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特表2022-510444粒子状炭素材料とそれらを分離する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】粒子状炭素材料とそれらを分離する方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 32/05 20170101AFI20220119BHJP
   C08K 3/04 20060101ALI20220119BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20220119BHJP
   C09D 201/00 20060101ALI20220119BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20220119BHJP
【FI】
C01B32/05
C08K3/04
C08L21/00
C09D201/00
C09D7/61
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532013
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 EP2019083695
(87)【国際公開番号】W WO2020115143
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】102018220946.4
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】DE
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513191653
【氏名又は名称】サンコール インダストリーズ ゲゼルシャフト ミット ベシュレンクテル ハフツング
【氏名又は名称原語表記】SUNCOAL INDUSTRIES GMBH
(74)【代理人】
【識別番号】110002239
【氏名又は名称】特許業務法人後藤特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ヴィットマン、トビアス
(72)【発明者】
【氏名】ポシュン、ヤコブ
【テーマコード(参考)】
4G146
4J002
4J038
【Fターム(参考)】
4G146AA01
4G146AB01
4G146AC01A
4G146AC02B
4G146AC07A
4G146AC07B
4G146AC27A
4G146AD37
4G146BA32
4G146BB04
4G146BB06
4G146BC03
4G146CB09
4G146CB10
4G146DA07
4J002AA001
4J002AC001
4J002AC081
4J002DA016
4J002FD016
4J002GN01
4J038EA011
4J038HA026
4J038KA08
4J038KA20
4J038LA05
(57)【要約】
本発明は、粒子状炭素材料を分離するための方法、それによって得られる材料、ならびにそれらの使用に関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機原料の熱水炭化または沈殿によって得られた粒子状炭素原料を少なくとも2つの画分に分離するための方法であって、
粒子状炭素材料のSTSA表面積は少なくとも5m2/gであり、
第1画分のSTSA表面積は、粒子状炭素材料のSTSA表面積よりも大きく、
第2画分のSTSA表面積は、粒子状炭素出発物質のSTSA表面積よりも小さく、
粒子状炭素材料の重力分離を含む方法。
【請求項2】
重力分離が液相または気相で行われる、前述の請求項の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項3】
重力分離を使用して、第1画分または第2画分のSTSAを調整する、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
第1画分のSTSA表面積が、粒子状炭素原料のSTSA表面積よりも少なくとも5%大きい、前述の請求項の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項5】
第1画分と第2画分の重量比が1:10から10:1の範囲にある、前述の請求項の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項6】
重力分離が空気分級器または粉体分離器で実施される、前述の請求項の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項7】
