(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】非アルミニウム系制汗組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/89 20060101AFI20220120BHJP
A61Q 15/00 20060101ALI20220120BHJP
A61K 8/02 20060101ALI20220120BHJP
A61K 8/34 20060101ALI20220120BHJP
A61K 8/37 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
A61K8/89
A61Q15/00
A61K8/02
A61K8/34
A61K8/37
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527986
(86)(22)【出願日】2019-10-23
(85)【翻訳文提出日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2019078928
(87)【国際公開番号】W WO2020108882
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521042714
【氏名又は名称】ユニリーバー・アイピー・ホールディングス・ベスローテン・ヴェンノーツハップ
(74)【代理人】
【識別番号】100114188
【氏名又は名称】小野 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100119253
【氏名又は名称】金山 賢教
(74)【代理人】
【識別番号】100124855
【氏名又は名称】坪倉 道明
(74)【代理人】
【識別番号】100129713
【氏名又は名称】重森 一輝
(74)【代理人】
【識別番号】100137213
【氏名又は名称】安藤 健司
(74)【代理人】
【識別番号】100143823
【氏名又は名称】市川 英彦
(74)【代理人】
【識別番号】100183519
【氏名又は名称】櫻田 芳恵
(74)【代理人】
【識別番号】100196483
【氏名又は名称】川嵜 洋祐
(74)【代理人】
【識別番号】100160749
【氏名又は名称】飯野 陽一
(74)【代理人】
【識別番号】100160255
【氏名又は名称】市川 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100202267
【氏名又は名称】森山 正浩
(74)【代理人】
【識別番号】100182132
【氏名又は名称】河野 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100146318
【氏名又は名称】岩瀬 吉和
(74)【代理人】
【識別番号】100127812
【氏名又は名称】城山 康文
(72)【発明者】
【氏名】ズドウラフコワ,アネリア・ニコロバ
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AC071
4C083AC072
4C083AC091
4C083AC101
4C083AC102
4C083AC171
4C083AC241
4C083AC421
4C083AD151
4C083BB01
4C083BB48
4C083CC17
4C083DD08
4C083EE01
(57)【要約】
エタノール、両親媒性物質、揮発性シリコーン、及び、炭化水素噴射剤を含む、非アルミニウム系制汗エアロゾル組成物であって、前記両親媒性物質は、汗に接触すると1次元周期性を超える水不溶性液晶相を形成する物質又は物質の混合物である、組成物。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
エタノール、両親媒性物質、蒸気圧が25℃で1Pa以上の揮発性シリコーン、及び、炭化水素噴射剤を含む制汗エアロゾル組成物であって、
前記両親媒性物質が、汗に接触すると1次元周期を超える水不溶性液晶相を形成する物質又は物質の混合物であり、
(i)両親媒性物質対(エタノール+揮発性シリコーン)の重量比が1:9~2:3であり、
(ii)揮発性シリコーン対(エタノール+両親媒性物質)の重量比が1:9~2:1であり、
(iii)エタノール対揮発性シリコーンの重量比が1:4以上であり、
