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特表2022-510530水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料、その製造方法及び施用方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料、その製造方法及び施用方法
(51)【国際特許分類】
   C05G 3/80 20200101AFI20220120BHJP
   C05D 9/02 20060101ALI20220120BHJP
   A01G 22/22 20180101ALI20220120BHJP
【FI】
C05G3/80
C05D9/02
A01G22/22 Z
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020564473
(86)(22)【出願日】2019-11-20
(85)【翻訳文提出日】2020-11-16
(86)【国際出願番号】 CN2019119695
(87)【国際公開番号】W WO2021097706
(87)【国際公開日】2021-05-27
(31)【優先権主張番号】201911129227.5
(32)【優先日】2019-11-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513009727
【氏名又は名称】中国水▲稲▼研究所
(74)【代理人】
【識別番号】100095407
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 満
(74)【代理人】
【識別番号】100132883
【弁理士】
【氏名又は名称】森川 泰司
(74)【代理人】
【識別番号】100148633
【弁理士】
【氏名又は名称】桜田 圭
(74)【代理人】
【識別番号】100147924
【弁理士】
【氏名又は名称】美恵 英樹
(72)【発明者】
【氏名】邵 国勝
(72)【発明者】
【氏名】黄 奇娜
【テーマコード(参考)】
4H061
【Fターム(参考)】
4H061AA01
4H061AA02
4H061CC36
4H061DD14
4H061EE11
4H061EE16
4H061EE27
4H061EE32
4H061EE64
4H061GG34
4H061HH26
4H061KK01
(57)【要約】
水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料、その製造方法及び施用方法であって、肥料の技術分野に属する。該肥料は、含水率15%の有機物100kgに対し、鉄含有量で計算する鉄塩を0.05~5kg添加し、鉄含有量で計算する鉄塩:マンガン含有量で計算するマンガン塩:亜鉛含有量で計算する亜鉛塩:銅含有量で計算する銅塩の質量比が、1:0.2~8:0.08~2:0.001~0.5となるように、マンガン塩、亜鉛塩、及び銅塩を添加する。本発明の有機肥料は、水田土壌における重金属カドミウムの化学過程、水稲根系の吸収過程及び植物体のカドミウム輸送過程に基づいて開発されたものであり、施用しやすく、使用量が低く、価格が低く、使用コストが低く、中国の重、中、軽度のカドミウム汚染農地に普遍的に適用でき、広い適応性を有する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料であって、
含水率15%の有機物100kgに対し、鉄含有量で計算する鉄塩を0.05~5kg添加し、鉄含有量で計算する鉄塩:マンガン含有量で計算するマンガン塩:亜鉛含有量で計算する亜鉛塩:銅含有量で計算する銅塩の質量比が、1:0.2~8:0.08~2:0.001~0.5となるように、マンガン塩、亜鉛塩、及び銅塩を添加する、ことを特徴とする新規有機肥料。
【請求項2】
前記鉄含有量で計算する鉄塩:マンガン含有量で計算するマンガン塩:亜鉛含有量で計算する亜鉛塩:銅含有量で計算する銅塩:有機酸及びその塩類:有機キレート剤の質量比が1:0.2~8:0.08~2:0.001~0.5:0~1:0~1となるように、有機酸、その塩類及び有機キレート剤をさらに添加する、ことを特徴とする請求項1に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【請求項3】
前記有機肥料中、鉄含有量で計算する鉄塩:マンガン含有量で計算するマンガン塩:亜鉛含有量で計算する亜鉛塩:銅含有量で計算する銅塩の質量比が、1:0.3~3:0.15~1:0.01~0.3である、ことを特徴とする請求項1に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【請求項4】
前記有機物は、菜種ミール、大豆ミール、大豆粕、稲藁、大小麦藁、サトウキビくず、バガス、アブラナ藁、トウモロコシ藁、ソルガム藁、おがくず、雑草藁、レンゲソウ藁、アルファルファ藁、古紙又はホテイアオイのうちの1種以上の物質であり、
又は、前記有機物は家畜糞尿を主原料とする市販有機肥料である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【請求項5】
前記鉄塩は、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸第一鉄、リンゴ酸第二鉄、リンゴ酸第一鉄、シュウ酸第二鉄、シュウ酸第一鉄、硫化第一鉄、エチレンジアミン四酢酸第二鉄、及びエチレンジアミン四酢酸第一鉄のうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【請求項6】
前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、クエン酸マンガン、リンゴ酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫化マンガン又はエチレンジアミン四酢酸マンガンのうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【請求項7】
前記亜鉛塩は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、硫化亜鉛又はエチレンジアミン四酢酸亜鉛のうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【請求項8】
前記銅塩は、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、クエン酸銅、リンゴ酸銅、シュウ酸銅、硫化第一銅又はエチレンジアミン四酢酸銅のうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【請求項9】
前記有機酸及びその塩類は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸カルシウム、リンゴ酸マグネシウム、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸カルシウム、シュウ酸マグネシウムのうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする請求項2に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【請求項10】
前記有機キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、及びエチレンジアミン四酢酸マグネシウムのうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする請求項2に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【請求項11】
前記質量の有機物、鉄塩、マンガン塩、亜鉛塩、銅塩、有機酸及びその塩類、有機キレート剤を混合して均一に撹拌し、粉末状にするステップ1)と、
ステップ1)の均質な粉体を、押出機又は造粒機を用いて粒径0.3~1.2cmの顆粒にすると、水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料を得るステップ2)と、を含む、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料の製造方法。
【請求項12】
A.早稲の場合は、田圃耕起時又は苗移植後10日以内に追肥を行い、田圃1ムー当たり基肥を0~500kg、好ましくは5~50kg施肥し、穂ばらみ期には、追肥として0~500kg、好ましくは5~100kgを施肥し、登熟期には、0~500kg、好ましくは5~50kgを施肥し、
B.晩稲の場合は、田圃耕起時又は苗移植後10日以内に追肥を行い、田圃1ムー当たり基肥を0~500kg、好ましくは10~100kg施肥し、穂ばらみ期には、追肥として0~500部、好ましくは10~100kgを施肥し、登熟期には、0~500kg、好ましくは10~100kgを施肥し、
