(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】飲用カップ
(51)【国際特許分類】
B65D 47/20 20060101AFI20220120BHJP
B65D 47/06 20060101ALI20220120BHJP
A47G 19/22 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B65D47/20 110
B65D47/06 110
A47G19/22 M
A47G19/22 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021528996
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-07-19
(86)【国際出願番号】 AU2019051293
(87)【国際公開番号】W WO2020107064
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】AU
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519440799
【氏名又は名称】ビーボックス・フォー・キッズ・ディベロップメンツ・プロプリエタリー・リミテッド
【氏名又は名称原語表記】B.BOX FOR KIDS DEVELOPMENTS PTY LTD
【住所又は居所原語表記】Unit 5,677 Springvale Road,Mulgrave,Victoria 3170(AU)
(74)【代理人】
【識別番号】110000394
【氏名又は名称】特許業務法人岡田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ユング,マイヤー,チャールズ,ウィリアム
(72)【発明者】
【氏名】チェーンベリ,リサ,エドランド
(72)【発明者】
【氏名】アマトリー,シルバイン,ジャック
(72)【発明者】
【氏名】ヘルマンズ,ティーワイ,ジェラード
(72)【発明者】
【氏名】チャンドラセカラン,ナヴィン,チャンドラカンス
【テーマコード(参考)】
3B001
3E084
【Fターム(参考)】
3B001AA02
3B001BB04
3B001CC12
3B001CC25
3E084AA02
3E084AA12
3E084AB01
3E084BA02
3E084CA01
3E084DB08
3E084EA02
3E084FB03
3E084GA01
3E084GB01
3E084KB01
3E084LB01
3E084LC01
3E084LC02
3E084LD02
3E084LD17
3E084LD30
(57)【要約】
飲用カップ10は、容器11と取り外し可能なクロージャ12とを備える。クロージャ12は容器11に接続するための接続端25を有し、その接続端25は容器11内からくる液体を受け入れるために開口している。クロージャ12は、接続端25の反対側にある閉塞端13と、閉塞端13の外縁に形成された飲み口17とを有している。クロージャ12は、接続端25と閉塞端13との間に延びる側壁14と、容器11内から飲み口17に液体が移動するのを容易にする少なくとも一つの開口部37とを有している。シール15はクロージャ12によって支持されており、側壁14の外面まわりに延びており、飲み口17を通る液体の移動に対して飲み口17を密封している。シール15は柔軟性があり、かつ、圧力に応じて飲み口17から持ち上がって離れ、カップ10から飲む際に液体が飲み口17を通れるようになっている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
飲用カップであって、
容器と取り外し可能なクロージャとシールとを備え、
クロージャは容器に接続するための接続端を有し、その接続端は容器内から液体を受け入れるために開口しており、
クロージャが、接続端の反対側にある閉塞端と、閉塞端の周縁に形成された飲み口とを有しており、
クロージャが、接続端と閉塞端との間に延びる側壁と、容器内から飲み口に液体が移動しやすくする少なくとも一つの開口部とを有しており、
シールはクロージャによって支持されており、側壁の外面まわりに延びており、飲み口を通過する液体に対して飲み口を密封しており、シールは柔軟性があり、かつ、圧力に応じて飲み口から持ち上がって離れ、カップから飲む際に液体が飲み口を通過できるようになっている飲用カップ。
【請求項2】
請求項1に記載の飲用カップであって、シールの一部が、クロージャの接続端と閉塞端との間の側壁の外面との係合から離間されて、シールと側壁の外面との間に空隙を形成しており、それによってシールが、空隙を介してシールにかけられる内方向の唇の圧力に応じて曲がり、飲み口から持ち上がって離れ、少なくとも一つの開口部を液体が通過できるようにしている飲用カップ。
【請求項3】
請求項1に記載の飲用カップであって、シールがクロージャとの近位係合と遠位係合とを有し、近位係合と遠位係合との間の側壁の外面との係合から離間されて、シールと側壁の外面との間に空隙を形成しており、それによってシールが、空隙を介してシールにかけられる内方向の唇の圧力に応じて曲がり、飲み口から持ち上がって離れ、飲み口を液体が通過できるようにしている飲用カップ。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の飲用カップであって、シールが接続端に隣接してクロージャに着脱可能に接続されている飲用カップ。
【請求項5】
請求項4に記載の飲用カップであって、クロージャが、接続端に隣接する半径方向外向きの凹部を含み、シールが凹部内に取り外し可能に受け入れられる突起を含む飲用カップ。
【請求項6】
請求項4に記載の飲用カップであって、クロージャが、接続端に隣接する半径方向外向きに延びる突起を含み、シールが、クロージャに対して取り外し可能に取り付けられる突起を含み、突起に隣接して入れ子状に係合している飲用カップ。
【請求項7】
請求項4~6のいずれか一項に記載の飲用カップであって、シールがクロージャと接続端に隣接する容器とを密封係合している飲用カップ。
【請求項8】
請求項7に記載の飲用カップであって、シールが容器と係合するためのくさび面または面取りされた面を有している飲用カップ。
【請求項9】
請求項1~8のいずれか一項に記載の飲用カップであって、シールが閉塞端の側縁と密封係合することによって液体の移動に対して飲み口を密封している飲用カップ。
【請求項10】
請求項1~9のいずれか一項に記載の飲用カップであって、閉塞端が、側壁の上にある飲み口にリップを形成しており、側壁が、リップから離間しかつリップに隣接する横延伸部を含み、少なくとも一つの開口部がリップと横延伸部との間に形成されている飲用カップ。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に記載の飲用カップであって、少なくとも一つの開口部が環状の開口部である飲用カップ。
