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特表2022-510415脊柱管狭窄症の処置のための新規な外科的方法
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】脊柱管狭窄症の処置のための新規な外科的方法
(51)【国際特許分類】
   A61B 17/86 20060101AFI20220119BHJP
   A61B 17/82 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
A61B17/86
A61B17/82
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531806
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-07-29
(86)【国際出願番号】 EP2019083732
(87)【国際公開番号】W WO2020115163
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】16/209,029
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】511206559
【氏名又は名称】スパインウェルディング・アクチェンゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】SPINEWELDING AG
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】グロプ,ディーター
(72)【発明者】
【氏名】マイヤー,イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ファン・ハーベルマート,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】ベッツ,ランドール・アール
【テーマコード(参考)】
4C160
【Fターム(参考)】
4C160LL37
(57)【要約】
本発明は、外科的処置の分野にあり、特に脊椎手術のための方法に関する。本発明の第1の態様は、脊柱管狭窄症の処置のための方法であって、筋起始部または停止部を棘突起から切り離すステップと、椎弓板への移行部において棘突起を切り離すステップと、椎弓板を少なくとも部分的に切除し、以て椎孔内で脊髄を除圧するステップと、棘突起の骨接合を行うステップと、棘突起内に縫合糸アンカーを配置して、筋起始部または筋停止部を棘突起に再び付着させるステップとを含む、方法に関する。本発明の第2の態様は、縫合糸アンカーがテンションバンドワイヤリングを実装するために使用される、脊椎安定化のための方法に関する。本発明の第3の態様は、脊椎処置後の望ましくない効果を低減するための方法に関する。本発明はさらに、縫合糸アンカー、特に上記方法で使用することができる縫合糸アンカーに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脊柱管狭窄症の処置のための方法であって、
筋起始部または筋停止部を棘突起から切り離すステップと、
椎弓板への移行部において前記棘突起を切り離すステップと、
前記椎弓板の少なくとも一部を切除し、以て椎孔内で脊髄を除圧するステップと、
前記棘突起の骨接合を行うステップと、
前記棘突起内に縫合糸アンカーを配置し、前記筋起始部または前記筋停止部を前記棘突起に再び付着させるステップとを含む、方法。
【請求項2】
前記筋起始部または前記筋停止部が、前記棘突起の両側ではなく、左側または右側でのみ切断される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記縫合糸アンカーが、熱可塑性を有する材料を含み、前記熱可塑性を有する材料のin situ液化に使用される振動エネルギーによって骨開口部に固定される、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記棘突起の前記骨接合が、熱可塑性を有する材料を含み、かつ前記熱可塑性を有する材料のin situ液化に使用される振動エネルギーによって前記骨開口部に固定される少なくとも2つのアンカーを使用して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記棘突起の前記骨接合が、生分解性材料で全体を作製されたプレートを使用して行われる、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記脊柱管狭窄症が、頸部脊柱管狭窄症、胸部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症または広範囲脊柱管狭窄症である、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
前記棘突起の片側で起始または停止するすべての筋肉の前記起始部または前記停止部が切り離される、請求項1に記載の方法。
【請求項8】
多裂筋および回旋筋、頭板状筋、頸板状筋、頭半棘筋、胸半棘筋、および脊柱起立筋からなる群から選択される少なくとも1つの筋肉の前記起始部または前記停止部が切り離される、請求項1に記載の方法。
【請求項9】
前記縫合糸アンカーおよび骨接合中に使用される前記アンカーが単一皮質的に埋め込まれる、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
脊椎安定化のための方法であって、
少なくとも2つの隣接する椎骨の椎弓板毎にまたは椎弓根毎に少なくとも1つの縫合糸アンカーを位置決めするステップと、
前記椎弓板または前記椎弓根内の対応する位置において異なる椎骨内に位置する2つのアンカーの縫合糸端をともに結び付けるステップと
を含む、方法。
【請求項11】
前記縫合糸アンカーが、熱可塑性を有する材料を含み、前記熱可塑性を有する材料のin situ液化に使用される振動エネルギーによって骨開口部に固定される、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記縫合糸アンカーが、単一皮質的にのみ埋め込まれる、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記隣接する椎骨の下側が、脊椎固定術によってさらに下方の前記椎骨に接合される、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
前記固定がハードウェアによって補完される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記結ばれた縫合糸が、人工靭帯を使用して増強される、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
硬質組織に対して縫合糸をロックするための縫合糸アンカーであって、前記縫合糸アンカーは、前記硬質組織の開口部内に固定されるように設計され、熱可塑性を有する材料と、
前記縫合糸を保持するための、前記アンカーの遠位端にある縫合糸導管と、
前記硬質組織の部分との接触から前記縫合糸を保護するための要素と
を備える、縫合糸アンカー。
【請求項17】
前記縫合糸アンカーが、前記縫合糸を結ばないように固定するために装備される、請求項16に記載の縫合糸アンカー。
【請求項18】
前記縫合糸アンカーが、前記熱可塑性を有する材料を使用して前記縫合糸を結ばないように固定するために装備される、請求項17に記載の縫合糸アンカー。
【請求項19】
前記縫合糸アンカーが、前記熱可塑性材料の折り畳み可能な縫合糸案内導管または他の構造を備える、請求項18に記載の縫合糸アンカー。
【請求項20】
前記縫合糸アンカーが、前記導管を有する縫合糸アンカー本体を有し、前記組織の部分との接触から前記縫合糸を保護するための前記要素が、前記硬質組織の開口部の縁との接触から前記縫合糸を保護するために装備され、前記硬質組織内の前記開口部の縁を横切るように成形された、スリーブを備え、前記縫合糸アンカー本体の近位端に適合するように設計されたチャネルを備える、請求項16~19のいずれか1項に記載の縫合糸アンカー。
【請求項21】
前記スリーブが、前記アンカー本体に対して回転可能である、請求項20に記載の縫合糸アンカー。
【請求項22】
前記チャネルが、前記スリーブの一部を通って延在する貫通開口を備える、請求項20または21に記載の縫合糸アンカー。
【請求項23】
接触から前記縫合糸を保護するための前記要素、前記縫合糸アンカーが、前記導管を有する縫合糸アンカー本体を有し、前記組織の部分との接触から前記縫合糸を保護するための前記要素が、前記硬質組織の開口部の縁との接触から前記縫合糸を保護するために装備され、前記硬質組織内の前記開口部の前記縁の近位に配置されように成形され、かつ前記縫合糸のためのチャネルを備えるプレートまたはディスクを備え、前記プレートまたはディスクは、前記縫合糸アンカー本体の近位端に適合するように設計されている、請求項16~22のいずれか1項に記載の縫合糸アンカー。
【請求項24】
前記ディスクまたはプレートが前記アンカー本体に対して回転可能である、請求項23に記載の縫合糸アンカー。
【請求項25】
前記プレートまたはディスクが、前記縫合糸のための少なくとも1つのチャネルを有する、請求項23または24に記載の縫合糸アンカー。
【請求項26】
前記チャネルが、前記ディスクまたはプレート内の貫通開口および/またはノッチを有する、請求項25に記載の縫合糸アンカー。
【請求項27】
前記縫合糸を前記組織との接触から保護するための前記要素が、前記縫合糸アンカーの近位側方突出部を備え、前記突出部が、前記縫合糸のためのチャネルを備え、前記突出部が、前記骨組織の前記開口部の縁から前記縫合糸を遮蔽するように成形される、請求項16~26のいずれか1項に記載の縫合糸アンカー。
【請求項28】
前記縫合糸を前記組織との接触から保護するための前記要素が、2mmの、前記縫合糸と前記硬質組織および前記組織内の前記開口部の縁との間の最小距離を生じる延伸範囲を有する、請求項16~27のいずれか1項に記載の縫合糸アンカー。
【請求項29】
前記縫合糸を前記硬質組織との接触から保護するための前記要素が可撓性フォイル材料からなる、請求項16~28のいずれか1項に記載の縫合糸アンカー。
【請求項30】
前記縫合糸を前記硬質組織との接触から保護するための前記要素が熱可塑性フォイル材料からなる、請求項16~28のいずれか1項に記載の縫合糸アンカー。
【請求項31】
前記縫合糸を前記硬質組織との接触から保護するための前記要素について、以下の条件、すなわち、前記要素が最大1<mmの厚さおよび最大0.5GPaのヤング率を有すること、前記要素が0.5mm以下の厚さを有すること、のうちの少なくとも1つが成り立つ、請求項16~28のいずれか1項に記載の縫合糸アンカー。
【請求項32】
前記少なくとも1つのチャネルを除いて、前記縫合糸を前記硬質組織との接触から保護するための前記要素が、縫合糸アンカー軸を中心に回転対称である、先行する請求項のいずれか1項に記載の縫合糸アンカー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、外科的処置の分野にあり、特に脊椎手術のための方法に関する。本発明の方法は、主に、変形性脊椎関節症または椎間板変性疾患によって引き起こされ得る脊柱管狭窄症の処置に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
脊柱管狭窄症は、脊髄および脊髄神経の圧迫につながり得る1つまたは複数の領域における脊柱の狭窄である。脊髄除圧術は、脊髄および/または神経根に対する圧力または圧迫によって引き起こされる症状を軽減することを意図した様々な処置を指す一般用語である。椎間板の膨張または崩壊、関節の肥厚、靭帯の弛緩、および骨の成長は、脊柱管および脊髄神経開口部(椎孔)を狭め、刺激を引き起こす可能性がある。脊柱管狭窄症は、脊椎の頸部、腰部または胸部に発生する可能性があり、しばしば慢性的な背中および首の痛みをもたらす。この障害は、通常、以下の1つ以上の狭窄を伴う:(1)脊髄および神経根が通っている脊柱の中央の管、(2)脊髄から分岐する神経の基部または根の管、または(3)神経が脊椎を出て身体の他の部分に向かう椎骨間の開口部。
