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特表2022-510550ロータリまたはレシプロ式エキスパンダの固定回転数動作のための入口ガスの導入量の制御
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ロータリまたはレシプロ式エキスパンダの固定回転数動作のための入口ガスの導入量の制御
(51)【国際特許分類】
   F01C 20/14 20060101AFI20220120BHJP
   F01C 21/08 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
F01C20/14
F01C21/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520172
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(85)【翻訳文提出日】2021-04-30
(86)【国際出願番号】 IN2019050728
(87)【国際公開番号】W WO2020075182
(87)【国際公開日】2020-04-16
(31)【優先権主張番号】201841038051
(32)【優先日】2018-10-08
(33)【優先権主張国・地域又は機関】IN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519360844
【氏名又は名称】インディアン インスティテュート オブ テクノロジー マドラス (アイアイティー マドラス)
【氏名又は名称原語表記】INDIAN INSTITUTE OF TECHNOLOGY MADRAS (IIT MADRAS)
【住所又は居所原語表記】The Dean,Industrial Consultancy & Sponsored Research (IC&SR),Indian Institute of Technology Madras,IIT PO,Chennai,Tamil Nadu,Chennai 600036,India
(74)【代理人】
【識別番号】100142804
【弁理士】
【氏名又は名称】大上 寛
(72)【発明者】
【氏名】ベヌゴパル,ビピン
(72)【発明者】
【氏名】セシャドリ,サティヤナラヤナン
(57)【要約】
本発明の実施形態は、装置の固定回転数動作のために入口ガスの導入量を制御するシステム(500)を開示する。システム(500)は、プロセスにおける加熱用途のために高圧の蒸気を生成するためのボイラ(502)を備える。減圧バルブ(PRV)(504)は、ボイラの圧力をプロセス圧力に制御する。インレットポートとエキゾーストポートは、ロータハウジング(614)の開口部とロータリバルブの開口部が交差して構成されている。インレットポートは、プロセスのマスフロー要件に対応する必要な量の蒸気を導入するために、ポートの開放持続時間を制御できるように設計されている。ポートは、排気の持続時間と開始を制御できるように、開放の面積とタイミングが変更可能である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセスにおける加熱用途のために高圧の蒸気を生成するためのボイラ(502)と、
ボイラの圧力をプロセス圧力に制御するための減圧バルブ(PRV)(504)と
2つのインレットバルブ(606a、606b)と、
エキゾーストバルブ(610a、610b)に配置されたエキゾーストポートであって、インレットバルブ(606a、606b)に配置されたインレットポートとエキゾーストポートとが、ロータハウジング(614)の開口部とロータリバルブの開口部が交差して構成されている、エキゾーストポートと、を備え、
インレットポートは、プロセスのマスフロー要件に対応する必要な量の蒸気を導入するためにポートの開放持続時間が制御されるように設計されており、
ポートは、排気の持続時間と開始が制御されるように、開放の面積とタイミングが変更可能である、
装置の固定回転数動作のために入口ガスの導入量を制御するシステム(500)。
【請求項2】
システム(500)は、エピトロコイドのような閉じたプロファイルをなぞり、装置内の膨張空間に使用される、偏心ロータ(602)をさらに備える、
請求項1に記載のシステム(500)。
【請求項3】
システムは、導入・排気プロセスで要求される規定の開放期間だけロータリバルブがロータハウジングポートの通路を開くように、タイミングとプロファイルが設定されたロータリバルブによって提供されるロータハウジングポートをさらに備える、
請求項1に記載のシステム(500)。
