(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】神経障害の治療方法
(51)【国際特許分類】
A61K 38/48 20060101AFI20220120BHJP
A61P 25/00 20060101ALI20220120BHJP
A61P 25/28 20060101ALI20220120BHJP
A61P 25/16 20060101ALI20220120BHJP
A61P 21/02 20060101ALI20220120BHJP
C12M 1/00 20060101ALI20220120BHJP
C12M 1/34 20060101ALI20220120BHJP
C12Q 1/02 20060101ALI20220120BHJP
C12Q 1/37 20060101ALI20220120BHJP
C12Q 1/6813 20180101ALI20220120BHJP
C12Q 1/6851 20180101ALI20220120BHJP
C12Q 1/686 20180101ALI20220120BHJP
C12Q 1/6869 20180101ALI20220120BHJP
G01N 33/68 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A61K38/48
A61P25/00
A61P25/28
A61P25/16
A61P21/02
A61K38/48 100
A61K38/48 110
C12M1/00 A ZNA
C12M1/34 Z
C12Q1/02
C12Q1/37
C12Q1/6813 Z
C12Q1/6851 Z
C12Q1/686 Z
C12Q1/6869 Z
G01N33/68
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021527004
(86)(22)【出願日】2019-07-22
(85)【翻訳文提出日】2021-03-22
(86)【国際出願番号】 US2019042879
(87)【国際公開番号】W WO2020023417
(87)【国際公開日】2020-01-30
(32)【優先日】2019-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-07-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521034041
【氏名又は名称】エンクリアー セラピーズ, インク.
【氏名又は名称原語表記】EnClear Therapies, Inc.
【住所又は居所原語表記】65 Parker Street, #3A, Newburyport, MA 01950, United States of America
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】マニュエル エイ. ナヴィア
(72)【発明者】
【氏名】カスパー ロエ
(72)【発明者】
【氏名】ジョナサン ジェイ. フレミング
【テーマコード(参考)】
2G045
4B029
4B063
4C084
【Fターム(参考)】
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(57)【要約】
毒性タンパク質を除去または分解できる薬剤と対象の脳脊髄液(CSF)とを接触させることを含む、毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害を有する対象の治療方法を開示する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象の脳脊髄液(CSF)を、毒性タンパク質を除去または分解できる有効量のプロテアーゼと原位置で接触させることを含む、CSF中の毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害の治療方法。
【請求項2】
前記毒性タンパク質が、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43、およびFUSからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記毒性タンパク質がタウである、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記タウタンパク質が過剰リン酸化されている、請求項3記載の方法。
【請求項5】
前記タウタンパク質が、タンパク質二量体、タンパク質オリゴマー、またはタンパク質凝集体の形態で存在する、請求項3または4記載の方法。
【請求項6】
前記タウタンパク質が可溶性である、請求項3から5までのいずれか1項記載の方法。
【請求項7】
前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)から選択される、請求項1から6までのいずれか1項記載の方法。
【請求項8】
神経障害がPSPである、請求項7記載の方法。
【請求項9】
前記神経障害がFTLDである、請求項7記載の方法。
【請求項10】
前記神経障害がADである、請求項7記載の方法。
【請求項11】
前記プロテアーゼがセリンプロテアーゼである、請求項1から10までのいずれか1項記載の方法。
【請求項12】
前記プロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、カテプシンG、カリクレイン-5、またはカリクレイン-6である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
前記毒性タンパク質がタウであり、前記プロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、カテプシンG、カリクレイン-5、またはカリクレイン-6である、請求項12記載の方法。
【請求項14】
前記毒性タンパク質がα-シヌクレインであり、前記プロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、またはカリクレイン-6である、請求項12記載の方法。
【請求項15】
前記毒性タンパク質がTDP-43であり、前記プロテアーゼが、カリクレイン-5またはカリクレイン-6である、請求項12記載の方法。
【請求項16】
前記プロテアーゼが、固体基材に固定化されている、請求項1から15までのいずれか1項記載の方法。
【請求項17】
前記固体基材が、多孔質固体基材を含む、請求項16記載の方法。
【請求項18】
前記固体基材が、架橋樹脂を含む、請求項16記載の方法。
【請求項19】
前記架橋樹脂が、アガロース樹脂を含む、請求項18記載の方法。
【請求項20】
前記プロテアーゼが前記固体基材への共有結合架橋によって固定化されている、請求項16から19までのいずれか1項記載の方法。
【請求項21】
前記固体基材が、対象に埋め込まれた装置に収容されている、請求項16から20までのいずれか1項記載の方法。
【請求項22】
前記装置が前記対象のくも膜下腔に埋め込まれている、請求項21記載の方法。
【請求項23】
前記装置がさらに、大きな生体分子を除去する分級フィルターを含む、請求項21または22記載の方法。
【請求項24】
前記対象のCSFから前記毒性タンパク質を検出する工程をさらに含む、請求項1から23までのいずれか1項記載の方法。
【請求項25】
前記検出する工程が接触させる工程の前に行われ、それによって前記対象が治療に適しているかを特定する、請求項24記載の方法。
【請求項26】
前記対象のCSFからタウタンパク質を検出する工程をさらに含む、請求項3から13までおよび16から25までのいずれか1項記載の方法。
【請求項27】
前記検出する工程が接触させる工程の前に行われ、それによって前記対象が治療に適しているかを特定する、請求項26記載の方法。
【請求項28】
治療に適すると特定される対象は、神経障害を全く有さない対象と比較して、CSF中のタウタンパク質のレベルが上昇している、請求項27記載の方法。
【請求項29】
治療に適すると特定される対象は、神経障害を全く有さない対象と比較して、CSF中の過剰リン酸化タウタンパク質のレベルが上昇している、請求項27記載の方法。
【請求項30】
治療に適すると特定される対象は、神経障害を全く有さない対象と比較して、タンパク質二量体、タンパク質オリゴマー、またはタンパク質凝集体の形態であるタウタンパク質のレベルが上昇している、請求項27記載の方法。
【請求項31】
前記対象がヒトである、請求項1から30までのいずれか1項記載の方法。
【請求項32】
治療を必要とする対象の脳脊髄液(CSF)を有効量のプロテアーゼと原位置で接触させることを含む、CSF中の毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害の治療方法での、毒性タンパク質を除去または分解できるプロテアーゼの使用。
【請求項33】
前記毒性タンパク質が、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43、およびFUSからなる群より選択される、請求項32記載の使用。
【請求項34】
前記毒性タンパク質がタウである、請求項33記載の使用。
【請求項35】
前記タウタンパク質が過剰リン酸化されている、請求項34記載の使用。
【請求項36】
前記タウタンパク質が、タンパク質二量体、タンパク質オリゴマー、またはタンパク質凝集体の形態で存在する、請求項34または35記載の使用。
【請求項37】
前記タウタンパク質が可溶性である、請求項34から36までのいずれか1項記載の使用。
【請求項38】
前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)から選択される、請求項32から37までのいずれか1項記載の使用。
【請求項39】
前記神経障害がPSPである、請求項38記載の使用。
【請求項40】
前記神経障害がFTLDである、請求項38記載の使用。
【請求項41】
前記神経障害がADである、請求項38記載の使用。
【請求項42】
前記プロテアーゼがセリンプロテアーゼである、請求項32から41までのいずれか1項記載の使用。
【請求項43】
前記プロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、カテプシンG、カリクレイン-5、またはカリクレイン-6である、請求項42記載の使用。
【請求項44】
前記毒性タンパク質がタウであり、前記プロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、カテプシンG、カリクレイン-5、またはカリクレイン-6である、請求項43記載の使用。
【請求項45】
前記毒性タンパク質がα-シヌクレインであり、前記プロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、またはカリクレイン-6である、請求項43記載の使用。
【請求項46】
前記毒性タンパク質がTDP-43であり、前記プロテアーゼが、カリクレイン-5またはカリクレイン-6である、請求項43記載の使用。
【請求項47】
前記プロテアーゼが、固体基材に固定化されている、請求項32から46までのいずれか1項記載の使用。
【請求項48】
前記固体基材が、多孔質固体基材を含む、請求項47記載の使用。
【請求項49】
前記固体基材が、架橋樹脂を含む、請求項47記載の使用。
【請求項50】
前記架橋樹脂が、アガロース樹脂を含む、請求項49記載の使用。
【請求項51】
前記プロテアーゼが、前記固体基材への共有結合架橋によって固定化されている、請求項47から50までのいずれか1項記載の使用。
【請求項52】
前記固体基材が、対象に埋め込まれた装置に収容されている、請求項47から51までのいずれか1項記載の使用。
【請求項53】
前記装置が前記対象のくも膜下腔に埋め込まれている、請求項52記載の使用。
【請求項54】
前記装置がさらに、大きな生体分子を除去する分級フィルターを含む、請求項52または53記載の使用。
【請求項55】
前記対象のCSFから前記毒性タンパク質を検出する工程をさらに含む、請求項32から54までのいずれか1項記載の使用。
【請求項56】
前記検出する工程が接触させる工程の前に行われ、それによって前記対象が治療に適しているかを特定する、請求項55記載の使用。
【請求項57】
前記対象のCSFからタウタンパク質を検出する工程をさらに含む、請求項34から44までおよび47から56までのいずれか1項記載の使用。
【請求項58】
前記検出する工程が接触させる工程の前に行われ、それによって前記対象が治療に適しているかを特定する、請求項57記載の使用。
【請求項59】
治療に適すると特定される対象は、神経障害を全く有さない対象と比較して、CSF中のタウタンパク質のレベルが上昇している、請求項58記載の使用。
【請求項60】
治療に適すると特定される対象は、神経障害を全く有さない対象と比較して、CSF中の過剰リン酸化タウタンパク質のレベルが上昇している、請求項58記載の使用。
【請求項61】
治療に適すると特定される対象は、神経障害を全く有さない対象と比較して、タンパク質二量体、タンパク質オリゴマー、またはタンパク質凝集体の形態であるタウタンパク質のレベルが上昇している、請求項58記載の使用。
【請求項62】
前記対象がヒトである、請求項32から61までのいずれか1項記載の使用。
【請求項63】
請求項1から31までのいずれか1項記載の方法による対象の神経疾患または神経障害の治療に使用される、それを必要とする対象のCSF中の毒性タンパク質を除去または分解できるプロテアーゼを含む医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年7月23日に出願された米国仮出願第62/702,188号;2018年7月23日に出願された同第62/702,191号;および2019年3月7日に出願された同第62/815,123号の利益およびそれらに対する優先権を主張するものであり、それぞれの開示内容全体が目的を問わず参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
配列表
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、この配列表はその全体が参照により本明細書に組み込まれる。2019年7月22日作成のASCIIコピーは、ECT-003WO_ST25.txtという名称であり、そのサイズは26,373バイトである。
【0003】
発明の分野
本発明は一般に、毒性タンパク質を除去または分解できる薬剤と対象の脳脊髄液(CSF)とを接触させることを含む、毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害を有すると診断された対象の治療方法に関する。
【0004】
背景
凝集タンパク質の沈着は、ほぼすべての神経変性疾患を特徴付けるものであり、このような疾患として、例えば、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、ハンチントン病、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)(Kaufman et al., Neurotherapeutics 2013, 10, 371-382)、前頭側頭型認知症(FTD)、進行性核上性麻痺(PSP)(Wray et al., Journal of Neurochemistry, 2008, 105, 2343-2352)、および大脳皮質基底核変性症(CBD)(Narasimhan at al, The Journal of Neuroscience, 2017, 37 (47), 11406-11423)が挙げられる。
【0005】
筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、前頭側頭型認知症(FTD))は進行性の末期神経疾患である。100,000人に2人が罹患するALSは、過去の症例から脳および脊髄における運動ニューロンの変性を特徴としており、進行性の痙縮、筋力の低下と消耗を経て、症状発症から通常3年以内に、呼吸不全により最終的に死に至る。最近では、認知および行動などの前頭側頭機能障害を伴う多系統障害がALS患者の最大50%に認められるようになっている(Giordana et al., Neurol. Sci., 2001 32, 9-16;Lomen-Hoerth et al., Neurology, 2003, 59, 1077-1079;およびPhukan et al., Lancet Neurol., 2007, 6, 994-1003)。
【0006】
前頭側頭葉変性症(FTLD)(臨床的には前頭側頭型認知症(FTD)とも称され、行動障害型前頭側頭型認知症(bvFTD)、意味障害型原発性進行性失語症(svPPA)、および非流暢/失文法型原発性進行性失語症(nfvPPA)を含む)は、初老期認知症の原因で2番目に多く、脳の前頭側頭葉の変性を特徴とし、知覚および記憶は比較的保持されるものの、言語機能障害を伴う人格および行動の進行性変化をもたらす(Graff-Radford and Woodruf, Neurol. 2007, 27, 48-57)。
【0007】
いずれの疾患も病因が複雑であり、遺伝的要因に加えて、環境要因がその発症に寄与する可能性が高い(Andersen and Al-Chalabi, Nat. Rev. Neurol. 2011, 7, 603-615;Paulson and Igo, Semin Neurol., 2011, 31, 449-360)。
【0008】
その病理生物学に基づけば、ALSはタンパク質のミスフォールディング障害と考えられており、他の神経変性疾患と同様にそれ自体はタンパク質異常に分類される(Grad and Cashman, Prion, 2014, 8, 33-41)。このようなタンパク質が蓄積して、運動ニューロンの病理検査で観察される凝集体となり、プリオン様の機構を介して拡散する可能性について検討されている。
【0009】
FTLD/FTDの変異型はすべて、ニューロンおよびグリア細胞に異常なタンパク質封入体(例えば、FTLD-タウ(例えば、FTD-タウまたはピック病)におけるタウ陽性封入体、FTLD-TDP(例えば、FTD-TDP)におけるユビキチン複合体化TAR DNA結合タンパク質43(TDP-43)を含有するα-シヌクレイン陰性封入体、およびFTLD-FUS(例えばFTD-FUS)における融合肉腫タンパク質封入体)を示している。
【0010】
TDP-43は、ALSおよびFTLDを有する患者の脳に見られる封入体の主成分であると同定された(Arai et al., Biochem. Biophys. Res. Commun. 2006, 351, 602;Neumann et al. Science, 2006314, 130-133)。こうした疾患を有する患者には、主にC末端のグリシンリッチ領域に位置するTARDBP遺伝子に常染色体優性ミスセンス変異が認められる(Pesiridis et al., 2009)。病理学的TDP-43は過剰リン酸化、ユビキチン化、および異常切断により易凝集性のC末端断片を生成する(Arai et al., Neuropathology, 2010, 30, 170-181;Hasegawa et al., Ann. Neurol., 2008, 64, 60-7;Hasegawa et al., J. Mol. Neurosci., 2011, 45, 480-485)。
【0011】
ALSの家族性症例で同定された他の注目すべき突然変異は、主に、Cu/Znスーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)およびfused in sarcoma/translocated in liposarcoma(FUS/TLS)をコードする遺伝子のメンデル遺伝性突然変異に関連する。最近の研究では、変異型と野生型との双方のSOD1において、タンパク質ミスフォールディング特性の伝播が同定されている。
【0012】
進行性核上性麻痺(PSP)またはスティール・リチャードソン・オルゼウスキー病は、臨床的特徴としてパーキンソン病症状とともに姿勢反射障害、下方注視核上性麻痺、構音障害、および嚥下障害を含む他の特徴を呈する成人発症運動障害である(Steele et al. Arch. Neurol. 1964, 10, 333-359)。
【0013】
病理学的に、PSPを有する患者の脳は、対照脳の可溶性タウと比較して過剰リン酸化されている微小管関連タンパク質タウの沈着物を含んでいる。タウの過剰リン酸化と凝集はPSPに特異的なものではなく、タウオパチーとして知られる広範な障害すべてに存在し、中でもアルツハイマー病は最も一般的であり、特性が明らかにされている(Buee et al. Brain Res. Brain Res. Rev., 2000, 33, 95-130)。タウは通常、高可溶性のタンパク質であるが、タウオパチーでは過剰リン酸化およびミスフォールドになり、細胞内封入体として大型の凝集体を形成する。
【0014】
ADでは、タウ凝集体の蓄積量が、ニューロン死および認知機能低下と密接に相関しており、他のタウオパチーではタウ凝集体が神経変性の原因となる(Arriagada et al., Neurology, 1992, 42, 631- 639;Gomez-Isla et al., Ann. Neurol. 1997, 41, 17-24;Giannakopoulos et al., Neurology, 2003, 60, 1495-1500)。ADは初期の記憶喪失と最終的な認知症とを臨床的特徴とする(Lee et al., Annu. Rev. Neurosci., 2001, 24, 1121-1159)。ADにおいてタウ凝集体は定型的に、移行嗅内野から新皮質領域に至る解剖学的な連携ネットワークに沿って沈着する(Braak and Braak, 1991;Braak et al., 2011;Braak and Del Tredici, 2012;Cho et al., 2016b)。ADおよび他のいくつかのタウオパチーでは、タウ凝集体は、主に神経細胞体(神経原線維変化(NFT))および軸索(ニューロピルスレッド)に存在するタウの全6種のアイソフォーム(3Rタウと4Rタウとの両方)で構成される(Lee et al., 2001)。
【0015】
