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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】有機金属化合物
(51)【国際特許分類】
   C07F 11/00 20060101AFI20220120BHJP
   C23C 16/18 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C07F11/00 C
C23C16/18
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520379
(86)(22)【出願日】2019-11-28
(85)【翻訳文提出日】2021-04-13
(86)【国際出願番号】 EP2019082892
(87)【国際公開番号】W WO2020120150
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】18212064.2
(32)【優先日】2018-12-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】501399500
【氏名又は名称】ユミコア・アクチエンゲゼルシャフト・ウント・コムパニー・コマンディットゲゼルシャフト
【氏名又は名称原語表記】Umicore AG & Co.KG
【住所又は居所原語表記】Rodenbacher Chaussee 4,D-63457 Hanau,Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】スザンネ・ヘルリッチュ
(72)【発明者】
【氏名】ヨルク・ズンダーマイヤー
(72)【発明者】
【氏名】アンドレアス・リーヴァス・ナス
(72)【発明者】
【氏名】オリヴァー・ブリエール
(72)【発明者】
【氏名】ラルフ・カルヒ
(72)【発明者】
【氏名】ヴォルフ・ショルン
(72)【発明者】
【氏名】アニカ・フレイ
(72)【発明者】
【氏名】アンゲリノ・ドッピウ
(72)【発明者】
【氏名】アイリーン・ヴェルナー
【テーマコード(参考)】
4H050
4K030
【Fターム(参考)】
4H050AA02
4H050AC90
4H050BB11
4H050WB14
4K030AA11
4K030BA20
4K030BA35
4K030BA36
4K030BA38
4K030BA41
4K030FA10
4K030LA15
(57)【要約】
本発明は、[W(NBu)(NHBu)]から出発して、一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を生成するための2段階合成に関する。本発明は、また、特許請求される方法によって得ることができる一般式[W(NBu)(NR](I)による化合物、[W(NBu)(NMe]及び[W(NBu)(NEtMe)]を除く一般式[W(NBu)(NR](I)による化合物、化合物[W(NBu)(NR]の使用、及び表面上にタングステン層又はタングステン含有層を有する基板に関する。タイプ[W(NBu)(NR](I)の定義されるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、記載される方法によって、高純度かつ良好な収率で、容易に、経済的に、かつ再現可能に生成することができる。その高い純度から、化合物は、タングステン層又はタングステン含有層を有する高品質の基板を製造するのに好適である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
一般式
[W(NBu)(NR](I)、
(式中、
及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択される)
によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を製造する方法であって、
a)[W(NBu)(NHBu)]を用意する工程
と、
b)工程a)から得られた[W(NBu)(NHBu)]を溶媒M中で一般式HNR
(式中、R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択される)によるアミンと反応させる工程
と、を含み、
モル比[W(NBu)(NHBu)]:HNRが<1:2である、方法。
【請求項2】
[W(NBu)(NHBu)]を用意する工程が、非プロトン性溶媒M中における補助塩基の存在下でのWClBuNHとの反応を含み、
モル比WClBuNHが、≦1:4である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記補助塩基が、BuNHを含むか又はBuNHである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記非プロトン性溶媒Mが、炭化水素、ベンゼン、及びベンゼン誘導体からなる群から選択される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
前記非プロトン性溶媒Mが、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、シクロヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びこれらの異性体からなる群から選択される、請求項2~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記非プロトン性溶媒M中における前記補助塩基の存在下でのWClとtBuNHとの反応が、
i)前記非プロトン性溶媒M中tBuNHの溶液を用意する工程と、
ii)前記補助塩基を添加する工程と、
iii)WClを添加する工程と、
を含み、
WClの添加中及び/又は添加後に、WClBuNHとの反応が起こる、請求項2~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記非プロトン性溶媒M中における前記補助塩基の存在下でのWClBuNHとの前記反応が、温度Tで実施され、前記温度Tが、-30℃~100℃である、請求項2~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
濾過工程が、工程b)における[W(NBu)(NHBu)]の反応前に実施される、請求項2~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
[W(NBu)(NHBu)]が、工程b)における[W(NBu)(NHBu)]の反応前に単離される、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
工程b)において、モル比[W(NBu)(NHBu)]:HNRが≦1:4である、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記溶媒Mが、非プロトン性溶媒を含む、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記溶媒Mが、前記非プロトン性溶媒Mと混和性であるか又は同一である、請求項2~11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
溶媒Mを含む非プロトン性溶媒Mが、炭化水素、ベンゼン、及びベンゼン誘導体からなる群から選択される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
溶媒Mを含む前記非プロトン性溶媒が、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、シクロヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びこれらの異性体からなる群から選択される、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
前記溶媒Mが、反応性溶媒を含む、請求項1~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
前記反応性溶媒が、アミンHNRを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
工程b)が、温度T及び/又は圧力pで実施され、
前記温度T及び/又は前記圧力pにおいて、前記アミンNHRのモル分率の少なくとも一部が、液体又は溶解形態で存在する、請求項1~16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
工程b)において、工程a)からの[W(NBu)(NHBu)]と前記アミンHNRとの前記反応が、
i)[W(NBu)(NHBu)]を
固体として、
又は
溶媒M中の溶液若しくは懸濁液として用意する工程
と、
ii)アミンHNRを添加する工程と、を含み、
前記アミンHNRの添加中及び/又は添加後に、[W(NBu)(NHBu)]と前記アミンHNRとの反応が起こる、請求項1~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
前記アミンHNRが、
気体若しくは液体として、
又は
溶媒Mに溶解した状態で添加される、請求項18に記載の方法。
【請求項20】
前記アミンHNRの添加中及び/又は添加後に、温度Tが-60℃~50℃である、請求項18又は19に記載の方法。
【請求項21】
工程b)の後に、[W(NBu)(NB)](I)の単離を行う、請求項1~20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を使用して、基板の表面上にタングステン層又はタングステン含有層を生成させる方法であって、
a)請求項1~21のいずれか一項に記載の方法によって、一般式[W(NBu)(NR](I))によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を用意する工程
と、
b)前記基板の表面上にタングステン層又はタングステン含有層を堆積させる工程と、を含む、方法。
【請求項23】
一般式[W(NBu)(NR](I)
(式中、R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択され
かつ
ビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物[W(NBu)(NMe]は除外される)
によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を使用して、基板の表面上にタングステン層又はタングステン含有層を生成させる方法であって、
