およびISCCによって測定したCD73濃度を並べて比較することができる。
【0142】
外部検量線およびISCCアプローチを用いて、ヒトおよびサル血清におけるCD73の定量を行う前に、標識された代替ペプチド、V[Ile(1315N)]YPAVEGR(配列番号:1)についてのMIRMチャンネルにおける同位体存在率を計算して測定し、選択したMIRMチャンネルが、予期しない干渉がなく、ISCCを確立するのに信頼性が高く、正確であることを確認する必要がある。
【0143】
トリプル四重極質量分析計におけるペプチドのフラグメント化は、Skyline(MacCoss Lab, Department of Genome Sciences, UW)などのオンラインツールを用いることによって、容易に解決することができる。この場合、y6イオンは娘イオンとしてモニターされるため、娘イオンおよびニュートラルロスは、それぞれC2646 および13 15NC1429と決定される。娘イオン(C2646 )およびニュートラルロス(13 15NC1429)の同位体分布は、オンライン計算機(worldwideweb.sisweb.com/mstools/isotope.html(2019年11月10日にアクセス))を用いて計算し、表1に列挙した。V[Ile(1315N)]YPAVEGR(配列番号:1)についての最も豊富なMIRMチャンネル(100%存在率)および隣接するMIRMチャンネルにおける同位体存在率を計算した。V[ILE(1315N)]YPAVEGR(配列番号:1)について、対応するMIRMチャンネルにおけるSciex API 6500質量分析計を用いた、これらのMIRMチャンネルにおいて計算した理論上の同位体存在率、および測定結果(ピーク面積)を、表2に示す。存在率は、最も豊富なMIRMチャンネルから最も少ないMIRMチャンネルまで6,000倍以上に及ぶ。必要に応じて、より低い同位体存在率もまた計算し、用いることができるが、しかしながら、多くの場合において、トリプル四重極質量分析計の直線範囲を超えるであろう。表2に示されるように、計算した理論上の同位体存在率から測定した結果の割合の差は、13.5%以内であり、これは、同位体不純物および内因性マトリックスからの干渉などのいかなる干渉もなく、測定結果が正確であり、信頼でき、そのため、これらのMIRMチャンネルは、MIRM-ISCC-LC-MS/MS絶対定量分析に選択することができることを示す。
【0144】
SILペプチドについてのMIRMチャンネル中の、計算した理論上の同位体存在率を用いて、ISCCに用いられる10個の選択されたMIRMチャンネル中の、スパイクしたSILペプチド同位体濃度(およびCD73タンパク質濃度当量)を計算し、表2の右の2つの欄に列挙した。ISCCは、これらの濃度(x軸)と、対応するMIRMチャンネルにおける測定したMS/MSピーク面積(y軸)を用いて、それぞれの研究サンプル中に構築される。検量線回帰および濃度計算は、社内で開発したソフトを用いて行った。加重(1/x)線形最小二乗回帰を、全てのISCCについて用いた。ヒト血漿における、サンプル番号1について、最初の3回の注入について、ISCCの性能、線形曲線(切片および直線勾配)および計算された濃度を、それぞれ表3および4に示す(全てのサンプルは、3回の反復において抽出し、分析した)。表3に示すように、これらの3回の反復について優れたISCC性能が観察された。ISCCに用いられる10個のMIRMチャンネルと、2回目の注入についての1つのSRMチャンネルについての代表的なクロマトグラムは、図2Aおよび2Bに示す。
【0145】
外部検量線およびISCCアプローチを用いた、ヒトおよびサル血清中の内因性CD73量の定量分析の結果は、表5に列挙する。全体として、ISCCアプローチによって測定したCD73濃度は、外部検量線を用いて測定した濃度よりも、約11%から17%低い。これは、研究サンプルの免疫捕捉および消化損失が追跡され、外部検量線により補正されたために、免疫捕捉および消化のために86.0%の回収率であったことが原因である。しかしながら、消化後にSILペプチドをスパイクしたため、ISCCアプローチの場合はそうではなかった。そのため、表5に示すように、ISCCアプローチで測定された濃度は、86.0%の回収率によって補正するべきであり、補正された濃度は、外部検量線を用いて測定した濃度とと非常に良く一致した。
【0146】
最終アッセイには全ての有望なMIRMチャンネルを含めることは必要ではない。ヒト血清中のCD73の定量について選択されたMIRMチャンネルを、表2に示す。サンプル分析の実行において用いられるMIRMチャンネルを選択する際には、いくつかの考慮事項がある:
【0147】
ISCC曲線範囲は、選択されたMIRMチャンネルの同位体存在率範囲によって定義される。そのため、予想される濃度範囲をカバーするために、適切なMIRMチャンネルを選択する必要がある。この作業において、選択されたMIRMチャンネルは、約1,600倍の曲線範囲をカバーし、投与後のCD73の予想される増加をカバーした。
【0148】
同位体存在率の計算値と測定値の間に、大きな%Dev(>15%)が存在する任意のMIRMチャンネルは、大きな%Devは通常、同位体不純物および内因性マトリックスからの干渉など、MIRMチャンネル中に潜在的な干渉が存在することを意味するため、選択するべきではない。そのため、MIRMチャンネルの選択については、複数のマトリックスロットをテストすべきである。
【0149】
同位体の存在率が近い複数のMIRMチャンネルの中から、1つのMIRMチャンネルのみを選択するべきである。この例において、表2に示すように、MIRMチャンネル4および5、7および8は、それぞれ非常に近い同位体存在率を有するため、MIRMチャンネル4および8は選択しなかった。
【0150】
実証の目的のみのために、本実施例において、計10個のMIRMチャンネルを用いた。より少ないMIRMチャンネル(1,000倍の曲線について、4~5個のMIRMチャンネル)を用いても、データ品質に影響はない。
表1
安定同位体標識ペプチド V[Ile(1315N)]YPAVEGR(配列番号:1)のニュートラルロス(13 15NC1429)および娘イオン([C2646)の同位体分布
【表1】

