(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】ホットメルト組成物から無機フィルター支持体を材料付加製造する方法及び得られる膜
(51)【国際特許分類】
B29C 64/106 20170101AFI20220120BHJP
B33Y 10/00 20150101ALI20220120BHJP
B33Y 80/00 20150101ALI20220120BHJP
B01D 69/04 20060101ALI20220120BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20220120BHJP
B01D 71/02 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
B29C64/106
B33Y10/00
B33Y80/00
B01D69/04
B01D69/10
B01D71/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529776
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 FR2019052808
(87)【国際公開番号】W WO2020109716
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512226871
【氏名又は名称】テクノロジ アバンセ エ メンブラン アンデュストリエレ
(74)【代理人】
【識別番号】110000914
【氏名又は名称】特許業務法人 安富国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】レコシュ, フィリップ
(72)【発明者】
【氏名】アンクティーユ, ジェローム
【テーマコード(参考)】
4D006
4F213
【Fターム(参考)】
4D006GA06
4D006GA07
4D006HA77
4D006MA01
4D006MC03
4F213AD02
4F213AG20
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL22
4F213WL26
4F213WL55
4F213WW06
(57)【要約】
【課題】ホットメルト組成物から無機フィルター支持体を材料付加製造する方法及び得られる膜の提供。
【解決手段】本発明は、気孔率が10%~60%であり、平均孔径が0.5μm~50μmの範囲である少なくとも1つのモノリシック無機多孔質支持体(1)を製造する方法に関する。上記方法では、3Dプリンタータイプの装置(I)を用いることで、焼結後に上記モノリシック無機多孔質支持体(1)を形成するための操作可能な三次元未処理構造体(2)を3Dデジタルモデルに従って構築する。
【選択図】
図14
【特許請求の範囲】
【請求項1】
固定された水平プレート(5)の上方に該水平プレートに対して空間を移動可能に取り付けられた少なくとも1つの押出ヘッド(6)を有する3D印刷機(I)を用いて、気孔率が10%~60%であり、平均孔径が0.5μm~50μmの範囲である少なくとも1つのモノリシック無機多孔質支持体(1)を製造する方法であって、上記3D印刷機によって、無機組成物(4)のストリング(7
i,j)を堆積させることで、上記モノリシック無機多孔質支持体(1)を形成するための操作可能な三次元未処理構造体(2)を3Dデジタルモデル(M)から構築でき、上記方法は、
平均径が0.1μm~150μmの粒子の形態である第1の粉末固体無機相と、少なくとも1種のホットメルト重合体を含むマトリックスの形態である第2の相とを含む上記無機組成物(4)を得る工程、
上記無機組成物(4)を上記3D印刷機(I)の上記押出ヘッド(6)に供給する工程であって、上記押出ヘッド(6)は、上記無機組成物(4)を押し出して上記ストリング(7
i,j)を形成できる温度である、工程、
上記水平プレート(5)上の上記ストリング(7
i,j)を用いて、上記3Dデジタルモデル(M)に従って上記操作可能な三次元未処理構造体(2)を構築する工程、