C.一毛作稲の場合は、田圃耕起時又は苗移植後10日以内に追肥を行い、田圃1ムー当たり基肥として0~500kg、好ましくは25~100kgを施肥し、穂ばらみ期には、追肥として0~500kg、好ましくは25~100kgを施肥し、登熟初期には、0~500kg、好ましくは25~100kgを施肥する、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか一項に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する有機肥料の施用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は肥料の技術分野に属し、具体的には、水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料、その製造方法及び施用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
カドミウム、鉛や水銀などの重金属は、植物の必須元素ではなく、植物の生育に害や毒性があり、作物の生育や食品の安全性の上の重要な重金属汚染物となっている。これらの有毒重金属は、食品に過剰に蓄積し、さらに食物連鎖に入ると、人体の健康を深刻に脅かす。農業部の米及び製品の品質監督検査テストセンターの2002年及び2003年の中国各地の米品質安全全面調査の結果によれば、米の品質安全の問題の1つは、カドミウム、鉛などの重金属が基準値を超え、基準値超過率が10%を超えたことである。工業由来の廃気・廃水・固体廃棄物、非鉄金属鉱業や汚染灌漑などは、土壌の有毒重金属の含有量が高すぎて、植物体が過量で吸収することを招きやすく、植物や作物における重金属蓄積の最も主要な由来である。そのため、土壌や食品(又は食糧)中の重金属許容量については、各国で厳しい規制基準が設定されている。例えば、中国では、穀物中、カドミウムの制限含有量は0.2mg/kg、鉛の制限含有量は0.2mg/kg、水銀の制限含有量は0.02mg/kgである。
【0003】
米や大小麦などの植物性食品に含まれたり蓄積されたりするカドミウム、鉛や水銀などは主に土壌から根系を通じて吸収され、蒸散流を介して地上部に到達し、最終的に収穫部に蓄積される。研究から明らかなように、土壌中のカドミウム、鉛や水銀の含有量、特に有効状態のものの含有量(すなわち根系に吸収可能)が、土壌中のカドミウム、鉛や水銀の根系への吸収に影響を与える要因である。そのため、さまざまな農学的手段により土壌中の有効状態のカドミウム、鉛や水銀を低減して抑制することは国内外の研究の課題となっている。例えば、酸性及び比較的酸性の土壌では、石灰を施用して土壌pHを上昇させることにより、土壌中のカドミウム、鉛や水銀の有効性が著しく低下し、最終的にはこれらの重金属に対する根系の吸収が低下する。しかしながら、石灰の施用は同様に多くの副作用が存在し、例えば、石灰を施用すると、土壌のpHが上昇して、これらの重金属の有効性を低下させるが、多種類の微量元素、例えば鉄、マンガン、亜鉛などの必須元素の含有量を大幅に低下させ、作物の養分欠乏や生育不良を引き起こしやすく、一方、pH値やpH緩衝能力が地域、土壌タイプによって大きく異なるので、石灰施用量を精密に制御することが困難である。水稲の場合、湛水により土壌の還元性の増加が促進され、土壌中の二価鉄などを増加することにより、カドミウム、鉛や水銀などが硫化物として沈殿することが促進され、それによって、これらの重金属の土壌有効性が低下する一方、これらの元素に対する根系の吸収能力が低下し、土壌有毒重金属に対する根系の吸収や蓄積が著しく低下する。ただし、水稲に対しては、長期間の湛水が水稲の生育に不利であり、作物のヒ素吸収の増加を招きやすい。土壌に固化剤又は吸着剤を添加することによって、土壌中の重金属、例えばカドミウム、鉛や水銀などを結合、固定又は吸着することは国内外の研究の重要な方向である。現在報告されている固化剤又は吸着剤は、主にゼオライト、珪藻土、海泡石、ベントナイト、石灰石、アルカリ性燃え殻などがあるが、効果が理想的でないか、環境に優しくないか、コストが高すぎて普及応用価値がないことから、大量で生産して応用している土壌重金属固定化剤や吸着剤はまだなかった。特許第200710070666.4号は、土壌中のカドミウムが水稲根系の鉄吸収代謝経路を通じて植物体内に入るということを利用し、キレート化第一鉄肥料を土壌に施用するにより米でのカドミウムの蓄積を抑制する農学的技術手段を発明した。特許番号200910097196.Xは、土壌中のカドミウムが水稲根系のマンガン吸収代謝経路を通じて植物体内に入るということを利用し、キレート化(第一)マンガン肥料を土壌に施肥したり葉面へ散布したりすることによって、米でのカドミウムの蓄積を抑制する農学的技術手段を発明した。この2種類の方法では、キレート化第一鉄肥料又はキレート化マンガン肥料は、市販価格が高く、使用量が大きく、全体的なコストが依然として高く、また、実際に使用した結果、この2種類の方法は、異なる種類の土壌、例えば、酸性土壌と中性(弱酸性)土壌、粘性土壌と砂性土壌によって、水稲でのカドミウムへの抑制効果が大きく異なり、その主な原因としては、酸性土壌では、鉄、マンガン、銅、亜鉛などの微量元素が大幅に流失し、水稲の生育不良を引き起こす程度ではないが、単一のキレート化鉄肥料やマンガン肥料を添加しても、水稲でのカドミウムの蓄積を効果的に抑制できず、しかも、この肥料が灌漑水に伴い流失して、効果を失い、さらに、水稲のカドミウム吸収が増加する現象さえ現れることが発生しやすい。砂性土の場合は、浸水現象が深刻であるため、施用されるキレート化鉄肥料やマンガン肥料は活性が非常に高いことから、田圃の浸水に伴って流失しやすく、効果を失ってしまう。近年、既存の多くの研究から、土壌中のカドミウムは鉄代謝系、マンガン代謝系を介して根系に吸収されるだけでなく、銅、亜鉛代謝系を介しても吸収されることが明らかになり、例えば、すでにクローニングされた鉄-マンガン-銅-亜鉛トランスポーターには、OsNRAMP1、OsNRAMP5、OsHMA2、OsHMA3、OsIRT1、OsIRT2、OsMTP9などがあり、これらのタンパク質はすべてカドミウムを輸送することができる。科学の進歩に伴い、さらに、鉄、マンガン、銅、亜鉛に対する農作物(水稲)の根系の吸収と蓄積には、相互に制御し相互に制約するような動的平衡が存在することを発見し、これも、キレート化鉄肥料やマンガン肥料のみを用いると、微量元素間の動的平衡が崩れ、カドミウムが他の微量元素経路を介して根系に吸収される可能性があることを分子生物学的レベルで解釈している。このことから、水稲でのカドミウムの吸収と蓄積の抑制は複雑な微量元素平衡の過程であり、土壌微量元素の有効性をどのように維持するかの問題でもあり、全体として有効状態の鉄、マンガン、銅、亜鉛の動的平衡を高く維持しなければならないことを示している。要するに、現在、国内外では、水稲のカドミウム蓄積を抑制するための、広範な適応性を有する方法及び技術がなかった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来技術問題に対して、本発明の設計の目的は、施用しやすく、安価で、重金属カドミウム汚染を効果的に低減できる水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料、その製造方法、及び施用方法を設計して提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の原理は以下のとおりである。カドミウムに対する植物の根系の吸収及び植物の可食部位でのカドミウムの蓄積は、通常、土壌中の有効状態カドミウムの含有量、カドミウムに対する根系の吸収能力、及び植物体中のカドミウムの可食部位への移動能力に関係している。土壌中の有効状態カドミウム含有量は、主にpHの調整及び不動態化剤の施用などにより制御されるが、現在国内外に広く施用され且つ副作用のない関連技術はまだ存在しない。水稲の根系の土壌カドミウム吸収及び植物体中のカドミウムの可食部位への移動の生理分子的メカニズムから着手して、水稲の生産過程における農学的手段、微量元素の土壌化学的挙動と組み合わせて、根系により吸収されるカドミウムと他の元素との競合的な抑制により、根系のカドミウム吸収能力を抑制し、さらに水稲の根系カドミウム吸収及び植物体(米を含む)でのカドミウム蓄積を低減させる。
【0006】
具体的な原理は以下のとおりである。
[1.水稲株のカドミウム吸収及び輸送の生理分子的メカニズム、すなわち水稲のカドミウム蓄積と輸送に関連する遺伝子ネットワークの制御原理]