対照的に、大脳皮質基底核変性症(CBD)患者および進行性核上性麻痺(PSP)患者は、AD患者よりも早期に発症し、疾患の期間は短く、主に運動機能障害を示す(Lee et al., 2001)。CBDでは、タウ凝集体は大脳皮質、大脳基底核、深部小脳核、および黒質に見られる。それらは主に、CBDのニューロンとグリアとの両方に存在する4Rタウアイソフォームで構成され、これにはアストロサイト斑およびオリゴデンドログリアコイル小体が含まれる(Lee et al., 2001)。
【0016】
古典的なPSPは、中脳および大脳基底核などの主に皮質下領域に存在するタウ凝集体を特徴とする(Williams and Lees, 2009)。CBDと同様に、PSPタウ凝集体は、ニューロンとグリアとの両方に存在する4Rタウアイソフォームで構成されおり、これには房状アストロサイトおよびオリゴデンドログリアコイル小体が含まれる(Lee et al., 2001)。PSPは当初、単一の症候群として示されたが、最近のエビデンスによれば、PSPは複数の臨床サブタイプを構成している可能性があることが示唆されている(Williams and Lees, 2009)。CBDおよびPSPの徴候にはいくつかの重複も存在する(Sha et al., 2006)。
【0017】
パーキンソン病(PD)は、主に運動系に影響を与える中枢神経系の長期変性障害である。一般的に症状は、時間の経過につれて徐々に出現する。タウとαシヌクレインとの間の毒性相互作用は、タウの過剰リン酸化を引き起こし、最終的に両方のタンパク質の沈着により疾患に至る可能性がある(Lei et al. Int. J. Biochem. Cell Biol. 2010, 42 (11), pp. 1775-1778)。
【0018】
原発性加齢性タウオパチー(PART)は近年示された神経病理学的呼称であり、一般的に正常な高齢者の脳で観察され、アルツハイマー病(AD)のアミロイド斑とは独立して発生する可能性がある神経原線維変化(NFT)を表す際に使用される。PARTを有する個人の症状は通常、正常から健忘性に至る認知変化であり、深刻な障害を示すものは少数にすぎない。
【0019】
慢性外傷性脳症(CTE)は、多発性頭部外傷の傷病者に見られる神経変性疾患である。CTEの症状として、行動および気分の変化、記憶喪失、認知障害、ならびに認知症が挙げられる。CTEは、過剰リン酸化タウタンパク質の沈着による皮質小血管周囲でのNFT、アストロサイトのタングル、および神経突起の顕著なクラスター化を特徴とするタウオパチーである。重度罹患症例は、脳全体にタウ病変が現れる。43kDa TAR DNA結合タンパク質のリン酸化異常は、大半のCTE症例に見られ、老化に伴うベータアミロイドは43%に認められている(McKee et al., Brain Pathol, 2015, 25(3), pp. 350-364)。
【0020】
染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)は、前頭側頭葉と呼ばれる脳の領域における神経細胞(ニューロン)の消失を特徴とする常染色体優性神経変性障害である。このような細胞の消失は、経時的に人格、行動、言語、および運動に影響を及ぼし得る。FTDP-17は、タウの正常な構造と機能の破壊をもたらすMAPTタウ遺伝子の突然変異を原因とする。障害の基となる病理機序は、タウアイソフォームの比率変化、またはタウが微小管に結合して微小管の集合を促進する能力に関連すると考えられている(Wszolek, Z. et al., Orphanet J. Rare Dis., 2006, 1, pp 30)。
【0021】
リティコ・ボディグ(Lytico-bodig)病(Lytigo-bodigと表記する場合もある)または筋萎縮性側索硬化症-パーキンソニズム認知症複合(ALS-PDC)は、西太平洋諸島地域固有の神経変性障害であり、グアム諸島、日本の紀伊半島、およびインドネシアの西パプアといった島々でのみ発症が確認されている。これは、筋萎縮性側索硬化症、パーキンソニズム、および認知症の特徴を含み得る広範な臨床症状を伴う緩徐進行性変性疾患である。その特徴は、筋萎縮性側索硬化症の病理学的所見に加えて、タウで構成された神経原線維変化の広範囲な分布という独特な神経病理学的特質を有することである。
【0022】
神経節膠腫は、希少な緩徐成長性の原発性中枢神経系(CNS)腫瘍であり、小児および若年成人の側頭葉で最も頻繁に発生する。この病変内の神経節細胞は、場合によりアルツハイマー病のものと同様の神経原線維変化(NFT)を含む神経変性変化を呈することがある(Brat DJ et al., Neuropathol. Appl. Neurobiol., 2001, 27 (3), pp 197-205)。
【0023】
髄膜血管腫症は、脳の希少疾患である。その特徴は、通常は大脳皮質に関係する軟髄膜の良性病変、および軟髄膜と髄膜血管の増殖を有することである。神経原線維変化は、疾患病変の特徴である皮質間の斑と周囲皮質との双方に頻繁に存在するが、老人斑と顆粒空砲変性は一般的ではない(Laws, Journal of Neuropathology and Experimental Neurology, 1986, 45 (4) pp 426-446)。
【0024】
脳炎後パーキンソニズムは、黒質の神経細胞の変性を引き起こすウイルス性疾患が原因であると考えられている疾患である。総じてこの変性は臨床的なパーキンソニズムをもたらす。罹患した脳領域には、アルツハイマー病で見られるものと同様の神経原線維変化が含まれている。しかしながら、アルツハイマー病において一般的である老人斑は見られない(Evidente, V. et al. J. Neurol. Neurosurg. Psychiatry, 1998, 64 (1) pp 5)。
【0025】
亜急性硬化性全脳炎(SSPE)は、麻疹ウイルスによる持続的な感染(ウイルス自体の突然変異に起因し得る)を原因とする、希少かつ慢性的な形態の進行性脳炎症である。この病態は主に小児と若年成人が罹患する。麻疹感染者10,000人のうち約1人が最終的にSSPEを発症すると推定されている。
【0026】
概要
本発明の一態様は、脳脊髄液(CSF)中のタウタンパク質の存在を特徴とする神経障害の治療方法を提供する。当該方法は、治療を必要とする対象のCSFを、タウタンパク質を除去または分解できる有効量のプロテアーゼと原位置で接触させることを含む。
【0027】
ある特定の実施形態では、毒性タンパク質は、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43、およびFUSからなる群より選択される。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質はタウである。ある特定の実施形態では、タウタンパク質は過剰リン酸化されている。ある特定の実施形態では、タウタンパク質は、タンパク質二量体、タンパク質オリゴマー、またはタンパク質凝集体の形態で存在する。ある特定の実施形態では、タウタンパク質は可溶性である。
【0028】
ある特定の実施形態では、神経障害は、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、および亜急性硬化性全脳炎(SSPE)から選択されるタウオパチーである。ある特定の実施形態では、神経障害はPSPである。ある特定の実施形態では、神経障害はFTLDである。ある特定の実施形態では、神経障害はADである。
【0029】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはセリンプロテアーゼである。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、トリプシン、エラスターゼ、カテプシンG、カリクレイン-5、またはカリクレイン-6である。
【0030】
ある特定の実施形態では、毒性タンパク質はタウであり、プロテアーゼは、トリプシン、エラスターゼ、カテプシンG、カリクレイン-5、またはカリクレイン-6である。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質はα-シヌクレインであり、プロテアーゼは、トリプシン、エラスターゼ、またはカリクレイン-6である。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質はTDP-43であり、プロテアーゼは、カリクレイン-5またはカリクレイン-6である。
【0031】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼは固体基材に固定化されている。ある特定の実施形態では、固体基材は多孔質固体基材を含む。ある特定の実施形態では、固体基材は架橋樹脂を含む。ある特定の実施形態では、架橋樹脂はアガロース樹脂を含む。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは固体基材への共有結合架橋によって固定化されている。ある特定の実施形態では、固体基材は、対象に埋め込まれた装置に収容されている。ある特定の実施形態では、対象のくも膜下腔に装置が埋め込まれている。ある特定の実施形態では、装置はさらに、大きな生体分子を除去する分級フィルターを含む。
【0032】
ある特定の実施形態では、本明細書に開示される方法は、対象のCSFからタウタンパク質を検出する工程をさらに含む。ある特定の実施形態では、検出する工程は、接触させる工程の前に行われ、それによって対象が治療に適しているかを特定する。
【0033】
ある特定の実施形態では、本方法は、対象のCSFからタウタンパク質を検出する工程をさらに含む。ある特定の実施形態では、検出する工程は、接触させる工程の前に行われ、それによって対象が治療に適しているかを特定する。ある特定の実施形態では、治療に適すると特定された対象は、神経障害を全く有さない対象と比較して、CSF中のタウタンパク質のレベルが上昇している。ある特定の実施形態では、治療に適すると特定された対象は、神経障害を全く有さない対象と比較して、CSF中の過剰リン酸化タウタンパク質のレベルが上昇している。ある特定の実施形態では、治療に適すると特定された対象は、神経障害を全く有さない対象と比較して、タンパク質二量体、タンパク質オリゴマー、またはタンパク質凝集体の形態であるタウタンパク質のレベルが上昇している。
【0034】
ある特定の実施形態では、対象はヒトである。
【0035】
上記以外の目的および利点は、以降の詳細な説明、実施例、および特許請求の範囲の考察から当業者に明らかであろう。
【図面の簡単な説明】
【0036】
【
図1】Bodipy(登録商標)標識カゼインを基質として用いたエラスターゼ、カテプシンG、およびトリプシンのプロテアーゼ活性を示す折れ線グラフである。RFUは、相対蛍光単位を表す。
【
図2A】アガロース樹脂カラムに固定化したエラスターゼ、カテプシンG、およびトリプシンのカゼイン消化活性を示す棒グラフである。RFUは、相対蛍光単位を表す。
【
図2B】アガロース樹脂カラムに固定化したエラスターゼおよびトリプシンのカゼイン消化活性を示す棒グラフである。結果は、対照(プロテアーゼなし)樹脂群を基に補正されている。RFUは、相対蛍光単位を表す。
【
図2C】アガロース樹脂カラムに固定化したトリプシン、エラスターゼ、カリクレイン-5(KLK5)、またはリシルエンドペプチダーゼによって活性化されたカリクレイン-6(KLK6)(図ではKLK6*と表記)のカゼイン消化活性を示す折れ線グラフである。結果は、対照(プロテアーゼなし)樹脂群を基に補正されている。RFUは、相対蛍光単位を表す。
【
図2D】アガロース樹脂カラムに固定化したKLK5およびリシルエンドペプチダーゼによって活性化されたKLK6(図ではKLK6*と表記)がそれぞれペプチド基質Boc-VPR-AMC(ES011)およびBoc-QAR-AMC(ES014)を消化する活性を示す折れ線グラフである。RFUは、相対蛍光単位を表す。
【
図3A】アガロース樹脂カラムに固定化したエラスターゼ、カテプシンG、およびトリプシンによるタウ-441(P301L)の消化を示す銀染色SDS-PAGEゲルである。
【
図3B】アガロース樹脂カラムに固定化したエラスターゼおよびトリプシンによるタウ-410の消化を示す銀染色SDS-PAGEゲルの写真である。
【
図3C】アガロース樹脂カラムに固定化したエラスターゼおよびトリプシンによるp-タウ-441の消化を示す銀染色SDS-PAGEゲルの写真である。
【
図3D】アガロース樹脂カラムに固定化したエラスターゼおよびトリプシンによるα-シヌクレインの消化を示す銀染色SDS-PAGEゲルの写真である。「空のカラム」とは、いずれのカラムにも基質タンパク質試料が添加されていないことを意味する。「T=0分*」とは、基質タンパク質試料がカラムに加えられてすぐに、カラム遠心によって回収されたことを意味する。
図3Dに示すゲルの最後の2レーンは底部が破損したため、5分および60分の時点でのエラスターゼによるα-シヌクレインの消化データが欠落している。
【
図3E】
図3Bに示すSDS-PAGEゲルのバンド強度の定量化を示す折れ線グラフである。RFUは、相対蛍光単位を表す。
【
図3F】
図3Cに示すSDS-PAGEゲルのバンド強度の定量化を示す折れ線グラフである。RFUは、相対蛍光単位を表す。
【
図3G】
図3Dに示すSDS-PAGEゲルのバンド強度の定量化を示す折れ線グラフである。RFUは、相対蛍光単位を表す。
【
図4】アガロースカラムに固定化したプロテアーゼを収容したデバイス100との接触後に、毒性タンパク質を含有するCSFを除去し、CSFを再導入する例示的なデバイスを示す模式図である。
【0037】
詳細な説明
定義
投与が企図される「対象」として、ヒト(すなわち、あらゆる年齢層の男性または女性、例えば小児対象(例えば、乳児、子供、青年)または成人対象(例えば、若年成人、中年成人、または高齢成人))、ならびに/または非ヒト動物、例えば、霊長類(例えば、カニクイザル、アカゲザル)、ウシ、ブタ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、齧歯類、ネコ、および/もしくはイヌなどの哺乳動物が挙げられるが、これらに限定されない。ある特定の実施形態では、対象はヒトである。ある特定の実施形態では、対象は非ヒト動物である。「ヒト」、「患者」、および「対象」という用語は、本明細書で同義に使用される。
【0038】
疾患、障害、および病態は、本明細書で同義に使用される。
【0039】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、「治療する」、「治療すること」、および「治療」という用語は、対象が特定の疾患、障害、または病態を有すると診断されている期間に行われる、疾患、障害、もしくは病態の重篤度を軽減する、疾患、障害、もしくは病態の少なくとも1種の症状の重篤度を軽減する、または疾患、障害、もしくは病態の進行を抑制もしくは遅延させる処置(「治癒的治療」)を企図するとともに、対象が特定の疾患、障害、もしくは病態を患い始める前に行われる処置(「予防的治療」)も企図する。
【0040】
一般に、薬剤の「有効量」とは、目的とする生物学的反応を誘発するのに十分な量を指す。当業者であれば理解されるであろうが、本発明の薬剤の有効量は、目的とする生物学的エンドポイント、薬剤の薬物動態、治療される疾患、投与様式、ならびに対象の年齢、健康状態、および病態のような要因に応じて変更することができる。有効量は治癒的治療および予防的治療を達成する。
【0041】
本明細書で使用される場合、特に指定のない限り、薬剤の「治療有効量」は、疾患、障害、もしくは病態の治療において治療的利益を提供するか、または疾患、障害、もしくは病態と関連する1種以上の症状を遅延させるまたは最小限度にするために十分な量である。薬剤の治療有効量とは、単独でまたは他の治療法と組み合わせて、疾患、障害、もしくは病態の治療において治療的利益を提供する治療薬の量を意味する。「治療有効量」という用語は、治療法全体を改善する量、疾患もしくは病態の症状もしくは原因を軽減もしくは回避する量、または別の治療薬の治療有効性を増強する量を包含することができる。
【0042】
本明細書で使用される場合、「毒性タンパク質」という用語は、(a)異常なタンパク質(例えば、天然タンパク質の異常な変異体または突然変異体)、もしくは標的組織(例えば、脳または神経組織)の健常性および生存に悪影響を及ぼす異常に大量の天然タンパク質、すなわち毒性形態であるか;または(b)病態生理学的条件下で(例えば、ミスフォールディング、凝集、翻訳後修飾、またはタンパク質分解切断によって)(a)に記載のタンパク質に転位され得るタンパク質、すなわち前毒性の形態であるものを指す。例えば、毒性形態のタウタンパク質は、標的組織の健常性および生存に悪影響を及ぼす任意のタウタンパク質(例えば、タウタンパク質種)であり得る(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、異所性タウ、立体構造が変化したタウ、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、またはタウ二量体)。
【0043】
本明細書で使用される場合、「有意な効果」という用語は、測定可能であり、測定の誤差の範囲外である(すなわち、統計的有意である)大きさを有し、対象に臨床的に有意義な影響を及ぼすことが公知であるかまたは予測される(例えば、症状または副作用の重篤度に臨床的に有意な増加または減少を生じさせること、または以前は対象に存在しなかった症状または副作用の発症を生じさせるもしくは寄与することが公知であるかまたは予測される)効果を指す。
【0044】
本明細書で使用される場合、「固定化」という用語は、薬剤(例えば、抗体または酵素)が不活性の不溶性材料に結合されているか、それ以外では、沈殿物(例えば非晶質沈殿物、例えば結晶性沈殿物)、架橋沈殿物(例えば非晶質架橋沈殿物、例えば結晶性架橋沈殿物)として、または封入(例えば多孔質容器への封入)により不溶性にされていることを指す。
【0045】
脳脊髄液(CSF)の処理方法
本発明は、脳脊髄液(CSF)中の毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害の治療方法を提供する。当該方法は、治療を必要とする対象のCSFを、毒性タンパク質を除去または分解できる有効量のプロテアーゼと接触させることを含む。
【0046】
本発明はまた、
a)脳脊髄液(CSF)中の毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害を有する対象のCSFと、
b)毒性タンパク質を分解または除去することができるプロテアーゼと、を含む組成物を提供する。
【0047】
ある特定の実施形態では、毒性タンパク質はタウである(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)。一実施形態では、毒性タンパク質は、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートをもつ)、またはプリオンタンパク質である。毒性タンパク質の存在または毒性タンパク質をコードする遺伝子の突然変異を特徴とする場合、神経疾患を毒性タンパク質陽性と称する。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質は、CSF中に毒性形態で存在する(例えば、タンパク質凝集体、タンパク質のタングル、タンパク質オリゴマー、タンパク質原繊維、過剰リン酸化タンパク質、またはミスフォールドタンパク質)。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質はCSF中に前毒性形態で存在する。
【0048】
ある特定の実施形態では、神経障害は前頭側頭葉変性症(FTLD)である。ある特定の実施形態では、FTLDは前頭側頭型認知症(FTD)である。ある特定の実施形態では、神経障害はFTLD-タウ(例えばFTD-タウ、例えばピック病)である。
【0049】
ある特定の実施形態では、神経障害はタウオパチーである。例示的なタウオパチーとして、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)(別称、大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD))、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、および亜急性硬化性全脳炎(SSPE)が挙げられるが、これらに限定されない。
【0050】
ある特定の実施形態では、神経障害は、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)(別称、大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD))、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、ハンチントン病(HD)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)から選択される。
【0051】
ある特定の実施形態では、神経障害は、TDP-43陽性ALS、SOD1陽性ALS、FUS陽性ALS、TDP-43陽性前頭側頭型認知症(FTD)、SOD1陽性FTD、FUS陽性FTD、TDP-43陽性前頭側頭葉変性症(FTLD)、SOD1陽性FTLD、FUS陽性FTLD、前頭側頭型認知症(FTD)(例えばタウ凝集体を伴うFTD)、または進行性核上性麻痺(PSP)からなる群より選択される。
【0052】
ある特定の実施形態では、対象はヒトである。ある特定の実施形態では、対象は非ヒト動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、または非ヒト霊長類)である。
【0053】
ある特定の実施形態では、薬剤との接触前にCSFを対象から取り出し、治療を有効にするために必要な時間、薬剤と接触させた後、対象に再導入する。例えば、
図4の流れ図に従って蠕動ポンプによってCSFを取り出し、アガロースカラムに固定化されたプロテアーゼを収容するデバイスにCSFを接触させた後、対象に再導入してもよい。
【0054】
ある特定の実施形態では、本開示は、対象(例えば、ヒト)のCSFを、固体表面、例えば、対象の身体に埋め込まれたデバイス(例えば、
図4のカートリッジ100)の内面に固定化または結合されたプロテアーゼと接触させる方法を提供する。ある特定の実施形態では、薬剤の使用中または使用後に、薬剤、またはプロテアーゼが固定化された固体表面を抽出し、プロテアーゼの新たなバッチまたはプロテアーゼの新たなバッチが固体化された固体支持体(例えば樹脂)を、対象に埋め込まれたデバイスに注入して再導入する。ある特定の実施形態では、CSFをプロテアーゼと接触させることにより毒性タンパク質を除去または分解すると、デバイス内に毒性タンパク質(例えばタウ)の濃度勾配が生じる。例示的な実施形態では、濃度勾配の方向は、デバイスの入力端側から出力端側であり、入力端側が高濃度である。