この操作可能な三次元未処理構造体(2)を熱処理炉に配置して、上記粉末固体無機相を形成する少なくとも1種の材料の溶融温度の0.5~1倍の温度で焼結操作を行う工程
からなる方法。
【請求項2】
固化装置(10)を用いて上記ストリング(9)の押出しとともに上記操作可能な三次元未処理構造体(2)の固化を促進する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
上記固化装置(10)は、上記マトリックスに含まれる少なくとも1種のホットメルト重合体を固形化させる制御冷却装置である、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
上記操作可能な三次元未処理構造体(2)は、支持手段を用いずに傾斜を有して形成される、請求項2又は3に記載の方法。
【請求項5】
上記粉末固体無機相は、1種以上の酸化物及び/又は炭化物及び/又は窒化物及び/又は金属を含み、好ましくは酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、チタン、及びステンレス鋼から選択され、特に酸化チタンである、請求項1~4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
上記粉末固体無機相の粒度、上記ホットメルト重合体の性質及び/又は割合、上記無機組成物(4)の温度のうち少なくとも1つの特性により上記無機組成物(4)のレオロジーを調整する、請求項1~5のいずれか1項に記載の方法。
【請求項7】
上記操作可能な三次元未処理構造体(2)は、互いに分離可能な複数の三次元サブ構造体(2
3、2
4)の形態であることを特徴とする請求項1~6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
上記操作可能な三次元未処理構造体(2)は、上記ストリング(7
i,j)を用いて形成された少なくとも1つの破壊可能なブリッジ(13)で互いに接続、保持された複数の三次元サブ構造体(2
3、2
4)の形態であることを特徴とする請求項1~7のいずれか1項に記載の方法。
【請求項9】
上記無機組成物(4)はフィラメントの形態であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項10】
上記無機組成物(4)はペレットの形態であることを特徴とする請求項1~8のいずれか1項に記載の方法。
【請求項11】
タンジェンシャル濾過膜を作製する方法であって、被処理流動媒体を循環させるための流路(11)が少なくとも1本配設されたモノリシック無機多孔質支持体(1)を請求項1~10のいずれか1項に従って製造する工程の後、上記流路(11)の壁部に少なくとも1層の分離層を形成する工程を含む方法。
【請求項12】
破裂せずに少なくとも30バールの内圧に耐える、請求項1~10のいずれか1項に従って作製されたモノリシック無機多孔質支持体(1)。
【請求項13】
破裂せずに少なくとも30バールの内圧に耐える、請求項11に従って作製されたタンジェンシャル濾過膜。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特に濾過膜、とりわけタンジェンシャル濾過膜に使用できるモノリシック無機多孔質支持体を製造する方法に関する。より具体的には、上記多孔質支持体は、材料を付加することで進行する技術により作製される。
【背景技術】
【0002】
濾過膜は、選択的バリアを構成し、移送力の影響下で被処理媒体中のいくつかの成分を通過させたり遮断したりできる。各成分の通過又は遮断は、膜の孔径に対するそれらの大きさによって起こるため、膜はフィルターのように機能する。このような技術は、孔径に応じて「精密濾過」、「限外濾過」又は「ナノ濾過」と呼ばれる。
【0003】