【請求項12】
請求項1~9のいずれか一項に記載の飲用カップであって、閉塞端が、側壁の上にある飲み口にリップを形成しており、リップが、リップの内側まわりに離間して配置された複数のリブを有しており、少なくとも一つの開口部が、隣接するリブ間の流路によって形成されている飲用カップ。
【請求項13】
請求項1~12のいずれか一項に記載の飲用カップであって、クロージャが、シールと側壁との間を流れる液体を容器内に戻すための開口部を含むか、または、液体が容器からシールと側壁との間の位置に流れるようにするための開口部を含む飲用カップ。
【請求項14】
請求項13に記載の飲用カップであって、開口部が接続端に隣接する側壁に形成されている飲用カップ。
【請求項15】
請求項1~14のいずれか一項に記載の飲用カップであって、飲用モードと非飲用モードとの間でシフト可能な外側リングを含み、
a.非飲用モードにおいて、そのリングはシールを覆い、かつ、少なくとも飲み口を密封しているシールの領域においてはシールを支持しており、
b.飲用モードにおいて、そのリングは、シールの少なくとも飲み口を密封している領域において、シールを露出させるように配置されており、カップから飲む際に、シールに圧力を加えてシールを持ち上げて飲み口から離し、飲み口を液体が通過できるようにしている飲用カップ。
【請求項16】
請求項15に記載の飲用カップであって、非飲用モードにおいて、リングがシールを覆っており、かつ、少なくとも飲み口を密封しているシールの領域においてシールに圧力を加える飲用カップ。
【請求項17】
請求項15または16に記載の飲用カップであって、リングが、容器と取り外し可能なクロージャとに対して回転することによって飲用モードと非飲用モードとの間でシフト可能である飲用カップ。
【請求項18】
請求項17に記載の飲用カップであって、リングが内面にねじ山を含み、容器またはクロージャが、ねじ山内に受け入れられるカムを含み、リングが回転することによって、ねじ山がカムに沿って動き、その回転方向によって上昇または下降するようになっている飲用カップ。
【請求項19】
請求項15~18のいずれか一項に記載の飲用カップであって、飲用モードにおいて、リングの上縁がシールの下縁に重なるかまたはシールの下縁を覆うようになっている飲用カップ。
【請求項20】
請求項1~19のいずれか一項に記載の飲用カップであって、クロージャの閉塞端が透明である飲用カップ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は飲用カップに関するものであり、特に乳児期の子供用のカップに関し、カップが落下したりひっくり返されたりした場合にカップから液体が漏れたりこぼれたりするのを制限するための構造を有する。なお、本発明については、乳児期の子供による使用に関連して説明するが、本発明に係るカップは、健常者だけではなく、例えば身体の器用さが制限された障害者などを含め、カップの漏出やこぼれを未然に防ぐ構造を利用したいどの年齢の人々によっても利用できるということは当然理解されたい。
【0002】
優先権の相互参照
本出願は、2018年11月30日に出願されたオーストラリア仮特許出願第2018904571号から優先権を主張するものであり、その内容は、この参照により本明細書に援用される。
【背景技術】
【0003】
以下の本発明の背景の議論は、本発明の理解を容易にすることを意図するものである。しかしながら、この議論のいずれかの側面が、本願の優先日における一般的な知識の一部であったことを認めたり自白したりするものでないということは当然理解されなければならない。
【0004】
乳児期の子供用カップでは、そのようなユーザーのできる操作が少ないことやユーザーが不器用であることを考慮しなければならず、可能な場合には、カップが落下したりひっくり返されたりしたときに漏れたりこぼれたりするのをなくすか、少なくとも最小限に抑えられるように、漏洩制御を提供する必要がある。また、乳児期の子供用の飲用カップは、開口していて、かつ、ユーザーがカップの縁に沿う任意の位置から飲むことができる通常のまたは標準的な形のカップに移行するのを容易にするように設計することもできる。
【0005】
さまざまな形態のいわゆる「こぼれない」飲用カップは既に入手可能である。米国特許第8,453,870号には、取り外し可能なキャップを備えたカップが開示されており、そのキャップを通してカップ内の液体を飲むことができる。そのキャップは、飲み口まで延びる環状の側壁と、飲み口の凹状のスプラッシュガードとを有している。また環状の側壁は飲む際に液体が流れる開口部を備えている。シールがスプラッシュガードの中央に取り付けられ、半径方向に延びて飲み口に係合し、飲み口を通過する液体の流れを防止する。しかしながら、そのシールは柔軟性があるため、子どもがカップから飲むときの飲み口にかかる吸引力により、子どもが飲む飲み口の部分からシールが持ち上がり、液体がその部分を通過して流れるおそれがある。
【0006】
米国特許第9,241,588号は、同様の「こぼれない」飲用カップを開示しているが、このカップはシールをキャップのスプラッシュガードに接続するための異なる構成を含んでいる。それは、液体を流すための通路を含むスプラッシュガードであり、それはキャップの飲み口を密封するシールであり、吸引圧力で持ち上げられる。
【0007】
米国特許出願第20180008096号には「こぼれない」飲用カップが開示されているが、スプラッシュガードを含むというよりも、その出願は、キャップを横切って半径方向に延在し、それ自体が液体を通過させるための開口部を含む可撓性膜を開示している。シールがそのキャップの飲み口まで延びており、吸引圧力がシールに加えられる領域において、飲み口からシールが持ち上がるという点で、上記した従来技術と同じように動作する。
【0008】
上記した「こぼれない」飲用カップは、他の類似のカップとともに市場で広く受け入れられている。これらのタイプのカップが有する、カップを落としたり倒したりしたときの液体の漏洩を防ぎ、あるいは液体の漏洩を少なくとも最小限に抑える機能は、重要な利点であり、好都合である。さらにカップによっては、子供がこのタイプのカップからより一般的な上部が開口したカップに移行するのを助ける、口腔および運動協調性(oral and motor coordination)の発達を支援するものとして宣伝されている。
【0009】
ただし、カップを落としたり、倒したりしたときにシールに十分な荷重かかる場合、子どもの飲用カップから漏洩が起こることがある。したがって、対象とするユーザーである子どもに飲みやすくしつつも、「こぼれない」飲用カップを改善して、シールの完全性を高める余地は存在する。また、上記の既存のタイプのカップでは飲むのが困難な子供たちを順応させるために、異なる飲用動作を必要とするカップを提供する余地もある。本発明は、そのようなカップに向けたものである。