【0055】
ある特定の他の実施形態では、本開示は、CSFをプロテアーゼと接触させる前に対象(例えば、非ヒト哺乳動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ、ウシ、ブタ、ヒツジ、ヤギ、ニワトリ、または非ヒト霊長類))からCSFを取り出す工程と、CSFをプロテアーゼと接触させた後、それを対象に再導入する工程とを含む方法を提供する。例えば、いくつかの実施形態では、本方法は、アガロースカラムに固定化された薬剤を収容するデバイスにCSFを接触させる前に、対象からCSFを取り出す工程と、CSFをデバイスと接触させた後、CSFを対象に再導入する工程とを含む。
【0056】
ある特定の実施形態では、方法を実施する際に使用されるプロテアーゼは固定化されている(例えば、固体基材上に固定化される)。さらなる実施形態では、薬剤は、多孔質ビーズまたは多孔質膜への架橋により固定化される。ある特定の実施形態では、ある濃度勾配のプロテアーゼとCSFとを接触させることにより毒性タンパク質を除去または分解する。
【0057】
いくつかの実施形態では、プロテアーゼは固体支持体上に固定化される。さらなる実施形態では、固体支持体は多孔質固体支持体である。本発明のいくつかの実施形態では、プロテアーゼは、共有結合によって支持体に結合される。ある特定の実施形態では、支持体は架橋樹脂である。さらなる実施形態では、架橋樹脂はアガロース樹脂である。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、約1mg/ml~約10mg/mlの濃度で固体支持体に固定化される。
【0058】
さらなる実施形態では、プロテアーゼと接触させる前または接触させた後に、CSFを濾過して治療薬を除去した後、対象に再導入する。
【0059】
ある特定の実施形態では、CSFは、治療薬を含有するエクスビボ区画と患者との間を継続して循環する。
【0060】
本発明の他の実施形態では、プロテアーゼは、原位置でCSFと接触させられる。in situ法は、本明細書に開示される薬剤を収容する装置を、対象に、例えば対象のくも膜下腔に埋め込むことによって実施することができる。このような埋め込みにより、CSFから毒性タンパク質を継続的に分解および除去することができ、体外法の反復よりもCNSの感染リスクを低下させることができる。したがって、ある特定の実施形態では、この方法は、対象に埋め込まれたデバイスとCSFとを接触させることを含み、当該デバイスには基材に固定化された薬剤が収容されている。ある特定の実施形態では、(例えば、皮下注射ポート経由での)注入によって、対象に埋め込まれたデバイスに薬剤を送達することも、デバイスから薬剤を抽出することもできる。
【0061】
さらなる実施形態では、この方法は、毒性タンパク質を除去または分解できる薬剤を患者のCSFに直接投与することを含む。
【0062】
ある特定の実施形態では、ある濃度勾配のプロテアーゼとCSFとを接触させる(例えば、基材上に固定化されたある濃度勾配のプロテアーゼとCSFとを接触させる)ことにより毒性タンパク質を除去または分解する。ある特定の実施形態では、固定化されたプロテアーゼとCSFとを接触させる(例えば、基材上に固定化されたプロテアーゼとCSFとを接触させる)ことによりタンパク質を除去または分解する。
【0063】
毒性タンパク質の除去および/または分解
本発明は、CSF中の毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害の治療方法を提供する。当該方法は、治療を必要とする対象のCSFを、毒性タンパク質を除去または分解できる有効量のプロテアーゼと原位置で接触させることを含む。
【0064】
ある特定の実施形態では、毒性タンパク質はタウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)である。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質はTDP-43タンパク質(例えばミスフォールドTDP-43タンパク質、例えば変異型TDP-43タンパク質)である。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質は変異型またはミスフォールド野生型SOD1タンパク質である。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質は変異型FUS/TLSタンパク質である。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質は毒性形態である。
【0065】
微小管結合タンパク質タウは、タウの過剰リン酸化および凝集を特徴とするADおよびタウオパチーと関連する神経原線維変化(NFT)の主成分である。タウは、疎水性含有率が極めて低いため、本質的に非構造化タンパク質であり、突起ドメイン、塩基性プロリンリッチ領域、およびアセンブリドメインで構成されている。タウは、アセチル化、脱アミド化、糖化、グリコシル化、異性化、メチル化、ニトロ化、リン酸化、タンパク質分解、SUMO化、およびユビキチン化など、種々の翻訳後修飾を受けることが知られている(Martin et al. (2011) Neurochem. Int. 58, 458-71を参照)。特にアセンブリドメインでのタウの過剰リン酸化は、微小管に対するタウの親和性を低下させ、微小管運動および軸索輸送を調節する能力を損なう。加えて、塩基性プロリンリッチドメインの一部および疑似リピートも、負電荷表面との相互作用により微小管を安定化している。2つのN末端挿入領域の選択的スプライシング、ならびにタウの第2番、第3番、および第10番のエクソンの選択的スプライシングにより、長さが異なる6種のタウアイソフォームがCNSに生成される(Quinn et al. (2018) J. Alzheimers Dis. 63(1):13-33を参照)。タンパク質のカルボキシル末端部分にあるアセンブリドメインには、エクソン10の選択的スプライシングに応じて、3リピートまたは4リピート(3Rまたは4R)いずれかの保存的チューブリン結合モチーフが含まれる。タウの4Rアイソフォームは、微小管の結合および安定化の能力が3Rアイソフォームよりも大きい。ヒト成人脳では、3Rアイソフォームと4Rアイソフォームとのレベルは同等であるが、胎児段階では3Rタウのみが発現している。タウオパチーにおいては、タウ転写物のスプライシング、およびタウの3Rアイソフォームと4Rアイソフォームとの比率を変化させる変異が、神経変性疾患を引き起こすほどに過度である。全長タウタンパク質のアイソフォームに加えて、特定のタウ断片(例えば、内因性プロテアーゼ切断により生じる断片)もまた、重合または凝集する傾向、別のタウアイソフォームもしくは断片の重合もしくは凝集を促進する能力、および/またはタウの重合もしくは凝集を他の細胞に増殖させる能力を呈することができ、それにより神経毒性を生じさせる。そのようなタウ断片として、断片14-441、26-230、1-314、26-44、1-44、1-156、45-230、243-441、256-441、256-368、1-368、1-421、151-421、1-391、およびX-441(Xは182から194までの任意の整数)が挙げられるが、これらに限定されない(アミノ酸位置は、2N4Rアイソフォームの配列に従う番号)。これらのタウ断片に加えて、断片124-441および1-402(アミノ酸位置は、2N4Rアイソフォームの配列に従う番号)のような特定の他の断片は、神経障害の診断のためのバイオマーカー、または患者の進行もしく治療に対する反応のモニタリングのためのバイオマーカーとして有用であり得る。その他のタウ断片が、Quinn et al. (2018) J. Alzheimers Dis. 63(1):13-33で概説されている。上記の観点から、ヒトの脳組織におけるタウには、種々の異なる長さおよび形態が、複数の翻訳後修飾を伴って存在する可能性がある。本明細書で使用される場合、「タウ」という用語は、1つ以上の翻訳後修飾を有し、あらゆる折り畳み状態であるタウタンパク質の様々なアイソフォームおよび断片を含む。正常からNFTへと進行する過程で、タウは「可溶性」状態を経る。このとき、タンパク質はまだ原線維ではないものの、過剰リン酸化、異所局在化、立体構造変化、および/またはオリゴマー化し得る。
【0066】
ADの病因解明にタウは重要な役割を果たしており、AD動物モデルにおけるタウレベルの低下が疾患表現型を逆転させること、Aβの過剰発現を原因とするADモデルにおける認知障害の発症にタウが必要であることが複数の研究により示されている。神経原線維変化(NFT)は、ADおよびタウオパチーにおける神経変性の介在に関与しているが、タウオパチーの動物モデルによると、記憶障害およびニューロン消失はNFTの蓄積と完全には関連していないことが示されている。ADの進行と最も密接に関連するタウの病理学的構造はタウオリゴマーであり、タウのタングルには急性神経毒性はなく、むしろプレタングルのオリゴマータウ種が、オリゴマーAβ種の毒性関与と同様に、神経変性表現型に関与することが示唆されている(Kopeikina et al., Transl. Neurosci. 2012 September;3(3): 223-233)。
【0067】
疾患進行の「感染性」モデルを通じて、細胞外タウ種が神経毒性に寄与することが多数の研究で示唆されている(Narasimhan et al., The Journal of Neuroscience, 2017, 37(47), 11406-11423)。例えば、タウ病変は疾患初期から疾患後期まで脳全体に連続して拡散し、細胞外タウ凝集体は細胞の外側から内側へとタウミスフォールディングを伝播でき、変異型ヒトタウの凝集したトランスジェニックマウスからの脳抽出物は、正常なヒトタウを発現するマウスの脳全体にタウ病変を移行し、凝集促進ヒトタウの誘導は、ヒトタウと正常なマウスタウとの両方からなるタウの凝集体およびタングルの形成(共凝集)を誘導し、ADのCSFにおいてタウのレベルは上昇するが、Aβレベルは低下する(Kaufman at al, Neurotherapeutics, 2013, 10, 371-382)。
【0068】
プロテアーゼ
本発明は、CSF中の毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害の治療方法を提供する。当該方法は、治療を必要とする対象のCSFを、毒性タンパク質を除去または分解できる有効量のプロテアーゼと接触させることを含む。
【0069】
本発明はまた、
a)脳脊髄液(CSF)中の毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害を有する対象のCSFと、
b)毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質を分解または除去することができるプロテアーゼと、を含む組成物を提供する。
【0070】
本発明のプロテアーゼによる、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質の選択的分解は、基質選択性(プロテアーゼが、毒性形態タンパク質または前毒性形態タンパク質である毒性タンパク質を優先的に認識する)、切断部位特異性(プロテアーゼが、毒性形態または前毒性形態である毒性タンパク質に遭遇した残基モチーフのペプチド結合を切断する特異性を有する)、基質親和性(結合動態に基づく)、および切断効率(切断反応率)の組み合わせにより達成される。本発明の特定の実施形態では、プロテアーゼは、哺乳動物、微生物(例えば、真菌、細菌、またはウイルス)、または植物のプロテアーゼである。
【0071】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはセリンプロテアーゼである。例示的な哺乳動物セリンプロテアーゼとして、トリプシン、トロンビン、エラスターゼ、カリクレイン(KLK1-KLK15)、トリプターゼa/b1、キモトリプシン、カテプシンG、グランザイムA、グランザイムB、グランザイムG、グランザイムN、グランザイムO、グランザイムD、グランザイムE、グランザイムF、high temperature requirement serine protease A1(HTRA1)、マトリプターゼ1、マトリプターゼ2、マトリプターゼ3、およびヘプシンが挙げられる。例示的な細菌セリンプロテアーゼとして、サブチリシンnovo、サブチリシンCarlsberg、アルカラーゼ、グルタミルエンドペプチダーゼ、エンドプロテアーゼGlu-C、サビラーゼ(Savirase)、およびエンドプロテアーゼLys-Cが挙げられる。例示的な真菌セリンプロテアーゼとして、プロテイナーゼK、およびde Souza et al., Brazilian J. of Microbiol., 46(2): 337-346 (2015)に記載の真菌プロテアーゼのいずれか1種が挙げられ、これは、本開示のジペプチド反復タンパク質を消化することができる。例示的な植物セリンプロテアーゼとして、ベンガレンシン、HbSPA、HbSPB、およびHbSPCが挙げられる。例示的なウイルスセリンプロテアーゼとして、HRV3Cが挙げられる。例えば、セリンプロテアーゼは、キモトリプシンA、グルタミルエンドペプチダーゼI、DegPペプチダーゼ、リシルエンドペプチダーゼ、ストレプトグリシンA、アストロウイルスセリンペプチダーゼトガビリン、IgA1特異的セリンペプチダーゼ、フラビビリン、サブチリシンCarlsberg、ケキシン、プロリルオリゴペプチダーゼ、ジペプチジル-ペプチダーゼIV、アシルアミノアシル-ペプチダーゼ、グルタミルエンドペプチダーゼC、カルボキシペプチダーゼY、D-Ala-D-AlaカルボキシペプチダーゼA、D-Ala-D-AlaカルボキシペプチダーゼB、D-Ala-D-AlaペプチダーゼC、ペプチダーゼClp、Xaa-Proジペプチジル-ペプチダーゼ、Lon-Aペプチダーゼ、サイトメガロウイルスアセンブリ、抑制因子LexA、シグナルペプチダーゼI、シグナラーゼ21kDa成分、TraFペプチダーゼ、リソソームPro-Xaaカルボキシペプチダーゼ、ヘパシビリン、ポチウイルスP1ペプチダーゼ、ペスチウイルスNS3ポリプロテインペプチダーゼ、ウマ動脈炎ウイルスセリンペプチダーゼ、プロリルアミノペプチダーゼ、PS-10ペプチダーゼ、ソベモウイルスペプチダーゼ、ルテオウイルスペプチダーゼ、C末端プロセシングペプチダーゼ-1、トリコーンコアペプチダーゼ、ペニシリンGアシラーゼ前駆体、ジペプチジルペプチダーゼ7、HetR推定ペプチダーゼ、シグナルペプチドペプチダーゼA、プロテインC、古細菌シグナルペプチドペプチダーゼ1、感染性膵臓壊死ビルナウイルスVp4ペプチダーゼ、ジペプチダーゼE、セドリシン、ロンボイド-1、SpoIVBペプチダーゼ、ヌクレオポリン145、A型インフルエンザPAペプチダーゼ、Ssy5ペプチダーゼ、ピコルナイン様セリンペプチダーゼ、ムレインテトラペプチダーゼLD-カルボキシペプチダーゼ、PIDD自己プロセシングタンパク質ユニット1、ニッコウガイウイルス1 VP4、MUC1自己切断、ジストログリカン、gpOペプチダーゼ、大腸菌ファージK1FエンドシアリダーゼCIMCD自己切断タンパク質、ブリッカウイルスセリンペプチダーゼ、頭部前駆体ペプチダーゼgp21、頭部前駆体ペプチダーゼ、CARD8自己切断タンパク質頭部前駆体ペプチダーゼgp175、デスタビラーゼ、またはオートクリン増殖抑制因子タンパク質Aであり得る。例えば、ある特定の実施形態では、セリンプロテアーゼは、トリプシン、エラスターゼ、またはトロンビンである。
【0072】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはトレオニンプロテアーゼである。例示的な哺乳動物トレオニンプロテアーゼとして、プロテアソーム触媒サブユニット(1、2、3、1i、2i、3i)、プロテアソームベータ(1、2、3、4、3様)サブユニット、プロテアソームアルファ(1-8、3様)サブユニット、タスパーゼ、およびグリコシルアスパラギナーゼが挙げられる。
【0073】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはアスパラギン酸プロテアーゼである。例示的な哺乳動物アスパラギン酸プロテアーゼとして、ペプシンA、ペプシンC、キモシン、カテプシンD、カテプシンE、ナプシンA、ナプシンB、b-セクレターゼ1、b-セクレターゼ2、プレセニリン1、およびプレセニリン2が挙げられる。例示的な細菌アスパラギン酸プロテアーゼとして、シグナルペプチダーゼIIおよびプレピリンが挙げられる。例示的な真菌アスパラギン酸プロテアーゼとして、ペプシン(A1)、レトロペプシン(A2)、およびサッカロペプシンが挙げられる。例示的な植物アスパラギン酸プロテアーゼとして、ネペンテシンが挙げられる。例示的なウイルスアスパラギン酸プロテアーゼとして、レトロペプシンが挙げられる。例えば、アスパラギン酸プロテアーゼは、ペプシン、エンドチアペプシン、カテプシンD、カテプシンE、BACE1、BACE2、レニン、ナプシン-A、ネペンテシン、シグナルペプチダーゼII、プレセニリン、GPRエンドペプチダーゼ、オムプチン、HIV-1レトロペプシン、Ty3トランスポゾンペプチダーゼ、Gypsyトランスポゾンペプチダーゼ、Osvaldoレトロトランスポゾンペプチダーゼ、カリフラワーモザイクウイルス型ペプチダーゼ、バチルス状ウイルスペプチダーゼ、サーモプシン、スプマペプシン、Copiaトランスポゾンペプチダーゼ、Ty1トランスポゾンペプチダーゼ、impas1ペプチダーゼ、4型プレピリンペプチダーゼ1、FlaKペプチダーゼ、DNA損傷誘導性タンパク質1、皮膚SASPase、HybDペプチダーゼ、PerPペプチダーゼ、胞子形成因子SpoIIGA、またはsso1175g.p.であり得る。例えば、ある特定の実施形態では、アスパラギン酸プロテアーゼは、ペプシンまたはエンドチアペプシンである。
【0074】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはシステインプロテアーゼである。例示的な哺乳動物システインプロテアーゼとして、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンF、カテプシンH、カテプシンK、カテプシンL、カテプシンL2、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンW、カテプシンZ、カテプシンM、カテプシンQ、カルパイン1、カルパイン2、カルパイン3、カルパイン5、カルパイン6、カルパイン7、カルパイン8、カルパイン9、カルパイン10、カルパイン11、カルパイン12、カルパイン13、カルパイン14、カスパーゼ1、カスパーゼ2、カスパーゼ3、カスパーゼ4、カスパーゼ5、カスパーゼ6、カスパーゼ7、カスパーゼ8、カスパーゼ9、カスパーゼ10、カスパーゼ11、カスパーゼ12、カスパーゼ13、カスパーゼ14、およびアスパラギンエンドペプチダーゼAEPが挙げられる。例示的な細菌システインプロテアーゼとして、クロストリパイン(エンドプロテアーゼArg-C)およびジンジパイン(gingapain)が挙げられる。例示的な真菌システインプロテアーゼとして、マクロサイピン(macrocypin)が挙げられる。例示的な植物システインプロテアーゼとして、パパインおよびブロメラインが挙げられる。例示的なウイルスシステインプロテアーゼとして、アデノウイルスプロテイナーゼが挙げられる。ある特定のシステインプロテアーゼの触媒活性は、酸化還元状態に依存する場合がある。ある特定の実施形態では、システインプロテアーゼは酸化状態にある(例えば、酸化剤の近傍に配置されることによる)。ある特定の実施形態では、システインプロテアーゼは還元状態にある(例えば、還元剤の近傍に配置されることによる)。酸化酵素は、特に、化学/酵素反応の時間枠が非常に短い(マイクロ秒から長くて数秒)場合と比較して、実施に用いられ得る処理時間が非常に長い(例えば数時間または数日)場合、ならびに基質と比較して大量の酵素を得ることができる場合(対基質化学論量に近似)、有効となるのに十分な残基活性を保持することができる。ある特定の実施形態では、酸化時間は、有意なレベルの還元酵素を保持するに足る程度に遅くなる場合がある。
【0075】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはグルタミン酸プロテアーゼである。例示的な細菌グルタミン酸プロテアーゼとして、pepG1が挙げられる。例示的な真菌グルタミン酸プロテアーゼとして、Eqolosin系統のプロテアーゼ(例えば、ScytalidoglutamicペプチダーゼB)が挙げられる。
【0076】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはメタロプロテアーゼである。例示的な哺乳動物メタロプロテアーゼとして、アミノペプチダーゼA、アミノペプチダーゼB、アミノペプチダーゼN、アミノペプチダーゼPILS、アミノペプチダーゼO、アミノペプチダーゼQ、アミノペプチダーゼB様1、ストロメリシン1、マトリリシン、メプリン、ADAM(1-33)、およびネプリライシンが挙げられる。例示的な細菌メタロプロテアーゼとして、サーモリシン、ニュートラーゼ、およびエンドペプチダーゼAsp-Nが挙げられる。例示的な真菌メタロプロテアーゼとして、フンガリシン(fungalysin)およびMpr1が挙げられる。例示的な植物メタロプロテアーゼとして、メトジンシンが挙げられる。メタロプロテアーゼの触媒活性は、プロテアーゼ中の金属イオンの存在に依存しており、in situ法では、金属イオンの浸出が活性損失をもたらす可能性がある。したがって、ある特定の実施形態では、メタロプロテアーゼは、解離定数(KD)1×10-11M、1×10-12M、または1×10-13M未満(すなわち、それより大きい親和性)で金属イオンを結合する。
【0077】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはメタロプロテアーゼではない。例えば、ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、サーモリシン、カルボキシペプチダーゼA1、アンジオテンシン変換酵素、アミノペプチダーゼN、マトリックスメタロプロテイナーゼ-1、サイトゾルカルボキシペプチダーゼ6、ユートリリシン(eutrilysin)、アミノペプチダーゼP、グルタミン酸カルボジペプチダーゼ(carbodypeptidase)II、パパリシン-1、サイト2ペプチダーゼ、Atp23ペプチダーゼ、クロライドチャネルアクセサリータンパク質1、Tiki1ペプチダーゼ、またはSpartanペプチダーゼではない。
