(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】物体を船から洋上構造物に移送するシステム
(51)【国際特許分類】
B63B 27/32 20060101AFI20220120BHJP
B63B 27/16 20060101ALI20220120BHJP
B63J 3/04 20060101ALI20220120BHJP
B66C 13/02 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B63B27/32
B63B27/16
B63J3/04
B66C13/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527226
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(85)【翻訳文提出日】2021-05-18
(86)【国際出願番号】 EP2019079060
(87)【国際公開番号】W WO2020104137
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518399243
【氏名又は名称】オルステッド・ウィンド・パワー・エー/エス
【氏名又は名称原語表記】Orsted Wind Power A/S
【住所又は居所原語表記】Kraftvaerksvej 53,7000 Fredericia,Denmark
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100179062
【氏名又は名称】井上 正
(74)【代理人】
【識別番号】100199565
【氏名又は名称】飯野 茂
(74)【代理人】
【識別番号】100219542
【氏名又は名称】大宅 郁治
(74)【代理人】
【識別番号】100153051
【氏名又は名称】河野 直樹
(74)【代理人】
【識別番号】100162570
【氏名又は名称】金子 早苗
(72)【発明者】
【氏名】デウフェミア、ベアトリス
(57)【要約】
物体(12)を船(1)から洋上構造物(2)に移送するシステム。システムは、巻き上げケーブル(10)を有する電気的に作動する巻上げ機構(6)を含む。システムは、検出された船の動きに応答して巻き上げケーブル(10)を移動させるように適合される。システムは、前述の洋上構造物(2)上の基準点から前述の船(1)までの検出された距離に関連するデータを提供するように適合された少なくとも一つの範囲感知装置(14)と、前述の少なくとも一つの範囲感知装置(14)とは独立して、前述の船(1)の検出された動きに関連するデータを提供するように適合された動作基準ユニットとを含む。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
船から洋上構造物へ物体を移送するためのシステムであって、前記システムが、前記洋上構造物上に配置され、かつ巻き上げケーブルを移動させるように適合された、電気的に作動する巻上げ機構を含み、前記巻き上げケーブルが前記巻上げ機構に取り付けられ、前記巻き上げケーブルが前記物体への取り付けのために適合された取り付け手段を含み、
前記システムが、前記洋上構造物上の基準点から前記船への検出された距離に関連するデータを提供するように適合された少なくとも一つの範囲感知装置をさらに含み、
前記システムが、前記少なくとも一つの範囲感知装置から前記データを受信し、前記検出された距離に応答して前記巻き上げケーブルを移動させるように適合され、
前記システムが、前記少なくとも一つの範囲感知装置とは独立して、前記船の検出された動きに関連するデータを提供するように適合された動作基準ユニットをさらに含み、
前記システムが、前記船の前記検出された動きに応答して、前記巻き上げケーブルを移動させるように適合される、システム。
【請求項2】
前記動作基準ユニットが、前記船上に少なくとも一つの加速度計を含む、請求項1に記載のシステム。
【請求項3】
前記動作基準ユニットが、外部位置決めデータ用のレシーバーを含む、請求項1または2のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項4】
前記電気的に作動する巻上げ機構のための緊急電源をさらに含む、請求項1~3のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項5】
前記緊急電源が無停電電源装置を含む、請求項4に記載のシステム。
【請求項6】
前記洋上構造物が、外部電源に取り付けることができる緊急電力供給ケーブルをさらに含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項7】
前記外部電源が前記船上の発電機である、請求項6に記載のシステム。
【請求項8】
前記発電機が、前記船の電気システムから独立している、請求項7に記載のシステム。
【請求項9】