【0003】
脊柱管狭窄症処置の選択肢は、保存的なものからより侵襲的なものに及び、症状の重症度に依存する。症状が衰弱性であり、非外科的処置が疼痛を緩和することができないレベルに達した場合、長期の緩和のために脊柱管狭窄症処置のための手術が必要とされ得る。脊柱管狭窄症は脊柱管を圧迫する状態の中核をなすため、脊柱管狭窄症の任意の手術は、それに関連する症状を軽減するためにその圧迫を軽減しなければならない。脊椎の除圧術の主な目的は、狭窄した脊髄、神経根または神経が通過するための追加の空間を提供することである。この空間が開放されると、脊柱管狭窄症に関連する疼痛、炎症、およびしびれが軽減するはずである。脊柱管狭窄症のための除圧術が実施されるのはまた、症状に関連するあらゆる失われた可動性または運動技能を回復させるためでもある。
【0004】
椎弓切除術または椎弓切開術は、脊柱管狭窄症を処置するための外科的方法である。これらの処置は、椎弓板と呼ばれる脊柱管の骨弓の小部分を除去することを含む。椎弓切開術中は、椎弓板の一部分のみが除去される。椎弓切除術中は、椎弓板全体が除去される。椎弓板を除去すると、脊柱管が拡大し、したがって圧迫された神経への圧力が緩和される。腰椎固定術が、椎弓切除術と併せて行われることが多い。現在の固定技法は、脊柱管狭窄症処置のリスクを高める。様々な固定技法は、脊椎を取り囲む特定の構造的軟組織(例えば、筋付着部、靭帯)の切断および/または除去を必要とする。
【0005】
代替方法は、椎間孔拡大術または椎間孔天蓋切除術である。両方の処置は、いくらかの骨および他の組織を除去することによって、神経根が脊髄を出るための開口部を拡張するために行われる。椎間孔天蓋切除術は、一般に、大量の骨および組織を除去する処置を指す。上記の技術は、骨棘または骨突起部と呼ばれる骨の成長部を除去することを含む骨棘除去と組み合わされる場合がある。さらなる椎体部分切除術が必要な場合がある。これは、椎骨および椎間板を除去する方法である。
【0006】
技術の組み合わせが使用される場合があり、場合によっては、脊椎を安定させるために椎骨の固定も必要とされる。ますます、外科医は、脊柱管狭窄症のより低侵襲の処置を行う改善された方法を探している。デバイスは、患者に過度の損傷を与えることなく、安全かつ一貫して埋め込むことができなければならない。本発明は、従来技術の欠点を克服すること、または少なくとも改善することに関する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
発明の目的
したがって、本発明の目的は、上記の欠点を少なくとも部分的に克服または緩和することができる方法を提供すること、および/または既知の脊髄除圧方法へのより有用な代替案を提供することである。特に、生来の背部筋肉に対する害がより少ない、椎弓切除術または椎弓切開術のための新規な方法を提供することが目的である。脊椎手術における新たに開発された方法は、縫合糸を非常に短い骨開口部内に固定することを可能にする縫合糸アンカーの使用に基づいており、その結果、アンカーは、固定のための空間をほとんど許容しない構造内に配置され得る。
【課題を解決するための手段】
【0008】
発明の概要
本発明の方法は、脊柱管狭窄症の処置に特に適している。本発明の第1の態様は、脊柱管狭窄症を処置するための方法であって、
棘突起から筋起始部または筋停止部を切り離すステップと、
椎弓板への移行部において棘突起を切り離すステップと、
椎弓板を少なくとも部分的に切除し、以て椎孔内で脊髄を除圧するステップと、
棘突起の骨接合を行うステップと、
縫合糸アンカーを棘突起内に配置し、筋起始部または筋停止部を棘突起に再び付着させるステップとを含む、方法を参照する。
【0009】
本発明の第1の態様による方法は、ほぼすべての椎骨を処置するのに適している。したがって、本発明の第1の態様は、脊柱管狭窄症が頸部脊柱管狭窄症、胸部脊柱管狭窄症、腰部脊柱管狭窄症または広範囲脊柱管狭窄症である方法を含む。
【0010】
任意の一般的な外科的方法として、本発明の方法は、外科的切開(後続の外科的方法または処置を容易にするために皮膚を通して行われる切断)または複数の切開のステップをさらに含み得る。切開の位置およびサイズは、処置される椎骨に依存する。一つの可能性は、背中の正中線の5~10センチメートルの長さの切開を通して背中に近づくことである。切開のステップの後には、通常、身体の外側から関心のある脊椎領域または関心のある椎体の棘突起へのアクセスが準備される。
【0011】
一般に、左右の背部筋肉(脊柱起立筋)は、両側の椎骨から複数のレベルで切開される。本発明の第1の態様の方法を実施することは、棘突起を一方の身体側の筋肉から取り外すだけでよいという利点を有する。これにより、周囲の筋肉に加えられる損傷が減少し、切り離された筋肉を棘突起および無傷の筋停止部または筋起始部への再付着が可能になり、手術後の脊椎の安定性が増加し、患者の回復が加速する。したがって、第1の態様の一実施形態は、1つもしくは複数の筋起始部、または筋停止部が、棘突起(または身体)の両側ではなく、左側または右側のみで切り離される方法に関する。それにより、少なくとも1つの筋肉の少なくとも1つの筋付着部(停止部または起始部)は、棘突起から切り離されなければならない。切り離される少なくとも1つの筋肉の起始部または停止部は、多裂筋および回旋筋(短手筋および長手筋)、頭板状筋、頸板状筋、頭半棘筋(または頸半棘筋)、胸半棘筋(または背半棘筋)、および脊柱起立筋(粘膜筋板、胸最長筋、胸棘筋、頸棘筋、および頭棘筋)からなる群から選択され得る。
【0012】
脊柱起立筋は、ただ1つの筋肉ではなく、仙骨または仙骨領域および臀部から頭蓋骨の基部まで、左右の脊椎の長さにわたってほぼ延在する筋肉および腱の群である。これらの筋肉は、脊柱棘突起の両側に位置し、腰部、胸部および頸部の領域全体に広がる(下背部、中背部、および上背部ならびに頸部)。脊柱起立筋は、腰部および胸部領域(下背部および下中背部)において胸腰筋膜によって覆われ、頸椎領域(頸部)において項靭帯によって覆われている。最長筋は、3つの柱の中間の最大のものである。これは、異なる筋起始部および筋停止部を有する3つの部分を有する。胸最長筋のみが(腰椎の)棘突起からの部分に由来する。棘筋は、最小かつ最も内側の柱である。それはまた3つの部分を有し、胸棘突起がL3-T10の棘突起から起始し、T8-T2の棘突起において停止し、頸棘突起がT2-C6の棘突起から起始し、C4-C2の棘突起において停止する。
【0013】
ほとんどの骨格筋は、我々が腱と呼ぶものによってその端部で骨に付着している。それにもかかわらず、筋肉が付着する構造は、骨、腱または皮下結合組織(腱・靱帯付着部)であり得る。それにより、腱・靱帯付着部は、腱または靭帯と骨との間の結合組織である。筋肉が収縮すると、それらは骨に力を及ぼし、それはその付属器官と共に身体を支持して動かすのに役立つ。筋肉の停止部および起始部は、筋肉が固定される、各端部に1つの2つの場所である。ほとんどの場合、筋肉の一方の端部はその位置が固定され、他方の端部は収縮中に動く。起始部は、収縮中に動かない付着部位であり、停止部は、筋肉が収縮するときに動く付着部位である。言い換えると、筋肉の起始部は、典型的には近位の骨にあり、これは筋肉の停止部よりも大きい質量を有し、収縮中により安定している。処置される椎骨に応じて、異なる筋肉が棘突起に付着する。棘突起は、筋起始部ならびに筋停止部を含み得る。これはまた、異なる椎骨間でも異なる。本発明の方法は、棘突起から少なくとも1つの筋起始部または停止部を切り離すことを含むステップを含む。これは、外科医が棘突起に筋肉を付着させる少なくとも1つの構造を切り開かなければならないことを意味する。しかしながら、2つ以上の筋肉がそれぞれの棘突起に付着している場合、2つ以上の筋付着部を切断する必要があり得る。一般に、棘突起に付着したすべての筋肉を切断することが可能であるが、一方の体側の筋肉のみを切断することが好ましい。したがって、本発明の第1の態様の一実施形態は、棘突起の片側で起始または停止するすべての筋起始部または停止部が切り離される方法に関する。したがって、本発明の方法は、片側アプローチによる両側性除圧を可能にする。
【0014】
一般に、可能な最少の筋肉を切断することができる。処置の以下のステップは、筋肉を妨げることなく実行することができることが保証されるべきである。これらのステップのうちの1つは、椎弓板への移行部において棘突起を切り離すこと(骨切り術)である。上記切断は、冠状面に沿っているか、または少なくともほぼ冠状面に沿っている。したがって、そのステップの代替的な表現は、椎弓板からの棘突起の分離である。その後、棘突起およびまたそれにまだ付着している筋肉を押し退けることができる。椎骨が切断されている棘突起は、筋肉が切断されていない側に向かって(またはすべての筋肉が依然として棘突起に付着している身体側に)動かされ得る。椎弓板を覆う筋肉を慎重に押し退けて骨構造を露出させることができる。したがって、第1の態様の一実施形態は、脊柱管狭窄症の処置のための方法であって、身体の外側から関心のある脊椎領域への切開およびアクセスの準備のステップと、少なくとも1つの筋起始部または停止部を棘突起から切り離すステップと、椎弓板への移行部において棘突起を切り離し(骨切り術)、切断されなかった筋肉と共に棘突起を押すステップと、椎弓板を部分的に切除し、以て椎孔内で脊髄を除圧するステップと、棘突起の骨接合を行うステップと、棘突起内に縫合糸アンカーを配置するステップと、少なくとも1つの筋起始部または筋停止部を棘突起に再び付着させるステップとを含む、方法であり得る。
【0015】
棘突起を切断し、棘突起およびそれに付着した筋肉を押し退けた後、椎弓板に到達し、骨を切断するための器具(例えば、超音波駆動ブレード)を導入するのに十分な空間がなければならない。したがって、次のステップは、椎弓板を少なくとも部分的に切除し、以て椎孔内で脊髄を除圧するステップである。椎弓板の部分切除は、適切な除圧に十分であり得る。それにもかかわらず、椎弓板を完全に除去しなければならない場合もあり得る。さらに、外科医は、椎孔内の骨(例えば、骨棘などの変性変化)をアブレーションするために、または椎間孔を狭窄する脊椎症形成体を除去するために、さらなる器具を導入しなければならない場合がある(または部分切除の場合と同じ器具を使用する場合さえある)。一般に、第1の態様による方法は、任意選択的に、脊髄または脊髄神経の狭窄および圧迫を引き起こす追加の(骨)構造を除去するステップを含むことができる。それにより、除去される構造は、骨棘または脊椎症形成体(椎間関節および椎弓根における変性骨構造)などの骨過成長、肥厚性黄色靭帯、椎間板ヘルニア、滑膜嚢腫および脊髄腫瘍からなる群から選択され得る。
【0016】
除圧後、棘突起を椎弓板に再付着させなければならない。したがって、本発明の方法は、棘突起の骨接合を行うステップを含む。これは、処置される椎骨に適合されたプレートを使用して行われる。これは、椎弓板と棘突起との間の移行部を形成する曲率に適合する。プレートは、棘突起の基部を通る切断部の上にあるべきである。有利には、プレートは、アンカーであって、熱可塑性を有する材料を含み、熱可塑性を有する材料のin situ液化に使用される振動エネルギーによって骨開口部に固定されるアンカーを使用して切断部に隣接する各側に固定される。有利には、プレートは、単一皮質的に固定することができるピンまたはアンカーを使用して骨に取り付けられる。これは、脊髄を取り囲む緻密骨の遠位層が穿刺されないことを意味する。さらに、ピンの長さは、熱可塑性を有する材料のin situ液化中の骨開口部の長さに適合させることができる。したがって、ピンの先端は、溶融し、液化した材料が骨の周囲の海綿状部分に流入するように、熱可塑性を有する材料から作製されなければならない。したがって、骨構造は、ねじまたは返し付きアンカーを使用するときのように弱化されない。
