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特表2022-510472使用者の腕を支持して負荷を軽減するための装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】使用者の腕を支持して負荷を軽減するための装置
(51)【国際特許分類】
   B25J 11/00 20060101AFI20220119BHJP
【FI】
B25J11/00 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532338
(86)(22)【出願日】2019-08-13
(85)【翻訳文提出日】2021-06-07
(86)【国際出願番号】 EP2019071717
(87)【国際公開番号】W WO2020126125
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18212835.5
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18212922.1
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】18212840.5
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591010170
【氏名又は名称】ヒルティ アクチエンゲゼルシャフト
【住所又は居所原語表記】Feldkircherstrasse 100, 9494 Schaan, LIECHTENSTEIN
(74)【代理人】
【識別番号】100123342
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 承平
(72)【発明者】
【氏名】シモン ケースマン
(72)【発明者】
【氏名】ラルス メルツァー
【テーマコード(参考)】
3C707
【Fターム(参考)】
3C707AS38
3C707HT21
3C707KS01
3C707KS39
3C707XK02
3C707XK16
3C707XK17
3C707XK42
(57)【要約】
使用者腕(2)を支持して負荷を軽減するための装置(1)であって、この装置(1)は、身体の各側面に上部部分領域(3)と下部部分領域(4)とを備え、部分領域(3、4)が、接合部(7)に、上部部分領域(3)が接合部(7)の水平回転軸(8)を中心として上方空間方向(9)及び下方空間方向(10)に旋回可能であるように接続され、接合部(7)が、第1の状態では上方空間方向(9)及び下方空間方向(10)に旋回可能であり、第2の状態では上方空間方向(9)にのみ旋回可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
使用者の腕(2)にかかる負荷を支持し軽減するための装置(1)であって、身体の各側面に上部部分領域(3)と下部部分領域(4)とを備え、前記上部部分領域(3)はアームレスト(6)を備えた腕支柱(5)を備え、前記部分領域(3、4)は、水平回転軸(8)を有する接合部(7)によって、前記上部部分領域(3)が前記接合部(7)の水平回転軸を中心として上方空間方向(9)及び下方空間方向(10)に旋回可能であるように接続され得る、前記装置(1)において、
前記接合部(7)は、第1の状態では前記上方空間方向(9)及び前記下方空間方向(10)に旋回可能であり、第2の状態では前記上方空間方向(9)にのみ旋回可能である
ことを特徴とする装置。
【請求項2】
前記上部部分領域(3)は使用者の前記上腕(3)の下に存在し、前記下部部分領域(4)は前記使用者の胴部の側面に寄り掛かる、ことを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
水平枢着点(8)が前記腕の屈曲部の近く又は前記使用者の腋窩の領域に存在する、ことを特徴とする、請求項1又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記接合部(7)はフリーランニングと阻止される空間方向(12)との間で切り替わるように構成される、ことを特徴とする、請求項1~3のいずれか1項に記載の装置。