膜は、1層以上の分離層が堆積された多孔質支持体からなる。従来の方法では、まず支持体を押出しにより製造する。次いで、支持体を焼結することで、開放型相互接続多孔質組織を保持しつつ必要な堅牢性とする。この方法では、直線流路とする必要があり、その後、その内部に分離層を堆積して焼結する。従って、このようにして形成された膜は、少なくとも2回の焼結操作を経る。押出し前のペースト調製時に添加された有機バインダは、支持体の焼結時に完全に燃焼除去される。
【0004】
本出願人は、濾過膜の作製について特許文献1に記載している。該濾過膜の多孔質支持体は、連続する粉末床を堆積させた後に所定のパターンに従って局所的に固化することを繰り返して付加技術により形成される。この技術によって、機械的抵抗を有し、タンジェンシャル濾過での使用に適した濾過膜を作製できる。しかしながら、この技術には、粉末床を堆積する際に完全に流動するように粉末の流動性を調整する必要があるという欠点がある。また、この技術では、未固化粉末を除去し、さらに場合によっては再利用する必要があり、これは、該未固化粉末が多孔質支持体の非直線流路内に存在する場合は特に難しく、時間とコストがかかることがある。
【0005】
本発明の枠組みにおいては、先行技術の欠点を有さず、特に、高速且つ容易に実施でき、形状、特に非直線流路の形状を変化させやすい機械的抵抗を有する多孔質支持体を得ることができる、多孔質支持体を作製する新たな方法を提案する。そのために、上記方法では、3D印刷技術を用いることで操作可能な三次元未処理構造体を得た後、焼結工程を行う。得られる多孔質支持体は、均質で機械的抵抗を有し、濾過での使用に適した気孔率を有する。すなわち、気孔率が10%~60%であり、開放型で相互に接続されており、平均孔径が0.5μm~50μmの範囲である。
【0006】
本発明に係る方法にはまた、大型モノリシック多孔質支持体(すなわち、高さが1mを超える)、特に、連続する粉末床を堆積させた後、現在市販されている装置で局所的に固化する付加技術を用いて可能なもの、とりわけ特許文献1に記載のものよりも大きいモノリシック多孔質支持体を作製できるという利点がある。
【0007】
更に、本発明に係る方法によれば、支持手段を使用することなく、傾斜を有する支持体を作製できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】仏国特許出願公開第3006606号明細書
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0009】
この文脈において、本発明は、固定された水平プレートの上方に該水平プレートに対して空間を移動可能に取り付けられた少なくとも1つの押出ヘッドを有する3D印刷機を用いて、気孔率が10%~60%であり、平均孔径が0.5μm~50μmの範囲である少なくとも1つのモノリシック無機多孔質支持体を製造する方法に関し、上記3D印刷機によって、無機組成物のストリングを堆積させることで、上記モノリシック無機多孔質支持体を形成するための操作可能な三次元未処理構造体を3Dデジタルモデルから構築でき、上記方法は、
・平均径が0.1μm~150μmの粒子の形態である第1の粉末固体無機相と、少なくとも1種のホットメルト重合体を含むマトリックスの形態である第2の相とを含む上記無機組成物を得る工程、
・上記無機組成物を上記3D印刷機の上記押出ヘッドに供給する工程であって、上記押出ヘッドは、上記無機組成物を押し出して上記ストリングを形成できる温度である、工程、
・上記水平プレート上の上記ストリングを用いて、上記3Dデジタルモデルに従って上記操作可能な三次元未処理構造体を構築する工程、
・この操作可能な三次元未処理構造体を熱処理炉に配置して、上記粉末固体無機相を形成する少なくとも1種の材料の溶融温度の0.5~1倍の温度で焼結操作を行う工程
からなる。
【0010】
本発明の枠組みにおいて、上記モノリシック無機多孔質支持体は、特に濾過膜支持体、とりわけタンジェンシャル濾過膜支持体として使用できる。
【0011】
本発明に係る方法は、以下のさらなる特徴のいずれか又は両方を有する。
・固化装置を用いて上記ストリングの押出しとともに上記操作可能な三次元未処理構造体の固化を促進する。
・上記固化装置は、上記マトリックスに含まれる少なくとも1種のホットメルト重合体を固形化させる制御冷却装置である。