(iv)前記噴射剤は、全組成物の35~95重量%を構成する、制汗エアロゾル組成物。
【請求項2】
エタノール対揮発性シリコーンの重量比が1:4以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
エタノール対揮発性シリコーンの重量比が1:3以上である、請求項1に記載の組成物。
【請求項4】
エタノール対揮発性シリコーンの重量比が1:2以上である、請求項2に記載の組成物。
【請求項5】
前記噴射剤が、炭化水素噴射剤のみからなる、先の請求項のいずれか一項記載の組成物。
【請求項6】
前記両親媒性物質が、以下:
(i)オレイルアルコールとグリセリルモノラウレートとの比が28:72~44:56;
(ii)オレイルアルコールとトリエチレングリコールモノヘキサデシルエーテルとの比が15:85~25:75;
(iii)グリセリルモノオレイン酸塩とシリコンオイル(DC 246 ex Dow Corning)との比が87:13~80:20;
(iv)オレイルアルコールとアルキルポリグルコシド(APG 600 ex Henkel)との比が50:50~60:40、および
(v)イソステアリルアルコールとグリセリルモノラウレートとの比が25:75~45:55
から選択される両親媒性物質の混合物である、請求項1~5のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項7】
前記両親媒性物質が、グリセロールモノオレエートおよびグリセロールモノラウレートから選択される脂質物質を含む、請求項1~6のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項8】
前記両親媒性物質が、オレイン酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ステアリルアルコールおよび1-モノ-イソステアリルグリセリルエーテルからなる群から選択される物質をも含む、請求項7に記載の組成物。
【請求項9】
前記両親媒性物質が、グリセロールモノラウレートおよびイソステアリルアルコールの混合物を含む、請求項8に記載の組成物。
【請求項10】
前記両親媒性物質が、25:75~45:55の比でのイソステアリルアルコールとグリセリルモノラウレートとの混合物である、請求項9に記載の組成物。
【請求項11】
前記揮発性シリコーンが、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンおよびデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選択されるシロキサンを、90重量%超含む、請求項1~10のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項12】
前記揮発性シリコーンが、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンおよびデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選択されるシロキサンを、90重量%超含む、請求項11に記載の組成物。
【請求項13】
アルミニウムまたはジルコニウム制汗塩を含まない、請求項1~12のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項14】
抗菌薬を含む、請求項1~13のいずれか1項に記載の組成物。
【請求項15】
請求項1~13のいずれか一項記載の組成物の局所適用を含む、制汗利益を達成する美容法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は、化粧品組成物、および、制汗剤、特に非アルミニウム系制汗剤組成物としてのその使用の分野に属する。
【背景技術】
【0002】
背景
EP 550,960 A1(Unilever、1992)は、汗に接触すると形成される両親媒性物質の制汗活性物質としての使用を開示している。この物質は、1次元周期を超える水不溶性液晶相である。本発表では、エタノール組成物も、その安定性の問題も、エアロゾル組成物における使用も開示していない。
【0003】