前記巻上げ機構が、クレーンアームを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のシステム。
【請求項10】
船から洋上構造物へ物体を移送する方法であって、請求項1~9のいずれか一項に記載のシステムが使用される、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体または人を船から、洋上構造物、特に、ただしそれだけはない、海洋風力タービンに移送するためのシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
本発明は、さしあたり、洋上ウィンドファームの操作および点検修理を扱うが、その他の幅広い洋上操作に適用可能である。こうした操作は、点検修理作業員が、一般に作業員移送船と呼ばれる船で洋上の場所に航行することを必要とする場合がある。洋上の場所では、点検修理作業員の一部または点検修理作業員を形成する人を、点検修理を実行するために、船から構造物に移送する必要がある。また、機器や貨物を移送する必要がある場合もある。構造物は、典型的には、固定された基礎上の風力タービンまたはプラットフォームなどの固定された構造物であるが、錨で固定された、または固定されていない浮体構造物であり得る。同様に、人は、構造物から船へと戻る必要がある。
【0003】
局地風による波であろうと、または遠くから来るうねりであろうと、海波のために、船は動いている状態であり、そして典型的には移送が行われる構造物に対して動く。こうした相対的な動きは、人の安全な移送にリスクをもたらす。
【0004】
通常の対策は、船首と上陸用構造物との間に摩擦を作り出すために、船の推進および操縦システムを使用して、作業員移送船の船首を洋上構造物の保護上陸用構造物に対して押し付けることである。モノパイル上に位置する風力タービンのような洋上構造物の場合、上陸用構造物は通常、モノパイルに対して好適な間隔を空けて配置された一対の鉛直保護支柱を含み、それによって、とりわけ、モノパイルを船による擦れまたはへこみから保護するが、へこみは、モノパイルの構造的完全性を潜在的に損なうものである。洋上構造物を登るためのはしごが、構造物に近い柱の間に配置され、そのため、保護上陸用構造物は、柱が、人が船の船首にぶつかることから保護するという意味で、保護的である。
【0005】
緩衝し、摩擦を増加させるために、典型的には船首に、ゴムクッションが取り付けられている。海波が大きすぎない場合、これによって、安全な移送を危険にさらす可能性のある相対的な動きがないという意味で、船首を保護上陸用構造物との永久的な係合状態に保持する。しかしながら、海波が大きすぎる場合、船首と構造物との間の係合の急な滑り、および構造物に沿って、鉛直方向で上向きもしくは下向き、側方、または構造物から離れる船首の急な速い動きのリスクがある。これが、人がはしごの段をつかみ、踏み出そうとしている重要な瞬間で起こる場合、その人は移動の途中で安全線にぶら下がってしまう可能性がある。人が保護上陸用構造物の柱によって保護され、なおもはしごをつかんで登り始めることができるが、これは決して望ましい状況ではない。
【0006】
たとえ計画通りに進んだとしても、人が、サバイバルスーツ、およびその動きを制限し、重量を増す可能性のある他の衣類を着用していることを考えると、登ること自体が幾分困難な作業である。従って、登ることを支援するために、巻上げ機構を使用することが提案されている。そのような一例は、基準により本明細書に組み込まれるWO2014/128459に見出される。
【0007】
補助クライミングに加えて、WO2014/128459は、さらに、クライミングを支持するためだけでなく、輸送キャリアを船から構造物上のプラットフォームに持ち上げるためにも、巻上げ機構を使用すること提案する。
【0008】
二つの実施形態は互いにかなり異なるが、WO2014/128459のそれぞれの補助クライミングとキャリアリフティングは、人がサバイバルスーツを着て船の甲板に立って、ハーネスを介して巻き上げケーブルに取り付けられているときに、または輸送キャリアが船のドックまたはクランプ機構にあるとき、巻き上げケーブルをぴんと張った状態に保つために、どちらも、船ではなく構造物に関連付けられた不特定の測定装置を使用して、船の動きを追跡し、それに応じて巻上げ機構を制御することを提案している。また、輸送キャリアを甲板に降ろすとき、輸送キャリアの動きを船の動きに合わせることができる。実際には、不特定の測定装置は、ドックした船の甲板に向かって上陸用構造物に沿って下方に見た構造上に取り付けられた、一つまたは二つのレーザー範囲ファインダーとして実装される。
【0009】
しかしながら、WO2014/128459の提案された解決案は、それらが、保護上陸用構造物なしで、特にはしごのなしで、洋上構造物に実装される場合、いくつかの不利な点を提示しており、どちらも、洋上構造物の建設および維持のコストがかかる大きな原因となっている。はしごをなくすと、構造の複雑さが減少し、当然ながら構造の鋼材消費量も減少する。
