IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ レイザー システムズ アンド ソリューションズ オブ ヨーロッパの特許一覧

特表2022-510520基板を熱処理するための方法及び関連のシステム
<>
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図1
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図2
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図3
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図4
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図5a
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図5b
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図6
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図7
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図8a
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図8b
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図8c
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図9
  • 特表-基板を熱処理するための方法及び関連のシステム 図10
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】基板を熱処理するための方法及び関連のシステム
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/268 20060101AFI20220120BHJP
   H01L 21/265 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
H01L21/268 T
H01L21/265 602C
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020519748
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2020-04-06
(86)【国際出願番号】 EP2019083494
(87)【国際公開番号】W WO2020120228
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】18306688.5
(32)【優先日】2018-12-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515075197
【氏名又は名称】レイザー システムズ アンド ソリューションズ オブ ヨーロッパ
【氏名又は名称原語表記】LASER SYSTEMS AND SOLUTIONS OF EUROPE
(74)【代理人】
【識別番号】110001302
【氏名又は名称】特許業務法人北青山インターナショナル
(72)【発明者】
【氏名】マッツァムート,フルヴィオ
(57)【要約】
表面領域(5)と埋込み領域(6)を有する基板(4)をパルス光ビーム(13)で熱処理する方法において、基板は初期温度-深さプロファイルを示し、表面領域は初期表面温度(T0)を示し、
b)表面領域に予備パルス(25)を照射して、それがある熱量を生成し、所定の予備表面温度(T25)に到達するようにするステップと、
c)時間間隔(Δt)後に表面領域に後続パルス(27)を照射して、それが所定の後続表面温度(T27)に到達するようにするステップと、
を含む方法。
本発明によれば、時間間隔は、表面領域が初期表面温度より高い所定の中間表面温度(Ti)に到達するように特定され、それによって時間間隔中に、熱量は基板中に所定の深さまで拡散して、基板は所定の中間温度-深さプロファイルを示す。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板(4)をパルス光ビーム(13)で熱処理する方法において、前記基板(4)は表面領域(5)と埋込み領域(6)を有し、前記基板(4)の基板温度は初期温度深さプロフファイルを示し、前記表面領域(5)の表面温度(Ts)は初期表面温度(T0)であり、
b)前記表面領域(5)に前記パルス光ビーム(13)の予備パルス(25)を照射するステップであって、前記予備パルス(25)はそれにより予備エネルギー量を前記表面領域(5)に提供し、それによって前記表面領域(5)が予備熱量を発生させ、前記表面温度(Ts)が所定の予備表面温度(T25)に達するようなステップと、
c)ある時間間隔(Δt)後に前記基板(4)の前記表面領域(5)に前記パルス光ビーム(13)の後続パルス(27)を照射するステップであって、前記後続パルス(27)はそれにより後続エネルギー量を前記表面領域(5)に提供し、それによって前記表面領域(5)は後続熱量を発生させ、前記表面温度(Ts)が所定の後続表面温度(T27)に達するようなステップと、を含み、前記時間間隔(Δt)は、前記時間間隔(Δt)中に前記表面温度(Ts)が所定の中間表面温度(Ti)に達するように特定され、前記所定の中間表面温度(Ti)は前記初期表面温度(T0)より高く、それによって
前記時間間隔中に、前記予備熱量が前記埋込み領域(6)中に前記基板(4)の所定の深さまで拡散して、前記基板温度は所定の中間温度-深さプロファイルを示す
ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記表面領域(5)に前記予備パルス(25)を照射する前記ステップb)と前記表面領域(5)に前記後続パルス(27)を照射する前記ステップc)とは、前記表面温度(Ts)が標的表面温度に到達し、前記基板温度が標的温度-深さプロファイルを示すまで繰り返される、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記基板(4)の前記埋込み領域(6)は、所定のドーパント元素濃度-深さプロファイル(89、107)を有するドーパント元素が注入された領域(87)を含み、前記標的温度-深さプロファイルは、前記注入領域(87)の前記ドーパント元素を活性化するように適応される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記注入領域(87)は、表面領域(5)から500ナノメートルより深い深さにあり、50マイクロメートルより薄い厚さを有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記ドーパント元素は、前記注入領域(87)内に1種類のユニポーラキャリアを生成するように適応される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項6】