a)請求項1~21のいずれか一項に記載の方法によって、一般式[W(NBu)(NR](I))によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を用意する工程
と、
b)前記基板の表面上にタングステン層又はタングステン含有層を堆積させる工程と、を含む、方法。
【請求項24】
一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を使用してエレクトロニクスコンポーネントを製造する方法であって、
a)請求項1~21のいずれか一項に記載の方法によって、一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を用意する工程と、
b)基板の表面上にタングステン層又はタングステン含有層を堆積させる工程
と、
c)エレクトロニクスコンポーネントを完成させる工程と、を含む、方法。
【請求項25】
タングステン層又はタングステン含有層が、CVD(化学蒸着)又はALD(原子層堆積)によって堆積される、請求項22~24のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、以後ビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物又はビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン錯体とも称される、一般式[W(NBu)(NR]による化合物の生成方法に関する。R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択される。本発明の主題はまた、特許請求される方法によって得ることができる一般式[W(NBu)(NR]による化合物、[W(NBu)(NMe]及び[W(NBu)(NEtMe)]を除く一般式[W(NBu)(NR]による化合物、化合物[W(NBu)(NR]の使用、並びに表面上にタングステン層又はタングステン含有層を有する基板である。
【背景技術】
【0002】
タングステン層及びタングステン含有層は、とりわけ、半導体、太陽光、TFT LCD、及びフラットスクリーン技術において重要である。窒化タングステン層は、例えば、マイクロエレクトロニクスコンポーネントのための良好な銅拡散バリアを構成する。電気抵抗が低くかつ銅に対する抵抗を有することから、窒化タングステンは、かなり有望なバリア材料を構成する。薄膜コンデンサ及び電界効果トランジスタ用の電極として、薄い窒化タングステン膜を使用することもできる。
【0003】
半導体業界では、特に、比抵抗が低く、段差被覆性に優れた窒化タングステン層の成長が探求されている。蒸着法は、典型的には、このような窒化タングステン層、他のタングステン含有層、例えば、WCN、WSi、WSiN、及びWOの層又は膜、並びに純粋なタングステン層などを生成するために使用される。最も一般的には、様々なALD法(原子層堆積)及びCVD法(化学蒸着)が使用される。
【0004】
ここで及び以下では、堆積可能なタングステン含有層又は膜の正確な化学量論の詳細については省略する。更に、用語「層」は、表現「膜」の同義語として使用され、層の厚さ又は膜の厚さに関するいかなる記述も行わない。
【0005】
ALD法による窒化タングステン層の堆積は、例えば、2000年にKlausら(J.W.Klaus,S.J.Ferro,S.M.George,J.Electrochem.Soc.2000,147,1175-1181)によって記載された。WF及びNHに基づいて、良好な段差被覆性を有する窒化タングステン層が得られた。しかしながら、この方法の不利点は、プロセス中に生成されるWF及び/又は副生成物のフッ化水素が、ケイ素からなる又はケイ素を含有する基板を特に攻撃することである。加えて、窒化タングステン層の表面上のフッ素不純物は、後に所望の銅の接着に悪影響を及ぼす可能性がある。
【0006】
例えば、ビス(アルキルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物[W(NBu)(NMe]は、従来技術において、窒化タングステン層の堆積のための無ハロゲン前駆体として知られている。2003年に、Beckerらは、その合成及びALDプロセスにおける前駆体としての応用について報告している。(J.S.Becker,S.Suh,S.Wang,R.G.Gordon,Chem.Mater.2003,15,2969-2976)
【0007】
Beckerらにより公開された[W(NBu)(NMe]を調製するための合成経路は、3つの段階を含み、著者らは、[W(NBu)(NMeEt)]の生成と類似のものを使用している。[W(NBu)(NMeEt]の生成の第1の工程では、市販されているWClを4当量のHN(Bu)(SiMe)とトルエン中で反応させて、半分の当量の混合置換されたtert-ブチルアミン付加物[W(NBu)Cl(NH Bu)]を得る。この第1の中間体を単離及び精製するために、(Bu)(MeSi)NHCl及び未反応のWClを分離するための濾過工程、並びに結晶化工程がとりわけ提供される。第2の段階は、ジエチルエーテル中で半分の当量の[W(NBu)Cl(NH Bu)]を2当量のピリジンと反応させることを伴う。この場合、tert-ブチルアミン(BuNH)の放出と共に、ピリジン付加物[W(NBu)Cl(py)]が得られる。この第2の中間体を単離するために、溶媒ジエチルエーテル、BuNH、及び過剰のピリジンを真空中で除去する必要があり、これはピリジンの沸点が高いことから問題となる。第3及び最後の反応工程では、まず遊離体リチウムジメチルアミド(LiNMe)を別個の合成で調製する必要がある。これは、1当量の[W(NBu)Cl(py)]を2当量のLiNMeとジエチルエーテル中で反応させることにより、標的化合物[W(NtBu)(NMe]が生成されるためである。この第3の工程は、非常に激しく、発熱性であると記載されている。生成物[W(NBu)(NMe]の精製は、反応中に生成されたLiCI負荷及び過剰のLiNMeを分離するための濾過工程を含む。更に、減圧下における2回の留出が提供される。化合物[W(NBu)(NMe]及び[W(NBu)(NEtMe)]は、それぞれ淡黄色の液体として記載されている。対応する全収率は文献には示されていない。
【0008】
ビス(アルキルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物[W(NBu)(NMe]を調製するための既知の方法の重大な不利点は、複数の反応工程、及び3つの合成工程のそれぞれにかかる労力及び時間である。2つの中間体、すなわち[W(NBu)Cl(NH Bu)]及び[W(NBu)Cl(py)]が生成及び単離される。いずれの場合も、その単離及び/又は精製は、少なくとも1つの時間及び/又は手間を要する工程を含む。加えて、遊離体LiNMeは、第3の合成段階のために別個の反応で生成される。更なる不利点は、とりわけ、原理的に配位が可能な溶媒ジエチルエーテル及びピリジンが使用されることである。第3の工程では、特に、溶媒としてジエチルエーテルを使用することは不利であり、それは、副生成物として生成されたLiCl負荷及び過剰のLiNMeの除去が、結果的に困難になる又は少なくともやりにくくなる場合があるためである。リチウムイオンが反応混合物中に存在する場合、タングステン酸リチウム錯体塩が形成される場合もあり、これは同様に分離することが困難であるか又は全く分離することができない。ビス(アルキルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の工業的用途、及びそれによって工業規模で必要になる合成に鑑みて、第3の合成工程は特に不利であるが、その理由は特に、非常に激しく、発熱性であると記載されており、したがって、少なくとも安全上の理由で危険であると分類されるためである。
【0009】
更に、文献で既知の手順は、濾過工程及び2回の蒸留による、最終生成物[W(NBu)(NMe]又は[W(NBu)(NMe]の複雑な精製を提供する。それにもかかわらず、このようにして得られた生成物は、正確には定量することができない塩不純物、特にリチウム不純物を有する場合がある。したがって、純粋な形態の生成物とは異なり、その特性は、制御不能に、場合によっては不可逆的に変化したり、損なわれたりする場合がある。上記反応制御では、上記化合物の工業的使用に鑑みて満足のゆく収率が得られるかどうかは不明である。
【0010】
全体的にみると、文献に記載されている合成経路は、環境保護的かつ経済的な観点から不満足であると分類され得る。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】J.W.Klaus,S.J.Ferro,S.M.George,J.Electrochem.Soc.2000,147,1175-1181
【非特許文献2】J.S.Becker,S.Suh,S.Wang,R.G.Gordon,Chem.Mater.2003,15,2969-2976
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、本発明の目的は、従来技術のこれら及び更なる不利点を克服し、定義されるビス(アルキルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を、高純度かつ良好な収率で、容易に、効率的に、経済的に、かつ再現可能に生成することができる方法を提供することである。特に、当該方法により生成することができるビス(アルキルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の純度は、タングステン層又はタングステン含有層を有する高品質の基板を製造するための前駆体の要件を満たしている必要がある。当該方法は、標的化合物の同等の収率及び純度で工業規模でも実施できることを特徴とする。加えて、新規のビス(アルキルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物が提供される。更に、特許請求される方法によって得ることができる若しくは得られるビス(アルキルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を使用して、又は新規のビス(アルキルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物のうちの1つを使用して生成することができる、表面上にタングステン層又はタングステン含有層を有する基板が提供される。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の主な特徴は、請求項1又は請求項22~33のいずれか一項に記載されている。実施形態は、請求項2~21の主題である。
【0014】
目的は、
一般式
[W(NBu)(NR](I)、
(式中、
及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択される)