【発明の概要】
【0010】
本発明によれば、容器と取り外し可能なクロージャとシールとを備える飲用カップが提供される。クロージャは容器に接続するための接続端を有し、その接続端は容器内から来る液体を受け入れるよう開口している。クロージャは接続端の反対側に閉塞端を有し、閉塞端の周縁に形成された飲み口を有する。クロージャは接続端と閉塞端との間に延びる側壁を有し、容器内から飲み口への液体の移動を容易にする少なくとも一つの開口部を有する。シールはクロージャによって支持され、またはクロージャ上に支持されており、側壁の外面周りに延びて、飲み口を通る液体の移動に対して飲み口を密封している。シールは柔軟性であり、かつ、飲み口から持ち上げるための圧力に応答して、カップから飲む際に飲み口を通して液体を移動させることができる。
【0011】
本発明による飲用カップは、上述した従来技術に開示された類の半径方向のシールではなく、側壁の外面周りに延びるシールを含む。したがって側壁は環状とすることができ、このためシールは円周シールまたは環状シールとすることができる。シールは柔軟性であるため、クロージャの形状に合わせることができる。クロージャ周りにシールが延び、そのためクロージャの形状は円形、楕円形、三角形、あるいは正方形または長方形とすることさえできる。概して、クロージャは円形または楕円形であるが、最近の出願人により開発されたカップ製品は湾曲した三角形状を有し、そのため本発明の形状もその形状を有することができる。したがって、クロージャは3つの頂点で面する3つの湾曲した壁部を有することができ、その頂点や壁部は湾曲した状態となっている。なお、半径方向のシールと比べたときに、上記のような種類のシールを採用することは、少なくとも子供やその他の潜在的なユーザーが容易に加えることのできる荷重の下で、液体がシールを通過することを可能にしながら達成できる密封圧力の観点からメリットがあると考えられる。
【0012】
飲み口を通る液体の移動を密封するためのシールについて、シールは飲み口の一部と係合し、液体を容器内から飲み口に容易に移動させる開口部を覆うことができる。この構成により、容器内からくる液体が飲み口まで流れることはできるが、飲み口を通過することはできない。
【0013】
本発明の形態によっては、シールは開口部の出口を密封して開口部を通る流れを阻止することができる。本発明の別の形態として、シールは開口部の出口から離間されているが、飲み口を密封しているので、開口部を通る流れは妨げられないものの、飲み口を通過する流れは妨げられる。本発明のこの後者の形態において、飲み口はシールによって係合される面を有する。本発明の形態によっては、開口部がその面のすぐ下にあってもよい。その代わりに、開口部はその面から離間されるかまたは離れていてもよい。その面は環状の面とすることができる。
【0014】
本発明による飲用カップは、様々な形態を有することができる。一形態として、飲み口を液体が通過できるように、シールは、飲み口から持ち上がって離れる吸引圧力に応答できる。本発明のこの形態では、子供が飲み口に吸い付いたり、シールを飲み口から持ち上げて離すのに十分な圧力の吸引圧力をかけたりするだけでシールを飲み口から持ち上げて離すことができる。その吸引圧力がかかった状態で、液体は容器から飲み口を通過して子供の口内に流れることができる。
【0015】
吸引圧力はシールを密閉する飲み口から外すことのできる唯一の荷重となり得るが、出願人はシールの動きを補助するさらなる構造を発見した。その構造によれば、子どもの下唇をシールに当接させてシールを屈曲させることができる。吸引圧力はその屈曲運動を補助することはできるが、吸引圧力なしでも、下唇がシールを押すとシールが屈曲する。
【0016】
上記の構造は、クロージャの側壁の外面との係合から離間したシールの一部によって提供され得る。このように離間することによって、シールと側壁の外面との間に空隙が形成され、空隙を介してかけられる唇の圧力によりシールを内方向に屈曲させ、飲み口から持ち上がらせて離したり外したりして、飲み口を通して液体が移動できるようにしている。実質的には、シールは内向きの唇の圧力によって凹状にされて、シールの中央部などの一部が内方向に移動し、例えばシールの上端と下端などの部分の一方側が、外方向にシフトしやすい。しかしながら、シールの底部はその動きに反して保持することができるため、シールの上端のみがシフトする。このシールの上端がシフトする動きは、飲み口からシールが持ち上がって離れたり飲み口から外れたりする動きであり、液体が通過できるようになる。なお、下唇がシールにかける圧力はシールの一点または一部のみにかけられるので、シールが持ち上がったり離れたりする動きはその一点または一部で起こる。すなわち、下唇によってシールにかけられる圧力は、シール全長を持ち上げたり外したりするものではない。側壁の外面、シール及び空隙はそれぞれ環状とすることができ、その結果、空隙を形成するためにクロージャの側壁の外面との係合から離間しているのはシールの環状部である。
【0017】
本発明の上記形態に関して、シールはクロージャと近位係合および遠位係合を有するものとして説明することができ、側壁の外面との係合から離間したシールの部分は近位係合と遠位係合との間の部分である。それは上述の空隙を覆う部分であり、シールのその部分に内方向の圧力が加えられる結果、空隙の領域においてシールが内方向に屈曲し、かつ、隣接するシール部分を持ち上げるかまたは外す動きとなる。
【0018】
クロージャの閉塞端および側壁は飲み口で境をなしている。クロージャの開口部はクロージャの閉塞端に隣接することができ、飲み口を貫通することができる。開口部はクロージャの閉塞端に隣接する側壁に形成することができ、あるいは側壁は閉塞端に隣接して堺をなし、開口部を形成することができる。
【0019】
本発明の上記した形態の大きな利点として、子供がカップから飲むときに、彼らの下唇を空隙の領域に配置すると、シールに対して自然に内方向の唇の圧力をかけられるということがある。子供はこのプロセスを学ぶ必要はなく、むしろ子供にとってそれは簡単にできることが予想される。
【0020】
上記した構成の主要な利益として、内方向への唇の圧力を利用してシールを外させるため、シールが持ち上がる動きは吸引圧力のみに依存するわけではないということがある。それゆえ、飲み口を通過する液体に対して作られたシールが、従来技術のカップで作られたシールよりも高圧のものとなり得ると予想されるため、その予想は本発明に係るカップが落とされたり倒されたりしたときにカップから漏れたりこぼれたりすることに対してより大きな安全性を提供することが期待できる。
【0021】
シールは任意の適切な材料から形成することができる。通常、シールはシリコーンや熱可塑性エラストマーなどの柔軟性のあるポリマーから形成されることが予想される。