粒子状炭素原料が55Ma%以上80Ma%未満の炭素含有量を有する、前述の請求項の少なくとも一項に記載の方法。
【請求項8】
STSAの測定値とSTSAの計算値との比が、0.7~1.3、より好ましくは0.75~1.25、より好ましくは0.8~1.2、より好ましくは0.85~1.15、より好ましくは0.9~1.1である、一次粒子が均一な分布を有する粒子状炭素材料。
【請求項9】
前述の請求項の少なくとも一項に記載の方法によって得られる、均一な分布を有する粒子状炭素材料。
【請求項10】
STSA表面積が粒子状炭素出発材料のSTSA表面積よりも少なくとも5%大きい、および/または、第1画分のSTSA表面積が第2画分のSTSA表面積よりも少なくとも50%大きい、請求項8または9に記載の均一な分布を有する粒子状炭素材料。
【請求項11】
STSA表面積が少なくとも15m2/gである、請求項8から10の少なくとも一項に記載の均一な分布を有する粒子状炭素材料。
【請求項12】
STSA表面積が少なくとも20m2/gである、請求項8から10の少なくとも一項に記載の均一な分布を有する粒子状炭素材料。
【請求項13】
STSA表面積が少なくとも30m2/gである、請求項8から10の少なくとも一項に記載の均一な分布を有する粒子状炭素材料。
【請求項14】
エラストマー、熱可塑性プラスチック、塗料、ラッカー、特にエラストマーおよび熱可塑性エラストマーのフィラーとしての請求項8から13の少なくとも一項に記載の、または請求項1から6の少なくとも一項に記載の方法によって得られる均一な分布を有する粒子状炭素材料の使用。
【請求項15】
請求項8から13の少なくとも一項に記載の、または請求項1から6の少なくとも一項に記載の方法によって得られる均一な分布を有する粒子状炭素材料を含むゴム製品。
【請求項16】
粒子状炭素材料が少なくとも15m2/gのSTSAを有する、請求項14に記載の使用または請求項15に記載の製品。
【請求項17】
空気入りタイヤのトレッドまたは側壁である、請求項14から16のいずれか一項に記載の使用または製品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粒子状炭素材料を分離するための方法、それによって得られる材料、ならびにそれらの使用に関する。
【背景技術】
【0002】
粒子状炭素材料は、多くの用途で使用されている。これらは黒色染料としての使用から、ポリマー、特にエラストマーのフィラーとしての使用にまで及ぶ。この様な炭素ベースの粒子状材料、例えば、カーボンブラックは比較的高い割合の炭素を有する材料であり得る。他の粒子状炭素材料としては、例えば、リグニンなどのバイオマスベースのものや、例えば、熱水炭化(HTC)または沈殿の生成物が挙げられる。このような材料は、カーボンブラックに比べて炭素含有量が少ないが、高度な機能化により興味深い特性を示す。
【0003】
このようなHTCベースの粒子状材料は、例えば、WO2016/020383、DE10 2016 201 801 A1またはWO2017/085278に記載される方法により製造することができる。これらのHTCベースの粒子状材料の製造において、特定のプロセスパラメータの調整は、特に得られる粒度分布に影響を与える可能性が開かれる。粒度分布は通常、ISO 13320に準拠したレーザー回折によって測定されるか、スクリーニングタワーなどの多段階スクリーニング方法を経て決定される。このようにして、孤立した粒子の空間的広がりが検出される。このような粒子は、互いに分離できない、または容易には分離できない、はるかに小さな一次粒子の凝集体であるか、またはそれらは孤立した一次粒子である。粒子状炭素材料が少なくとも部分的に凝集物である場合、すなわち分離できないまたは容易には分離できない一次粒子からなる場合、これらの一次粒子のサイズは、粒度分布の測定によって決定することはできない。このような凝集した一次粒子のサイズを説明するために、粒子状炭素材料の比表面積が測定される。比表面積は、孤立しており、且つ分離できずまたは容易には分離できない一次粒子の平均サイズの間接的な尺度である。
【0004】
比表面積は、例えば、BET測定またはSTSA測定などの方法によって定量化することができる。この場合、外面と内面の和はBET測定によって決定されるが、STSAの決定では外面のみにより決定される。適切な測定方法は、例えば、ASTM D 6556-14に規定されている。
【0005】
一次粒子の平均サイズまたは比表面積の量は、粒子状炭素材料を使用して製造された材料、例えば、粒子状炭素材料とエラストマーを配合し、その後の架橋することによって製造されたゴム製品の特性に影響を与えることが知られている。例えば、ゴム製品の摩耗挙動は、BET表面積が大きい粒子状炭素材料と小さい粒子状炭素材料のどちらかを使用するかによって異なる。引張強度などの機械的特性についても同様である。より高いBET表面積値は、より高い引張強度値およびより低い摩耗と相関する。ここで、HTCベースの粒子状炭素材料を使用する場合、高品質のゴム製品を得るためには、少なくとも15m2/g、好ましくは20m2/g以上、好ましくは30m2/g以上の比表面積値がしばしば必要とされる。