によるビス(アルキルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を生成する方法であって、
a)[W(NBu)(NHBu)]を準備する工程
と、
b)工程a)から得られた[W(NBu)(NHBu)
(式中、R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択される)を溶媒M中で一般式HNRによるアミンと反応させる工程
と、含み、
モル比[W(NBu)(NHBu)]:HNRが<1:2である工程である、方法によって達成される。
【0015】
この場合、一般式Iは、モノマー及び任意のオリゴマーの両方を含む。
【0016】
アルキル基R及びRはまた、置換されていてもよく、例えば、部分的又は完全にハロゲン化されていてもよい。
【0017】
溶媒Mはまた、2つ以上の溶媒を含む溶媒混合物であってもよい。
【0018】
特許請求される方法により、有利なことに、単純な2段階合成で標的化合物[W(NBu)(NR](I)を生成することができる。
工程a)で準備された1モル当量の化合物[W(NBu)(NHtBu)]を、溶媒M中において過剰のアミンHNRと反応させることにより、工程b)で対応するビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン錯体が得られる。ここで、過剰とは、[W(NBu)(NB)](I)の生成に技術的に必要な2モル当量を超えるHNRが提供されることを意味する。したがって、モル比[W(NBu)(NHBu)]:HNRは、1:2未満、すなわち0.5未満である。選択される過剰のHNRのレベルは、特に、例えば溶媒又は溶媒混合物などの他に選択される反応パラメータを考慮して、特に、遊離体として工程b)においてそれぞれ使用される第2級アミンの反応性に依存する。
【0019】
特許請求される2段階合成において、工程b)が実施された後、タイプ[W(NBu)(NR](I)の所望のビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物、並びに未反応である、すなわち、過剰に使用された、定義されるかなり容易に分離可能な副生成物であるBuNH及びアミンHNRのみが存在する。工程b)で得られたBuNHは、かなり揮発性が高く、したがって、単純な方法で、すなわち、対応する反応容器の内部にわずかな陰圧を適用することによって、定量的に除去することができる。概して、工程b)において過剰に使用されるHNR、特に、例えばHNMeなどの非常に揮発性の高いアミンにも同じことが当てはまる。更に、リチウム化合物、特にLiClが存在しないことから、例えば、困難なしには分離することができない又は全く分離することができない、タングステン酸リチウム錯体塩などの定義できない副生成物が形成されないことは、有利である。溶液中のタイプ[W(NBu)(NR](I)の対応する標的化合物を、1つ以上の反応物質とそのまま反応させてもよい。あるいは、タイプ[W(NR](I)の化合物は、例えば、全ての揮発性成分を除去することによって容易に単離することもできる。更に、単離された化合物は、NMRスペクトル検査によれば、アミン不純物も使用された溶媒又は溶媒混合物の残基も有さない。したがって、対応する標的化合物は、更に精製することなく単離後に使用及び/又は保管することができる。再現可能な収率は、例えば、工業規模にアップスケールする場合であっても、[W(NBu)(NMe]について満足のゆくものである。
【0020】
全体として、特許請求される方法は、先行技術の欠点を克服する。特に、例えばジエチルエーテル中LiClなどの、分離が困難な塩負荷は得られない。ピリジン及びジエチルエーテルなどの潜在的に配位性の溶媒が完全に不要になる。方法は、単純な2段階合成であるので、特に単純かつ経済的な方法であることを特徴とする。加えて、調製の観点で容易に達成されるわずかなプロセス工程しか必要としない。商業的に容易に入手可能であり、合成的に比較的容易にアクセスでき、かつ比較的経済的である遊離体のみが使用される。定義可能であり、容易かつ定量的に分離可能な副生成物のみが形成される。具体的には、分離することができないタングステン酸リチウム錯体塩は形成されない。したがって、例えばビス(tertブチルイミド)ビス(ジメチルアミド)タングステンなどのタイプ[W(NBu)(NR](I)の化合物は、何らの更なる蒸留及び/又は昇華による精製を伴わない場合であっても、高純度で再現可能に得られる。しかしながら、例えば、トランス凝縮(transcondensation)及び/又は蒸留及び/又は昇華による精製が提供されてもよい。特許請求される方法により得ることができるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、タングステン層又はタングステン含有層を有する高品質の基板を製造するための前駆体の純度要件を満たしている。特に、請求される方法によって生成することができるタイプ[W(NBu)(NR](I)の化合物は、すなわち、例えばリチウムジメチルアミドなどの遊離体の省略に起因して、本質的にリチウム不純物を有さない。加えて、方法はまた、工業規模で実施することもでき、標的化合物の同等の収率及び純度が達成される。特許請求される方法は、比較すると時間、エネルギー及びコストを節約するものである。全体的には、それは、からりより(原子)経済的かつより環境保護的であると分類することができる。
【0021】
一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を生成するための特許請求される方法の一実施形態では、R及びRは、独立して、Me、Et、Pr、Pr、Bu、Bu、Bu、Bu、CH Bu、CH Bu、CH(Me)(Pr)、CH(Me)(Pr)、CH(Et)、C(Me)(Et)、C11、CH、及びCからなる群から選択される。
【0022】
特許請求される方法の更なる実施形態では、工程a)における[W(NBu)(NHBu)]の提供、非プロトン性溶媒M中における補助塩基の存在下でのWClBuNHとの反応。ここで、モル比WClBuNHは、≦1:4である。
【0023】
安価な市販されているWClが遊離体として使用される。これに基づいて、中間体[W(NBu)(NHBu)]の生成は、非プロトン性溶媒M中における少なくとも4モル当量のBuNHとの反応によって達成される。それによって単一の副生成物として得られた塩化水素は、反応混合物中に含有される補助塩基によって吸収される。
【0024】
原則として、いずれの場合にも選択される反応条件下で、対応する反応中に生成された塩化水素を定量的に吸収することができる任意の化合物を補助塩基として使用することができる。補助塩基は、特に、反応混合物のpH及び反応媒体の含水量に影響しないこと、更に、遊離体WCl及びBuNH並びに所望の中間体[W(NBu)(NHBu)]に関しては反応物質として作用しないことを特徴とする必要がある。加えて、使用される任意の過剰の補助塩基は、反応混合物から容易に定量的に除去可能である必要があり、補助塩基と塩化水素との反応によって得られる生成物も同様に、容易に定量的に分離可能である必要がある。モル比WCl:補助塩基は、少なくとも6モル当量の塩化水素を吸収することができるように選択される。
【0025】
最も単純な場合、BuNHは、反応物質又は遊離体及び補助塩基の両方である。次いで、反応中に形成された塩化水素は、過剰に使用されるアミンBuNHと反応してBuNHClを形成する。これとの関連において過剰とは、1モル当量のWClあたり、[W(NBu)(NHBu)]を得るために技術的に必要とされる4当量の代わりに、少なくとも10当量のBuNHを使用できることを意味する。したがって、モル比WClBuNHは、この最も単純な場合、≦1:10である。任意の場合により未反応のBuNHは、対応する反応容器の内部に陰圧を適用することによって単純に除去することができる。あるいは、補助塩基がアミンBuNHのみを含む、すなわち、補助塩基BuNHの一部が別の補助塩基によって置き換えられるようにすることもできる。反応混合物中に提供されるWClBuNHの全体モル比は、<1:4かつ>1:10、すなわち、<0.25かつ>0.10である。
【0026】
本発明との関連における反応容器という用語は、体積、材料組成、装置、又は形態に限定されない。
【0027】
補助塩基の存在下でWClBuNHとの反応を実施した後、所望の中間体[W(NBu)(NHBu)]、及び定義される、かなり容易に分離可能な副生成物、典型的には、アンモニウム塩、例えばBuNHCl、及び場合により未反応である、すなわち過剰に使用されたBuNHのみが存在する。反応混合物中に依然として存在する任意のBuNHは、対応する反応容器の内部に陰圧を適用することによって簡単に除去することができる。沈殿したアンモニウム塩、例えば、BuNHClの比較的容易な分離可能性は、非プロトン性溶媒Mの有利な選択によって説明することもできる。
【0028】
方法の一実施形態は、非プロトン性溶媒Mが、炭化水素、ベンゼン、及びベンゼン誘導体からなる群から選択されることを提供する。第1の溶媒は、例えば、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、シクロヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びこれらの異性体からなる群から選択される。非プロトン性溶媒Mは、好ましくは、n-ヘキサン、i-ヘキサン、若しくはn-ヘプタン、又は上記溶媒のうちの少なくとも1つを含む混合物である。有利なことに、前述の溶媒、特にベンゼン及びトルエンは、損失なしに完全に再利用することができる。これは、方法の環境バランスに対してプラスの効果を有する。
【0029】
特許請求される方法の更なる変形例では、工程a)において、非プロトン性溶媒M中における補助塩基の存在下でのWClとtBuNHとの反応は、
i)当該非プロトン性溶媒MBuNHの溶液を準備する工程と、
ii)当該補助塩基を添加する工程と、
iii)WClを添加する工程と、
を含み、
WClの添加中及び/又は添加後に、WClBuNHとの反応が起こる。
【0030】
非プロトン性溶媒Mはまた、溶媒の混合物であってもよい。
【0031】
モル比WCl:補助塩基BuNHが≦1:6である補助塩基BuNHが好ましい。したがって、[W(NBu)(NR](I)を生成するための反応物質として必要なtertブチルアミンと共に、モル比WClBuNHは≦1:10である。BuNHが、遊離体及び補助塩基の両方として機能する場合、このプロセスは特に単純である。一方では、必要な化学物質の数が減少する。他方では、工程i)、すなわち、非プロトン性溶媒MBuNHの溶液の提供、及び工程ii)、すなわち、補助塩基の添加が、単一の工程で行われる。
【0032】