【請求項4】
変動のために必要なプロファイルは、バルブの並進運動を可能にするスプール構成を介したインレットバルブ(606a、606b)およびエキゾーストバルブ(610a、610b)の動きによって開かれる、
請求項1に記載のシステム(500)。
【請求項5】
スプール構成の作動は、プロセス圧力または供給圧力によって行われ、作動は、直接的な機械的リンケージ、空気圧または電子制御によるものである、
請求項1に記載のシステム(500)。
【請求項6】
システムは、スプラインに取り付けられており、スラスト面を使用して最初に組み立てられた位置に留まることができるバルブトレインのタイミングプーリーまたはギアをさらに備える、
請求項1に記載のシステム(500)。
【請求項7】
前記装置はロータリ式エキスパンダおよびレシプロ式エキスパンダである、
請求項1に記載のシステム(500)。
【請求項8】
システム(500)は、サイクル中に膨張室への導入蒸気量を動的に変化させる、
請求項1に記載のシステム(500)。
【請求項9】
前記サイクルは、導入サイクル、膨張サイクル、排気サイクル、および圧縮サイクルからなる、
請求項8に記載のシステム(500)
【請求項10】
前記導入サイクルの持続時間は、前記バルブの正弦関数、余弦関数、多項式関数、指数関数の組み合わせを用いて生成された傾斜ポートプロファイルによって制御される、
請求項9に記載のシステム(500)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、体積制御式エキスパンダに関し、より具体的には、ロータリまたはレシプロ式エキスパンダの固定回転数(RPM)動作のために入口ガスの導入量を制御する機構に関する。本出願は、2018年10月8日に出願されたインド出願番号201841038051に基づいており、その開示内容を参照により本明細書に組み込むことで優先権を主張する。
【背景技術】
【0002】
ほとんどすべてのプロセス産業は、安価であり、特に飽和領域において熱伝達率が高く、気化潜熱が高く、不活性であることから、エネルギー運搬媒体として蒸気を使用する。プロセス上の制約から、ボイラのサイズや配管を小さくする必要があるため、通常、蒸気の発生は高圧で行われ、使用は低圧で行われる。この圧力を下げるには、減圧バルブ(PRV)を使用する。PRV内のプロセスは、等エンタルピー的で不可逆的である。これにより、蒸気のエクセルギーが減少する。熱力学的にも経済学的にも、蒸気から仕事を取り出して膨張させるのがよい。しかし、等エンタルピー的な膨張は実際には難しいので、等エントロピー的な膨張を行うのがよい。プロセスに利用可能な総エンタルピーの減少は、エキスパンダの入口に同等の質量の余分な蒸気を加えることで補うことができる。その経済的な意味合いは、ブレーキ効率と仕事量に比例する蒸気の追加マスフローに限られる。これは通常、Rsl~1.2/KWHの発電量になる。エキスパンダの出口はプロセスに送られるため、等エントロピー効率は発電コストに影響しない。しかし、等エントロピー効率が低いと、発電量が少なくなり、その結果、投資回収期間が長くなる。
【0003】
エネルギー貯蔵は、体積制御式エキスパンダのもう一つの新しい用途である。再生可能エネルギー発電の予測不可能な性質による出力の変動と相まって、分散型発電では、潜在的発電量と推定される使用量とが一致することはない。このため、(経済的にも環境的にも)最高の効率で発電を行うためには、エネルギー貯蔵が必要となる。余剰電力があるのにエネルギー貯蔵の手段がないため、風力タービンは止まってしまう。同様に、多くの産業ではピーク需要をディーゼル発電機で管理しているが、これは経済的にも環境的にも問題がある。電力需要にばらつきのあるこれらの産業は、電力使用量の少ない期間に電力を貯蔵し、貯蔵されたエネルギーをピーク時の需要に合わせて使用することができる。
【0004】
市販されているエキスパンダのほとんどは、プロセス産業やエネルギー貯蔵システムのいずれにも最適なソリューションではない。プロセス産業では、主にプロセスに焦点が当てられている。エキスパンダによって生成される電力は二次的なものである。プロセスの負荷は一定ではなく、変動するため、エキスパンダを通過する必要のある蒸気の質量も変動する。現在では、入口蒸気を絞り、エキスパンダへの入口圧力を下げてマスフローを減らすか、プラントの基本的な負荷に応じてエキスパンダのサイズを小さくし、負荷の変動には、エキスパンダに並列に設置されたPRVで対応している。また、連続制御ではなく、段階的に制御する技術もあまり見られない。飽和蒸気を膨張させる場合、タービンのような動的変位機は、湿った蒸気による周知の問題があるため、推奨されない。そのため、1サイクルの間に蒸気の導入量を動的に変化させ、エキスパンダへの導入圧力を変化させることなくマスフローを制御することができる、連続的に変化する体積制御式のモジュール型エキスパンダが必要とされている。