【請求項5】
前記上部部分領域(3)は連結棒(13)及び部分歯車(14)を介して前記下部部分領域(4)に締結され得る、ことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の装置。
【請求項6】
前記下部部分領域(4)は、前記上部部分領域(3)の垂直調節可能性を確保するために、少なくとも1つのすべり軸受(15)を備える、ことを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、使用者の右腕及び/又は左腕にかかる負荷を支持し軽減するための装置であって、この装置は身体の各側面に上部部分領域と下部部分領域とを備え、それらの部分領域が、接合部によって、上部部分領域が接合部の水平回転軸を中心として上方及び下方空間方向に旋回可能であるように、接続され得る。特に、支持装置が好ましくは2つの異なる状態で操作され得ることを特徴とする。
【背景技術】
【0002】
例えば使用者の上肢を支持するための受動型外骨格としても知られている従来の支持装置が先行技術から知られている。使用者の上肢とは、具体的には使用者の腕である。これらの受動型支持装置は、確実に支持できるようにするために、例えば上肢の重量からの力を補償するために、弾性要素の復元力を使用することが多い。換言すれば、重量からの力は、弾性要素、例えばばね又はばね機構によって吸収され得る。腕の重量からの力に加えて、例えば、使用者が手に持っている工具又は何らかの他の物体の更なる重量からの力を補償することも可能である。
【0003】
しかしながら、弾性要素による力の吸収又は補償に基づく従来の支持装置の動作原理は、弾性要素によって提供される支持力もまた使用者の腕を所望の位置から押し出すように端部位置に作用し続けるという欠点を伴う。更に、先行技術から知られている既知の支持装置では、支持力の方向は、多くの活動において、特定の活動を実行するのに必要な実際に必要な力の方向と一致しない。更に、腕を下げるときには、「上方」空間方向に通常作用する支持力を克服しなければならず、これは煩わしい又は難しいと受け取られる場合がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
したがって、本発明の目的は、従来の支持装置の上記の欠点を克服し、支持力が、使用者の腕を所望の位置から押し出さないように、端部位置を超えて作用し続けることのない支持装置を提供することである。また、提供される支持装置では、支持力の方向が特定の活動を行うために必要な力の方向と一致することが望ましい。本発明の更なる目的は、腕を下げるときに、上方に作用することが好ましい支持力又は補償力の煩わしい克服を不要にすることである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的は、独立請求項1に記載の発明の要旨によって達成される。独立請求項の発明の主題の有利な態様は従属請求項に記載される。詳細には、上記の目的は、好ましくは2つの異なる状態で操作され得る支持装置によって達成される。
【0006】
上記の目的は、特に、使用者の右腕及び左腕にかかる負荷を支持し軽減するための装置であって、本装置が身体の各側面に上部部分領域と下部部分領域とを備え、上部部分領域がアームレストを備えた腕支柱を備え、支持装置の部分領域が、水平回転軸を有する接合部によって、上部部分領域が接合部の水平回転軸を中心として上方及び下方空間方向に旋回可能であるように接続され得る、装置によって達成される。本装置は、接合部が、第1の状態では上方空間方向及び下方空間方向に旋回可能であり、第2の状態では上方空間方向にのみ旋回可能であることを特徴とする。換言すれば、接合部が第1の状態と第2の状態とになることができ、支持装置の上部部分領域が、第1の状態では上方及び下方空間方向に旋回可能であり、第2の状態では上方空間方向にのみ旋回可能である。本発明においては、第1の状態から第2の状態又は第2の状態から第1の状態への切り替えは、音声制御、ジェスチャ制御、又は筋電図(EMG)の使用によって実現され得ることが好ましい。本発明の特に好ましい態様では、制御装置は、使用者の首部領域に設けることができ、好ましくは「ネックスイッチ装置」としても知られる。本発明においては、ネックスイッチ装置は、使用者の頭部の動きによって制御されることが好ましい。換言すれば、支持装置の接合部の第1の状態から第2の状態への切り替えは、使用者の頭部の動きによって実現され得、対応する制御装置が使用者の首部に配置され得る。
