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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-26
(54)【発明の名称】水硬性結合剤を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C04B 7/32 20060101AFI20220119BHJP
   C01F 7/16 20220101ALI20220119BHJP
【FI】
C04B7/32
C01F7/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547953
(86)(22)【出願日】2019-10-30
(85)【翻訳文提出日】2021-06-24
(86)【国際出願番号】 FR2019052582
(87)【国際公開番号】W WO2020089564
(87)【国際公開日】2020-05-07
(31)【優先権主張番号】1860094
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521185930
【氏名又は名称】イマーテック
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】エルヴェ・フリーダ
(72)【発明者】
【氏名】ラタナ・ソス
(72)【発明者】
【氏名】ローズ-マリー・ミノー
(72)【発明者】
【氏名】エリック・ラルノーディ
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA18
4G076AB06
4G076AB08
4G076AB22
4G076BA13
4G076BA42
4G076BA46
4G076BC02
4G076BD02
4G076BD06
4G076CA02
4G076CA26
4G076DA01
4G076DA02
4G076DA15
4G076DA30
(57)【要約】
本発明は、アルミン酸カルシウムを含む水硬性結合剤を製造する方法であって:
a)石灰C供給源化合物及びアルミナ供給源化合物を含む組成物を用意する工程であり、該組成物は、組成物の乾燥物質の合計質量に対して最大で95%の石灰C及びアルミナ、及び少なくとも23%のアルミナを含む工程
b)工程a)で用意された組成物を、40℃から150℃の間の水和温度の水分飽和環境に入れて、酸化カルシウム及び水化合した少なくとも1種の酸化アルミニウムを含有する水和相を沈殿させる工程
c)工程b)で得られた沈殿を200℃から1300℃の間の焼き付け温度に、少なくとも15分間晒す工程
を含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルミン酸カルシウムを含む水硬性結合剤を製造するための水硬性結合剤製造方法であって、以下の:
a)石灰供給源化合物及びアルミナ供給源化合物を含む組成物を用意する工程であり、前記組成物は、組成物の乾燥物質の合計質量に対して最大で95質量%の石灰及びアルミナ及び最少で23質量%のアルミナを含む工程
b)工程a)で用意された組成物を、40℃から150℃の間に含まれる水和温度の水分飽和環境(媒体)に入れて、酸化カルシウム及び水が化合した少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む水和相を沈殿させる工程
c)工程b)で得られた沈殿を200℃から1300℃の間に含まれる焼成温度に晒して、それらをその温度に少なくとも15分間保つ工程
を含む方法。
【請求項2】
工程a)において、アルミナ供給源化合物が、アルミナ三水和物AH供給源化合物である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程a)において、組成物が、0.5から3の間の石灰のアルミナ三水和物C/AHに対するモル比を有する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
工程a)において、組成物が、1組の粒子の形態にあり、その粒径分布は、100マイクロメートル以下である参照直径d80により規定される、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
工程a)において、組成物が、以下のリスト:ベーマイト等のアルミナ一水和物AH、酸化鉄、シリカSiO、方解石CaCO、酸化チタンTiO;アニオンとして、硫酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩;及びカチオンとして、カルシウム、マグネシウム、鉄が化合した水和又は非水和塩、特に硫酸カルシウム及び炭酸カルシウム等の水和又は非水和カルシウム塩;ケイ酸アルミニウム及び特にカオリン等の水和又は非水和アルミニウム塩;硫酸アルミニウム;塩素塩又は塩素化残基;マグネシウム塩、又は実際さらに、特に海水中で入手可能な塩化ナトリウム等のナトリウム塩から選択される化合物を少なくとも5%含む、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程b)において、組成物が、過剰の液体の水中に、又は水の飽和蒸気圧における雰囲気中に置かれる、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
工程b)において、組成物が、水分飽和環境(媒体)中に15分から48時間の間の期間置かれる、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
工程c)において、沈殿が、焼成温度に晒されて、その温度に240分未満の間保たれる、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程c)において、焼成温度が、400℃から1200℃の間、好ましくは900℃から1000℃の間、実際にはより優先的に930℃から970℃の間に含まれる、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)において、水和温度が100℃未満である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
工程a)の組成物が、以下のリスト:鉄に富むボーキサイト、鉄に乏しいボーキサイト、生石灰又は水和石灰、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、カオリン等の水和アルミノケイ酸塩、合成アルミナ三水和物AH、塩化ナトリウムNaCl又は海水等の塩素化された塩又は残基、又はさらに硝酸カルシウムCaNO又はブタ堆肥スラリー等の硝酸化された塩又は残基から選択される少なくとも2種の化合物の混合物により形成される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法により得ることができる、アルミン酸カルシウム化合物。
【請求項13】
例えば、以下:
- 建築化学で、修復モルタル等のモルタル、タイル張り接着剤及びグラウト又はジョイント、平滑化又は仕上げのスクリード及びコーティング、又はさらに装飾的漆喰又はコーティングを製造するために
- 耐火性コンクリートのための結合剤として
- 土木工学コンクリートのための結合剤として
- 任意の組立て式工法タイプの方法のための結合剤として
- ボーリング穴の合着のための結合剤として
- 乾いた又は濡れた、噴霧されたコンクリート(ショットクリート)のための結合剤として
- 固体廃棄物又は液体流出物の不活性化ための結合剤として
- 鉱物/無機発泡体の製造のための結合剤として
- アニオン及び/又はカチオンを捕捉するための試薬として
の用途における、単独で又は硫酸カルシウム及び多分ポートランドセメントと組み合わされてのいずれかでの水硬性結合剤としての、請求項12に記載のアルミン酸カルシウム化合物の使用。
【請求項14】
例えば、以下:
- 金属学的融剤として
- 鉱物充填剤として
- 触媒又は触媒支持体として
- 顔料として
- 研磨剤として
の用途における、単独で又は硫酸カルシウム及び多分ポートランドセメントと組み合わされてのいずれかでの、請求項12に記載のアルミン酸カルシウム化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水硬性結合剤を製造するための製造方法の分野に一般的に関する。