注:親イオン:[13 15NC40761113++、二価(Z=2)

【表2】

10μLの100ng/mL(1ng)のSILペプチドを、消化サンプル中にスパイクした。アッセイに用いた元のサンプル体積は100μLであったため、これは、元のサンプルにおいて、最も豊富なMIRMチャンネルに10ng/mLのSILペプチドが存在するのと同じである。隣接するMIRMチャンネルにおける他のSILペプチド同位体濃度は、計算された理論上の相対同位体存在率に基づいて計算した。
CD73タンパク質濃度当量=SILペプチド同位体濃度*(組み換えCD73分子量 61,084/SILペプチド分子量 1010)。

【表3】

【表4】

【表5】

ISCCを用いたCD73タンパク質濃度と、外部検量線を用いたCD73タンパク質濃度の差の割合
スパイクしたSILペプチドは免疫捕捉および消化ステップを経ていないため、CD73濃度を免疫捕捉および消化の回復(86.0%)によって補正した。
ISCCを用いた回復補正CD73タンパク質濃度と、外部検量線を用いたCD73タンパク質濃度の差の割合
【0151】
実施例2
消化されたヒト大腸ホモジネート中のタンパク質バイオマーカー PD-1、PD-L1、およびCD73の代替ペプチドのMIRM-ISCC-LC-MS/MS定量
上記のMIRM-ISCC-LC-MS/MS法は、複数のペプチド標的についての絶対定量プロテオミクスのために、消化サンプルに既知量の複数のSIL代替ペプチドをスパイクすることによって、容易に定量的プロテオミクスに適用することができる。AQUAアプローチと同様に、ISCCの定量もまた、サンプル中にスパイクしたSIL代替ペプチドの濃度に基づく。しかしながら、それぞれの標的ペプチドについて、1つの較正点のみをAQUAアプローチにおいて用いるため、特に、標的ペプチドの濃度が、スパイクしたSIL代替ペプチドの濃度よりもはるかに高いか、はるかに低い場合、定量の精度は大幅に低下する可能性がある。一方で、MIRM-ISCC-LC-MS/MSアプローチは、各標的ペプチドについて、3~4桁の完全な検量線範囲を提供することができ、定量の精度は、検量線範囲全体で保証することができる。
【0152】
この実施例において、3つの代替ペプチド、PD-1についてLAAFPEDR(配列番号:2)、PD-L1についてLQDAGVYR(配列番号:3)、およびCD73についてVIYPAVEGR(配列番号:1)を混合し、それぞれ1.00、10.0、および50.0ng/mLの濃度で、トリプシンで完全に消化したヒト大腸組織ホモジネートにスパイクした。100μLの体積の調製したサンプルをアッセイに用いた。MIRM-ISCC-LC-MS/MS分析のために、10ng(500ng/mLを20μL)のそれぞれのSILペプチド LAAFPED[Arg(1315)](配列番号:2)、LQDAG[Val(1315N)]YR(配列番号:3)、およびV[Ile(1315N)]YPAVEGR(配列番号:1)の、10%メタノール90%水中の混合物を、調製したサンプルに添加した。サンプル中のそれぞれのSILペプチドの濃度は、100ng/mL(10ng/100μL)である。表6は、これらの3つのペプチドのMIRM-ISCC-LC-MS/MS定量分析に用いられる、MIRMチャンネル、それらの同位体濃度、および分析物濃度当量を示す。全てのISCC曲線に加重(1/x)最小二乗直線回帰を用いた。(見かけの濃度の10.0%以内の、データは示されていない)全ての較正点についての非常に正確な予測濃度によって、良好なISCC性能が実証された。これらの3つのペプチドの測定濃度を表7に示し、MIRM-ISCC-LC-MS/MS測定の精度は、試験したサンプルの全てによって確認した。
表6
消化されたヒト大腸ホモジネートにおける、LAAFPEDR(配列番号:2)、LQDAGVYR(配列番号:3)、およびVIYPAVEGR(配列番号:1)のMIRM-ISCC-LC-MS/MS定量分析について用いた、MIRMチャンネルおよびその同位体濃度
【表6】