カドミウムは、二価状態の遷移元素である。多くの研究から明らかなように、土壌中のカドミウムは、主に水稲(他の作物の場合は類似)の根系細胞膜上の鉄、マンガン、亜鉛などの微量元素代謝系における二価金属イオントランスポーターを介してCd2+の形態で根系に吸収される。現在、Cd2+輸送能を有する二価金属イオン輸送能を備えるトランスポーター(又は遺伝子)は10数個発見されており、その中でも、比較的重要なものとしてOsIRT1、OsIRT2、OsHMA2、OsHMA3、OsLCT1、OsNRAMP1、OsNRAMP5、OsMT9などがある。これらのトランスポーターは二価金属イオンに対する輸送選択性が低く、多くの二価金属イオン、主にCd2+、Mn2+、Fe2+、Zn2+、Cu2+などを輸送することができる。例えばOsNRAMP1は鉄吸収代謝系と考えられ、Cd2+、Fe2+(第一鉄イオン)などの二価金属イオンを輸送する機能を有し、OsNRAMP5は通常マンガン吸収代謝系と考えられ、強いCd2+、Mn2+、Fe2+輸送能力などを有する。これらの二価金属イオントランスポーターのもう一つの顕著な特徴は、これらのトランスポーター遺伝子の発現が環境と植物体の関連微量元素の含有量(又は定常状態)によって制御されることである。例えば、土壌中の有効状態鉄イオン(Fe2+又はFe3+))を高めるか、又は植物体中の鉄元素の定常状態を改善することにより、OsNRAMP1タンパク質遺伝子、及びOsIRT1、OsIRT2などの他の二価金属イオントランスポーター遺伝子の一部の発現を含む鉄吸収代謝系全体の発現を大幅に低下させることができ、一方、土壌中の有効状態Mn2+含有量を向上させると、OsNRAMP5タンパク質遺伝子の発現を大幅に低下させることができ、土壌中の有効状態亜鉛の含有量を向上させると、同様にCd2+輸送機能を有するOsZIPファミリータンパク質遺伝子の発現を大幅に低下させることができ、有効状態の銅の向上も同様である。したがって、土壌中の有効状態の鉄、マンガン、銅、亜鉛の含有量を大幅に向上させることで、関連するトランスポーターのカドミウムの吸収・輸送を競合的に抑制するだけでなく、根系における関連するトランスポーター遺伝子の発現レベルを低下させることができ、根系における関連するトランスポーターの数及びカドミウムの吸収輸送経路を低下させる。その結果、植物体でのカドミウム蓄積レベルを大幅に低下させることができる。
【0007】
現在、植物体中のカドミウムの可食部位への移動も二価金属イオントランスポーターを介して行われていることが知られている。例えばOsNRAMP5は根系、茎葉、穂頸、籾に発現させ、カドミウムの籾への移動を含む重要な元素輸送作用を果たしている。植物体に鉄、マンガン、銅、亜鉛が多く蓄積されることによっても、輸送機能を競争的に抑制し、カドミウム輸送経路を低下させることができる。
【0008】
[2.どのように土壌中の微量元素(鉄、マンガン、銅、亜鉛など)の有効性を高めるか、すなわち土壌元素の平衡原理]
通常、農作物の生産過程において、特に食糧作物、例えば水稲、大小麦、トウモロコシなどの場合は、土壌中の微量元素の含有量、特に有効状態の含有量に注目することは少なく、微量元素(微量元素肥料)を使用しても、基肥深施用や葉面散布(果菜などの経済作物)により行われる。微量元素は基肥として使用すると、土壌粒子に吸着固定されて有効性を失いやすい。例えば、日本の科学者は、土壌に0.3%と高いマンガンを用いると水稲のカドミウム蓄積を抑制できると提案している。これは、ほとんどのマンガンが土壌に固定されて効果を失うためである。水稲生産の特徴に応じて、2種類の方法を組み合わせることで以上の問題を解決することができる。(1)微量元素を有機肥料(又は生物藁)と適切な割合で配合して均一に混合し、顆粒化する(農家による施用を容易にする)。有機質の腐敗過程で大量の還元性物質と各種の有機酸が発生し、これらの元素と結合し、高濃度の遊離二価状態を長期間維持し、つまり、有効性を維持する。(2)水稲の生産には、大量の水が必要であり、次のような部分に大きく分ける。水稲の成長前期には、水田はほぼ湛水状態にあり、分げつが十分になると、排水して田を干すことで分げつを制御し、その後、再び水を湛えて(このときに分げつ末期又は穂ばらみ初期)、水稲の出穂、登熟まで維持し、後期収穫を行うために成熟後期に排水する。このような水稲生産の特徴を利用して、上記顆粒有機肥料を追肥として施用することにより、顆粒有機肥料が土壌表面にあり腐敗しやすく、微量元素肥料を土壌表面の水に溶解させ、それによって、微量元素肥料の濃度及び有効性を大幅に向上させる。また、水稲の根系のほとんどが表土層20cm内にあり、特に田を干して水を再び湛えた後、水稲は土壌表面で大量の根系を新しく成長させ、微量元素肥料を吸収して利用しやすくなる。全体として微量元素肥料の有効性を大幅に向上させ、微量元素肥料に対する根系の吸収・利用を大幅に向上させる。
【0009】
[3.有機肥料の微量元素の配合原理、すなわち水稲株の養分や微量元素の平衡原理]
微量元素を含め、いかなる生物体が吸収して蓄積した元素にも所定の割合があり、しかも相互に協調して、相互に制約する。研究により、植物体の根系は鉄、マンガン、銅、亜鉛を吸収する過程においても相互に競争して制約する状態が存在することが非常に明らかになる。例えば、根系が鉄を大量に吸収する場合、マンガン、銅、亜鉛の吸収は相対的に低下し、逆の場合も同様である。吸収の観点から、これらの間には競争作用が存在し、それぞれの生理分子的メカニズムに相互に影響を与え、植物体全体から見ると、これらの間には基本的に協同関係がある。田圃で収穫したインディカ稲の稲わら(茎葉)69株とジャポニカ稲の稲わら51株の鉄、マンガン、銅、亜鉛などの元素の含有量を測定したところ、インディカ稲の鉄、マンガン、銅、亜鉛の含有量については、鉄:マンガン:亜鉛:銅の割合はほぼ10:20~35:0.5~2:0.01~0.1であるのに対し、ジャポニカ稲の稲わらの鉄、マンガン、銅、亜鉛については、鉄:マンガン:亜鉛:銅の割合はほぼ10:25~40:0.5~2:0.01~0.1である。一方、インディカ稲の米(精米)中の鉄:マンガン:亜鉛:銅の割合はほぼすべて10:8~13:7~12:1~5である。
【0010】
[4.有機肥料の施用時期の原理、すなわち水稲のカドミウム吸収と蓄積の動態過程の原理]
水稲の成長前期では、バイオマスが小さく、水田は長期的に湛水状態にあるため、植物体のカドミウムの蓄積は比較的少なく、生育後期では、バイオマスが多く、時間が長く、水稲のカドミウム蓄積の重要な時期であり、このため、分げつ末期(穂ばらみ初期)と登熟期が最も重要な時期であると推測される。また、水稲登熟前に、水稲の根系が活発であり、吸収した養分は主に植物の生育に用いられる微量元素を含み、一方、水稲の登熟(穂揃い期)後、根系の活力は大幅に低下し、主に水分と鉱物質養分を吸収して、光合成に用いるとともに、一部を籾へ輸送する。90%以上の籾中のカドミウムは穂揃い期前の水稲株中に蓄積されたカドミウムから輸送されたものであると考えられているが、籾中のカドミウムの約50%は、登熟期に根系が直接吸収したカドミウムからのものであるとされている研究もある。そのため、穂揃い期前に、苗期、分げつ末期を含めて施用した有機肥料に含まれる鉄、マンガン、銅、亜鉛の配合比は、水稲の生育を満たす基準に従って、水稲株でのカドミウム蓄積を制御し、穂揃い期から施用する有機肥料の鉄、マンガン、銅、亜鉛の配合比は、籾における元素の割合を満たすのが適当であるが、稲わらの鉄、マンガン、銅亜、鉛の配合比を排除しないと考えられる。
【0011】
[5.有機酸とキレート剤を添加する原理、すなわち根系養分(微量元素)の吸収形態メカニズム]
有機肥料の由来及びタイプが異なることから、有機質の腐敗速度、程度や腐敗産物が異なるため、微量元素の有効性を保証するために適量の有機酸とキレート剤を添加する必要がある。例えば、市販有機肥料、低セルロース有機質を主とする有機肥料は、腐敗しやすく、大量の有機酸を発生させ、微量元素肥料と大量で結合して、その有効性を維持することができるが、繊維藁を主とする有機肥料及び未腐熟の有機肥料は、腐敗速度が比較的低く、有機酸の発生量が少なく、有機酸とキレート剤を添加することで微量元素肥料の有効性を大幅に高め、繊維藁有機肥料の不足を補うことができる。
【0012】
以上に存在する技術課題を解決して上記原理を利用するために、本発明は以下の方案を用いる。
含水率15%の有機物100kgに対し、鉄含有量で計算する鉄塩を0.05~5kg添加し、鉄含有量で計算する鉄塩:マンガン含有量で計算するマンガン塩:亜鉛含有量で計算する亜鉛塩:銅含有量で計算する銅塩の質量比が、1:0.2~8:0.08~2:0.001~0.5となるように、マンガン塩、亜鉛塩、及び銅塩を添加する、ことを特徴とする前記水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0013】
前記鉄含有量で計算する鉄塩:マンガン含有量で計算するマンガン塩:亜鉛含有量で計算する亜鉛塩:銅含有量で計算する銅塩:有機酸及びその塩類:有機キレート剤の質量比が1:0.2~8:0.08~2:0.001~0.5:0~1:0~1となるように、有機酸、その塩類及び有機キレート剤をさらに添加する、ことを特徴とする前記水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0014】