・上記操作可能な三次元未処理構造体は、支持手段を用いずに傾斜を有して形成される。
・上記粉末固体無機相は、1種以上の酸化物及び/又は炭化物及び/又は窒化物及び/又は金属を含み、好ましくは酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ジルコニウム、酸化マグネシウム、炭化ケイ素、チタン、及びステンレス鋼から選択され、特に酸化チタンである。
・上記粉末固体無機相の粒度、上記ホットメルト重合体の性質及び/又は割合、上記無機組成物の温度のうち少なくとも1つの特性により上記無機組成物のレオロジーを調整する。
・上記操作可能な三次元未処理構造体は、互いに分離可能な複数の三次元サブ構造体の形態で形成される。
・上記操作可能な三次元未処理構造体は、上記無機組成物ストリングを用いて形成された少なくとも1つの破壊可能なブリッジで互いに接続、保持された複数の三次元サブ構造体の形態で形成される。
・互いに固定して取り付けられた複数の押出ヘッドを移動させて、同時に複数の独立した三次元構造体をそれぞれ各押出ヘッドで構築する。
・上記無機組成物はフィラメント又はペレットの形態である。
【0012】
本発明はまた、本発明に係る方法により得られるモノリシック無機多孔質支持体に関する。
【0013】
本発明はまた、タンジェンシャル濾過膜を作製する方法であって、被処理流動媒体を循環させるための流路が少なくとも1本配設されたモノリシック無機多孔質支持体を本発明に従って作製する工程の後、1層以上の分離層を形成する工程を含む方法に関する。最後に、本発明は、そのような方法で得られるタンジェンシャル濾過膜に関する。
【0014】
他の様々な特徴は、本発明の目的の実施形態を非限定的な例として表す添付の図面を参照して示した以下の記載から明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】本発明の枠組みにおいて使用される3D印刷機を示す図である。
【
図2】水平プレート上への無機組成物ストリングの堆積を示す断面図である。
【
図3】水平プレート上への第1のストリングの堆積を示す斜視図である。
【
図4】第1の無機組成物層上への無機組成物ストリングの堆積を示す断面図である。
【
図6】並置されたストリングからそれぞれ構成され、互いに90°で堆積された2つの層を模式的に示す斜視図であり、第1の層のストリングは連続しており、第2の層のストリングは不連続であって、長方形の空隙を形成している。
【
図7】本発明に含まれない未処理構造体の断面図であり、崩壊現象が観察される。
【
図8】本発明に係る未処理構造体の断面図であり、崩壊現象は観察されない。
【
図9】対流固化装置を組み込んだ押出ヘッドを用いた無機組成物ストリングの堆積を示す断面図である。
【
図11】放射固化装置と連合させた押出ヘッドを用いた無機組成物ストリングの堆積を示す断面図である。
【
図12A】三次元構造体が支持手段を用いずに傾斜を有する一実施形態を示す断面図である。
【
図12B】三次元構造体が支持手段を用いずに傾斜を有し、且つ各層が複数のストリングを並置することで形成されている一実施形態を示す断面図である。
【
図13】三次元構造体が支持手段を用いて傾斜を有する、本発明に含まれない一実施形態を示す断面図である。
【
図14】構築中の本発明に係る操作可能な未処理構造体の斜視図である。
【
図15】本発明に係るモノリシック無機多孔質支持体の斜視図である。
【
図16】
図16Aは、直線中央流路と、該中央流路に巻き付けられた7本のらせん状流路とを有するモノリシック無機多孔質支持体の断面図である。
図16Bは、
図16Aの支持体の流路(
図16Aに係る中央流路及び7本のらせん状周辺流路)の斜視図である。
【
図17】並行して構築された2つの別々の操作可能な三次元未処理構造体の斜視図である。
【
図18】破壊可能なブリッジで接続された2つの分離可能な三次元サブ構造体から形成された操作可能な三次元未処理構造体の斜視図である。
【