【0002】
より特定して、本発明は、アルミン酸カルシウムを含む水硬性結合剤を製造するための水硬性結合剤の製造方法に関する。
【0003】
本発明は、アルミン酸カルシウム化合物及びこのアルミン酸カルシウム化合物の使用にも関する。
【背景技術】
【0004】
アルミン酸カルシウムを含む水硬性結合剤を製造するための製造方法は、既知であり、特に、電気炉又は反射炉で実施される全溶融による方法、及び回転炉中で実施される焼結(sintering)又は焼結(frittage)方法が知られている。これらの既知の方法は、高い温度、即ち、1300℃を超える温度における焼成工程を含み、それにより原材料が互いに反応することを可能にする。しかしながら、この高温の焼成工程は高エネルギー消費をもたらす。
【0005】
上記の製造方法は、高温度焼成工程の終結で得られる、クリンカーとして知られる生成物が、微細な粉体に粉砕されることからなる最終の粉砕工程も含む。この粉砕工程は、セメントに、それを機能化するために、特に反応性を制御するために又はそれらの老化を遅延させるために、他の化合物を添加することも可能にする。しかしながら、従来のボールミルの手段による粉砕のエネルギー有効度は、およそ5%に過ぎず、この工程で使用されるエネルギーの大部分は、熱の形態で放散される。
【0006】
したがって、上記の製造方法における焼成及び粉砕の工程は、両方共高度にエネルギー集約的であり、既知の水硬性結合剤を製造する方法は、それ故、エネルギー消費に関して高コストである。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的
当技術分野の状態の上記の弱点を是正するために、本発明は、エネルギー効率のよりよいアルミン酸カルシウムを製造するための製造方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
より特定すると、本発明により、アルミン酸カルシウムを含む水硬性結合剤を製造するための水硬性結合剤製造方法であって、以下の工程:
a)石灰供給源化合物及びアルミナ供給源化合物を含む組成物を用意する工程であり、前記組成物は、組成物の乾燥物質の合計質量に対して最大で95質量%の石灰及びアルミナ及び最少で23質量%のアルミナを含む工程
b)工程a)で用意された組成物を、40℃から150℃の間に含まれる水和温度の水分飽和環境(媒体)に入れて、酸化カルシウム及び水が化合した少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む水和相を沈殿させる工程
c)工程b)で得られた沈殿を200℃から1300℃の間に含まれる焼成温度に晒して、それらをその温度で少なくとも15分間保つ工程
を含む
方法が提供される。
【0009】
したがって、本発明による方法は、第1の水和工程及び第2のより低い温度における焼成工程という2つの工程での反応に基づく。
【0010】
この方法は、妥当なレベルのエネルギー消費を生じて、組成物の化合物は工程b)で、40℃と150℃の間のみを含む低温で反応し、上記のように得られた沈殿は、その後、200℃と1300℃の間を含む温度で脱水される。
【0011】
さらに、工程c)の終わりに得られた材料は、非常に砕けやすく、その結果、それは容易に粉砕されて粉体になり得る。したがって、適切に低いエネルギーが、この材料の粉砕のために必要であるに過ぎない。
【0012】
一方、工程a)で、組成物は、最大95%の石灰C及びアルミナを含み、その結果、それは、天然で入手可能であり、それ故、純合成化合物より安価な化合物を含む。
【0013】
本発明の目的は、相がアルミナに富む水硬性結合剤を製造ことにも関する。23%未満のアルミナを含む組成物は、工程c)の終わりにかなりの量の未化合の残存石灰を生ずる傾向がある。
【0014】
本発明による方法の他の限定するものでない及び有利な特性の特徴は、個々に考慮に入れて、又は任意の技術的に可能な組み合わせによって、以下の通りである:
- 工程a)において、組成物は、0.5と3の間の石灰のアルミナに対するモル比C/Aを有する
- 工程a)で、組成物は、0.5と3の間の石灰のアルミナ三水和物に対するモル比C/AHを有する
- 工程a)で、組成物は、1組の粒子の形態にあり、その粒径分布は、100マイクロメートル以下である参照直径d80により規定される
- 工程a)において、組成物は、以下のリスト:ベーマイト等のアルミナ一水和物AH、酸化鉄、シリカSiO、方解石CaCO、酸化チタンTiO;アニオンとして硫酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩;及びカチオンとしてカルシウム、マグネシウム、鉄が化合した水和又は非水和塩、特に硫酸カルシウム及び炭酸カルシウム等の水和又は非水和カルシウム塩;ケイ酸アルミニウム及び特にカオリン等の水和又は非水和アルミニウム塩;硫酸アルミニウム;塩素塩又は塩素化残基;マグネシウム塩、又は実際さらに、特に海水中で入手可能な塩化ナトリウム等のナトリウム塩から選択される化合物を少なくとも5%含む
- 工程a)で、組成物は、20%を超えるシリカを含まない
- 工程a)で、組成物は、15%を超えるシリカを含まない
- 工程a)で、組成物は、10%を超えるシリカを含まない
- 工程a)で、組成物は、8%を超えるシリカを含まない
- 工程a)で、組成物は、6%を超えるシリカを含まない
- 工程b)で、組成物は、過剰の液体の水又は飽和した蒸気の雰囲気中に置かれる
- 工程b)で、組成物は、15分から48時間の間の時間、水分飽和環境(媒体)に置かれる
- 工程c)で、沈殿は、焼成温度に晒されて、240分未満の間その温度に保たれる
- 工程c)で、焼成温度は、400℃から1200℃の間、好ましくは900℃から1000℃の間、実際には、より優先的に930℃から970℃の間に含まれる
- 工程c)で、焼成温度は、300℃から750℃の間、好ましくは350℃から700℃の間に含まれる
- 工程b)で、水和温度は100℃未満である
- 工程a)のアルミナ供給源化合物は、乾燥した形態、好ましくは結晶化した形態であり、即ちそれはゲル形態ではない。
【0015】
- 工程a)のアルミナ供給源化合物は、以下のリスト:ボーキサイト、例えば、ボーキサイト三水和物(AHの形態にある主としてアルミナを含むボーキサイト)、白色ボーキサイト三水和物、赤色ボーキサイト三水和物、水酸化物等、アルミニウム産業の副生物、及び製造基準を満たさず及び高アルミナ含有率を有する生成物又はそれらの混合物、鉄に富むボーキサイト三水和物、鉄が乏しいボーキサイト三水和物、カオリン等の水和アルミノケイ酸塩、又は合成アルミナ三水和物AHから選択される
- 工程a)の組成物は、以下のリスト:鉄に富むボーキサイト三水和物(主としてAHの形態にあるアルミナを含むボーキサイト)、鉄に乏しいボーキサイト三水和物、生石灰又は水和石灰、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、カオリン等の水和アルミノケイ酸塩、合成アルミナ三水和物AH、塩化ナトリウムNaCl若しくは海水等の塩素化された塩若しくは残基、又はさらに硝酸塩若しくは残基、例えば、硝酸カルシウムCaNO又はブタ堆肥スラリー等から選択される、少なくとも2種の化合物の混合物により形成される
- 工程a)の組成物は、工程a)の乾燥した組成物の質量に対して最大で0.4質量%の、CaF供給源及び/又は氷晶石NaAlFから選択されるフッ素化された化合物を含む;或いは工程a)の組成物は、工程a)の乾燥した組成物の質量に対して最大で0.3質量%、例えば、最大で0.2質量%の、CaF供給源及び/又は氷晶石NaAlFから選択されるフッ素化された化合物を含む;例えば、工程a)の組成物は、CaF供給源及び/又は氷晶石NaAlFから選択されるフッ素化された化合物を含まない
- 本発明による方法は、CaF供給源及び/又は氷晶石NaAlFから選択されるフッ素化された化合物の添加を含まない。
【0016】
本発明は、本発明の方法により得られるアルミン酸カルシウム化合物も提供する。
【0017】
本発明は、例えば、以下:
- 建築化学で、修復モルタル等のモルタル、タイル張りの接着剤及びグラウト又はジョイント、平滑化又は仕上げのスクリード及びコーティング、又はさらに装飾的漆喰又はコーティング等の製造のために