前記有機肥料中、鉄含有量で計算する鉄塩:マンガン含有量で計算するマンガン塩:亜鉛含有量で計算する亜鉛塩:銅含有量で計算する銅塩の質量比が、1:0.3~3:0.15~1:0.01~0.3である、ことを特徴とする前記水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0015】
前記有機物は、菜種ミール、大豆ミール、大豆粕、稲藁、大小麦藁、サトウキビくず、バガス、アブラナ藁、トウモロコシ藁、ソルガム藁、おがくず、雑草藁、レンゲソウ藁、アルファルファ藁、古紙又はホテイアオイのうちの1種以上の物質であり、
又は、前記有機物は家畜糞尿を主原料とする市販有機肥料である、ことを特徴とする前記水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0016】
前記鉄塩は、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸第一鉄、リンゴ酸第二鉄、リンゴ酸第一鉄、シュウ酸第二鉄、シュウ酸第一鉄、硫化第一鉄、エチレンジアミン四酢酸第二鉄、及びエチレンジアミン四酢酸第一鉄のうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする前記水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0017】
前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、クエン酸マンガン、リンゴ酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫化マンガン又はエチレンジアミン四酢酸マンガンのうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする前記水稲のカドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0018】
前記亜鉛塩は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、硫化亜鉛又はエチレンジアミン四酢酸亜鉛のうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする前記水稲のカドミウム重金属汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0019】
前記銅塩は、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、クエン酸銅、リンゴ酸銅、シュウ酸銅、硫化第一銅又はエチレンジアミン四酢酸銅のうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする前記水稲のカドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0020】
前記有機酸及びその塩類は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム;リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸カルシウム、リンゴ酸マグネシウム;シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸カルシウム、シュウ酸マグネシウムのうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする前記水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0021】
前記有機キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、及びエチレンジアミン四酢酸マグネシウムのうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする前記水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0022】
前記質量の有機物、鉄塩、マンガン塩、亜鉛塩、銅塩、有機酸及びその塩類、有機キレート剤を混合して均一に撹拌し、粉末状にするステップ1)と、
ステップ1)の均質な粉体を、押出機又は造粒機を用いて粒径0.3~1.2cmの顆粒にすると、水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料を得るステップ2)と、を含む、ことを特徴とする前記水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料の製造方法。
【0023】
A.早稲の場合は、田圃耕起時又は苗移植後10日以内に追肥を行い、田圃1ムー(畝)当たり基肥を0~500kg、好ましくは5~50kg施肥し、穂ばらみ期には、追肥として0~500kg、好ましくは5~100kgを施肥し、登熟期には、0~500kg、好ましくは5~50kgを施肥し、
B.晩稲の場合は、田圃耕起時又は苗移植後10日以内に追肥を行い、田圃1ムー当たり基肥を0~500kg、好ましくは10~100kg施肥し、穂ばらみ期には、追肥として0~500部、好ましくは10~100kgを施肥し、登熟期には、0~500kg、好ましくは10~100kgを施肥し、
C.一毛作稲の場合は、田圃耕起時又は苗移植後10日以内に追肥を行い、田圃1ムー当たり基肥として0~500kg、好ましくは25~100kgを施肥し、穂ばらみ期には、追肥として0~500kg、好ましくは25~100kgを施肥し、登熟初期には、0~500kg、好ましくは25~100kgを施肥する、ことを特徴とする前記水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する有機肥料の施用方法。
【発明の効果】
【0024】
本発明は、以下の有益な効果を有する。
(1)この水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する有機肥料は、設計が合理的であり、製造されやすく、原料が入手しやすく、田圃へ施用するときの操作が簡単である。土壌の有機質を増加させ、土壌の理化学的環境を改善するたけでなく、さらに、土壌中の重金属カドミウムの有効性の低減、水稲根系カドミウム吸収の阻止、水稲株の栄養状態を改善して根系中のカドミウムの地上部(稲わら)への輸送を阻止すること、稲わら中のカドミウムの籾への移動の阻止など、すべてのカドミウム吸収・輸送経路の上で土壌中のカドミウムの籾への輸送・移動を遮断し、さらに、籾でのカドミウム蓄積を低減させ、重金属カドミウム汚染を低減させることができる。そして、本有機配合肥料は、土壌、水稲、籾に対してはいかなる不利な影響もなく、さらに米の品種(米の鉄、マンガン、銅、亜鉛などの微量元素の含有量を大幅に高める)と水稲の収量を著しく改善することができる。
【0025】
(2)本発明の有機肥料は、水田土壌における重金属カドミウムの化学過程、水稲根系の吸収過程及び植物体のカドミウム輸送過程に基づいて開発されたものであり、施用しやすく、使用量が低く、価格が低く、使用コストが低く、中国の重、中、軽度のカドミウム汚染農地に普遍的に適用でき、広い適応性を有する。
【発明を実施するための形態】
【0026】
以下、本発明の具体的な実施形態についてさらに詳細に説明し、本発明の技術案をより容易に理解して把握できるようにする。
【0027】
[実施例1:水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料]
含水率15%の市販有機肥料1000kg(乳牛の糞を主原料とし、窒素、リン、カリウムともに5%程度、カドミウム含有量0.8mg/kg未満)に対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg添加した。
【0028】
該有機肥料は、以下のステップにより製造される。
1)前記重量部の有機物、鉄塩、マンガン塩、亜鉛塩、銅塩を混合して均一撹拌し、粉末状にした。
2)ステップ1)の均質な粉体を、押出機又は造粒機を用いて粒径0.3~1.2cmの顆粒物にすると、水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する有機肥料を得た。
【0029】
[具体実験1:新規有機肥料による水稲のカドミウム蓄積抑制の実験研究]