:ISCC LAAFPEDR(配列番号:2)濃度当量=ISCC SIL-LAAFPEDR(配列番号:2)同位体濃度*(LAAFPEDR(配列番号:2)分子量 918/SIL-LAAFPEDR(配列番号:2) 分子量928)
:ISCC LQDAGVYR(配列番号:3)濃度当量=ISCC SIL-LQDAGVYR(配列番号:3)同位体濃度*(LQDAGVYR(配列番号:3)分子量 921/SIL-LQDAGVYR(配列番号:3)分子量 927)
:ISCC VIYPAVEGR(配列番号:1)濃度当量=ISCC SIL-VIYPAVEGR(配列番号:1)同位体濃度*(VIYPAVEGR(配列番号:1)分子量 1003/SIL-VIYPAVEGR(配列番号:1)分子量 1010)

表7.MIRM-ISCC-LC-MS/MSを用いた、完全消化大腸組織ホモジネートにおける、代替ペプチド LAAFPEDR(配列番号:2)、LQDAGVYR(配列番号:3)、およびVIYPAVEGR(配列番号:1)の定量分析
【表7】
【0153】
複数のペプチドの標的定量プロテオミクスにおけるMIRM-ISCC-LC-MS/MSアプローチの1つの潜在的な問題は、LC-MS/MSの実行においてモニターする必要のあるMIRMチャンネルの総数が多すぎて、トリプル四重極質量分析計によって処理することができない可能性があることである。この問題は、各標的ペプチドの異なる保持時間枠に基づいてスケジュールされたMIRMを用い、それぞれのISCCにおいてより少ないMIRMチャンネルを用いることによって、軽減することができうる。正確で信頼性の高い定量は、2~3桁の濃度範囲について、3~4個のMIRMチャンネルを多重形式で用いることによっても達成することができることが結果から示された。
【0154】
実施例3
ヒトおよびラット血漿中の小分子薬ダクラタスビルのMIRM-ICSS-LC-MS/MS分析
娘イオンおよびニュートラルロスが決定された後、同じMIRM-ISCC-LC-MS/MSワークフローもまた、小分子薬物およびバイオマーカーなどの小分子分析物の測定に用いることができる。ここで、MIRM-ISCC-LC-MS/MSアプローチを用いた、ヒトおよびラット血漿中の小分子薬物、ダクラタスビルの即時定量分析の例を示す。
【0155】
10、100、500、および1,000ng/mLのダクラタスビルの、100μLのヒトおよびラット血漿サンプルを、それぞれヒトおよびラット血漿中に、20μLの5,000ng/mLのSIL 13 15-ダクラタスビルと混合した。ヒトおよびラット血漿サンプルにおける13 15-ダクラタスビルの当量濃度は、1,000ng/mL([20μLx5,000ng/mL]/100μL=1,000ng/mL)であった。サンプルを液液抽出によって抽出し(H. Jiang et al, Journal of Chromatography A 2012, 1245, 117-121)、MIRM-ISCC-LC-MS/MS分析に注入した。表8は、ダクラタスビルの定量のためのISCCにおいて用いられる、MIRMチャンネルとその同位体濃度を示す。全てのISCCは、加重(1/x)最小二乗線形回帰を用いて構築した。全ての較正点についての予想濃度は、十分に、規制されたLC-MS/MSバイオアナリシスの許容基準の範囲内である(データは示されていない)。表9は、ヒトおよびラットの血漿中のダクラタスビルの測定結果を示し、これはダクラタスビルのMIRM-ISCC-LC-MS/MS分析が正確であったことを示す。