WO 94/024993(Unilever、1994)は、制汗剤組成物について開示しており、当該組成物は、揮発性シリコーンを含み、短鎖一価アルコールの全組成の10重量%未満を含む化粧用ビヒクル中において、汗に接触すると1次元周期性を超える水不溶性液晶相を形成する両親媒性物質を含む。本発表では、本明細書に定義される成分の特定の比率を有する組成物については開示しておらず、かつ、その低温(0℃)安定性におけるそれらの重要性についても開示していない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】EP 550,960 A1(Unilever、1992)
【特許文献2】WO 94/024993(Unilever、1994)
【0005】
発明の概要
本発明の目的は、制汗利益を送達するためにアルミニウムまたはジルコニウム塩の存在を必要としない制汗エアロゾル組成物を提供することである。本発明のさらなる目的は、高度の貯蔵安定性を、特に低温で有するエアロゾル組成物からこれを行うことである。
【0006】
本発明の第1の側面において、エタノール、両親媒性物質、揮発性シリコーン及び炭化水素噴射剤を含む制汗エアロゾル組成物が提供され、当該両親媒性物質は、汗に接触すると一次元周期性よりも大きい水不溶性液晶相を形成する物質または物質の混合物であり、ここで:
(i)両親媒性物質対(エタノール+揮発性シリコーン)の比は、1:9~2:3であり、
(ii)揮発性シリコーン対(エタノール+両親媒性物質)の比は、1:9~2:1であり、
(iii)エタノール対揮発性シリコーンの比は、1:4以上であり、
(iv)噴射剤は、全組成物の35~95重量%を構成する。
【0007】
本発明の第2の側面では、本発明の第1の側面で言及される他のすべての成分を含む組成物に炭化水素噴射剤を添加することを含む、制汗エアロゾル組成物の製造方法を提供する。
【0008】
本発明の第3の側面では、本発明の第1の側面による組成物の局所適用を含む、制汗利益を達成する美容法が提供される。
【0009】
詳細な説明
本明細書において、本発明の特定の局面に関して「好ましい」として表される特徴は、本発明の各局面に関して好ましいことが理解されるべきである(「より好ましい」または「最も好ましい」として表される特徴も同様)。
【0010】
本明細書において、本発明の好ましい特徴は、他の好ましい特徴と組み合わせて使用する場合に特に好ましい。
【0011】
本明細書において、「周囲条件」とは、特に指定のない限り、約20℃および1気圧を指す。
【0012】
本明細書において、特に指定のない限り、すべてのパーセンテージ、比率及び量は重量による。
【0013】
本明細書において、「含む(comprising)」の語は、必ずしも「包含する(including)」を意味するが、必ずしも「からなる(consisting of)」ことを意味するものではなく、すなわち、それは非網羅的である。
【0014】
本明細書において、「美容」の方法および組成物はそれぞれ、非治療的方法および非治療的組成物を意味するものとして理解されるべきである。
【0015】
本明細書において、「両親媒性物質」とは、その構造中に、親水性部分と疎水性部分と双方を有することによって定義される物質である。
【0016】
本明細書において、「水不溶性」とは、(37℃において)水への溶解度が0.1重量%未満であることを意味する。
【0017】
本明細書において、用語「炭化水素」噴射剤とは、水素および炭素原子のみからなり、沸点が20℃未満の噴射剤をいう。疑義を回避するため、この定義ではジメチルエーテルなどのエーテルは除外される。
【0018】
本明細書において、「沸点」とは、一般的な記述子が用いられる場合に、用いられる一般的な記述子の対象となる全ての成分の組み合わせの沸点をいう。
【0019】
本発明の組成物は、人体のわきの下の領域および/または足に局所的に適用された場合に特に効果的である。組成物は、人体のわきの下の領域に局所的に適用された場合、特別効果的である。
【0020】
本発明による制汗組成物は、好ましくは、アルミニウムまたはジルコニウム制汗塩を含まない(free of)。実際、それらは、より好ましくは、任意のアルミニウムまたはジルコニウム塩を含まない(free of)。
【0021】
本明細書において、「含まない(free of)」とは、規定された成分又は複数の成分が、0.1%未満、好ましくは0.01%未満であることを意味する。
【0022】