【0022】
シールは任意の適切な箇所または領域でクロージャに接続することができるが、クロージャに対する適切な接続箇所はクロージャの接続端に隣接しているところである。この接続は脱着式の接続とすることができる。したがってクロージャは接続端に隣接する半径方向外向きの凹部を含むことができ、シールは一つ以上の突起を含むことができる。この突起には環状の凹部などの凹部内に取り外し可能に受け入れられるものが含まれる。シールの柔軟性により、突起は凹部に入るように屈曲されたり引き延ばされたりすることができ、その後、シールの自然な弾性により突起が凹部内に保持される。
【0023】
あるいは、クロージャは接続端に隣接する半径方向外向きの突起を含むことができ、シールはクロージャに対して取り外し可能に取り付けられる突起を含むことができ、これは突起に隣接して入れ子状に係合(nesting engagement)した状態となる。半径方向外向きに延びる突起は環状突起とすることができ、シールの突起は環状突起とすることができる。
【0024】
本発明の形態によっては、Oリングシールがクロージャの閉塞端と容器のシールに面する面との間の空間に配置されて、容器内の液体がクロージャと容器との間の接続部を通過して漏れてこないように密封している。代替形態として、飲用カップのシールはクロージャと接続端に隣接する容器とを係合することができ、そのため別個のOリングが必要なくなる。そのシールは、例えばクロージャと容器の対向する面と面との間に挟みこむことができる。またシールは容器と係合するためのくさび面または面取りされた面を有することができ、係合することでシールをクロージャと容器の対向面と密封係合せしめることとなる。
【0025】
脱着式の接続の代わりに、シールは容器と共成形されて容器から延びるようにすることができる。このため、シールは例えば容器の開口端で、容器の縁またはリムのいずれかで、または容器の開口端の領域における容器の内面または外面のいずれかで容器と共形成されてもよい。シールおよび容器の材料は同じでも異なっていてもよいが、それらは異なる材料からなることが多い。例えばシールは容器よりも柔軟性のある材料からなる。
【0026】
したがって、共形成されたシールと容器は一部品となる。これは、シールがクロージャまたは容器のいずれかから取り外せるように接続される脱着式接続とは異なる。クロージャを取り外す際、シールは密閉している飲み口から外す必要があり、これはそれ自体を覆う、柔軟性のあるシールを折り曲げることによって達成され得る。そうしてクロージャは容器から取り外せるようになる。あるいは、シールと飲み口との間の密封摩擦(sealing friction)が解消され得る限り、飲み口をシールで密封したままの容器からクロージャを取り外すことができる。これを補助するため、クロージャにつまみを備えることができる。必要に応じてつまみによってクロージャを回転させたり引っ張ったりすることができる。そのようなつまみはクロージャの中央部などのクロージャの閉塞端の外面に形成されたリブなどとすることができる。
【0027】
上述のように、クロージャの開口部は閉塞端に近接して配置することができ、シールは閉塞端の側縁と密封係合する位置に延びていてもよい。シールが内方向に撓むための空隙がある場合、閉塞端は環状のリップなどのリップを形成することができる。このリップは側壁の上に重なり、側壁は環状の延伸部などの横延伸部を含むことができる。その横延伸部はリップから離間しているが隣接している。開口部はリップと横延伸部との間に形成することができる。リップの半径方向の広がりと横延伸部とは同じであってもよく、あるいは横延伸部はリップよりも半径方向に短くてもよい。
【0028】
シールを持ち上げたり外したりする動作を容易にするため、シールはヒンジまたは脆弱部を形成する溝を含むことができ、そこを中心としてシールが撓んだり回転したり湾曲したりすることができる。したがってその溝はシールにおいて弱くされた部分を形成し、その弱くされた部分を中心とした湾曲運動、ヒンジ運動、または回転運動により飲み口からの密封解放を容易にし、これは容器から飲み口に液体を通過させるのに必要となる。その溝は、上述の横延伸部の下に位置するシールの一部に形成されるのが好ましい。あるいは、横延伸部の横側でクロージャの接続端に向かう側に形成されてもよい。
【0029】
クロージャが上述した類の空隙を含む場合、その構成は液体が飲み口に向かう途中でその空隙に入るものとすることができる。あるいは、開口部がクロージャの閉塞端に隣接している場合、子供が飲むときのための開口部を液体が通過する可能性があり、これが空隙内に漏出するかもしれない。両方の構成について、本発明の形態は戻り排水路(return drain)を含むことができ、空隙に入った液体は容器内に戻ることができる。その排水路はクロージャの側壁を貫通する一つ以上の開口部とすることができ、これらの開口部はクロージャの接続端に隣接して設けられていることが好ましい。側壁には、環状に配置された排水口を設けることができる。
【0030】
クロージャが上述した類の空隙を含む場合で、液体が飲み口に向かう途中でその空隙に入るように構成する場合、上述の戻り排水路は液体入口として使用することができ、飲み口に移動させるために液体が空隙内に入るのを容易にすることができる。この実施例における液体入口は、前述の実施例の戻り排水路よりも大きな開口部とすることができ、飲むための十分量の液体を容易に流すことができる。
【0031】
上述の実施例において、飲み口は複数の離間したリブを含むことができ、これらはリムの内側周りに等間隔で離間して配置されているため、液体を流すための流路は隣接するリブ間に形成または生成される。リム周りには、離間したリブが20以上あってもよい。閉端部の飲み口は側壁の上に重なるリップを形成または含むことができ、複数の離間されたリブがリップの内側または内面から延びていてもよい。この構成における流路は前述の実施例の飲み口に形成された開口部に代わるものである。この構成では容器の飲み口を密封するシールをまだ利用するが、この構成においてシールは通路の開口端または出口端を閉じるように操作可能であり、通路を通る液体の流れを阻止することができる。したがってシールは、内向きの唇の圧力または吸引圧力が飲み口に加えられるまで、飲み口を通過する液体の流れを防ぐように飲み口を密封する。内向きの唇の圧力または吸引圧力が飲み口に加えられると、リブ間の通路の開口端または出口端に対するまたはこれを覆う密封位置からシールが外され、通路を通る液体の流れが生じうる。この構成における液体の流れは容器内から起こり、その後、液体入口を通過して空隙に入り、リブ間の通路を通ってシールを通過する。
【0032】
内向きの唇の圧力または吸引圧力が開放されると、シールは再び飲み口を密封し、飲み口の開口端または出口端を閉じる。そして空隙V内に残った液体は、このとき戻り排水路として作用する入口を通って容器本体内に戻すことができる。
