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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】アンモニアセンサー
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/50 20060101AFI20220120BHJP
   G01N 33/84 20060101ALI20220120BHJP
   G01N 33/52 20060101ALI20220120BHJP
   A61B 5/00 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
G01N33/50 B
G01N33/84 A
G01N33/52 A
A61B5/00 N
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020519320
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(85)【翻訳文提出日】2020-03-31
(86)【国際出願番号】 GB2019053224
(87)【国際公開番号】W WO2021094702
(87)【国際公開日】2021-05-20
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520113114
【氏名又は名称】エムビーアイ (ウェールズ) リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】特許業務法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ウォータース,マーク
【テーマコード(参考)】
2G045
4C117
【Fターム(参考)】
2G045AA15
2G045CB03
2G045DB03
2G045DB06
2G045GA10
4C117XB01
4C117XE04
4C117XE33
(57)【要約】
本発明は、カテーテルドレナージシステムにおいて使用するためのアンモニアセンサーに関する。本発明はまた、本発明のアンモニアセンサーを含むカテーテル、ドレナージバッグまたは接続ユニット、アンモニアセンサーを使用する方法およびアンモニアセンサーを製造する方法に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
カテーテルドレナージシステムへの組込みのためのアンモニアセンサーであって、前記アンモニアセンサーは、組成物を硬化させることにより得られるものであり、前記組成物は、
a)100000~125000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサン、25000および35000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンおよび4000~8000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む、70~95重量%のビニル末端ポリジメチルシロキサン、
b)1~10重量%の未処理フュームドシリカ、
c)1~5重量%のpH指示薬、ならびに
d)1~4重量%の架橋剤
を含む、アンモニアセンサー。
【請求項2】
前記組成物は、75~90重量%のビニル末端ポリジメチルシロキサン、好ましくは80~85重量%のビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む、請求項1に記載のアンモニアセンサー。
【請求項3】
前記組成物は、30~50重量%の100000~125000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサン、25~45重量%の25000~35000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンおよび1~5重量%の4000~8000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む、請求項1または2に記載のアンモニアセンサー。
【請求項4】
前記組成物は、117000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサン、28000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンおよび6000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のアンモニアセンサー。
【請求項5】
前記未処理フュームドシリカは、0.1~0.5ミクロン、好ましくは0.15~0.4ミクロンの範囲内の平均粒子サイズを有する、請求項1~4のいずれか一項に記載のアンモニアセンサー。
【請求項6】
前記未処理フュームドシリカは、150~250m/gの範囲内のBET表面積を有する、請求項1~5のいずれか一項に記載のアンモニアセンサー。
【請求項7】
前記組成物は2~5重量%の未処理フュームドシリカを含み、好ましくは、前記組成物は約3重量%の未処理フュームドシリカを含む、請求項1~6のいずれか一項に請求項に記載のアンモニアセンサー。
【請求項8】
前記架橋剤は、トリメチルシロキシ末端のメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーであり、好ましくは、前記架橋剤は900~65000の分子量を有し、より好ましくは、前記架橋剤は900~2000の分子量を有する、請求項1~7のいずれか一項に記載のアンモニアセンサー。
【請求項9】
前記組成物は1.5~3.5重量%の架橋剤を含み、好ましくは、前記組成物は約2.5重量%の架橋剤を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のアンモニアセンサー。
【請求項10】
前記pH指示薬は、ニュートラルレッド、ブロモチモールブルー、ブロモチモールブルーナトリウム塩、クレゾールレッド、フェノールレッド、3-(m)-ニトロフェノール
、フルオレセインおよびロゾール酸から選択され、好ましくは、前記pH指示薬はブロモチモールブルーナトリウム塩である、請求項1~9のいずれか一項に記載のアンモニアセンサー。
【請求項11】
前記組成物は2~3重量%のpH指示薬を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載のアンモニアセンサー。
【請求項12】
前記組成物はマトリックス安定剤を追加的に含み、好ましくは、前記組成物は、5~15重量%のマトリックス安定剤、より好ましくは8~10重量%のマトリックス安定剤を含む、請求項1~11のいずれか一項に記載のアンモニアセンサー。
【請求項13】
前記マトリックス安定剤は第四級アンモニウム化合物であり、好ましくは、マトリックス安定剤は臭化セトリモニウムである、請求項12に記載のアンモニアセンサー。
【請求項14】
前記組成物は促進剤を追加的に含み、好ましくは、前記促進剤は白金触媒であり、より好ましくは、前記促進剤はPt-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である、請求項1~13のいずれか一項に記載のアンモニアセンサー。