特許請求される方法の別の実施形態において、アミンBuNH以外の補助塩基が使用される場合、この補助塩基が別個の工程ii)で添加されることを提供することができる。補助塩基は、バルクで、すなわち、概して固体若しくは液体として、又は溶媒S中懸濁液若しくは溶液として添加される。溶媒Sは、非プロトン性溶媒Mと同一であるか又は混和性である。
【0033】
本発明との関連において、少なくとも対応する反応中に混和性である場合、すなわち、2つの相として存在しない場合、2つの溶媒は混和性と称される。
【0034】
特許請求される方法の一実施形態では、工程iii)において、WClを溶媒Sに懸濁させるか又は固体として添加することが提供される。溶媒Sは、非プロトン性溶媒Mと同一であるか又は混和性である。溶媒S中の懸濁液としてWClを添加することは、他の反応パラメータの関数として、反応の過程又は発熱反応をより良好に制御するのに有利であり得る。次いで、例えば、投入装置を使用して、具体的には、液滴を一度に添加するか又は注入することによって添加を行う。WClが固体として添加される場合、例えば、漏斗状又は漏斗状の装置が添加のために提供される。あるいは又は更に、WClが添加される形態に関係なく、遮断弁及び/又は停止弁を対応する反応容器の供給ラインに設けることができる。
【0035】
特許請求される方法の更に別の実施形態では、工程i)において、WClは、非プロトン性溶媒M中の懸濁液として提供又は添加される。BuNHが補助塩基として提供される場合、工程ii)及び工程iii)は、単一の工程で行われる。この場合、BuNHは、溶媒S中の溶液として、又は液体として、すなわち、溶媒を添加することなく添加され、いずれの場合も、例えば、液滴を一度に添加するか又は注入することによって添加される。溶媒Sは、非プロトン性溶媒Mと同一であるか又は混和性である。BuNH以外の補助塩基が提供される場合、この補助塩基は、別個の工程ii)で添加される。補助塩基は、物質で、すなわち、概して固体若しくは液体として、又は溶媒S中の懸濁液若しくは溶液として添加される。次いで、遊離体BuNHは、工程iii)において、溶媒Sとして、又は液体として、すなわち、溶媒を添加することなく添加され、いずれの場合も、例えば、液滴を一度に添加するか又は注入することによって添加される。この場合、溶媒S及びSは、各々、非プロトン性溶媒Mと同一であるか又は混和性である。
【0036】
非プロトン性溶媒又は溶媒混合物Mの選択、並びに他の反応条件、例えば、WClの添加形態、すなわち、物質として又は懸濁液として、WClの添加速度、撹拌速度、対応する反応容器の内部温度などに応じて、WClは、既にWClの添加中及び/又は添加後に、補助塩基の存在下でBuNHと反応する。
【0037】
特許請求される方法の別の変形例では、非プロトン性溶媒M中における補助塩基、特にBuNHの存在下でのWClBuNHとの反応は、温度Tで実施され、当該温度Tは-30℃~100℃である。
【0038】
温度Tは、対応する反応容器の内部温度Tを意味する。
【0039】
反応が発熱性であることから、WClの添加のためのかなり低速、及び/又は温度Tを選択することが有利であり得る。あるいは又は更に、WClの懸濁液が、非プロトン性溶媒又は溶媒混合物に添加されることが提供され得る。対応する手順は、例えば、BuNH濃度(遊離体)及び溶媒又は溶媒混合物などの他の反応パラメータを考慮して選択されるものとする。
【0040】
方法の更なる実施形態では、補助塩基、特にBuNHの存在下におけるWClBuNHとの反応中の温度Tは、-20℃~80℃である。方法の更に別の実施形態では、補助塩基、特にBuNHの存在下におけるWClBuNHとの反応中の温度Tは、-10℃~50℃である。
【0041】
対応する反応容器の内部温度は、反応容器の1つ以上の領域について1つの温度センサ又は複数の温度センサによって測定することができる。反応混合物の平均温度TD1に概ね対応する温度Tを測定するために、少なくとも1つの温度センサが提供される。
【0042】
方法の更なる変形例では、温度Tは、伝熱媒体Wを使用して調節及び/又は制御される。この目的のために、例えば、理想的には冷却剤及び熱媒体の両方として機能することができる伝熱媒体を含有する、クライオスタットを使用することができる。伝熱媒体Wの使用を通して、補助塩基、特にBuNHの存在下におけるWClBuNHとの反応について定義された設定値TS1からの温度Tの偏差を可能な限り緩和又は補償し得る。典型的な装置の偏差により、一定温度Tを実現することはほとんど不可能になる。しかしながら、熱伝達媒体Wの使用を通して、補助塩基、特にBuNHの存在下におけるWClBuNHとの反応は、少なくとも予め選択された温度範囲内又は複数の予め選択された温度範囲内で起こり得る。例えば、残りの反応パラメータに応じて、反応の過程又は発熱反応を更により良好に制御するための温度プログラムを提供することが有利であり得る。この場合、例えば、第1の相のWClの添加中には、第2の相のWClの添加におけるよりも低い温度又は低い温度範囲を選択してよい。2相を超える添加、したがって、2つを超える予め選択された温度又は温度範囲を提供することも可能である。例えば、BuNH濃度(遊離体)及び溶媒又は溶媒混合物などの他の反応条件の選択に応じて、それは、熱伝達媒体Wを使用して温度Tを上昇させるためのWClの添加中及び/又は添加後に良好であり得る。これにより、補助塩基、特にBuNHの存在下におけるWClBuNHとの反応が定量的に実施されることを保証することが可能になる。
【0043】
工程a)における[W(NBu)(NHBu)]の提供が、非プロトン性溶媒M中における補助塩基の存在下でのWClBuNHとの反応を含む場合、特許請求される方法の更なる変形例は、工程b)における[W(NBu)(NHBu)]の反応前に濾過工程を実施することを提供する。濾過工程又はデカントは、具体的には、補助塩基、特にBuNHの存在下におけるWClBuNHとの反応中に生成されるアンモニウム塩、特にBuNHClを分離するために行われる。例えば、n-ヘキサン、i-ヘキサン、及び/又はn-ヘプタンを溶媒として使用する場合、アンモニウム塩、例えば、BuNHClは定量的に沈殿するが、一方、中間体[W(NBu)(NHBu)]は溶液中に残存する。中間体[W(NBu)(NHBu)]を単離する状況では、いくつかの濾過工程、任意選択で、清浄化媒体、例えば、活性炭又はシリカ、例えばCelite(登録商標)による1回以上の濾過を提供することもできる。アンモニウム塩負荷を含む濾過ケーキを少量の揮発性溶媒で洗浄して、アンモニウム塩負荷という負荷に含まれる可能性のある任意の生成物を抽出することができる。したがって、有利なことに、得られるアンモニウム塩負荷、例えば、BuNHClによる、工程b)において生成されるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン錯体の夾雑が回避される。
【0044】
方法の別の変形例は、工程b)において[W(NBu)(NHBu)]の反応前に単離される[W(NBu)(NHBu)]を提供する。単離は、全ての揮発性成分、すなわち、溶媒又は溶媒混合物M及び未反応である、すなわち、過剰に使用された任意のBuNHを除去することを含んでいてもよい。特許請求される方法の更なる実施形態では、[W(NBu)(NHBu)]の単離は、反応容器の内部に陰圧pを適用することを含む。陰圧pは、他の反応条件の関数として、特に溶媒の関数として、例えば、10-3~10mbarである。これにより、例えば、工程a)から溶媒又は溶媒混合物を完全に又はほぼ完全に分離し、再利用することが可能になる。これは、経済的及び環境保護的な観点から特に有利である。
【0045】
単離は、例えば、「バルブ-ツー-バルブ」によって、母液の体積を減少させる、すなわち、濃縮する、溶媒を添加及び/若しくは溶媒交換して、生成物を母液から沈殿させる、並びに/又は不純物及び/若しくは遊離体を除去する、生成物を洗浄及び乾燥することなどの、更なる方法工程を含んでいてもよい。更に、単離は、蒸留及び/又は昇華及び/又は結晶化及び/又は再結晶化を含むことが提供され得る。
【0046】
原則として、特に本願で特許請求される方法の工程b)による、[W(NBu)(NHBu)]の後半の反応に精製は必要とされない。精製が依然として望まれる場合及び/又は必要である場合、単離は、蒸留及び/又は昇華及び/又は結晶化及び/又は再結晶を含んでいてもよい。[W(NBu)(NHBu)]の昇華は、かなり容易かつ迅速に行うことができる。加えて、[W(NBu)(NHBu)]の昇華の結果として、文献に記載のトルエンからの再結晶とは異なり、有利なことに、収率の著しい増加が達成され得る(実施形態1を参照)。
【0047】
この単離及び任意選択で精製された化合物[W(NBu)(NHBu)]は、後で使用するために保管することもできる。
【0048】
特許請求される方法の更なる実施形態では、工程b)において、モル比[W(NBu)(NHBu)]:HNRは≦1:4である。正確に1:4、すなわち0.25のモル比であっても、かなり大過剰のアミン、HNR、すなわち、技術的に必要とされるこの遊離体のモル当量の2倍が使用される。個々の場合において選択される過剰のHNRのレベルは、特に、例えば溶媒又は溶媒混合物などの他に選択される反応パラメータを考慮して、特に、遊離体として工程b)においてそれぞれ使用される第2級アミンの反応性に依存する。
【0049】
別の実施形態では、溶媒Mは、非プロトン性溶媒を含む。特許請求される方法の別の実施形態は、溶媒Mが非プロトン性溶媒Mと混和性であるか又は同一であることを提供する。この文脈において、用語「同一」は、以下の段落における説明から推測することができるように、2つの異なる意味を有する。
【0050】
工程a)の完了後、本反応混合物は、例えば、副生成物として生成されるアンモニウム塩、例えば、BuNHClを分離するために濾過工程に供されてもよい。この目的のために、工程a)からの原生成物(raw product)[W(NBu)(NHBu)]を含有する濾液を、例えば、別の容器に回収してよく、そして、アンモニウム塩、例えば、BuNHClの分離後、対応する反応容器に再び移してよい。これは、例えば、ポンピング動作によって行うことができる。この場合、溶媒Mは、非プロトン性溶媒Mを含むか、又は更なる溶媒が添加されない場合は、当該溶媒と同一である。更に、非プロトン性溶媒又は溶媒混合物Mを、対応する反応容器の内部に陰圧を適用することによって除去し、戻さないことを提供することができる。これは、例えば、工程b)による反応について、非プロトン性溶媒Mとは異なる溶媒Mが好ましい場合に必須である。原生成物[W(NBu)(NHBu)]が、非プロトン性溶媒Mを除去した後、場合によっては当該溶媒の残渣を依然として有している場合、溶媒Mが溶媒Mと混和性である場合、工程b)による更なる反応が有利である。用語「混和性」は、既に上で定義されている。工程a)からの原生成物を中間的に単離し、任意選択で精製及び保管する場合、それは、工程b)による反応について、他の反応条件の選択に応じて、非プロトン性溶媒Mと同一である溶媒Mにも溶解することができる。例えば、n-ヘキサンを非プロトン性溶媒Mとして使用した場合、次に、n-ヘキサンを溶媒Mとして使用することができ、後者は、任意選択で、プロセスから再利用してもよいが、必ずしも再利用する必要はない。