【0033】
シールを曲げて飲み口から離すことによってシールを飲み口の密封位置からずらすことはできるが、リブの下端または下面とは接触したままとなる。リブの下端または下面は、回転または屈曲運動の起こる中心となる支点となり得る。したがって、シールは飲み口から離れるように屈曲し、リブ間の開口端または出口端を露出させることができる。
【0034】
本発明による飲用カップは、飲用モードと非飲用モードとの間でシフト可能な外側リングを含むことができる。非飲用モードにおいて、そのリングはシールを覆っており、少なくとも飲み口を通って液体が流れないように密封するシールの領域においてシールを支持している。これにより、シールが持ち上がらないように抵抗し、それによって漏れやこぼれを防ぐかまたは最小限にするよう改善された安全性または確実性を提供することができるというメリットがある。
【0035】
飲用モードにおいて、そのリングは、少なくとも飲み口を通して液体が流れる通路を密封するシールの領域においてシールを露出するように配置され、その結果、上述のようにシールに圧力を加えられるようになる。
【0036】
リングを容器に対して回転させることによって、非飲用モードと飲用モードとの間でリングを移動させることができる。これは、容器またはクロージャのいずれかから突出する同等数の突起またはカムと相互作用するためのリングの内面にある一つ以上のねじ山を含むことによって可能となる。それによって、リングが回転することにより、ねじ山がカムまたは突起に沿って動くようにすることができる。リングを非飲用モードと飲用モードとの間で移動させる他の構成も採用可能である。例えばリングが回転せずに垂直移動するように構成可能である。
【0037】
非飲用モードにおいて、リングはシールを支持することはできるが、本発明の別の形態として、リングは、少なくとも飲み口を通る液体の移動に対して密封するシールの領域においてシールに対して実際に圧力を加えることもできる。本発明のこの形態において、シールは積極的に押し込まれて飲み口と密封係合するため、漏れたりこぼれたりする可能性をさらに抑えることができる。
【0038】
飲用モードにおいて、リングの上端はシールの下端と重なるかまたは当該下端を覆っている。この構成により、飲用モードにおいて、リングがその上縁がシールの下縁または底縁の下に離間した位置まで移動することはない。すなわちリングの上縁は、少なくともシールの下縁にて常にシールを覆っている。この構成により、シールが外されたり撓んだりしてリングの飲用モードから非飲用モードへと移動する経路に入った場合に、リングの上縁がシールの下縁に引っ掛かって詰まるのを防ぐことができる。この構成はリングがシールに引っ掛からないようにする点で有利となる一方で、シールが外されたり撓んだりした場合、その重なりが十分であれば、すなわち、リングの上縁とシールの下縁とが3~5mm重なっていれば、飲用カップが完全に組み立てられたときに、リングは好都合なことにシールをクロージャから取り外す際の妨げとなる。なぜならば、リングがリングと、対向するクロージャの壁との間のシールの下縁を効果的にロックするためである。
【0039】
クロージャの閉塞端は、飲用カップの外側からみたときに凹状となるようにすることができ、それはまた同様にまたは代わりに透明とすることができ、その結果、閉塞端を通してカップの内容物を見ることができ、閉塞端がカップの内容物を観察するためのカップへの窓を形成している。この利益として、ユーザーが飲んでいるときにカップ内を見ることができ、したがって液面やカップの傾きを視覚的に示すことができ、これは普通のまたは標準的な頂部開口型のカップからの飲むときと同様であるが、カップを後ろに傾けすぎた場合でも、ユーザーの顔などにカップから液体がこぼれることはない。上述した従来技術の構成は、カップ内を見る窓として機能できる透明なクロージャを容易にするように構成されていない。
【0040】
本発明による飲用カップはクロージャの閉塞端に導入される一方向弁を備えることができ、これによって液体を飲用カップ内に入れられるようになっており、注ぎたしたり補充したりするのに便利であるが、カップからの液体の漏れを防ぐことができる。この構成が意味するところは、飲用カップは、クロージャを容器から取り外すことなく、注ぎ足したり補充したりすることができるということである。
【図面の簡単な説明】
【0041】
本発明がより十分に理解できるよう、いくつかの実施例について以下の図面を参照して説明する。
【
図1】
図1は、一実施形態に係る飲用カップを飲用モードにした状態の斜視図である。
【
図2】
図2は、非飲用モード状態の
図1の飲用カップの側面図である。
【
図4】
図4は、飲んでいる間のカップの状態を示す、飲用カップの上部の詳細図である。
【
図5】
図5は、傾けて飲んでいる間の飲用モードのカップの図である。
【
図6】
図6は、非飲用モードの
図1に示すカップの断面図である。
【
図9】
図9は、本発明の別の実施例に係る飲用カップの上部の断面図である。
【
図10】
図10は、本発明の別の実施例に係る飲用カップの上側部分の詳細な断面図である。
【
図11】
図11は、本発明の別の実施例に係る飲用カップの上側部分の詳細な断面図である。
【
図12】
図12は、本発明の別の実施例に係る飲用カップの上側部分の詳細な断面図である。
【
図13】
図13は、クロージャに一方向弁が挿入された状態の
図9の飲用カップの断面図である。
【
図14】
図14は、本発明の別の実施例に係る飲用カップの上部の断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
図1は、本発明の一実施形態に係る飲用カップ10の斜視図である。飲料用カップ10は、容器11と着脱可能なクロージャ12とを含む。クロージャ12は、容器11の上端に接続しており、飲用カップ10から液体を入れたり取り出したりするため、および洗浄のために着脱可能である。
【0043】
クロージャ12は閉塞端13を有する。クロージャ12はさらに
図1において環状の側壁として図示された環状の側壁14を有しているが、側壁14は同じく環状であるシール15によって覆い隠されている。シール15はクロージャ12上に支持されており、側壁14周りに延びて側壁14を覆っている。これについては
図3に関連してより詳細に説明する。
【0044】
飲用カップ10は、
図1に示す飲用モードまたは飲用位置と、
図2に示す非飲用モードまたは非飲用位置との間で回転することによって移動可能な外側リング16をさらに含む。したがって
図2ではリング16が容器11に対して上昇しているのに対し、
図1ではリング16が下降しているため、
図1ではクロージャ12とシール15が露出している。
【0045】
後に明らかとなるように、カップ10から飲むときは飲み口17から飲むことができる。