【請求項15】
前記白金触媒が0.1~0.2重量%のレベルで前記組成物中に存在する、請求項14に記載のアンモニアセンサー。
【請求項16】
カテーテルドレナージシステムへの組込みのためのアンモニアセンサーであって、前記アンモニアセンサーは、ポリマーマトリックスを含み、前記ポリマーマトリックスは、100,000~125,000の分子量を有する架橋ポリジメチルシロキサン、25,000および35,000の分子量を有する架橋ポリジメチルシロキサンならびに4,000~8,000の分子量を有する架橋ポリジメチルシロキサンを含む、70~95重量%の架橋ポリジメチルシロキサンを含み、前記ポリマーマトリックスが、1~10重量%の未処理フュームドシリカおよび1~5重量%のpH指示薬を被包している、アンモニアセンサー。
【請求項17】
請求項1~16のいずれか一項に記載のアンモニアセンサーを含む物品であって、前記物品が、カテーテル、ドレナージバッグ、ドレナージユニットまたは接続ユニットである、物品。
【請求項18】
差し迫ったカテーテル沈着および閉塞を予測するための請求項1~16のいずれか一項に記載のアンモニアセンサーの使用であって、前記アンモニアセンサーをカテーテルからの尿の流れの中に配置することおよび尿中のアンモニアの存在を指し示す前記アンモニアセンサーにおける変化をモニターすることを含む、使用。
【請求項19】
請求項1~16のいずれか一項に記載のアンモニアセンサーを製造する方法であって、
a)100000~125000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサン、25000および35000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンおよび4000~8000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む、70~95重量%のビニル末端ポリジメチルシロキサン、
b)1~10重量%の未処理フュームドシリカ、
c)1~5重量%のpH指示薬、および
d)1~4重量%の架橋剤
を含む組成物を調製するステップ、ならびに
前記組成物を硬化させてセンサーを形成させるステップ
を含む、方法。
【請求項20】
前記組成物は、
前記ビニル末端ポリジメチルシロキサンおよび未処理フュームドシリカを用いてシリコーンベースを調製すること、
前記シリコーンベースを第1および第2の部分に分割すること、
マトリックス安定剤、pH指示薬および促進剤を前記第1の部分に加えること、
マトリックス安定剤、pH指示薬および架橋剤を前記第2の部分に加えること、ならびに
前記第1および第2の部分を混合して前記組成物を形成させること
により作製される、請求項18に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、カテーテルドレナージシステムにおいて使用するためのアンモニアセンサーに関する。本発明はまた、本発明のアンモニアセンサーを含むカテーテル、ドレナージバッグまたは接続ユニット、アンモニアセンサーを使用する方法およびアンモニアセンサーを製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
長期膀胱カテーテル挿入を為されている多くの高齢および身体障害患者のケアは、カテーテルの沈着および閉塞により複雑である。問題は予測できず、コミュニティナースは、カテーテルの突然の閉塞による尿保持または尿の失禁の不快感を有する患者に夜または昼のあらゆる時間に呼び出される。沈着を制御する現行の方法は効果的でなく、一般に交換カテーテルは再発的に閉塞し、患者は「ブロッカー」という評価を受ける。
【0003】
沈着は、ウレアーゼ産生生物、特にプロテウス・ミラビリス(Proteus mirabilis)によるカテーテル挿入尿路の感染の結果としてもたらされる。細菌ウレアーゼは尿素からアンモニアを生成し、尿はアルカリ性(pH8~9)となる。P.ミラビリスはまた、カテーテル表面に定着し、バイオフィルムを形成する。アルカリ条件において、リン酸カルシウムおよびマグネシウムが尿から結晶化し、結晶性バイオフィルムがカテーテル上に発生する。一般的にこれらの患者の尿は、大腸菌(Escherichia
coli)のような生物に感染しており、これらの生物はウレアーゼを産生せず、代謝によりわずかに酸性の尿(pH5~6)が生成されることに留意すべきである。
【0004】
2~3週間のカテーテル挿入後、感染症は一般に良性状態で患者内に常に存在する。抗生物質は、使用を停止した時に感染症が再び現れるので使用されない。長期カテーテル挿入患者において、上記に指し示したように、細菌のバイオフィルムがカテーテル上に成長し、一部の場合には結晶性バイオフィルムが形成され、これがカテーテルを閉塞させる。これは、膀胱拡大、腎臓逆流、敗血症性ショックおよび一部の場合には死を結果としてもたらす。結晶はバイオフィルムを壊すことがあり、膀胱石のような副作用を引き起こすことがある。さらに、脊髄損傷または神経学的障害を有する患者において、卒中が起こることがある。長期患者の50%は沈着を患う。したがって、この問題と関連付けられる経済的および罹患の点の両方で莫大なコストがある。
【0005】
カテーテルドレナージシステムに組み込むことができる、ウレアーゼ産生細菌が尿に感染していることにシグナルを発して、差し迫ったカテーテル沈着および閉塞の早期警告シグナルを与える単純なセンサーが必要とされた。
【0006】
国際特許出願WO2006/000764号において、本発明者は、別の発明者と共に、化学的に結合したpH指示薬を有するポリマーマトリックスに基づくカテーテルドレナージシステムにおいて使用するためのpHセンサーを開発した。好ましい実施形態では、ポリマーマトリックスは酢酸セルロースであった。しかしながら、センサーは製造が困難であることが判明し、商用化されていない。加えて、食事の変化または他の要因の結果として尿中に存在し得るヒドロキシルイオンのような他のアルカリ性物質のレベルの上昇により高pHが生じることがあるため、一般のpHセンサーとしてセンサーは偽陽性となりやすい。尿のpHは、日々の総酸排泄の結果として典型的に5である。胃酸分泌を均衡させるための「一過性アルカリ尿」(alkaline tide)が尿のpHを増加させる時に、アルカリ性pHが食後に多くの場合に観察される。高い尿のpHはまた、ベジタリアンの食事をしている患者においても見られる。肉および乳製品は酸性の尿を産生し、
ほとんどの野菜および果実はよりアルカリ性の尿を産生するので、ベジタリアンは一般に肉食者よりアルカリ性の尿を有する。高いpHまたはアルカリ度を有する尿はまた、腎臓疾患、嘔吐、急速な気道または尿路感染症を引き起こす疾患に帰せられることがある。アルカリ性の尿を引き起こし得る薬物としては、重炭酸ナトリウム、クエン酸カリウムおよびアセタゾラミド、緑内障、一部の種類の発作および鬱血性心不全を治療するために使用される利尿剤が挙げられる。
【0007】
ポリマーマトリックスへのpH指示薬の化学的結合の代替として、組み込まれたまたは物理的に結合した指示薬を有するシリコーンおよび親水性充填剤を使用する可能性が文献において示唆された:Malic Sladjana, Waters Mark G.