【0005】
エネルギー貯蔵の場合、圧縮空気を一定の圧力で貯蔵することは現実的に困難であるため、圧縮空気の貯蔵は通常、一定の圧力ではなく、一定の体積で行われる。定圧貯蔵であれば、エキスパンダを一定の圧力比で作動させることができるため、設計者はエキスパンダを一定の圧力比で作動させるように設計することができ、より高い等エントロピー効率を実現することができる。しかし、一般的に使用されている貯蔵方法である定容量式では、一定の圧力では膨張が起こらない。圧縮空気貯蔵タンクの排出過程で、圧力比が急激に変化するためである。現在利用可能な技術では、作動範囲全体で高い等エントロピー効率を得ることはできない。
【0006】
したがって、前述の欠点または他の不足点に対処するか、または少なくとも有用な代替案を提供することが望まれる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の実施形態の主な目的は、サイクル中に膨張室への導入蒸気量を動的に変化させることができるロータリまたはレシプロ式エキスパンダの固定回転数動作のための、制御された体積膨張システムの方法およびシステムを提供することである。プロセスで要求されるマスフローに基づいて、システムは導入圧力を一定に保つ。
【0008】
本発明の実施形態の別の目的は、エピトロコイドのような閉じたプロファイルをなぞり、機械内の膨張空間に使用される偏心ロータである。
【0009】
本発明の実施形態の別の目的は、2つのインレットポート、エキゾーストポートおよびバルブを提供することである。ポート(ロータハウジング上の開口部とロータリバルブ上の開口部との交差によって得られる空間)は、プロセスのマスフロー要件に対応する必要な量の蒸気を導入するようにポートの開口部が制御されるように設計されている。同様の動的体積制御は、排気の範囲とその開始を制御し、間接的に圧縮の範囲を制御することによって、エキゾーストバルブについても行われる。バルブトレインのタイミングプーリー/ギアは、スプラインに取り付けられており、スラスト面によって、最初に組み立てられた位置に留まることができる。
【0010】
本発明の実施形態の別の目的は、ロータ-/ロータハウジング空間内で行われる、導入、膨張、排気、圧縮からなるサイクルを提供することである。導入は、ロータハウジング内の2つの導入ポートを介して行われる。導入の持続時間は、バルブの正弦関数、余弦関数、多項式関数、指数関数の組み合わせを用いて生成された傾斜ポートプロファイルによって制御されることにより、膨張空間への作動流体の導入の持続時間を増加または減少させる。前記作動流体は、蒸気、空気、冷媒であってもよい。
【0011】
本発明の実施形態の別の目的は、ロータハウジングポートが、導入・排気プロセスで要求される規定の開放期間だけポートの通路を開くように、タイミングとプロファイルが設定されているロータリバルブによって提供されることである。
【0012】
本発明の実施形態の別の目的は、変動のために必要なプロファイルが、バルブの並進運動を可能にするスプール構成を介したインレットバルブおよびエキゾーストバルブの動きによって開かれることである。スプールの作動は、プロセス産業の場合はプロセス圧力により、エネルギー貯蔵の用途の場合は供給圧力により行われる。作動は、直接的な機械的リンケージ、空気圧または電子制御で行うことができる。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本発明の実施形態は、ロータリまたはレシプロ式エキスパンダの固定回転数動作のための制御された体積膨張システムの方法およびシステムを開示する。
【0014】
実施形態では、コージェネレーションおよびエネルギー貯蔵用途のための体積制御式エキスパンダであって、ピークの等エントロピー効率85%から10%未満の等エントロピー効率への変動で、ターンダウン範囲全体を処理することができる。動的体積制御とは、エキスパンダの吸入量を動的に調整することで、マスフローに必要な変動を実現する技術である。膨張終了時のシリンダ内の圧力は、理想的には、導入量を制御することによって、排気圧力と等しくなる必要がある。提案された機構は、ターンダウン全体でこれを保証する。
【0015】