- 耐火性コンクリートのための結合剤として
- 土木工学コンクリートのための結合剤として
- 任意の組立て式工法タイプの方法のための結合剤として
- ボーリング穴の合着のための結合剤として
- 乾いた又は濡れた、噴霧されたコンクリート(ショットクリート)のための結合剤として
- 固体廃棄物又は液体流出物の不活性化ための結合剤として
- 鉱物/無機発泡体の製造のための結合剤として
- アニオン及び/又はカチオンを捕捉するための試薬として
の用途における、単独で又は硫酸カルシウム及び多分ポートランドセメントと組み合わせてのいずれかでの水硬性結合剤としての、このアルミン酸カルシウム化合物の使用も提供する。
【0018】
本発明は、最後に、例えば、以下:
- 金属学的融剤として
- 鉱物充填剤として
- 触媒又は触媒支持体として
- 顔料として
- 研磨剤として
の用途における、単独で又は硫酸カルシウム及び多分ポートランドセメントとの組み合わせによりのいずれかでの、このアルミン酸カルシウム化合物の使用を提供する。
【発明を実施するための形態】
【0019】
本明細書において下で提供される実施形態の記載及び例は、本発明が何からなり、如何にして実施され得るかに関して、本発明のよりよい理解を提供することに役立つであろうが、本発明はこれらに限定されない。
【0020】
慣例により、記載の捕捉で、特に断りのない限り、値「XからY」又は「XからYの間」の範囲の指示は、X及びYの値を含むと理解される。それに反して、「厳密にXからY」又は「厳密にXからYの間」に広がる値の範囲は、X及びYの値を除外すると理解される。
【0021】
記載の補足で、用語「水硬性結合剤」は、水と混合されたときに、別の反応性物質の添加なしに、空気中並びに水中の両方で硬化する材料を指して使用される。「凝結」又は「水硬性凝結」の現象とは、水硬性結合を指し、それは水との接触にもたらされて混合された後で硬化する過程である。
【0022】
慣例により、記載の補足で、用語「アルミン酸カルシウム」は、未ドープのアルミン酸カルシウム並びに:ベーマイト等のアルミナ一水和物AH、酸化鉄、シリカSiO、方解石CaCO、酸化チタンTiO;アニオンとして、硫酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩;及びカチオンとして、カルシウム、マグネシウム、鉄が化合した水和又は非水和塩、特に硫酸カルシウム及び炭酸カルシウム等の水和又は非水和カルシウム塩;ケイ酸アルミニウム及び特にカオリン等の水和又は非水和アルミニウム塩;硫酸アルミニウム;塩素塩又は塩素化残基;マグネシウム塩、又は実際さらに、特に海水中で入手可能な塩化ナトリウム等のナトリウム塩から選択される1種又は複数の化合物でドープされたアルミン酸カルシウムの両方を指すと理解される。例えば、カルシウムシリコアルミネートは、シリカでドープされたアルミン酸カルシウムの特定の例である。したがって、アルミン酸カルシウムセメントは、1種又は複数のアルミン酸カルシウムを本質的に含む、特定のタイプの水硬性結合剤を形成する粉体を指す。
【0023】
やはり慣例により、以下の節で、用語「アルミナ三水和物AH」は、1分子のアルミナAl当たり3分子の水HOを含む化合物を指して使用されるであろう。「アルミナ一水和物AH」は、1分子のアルミナAl当たり1分子の水HOを含む化合物を指して使用されるであろう。
【0024】
最終的に、セメント化学で一般的であるように、以下の略記号が使用されるであろう:アルミナAlに対してA、石灰CaOに対してC、シリカSiOに対してS、水HOに対してH、酸化イオウSOに対して$、及び酸化鉄Feに対してF。
【0025】
本発明による方法は、アルミン酸カルシウム、最初に水和反応により化合物を化合させることにより沈殿の形態で水和相の形成に導き、次に得られた水和相をか焼することを含む、水硬性結合剤を製造することからなる。
【0026】
本発明による方法は、より詳細には、以下の工程:
a)石灰供給源化合物C及びアルミナ供給源化合物を含む組成物を用意する工程であって、前記組成物は組成物の乾燥物質の合計質量に対して、最大で95質量%の石灰C及びアルミナ、及び最少で23質量%のアルミナを含む工程
b)工程a)で用意された組成物を、40℃から150℃の間に含まれる水和温度の水分飽和環境(媒体)に置いて、酸化カルシウム及び水と化合した少なくとも1部の酸化アルミニウムを含む水和相を沈殿させる工程
c)工程b)で得られた沈殿を、200℃から1300℃の間に含まれる焼成温度に晒して、それらを少なくとも15分間その温度に保つ工程
を含む。
【0027】
本発明による方法の根底にある一般的原理は、以下の通りである。工程b)で、組成物は、この組成物の化合物がイオンを放出する(即ち、それらが溶解する)ような様式で、水分飽和環境(媒体)中に置かれる。これらのイオンは、酸化カルシウム及び水と化合した少なくとも1種の酸化アルミニウムを含む水和相の形態で互いに再結合する。飽和すると、水和相は沈殿する(即ち、それらは結晶化する)。水和相の沈殿は、水分飽和媒体中のイオン濃度の低下を誘発し、それが組成物中の化合物からのイオンの放出を再び生じさせる。溶解/沈殿反応は、組成物中の化合物が完全に枯渇するまで続く。これが、工程b)における「水和反応」と称されることである。
【0028】
これらの溶解/沈殿反応が、カルシウムCaとアルミニウムAl元素とを、非常に低いエネルギー入力、及び低い温度で(酸化物の形態で)化合させることを可能にする。
【0029】
焼成の工程c)において、1つの目的は、工程b)で形成された水和結晶化相のカルシウム及びアルミニウムイオンと水分子の間の原子の結合を切断することである。水分子の結合におけるこれらの切断は、非晶質及び/又は結晶性アルミン酸カルシウムの形成をもたらす。別の目的は、制御された様式で、脱水された種を再結合させることであってもよい。
【0030】
工程a)、b)及びc)を、下でより詳細に説明する。
【0031】
工程a)
水和反応が工程b)で起こり、工程c)で、少なくとも1種のアルミン酸カルシウムを含む水硬性結合剤の形成に至ることができるためには、工程a)の化合物が、少なくともカルシウムを含むイオン及びアルミニウムを含むイオンを放出することができることが必要である。
【0032】
水中でカルシウムを含む少なくとも1種のイオンを放出する化合物は、この事例では石灰供給源化合物であり、一方、水中でアルミニウムを含む少なくとも1種のイオンを放出する化合物は、アルミナ供給源化合物、例えば、アルミナ三水和物AH供給源化合物である。
【0033】
経済的見地から有利であり続けるために、工程a)の組成物が、組成物の乾燥物質の合計質量に対して、最大で95質量%の石灰及びアルミナを含むことが必要であり、即ち、この組成物の化合物は、完全に純粋である必要はない。この質量濃度レベルは、乾燥物質の基準に基づき、即ち、自由水の非存在で(例えば、24時間110℃で乾燥された後で)測定される。
【0034】
本発明の方法は、不純物を含有する天然原材料を使用することを可能にして、一方、該水硬性結合剤の性能に対するこれらの不純物の有害な効果を限定もする(従来使用されてきた方法と似ていない)。
【0035】
純粋な製品を使用することは、経済的に及び環境的にあまり関心を引かないであろう(それらが、それ自体エネルギー集約的な工業的方法に由来することを考慮すれば)。
【0036】
工程a)で用意される組成物が少なくとも23%のアルミナAlを含有することは有利であり、その理由は、このことが工程c)の終結で化合されなかった残存石灰の量を削減することを可能にするからである。
【0037】
好ましくは、工程a)で用意される組成物は、少なくとも25%のアルミナを含有する。好ましい様式では、工程a)で用意される組成物は、少なくとも27%のアルミナを含有するか或いは、工程a)で用意される組成物は、少なくとも30%のアルミナを含有する。
【0038】
好ましくは、工程a)で用意される組成物は、少なくとも25%のアルミナ三水和物AHを含有する。好ましい様式では、工程a)で用意される組成物は、少なくとも27%のアルミナ三水和物AHを含有する或いは、工程a)で用意される組成物は、少なくとも30%のアルミナ三水和物AHを含有する。
【0039】