【0007】
本発明においては、本装置は、支持装置又は外骨格と呼ばれることが好ましい。本発明においては、接合部の第1の状態が停止状態と呼ばれ、第2の状態が作動状態と呼ばれ得ることが好ましい。本装置の上部部分領域が第2の状態では下方空間方向に阻止されることが好ましい。本発明は、使用者が、第1の状態では上方及び下方空間方向に完全な運動の自由を維持し、第2の状態では、下方空間方向における接合部の動きが阻止されるという点で使用者の腕が支持されるという利点をもたらす。その結果、本装置の上部部分領域の腕支柱は下方に動くことができず、使用者の(上)腕は事実上下方に支持される。
【0008】
本発明においては、接合部は、停止状態では、水平軸を中心として両方の回転方向に阻止されないことが好ましい。換言すれば、接合部は両方の空間方向にフリーランニング状態にある。本発明においては、回転方向は、空間方向又は移動方向とも呼ばれることが好ましい。本発明の文脈では、2つの空間方向は「上方」空間方向及び「下方」空間方向であることが好ましい。空間方向は、垂直仮想軸に関して定義され得、使用者の背骨によって定義され得ることが好ましい。「上方」空間方向は、この垂直仮想軸に沿う又は平行な空間方向、特に使用者の頭部の方向、すなわち使用者の最高点の方向に対応することが好ましい。使用者が閉ざされた空間にいる場合、「上方」空間方向は空間の天井の方向を指すことが好ましい。「下方」空間方向は、この垂直仮想軸に沿う又は平行な空間方向、特に使用者の足部の方向、すなわち使用者の最低点の方向に対応することが好ましい。好ましくは、「下方」空間方向は、支持装置の使用者が立っている床又は地面の方向を指す。
【0009】
接合部は停止状態では水平軸を中心として両方の空間方向又は移動方向に阻止されないため、支持装置の上部部分領域は、両方の空間方向、すなわち上方及び下方に動かされ得る。このことは、好都合にも、使用者が、水平軸を中心とした動きに関して無制限の動きの自由を有し、動きの自由に関して制限されないことを意味する。作動状態では、2つの動作状態を有する提案される外骨格は、接合部が1つの移動方向に阻止されるという点で、使用者を支承面の形で支持する。阻止される移動方向は、「下方」移動方向であることが好ましい。好ましい「下方」移動方向の阻止の結果として、アームレスト上に載ることが好ましい使用者の腕の支持が好都合にも実現される。このようにして、使用者は、例えば頭上作業を実行でき、この際、使用者が片腕又は両腕を腕支柱のアームレスト上に載せることができ、載せた位置から頭上作業を実行できる。換言すれば、装置の使用者又は外骨格の装着者は、自身の腕を更に持ち上げることができ、腕は好都合にも新しい位置で下方に支持される。
【0010】
本発明においては、装置の上部部分領域が使用者の上腕の下に存在し、下部部分領域が使用者の胴部の側面に寄り掛かることが好ましい。身体の各側面に、装置は上部及び下部部分領域を有する。装置は、使用者の両腕を支持するように提供されることが好ましい。しかしながら、本発明においては、作業の際に、提案される装置で支持される、又は負荷が軽減されるのは片腕のみであることが好ましい場合もある。装置の上部部分領域は、アームレストを備えた腕支柱を備え、アームレストの上に使用者の腕を載せることができる。腕支柱は、腕を腕支柱のアームレストに締結し得る締結手段を備え得ることが好ましい。使用者の腕と支持装置の上部部分領域とは、互いに一緒に動かされ得ることが好ましい。換言すれば、上部部分領域と腕との動きを互いに連動させることができる。下部部分領域は使用者の胴部の側面に沿って延びることが好ましい。本発明においては、下部部分領域は、特に使用者の胴部の上部領域に沿って延びることが好ましい。この上部領域は、例えば使用者の胸部の高さに位置し得る。支持装置は、装置を使用者の胴部に締結するための更なる締結手段を備え得ることが好ましい。