本発明の実施形態のこれらおよび他の側面は、以下の説明および添付図面と併せて考慮すると、よりよく理解されるであろう。しかしながら、以下の説明は、好ましい実施形態およびその多数の具体的な詳細を示しているが、説明のために与えられたものであり、限定するものではないものとして理解すべきである。その精神から逸脱することなく、本発明の実施形態の範囲内で多くの変更および修正を行うことができ、本発明の実施形態にはそのような修正がすべて含まれる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
この方法は、添付図面に示されており、全体を通して、同様の参照文字は、それぞれの図における対応する部分を示している。本発明の実施形態は、図面を参照した以下の説明からはよりよく理解されるであろう。
【0017】
図1図1は、本発明に開示される実施形態による、動的導入量制御のないエキスパンダの導入圧力の変化に伴う膨張端圧力の変化を示す図である。
図2図2は、本発明に開示される実施形態による、エネルギー貯蔵用途のための動的導入量制御を示す、圧力対回転角を示す図である。
図3図3は、本発明に開示される実施形態による、プロセス産業における動的導入量制御を示す、圧力対回転角を示す図である。
図4図4は、本発明に開示される実施形態による、導入量制御のある場合とない場合のエキスパンダの性能を示す図である。
図5図5は、本発明に開示される実施形態による、装置における固定回転数動作のために入口ガスの導入量を制御するシステムの概略図である。
図6図6は、本発明に開示される実施形態による、異なる構成要素を示すワンケルエキスパンダの断面図である。
図7図7は、本発明に開示される実施形態による、中央シャフトの配置を示す断面図である。
図8図8は、本発明に開示される実施形態による、中央シャフトの中央部分を示す断面図である。
図9図9は、本発明に開示される実施形態による、導入蒸気経路を示す断面図である。
図10図10は、本発明に開示される実施形態による、蒸気の導入を動的に制御するための機構を示す主要断面図である。
図11a図11aは、本発明に開示される実施形態により、斜線部分がインレットバルブのインレットポートの展開図(実際の面はバルブの円筒面上にある)であり、非斜線面がロータハウジングのポート面とバルブとの交差部であることを示している。
図11b図11bは、本発明に開示される実施形態により、斜線部分がエキゾーストバルブのエキゾーストポートの展開図(実際の面はバルブの円筒面上にある)であり、非斜線面がロータハウジングのポート面の交差部であることを示している。
図12図12は、理想的な膨張サイクルを示すグラフの一例である。
図13図13は、導入圧力が設計条件よりも低い・高い場合の条件を示す例示的なグラフである。
図14図14は、本発明に開示される実施形態による、作動中に導入量を動的に変化させることのできるエキスパンダを示す例示的なグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の実施形態、ならびにそのさまざまな特徴および有利な詳細は、添付の図面に図示され、以下の説明で詳述される非限定的な実施形態を参照して、より十分に説明される。よく知られた構成要素や処理技術の説明は、本発明の実施形態を不必要に不明瞭にしないように省略する。また、いくつかの実施形態は、1つ以上の他の実施形態と組み合わせて新たな実施形態を形成することができるため、本明細書で説明するさまざまな実施形態は、必ずしも相互に排他的ではない。本明細書で使用される用語「または」は、特に明記されていない限り、非排他的な「または」を意味する。本明細書で使用される例は、本発明の実施形態が実施できる方法の理解を容易にし、当業者が本発明の実施をさらに可能にすることだけを意図している。したがって、実施例は、本発明の実施形態の範囲を限定するものと解釈されるべきではない。
【0019】
この分野では、従来からあるように、実施形態は、説明された一つまたは複数の機能を実行するブロックの観点から説明および図示されることがある。これらのブロックは、本明細書では、ユニットまたはモジュールなどと呼ばれることがあり、論理ゲート、集積回路、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、メモリ回路、受動電子部品、能動電子部品、光学部品、ハードワイヤード回路などのアナログまたはデジタル回路によって物理的に実装され、任意にファームウェアおよびソフトウェアによって駆動されることがある。回路は、例えば、1つ以上の半導体チップで具現化されてもよいし、プリント回路基板などの基板支持体上に具現化されてもよい。ブロックを構成する回路は、専用ハードウェアによって実装されてもよいし、プロセッサ(例えば、1つ以上のプログラムされたマイクロプロセッサおよび関連回路)によって実装されてもよいし、ブロックの一部の機能を実行する専用ハードウェアとブロックの他の機能を実行するプロセッサとの組み合わせによって実装されてもよい。実施形態の各ブロックは、本発明の範囲から逸脱することなく、物理的に2つ以上の相互作用する離散的なブロックに分離することができる。同様に、実施形態のブロックは、本発明の範囲から逸脱することなく、より複雑なブロックに物理的に組み合わせてもよい。