実施例1で製造した有機肥料を用いて、2016年に杭州富陽で早稲のカドミウム汚染抑制実験を行った。水田のカドミウム総含有量は0.6mg/kg、土壌はpH約6.0の粘土質である。水稲品種は中嘉早17及び輻品36であり、面積20平方メートルの分割試験区の比較実験を設置した。3月30日に播種し、4月26日に移植した。肥料処理については、空白対照、市販有機肥料対照処理、実施例1で製造した有機肥料処理、等量微量元素処理を設置して、3回繰り返した。具体的には、市販有機肥料対照処理では、苗期(移植後10日)、穂ばらみ期、及び登熟初期に、分割試験区につき、市販有機肥料(対照)を生育期ごとに3kgずつ施肥し、実施例1で製造した有機肥料処理では、苗期(移植後10日)、穂ばらみ期及び登熟初期に、実施例1で製造した有機肥料を3kgずつ追肥した。また、毎回施肥した後、田圃を1~2cm湛水し、湛水期間を1週間とした。収穫期に、各区ごとに5点でサンプリングする方法で籾を収穫し、常法で乾燥させ、ミーリングして米とした後、粉砕(すりおろし)して玄米粉にした。濃塩酸、濃硝酸を配合して王水を得て、前処理を行った。ICP-OESを用いて硝化液のカドミウム含有量を測定した。実験結果を以下に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
その結果から明らかなように、空白対照に比べて、市販有機肥料処理では、両品種の水稲の玄米のカドミウム含有量に与える影響に差はあったが、有意ではなく、すべて中国の基準である0.2mgkgを超えていた。一方、実例1の有機質肥料で処理したところ、空白対照のカドミウム及び市販有機質肥料処理に比べて大幅に低下し、玄米のカドミウム含有量は両品種とも0.2mg/kg未満であった。また、その結果から、このようなカドミウム含有量の低下の原因は有機質肥料への添加成分によることを直接的に示した。同量の微量元素処理を施した場合、両品種ともカドミウム含有量が低下したが、有意ではなく、これは、鉄、マンガン、銅、亜鉛などが純粋な無機状態で田圃に施用されたため、土壌により固定されて活性を失いやすくなるからであると考えられる。
【0032】
該実施例では、鉄塩は、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸第一鉄、リンゴ酸第二鉄、リンゴ酸第一鉄、シュウ酸第二鉄、シュウ酸第一鉄、硫化第一鉄、エチレンジアミン四酢酸第二鉄、及びエチレンジアミン四酢酸第一鉄のうちの1種以上の物質を用い、マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、クエン酸マンガン、リンゴ酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫化マンガン又はエチレンジアミン四酢酸マンガンのうちの1種以上の物質を用い、亜鉛塩は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、硫化亜鉛又はエチレンジアミン四酢酸亜鉛のうちの1種以上の物質を用い、銅塩は、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、クエン酸銅、リンゴ酸銅、シュウ酸銅、硫化第一銅又はエチレンジアミン四酢酸銅のうちの1種以上の物質を用い、その結果、実施例1と同様の技術的結果を得ることができ、水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制することができる。
【0033】
[具体実験2:新規有機肥料による水稲のカドミウム蓄積抑制の施用時期実験]
2016年に、杭州富陽の上記水田で、中嘉早17と輻品36を用いて晩稲の秋季耕うん実験を行った。分割試験区実験を採用し、1区当たり20平方メートルとした。実験には空白対照と実例1の有機肥料の各時期追肥処理を設置し、時期別の追肥処理には、苗期追肥、穂ばらみ期追肥、登熟初期追肥、苗期+穂ばらみ期追肥、苗期+穂ばらみ期+登熟期追肥を含み、毎回の追肥には分割試験区ごとに3kgを施用し、合計6つの処理(空白対照を含む)を行った。また、毎回施肥した後、田圃を1~2cm湛水し、湛水期間を1週間とした。収穫期に、各区に5点でサンプリングする方法で籾を収穫し、常法で乾燥させ、ミーリングして米とした後、粉砕(すりおろし)して玄米粉にした。濃塩酸、濃硝酸を配合して王水を得て、前処理を行った。ICP-OESを用いて硝化液のカドミウム含有量を測定した。実験結果を以下に示す。
【0034】
【表2】
【0035】
表2は、いずれの生育期に新規有機肥料を施用した場合にも、2種の水稲の玄米のカドミウム含有量が有意に低下したことを示している。しかし、追肥の時期によって米のカドミウム蓄積には有意な差があった。その中でも、穂ばらみ期追肥、苗期+穂ばらみ期追肥、苗期+穂ばらみ期+登熟期追肥の3つの処理効果が最も良く、苗期+穂ばらみ期追肥処理後、玄米のカドミウム含有量は両品種ともに0.2mg/kg未満であった。また、登熟期追肥は米のカドミウム含有量を低下させる作用があるものの、効果が劣り、更に穂ばらみ期追肥と苗期+穂ばらみ期+登熟期追肥の2つの処理を比較した結果、2つの処理の効果には有意な差がなかった。これには2つの可能性が考えられる。1.登熟期追肥は水稲のカドミウム蓄積の制御にとって重要な時期ではない。2.登熟期では、根系の活力はすでに大幅に弱まり、主に穀粒の需要を満たすために水分と一部の鉱物質養分を吸収する役割を果たし、更に、実例1の有機肥料の添加成分の割合は登熟期の応用に適さない可能性もある。また、穂ばらみ期は水稲のカドミウム蓄積を抑制するのに最も重要な時期であることが分かった。要するに、本試験では、苗期(苗移植後10日目、苗移植後10日)+穂ばらみ期追肥は水稲のカドミウム蓄積抑制に最も有効であると考えられた。
【0036】
[具体実験3:各割合の微量元素を添加した有機肥料による水稲のカドミウム蓄積抑制の研究]
本試験では、2018年に杭州富陽で早稲のカドミウム抑制実験を行った。実例1の市販有機肥料を基準とした。試験には、微量元素を異なる割合で添加した有機肥料を試作した。(1)市販有機肥料1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg添加し、有機肥料A(すなわち実例1の有機肥料)とした。(2)市販有機肥料1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で30kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg添加し、有機肥料Bとした。(3)市販有機肥料1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で30kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で10kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg添加し、有機肥料Cとした。(4)市販有機肥料1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で30kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で30kg、硫酸銅を銅換算で1.0kg添加し、有機肥料Dとした。(5)市販有機肥料1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で10kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で30kg、硫酸銅を銅換算で1.0kg添加し、有機肥料Eとした。(6)市販有機肥料1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で10kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で10kg、硫酸銅を銅換算で1.0kg添加し、有機肥料Fとした。(7)市販有機肥料1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で180kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で10kg、硫酸銅を銅換算で1.0kg添加し、有機肥料Hとした。合計7種類の有機肥料がある。中嘉早17と輻品36を実験材料とし、処理については、空白対照と苗期+穂ばらみ期+登熟期追肥(同一種類の有機肥料を追肥する)処理を設置した。処理する際に、1区当たり3kgずつ施用した。また、毎回施肥した後、田圃を1~2cm湛水し、湛水期間を1週間とした。収穫期に、各区に5点でサンプリングする方法で籾を収穫し、常法で乾燥させ、ミーリングして米とした後、粉砕(すりおろし)して玄米粉にした。濃塩酸、濃硝酸を配合して王水を得て、前処理を行った。ICP-OESを用いて硝化液のカドミウム含有量を測定した。実験結果を以下に示す。
【0037】
【表3】
【0038】
表3の結果は、対照に比べて、A~Hの合計7個の異なる微量元素肥料の割合で製造された有機肥料が、すべて水稲の米のカドミウム蓄積に対して有意な効果を示したが、肥料間に有意な差があることを示している。2016年の早稲試験(具体実験1)の結果と同様に、本実験では、A処理(実例1の有機肥料)は両品種の米のカドミウム蓄積に対して顕著に抑制作用を果たした。これに対して、有機肥料H処理は、米中のカドミウムを著しく低下させたが、すべての肥料のうち最も効果が劣り、これは、大量のマンガン含有量が他元素の吸収を抑制し、根系のカドミウム輸送能力を高める可能性が高いことが分かった。一方、有機肥料D処理では、微量元素は通常の藁における元素の割合ではないが、基本的に米中の元素の割合で配合されており、有機肥料B処理と組み合わせると、登熟期も水稲のカドミウム蓄積を抑制する重要な時期であり、特に米中の元素の割合で有機肥料を調製する必要があることがわかった。