【0078】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはシステインプロテアーゼではない。例えば、ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、パパイン、ブロメライン、クロストリパイン、カテプシンB、カテプシンC、カテプシンF、カテプシンH、カテプシンK、カテプシンL1、カテプシンL2、カテプシンO、カテプシンS、カテプシンW、カテプシンZ、カテプカルパイン(catepcalpain)2、ユビキチニルヒドロラーゼ-L1、ストレプトパイン、ユビキチニルヒドロラーゼ-L1、ユビキチン特異的ペプチダーゼ14、アミノホスホリボシルトランスフェラーゼ前駆体、オートファジン-1、Cezanneペプチダーゼ、オツバイン、CyIDペプチダーゼ、カスパーゼ-1、OTLD1脱ユビキチン化酵素、アタキシン-3、酸性セラミダーゼ前駆体、USPL1ペプチダーゼ、OTULINペプチダーゼ、凝固因子XIIIa、またはMINDY-1タンパク質ではない。
【0079】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、タンパク質分解活性について非共有結合補因子に依存する酵素ではない。例えば、ある特定の実施形態では、プロテアーゼはセリンプロテアーゼ因子VIIaではない。
【0080】
表1は、本明細書に開示される方法に使用することができる例示的なプロテアーゼを列挙したものである。
【0081】
【0082】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、配列番号1~13のうちいずれか1つと少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、配列番号1~13からなる群より選択されるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、プロテアーゼのアミノ酸配列は、配列番号1~13からなる群より選択される配列からなる。
【0083】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはトリプシンである。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、配列番号1、配列番号2、または配列番号3に指定されるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、プロテアーゼのアミノ酸配列は、配列番号1、配列番号2、または配列番号3に指定される配列からなる。
【0084】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはエラスターゼである。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、または配列番号9と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、または配列番号9に指定されるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、プロテアーゼのアミノ酸配列は、配列番号4、配列番号5、配列番号6、配列番号7、配列番号8、または配列番号9に指定される配列からなる。
【0085】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはカテプシンDである。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、配列番号10と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖と、配列番号11と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖とを含む。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、配列番号10に指定されるアミノ酸配列を含む第1のポリペプチド鎖と、配列番号11に指定されるアミノ酸配列を含む第2のポリペプチド鎖とを含む。ある特定の実施形態では、第1のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号10に指定される配列からなり、第2のポリペプチド鎖のアミノ酸配列は、配列番号11に指定される配列からなる。
【0086】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼはカリクレインである。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、配列番号12または配列番号13と少なくとも80%(例えば、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも91%、少なくとも92%、少なくとも93%、少なくとも94%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、または少なくとも99%)同一であるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、配列番号12または配列番号13に指定されるアミノ酸配列を含む。ある特定の実施形態では、プロテアーゼのアミノ酸配列は、配列番号12または配列番号13に指定される配列からなる。
【0087】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、約1mg/ml~約10mg/ml(例えば、1~9mg/ml、1~8mg/ml、1~7mg/ml、1~6mg/ml、1~5mg/ml、1~4mg/ml、1~3mg/ml、1~2mg/ml、2~10mg/ml、3~10mg/ml、4~10mg/ml、5~10mg/ml、6~10mg/ml、7~10mg/ml、8~10mg/ml、9~10mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約6mg/ml、約7mg/ml、約8mg/ml、約9mg/ml、または約10mg/ml)の濃度で固体支持体上に固定化される。
【0088】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)のCSF中濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で20%以上(例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上)減少させることができる。
【0089】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む、またはプリオンタンパク質)の濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で1000ng/mL未満(例えば、100ng/mL未満、10ng/mL未満、2.5ng/mL未満、2ng/mL未満、1.5ng/mL未満、1ng/mL未満、0.5ng/mL未満、0.25ng/mL未満、0.1ng/mL未満、0.05ng/mL未満、0.025ng/mL未満、0.01ng/mL未満、0.005ng/mL未満、0.0025ng/mL未満、0.001ng/mL未満)に低減することができる。
【0090】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、CSF中に自然に存在するタンパク質の濃度に著しい影響を及ぼすことなく、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)の分解を行うことができる。本発明のプロテアーゼによる、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質の選択的分解は、基質選択性(プロテアーゼが、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質を優先的に認識する)、切断部位特異性(プロテアーゼが、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質に遭遇した残基モチーフのペプチド結合を切断する特異性を有する)、基質親和性(結合動態に基づく)、および切断効率(切断反応率)の組み合わせにより達成される。
【0091】
ある特定の実施形態では、方法の実施に使用されるプロテアーゼは、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)のペプチド配列を、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的に認識できる活性部位を特徴とする。
【0092】
ある特定の実施形態では、本発明のプロテアーゼはさらに、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)の少なくとも1つのペプチド結合を、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合の切断よりも高特異性で切断することができる。
【0093】
当技術分野において、異なるペプチド基質に対するプロテアーゼの特異性評価に利用可能な方法は多数あり、これには、Foerster/蛍光共鳴エネルギー移動(FRET)、免疫捕捉、FRETと酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)に基づくアッセイとの組み合わせ、クロマトグラフィー、コンビナトリアル基質ライブラリー、蛍光基質の使用、および標識技術が含まれる。プロテアーゼの特異性評価に利用可能な技術に関する概説については、例えば、Poreba and Drag, Curr. Med. Chem. 2010, 17 (33), 3968-3995およびDiamond, Curr. Opin. Chem. Biol. 2007, 11 (1), 46-51を参照のこと。
【0094】
本発明の特定の実施形態では、プロテアーゼは、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)に対して高特異性かつ低親和性を有する。
【0095】
別の実施形態では、プロテアーゼは、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)に対して高特異性かつ高親和性を有する。
【0096】
基質に対するプロテアーゼの親和性は、当技術分野において周知の方法、例えば、表面プラズモン共鳴を使用したKon速度およびK0ff速度の決定により測定することができる。
【0097】
本発明の特定の実施形態では、プロテアーゼは、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合と比較して、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)の少なくとも1つのペプチド結合を高効率で切断する。
【0098】
プロテアーゼの効率(kcat/Km)は、当技術分野において周知の酵素反応速度アッセイ、例えば、分光光度アッセイ、放射線測定アッセイ、蛍光測定アッセイ、熱量測定アッセイ、光散乱アッセイ、マイクロスケール熱泳動、およびクロマトグラフィーアッセイによって決定することができる。酵素(例えばプロテアーゼ)反応速度の決定に使用することができる酵素アッセイの概要については、例えば、Bisswanger, Practical Enzymology (2nd edition), Wiley-Blackwell, Weinheim, 2001を参照のこと。
【0099】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)での切断に関して、他のタンパク質(例えば、CSFに通常存在するタンパク質)よりも高選択性ではない。
【0100】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、エンドペプチダーゼ(例えば、エンドペプチダーゼK)、マトリックスメタロペプチダーゼ(MMP)(例えば、MMP-1、MMP-2、MMP-3、MMP-9、MMP-10)、マトリックスグルタミルエンドペプチダーゼ(例えば、マトリックスグルタミルエンドペプチダーゼI)、トリプシン、トロンビン、プロテイナーゼK、エラスターゼ、第Xa因子、カリクレイン(例えば、カリクレイン-6、カリクレイン-5)、クロストリパイン、カルパイン(例えば、カルパイン-1、カルパイン-2)、カテプシン(例えば、カテプシン-B、カテプシン-D、カテプシンG、カテプシンL、カテプシンS)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-1、カスパーゼ-2、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-8、カスパーゼ-12)、グランザイム(例えば、グランザイムA、グランザイムM)、メプリンアルファ、メプリンベータ、アスタシン、RC1339、ペプチジル-LYSメタロペプチダーゼ、LASTペプチダーゼ(例えば、リムルス型)、LAST MAMペプチダーゼ(例えば、リムルス型)、キモトリプシン(例えば、ウシ型)、HIV-1レトロペプシン、およびサーモリシンからなる群より選択される。一実施形態では(例えば、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質がα-シヌクレインである場合)、プロテアーゼは、エンドペプチダーゼ(例えば、エンドペプチダーゼK)、マトリックスメタロペプチダーゼ(MMP)(例えば、MMP-1、MMP-3、MMP-9)、カルパイン(例えば、カルパイン-1、カルパイン-2)、トリプシン、カテプシン(例えば、カテプシン-D)から選択される。一実施形態では(例えば、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質がハンチンチンである場合)、プロテアーゼは、マトリックスメタロペプチダーゼ(MMP)(例えば、MMP-10)、カルパイン(例えば、カルパイン-1、カルパイン-2)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-2、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6)から選択される。一実施形態では(例えば、タンパク質が毒性FUSである場合)、プロテアーゼは、カテプシン(例えば、カテプシンB、カテプシンL)、グランザイム(例えば、グランザイムM)、アスタシン、RC1339(Rickettsia conorii)、ペプチジル-LYSメタロペプチダーゼ、トリプシン、およびメプリンベータからなる群より選択される。一実施形態では(例えば、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質がTDP-43タンパク質である場合)、プロテアーゼは、カテプシン(例えば、カテプシンL、カテプシンS)、マトリックスメタロペプチダーゼ(MMP)(例えば、MMP-2)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-3、カスパーゼ-7、カスパーゼ12)、グランザイム(例えば、グランザイムM)、およびトリプシンからなる群より選択される。一実施形態では(例えば、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質がSODタンパク質である場合)、プロテアーゼは、マトリックスメタロプロテアーゼ(MMP)(例えば、MMP-2)、カテプシン(例えば、カテプシンB、カテプシンG、カテプシンL、カテプシンS)、LASTペプチダーゼ(例えば、リムルス型)、LAST MAMペプチダーゼ(例えば、リムルス型)、グルタミルエンドペプチダーゼ(例えば、グルタミルエンドペプチダーゼI)、ペプチジル-Lysメタロペプチダーゼ、HIV-1レトロペプシン、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-1、カスパーゼ-2)、トリプシン、キモトリプシン(例えば、ウシ型)、エラスターゼ、およびメプリンアルファからなる群より選択される。一実施形態では(例えば、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質がタウタンパク質である場合)、プロテアーゼは、カルパイン(例えば、カルパイン-2)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-1、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-8)、グランザイム(例えば、グランザイムA)、トリプシン、およびメプリンアルファからなる群より選択される。
【0101】
本発明の特定の実施形態では、毒性タンパク質(毒性形態または前毒性形態)はタウであり、プロテアーゼは、トリプシン、トロンビン、プロテイナーゼK、エラスターゼ、第Xa因子、カリクレイン(例えば、カリクレイン-6、カリクレイン-5)、クロストリパイン、カルパイン、カテプシン(例えば、カテプシン-B)、およびサーモリシンからなる群より選択される。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質(毒性形態または前毒性形態)はタウであり、プロテアーゼは、カルパイン(例えば、カルパイン-2)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-1、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-8)、グランザイム(例えば、グランザイムA)、トリプシン、およびメプリンアルファからなる群より選択される。
【0102】
本発明の特定の実施形態では、毒性タンパク質(毒性形態または前毒性形態)はα-シヌクレインであり、プロテアーゼは、トリプシン、トロンビン、プロテイナーゼK、エラスターゼ、第Xa因子、カリクレイン(例えば、カリクレイン-6、カリクレイン-5)、クロストリパイン、カルパイン、カテプシン(例えば、カテプシン-B)、およびサーモリシンからなる群より選択される。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質(毒性形態または前毒性形態)はα-シヌクレインであり、プロテアーゼは、カルパイン(例えば、カルパイン-2)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-1、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-8)、グランザイム(例えば、グランザイムA)、トリプシン、およびメプリンアルファからなる群より選択される。
【0103】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、還元剤(例えば、DTT)で活性化されたシステインプロテアーゼ(例えば、クロストリパイン、カテプシン、およびカルパイン)である。ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、還元剤の非存在下でのシステインプロテアーゼ(例えば、クロストリパイン、カテプシン、およびカルパイン)である。
【0104】
本発明の特定の実施形態では、治療方法のプロテアーゼは、CSFに自然に存在するプロテアーゼである。さらなる実施形態では、プロテアーゼは、カリクレイン(例えば、カリクレイン-6(ニューロシン)またはカリクレイン-5)である。ある特定の実施形態では、カリクレイン-6は前駆形態であり、本開示の治療方法での使用前または使用中に、リシルエンドペプチダーゼによって活性化される。
【0105】
固体支持体
本発明のいくつかの実施形態は、固定化薬剤(例えば、固定化酵素、例えば、固定化プロテアーゼ)を使用して提供される。固定化薬剤を使用する利点は、当業者には容易に明らかであり、操作の容易さ、熱安定性と操作安定性の増加、反応条件(例えば、pHおよび温度)に対する感度の低下、凝集に対する耐性、自己消化および他のプロテアーゼによる消化に対する耐性、ならびに反応混合物からの分離の容易さが含まれる。
【0106】
生物学的薬剤(例えば酵素、例えばプロテアーゼ)を固定化するための種々の様式が当技術分野において公知であり、これには、限定されないが、タンパク質タグを使用するビーズおよび膜などの多孔質材料への親和性結合、多孔質ビーズ(例えば、ガラスまたはアルギン酸ビーズ)への吸着、膜への吸着、マトリックスへの吸着、および不溶性支持体(例えばシリカゲル、例えば樹脂)、多孔質支持体(例えば多孔質ビーズ)、または膜への共有結合が含まれる。ある特定の実施形態では、生物学的薬剤(例えば酵素、例えばプロテアーゼ)は、架橋樹脂上に(例えば、共有結合によって)固定化される。ある特定の実施形態では、生物学的薬剤(例えば酵素、例えばプロテアーゼ)は、多孔質ビーズ(例えば、多孔質樹脂ビーズ)上に(例えば、共有結合によって)固定化される。さらなる実施形態では、生物学的薬剤(例えば酵素、例えばプロテアーゼ)は、架橋アガロース樹脂(例えば、4%または6%の架橋アガロース樹脂)上に(例えば、共有結合によって)固定化される。例えば、生物学的薬剤(例えば酵素、例えばプロテアーゼ)は、多孔質架橋アガロース樹脂ビーズ上に固定化することができる。ある特定の実施形態では、アガロース樹脂は、第一級アミンに共有結合できるNHS活性化アガロースである。別の実施形態では、アガロース樹脂は、第一級アミンを介した共有結合のためのアルデヒド活性化アガロースビーズ(例えば、AminoLink(商標)Plus Coupling Resin)を含む。別の実施形態では、アガロース樹脂は、N-求核試薬;pH9-11 O/N反応を含有する、タンパク質を固定化できるCDI活性化アガロース樹脂(例えば、Pierce(商標)樹脂)である。別の実施形態では、アガロース樹脂は、スルフヒドリル基と反応して不可逆的なチオエーテル結合を形成できる樹脂である(例えば、SulfoLink(商標)Coupling Resin)。ある特定の実施形態では、生物学的薬剤(例えば酵素(例えばプロテアーゼ))は、反応性エポキシド官能基によりアミンまたは活性化アミンと反応して酵素(例えばプロテアーゼ)を共有結合させるビーズ上に固定化される。ビーズは、特にエポキシドまたはスクシンイミドなどの反応性要素により官能化でき、遊離アミン基を含有する酵素と反応して、活性安定な共有結合された固定化酵素生成物を形成することができる。