【0017】
その後、筋肉を棘突起に再付着させなければならない。したがって、少なくとも1つの縫合糸アンカーが棘突起内に埋め込まれる。有利には、縫合糸アンカーは、筋起始部もしくは停止部の領域内に、または少なくとも可能な限り近くに埋め込まれる。例えば、2つ以上の筋肉が分離された場合には、2つ以上の縫合糸アンカーを植え込まなければならないことがあり得る。その後、縫合糸の一端は、筋肉を骨に付着させる分離した筋肉または組織(例えば、腱)に通されなければならず、他端は、依然として棘突起に付着している可能性がある対応する筋肉(他方の身体側の同じ筋肉)または筋肉を骨に付着させる組織(例えば、腱)に通されなければならない。通された縫合糸端および必要に応じて追加の器具(ピンセット)を使用して、1つまたは複数の分離した筋肉を棘突起まで引き上げることができる。その後、縫合糸の端部は、再付着されたものの背側で結ぶことができる。それにもかかわらず、結び目のないアンカーを使用することも可能であり得る。
【0018】
棘突起から切り離された筋肉に応じて、追加の任意のステップが含まれてもよい。これにより、棘突起から分離された筋肉は、追加の縫合糸を使用して反対側の同じ筋肉と縫合される(好ましくは棘突起から除去されない)。したがって、両方の筋肉または両方の筋肉を骨に付着させる組織を連結する1つ~5つのステッチが作製される。
【0019】
本発明の方法内で、広範囲の既知のアンカーおよび縫合糸アンカーを使用することが可能である。アンカーおよび縫合糸アンカーは、相当に小さく、2つの開放端を有する少なくとも1つの縫合糸を保持するべきである。それにもかかわらず、本発明の方法内で使用されるアンカーおよび少なくとも1つの縫合糸アンカーは、熱可塑性を有する材料を含むことが有利である。熱可塑性を有するアンカーは、熱可塑性を有する材料のin situ液化に使用される振動エネルギーによって骨開口部に固定することができる。
【0020】
したがって、本発明の第1の態様の一実施形態は、縫合糸アンカーが、熱可塑性を有する材料を含み、かつ熱可塑性を有する材料のin situ液化に使用される振動エネルギーによって(棘突起の)骨開口部に固定される方法に関する。追加の実施形態は、棘突起の骨接合が、熱可塑性を有する材料を含み、かつ熱可塑性を有する材料のin situ液化に使用される振動エネルギーによって骨開口部に固定される少なくとも2つのアンカー(またはピン)を使用して行われる、実施形態に関する。
【0021】
縫合糸アンカーは、靭帯および腱などの軟組織を骨に付着させるために外科的処置中に使用される小型デバイスである。これは、縫合糸の一端を軟組織に結び、縫合糸を骨に「固定」する装置に他端を結び付けることによって達成され得る。縫合糸アンカーは、典型的には、少なくとも1つの縫合糸がアンカーに取り付けられた状態で骨に埋め込まれる。縫合糸取り付けの様々な技法が開発されている。最も一般的には、縫合糸アンカーは、アイレットなどを使用して縫合糸が取り付けられた細長い本体を含む。それにより、アイレットは、縫合糸が通過するアンカーの穴またはループである。縫合糸アンカーは、チタン金属、ポリエーテルエーテルケトン熱可塑性材料、または生分解性吸収性材料から作製され得る。今日、市場には多くの縫合糸アンカーが存在する。一般に、それらは、締まりばめまたは返しによって生成されるポジティブフィットを共通に使用する、ねじ込みアンカーおよび非ねじ込みアンカーとして分類することができる。縫合糸は、典型的には細長い可撓性フィラメントであるが、模造繊維、ラインなどを含む様々な異なる糸または糸状構造をとることができる。縫合糸は、均質または不均質であってもよく、または、単一のフィラメントまたは複合縫合糸、例えば2つ以上の撚られたまたは織られたフィラメントを含んでもよい。さらに、縫合糸は、当該技術分野で知られている吸収性(すなわち、身体によって代謝される)または非吸収性材料の広いアレイから作製されてもよい。
【0022】
本発明による方法で使用することができる縫合糸アンカーに適した熱可塑性を有する材料は、熱可塑性ポリマー、例えば、吸収性または分解性ポリマー、例えば、乳酸および/またはグリコール酸に基づくポリマー(PLA、PLLA、PGA、PLGAなど)またはポリヒドロキシアルカノエート(PHA)、ポリカプロラクトン(PCL)、多糖類、ポリジオキサン(PD)ポリ無水物、ポリペプチドまたは対応するコポリマーまたは列挙されたポリマーを成分として含む複合材料、あるいは、非吸収性もしくは非分解性ポリマー、例えば、ポリオレフィン(例えばポリエチレン)、ポリアクリレート、ポリメタクリレート、ポリカーボネート、ポリアミド、ポリエステル、ポリウレタン、ポリスルホン、ポリアリールケトン、ポリイミド、ポリフェニルスルフィドもしくは液晶ポリマーLCP、ポリアセタール、ハロゲン化ポリマー、特にハロゲン化ポリオレフィン、ポリフェニレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルもしくは同等のコポリマー、または列挙されたポリマーを成分として含む複合材料である。
【0023】
本発明の一実施形態は、少なくとも1つのアンカーが完全に生分解性材料から作製されている、本発明による脊柱管狭窄症の処置の方法に関する。本発明の別の実施形態は、棘突起の骨接合が、完全に生分解性材料から作製されたプレートを使用して行われる、本発明による脊柱管狭窄症の処置の方法に関する。生分解性材料の特定の実施形態は、すべてBohringerのLR 706 PLDLLA 70/30、R208 PLDLA 50/50、L210S、およびPLLA 100% Lのようなポリラクチドである。適切な分解性ポリマー材料のリストは、Erich WintermantelおよびSuk-Woo Haa「Medizinaltechnik mit biokompatiblen Materialien und Verfahren」(3.Auflage,Springer,Berlin 2002)(以下「Wintermantel」と呼ぶ)、200ページにも記載されており、PGAおよびPLAに関する情報については、202ページ以降、PCLについては207ページ、PHB/PHVコポリマーについては206ページ、ポリジオキサノンPDSについては209ページを参照されたい。
【0024】
非分解性材料の特定の実施形態は、ポリエーテルケトン(PEEK Optima、グレード450および150、Invibio Ltd)、ポリエーテルイミド、ポリアミド12、ポリアミド11、ポリアミド6、ポリアミド66、ポリカーボネート、ポリメチルメタクリレート、ポリオキシメチレン、またはポリカーボネート-ウレタン(例えば、DSMによるビオネート、特に65D型および75D型)である。ポリマーおよび用途の概要表は、Wintermantelの150ページに列挙されており、具体例は、Wintermantelの161ページ以降(PE,Hostalen Gur 812,Hochst AG)、第164ページ以降(PET)、169以降(PA、すなわちPA 6およびPA 66)、171以降(PTFE)、173以降(PMMA)、180(PUR、表参照)、186以降(PEEK)、189以降(PSU)、191以降(POM-ポリアセタール、商品名Delrin、TenacはProtecによる体内プロテーゼにも使用されている)に見出すことができる。
【0025】
熱可塑性を有する材料は、さらなる機能を果たす異相または化合物をさらに含み得る。特に、熱可塑性材料は、混合繊維またはウィスカー(例えばリン酸カルシウムセラミックまたはガラスの)によって強化されてもよく、これは複合材料を表す。熱可塑性を有する材料は、in situで膨張または溶解する(細孔を形成する)成分(例えば、ポリエステル、多糖類、ヒドロゲル、リン酸ナトリウム)、インプラントを不透明にし、それと共にX線で見えるようにする化合物、またはin situで放出され、治療効果、例えば治癒および再生の促進を有する化合物(酸性分解の有害作用に対する、リン酸ナトリウムまたは炭酸カルシウムなどの成長因子、抗生物質、炎症阻害剤または緩衝剤)をさらに含有し得る。熱可塑性材料が再吸収可能である場合、そのような化合物の放出は遅延する。デバイスが振動エネルギーを用いてではなく電磁放射を用いて固定される場合、熱可塑性を有する液化可能材料は、例えばリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、リン酸ナトリウム、酸化チタン、マイカ、飽和脂肪酸、多糖類、グルコースまたはそれらの混合物など、特定の周波数範囲(特に可視または赤外周波数範囲)のこのような放射を吸収することが可能である化合物(粒子または分子)を局所的に含み得る。
【0026】
使用される充填剤は、β-リン酸三カルシウム(TCP)、ヒドロキシアパタイト(HA、結晶度<90%)、またはTCP、HA、DHCP、生体ガラスの混合物を含む分解性ポリマーに使用される分解性の骨刺激性充填剤を含み得る(Wintermantelを参照)。非分解性のポリマーについては、部分的にのみ分解性であるかまたはほとんど分解性ではない骨一体化刺激充填剤は、生体ガラス、ハイドロキシアパタイト(>90%の結晶度)、HAPEX(登録商標)を含む。微粒子充填剤の種類は、粗い種類:5~20μm(含有量、当初10~25体積%)、サブミクロン(沈澱反応によるようなナノ充填剤、優先的にプレート状アスペクト比>10、10~50nm、含有量0.5~5体積%)を含む。実験は、超音波振動エネルギーを用いた液化により、液化した材料が、例えば生存可能な網状骨の骨梁構造のような構造を貫通する能力を損なうことなく、熱可塑性ポリマーを比較的高度に充填することが可能になることを示している。この事実は、アンカーの緩みが本発明の方法において問題とならないことを保証する。
【0027】
本発明による方法で使用される縫合糸アンカー、プレートを固定するためのピン、および骨接合プレートは、生体再吸収性であるか、または、生体再吸収性でなく、液化可能もしくは液化不可能であり得る任意の適切な材料または材料の組み合わせ(例えば、ポリマー、金属、セラミック、ガラス)から構成され得る。それにもかかわらず、有利には、縫合糸アンカーの材料の少なくとも一部(遠位部分であってもよい)は、液化可能な材料から作製される。有利には、これらの材料は、非生体再吸収性または非生分解性材料内で使用されず、骨組織と接触すると、特に縫合糸アンカーの材料が生体再吸収性または生分解性であり、したがって、固定機能を骨結合によって徐々に引き継ぐ必要がある、骨結合を促進するために装備された表面(例えばそれ自体既知の表面構造またはコーティング)を備えてもよい。良好な結果は、例えば、LR706としてBohringerから入手可能なような、PDLLA 70%/30%(70%Lおよび30%D/L)の縫合糸アンカーと組み合わされた、ヒドロキシアパタイトまたはリン酸カルシウムで充填されたポリ乳酸(PLA)、特に60%リン酸三カルシウムで充填されたPLLAまたは30%二相性リン酸カルシウムで充填されたPLDLLA 70%/30%(70%Lおよび30%D/L)によって達成された。縫合糸アンカーが縫合糸アンカーに一体化されている場合、2つの物品は、同じ材料、例えば、上述した、60%リン酸三カルシウムで充填されたPLLAまたは30%二相性リン酸カルシウムで充填されたPDLLA 70%/30%(70%Lおよび30%D/L)から構成されてもよく、充填剤含有量は、材料が液化される領域では他の領域よりも少なくてもよい。
【0028】
縫合糸アンカーが骨内に押し込まれる場合、縫合糸アンカーは、少なくともその遠位端に、アンカーが押し込まれる硬質組織に予想される機械的抵抗に依存する対応する機械的強度を有する材料を含む必要がある。そのような抵抗が比較的高い場合(皮質骨または硬く高密度の網状骨に押し込む)、アンカーの遠位端は、例えば、例としてチタンまたはチタン合金などの金属、例えば焼結リン酸カルシウム(例えばヒドロキシアパタイト)またはエンジニアリングセラミック(例えば、ジルコニア、アルミナ)またはPEEKなどのセラミック材料または同等の高耐熱性ポリマーを含み、一方、他のアンカー部分は、例えば、例として上述の充填ポリラクチドなどの生体適合性材料または他の上述の熱可塑性ポリマーのうちの1つから作製される。あるいは、アンカーのそのような遠位端は、例えばPEEKまたはポリラクチドまたはバイオ複合材料上へのリン酸カルシウムまたはチタン粉末のプラズマ溶射堆積によって作製された、硬質で場合によっては研磨性のコーティングを含んでもよい。