【0039】
[実施例2:水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する有機肥料]
含水率15%の稲わら(カドミウム含有量0.6mg/kg未満)又はおがくず(製材所由来)1000kg、又はレンゲソウに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg、クエン酸10kgを添加した。
【0040】
該有機肥料は、以下のステップにより製造される。
1)前記重量部の有機物、鉄塩、マンガン塩、亜鉛塩、銅塩を混合して均一に撹拌し、粉末状にした。
2)ステップ1)の均質な粉体を、押出機又は造粒機を用いて粒径0.3~1.2cmの顆粒物にすると、水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する有機肥料を得た。
【0041】
[具体実験4:異なる有機物の微量元素肥料を担体とすること、及び有機酸の添加による水稲米のカドミウム蓄積への影響]
本実験は、2018年に杭州富陽で行われ、生育期の近い2種類の早稲品種「嘉早32」と「中早22」を実験材料とし、稲わらを有機肥料担体とすること、及び有機酸の添加による水稲米のカドミウム蓄積への影響について研究を行った。以下の6種類の有機肥料を製造した。(1)含水率15%の市販稲わら1000kg(カドミウム0.6mg/kg未満)に対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg、クエン酸を10kg(実例2)添加し、有機肥料Aとした。(2)含水率15%の市販稲わら1000kg(カドミウム含有量0.6mg/kg未満)に対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg(有機肥料Bとした)添加した。(3)含水率15%の市販おがくず1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg、クエン酸を10kg(実例2)添加し、有機肥料Cとした。(24)含水率15%の市販おがくず1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg(有機肥料Dとした)添加した。(3)含水率15%の市販レンゲソウ1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg、クエン酸を10kg(実例2)添加し、有機肥料Eとした。(24)含水率15%の市販レンゲソウ1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg(F有機肥料とした)添加した。空白対照(CK)、有機肥料処理A、B、C、D、E、Fを設置し、分割試験区の面積を20平方メートルとして、3回繰り返し、無作為に処理した。有機肥料の施用時期は苗期+穂ばらみ期+登熟期追肥とし、各時期に3kgずつ追肥した。また、毎回施肥した後、田圃を1~2cm湛水し、湛水期間を1週間とした。収穫期に、各区に5点でサンプリングする方法で籾を収穫し、常法で乾燥させ、ミーリングして米とした後、粉砕(すりおろし)して玄米粉にした。濃塩酸、濃硝酸を配合して王水を得て、前処理を行った。ICP-OESを用いて硝化液のカドミウム含有量を測定した。実験結果を以下に示す。
【0042】
【0043】
表4の結果は、稲わら、おがくず、レンゲソウを微量元素肥料担体とすると、水稲のカドミウム蓄積(有機肥料B、D、F)を効果的に抑制できることを示している。また、稲わらやおがくずを微量元素肥料の担体とした場合、有機酸(クエン酸)(有機肥料A、C)を添加すると、水稲のカドミウム蓄積に対する抑制作用を更に強めることができ、主に、熟成期に繊維化稲わら、おがくずの腐敗過程が比較的に遅いため、微量元素の有効性をある程度で維持することが困難になる可能性が高く、有機酸を添加すると、微量元素の有効性を大幅に高めることができるためであり、一方、レンゲソウを収穫して乾燥させたとき、繊維化程度が低く、腐敗して大量の有機酸を発生させやすく、微量元素の有効性を効果的に高めることができ、さらに田圃で有機酸を継続して使用すると、その作用は十分に明らかではなくなった。また、このことから、カドミウム抑制有機肥料の製造には、クエン酸第一鉄、クエン酸銅、クエン酸マンガン、クエン酸亜鉛又はキレート化鉄-マンガン-銅-亜鉛などの有機酸状態の微量元素肥料が利用できることが示唆された。しかし、このような有機酸状態又はキレート化の微量元素は高価である。
【0044】
[実施例3:水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する有機肥料]
含水率15%のバガス1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg、クエン酸を10kg、又はキレート剤としてEDTA二ナトリウム塩を5kg添加した。
【0045】
該有機肥料は、以下のステップにより製造される。
1)前記重量部の有機物、鉄塩、マンガン塩、亜鉛塩、銅塩、有機酸及びその塩類、有機キレート剤を混合して均一に撹拌し、粉末状にした。
2)ステップ1)の均質な粉体を、押出機又は造粒機を用いて粒径0.3~1.2cmの顆粒物にすると、水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する有機肥料を得た。
【0046】
[具体実験5:バガスを微量元素担体とした有機肥料による水稲のカドミウム抑制への影響]
本実験は2018年に雲南省昆明市のカドミウム汚染農地で実施された。土壌のカドミウム含有量は0.6mg/kgであり、pHは約5.0であり、土壌の質は比較的砂性である。雲南省ではサトウキビが豊富に栽培され、サトウキビのバガスが大量に残り、解決策を探す必要があるという課題に対して行われた。本実験では、以下の2種類の有機肥料を製造した。(1)含水率15%の市販バガス1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg、クエン酸を10kg添加し、有機肥料Aとした(実例3)。(2)含水率15%のバガス1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg、クエン酸の代わりとしてEDTA二ナトリウムを5kg添加し、有機肥料Bとした(実例3)。(3)含水率15%の市販バガス1000kgに対し、硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg添加し、有機肥料Cとした。現地の古い主栽培品種であるディアンファ(dianhua)2号と楚粳4号の両品種のジャポニカ稲品種を材料として、一毛作稲栽培を行い、面積20平方メートルの分割試験区を設置し、処理については、空白対照、有機肥料A処理、有機肥料B処理を設置し、3回繰り返し、無作為に処理した。有機肥料の施用時期は苗期+穂ばらみ期+登熟期追肥とし、各時期に3kgずつ追肥した。また、毎回施肥した後、田圃を1~2cm湛水し、湛水期間を1週間とした。収穫期に、各区ごとに5点でサンプリングする方法で籾を収穫し、常法で乾燥させ、ミーリングして米とした後、粉砕(すりおろし)して玄米粉にした。濃塩酸、濃硝酸を配合して王水を得て、前処理を行った。ICP-OESを用いて硝化液のカドミウム含有量を測定した。実験結果を以下に示す。
【0047】
【表5】
【0048】
表5の結果は、バガスを有機物として製造したカドミウム抑制有機肥料であっても、酸性カドミウム汚染土壌における水稲カドミウム汚染の抑制に非常に有効であることを示している。両品種のカドミウム含有量に対して極めて大きな抑制作用があるだけでなく、田圃では、有機酸を含有する有機肥料は両品種の米のカドミウム含有量を0.2mg/kgという国家基準以下に低下させた。さらに、キレート剤としてEDTA二ナトリウム塩を添加すると、両品種の玄米中のカドミウム含有量はCKよりもはるかに低いだけでなく、クエン酸添加又はクエン酸無添加の有機肥料よりも有意に低かった。キレート剤としてのEDTAは、鉄、マンガン、銅、亜鉛などとキレート状態を形成しやすく、有効状態を長期間維持することができる。また、EDTAはカドミウムと結合して安定なキレート状態を形成することもでき、より砂性の土壌の浸透性が強いため、逆に土壌中の総カドミウム含有量が減少した(データは表に示されていない)。このことから、両品種の玄米中のカドミウム含有量は、高いレベルの鉄、マンガン、銅、亜鉛の有効状態の長期間の維持と総カドミウムの減少という両方の原因で大きく低下した可能性が高い。しかし、EDTAなどのキレート剤にも一定の問題が存在し、一つは、土壌中で分解しにくいことであり、もう1つは、クエン酸などの有機酸よりも価格がはるかに高いことである。