【0051】
特許請求される方法の変形例では、溶媒Mを含む非プロトン性溶媒は、炭化水素、ベンゼン、及びベンゼン誘導体からなる群から選択される。例えば、溶媒Mを含む非プロトン性溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、シクロヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びこれらの異性体からなる群から選択される。n-ヘキサン、i-ヘキサン、及びn-ヘプタンが好ましく、これらの溶媒のうちの少なくとも1つを含む溶媒混合物も好ましい。
【0052】
特許請求される方法の更に別の実施形態は、溶媒Mが反応性溶媒を含むことを提供する。本発明の文脈において、用語「反応性溶媒」は、化学的に不活性ではない溶媒を意味する。それぞれの反応条件下で、反応性溶媒は、潜在的反応物質と、例えば、遊離体及び/又は生成物と反応し得る。反応性溶媒の反応性のタイプ及び程度は、対応する反応混合物中に存在する反応性溶媒の濃度、潜在的反応物質、対応する反応混合物中に存在する潜在的反応物質の濃度及び反応性、並びに各場合に選択される他の反応条件に依存する。
【0053】
特許請求される方法の更なる変形例では、反応性溶媒は、アミンHNRを含む。特許請求される方法の別の実施形態では、溶媒Mが、反応性溶媒としてのアミンHNRと少なくとも1つの非プロトン性溶媒とを含む溶媒混合物を構成することが提供される。ここで、少なくとも1つの非プロトン性溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタン、n-ノナン、n-デカン、n-ウンデカン、n-ドデカン、シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン、1-ウンデセン、1-ドデセン、シクロヘキセン、ベンゼン、トルエン、キシレン、及びこれらの異性体からなる群から選択される。非プロトン性溶媒の選択を決定付けるものは、アミンHNR及び非プロトン性溶媒又は溶媒混合物が混和性である、すなわち、少なくとも工程b)による反応中に混和性である、すなわち、2つの相として存在しないことである。
【0054】
特許請求される方法の更なる実施形態は、モル比[W(NBu)(NHBu)]:HNRが1:200~1:10,000であることを提供する。
【0055】
更に別の実施形態では、アミンHNR自体が反応性溶媒である。次に、[W(NBu)(NHBu)]の反応は、HNRを用いて、例えば、遊離体又は反応物質としての、及び唯一の溶媒としてのアミンHNR中で実施される。同時に、溶媒として使用されるアミンHNRの一部が再利用されることが提供される。
【0056】
特許請求される方法の別の変形例では、工程b)は、対応する反応容器の温度T及び/又は圧力pで実施される。
【0057】
温度Tとは、対応する反応容器の内部温度Tを意味し、圧力pとは、対応する反応容器の内圧pを意味する。
【0058】
温度T及び/又は圧力pにおいて、アミンNHRのモル分率の少なくとも一部は、液体又は溶解形態で存在する。具体的には、使用されるアミンNHRの総モル分率の少なくとも一部は、遊離体として提供されるアミンNHRのモル分率に対応し、その結果、工程b)における反応が完了まで進行することができることが提供される。温度T及び圧力pは、選択されたアミンNHR及び他の反応条件、例えば溶媒の選択の関数として選択される。特許請求される方法の本明細書に記載される実施形態は、例えば、使用されるアミンNHRが、例えばジメチルアミンなどのかなり低い沸点を有する場合に提供される。その場合、温度T及び圧力pを調整することによって、特に温度Tを下げるか又は圧力pを増加させることによって、対応するアミンを液体状態に移行させ及び/又はこの状態で一定時間保持することが、工程b)の実施に有利である。更に、本明細書に記載される特許請求される方法の変形例は、遊離体及び反応溶媒の両方として使用されるアミンNHRが固体である場合、又は他に選択された反応条件下で固体として存在する場合に、有利に提供される。加えて、特許請求される方法のこの変形例は、反応物質としてのみ使用されるアミンNHRが、他に選択された反応条件下で、特に非プロトン性溶媒Mと混和性ではないか又はそれに可溶性である場合に有利である。
【0059】
特許請求される方法の更なる実施形態では、工程b)において、溶媒M中における工程a)から得られた[W(NBu)(NHBu)]とアミンHNRとの反応は、
i)[W(NBu)(NHtBu)]を
-固体として、
又は
-溶媒M中の溶液若しくは懸濁液として提供する工程
と、
ii)当該アミンHNRを添加する工程と、を含み、
当該アミンHNRの添加中及び/又は添加後に、[W(NBu)(NHBu)]と当該アミンHNRABとの反応が起こる。
【0060】
溶媒Mはまた、溶媒混合物であってもよい、すなわち、2つ以上の溶媒を含んでいてもよい。
【0061】
方法の一実施形態では、工程b)ii)において、工程b)i)で提供される化合物[W(NBu)(NHBu)]にアミンHNR
-気体若しくは液体として、
又は
-溶媒Mに溶解した状態で添加する。
【0062】
方法の変形例は、工程b)ii)において、アミンHNRが投入装置を使用して添加されることを提供する。添加は、例えば、液滴を一度に添加するか又は注入することによって行ってよい。あるいは又は更に、遮断弁及び/又は停止弁を対応する反応容器の供給ラインに設けることができる。特に非プロトン性の溶媒M中の溶液としてのアミンHNRの添加は、他の反応パラメータの関数として、反応の過程又は発熱反応をより良好に制御するのに有利であり得る。
【0063】
方法の別の変形例は、アミンHNRの添加中及び/又は添加後に、温度Tが-60℃~50℃であることを提供する。
【0064】
温度Tとは、対応する反応容器の内部温度Tを意味する。
【0065】
方法の更なる変形例では、温度Tは、アミンHNRの添加中及び/又は添加後に-40℃~30℃である。方法の更に別の変形例では、アミンHNRの添加中及び/又は添加後の温度Tは、-30℃~20℃である。反応混合物の平均温度TD2に概ね対応する温度Tを測定するために、少なくとも1つの温度センサが提供される。温度センサは、温度Tを測定するためのものと同一であってよい。
【0066】
方法の更なる実施形態では、温度Tは、伝熱媒体Wを使用して調節及び/又は制御される。この目的のために、例えば、理想的には冷却剤及び熱媒体の両方として機能することができる伝熱媒体を含有する、クライオスタットを使用することができる。伝熱媒体Wの使用を通して、アミンHNRの添加中及び/又は添加後の期間について定義された設定値TS2からの温度Tの偏差を可能な限り緩和又は補償し得る。典型的な装置の偏差により、一定温度Tを実現することはほとんど不可能になる。しかしながら、伝熱媒体Wの使用を通して、工程a)で提供された[W(NBu)(NHBu)]とアミンHNRとの反応は、少なくとも予め選択された温度範囲内又は複数の予め選択された温度範囲内で実施することができる。例えば、残りの反応パラメータに応じて、反応の過程又は発熱反応を更により良好に制御するための温度プログラム又は温度プロファイルを提供することが有利である場合がある。この場合、例えば、第1の相のアミンHNRの添加中には、第2の相のアミンHNRの添加におけるよりも低い温度又は低い温度範囲を選択してよい。2相を超える添加、したがって、2つを超える予め選択された温度又は温度範囲を提供することも可能である。添加後、温度Tを漸増的に増加させるために、1つ以上の相を同様に提供することができる。全体として、発熱反応又は反応の過程のより良好な制御は、このような温度プログラム又は温度プロファイルによって達成される。このようにして、対応する生成物[W(NBu)(NR](I)の非特異的副反応及び/又は分解を防止又は少なくとも低減することができる。
【0067】
特許請求される方法の更に別の変形例では、[W(NBu)(NR](I)は、工程b)の後に単離される。
【0068】
溶液中の一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を、いずれの場合も、そのまま更に反応させるのではなく、単離し、次いで、更に保管及び/又は使用する場合、その単離は、1つ以上の工程を含んでいてよい。
【0069】
方法の変形例において、[W(NBu)(NR](I)の単離は、対応する反応容器の内部に陰圧pを適用することを含む。陰圧pは、他の反応条件の関数として、特に溶媒の関数として、例えば、10-3~10mbarである。これにより、例えば、工程b)から溶媒又は溶媒混合物を完全に又はほぼ完全に分離し、再利用することが可能になる。これは、経済的及び環境保護的な観点から特に有利である。このような低陰圧を適用することにより、反応中に放出されるBuNH、及び概して、未反応のアミンHNRも除去される。後者を定量的に除去するために、任意選択で、アミンHNRに応じてより大きな陰圧を選択してもよい。
【0070】
このようにして、すなわち、このような低陰圧を適用することにより、[W(NBu)(NMe]を単離したとき、未反応であるか又は溶媒として使用されたジメチルアミン、及び工程b)における反応中に放出されたtertブチルアミンが容易かつ定量的に除去された。対応する反応容器に残存する化合物[W(NBu)(NMe]を、例えば、トランス凝縮又は蒸留により更に精製することは、NMRスペクトル分析によれば、必要ではなかった。これは、不純物、副生成物、又は分解生成物による外来性シグナルが[W(NBu)(NMe]のH-NMR又は13C-NMRスペクトルにおいて観察されなかったためである。
【0071】
[W(NBu)(NR](I)の単離はまた、以下の方法工程のうちの1つ以上を含んでいてもよい:例えば、「バルブ-ツー-バルブ」によって、母液の体積を減少させる、すなわち、濃縮する、生成物を母液から沈殿させる並びに/又は不純物及び/若しくは遊離体を除去するために溶媒を添加及び/若しくは溶媒交換する、生成物を洗浄及び乾燥する。更に、単離は、蒸留及び/又は昇華化及び/又は再結晶化を含むことが提供され得る。
【0072】
概して、その単離後、生成物[W(NBu)(NR](I)の後半の反応又は使用に精製は必要とされない。しかしながら、例えば、トランス凝縮及び/又は蒸留及び/又は昇華による精製を提供することが可能である。
【0073】
一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成について特許請求される方法を用いると、先行技術の不利点が克服される。特に、特許請求される方法によって得ることができる化合物は、すなわちリチウム含有遊離体、例えば、リチウムジメチルアミドなどが存在しないことから、本質的にリチウム不純物を含まない。したがって、タングステン層又はタングステン含有層の堆積のための前駆体として特に好適である。