【0046】
図3は、リング16を下げた状態または飲用モードにした状態の飲用カップ10の断面図である。
図3から、容器11が、平らな基部20と、起立した円筒形の側壁21とを有することがわかる。図示するように、側壁は基部20からテーパ状になっている。基部20から離れて、側壁は内向きのねじ山22を含む。側壁21は、上縁23で終端している。
【0047】
クロージャ12は接続端25を有する。接続端25は、側壁21の上端にねじ接続するための外向きのねじ山26を含む。クロージャ12はさらに横延伸部27を備える。横延伸部27は、クロージャ12が側壁21と十分に係合したときに、容器11の上縁23に当接する。横延伸部27の下面と環状の突部29との間に、Oリングシール28が挟まれている。横延伸部27が上縁23と係合しているとき、Oリングシール28は、上縁23に隣接する側壁21の内側面に当接する。その結果、クロージャ12が容器11と完全に接続されたとき、Oリングシール28によって接続端25と上縁23との間の接続部分を通過する容器11内の液体の流れを妨げることができる。
【0048】
シール15は柔軟性と弾性を有し、シリコーンや熱可塑性エラストマーなどの食品用グレードのポリマーでできていることが好ましい。シール15は、クロージャ12上に着脱自在に支持されている。このため、クロージャ12は、横延伸部27とそれとは別の横延伸部30との間に形成された半径方向外向きの凹部R(
図7および8参照)を形成している。シール15は、凹部R内に延びる環状突起31を含む。環状突起31はシール15をクロージャ12に固定している。シール15は、凹部Rに入るように曲げたり伸ばしたりすることができ、その後は、シール15の自然な弾力性により凹部R内に保持される。
【0049】
図9に示した構成は、前の図とは異なり、飲用カップ10の上部の断面を示しているが、横延伸部27が取り外されて、非常に浅い凹部だけが残っている状態となっている。この構成では,シール15の環状突起31が、容器11の上縁23に隣接する側壁21に直接当接するようになっている。
図9に示すように、側壁21と環状突起31との協働面33は面取りされており、クロージャ12を容器11にねじ込むと、それぞれの面取りされた面33が突起31と係合して突起31を浅い凹部に押し込み、突起31と凹部の対向面とがしっかりとシール係合するようになっている。それ以外の点では、
図9の構成は前の図と同じである。
【0050】
シール15は、閉塞端13まで上向きに延び、閉塞端13の側縁34に係合している。この点において、閉塞端13は、側壁14を覆う環状のリップ35を形成しており、一方で、その側壁は、リップ35から離間しているが隣接する横延伸部36を含む。リップ35と延伸部36は、飲み口17の一部を形成している。
図3に示すように、リップ35と横延伸部36との間の間隔は、閉塞端13に隣接し、かつ、容器10内からの液体の通過を容易にする開口部37を形成している。開口部37は環状の開口部であるが、複数のコネクタがリップ35と横延伸部36との対向面の間に延びて、上述したように間隔を空けて閉塞端13を側壁14に接続していることは理解されたい。したがって、本発明の態様によっては、開口部37は複数の小さいまたは別個の開口部を含むことができる。
【0051】
図3から明らかなように、シール15は、開口部37を覆っており、リップ35の側縁34を密封係合している。
図3に示すようにシール15は横延伸部36の側縁38にも係合することができるが、これは必須ではない。シール15が側縁38と係合しない場合、液体は開口部37を通って空隙Vに流れる可能性はあるが、側縁34と係合するシール15により、液体が飲み口17を通って流れることは防止される。このシール15と側縁34及び38(または側縁34のみ)との間の密封係合は、シールによってそれぞれの側縁34、38に働く半径方向の圧力を介してなされ、そのシール圧力は、シール15を形成する材料を選択することによって、また、側縁34及び38の辺りのシールの直径によって選択することができる。したがって、シールは、密封シールでも、緩いシールでも、その中間でもよい。液体が空隙Vに流れ込む場合、側壁14はその液体を容器11内に戻すためのドレイン開口部39を含んでもよい。
【0052】
さらに、
図3から明らかなように、飲用目的で飲み口17を介して液体を通過させることができる。これは、開口部37を通してかつ飲み口17を通して液体が流れるようにするため、横延伸部35の側縁34からシールを持ち上げて離すため、閉塞端13のリップ35の辺りでシール15に圧力を加えることによって可能となる。したがって、
図1を参照すると、子どもがカップ10から飲み物を飲んでいるとき、
図1に丸で囲んでDr(「飲用領域」)と記した飲み口17の辺りでカップ10と唇で係合し、吸引力を加えることで、シール15が側縁34から持ち上がったり、屈曲したり、回転したりすることで、液体が開口部37を通ってかつ飲み口17を通って子供の口に流れ込めるようになっている。この持ち上がり、回転、または屈曲の動きを容易にするために、シール15は環状の溝または凹部40を含むことができ、この溝または凹部40は、シール15における脆弱領域を形成し、ヒンジを形成することができる。ここを中心に、シール15の上部の環状端部41が屈曲または回転することができる。
図3に示すように、環状の溝は、横延伸部36の下のシールに形成されており、したがって、クロージャ12の接続端25に向かって横延伸部36の横にある。
【0053】
子供は、飲み口17まわりの任意の箇所、または閉塞端13の外周まわりの任意の箇所から、カップ10から飲むことができるこということは理解されたい。したがって、
図1に飲用領域Drが示されているが、これは単に、子供が近づく可能性のあるカップ10におけるクロージャ12の飲み口17の一部分として示されているだけのことである。カップ10を使用する子供は、リム17のどの領域からでもカップ10から少しずつ飲むことができる。そのため、その子供がカップ10のリム17を自分の唇に近づけること以外に、カップ10を特定の向きにする必要はないという利点がある。
【0054】
カップ10から飲むために、吸引圧力を利用してシール15の上端部41を開口部37から引き離すことができると同時に、本出願人は、クロージャ12の側壁14とシール15との間に環状の空隙Vを設けることにより、カップ10から飲むことを容易にしているものの、カップ10を落としたり倒したりしたときに、飲み口17とのシール15の密封効果を損なうものでないことがわかった。空隙Vは、突起31とシール15の上端部41との間に形成されており、空隙の利点として、カップ10から飲む子供の下唇によってシール15が内側に押されるようにすることができ、それによってシール15が自然に撓み、それによってシール15の上端部41を横延伸部35の側縁34から自然に離れさせることができる。このメカニズムは