【0049】
[具体実験6:水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料の微量元素の極値比率の探究]
本実験は2019年に杭州市富陽区のカドミウム汚染農地で行われ、水田の土壌pHは約5.0、土壌Cd含有量は約0.40mg/kgであり、面積20平方メートルの分割試験区を設置し、3回繰り返し、実例1と空白を二重対照とし、異なる微量元素比率の極値を設計し、有機肥料の微量元素比率による水稲のカドミウム汚染抑制への影響を探究し、品種は日本晴(ジャポニカ稲)と9311(インディカ稲)であり、一毛作水稲栽培を行った。施肥時期は苗期+穂ばらみ期+登熟期追肥とし、各分割試験区につき、時期ごとに3kgずつ施用し、施肥後は田圃を1週間湛水し、残りの管理は現地の農作手段と完全に同様であった。
【0050】
含水率15%の市販有機肥料1000kg(乳牛糞を主原料とし、窒素、リン、カリウムはいずれも5%程度、カドミウム含有量は0.8mg/kg未満)に対し、以下の複数種類の微量元素の極値比率の有機肥料を設計した。(1)硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg(実例1、対照とする)を添加し、(2)硫酸第一鉄を鉄換算で0kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg(Fe0とした。)を添加し、(3)硫酸第一鉄を鉄換算で300kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg(Fe300とした。)を添加し、(4)硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で0kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg(Mn0とした。)を添加し、(5)硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で450kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg(Mn450とした。)を添加し、(6)硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で0kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg(Zn0とした。)を添加し、(7)硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で150kg、硫酸銅を銅換算で0.5kg(Zn150とした。)を添加し、(8)硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で0kg(Cu0とした。)を添加し、(9)硫酸第一鉄を鉄換算で30kg、硫酸マンガンをマンガン換算で90kg、硫酸亜鉛を亜鉛換算で5kg、硫酸銅を銅換算で50kg(Cu50とした)添加した。
【0051】
【表6】
【0052】
その結果は、実例1の有機肥料処理後、日本晴と9311の玄米のカドミウム含有量が基準値を超えていたが、空白対照よりはるかに低かったことを示している。Fe0処理後、両品種の玄米のカドミウム含有量が空白対照よりはるかに低かったが、実例1よりもはるかに高かった。また、Fe300処理後、日本晴の玄米のカドミウム含有量は空白対照より低かったが、有意ではなく、一方、9311玄米は空白対照より高く、これは、第一鉄によって根系表面の鉄膜が増加し、カドミウム吸収が促進されることによる可能性がある。Mn0とMn450で処理した場合、玄米中のカドミウム含有量は、両品種とも空白対照より低かったが、減少程度は小さく、そして実例1の対照よりもはるかに高く、このことから、マンガンはカドミウム抑制に対して重要な役割を果たしていることが示された。Zn0処理では、2種類の玄米のカドミウム含有量は空白対照よりも低下し、且つ有意レベルに達しているものの、実例1の対照よりもはるかに高く、一方、Zn150処理では、両品種の玄米は空白対照と比較してほとんど差がなかったが、玄米中の鉄分含有量から見ると(データは表に示されていない)、大量の亜鉛処理により鉄含有量が大幅に低下しており、根系鉄吸収系におけるカドミウム吸収輸送機能を有するタンパク質遺伝子の発現を強化させたことが原因である可能性がある。Cu0とCu50の処理は、いずれも両品種のカドミウム含有量を大幅に低下させたが、いずれも実例1より著しく高かった。Cu50で処理した両品種の米のカドミウム含有量の低下幅はCu0よりはるかに低かった。その原因としては、土壌中の銅含有量は相対的に低いが、米を含む水稲株の銅需要量は非常に低く、土壌中の銅は水稲成生育の需要を満たすことができると推測され、銅を大量に添加すると、銅イオンは水稲の根系鉄の吸収を強く抑制し、同様に植物株中の鉄、マンガン、亜鉛の含有量を大幅に低下させ、その原因は亜鉛の大量施用の場合一致する可能性が高かった。
【0053】
[具体実験7:カドミウム抑制有機肥料による水稲のカドミウム蓄積抑制の再現性検証実験]
2019年に杭州富陽のカドミウム汚染田圃で「中嘉早17」と「輻品36」の両品種の早稲品種を栽培し、面積20平方メートルの分割試験区の比較実験を行い、3回繰り返し、ランダムに配置した。肥料処理については、空白対照、実施例1の有機肥料処理という2つの処理を設置し、苗期(移植後10日)、穂ばらみ期及び登熟初期に有機肥料を追肥し、具体的には、分割試験区につき、生育期ごとに3kgずつ施肥し、また、毎回施肥した後、田圃を1~2cm湛水し、湛水期間を1週間とした。収穫期に、地区ごとに5点でサンプリングする方法で籾を収穫し、常法で乾燥させ、ミーリングして米とした後、粉砕(すりおろし)して玄米粉にした。濃塩酸、濃硝酸を配合して王水を得て、前処理を行った。ICP-OESを用いて硝化液のカドミウム含有量を測定した。実験結果を以下に示す。
【0054】
【表7】
【0055】
表7から、有機肥料(実例1)処理後、両品種のカドミウム含有量は69.59%と85.06%と大幅に減少した。ただし、2019年上半期の早稲生育期間中、長期の低温多雨により、CKの米カドミウム含有量は0.2kg/kgよりもはるかに低かった。ただし、有機肥料は水稲のカドミウム蓄積に対する抑制作用が非常に有効であることは明確であった。
【0056】
[具体実験8:カドミウム汚染田圃の一毛作稲へのカドミウム抑制有機肥料の応用の研究]
2019年に杭州富陽のカドミウム汚染田圃で主栽培水稲品種である春優84(ジャポニカ稲)と中浙優8号(インディカ稲)の2種類の一毛作稲品種を栽培した。土壌のカドミウム含有量は約1.0mg/kgであり、土壌pHは約6.5であった。面積160平方メートルの大区画地の比較実験を採用し、肥料処理については、空白対照、実施例1の有機肥料処理という2つの処理を設置し、苗期(移植後10日)、穂ばらみ期及び登熟初期に有機肥料を追肥し、分割試験区につき、生育期ごとに24kgずつ施肥し、また、毎回施肥した後、田圃を1~2cm湛水し、湛水期間を1週間とした。収穫期に、地区ごとに5点でサンプリングする方法で籾を収穫し、常法で乾燥させ、ミーリングして米とした後、粉砕(すりおろし)して玄米粉にした。濃塩酸、濃硝酸を配合して王水を得て、前処理を行った。ICP-OESを用いて硝化液のカドミウム含有量を測定した。実験結果を以下に示す。
【0057】
【表8】
【0058】
表8から分かるように、両品種の一毛作稲のカドミウム含有量は中国の基準である0.2mg/kgの3倍以上に達し、有機肥料(実例1)で処理したところ、カドミウム含有量は62.42%と69.47%と大幅に低下したが、両品種の米のカドミウム含有量はまだわずかに基準値を超えていた。
【0059】
[具体実験9:酸性カドミウム汚染土壌へのカドミウム抑制有機肥料の応用]
本試験は2019年に湖南省長沙市のカドミウム汚染酸性土壌で実施された。土壌はCd≒0.40mg/kg、pH≒5.0であった。実験は臨時のため、カドミウムの蓄積の差が極めて大きい早稲品種の二九南1号と輻品36という2つの品種を栽培し、晩稲の秋季耕うんを行い、大区画地の比較実験を行った。試験の総面積は2ムーであり、大区画地の面積は品種ごとに0.5ムーである。カドミウム抑制有機肥料(実例1)は穂ばらみ期のみ1回施肥した。施肥後は、田圃を1~2cm湛水し、湛水期間を1週間とした。収穫期に、1区ごとに5点でサンプリングする方法で籾を収穫し、常法で乾燥させ、ミーリングして米とした後、粉砕(すりおろし)して玄米粉にした。濃塩酸、濃硝酸を配合して王水を得て、前処理を行った。ICP-OESを用いて硝化液のカドミウム含有量を測定した。実験結果を以下に示す。
【0060】
【表9】
【0061】