【0107】
ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、約1mg/ml~約10mg/ml(例えば、1~9mg/ml、1~8mg/ml、1~7mg/ml、1~6mg/ml、1~5mg/ml、1~4mg/ml、1~3mg/ml、1~2mg/ml、2~10mg/ml、3~10mg/ml、4~10mg/ml、5~10mg/ml、6~10mg/ml、7~10mg/ml、8~10mg/ml、9~10mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約6mg/ml、約7mg/ml、約8mg/ml、約9mg/ml、または約10mg/ml)の濃度で固体支持体(例えばビーズ)上に固定化することができる。例えば、ある特定の実施形態では、プロテアーゼは、約1mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約6mg/ml、約7mg/ml、約8mg/ml、約9mg/ml、または約10mg/mlの濃度で固体支持体上に固定化することができる。ある特定の実施形態では、生物学的薬剤(例えば酵素(例えばプロテアーゼ))は、反応性エポキシド官能基によりアミンまたは活性化アミンと反応して酵素(例えばプロテアーゼ)を共有結合させるビーズ上に、(約1mg/ml~約10mg/ml(例えば、1~9mg/ml、1~8mg/ml、1~7mg/ml、1~6mg/ml、1~5mg/ml、1~4mg/ml、1~3mg/ml、1~2mg/ml、2~10mg/ml、3~10mg/ml、4~10mg/ml、5~10mg/ml、6~10mg/ml、7~10mg/ml、8~10mg/ml、9~10mg/ml、約2mg/ml、約3mg/ml、約4mg/ml、約5mg/ml、約6mg/ml、約7mg/ml、約8mg/ml、約9mg/ml、または約10mg/mlの濃度で)固定化される。
【0108】
ある特定の実施形態では、生物学的薬剤(例えば酵素、例えばプロテアーゼ)は、沈殿により非晶質沈殿物または結晶性沈殿物のいずれかとして固定化することができる。さらに、この沈殿物が架橋されて、例えば、架橋酵素(例えばプロテアーゼ)結晶または架橋非晶質沈殿物を形成することができる。
【0109】
ある特定の実施形態では、沈殿物(例えば非晶質沈殿物、例えば結晶性沈殿物)および架橋沈殿物(例えば架橋非晶質沈殿物、例えば架橋結晶性沈殿物)は、細孔径が制御された多孔質マトリックスを形成することができ、この細孔がサイズ排除フィルターとして機能することで、CNSに自然に存在する他のタンパク質よりも、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)に対する薬剤(例えば、プロテアーゼ)の選択性をさらに増強させることができる。
【0110】
ある特定の実施形態では、基質に浸透するように設計された多孔質コーティング内に凍結乾燥剤(例えば、凍結乾燥酵素、例えば、凍結乾燥プロテアーゼ)を封入し、薬剤含有「ビーズ」を生成する。ある特定の実施形態では、多孔質コーティングの細孔径は、CNSに自然に存在する他のタンパク質よりも、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体))に対する薬剤(例えばプロテアーゼ)の選択性をさらに増強させるサイズ排除フィルターとして機能するように設計される。
【0111】
患者の診断とモニタリング
本発明は、治療に対して感受性のある対象の神経障害を診断するための方法であって、当該治療が毒性形態または前毒性形態である毒性タンパク質を除去または分解できる薬剤(例えば酵素、例えば抗体)と対象のCSFとを接触させることを含み、上記方法が
a).対象のCSF中の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)の存在、量、および/または形態に関する情報を測定、判定、または受信することと、
b).対象のCSF中の毒性タンパク質(例えば、健常対象と比較して多量または高濃度で存在する)の存在、量、および/または形態の情報を測定、判定、または受信して、対象が治療に対して感受性があるかを診断することとを含む方法を提供する。
【0112】
対象のCSF中の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)の存在および/または量は、当技術分野における公知の方法(例えば、抗体に基づく検出方法(例えば、イムノアッセイ(例えば、ELISA)、LC/MS法と連動した免疫親和性、ターゲット質量分析法(例えば、プロテオティピックペプチド(例えば、タウプロテオティピックペプチド)の質量分析検出)によって評価することができる。対象のCSF中の毒性タンパク質の形態(例えば、アイソフォーム、翻訳後修飾、可溶性タンパク質、不溶性タンパク質、タンパク質単量体、タンパク質凝集体、タンパク質のタングル、タンパク質オリゴマー、タンパク質原繊維、過剰リン酸化タンパク質、またはミスフォールドタンパク質のアミノ酸配列)はまた、当技術分野における公知の方法(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、ウエスタンブロッティング(過剰リン酸化などの特定の翻訳後修飾を検出する)、およびイムノアッセイ)によって評価することができる。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質は、毒性形態(例えば、タンパク質凝集体、タンパク質のタングル、タンパク質オリゴマー、タンパク質原繊維、過剰リン酸化タンパク質、またはミスフォールドタンパク質)で検出される。ある特定の実施形態では、毒性タンパク質は前毒性形態で検出される。
【0113】
本発明はまた、対象における神経障害の治療の有効性を予測するための方法であって、当該治療が、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)を除去または分解できる薬剤(例えば酵素、例えば抗体)と対象のCSFとを接触させることを含み、上記方法が、
対象のCSF中の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)の存在、量、および/または形態に関する情報を測定、判定、または受信することを含み、対象のCSF中の毒性タンパク質の存在、量、および/または形態の情報の上記測定、判定、または受信により、治療の有効性が予測される方法を提供する。
【0114】
本発明はさらに、対象における神経障害を診断および治療するための方法であって、
a)対象のCSF中の毒性形態または前毒性形態である毒性タンパク質の存在に関する情報を測定、判定、または受信し、
対象がCSF中に特定量または特定形態の毒性タンパク質を有すると判定された場合に、対象を工程bの治療に対して感受性があると診断することと、
b)毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質を除去または分解できるプロテアーゼと対象の脳脊髄液(CSF)とを接触させることにより、工程a)において感受性であると診断された対象を治療することとを含む、上記方法を提供する。
【0115】
ある特定の実施形態では、毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)の存在、量、および/または形態は、対象からの生体試料(例えば、CSF試料)を分析することにより測定される。さらなる実施形態では、生体試料中のタンパク質の存在および/または量は、抗体に基づく検出方法(例えば、イムノアッセイ(例えば、ELISA)、LC/MS法と連動した免疫親和性、ターゲット質量分析法(例えば、プロテオティピックペプチド(例えば、タウプロテオティピックペプチド)の質量分析検出)などの方法によって測定される。対象のCSF中の毒性タンパク質の形態(例えば、アイソフォーム、翻訳後修飾、可溶性タンパク質、不溶性タンパク質、タンパク質単量体、タンパク質凝集体、タンパク質のタングル、タンパク質オリゴマー、タンパク質原繊維、過剰リン酸化タンパク質、またはミスフォールドタンパク質のアミノ酸配列)はまた、当技術分野における公知の方法(例えば、サイズ排除クロマトグラフィー、ウエスタンブロッティング(過剰リン酸化などの特定の翻訳後修飾を検出する)、およびイムノアッセイ)によって評価することができる。
【0116】
患者試料
「患者試料」、「対象試料」、「生体試料」、および「試料」という用語は、本明細書で同義に使用される。対象試料は、組織、または体液、または身体生成物であり得る。組織試料には、固定試料、パラフィン包埋試料、新鮮試料、または凍結試料を含み得る。例えば、組織試料には、生検または口腔粘膜採取を含み得る。例示的な組織として、神経組織、脳、皮膚および毛包が挙げられる。例示的な試料として、血液試料および脳脊髄液試料が挙げられる。
【0117】
例示的な体液として、血液、血漿、尿、リンパ液、涙液、汗、唾液、精液、および脳脊髄液が挙げられる。例示的な身体生成物として、呼気が挙げられる。
【0118】
組織、液、または生成物を患者から採取して分析することができる。評価には、組織、液、もしくは生成物の分析を実施すること;組織液もしくは生成物の分析を要求すること;組織、液、もしくは生成物の分析から得た結果を要求すること;または組織、液、もしくは生成物の分析から得た結果を受信することのうち1つ以上を含み得る。
【0119】
毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)の存在、量、および/または形態について試料、組織、液、または生成物を分析することができる。
【0120】
試料の評価方法
試料の遺伝的突然変異に関する評価
神経障害に関連する遺伝子に突然変異が存在するかどうかは、転写分子、遺伝子、タンパク質、mRNA、ゲノムDNA、またはcDNAの発現を検出する多種多様な周知の方法のいずれかを使用して評価することができる。そのような方法の非限定的な例として、核酸ハイブリダイゼーションに基づく方法、増幅による方法、マイクロアレイ分析、フローサイトメトリー分析、DNAシーケンシング、次世代シーケンシング、repeat-primed PCR、蛍光断片長アッセイ、キャピラリーシーケンシング、プライマー伸長、PCR、in situハイブリダイゼーション、ドットブロット法、およびサザンブロット法が挙げられる。
【0121】
毒性タンパク質の存在についての試料の評価
本明細書に記載の方法は、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)の存在についての患者試料の評価に関連し得る。神経障害(例えば、ALS、FTLD、FTD)に関連する毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質の存在および量は、タンパク質および/またはタンパク質断片を検出および定量するための当技術分野において利用可能な種々の方法のいずれかを使用して評価することができ、これには、抗体に基づく検出方法(例えば、イムノアッセイ(例えば、ELISA)、LC/MS法と連動した免疫親和性、ターゲット質量分析法(例えば、プロテオティピックペプチド(例えば、タウプロテオティピックペプチド)の質量分析検出)が含まれるが、これらに限定されない。
【0122】
ある特定の実施形態では、分析対象の試料は脳脊髄液(CSF)である。
【0123】
ある特定の実施形態では、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質は、イムノアッセイを使用して検出することができる。本明細書で使用される場合、イムノアッセイは、タンパク質またはポリペプチドに特異的に結合する抗体を利用するアッセイを含む。ポリペプチドは、適切な承認を得たいくつかの免疫学的結合アッセイのうち、いずれを使用しても検出および/または定量することができる(例えば、米国特許第4,366,241号明細書;同第4,376,110号明細書;同第4,517,288号明細書;および同第4,837,168号明細書を参照)。一般的なイムノアッセイの概説については、Asai (1993) Methods in Cell Biology Volume 37: Antibodies in Cell Biology, Academic Press, Inc. New York; Stites & Terr (1991) Basic and Clinical Immunology 7th Editionも参照のこと。タンパク質またはポリペプチドの検出および/または定量のためのイムノアッセイは、当業者に周知の多種多様な形式をとることができる。
【0124】
タンパク質またはポリペプチドに結合できる抗体、例えば、検出可能な標識(直接標識または間接標識のいずれか)を有する抗体を使用して、毒性形態または前毒性形態である毒性タンパク質を検出することができる。
【0125】
ある特定の実施形態では、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)を、全長タンパク質またはタンパク質消化産物(例えば、プロテオティピックペプチド(例えば、タウプロテオティピックペプチド))のいずれかとして、液体クロマトグラフィーと連動した質量分析によって検出および定量することができる。
【0126】
キット
本明細書に開示されるのは、毒性形態または前毒性形態である毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)の存在を特徴とする神経障害を有すると診断された対象のCSFを処理する手段を含むキットである。例えば、キットは、毒性形態または前毒性形態の毒性タンパク質を対象のCSFから分解または除去することができる、適切に製剤化されたプロテアーゼを含み得る。キットはまた、薬剤と接触させる目的で対象からCSFを取り出す手段、治療の完了後に薬剤をCSFから分離する手段、および処理したCSFを対象に再導入する手段を含み得る。キットには、提供された薬剤でCSFの処理を実施するための説明書も含まれる場合がある。
【0127】
本明細書にはまた、対象のCSF中の毒性形態または前毒性形態である毒性タンパク質(例えば、タウ(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、α-シヌクレイン、TDP-43、FUS/TLS、SOD1、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、グルタミン酸リピートを含む)、またはプリオンタンパク質)の存在をアッセイする手段を含むキットも記載される。例えば、キットは、1つ以上の毒性タンパク質(毒性形態または前毒性形態)と特異的に相互作用できる1種の薬剤または複数種の薬剤(例えば、検出可能な標識を有する1種のモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体、または複数種のモノクローナル抗体もしくはポリクローナル抗体)と、標識抗体-タンパク質複合体の存在を検出する手段とを含み得る。
【0128】
実施例
実施例1-プロテアーゼ活性の滴定
本実施例では、反応基質としてカゼインを使用した、エラスターゼ、カテプシンG、およびトリプシンでのプロテアーゼ活性の滴定を示す。
【0129】
Bodipy(登録商標)標識カゼインの1.0mg/mlストック溶液をリン酸緩衝生理食塩水(PBS)で調製した後、消化緩衝液(10mM Tris-HCl、pH7.8、0.1mM NaN3)で10μg/mlに希釈した。エラスターゼ、カテプシンG、またはトリプシンを消化緩衝液で種々の濃度に希釈し、希釈プロテアーゼ100μlを96ウェルマイクロプレートの各ウェルに加えた。10μg/mlのBodipy(登録商標)標識カゼイン100μlを、各サンプルウェルに加え、光から保護して1時間インキュベートした。インキュベーション後、マイクロプレートを、蛍光マイクロプレートリーダーを使用して読み取った。
【0130】
図1に示すように、エラスターゼ、カテプシンG、およびトリプシンの酵素調製物は、各プロテアーゼが約6μg/mlまで、線形反応速度を有するカゼイン消化活性を示した。
【0131】
実施例2-アガロース樹脂カラムに固定化したプロテアーゼの消化活性
本実施例では、反応基質としてカゼインを使用した、NHS活性化アガロース樹脂に固定化したエラスターゼ、カテプシンG、およびトリプシンでのプロテアーゼ活性を示す。
【0132】
NHS活性化アガロース樹脂カラムは、製造業者の説明書に従って調製した。予め洗浄したアガロース樹脂100μlと、対照緩衝液200μl、またはエラスターゼ、カテプシンG、トリプシン、カリクレイン-5(KLK5)、もしくはリシルエンドペプチダーゼで活性化したカリクレイン-6(KLK6)2mg/mlをカラムに入れた。カラムを遠心し、フロースルーを回収して、プロテアーゼ固定化の効率を測定した。ブラッドフォードアッセイで測定したところ、フロースルーにタンパク質は検出されなかった(データは示さず)。フロースルーに検出されたプロテアーゼ活性は低く(実施例1に記載のプロテアーゼ活性アッセイによって測定)、結合効率99.9%超を示した。PBS中1Mエタノールアミンを添加して残余の空いたNGS部位をブロックした。
【0133】
アガロース樹脂に固定化したプロテアーゼの活性を測定するため、10μg/mlのBodipy(登録商標)標識カゼイン100μlを各カラムに加え、反転させて室温で5分間、60分間、または120分間インキュベートした。インキュベーションに続き、カラムを遠心分離し、試料を取り出して蛍光測定を行った。
図2Aに示すように、固定化したエラスターゼ、カテプシンG、およびトリプシンは、5分間および60分間のインキュベーション時間でカゼイン消化活性を示した。
図2Bに示すように、エラスターゼおよびトリプシンは、60分間および120分間のインキュベーション時間でカゼイン消化活性を示した。
図2Cに示すように、KLK5およびKLK6も、120分間のインキュベーション時間でカゼイン消化活性を示した。
【0134】
蛍光ペプチド基質Boc-VPR-AMC(ES011)およびBoc-QAR-AMC(ES014)を使用して、KLK5およびKLK6の活性をさらに確認した。これらのペプチド基質は、それぞれKLK5およびKLK6に対する切断部位を含んでいる。プロテアーゼをそれぞれの基質とともにHBSS緩衝液中で30分間、60分間、または120分間インキュベーションした後、カラムを遠心分離し、試料を取り出して蛍光測定を行った。
図2Dに示すように、KLK5およびKLK6は、試験したすべての時点でプロテアーゼ活性を示した。
【0135】
実施例3-アガロース樹脂カラムに固定化したプロテアーゼによるタウ、α-シヌクレイン、およびTDP-43の消化
本実施例では、反応基質としてタウおよびα-シヌクレインを使用した、樹脂に固定化したエラスターゼ、カテプシンG、およびトリプシンのプロテアーゼ活性を示す。試験したタウタンパク質の形態は、P301L置換のある2N4Rアイソフォーム(「タウ-441(P301L)」)、2N3Rアイソフォーム(「タウ-410」)、およびGSK3βでリン酸化された2N4Rアイソフォーム(「p-タウ-441」)であった。
【0136】
タウ-441(P301L)に対するプロテアーゼ活性を評価するため、50μg/mlタウ(P301L)溶液100μlを空のカラムまたはエラスターゼ、カテプシンG、もしくはトリプシンを固定化したカラム(実施例2に記載のように調製)に加えた。回転台上にて室温で、または温度制御ミキサー内にて37℃でカラムをインキュベートした。インキュベーション時間2分、10分、および20分で、カラムを10秒間遠心分離し、試料20μlを移してSDS-PAGE分析を行った。16μl/0.8μgのタンパク質を10%ポリアクリルアミドゲルにロードし、電気泳動後、銀染色によってタンパク質のバンドを可視化した。
【0137】
タウ-410、p-タウ-441、およびα-シヌクレインに対するプロテアーゼ活性を評価するため、10μM基質溶液0.5mLを空のカラムまたはエラスターゼもしくはトリプシンを固定化したカラム(実施例2に記載のように調製)に加えた。示されたインキュベーション時間、室温でカラムを往復回転させた後、試料溶液10μlを回収し、プロテアーゼの不活化により反応を停止させた。10%ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)ポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によって試料を分析し、銀染色によってタンパク質のバンドを可視化した。ChemiDoc定量化ツールを使用してバンド強度を定量した。タウ-410およびα-シヌクレインについては、主たる優位なバンドの強度を定量した。p-タウ-441については、明確なリン酸化タウパターンに対応する2つの優位なバンド(上位バンド)をまとめて定量した。空のカラムで同期間インキュベートした基質タンパク質の量で結果を正規化し、これを表2に記載し、
図3D、
図3E、および
図3Fに示した。
【0138】
【0139】
カリクレイン-5(KLK5)およびカリクレイン-6(KLK6)のプロテアーゼ活性を類似する方法で評価した。試験した基質溶液は、PBS中10μMタウ-441(P301L)、PBS中10μM p-タウ-441、PBS中10μM α-シヌクレイン、ならびに50mM HEPES pH8.0、500mM NaCl、5mM DTT、20%(v/v)グリセロール、および0.4M尿素中9μM TDP-43であった。基質溶液を空のカラムまたはKLK5もしくはKLK6を固定化したカラム(実施例2に記載のように調製)に加えた。10%SDSポリアクリルアミドゲルでの電気泳動によって基質タンパク質を分析し、銀染色によってタンパク質のバンドを可視化した。ChemiDoc定量化ツールを使用してバンド強度を定量した。タウ-410、タウ-441(P301L)、TDP、およびα-シヌクレインについては、主たる優位なバンドの強度を定量した。p-タウ-441については、明確なリン酸化タウパターンに対応する2つの優位なバンド(上位バンドB1およびB2)を個別に定量した。空のカラムで同期間インキュベートした基質タンパク質の量に対する、プロテアーゼによって消化された基質タンパク質の比率を表3および表4に記載する。
【0140】
【0141】
【0142】