J., Basil L, Stickler DJ, Williams DW. 2012. Development of an “early warning” sensor for encrustation of urinary catheters following Proteus infection. J Biomed Mater Res Part B 2012:100B:133-137。しかしながら、この文献もまた一般のpHセンサーに関する。シリコーンセンサーは6から8へのpH変化に応答できたことが緩衝化溶液における試験により示されたことが述べられている。したがって、これらのセンサーもまた偽陽性の結果となりやすい。
【0008】
カテーテルドレナージシステムに組み込むことができ、かつ、アンモニアに特異的なことにより、偽陽性の結果を除去できる単純なセンサーの必要性が存在する。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様によれば、本発明は、カテーテルドレナージシステムへの組込みのためのアンモニアセンサーであって、アンモニアセンサーが、組成物を硬化させることにより得られるものであり、組成物が、a)100000~125000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサン、25000および35000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンおよび4000~8000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む、70~95重量%のビニル末端ポリジメチルシロキサン、b)1~10重量%の未処理フュームドシリカ、c)1~5重量%のpH指示薬、ならびにd)1~4重量%の架橋剤を含む、アンモニアセンサーを提供する。
【0010】
第2の態様によれば、本発明は、カテーテルドレナージシステムへの組込みのためのアンモニアセンサーであって、アンモニアセンサーが、ポリマーマトリックスを含み、ポリマーマトリックスが、100,000~125,000の分子量を有する架橋ポリジメチルシロキサン、25,000および35,000の分子量を有する架橋ポリジメチルシロキサンならびに4,000~8,000の分子量を有する架橋ポリジメチルシロキサンを含む、70~95重量%の架橋ポリジメチルシロキサンを含み、ポリマーマトリックスが、1~10重量%の未処理フュームドシリカおよび1~5重量%のpH指示薬を被包している、アンモニアセンサーを提供する。
【0011】
驚くべきことに、上記に定義されるような高、中および低分子量を有する3つのポリジメチルシロキサンの混合物を特定のレベルの未処理フュームドシリカ、pH指示薬および架橋剤と組み合わせて使用することにより、アンモニアに選択的であり、かつ他のアルカリ性溶液に反応しないセンサーを製造できることを本発明者らは発見した。これは、P.ミラビリスのようなアンモニアを生成するウレアーゼ産生生物による感染症以外の理由により尿のpHが上昇した時にセンサーは偽陽性の結果を指し示さないことを意味するので、重要である。
【0012】
理論により縛られることを望まないが、アンモニアは弱塩基であり、通常、シリコーン
のような低い極性の無秩序な媒体中に拡散できる中性分子の形態であり、シリコーンの密度のような特性がこれに特に適合する場合に特にそうであることが留意される。対照的に、水酸化ナトリウムのような他の一般的な高pHの溶液は完全にイオン化されており、したがって、シリコーン中への拡散のために動的に不都合である。本発明におけるような選択された分子量の出発シロキサンおよび定義されたレベルの架橋剤の使用は、アンモニアの拡散に好都合であり、かつイオンの拡散に不都合である特定の特性を有するセンサーを得ることができることを意味する。さらに、組成物中の1~10%の未処理フュームドシリカの使用は、アンモニアの拡散をさらに促進するが、水酸化物イオンの拡散を促進しない。
【0013】
さらには、ビニル末端ポリジメチルシロキサンの使用は、先行技術のセンサーと比較して製造プロセスを直接的なものとする。
【0014】
第3の態様によれば、本発明は、本発明の第1または第2の態様によるアンモニアセンサーを含む物品であって、物品が、カテーテル、ドレナージバッグ、ドレナージユニットまたは接続ユニットである、物品を提供する。アンモニアセンサーは、好ましくは、患者または介護者にはっきりと見えるようにカテーテルのドレナージシステム中に位置して、センサーが連続的にモニターされることを可能とするように設計される。
【0015】
第4の態様によれば、本発明は、差し迫ったカテーテル沈着および閉塞を予測するための本発明の第1または第2の態様によるアンモニアセンサーの使用であって、アンモニアセンサーをカテーテルからの尿の流れの中に配置することおよび尿中のアンモニアの存在を指し示すアンモニアセンサーにおける変化をモニターすることを含む、使用を提供する。アンモニアの存在は、P.ミラビリスまたは関連するウレアーゼ産生生物による感染症のシグナルとなり、かつ、急性の臨床症状の発現を回避するための行動がとられるべきことを指し示す。