制汗エアロゾル組成物は、噴射剤と基剤とから成る。基剤の成分は、典型的には、最初に一緒に混合され、噴射剤は、「ガス化」とも呼ばれるプロセスにおいて最後に添加される。基剤の調製と噴射剤の添加との間にかなりの期間があり得るので、基剤が良好な保存安定性を有することが重要である。
【0023】
本明細書において、制汗エアロゾル組成物の「基剤」とは、噴射剤以外の総組成物の全成分である。
【0024】
十分に配合された制汗エアロゾル組成物が、良好な保存安定性を有し、その結果、購入および使用前に、店舗への長時間の輸送および貯蔵庫で長期間に耐えることが重要である。
【0025】
本発明は、優れた保存安定性を有する組成物に関し、当該保存安定性は、0℃などの低温での安定性を含む。本発明は、周囲温度および低温の両方で安定性を達成することにより、長期間および広範囲の温度にわたり、良好な保存安定性およびを有する、完全に配合された制汗エアロゾル組成物の送達を可能にする。
【0026】
両親媒性物質
両親媒性物質は、汗に接触すると、1次元周期を超える水不溶性液晶相を形成する物質または物質の混合物である。両親媒性物質は、人体の皮膚上の汗と接触し、体温(37℃)で、好ましくは25℃~37℃で、上記の相を即座に形成することができる物質または物質の混合物である。
【0027】
組成物が人体の皮膚に適用される場合に許容可能な程度の発汗抑制を達成するために、組成物中に十分な量の両親媒性物質が存在することが必須である。両親媒性物質は、エタノール、両親媒性物質および揮発性シロキサンからなる三成分混合物少なくとも10%、好ましくは少なくとも15%である。
【0028】
エタノール、両親媒性物質および揮発性シロキサンからなる三成分混合物中の両親媒性物質の最大含有量は、配合安定性の理由から、40%、好ましくは30%である。
【0029】
両親媒性物質対(エタノール+揮発性シリコーン)の比は、1:9~2:3であり、代替的に10:90~40:60と表すことができる。換言すれば、両親媒性物質は、エタノール、両親媒性物質および揮発性シロキサンからなる三成分混合物の10%~40%で存在する。
【0030】
両親媒性物質は、ユニリバーによる先行文献EP 550,960 A1およびWO 94/024993と同様に、組成物に対して制汗活性剤として働く。両親媒性物質は水に不溶性でなければならないが、水の付加による物理相を通過しなければならず、最終的には、1次元周期を超える液晶相を生ずる。かかる相には、三次元に長距離の周期性を有する立方晶液晶構造、および、二次元に長距離の周期性を有する六方晶結晶構造が含まれる。
【0031】
本明細書において、汗との接触における一次元周期性を超える液晶相の形成に関する言及は、特に体温に近い、例えば30~35℃でのそのような接触をいうことを理解すべきである。
【0032】
本発明の好ましい実施形態によれば、両親媒性物質は、汗との接触で液晶構造を形成し、それにより細孔遮断効果を増強するため、物理的に膨潤する物質である。
【0033】
制汗活性物質の構造は、便宜的には、標準的なX線散乱技術によって決定することができる。
【0034】
好ましい両親媒性物質は、脂質物質、特にグリセロールモノオレエートまたはグリセロールモノラウレートを含む。かかる脂質は、オレイン酸、オレイルアルコール、イソステアリルアルコール、ステアリルアルコールおよび1-モノ-イソステアリルグリセリルエーテルからなる群から選択される物質と組み合わせて使用されることが特に好ましい。
【0035】
両親媒性物質の好ましい混合物は、以下から選択され得る:
1. 24:76~26:74の比でのオレイルアルコールとグリセロールモノラウレート;
2. 5:95~13:87の比でのオレイルアルコールとトリエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル;
3. 5:95~30:70の比でのセラミド(ウシ脳由来)とグリセロールモノオレエート;
4. 24:76~26:74の比でのオレイルアルコールとヘキサデシルトリメタルアンモニウムクロリド;
5. 23.5:76.5の比でのシクロヘキサンとジドデシルジメチルアンモニウムクロリド;
6. 20:80の比でのリゾチームとモノオレイン酸グリセリル;
7. 66:34~76:24の比でのジエチレングリコールモノオレイルエーテルとペンタエチレングリコールモノオレイルエーテル;
8. 21:79~25:75の比でのイソステアリルアルコールとグリセリルモノラウレート;
9. 28:72~44:56の比でのオレイルアルコールとグリセリルモノラウレート;