表8.ダクラタスビルのMIRM-ISCC-LC-MS/MS定量分析に用いられる、MIRMチャンネルおよびその同位体濃度
【表8】

:ISCCダクラタスビル濃度当量=ISCC SIL-ダクラタスビル同位体濃度*(ダクラタスビル分子量 739/SIL-ダクラタスビル分子量 745)

表9.MIRM-ISCC-LC-MS/MSを用いた、ヒトおよびラット血漿におけるダクラタスビルの定量分析
【表9】
【0156】
MIRM-ISCC-LC-MS/MSアッセイについてのさらなる考慮事項
MIRM-ISCC-LC-MS/MSアッセイの開発およびサンプル分析を成功させるために、いくつかのさらなる考慮事項が存在する。適切なSIL分析物の選択は、信頼性が高く安定した定量MIRM-ISCC-LC-MS/MSアッセイの開発に重要な因子の1つである。選択したMIRMチャンネルにおける、この標識分析物の同位体存在率は、分析物の定量分析のための検量線として用いられるため、標識された分析物は、分析物からの同位体干渉を回避するように設計する必要があり、この干渉はアッセイの精度を損なう可能性がある。経験則では、ほとんどの小分子化合物および6~12個のアミノ酸を含むペプチド分析物について、干渉を回避するために、4~6個の標識が必要である。ISCCアプローチの場合、それぞれの研究サンプルにおいて、アッセイの定量上限(ULOQ)を定義するために、大量のSIL分析物が必要であるため、SIL分析物の不純物(非標識分析物の量)は、SIL分析物から分析物への干渉を回避するのに十分低くする必要がある。さらに、標識不純物(SIL分析物よりも少ない、または多い標識部位を有する、標識分析物の量)もまた、SIL分析物のMIRMチャンネル中の同位体存在率への干渉を回避するように、十分に低くする必要がある。
【0157】
重水素標識は非常に費用対効果が高く、容易に利用可能であるが、重水素標識分析物は非標識分析物から容易に分離され、さらに重要なことには、水素-重水素交換反応によって、陽子と重陽子の交換が容易に生じ、MIRMチャンネルにおける同位体存在率の正確な計算が不可能になるため、重水素標識分析物はISCCアプローチにおいて回避すべきである。
【0158】
適切に較正されたトリプル四重極質量分析計を使用することは、MIRM-ISCC-LC-MS/MSアプローチの成功のためのもう1つの因子である。1価および2価の親イオンの場合、Q1およびQ3の両方についての単位分解能(半分の高さにおける全幅-FWHH=0.7質量単位)は、対応するMIRMチャンネルにおいて計算した理論上の同位体存在率に近接する、正確なMS/MS応答を生成するのに十分に良好である。必要に応じて、Q1の分解能を高くすると(FWHH=0.5質量単位)、測定精度が向上しうるが、機器の感度がいくらか失われるという代償がある。Q3において高い分解能(FWHH=0.5質量単位)を用いることは、測定精度の向上には役に立たないことが、我々の試験結果から示された。
【0159】
同位体間隔(Zp=1の場合1Da、Zp=2の場合0.5Da、Zp=3の場合0.33Daなど)は、電荷数(Zp)の増加と共に徐々に減少するため、3価(以上)の親イオンを含むMIRMチャンネルにおける同位体存在率の正確な測定は、FWHH0.5質量単位を有する分解能を用いたとしても、困難であるであろうことが予想される。高いMS/MS応答を有する3価(以上)の親イオンは利用可能でないため、この作業において、3価(以上)の親イオンを有するMIRMチャンネルにおける同位体存在率は試験しなかった。
【0160】
ISCCは、人的および機器的操作を伴わずに、選択されたMIRMチャンネルにおいて、天然に存在する同位体存在率を用いて構築されるため、確立されたISCCについての性能は、アッセイの認定およびサンプル分析の間、サンプル間で非常に類似しているはずである。いくつかのサンプルに関して、1つのMIRMチャンネルにおける予測できない有意な偏りは、通常これらのマトリックスロットからの内因性干渉を示しており、この点を除外しても、データの精度に大きな影響はない。一方で、多くのサンプルについて、ほとんどのMIRMチャンネルにおける任意の予測できない有意な偏りは、MS機器の較正に失敗していることを示す。
【0161】