【0074】
目的は、上記の例示的な実施形態のうちの1つによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成方法によって得ることができる、一般式
[W(NBu)(NR](I)
(式中、R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択される)
によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物によって更に達成される。
【0075】
一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、有利なことに、2段階合成において、特に容易かつ経済的に生成することができる。タイプ[W(NBu)(NR](I)の化合物は、生成可能な更なる蒸留及び/又は昇華による精製を伴わない場合であっても高純度で再現可能である。しかしながら、例えば、トランス凝縮及び/又は蒸留及び/又は昇華による精製を提供することが可能である。一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、タングステン層又はタングステン含有層を有する高品質の基板を製造するための前駆体の純度要件を満たしている。具体的には、これらは、リチウム含有遊離体、例えば、リチウムジメチルアミドを使用せずに製造することができ、したがって、リチウム不純物を含まずに得ることができる。加えて、ビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物はまた、工業規模で生成することができ、標的化合物の同等の収率及び純度が達成される。再現可能な収率は、例えば、工業規模にアップスケールする場合であっても、[W(NBu)(NMe]について満足のゆくものである。
【0076】
例えば、[W(NBu)(NMe]及び[W(NBu)(NEtMe)]などの一般式Iによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物が知られている。上記の例示的な実施形態のうちの1つによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成方法により得ることができるタイプ[W(NBu)(NR]の化合物は、先行技術の方法によって生成され得るものとは特性が著しく異なる。したがって、単離された標的化合物は、複雑な精製を行うことなく、従来技術の方法によって生成され、2回の分別蒸留によって精製されたタイプ[W(NBu)(NR]の化合物と少なくとも同じ高い純度を有する。具体的には、当該化合物は、本質的にリチウム不純物を含まず、これは、すなわち、生成中にリチウム含有遊離体、例えば、リチウムジメチルアミドなどを省略したことに起因する。まず、補助塩基の存在下でWClBuNHと反応させることによって遊離体[W(NBu)(NHBu)]が生成される場合、工程a)及びb)全体で、それぞれに所望の標的化合物は別にして、定義される、かなり容易に分離可能な副生成物、典型的にはアンモニウム塩、例えば、BuNHCl及びBuNHしか生成されない。更に、過剰の、すなわち、未反応のアミンHNRを除去する必要があり得る。工程a)において沈殿しているアンモニウム塩の比較的容易な分離可能性は、非プロトン性溶媒の有利な選択によって説明することもできる。例えば、n-ヘキサン、i-ヘキサン、及び/又はn-ヘプタンを溶媒として使用する場合、アンモニウム塩、例えば、BuNHClは定量的に沈殿するが、一方、標的化合物、例えば、[W(NBu)(NMe]は溶液中に残存する。したがって、有利なことに、得られるアンモニウム塩負荷、例えば、BuNHClによる、対応するビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン錯体の夾雑が回避される。特許請求される方法の工程b)で得られたBuNHは、かなり揮発性が高く、したがって、すなわち、対応する反応容器の内部にわずかな陰圧を適用することによって、容易に定量的に除去することができる。概して、工程b)において過剰に使用されるHNR、特に、例えばHNMeなどの非常に揮発性の高いアミンにも同じことが当てはまる。更に、困難なしには分離することができない又は全く分離することができない、例えばタングステン酸リチウム錯体塩といった定義できない副生成物は形成されないことは、有利である。工程a)で生成されたアンモニウム塩、例えば、BuNHClを、工程b)における反応前の濾過工程によって容易かつ定量的に除去できることが、特に有利である。いずれも場合も工程b)を行った後に溶液中に存在するタイプ[W(NBu)(NR](I)の化合物は、例えば、揮発性成分を全て除去することによって簡単に単離することができる。更に、単離された化合物は、アミン不純物も使用される溶媒又は溶媒混合物の残基も有さない。したがって、対応する標的化合物は、更に精製することなく単離後に使用及び/又は保管することができる。
【0077】
上記の例示的な実施形態のうちの1つによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成方法によって得ることができる、一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の一実施形態では、R及びRは、独立して、Me、Et、Pr、Pr、Bu、Bu、Bu、Bu、CH Bu、CH Bu、CH(Me)(Pr)、CH(Me)(Pr)、CH(Et)、C(Me)(Et)、C11、CH、及びCからなる群から選択される。例示的な化合物は、[W(NtBu)(NMe]及び[W(NBu)(NEtMe)]である。
【0078】
上記の例示的な実施形態のうちの1つによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成方法によって得ることができる、一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の別の実施形態では、Rは、2-フルオロエチル、2,2-ジクロロ-2-フルオロエチル、2-クロロエチル、2-ブロモエチル、2,2-ジブロモエチル、2,2,2-トリブロモエチル、ヘキサフルオロイソプロフィル、(2,2-ジクロロシクロプロピル)メチル、及び(2,2-ジクロロ-1-フェニル-シクロプロピル)メチルからなる群から選択される。
【0079】
その純度、特にリチウム不純物が存在しないことから、特許請求される方法で生成することができる一般式[W(NBu)(NR](I)による化合物は、基板の表面上に高品質のタングステン層又はタングステン含有層を生成するための前駆体として特によく適している。
【0080】
目的は、また、
●上記の例示的な実施形態のうちの1つによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成方法によって得られる、
又は
●基板の表面上にタングステン層若しくはタングステン含有層を生成するための上記の例示的な実施形態のうちの1つによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成方法によって得ることができる、一般式
[W(NBu)(NR](I)、
(式中、R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択される)
によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の使用によっても達成される。
【0081】
これは、
●上記の例示的な実施形態のうちの1つによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成方法によって得られる、
又は
●上記の例示的な実施形態のうちの1つによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成方法によって得ることができる、一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を使用して、基板の表面上にタングステン層又はタングステン含有層を生成する方法であって、
a)一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を提供する工程
と、
b)当該基板の当該表面上に当該タングステン層又は当該タングステン含有層を堆積させる工程と、を含む、方法である。
【0082】
タングステン含有層は、例えば、WN、WCN、WSiN、WSiN、又はWOの層であってよい。
【0083】
用語「層」は、表現「膜」と同義であり、層の厚さ又は膜の厚さに関するいかなる記述もなすものではない。例えば、コランダム箔又は薄い金属箔を基板として使用することができる。基板自体は、構成要素の一部であり得る。タングステン層又はタングステン含有層は、蒸着法によって、具体的には、様々なALD法(原子層堆積)及びCVD法(化学蒸着)によって堆積させることができる。
【0084】
その高純度により、使用されるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、基板の表面上に高品質のタングステン層及びタングステン含有層を生成するための前駆体として特によく適している。特に、その生成に使用される方法に起因して、既知の方法によって得ることができる化合物とは異なり、当該化合物は、コーティングプロセスに不利である、したがって、コーティングされた基板の性能にとって不利であるリチウム不純物を本質的に含まない。
【0085】
基板の表面上にタングステン層若しくはタングステン含有層を生成するための、既に記載した例示的な実施形態のうちの1つによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成方法によって得られる若しくは得ることができる、一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の使用の一実施形態では、又は基板の表面上にタングステン層若しくはタングステン含有層を生成する方法の一実施形態では、基板はウエハである。ウエハは、ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、SiOなどのガラス、及び/若しくはシリコーンなどのプラスチックを含んでもよく、又は、1つ以上のこのような材料から完全になってもよい。ウエハはまた、それぞれ1つの表面を有する1つ以上のウエハ層を有することもできる。タングステン層又はタングステン含有層の生成は、1つ以上のウエハ層の表面上に提供されてもよい。
【0086】
目的は、更に、一般式
[W(NBu)(NR](I)