【0020】
添付図面は、さまざまな技術的特徴を容易に理解するために使用されており、本発明に開示された実施形態は、添付図面によって限定されないことを理解すべきである。そのため、本開示は、添付図面に特に記載されているものに加えて、任意の変更、等価物、および代替物にまで及ぶと解釈されるべきである。本明細書では、さまざまな要素を説明するために第1、第2などの用語が使用されることがあるが、これらの要素はこれらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、一般に、1つの要素を別の要素から区別するためにのみ使用される。
【0021】
従って、本発明の実施形態は、ロータリまたはレシプロ式エキスパンダの固定回転数動作のための制御された体積膨張システムのための方法およびシステムを実現する。
【0022】
ここで、図面を参照し、より具体的には、図1図14を参照しながら、好ましい実施形態が示されている。
【0023】
図1は、入口圧力の変化に伴う膨張端圧力の変化を示す図である。図2は、エネルギー貯蔵用途のための動的導入量制御を示す、圧力対回転角を示す図である。
【0024】
膨張終了時のシリンダ内の圧力は、理想的には排気圧力と等しくなければならない。固定された幾何学的パラメータを有するエキスパンダでは、特定の圧力比に対してのみ上記の条件を達成することができる。上記の条件とは、理想的な状態、すなわち膨張端の圧力がプロセス圧力に等しく、圧縮端の圧力が導入圧力に等しい状態を達成することを意味する。圧力比がその値を上回ったり下回ったりすると、膨張端圧力は以下の図1図2図3に示すようになる。圧力比とは、ボイラ圧力とプロセス圧力との絶対値の比で、ここではボイラ圧力がエキスパンダへの導入圧力、プロセス圧力が排気圧力となる。
【0025】
プロセス産業では負荷が変動するので、生産需要が下がると、エキスパンダはそこを通る蒸気のマスフローを減らす必要がある。一定の回転数で運転され、1サイクルあたりの蒸気の導入量が固定されている機械の場合、これは導入蒸気の密度を下げることによってのみ可能となる。マスフローを変化させるために導入圧力を変化させると、膨張端の圧力が排気圧力より高くなるか低くなるかのどちらかになる。ポートが開くとすぐに、ポートからの流入または流出が起こる。これは不可逆的であり、エントロピーを発生させる。現在のほとんどのエキスパンダは、上記のモードで制御している。これは導入前に蒸気を絞ることで実現している。
【0026】
絞り調速の欠点は以下の通りである。
i. 絞りによるエントロピーの発生。これはエンジンの外で起こる。
ii. 膨張端の圧力が排気圧力より高いと、混合によるエントロピーの発生につながる。
iii.膨張端の圧力が排気圧力より低いと、カム制御のレシプロ式エキスパンダでは、エントロピーの発生とバルブのチャタリングが起こる。
iv. 圧縮端圧力と導入圧力の変動によるエントロピー発生。
v. バルブチャタリングを避けるために、膨張端圧力を排気圧力よりも高く設定することで、部分負荷への配慮を行っている。この値は、必要な部分負荷の程度に応じて設定される。これは、部分負荷が生じる間に、膨張端圧力が排気圧力を下回らないようにするために行われる。
【0027】
さらに、動的導入量制御とは、エキスパンダの吸入量を動的に調整することで、マスフローに必要な変動を実現する技術である。絞り調速に比べて、動的導入量制御の主な利点は以下の通りである。
i. より高い負荷効率、全作動範囲での等エントロピー効率の変動が10%以内に収まる。ワンケルエキスパンダの圧力対回転角がこれを示している。
【0028】
さまざまな表記は、3つの異なる圧力でのエキスパンダの負荷を表している。図-2の最初のケースでは、実線(非破線)で描かれたサイクル以外のすべての他のものはエントロピー生成につながる。一方、第2のケースでは、すべてのサイクルの膨張曲線が同じ曲線上にあるように、すべてのサイクルの吸入量を調整する。これは、インレットポートを動的に変化させることで実現できる。上記の方法は、加圧タンク内の圧縮空気を等エントロピー的に膨張させるエネルギー貯蔵用途のエキスパンダに適用できる。各サイクルにおいて、膨張した質量に応じて、タンク内の圧力は下がり続ける。この間、エキスパンダの吸入量が一定であれば、理想的な排気圧力と比較して膨張端の圧力が変動することになる。