10. 15:85~25:75の比でのオレイルアルコールとトリエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル;
11. 29対71の比での塩化ドデシルトリメチルアンモニウムとオレイン酸;
12. 40対60の比でのオレイルアルコールとジステアリンジメチルアンモニウムクロリド;
13. 40対60での比でのオレイン酸とジステアリンジメチルアンモニウムクロリド;
14. 34:66~50:50の比でのオレイン酸とレシチン;
15. 90:10の比でのグリセリルモノオレエートとテトラデカン;
16. 95:5~65:35の比でのグリセリルモノオレエートとヘキサデカン;
17. 80:20の比でのジエチレングリコールモノオレイルエーテルとペンタエチレングリコールモノオレイルエーテル;
18. 87:13~80:20の比でのグリセリルモノオレイン酸塩とシリコンオイル(DC 246 ex Dow Corning);
19. 50:50~60:40の比でのオレイン酸とアルキルポリグルコシド(APG 600 ex Henkel);
20. 50:50~60:40の比でのオレイルアルコールとアルキルポリグルコシド(APG 600 ex Henkel);
21. 25:75~45:55の比でのイソステアリルアルコールとグリセリルモノラウレート;
22. 95:5の比でのグリセリルモノオレエートとバチルアルコール;
23. 95対5の比でのグリセリルモノオレイン酸とキミルアルコール;
24. 95:5の比でのグリセリルモノオレイン酸と1-モノイソステアリルグリセリルエーテル;
【0036】
両親媒性物質は汗に接触して六方相を形成することが特に好ましい。
【0037】
汗との接触で六角相を形成する特に好ましい両親媒性物質の混合物は、以下から選択される:
1. 28:72~44:56の比でのオレイルアルコールとグリセリルモノラウレート;
2. 15:85~25:75の比でのオレイルアルコールとトリエチレングリコールモノヘキサデシルエーテル;
3. 87:13~80:20の比でのグリセリルモノオレイン酸塩とシリコンオイル(DC 246 ex Dow Corning);
4. 50:50~60:40の比でのオレイルアルコールとアルキルポリグルコシド(APG 600 ex Henkel);
5. 25:75~45:55の比でのイソステアリルアルコールとグリセリルモノラウレート。
【0038】
最も好ましい実施形態において、両親媒性物質は、イソステアリルアルコールおよびグリセロールモノラウレートの混合物を含むか、または、混合物であり、特に25:75~45:55の重量比で使用される場合に好ましい。
【0039】
全組成物中の両親媒性物質の含有量は、その中の噴射剤を無視して、好ましくは少なくとも10%、より好ましくは少なくとも12%、最も好ましくは少なくとも15%である。
【0040】
揮発性シリコーン
本明細書において「揮発性シリコーン」とは、25℃で蒸気圧が1Pa超のシリコーンである。
【0041】
揮発性シリコーンおよびその組み込みレベルは、潜在的な刺激を減少、および/または、組成物の良好な感覚特性を促進するのに役立つ。
【0042】
本発明の組成物中の揮発性シリコーン対(エタノール+両親媒性物質)の比は、1:9から2: 1であり、これは10:90から67.7:33.3のように代替的に表される。これは、エタノール、両親媒性物質及び揮発性シロキサンからなる三成分混合物の10%から67.7%存在する揮発性シリコーンと等しい。好ましくは、揮発性シリコーンは、エタノール、両親媒性物質および揮発性シロキサンからなる三成分混合物の10%~50%、より好ましくは15~30%で存在する。
【0043】
その中の噴射剤を無視して、全組成物中の揮発性シリコーンの含有量は、好ましくは10%~67%、より好ましくは10%~50%、最も好ましくは15%~30%である。
【0044】
揮発性シリコーンは、90重量%超、または2から6個のシリコーン原子を有するシロキサンを含むか、または、それから成り、環状または直線状のいずれかに配置されていることが好ましい。
【0045】
直線状シロキサンは、一般式:Me3SiO(Me2SiO)nSiMe3を有し、式中、Me=メチル基(-CH3)である。
n=0のときシロキサンはヘキサメチルジシロキサンである。
n=1のときシロキサンはオクタメチルトリシロキサンである。
n=2のとき、シロキサンはデカメチルテトラシロキサンである。