【0016】
第5の態様によれば、本発明は、本発明の第1または第2の態様によるアンモニアセンサーを製造する方法であって、本発明の第1の態様による組成物を調製するステップ、および組成物を硬化させてセンサーを形成させるステップを含む、方法を提供する。
【0017】
詳細な説明
本発明は、アンモニアセンサーを作る組成物およびセンサー自体の材料の両方の点で定義されるアンモニアセンサーに関する。アンモニアセンサー中のpH指示薬は、色を変化させることによりアンモニアの存在に反応する。センサーを作るために使用される組成物中の成分および成分のレベルは、組成物が硬化された時に、材料へのアンモニアの拡散を可能とするが、他のアルカリ化合物の拡散は可能とせず、それによりセンサーがアンモニアに選択的となることができる材料が形成されることを可能とするように特別に構成される。
【0018】
アンモニアセンサーは、カテーテルドレナージシステムへの組込みのために好適である。「カテーテルドレナージシステム」という用語は、カテーテルおよびドレナージユニットを指す。ドレナージユニットは、ドレナージバッグおよびカテーテルへの接続のためのドレナージバッグチューブとして定義される。
【0019】
本発明のセンサーを作るために硬化される組成物は、70~95重量%のビニル末端ポリジメチルシロキサンを有する。ビニル末端ポリジメチルシロキサンは、架橋されてポリジメチルシロキサンエラストマー構造を作り、これはポリマーマトリックスと呼ばれる。
【0020】
アンモニアがセンサーに拡散することを可能とするが水酸化物のような他のアルカリ化
合物の拡散は可能としない特性を有するセンサーは、高分子量ビニル末端ポリジメチルシロキサン(100000~125000の分子量を有する)、中分子量ビニル末端ポリジメチルシロキサン(25000および35000の分子量を有する)および低分子量ビニル末端ポリジメチルシロキサン(4000~8000の分子量を有する)の組合せを使用することにより得ることができることが発見された。
【0021】
好ましい実施形態では、組成物は、75~90重量%のビニル末端ポリジメチルシロキサン、好ましくは80~85重量%のビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む。
【0022】
組成物が、30~50重量%の高分子量ビニル末端ポリジメチルシロキサン、25~45重量%の中分子量ビニル末端ポリジメチルシロキサンおよび1~5重量%の低分子量ビニル末端ポリジメチルシロキサンを含むこともまた好ましい。
【0023】
組成物が、117000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサン、28000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンおよび6000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンを含むことが特に好ましい。
【0024】
ポリジメチルシロキサンが架橋されると、末端ビニル基は、リンカーにより他のシロキサンに置換される。
【0025】
ビニル末端ポリジメチルシロキサンの使用は、重合反応からの副生成物が生成しないため有利である。別の利点は、pH指示薬を、化学的に結合させるのではなくポリマーマトリックス内に物理的に捕捉できることである。これは、ポリマー材料の合成におけるステップを減少させる。
【0026】
アンモニアセンサーを作る組成物はまた、1~10%の未処理フュームドシリカを含有する。シリカは硬化プロセス中に変化しないため、同じシリカがセンサー自体の中に存在する。これは、充填剤として作用し、ポリマーマトリックスへのアンモニアの拡散を補助してアンモニアがpH指示薬と相互作用できるようにするので、非常に重要な成分である。アンモニアは弱塩基であり、中性分子として、充填ポリジメチルシロキサンエラストマーのような低い極性の媒体中に拡散することができる。未処理シリカは親水性であり、エラストマーへのアンモニアの拡散の調節を助ける。水酸化ナトリウムのような完全にイオン化した溶液が充填ポリジメチルシロキサンエラストマーに拡散することは熱力学的に不都合であり、したがって、そのような溶液はセンサーのトリガーとならない。
【0027】
未処理フュームドシリカとは、主に水酸化物表面化学を変化させるように処理されていない二酸化シリコーンを意味する。
【0028】
好ましくは、組成物および結果的ポリマーマトリックスは、2~5重量%の未処理フュームドシリカ、より好ましくは約3重量%の未処理フュームドシリカを含む。
【0029】
本発明の好ましい実施形態では、親水性充填剤は、合成の、非晶性の、コロイド状の二酸化ケイ素である。
【0030】
未処理フュームドシリカの粒子サイズは、どれほど迅速にアンモニアがセンサーに拡散できるかを決定することができる。本発明者らは、0.1~0.5ミクロン、好ましくは0.15~0.4ミクロンの範囲内の平均粒子サイズを有する未処理フュームドシリカが良好な結果を与えることを発見した。粒子サイズは、ISO17867:2015-粒子サイズ分析-低角度X線散乱に基づいてX線散乱技術を使用して決定される。