前記ドーパント元素は、前記注入領域(87)内に2種類のユニポーラキャリアを生成するように適応される、請求項3又は4に記載の方法。
【請求項7】
前記基板(4)は、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、窒化ガリウム、ガリウムヒ素、ダイヤモンドを含む群より選択される半導体材料である、請求項1~6の何れか1項に記載の方法。
【請求項8】
前記標的温度は前記表面領域(5)の融点(Tm)である、請求項2~7の何れか1項に記載の方法。
【請求項9】
前記所定の予備表面温度(T25)、前記所定の中間表面温度(Ti)及び前記所定の後続温度-深さプロファイルに到達するために前記パルス光ビーム(13)に関するパラメータの値を特定するステップa)をさらに含み、前記パルス光ビーム(13)に関する前記パラメータは、前記時間間隔(Δt)、パルス光ビーム(13)のエネルギー密度(Ed)、前記パルス光ビーム(13)により前記表面領域(5)上に形成される光スポット(20)の形状を含む群より選択される、請求項1~8の何れか1項に記載の方法。
【請求項10】
前記パルス光ビーム(13)を前記表面領域(5)にわたり走査するステップd)をさらに含み、ステップa)中に、前記パルス光ビームに関する前記パラメータ群は前記パルス光ビーム(13)の走査速度をさらに含む、請求項1~9の何れか1項に記載の方法。
【請求項11】
前記予備パルス(25)により送達される前記予備エネルギー量は、前記後続パルス(27)により送達される前記後続エネルギー量とは異なる、請求項1~10の何れか1項に記載の方法。
【請求項12】
前記予備パルス(25)及び後続パルス(27)の各々により送達される前記エネルギー量は、前記表面領域(5)が前記基板(4)の前記表面領域(5)の融点(Tm)に到達するのに必要なエネルギー量より少ない、請求項1~11の何れか1項に記載の方法。
【請求項13】
前記予備パルス(25)及び後続パルス(27)の各々は、1ナノ秒と等しいか、それより短い持続時間を有する、請求項1~12の何れか1項に記載の方法。
【請求項14】
前記予備パルス(25)と前記後続パルス(27)との間の前記時間間隔(Δt)は25ナノ秒と等しいか、それより短い、請求項1~13の何れか1項に記載の方法。
【請求項15】
前記パルス光ビーム(13)は532ナノメートルと等しいか、それより短い波長を有する、請求項1~14の何れか1項に記載の方法。
【請求項16】
前記パルス光ビーム(13)の前記エネルギー密度は1ミリジュール/平方センチメートルより高い、請求項1~15の何れか1項に記載の方法。
【請求項17】
基板(4)をパルス光ビーム(13)で熱処理するためのシステム(1)において、前記基板(4)は表面領域(5)と埋込み領域(6)を有し、前記基板(4)の基板温度は初期温度-深さプロファイルを示し、前記表面領域(5)の表面温度(Ts)は初期表面温度(T0)であり、前記システム(1)は、
-光ビーム(11)を発するようになされた光源(7)と、
-前記発光ビーム(11)から前記パルス光ビーム(13)を生成するように構成されたビーム制御システム(9)であって、予備パルス(25)と後続パルス(27)を生成するようになされたシステムと、
を含み、
-前記パルス光ビーム(13)の前記予備パルス(25)は前記基板(4)の前記表面領域(5)に照射され、前記予備パルスはそれによって前記表面領域(5)に予備エネルギー量を提供し、それによって前記表面領域(5)は予備熱量を生成し、前記表面温度(Ts)は所定の予備表面温度(T25)に到達し、
-前記パルス光ビーム(13)の前記後続パルス(27)は、ある時間間隔(Δt)後に前記基板(4)の前記表面領域(5)に照射され、前記後続パルス(27)はそれによって前記表面領域(5)に後続エネルギー量を提供し、それによって前記表面領域(5)は後続熱量を生成し、前記表面温度(Ts)は所定の後続表面温度(T27)に到達し、
前記システムは、前記時間間隔(Δt)後に前記後続パルス(27)を生成するようになされ、前記時間間隔(Δt)は、前記時間間隔(Δt)中に前記表面温度(Ts)が所定の中間表面温度(Ti)に到達するように特定され、前記所定の中間表面温度(Ti)は前記初期表面温度(T0)より高く、
それによって前記時間間隔(Δt)中に前記予備熱量が前記埋込み領域(6)内に前記基板(4)の所定の深さまで拡散し、それによって前記基板温度は所定の中間温度-深さプロファイルを示す
ことを特徴とするシステム(1)。
【請求項18】
前記システム(1)は、前記表面領域(5)への前記予備パルス(25)の前記照射と前記表面領域(5)への前記後続パルス(27)の前記照射を、前記表面温度(Ts)が標的温度に到達し、前記基板温度が標的温度-深さプロファイルを示すまで繰り返すように構成される、請求項17に記載のシステム(1)。
【請求項19】
前記基板の(4)前記埋込み領域(6)は、所定のドーパント元素濃度-深さプロファイルを有するドーパント元素が注入された領域(87)を含み、前記標的温度-深さプロファイルは、前記注入領域(87)の前記ドーパント元素を活性化するようになされる、請求項18に記載のシステム。
【請求項20】
前記予備パルス(25)と後続パルス(27)の各々は、1ナノ秒と等しいか、それより短い持続時間(t)を有する、請求項17~19の何れか1項に記載のシステム。
【請求項21】
前記パルス光ビーム(13)は、532ナノ秒と等しいか、それより短い波長を有する、請求項17~20の何れか1項に記載のシステム。
【請求項22】
前記予備パルス(25)と前記後続パルス(27)との間の前記時間間隔(Δt)は25ナノ秒と等しいか、それより短い、請求項17~21の何れか1項に記載のシステム。
【請求項23】
前記パルス光ビーム(13)の前記エネルギー密度は、1ミリジュール/平方センチメートルより高い、請求項17~22の何れか1項に記載のシステム。
【請求項24】