図4に図示されており、矢印Aは、カップ10から飲む子供の下唇によるものなど、突起31と上端部41との間のシール15に加えられる荷重を示している。
図4を参照すると、シール15は、横延伸部36の側縁38を中心に回転または屈曲し、側縁38はその回転または屈曲が起こる支点となることがわかる。したがって
図4からわかるように、液体は容器11内から開口部37を通って上に流れ、リップ35とシール15の上端部41とを通過して流れ出ることができる。当然ながら使用時において、子供は、液体が実際に開口部37の入口または口に流れてくるようにカップ10を傾けることとなるであろう。本発明を傾けた状態を
図5に示す。
【0055】
本発明に関連して上述した空隙Vを使用することにより、シール15をクロージャ12に対してより大きな荷重をかけた状態であてがうことが可能になった。このため、飲用カップ10が落下したり倒されたりした場合に、飲み口17を介した漏れやこぼれが抑制される確度が改善された。しかしながら、カップ10から飲む子供は、容器11内から液体を引き出すために、より大きな吸引力をかける必要はない。なぜならば、
図4および5に示すように子供の下唇がシール15を押して、シールの上端部41を横延伸部35の側縁34から引き離させ、開口部37の出口を露出させることができるからである。このように、シール15に対する吸引圧力と下唇の圧力との組み合わせによって、シール15は図示したように変位し、液体は開口部37を通過して、子供が飲むための飲み口17を通過することができる。
【0056】
図1、
図3、
図4の飲用モードでは、リング16の上縁部がシール15の下縁部と重なってもよい。これは、
図4の丸で囲んだ領域Cで示されている。この構成により、例えば突起31が凹部Rから外れることによってシール15が外れた場合や、シール15がゆがんだ場合などに、リング16の上縁部がシール15の下縁部に引っ掛かって動かなくなるのを防止する。したがってこの構成により、リング16がシール15に引っかかるのを防ぐことができるが、加えて、突起31が凹部Rから外れるのを防ぐリング16により、飲用カップ10が完全に組み立てられたときに、クロージャ12からシール15が外れないようリング16が抵抗するようになっている。
【0057】
図6は、
図2の断面図であり、したがって上で論じた非飲用モードまたは非飲用位置にある外側リング16を示している。このように、外側リング16は上向きに回転されて、リング16がシール15に重なっている。重要な点として、リング16は、開口部37を覆うシール15の上端部41に当接している。この当接係合は、横延伸部35の側縁34から持ち上がるシール15の上端41に単に抵抗する程度であってもよいし、あるいは積極的に上端41を押し込んで側縁34と係合させるように、上端41に実際に圧力をかけてもよい。いずれの場合も、リング16は、カップ10が落とされたり倒されたりしたときに、およびリング16が非飲用モードまたは非飲用位置にあるときに、カップ10から漏れたりこぼれたりする可能性を低くする役割を果たす。このモードまたは位置は、例えば、カップから飲もうとしている場合以外は常に採用することができる。したがって、カップがテーブルの上に置かれている場合、またはバッグに入れられて運ばれている場合、またはカップが満杯ではあるもののまだ子供に与える時間でない場合、リングは上側の非飲用モードにしておくことができる。このモードは、カップをバッグなどに入れて移動させるときに特に有利である。なぜなら、カップは倒れやすく、滑りや漏れの原因になるからである。
【0058】
リング16は、その内面に適用された並目ねじを介して、飲用モードと非飲用モードとの間で移動することができる。
図7および8は、それぞれカップ10の分解斜視図および断面図であり、これらの図は、前述したカップ10の特徴のそれぞれを示しているが、リング16の内面に適用された多条ねじ45も示している。
【0059】
ねじ45は、上縁23のすぐ下の容器11の外面から外向きに突出するカムまたは突起46を受け入れるように配置されている。ねじ45は、入口開口部47と、主移動部48と、端部接合部49と、端部ストッパー50とを有するように形成されている。
【0060】
リング16は、カップ10の他のすべての部品が組み立てられたときに、カップ10に取り付けることができる。したがってリング16は、カップ10の最後の部品として接続することができる。あるいは、クロージャ12が接続される前に、リングを容器11に取り付けることができる。いずれにしても、リング16をカップ10に取り付けるには、リング16をカム46に合わせて、ねじ45の入口開口部47にカムが入るようにする。入口開口部47は比較的浅くなっており、端部接合部49を過ぎたところに、より深い移行部が存在する。したがって、カム46を入口開口部47に入れるためには、リング16に力を加えることが必要であり、また、カムを端部接合部49を通過させて主移動部48に移動させるためには、リング16を少しねじったり回転運動させたりするように力を加えることが必要である。
【0061】
入口開口部47と主移動部48との間の深さの違いにより、端部接合部49が形成されている。端部接合部49は、より深い移動部48と浅めの開口部47との間を移行する曲面壁または段差として形成することができる。このように、接合部49は、カップ10を使用する人に対して、リング16が最下部かつ非飲用位置まで回転されたことを示すための触覚表示器(tactile indicator)を形成している。リングを回転させる人は、カム46が接合部49と係合すると、それ以上回転させるのに抵抗があることに気づくだろう。しかしながら、洗浄などの目的で、力を入れてリング16をさらに回転させることができ、その結果、カムは端部接合部49を乗り越えて入口開口部47に入り、その後、リング16を上方に持ち上げることでカップ10から完全に取り外すことができる。
【0062】
ストッパー50は、逆回転を開始すること以外には、リング16をそれ以上回転させることができない位置にある接合部を示そうとするものである。したがって、リング16が非飲用位置にある状態では、カム46は端部接合部49に接触しており、リングを回転させると、カムが主移動部48を通って上昇し、ストッパー50と係合することができる。ストッパー50と係合すると、リング16をそれ以上回転させることができないか、または回転させる必要がなく、リングが飲用位置にあるということを示す触覚表示器となる。
【0063】
カム46とねじ47との係合は摩擦的であってもよく、飲用位置および非飲用位置のそれぞれにおいて、リングはその位置を保持できる。
【0064】