【0031】
同様に、未処理フュームドシリカの表面特性は、どれほど迅速にアンモニアがセンサーに拡散するかを決定することができる。150~250m/gの範囲内のBET(Brunauer、EmmettおよびTeller)表面積を有する未処理フュームドシリカは特に良好な結果を与える。BET(Brunauer、EmmettおよびTeller)理論は、ガス吸着データを評価するために一般的に使用され、試料の質量当たりの面積の単位(m/g)で表される比表面積の結果を生成する。BET表面積の測定は、ISO9277:2010-ガス吸着による固体の比表面積の決定-BET法に準拠する。
【0032】
好適な材料は当業者に公知である。市販の例はCAB-O-SIL M5であり、これはCabotから入手可能である。充填剤の追加の役割は、架橋されたエラストマーの物理的性質を増進させることである。
【0033】
アンモニアセンサーを作る組成物、および結果的ポリマーマトリックスはまた、1~5重量%のpH指示薬を含有する。pH指示薬は、差し迫ったカテーテル沈着および閉塞の指標となるpHの変化に応答して視覚的シグナル(例えば、色の変化)を生成する任意の剤であり得る。尿は通常約pH6であるが、これがpH7.6より高くまで上昇した時にカテーテル沈着および閉塞の危険がある。好適なpH指示薬としては、ニュートラルレッド、ブロモチモールブルー、ブロモチモールブルーナトリウム塩、クレゾールレッド、フェノールレッド、3-(m)-ニトロフェノール、フルオレセインおよびロゾール酸が挙げられる。
【0034】
プロテウス・ミラビリスまたは類似のウレアーゼ産生生物のバイオフィルムがアンモニアセンサーに形成される場合、8~10の局所的なpHが生成され、カテーテル沈着の危険が指し示される。これらの好ましい指示薬および他の指示薬について、使用され得るより低いおよびより高いpHの範囲と共に色遷移が起こる範囲の詳細を以下の表1に記載する。
【0035】
【表1】
【0036】
好ましくは、pH指示薬はブロモチモールブルーナトリウム塩である。ブロモチモールブルーおよびブロモチモールブルーナトリウム塩の色の変化は同じであるが、ナトリウム塩はシリコーンエラストマーにおいて好ましい。pH指示薬は、アンモニアの存在に起因
する尿のpHの増加に応答して色を変化させ得るが、アンモニアに起因しない、またはアンモニアセンサー上に発生し得る細菌バイオフィルムの一般のpH上昇には応答しない。これは、ウレアーゼ産生細菌プロテウス・ミラビリスによる感染および沈着による差し迫ったカテーテル閉塞を指し示す。
【0037】
pH指示薬は、アンモニアセンサーを作る組成物中、そしてまたセンサー自体に存在する。ポリジメチルシロキサンが硬化される時に、pH指示薬は反応しないので変化しないが、組成物の硬化中にシロキサンポリマーマトリックス中に物理的に捕捉される。
【0038】
アンモニアセンサーを作る組成物、および結果的ポリマーマトリックスは、組成物の1~5重量%、好ましくは2~3重量%のpH指示薬を含む。
【0039】
本発明のアンモニアセンサーは、好ましくは、センサーを作る組成物の5~15重量%、好ましくは8~10%のレベルで存在することができるマトリックス安定剤を含む。マトリックス安定剤は硬化中に反応しないため、組成物中と同じ形態および割合でセンサー中に存在する。
【0040】
マトリックス安定剤の目的は、pH指示薬の保持を向上させることである。pH指示薬の有効性が使用中に維持されるようにpH指示薬を保持することが有利である。さらには、アンモニアセンサーからのpH指示薬の浸出は、センサーを通過する液体を汚染する。
【0041】
臭化セトリモニウムのような第四級アンモニウム化合物をマトリックス安定剤として使用することができる。第四級アンモニウム化合物を表面活性剤として使用することができ、これは多くの物質により強く吸収される。それらは、溶液中で正に荷電したイオンを生成し、脱プロトン化が起こった時(例えば、pH指示薬の色の変化後)のpH指示薬の保持を助ける。
【0042】
本発明のセンサーを作るために使用される組成物は、組成物の1~4重量%の架橋剤を有する。架橋剤は、硬化中にビニル末端ポリジメチルシロキサンを重合させるために不可欠である。架橋剤のレベルは、センサーの特性がセンサーへのアンモニアの拡散と適合性であるが、水酸化物のようなイオンとはそうでないことを確実にするように選択されている。架橋ポリジメチルシロキサンエラストマーは、アンモニアのような中性分子の拡散のために好都合な低い極性の無秩序の媒体である。架橋剤のレベルは、シリカ充填剤の種類および量と組み合わせて、エラストマーマトリックスへのアンモニアのこの拡散を最適化するように特に調整されている。完全にイオン化された水酸化物ベースの分子は、この種類の架橋シリコーンマトリックスへの拡散のために熱力学的に不都合である。
【0043】
ビニル末端ポリジメチルシロキサンは、重付加架橋反応を介して架橋剤により連結される。架橋剤は、反応において使い果たされるので、センサー自体の中には存在しない。
【0044】
組成物は、好ましくは、1.5~3%の架橋剤、より好ましくは2.5重量%の架橋剤を含有する。これらのレベルは特に良好に機能することが発見された。