本発明の1つの有利な特性特徴により、工程a)の組成物の石灰のアルミナ三水和物に対するモル比「C/AH」は、0.5と3の間である。或いは、工程a)の組成物の石灰のアルミナに対するモル比「C/A」は、0.5と3の間である。0.5と3の間のC/AH比値の選択は、工程b)における、アルミナ1分子に対して水6分子及び石灰3分子を含む水和相CAHの形成を確実にする。この水和相CAHは、それが工程c)で脱水されたときに、3のC/Aモル比により特徴づけられる全体的化学的性質を有するアルミン酸カルシウムを提供し、鉱物学的に数種、例えば、主としてアルミン酸カルシウムC12及び石灰が存在し得る(水和又は非水和のいずれかで)。
【0040】
好ましくは、工程a)で用意される組成物は、20%未満のシリカSiOを含有する。例えば、工程a)で用意される組成物は、15%未満のシリカSiOを含有する。或いは、工程a)で用意される組成物は、10%未満のシリカSiOを含有する。例えば、工程a)で用意される組成物は、8%未満のシリカSiOを含有する。或いは、工程a)で用意される組成物は、6%未満のシリカSiOを含有する。より高いレベルのシリカ含有率は、例えば、ポートランドセメントで見出されるC2S及びC3S等のアルミナを含まない相の外見を美しくする傾向がある。これらの相は、アルミン酸カルシウム化合物等のアルミナ含有相より反応性が低い。
【0041】
やはり有利に、工程a)の組成物は、この事例では、以下のリスト:鉄に富むボーキサイト、鉄に乏しいボーキサイト、生石灰又は水和石灰、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム、カオリン等の水和アルミノケイ酸塩、合成アルミナ三水和物AH、塩化ナトリウムNaCl又は海水等の塩素化された塩又は残基、又はさらに硝酸カルシウムCaNO又はブタ堆肥スラリー等の硝酸化された塩又は残基から選択される少なくとも2種の化合物の混合物により形成される。これらの化合物の大部分は、それらの天然状態で存在し、それが経済的見地から有利である。
【0042】
好ましくは、アルミナ三水和物供給源として、主としてアルミナ三水和物を含むボーキサイトが使用される。これは、このボーキサイトの天然の埋蔵量が豊富なので、有利である。
【0043】
好ましくは、石灰供給源化合物として、水和石灰又は生石灰が使用される。例えば、水和石灰は、石灰供給源として使用される。水和石灰の使用は、安全な条件下で取り扱うことがより容易である。
【0044】
有利に、工程a)の組成物は、以下のリスト:ベーマイト等のアルミナ一水和物AH、酸化鉄、シリカSiO、方解石CaCO、酸化チタンTiO、アニオンとして:硫酸塩、ケイ酸塩、炭酸塩、硝酸塩、リン酸塩及びカチオンとして:カルシウム、マグネシウム、鉄が化合した塩(水和又は非水和のいずれかで)、特に硫酸カルシウム及び炭酸カルシウム等の水和又は非水和カルシウム塩;ケイ酸アルミニウム及び特にカオリン等の水和又は非水和アルミニウム塩;硫酸アルミニウム;塩素塩又は塩素化された残基;マグネシウム塩、又は実際さらに特に海水中で入手可能な塩化ナトリウム等のナトリウム塩から選択される化合物を、少なくとも5%含む。
【0045】
例えば、工程a)の組成物は、少なくとも5%の塩化物を含む。例えば、工程a)の組成物は、少なくとも5%のケイ酸塩、例えば、少なくとも5%のケイ酸アルミニウム、例えば、少なくとも5%のカオリンを含む。例えば、工程a)の組成物は、少なくとも5%の硫酸カルシウム及び/又は硫酸アルミニウムを含む。
【0046】
少なくとも5%の沈殿した化合物は、最終的に得られる水硬性結合剤に機能性の特性特徴を提供することを可能にする。非限定的な例として、アルミン酸カルシウムと共にフリーデル塩(Friedel’s塩)を形成する塩化物は、媒体内における塩の浸透を低下させることを可能にするが。ケイ酸塩は、アルミン酸カルシウムと共に、ストラトリンガイトの形成を促進するが、それは変換されやすくない。また、硫酸塩は、優れた機械的性能及び/又は収縮補償、急速な乾燥に関する性能、その他を有するエトリンガイト又はモノスルホアルミネートの形成を促進する。
【0047】
工程a)の組成物は、乾燥した、自由な又は圧縮された粉体の形態にあることもできて、又は実際それは、水性懸濁液等の水性媒体中の組成物の形態であることさえある。
【0048】
工程a)の組成物を構成する化合物の粒径分布は、工程b)の水和の速度に影響する。事実において、工程b)では、溶解に次ぐ工程a)の組成物の化合物の水和物の形態における沈殿により、化合はこれらの化合物の反応性表面の増大により容易になり加速される。
【0049】
したがって、有利に、工程a)の組成物の粒子のいずれの組も、100マイクロメートル以下の参照直径d80により規定された粒径分布を有する。
【0050】
100マイクロメートル以下の参照直径d80により規定された粒径分布は、工程b)における反応速度が、選択された圧力及び温度の操作条件下で許容されることを確実にする。
【0051】
任意の1組の粒子の参照直径のd80は、これらの粒子のサイズ、言い換えれば、この集合の粒子の粒径の統計分布を代表する量である。
【0052】
参照直径d80は、前記粒子の組全体の合計体積に対して体積で、使用される粒子の80%がそれ未満で見出される直径(閾値)として定義される参照直径である。
【0053】
換言すれば、所与の参照直径d80を有する1組の粒子について、これらの粒子の80体積%は、この所与の参照直径d80未満の直径を有し、これらの粒子の20体積%は、この所与の参照直径d80を超える直径を有するであろう。
【0054】
この事例における用語「直径」は、その形状がどうであろうと、粒子の最大寸法を指すと理解される。
【0055】
粒子の集合についての参照直径d80は、この集合中の粒子の各々のサイズの統計分布を表す粒径曲線から得られる。
【0056】
実施に当たっては、粒子の集合の参照直径d80は、沈降法(X線吸収光度法により検出)又はレーザー回折法(ISOスタンダード13320)等の種々の技法により決定することができる。本発明の関係で、粒径は、ISOスタンダード13320に従って、レーザー回折法により、例えば、Malvern社により市販されているレーザー回折タイプの粒径測定器Mastersizer 2000又は3000を用いて、3バールの圧力下で測定される。
【0057】
この参照直径d80を達成するために、工程a)で用意される組成物の化合物を粉砕することができる。特に、化合物を別々に粉砕して次にそれらを混合して一緒にして組成物を形成するか、又は化合物を共粉砕、即ち、それらを全部一緒に粉砕して、組成物を直接形成することを考慮することが可能である。
【0058】
この予備的粉砕又は共粉砕は、濡れた又は乾燥した媒体中で実行されてもよい。この目的のために、粉砕ボールと共に回転タンブラージャーボールミルを使用することが特に可能であり、該ボールミルに導入される大量の水は、粉砕される乾燥した材料の塊りを防止するためである。この水の質量は、例えば、ジャー中に導入される乾燥物質の質量以上であってもよい。
【0059】
水性媒体中での工程a)の組成物の化合物の予備的粉砕には、自然であるか又は強制されたかいずれにしても、使用されるグラインダーの一般的に加熱が伴い、その結果水和反応は、粉砕が起こると始まり得る。したがって、方法の工程a)及びb)を、部分的に同時の様式で実施することが可能である。これは、工程a)及びb)が完全に逐次の様式で実施される方法と比較して、時間及び/又はエネルギーの節約をもたらす。工程a)及びb)が、部分的に同時の様式で実施される場合には、水和反応のために必要な水は、粉砕が起こったときに、工程a)の組成物との接触にもたらされる。この場合には、粉砕のために使用される水は、粉砕される組成物と比較して過剰量で導入されなければならず、その結果、粉砕されたときに、組成物が置かれる媒体は水分飽和している。
【0060】
工程b)
工程b)で組成物が中に置かれる水分飽和媒体は、過剰の液体の水によって形成されている。特に、組成物は、工程a)において化合物の全体的水和のために必要な水の量と少なくとも等しい量の水の中に置かれる。その水は、生成物の取り扱い及び操作のために、例えば、濡れた相の粉砕中又は工程b)から工程c)への生成物の輸送のために必要な水の量によって供給され得る。
【0061】