【0029】
熱可塑性を有する材料の液化に使用されるエネルギーは、好ましくは機械的振動、特に振動源(例えば、器具が結合されるブースタを場合によって備える圧電振動発生器)によって生成される超音波振動であり、固定器具は、好ましくは遠位面が最大長手方向振幅で振動するように、その近位端から遠位面への振動の伝達に適している。in situ液化のために、振動は、遠位器具面から縫合糸アンカーに伝達され、縫合糸アンカーが相手方要素(硬質組織および/または縫合糸アンカーの一部)に対して保持される場所で摩擦熱に変換される。固定器具を作動させて半径方向または回転方向に振動させることも可能である。
【0030】
あるいは、エネルギー源は、好ましくは可視または赤外周波数範囲のレーザ光を放射するレーザであってもよく、固定器具は、好ましくはガラスファイバを介してこの光をその遠位端に伝達するように装備される。in situ液化のために、レーザ光は、縫合糸アンカーに伝達され、液化が所望される場所で吸収され、縫合糸アンカーの材料は、そのような吸収をもたらす粒子または物質を含有し得る。
【0031】
骨の硬質外層は、網状骨よりもはるかに密度の高い緻密骨とも呼ばれる皮質骨から構成される。これは骨の硬い外側(皮質)を形成する。骨梁または海綿骨とも呼ばれる網状骨は、骨格骨の内部組織であり、開細胞多孔質ネットワークである。椎骨は、海綿状の内部を取り囲む緻密骨の薄層からなる。縫合糸アンカーおよびピンの特定の特性のために、それらはほとんど空間を必要としない。1つの皮質のみが使用されるが、縫合糸の機能に十分な強度が提供されるように、それらを椎骨内に固定することが可能である。したがって、本発明は、縫合糸アンカーおよび/または骨接合中に使用されるアンカーが単一皮質的に埋め込まれる方法に関する。それにより、単一皮質的とは、縫合糸アンカーまたはピンが止まり穴に固定されることを意味する。したがって、アンカーのための骨開口部は、椎骨を取り囲む緻密骨の1つの薄層のみを通過する。さらに、液化および再凝固後の縫合糸アンカーの材料も、緻密骨の第2の皮質または層に侵入しない。これにより、脊髄が損傷しないことが保証される。同様に、これは外側孔に向かう方向に埋め込まれたピンにも当てはまる。この場合、脊髄神経の損傷のリスクが最小限に抑えられる。
【0032】
使用される縫合糸アンカーは、有利には、小さい棘突起の先端内に縫合糸アンカーを設置することを可能にする、縫合糸アンカーよりも短い骨開口部を使用して埋め込むことができるように設計される。したがって、縫合糸アンカー、そのピン状構造またはピンの少なくとも一部は、全体を液化可能な材料から作製されるべきである。縫合糸アンカーの長さ内に位置し、縫合糸アンカーの全断面を含む縫合糸アンカーの少なくとも1つの部分が、液化されるべき熱可塑性材料から作製されることが有利である。このような縫合糸アンカーを使用すると、縫合糸アンカーの液化可能材料が周囲の海綿状骨組織に侵入するため、短い骨開口部を有することが可能になる。したがって、埋め込み中、縫合糸アンカーの長さは短くなるが、アンカーの材料は骨開口部を取り囲む領域内に分散される。これにより、縫合糸に及ぼされる引張力が増加する。棘突起の骨接合に用いるピンについても同様である。
【0033】
外科医が棘突起の両側の筋肉を分離することを選好する場合、棘突起を切断する必要はない。上記のように縫合糸アンカーを使用する場合、棘突起の背側先端に2つのアンカーを設置して筋肉を再付着させることさえ可能である。縫合糸アンカーは、アンカー自体よりも短い骨開口部に適合させることができ、アンカーは骨の構造を脆弱化せず、海綿状構造内に侵入する材料のために骨の構造をより高密度にさえする。したがって、交差する2つのアンカーを使用することが可能である。したがって、棘突起などの最小空間内に2つのアンカーを配置することができる。
【0034】
したがって、一実施形態は、脊柱管狭窄症を処置するための方法であって、
棘突起(の各側)から筋起始部または筋停止部を切り離すステップと、
椎弓板の少なくとも一部を切除し、以て椎孔内で脊髄を除圧するステップと、
2つの縫合糸アンカーを棘突起内に配置し、筋起始部または停止部を棘突起に再び付着させるステップであって、1つの縫合糸アンカーが棘突起の各側に配置される、ステップと、を含む方法である。
【0035】
少なくとも1つの縫合糸アンカーを骨開口部内に挿入し、少なくとも1つの縫合糸アンカーを固定するステップは、器具を使用して縫合糸アンカーを骨開口部内に押し込むことによって、および、同時にまたは後で器具を介して縫合糸アンカーにエネルギーを伝達し、以て、熱可塑性を有する縫合糸アンカーの材料を液化することによって、縫合糸が2つの自由にアクセス可能な端部を有する状態で骨開口部内に縫合糸アンカーを導入するステップを含むことができる。本発明の方法を使用すると、完全停止に達したか否かを判定するためにアンカーを緊密に引っ張る必要はない。
【0036】
これまで説明した外科的処置のための方法の目的は、神経圧迫を軽減すること(除圧)である。変形または不安定性を有する選択された患者では、さらなる脊椎圧迫および再発性症状を防ぐために、脊椎をさらに安定化する(固定)ことが必要である。したがって、椎弓切除術に加えて、適切な除圧を達成するために脊椎固定術も必要であり得る。これは、脊髄神経の神経根が脊椎を出るときに圧迫される場合に特に当てはまり、椎孔狭窄として知られている。第2の態様は、脊椎安定化のための方法に関する。それにより、縫合糸アンカーは、テンションバンドワイヤリングを実施するために使用される。目標は、2つの連接する椎骨を安定させること、またはこれらの椎骨によって形成される脊椎の湾曲を調整することである。したがって、椎骨の脊椎すべり症(前方への変位)または隣接する椎骨に対する椎骨の後方すべり症(後方への変位)は回避されるべきである。それにより、隣接する椎骨は、ほとんどが脊椎固定術の最上部の椎骨である。第2の態様の方法は、椎弓切開術もしくは椎弓切除術後の脊椎減圧に関連して、または脊椎固定術に関連して有用である。第2の態様による方法の主な目的は、力を分散させることによって、固定された分節を固定されていない分節に架橋するための遷移ゾーンを構築することである。
【0037】
これは、固定が意図される脊椎の剛性固定と慎重に区別する必要がある。脊椎固定術は、脊椎固定または脊椎癒着とも呼ばれ、それにより、2つ以上の椎骨を1つの単一構造に接合する神経外科または整形外科の外科技法として定義される。脊椎固定術は、固定された椎骨間の動きを防止する。本明細書に記載の柔軟な安定化または可撓性の安定化は、脊髄分節を可動性のままにし、その意図は、運動分節の耐荷重パターンを変更すること、および、分節における任意の異常運動を制御することである。異常運動およびより生理学的な負荷伝達の制御は、疼痛を軽減し、隣接する分節の変性を防止すべきである。通常の運動および荷重伝達が達成されると、当然のことながら変性があまりにも進行しない限り、損傷した椎間板はそれ自体を修復することができるということがあまり期待されない。
【0038】
除圧椎弓切除術、脊椎固定術または脊椎関節突起切除術後に安定性を付加することが期待される後方ソフト安定化システムが必要とされている。したがって、本発明の第2の態様は、棘突起の他に、脊椎を安定化させるためのテンションバンドワイヤを導入するための新規の方法を記載する。主に、本方法は、椎弓板内に配置することができる上述の少なくとも4つの縫合糸アンカーを含む。重度の脊柱側弯症が脊椎の片側のみでの拘束を示すまれな場合があり得る。そのような場合、2つ(2つの椎骨)または3つ(3つの椎骨)の縫合糸アンカーで十分であり得る。4つの縫合糸アンカーが使用される場合、1つの縫合糸アンカーが椎弓板毎に配置され、2つの縫合糸アンカーが椎骨毎に配置されてもよい。したがって、少なくとも4つの縫合糸アンカーが、2つの椎骨の接続を安定させるために使用される。椎弓板および側面毎に1つの縫合糸アンカーを使用する方法は、頸椎を安定させるのに適し得る。あるいは、縫合糸アンカーを椎骨の椎弓根内に埋め込むことができる。これは、胸椎および腰椎に適している。
【0039】
第2の態様の一実施形態は、脊椎安定化のための方法であって、少なくとも2つの隣接する椎骨の椎弓板毎に少なくとも1つの縫合糸アンカーを位置決めするステップと、椎弓板内の対応する位置において異なる椎骨内に位置する2つのアンカーの縫合糸端をともに結び付けるステップとを含む、方法に関する。さらに、椎弓根内での固定(椎弓根スクリューに類似)が可能である。これは、傍脊椎アクセスを可能にする胸椎の安定化に有利であると思われる。したがって、脊椎から分離なければならない筋肉が少なくなる。この場合も、各椎骨の側面毎に1つの縫合糸アンカーで十分であり得る。
【0040】
各側に1つずつ、棘突起内に縫合糸アンカーを固定することも可能である。頸椎では、1つの椎骨につき1つの縫合糸アンカーのみを使用し、それを棘突起の背側端部に固定すれば十分であり得る。縫合糸アンカーの別の位置は、椎骨横突起であってもよい。張力ワイヤリングが脊柱側弯不安定性を防止するために使用される場合、有利には、椎骨横突起内の片側のみに縫合糸アンカーを誘導することさえできる。
【0041】
したがって、本発明の別の実施形態は、脊椎安定化のための方法であって、少なくとも2つの隣接する椎骨の椎骨毎に少なくとも1つの縫合糸アンカーを位置決めするステップと、椎骨内の対応する位置において異なる椎骨内に位置する2つのアンカーの縫合糸端をともに結び付けるステップとを含み、縫合糸アンカーが、椎弓板、棘突起、椎弓根または椎骨横突起内に埋め込まれる、方法に関する。本発明の好ましい実施形態は、脊椎安定化のための方法であって、少なくとも2つの隣接する椎骨の椎骨毎に少なくとも2つの縫合糸アンカーを位置決めするステップと、椎骨内の対応する位置において異なる椎骨内に位置する2つのアンカーの縫合糸端をともに結び付けるステップとを含み、縫合糸アンカーが、椎弓板、椎弓根、棘突起または椎骨横突起内に埋め込まれる、方法に関する。
【0042】
少なくとも2つの隣接する椎骨の椎弓板毎の縫合糸アンカー(合計で少なくとも4つのアンカー)の位置決めのために、外科医は、椎弓板内に骨開口部を穿孔しなければならない。最後に、安定化されるべきすべての椎骨の両方の椎弓板は、少なくとも1つの骨開口部を有するべきである。これらの開口部は、止まり穴とすることができる。有利には、骨開口部は、腹側皮質(または高密度骨の層)に到達する必要がない。これらの骨開口部内には、縫合糸アンカーが埋め込まれなければならない。
【0043】
椎弓板毎に2つの縫合糸アンカーを使用することも可能である。胸椎および腰椎内では、これはさらに有利である。少なくとも2つの隣接する椎骨の椎弓板毎の2つの縫合糸アンカー(合計で少なくとも8つのアンカー)の位置決めのために、外科医は、椎弓板内に2つの隣接する骨開口部を穿孔しなければならない。結局、安定化されるべきすべての椎骨の両方の椎弓板は、2つの骨開口部を有するべきである。これらの開口部は、止まり穴とすることができる。有利には、骨開口部は、腹側皮質(または高密度骨の層)に到達する必要がない。これらの骨開口部内には、縫合糸アンカーが埋め込まれなければならない。
【0044】
本発明の第2の態様方法内で、広範囲の既知の縫合糸アンカーを使用することが可能である。縫合糸アンカーは、相当に小さく、2つの開放端を有する少なくとも1つの縫合糸を保持するべきである。それにもかかわらず、本発明の方法内で使用される少なくとも1つの縫合糸アンカーは、熱可塑性を有する材料を含むことが有利である。熱可塑性を有する縫合糸アンカーは、熱可塑性を有する材料のin situ液化に使用される振動エネルギーによって骨開口部に固定することができる。有利には、本発明の第1の態様について説明したのと同じアンカーを使用することである。したがって、アンカーに関して以前に行われたすべての記述は、第2の態様に関しても真である。