【0010】
一つの不利な点は、専用輸送キャリアが必要となり、よって、機器または人のそれぞれへの積込みまたは出入りまたは積み下ろし中に、それが、船の甲板上に固定された状態を維持するために、ドックまたはクランプ手段などの特別な施設が必要となる。第二の欠点は、船から洋上構造物への移送中に船が突然滑ってしまった場合、人が保護されないことである。船が突然滑ると、人は空中浮遊状態になり、直ちに危害の及ばない方法で上方に持ち上げられなければ、船にぶつかる危険がある。ハーネスを装着しての従来の移送とは異なり、人は、上陸用構造物によって保護されず、自分の場所から逃れられない。
【0011】
硬化することは、さらなる問題を提起する。船がレーザー範囲ファインダーの下方に存在している限り、人の動きは船の動きとよく一致し得る。しかし、船がレーザー範囲ファインダーの視界から水平に外れた場合、移送を中断または中止しなければならない。すなわち、船が高波の歳、改めてドックするとき、人が船にぶつからないように、人を、船から十分に離れて、上方に持ち上げる必要がある。降下は、レーザー範囲ファインダーが再び船と接触した時にのみ再開することができる。何らかの理由で船が再びドックできない場合、人にハーネスを装着して無期限に吊り下げられないため、降下を完全に中止する必要がある。代わりに、降下を中止し、その人を構造物上に持ち上げ戻さなければならない。
【0012】
これは、次に、フェイルセーフ巻上げ機構を確立するためのさらなる問題を提起し、故に、例えば、電源障害の場合、人が構造物上に戻るのに吊り上げられたままであり得る。
【0013】
この背景に基づいて、本発明の目的は、はしごを使用することなく、船から洋上構造物に物体を移送するためのシステムを提供することであり、上記の欠点がなく、同時に保護上陸用構造物のない構造物で移送することを可能にする。
【発明の概要】
【0014】
本発明の第一の態様によれば、本目的は、船から洋上構造物へ物体を移送するためのシステムであって、前述のシステムが、前述の洋上構造物上に配置され、かつ巻き上げケーブルを移動させるように適合された、電気的に作動する巻上げ機構を含み、巻き上げケーブルが前述の巻上げ機構に取り付けられ、前述の巻き上げケーブルが前述の物体への取り付けのために適合された取り付け手段を含み、前述のシステムが、前述の洋上構造物上の基準点から前述の船への検出された距離に関連するデータを提供するように適合された少なくとも一つの範囲感知装置をさらに含み、前述のシステムが、前述の少なくとも一つの範囲感知装置から前述のデータを受信し、前述の検出された距離に応答して前述の巻き上げケーブルを移動させるように適合され、前述のシステムが、前述の少なくとも一つの範囲感知装置とは独立して、前述の船の検出された動きに関連するデータを提供するように適合された動作基準ユニット(MRU)をさらに含み、前述のシステムが、前述の船の前述の検出された動きに応答して、前述の巻き上げケーブルを移動させるように適合される、システムによって達成される。
【0015】
動作基準ユニットの導入によって、洋上構造物上の巻上げ機構は、船を含むより大きなシステムの一部となる。船をシステムの統合された一部として有し、そこから動作基準データを組み込み、これにより、巻上げ機構のコントローラーが、たとえそれが範囲感知装置の視野内にないとしても、船の動きに関するデータを組み込むことを可能にする。これにより、巻上げ機構のコントローラーが、範囲感知装置を必要とすることなく、船と同期して、巻き上げ動作の上下の制御を継続することを可能にする。従って、人を安全な距離まで遠い距離おいて持ち上げて、船が再びドックするまで待ってから降下手順を再開する必要はもはやない。代わりに、船が再びドックしている間に、はるかに短い安全距離が支持され、降下は、はるかに短い初期距離で再開され得る。
【0016】
本発明の第一の態様の第一の好ましい実施形態によれば、動作基準ユニットは、前述の船上に少なくとも一つの動作基準ユニットを含む。動作基準ユニットは、容易に利用可能であり、少なくともドック手順の期間中、十分な精度を提供する。
【0017】
しかしながら、本発明の第一の態様のさらなる好ましい実施形態によれば、動作基準ユニットは、追加的にまたは代替的に、外部位置決めデータ用のレシーバーを含んでもよい。外部動作基準を使用する動作基準ユニットは、加速度計またはジャイロスコープのみに依存する動作基準ユニットよりも、より長いスパンにわたってより信頼性があり得る。
【0018】
本発明の第一の態様の別の好ましい実施形態によれば、システムは、前述の電気的に作動する巻上げ機構用の緊急電源をさらに含む。これにより、たとえ通常の電源が故障したとしても、人がプラットフォーム上に持ち上げられるか、または場合によっては船に降ろされる。
【0019】
本発明の第一の態様のさらなる好ましい実施形態によれば、緊急電源は、無停電電源装置を含む。これにより、少なくとも特定の時間枠内で、場合によっては、たとえ通常の電源が故障していても、人がプラットフォーム上に吊り上げられるか、または船に降ろされるのを可能にし、または船のドックが所定の時間枠内に不可能であると判明した場合、最後の手段として、プラットフォーム上に吊り戻される。