図3Aに示すように、タウ-441(P301L)は、エラスターゼ、カテプシンG、およびトリプシンによって室温で急速に分解された。
図3B、
図3C、
図3E、および
図3F、ならびに表2に示すように、タウ-410およびp-タウ-441はエラスターゼおよびトリプシンによって急速に分解された。同様に、
図3Dおよび
図3G、ならびに表2に示すように、α-シヌクレインはエラスターゼおよびトリプシンによって急速に分解された。さらに、表3に示すように、タウ-441(P301L)、p-タウ-441、およびTDP-43はKLK5によって分解された。表4に示すように、タウ-410、タウ-441(P301L)、p-タウ-441、TDP-43、およびα-シヌクレインはKLK6によって分解された。
【0143】
実施例4-プロテアーゼでの処理によるタウの毒性の低下
本実施例では、インビトロ神経細胞に対するプロテアーゼ処理タウの毒性を測定するための方法を記載する。
【0144】
アガロース樹脂のみ、またはエラスターゼ、カテプシンG、もしくはトリプシンと結合した樹脂(実施例3の段落[0162]に記載のように調製)で処理したタウ(P301L)の試料を、iCell(登録商標)運動ニューロン(FUJIFILM Cellular Dynamics, Inc., Madison, WI)に加えてもよい。所定のインキュベーション時間後、任意の標準的な細胞生存率アッセイ(例えば、ヨウ化プロピジウム染色細胞のフローサイトメトリー分析)によって運動ニューロンの生存率を評価することができる。
【0145】
番号付き実施形態
本明細書に開示される実施形態は、本開示の番号付き実施形態に示すように、実施形態P1からP107まで、およびQ1からQ108までを含む。
【0146】
実施形態P1:対象の脳脊髄液(CSF)を、毒性タンパク質を除去または分解できる薬剤と接触させることを含む、毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害を患う対象の治療方法。
【0147】
実施形態P2:前記神経障害がタウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の存在を特徴とする、実施形態P1の方法。
【0148】
実施形態P3:前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、すなわち大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、および亜急性硬化性全脳炎(SSPE)から選択されるタウオパチーである、実施形態P2の方法。
【0149】
実施形態P4:前記神経障害が進行性核上性麻痺(PSP)である、実施形態P2の方法。
【0150】
実施形態P5:前記神経障害が前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、前頭側頭型認知症(FTD))である、実施形態P2の方法。
【0151】
実施形態P6:前記神経障害がアルツハイマー病である、実施形態P2の方法。
【0152】
実施形態P7:前記薬剤が酵素である、実施形態P1からP6までのいずれか1つの方法。
【0153】
実施形態P8:前記酵素がプロテアーゼである、実施形態P7の方法。
【0154】
実施形態P9:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)のCSF中濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で20%以上(例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上)減少させることができる、実施形態P8の方法。
【0155】
実施形態P10:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で1000ng/mL未満(例えば、100ng/mL未満、10ng/mL未満、2.5ng/mL未満、2ng/mL未満、1.5ng/mL未満、1ng/mL未満、0.5ng/mL未満、0.25ng/mL未満、0.1ng/mL未満、0.05ng/mL未満、0.025ng/mL未満、0.01ng/mL未満、0.005ng/mL未満、0.0025ng/mL未満、0.001ng/mL未満)に低減することができる、実施形態P8またはP9の方法。
【0156】
実施形態P11:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)のペプチド配列を、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的に認識できる活性部位を特徴とし、さらに前記毒性タンパク質の少なくとも1つのペプチド結合を、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合の切断よりも特異的に切断できる、実施形態P8からP10までのいずれか1つの方法。
【0157】
実施形態P12:前記プロテアーゼが、CSF中に自然に存在するタンパク質の濃度に著しい影響を及ぼすことなく、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の分解を行うことができる、実施形態P8からP11までのいずれか1つの方法。
【0158】
実施形態P13:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)に対して高特異性かつ低親和性を有する、実施形態P8からP12までのいずれか1つの方法。
【0159】
実施形態P14:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)に対して高特異性かつ高親和性を有する、実施形態P8からP12までのいずれか1つの方法。
【0160】
実施形態P15:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の少なくとも1つのペプチド結合を高効率で切断する、実施形態P8からP14までのいずれか1つの方法。
【0161】
実施形態P16:前記プロテアーゼが、カルパイン(例えば、カルパイン-2)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-1、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-8)、グランザイム(例えば、グランザイムA)、トリプシン、およびメプリンアルファからなる群より選択される、実施形態P8からP15までのいずれか1つの方法。
【0162】
実施形態P17:前記プロテアーゼが、CSFに自然に存在するプロテアーゼである、実施形態P8からP16までのいずれか1つの方法。
【0163】
実施形態P18:CSFを薬剤と接触させる前に対象から取り出す工程と、前記CSFを薬剤と接触させた後、それを対象に再導入する工程とを含むか、あるいは、対象の身体に埋め込まれたデバイス内の固体表面または固体支持体に固定化された薬剤に対象のCSFを接触させることを含み、任意選択的に、薬剤または固体表面もしくは固体支持体に固定化された薬剤が抽出されて、長期間にわたる対象の治療期間(場合により、長期間とは2~12か月の断続的な期間である)、埋込型デバイスに再導入される、実施形態P1からP17までのいずれか1つの方法。
【0164】
実施形態P19:前記薬剤が固定化されている(例えば、薬剤は固体基材に固定化されたプロテアーゼである)、実施形態P1からP18までのいずれか1つの方法。
【0165】
実施形態P20:多孔質ビーズまたは膜に架橋することによって薬剤が固定化されている(例えば、薬剤は多孔質ビーズまたは膜に架橋されたプロテアーゼである)、実施形態P19の方法。
【0166】
実施形態P21:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が固体支持体に固定化されている、実施形態P20の方法。
【0167】
実施形態P22:前記固体支持体が多孔質固体支持体である、実施形態P21の方法。
【0168】
実施形態P23:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が共有結合によって前記支持体と結合している、実施形態P21またはP22の方法。
【0169】
実施形態P24:前記支持体が架橋樹脂である、実施形態P21からP23までのいずれか1つの方法。
【0170】
実施形態P25:前記架橋樹脂がアガロース樹脂である、実施形態P24の方法。
【0171】
実施形態P26:前記薬剤が沈殿によって(例えば、非晶質沈殿物または結晶性沈殿物として)固定化されている、実施形態P20の方法。
【0172】
実施形態P27:沈殿した薬剤が架橋される(例えば、架橋非晶質沈殿物または架橋結晶性沈殿物、例えば、架橋プロテアーゼ結晶、例えば、架橋非晶質プロテアーゼ沈殿物を形成する)、実施形態P26の方法。
【0173】
実施形態P28:前記薬剤を凍結乾燥して乾燥粉末を形成し、前記粉末を多孔質コーティング内に配置してビーズを形成する、実施形態P27の方法。
【0174】
実施形態P29:CSFを対象に再導入する前にCSFを濾過する工程をさらに含む、実施形態P18からP28のいずれか1つの方法。
【0175】
実施形態P30:前記薬剤を対象のCSFに直接導入する、実施形態P1からP17までのいずれか1つの方法。
【0176】
実施形態P31:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の分解に関して、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的でない、実施形態P8からP10までおよびP15からP30までのいずれか1つの方法。
【0177】
実施形態P32:(a)毒性タンパク質の生成を特徴とする神経障害を患う対象の脳脊髄液(CSF)と;(b)前記毒性タンパク質を分解または除去できる薬剤とを含む、組成物。
【0178】
実施形態P33:前記神経障害が毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の存在を特徴とする、実施形態P32の組成物。
【0179】
実施形態P34:前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、すなわち大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、および亜急性硬化性全脳炎(SSPE)から選択されるタウオパチーである、実施形態P33の組成物。
【0180】
実施形態P35:前記神経障害が進行性核上性麻痺(PSP)である、実施形態P33の組成物。
【0181】
実施形態P36:前記神経障害が前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、前頭側頭型認知症(FTD))である、実施形態P33の組成物。
【0182】
実施形態P37:前記神経障害がアルツハイマー病(AD)である、実施形態P33の組成物。
【0183】
実施形態P38:前記薬剤が酵素である、実施形態P30からP37までのいずれか1つの組成物。
【0184】
実施形態P39:前記酵素がプロテアーゼである、実施形態P38の組成物。
【0185】
実施形態P40:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)のCSF中濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で20%以上(例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上)減少させることができる、実施形態P39の組成物。
【0186】
実施形態P41:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で1000ng/mL未満(例えば、100ng/mL未満、10ng/mL未満、2.5ng/mL未満、2ng/mL未満、1.5ng/mL未満、1ng/mL未満、0.5ng/mL未満、0.25ng/mL未満、0.1ng/mL未満、0.05ng/mL未満、0.025ng/mL未満、0.01ng/mL未満、0.005ng/mL未満、0.0025ng/mL未満、0.001ng/mL未満)に低減することができる、実施形態P39またはP40の組成物。
【0187】
実施形態P42:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)のペプチド配列を、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的に認識できる活性部位を特徴とし、さらに前記毒性タンパク質の少なくとも1つのペプチド結合を、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合の切断よりも特異的に切断できる、実施形態P39からP41までのいずれか1つの組成物。
【0188】
実施形態P43:前記プロテアーゼが、CSF中に自然に存在するタンパク質の濃度に著しい影響を及ぼすことなく、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の分解を行うことができる、実施形態P39からP42までのいずれか1つの組成物。
【0189】
実施形態P44:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)に対して高特異性かつ低親和性を有する、実施形態P39からP43までのいずれか1つの組成物。
【0190】
実施形態P45:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)に対して高特異性かつ高親和性を有する、実施形態P39からP43までのいずれか1つの組成物。
【0191】
実施形態P46:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の少なくとも1つのペプチド結合を高効率で切断する、実施形態P39からP45までのいずれか1つの組成物。
【0192】
実施形態P47:前記プロテアーゼが、カルパイン(例えば、カルパイン-2)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-1、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、およびカスパーゼ-8)、グランザイム(例えば、グランザイムA)、トリプシン、およびメプリンアルファからなる群より選択される、実施形態P39からP46までのいずれか1つの組成物。
【0193】
実施形態P48:前記プロテアーゼが、CSFに自然に存在するプロテアーゼである、実施形態P39からP47までのいずれか1つの組成物。
【0194】
実施形態P49:前記薬剤が固定化されている(例えば、薬剤が固体基材に固定化されたプロテアーゼである)、実施形態P39からP48までのいずれか1つの組成物。
【0195】
実施形態P50:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が固体支持体に固定化されている、実施形態P49の組成物。
【0196】
実施形態P51:前記固体支持体が多孔質固体支持体である、実施形態P50の組成物。
【0197】
実施形態P52:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が共有結合によって前記固体支持体と結合している、実施形態P50またはP51の組成物。
【0198】
実施形態P53:前記固体支持体が架橋樹脂である、実施形態P50からP52までのいずれか1つの組成物。
【0199】
実施形態P54:前記架橋樹脂がアガロース樹脂である、実施形態P53の組成物。
【0200】
実施形態P55:多孔質ビーズまたは膜に架橋することによって薬剤が固定化されている(例えば、薬剤は多孔質ビーズまたは膜に架橋されたプロテアーゼである)、実施形態P49の組成物。
【0201】
実施形態P56:前記薬剤が沈殿によって(例えば、非晶質沈殿物または結晶性沈殿物として)固定化されている、実施形態P49の組成物。
【0202】
実施形態P57:沈殿した薬剤が架橋される(例えば、架橋非晶質沈殿物または架橋結晶性沈殿物、例えば、架橋プロテアーゼ結晶、例えば、架橋非晶質プロテアーゼ沈殿物を形成する)、実施形態P56の組成物。
【0203】
実施形態P58:前記薬剤を凍結乾燥して乾燥粉末を形成し、前記粉末を多孔質コーティング内に配置してビーズを形成する、実施形態P49の組成物。
【0204】
実施形態P59:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の分解に関して、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的でない、実施形態P39からP41までおよびP46からP58までのいずれか1つの組成物。
【0205】
実施形態P60:(a)対象の脳脊髄液中の毒性タンパク質の存在に関する情報を受信し、対象がCSF中に毒性タンパク質を有すると判定された場合に、対象を工程(b)の治療に対して感受性があると診断することと、b)毒性タンパク質を除去または分解できる薬剤(例えば酵素、例えばプロテアーゼ)と対象の脳脊髄液(CSF)とを接触させることにより、工程(a)において感受性であると診断された対象を治療することとを含む、毒性タンパク質の生成を特徴とする神経障害を患う対象を診断および治療する方法。
【0206】
実施形態P61:前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、すなわち大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、および亜急性硬化性全脳炎(SSPE)から選択されるタウオパチーである、実施形態P60の方法。
【0207】
実施形態P62:前記神経障害が進行性核上性麻痺(PSP)である、実施形態P60の方法。
【0208】
実施形態P63:前記神経障害が前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、前頭側頭型認知症(FTD))である、実施形態P60の方法。
【0209】
実施形態P64:前記神経障害がアルツハイマー病である、実施形態P60の方法。
【0210】
実施形態P65:前記毒性タンパク質が、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)である、実施形態P60からP64までのいずれか1つの方法。
【0211】
実施形態P66:前記薬剤が酵素である、実施形態P60からP65までのいずれか1つの方法。
【0212】
実施形態P67:前記酵素がプロテアーゼである、実施形態P66の方法。
【0213】
実施形態P68:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)のCSF中濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で20%以上(例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上)減少させることができる、実施形態P67の方法。
【0214】
実施形態P69:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で1000ng/mL未満(例えば、100ng/mL未満、10ng/mL未満、2.5ng/mL未満、2ng/mL未満、1.5ng/mL未満、1ng/mL未満、0.5ng/mL未満、0.25ng/mL未満、0.1ng/mL未満、0.05ng/mL未満、0.025ng/mL未満、0.01ng/mL未満、0.005ng/mL未満、0.0025ng/mL未満、0.001ng/mL未満)に低減することができる、実施形態P67またはP68の方法。
【0215】
実施形態P70:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)のペプチド配列を、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的に認識できる活性部位を特徴とし、さらに前記毒性タンパク質の少なくとも1つのペプチド結合を、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合の切断よりも特異的に切断できる、実施形態P67からP69までのいずれか1つの方法。
【0216】
実施形態P71:前記プロテアーゼが、CSF中に自然に存在するタンパク質の濃度に著しい影響を及ぼすことなく、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の分解を行うことができる、実施形態P67からP70までのいずれか1つの方法。
【0217】
実施形態P72:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)に対して高特異性かつ低親和性を有する、実施形態P67からP71までのいずれか1つの方法。
【0218】
実施形態P73:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)に対して高特異性かつ高親和性を有する、実施形態P67からP71までのいずれか1つの方法。
【0219】
実施形態P74:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の少なくとも1つのペプチド結合を高効率で切断する、実施形態P67からP73までのいずれか1つの方法。
【0220】
実施形態P75:前記プロテアーゼが、カルパイン(例えば、カルパイン-2)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-1、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-8)、グランザイム(例えば、グランザイムA)、トリプシン、およびメプリンアルファからなる群より選択される、実施形態P67からP74までのいずれか1つの方法。
【0221】
実施形態P76:前記プロテアーゼが、CSFに自然に存在するプロテアーゼである、実施形態P67からP75までのいずれか1つの方法。
【0222】