前記ビーム制御システム(9)は、前記所定の予備表面温度(T25)、前記所定の中間表面温度(Ti)、及び前記所定の後続温度-深さプロファイルに到達するために、前記パルス光ビーム(13)に関するパラメータの値を特定するように構成され、前記パルス光ビーム(13)に関する前記パラメータは、前記時間間隔(Δt)、パルス光ビーム(13)のエネルギー密度、前記パルス光ビーム(13)により前記表面領域(5)上に形成される光スポット(20)の形状を含む群より選択される、請求項17~23の何れか1項に記載のシステム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体材料の熱処理に関する。
【0002】
より詳しくは、本発明はパルス光ビームを用いて基板を熱処理する方法に関する。
【0003】
本発明はまた、パルス光ビームを用いて基板を熱処理するためのシステムにも関する。
【背景技術】
【0004】
半導体製造プロセスにおいて、基板の表面上に形成される装置および表面の下に埋め込まれる装置は、温度ダイナミクスに対して非常に脆く、その影響を受けやすい可能性がある。
【0005】
製造プロセスの熱処理段階中に装置に損傷を与えないようにするために、基板の温度変化の完璧な制御を実現することが重要である。
【0006】
レーザアニーリング等の現代の熱処理技術は、融点における時間が非常に短く、すなわちマイクロ秒未満の時間尺度とすることができ、基板への熱浸透を非常に浅くすることができる。しかしながら、熱源が限定され、時間が制御されていても、アニーリングダイナミクスは常に制御が難しい。
【0007】
特に、基板の表面領域がナノ秒レーザパルスにさらされるナノ秒レーザ技術では、1パルス中のアニーリングダイナミクスは表面領域の熱励起と基板の埋込み領域への熱拡散による緩和との間の競合現象である。
【0008】
例えば、熱伝導率の高い材料にナノ秒レーザアニーリングが行われる場合、パルス中の熱拡散が重要である可能性がある。表面温度の温度上昇はゆっくりであり、アニーリングが基板の埋込み領域内に深く浸透する。
【0009】
その逆の状況において、断熱材料がナノ秒レーザにさらされた場合は、パルス中の熱拡散は無視でき、それゆえ局所的な深部加熱と表面温度の急上昇が得られる。
【0010】
さらに、多くの場合、表面領域はある温度でアニーリングしなければならないのに対し、基板内の埋込み領域は別のある温度でアニーリングしなければならないか、又はアニーリングすべきではない。
【0011】
そのため、レーザ処理中、温度変化と熱拡散は従来、相互依存するレーザパラメータと材料/装置温度特性の間接的な結果により、制御が難しい。制御は、パルス持続時間と繰返し率が概して一定で、柔軟性がなく、レーザ源により限定されるナノ秒パルスレーザ等のマイクロ秒未満のシステムでははるかに困難となる。
【0012】
熱処理中の温度制御を改善する方法が望ましい。
【発明の概要】
【0013】
これに関して、本発明では基板をパルス光ビームで熱処理する方法が提供され、基板は表面領域と埋込み領域を有し、基板の基板温度は初期温度深さプロフファイルを示し、表面領域の表面温度は初期表面温度にあり、
b)表面領域にパルス光ビームの予備パルスを照射するステップであって、予備パルスはそれにより予備エネルギー量を表面領域に提供し、それによって表面領域が予備熱量を発生させ、表面温度が所定の予備表面温度に達するようなステップと、
c)ある時間間隔後に基板の表面領域にパルス光ビームの後続パルスを照射するステップであって、後続パルスはそれにより後続エネルギー量を表面領域に提供し、それによって表面領域は後続熱量を発生させ、表面温度が所定の後続表面温度に達するようなステップと、を含む。
【0014】
この方法によれば、時間間隔は、時間間隔中に表面温度が所定の中間表面温度に達するように特定され、前記所定の中間表面温度は初期表面温度より高く、それによって時間間隔中に予備熱量が埋込み領域中に基板の所定の深さまで拡散し、それによって基板温度は所定の中間温度-深さプロファイルを示す。
【0015】
この方法により、表面領域の表面温度及び基板の温度-深さプロファイルの、すなわち基板の温度ダイナミクスの変動を正確に制御できる。
【0016】
この方法により、表面温度はパルスの累積効果により時間と共に徐々に上昇する。実際に、時間間隔は、表面温度が2つのパルス間に初期温度に戻りきれない、というものである。したがって、表面領域により生成される後続熱は、埋込み領域中にまだ拡散していない熱に追加され、後続パルス後の表面温度は、予備パルス後の表面温度より高い。
【0017】
これは、表面領域の温度上昇、すなわち経時的な温度変化率が、基板材料と基板中及び基板上に形成される装置に応じて調整可能であるため、有利である。例えば、損傷しやすい装置と基板には緩やかな温度上昇にさらすことができ、それに対して、より堅牢な装置と基板には、より急峻な温度上昇にさらすことができる。
【0018】
この方法により、埋込み領域の温度プロファイルの変動を制御することも可能となる。より少ないエネルギーを提供するパルスの場合、埋込み領域中に拡散する熱の量はより少なく、埋込み領域は、より多くのエネルギーを提供するパルスの場合より低い温度に到達する。それでも、累積効果により、標的表面温度に到達させることが可能である。
【0019】
これは、方法がそのようにして熱伝導体及び断熱体を加工するように適応可能であるため、有利である。
【0020】
この方法により、基板を、FINFET又はIGBT等の具体的な電子構造の熱処理に適応される標的温度-深さプロファイルにさらすこともできる。
【0021】
本発明による方法のその他の有利で非限定的な特徴は、b)表面領域に予備パルスを照射するステップを含み、c)表面領域に後続パルスを照射するステップが、表面温度が標的温度に到達し、基板温度が標的温度-深さプロファイルを示すまで繰り返される。
【0022】
本発明による方法の他の有利で非限定的な特徴は、基板の埋込み領域が所定のドーパント元素濃度-深さプロファイルを有する、ドーパント元素が注入された領域を含み、標的温度-深さプロファイルは、注入領域のドーパント元素を活性化するように適応されることを含む。
【0023】
本発明による方法のその他の有利で非限定的な特徴は以下を含む:
-注入領域が、表面領域から500ナノメートルより深い深さにあり、その厚さは50マイクロメートル未満であること、
-ドーパント元素が、注入領域内で1種類のユニポーラキャリアを発生させるようになされていること、
-ドーパント元素が、注入領域内で2種類のユニポーラキャリアを発生させるようになされていること、
-基板は、シリコン、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、窒化ガリウム、ガリウムヒ素、ダイヤモンドを含む群より選択される半導体材料であること。
【0024】