n=3のときシロキサンはドデカメチルペンタシロキサンである。
【0046】
揮発性シリコーンは、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサン、ドデカメチルペンタシロキサンおよびデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選択されるシロキサン90重量%超を含むか、または、それからなることが特に好ましい。
【0047】
揮発性シリコーンは、ヘキサメチルジシロキサン、オクタメチルトリシロキサン、デカメチルテトラシロキサンおよびデカメチルシクロペンタシロキサンからなる群から選択されるシロキサン90重量%超を含むか、または、それからなることが特に好ましい。
【0048】
エタノール
エタノールは本発明の組成物の必須成分である。エタノールの目的は主に、本発明の組成物の必須成分でもある揮発性シリコーンとのバランスで、両親媒性物質を可溶化することである。
【0049】
エタノール対揮発性シリコーンの比率は1:4以上、好ましくは1:3以上、より好ましくは1:2以上である。これらの比は、20:80以上、好ましくは25:75以上、より好ましくは33.3~66.7以上に等しい。これらの比は、本発明の組成物のために必要な(相)安定性の生成を可能にする。
【0050】
本発明の組成物中のエタノールの上限レベルは、以前に言及された制限によって指示される。エタノール、両親媒性物質および揮発性シロキサンからなる3成分の「基剤」組成物に集中して、両親媒性物質の最小含有量は10%であり、揮発性シリコーンの最小含有量は10%である。したがって、この3成分/システム中のエタノールの最大含量は80%である。
【0051】
本発明の組成物中のエタノールについてのより低いレベルは、以前に言及された制限によっても指示される。エタノール、両親媒性物質および揮発性シロキサンからなる3成分の「基剤」組成物に集中すると、両親媒性物質の最大含有量は40%であり、エタノール対揮発性シリコーンの最小比率は1:4である。したがって、この3成分/システム中のエタノールの最小含量は12%である。
【0052】
したがって、エタノールは、エタノール、両親媒性物質および揮発性シロキサンからなる三成分混合物の12%~80%で存在する。好ましくは、エタノールは、エタノール、両親媒性物質および揮発性シロキサンからなる三成分混合物の12%~75%で存在する。
【0053】
好ましい実施形態では、エタノール、両親媒性物質および揮発性シロキサンからなる3成分の「基剤」組成物は、15~40%の両親媒性物質、10~50%の揮発性シリコーンおよび12~75%のエタノールからなり、これら3成分の合計は100%である。
【0054】
炭化水素噴射剤
本発明の組成物の必須成分は炭化水素噴射剤である。当該物質はその性質上、極めて疎水性である。驚くべきことに、本発明で使用される比較的親水性の基剤は、基剤中の成分の比が注意深く選択されるならば、この疎水性噴射剤と適合性であることを見出した。このような選択がなければ、多相性または不安定な組成物が生じる。
【0055】
効果的に機能するためには、炭化水素噴射剤は、一般に20℃未満、しかし好ましくは10℃未満、より好ましくは0℃未満の比較的低い沸点を有しなければならない。
【0056】
炭化水素噴射剤は、好ましくは全組成物の35~95%、より好ましくは全組成物の40~90%、最も好ましくは50~85%を構成する。
【0057】
好ましい炭化水素噴射剤には、n-ブタン、イソブタンおよびプロパン、およびそれらの混合物が含まれる。特に好ましい噴射剤は、n-ブタン、イソブタンおよびプロパンのブレンドであり、特にこれらの成分がn-ブタンについて44~64%、イソブタンについて14~34%、およびプロパンについて11~32%の範囲の量で全噴射剤中に存在する場合であり、これら3つの成分の量は、噴射剤の合計100%である。このような特に好ましい噴射剤の例は、n-ブタン、イソブタンおよびプロパンから、それぞれ約54:24:22の比で構成されている。このような噴射装置は、Harp(登録商標)インターナショナルからAP40 として入手可能である。
【0058】
本発明による組成物は、まず、基剤組成物を調製し、基剤組成物をエアロゾル缶に装填し、缶の口に弁組立体をフィッティングし、それにより缶を密封し、その後、缶に噴射剤を所望の圧力に装填し、最後に、バルブ組立体の上またはその上方にアクチュエータを装着することにより、従来の方法で製造することができる。