例えば、濡れた相の粉砕の場合に、工業的方法で取り扱われ、操作されるために十分に流動性であるペースト(凝集を防止するため、その他で)を得るために必要とされる水の量は、工程b)の進行中にわたって原材料の水和を可能にするためにも十分大量である。当業者は、水が水和プロセスを限定する要因でないことを確かめるためのチェックにより、例えば、工程b)から得られる生じた生成物に対して鉱物学的測定を使用することにより、必要な水の量を決定する方法を知っている。
【0062】
これを行うために、工程a)の組成物は、例えば、プラスチック材料又は金属で作製されたコンテナ中に、過剰の液体の水と共に置かれ、その中で加熱される。組成物は、液体の水中に、例えば、組成物が水との接触にもたらされる前の乾燥しているときに、攪拌棒により、又は湿潤媒体中の初期化合物の湿式粉砕後に組成物が湿っているときに、回転タンブラージャーにより、分散される。
【0063】
水和温度が、100℃より高いように選択された場合、液体の水と混合された工程a)の組成物は、オートクレーブ又は必須の条件の温度及び圧力を満たす手段を提供する任意の他の工業的装置中に置かれる。
【0064】
変形として、組成物が濡れた雰囲気中で、水の飽和蒸気圧下に置かれることは想定されてもよい。この場合、この雰囲気は、水分飽和環境であると考えられる。
【0065】
両方の場合に、水分飽和環境/媒体は、過剰の水を含む。事実、水は、水和反応を限定する要因であるべきでない。それに加えて、工程b)の水和反応後の水の存在は、得られた水和相の取り扱い及び操作を容易にする。
【0066】
工程b)において、工程a)の組成物を水分飽和媒体中に置くことにより得られ得るイオンは、特に以下のようである:カルシウムイオンCa2+、塩基性媒体中における水酸化アルミニウムのアニオンAl(OH)4-、硫酸塩イオンSO 2-、塩基性媒体中におけるケイ酸のアニオンSiO(OH)3-、炭酸イオンCO 2-、塩素化物イオンCl、及び硝酸塩イオンNO 2-
【0067】
したがって、得ることができる水和相は、この場合、以下のようである:CAH10、CAH、CAH、CAH 13、CASH、CA(CaSO)H19、CA(CaSO32、CA(CaCO)H19、CA(CaNO)H19、CA(CaCl)H19、それらの中で、CaSO、CaCO、CaNO、及びCaClは、それぞれ、硫酸カルシウム、炭酸カルシウム(又は方解石)、硝酸カルシウム、及び塩化カルシウムを表す。
【0068】
有利には、組成物は、この水分飽和媒体中に15分と48時間の間の期間置かれる。この期間は、比較的短く、それは、製造の速度に関して及びエネルギー節約に関して、両方で利点である。
【0069】
上で説明したように、工程a)で用意される組成物の化合物の反応性表面における増大は、工程b)の水和反応を容易にすること及び/又は加速することを可能にする。
【0070】
初期化合物の反応性表面における増大に加えて、工程b)の水和反応は、反応温度における、又は実際にはさらに圧力における増大によっても容易にされ得る。
【0071】
このことが、この事例において水和温度が40℃から150℃の間に広がる範囲内であるように選択される理由である。
【0072】
実際的見地から、温度を上昇させることに役立つ任意の手段が、工程b)において所望の水和温度を達成するために使用されてもよい。例えば、従来の加熱手段が使用されてもよい(管状炉、電気抵抗、その他)。
【0073】
100℃未満の温度、即ち、この事例で、40℃から100℃の間に含まれる温度は、特に有利であり、その理由は、それが工程b)を大気圧で実施することを可能にするからであり、それは、工業的装置において経済的及び安全の見地から容易であり且つ有利である。
【0074】
水熱条件下における水和反応は、前記水和反応をさらに加速する能力を提供する。用語「水熱条件」とは、沸騰温度を超える温度及び水分飽和環境/媒体を確実にするために十分な圧力(即ち、例えば、1気圧の圧力下で100℃を超える)を指すと理解される。所与の温度に対して、圧力は、飽和蒸気圧を超えなければならない。選択される温度について、当業者は、例えば、Duperray式(90℃と140℃の間で成り立つ)、P=(T/100)、を使用することができる、ここで、Pは気圧における圧力、及び温度Tは℃における温度である。
【0075】
工程b)の持続時間は、水和温度の関数として選択される。より特定して、工程b)の水和温度が高いほど、持続時間はより短いであろう。したがって、例えば、80μmのd80に粉砕された水和石灰及びボーキサイト三水和物の場合に、水和反応の進行度は、150℃の水和温度で8分後に90%に近く、この進行度は、100℃で25分後に、85℃で90分後に、及び40℃で20時間後に到達される。
【0076】
優先的様式で、80℃から90℃の間に含まれる水和温度、例えば85℃が選択されるであろう。15分から48時間の間に含まれる水和の持続時間が選択されるであろう。例えば、水和の持続時間は、18時間から30時間の間、例えば20時間から28時間の間である。例えば、水和の持続時間は、22時間から26時間の間である。例えば、水和の持続時間は24時間である。
【0077】
工程b)の水和反応から生ずる水和相は、沈殿の形態にある。それらは乾燥した固体、即ち自由水を含まない形態、又は懸濁液のいずれかである。それらが懸濁液である場合、それらは、それらを取り巻く自由水から分離されるべきであり、その理由は、工程c)の焼成に伴って起こるこの自由水の蒸発は、追加のエネルギーコストを意味するからである。この分離は、種々の手段、特に濾過、圧搾、又はさらに蒸発によって行うことができる。
【0078】
回収された沈殿の最終的乾燥が想定されるかもしれないが、しかしながら必要でない。この乾燥は、およそ80℃から260℃の間で、乾燥した雰囲気下に、例えば、沈殿を85℃の炉に24時間の間入れておくことにより、実施されてもよい。より一般的に、乾燥は、工程c)の焼成の実施と同時である。
【0079】
工程c)
工程c)で、沈殿した水和相は焼成処理される。
【0080】
工程c)の終結で、得られた材料は、水との反応性能力を有し、その反応がその材料を水硬性結合剤にする。
【0081】
工程c)の実施のために選択される焼成温度は、一方で、工程b)で形成された水和相に依存して、他方で、工程c)の終結で得られることが求められるアルミン酸カルシウムに依存する。
【0082】
例えば、大気圧で、CAH10の沈殿は200℃で脱水するが、それに対してCAHの沈殿は400℃で脱水する。通常の水和相の脱水温度は、FactSage or Gibbs Energy Minimisation (GEM)の熱力学的データ表で参照される。
【0083】
実施では、工程b)で得られる最も安定な水和アルミン酸カルシウム相であるCAH相は、400℃で完全に脱水される。しかしながら、他の脱水された相及び最終的に得られる水硬性結合剤の全体的反応性の相対比率を制御するために、400℃を超える焼成温度を使用することが有益であることもある。
【0084】
工程c)の終結で得られるべきアルミン酸カルシウムの鉱物学的特徴及び結晶化度は、両方共、選択される焼成の持続時間及び温度に依存する。同様に、最終の水硬性結合剤中におけるこれらの異なるアルミン酸カルシウムの比率は、持続時間に及び選択される脱水温度とも称される焼成温度にも依存する。例えば、未ドープのアルミン酸カルシウムについては、以下の現象が一般的に起こるであろう。およそ400℃からおよそ500℃の間に含まれる焼成温度で、CAHは分解してC12及び水和石灰Ca(OH)になる。およそ500℃からおよそ600℃の間に含まれる焼成温度では、水和石灰は脱水して、それ故アルミン酸カルシウムは、C12の結晶相及び脱水された石灰CaOを含む。およそ600℃からおよそ800℃の間に含まれる焼成温度では、炭酸塩が存在すれば、それらが脱炭酸される。およそ800℃からおよそ900℃の間に含まれる焼成温度では、再結晶の種、主としてC12及び石灰CaOが生ずる。900℃を超えると、アルミン酸カルシウム及び石灰相の組換えが起こり、初期組成物の化学平衡に進む。950℃を超えると、鉄及びシリカとアルミン酸カルシウムの相との組換えが生じて、組換えによる鉄及びシリカの量は温度と共に増大する。
【0085】
特に、結晶学的見地から、工程c)の脱水の後、得られた物質は、多かれ少なかれ非晶質混合物を構成する。結晶化の程度、結晶相と残存結晶水との相対比率は、工程c)の脱水の持続時間及び温度に依存する。
【0086】