実施形態P77:CSFを薬剤と接触させる前に対象から取り出す工程と、前記CSFを薬剤と接触させた後、それを対象に再導入する工程とを含むか、あるいは、対象の身体に埋め込まれたデバイス内の固体表面または固体支持体に固定化されたプロテアーゼに対象のCSFを接触させることを含み、任意選択的に、プロテアーゼまたは固体表面もしくは固体支持体に固定化されたプロテアーゼが抽出されて、長期間にわたる対象の治療期間(場合により、長期間とは2~12か月の断続的な期間である)、埋込型デバイスに再導入される、実施形態P60からP76までのいずれか1つの方法。
【0223】
実施形態P78:前記薬剤が固定化されている(例えば、薬剤は固体基材に固定化されたプロテアーゼである)、実施形態P77の方法。
【0224】
実施形態P79:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が固体支持体に固定化されている、実施形態P78の方法。
【0225】
実施形態P80:前記固体支持体が多孔質固体支持体である、実施形態P79の方法。
【0226】
実施形態P81:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が共有結合によって前記固体支持体と結合している、実施形態P79またはP80の方法。
【0227】
実施形態P82:前記固体支持体が架橋樹脂である、実施形態P78からP81までのいずれか1つの方法。
【0228】
実施形態P83:前記架橋樹脂がアガロース樹脂である、実施形態P82の方法。
【0229】
実施形態P84:多孔質ビーズまたは膜に架橋することによって薬剤が固定化されている(例えば、薬剤は多孔質ビーズまたは膜に架橋されたプロテアーゼである)、実施形態P78の方法。
【0230】
実施形態P85:前記薬剤が沈殿によって(例えば、非晶質沈殿物または結晶性沈殿物として)固定化されている、実施形態P78の方法。
【0231】
実施形態P86:沈殿した薬剤が架橋される(例えば、架橋非晶質沈殿物または架橋結晶性沈殿物、例えば、架橋プロテアーゼ結晶、例えば、架橋非晶質プロテアーゼ沈殿物を形成する)、実施形態P85の方法。
【0232】
実施形態P87:前記薬剤を凍結乾燥して乾燥粉末を形成し、前記粉末を多孔質コーティング内に配置してビーズを形成する、実施形態P78の方法。
【0233】
実施形態P88:CSFを対象に再導入する前にCSFを濾過する工程をさらに含む、実施形態P77からP87のいずれか1つの方法。
【0234】
実施形態P89:前記薬剤を対象のCSFに直接導入する、実施形態P60からP76までのいずれか1つの方法。
【0235】
実施形態P90:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の分解に関して、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的でない、実施形態P66からP69までおよびP74からP89までのいずれか1つの方法。
【0236】
実施形態P91:アガロースカラムに固定化されたプロテアーゼを含むデバイス(100)にCSFを滅菌下で接触させる前に、対象からCSFを滅菌下で取り出す工程と、前記CSFをデバイス(100)と接触させた後、前記CSFを滅菌下で対象に再導入する工程とをさらに含む、実施形態P1からP17までまたはP60からP76までのいずれか1つの方法。
【0237】
実施形態P92:前記対象が非ヒト動物である、実施形態P91の方法。
【0238】
実施形態P93:基材に固定化された薬剤が収容されている、対象に埋め込まれたデバイスと前記CSFとを接触させる、実施形態P1からP17までまたはP60からP76までのいずれか1つの方法。
【0239】
実施形態P94:前記薬剤が注射によってデバイスに導入されるか、またはデバイスから抽出される、実施形態P93の方法。
【0240】
実施形態P95:前記対象がヒトである、実施形態P93またはP94の方法。
【0241】
実施形態P96:前記薬剤がプロテアーゼであり、前記プロテアーゼが約1mg/ml~約10mg/mlの濃度で固定化されている、実施形態P19からP27までもしくはP78からP86までのいずれか1つの方法、または実施形態P49からP57までのいずれか1つの組成物。
【0242】
実施形態P97:前記プロテアーゼがセリンプロテアーゼである、実施形態P8もしくはP67の方法、または実施形態P39の組成物。
【0243】
実施形態P98:前記セリンプロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、およびトロンビンからなる群より選択される、実施形態P94の方法または組成物。
【0244】
実施形態P99:前記プロテアーゼがアスパラギン酸プロテアーゼである、実施形態P8もしくはP67の方法、または実施形態P39の組成物。
【0245】
実施形態P100:前記アスパラギン酸プロテアーゼがペプシンまたはエンドチアペプシンである、実施形態P99の方法または組成物。
【0246】
実施形態P101:前記プロテアーゼがメタロプロテアーゼではない、実施形態P8もしくはP67の方法、または実施形態P39の組成物。
【0247】
実施形態P102:前記プロテアーゼがシステインプロテアーゼではない、実施形態P8もしくはP67の方法、または実施形態P39の組成物。
【0248】
実施形態P103:前記プロテアーゼがそのタンパク質分解活性について非共有結合補因子に依存しない、実施形態P8もしくはP67の方法、または実施形態P39の組成物。
【0249】
実施形態P104:前記プロテアーゼが微生物プロテアーゼであり、前記微生物プロテアーゼが任意選択的にエンドチアペプシンである、実施形態P8もしくはP67の方法、または実施形態P39の組成物。
【0250】
実施形態P105:対象の脳脊髄液(CSF)からの毒性タンパク質を分解または除去することができる、適切に製剤化された薬剤を含む、キット。
【0251】
実施形態P106:CSFからの毒性タンパク質を分解または除去するために適切に製剤化された薬剤と対象の脳脊髄液(CSF)とを接触させるためのシステムを含み、任意選択的に薬剤を含む、キット。
【0252】
実施形態P107:前記薬剤で前記CSFを処理するための説明書をさらに含む、実施形態P105またはP106のキット。
【0253】
実施形態Q1:対象の脳脊髄液(CSF)を、毒性タンパク質を除去または分解できる薬剤と接触させることを含む、毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害を患う対象の治療方法。
【0254】
実施形態Q2:前記神経障害が、TAR-DNA結合タンパク質43kDa(TDP-43)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)、またはfused in sarcoma(FUS)突然変異の群より選択される遺伝子の突然変異を特徴とする(すなわち、TDP-43、SOD1、FUS陽性神経疾患)、実施形態Q1の方法。
【0255】
実施形態Q3:前記神経障害が、TDP-43陽性筋萎縮性側索硬化症(ALS)、SOD1陽性ALS、FUS陽性ALS、TDP-43陽性前頭側頭型認知症(FTD)、SOD1陽性FTD、FUS陽性FTD、TDP-43陽性前頭側頭葉変性症(FTLD)、SOD1陽性FTLD、およびFUS陽性FTLDからなる群より選択される、実施形態Q2の方法。
【0256】
実施形態Q4:前記毒性タンパク質が、毒性TDP-43、毒性SOD1、および毒性FUS/TLSからなる群より選択される、実施形態Q1からQ3までのいずれか1つの方法。
【0257】
実施形態Q5:前記神経障害が、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、ハンチントン病(HD)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群より選択される、実施形態Q1の方法。
【0258】
実施形態Q6:前記神経障害が、α-シヌクレイン(例えば、パーキンソン病)、β-アミロイド(例えば、アルツハイマー病)、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、ハンチントン病)、グルタミン酸(例えば、筋萎縮性側索硬化症)、プリオンタンパク質(例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD))、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体の存在を特徴とする、実施形態Q1の方法。
【0259】
実施形態Q7:前記神経障害がタウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の存在を特徴とする、実施形態Q1の方法。
【0260】
実施形態Q8:前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、すなわち大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、および亜急性硬化性全脳炎(SSPE)から選択されるタウオパチーである、実施形態Q7の方法。
【0261】
実施形態Q9:前記神経障害が進行性核上性麻痺(PSP)である、実施形態Q7の方法。
【0262】
実施形態Q10:前記神経障害が前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、前頭側頭型認知症(FTD))である、実施形態Q7の方法。
【0263】
実施形態Q11:前記神経障害がアルツハイマー病である、実施形態Q7の方法。
【0264】
実施形態Q12:前記薬剤が酵素である、実施形態Q1からQ11までのいずれか1つの方法。
【0265】
実施形態Q13:前記酵素がプロテアーゼである、実施形態Q12の方法。
【0266】
実施形態Q14:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)のCSF中濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で20%以上(例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上)減少させることができる、実施形態Q13の方法。
【0267】
実施形態Q15:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で1000ng/mL未満(例えば、100ng/mL未満、10ng/mL未満、2.5ng/mL未満、2ng/mL未満、1.5ng/mL未満、1ng/mL未満、0.5ng/mL未満、0.25ng/mL未満、0.1ng/mL未満、0.05ng/mL未満、0.025ng/mL未満、0.01ng/mL未満、0.005ng/mL未満、0.0025ng/mL未満、0.001ng/mL未満)に低減することができる、実施形態Q13またはQ14の方法。
【0268】
実施形態Q16:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)のペプチド配列を、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的に認識できる活性部位を特徴とし、さらに前記毒性タンパク質の少なくとも1つのペプチド結合を、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合の切断よりも特異的に切断できる、実施形態Q13からQ15までのいずれか1つの方法。
【0269】
実施形態Q17:前記プロテアーゼが、CSF中に自然に存在するタンパク質の濃度に著しい影響を及ぼすことなく、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の分解を行うことができる、実施形態Q13からQ16までのいずれか1つの方法。
【0270】
実施形態Q18:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)に対して高特異性かつ低親和性を有する、実施形態Q13からQ17までのいずれか1つの方法。
【0271】
実施形態Q19:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)に対して高特異性かつ高親和性を有する、実施形態Q13からQ17までのいずれか1つの方法。
【0272】
実施形態Q20:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の少なくとも1つのペプチド結合を高効率で切断する、実施形態Q13からQ19までのいずれか1つの方法。
【0273】
実施形態Q21:前記プロテアーゼが、カルパイン(例えば、カルパイン-2)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-1、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-8)、グランザイム(例えば、グランザイムA)、トリプシン、およびメプリンアルファからなる群より選択される、実施形態Q13からQ20までのいずれか1つの方法。
【0274】
実施形態Q22:前記プロテアーゼが、CSFに自然に存在するプロテアーゼである、実施形態Q13からQ20までのいずれか1つの方法。
【0275】
実施形態Q23:CSFを薬剤と接触させる前に対象から取り出す工程と、前記CSFを薬剤と接触させた後、それを対象に再導入する工程とを含む、実施形態Q1からQ22までのいずれか1つの方法。
【0276】
実施形態Q24:前記薬剤が固定化されている(例えば、薬剤は固体基材に固定化されたプロテアーゼである)、実施形態Q1からQ23までのいずれか1つの方法。
【0277】
実施形態Q25:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が固体支持体に固定化されている、実施形態Q24の方法。
【0278】
実施形態Q26:前記固体支持体が多孔質固体支持体である、実施形態Q25の方法。
【0279】
実施形態Q27:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が共有結合によって前記支持体と結合している、実施形態Q25またはQ26の方法。
【0280】
実施形態Q28:前記支持体が架橋樹脂である、実施形態Q25からQ27までのいずれか1つの方法。
【0281】
実施形態Q29:前記架橋樹脂がアガロース樹脂である、実施形態Q28の方法。
【0282】
実施形態Q30:多孔質ビーズまたは膜に架橋することによって薬剤が固定化されている(例えば、薬剤は多孔質ビーズまたは膜に架橋されたプロテアーゼである)、実施形態Q24の方法。
【0283】
実施形態Q31:前記薬剤が沈殿によって(例えば、非晶質沈殿物または結晶性沈殿物として)固定化されている、実施形態Q24からQ26までのいずれか1つの方法。
【0284】
実施形態Q32:沈殿した薬剤が架橋される(例えば、架橋非晶質沈殿物または架橋結晶性沈殿物、例えば、架橋プロテアーゼ結晶、例えば、架橋非晶質プロテアーゼ沈殿物を形成する)、実施形態Q31の方法。
【0285】
実施形態Q33:前記薬剤を凍結乾燥して乾燥粉末を形成し、前記粉末を多孔質コーティング内に配置してビーズを形成する、実施形態Q32の方法。
【0286】
実施形態Q34:CSFを対象に再導入する前にCSFを濾過する工程をさらに含む、実施形態Q23からQ33のいずれか1つの方法。
【0287】
実施形態Q35:前記薬剤を対象のCSFに直接導入する、実施形態Q1からQ22までのいずれか1つの方法。
【0288】
実施形態Q36:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の分解に関して、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的でない、実施形態Q13からQ15までおよびQ21からQ35までのいずれか1つの方法。
【0289】
実施形態Q37:(a)毒性タンパク質の生成を特徴とする神経障害を患う対象の脳脊髄液(CSF)と;(b)前記毒性タンパク質を分解または除去できる薬剤とを含む、組成物。
【0290】
実施形態Q38:前記神経障害が、TAR-DNA結合タンパク質43kDa(TDP-43)、スーパーオキシドジスムターゼ(SOD1)、またはfused in sarcoma(FUS)突然変異の群より選択される遺伝子の突然変異を特徴とする(すなわち、TDP-43、SOD1、FUS陽性神経疾患)、実施形態Q37の組成物。
【0291】
実施形態Q39:前記神経障害が、TDP-43陽性筋萎縮性側索硬化症(ALS)、SOD1陽性ALS、FUS陽性ALS、TDP-43陽性前頭側頭型認知症(FTD)、SOD1陽性FTD、FUS陽性FTD、TDP-43陽性前頭側頭葉変性症(FTLD)、SOD1陽性FTLD、およびFUS陽性FTLDからなる群より選択される、実施形態Q38の組成物。
【0292】
実施形態Q40.前記毒性タンパク質が、毒性TDP-43、毒性SOD1、および毒性FUS/TLSからなる群より選択される、実施形態Q37からQ39までの組成物。
【0293】
実施形態Q41:前記神経障害が、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、ハンチントン病(HD)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群より選択される、実施形態Q37の方法。
【0294】
実施形態Q42:前記神経障害が、α-シヌクレイン(例えば、パーキンソン病)、β-アミロイド(例えば、アルツハイマー病)、ハンチンチンタンパク質(HTT)(例えば、ハンチントン病)、グルタミン酸(例えば、筋萎縮性側索硬化症)、プリオンタンパク質(例えば、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD))、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体の存在を特徴とする、実施形態Q37の方法。
【0295】
実施形態Q43:前記神経障害が毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)の存在を特徴とする、実施形態Q37の組成物。
【0296】
実施形態Q44:前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、すなわち大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、および亜急性硬化性全脳炎(SSPE)から選択されるタウオパチーである、実施形態Q43の組成物。
【0297】
実施形態Q45:前記神経障害が進行性核上性麻痺(PSP)である、実施形態Q43の組成物。
【0298】
実施形態Q46:前記神経障害が前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、前頭側頭型認知症(FTD))である、実施形態Q43の組成物。
【0299】
実施形態Q47:前記神経障害がアルツハイマー病(AD)である、実施形態Q43の組成物。
【0300】
実施形態Q48:前記薬剤が酵素である、実施形態Q37からQ47までのいずれか1つの組成物。
【0301】
実施形態Q49:前記酵素がプロテアーゼである、実施形態Q48の組成物。
【0302】
実施形態Q50:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)のCSF中濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で20%以上(例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上)減少させることができる、実施形態Q49の組成物。
【0303】
実施形態Q51:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で1000ng/mL未満(例えば、100ng/mL未満、10ng/mL未満、2.5ng/mL未満、2ng/mL未満、1.5ng/mL未満、1ng/mL未満、0.5ng/mL未満、0.25ng/mL未満、0.1ng/mL未満、0.05ng/mL未満、0.025ng/mL未満、0.01ng/mL未満、0.005ng/mL未満、0.0025ng/mL未満、0.001ng/mL未満)に低減することができる、実施形態Q49またはQ50の組成物。
【0304】
実施形態Q52:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)のペプチド配列を、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的に認識できる活性部位を特徴とし、さらに前記毒性タンパク質の少なくとも1つのペプチド結合を、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合の切断よりも特異的に切断できる、実施形態Q49からQ51までのいずれか1つの組成物。
【0305】
実施形態Q53:前記プロテアーゼが、CSF中に自然に存在するタンパク質の濃度に著しい影響を及ぼすことなく、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の分解を行うことができる、実施形態Q49からQ52までのいずれか1つの組成物。
【0306】
実施形態Q54:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)に対して高特異性かつ低親和性を有する、実施形態Q49からQ53までのいずれか1つの組成物。
【0307】
実施形態Q55:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)に対して高特異性かつ高親和性を有する、実施形態Q49からQ53までのいずれか1つの組成物。
【0308】
実施形態Q56:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の少なくとも1つのペプチド結合を高効率で切断する、実施形態Q49からQ55までのいずれか1つの組成物。
【0309】
実施形態Q57:前記プロテアーゼが、カルパイン(例えば、カルパイン-2)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-1、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、およびカスパーゼ-8)、グランザイム(例えば、グランザイムA)、トリプシン、およびメプリンアルファからなる群より選択される、実施形態Q49からQ56までのいずれか1つの組成物。