(式中、R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択され、ビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物[W(NBu)(NMe]及び[W(NBu)(NEtMe)]は除外される)
によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物によって達成される。
【0087】
一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、有利なことに、2段階合成において、特に容易かつ経済的に生成することができる。タイプ[W(NBu)(NR](I)の化合物は、任意の更なる蒸留及び/又は昇華による精製を伴わない場合であっても、高純度で再現可能に生成することができる。しかしながら、例えば、トランス凝縮及び/又は蒸留及び/又は昇華による精製を提供することが可能である。一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、タングステン層又はタングステン含有層を有する高品質の基板を製造するための前駆体の純度要件を満たしている。具体的には、リチウム含有遊離体、例えば、リチウムジメチルアミドを使用せずに製造することができ、したがって、リチウム不純物を含まずに得ることができる。加えて、ビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物はまた、工業規模で生成することができ、標的化合物の同等の収率及び純度が達成される。
【0088】
その純度、特にリチウム不純物が存在しないこと、及び、工業規模で容易かつ経済的に生成できることから、一般式[W(NBu)(NR](I)による化合物は、基板の表面上に高品質のタングステン層又はタングステン含有層を生成するための前駆体として特によく適している。
【0089】
目的は、また更に、基板の表面上にタングステン層又はタングステン含有層を生成するための、一般式
[W(NBu)(NR](I)、
(式中、R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択され、ビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物[W(NBu)(NMe]は除外される)
によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物
の使用によって達成される。
【0090】
本発明は、一般式[W(NBu)(NR](I)(式中、
及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択される)
によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を使用して、基板の表面上にタングステン層又はタングステン含有層を生成する方法であって、
a)一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を準備する工程
と、
b)当該基板の当該表面上に当該タングステン層又は当該タングステン含有層を堆積させる工程と、を含む、方法に関する。
【0091】
タングステン含有層は、例えば、WN、WCN、WSiN、WSiN、又はWOの層であってよい。
【0092】
用語「層」は、表現「膜」と同義であり、層の厚さ又は膜の厚さに関するいかなる記述もなすものではない。例えば、コランダム箔又は薄い金属箔を基板として使用することができる。基板自体は、構成要素の一部であり得る。タングステン層又はタングステン含有層は、蒸着法によって、具体的には、様々なALD法(原子層堆積)及びCVD法(化学蒸着)によって堆積させることができる。
【0093】
その高純度により、使用されるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、基板の表面上に高品質のタングステン層及びタングステン含有層を生成するための前駆体として特によく適している。特に、その生成に使用される方法に起因して、既知の方法によって得ることができる化合物とは異なり、当該化合物は、コーティングプロセスに不利である、したがって、コーティングされた基板の性能にとって不利であるリチウム不純物を本質的に含まない。
【0094】
基板の表面上にタングステン層若しくはタングステン含有層を生成するための一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の使用の一実施形態では、又は基板の表面上にタングステン層若しくはタングステン含有層を生成する方法の一実施形態では、基板はウエハである。ウエハは、ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、SiOなどのガラス、及び/若しくはシリコーンなどのプラスチックを含んでいてもよく、又は上記材料のうちの1つ以上から完全になっていてもよい。ウエハはまた、それぞれ1つの表面を有する1つ以上のウエハ層を有することもできる。タングステン層又はタングステン含有層の生成は、1つ以上のウエハ層の表面上に提供されてもよい。
【0095】
目的は、更に、表面上にタングステン層又はタングステン含有層を有する基板であって、当該タングステン層又は当該タングステン含有層が、上記の例示的な実施形態のうちの1つによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成方法によって得られる又は得ることができる、一般式[W(NBu)(NR](I)(式中、R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択される)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を使用して生成することができる、基板によって達成される。
【0096】
更に、目的は、更に、表面上にタングステン層又はタングステン含有層を有する基板であって、当該タングステン含有層の当該タングステン層が、一般式[W(NBu)(NR](I)(式中、R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択され、ビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物[W(NBu)(NMe]は除外される)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を使用して生成することができる、基板によって達成される。
【0097】
タングステン含有層は、例えば、WN、WCN、WSiN、WSiN、又はWOの層であってよい。
【0098】
用語「層」は、表現「膜」と同義であり、層の厚さ又は膜の厚さに関するいかなる記述もなすものではない。例えば、コランダム箔又は薄い金属箔を基板として使用することができる。基板自体は、構成要素の一部であり得る。タングステン層又はタングステン含有層は、蒸着法によって、具体的には、様々なALD法(原子層堆積)及びCVD法(化学蒸着)によって堆積させることができる。
【0099】
その高純度により、使用されるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、高品質のタングステン層及びタングステン含有層を生成するための前駆体として特によく適している。特に、その生成に使用される方法に起因して、既知の方法によって得ることができる化合物とは異なり、当該化合物は、コーティングプロセスに不利である、したがって、コーティングされた基板の性能にとって不利であるリチウム不純物を本質的に含まない。
【0100】
特に、上記の例示的な実施形態のうちの1つ以上によってビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を生成する方法によって得られる又は得ることができる、一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を使用して生成することができる、タングステン層又はタングステン含有層を表面上に有する基板の一実施形態では、基板はウエハである。ウエハは、ケイ素、炭化ケイ素、ゲルマニウム、ヒ化ガリウム、リン化インジウム、SiOなどのガラス、及び/若しくはシリコーンなどのプラスチックを含んでいてもよく、又は上記材料のうちの1つ以上から完全になっていてもよい。ウエハはまた、それぞれ1つの表面を有する1つ以上のウエハ層を有することもできる。タングステン層又はタングステン含有層の生成は、1つ以上のウエハ層の表面上に提供されてもよい。
【0101】
目的は、更に、エレクトロニクスコンポーネントを製造するための、既に記載した例示的な実施形態のうちの1つによってビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を生成する方法によって得られる又は得ることができる、一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の使用によって更に達成される。本発明の文脈において、用語「エレクトロニクスコンポーネント」はまた、「電子部品」を意味することを意図する。
【0102】
これは、上記の例示的な実施形態のうちの1つによるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物の生成方法によって得られる又は得ることができる、一般式[W(NBu)(NR](I)(式中、R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択される)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を使用してエレクトロニクスコンポーネントを製造する方法であって、
以下の工程:
a)一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を準備する工程と、
b)基板の表面上にタングステン層又はタングステン含有層を堆積させる工程
と、
c)エレクトロニクスコンポーネントを完成させる工程と、を含む、方法である。
【0103】
目的は、更に、一般式[W(NBu)(NR](I)(式中、R及びRは、独立して、1~20個の炭素原子を有する直鎖及び分枝鎖アルキル基からなる群から選択され、ビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物[W(NBu)(NMe]は除外される)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を使用して、エレクトロニクスコンポーネントを製造する方法であって、
a)一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を準備する工程と、