【0006】
しかしながら、HTCまたは沈殿によって粒子状炭素材料を製造する場合、一次粒子サイズに影響を与えるための上記の可能性(比表面積を介して間接的に測定されるもの)は、商業的に許容できる範囲内で、所望する高い比表面積が常に得られるとは限られない。
【0007】
驚くべきことに、SEM画像に関する研究を通して、従来技術によって得られた粒子状炭素材料は、そのサイズについては均質な一次粒子から構成されていない、ということが見出された。
【0008】
異なるサイズの材料からなる混合物の分離には、スクリーニング、空気分類、またはフロートシンクプロセスなどの分類方法が適している。これらの方法によって、画分の分離は、サイズ(ふるい分けプロセス)またはサイズおよび/または固有の材料密度(ウインドシフティング、フロートシンクプロセス)について実施される。DE28 29 977は、例えば、セメントを分類するための方法を開示している。しかしながら、このような方法は、異なるサイズの一次粒子からなる粒子状炭素材料を、一次粒子サイズに関してより均質である2つのバッチに分離するための従来技術としては適切ではない。なぜならば、
- 一次粒子は(少なくとも部分的に)凝集体で存在するため、サイズに関する分離を目的とした分類方法では、大きな一次粒子とほぼ同じサイズの実質的に小さな一次粒子の凝集体とを区別できないためであり、
- そして、異なるサイズの一次粒子における固有の材料密度は同じであるためである。
したがって、従来技術の分類方法では、粒子状炭素材料を異なる比表面積を有するバッチに分離する方法を見出すことはできない。
【0009】
したがって、異なる比表面積を有する画分への選択的分離を可能にする方法を提供することが望まれている。たとえば、表面積が大きい画分を、比表面積が比較的小さい材料から分離することを可能とし、これはより要求の高い用途に使用することが可能となる(一方、より小さな比表面積を有する画分は、依然として他の用途に適する)。したがって、比表面積のより均一な分布を有する粒子状炭素材料も得ることができ、これは特定の用途に対して有利である可能性がある。しかしながら、特に、容易に実施できるこの様な分離プロセスは知られていない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、本発明の目的は、上記の粒子状炭素材料のより均質な画分を提供するための方法を開示することである。
【本発明の簡単な説明】
【0011】
この課題は、請求項1に定義された方法、請求項7、8、および11に定義された製品、ならびに請求項10に定義された使用によって解決される。本発明の好ましい実施形態およびさらなる態様は、さらなる請求項および以下の詳細な説明において示された実施形態から生じる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の方法がとりうる実施形態を概略的に示している。
図2】粉体分離器での第1の分離後、得られた2つの画分を乾燥させ、次にそれぞれを分級器でさらに分離する実施形態を示す。
図3】3aおよび3bは、粉体分離器を使用した図1による分離のプロセス設計における、第1画分の再循環がある場合とない場合の概略プロセス図を示す。
図4】実施例の化合物の摩耗の値を示す。
図5】実施例の化合物の引張強度の値を示す。
図6】実施例の化合物の摩耗の値を示す。
図7】実施例の化合物の引張強度の値を示す。
図8】実施例4の化合物の応力-ひずみ曲線を示す。
【本発明の詳細な説明】
【0013】
本発明の方法は、炭素含有出発物質、例えば、木材、草、またはわらなどの再生可能な原材料、または、例えば、リグニン、糖蜜、蒸留残渣、糖、またはデンプンなどのこれらに由来する物質の沈殿または熱水炭化(以下、HTCと称する)から得られた粒子状炭素材料の単純で標的化された画分を可能にする。HTCまたは沈殿の実施形態は当業者に知られており、特に、このような粒子状炭素材料は、例えば、WO2006031175、WO2006038863、WO2009104995(沈殿)、WO2016/020383、またはWO2017/085278(HTC)に記載されるような方法によって製造することができる。沈殿またはHTCによって得られた粒子状炭素材料は、少なくとも5m2/g、好ましくは少なくとも7m2/g、さらに好ましくは少なくとも9m2/gのSTSA表面積を有する場合に有用であることが示されている。
【0014】