【0045】
特に、第2の態様の一実施形態は、アンカーが全体に生分解性材料から作製されている、本発明による脊椎安定化のための方法に関する。さらに、一実施形態は、縫合糸アンカーが単一皮質的のみに埋め込まれる、第2の態様による方法に関する。
【0046】
本発明の第2の態様の方法内で使用される縫合糸アンカーは、縫合糸を個別に与張しまたは締め付けることを可能にするように設計されることがさらに好ましい。これは、縫合糸が、使用される各アンカーに関して独立して与張され得ることを意味する。これにより、手術中の縫合糸の張力を患者の必要性に適合させることができる。例えば、脊椎の傾斜を矯正するために椎骨の片側により高い張力を有することが有利であり得る(脊柱側弯傾向を補償することができる)。1つの可能性は、アンカーの回転によって縫合糸を与張することである。一般に、各縫合糸アンカーに対する縫合糸の結び目のない固定が好ましい。縫合糸の張力は、その骨開口部内にアンカーを導入した後に調節することができることが好ましい。
【0047】
第2の態様による本発明の方法に関して生じ得る1つの問題は、縫合糸のチーズワイヤリングである。チーズワイヤリングまたはチーズワイヤ効果は、縫合糸与張(例えば、脊椎の動きによって)時に縫合糸材料が骨を切断しまたは裂くプロセスを表す。縫合糸の材料に応じて、縫合糸は骨に切り込まない場合があるが、骨開口部の縁によって損傷される場合がある。両方の態様は、使用される縫合糸アンカーの特別な設計によって低減またはさらには防止され得る。
【0048】
したがって、本発明はまた、硬質組織に対して縫合糸をロックするための縫合糸アンカーであって、縫合糸アンカーは、硬質組織の開口部内に固定されるように設計され、縫合糸を保持するための熱可塑性を有する材料と、アンカーの遠位端にある縫合糸導管と、硬質組織との接触から、特に開口部の縁または硬質組織の表面における硬質組織との接触から縫合糸を保護するための要素とを備える、縫合糸アンカーに関する。
【0049】
熱可塑性を有する材料を使用して縫合糸を結び目のないように縫合糸アンカーに対して固定することができるようにする縫合糸アンカーが好ましい。例えば、この目的のために、縫合糸導管および/または縫合糸をこの目的に誘導する他の構造は、固定中に熱可塑性材料が軟化するときに折り畳まれるように折り畳み可能であってもよく、または縫合糸は熱可塑性材料に溶接可能であってもよい。
【0050】
多くの実施形態では、縫合糸を硬質組織との接触から保護するための要素は、チーズワイヤリングを回避するのに適しているべきであるが、脊椎の湾曲と矛盾しない。
【0051】
縫合糸を硬質組織との接触から保護するための要素は、一体の縫合糸アンカーに一体化された要素であってもよく、または別個の要素(例えばピン部分を有するアンカー本体とは別個の要素)であってもよい。
【0052】
一体構造に一体化された要素は、例えば、一種のヘッド部として機能し、ヘッド部分が開口部の縁と縫合糸との間の直接接触を防止するように縫合糸が案内される(例えば貫通開口であるチャネル)近位側方突出部(突起)を備えることができる。この場合のヘッド部分は、周状(フランジ状)であってもよく、またはアンカーの近位端の周縁まわりに複数の突出部を備えてもよい。これは、縫合糸用の1つまたは2つ(または場合によってはそれ以上)のチャネルを備えてもよい。ヘッド部分が周状でない場合、貫通開口によって形成される代わりに、チャネルはノッチ状に形成されてもよい。
【0053】
別個の要素である場合、縫合糸を硬質組織との接触から保護するための要素は、硬質組織の開口部内で回転することができることが好ましい。縫合糸アンカーまたはそのピン部分および縫合糸を硬質組織との接触から保護するための要素は、互いに独立して回転することができることがさらに好ましい。
【0054】
要素は、例えば、硬質組織の開口部から少なくとも2~3mmにおいて上記要素が硬質組織と縫合糸との間に位置するように、最小の半径方向延伸を有するように設計されてもよい。
【0055】
これは、縫合糸アンカーと、縫合糸を硬質組織との接触から保護するための要素との組み合わせから突出する縫合糸が、上記要素の上にあるか、または延伸することを意味する。
【0056】
縫合糸を硬質組織との接触から保護するための要素は、縫合糸アンカーの近位端に嵌合するように設計されている硬質組織内の開口部の縁を横断するスリーブ、縫合糸のための少なくとも1つのチャネルを有するアンカーに対して回転可能なディスクまたはプレート、ならびに、硬質組織内で開口部の縁を横断し、縫合糸のためのチャネルを備え、および/または縁の近位で組織にわたって延在する突起(側方突出部)を含むか、またはそれらからなる群から選択することができる。縫合糸アンカーの近位端に嵌合するように設計されている硬質組織内の開口部の縁を横断するスリーブは、縫合糸のための少なくとも1つのチャネルを有することができる。あるいは、縫合糸は、器具のために、および/または熱可塑性材料から作製された要素の導入に使用され得るスリーブ内の中央チャネルを使用して、縫合糸アンカーの近位から突出することができる。この場合、スリーブは、縫合糸アンカーの近位端に嵌合して、骨開口部に導入されるのに適した円筒状の遠位端からなることができる。スリーブは、骨開口部の縁が覆われるように、(好ましくは70°~110°の)角度で円筒状部分に取り付けられた近位部分をさらに備えることができる。
【0057】
縫合糸を硬質組織との接触から保護するための要素、特に、縫合糸のための少なくとも1つのチャネルを有するアンカーに対して回転可能であるディスクまたはプレートは、好ましくは、屈曲することができるように可撓性である材料から形成される。1つの適切な材料は、熱可塑性ポリマーフォイルである。このフォイルは、0.2~1.5mmの厚さを有することができる。ヤング率が0.5GPa未満の場合の厚さは1mm未満であり、ヤング率が0.5GPa超の場合の厚さは0.5mm未満であることが好ましい。
【0058】
ディスクおよびスリーブは、回転対称(円形)、楕円形であってもよく、またはほぼ長方形であってもよい。ディスクまたはスリーブは、縫合糸アンカーおよび骨開口部の一方の側にさらに延在することが可能である。縫合糸アンカーの使用法に応じて、縫合糸アンカーは、アンカーの両側に取り付けられた1つの突起または2つの突起のみを有することができる。あるいは、スリーブまたはディスクは、1つまたは2つの縫合糸チャネルを有することができる。これは縫合経路に依存する。縫合糸が1つの隣接する縫合糸アンカー(および椎骨)のみに延在する場合、縫合糸は1つの突出部またはチャネルのみを有するが、縫合糸が一方がより頭側に、他方がより尾部側に、したがって2つの方向において、2つの異なる椎骨(縫合糸アンカー)へとさらに延在する場合、縫合糸を硬質組織との接触から保護するための要素は、少なくとも2つの縫合糸チャネルを有するか、または各々1つの縫合糸チャネルを有する2つの突出部からなるべきである。
【0059】
縫合糸を硬質組織との接触から保護するための要素は、1.5~10mm、好ましくは2~5mmの直径(または、場合によっては縫合糸アンカー本体から外側に測定される半径方向延伸範囲)および0.1~2mm、好ましくは0.2~1mm、より好ましくは0.3~0.7mmの厚さ(骨から縫合糸までの寸法)を有することができる。縫合糸を硬質組織との接触から保護するための要素が大きすぎる場合、それは脊椎の屈曲および湾曲に関する問題を引き起こす。
【0060】
第2の態様による方法の第2のステップでは、2つのアンカーの縫合糸端がともに結ばれている。したがって、第1のアンカーの一方の縫合糸端は、第2の縫合糸アンカーの縫合糸端と結ばれており、第1のアンカーの第2の縫合糸端は、第2の縫合アンカーの第2の縫合糸端と結ばれている。有利には、これを、2つの平行な縫合糸が第1の椎骨内の1つのアンカーから隣接する椎骨内に埋め込まれた別のアンカーまで延伸するように行うことができる。この場合、縫合糸はまた、脊椎とほぼ平行に延伸するべきである。縫合糸はまた、斜めに(交差して)延伸してもよい。2つのアンカーの縫合糸が結ばれており、アンカーが隣接する椎骨内のほぼ同じ位置に配置されることが好ましい。それにより、縫合糸が与張されるべきである。これにより、脊柱側弯症の傾向を補償できるように、張力を個別に、また側面毎に個別に適合させることができる。隣接する椎骨内のほぼ同じ位置に配置された2つまたはさらにはそれ以上のアンカーが、1つの(連続的な)縫合糸のみを脊椎に取り付けることも可能である。この場合、第2の態様による方法の第2のステップは、縫合糸の端部をともに結び付けることを指し、隣接する椎骨内のほぼ同じ位置に配置されたアンカーは、1つの縫合糸のみを含み、第1のアンカーの1つの縫合糸端突出部は、第2のアンカーの縫合糸端突出部に結ばれている。結び目が形成される縫合糸端は、互いから最大距離を有するアンカーから突出することが好ましい。換言すれば、いくつかのアンカーに取り付けられた1つの縫合糸は、最も高いアンカーから突出する縫合糸端(関与する最も高い/最も頭側の椎骨に固定される)および最も低いアンカーから突出する縫合糸端(関与する最も低い/最も尾部側の椎骨に固定される)を結ぶことによって結ばれ、アンカーは、隣接する椎骨内のほぼ同じ位置に位置する。
【0061】
本発明の第2の態様による方法はまた、3つ以上の隣接する椎骨に関する脊椎の安定化を含むことができる。これは、骨開口部内への導入後に縫合糸張力の調整を可能にする縫合糸アンカーを使用する場合に特に可能である。したがって、3つ以上のアンカーを使用して、1つの縫合糸を椎骨に取り付けることができる。
【0062】
したがって、本発明の別の実施形態は、脊椎安定化のための方法であって、少なくとも3つの隣接する椎骨の椎骨毎に少なくとも1つの縫合糸アンカーを位置決めするステップと、椎弓板内の対応する位置において異なる椎骨内に位置する2つのアンカーの縫合糸端をともに結び付けるステップとを含み、縫合糸アンカーが、椎弓板、棘突起、椎弓根または椎骨横突起内に埋め込まれる、方法に関する。第2の態様による方法の第2のステップでは、2つのアンカーの縫合糸端がともに結ばれている。したがって、第1のアンカーの一方の縫合糸端は、第2の縫合糸アンカーの縫合糸端と結ばれており、第1のアンカーの第2の縫合糸端は、第2の縫合アンカーの第2の縫合糸端と結ばれている。
【0063】
本発明の第2の態様による方法に適した1つの縫合糸アンカーは、欧州特許出願公開第2 667 790号明細書(図12)に記載されている。このアンカーまたは縫合糸張力を適合させるために回転される任意の他のアンカーを使用する場合、縫合糸アンカーは、2つのアンカー間でアンカーを中心とした1~2回転の長さを有する縫合糸ループによって骨開口部に導入されることが好ましい。1つの縫合糸を保持する3つ以上の縫合糸アンカーを使用する場合、有利には、最初にアンカーを中央に固定し、次いでアンカーをより頭側およびより尾部側に固定することができる。
【0064】
使用される縫合糸アンカーの縫合糸は、任意の一般的に使用される材料から作製されてもよい。好適なものは、例えば、ナイロン、ポリエステル、PVDFおよびポリプロピレンである。縫合糸は、椎骨にかかる力を安全に保持するのに十分強くなければならないが、結ばれるのに十分に可撓性でなければならず、低アレルギー性でなければならない。可撓性縫合糸(例えば、編組繊維の2つの外側シースとシリコーンおよび塩のコアから作製されたDYNACORD(登録商標))を使用することが好ましい。この場合、これらの可撓性縫合糸の利点は、それらが安定性を促進するために経時的に生じる張力の変化に応答することである。特に、振動を使用して固定される縫合糸アンカーとの組み合わせは、形状拘束によって固定されたこれらのアンカーがクリープ傾向を示さないため、有利である。
【0065】