本発明による方法の他の有利で非限定的な特徴は以下を含む:予備パルス及び後続パルスの各々は、1ナノ秒と等しい、又はそれより短い持続時間を有すること。これは、1ナノ秒未満のパルスがそのパルス中に急速な温度上昇を生じさせる一方で、それほど拡散させず、したがって表面ピーク温度の精密な制御を可能にするため、有利である。
【0025】
本発明による方法の他の有利で非限定来な特徴は以下を含む:パルス光ビームは532ナノメートルと等しい、又はそれ未満の波長を有すること。これは、532ナノメートルと等しい、又はそれ未満の波長を有する光が、532nmより長い波長を有する光よりも基板により、よく吸収されるため、有利である。したがって、パルスにより提供されるエネルギーは、基板の浅い領域内に限定される。
【0026】
本発明による方法の他の有利で非限定的な特徴は以下を含む:
-予備パルスと後続パルスとの間の時間間隔は25ナノ秒と等しいか、それより短いこと、
-パルス光ビームは532ナノメートルと等しいか、それより短い波長を有すること、
-パルス光ビームのエネルギー密度は1ミリジュール/平方センチメートル/パルスより高いこと、
-方法は、a)所定の予備表面温度、所定の中間表面温度、及び所定の後続温度-深さプロファイルに到達するためにパルス光ビームに関するパラメータの値を特定するステップをさらに含み、パルス光ビームに関するパラメータは、時間間隔、パルス光ビームのエネルギー密度、パルス光ビームにより表面領域上に形成される光スポットの形状を含む群より選択されること、
-方法は、d)表面領域にわたりパルス光ビームを走査するステップをさらに含み、ステップa)中に、パルス光ビームに関するパラメータの群は、パルス光ビームの走査速度をさらに含むこと、
-予備パルスにより送達される予備エネルギー量は後続パルスにより送達される後続エネルギー量とは異なること、
-予備パルスと後続パルスの各々により送達されるエネルギー量は、表面領域が基板の表面領域の融点に到達するのに必要なエネルギー量より少ないこと、
-標的温度は、表面領域の融点であること。
【0027】
本発明はまた、基板をパルス光ビームで熱処理するためのシステムにも関し、基板は表面領域と埋込み領域を有し、基板の基板温度は初期温度-深さプロファイルを示し、表面領域の表面温度は初期表面温度であり、前記システムは、
-光ビームを発するようになされた光源と、
-発出光ビームからパルス光ビームを生成するように構成されたビーム制御システムであって、予備パルスと後続パルスを生成するようになされた前記システムと、
を含み、
-パルス光ビームの前記予備パルスは基板の表面領域に照射され、予備パルスはそれによって前記表面領域に予備エネルギー量を提供し、それによって表面領域は予備熱量を生成し、表面温度は所定の予備表面温度に到達し、
-パルス光ビームの前記後続パルスは、ある時間間隔後に基板の表面領域に照射され、後続パルスはそれによって前記表面領域に後続エネルギー量を提供し、それによって前記表面領域は後続熱量を生成し、表面温度は所定の後続表面温度に到達する。
【0028】
本発明によれば、システムは、前記時間間隔後に前記後続パルスを生成するようになされ、前記時間間隔は、時間間隔中に表面温度が所定の中間表面温度に到達するように特定され、前記所定の中間表面温度は初期表面温度より高く、それによって時間間隔中に予備熱量が埋込み領域内に基板の所定の深さまで拡散し、それによって基板温度は所定の中間温度-深さプロファイルを示す。
【0029】
本発明による方法の他の有利で非限定的な特徴は以下を含む:
-システムは、表面領域への予備パルスの照射と表面領域への後続パルスの照射を、表面温度が標的温度に到達し、基板温度が標的温度-深さプロファイルを示すまで繰り返すように構成されること、
-基板の埋込み領域は、所定のドーパント元素濃度-深さプロファイルを有するドーパント元素が注入された領域を含み、標的温度-深さプロファイルは、注入領域のドーパント元素を活性化するようになされること、
-予備パルスと後続パルスの各々は、1ナノ秒と等しいか、それより短い持続時間を有すること、
-パルス光ビームは、532ナノメートルと等しいか、それより短い波長を有すること、
-予備パルスと後続パルスとの間の時間間隔は25ナノ秒と等しいか、それより短いこと、
-パルス光ビームのエネルギー密度は、1ミリジュール/平方センチメートルより高いこと、
-ビーム制御システムは、所定の予備表面温度、所定の中間表面温度、及び所定の後続温度-深さプロファイルに到達するために、パルス光ビームに関するパラメータの値を特定するように構成され、パルス光ビームに関するパラメータは、時間間隔、パルス光ビームのエネルギー密度、パルス光ビームにより表面領域上に形成される光スポットの形状を含む群より選択されること。
【0030】
この説明は、非限定的な例示の目的のために提供され、下記のような添付の図面を参照すれば、よりよく理解される。
【図面の簡単な説明】
【0031】
図1】本発明による、基板のある領域を熱処理するためのシステムの略図である。
図2】本発明による熱処理を受ける基板の表面領域の、時間に関する表面温度の変化のグラフである。
図3】本発明による、基板のある領域を熱処理する方法のステップの略図である。
図4】本発明による熱処理を受ける基板の異なる深さにおける時間に関する温度変化のグラフである。
図5】本発明による熱処理を受ける半導体構造の略図である。
図6】本発明による熱処理を受ける図5a及び5bの半導体構造の異なる深さにおける時間に関する温度変化のグラフである。
図7】基板を異なるエネルギー及び周波数を有する複数のパルストレインにさらすことによって得られる複数の表面温度ダイナミクスのグラフである。
図8】標準的な表面温度上昇を示す温度曲線と対応するパルストレインを示す。
図9】パルスビームに関するパラメータの異なる組合せにさらされる基板の深さと、1つの種のドーパント元素が注入された基板のドーパント注入プロファイルに関する温度変化のグラフである。
図10】パルスビームに関するパラメータの異なる組合せにさらされる基板の深さと、2つの種のドーパント元素が注入された基板のドーパント注入プロファイルに関する温度変化のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1は、基板4を熱処理するためのシステム1を表す。
【0033】
基板4は、半導体材料で製作される。基板4は、例えばSi(シリコン)材料又はSiGe(シリコン-ゲルマニウム)材料を含む。
【0034】
トランジスタ、レジスタ、又はそれらの金属相互接続等の電子装置は、基板4の表面領域5上に形成される。
【0035】
表面領域5は、表面融点Tmを有する。表面融点Tmは、基板材料に依存し、また表面領域5上に形成される電子機器に依存する。