本発明における分離前の粒子状炭素材料のSTSA表面積は、典型的には5~200m2/gであり、例えば、10~150m2/gまたは10~100m2/g、好ましくは10~75m2/gまたは10~50m2/g、より好ましくは10~40m2/gまたは10~30m2/gである。特に好ましいSTSA表面を有するそのような粒子状炭素材料は、HTC法または沈殿によって容易に得られ、本発明による分離によって得られる画分を使用する可能性に関して有望である。典型的には、そのような粒子状炭素材料は、高価値の用途での使用に適した、粒子状炭素材料の平均STSAよりも高いSTSA表面積を有する商業的に関連する粒子状炭素材料の部分を含む。同時に、粒子状炭素材料の平均STSAよりも低いSTSA表面積を有する画分のSTSA表面積は、商業的利用が可能であるように、依然として十分に大きい。粒子状炭素材料の場合、STSA表面積とBET表面積の値はそれほど離れていない。その結果、粒子状炭素材料は多孔性または最小多孔性ではない。有利には、BET表面積およびSTSA表面積は、互いに20%を超えて、好ましくは15%を超えて、特に好ましくは10%を超えて逸脱しない。
【0015】
粒子状炭素材料の炭素含有量(無灰乾物に基づく)は、さらに好ましくは、50~80質量%(Ma%)、より好ましくは60以上80Ma%未満を示す。したがって、粒子状炭素材料は、炭素含有量がカーボンブラックとは異なる材料である。粒子状炭素材料をHTCまたは沈殿によって製造することによって、カーボンブラックと比較して炭素含有量が少なくなるため、その粒子表面における官能基の含有量が高くなる。このことは、粒子状炭素材料のその後の使用に有益となる可能性がある。
【0016】
驚くべきことに、このような粒子状炭素材料を、単純な重力分離によって比表面積(STSA表面積)が著しく異なる、少なくとも2つの画分(第1および第2画分)に分離することが可能であることが示された。これに関し、一方の画分(第1画分)は、出発物質の値よりも高い比表面積(STSA表面積)の値を示し、他方の画分(第2画分)の比表面積(STSA表面積)の値は、粒子状炭素材料のSTSA表面積と比較して小さいか等しい値を示した。
【0017】
本発明による分離によって得られた画分は、一次粒子サイズの分布に関して、それぞれ粒子状炭素材料よりも均質である。しかしながら、分離は、粒度分布(すなわち、凝集体のサイズ分布)に有意な影響を及ぼさないことが示されている。分離後に得られた画分については、本質的に粒子状炭素材料のそれに対応する。
【0018】
このような重力分離は、装置に関しては比較的単純であり、プロセスの制御においてはそれほど複雑ではないため、より要求の高い高品質の用途に適した粒子状炭素材料からの画分は、たとえば、HTCや沈殿におけるより複雑なプロセスの適応を必要とせずに、この方法により費用効率的に得ることができる。たとえば、比STSA表面積が大幅に大きい画分は、HTCからの製造が容易な粒子状炭素材料や、比STSA表面積が比較的小さい沈殿物から分離できる。これは、例えば、より高い価格で流通することがある。有利なことに、STSA表面積が著しく大きいこれらの画分は、例えば、引張強度および/または摩耗が重要なパラメータである用途で使用される。
【0019】
このような重力分離は液相と気相の両方で実施できるので、これらの分離は、HTCまたは沈殿のためのシステムと容易に組み合わせることができる。このための基本的なプロセスフローを図1に示す。本発明によれば、有機材料、たとえば木材、草、わらなどの再生可能な原材料、またはリグニン、糖蜜、蒸留残渣、糖、デンプンなどのこれらに由来する物質は、主に最初のプロセスステップで溶解するか、または主に溶液で供給され、このステップで、HTCまたは沈殿によって、少なくとも5m2/gのSTSAを有する粒子状炭素材料に変換される。続いて、粒子状炭素材料は、第2のプロセスステップである重力分離において少なくとも2つの画分に分離される。この文脈において、液相という用語は、粒子状炭素材料が液体媒体、例えば、HTCまたは沈殿で使用される水または水相に存在することを意味する。同様に、気相という用語は、粒子状炭素材料が気体媒体、例えば、空気、窒素、過熱蒸気、二酸化炭素、またはこれらの気体媒体の混合物中に存在することを意味する。
【0020】