【0045】
ビニル末端ポリジメチルシロキサンのための任意の好適な架橋剤を使用することができ、当業者はそのような化合物に精通している。好ましくは、架橋剤はヒドリド機能性シロキサンである。ヒドリド機能性シロキサンによるビニル機能性シロキサンのヒドロシリル化は、2パートの室温および熱硬化システムにおける付加硬化化学用途の基礎である。好ましい実施形態では、架橋剤は、900~65,000の分子量範囲内のトリメチルシロキシ末端のメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、400~65,000の分子量範囲内のヒドリド末端ポリジメチルシロキサン、または1400~2400
の分子量範囲内のトリメチルシロキシ末端のポリメチルヒドロシロキサンである。
【0046】
最も好ましい架橋剤は、トリメチルシロキシ末端のメチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマーであり、好ましくは、架橋剤は900~65000の分子量を有し、より好ましくは、架橋剤は900~2000の分子量を有する。これらの架橋剤は、より容易に制御される反応性を有し、かつより低い架橋密度でより頑強なエラストマーを結果としてもたらすので優遇される。
【0047】
好ましい実施形態では、本発明のセンサーを作る組成物は促進剤を追加的に含む。促進剤は、架橋剤とビニル末端ポリジメチルシロキサンとの重合反応を触媒して反応を加速させることができ、かつ/または室温のようなより低い温度での反応を引き起こすことができる。促進剤は反応プロセスにおいて通常使い果たされないため、これもまたシロキサンポリマーマトリックスに組み込まれてセンサー自体の中に存在する。好ましい実施形態では、白金触媒は、0.1~0.2重量%のレベルで組成物および結果的ポリマーマトリックス中に存在する。
【0048】
促進剤は、通常、白金触媒である。それは、好ましくは、白金カルボニルシクロビニルメチルシロキサン錯体、白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体、白金-シクロビニルメチルシロキサン錯体、または白金-オクタンアルデヒド/オクタノール錯体である。好ましい実施形態では、促進剤は白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体である。これは、組成物が約1時間のうちに室温で硬化するのを可能とするので、特に良好に機能することが証明された。
【0049】
一実施形態では、本発明は、カテーテルドレナージシステムへの組込みのためのアンモニアセンサーであって、アンモニアセンサーが、組成物を硬化させることにより得られるものであり、組成物が、a)100,000~125,000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサン、25,000および35,000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンおよび4,000~8,000の分子量を有するビニル末端ポリジメチルシロキサンを含む、70~95重量%のビニル末端ポリジメチルシロキサン、b)1~10重量%の未処理フュームドシリカ、c)1~5重量%のpH指示薬、ならびにd)1~4重量%の架橋剤を含む、アンモニアセンサーに関する。
【0050】
ポリマーの特有の組合せは、親水性充填剤およびpH指示薬と組み合わせて、センサーのトリガーとなる高アンモニア尿の拡散を可能とするシリコーンエラストマーポリマーマトリックスを提供する。
【0051】
センサーを特徴付ける代替的な方法は、ウレアーゼ産生細菌(主にP.ミラビリス)の感染により引き起こされる尿中のアンモニアの増加を高信頼度で検出することができるシリコーンベースのセンサーである。この貴重な情報は、カテーテル閉塞およびより深刻な上行性感染の可能性を低減させるための早期の介入を可能とする。高度に汎用性のセンサーをカテーテルの端部からドレナージバッグまでの任意の場所に置くことができ、これは必要とされる形態の任意の形状で製造することができる。
【0052】
本発明はまた、アンモニアセンサーを含む物品であって、物品が、カテーテル、ドレナージバッグ、ドレナージユニットまたは接続ユニットである、物品に関する。センサーがカテーテルドレナージシステム中にあることの利点は、センサーが患者または介護者からはっきりと見えて、センサーを連続的にモニターすることが可能となることである。
【0053】
物品がカテーテルである場合、アンモニアセンサーは、カテーテルが使用されている時に患者または介護者から見えるように配置される。アンモニアセンサーは、挿入されるカ
テーテルの端部の近くに配置されるが、それでもなお、カテーテルが挿入されると患者または介護者から見えることが好ましい。好ましい実施形態では、アンモニアセンサーは、使用中にドレナージバッグチューブに接続されるカテーテルの端部に配置される。
【0054】
物品がドレナージユニットである場合、アンモニアセンサーは、ドレナージユニットが使用されている時に、患者または介護者から見えるように配置される。好ましい実施形態では、アンモニアセンサーは、使用中にカテーテルに接続されるドレナージバッグチューブの端部に配置される。