図19】破壊可能なブリッジで接続された3つの分離可能な三次元サブ構造体の形態である操作可能な三次元未処理構造体の斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明は、モノリシック無機多孔質支持体1の作製に関する。本発明はまた、壁部に1層以上の分離層が堆積した流路を有する本発明に係るモノリシック無機多孔質支持体1を含む濾過膜にも関する。
【0017】
本発明の枠組みにおいては、流体濾過膜用、より具体的にはタンジェンシャル濾過膜用のモノリシック無機多孔質支持体の製造を目的とする。そのような多孔質支持体は通常は管状であり、被濾過流体を循環させるための流路又は経路を少なくとも1本有する。これらの循環流路は入口及び出口を有する。通常、循環流路の入口は多孔質支持体の一端に位置し、この端部は被処理流動媒体用入口領域として機能し、循環流路の出口は多孔質支持体の他端に位置し、保持液用出口領域として機能する。入口領域と出口領域は、連続する周辺領域により接続されている。該周辺領域で透過液が回収される。
【0018】
濾過膜において、循環流路の壁部は、被処理流動媒体を濾過する少なくとも1層の分離層で連続的に覆われている。分離層は多孔質であり、支持体よりも平均孔径が小さい。分離層は多孔質支持体上に直接堆積させてもよく(単層分離層の場合)、平均孔径がより小さい中間層を多孔質支持体に直接堆積させて、その中間層上に分離層を堆積させてもよい(多層分離層の場合)。従って、被濾過流動媒体の一部は分離層及び多孔質支持体を通過し、このように処理された流体(透過液と呼ばれる)は、多孔質支持体の外周面を通って流れる。分離層は、被処理流体と接触する濾過膜表面を画定し、それに接触して被処理流体が循環する。
【0019】
モノリシック無機支持体1の気孔は開放型である。すなわち、三次元全てで相互に接続した気孔ネットワークを形成している。これにより、分離層で濾過された流体が多孔質支持体を通過するとともに、周辺部で回収される。従って、透過液は、多孔質支持体の外周面で回収される。
【0020】
モノリシック無機多孔質支持体1は、平均孔径が0.5μm~50μmの範囲である。モノリシック無機多孔質支持体1の気孔率は10%~60%であり、20%~50%であることが好ましい。
【0021】
「平均孔径」とは、容積分布のd50値であって、全気孔容積の50%が、このd50値より小さい孔径を有する気孔が占める容積と一致する値を意味する。容積分布は、気孔の容積頻度を孔径の関数として表した曲線(解析関数)である。d50値は、水銀圧入法によって得られる頻度曲線下の面積を二等分する中央値に相当する。特に、水銀圧入法による測定技術に関しては、ISO規格15901-1:2005に記載の技術を使用できる。
【0022】
支持体の気孔率は、対象材料に存在する相互に接続された空隙(気孔)の全容積に相当し、0~1又は0%~100%の物理量である。上記多孔質体の流量及び保持量を規定する。材料を濾過に用いるためには、全相互接続開放気孔率を、支持体を通る濾液流速が充分となるように最低10%とする必要があり、多孔質支持体の好適な機械的抵抗が保証されるように最大60%とする必要がある。
【0023】
多孔質体の気孔率は、液体(水又はその他溶媒)中に長時間滞留させる前後で該材料を計量して、該多孔質体に含まれるその液体の体積を求めることで測定できる。対象材料及び使用液体のそれぞれの密度は既知であるため、質量差を体積に換算したものが、そのまま気孔容積、ひいては多孔質体の全開放気孔率を表す。
【0024】
多孔質体の全開放気孔率を正確に測定できる他の方法としては、以下が挙げられる。
・水銀圧入ポロシメトリー(上記ISO規格15901-1)。水銀を圧入し、印加した圧力で到達可能な気孔を充填する。その注入された水銀の体積が気孔容積に相当する。
・小角散乱。この技術は中性子線又はX線を用いるものであり、試料全体で平均化された物理量を入手できる。測定では、試料によって散乱された強度の角度分布を解析する。
・顕微鏡観察で得た2D画像の解析。
・X線トモグラフィで得た3D画像の解析。
【0025】