【0029】
図3は、本発明に開示される実施形態による、プロセス産業における動的導入量制御を示す、圧力対回転角の図である。
【0030】
実施形態では、カットオフ容積(例えば、導入量など)の動的制御は、マスフローを制御するために行われる。図3の第2図、圧力対回転角が適用される。この制御は、インレットポートとエキゾーストポートの両方を動的に制御することで実現できる。前述の技術介入は、等エントロピー効率の向上による出力の増加だけでなく、導入前の絞りを回避することで出力を増加させ、その結果、部分負荷時の圧力比を増加させる。提案システムの利点は以下の通りである。
1. 前述のとおり、ピーク等エントロピー効率が向上する。
2. 絞りのための高価な制御バルブを使わなくて済む。
3. 合計出力の向上
【0031】
図4は、等エントロピー効率と蒸気消費率-SSC(1KWhの電力を生成するために必要な蒸気の質量)を示すグラフである。動的な導入・排気制御を行う場合と行わない場合のエキスパンダについて、機械損失は12.5%、誘導発電機の効率は95%と仮定した。
【0032】
図5は、本発明に開示される実施形態による、装置における固定回転数動作のために入口ガスの導入量を制御するためのシステム(500)の概略図である。一実施形態では、装置は、ロータリ式エキスパンダおよびレシプロ式エキスパンダであり得る。一実施形態では、システム(500)は、ボイラ(502)、減圧バルブ(PRV)(504)、フロートトラップ(506)、制御バルブ(508)、エキスパンダ(510)、および逆止弁(512)を含む。ボイラー(502)は、プロセスにおける加熱用途のために、高圧の蒸気を生成する。プロセスは、任意の産業プロセスであってもよい。PRV(504)は、ボイラの圧力をプロセス圧力に制御する。エキゾーストポートは、エキゾーストバルブ(610a、610b)に配置され、インレットバルブ(606a、606b)に配置されたインレットポートとエキゾーストポートは、ロータハウジング(614)上の開口部とロータリバルブ上の開口部とが交差して構成されている。インレットポートは、プロセスのマスフロー要件に対応する必要な量の蒸気を導入するために、ポートの開放持続時間が制御されるように設計されている。ポートは、排気の持続時間および開始が制御されるように、開放の面積およびタイミングが変更可能である。
【0033】
図6は、本発明に開示される実施形態による、偏心ロータ(602)を示している。
【0034】
一実施形態では、偏心ロータ(602)は、2つの軸受(618a、618c)(すなわち、ロータハウジング(614)の両側の2つのカバー上の第1の軸受および第2の軸受)によって支持された中央シャフト(626)によって保持される。ロータ(602)は、第3の軸受上でシャフト(626)上で独立して回転することができる。ロータ(602)の動きは、ギア側カバー(図示せず)に取り付けられた固定ギア(外歯車)(616)と、ロータ(602)に取り付けられた内歯車(612)により、エピトロコイドプロファイル(608)に沿って拘束される。蒸気供給板(628)を介して供給された蒸気は、バルブのポート開口部(630)を通過して、ロータ(602)とロータハウジング(614)との間の空間に入る。蒸気の動力は、ロータ(602)、ひいてはシャフト(626)を押して、それぞれエピトロコイド運動と回転運動をさせる。そのために発生する動力は、シャフト(626)から引き出される。蒸気の供給は、2つのインレットバルブ(606a、606b)を介して規定の時間行われ、これにより、導入された蒸気は、ロータハウジングスペース(604)内でさらに膨張する。理想的には、膨張終了時の圧力は、エキゾーストバルブラインで利用可能な背圧(通常はプロセス圧力)と等しくなければならない。膨張を可能にするために蒸気の導入を停止する容積をカットオフ容積と呼ぶ。同様に、使用した蒸気はロータ(602)とロータハウジングスペース(604)から取り除かなければならない。これは、2つのエキゾーストバルブ(610a、610b)を用いて実現される。エントロピーの発生を抑えるためには、サイクル終了時のクリアランス容積内の蒸気が、導入時の蒸気と同等の圧力と温度になっている必要がある。これを実現するために、サイクル終了前に排気を停止し、残留質量を導入時の圧力まで圧縮できるようにする。インレットバルブ(606a、606b)とエキゾーストバルブ(610a、610b)は、タイミングベルト/ギアドライブを用いて、中央シャフト(626)と同期して回転する。前述のサイクルは、図12に示すとおりである。ここで考慮した導入圧力は10バール、プロセス圧力は3バールで、これはほとんどのプロセス産業で最も一般的な圧力シナリオである。