【0011】
本発明においては、支持装置の上部及び下部部分領域は、互いに角度をなし、好ましくは鈍角をなすことが好ましい。装置の部分領域がなし得る角度は、0~180度の範囲にあり得る。本発明においては、支持装置を使用するとき、腕が実質的に完全に自由に動くことができることが好ましい。例えば、腕は使用者の身体又は胴部にもたれてぶら下がることができ、これは0度の角度に対応することが好ましい。使用者の腕はまた、身体と略平行に上方に伸ばすこともでき、これは180度の角度に対応することが好ましい。本発明においては、角度値は、垂直に延びることが好ましく、且つ使用者の身体の中央に存在する使用者の背骨を基準として指定されることが好ましい。本発明においては、支持装置の接合部が使用者の全ての動きの範囲で阻止されることが極めて特に好ましく、移動範囲は、0~180度の角度範囲を含むことが好ましい。
【0012】
本発明においては、接合部の水平回転軸が腕の屈曲部の近く又は使用者の腋窩の領域に存在することが好ましい。しかしながら、接合部はまた、他の位置、例えば、使用者の肩部の領域、又は使用者の肩部の隣、又は使用者の肩部の上方に設けられてもよい。換言すれば、支持装置の上部及び下部領域は、使用者の身体若しくは胴部の側面に沿って延び得る、又は身体の脇腹の近くに配置され得る。支持装置の上部部分領域は、使用者の胴部の側面に対向することが好ましい使用者の上腕の下側に延びることが好ましい。支持装置の下部領域は、使用者の胴部の側面に寄り掛かって胸部の高さに配置されることが好ましい。
【0013】
本発明の一態様では、接合部がフリーランニングと阻止される空間方向との間で切り替わるように構成されることが好ましい。本発明においては、これらの移動方向は、「許容される回転方向」及び「阻止される回転方向」と呼ばれることが好ましい。接合部がラチェットを備えることが極めて特に好ましく、ラチェットを備えた接合部がフリーランニングと阻止される空間方向との間で切り替わるように構成される。本発明においては、歯の細かいラチェットを使用することが極めて特に好ましい。
【0014】
接合部は、適合されたラチェットを備え、ラチェットは、フリーランニングと阻止される空間方向との間の切り替えを可能にするように構成されることが好ましい。本発明の文脈で使用されるラチェットは、従来のラチェットのように2つの自由な回転方向から選択できるのではなく、フリーランニングと阻止される回転方向との間で切り替えることができるように適合されることが好ましい。この関連で、任意の力、例えば腕の重量からの力を補償するために使用法はばね機構から作られていないが、使用者の腕の支持機能は本発明の観点から1つの空間方向を阻止する接合部が使用されるという点で作られることが好ましいという点で、提案される支持装置の動作原理は従来の受動型外骨格とは異なる。よって、支持装置の停止状態では、使用者はいつでも動きが完全に自由になる状態で腕を上方に動かすことができる。対照的に、支持装置の作動状態では、使用者は腕を更に上方に動かせるが、下方に阻止される移動方向には動かせなくなる。作動状態では、装置又はその上部部分領域は、好都合にも、使用者の腕が装置の上部部分領域によって支持される中間静止位置に留まる。本発明においては、提案される支持装置の観点から、適合されたラチェットを備えることが好ましい接合部が使用されることが好ましい。従来のラチェットでは、2つの回転方向から選択できるが、適合されたラチェットでは、提案される外骨格の接合部がフリーランニングと阻止される方向とで切り替わることができることが好ましい。フリーランニングは停止状態に対応することが好ましい。本発明においては、作動状態における接合部は、一方の方向の力を吸収し、他方の方向の力を最小にして滑り抜けることが好ましい。本発明においては、フリーランニングとも呼ばれることが好ましい停止状態では、ラチェット内で歯は係合しておらず、したがって接合部は停止状態では両方の回転方向に滑り抜ける。
【0015】