【0036】
表面領域5の下に、基板4は埋込み領域6を示す。埋込み領域6はまた、電子装置の埋込み層41も含んでいてよい。各埋込み層41は、第一の軸(0z)に沿って測定される深さDlを有する。第一の軸(0z)は、表面領域5に垂直であり、第一の軸(0z)は原点0を有し、これは表面領域5上にある。第一の軸(0z)は、バルク半導体材料3に向かう方位とされる。各埋込み層41はそれぞれの融点Tblmを有する。
【0037】
埋込み領域6は、温度-深さプロファイル8を示す。温度-深さプロファイル8は、埋込み領域6の深さに関する温度の変化に対応する。
【0038】
システム1は、光源7と、ビーム制御システム9と、を含む。
【0039】
光源7は光ビーム11、例えばレーザビーム11を発出する。光源7は、例えば発光波長が1.06マイクロメートルと等しいか、それより短い短波長レーザである。光源7は、好ましくは発光波長が532ナノメートルと等しいか、それより短いレーザである。光源7は好ましくは、355ナノメートルと等しいか、それより短い発光波長の紫外レーザである。
【0040】
光源7は好ましくはパルスレーザ、好ましくは非常に高い、例えば40メガヘルツより高い繰返し率で動作する擬似連続波レーザである。
【0041】
ビーム制御システム9は、発出光ビーム11を変調して、基板4を熱処理するようになされたパルス光ビーム13を生成する。
【0042】
ビーム制御システム9は、表面領域5の表面温度の変化及び埋込み領域6の温度-深さプロファイルの変化を、パルス光ビーム13に関するパラメータを制御することによって制御する。パルス光ビーム13に関するパラメータは、パルス光ビームのエネルギー密度Ed、パルス持続時間t、パルス周波数、パルス周波数の逆数と等しいパルス間時間間隔Δt、パルス光ビームの総露光時間、熱処理中のパルス数を含む。
【0043】
このために、ビーム制御システム9は、キャビティ、レンズ、減衰器15、ミラー17、ビームシェイパ19、ビームスキャナ21、および制御ユニット23等の構成要素を含む。
【0044】
例えば、ビーム制御システム9は、例えば減衰板を含む発出光ビーム11を減衰器15に通し、減衰器の透過率を変化させることによって、パルスエネルギー密度Edを制御する。代替的に、又は追加的に、ビーム制御システム9は、光源7のポンピング力等の光源7の内部パラメータを変えることにより、パルスエネルギーEd密度を制御する。
【0045】
例えば、ビーム制御システム9は、適応された構成要素によりパルス光ビーム13の周波数を制御する。例えば、パルス光ビーム13の周波数は、光源7のオシレータを外部から制御することにより調整できる。代替的に、パルス光ビーム13の周波数は、電気光学モジュール、例えばパルストレイン内の特定のパルスを偏向させる「パルスピッカ」を使用することにより制御できる。
【0046】
例えば、ビーム制御システム9は、ビームシェイパ19によって、パルス光ビーム13により表面領域5上に形成される光スポット20の形状と大きさを制御する。
【0047】
例えば、ビーム制御システム9は、ビームスキャナ21により、熱処理中に表面領域5が受けるパルス数を制御する。走査速度は、表面領域5に所望のパルス数を照射するように特定される。表面領域5上のあらゆる照射点において蓄積されるパルスは、光パルスの大きさにパルス光ビーム13の周波数を走査速度で割った商を乗じたものと等しい。
【0048】
ビーム制御システム9は、制御ユニット23を含む。制御ユニット23は、例えばマイクロプロセッサとメモリを含む。制御ユニット23のメモリは、マイクロプロセッサにより実行されたときに基板4を熱処理する方法を実施するようになされたコンピュータプログラムを記憶する。さらに、制御ユニット23は、パルス光ビーム13に関するパラメータを制御するために、ビーム制御システム9のその他の構成要素15、17、19、21、及び光源7に命令を送信するように構成される。
【0049】
図2は、パルス光ビーム13のパラメータの幾つかを示す。パルス光ビーム13は、パルストレイン24を含む。ここで、パルストレイン24は6つのパルス25、27を含み、これは6サイクルとも呼ばれる。
【0050】
パルス光ビーム13の1つのパルス25、27の持続時間tは、例えば100ナノ秒と等しいか、それより短い。1つのパルス25、27の持続時間tは好ましくは、10ナノ秒と等しいか、それより短い。1つのパルス25、27の持続時間tは好ましくは、1ナノ秒と等しいか、それより短い。
【0051】
1つのパルス25、27のエネルギー密度Eは、1マイクロジュール/平方センチメートル~30ミリジュール/平方センチメートルである。
【0052】
図2において、パルスレーザビーム13は2つのエネルギー状態、すなわち、パルス25、27により送達されるエネルギーがゼロ以外である「オン状態」と、パルス25、27により送達されるエネルギーがゼロと等しい「オフ状態」を有することがわかる。
【0053】
予備パルス25と後続パルス27との間の時間間隔Δtの持続時間は、1ミリ秒と等しいか、それより短い。予備パルス25と後続パルス27との間の時間間隔Δtの持続時間は、1マイクロ秒と等しいか、それより短い。予備パルス25と後続パルス27との間の時間間隔Δtの持続時間は、1ナノ秒と等しいか、それより短い。換言すれば、パルス光ビーム13の周波数は10メガヘルツ~1ギガヘルツの範囲である。
【0054】
表面領域5の、パルス間の総時間を含む総露光時間は1ミリ秒と等しいか、それより短い。表面領域5の総露光時間は好ましくは、10マイクロ秒と等しいか、それより短い。
【0055】
時間間隔Δt、パルス光ビームエネルギー密度Ed、パルス光ビーム周波数、走査速度及びビーム形状を制御することにより、システム1は処理条件の完全な制御を実現する。
【0056】
図2において、第一の曲線29は、表面領域5の表面温度Tsの経時的な変化を表す。図2では、表面温度Tsは周期的な挙動を有することがわかる。ここで、1温度サイクルは、表面温度が1つの温度極値から次の同じ温度極値に、例えば2つの連続する最小値又は2つの連続する最大値間で循環すると達成される。
【0057】
表面領域5に予備パルス25が照射されると、表面温度Tsは所定の予備表面温度T25に到達する。表面領域5が照射を受けないと、表面温度は所定の中間表面温度Tに到達する。
【0058】
ここで、表面温度Tsは、表面領域5が照射を受けないと低下するため、所定の予備表面温度T25は温度最大値である。
【0059】
この例では、表面領域5に6つのパルスのパルストレイン24が照射されるため、第一の曲線29は6つの温度サイクルを示す。
【0060】
後続パルス27中、表面温度Tsは所定の後続表面温度T27に到達する。
【0061】