【0035】
一定の回転数で作動するように設計された任意の容積式機械は、与えられた導入圧力に対して、一定のマスフローのみをプロセス(例えば、乳製品の低温殺菌、製紙、製薬産業の加熱利用、醸造関連プロセスの加熱利用など)に供給することができる。しかし、ほとんどのプロセスでは蒸気負荷が変化する。必要とされる蒸気流量の変動は、すべての容積型機械において、密度を下げ、したがってマスフローを減少させるために導入蒸気圧力を絞ることによって達成されるが、これらの機械はカットオフ容積を変更することができないので、絞ることが必要となる。上記のシナリオは、図13に示す状態をもたらす。
【0036】
図13の状態は、ほとんどのエキスパンダでは望ましくないので、設計者は通常、図13の「a」の表記で直面する問題に対処するために、図12ではなく、図13の「b」の表記に示すような指示図を目指している。これは、図4に示すように、エントロピーの発生につながり、等エントロピー効率を損なうことになる。導入量を動的に制御できない機械の主な問題点は、図13の表記「a」および「b」の図中の点pに対応する体積を変更できないことである。
【0037】
以上の議論から、エキスパンダの絞り調速は、以下のような理由で等エントロピー効率の低下を招くことが明らかである。
1. 膨張終了時に、膨張した蒸気がプロセス圧力よりも高いまたは低い圧力のプロセス蒸気と混合する際の不可逆的な混合、
2. クリアランス容積内に残留する圧縮蒸気と導入蒸気との不可逆的な混合、および
3. プロセスの要求を満たすためにマスフローレートを制御するための導入前の蒸気の絞り。これは通常、減圧バルブを用いてエキスパンダの外で行われる。
【0038】
設計に妥協して、導入前に蒸気を絞るのではなく、プロセス要求に応じてエキスパンダの導入量を変更できる機構を開発する方がよい。これにより、図14に示すような指標図が得られる。
【0039】
図14の、図13に重ねた濃い線は、作動中に導入量を動的に変化させることのできるエキスパンダの指標図を示している。これにより、同じ入口圧力で導入が行われることになる。マスフローを減少させるために入口圧力を減少させる必要もなく、図14の表記「a」でpをp’に変化させることにより、導入量を減少させてマスフローを変化させる。また、13の表記「b」におけるカットオフの妥協は、図13の表記「a」における膨張端圧力とプロセス圧力との差を小さくするために行われるものであり、14の表記「a」では問題が解決されているので、図13の表記「b」と同様の状態の指標図が、図14の表記「b」では濃い色で示されたものに変化するのである。
【0040】
バルブは、作動中に動的に導入量を変更できるように設計されている。同様にエキゾーストバルブも、排気タイミングを早めることができ、排気の範囲を制御することで圧縮開始を制御できるように設計されている。
【0041】
バルブの背面に設けられたパイロット蒸気ライン(図10に示すように)は、プロセスのマスフロー要件に基づいてバルブを作動させる。プロセスに必要なマスフローが少ない場合、プロセス圧力は増加する傾向にある。その圧力のわずかな増加でバルブが前進し、タイミングプーリー/ギアは、バルブのスプライン上をスライドするため、所定の位置に留まり、プーリー/ギアの軸方向のロックはスラスト面により行われる。バルブの動きは、導入時間が短くなる場合のバルブのポートプロファイルを示しており、インレットバルブの代表的な展開図は図11aのようになっている。これにより、カットオフ容積を減らすことで、マスフローを減らすことができる。バルブのスラスト面に接続されたバネは、バルブの前進時に圧縮される。
【0042】
カットオフ容積の減少は、ロータとロータハウジング(614)との間の空間における最大容積に達する前に、膨張端圧力をプロセス背圧(図14の表記「a」参照)に到達させる。同時に、エキゾーストバルブ(610)の背面に与えられたパイロットプロセスラインは、エキゾーストバルブ(610)を動かして、排気の開始を早める。また、排気の持続時間は、圧縮の同じ開始点を維持するように増加する。
【0043】
プロセスのマスフロー要件が増加すると、プロセス圧力が低下し、バネに蓄積されたエネルギーを使用してバルブを要求された位置に戻す。
【0044】
図10に示すように、ダンパアセンブリ(1)、MTG BKT(マウンティングブラケット)アセンブリ(2)、ギア側カバー(3)、リアカバーアセンブリ(4)、ロータハウジング(5)、軸受(6)、サークリップ(7)、スプールアセンブリ(8)、ピン(9)、バネ(10)、フライホイールカバー(11)、蓋(12)、およびボルト(13)が設けられている。ダンパーアセンブリ(1)は、MTG BKTアセンブリ(2)、ギア側カバー(3)、リアカバーアセンブリ(4)、ロータハウジング(5)、軸受(6)、サークリップ(7)、スプールアセンブリ(8)、ピン(9)、バネ(10)、フライホイールカバー(11)、蓋(12)、及びボルト(13)を備える。