本発明においては、上部部分領域は、連結棒及び部分歯車を介して下部部分領域に締結され得ることが好ましい。この接続機構は、少なくとも連結棒及び部分歯車を備えることが好ましく、使用者の肩部の動きを補償するように構成されている。使用者が腕を持ち上げると、使用者の肩部又は肩部の関節も持ち上げられ得る。この肩部又は肩部の関節の上昇は、特に腕が90度を超えて持ち上げられた場合、つまり使用者の腕の一部が肩甲帯の上方に位置する場合に生じる。接続機構は、装置及び肩部の関節の回転軸が好都合にも一致し続けるように、支持装置が肩部又は肩部の動きに追従することを確保することが好ましい。
【0016】
使用者の肩部の動きは、例えば、使用者の作業中に肩部が持ち上げられることにあり得る。本発明においては、この肩部が持ち上がることは肩部の上昇とも呼ばれることが好ましい。支持装置は、使用者の肩部の上昇を装置と同期させるように構成されることが好ましい。特に、提案される支持装置の構造は、上肢が持ち上げられたときに、装置の回転接合部が高さの差Δhだけ上方に調整されることを可能にする。このことは、高さオフセットが補償されるという好都合な結果をもたらす。この肩部の上昇の補償の結果、支持装置は人体の動きによりよく追従でき、上昇の補正のない従来のシステムに比べて使用者をより効果的に支持できるようになる。
【0017】
本発明においては、片方又は両方の肩部の上昇は、上肢、すなわち腕の特定の角度位置から開始することが好ましい。この角度位置において、支持装置の垂直に直立した構成要素は、支持装置の接合部が肩部の関節に追従するように伸びることが好ましい。これは、腕の角度位置に結合され、例えば少なくとも1つの連結棒及び部分歯車を備え得る機構を設けることによってもたらされることが好ましい。結果として、上肢の動きの自然な組み合わせが好都合にも保持され、人体と支持装置との間の取付点が維持される。
【0018】
本発明においては、ラックが、垂直軸を中心として回転可能なスリーブ内で案内されることが好ましい。ラックは部分歯車を介して、スリーブと取り付けられたラチェットとがすべり軸受の方向に変位するように動かされ得る。この変位は、「上方」空間方向に生じることが好ましい。部分歯車は、支持装置のアームレストの動きと機械的に結合することによって動かされることが好ましい。例えば、連結棒は、例えばスロットの形をとり得る開口部を備えることができる。開口部を設けることにより、部分歯車に力を加えることなく腕支柱を下げることができる。部分歯車のレバーを開口部の一端に設け得ることが好ましく、その結果、部分歯車を介してアームレストを更に上げると、ラックが変位する。接合部は、スピンドル又はアクチュエータにより上方に案内されることが好ましい。機械的結合の代わりに、支持装置の使用者の肩部の上昇を補償するために、適切なセンサシステムを介して腕支柱の角度位置を判定できる。
【0019】
連結棒は支持装置の下部部分領域に略平行に延びることが好ましく、その際、連結棒が上部部分領域となす角度は、支持装置が操作される状態によって、又は上部及び下部部分領域が互いになす角度によって変わり得る。連結棒は部分歯車に接続されることが好ましい。本発明においては、連結棒が部分歯車を介して支持装置の下部部分領域に接続されることが特に好ましい。下部部分領域は、取付プレートとラックとを備えることが好ましく、これらは互いに略平行に形成される。ラックはスリーブを備えることができ、すべり軸受がスリーブの上下のラックに設けられる。本発明の一態様では、上部部分領域の垂直調節可能性を確保するために、支持装置の下部部分領域が少なくとも1つのすべり軸受を備えることが好ましい。すべり軸受の数は、本発明の文脈において必要に応じて変わり得ることが好ましい。
【0020】
本発明においては、提案される支持装置は、特に、頭上作業中の使用者の負荷を軽減できることが好ましい。特に、肩部の高さを超える活動中に上肢に負荷軽減をもたらすことができ、特に、使用者のための負荷軽減機能は、上腕の支承面を設けることによって作られる。停止状態では、この支承面は支持をもたらさずに上肢の動きに追従する。作動状態では、提案される支持装置が上腕を下から支持し、その際、新しい位置において常に反対側の方向を再び支持するために上方の動きに追従し続ける。
【0021】