【0020】
本発明の第一の態様のさらに好ましい実施形態によれば、洋上構造物は、外部電源に取り付け可能な電力供給ケーブルをさらに含む。これは二つの大きな利点を提供する。第一の利点は、例えば、設置された場合に緊急電源を置き換えるために、船上の発電機からより長い期間の電力を提供できることである。第二の利点は、人を全く電力のない構造物に移送することが可能になることである。これは、外部電源への接続が切断され、従って、風力タービンが、任意の電力自体を供給することも、通常の接続を介して受信することもできない、風力タービンであり得る。その場合、巻上げ機構のための電力を船から供給することができる。
【0021】
本発明の第一の態様のさらに好ましい実施形態によれば、外部電源は、船上の発電機、特に、船の電気システムとは独立した発電機である。これにより、船上で使用され得るシステム電圧から変換することなく、洋上構造物物上で使用されるシステム電圧で電力を直接供給することが可能となる。
【0022】
本発明の第一の態様の別の好ましい実施形態によれば、巻上げ機構はクレーンアームを含む。クレーンアームを使用して、巻き上げプロセス中に、人を構造物から安全な距離に保持して移送することができる。
【0023】
本発明の第二の態様によれば、目的は、物体を船から洋上構造物に移送する方法によって達成され、本発明の第一の態様によるシステムが使用される。本発明は、非限定的な例示的な実施形態および添付図面に基づいてより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】
図1は、船がはしご無しの洋上構造物にドックされたことを含む、本発明によるシステムの概略図を示す。
【
図3】
図3は、システムの相互作用部分の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
まず
図1を参照すると、作業員移送船などの船1が、風力タービン発電機のモノパイル基礎などの洋上構造物2にドックされることが示される。この文脈で「ドックされる」とは、船1の船首が、船1のエンジン出力の下に洋上構造物2に対して押されることを意味する。このために、船首は、通常の状況下で洋上構造物2を損傷することなく、洋上構造物2と船首を係合させるのに適した弾性および摩擦特性を有する材料を含むフェンダー4を含む。船の残りの部分はまだ動くかもしれないが、船首は比較的安定している。しかし、風、波、または電流が過剰になると、船首が滑るリスクが常にある。
【0026】
このドック位置で、物体、特に人の移送が行われる場合がある。見られるように、システムの洋上構造物2は、従来的な保護上陸用構造物およびはしごがない。従って、移送される人およびその他の物体は、洋上構造物2、すなわち、海面5のかなり上の距離に配置されたプラットフォーム3上に持ち上げられなければならない。
【0027】
このために、アーム8がプラットフォーム3の縁部9の上方に延在する、クレーン7などの巻上げ機構6が提供される。巻上げ機構6は、人12がフックされる端部に取り付け手段13を有する巻き上げケーブル10をさらに含む。巻き上げケーブル10は、広義に理解されるべきであり、スチールワイヤ、および、ケーブル、ロープ、コード、リボン、またはホイストの目的に適した天然繊維もしくはポリマー繊維の類似の長い可撓性部材を含むことができる。取り付け手段13は、移送される人12が取り付け得るリング、またはループを含んでもよく、またはその逆であり得る。
【0028】
人12の安全な移送のために、洋上構造物は、少なくとも一つの範囲感知装置14(
図1にのみ図示)を含み、例えば、洋上構造物2上の適切な基準点、例えば、プラットフォーム3の下側に位置するレーザー範囲センサーを含み、洋上構造物2にドックされたときに、それらが船1の甲板までの距離を測定することを可能にする。洋上構造物2上の基準点から船1、例えば、その甲板15までの測定された距離、またはむしろ検出された距離に関連するデータは、無線接続20を介して洋上構造物2上の制御装置16にリアルタイムで通信される。ここで、それは、例えば、洋上構造物2上の巻上げ機構6の電気モーターを制御するためのモーターコントローラーなどの制御機構17への入力を提供するために、受信および処理される。モーターコントローラーへの入力はまた、検出された距離に関連するデータに使用される無線接続20と同じであり得るし、そうでなくてもよい、無線接続21を介して送信される。制御装置16および制御機構17などの装置のうちの一つまたは複数は、一つの単一のユニット32として統合され得る。
【0029】