そのような相を分離に供するための装置は、当業者に周知である。例には、粉体分離器が含まれる(液体粉体分離器は、例えば水などの液体媒体に分散される粒子状炭素材料を分離するのに適していることが本発明により示されている;粉体分離器は、ガス、例えば、空気、窒素、過熱蒸気、二酸化炭素、または混合物により流動化され、粉体分離器に導入される粒子状炭素材料にも使用できる。)、遠心分離機(遠心分離機はまた、水などの液体媒体中に分散された粒子状炭素材料を分離するために適切であることが本発明により証明されている。)、または分級器(空気分級器は、例えば、空気、窒素、過熱蒸気、二酸化炭素、または混合物で流動化され、分級器に導入される粒子状炭素材料を分離するのに適していることが証明されている)。図3aおよびbは、液体粉体分離器での分離に適した装置を示している。粒子状炭素材料は、沈殿またはHTCによって有機材料から第1のプロセスステップで回収され、例えば水と一緒に第2のプロセスステップに供給される。そこで、例えば水とのスラリーとして液体粉体分離器にポンプで送られ、第2画分を分離することができ、第2画分として排出されなかった部分を、元の粒子状炭素材料を含む容器に戻すことができ、プロセスの完了後に第1画分を取り出すことができる(図3a)。あるいは、第2のプロセス段階において、粒子状炭素材料はまた、水を含むスラリーとして液体粉体分離器に供給され得、そこで第1画分および第2画分への分離が行われる(図3b)。第1画分および第2画分の両方を、連続的にまたはバッチプロセスにより、次のプロセスステップに供給することができる。しかしながら、本発明は、これらの特定の装置の使用に限定されない。ここに開示された基本原理に従って分離を可能にするすべての装置、また、他の分類装置、流動床装置、遠心分離機なども使用することができる。
【0021】
本発明によれば、異なるタイプの分離も組み合わせることができる。例えば、粒子状炭素材料はHTCまたは水相における沈殿から得ることができるため、分離は、最初に粉体分離器(例えば、液体粉体分離器)で実施することができる。続いて、得られた画分は、液相または気相において、互いに独立して、さらなる分離処理に供され得る。したがって、得られた画分の少なくとも1つは、次に、例えば乾燥後に空気分級器でさらに分離することができる。このオプションを図2に模式的に示す。分離処理の種類は、利用可用性、必要とされる分離の種類(特定のSTSA表面に対して非常に異なる値の画分が必要な場合、または違いがそれほど顕著になってはいけない場合、ほぼ同じサイズの画分が必要な場合、または分離の結果、それぞれの特定のSTSA表面の極端に異なる値と組み合わされる可能性があり、少なくとも1つの小さいが非常に均一な画分が得られる場合)、および経済的考慮事情に応じて選択される。
【0022】
これに関連して、液相分離の場合(すなわち、基本的に液体担体、特に水性担体中の粒子状炭素材料のスラリーを使用する場合)、液相中の粒子状炭素材料の割合は、約1~20質量%(質量パーセント)、好ましくは5~15質量%、特に6~10質量%である。次に、粉体分離器を介した分離は、供給速度と排出速度を調整することによって粉体分離器(たとえば、液体粉体分離器)全体の圧力降下を適切に調整することによって達成される。圧力降下は、好ましくは0.2~5バール、より好ましくは0.8~4バール、特に1.5~3バールである。気相(すなわち基本的にエアロゾル)での分離の場合、固形分の割合は約0.01~0.5kg/m3、好ましくは0.05~0.4kg/m3、特に0.1~0.3kg/m3である。
【0023】
有利には、第1画分のD(50)と第2画分のD(50)との比は、0.45~0.75であり、さらに好ましくは0.50~0.60である。有利には、第1画分のD(90)と第2画分のD(90)との比は、0.5~0.8であり、さらに好ましくは、0.6~0.7である。有利には、第1画分のD(98)と第2画分のD(98)との比は、0.9~1.1であり、より好ましくは0.95~1.05である。これらの比率は、実施例に示されているように、条件(粒子状炭素材料の比率、粉体分離器/ふるいの条件など)を調整することで簡単に実現できる。D(50)、D(90)、およびD(98)の値は、ISO13320に準拠したレーザー回折によって測定される。さらに、D(50)、D(90)、およびD(98)の値の有利な比率は、粒子状炭素材料が、重力分離で異なるサイズの材料に分離される従来の材料とは、重力分離において著しく異なる振る舞いをすることを明示する。
【0024】
有利には、ISO21687による、第1画分の材料密度に対する第2画分の材料密度の比は、0.95~1.05、さらに好ましくは0.975~1.025である。この場合も、このような比率は、プロセスパラメータを調整することで実現できる。さらに、材料密度の有利な比率から、粒子状炭素材料は、従来技術に基づいて、重力分離において、異なる密度の材料を分離するための重力分離に適した材料とは著しく異なる挙動をすることが再び明らかである。
【0025】