特に、より高い焼成温度は、非晶質部分を減少させて、結晶化された相を発達させる効果を有する。残存する結晶水の量は、脱水温度が上昇するにつれて減少する。再結晶又は組換え等の他の現象も温度が上昇すると起こり得るが、これらの現象は、必ずしも順に現れるとは限らない。脱水、再結晶又は組換えのこれらの現象は、各々それら自体の動力学を有し、それらも考えられる種に依存する。工程c)の焼成で使用される所与の温度で、この温度で又はそれより低い他の温度で起こる可能性がある全ての反応は、実際に起こり得るので、したがって、工程c)の持続時間を増大することは、反応が平衡状態に近づくことを可能にする。
【0087】
したがって、適切に選択された焼成温度及び時間の長さで、最終の鉱物学的組成物を指向させることは可能である。温度が十分高ければ、工程c)の焼成の持続時間の増大は、その結果として非晶質部分を減少させて、結晶化された相を発達させ、残存結晶水の量を減少させる効果を有する。
【0088】
結晶性形態で得られることが可能なアルミン酸カルシウムは、以下の通りである:石灰及びアルミナのみを含有する相については、CA(3CaO.Al)、C12(12CaO.7Al)、CA(CaO.Al)、CA(CaO.2Al)又はCA(CaO.6Al)、並びにイオウ酸化物又はシリカ酸化物を含有する相についてはC$(4CaO.3Al.SO)又はCAS(2CaO.Al.SiO)。これらのアルミン酸カルシウムの水硬性の反応性、即ちそれらの水との反応の容量及び速度は可変である。一般的に、「純粋」アルミン酸カルシウム相の水硬性の反応性は、C/A比、即ち石灰とアルミナとの間のモル(又は質量)比が減少すると、低下する。
【0089】
例えば、工程b)で形成された沈殿がCAHである場合には、工程c)における400℃の焼成温度の選択は、結晶化された相C12及び非晶質又は結晶化度が低い状態の水和石灰、並びに工程b)で反応しなかった何らかの過剰生成物、すなわち過剰石灰の事象でポートランダイトCH、及び過剰アルミナの事象でアルミナ一水和物AHを得ることに帰着する。得られる結晶化相と非晶質相との相対比率は、出発物質の総合的化学的性質、特に工程a)の組成物のC/A比に依存する。
【0090】
より高い温度における処理は、非晶質部分の減少、すでに結晶化された相における増大、並びに400℃では観察されなかった新しく結晶化された相、例えば、結晶化された相CA、CA、C$、CAS等の出現を誘発する。
【0091】
工程c)における焼成の持続時間及び温度は、それ故、水硬性結合剤製造のために目標とされる適用及び反応性に従って定められるべきである。
【0092】
この事例においては、焼成温度は、200℃から1300℃の間に広がる範囲内で選択される。
【0093】
特に、焼成温度は、好ましくは400℃から1200℃の間、より好ましくは900℃から1000℃の間、実際さらにより好ましくは930℃から970℃の間に含まれる。
【0094】
この焼成温度は、アルミン酸カルシウムの既知の製造方法で使用される通常の温度、特に既知の焼結又は溶融方法で使用される温度よりかなり低い。
【0095】
工程c)が大気圧未満の圧力下で実施される場合、焼成温度は、得られる最終の水硬性結合剤の性質を変化させずに、例えば、600℃未満の焼成温度に、低くできる可能性がある。
【0096】
実用的見地から、工程c)で所望の焼成温度を達成するために、温度を上げることに役立つ任意の手段が使用されてもよい。例えば、従来の加熱手段又はマイクロ波加熱が使用されてもよい。特に、焼成は、電気炉中で、1時間に300℃の昇温速度で所望の焼成温度に到達させ、次にこの焼成温度を所望の焼成時間、持続維持して実施することができる。冷却は、その後炉の換気により、最終の生成物の取り扱い及び操作が可能となる110℃近くの温度に達するまで、1時間に-300℃の速度で制御される。
【0097】
有利には、工程c)で、焼成の持続時間、即ち水和相が焼成温度に置かれる時間の長さは、15分から240分と間に含まれる。4時間以下のこの持続時間は、非常に妥当であり、エネルギー消費を限定することを可能にする。好ましくは、焼成時間の持続は3時間以下である。
【0098】
本発明による方法の1つの特に有利な特性特徴により、鉄及び/又はシリカを含む副次的相を含有する原材料を使用する場合に、ある結晶相、特にゲーレナイトCAS及びフェライトCF及び/又はCAFの形成を制御することが可能である。これは有利であり、その理由は、最終の水硬性結合剤中におけるフェライトCF及び/又はCAF、及び/又はゲーレナイトCASの存在が、この水硬性結合剤が意図される用途に依存して、常に望ましいとは限らないからである。実際、フェライトCF、CAF、及びゲーレナイトCASは、反応性が比較的低い水硬性結合剤を生じて、それは、それらの水硬性の潜在能力が、純アルミン酸カルシウム(CA又はC12相)より低いからであるが、それらは、特にCAFは、注目すべき長期の機械的強度作用を示すこともある。したがって、フェライト及びゲーレナイトを含む相の形成を制限することは、工程c)の終結で、急速な反応性を有する水硬性結合剤、即ち急速な凝結及び/又はその初期抵抗における急速な増大を示す水硬性結合剤を得ることを可能にするが、しかしながら、それらの発達を助長することは、反応性は低いが、それにも拘わらず優れた長期の機械的強度作用を示すセメントを提供するであろう水硬性結合剤を生ずる。
【0099】
実用においては、鉄等の元素又はそれらの酸化物を含有する(例えば、ある種のボーキサイト)、又はシリカを含有する天然の化合物が、工程a)で用意される組成物中の化合物として使用される場合でさえ、本発明による方法の工程b)のための操作条件は、それらが鉄又はシリカを含有するアルミン酸カルシウムの新しい水和相を得ることに至らないような条件である。事実において、それらが工程a)で存在する場合には、鉄、それらの酸化物、又はシリカが、工程b)の終結において遊離の及び非組換え形態で残留する。したがって、工程c)で選択される焼成温度に依存して、最終の脱水相中に、鉄、それらの酸化物、又はシリカを含むことも含まないことも可能である。より詳細には、工程c)で、900℃未満の焼成温度に置かれることにより、結晶相CF及び/又はCAF、及び/又はCASは形成されない。それに反して、工程b)の後で系に存在する全ての残存石灰は、水和石灰又は生石灰CaOの形態のままであり、後者は、想定される用途に有害な高い吸湿性及び過剰に高い反応性を示す。
【0100】
それに反して、工程c)で930℃から970℃の間に含まれる、例えば950℃に近い焼成温度に約3時間置かれると、石灰は、アルミン酸カルシウム並びに鉄及び/又はそれらの酸化物の相に完全に組み合わされて、アルミン酸カルシウムの結晶相と組み合わされて、CF及び/又はCAFの結晶化された相を形成するために、存在する相と丁度反応し始めることが見出される。
【0101】
およそ1000℃の温度で、フェライトは、CF及び/又はCAFの形態で形成されていると思われ、一方、シリカはまさにアルミン酸カルシウムの相と組み合わされてCASになり始めているが、しかしながらこれらの相は、アルミン酸カルシウムより反応性が低い。
【0102】
したがって、鉄及び/又はシリカによる高価なアルミナの流動化を制限するために、1000℃未満の焼成温度を維持することが有利である。例えば、焼成温度は、200℃から750℃の間、或いは200℃から700℃の間に含まれるであろう。
【0103】
やはり、工程a)の組成物は、工程a)の乾燥した組成物の質量に対して最大で0.4質量%の、CaF供給源及び/又は氷晶石NaAlFから選択されるフッ素化された化合物を含むことが有利であり;或いは工程a)の組成物は、工程a)の乾燥した組成物の質量に対して、最大で0.3質量%、例えば、最大で0.2質量%の、CaF供給源及び/又は氷晶石NaAlFから選択されるフッ素化された化合物を含むことが有利であり;例えば、工程a)の組成物は、CaF供給源及び/又は氷晶石NaAlFから選択されるフッ素化された化合物を含まない。
【0104】
同様に、本発明による方法は、CaF供給源及び/又は氷晶石NaAlFから選択されるフッ素化された化合物の添加を含まないことが有利である。
【0105】
事実において、アルミン酸カルシウム製造方法におけるこれらの化合物の使用は、腐食性で、作業者にとって危険な及び環境に対して毒性のガス、HFの形成を伴う。これらの化合物は、費用が余分にかかり、経済的方法と適合性でない。
【0106】