図2はまた、表面温度の包絡線も示しており、これはパルス後に到達する温度最大値が通過する上側包絡線部分31と、パルス後に到達する温度最小値が通過する下側包絡線部分33を有する。
【0062】
図2はまた、温度傾斜35、換言すれば、経時的温度変化率も示す。温度傾斜35は、パルス光ビーム13に関するパラメータに基づいて特定される。
【0063】
ある例において、光源7は、コヒレント社のPaladinレーザモデル等の、擬似連続波レーザ(QCW:quasi continuous wave)を含む。
【0064】
Paladinレーザの発出波長は355nmである。
【0065】
1つのパルスのパルス持続時間tは15ピコ秒である。
【0066】
Paladinレーザは80MHzと等しい一定のパルス周波数を有し、換言すれば、パルス間時間間隔Δtの持続時間は12.5ナノ秒である。
【0067】
Paladinレーザのパワーは16Wである。発出ビームの1パルスのエネルギーは0.2マイクロジュールである。
【0068】
ビーム制御システム9は、パルス光ビーム13の形状を約30マイクロメートルのガウシアン光スポットに整形して、28マイクロジュール/平方センチメートルのエネルギー密度Eに到達させる。
【0069】
走査速度は例えば、1メートル/秒である。80MHzの周波数で30マイクロメートルの光スポットの大きさの場合、処理時間は30マイクロ秒であり、これは2400パルスに対応する。
【0070】
他の例では、光源7は調整可能な周波数を有する他の擬似連続波レーザを含む。このような調整可能な周波数を有するレーザによれば、パルス間時間間隔を変調することが可能となる。
【0071】
図3に関して、基板4をパルス光ビーム13で熱処理する方法は、a)パルス光ビーム13に関するパラメータの値を特定するフェーズを含む。パルス光ビームに関するパラメータは、2つのパルス25、27間の時間間隔Δtの持続時間、パルス25、27のエネルギー密度Ed、表面領域5にわたるパルス光ビームの走査速度、パルス光ビームの形状、パルス持続時間t、パルス25、27の数を含む群より選択される。
【0072】
各パルス25、27により送達されるエネルギー量は、表面領域5が表面領域5の融点Tmに到達するのに必要なエネルギー量より少ない。
【0073】
パルス光ビーム13に関するパラメータの値は、少なくとも1つの熱処理パラメータに基づいて特定される。熱処理パラメータは、標的表面温度、所定の予備表面温度、所定の後続表面温度T27、所定の温度傾斜、所定の温度における、及び/又はそれを超える時間、基板4の所定の温度-深さプロファイル8、所定の深さを含む群から選択される。
【0074】
所定の深さは、その下方では、基板4の中のより深い位置まで埋め込まれた装置に損傷を与えないようにするために基板4の温度がある温度を超えるべきではない、という深さである。ある温度は、例えば400℃である。
【0075】
図4は、熱プロセス中の時間に関する領域3の温度の変化のグラフである。
【0076】
図4は、表面領域5の表面温度の変化に対応する第二の温度曲線37を表す。図4は、基板4内の深さD41にある埋込み層41の他の温度の変化に対応する第三の温度曲線39を表す。ここで、層の深さD41は例えば約1マイクロメートルである。
【0077】
熱処理の開始時に、基板4は初期温度-深さプロファイルを有し、表面領域5の表面温度Tsは初期表面温度T0である。例えば、基板4は室温である。
【0078】
ステップb)中に、パルス光ビーム13の予備パルス25が表面領域5に照射される。予備パルス25はそれによって、予備エネルギー量E25を表面領域5に提供し、熱は表面領域5によって局所的に生成され、表面温度Tsは所定の予備表面温度T25に到達する。局所的加熱は、熱平衡化フェーズとも呼ばれ、1×10-10秒より速く発生する。
【0079】
パルス光ビーム13のこの「オン状態」中に、表面温度Tsは上昇し、所定の予備表面温度T25、例えば約240℃に到達する。
【0080】
パルス光ビーム13はその後、「オフ状態」となる。2つのパルス間の時間間隔Δtに対応する「オフ状態」中に、表面領域5にパルス光ビーム13は照射されない。その結果、表面温度Tsは低下し、所定の中間表面温度Tiに到達する。
【0081】
時間間隔Δtの持続時間は、ステップa)において、表面領域5が部分的にのみ弛緩するように特定される。表面領域5は、時間間隔Δtに比例して弛緩する。換言すれば、表面温度Tsは初期値T0に戻らない。換言すれば、所定の中間表面温度Tiは初期値T0より高い。
【0082】
さらに、時間間隔Δt中、埋込み層の他の温度37は、表面領域5により生成される熱が埋込み領域6へと拡散するのにつれて上昇する。ステップa)中に、パルス光ビーム13に関するパラメータの値は、生成された予備熱量が所定の拡散深さまで拡散し、基板4の所定の温度-深さプロファイルを得るように特定された。
【0083】
ステップc)中に、時間間隔Δt後に後続パルス27が表面領域5に照射される。後続パルス27はそれによって、後続エネルギー量E27を表面領域5に提供する。表面領域5は後続熱量を生成し、表面温度Tsは所定の後続表面温度T27に到達する。すると、累積効果が観察され、すなわち、所定の中間表面温度Tが初期表面温度Tより高いため、所定の後続表面温度T27は所定の予備表面温度T25より高い。この例において、すべてのパルス25、27は、同じエネルギー量を提供する。
【0084】
表面領域5に予備パルス25を照射するステップb)と表面領域5に後続パルス27を照射するステップc)は、表面領域5の表面温度Tsが標的表面温度に到達し、基板温度が標的温度-深さプロファイルに到達するまで繰り返される。
【0085】
任意選択により、熱処理対象の表面領域5が光スポット20より大きい場合、ステップd)中にパルス光ビーム13が表面領域5にわたり走査される。この場合、表面領域5の第一の部分には予備パルス25が照射され、表面領域5の第二の部分には後続パルス27が照射される。
【0086】
図4では、41パルスに対応する41サイクルが見られる。表面温度Tsは周期的な変化を示し、表面温度が予備及び後続温度に対応する「オン状態」中に到達する表面温度最大値と「オフ状態」中に到達する表面温度最小値との間で急速に変化することがわかる。
【0087】
それに対して、埋込み層41の第三の温度曲線39は平滑なプロファイルを有する。埋込み層41は、周期的な温度変化にさらされない。
【0088】
図5a及び5bは、本発明の熱処理で処理することのできる構造の例を示す。
【0089】
図5a及び5bは、シリコンFINFET構造43を示す。フィン45は、例えば50ナノメートルと等しい距離dだけ分離されている。
【0090】