気相での分離が、ミル、例えばジェットミルでの粉砕または解凝集に続く場合、特に有利であることが示されている。この目的のために、粒子状炭素材料が充填されたガスは、最初に粉体分離器に供給され、そこで(ガスのごく一部と共に)第2画分が分離される。ここで、第1画分のみが充填されているガスは、フィルターで除塵され、そこで第1画分が分離される。粒子状炭素材料に適用される粉砕とその後の重力分離の組み合わせには、上記のD(90)とD(98)の比率により、主に粗い粒子が粉体分離器で除去されないようにし、フィルターが主に細かい粒子を充填できるという利点がある。これにより、過剰な微粒子によってフィルター効果が損なわれることがなくなる。したがって、有利には、粒子状炭素原料を分離するためのプロセスであり、ここで、粒子状炭素原料は、有機原料の熱水炭化または沈殿によって得られたものであり、ここで、粒子状炭素原料は、少なくとも5m2/gのSTSA表面積を有し、少なくとも2つの画分に粉砕した後、第1画分はフィルターで分離され、粒子状炭素材料のSTSA表面積よりも大きいSTSA表面積を有し、第2画分は粉体分離器で分離され、粒子状炭素材料のSTSA表面積よりも小さいSTSA表面積を有し、この方法は粒子状炭素材料の重力分離を含む。
【0026】
さらに、気相での分離が、例えば流動床乾燥機、噴霧乾燥機、飛散床乾燥機、またはドラム乾燥機での乾燥工程に続く場合、特に有利であることが示されている。この目的のために、乾燥工程を経て粒子状炭素材料が充填されたガスは、最初に粉体分離器に供給され、そこで(ガスのごく一部と共に)第2画分が分離される。ここで、第1画分のみが充填されているガスは、フィルターで除塵され、そこで第1画分が分離される。粒子状炭素材料に適用される乾燥とそれに続く重力分離の組み合わせには、上記のD(90)とD(98)の比率により、主に粗い粒子が粉体分離器で除去されないようにし、フィルターは主に細かい粒子を充填できるという利点がある。これにより、過剰な微粒子によってフィルター効果が損なわれることがなくなる。したがって、有利には、粒子状炭素原料を分離するためのプロセスであり、ここで粒子状炭素原料は、有機原料の熱水炭化または沈殿によって得られたものであり、ここで粒子状炭素原料は、少なくとも5m2/gのSTSA表面積を有し、少なくとも2つの画分に粉砕した後、第1画分はフィルターで分離され、粒子状炭素材料のSTSA表面積よりも大きいSTSA表面積を有し、第2画分は粉体分離器で分離され、粒子状炭素材料のSTSA表面積よりも小さいSTSA表面積を有し、この方法は粒子状炭素材料の重力分離を含む。
【0027】
本発明による方法は、STSA表面積に関して粒子状炭素材料とは異なる画分をもたらす。しかしながら、すでに説明され、また実施例に示されているように、これらの画分は、それらの粒度分布に関して、互いに、および粒子状炭素材料と有意な差は無い。しかしながら、異なるSTSA表面積を有する画分が分離されるので、それぞれの画分はSTSA表面積に関してより均一である。したがって、本発明は、STSA表面積が大きい画分を、STSA表面積が小さい粒子状炭素材料から分離するためのオプションを提供し、これは、より要求の高い用途で使用することができる。対照的に、STSA表面積が小さい画分は、STSA表面積が大きい出発物質から分離できるため、残りの画分ではSTSA表面積がさらに増加する。
【0028】
本明細書に開示されるプロセス制御の変形を考慮に入れると、粒子状炭素材料のSTSA表面積を考慮に入れる方法が当業者にとって明らかであるため、これらの画分およびそれらのSTSA表面積を選択的に得ることができる。標的画分の収量および/またはSTSA表面積は、分離の程度によって得ることができる。本発明に従って提供される画分、特に第1画分のSTSA表面積は、好ましくは粒子状炭素材料のSTSA表面積よりも少なくとも5%大きい、実施形態では少なくとも10%大きい、場合によっては少なくとも20%大きい、特に好ましくは少なくとも30%大きい。同時に、第1画分は、その組成に関して(特に一次粒子サイズの分布に関して)、粒子状炭素材料よりも均質である。本発明に従って提供される画分、特に第1画分のSTSA表面積は、好ましくは粒子状炭素材料ののSTSA表面積よりも最大で200%、実施形態では最大で175%、場合によっては最大で150%大きい。好ましくは、第1画分は、少なくとも15m2/g、さらに好ましくは少なくとも20m2/g、より好ましくは少なくとも30m2/g以上のSTSAを有する。好ましくは、第1画分は、要求の高い用途で使用される。これらは、例えば、タイヤのトレッド、好ましくは空気入りタイヤ、低摩耗が必須要件であるコンベヤーベルト、または例えばタイヤの側壁、好ましくは引張強度が必須要件である空気入りタイヤである。
【0029】
有利には、重力分離はまた、第1または第2画分のSTSAを調整するための方法として使用することができる。これにより、粒子状炭素材料のSTSAが時間の経過とともに変化する場合でも、重力分離によって得られた画分の少なくとも1つが規定された許容範囲内でのみ変化するSTSAを持つことが保証される。STSAの代わりに、BETまたは粒度分布をSTSAの間接的な測定値として使用することもできる。この目的のために、例えば、第1画分または第2画分のSTSA、BET、または粒度分布が定期的に測定され、重力分離のプロセスパラメータが、STSA、BET、または粒度分布になるように調整される。第1画分または第2画分は、規定された許容範囲内でのみ変化する。気相での重力分離の場合、これは、例えば、分級器ホイールの速度を調整することによって、またはガスの体積流量を調整することによって行うことができる。液相での重力分離の場合、これは、例えば、液体の体積流量または分離装置(例えば、粉体分離器)中の圧力降下を調整することによって行うことができる。