本発明による方法は、常に、非常に砕けやすい又は脆弱なアルミン酸カルシウム化合物を得る結果になる。必要な場合に、アルミン酸カルシウム化合物は、例えば、乳鉢及び乳棒により、又は回転タンブラージャー等の粉砕機で5から10分処理することにより、容易に粉体に微細化することができる。
【0107】
それ故、ボールミル等の高エネルギー製粉機を使用する必要はない。それにも拘わらず、そのような粉砕機が使用される場合、それらは非常に短い時間で使用されるであろう。
【0108】
本発明による方法も、結果として常に高い比表面積(Brunauer-Emmett-Teller又はBET方法による)を有するアルミン酸カルシウム化合物を得る。したがって、本発明による方法により得られるアルミン酸カルシウム化合物は、例えば、7m/gを超える又は20m/gさえ超える比表面積を有する。例えば、本発明による方法により得られるアルミン酸カルシウム化合物は、40m/gを超える比表面積を有する。
【0109】
有利には、得られるアルミン酸カルシウム化合物は、水硬性結合剤として使用することができる。
【0110】
より詳細には、得られるアルミン酸カルシウム化合物は、単独で又は硫酸カルシウム及び多分ポートランドセメントと組み合わされてのいずれかで、水硬性結合剤を形成するために使用することができる。
【0111】
このように形成された水硬性結合剤は、例えば、以下:
- 建築化学で、修復モルタル等のモルタル、タイル張り接着剤及びグラウト又はジョイントの製造、平滑化又は仕上げのスクリード及びコーティング、又はさらに装飾的漆喰又はコーティングのために
- 耐火性コンクリートのための結合剤として
- 土木工学用コンクリートのための結合剤として
- 任意の組立て式工法タイプの方法のための結合剤として
- ボーリング穴の合着のための結合剤として
- 乾燥した又は濡れた、噴霧されたコンクリート(ショットクリート)のための結合剤として
の用途で使用されてもよい。
【0112】
得られたアルミン酸カルシウム化合物は、以下:
- 金属学的融剤として
- 鉱物充填剤として
- 触媒又は触媒支持体として
- 顔料として
- 研磨剤として
の用途で使用されてもよい。
【0113】
以下の実施例は本発明を例示するが、しかしながら、本発明で意図されることをどのように限定することもない。
【実施例
【0114】
A/本発明による水硬性結合剤の調製
A1.原材料
下のTable1-1(表1)及びTable1-2(表2)でリストに挙げた原材料が、本発明の方法により、アルミン酸カルシウム化合物LH1からLH11を製造するために使用される。
【0115】
【表1】
【0116】
【表2】
【0117】
ここで、燃焼損失LOIは、主として、110℃で24時間乾燥させた後の相対的質量損失により測定された原材料の水分含有率を表す。
【0118】
特に、アルミナ三水和物AHに富む3種のボーキサイトが評価されて、種々のレベルの不純物(主として酸化鉄及びシリカにより代表される)を表す:ボーキサイトA(オーストラリアの)は酸化鉄及びシリカが少なく、一方、ボーキサイトB又はボーキサイトC(ギアナの、Bokeと称する)は酸化鉄がより多い。石膏漆喰は硫酸カルシウム半水和物であり、石膏は硫酸カルシウム二水和物であり、どれでも工程b)の間、二水和物の形態で見出されるであろうということが念頭に置かれる。
【0119】
本発明の方法により得られるアルミン酸カルシウム化合物LH2からLH7は、P1からP10、及びP*、及びモルタルM1、M11、M12、M13及びM14、並びに比較のモルタルMC1及びMC2と表示される純粋なペーストを形成するために、それら自体水硬性結合剤として使用される。前記モルタルを形成するために使用される原材料の中に、以下のものが含まれる:無水石膏FF(登録商標)、それはFrancis Flower社により市販されている無水硫酸カルシウムである「OPC」と略称される普通のポートランドセメント、それはMilke社により市販されているポートランドセメントである(参照OPC52.5R)砂NE14(AFNOR標準的シリカ砂)クエン酸及び酒石酸、炭酸ナトリウムNaCO
【0120】
A2.本発明の方法により得られるアルミン酸カルシウム化合物
下のTable 2(表3)は、種々の初期組成物並びにアルミン酸カルシウム化合物LH1からLH11を得るために効果的に実行された本発明の方法の操作条件を一緒に集めた。このtable 2(表3)において、工程a)で、質量パーセンテージは、濡れた組成物の合計質量に対して、又は組成物の乾燥物質の合計質量に対してのいずれかの質量により与えられる。
【0121】
【表3A】
【0122】
【表3B】
【0123】
A3.得られたアルミン酸カルシウム化合物の分析
A3.1 微細度
アルミン酸カルシウム化合物LH1からLH11の微細度は、光学実験台上で、レーザー回折法により、ISOスタンダード13320に従って、Malvern社により市販されているレーザー回折タイプ粒径測定器Mastersizer 2000、光学モデル「Fraunhofer」を用いて、3バールの圧力下で測定される。
下のTable 3(表4)に、本発明の方法によってTable 2(表3)で提示された操作条件下で得られたアルミン酸カルシウム化合物LH2からLH7の微細度をまとめた。より詳細にこのTable 3(表4)は、得られた種々の異なる化合物の参照直径d10、d50、d80及びd90を示す。これらの参照直径は、得られた各化合物を構成する粒子の集合全体の粒径分布を特徴づける。特定して、参照直径d10は、前記粒子の集合全体の合計質量に対して、使用される粒子の10質量%がそれ未満で見出される直径(閾値)として定義される参照直径である。参照直径d50は、前記粒子の集合全体の合計質量に対して、使用される粒子の50質量%がそれ未満で見出される直径として定義される参照直径である。及び、参照直径d90は、前記粒子の集合全体の合計質量に対して、使用される粒子の90質量%がそれ未満で見出される直径として定義される参照直径である。
【0124】
微細度は、工程c)の終結で得られた化合物を、乳棒及び乳鉢で5分間(LH3、LH4、LH5、LH6及びLH7)、又は10分間(LH2)粉砕して得られる。
【0125】
【表4】
【0126】
アルミン酸カルシウム化合物LH2からLH7の微細度は、微細なセメントの微細度に対応する。比較として、溶融方法の後、例えば、Kerneos社により市販されているタイプTernal(登録商標)RG-S又はTernal(登録商標)EPのボールミル中で粉砕することにより製造された従来市販のアルミン酸カルシウムは、65μmのオーダーの直径d80を有する。
【0127】
したがって、軽い及び急速な粉砕後に、本発明の方法により得られた生成物は、ボール又はローラー製粉機等の従来のエネルギー集約的手段によって粉砕された従来の水硬性結合剤のように微細であり、実際さらにより微細である。
【0128】
それに加えて、2倍長い時間粉砕された化合物LH2は、化合物LH3からLH7よりも特に微細ではない。このことは、軽い粉砕が、本発明による方法を使用することにより微細なセメントを得るために十分であることを実際明確に示す。
【0129】
それに加えて、本発明の方法により得られる生成物は、市場に存在するセメントよりより高い、BET方法による比表面積を有する特殊性を示し、それは特に有利なことである。
【0130】
A3.2 化学組成
アルミン酸カルシウム化合物LH1からLH11の化学組成は、当業者が容易に選択することができる種々の異なる方法、例えば、X線回折により、又はさらに熱重量分析(TGA)法により、当量様式で分析することができる。この事例では、ガラスビーズを使用するX線蛍光分析が選択される。プロトコルは以下の通りである:0.85gのか焼した材料及び5.15gの四ホウ酸リチウムを混合してPANalytical brand Perl’x3システムを使用してビーズを調製し(溶融プロファイル:900℃で50秒、次に1050℃で230秒、次に1100℃で230秒及びキャスティング)BRUKERブランドS4 Pioneer XRF分光計装置を使用して、Perleプログラムによりビーズを分析する。
【0131】
下のTable 4(表5)は、得られたアルミン酸カルシウム化合物LH1からLH11の鉱物学的組成のまとめである。
【0132】
【表5A】
【0133】
【表5B】
【0134】
したがって、Table 4(表5)に示したように、得られたアルミン酸カルシウム化合物LH1からLH11は、全て少なくとも1種のアルミン酸カルシウムを含む。