第2の態様の方法に従って導入される後方ソフト安定化システムは、固定椎骨の上の脊椎領域に安定性を付加することを請け合う。したがって、第2の態様の一実施形態は、安定化されるべき隣接する椎骨の下部が脊椎固定術によってさらに下方の椎骨に接合される方法に関する。これは、胸椎または腰椎内で特に重要である。頸椎に関して、上記方法は、椎弓切開術または椎弓切除術と組み合わせてかなり重要である。これは、第2の態様の方法に従って導入された縫合糸アンカーが、椎弓切開術もしくは椎弓切除術後に椎骨を安定させるために、または規定の脊柱前彎を調整するために使用されることを意味する。この方法の目的は、規定の脊柱後彎および前彎を誘発すること、または回転または脊椎すべり症による進行性のさらなる後彎を予防することであり得る。したがって、本発明の方法は、靭帯様構造の形成または靭帯の短縮を達成することによる安定化(中~長期の)安定化を目的とする。したがって、縫合糸は、同種移植片(皮膚移植片のような)、自家移植片、またはさらには織物パッチなどの移植組織によって支持され得る。
【0066】
脊椎固定術は、一般に、様々な腰椎障害を処置するために剛性器具と共に行われる。現在の固定方法には、後方経路腰椎椎体間固定術(PLIF)または経椎間孔的腰椎椎体間固定術(TLIF)を用いた後方椎弓根スクリューインストルメンテーション、前方経路腰椎椎体間固定術(ALIF)を用いた後方椎弓根スクリューインストルメンテーション、およびALIFを用いた前方プレートおよびスクリューインストルメンテーションが含まれる。過去20年にわたって、椎弓根スクリューインストルメンテーションを用いたPLIFは脊椎コミュニティにおいて人気を得ており、したがって、代替処置方法を比較することができる固定のための標準と考えることができる。したがって、本発明の第2の態様は、固定がハードウェア(ねじ、プレート、ロッド)によって補完される方法に関する。
【0067】
第2の態様の方法は、後方テンションバンドを作成または再作成するのにさらに有用であり得る。「後方テンションバンド」は、脊椎の背面(後方)に見られる脊椎の解剖学的構造の一部である。後方テンションバンドを構成する要素は、棘突起および椎弓板(各椎体の一部である骨板)ならびにこれらを接合する靭帯である。多くの場合、これらの後方要素は脊椎除圧処置中に除去され、脊椎を不安定にする可能性がある。動的安定化は、脊椎固定術を必要とせずに後方テンションバンド(後方支持)を回復させる。したがって、一実施形態は、結ばれた縫合糸が、縫合糸に取り付けられ得る組織移植片などの人工靭帯を使用して増強される方法に関する。縫合糸および組織移植片は、組織移植片が縫合糸の構造を覆うように取り付けられるべきである。
【0068】
それにより、縫合糸は一次剛性を提供することができ、移植片は経時的に剛性を引き継ぐ。材料に応じて、縫合糸の剛性は低下してもよく(縫合糸が生体吸収性である場合)、同時に、複合材料を形成している内方成長するコラーゲンのため、移植片材料の剛性は増加する。縫合糸は、ポリフィラメントメッシュから作製された組織移植片と組み合わされてもよい。このメッシュは、本明細書に記載の縫合糸アンカーを使用して椎骨に取り付けることができ、特に、縫合糸を固定するアンカーを使用して骨に取り付けることもできる。一般に、ポリフィラメントメッシュから作製された人工靭帯は、熱可塑性を有する材料を含むかまたはそれから作製された小さいピンを使用して骨に取り付けることができる。
【0069】
ポリフィラメントメッシュは、織物、編物、編組または不織布の形態であり得る、モノフィブリル構造などの織物材料であり得る。ポリフィラメントメッシュは、刺繍により形成されていることが好ましい。ポリフィラムネットメッシュは、ループ構造を有することが好ましい。布地は、PET、PTFEまたはポリアミド繊維から作製されてもよい。さらに、繊維の一部または全部は、形成コラーゲン線維に対する応力遮蔽を徐々に減少させて、確立する線維組織を最大強度に対して訓練するために、低速に再吸収可能なポリマー(ポリ-L-ラクチド酸、ポリヒドロキシアルカノエート(例えば、ブチラート))から作製されてもよい。
【0070】
ポリフィラメントメッシュおよびコラーゲンの内方成長は、望ましくない接着を形成し得る瘢痕形成を引き起こし得る。したがって、ポリフィラメントメッシュから作製されている人工靭帯は、さらに少なくとも1つの膜を含むことが好ましい。したがって、組織移植片は、多孔質膜と、上記膜に直接近接して位置する織物構造とからなっていてもよい。それにより、膜は、神経に面する人工靭帯の側に取り付けられてもよい。使用される組織移植片の代替実施形態は、2つの多孔質膜およびこれらの膜の間の布地構造から作製され得る。それにより、布地構造は、前述のようにポリフィラメントメッシュとすることができる。膜は、接着の形成から保護する。膜は弾性であり得る。膜は細孔を有することができる。細孔は、1~5mmの直径を有することが好ましい。これにより、血液を導入することができ、血管が織物構造内に内方成長することができる。さらに、有利には、1つの膜のみが孔を有すること、または第1の膜の細孔が第2の膜の細孔よりも大きい直径を有することであり得る。この場合、移植片組織は、細孔のない膜または第2の膜が骨に向かって位置するように移植されるべきである。膜を有する移植片組織は、膜間または布地構造内のそれぞれの酸素分圧を低下させるために血管成長が増加するという利点を有する。以下では、腱の形成、結合組織およびコラーゲンの形成が促進される。
【0071】
したがって、剛性は、最終的に、患者の細胞を内方成長させることによって構築された移植片組織とコラーゲンとの複合体によって構築される。したがって、細胞の内方成長を支持する移植片材料が特に好適である。これは、剛性の増加が望まれない移植片組織の多くの他の用途(ヘルニアメッシュ)とは異なる。米国特許第6737149号明細書は、米国特許第6737149号明細書の図2に記載されているような細孔の階層を有する材料、すなわち要素14、24および34が本発明において使用されるのに適している移植片材料を記載している。これらの材料は、適切な血管系を引き付けることができ、この支持によって新靭帯の形成を引き付けることができることが示され得る。しかしながら、米国特許第6737149号明細書に記載されている刺激点13は、神経にも筋組織にも機械的刺激および制御されない瘢痕形成を生じさせるため、本発明の方法内での使用には害がある。
【0072】
本発明の第2の態様による方法は、脊椎の動的安定化をもたらす。縫合糸および任意選択的に人工靭帯の、結果として生じるシステムは、分節の固定を意図することなく、脊椎運動分節の動きおよび負荷伝達を有利に変更するシステムとして定義され得る。
【0073】
本発明は、第3の態様を含む。この第3の態様は、脊椎処置後の望ましくない効果を低減するための方法に関する。人間の脊椎は、衝撃を吸収し、脊椎を通して安全に応力を分散させるのを助けるために、様々な点でわずかに湾曲するようになっている。首、胴体および腰に生じる脊椎の自然な湾曲もまた、頭部を骨盤の上方に配置する。しかし、脊椎が過度に湾曲すると、脊柱前湾症(脊柱前彎過度)または脊柱湾曲症と呼ばれる状態になる。これは、外科的脊椎処置に関しても、いくつかの望ましくない副作用を引き起こす可能性がある。脊柱前彎症は、椎骨弓の椎弓板からの筋肉の分離を引き起こす可能性があり、これは空き空間をもたらす。手術中、患者は横たわっており、脊椎の前彎および空き空間を減少させる。脊椎の手術後または手術中、空き空間は増加しており、液体で満たされ得る。その結果、浮腫または出血が生じ得る。空き空間を回避するため、またはそれを減らすために、縫合糸アンカーを椎弓またはその突起に挿入することができる。縫合糸は、椎骨へと筋肉を引っ張るために使用されてもよい。あるいは、縫合糸は、筋肉を骨へと引っ張るワイヤまたはストラップを保持または取り付けるために使用されてもよい。
【0074】
したがって、本発明の別の実施形態は、脊椎処置のための方法であって、少なくとも1つの縫合糸アンカーを椎弓板またはその突起の1つに位置決めするステップと、椎骨へと筋肉を引っ張るステップであって、これらの筋肉が脊柱前彎のために椎骨から分離されている、引っ張るステップとを含む、方法に関する。換言すれば、本発明の別の実施形態は、脊椎処置、特に椎骨の骨構造と脊柱筋との間の空き空間を減らすための方法であって、少なくとも1つの縫合糸アンカーを椎弓板またはその突起の1つに位置決めするステップと、脊柱前彎によって引き起こされるそれぞれの椎骨と引っ張られた筋肉との間の空き空間を減らすために、少なくとも1つの筋肉を椎骨へと引っ張るステップとを含む、方法に関する。「少なくとも1つの椎骨への少なくとも1つの筋肉」ステップは、少なくとも1つの筋肉または少なくとも1つの筋肉の一部を囲み、縫合糸アンカーによって椎骨の骨構造に取り付けられるワイヤまたはストラップの使用を含む。
【0075】
本発明の第3の態様方法内で、広範囲の既知の縫合糸アンカーを使用することが可能である。縫合糸アンカーは、相当に小さく、2つの開放端を有する少なくとも1つの縫合糸を保持するべきである。それにもかかわらず、本発明の方法内で使用される少なくとも1つの縫合糸アンカーは、熱可塑性を有する材料を含むことが有利である。熱可塑性を有する縫合糸アンカーは、熱可塑性を有する材料のin situ液化に使用される振動エネルギーによって骨開口部に固定することができる。有利には、本発明の第1の態様および第2の態様について説明したのと同じアンカーを使用することである。したがって、アンカーに関して以前に行われたすべての記述は、第3の態様に関しても真である。
【図面の簡単な説明】
【0076】
図1】本発明による態様2による方法の概略図である。
図2a】本発明の態様1による方法の概略図である。
図2b】本発明の態様1による方法の概略図である。
図2c】本発明の態様1による方法の概略図である。
図2d】本発明の態様1による方法の概略図である。
図2e】本発明の態様1による方法の概略図である。
図2f】本発明の態様1による方法の概略図である。
図2g】本発明の態様1による方法の概略図である。
図3a】本発明の態様2による方法のための縫合糸アンカーを伴う開口部を有する胸椎の概略図である。
図3b】本発明の態様2による方法のための縫合糸アンカーを伴わない開口部を有する胸椎の概略図である。
図4】本発明によるアンカーの概略図である。アンカーは、縫合糸を骨開口部の縁との接触から保護するための少なくとも1つの要素を有する。
図5】骨開口部に固定した後の図4によるアンカーの概略図である。
図6a】本発明による別のアンカーの概略図であり、固定前のアンカーを示す図である。
図6b】本発明による別のアンカーの概略図であり、骨開口部内に固定した後のアンカーを示す図である。アンカーは、縫合糸を骨開口部の縁との接触から保護するための要素としてスリーブを備える。
図7】本発明による縫合糸アンカーの概略図である。アンカーは、縫合糸を骨開口部の縁との接触から保護するための少なくとも1つの要素を有する。
図8図7による縫合糸アンカーの概略上面図である。
図9】縫合糸が調整または引っ張られる前の3つの隣接する椎骨に導入された3つの縫合糸アンカーの概略図である。
図10】縫合糸を骨開口部の縁との接触から保護するための少なくとも1つの要素を有するアンカーの概略上面図である。
図11a】ピン部分を有するアンカー本体に対して回転可能なプレートを有するアンカーの概略側面図である。
図11b】ピン部分を有するアンカー本体に対して回転可能なプレートを有するアンカーの概略上面図である。
図12】アンカー本体に対して回転可能なディスクまたはプレートを有する埋め込みアンカーの概略断面図を示す。
【発明を実施するための形態】
【0077】
好ましい実施形態の説明
本方法の実施形態の以下のより詳細な説明は、本技術の例示的な実施形態の代表であり、同様の部分は全体を通して同じ符号で示される。本明細書では、標準的な参照および記述用語の医療平面が使用される。矢状面は、身体を左右の部分に分割する。横断面は、身体を上側部分と下側部分とに分割する。前部とは、身体の前方を意味する。後部とは、身体の後方を意味する。上側とは、頭部に向かうことを意味する。下側とは、足に向かうことを意味する。内側とは、身体の正中線に向かうことを意味する。側方とは、身体の正中線から外方に向かうことを意味する。軸方向とは、身体の中心軸に向かうことを意味する。近位とは、胴体に向かうこと、または無生物の場合、ユーザに向かうことを意味する。遠位とは、胴体から外方に向かうこと、または無生物の場合、ユーザから外方に向かうことを意味する。背側とは、足の上部に向かうことを意味する。足底とは、足の裏に向かうことを意味する。同側とは、身体の同じ側を意味する。反対側とは、身体の反対側を意味する。