提案される支持装置は、支持装置を作動させるための手段を備え得ることが好ましい。作動は、例えば、使用者による頭上作業に典型的な頭部の位置を採用することによって実現され得る。この頭部の位置の採用は、支持装置の機能を作動させるための作動手段によって使用され得る。まったく意外なことに、作動手段によって、支持装置の個々の機能が作動又は停止され得るという点で、提案される支持装置を制御する機能が作られ得る。これに関連して、作動手段はまた、支持装置のネックスイッチ装置とも呼ばれ得る。使用者が頭上の作業場所に集中できるようにするために、通常、後部への頭の傾斜が発生し、「後部へ」という表現は、本発明においては、好ましくは「首に対して」と理解されることが好ましい。換言すれば、多くの使用者は、手の作業場所を最適に確認できるように、頭上作業中に頭部を首に対して本能的に反らせる。頭部の首に対するこの動きは、好都合にも、支持装置の個々の機能を作動させる、又は支持装置を制御するために使用され得る。特に、本発明は、頭部の動きを支持装置の接合部の作動に変換することを可能にする。特に、作動は、ネックスイッチを使用する機械的作動を表すことができる。例えば、2つの部分からなるレバー構造を介して、支持装置の接合部を切り替えるボーデンケーブルを動かすことができる。同様に、本発明においては、頭部の傾斜は、例えば、支持装置の使用者のヘルメット又はゴーグルに組み込まれる位置センサによって測定されることが好ましい場合がある。適切なアクチュエータ技術を設けることにより、支持装置の接合部を、使用者の頭部、例えば首に対する動きによって切り替えることができる。
【0022】
更なる利点は、以下の図の説明から明らかになる。図、詳細な説明、及び特許請求の範囲は、多数の特徴を組み合わせて含む。当業者もまた、適宜、特徴を個別に検討し、それらを組み合わせて、更なる有用な組み合わせを想起するはずである。
【0023】
図では、同一及び類似の構成要素は同じ参照符号で示されている。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】本発明の好ましい構成の概略図、特に停止及び作動状態の図である。
図2】支持装置の好ましい構成の概略的な側面図である。
図3】ラチェットの好ましい実施例の詳細図である。
図4】支持装置の好ましい構成の更なる概略的な側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
図1は、画像の左半分に、提案される支持装置(1)の好ましい構成の停止状態、画像の右半分に、作動状態を示している。それぞれの場合に示されているのは、使用者、例えば自身の腕(2)を使用して動力工具により頭上作業を実行しようとする使用者である。図1の概略図に示されているのは、特に、支持装置(1)の上部部分領域(3)及び下部部分領域(4)である。上部部分領域(3)は、使用者の上腕(2)の内側に存在することが好ましく、「内側」という表現は、腕(2)が持ち上げられていないときには、腕の片側が胴部に面するという事実に関係することが好ましい。本発明においては、この、腕(2)の胴部に面した側を内側と呼び、胴部の上腕に面した側を胴部の側面と呼ぶことが好ましい。支持装置(1)の下部部分領域(4)は、使用者の胴部の側面に寄り掛かって存在することが好ましい。換言すれば、支持装置(1)の下部部分領域は、使用者が胴部の領域に、特に胸の高さで装着するように構成されている。
【0026】
支持装置(1)の上部領域(3)は、腕支柱(5)とアームレスト(6)と(図2に示す)を備えることが好ましい。支持装置(1)を使用する場合、使用者の腕(2)はアームレスト(6)に載せることができる。支持装置(1)の上部部分領域(3)と下部部分領域(4)とは、接合部(7)を介して一緒に接続されることが好ましい。接合部(7)は、回転軸(8)に配置され、支持装置(1)の下部部分領域(4)に対して上部部分領域(3)を水平に旋回可能とすることが好ましい。水平回転軸は枢着点(8)を通って延びることが好ましい、又は枢着点(8)はこの水平回転軸の一部であることが好ましい。特に支持装置(1)の上部部分領域(3)の旋回性は、特に上部部分領域(3)が上方空間方向(9)と下方空間方向(10)とに動くことができるという効果を有することが好ましい。本発明においては、支持装置(1)の上部部分領域(3)は、水平軸(8)又は対応する枢着点(8)を中心として回転することができることが好ましい。本発明においては、支持装置(1)の上部部分領域(3)及び下部部分領域(4)が、身体の長手方向軸に略平行に延びることが好ましい垂直軸を中心として更に回転できることが更に好ましい場合がある。