本発明に係るモノリシック無機多孔質支持体1は、操作可能な三次元未処理構造体2を焼結することにより作製される。上記構造体2は、三次元印刷機Iを用いて無機組成物4の層3
iを重ね合わせることで3DデジタルモデルMに従って構築される。上記印刷機Iは、特に、取り外し可能であってよい水平プレート5を含み、その上方に少なくとも1つの押出ヘッド6が設置されている(
図1)。
【0026】
「三次元未処理構造体」2とは、無機組成物4の層3iを重ね合わせることで得られる三次元構造体であって、未焼結のものを意味する。この未処理構造体の形状と寸法は、3DデジタルモデルMによって一層一層決定される。この三次元未処理構造体2は、後述する通り、固化が促進されることで時間が経過しても安定な機械的剛性が得られるため、自重で変形せず、傾斜を有することさえできることから、「操作可能な」ものであるといえる。従って、この三次元未処理構造体2は、水平プレート5から取り外して、変形させたり破壊させたりすることなく移動させることができ、特に、その後、本発明に係るモノリシック多孔質支持体を得るのに必要な加熱処理操作に供することができる。
【0027】
本発明の枠組みにおいて、「層」3iは、連続であっても不連続であってもよく、並置されていてもいなくてもよい一連のストリング7i,jにより画定される。これらのストリング7i,jは、高度zについて予め規定した3DデジタルモデルMに従って、同じ高度zで押し出される(iは1~nの範囲の整数であり、nは3DデジタルモデルMに従って操作可能な三次元未処理構造体2を形成する層の合計数を表す整数である)。明確化のために、ほとんどの図では単一のストリングで構成された層を示す。しかしながら、本発明の枠組みにおいては非常に多くの場合、複数の連続又は不連続ストリング7i,jを並置することで層3iを形成する。
【0028】
本発明の枠組みにおいて、「ストリング」7i,jは、押出ヘッド6の端部で成形される無機組成物4の細片に相当する(iは1~nの範囲の整数であり、nは操作可能な三次元未処理構造体2を形成する層の合計数を表す整数である。jは、属する層内の対象ストリングに対応する整数を表し、1~mの範囲である。mは対象層の合計ストリング数を表す)。
【0029】
3DデジタルモデルMは、三次元未処理構造体2を構築するために、コンピュータ設計ソフトにより決定される。この3DデジタルモデルMは、スライスソフトにより連続する層3iに分割される仮想構造体に相当する。該スライスソフトは、必要に応じて、三次元構造体が傾斜を有する場合に支柱の必要性及びその位置を決定して、構築中の三次元未処理構造体のための支持手段を確保し、構造体が崩壊するのを防ぐことができる。
【0030】
三次元印刷機Iの押出ヘッド6は、少なくとも3つの軸(x、y、及びz)に沿って変位させることができるロボット等の変位機構(図示せず)により支持される。従って、押出ヘッド6は、変位機構によって水平面に沿って(x及びy軸)及び垂直に(z軸)移動させることができる。上記変位機構は、それ自体が既知であるあらゆる種類のコンピュータRにより駆動される。このコンピュータRは、3DデジタルモデルMに従って所定の経路に沿って、上記変位システムの動き、ひいては押出ヘッド6の動きを制御する。該3DデジタルモデルMから三次元未処理構造体2が形成され、加熱処理操作後、モノリシック無機多孔質支持体1を得ることができる。
【0031】
押出ヘッド6は、無機組成物4用入口を有する(図示せず)。図に示すように、押出ヘッド6はまた、上記3DデジタルモデルMに従って移動可能なノズル等の較正フローオリフィス8を有する。本発明のための方法によれば、無機組成物4(好ましくはフィラメント又はペレットの形態)を印刷機の押出ヘッド6に入口を通して導入して、フローオリフィス8に供給する。この入口を通してヘッド6に無機組成物4を導入するために、機械的作用を印加してもよい。
【0032】
本発明の枠組みにおいて、「ペレット」とは、取得方法及び押出ヘッドの寸法設計に応じて、最大寸法が1mm~1cmの範囲であってもよい小型の固体要素を意味する。ペレットは、上記ホットメルト組成物をなす各種材料から該組成物と一致する割合で構成される。各種材料を適宜予備混合した後、熱押出、圧縮、又は上記予備混合に用いた液相の脱水、より一般的には蒸発を行うことによって、ペレットが得られる。ペレットの形状は、以下のように取得方法によって異なってよい。