【0078】
図1は、本発明の態様2による方法を示す。例示的には、方法は頸椎において示されている。図は、第1胸椎5と隆椎3、第7頸椎の固定を示しており、これらは脊髄1および関節包4と共に示されている。したがって、椎弓根スクリュー9は、固定ロッド8と共に使用される。第7頸椎3と第6頸椎2との関節は、本発明の第2の態様によるテンションバンドワイヤリングによって安定化される。第1のステップでは、各椎骨の各椎弓板に2つの骨開口部6が形成され、したがって合計8つの骨開口部6が導入される。これらの開口部は、貫通孔である必要はない。椎弓板の近位皮質のみが穿孔によって開かれれば十分である。図1には、固定が確立される前に骨開口部が形成されることが示されているが、これは必要ではなく、固定が確立された後に開口部が穿孔されてもよい。その後、各骨開口部において、縫合糸アンカーが固定される7。それにより、使用されるアンカーが単一皮質的に固定され得ることが重要である。アンカーは、振動を使用してアンカーの熱可塑性材料を液化することによって固定されてもよい。液化した材料は、周囲の骨の細孔内に移動する。したがって、骨開口部をアンカーよりも短くすることができる。固定中、アンカーは液化した熱可塑性材料の量に応じて短縮する。したがって、ユーザは、埋め込み後のアンカーの長さを個々の椎骨および状況に適合させることができる。アンカーは、最小長さ(1.5~3mm)の開口部にのみ固定される場合にも、支えに十分な強度を有する。SportWelding(登録商標)Fiji Anchor(登録商標)などの非常に小さいアンカーを使用することが適している。
【0079】
図3は、横断面において切断した第6胸椎の概略図を示す。図3a)に示す椎骨では、左側の椎弓板は2つの骨開口部6を有する。さらに、埋め込み前の縫合糸アンカー16が示されている。左側の椎弓板は、固定後の2つのアンカーを示す(これらのアンカーの縫合糸は示されていない)。アンカーの液化した材料21が椎弓板内の網状骨の細孔を満たしていることが分かる。これにより、アンカー固定の強度が確保される。図3bに示す椎弓板の幅dは、アンカーの長さeよりも小さくてもよい(d<e)。特に、dは4~5mm、eは約7mmであってもよい。アンカーを埋め込むために使用される開口部は、好ましくは幅dよりもさらに小さい。したがって、本発明の方法は、椎弓板22の遠位皮質端が無傷のままである(骨開口部6が止まり穴ではない)ため、脊髄を保護することができる。これはまた、本発明の方法を使用して、小さい椎弓板(頸椎)を有する脆弱な1つまたは複数の椎骨を処置することを可能にする。
【0080】
最後のステップでは、縫合糸10を結ぶことによってブレースが完成される。したがって、隣接する椎骨の対向する開口部に配置されている2つのアンカーの縫合糸端は、2つの結び目によって連結されている。これにより、各椎弓板の2本の二本鎖リンクが生じる。1対のアンカーのストランドまたは結ばれた縫合糸7は、互いに本質的に平行に延在する。
【0081】
図2は、本発明の態様1による方法を示す。上記方法は、椎弓切開術または椎弓切除術の方法に関する。例示的に、腰椎20が示されている。第1のステップでは、棘突起12の生来の背筋の筋停止部または筋起始部11(治療される椎骨に依存する)が切断される。棘突起の基部および処置される椎弓板の領域に達するのに十分な空間を得るために、切断されなければならない起始部または停止部が1つのみであり得る。椎骨上で深くなることは、それぞれ棘突起12において複数の筋停止部または筋起始部11が切断されなければならないことでもあり得る。図2a)では、最長筋の起始部を切断しなければならないことが示されている。切断は、骨構造に可能な限り近くなければならない。本発明による方法は、切断しなければならないのが片側の筋停止部/筋起始部のみであるという利点を有する。その後(図2b)、椎骨の棘突起の側の溝を満たす筋肉(ここでは、多数の肉質および腱束からなる多裂筋)を押すことができ、その結果、棘突起12をその基部または椎弓板への移行部において切断することができる。椎骨の正面または冠状面の切断部13は、棘突起を椎骨から分離する。上記切断部13は、それに付着した筋肉と共に棘突起12を押し退けることを可能にする。次のステップ(図2c)では、椎弓板の部分切除14が行われる。この部分切除は、脊髄の望ましい除圧をもたらすのに十分であり得る。それにもかかわらず、椎孔内の骨棘(脊髄の除圧)または椎間孔(脊髄神経および椎骨動脈の除圧)などの変性変化をアブレーションすることを可能にする器具15を導入することが必要な場合がある。
【0082】
その後(図2dに示すステップ)、棘突起は、椎骨に再配置および固定され得る。熱可塑性材料から作製された2つのピンまたはアンカー16を使用して固定される生分解性吸収性材料から作製されたプレート17を使用することが好ましい。これらのピン16は、振動を用いて液化することができる。上記のアンカーについて説明したように、液化した材料は網状骨の多孔質構造に侵入し、したがってプレートを固定する。プレートは、棘突起の切断部13を横切るように固定されなければならないが、椎弓板の部分切除に到達する必要はない。
【0083】
次のステップでは、少なくとも1つの縫合糸アンカー7を棘突起内に配置しなければならない。例えば、棘突起のそれぞれの側で2つ以上の筋停止部または起始部が切断された場合、2つ以上のアンカーが必要であるか、または少なくとも適切であり得る。アンカーは、固定される筋肉の筋起始部または停止部の領域内にあるように設定されることが好ましい。この場合、筋肉は、修復細胞および遺伝子の動員に適した刺激である開口部によって侵害される骨に直接固定することができる。したがって、アンカーが筋停止部または起始部の領域内に直接配置されることは、筋肉の再付着に役立つ。アンカーは短く、さらに短い骨開口部内に設定することができるので、これは狭い空間でも可能であるはずである。図3を参照されたい。
【0084】
縫合糸アンカー7の縫合糸の一端は、棘突起から切り離されていない筋停止部または起始部に通され、縫合糸の他端は、棘突起から切り離された腱または筋肉または筋肉自体に通される。縫合糸端によって、切断された筋肉を棘突起に引き戻すことができ、棘突起および棘突起の反対側の対応する筋肉に付着させることができる。最後に、図2g)に示すように、縫合糸の端部が結ばれる。縫合糸の結び目19は、それぞれ筋肉の背側の腱停止部または筋肉の起始部に位置する。
【0085】
図2f)は、本方法の任意選択のステップを示す。さらに、縫合糸アンカー7の縫合糸を使用した骨および他方の側の対応する筋肉への筋肉の再付着には、追加の縫合糸18を使用して、他方の身体側の対応する筋肉に筋肉を再付着させることが適切であり得る。これは、切り離される筋肉を棘突起上に留まった対応する筋肉に縫い付けるための単純な縫合によって行われる。
【0086】
図4は、本発明による方法内で使用されるように特に設計された、本発明による縫合糸アンカーの例示的な実施形態を示す。この縫合糸アンカー24は、熱可塑性を有する材料(液化可能材料)を含むか、または好ましくはそのような材料から作製され、熱可塑性を有する材料の少なくとも一部のin situ液化によって、および、液化した材料を硬質組織に流入させて、再固化したときにアンカーと硬質組織21との間のポジティブフィット接続を構成することによって、硬質組織開口部25に固定することができる。本発明によるアンカーが基づく固定方法は、例えば、米国特許第7335205号明細書に開示されており、その開示はその全体が本明細書に含まれている。この方法によれば、アンカーの近位面26は、エネルギーをアンカーに伝達する器具31、特に振動エネルギーを伝達する振動器具と接触する。同時に、アンカーを硬質組織開口部に押し込むことができる。
【0087】
さらに、図4による縫合糸アンカーは、少なくとも1つの遠位縫合糸導管29(例えば、遠位溝、チャネル、またはアイレット)を備え、その中で縫合糸は、縫合糸アンカーが硬質組織開口部に対して位置決めされてその中に固定されるときに、例えば縫合糸導管を折り畳んで、そこに通された縫合糸を制動またはクランプすることによって保持される。
【0088】
図4に示す縫合糸アンカー24は、ピン部分、有利にはヘッド部分28を備え、例えばヘッド部分の凹部に達する器具突出部間の圧入接続によって器具31に取り付けられて示されている。少なくともピン部分は、その側面の少なくとも一部に、熱可塑性を有する材料を含む。ヘッド部分28はまた、例えば貫通開口を備える縫合糸チャネル27を備えてもよい。縫合糸22は、硬質組織開口部25内に縫合糸アンカーを位置決め後に縫合糸22を調整することができるように、溝29を通ってそこに通されることが好ましい。縫合糸長および/または縫合糸張力を調整した後、縫合糸は、好ましくは、例えば熱可塑性材料の液化中に縫合糸導管またはチャネルを折り畳むことによって、結び目なしで固定され得る。
【0089】
縫合糸アンカーのヘッド部分28は、縫合糸22のためのチャネルを有する、特に近位位置で横方向に突出する、1つまたは2つまたはそれ以上の突起からなることができる。オプションによれば、ヘッド部分は、貫通開口である1つまたは2つ(または場合によってはそれ以上)のチャネルを有する周方向フランジによって形成される。
【0090】
突起は、硬質組織開口部25の外、特にその近位に配置されてもよい。これにより、縫合糸22が開口部の周囲の骨組織と直接接触するのを防ぐことができ、例えば、固定後の突起に載置することができる。この対策は、摩擦に敏感な縫合糸の損傷を防止するのに役立つ。硬質組織開口部の縁は、かなり鋭利であり得る。患者による脊椎の運動中、縫合糸に影響を及ぼす力は高い。したがって、縫合糸は、硬質組織開口部の壁を擦るときに損傷する可能性がある。さらに、ヘッド部分は、人工組織32をクランプし、位置決めし、または固定するために使用されてもよい。
【0091】
ピン部分は、縫合糸22をループ23として通すことができるように、遠位ピン面にわたって延在する2つの縫合糸溝29を備えることができる。軸方向において、縫合糸は、1つのアンカー側面に沿ってまたは2つの対向するアンカー側面に沿ってさらに延在することができる。
【0092】
ヘッド部分28は、硬質組織開口部25の遠位端よりも大きい断面を有し、それにより、アンカーが開口部内に位置決めされると、近位面での縫合糸アンカーのヘッド部分または少なくとも1つの突起は、縫合糸22がこの近位アンカー面に到達する少なくともそれらの側または両側で開口部の近位端を越えて突出する。
【0093】
図4および図5に示すように、アンカーを用いて硬質組織21に対して縫合糸22を固定するために、硬質組織開口部25が設けられている。エネルギー源(好ましくは振動源)に結合された器具31に取り付けられたアンカーのピン部分24は、開口部25の口の中に位置決めされ、縫合糸は、縫合糸溝29を通って延在して、アンカーヘッドのチャネル27を通って硬質組織開口部から延在するアンカーによって固定される。次いで、器具を介して縫合糸アンカーに力が加えられ、所望の縫合糸張力が確立され、エネルギー源が作動される(器具およびアンカーが振動される)。開口部の硬質組織壁と密接に接触している場合、熱可塑性を有する材料は液化し、硬質組織に浸透する。同時に、アンカーは、開口部内にさらに押し込まれ、ヘッド部分28が硬質組織表面に当接したときに最終的に固定される。図5に示される固定プロセスのまさに最後においてのみ、縫合糸は、縫合糸アンカーの熱可塑性材料の液化によって固定される。これは、固定ステップの最初の部分の間、縫合糸がアンカーに対して(おそらく縫合糸と硬質組織開口部の内側の組織との間のいくらかの摩擦に対して)摺動可能なままであり、したがって、縫合糸張力は、アンカーがその最終固定位置に非常に近くなるときまで依然として適合または維持され得ることを意味する。