【0027】
図1において、旋回性は、使用者の腕(2)の領域にある矢印で特に示されている。この場合、上向きの矢印は支持装置(1)の上部部分領域(3)の上方の動きを表し、下向きの矢印は支持装置(1)の上部部分領域(3)の下方の動きを表す。外骨格(1)の停止状態では、両方の移動方向(9、10)が接合部(7)によって可能になる、つまり両方の空間方向(9、10)が、停止状態における許容される回転方向(11)である。
【0028】
図1の画像の右半分には、支持装置(1)の作動状態が示されている。作動状態では、使用者の腕(2)の上方の動き、すなわち上方空間方向(9)が可能であり続ける。よって、支持装置(1)の上部部分領域(3)の上方回転方向(9)は、作動状態における許容される回転方向(11)を表す。接合部(7)は、作動状態では下方回転方向(10)に阻止する。したがって、作動状態では、下方回転方向(10)は阻止される回転方向(12)を表す。許容される回転方向(11)と阻止される回転方向(12)とが、図1に矢印で示されている。
【0029】
図2は、支持装置(1)の好ましい構成の概略的な側面図を示している。特に、支持装置(1)の部分領域(3、4)の構造が示されている。支持装置(1)の上部部分領域(3)を形成する腕支柱(5)とアームレスト(6)とが示されている。また、下部部分領域(4)と、部分領域(3、4)を相互に接続する接合部(7)との更なる構成要素も示されている。接合部(7)は、特に、歯の細かいラチェットの形態であり得ることが好ましいラチェット(17)を備えることができる。下部部分領域(4)は、特に、取付プレート(18)及び連結棒(13)に略平行に延びることが好ましいラック(19)を備える。連結棒(13)は、支持装置(1)の上部部分領域(3)の腕支柱(5)に接続されることが好ましい。取付プレート(18)は、すべり軸受(15)によってラック(19)に接続され得ることが好ましい。更に、スリーブ(16)は、ラック(19)上に配置され、上記スリーブ(16)は部分歯車(14)に接続され得る。
【0030】
図3は、ラチェットの好ましい実施例の詳細図を示している。図3に示す状態では、接合部(7)又はラチェットは作動状態にある。
【0031】
本発明においては、作動状態の接合部(7)又はラチェット(17)は、一方の方向の力を吸収し、他方の方向の力を最小にして滑り抜けることが好ましい。一方の方向における力の吸収は、対応する空間方向の阻止に対応することが好ましい。特に、接合部(7)は、支持装置(1)の上部部分領域(3)が作動状態で下方に動かないようにするために、作動状態で下方回転方向(10)を阻止する。その結果、下方回転方向又は移動方向(10)は、支持装置(1)の作動状態における阻止される回転方向(12)に対応する。接合部(7)が滑り抜けることは、自由又は許容される移動方向(11)に対応することが好ましい。停止状態では、上方回転方向(9)と下方回転方向(10)との両方が許容される回転方向(11)である。特に、停止状態ではラチェット(17)内で係合している歯がないため、接合部(7)は停止状態で両方の回転方向(9、10)に滑り抜けることができる。本発明においては、許容される回転方向(11)は、フリーランニングとも呼ばれることが好ましい。
【0032】
図4は、支持装置(1)の好ましい構成の更なる概略的な側面図を示している。
【符号の説明】
【0033】
1 装置/支持装置
2 使用者の腕
3 上部部分領域
4 下部部分領域
5 腕支柱
6 アームレスト
7 接合部
8 水平枢着点又は水平回転軸
9 上方空間方向
10 下方空間方向
11 許容される回転方向
12 阻止される回転方向
13 連結棒
14 部分歯車
15 すべり軸受
16 スリーブ
17 ラチェット
18 取付プレート
19 ラック
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】