【0045】
偏心ロータ(602)は、エピトロコイドのような閉じたプロファイルをなぞっており、装置内の膨張空間に使用される。ロータ(602)には3つの面があり、各面はロータの180°の動きで1サイクルを完了し、ロータ(602)の360°の動きですべての面を合わせて6サイクルとなる。各サイクルは、導入、膨張、排気、圧縮で構成されている。ロータ(602)を120°回転させるために、中央シャフト(626)は360°回転する。2組のインレットバルブ(606a、606b)とエキゾーストバルブ(610a、610b)は、中央シャフト(626)と1:1の比率で同期しており、ロータ(602)の各面の導入、膨張、排気、圧縮を制御することを可能にする。
【0046】
導入は、ロータハウジング(614)内の2つの導入ポートを通じて行われる。ロータハウジングポートは、導入プロセスで要求される規定の開放期間だけポートの通路を開くように、タイミングとプロファイルが設定されたロータリバルブによって提供される。
【0047】
同様に、2つのエキゾーストポートとバルブが存在する。導入の持続時間は、バルブの正弦関数、余弦関数、多項式関数、指数関数の組み合わせを用いて生成された傾斜ポートプロファイルによって制御されることにより、膨張空間への作動流体の導入の持続時間を増加または減少させる。作動流体は、蒸気、空気、冷媒である。
【0048】
変動のために必要なプロファイルは、バルブの並進運動を可能にするスプール構成を介したインレットバルブの動きによって開かれる。
【0049】
スプールの作動は、プロセス産業の場合はプロセス圧力によって、エネルギー貯蔵用途の場合は供給圧力によって行われる。作動は、直接的な機械的リンケージ、空気圧または電子制御によって行うことができる。
【0050】
ポートは、プロセス圧力とバルブプロファイルが瞬時のマスフロー要件に一致するように設計されている。
【0051】
同様の動的体積制御は、排気の範囲を制御することによって、エキゾーストバルブ(610a、610b)で行われ。それが開始されると、間接的に圧縮の範囲を制御する。
【0052】
バルブトレインのタイミングプーリーは、スプラインに取り付けられており、スラスト面によって、最初に組み立てられた位置に留まることができる。
【0053】
プロセス産業では、吸気と排気の両方の動的な導入・排気量制御が必要とされるが、エネルギー貯蔵では、動的な吸気量制御は、吸気のみまたは単独で必要とされる。
【0054】
図11aは、斜線部分がインレットバルブのインレットポートの展開図(実際の面はバルブの円筒面上にある)であり、非斜線面がロータハウジングのポート面とバルブとの交差部であることを示す。
【0055】
図11bは、斜線部分がエキゾーストバルブのエキゾーストポートの展開図(実際の面はバルブの円筒面上にある)であり、非斜線面がロータハウジング上のポート面の交差部であることを示す。
【0056】
図7は、中央シャフトの断面図である。図8は、ロータ内のさまざまな構成要素を描いた等角断面図である。図9は、ロータ回転のための蒸気流路を示す図である。
【0057】
本発明に開示された実施形態は、少なくとも1つのハードウェアデバイス上で作動する少なくとも1つのソフトウェアプログラムを使用して実装することができ、要素を制御するためのネットワーク管理機能を実行する。
【0058】
具体的な実施形態についての前述の説明は、他の人が、現在の知識を適用することによって、一般的な概念から逸脱することなく、さまざまな用途のためにそのような具体的な実施形態を容易に変更および/または適合させることができるように、本明細書における実施形態の一般的な性質を十分に明らかにするものであり、したがって、そのような適合および変更は、開示された実施形態の意味および等価物の範囲内で理解されるべきであり、また、そのように理解されることが意図されるものである。本明細書で採用されている言い回しや用語は、説明のためのものであり、限定のためのものではないことを理解されたい。したがって、本発明の実施形態は、好ましい実施形態の観点から説明してきたが、当業者であれば、本発明の実施形態は、本明細書に記載された実施形態の精神および範囲内で変更して実施することができることを認識するであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11a
図11b
図12
図13
図14
【国際調査報告】