ISCCはそれぞれの研究サンプルに存在し、そのため、研究サンプルにSIL分析物をスパイクした後、全ての変数、例えば、抽出、注入、イオン化、フラグメント化、および検出からの変数などは、ISCC自体によって追跡され、補正されるため、MIRM-ISCC-LC-MS/MSアプローチにおいて、さらなるアッセイの内部標準を追加する必要はない。このため、例えば、実施例3における、小分子薬物ダクラタスビルの分析において、サンプル調製の最初にサンプルにSILダクラタスビルをスパイクしたように、SIL分析物をサンプル調製においてできるだけ早くスパイクすることによって、アッセイ性能はさらに向上しうる。ただし、免疫捕捉を用いたタンパク質分析の場合、標識ペプチドは、免疫捕捉の後、および免疫捕捉の間の任意のバリエーションの後にのみスパイクすることができ、実施例1におけるCD73タンパク質の分析のように、トリプシン消化は追跡および補正されない。この問題は、SILタンパク質を、サンプル調製の最初に標識された代替ペプチドの一部によってスパイクすることによって解決することができる。
【0162】
ISCCはそれぞれの個々のサンプルに存在し、現在、複数のMIRMチャンネルからのピーク面積を用いてISCCを構築することができる市販のソフトウェアは存在しないため、本研究において社内開発ソフトウェアを使用して、加重最小二乗回帰アルゴリズムを用いてISCCを生成し、バッチ中のサンプル濃度を計算した。MIRM-ISCC-LC-MS/MS法の幅広い応用は、主要な質量分析会社による市販のソフトウェア開発に依存する。
【0163】
実施例4
1サンプル多点外部検量線を用いた定量LC-MS/MSバイオアナリシスおよびMIRM技術を用いた同位体サンプル希釈
用いたLC-MS/MS系は、Nexera UPLC system(Shimadzu, Columbia, MD)を結合した、トリプル四重極6500質量分析計(AB Sciex, Foster City, CA)であった。UPLC系は、2つのLC-30ADポンプ、1つのSIL-30ACMPオートサンプラー、および1つのCTO-30ASカラムヒーターから成る。分離は、0.1%ギ酸を含む、10mM酢酸アンモニウム/水/アセトニトリル(90/10)、および0.1%ギ酸を含む、10mM酢酸アンモニウム/水/アセトニトリル(10/90)の移動相を用いた勾配溶出によって、Acquity HSS T3 分析カラム(2.1 mmx50 mm, 粒子径 1.8 μm)(Waters, Milford, MA)において行った。流速は0.8mL/分であった。LC-MS/MSデータは、Analyst Software(1.6.2)(AB Sciex, Foster City, CA)によって得た。
【0164】
マルチサンプル外部検量線、1サンプル多点外部検量線、およびISCCを用いるダクラタスビルのLC-MS/MS定量のための、サンプル調製。ダクラタスビルおよび13 15-ダクラタスビルについての全てのストック溶液を、アセトニトリル/DMSO(1/1、v/v)中で調製した。20000ng/mLにおけるダクラタスビルは、0.5mg/mLのストック溶液をヒト血漿で適切に希釈することによって調製した。1000、800、500、100、20、4、2、および1ng/mLの濃度におけるダクラタスビルのマルチサンプル外部検量線は、20000ng/mLのダクラタスビルをヒト血漿中で段階希釈することによって調製した。20000、5000、800、500、40、3、および1ng/mLのダクラタスビルにおけるQCサンプルは、0.5mg/mLのダクラタスビルのストック溶液を段階希釈することによって調製した。
【0165】
5000ng/mLの濃度のダクラタスビルは、0.5mg/mLのダクラタスビルのストック溶液を適切に希釈して、メタノール/水(10/90)中に調製し、この溶液は、1サンプル多点外部検量線を構築するために用いた。5040.6ng/mLにおける13 15-ダクラタスビルは、0.5mg/mLの13 15-ダクラタスビルのストック溶液をメタノール/水(10/90)によって適切に希釈することによって調製し、この溶液は、それぞれのサンプルにおいてISCCを構築するために用い、またマルチサンプル外部検量線および1サンプル多点外部検量線アプローチの両方について、アッセイ安定同位体標識内部標準(SIL-IS)として用いた。
【0166】