クロージャ12の閉塞端13は、カップの内容物が閉塞端13を通して見えるように、そしてカップ10の内容物が閉塞端13を通して観察できるように、透明にすることができる。本明細書で上述したように、その利点は、飲んでいるときにユーザーがカップ10内を覗き込めるようになることであり、したがって、液面やカップの傾きを視覚的に示すことができ、これは普通のまたは標準的な頂部開口型のカップからの飲むときと似ている。しかし、カップを後ろに傾けすぎた場合でも、ユーザーの顔などにカップから液体がこぼれることはない。
【0065】
特に
図7では、カップ10の部品を示しており、その図からは、カップ10がシンプルであることは明らかであろう。したがって、カップ10を組み立てるには、Oリングシール28をクロージャ12上に配置した後、クロージャ12をねじ込んで側壁14の上端部と係合させることが必要である。その次のステップとして、シール15をクロージャ12に柔軟に取り付け、シール15の突起31が確実にクロージャ12の凹部Rに入るようにする。突起31が凹部R内に入った状態で、シール15を適切に外面14の周りにクロージャ12に取り付け、環状開口部37を覆い、横延伸部35の側縁34と密封的に係合する。その後、リング16をクロージャ12を覆うように下げて、リング16の入口開口部47をカム46に合わせて、リング16を
図3の飲用位置または
図6の非飲用位置のいずれかまで回転させることができる。あるいは、カップ10は、クロージャ12を容器11に接続する前に、リング16を容器11上に配置することによって組み立てることもできる。シール15をクロージャ12に取り付けた後、クロージャ12を容器11に接続することができる。その後、リング16を非飲用位置に移動させることができる。分解は逆の方法で行うことができ、分解も同様に簡単であるため、カップ10は難なく容易に洗浄できる。
【0066】
本発明のさらなる代替例として、シールは、上記のように取り外し可能なものではなく、容器と共成形(co-moulded)することができる。これは、前の図の飲用カップ10と同様の構成を有する飲用カップの片側部分の断面図である
図10から12に示されている。したがって、同じ部品には同じ参照番号に100を加えたものが付されている。
【0067】
飲用カップ100のシール120は、共成形の継ぎ目Cで容器111と共成形されている。図示されている継ぎ目Cは、容器111の上縁またはリムにある。シール120の材料は、容器111よりも柔軟な材料である。
図10で明らかなように、共成形されたシール120および容器111は、単一の一体部品または統合部品になるので、クロージャ112を取り外す際は、クロージャ112を容器111およびシール120の両方に対して緩める必要がある。これを行うために、
図11または12のいずれかの構成を採用することができる。
【0068】
図10において、シール120はリップ135および横延伸部136に対して密封的に係合している。これにより、シール120とクロージャ112との間に摩擦密封係合が生じ、クロージャ112が容器111から緩められないように抵抗する。
図11では、シール120はそれ自体が折り畳まれて、シール120がリップ135および横延伸部136から離れている。この折り畳まれた状態では、シール120とクロージャ112との間の摩擦密封係合が解消され、クロージャ112を容器111に対して緩めることができる。
【0069】
図12において、リップ135と横延伸部136とをシール120で密封係合した状態のままクロージャを取り外すことを意図したものである。このために、シール120は共成形の継ぎ目Cから外向きに先細になるかまたはドラフトして、ユーザーがクロージャ112を容器111上で回転しやすくしている。クロージャ112の回転を補助するために、つまみ121(
図9を参照)を設けて、シール120とクロージャ112との間の摩擦密封係合を解消し、クロージャ112を容易に回転または引っ張れるようにすることができる。これにより、クロージャ112を容器111から抜き出すことができる。したがって、
図12の構成では、クロージャ112を取り外すにあたってシール120それ自体を折りたたむ必要はない。
【0070】
図13は、
図9の構成を示しているが、クロージャ12の閉塞端13に導入された一方向弁122を備えており、これによって液体を飲用カップ10内に入れられるようになっており、注ぎたしたり補充したりするのに便利であるが、カップ10からの液体の漏れを防ぐことができる。この構成が意味するところは、飲用カップ10は、クロージャ12を容器10から取り外すことなく、注ぎ足したり補充したりすることができるということである。
【0071】
図14は、再び
図9の構成を示しているが、改変された飲み口117を備えている。改変された飲み口117は、飲み口の内側まわりに等間隔離れて配置された複数の間隔をあけたリブ125を備えている。これにより、流路がリブ125の間に形成される。その流路は
図9の構成のリム17に形成される開口部37に置き換わり、その結果、
図14の構成での液体の流れが流路Pに沿って起こる。流路Pは開口部126を形成するための
図3および4の排水口39を利用および拡大されている。このように
図14の排水口126は、空隙Vに対する入口と出口の両方を形成している。
【0072】
このシール15は、
図14の右側に示されるようにリム117を密封しているが、本明細書
図4に関連して前述したように、矢印Aで示される内方向の唇の圧力がシール15の反対側および左側に加えられた状態となり、シール15の上端部41が、リブ125の間の流体通路の開口端に対する密封位置から離れ、流路Pに沿って流体の流れが起こる。
図14の左側に示したように、シール15は、内方向の唇の圧力または吸引圧力が加えられると旋回または屈曲するが、その旋回または屈曲運動の間、リブ125の内縁とは接触したままである。必須ではないが、十分な吸引圧力が加えられたときに、シール15がリブ125から離れることは許容され得る。図示した構成において、シール15はリブ125の端部上で旋回または屈曲し、リブ125は、周りに旋回または屈曲運動が起こる支点となる。
【0073】
したがって、流路Pに沿った液体の流れによりカップ10から飲みやすくし、一旦飲み終えると、シール15がリム117を再度密封し、空隙V内に残った液体は容器11の本体内に戻ることとなる。
【0074】
本明細書(特許請求の範囲を含む)において「備える(comprise)」、「備える(comprises)」、「含む(comprised)」または「含む(comprising)」という用語のいずれかまたはすべてが使用されている場合、それらは記載された特徴、完全体、ステップ、または部品の存在を特定するものとして解釈されるが、1つ以上の他の特徴、完全体、ステップ、または部品の存在を排除するものではない。
【0075】
当業者であれば、本明細書に記載されている発明が、具体的に記載されているもの以外の変更および修正が可能であることを理解するであろう。本発明は、本発明の主旨および範囲内にあるそのようなすべての変形および修正を含むことを理解されたい。
【国際調査報告】