【0310】
実施形態Q58:前記プロテアーゼが、CSFに自然に存在するプロテアーゼである、実施形態Q49からQ57までのいずれか1つの組成物。
【0311】
実施形態Q59:前記薬剤が固定化されている(例えば、薬剤が固体基材に固定化されたプロテアーゼである)、実施形態Q37からQ58までのいずれか1つの組成物。
【0312】
実施形態Q60:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が固体支持体に固定化されている、実施形態Q59の組成物。
【0313】
実施形態Q61:前記固体支持体が多孔質固体支持体である、実施形態Q60の組成物。
【0314】
実施形態Q62:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が共有結合によって前記固体支持体と結合している、実施形態Q60またはQ61の組成物。
【0315】
実施形態Q63:前記固体支持体が架橋樹脂である、実施形態Q60からQ62までのいずれか1つの組成物。
【0316】
実施形態Q64:前記架橋樹脂がアガロース樹脂である、実施形態Q63の組成物。
【0317】
実施形態Q65:多孔質ビーズまたは膜に架橋することによって薬剤が固定化されている(例えば、薬剤は多孔質ビーズまたは膜に架橋されたプロテアーゼである)、実施形態Q59からQ61までのいずれか1つの組成物。
【0318】
実施形態Q66:前記薬剤が沈殿によって(例えば、非晶質沈殿物または結晶性沈殿物として)固定化されている、実施形態Q59の組成物。
【0319】
実施形態Q67:沈殿した薬剤が架橋される(例えば、架橋非晶質沈殿物または架橋結晶性沈殿物、例えば、架橋プロテアーゼ結晶、例えば、架橋非晶質プロテアーゼ沈殿物を形成する)、実施形態Q66の組成物。
【0320】
実施形態Q68:前記薬剤を凍結乾燥して乾燥粉末を形成し、前記粉末を多孔質コーティング内に配置してビーズを形成する、実施形態Q59の組成物。
【0321】
実施形態Q69:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の分解に関して、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的でない、実施形態Q49からQ51までおよびQ57からQ68までのいずれか1つの方法。
【0322】
実施形態Q70:(a)対象の脳脊髄液中の毒性タンパク質の存在に関する情報を受信するか、対象のTDP-43、SOD1、またはFUSの状態に関する情報を受信し、対象がCSF中に毒性タンパク質を有すると判定された場合、または対象がTDP-43、SOD1、またはFUS陽性であると判定された場合に、対象を工程(b)の治療に対して感受性があると診断することと、(b)毒性タンパク質を除去または分解できる薬剤(例えば酵素、例えばプロテアーゼ)と対象の脳脊髄液(CSF)とを接触させることにより、工程(a)において感受性であると診断された対象を治療することとを含む、毒性タンパク質の生成を特徴とする神経障害を患う対象を診断および治療する方法。
【0323】
実施形態Q71:前記神経障害が、筋萎縮性側索硬化症(ALS)および前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、前頭側頭型認知症(FTD))からなる群より選択される、実施形態Q70の方法。
【0324】
実施形態Q72:前記毒性タンパク質が、毒性TDP-43、毒性SOD1、および毒性FUS/TLSからなる群より選択される、実施形態Q70またはQ71の方法。
【0325】
実施形態Q73:前記神経障害が、パーキンソン病(PD)、アルツハイマー病(AD)、ハンチントン病(HD)、クロイツフェルト・ヤコブ病(CJD)、変異型クロイツフェルト・ヤコブ病(vCJD)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群より選択される、実施形態Q70の方法。
【0326】
実施形態Q74:前記毒性タンパク質が、α-シヌクレイン、β-アミロイド、ハンチンチンタンパク質(HTT)、グルタミン酸、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体からなる群より選択される、実施形態Q70またはQ73の方法。
【0327】
実施形態Q75:前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、すなわち大脳皮質基底核神経節変性症(CBGD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、および亜急性硬化性全脳炎(SSPE)から選択されるタウオパチーである、実施形態Q70の方法。
【0328】
実施形態Q76:前記神経障害が進行性核上性麻痺(PSP)である、実施形態Q70の方法。
【0329】
実施形態Q77:前記神経障害が前頭側頭葉変性症(FTLD)(例えば、前頭側頭型認知症(FTD))である、実施形態Q70の方法。
【0330】
実施形態Q78:前記神経障害がアルツハイマー病である、実施形態Q70の方法。
【0331】
実施形態Q79:前記毒性タンパク質が、毒性タウタンパク質(例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)である、実施形態Q70、Q73、およびQ75からQ78までのいずれか1つの方法。
【0332】
実施形態Q80:対象のTDP-43、SOD1、またはFUSの状態が、対象からの生体試料を分析することによって決定される、実施形態Q70からQ73までの方法。
【0333】
実施形態Q81:前記生体試料が血液試料である、実施形態Q80の方法。
【0334】
実施形態Q82:TDP-43、SOD1、またはFUS遺伝子における突然変異の存在について前記生体試料を分析する、実施形態Q80またはQ81の方法。
【0335】
実施形態Q83:対象の状態がTDP-43陽性、SOD1陽性、またはFUS陽性であると判定された場合、前記方法の工程(a)が、対象のCSF中の毒性タンパク質の存在に関する情報を受信し、対象がCSF中に毒性タンパク質を有すると判定された場合に、対象を工程(b)の治療に対して感受性があると診断することをさらに含む、実施形態Q82の方法。
【0336】
実施形態Q84:前記薬剤が酵素である、実施形態Q70からQ83までのいずれか1つの方法。
【0337】
実施形態Q85:前記酵素がプロテアーゼである、実施形態Q84の方法。
【0338】
実施形態Q86:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)のCSF中濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で20%以上(例えば、30%以上、40%以上、50%以上、60%以上、70%以上、80%以上、90%以上、95%以上、99%以上)減少させることができる、実施形態Q85の方法。
【0339】
実施形態Q87:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の濃度を1か月未満(例えば、1週間未満、1日未満、12時間未満、6時間未満、60分未満、30分未満、20分未満、10分未満、5分未満、2分未満)で1000ng/mL未満(例えば、100ng/mL未満、10ng/mL未満、2.5ng/mL未満、2ng/mL未満、1.5ng/mL未満、1ng/mL未満、0.5ng/mL未満、0.25ng/mL未満、0.1ng/mL未満、0.05ng/mL未満、0.025ng/mL未満、0.01ng/mL未満、0.005ng/mL未満、0.0025ng/mL未満、0.001ng/mL未満)に低減することができる、実施形態Q85またはQ86の方法。
【0340】
実施形態Q88:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)のペプチド配列を、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的に認識できる活性部位を特徴とし、さらに前記毒性タンパク質の少なくとも1つのペプチド結合を、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合の切断よりも特異的に切断できる、実施形態Q85からQ87までのいずれか1つの方法。
【0341】
実施形態Q89:前記プロテアーゼが、CSF中に自然に存在するタンパク質の濃度に著しい影響を及ぼすことなく、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の分解を行うことができる、Q85からQ88までのいずれか1つの方法。
【0342】
実施形態Q90:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)に対して高特異性かつ低親和性を有する、実施形態Q85からQ89までのいずれか1つの方法。
【0343】
実施形態Q91:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)に対して高特異性かつ高親和性を有する、実施形態Q85からQ89までのいずれか1つの方法。
【0344】
実施形態Q92:前記プロテアーゼが、CSFに通常存在するタンパク質のペプチド結合と比較して、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の少なくとも1つのペプチド結合を高効率で切断する、実施形態Q85からQ91までのいずれか1つの方法。
【0345】
実施形態Q93:前記プロテアーゼが、カルパイン(例えば、カルパイン-2)、カスパーゼ(例えば、カスパーゼ-1、カスパーゼ-3、カスパーゼ-6、カスパーゼ-7、カスパーゼ-8)、グランザイム(例えば、グランザイムA)、トリプシン、およびメプリンアルファからなる群より選択される、実施形態Q85からQ92までのいずれか1つの方法。
【0346】
実施形態Q94:前記プロテアーゼが、CSFに自然に存在するプロテアーゼである、実施形態Q85からQ93までのいずれか1つの方法。
【0347】
実施形態Q95:CSFを薬剤と接触させる前に対象から取り出す工程と、前記CSFを薬剤と接触させた後、それを対象に再導入する工程とを含む、実施形態Q70からQ94までのいずれか1つの方法。
【0348】
実施形態Q96:前記薬剤が固定化されている(例えば、薬剤は固体基材に固定化されたプロテアーゼである)、実施形態Q95の方法。
【0349】
実施形態Q97:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が固体支持体に固定化されている、実施形態Q96の方法。
【0350】
実施形態Q98:前記固体支持体が多孔質固体支持体である、実施形態Q97の方法。
【0351】
実施形態Q99:前記薬剤(例えば、プロテアーゼ)が共有結合によって前記固体支持体と結合している、実施形態Q97またはQ98の方法。
【0352】
実施形態Q100:前記固体支持体が架橋樹脂である、実施形態Q97からQ99までの方法。
【0353】
実施形態Q101:前記架橋樹脂がアガロース樹脂である、実施形態Q100の方法。
【0354】
実施形態Q102:多孔質ビーズまたは膜に架橋することによって薬剤が固定化されている(例えば、薬剤は多孔質ビーズまたは膜に架橋されたプロテアーゼである)、実施形態Q96からQ98までのいずれか1つの方法。
【0355】
実施形態Q103:前記薬剤が沈殿によって(例えば、非晶質沈殿物または結晶性沈殿物として)固定化されている、実施形態Q96の方法。
【0356】
実施形態Q104:沈殿した薬剤が架橋される(例えば、架橋非晶質沈殿物または架橋結晶性沈殿物、例えば、架橋プロテアーゼ結晶、例えば、架橋非晶質プロテアーゼ沈殿物を形成する)、実施形態Q103の方法。
【0357】
実施形態Q105:前記薬剤を凍結乾燥して乾燥粉末を形成し、前記粉末を多孔質コーティング内に配置してビーズを形成する、実施形態Q96の方法。
【0358】
実施形態Q106:CSFを対象に再導入する前にCSFを濾過する工程をさらに含む、実施形態Q95からQ105のいずれか1つの方法。
【0359】
実施形態Q107:前記薬剤を対象のCSFに直接導入する、実施形態Q70からQ94までのいずれか1つの方法。
【0360】
実施形態Q108:前記プロテアーゼが、毒性タンパク質(例えば、毒性TDP-43タンパク質、例えば、毒性SOD1タンパク質、例えば、毒性FUS/TLSタンパク質、例えば、毒性タウタンパク質(例えば、タウタンパク質凝集体、タウタンパク質のタングル、タウオリゴマー、過剰リン酸化タウタンパク質、可溶性タウタンパク質、タウ二量体)、例えば、α-シヌクレイン、例えば、β-アミロイド、例えば、ハンチンチンタンパク質(HTT)、例えば、グルタミン酸、例えば、プリオンタンパク質、例えば、サイトカイン、インターロイキン、腫瘍壊死因子などの炎症性タンパク質、例えば、他の有害な可能性があるタンパク質、ならびにバクテリア、ウイルス、およびその他の病原体)の分解に関して、CSFに通常存在する他のタンパク質よりも選択的でない、実施形態Q70からQ87までおよびQ93からQ107までのいずれか1つの方法。
【0361】
等価物および範囲
特許請求の範囲において、「a」、「an」、および「the」などの冠詞は、それに反する記載のない限り、またはその他の方法で文脈から明らかでない限り、1つ以上を意味し得る。ある群の1つ以上の要素の間に「または」を含む請求項または記載内容は、それに反する記載のない限り、または文脈から明らかでない限り、1つ、複数、またはすべての群要素が所与の生成物または工程に存在する、用いられる、またはその他の方法で関連する場合に条件を満たすとみなされる。本発明には、その群のちょうど1つの要素が所与の生成物または工程に存在するか、用いられるか、またはその他の方法で関連する実施形態を含む。本発明にはまた、その群の複数またはすべての要素が所与の生成物または工程に存在するか、用いられるか、またはその他の方法で関連する実施形態を含む。
【0362】
さらに、本発明は、列挙された請求項のうちの1つ以上からの1つ以上の限定、要素、条項、および記述用語が別の請求項に導入されている、あらゆる変形例、組み合わせ、および順列を包含する。例えば、別の請求項に従属する請求項はいずれも、同じ基本請求項に従属するいずれかの他の請求項に存在する1つ以上の限定を包含するように変更することができる。要素が列挙事項として提示されている場合、例えばマーカッシュ群形式では、要素の各部分群も開示されているものとみなされ、任意の要素を群から除外することができる。一般に、本発明または本発明の態様が特定の要素および/または特徴を含むものとして言及されている場合、本発明の特定の実施形態または本発明の態様はそのような要素および/または特徴からなる、または本質的にそれからなるものと理解されるべきである。簡潔にするために、こうした実施形態は、本明細書でその旨が具体的に記載されているわけではない。「含む」および「含有する」という用語は、非限定的であることを意図しており、追加の要素または工程の包摂も可能であることを表している。範囲が指定されている場合、両端点を包含する。さらに、特に記載のない限り、または文脈および当業者の知見から明らかでない限り、範囲として表される値は、本発明の別の実施形態で指定された範囲内の任意の具体値または部分範囲を、文脈から特に明示されない限り、その範囲の下限の単位の10分の1までと想定することができる。
【0363】
本明細書で参照される、申請特許、公開特許出願、学会誌の記事、および他の刊行物の開示全体が参照により組み込まれる。組み込まれた参照の情報が本明細書と矛盾する場合、本明細書を優先するものとする。先行技術の範囲内である本発明のいずれか特定の実施形態が、特許請求範囲のいずれか1項以上から明示的に除外される場合がある。そのような実施形態が当業者に公知であるとみなされるとき、除外について本明細書に明示的な記載がなくとも、それらが除外されてもよい。先行技術の有無に関わらず、本発明のいずれか特定の実施形態を、理由を問わず、任意の請求項から除外することができる。
【0364】
当業者は、本明細書に記載される具体的な実施形態に対する多くの等価物を理解しているか、または日常的な実験のみを用いて確認できるはずである。本明細書に記載の本発明の実施形態の範囲は、上記の説明に限定されることを意図するものではなく、添付の特許請求の範囲に記載される通りである。以下の特許請求の範囲で定義される本発明の趣旨または範囲から逸脱することなく、この説明に対して種々の変更および改変がなされ得ることが当業者には明らかであろう。
【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-03-24
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
治療を必要とする対象の脳脊髄液(CSF)を、毒性タンパク質を除去または分解できる有効量のプロテアーゼ
と接触させることを含む、CSF中の毒性タンパク質の存在を特徴とする神経障害の
管理方法。
【請求項2】
前記毒性タンパク質が、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43、およびFUSからなる群より選択される、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)
からなる群より選択される、請求項
1記載の方法。
【請求項4】
前記プロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、カテプシンG、カリクレイン-5、
およびカリクレイン-6
からなる群より選択される、請求項
1記載の方法。
【請求項5】
前記プロテアーゼが、固体基材に固定化されている、請求項
1記載の方法。
【請求項6】
前記固体基材が、多孔質固体基材
および架橋樹脂からなる群より選択される、請求項
5記載の方法。
【請求項7】
前記対象のCSFから前記毒性タンパク質を検出する工程をさらに含む、請求項
1記載の方法。
【請求項8】
前記検出する工程が接触させる工程の前に行われ、それによって前記対象が治療に適しているかを特定する、請求項
7記載の方法。
【請求項9】
前記毒性タンパク質がタウである、請求項
1記載の方法。
【請求項10】
前記タウが、タンパク質二量体、タンパク質オリゴマー、もしくはタンパク質凝集体の形態で存在するか、または過剰リン酸化されている、請求項9記載の方法。
【請求項11】
前記接触が、それを必要とする対象のCSFを原位置で接触させることを含む、請求項1記載の方法。
【請求項12】
内部を形成するハウジングと、
前記内部の中にあるプロセアーゼと
を含むデバイスであって、
前記プロテアーゼは、それを必要とする対象の脳脊髄液(「CSF」)中の毒性タンパク質を除去または分解できる有効量で存在する、デバイス。
【請求項13】
大きな生体分子を除去する分級フィルターをさらに含む、請求項12記載のデバイス。
【請求項14】
前記CSFの流れを生成するように構成された少なくとも1つのポンプをさらに含む、請求項12記載のデバイス。
【請求項15】
前記プロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、カテプシンG、カリクレイン-5、およびカリクレイン-6からなる群より選択される、請求項12記載のデバイス。
【請求項16】
前記毒性タンパク質が、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43、およびFUSからなる群より選択される、請求項12記載のデバイス。
【請求項17】
前記対象が、神経障害を有しており、前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群より選択される、請求項12記載のデバイス。
【請求項18】
前記対象に埋め込まれる、請求項17記載のデバイス。
【請求項19】
前記対象のくも膜下腔に埋め込まれる、請求項18記載のデバイス。
【請求項20】
基材と、
前記基材に固定化されたプロテアーゼと
を含む装置であって、
前記プロテアーゼは、それを必要とする対象の脳脊髄液(「CSF」)中の毒性タンパク質を除去または分解するように構成されている、装置。
【請求項21】
大きな生体分子を除去する分級フィルターをさらに含む、請求項20記載の装置。
【請求項22】
前記CSFの流れを生成するように構成された少なくとも1つのポンプをさらに含む、請求項20記載の装置。
【請求項23】
前記プロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、カテプシンG、カリクレイン-5、およびカリクレイン-6からなる群より選択される、請求項20記載の装置。
【請求項24】
前記毒性タンパク質が、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43、およびFUSからなる群より選択される、請求項20記載の装置。
【請求項25】
前記対象が、神経障害を有しており、前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群より選択される、請求項20記載の装置。
【請求項26】
固体基材に固定化されたプロテアーゼを含む組成物であって、前記プロテアーゼは、神経障害を有する対象の脳脊髄液(CSF)中の毒性タンパク質を分解または除去できる、組成物。
【請求項27】
前記プロテアーゼが、トリプシン、エラスターゼ、カテプシンG、カリクレイン-5、およびカリクレイン-6からなる群より選択される、請求項26記載の組成物。
【請求項28】
前記毒性タンパク質が、タウ、α-シヌクレイン、TDP-43、およびFUSからなる群より選択される、請求項26記載の組成物。
【請求項29】
前記神経障害が、進行性核上性麻痺(PSP)、アルツハイマー病(AD)、パーキンソン病(PD)、前頭側頭葉変性症(FTLD)、原発性加齢性タウオパチー(PART)、慢性外傷性脳症(CTE)、大脳皮質基底核変性症(CBD)、染色体17に連鎖したパーキンソニズムを伴う前頭側頭型認知症(FTDP-17)、リティコ・ボディグ病、神経節膠腫、髄膜血管腫症、脳炎後パーキンソニズム、亜急性硬化性全脳炎(SSPE)、および筋萎縮性側索硬化症(ALS)からなる群より選択される、請求項26記載の組成物。
【請求項30】
前記固体基材が、多孔質固体基材および架橋樹脂からなる群より選択される、請求項26記載の組成物。
【請求項31】
前記毒性タンパク質がタウである、請求項26記載の組成物。
【国際調査報告】