b)基板の表面上にタングステン層又はタングステン含有層を堆積させる工程
と、
c)エレクトロニクスコンポーネントを完成させる工程と、を含む、方法によって更に達成される。
【0104】
本発明との関連において、用語「エレクトロニクスコンポーネント」はまた、「電子部品」を意味することを意図する。
【0105】
その純度により、使用されるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、タングステン層又はタングステン含有層を有する高品質の基板を製造するための前駆体として特によく適している。上記基板は、エレクトロニクスコンポーネント及び電子部品の製造に使用される。また、使用されるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、上記の2段階合成により良好かつ再現可能な収率及び高純度で、特に容易かつ経済的に生成することができる。具体的には、当該化合物は、本願で特許請求される方法によって、リチウムを含まずに生成することができる。当該化合物は、工業規模での使用に好適である。
【0106】
特許請求される方法では、定義されるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、高純度かつ良好な収率で、容易に、経済的に、かつ再現可能に生成することができる。2段階合成で生成することができる化合物は、H-NMRスペクトルによれば、単離後に既に高純度である。分別蒸留及び/又は昇華による対応する単離された原生成物の複雑な精製は、この目的のためには必要とされない。しかしながら、トランス凝縮及び/又は蒸留及び/又は昇華及び/又は結晶化及び/又は再結晶化も提供され得る。その高純度、特にリチウム不純物及び無機塩に起因する不純物が存在しないことから、特許請求される方法によって生成可能な化合物は、タングステン層又はタングステン含有層を有する高品質の基板を生成するための前駆体として使用するのに好適である。一般式[W(NBu)(NR](I)の化合物は、高純度であることから、例えば、それぞれが例えば窒化タングステン層からなるか又は含む、高品質の接点材料、バリア層、薄膜コンデンサ及び電界効果トランジスタ用電極を製造するために使用され得る。加えて、特許請求される方法は、標的化合物の同等の収率及び純度で工業規模でも実施できることを特徴とする。全体として、特許請求される方法は、環境保護的及び経済的な観点から満足のいくものとして評価されるべきものである。
【0107】
本発明の他の特徴、詳細、及び利点については、特許請求の範囲の表現と、以下の例示的な実施形態の説明から得られる。
【実施例
【0108】
<[W(NBu)(NHBu)]及び[W(NBu)(NMe]を合成するためのプロセス仕様>
【0109】
材料及び方法:
全ての反応を保護ガス雰囲気中で行った。従来のシュレンク技術を使用して作業を行い、窒素又はアルゴンを保護ガスとして使用した。対応する真空装置又はシュレンクラインを、Vacuubrand製の回転式ベーンポンプに接続した。遊離体、試薬、及び合成される生成物は、窒素雰囲気下でMBraun製のグローブボックス(モデルMB 150 BG-1又はLab Master 130)内で秤量及び保管した。
【0110】
重水素化溶媒Cを、K/Na合金で脱水し、次いで、凝縮させ、分子ふるいを通して保管した。
【0111】
全ての核磁気共鳴スペクトル測定は、AV II 300装置において自動モードで、又はAV III HD 250若しくはAV III HD 300装置において手動モードで行った。H-及び13C-NMRスペクトルを、内部標準として、溶媒の対応する残留プロトンシグナルに対して較正した:H-NMRスペクトル:C:7.16ppm(s);13C-NMRスペクトル:C:128.0ppm(tr)。化学シフトはppmで示され、δスケールを指す。全てのシグナルには、そのスプリットパターンによって以下の略語が提供される:s(一重項)。
【0112】
物質において、赤外スペクトルの測定は、通常、Bruker製のAlpha ATR-IR分光計で実施された。吸収帯は波数(cm-1)で示され、強度は、w(弱い)、m(中程度に強い)、st(強い)、vst(非常に強い)という略語で説明される。スペクトルは常に、最も強い強度を有するバンドに対して補正した。
【0113】
元素分析は、Elementar製のvario MICRO cube燃焼装置で実施した。サンプル調製は、冷間圧接し、測定まで保護ガス雰囲気中に保存した、スズ製るつぼ内で物質を秤量することによって、窒素を満たしたグローブボックス内で行った。水素、炭素、及び窒素の元素を燃焼分析によって決定し、その情報は常に質量パーセントで与えられる。
【0114】
全てのEI質量スペクトル分析は、Joel製のAccuTOF GCvスペクトル計で行った。空気感受性及び水分感受性のサンプルを、グローブボックス内でるつぼ中にて調製し、測定まで保護ガス雰囲気中に保存した。高分解能スペクトルの場合、同位体の最も高い強度を有するシグナルパターンをそれぞれ示す。
【0115】
熱重量分析は、Mettler Toledo製のTGA/DSC 3+STARシステムで行った。このプロセスでは、各TGAについて、結合されたSDTA測定を実施した。サンプルを、凝集の方法又は状態に応じて、酸化アルミニウム、アルミニウム、又はサファイアるつぼ内で測定した。サンプルを、25℃から最終温度まで特定の加熱速度で加熱した。得られたスペクトルの評価は、Mettler Toledo製のSTAReソフトウェアを用いて行った。
【0116】
<実施形態1:[W(NBu)(NHBu)]の生成>
【0117】
合成は、Nugent及びHarlowの仕様に基づいて実施した。(W.A.Nugent,R.L.Harlow,Inorg.Chem.1980,19,777-779)
【0118】
BuNH(21.0g、287mmol、11.4当量)を、350mLのn-ヘキサンに添加し、WCl(10.0g、25.2mmol、1.00当量)を室温で少しずつ添加した。反応混合物はわずかに黄色に変わったが、無色の固形物が沈殿した。反応混合物を室温で72時間撹拌した。沈殿した固形物を濾別し、濾液の溶媒を高真空(10-3~10-2mbar)で除去した。生成物を、高真空(10-3~10-2mbar)で65℃にて昇華精製し、収率71%で淡黄色の固形物(8.28g、17.6mmol)として得た。
【0119】
あるいは、生成物を-24℃でトルエンから結晶化させてもよい。しかしながら、収率はわずか45~51%である。
【0120】
H-NMR(C,300MHz,300K):δ/ppm=1.27(s,18H,NCMe),1.45(s,18H,NHCMe3),5.22(s,2H,NHCMe);13C-NMR(C,75MHz,300K):δ/ppm=33.7(NCMe),33.8(NHCMe),53.3(NHCMe),66.0(NCMe);TGA(T=25℃,T=900℃,10℃/min):段階:1,3%分解:125.3℃,TMA:195.7℃、全質量分解:95.0%;SDTA:TM(Onset):85.3℃,TM(max.):90.0℃,TD(Onset):137.3℃,TD(max.):150.8℃.
【0121】
<実施形態2:[W(NBu)(NMe]の生成>
【0122】
[W(NtBu)(NHBu)](250mg、0.53mmol、1.00当量)を添加し、液体窒素中で凍結させ、標準的な方法によって予め乾燥させておいたHNMe(5.13g、114mmol、215当量)が凝縮した。[W(NBu)(NHBu)]が溶解するまで、反応混合物を-20℃までゆっくり加熱した。淡黄色の溶液を-15℃まで加熱し、2時間撹拌した。橙色の反応混合物を室温にし、過剰のHNMeを蒸発させた。生成されたHNMe及びBuNHの残渣を、高真空(10-3~10mbar)で除去した。生成物を、収率93%(206mg、0.50mmol)で、橙色の液状物の形態で得られた。
【0123】
H-NMR(C,300MHz,300K):δ/ppm=1.41(s,18H,CMe),3.51(s,12H,NMe);13C-NMR(C,75MHz,300K):δ/ppm=34.1(CMe),53.8(NMe),66.2(CMe);IR:
【数1】
= 2965(m),2919(m),2896(m),2857(m),2821(m),2776(m),1450(m),1421(w),1354(m),1288(m),1240(vst),1212(st),1159(w),1142(w),1125(w),1054(w),1024(w),975(st),958(vst),806(w),780(w),696(w),636(w),561(st),476(w);C1230Wの元素分析:計算値:C:34.79%,H:7.30%,N:13.53%,実測値:C:33.21%,H:6.74%,N:14.89%;HR-EI-MS:C1230Wの計算値:414.1979m/z,実測値:414.1964m/z;TGA(TS=25℃,T=600℃,10℃/min):段階:1,3%分解:120.7℃,TMA:185.2℃、全質量分解:97.3%;SDTA:TD(Onset):150.3℃,TD(max.):186.9℃。
【0124】
本発明は、上述の実施形態のうちの1つに限られず、多くの方法で修正変更され得る。
【0125】
本発明は、[W(NBu)(NHBu)]から出発して、一般式[W(NBu)(NR](I)によるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物を生成するための2段階合成に関することが分かる。本発明は、更に、特許請求される方法によって得ることができる一般式[W(NBu)(NR](I)による化合物、[W(NBu)(NMe]及び[W(NBu)(NEtMe)]を除く一般式[W(NBu)(NR](I)による化合物、化合物[W(NBu)(NR](I)の使用、及び表面上にタングステン層又はタングステン含有層を有する基板に関する。
【0126】
記載される方法では、タイプ[W(NBu)(NR](I)の定義されるビス(tertブチルイミド)ビス(ジアルキルアミド)タングステン化合物は、高純度かつ良好な収率で、容易に、効率的に、経済的に、かつ再現可能に生成することができる。この方法は、工業規模で実施することもできる。既に単離した後、複雑な精製を行なうことなく、化合物は、いかなるNMRスペクトルで検出可能な不純物も有さない。その高純度、特にリチウム不純物が存在しないことから、当該化合物は、タングステン層又はタングステン含有層を有する高品質の基板を製造するための前駆体として好適である。例えば、当該化合物は、例えば窒化タングステンを含む高品質の接点材料又はバリア層の製造に好適である。
【0127】
構造上の詳細、空間的配置、及び方法工程を含む、特許請求の範囲、明細書、及び図面から得られる全ての特徴及び利点は、単独で、及び最も多様な組み合わせでの両者において、本発明に不可欠であり得る。
【国際調査報告】