【0055】
物品が接続ユニットである場合、接続ユニットをドレナージユニットとカテーテルとの間に挿入することができる。接続ユニットは、既存のカテーテルおよびドレナージユニットと共に使用することができ、製造がより容易かつより安価であり、カテーテルまたはドレナージユニットを交換する必要なく容易に交換できるという利点を有する。
【0056】
本発明はまた、差し迫ったカテーテル沈着および閉塞を予測するための本発明のアンモニアセンサーの使用であって、アンモニアセンサーをカテーテルからの尿の流れの中に配置することおよび尿中のアンモニアの存在を指し示すアンモニアセンサーにおける変化をモニターすることを含む、使用を提供する。アンモニアはセンサーに緩徐に拡散するので、センサーを作る組成物は、センサーが尿のアンモニアレベルの持続的な増加にのみ反応するようなものである。
【0057】
本明細書において使用される「持続的アンモニアレベル」という用語は、増加したアンモニアレベルが、6時間より長く、好ましくは9時間より長く、最も好ましくは12時間より長きにわたり維持されることを意味する。増加したアンモニアレベルが6、9または12時間より長きにわたり維持される場合、アンモニアにおける変化は、任意の他の要因(例えば、食事)ではなくカテーテルの沈着を引き起こすウレアーゼ産生細菌に起因する可能性がより高い。
【0058】
特に、アンモニアセンサーは、センサーと接触した液体(すなわち、尿)中またはセンサー上に形成された細菌フィルム内のアンモニアの存在を検出するために使用することができ、それにより、差し迫ったカテーテル沈着および閉塞の指標を提供することができる。アンモニアの任意の一過性の増加は検出されず、偽陽性が回避される。重要なことに、アンモニアにより引き起こされるものではない任意の他の理由によるpHの上昇もまた検出されない。差し迫ったカテーテル沈着および閉塞を予測することにより、カテーテルを交換してカテーテルが閉塞しないことを確実にするなど、善後策をとることができる。
【0059】
本発明はまた、アンモニアセンサーを製造する方法であって、上記に概要を述べたような組成物を調製するステップ、および組成物を硬化させてセンサーを形成させるステップを含む、方法に関する。
【0060】
組成物は、当業者に明らかなように、好適な任意の方法で調製することができる。好ましくは、組成物は、ビニル末端ポリジメチルシロキサンおよび未処理フュームドシリカを用いてシリコーンベースを最初に調製することにより作られる。標準的なシリコーン混合技術を使用してこれらを混合することができ、好ましくは、シリカは最後に加えられる。
【0061】
硬化の準備ができるまで組成物を貯蔵することを可能とするために、好ましい実施形態では、シリコーンベースは第1および第2の部分に分割される。マトリックス安定剤、pH指示薬および促進剤が第1の部分に加えられる。マトリックス安定剤、pH指示薬および架橋剤が第2の部分に加えられる。このようにして、第1および第2の部分は、いずれも促進剤および架橋剤の両方は含有しないので、単独では室温で容易に反応しないが、混
合された時に互いと反応する。
【0062】
センサーを形成する準備ができた時に、第1および第2の部分は混合されて組成物が形成され、次に組成物が硬化される。それらは、通常、鋳型中またはその近くで混合され、所望のセンサーのサイズおよび形状である鋳型中で硬化させられる。
【0063】
センサーを硬化するために必要とされる条件は、使用される促進剤に依存する。好ましい実施形態では、硬化は、約1時間にわたり室温で行われる。
【0064】
添付の図面を参照して実施例により本発明の実施形態をこれより説明する。
【図面の簡単な説明】
【0065】
図1A図1(a)はFloSenseカートリッジを示す。
図1B図1(b)は、溶液を含有するガラス瓶上に置かれたFloSenseカートリッジを示す。
図2図2は、様々な溶液のバイアル中で含浸させたシリコーンセンサーの8時間後の色の変化を示す。
図3図3は、8時間時の様々な溶液中のFloSenseカートリッジ内のシリコーンセンサーについての結果を視覚的に示す。
【実施例
【0066】
実施例1-センサーシリコーン製造プロトコール
成分のリスト
・V46-ビニル末端ポリジメチルシロキサン(MW=117,000)-(ポリマーA)
・V31-ビニル末端ポリジメチルシロキサン(MW=28,000)-(ポリマーB)
・V21-ビニル末端ポリジメチルシロキサン(MW=6,000)-(ポリマーC)
・Cabosil M5未処理フュームドシリカ(コロイド状二酸化シリコーン)(BET表面積200mg、粒子サイズ0.2~0.3ミクロン)白金-ジビニルテトラメチルジシロキサン錯体(白金RTV)
・臭化セトリモニウム(CTAB)
・ブロモチモールブルーナトリウム塩標準F(BTB)
・メチルヒドロシロキサン-ジメチルシロキサンコポリマー、トリメチルシロキシ末端(Xlinker)
【0067】
【表2】
【0068】
標準的なシリコーン混合技術を使用してベースを作製する。全ての成分を産業用プラネタリーミキサーに緩徐に導入し、Cabosil充填剤を最後に導入する。