表9から分かるように、両対照の米のカドミウム含有量がすべて基準値を超え、一方、穂ばらみ期にのみカドミウム抑制有機肥料を1回施用した場合、米のカドミウム含有量は大幅に低下し、いずれも基準値を超えなかった。これは、酸性土壌の微量元素のバランスの崩れに関連する可能性があり、特にマンガン、亜鉛などの元素が酸性条件下で非常に浸透・流出しやすい。有機肥料を施用すると、多種の微量元素を大量で補充するだけでなく、長期間にわたって高有効性を維持するためであった。
【0062】
[具体実験10:カドミウム抑制有機肥料の田圃での試験デモンストレーション]
本試験は2019年に浙江省金華市湯渓鎮のカドミウム汚染区で実施され、デモンストレーション面積は100ムーである。土壌Cd≒0.45mg/kg、土壌pH≒5.0。具体的には、面積が約2ムーの田圃を4つ選んで、それぞれの田圃を2つに分けて、これらの中間に防水用畝を作った。一方を対照(CK)とし、他方では有機肥料(実例1)を施用した(4重複に相当)。苗期、穂ばらみ期及び登熟期に、1ムー当たり100kgを施肥し、施肥後、畑を1~2cm湛水し、湛水期間を1週間とした。収穫期に、1重複ごとに5点でサンプリングし、一つのサンプルに統合し、籾を収穫し、常法で乾燥させ、ミーリングして米とした後、粉砕(すりおろし)して玄米粉にした。濃塩酸、濃硝酸を配合して王水を得て、前処理を行った。ICP-OESを用いて硝化液のカドミウム含有量を測定した。実験結果を以下に示す。
【0063】
【表10】
【0064】
[具体実験11:浙江省金華市]
本試験は2019年に浙江省金華市羅埠鎮のカドミウム汚染地区で実施され、デモンストレーション面積は100ムーである。土壌Cd≒0.35mg/kg、土壌pH≒5.0。具体的には、面積が約2ムーの田圃を4つ選んで、それぞれの田圃を2つに分けて、これらの中間に防水用畝を作った。一方を対照(CK)とし、他方では有機肥料(実例1)を施用した(4重複に相当)。苗期、穂ばらみ期、及び登熟期に、1ムー当たり100kgずつ施肥した。施肥後は田圃を1~2cm湛水し、湛水期間を1週間とした。収穫期に、1重複ごとに5点でサンプリングし、一つのサンプルに統合し、籾を収穫し、常法で乾燥させ、ミーリングして米とした後、粉砕(すりおろし)して玄米粉にした。濃塩酸、濃硝酸を配合して王水を得て、前処理を行った。ICP-OESを用いて硝化液のカドミウム含有量を測定した。実験結果を以下に示す。
【0065】
【表11】
【0066】
(付記)
(付記1)
水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料であって、
含水率15%の有機物100kgに対し、鉄含有量で計算する鉄塩を0.05~5kg添加し、鉄含有量で計算する鉄塩:マンガン含有量で計算するマンガン塩:亜鉛含有量で計算する亜鉛塩:銅含有量で計算する銅塩の質量比が、1:0.2~8:0.08~2:0.001~0.5となるように、マンガン塩、亜鉛塩、及び銅塩を添加する、ことを特徴とする新規有機肥料。
【0067】
(付記2)
前記鉄含有量で計算する鉄塩:マンガン含有量で計算するマンガン塩:亜鉛含有量で計算する亜鉛塩:銅含有量で計算する銅塩:有機酸及びその塩類:有機キレート剤の質量比が1:0.2~8:0.08~2:0.001~0.5:0~1:0~1となるように、有機酸、その塩類及び有機キレート剤をさらに添加する、ことを特徴とする付記1に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0068】
(付記3)
前記有機肥料中、鉄含有量で計算する鉄塩:マンガン含有量で計算するマンガン塩:亜鉛含有量で計算する亜鉛塩:銅含有量で計算する銅塩の質量比が、1:0.3~3:0.15~1:0.01~0.3である、ことを特徴とする付記1に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0069】
(付記4)
前記有機物は、菜種ミール、大豆ミール、大豆粕、稲藁、大小麦藁、サトウキビくず、バガス、アブラナ藁、トウモロコシ藁、ソルガム藁、おがくず、雑草藁、レンゲソウ藁、アルファルファ藁、古紙又はホテイアオイのうちの1種以上の物質であり、
又は、前記有機物は家畜糞尿を主原料とする市販有機肥料である、ことを特徴とする付記1から3のいずれか一つに記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0070】
(付記5)
前記鉄塩は、硫酸第一鉄、硫酸第二鉄、塩化第二鉄、塩化第一鉄、硝酸第二鉄、クエン酸第二鉄、クエン酸第一鉄、リンゴ酸第二鉄、リンゴ酸第一鉄、シュウ酸第二鉄、シュウ酸第一鉄、硫化第一鉄、エチレンジアミン四酢酸第二鉄、及びエチレンジアミン四酢酸第一鉄のうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする付記1から3のいずれか一つに記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0071】
(付記6)
前記マンガン塩は、硫酸マンガン、塩化マンガン、硝酸マンガン、クエン酸マンガン、リンゴ酸マンガン、シュウ酸マンガン、硫化マンガン又はエチレンジアミン四酢酸マンガンのうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする付記1から3のいずれか一つに記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0072】
(付記7)
前記亜鉛塩は、硫酸亜鉛、塩化亜鉛、硝酸亜鉛、クエン酸亜鉛、リンゴ酸亜鉛、シュウ酸亜鉛、硫化亜鉛又はエチレンジアミン四酢酸亜鉛のうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする付記1から3のいずれか一つに記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0073】
(付記8)
前記銅塩は、硫酸銅、塩化銅、硝酸銅、クエン酸銅、リンゴ酸銅、シュウ酸銅、硫化第一銅又はエチレンジアミン四酢酸銅のうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする付記1から3のいずれか一つに記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0074】
(付記9)
前記有機酸及びその塩類は、クエン酸、クエン酸ナトリウム、クエン酸カリウム、クエン酸カルシウム、クエン酸マグネシウム、リンゴ酸、リンゴ酸ナトリウム、リンゴ酸カリウム、リンゴ酸カルシウム、リンゴ酸マグネシウム、シュウ酸、シュウ酸ナトリウム、シュウ酸カリウム、シュウ酸カルシウム、シュウ酸マグネシウムのうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする付記2に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0075】
(付記10)
前記有機キレート剤は、エチレンジアミン四酢酸、エチレンジアミン四酢酸ナトリウム、エチレンジアミン四酢酸カリウム、エチレンジアミン四酢酸カルシウム、及びエチレンジアミン四酢酸マグネシウムのうちの1種以上の物質である、ことを特徴とする付記2に記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料。
【0076】
(付記11)
前記質量の有機物、鉄塩、マンガン塩、亜鉛塩、銅塩、有機酸及びその塩類、有機キレート剤を混合して均一に撹拌し、粉末状にするステップ1)と、
ステップ1)の均質な粉体を、押出機又は造粒機を用いて粒径0.3~1.2cmの顆粒にすると、水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料を得るステップ2)と、を含む、ことを特徴とする付記1から3のいずれか一つに記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する新規有機肥料の製造方法。
【0077】
(付記12)
A.早稲の場合は、田圃耕起時又は苗移植後10日以内に追肥を行い、田圃1ムー当たり基肥を0~500kg、好ましくは5~50kg施肥し、穂ばらみ期には、追肥として0~500kg、好ましくは5~100kgを施肥し、登熟期には、0~500kg、好ましくは5~50kgを施肥し、
B.晩稲の場合は、田圃耕起時又は苗移植後10日以内に追肥を行い、田圃1ムー当たり基肥を0~500kg、好ましくは10~100kg施肥し、穂ばらみ期には、追肥として0~500部、好ましくは10~100kgを施肥し、登熟期には、0~500kg、好ましくは10~100kgを施肥し、
C.一毛作稲の場合は、田圃耕起時又は苗移植後10日以内に追肥を行い、田圃1ムー当たり基肥として0~500kg、好ましくは25~100kgを施肥し、穂ばらみ期には、追肥として0~500kg、好ましくは25~100kgを施肥し、登熟初期には、0~500kg、好ましくは25~100kgを施肥する、ことを特徴とする付記1から3のいずれか一つに記載の水稲の重金属カドミウム汚染又は蓄積を抑制する有機肥料の施用方法。
【国際調査報告】