図5aにおいて、パルスレーザビーム13は「オン状態」にあり、パルス光ビーム13のパルスが表面領域5に照射される。
【0091】
パルス光ビーム13は、表面領域5に厳格には限定されない。パルス光ビーム13は、FINFET構造43の中に数ナノメートル浸透する。例えば、紫外レーザの場合、パルス光ビームはゲルマニウム材料の中には1ナノメートル、シリコン-ゲルマニウム材料の中には3ナノメートル、及びシリコン材料の中には7ナノメートル浸透する。例えば、紫外レーザの場合、パルス光ビームは一般的な半導体で10ナノメートルまで浸透する。例えば、紫外レーザの場合、パルス光ビームは金属及び、シリコンカーバイド(SiC)又は窒化ガリウム(GaN)等のその他のワイドギャップ材料の中に200ナノメートルまで浸透する。
【0092】
FINFET構造43は、パルスからあるエネルギー量を受け取り、FINFET構造43の複数のエリア47には局所加熱(熱平衡化)が起こる。
【0093】
図5bにおいて、パルスレーザビーム13は「オフ状態」にあり、表面領域5は照射を受けていない。熱はFINFET構造43の中に、エリア47を超えて拡散する。矢印49は、熱拡散の方向を示している。
【0094】
図6は、FINFET構造43の様々な深さにおける温度変化のグラフである。
【0095】
この例において、FINFET構造43のシリコン表面領域5の温度は、ここでは1415℃の融点と等しい標的温度まで、又はそれより高い温度への漸進的なアニーリングに耐えるべきである。基板4は、表面領域5の下の10マイクロメートルの深さにおける埋込み層を有し、これは、損傷を防止するために、500℃より高い温度にはアニーリングされるべきではない。
【0096】
パルス光ビーム13に関するパラメータの値は、上述の温度要求事項に適合するように特定される。パラメータの以下の値が温度要求事項を満たすと特定された:
-パルス持続時間=0.9ナノ秒
-時間間隔=10ナノ秒
-繰返し率=100メガヘルツ
-エネルギー/パルス=10ミリジュール/平方センチメートル
-ピーク温度=272.98℃
【0097】
基板4に熱処理を行った後、表面温度は1420℃より高く、換言すれば、融点より高い。その温度での時間は7.4マイクロ秒である。
【0098】
図6において、第四の温度曲線51は、表面温度の包絡線のより高い部分に対応し、第五の温度曲線53は包絡線のより低い部分に対応する。5マイクロ秒の熱処理の後、第四の温度曲線51は標的温度に到達した。
【0099】
第六の温度曲線55は、1マイクロメートルの深さにおける層の温度変化に対応する。第七の温度曲線57は、2マイクロメートルの深さにおける層の温度変化に対応する。第八の温度曲線59は、5マイクロメートルの深さにおける層の温度変化に対応する。第九の温度曲線61は、10マイクロメートルの深さにおける層の温度変化に対応する。
【0100】
図6において、温度は深さと共に低下するのがわかる。
【0101】
また、5マイクロ秒の熱処理の後、深さ10マイクロメートルに埋め込まれた層の温度は約420℃に到達し、これは所望の500℃より低いことがわかる。
【0102】
図7は、パルス光ビーム13に関するパラメータの異なる値で得られた、異なる表面温度ダイナミクスを示す。
【0103】
第十の温度曲線63は、第十のパルストレイン65を表面領域3に照射することにより得られる。第十の温度曲線63は、平滑な温度傾斜及び比較的均一な深さでの長時間の熱処理に対応する。第十のパルストレイン65で実現される熱処理は、ミリ秒急速熱アニーリング(RTP:rapid thermal annealing)とも呼ばれる古典的な平衡アニーリングと類似している。
【0104】
第十一の温度曲線67は、表面領域3に第十一のパルストレイン69を照射することにより得られる。第十一のパルストレイン69のパルスは、第十のパルストレイン65のパルスと比較して、より高いエネルギーを表面領域5に提供する。第十一のパルストレイン69で実現される熱処理は、古典的なステップと類似しており、ナノ秒プロセスを繰り返す。
【0105】
第十二の温度曲線71は、表面領域5に第十二のパルストレイン73を照射することにより得られる。第十二のパルストレイン73で実現される熱処理は、重要な選択性と高いピーク温度を用いる中間的解決策であるが、この熱処理は、古典的なパルスレーザ処理の温度傾斜ほど急峻ではない温度傾斜を有し、それゆえ、侵襲性がより低く、表面領域5における装置及び基板4内に埋め込まれた装置に損傷を与えるリスクがより低い。
【0106】
図8a、8b、8cは、パルストレインの各パルスにより送達されるエネルギーを制御することにより、表面包絡を制御するまた別の可能性を示している。
【0107】
図8aは第十三の温度曲線75を示し、これは、標準的な表面温度上昇を見せる。この例において、表面領域5には、等しいエネルギーのパルスを有する第十三のパルストレイン77と、パルストレインの終わりの制御されない冷却を受ける。
【0108】
図8bは第十四の温度曲線79を示し、これは、標準的な温度上昇とその後の、第十四のパルストレイン81の1パルスあたりのエネルギーがそれに対応して減少することにより得られる、ある温度での包絡の安定を見せる。
【0109】
図8cは第十五の温度曲線83を示し、これは、標準的な温度上昇とその後の、第十五のパルストレイン85の各パルスにより提供されるエネルギーが徐々に減少することにより得られる制御された冷却を見せる。
【0110】
他の例によれば、パルス光ビーム13に関するパラメータのその他の組合せが利用でき、熱処理中、例えば時間間隔Δtと各パルスにより送達されるエネルギーの両方を変化させることが可能である。
【0111】
他の例によれば、方法は、その埋込み領域が、所定のドーパント元素濃度-深さプロファイルを有するドーパント元素が注入された領域87を含む基板4に適用することができる。この場合、表面領域5に予備パルス25を照射するステップb)と表面領域5に後続パルス27を照射するステップc)は、基板温度が標的温度-深さプロファイルを示すまで繰り返される。標的温度-深さプロファイルは、注入された領域87のドーパント元素を活性化するように適応される。
【0112】
例えば、方法は、ディープジャンクションデバイス、例えばシリコン絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(IGBT)の形成に適用できる。
【0113】
シリコンIGBTデバイスを製造するために、ドーパント元素は、シリコン基板の表面領域、ここでは裏面にドーパント元素衝撃を与えることによってシリコン基板中に注入される。例えば、基板の注入領域は1×1013原子/平方センチメートルより高いドーパント元素濃度を有することができる。
【0114】