入力をリアルタイムで受信することにより、巻上げ機構6は、巻き上げケーブル10を昇降させ、それによって、船1、特に船1の甲板15、または船1の甲板15の選択された部分の上りおよび下りの動きと同期して、それに取り付けられたものを全て昇降させることができる。この同期性により、船1からプラットフォーム3への安全な移送を確保するのを助けるだけでなく、船1が、人が甲板から持ち上げられる前に人12の下から離れて滑るリスク、ならびに、人12が降ろされる間、人12が船1にぶつかるリスクが低下するので、特にプラットフォーム3から船1への安全な移動を確保する。
【0030】
しかし、船1は、垂直に滑るだけでなく、横方向または後方に転ぶ可能性もある。これらの場合、範囲感知装置14は、船1の甲板15の追跡を失う。甲板15の位置を知らない場合、人が、船1に当たったり、船1と構造2の間に閉じ込められたりすることがないように、船1の甲板15から十分に離れて人12を持ち上げる必要がある。
【0031】
しかしながら、本発明は、手順を自動化することによって、人12が船1の甲板15から離れて持ち上げられていないリスクを減少させる。より具体的には、本発明は、少なくとも一つの範囲感知装置14から独立して、前述の船1の検出された動きに関連するデータを提供するように適合された動作基準ユニット18を利用する。従って、船1が少なくとも一つの範囲感知装置14の視界から外れて移動したとしても、プラットフォーム3上の制御装置16は、船1の位置、特に鉛直基準に関するデータを受信する。従って、船1の鉛直位置に関するリアルタイムデータを、無線接続21を介して、プラットフォーム3上の制御機構17に送信することができ、それゆえ、人12は船1と同期して上下に移動され得る。いくらかの安全マージンが、好ましくはシステムに組み込まれるが、この安全マージンは、先行技術で必要とされるものよりもはるかに小さい。
【0032】
動作基準ユニット18は、加速度計、ジャイロスコープ、または船の位置を決定できるようにする検出器などの任意の適切な種類のセンサーを含んでもよいが、GNSSまたは差分GNSSからのデータなどの絶対外部基準19を含み得る。それは、船1の動きを追跡する加速度計に依存する場合もある。
【0033】
上述のように、洋上構造物2は、はしご無し構造物である。しかし、洋上構造物2上のはしごがないこと、およびその後、巻上げ機構6を使用して、人12および他の物体をプラットフォーム3上に巻上げたいという願望は、追加の問題を伴う。特に、一つの問題は、制御機構17および範囲感知装置14を含む、巻上げ機構6用の電源の必要性である。
【0034】
風力タービン発電機のグリッド接続22の故障など、電力切断がある場合、最悪の場合、風力タービン発電機は無電力のまま隔離される。移送中にこのような事態が発生した場合、上り降りの可能性が全くないため、人12が空中で無力にぶら下げられるままになる。従って、緊急電源が提供される。望ましくは、巻上げシステムは、巻上げシステム6、範囲感知装置14、制御ユニット16、および制御機構17に適切な時間供給するように適合され、人12が洋上構造物2のプラットフォーム3上に安全に巻上げられるか、または船1の甲板15に降下させることができる、無停電電源装置(UPS)23などの緊急電源を含む。
【0035】
しかし、UPS23の使用は急性の緊急事態に十分であっても、全ての緊急事態に適しているとは限らない。移送が必要な人12を有する船1が到着するずっと前に電源障害が発生した場合、UPSは役に立たない。従って、別のバックアップ電源が提供される。このバックアップ電源は、適切なコネクター26によって、発電機25などの外部電源に接続され得る電気ケーブル24として提供される。
【0036】
好ましくは、電気ケーブル24は、電気ケーブル24およびコネクター26をプラットフォーム3に向かって自動的に引き込むために、収納式ケーブルリール27上に巻かれる。コネクター26が位置する電気ケーブル24の自由端で、またはその近傍で、ケーブルは、海面5の近くの洋上構造物2に取り付けられる、タグ線29に取り付けられる。従って、タグ線は、人30によって、例えば、ボートフック31によって、適切にドックした船1の甲板15から到達する。タグ線29をつかんだ後、電気ケーブルを引き下げ、船1上の発電機25に接続することができる。風力タービン発電機に使用されるシステム電圧は通常、船で使用されるシステム電圧とは異なるため、発電機25は、好ましくは、船1の電気システムとは分離される。
【0037】
巻上げ機構6を発電機25に接続して、移送される人12を、移送させてもよく、好ましくは、範囲センサー14および/または動作基準ユニット18を使用して上述した動作同期化システムを使用して(ただし必ずしもそうする必要はないが)、移動させてもよい。これにより、人12は、電源障害後、例えば、風力タービン発電機の正常な機能を再確立して、洋上構造物2に入ることができる。
【0038】
これにより、船1から風力タービン発電機などの洋上構造物に安全に物体(人など)を移送するための改善された移動システムが可能となる。当業者は、本発明の特許請求の範囲および要旨から逸脱することなく、上述の例示的な実施形態とは異なる多くの変形においてシステムが考案され得ることを知るであろう。
【国際調査報告】