【0135】
焼成の度合いに依存して、Kerneos社により頒布されたTernal(登録商標)EPに類似した非常にC12に富む結合剤又はTernal(登録商標)RGに類似の非常にCA相に富む結合剤又は水硬性の潜在能力が認められているカルシウムスルホアルミネート相C$を有する新しい結合剤を得ることが可能である。
【0136】
B/本発明の方法により得られる水硬性結合剤から形成されるモルタルの性質
B1.モルタルの組成
P1からP10と番号付けされたペーストを形成するために、アルミン酸カルシウム化合物LH1からLH11が、水硬性結合剤として硫酸カルシウム及び/又はポートランドセメントと組み合わされて使用され、同様に、結合相に砂が加えられる場合に、M1、M11、M12、M13及びM14と番号づけされるモルタル並びに比較のモルタルMC1及びMC2を形成するために、市販のアルミン酸カルシウムを使用する。P*は、100%LH6を用いる、即ちポートランドセメント又は硫酸カルシウムを添加しないアッセイである。
【0137】
組成を、下のTable 5(表6)及びTable 6(表7)に示す。Table 5(表6)で、組成は、ペーストの合計質量に対する各化合物の質量により示され、一方Table 6(表7)では、それらはモルタルの合計質量に対する各化合物の質量(質量%)により示される。
【0138】
モルタルMC1は、モルタルM1の性質を、存在するミョウバンセメント、Kerneos社により市販されているセメントTernal EP(登録商標)(TEP*)から得られるモルタルの性質と比較するために作製された比較のモルタルである。天然の原材料(ボーキサイト一水和物及び石灰石)から溶融法によって得られたこのセメントは、主として1.77のC/Aモル比による石灰及びアルミナ、およそ8%の酸化鉄を含有して、主な鉱物学的相としてC12を表す。それは、モルタルを製造するために、硫酸カルシウムと組み合わされた結合相として使用される。
【0139】
モルタルMC2は、市販の製品Ciment Fondu(登録商標)(CF*)で得られ、その製造はTernal EPと同様であり、それは、およそ1.73のC/Aモル比及びおよそ15%の酸化鉄含有率レベルを有するのみで、主な鉱物学的相としてCAを有する。
【0140】
実用では、調合物P1からP10、P*、M1、M11、M12、M13、M14、MC1、MC2を秤量して、次に「Turbulat」のようなタイプのミキサー中で15分間均質化する。
【0141】
混合された粉体を次に、「Rayneri」ミキサーのようなタイプの乳鉢ミキサーのボウル中に導入して、1分60回転(rpm)で30秒間乾式混合した後、混合水と称される量の水を、全部一度に加えて、次に混合を60rpmで30秒間、次にさらに120rpmで30秒間継続する。
【0142】
【表6】
【0143】
【表7】
【0144】
アルミン酸カルシウム化合物LH8からLH11は、AFNORスタンダードに従ってモルタルM11からM14を形成するために、それぞれ、単独で水硬性結合剤として使用される。
【0145】
より詳細に述べると、このAFNORスタンダードに従って、最初に1350gの砂及び750gの水硬性結合剤を混合して、次に水を、0.4に等しい混合水/水硬性結合剤比で加える。
【0146】
モルタルMC2は、このAFNORスタンダードに従って、Kerneos社により市販されているCiment Fondu(登録商標)(CF*)から形成された比較のモルタルである。Ciment Fondu(登録商標)は、従来の高温溶融法に従って、アルミナ一水和物及び石灰石に富むボーキサイトから得られる。
【0147】
B2.モルタルのための放置時間
このように得られた幾つかの種類のモルタルのための放置時間を、Table 7(表8)に示す。放置時間は、モルタルがそれらの取り扱い及び操作及び配置のために適当な粘度を有するまでの時間に対応する。言い換えれば、放置時間は、水が水硬性結合剤に加えられた瞬間と、水と水硬性結合剤との混合物の温度における増大によって確認される、結合剤の凝結が始まった瞬間との間に経過した時間に対応する。
【0148】
【表8】
【0149】
Table 7(表8)は、本発明の方法により製造された水硬性結合剤から得られたモルタルM1、及びM11からM14のそれぞれについて放置時間が、比較のモルタルMC1、MC2それぞれのための放置時間と同等であることを示す。
【0150】
アッセイP*は、フラッシュ凝結、即ち水と混合されると、ゼロの放置時間値で速やかに凝結が惹起されている結果を生ずる。このことは有意の水硬性の潜在能力を示す。
【0151】
B3.モルタル角柱の製造
モルタルM1、M11からM14、及びMC1、及びペーストP1からP10を、金属鋳型に入れて、その中で、それらを集合に取られる持続時間放置する。鋳型の寸法は以下の通りである:20×20×160mm、鋳型と同じ寸法を有するモルタル角柱を製造するために鋳型を、20℃、80%の相対湿度で、1時間、2時間、4時間、5時間、6時間、又はさらに24時間保った後、硬化した材料を鋳型から取り出して試験する。相対湿度は、空気中に含有される水蒸気の分圧の同じ温度における飽和蒸気圧(又は蒸気圧力)に対する比として定義される水分含有率レベルとも称される。言い換えれば、相対湿度は、その中に鋳型が保たれている空気の水蒸気含有率とこの空気が所定の温度条件下で水を含有する最大容量との間の比を示す。
【0152】
B4.セメント角柱の機械的強度の決定
曲げ強度及び圧縮強度を含む機械的強度を、粉体(結合剤+添加剤+多分砂)と水とを接触させた後、種々の時間間隔、1時間、5時間又はさらに24時間に得られた硬化した材料の角柱の試験検体で試験する。
【0153】
機械的強度を、フランスのセメント試験標準NFEN196-1に従って、Presse 3Rとして知られているプレスを使用することにより評価する。より詳細に述べると、最初に曲げ強度(FS)を評価して、その後、圧縮強度(CS)を、曲げ試験から誘導されて生じた2つの半分の試験検体を使用して評価する。破損(破裂)が起こるまで試験検体に適用された力が、屈曲及び圧縮強度の両方に関して、破裂応力を、スタンダードNFEN1961に従って計算することを可能にする(MPaと表示されるメガパスカルで)。
【0154】
下のTable 8(表9)からTable 10(表11)に、モルタル角柱について、20℃で、凝結の2時間、6時間、又は24時間後(モルタルM1又はMC1)凝結の1時間、5時間、又は24時間後(ペーストP1からP10)又は凝結の4時間、6時間、及び24時間後、(モルタルM11からM14及びMC2)に得られた異なる機械的強度値をまとめる。
【0155】
【表9】
【0156】
本発明の方法により製造されたアルミン酸カルシウム化合物LH2を含む水硬性結合剤から得られたモルタルM1の機械的強度値は、従来の方法により得られた市販の水硬性結合剤Ternal EP(登録商標)から製造されたモルタルMC1について得られるこれらの値より実際はるかに高い。
【0157】
【表10】
【0158】
機械的強度のこのアセスメントは、本発明の方法により製造されたアルミン酸カルシウム化合物は、アルミン酸カルシウムに基づいた結合剤がすでに使用されている多数の用途で、水硬性結合剤として使用され得ることを証明する。
【0159】
いわゆるエトリンジャイトに基づいた結合剤の非最適化調合物で、非常に興味のある結果が、短期の機械的強度に関してすでに得られており、従来アルミン酸カルシウムがエトリンジャイトに基づいた結合剤として現在使用されている全ての用途で使用するためのそれらの潜在能力を立証している。
【0160】
【表11】
【0161】
上のTable 10(表11)中の結果は、本発明の方法により製造された水硬性結合剤LH8からLH11から得られたモルタルM11からM14が、屈曲及び圧縮強度に関してCiment Fondu(登録商標)から得られた比較のモルタルMC2と同じ桁の大きさの機械的強度を有することを示す。この事例では、純粋なアルミン酸カルシウムセメント(CAC)結合剤(硫酸カルシウム又はOPCは添加されていない)が使用されていることを考慮すれば、本発明の方法により製造された水硬性結合剤LH8からLH11は、それ故、Ciment Fondu(登録商標)が使用される用途と同様な用途で使用することができる。
【国際調査報告】