【0030】
有利には、許容範囲は、STSA、BET、または第1または第2画分の粒度分布の目標値の最大が110%および最小が90%である。有利には、許容範囲は、第1または第2画分のSTSAまたはBETの目標値の+5m2/g、最小が-5m2/gである。
【0031】
本発明による方法では、第1画分と第2画分の重量比(それぞれ分離操作について)が1:15~15:1、例えば1:10~10:1であるように設定することができる。分離形式に応じて上記比率を変更することも可能であり、1:5~5:1、例えば1:2~2:1における分離も可能である。
【0032】
また、本発明は一次粒子の均一な分布を有する粒子状炭素材料に関し、これは本発明による方法によって有利に製造される。
【0033】
このような一次粒子の均一な分布を有する粒子状炭素材料は、STSAの測定値とSTSAの計算値との比が、好ましくは0.7~1.3、より好ましくは0.75~1.25、より好ましくは0.8~1.2、より好ましくは0.85~1.15、より好ましくは0.9~1.1である。
STSAの計算値は、次の式を使用して計算される:
1.STSA表面積=球表面積/(球体積*材料密度)
2.球の表面=PI*測定された球の直径^2
3.球の体積=1/6*PI*測定された球の直径^3
2.と3.を1.に代入すると、次の関係式が得られる:
STSAの表面積=6/(測定された球の直径*材料密度)
測定された球の直径は、SEM画像で見ることができる最小の孤立した一次粒子の平均直径である。
【0034】
さらに、本発明はまた、請求項に定義された使用、ならびにエラストマー化合物およびそれから製造された製品、例えばタイヤ、空気入りタイヤ、およびこれらのエラストマー化合物から製造された他の(加硫および非加硫形態の)製品を提供する。しかしながら、本発明により得られたまたは提供された材料は、他の材料化合物、例えば、熱可塑性材料または液体材料、例えば塗料、インク組成物などにも使用できる。ここで、本発明により得られたまたは提供された材料は、機械的特性の改善にも貢献するが、着色、(粒子内または粒子上に存在する官能基による)化学的官能基の提供などの他の目的にも使用できる。
【実施例
【0035】
(実施例1)
WO2017/085278のプロセスの説明に従い、STSAが11.9m2/gの粒子状炭素材料が第1のプロセスステップによって得られた。得られた粒子状炭素材料は、図1に示す主原則に従って、3つの異なるプロセスステップにて気相で重力分離することにより、第1画分と第2画分とに分離した。
【0036】
重力分離のために、分級器ホイールを備えたホソカワアルパインピコリン空気分級器を使用した。picosplit(20ATP分級器)とpicojet(40AFG流動床カウンタージェットミル)モジュールを使用した。供給材料は、ピコリンに関連するマイクロメータリングデバイス(PMD)によって計量した。得られた収量および画分について決定されたSTSA表面積を表1に示す。
【表1】
【0037】
次に、粒子状炭素材料および2つの画分を、ジェットミルでD99<10μmの粒子サイズに粉砕した。3つの材料すべてをフィラーとしてSBRマトリックスに混合した。加硫後、引張試験で応力-ひずみ曲線を記録した。引張強度の結果を図5に示す。さらに、摩耗を測定した。結果を図4に示す。
【0038】
本実験は、単純な重力分離プロセスによって、STSA表面積がかなり小さい(11.9m2/g)材料から、STSA表面積が大幅に大きく、貴重で実質的な画分が得られることを印象的に示している。これに関連して、それぞれの収量または達成可能なSTSA表面積を具体的に調整することが可能である(表1、実験1~3を参照)。本発明によれば、すでに高いSTSA表面積を有する材料から、非常に低いSTSA表面積を有する画分を分離することが可能である(すなわち、高い耐摩耗性および高い耐摩耗性を必要とする高い要求性を有するエラストマー配合用途においては、実際には不十分であると考えられるSTSA表面積を有する粒子。表2を参照)。STSA表面が低い画分を分離することによって得られるSTSA表面が増加した画分の特性プロファイルが改善された。なぜなら、一方ではSTSA表面に関してより均質な画分が得られ、他方では(エラストマーの適用に関して)より劣った特性を有する画分が分離されたからである。
(実施例2)
【0039】