【0094】
図4および図5に示すアンカーは、アンカーの残りの部分よりも小さい断面を有する遠位端を備えることができる。これは、2つのアイレット29(縫合糸溝を備えてもよい。アンカーを用いて固定およびロックされる縫合糸22は、2つのアイレット29に通され、例えば縫合糸溝内でアンカー長に沿って延伸する。
【0095】
アンカーは、硬質組織開口部25内に固定することができ、2つのアイレット29を備える遠位アンカー端は、縫合糸がアンカーに対して引っ張られることによって、および/または縫合糸をアンカーに設けられた開口部25の底部の硬質組織に押し付けることによって折り畳まれるように作製される。器具31によって導入された振動エネルギーを使用して熱可塑性材料を液化することによって、折り畳みを可能にすることもできる。このような折り畳みは、縫合糸がもはやそこを通って摺動することができないように縫合糸アイレットまたは溝の直径が縮小されるため、縫合糸22をロックする。
【0096】
図4および図5は、アンカーの固定前後のアンカーを非常に概略的に示す。図4では、アンカーは、器具31の遠位端に取り付けられ、硬質組織開口部25の口の中に配置され、縫合糸22は、2つのアイレット29を通って、アンカーの片側の開口部25から出る。図示されていないが、器具は図示されていないエネルギー源によって作動され、アンカーは開口部25内にさらに押し込まれる。次いで、縫合糸22に与張するか、または縫合糸張力を増加させることができる。図5では、アンカーの固定および縫合糸22のロックが完了している。アイレット29 rが横縫合糸溝を折り畳む瞬間まで、縫合糸22はアンカーに対して摺動可能なままであってもよい。
【0097】
図6aおよび図6bは、本発明によるアンカーのさらなる例示的な実施形態を示す。図6aおよび図6bは、アンカーの固定前後のアンカーを非常に概略的に示す。この実施形態によれば、縫合糸アンカー24は、熱可塑性材料から作製された要素を挿入するための内部空洞33を含む。縫合糸22は、例えば遠位アイレット29または溝に通されることによって、アンカーによって保持される。縫合糸アンカーは、硬質組織開口部内に位置決めおよび/または固定されるか、プッシャ器具(図示せず)を用いて硬質組織開口部内に押し込まれ、この器具を用いて硬質組織内に保持され、この器具は、内部空洞33に嵌合するように適合された、またはスリーブ34にカニューレ挿入されて嵌合するように適合された遠位器具端部を含むことができ、この場合、器具の振動をアンカーおよび挿入された熱可塑性材料35に伝達することができる。次いで、中間ステップにおいて、縫合糸がアンカーの周りに巻き付けられるように縫合糸22を保持しながら、器具を用いて縫合糸アンカーをその軸の周りに回転させることによって縫合糸張力が調整されるか、または縫合糸が短縮される。縫合糸張力が十分であるとき、アンカーは、アンカーの内部空洞33に挿入された熱可塑性ピン35によって硬質組織に固定される。この内部空洞は、液化した材料を放出するための少なくとも1つの開口部を有するか、または縫合糸アンカーの周面と通路によって接続される。この開口部は、横方向または遠位の端部に位置決めされてもよい。縫合糸アンカーの周りの縫合糸の巻き付けは、縫合糸の張力を調整するのに適している。
【0098】
縫合糸アンカーは、スリーブ34を備える。スリーブの軸方向チャネルは、好ましくは、アンカーの内部空洞33の断面に適合する断面を有する。スリーブは、縫合糸のための2つのチャネル27を有する。これらのチャネルを介して縫合糸を通すことによって、またアンカーの埋め込み後に、患者が再び動いており、高い力が脊椎、したがって縫合糸にも影響を及ぼしているときに、縫合糸と硬質組織との間のスリーブ摩擦が最小化される。スリーブは、硬質組織開口部の縁を覆う1つまたは2つの突起を含むことができる。この場合、縫合糸は、硬質組織上に直接ではなくスリーブの材料上に置かれる。
【0099】
中間段階(図示せず)では、アンカーは、硬質組織開口部に押し込まれるか、または、圧入によって硬質組織に押し込まれ、縫合糸22は、アイレット29を通って摺動可能なままである可能性がある。縫合糸張力は、アンカーの回転によって調整され、縫合糸22は、縫合糸アンカーの周りに巻かれるように適切に保持され、縫合糸アンカーは、巻かれた縫合糸を収容するために、断面積が縮小された腰のような領域を含むことができる。巻かれた縫合糸は、それと共に張力がかけられ、アンカーに対しておよび硬質組織に対して少なくとも一時的にロックされる。その後、熱可塑性ピン35がアンカーの内部空洞33およびスリーブに導入される。固定ステップのために、熱可塑性ピン35の材料は、機械的(振動)エネルギーを導入する器具によって液化され、通路36を通って押されてアンカーを囲む硬質組織を貫通する。図6bは、硬質組織内での固定後および器具の除去後の縫合糸アンカーを示す。
【0100】
縫合糸を保持するためのチャネルおよび/または溝のシステムに対する縫合糸アンカーの内部空洞33および通路36の設計は、個々の目的に依存する。縫合糸アンカーは、縫合糸22が巻き付けられるアンカー領域内に外側口が位置決めされた通路36を備えてもよい。これは、縫合糸22が液化した材料と接触し、それによって取り囲まれることを意味し、液化した材料は、再固化すると、硬質組織に対して縫合糸アンカーを固定するだけでなく、縫合糸アンカーに対して縫合糸を固定する。あるいは、通路36の口は、アンカー領域よりも遠位に位置してもよく、ここで、縫合糸が縫合糸アンカーの外側に位置し、特に縫合糸アンカーの周りに巻き付けられる。
【0101】
図7および図8は、本発明による縫合糸アンカーの概略図である。図7は、硬質組織21の開口部25内のアンカー24の長手方向断面を示す。図8は、図7による縫合糸アンカーの概略上面図を示す。アンカー24は、ピンと、突起の形態のヘッド部分28と、縫合糸22とを備える。縫合糸22は、ピンの周りを側方に延在する。したがって、ピンは、遠位ピン面にわたって、軸方向において、2つの対向するピン側面に沿って延在する縫合糸溝29を備えることができる。好ましくは、縫合糸溝の全体的な断面は、溝に沿って延在する縫合糸(複数可)が溝から突出しないように、すなわち、アンカーが、そのために設けられた硬質組織開口内に押し込まれたときに硬質組織と接触しないように、アンカーを用いてロックされる1つまたは複数の縫合糸に適合される。
【0102】
アンカーヘッドは、縫合糸22が通されるべきチャネル27を備える。ヘッド部分28の突起は、硬質組織21の外側に載るように形成される。これは、アンカー材料にわたって延在するが、硬質組織表面に接触せず、特に硬質組織の開口部25の縁に接触しない縫合糸22を保護するのに役立つ。したがって、埋め込み後(脊椎の運動中)に縫合糸に作用する摩擦を低減することができる。したがって、チャネル27の縁が滑らかであり、突起の材料も摩擦を低下させる(滑らかな表面)ように選択されることが好ましい。ヘッド部分は、アンカーが開口部に導入されたときに、縫合糸溝がヘッド部分に達する少なくとも一方の側において、ヘッドの近位面が開口部の近位端よりも突出するように、アンカーの遠位端および硬質組織の開口部よりも大きな断面を有する。ヘッド内のチャネル27は、縫合糸溝を延長するように配置されてもよい。あるいは、ヘッド部分は、チャネルを縫合糸(溝)と一直線になるように位置決めするために回転可能であるようにアンカーのピン部に取り付けることができる。
【0103】
図7および図8による方法またはアンカーの位置に応じて、ヘッド部分は、各縫合糸チャネルを有する1つまたは2つの突起を含む。埋め込み後、縫合糸の両端が同じ方向に延在しなければならない場合、1つの突起で十分であり、反対側では、縫合糸溝29はアンカーの近位面で終端する(図8に示す)。縫合糸が2つの異なる方向に(2つの隣接する椎骨へ、図9参照)延在することも可能である。この場合、ヘッドは、縫合糸の各端部を突起上に位置決めすることができるように、2つの突起28および2つのチャネル27を備えることができる。
【0104】
図9は、テンションバンドワイヤリングが3つ以上の隣接する椎骨21を安定させるために使用される、本発明の態様2による方法を示す。特に、この場合、骨開口部25への導入後に縫合糸を(結び目なしに)与張することを可能にする縫合糸アンカー24を使用することが有用であり得る。この結果、脊椎安定化のための方法は、椎弓板毎に、または少なくとも3つの隣接する椎骨の椎弓根毎に少なくとも1つの縫合糸アンカーが位置決めされ、続いて縫合糸が与張される第1のステップを含む。縫合糸を与張する前に、各縫合糸アンカーの間に縫合糸ループ23があってもよく、これにより、縫合糸張力を調整するために縫合糸をアンカーの周りに巻き付けることができる。これにより、椎骨の両側の張力を異なるようにし、患者の必要に応じて張力を調整することが可能である。続いて、アンカーが骨開口部内に固定され、縫合糸が縫合糸アンカーに対して固定される(例えば、熱可塑性材料の液化および再固化によって)。これは、並行して(1つのステップで)または後続のステップで行うことができ、時系列は、縫合糸アンカーの設計または個々の要求に応じて変化し得る。最後に、最も離れた椎骨の対応する位置に配置された2つのアンカーの縫合糸端がともに結ばれる。図10は、図7および図8のものと同様であり、図9に示す方法に適している本発明による縫合糸アンカーの概略上面図を示す。ヘッド部分は、各々が縫合糸のためのチャネル27を有する2つの突起28を備える。したがって、1つの縫合糸アンカーの縫合糸端が、固定後に2つの異なる方向において(2つの隣接する椎骨へ、図9参照)延在することが可能である。各縫合糸端は、摩擦が低減されるように1つの突起に載っている。縫合糸アンカーは、アンカーを導入するため、アンカーを回転させるため、および/または、熱可塑性材料の液化のために機械的エネルギー(振動エネルギーなど)をアンカーに導入するために使用される器具の遠位端に嵌合する凹部26または突出部26を備えることができる。点線30はアンカーピン部分の輪郭を示す。縫合糸アンカーのヘッド部分およびピン部分は、一片として形成されてもよく、または2片として形成されてもよく、ヘッドは、ピン部分に着座するスリーブとして構成されてもよく、またはピン部分に取り付けられるプレートまたはディスクとして形成されてもよい。このプレートまたはディスクは、縫合糸アンカーのピン部分に対して回転可能であってもよい。したがって、プレートまたはディスクは、ピン部分の円周方向の溝またはノッチに導入されてもよい。
【0105】
図11aおよび図11bは、縫合糸アンカー本体(ピン部分24を形成する)と、付加的に、ディスク保持溝42に受容されることによって本体に対して保持されるディスクまたはプレート41とを有する縫合糸アンカーを示す。ディスクまたはプレート41は、縫合糸22のためのチャネル27を備え、本体に対して回転可能である。このようにして、ディスクまたはプレート41は、図4図6の実施形態のように、縫合糸を骨組織の開口部の縁との接触から保護し、それにもかかわらず、図6を参照して示される原理と同様に、ピン部分の回転位置の定義によって縫合糸の与張を可能にし、より一般的には、プレートまたはディスク41がピン部分に対して回転可能であるために、ピン部分およびチャネル27の向きを独立して選択することができる。
【0106】
チャネルは、ディスクまたはプレートを貫通する貫通開口を備えてもよく、または例えば縫合糸アンカー本体に向かって内側に面するノッチを備えてもよい。
【0107】
図12は、図6の実施形態と同様の実施形態(および、国際公開第2012/100359/EP 2 667 790号パンフレットに詳細に記載されている回転原理による縫合糸与張を実装する)を示すが、スリーブの代わりに図11a/図11bを参照して説明した種類のプレートまたはディスク41を有する。
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図2e
図2f
図2g
図3a
図3b
図4
図5
図6a
図6b
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
【国際調査報告】