【0069】
ブロモチモールブルー溶液(BTB溶液)の作製
標準的な重量対体積の溶液を以下の通りに調製した:密閉したガラス玉中の1gのブロモチモールブルーナトリウム塩を10mLの蒸留水に加える。全てのBTBが溶解するまで撹拌(マグネチックスターラー)しながら穏やかに温める。
【0070】
【表3】
【0071】
・配合物中の各成分について専用のスパチュラを使用する。
・ベースを計量し、手により慎重に白金錯体中に混ぜ込む。
・慎重にCTAB中に加え、できるだけ多くが組み込まれるまで手により混ぜ込む。
・BTB溶液中に加え、組み込まれるまで手により混合する。
【0072】
【表4】
【0073】
・配合物中の各成分について専用のスパチュラを使用する。
・ベースを計量し、手により慎重にXlinker中に混ぜ込む。
・慎重にCTAB中に加え、できるだけ多くが組み込まれるまで手により折り込む。
・BTB溶液中に加え、組み込まれるまで手により混合する。
【0074】
サブベースAおよびサブベースBのカートリッジ化
・各センサーシリコーンバッチについて2つの新たな10mLシリンジを使用する。
・新たな外科用メスを用いて慎重に各シリンジから底部を切り離す。
・1つをシリンジAおよび他をBと標識する。
・デュエルカートリッジをホルダに挿入し、片側にテープを張って、1つのチャンバーのみをアクセス可能とする。
・シリンジAを使用してサブベースAを引き上げ、デュエルカートリッジの1つのチャンバーに注入する。
・全ての部分Aが使い果たされたら、部分Bについて処理を繰り返す。
【0075】
センサーの成形および切断
・調製されたカートリッジにノズルを取り付け、鋳型に注入する。
・鋳型の上部を迅速に取り付け、ボルトを適所にネジ止めする。
・室温で1時間材料を硬化させる。
・ボルトを取り外し、慎重に材料を鋳型から取り出す。
・成形されたシートの過剰な材料を慎重に取り除く。
・新しい外科用メスを使用して材料を切断して、13mm×13mm四方とする。
【0076】
実施例2-アンモニア溶液へのセンサーの特異的反応性の研究
アンモニア溶液中のセンサーの反応を水酸化ナトリウム溶液中および高pH緩衝液中のセンサーの反応と比較した。
【0077】
方法
・センサーシリコーンを実施例1にしたがって配合し、13mm×13mmのストリップとした。
・アンモニア(蒸留水中30%、pH9.25)、水酸化ナトリウム(蒸留水中30%、pH9.5)の溶液および予め作製した緩衝溶液(pH9)を試験において使用した。
・5mLの各溶液をガラス瓶に入れ、センサーストリップを中に入れた後に、慎重に密封した。
・FloSenseカートリッジをカートリッジの先端が溶液のすぐ上となるようにガラス瓶の上部に置いた(図1(b)を参照)。
・FloSenseカートリッジは、アンモニアセンサーシリコーンの2つのストリップを収容する特別に設計したチャンバーであり、カテーテルとドレナージバッグとの間にフィットするように設計される。
【0078】
任意の色の変化の観察を1時間後、3時間後、8時間後、24時間後およびその後に11週にわたり連日実行して、カテーテルを置いておける最大時間をシミュレートした。
【0079】
結果
表1および表2は、試験についての結果を要約する。シリコーンセンサーは試験の開始時に黄色であった。水酸化ナトリウム溶液中およびpH9の緩衝液中では色の変化は全く観察されなかった。対照的に、センサーをアンモニア溶液に曝露した時に、黄色から暗青色への非常にはっきりした色の変化が8時間後に見られた(図2を参照)。
【0080】
【表5】
【0081】
【表6】
【0082】
図2は、8時間後の様々な溶液のバイアル中の浸漬したシリコーンセンサーの色の変化を示す。左のバイアルは、pH9の緩衝液中の黄色のシリコーンセンサーを含有する。中央のバイアルは、水酸化ナトリウム溶液中の黄色のシリコーンセンサーを含有する。右のバイアルは、アンモニア溶液中の暗青色のシリコーンセンサーを含有する。色は、8時間から12週時の試験の終わりまで同じままであった。
【0083】
図3は、8時間時の様々な溶液中のFloSenseカートリッジ内のシリコーンセンサーについての結果を視覚的に示す。左は、pH9の緩衝液を含有するFloSenseカートリッジを取り付けたガラス瓶である。センサーは黄色である。中央は、水酸化ナトリウム溶液を含有するFloSenseカートリッジを取り付けたガラス瓶である。センサーは黄色である。右は、アンモニア溶液を含有するFloSenseカートリッジを取り付けたガラス瓶である。センサーは暗青色である。ここでもまた、色は、8時間から12週時の試験の終わりまで同じままであった。
【0084】
結論
シリコーンセンサーは、アンモニア溶液(FloSenseカートリッジを用いて見られるように蒸気であっても)に明確な特異性を示し、単に高いpHの溶液において色の変化を示さない。この選択性によりセンサーは、高レベルのウレアーゼ産生細菌が存在する場合に尿においてよく起こる特定の高アンモニア条件を選別するために特に有用となる。次いでこれにより、センサーは、尿道カテーテルの閉塞の可能性の予測における強力なツールとなる。
図1(a)】
図1(b)】
図2
図3
【国際調査報告】