1~1000ng/mLの2つのマルチサンプル外部検量線、1、3、40、500、および800ng/mLのQCサンプルの6回の反復、および2つの1サンプル多点外部検量線(既知量のダクラタスビルをスパイクする、2つのブランク血漿サンプル)のために、100μLの血漿サンプルの分割量を、96ウェルプレートに移した。5000および20000ng/mLのQCサンプルを、それぞれ100および200倍希釈し、100μLの希釈および非希釈の両方のQCサンプルを、5000および20000ng/mL(それぞれ6回の反復)で96ウェルプレートに移した。10%メタノールおよび90%水中の、5000ng/mLのダクラタスビルの20μLの体積を、2つのブランクヒト血漿サンプルに加え、2つの1サンプル多点外部検量線を構築し、10%メタノールおよび90%水の20μLの体積を、埋め合わせとして他のサンプルに加えた。10%メタノールおよび90%水中の、5040.6ng/mLの13 15-ダクラタスビルの20μLの分割量を、96ウェルプレートのそれぞれの血漿サンプルに加えた。マルチサンプル外部検量線および1サンプル多点外部検量線について、13 15-ダクラタスビルをアッセイSIL-ISとして用いた。また、各サンプルのISCCを構築するために、SIL分析物としても用いた。
【0167】
サンプルは、Janus Mini liquid handler(PerkinElmer, Waltham, MA)を用いて、液液抽出(H. Jiang et al, Journal of Chromatography A 2012, 1245, 117-121)によって抽出した。1M 重炭酸アンモニウム緩衝液の50μLの体積を、それぞれサンプルに加え、次いで600μLのMTBEを加えた。96ウェルプレートを5分間ボルテックスし、400μLの上清を新たな96ウェルプレートに移し、50℃で蒸発乾燥させた。LC-MS/MS分析のために、サンプルを100μLの10%メタノール/水によって再構成した。
【0168】
マルチサンプル外部検量線、1サンプル多点外部検量線(OSMECC)、およびサンプル内検量線(ISCC)のそれぞれについて追跡した、MRMおよびMIRMトランジションの概要を、図4Aに示す。同位体サンプル希釈に用いられるSRMチャンネルおよび対応する同位体希釈因子(IDF)はまた、図4Aに示される。用いた2つのマルチサンプル外部検量線および2つの1サンプル多点外部検量線についての検量線性能は、2つのISCCと同様に、図4Bに示される。
【0169】
マルチサンプル外部検量線、1サンプル多点外部検量線、およびISCCを用いたQCサンプルについての正確性および精度データは、図5Aに示される。5000および20000ng/mLのQCサンプルは、それぞれ2段階希釈によって、100倍および200倍物理的に希釈した。この例において、QCサンプルの同じセットの濃度を、3つの異なる種類の検量線によって計算した。これらの3つの種類の検量線による全ての濃度レベルにおいて、QCサンプルの正確な測定が実証され、1サンプルマルチポイント検量線およびISCCのいずれも、従来のマルチサンプル外部検量線と同等の精度で、生物分析データを提供することができることが実証された。そのため、従来からマルチサンプル外部検量線が用いられているLC-MS/MS生物分析アッセイにおいて、これらを用いることができる。
【0170】
アッセイのULOQを超える濃度のサンプルについてのサンプル希釈ステップを排除するために、MIRM技術を用いた同位体サンプル希釈アプローチを、5000、20000、および50000ng/mLのQCサンプルを用いて、3つの種類の検量線全てによって評価した。図5Bに示すように、5000および20000ng/mLにおけるQCサンプルの正確な測定は、最大1040倍の同位体希釈因子(IDF)を用いた、3つの異なる検量線を使用して達成した。ISCCのみが、1695および4386のIDFで、20000ng/mLにおけるQCサンプルの正確な測定を提供した。さらに、1695および4386のIDFは、50000ng/mLの濃度のQCサンプルを用いてISCCについて評価され、両方のIDFについて正確な測定が達成された。そのため、同位体サンプル希釈アプローチをLC-MS/MS生物分析アプローチに用いて、物理的なサンプル希釈ステップを排除することができる。
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【0171】
この出願を通して、様々な刊行物は、著者名および日付によって、あるいは特許番号または特許公開番号によって括弧内に参照される。これらの刊行物の開示は、本明細書に記載および請求された開示の日付の時点で、当業者に既知の最新の技術をより完全に説明するために、参照によってその全体が本明細書に援用される。しかしながら、本明細書における参照文献の引用は、そのような参照文献が本開示の先行文献であることの承認として解釈されるべきではない。
図1
図2A
図2B
図3
図4A
図4B
図5A
図5B
【配列表】
2022510407000001.app
【国際調査報告】