ドーパント元素は、ユニポーラキャリアを生成することによって基板の電気特性を変調させる。アクセプタ型のドーパント元素は、プラスのユニポーラキャリアを生成する。ドナー型のドーパント元素は、マイナスのユニポーラキャリアを生成する。
【0115】
図9は、注入領域87を含む基板4を表している。この例において、注入領域87には、1つのドーパント種、ここではリン(Ph)が注入されている。リンドーパント元素は、1つの型のユニポーラキャリアを生成するように適応される。
【0116】
図9は、基板の深さに応じた基板4内のリン89の所定の注入プロファイル、換言すれば基板4の所定のドーパント元素濃度-深さプロファイル89を表している。
【0117】
700keV~2MeVの間の注入エネルギーは、深さ1マイクロメートル~5マイクロメートルに到達する深部注入プロファイルを得るために使用される。
【0118】
注入領域87は、例えば基板の埋込み領域中の、表面領域5~500ナノメートルより深い深さにある。注入領域87は、例えば500ナノメートルと等しい、又はそれより薄い厚さを有する。
【0119】
この例において、2マイクロメートルの深さに注入されたリンドーパントを活性化するために、注入領域87の2マイクロメートルの深さの温度は、活性化温度Taより高いか、それと等しいべきである。活性化温度Taは例えば、700℃より高いか、それと等しい。しかしながら、基板4の注入面と反対の面の温度は損傷防止のために400℃を超える温度で加熱することはできない。好ましくは、反対面は100℃を超える温度で加熱されるべきではない。
【0120】
図9において、活性化温度Taは水平の破線90で表されている。基板4の、活性化温度Taより高い温度の領域は活性化される。基板4の、活性化温度Taより低い温度領域は活性化されない。
【0121】
図9はまた、基板4の一連の温度-深さプロファイル91、93、95、97、99、101、103、105も表示している。温度-深さプロファイル91~105の各々は、基板4に対して本発明の方法を行ったときに得られる。温度-深さプロファイル91~105の各々は、パルス光ビームに関するパラメータの値の異なる組合せに対応する。この例において、各温度-深さプロファイル91~105は、エネルギー密度及びパルス数の異なる組合せで得られる。
【0122】
例えば、温度-深さプロファイル91は、他の温度-深さプロファイル93~105より高いエネルギー密度及びより少ないパルス数を有するパルスシーケンスに対応する。他の温度-深さプロファイル93~105と比較して、基板4の温度は浅い深さにおいてより高く、より深い深さにおいて他の温度-深さプロファイル93~105より速くより低い温度に低下することがわかる。
【0123】
表面領域5が高いエネルギー密度と少ないパルス数のパルスシーケンスにさらされると、生成される熱は表面領域付近に制約され、そのため、表面領域5の付近の基板温度は高く、より深い深さの付近の基板温度は低い。
【0124】
温度-深さプロファイル105は、他の温度-深さプロファイル91~103より低いエネルギー密度及びより多いパルス数を有するパルスシーケンスに対応する。他の温度-深さプロファイル91~103と比較して、表面付近と最も深い深さにおける温度変化は小さいことがわかる。
【0125】
表面領域5が低いエネルギー密度と多いパルス数のパルスシーケンスにさらされると、熱は基板のより深くまで散逸し、そのため、表面領域5の付近の基板温度と最も深い深さでの基板温度は近い。
【0126】
最も急峻な温度-深さプロファイル91と最も平坦な温度-深さプロファイル103との間の温度-深さプロファイル93~103は、パルス光ビームに関するパラメータの値のその他の異なる組合せに対応し、より急峻なプロファイルはより平坦なプロファイルより高いエネルギー密度と少ないパルス数を有する。
【0127】
図9から、すべての温度-深さプロファイルが2マイクロメートルの深さにあるドーパント元素を活性化するように適応されるとはかぎらないことがわかる。ここで、温度-深さプロファイル99~105だけが適応されており、それは、2マイクロメートルの深さにおける基板温度が活性化温度Taより高いからである。したがって、リンドーパント元素を活性化するように適応された標的温度-深さプロファイルは、温度-深さプロファイル99~105のうちの何れから選択されてもよい。
【0128】
温度-深さプロファイル99~105のうちの1つは、例えば表面領域に1ナノ秒未満の500パルスを照射することによって得られ、各パルスのエネルギー密度は19ミリジュール/平方センチメートルであり、その時間間隔Δtは12ナノ秒である。
【0129】
温度-深さプロファイル99~105のうちの他の1つは、例えば表面領域に1ナノ秒未満の1000パルスを照射することによって得られ、各パルスのエネルギー密度は15ミリジュール/平方センチメートルであり、その時間間隔Δtは12ナノ秒である。この第二のエネルギープロファイルの例において、拡散時間が長くなると、より深い影響が見られる。
【0130】
図10は、基板4に2種類のドーパント元素が注入される、他の例を示している。ここで、2種類のドーパント元素はリンとボロンを含む。シリコン基板中、ボロンドーパント元素はアクセプタとして機能する。換言すれば、ボロンドーパント元素は、他の種類のユニポーラキャリア、より正確には正孔を生成するように適応される。
【0131】
したがって、この例では、基板には2種類のユニポーラキャリアを生成するように適応されたドーパント元素が注入される。
【0132】
リン原子は例えば、前述の例のように注入される。ボロン原子は例えば、1~100キロ電子ボルトのエネルギーで注入される。
【0133】
図10は、図9と同じ曲線を示す。それに加えて、図10はまた、基板深さに応じた基板4のボロン注入プロファイル(107)、換言すれば、基板4の他のドーパント元素濃度-深さプロファイル107も示している。
【0134】
異なる温度-深さプロファイル91~105は、標的温度-深さプロファイル及び、したがって、基板4に注入されたドーパント元素を活性化するためのエネルギー密度とパルス数の組合せを選択するために使用できる。
【0135】
方法は、シリコンカーバイド、シリコンゲルマニウム、ゲルマニウム、窒化ガリウム、ガリウムヒ素、ダイヤモンドを含む群から選択される半導体材料で製作された基板に適用できる。
【0136】
ドーパント元素は、用途に応じて、ボロン、リン、ヒ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム、タリウム、アンチモン、及びビスマスを含む群から選択される。
図1
図2
図3
図4
図5a
図5b
図6
図7
図8a
図8b
図8c
図9
図10
【国際調査報告】