【0059】
他の成分
本発明の組成物の好ましい追加成分は、消臭活性物質である。これらは、典型的には、人体の皮膚上の細菌に対して活性な抗菌剤である。これらは悪臭を低減するのに役立ち、両親媒性物質がそれ自体抗菌剤ではない組成物において特に有用である。
【0060】
使用する場合、組み込みレベルは好ましくは全組成物の0.01~5重量%、より好ましくは0.01~2重量%、最も好ましくは0.03~0.5重量%ある。
【0061】
好ましい抗菌消臭剤は、エタノールのような単純なアルコールよりも効果的なものである。特に好ましい抗菌消臭剤は、エタノールに可溶であり、これは、20℃で少なくとも10g/Lのエタノールへの溶解度を意味する。
【0062】
適切な抗菌消臭剤の例には、ナイアシンアミド;セチルトリメチルアンモニウム塩のような第四級アンモニウム化合物;クロルヘキシジンおよびその塩;ならびに「消臭成分」、S.A.MakinおよびM.R.Lowry、「制汗剤および消臭剤」、Ed.K.Laden(1999、Marcel Dekker、ニューヨーク)に記載されている、ジグリセロールモノカプレート、ジグリセロールモノラウレート、グリセロールモノラウレート、および類似物質が含まれる。より好ましくは、ポリヘキサメチレンビグアナイド塩(ポリアミノプロピルビグアナイド塩としても既知)であり、例えば、Arch Chemicalsから入手可能なCosmocil CQ、2’,4,4’-トリクロロ,2-ヒドロキシ-ジフェニルエーテル(トリクロサン)、3,7,11-トリメチルドデカ-2,6,10-トリエノール(ファルネソール)、ティーツリーオイルおよびタイムオイルなどの精油、クライムバゾール、オクタピロックス、ケトコナゾール、亜鉛ピリチオンおよびこれらの混合物である。
【0063】
好ましい任意成分は、エチルまたはメチルパラベンまたはBHT(ブチルヒドロキシトルエン)のような保存剤であり、典型的には全組成物の0.01~0.1重量%の量である。
【0064】
本発明は、以下で、発明の範囲を限定しない実施例によって説明されるであろう。
【0065】
例
以下の例では、本発明による例を数字で示し、比較例を大文字で示す。
【0066】
これらの実施例で使用された揮発性シリコーンは:
DC245 = シクロペンタシロキサン
DC200(1.5cS) = デカメチルテトラシロキサン(DC200と称する)
【0067】
これらの物質はそれぞれダウンコーニング社から入手可能である。
【0068】
これらの実施例で使用された両親媒性物質は「脂質」と命名され、グリセロールモノラウレートおよびイソステアリルアルコールの60:40ブレンドであった。
【0069】
これらの例で用いたエタノールは、無水アルコールであった。
【0070】
これらの例で使用された炭化水素噴射剤は、AP40として知られ、Harp(登録商標)インターナショナルから入手可能なn-ブタン、イソブタンおよびプロパンの混合物であった。
【0071】
これらの実施例で使用された揮発性シリコーンは、特に記載のない限り、DC245およびDC200の15:85ブレンドであった。
【0072】
表1に示す組成は、当該技術分野で知られている方法により調製した。まず基剤組成を調製し、次にこれを従来のエアロゾル容器に噴射剤でガス化した。表示量は重量パーセンテージで示す。
【0073】
保存安定性は、常温で3週間後に評価した。
【0074】
不安定性は、相分離により現れ、脂質成分は、通常、液相から結晶化した。
【0075】
表1の実施例1および2は、それぞれ、エタノール対揮発性シリコーン比が、37:63および67:33であり、安定であったが、比較例AおよびBは、それぞれ、エタノール対揮発性シリコーン比が、13:87および6.7:93.3であり、安定ではなかった。
【表1】
【0076】
表2中の例は、表1と同様に作成した。ここでも、表示量は重量パーセンテージで示す。これらの例はいずれも周囲温度および0℃で安定していた(試験期間はそれぞれ6週間および4週間)。
【表2】
【0077】
* これらの例に関し、揮発性シリコーンは100% DC200であり、上述のDC245およびDC200のブレンドではなかった。
【0078】
これらの成功例は、エタノール対揮発性シリコーン比の広い比率をカバーしており、47:53~63:27の範囲であることが注目される。
【国際調査報告】