WO2017/085278のプロセスの説明に従い、STSAが46m2/gの粒子状炭素材料が、第1のプロセスステップによって得られた。得られた粒子状炭素材料は、図1に示す主原則に従って、液相での重力分離による実験で、第1画分と第2画分に分離された(表2を参照)。
【0040】
33m2/gのSTSAを有する別の粒子状炭素材料が、第1のプロセスステップで得られた。粒子状炭素材料は、液相での重力分離による実験で、第1画分と第2画分に分離された。得られた画分のSTSA表面積とそれぞれの収量を表2に示す。
【表2】
【0041】
重力分離には粉体分離器を使用した。装置の基本的なセットアップを図3aに示す。有機材料は、最初のプロセスステップでHTCによって粒子状炭素材料に変換され、水と共に2番目のプロセスステップに供給され、容器内で緩衝された(B)。水と粒子状炭素材料の混合物は、ポンプ(A)によって容器(B)から連続的に取り出され、液体粉体分離器(C)で2つの画分に分離された。ポンプ(A)によって容器(B)から取り出される体積流量は、液体粉体分離器(C)全体の圧力降下(p)が特定の値に達するように調整される。圧力降下は、液体粉体分離器の入口と出口の間で決定される。水中の粒子状炭素物質の濃度は、5Ma.%から10Ma.%の範囲であった(平均は8.6Ma.%)。
【0042】
次に、粒子状炭素材料および2つの画分をジェットミルでD99<10μmの粒子サイズに粉砕した。3つの材料全てをフィラーとしてSBRマトリックスに混合した。加硫後、引張試験で応力-ひずみ曲線を記録した。引張強度の結果を図6に示す。さらに、摩耗を測定した。結果を図7に示す。
【0043】
実施例1および2のエラストマー化合物のための化合物および加硫物は、以下のプロセスを用いて、以下の配合に従って調製した:
【表3】
【0044】
混合物は、以下の手順に従って調製した:
混合物は、Haake Rheomix 3000測定ニーダー(接線ローター形状)を使用して、充填率70%で調製した。混合温度は速度制御により一定に保たれた。混合時間は約20分である。
加硫は、レオメーターで決定された最適なt90時間に加えて、シートの厚さ1mmごとに1分に従って160°Cで実施した。
(実施例3)
【0045】
STSAが13.1m2/gである粒子状炭素材料が、第1のプロセスステップで得られた。粉体分離器中の気相での重力分離による実験で、一次粒子状炭素材料を第1画分と第2画分に分離した。粒子状炭素材料は、最初に分級ホイールを備えたジェットミルに供給され、粉砕された。100AFGジェットミルを使用した(ノズルインサート1.9mm)。D20 T36 GLATT TR5;スロット;RA(l)=1.2を分級ホイールとして使用した。破砕された材料は分級ホイールを通過した後、粉体分離器に供給された。粉体分離器から、第1画分は空気流とともに排出され、フィルターを介して空気流から分離され、第2画分は粉体分離器内で直接分離された。このようにして、6.3m3/hの空気流量で、0.15kgの第1画分と0.85kgの第2画分が1kgの粒子状炭素材料から得られた。結果を以下に示す。
【表4】
【0046】
両方の画分について、粒度分布は、レーザー回折によって決定された。これを以下に示す。
【表5】
【0047】
粒子状炭素材料を分離することにより、分離後に存在する比表面積が異なる値をとることにもかかわらず、粒度分布が有意に変化しないことが示された。両方の画分において、粒度分布の良好な一致が示された。
【0048】
このようにして得られた2つの画分(第1画分および第2画分)を、フィラーとしてEPDMマトリックスに混合した。加硫後、引張試験で応力-ひずみ曲線を記録した。結果を図8に示す。
【表6】
【0049】
混合物は、以下の手順に従って調製された:
混合物は、W&PタイプGK1.5Eミキサー(交差反転式ローター形状)を使用し、充填率70%、混合温度40°C、速度40rpmで調製した。加硫は、レオメーターで決定された最適なt90時間に加えて、シートの厚さ1mmごとに1分に従って160°Cで実行されました。
(実施例4)
【0050】
いくつかの粒子状炭素材料のサンプル、ならびに本発明の方法による実施例3の分離されたサンプルQおよびRは、STSAついて測定され、SEMによって分析された。各サンプルについて、分離された最小の一次粒子の平均直径がSEMで決定された。ここから、STSAが計算された。測定されたSTSAは、計算されたSTSAとの相関があった。結果を表5に示す。
【表7】
【0051】
ここで、出発材料と比較した本発明によるサンプルについては、計算された表面値と測定された表面値との間に、より有意な相関関係があることが分かった。これもまた、本発明の方法によって得られた材料の均一性を示している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】