・熱押出の場合、小円柱形
・圧縮の場合、小球状タブレット(ペレット)等
・液相を蒸発させる場合(乾燥「ケーキ」の粉砕)、小型の無定形ブロック
【0033】
本発明の枠組みにおいて、「機械的作用」とは、例えばピストン、ポンプ、又は押出機等の任意の公知技術手段によって圧力を印加することを意味する。この工程は当業者が通常の方法で行うことができ、ここでは詳述しない。
【0034】
フローオリフィス8は、水平プレート5に対向してその付近に配置される。フローオリフィス8は、固定された水平プレート5に対して垂直に(すなわち、z軸に沿って)及び水平に(すなわち、x及びy軸に沿って)移動可能である。固定された水平プレート5に対してフローオリフィス8が垂直及び/又は水平に変位することで、フローオリフィス8を通した無機組成物4のストリング7i,jの押出しに続いて、水平プレート5にのった操作可能な三次元未処理構造体2を3DデジタルモデルMに従って構築することができる。
【0035】
図示した実施形態によれば、押出ヘッド6は、断面が円形であるフローオリフィス8を備える。フローオリフィス8の断面が円形である場合、その直径Dは0.1mm~10mmであることが有利であり、0.1mm~1mmであることが好ましく、0.1~0.7mmであることが好ましい。しかしながら、フローオリフィス8の断面は必ずしも円形である必要は無く、別の形状も想定し得る。
【0036】
無機組成物4は、本質的にセラミック及び/又は金属であることが有利である。無機組成物4は室温で粉末固体無機相及び固体マトリックスから構成される。従って、無機組成物4は粉末ではないが、フィラメント又はペレットの形態であることが有利である。
【0037】
無機組成物4の粉末固体無機相は、平均径が0.1μm~150μmである粒子の形態の固体無機材料を1種以上含む。
【0038】
平均径という概念は、粒子分布の概念と関連する。実際、粉末粒子が単一径又は単分散径であることはまれであるため、粉末は、ほとんどの場合、その粒子径分布によって特徴付けられる。そのため、平均径は、粒子径分布の平均値に相当する。分布は、頻度分布や累積分布等の様々な方法で表すことができる。個数基準(顕微鏡観察)又は質量基準(ふるい分け)分布が直接得られる測定技術もある。平均径は、中心傾向の測定値である。
【0039】
最も広く使用される中心傾向としては、最頻値、中央値、及び平均値がある。最頻値は、ある分布において最も頻度の高い径であり、頻度曲線の最大値に相当する。中央値は、それより大きい値とそれより小さい値の総頻度が同一となる値を表す(言い換えれば、中央値前後で合計粒子数又は体積が同じである)。平均値については算出する必要があり、分布のモーメントが等しくなる点を決定する。正規分布の場合、最頻値、平均値、及び中央値は一致するが、非正規分布の場合は異なる。
【0040】
無機粉末を構成する粒子の平均径は、特に以下の方法で測定できる。
・3mm~約0.1μmの範囲の粒子の場合、レーザー光回折
・沈降/遠心分離
・0.5μm~2nmの範囲の粒子の場合、動的光散乱(DLS)
・顕微鏡観察で得た画像の解析
・小角X線回折
【0041】
ほとんどの場合、無機組成物4は、粉末無機材料として、酸化物及び/又は窒化物及び/又は炭化物及び/又は金属を単独で又は混合物として含む。本発明の枠組みにおいて好適であり得る酸化物の例としては、特に金属酸化物、とりわけ酸化チタン、酸化ジルコニウム、酸化アルミニウム、及び酸化マグネシウムが挙げられ、酸化チタンが好ましい。炭化物の例としては、特に金属炭化物、とりわけ炭化ケイ素が挙げられる。使用できる窒化物の例としては、特に窒化チタン、窒化アルミニウム、及び窒化ホウ素が挙げられる。本発明の枠組みにおいて好適であり得る金属の例としては、特にチタン及びステンレス鋼が挙げられる。好ましい一実施形態によれば、無機組成物4は、粉末無機材料として少なくとも1種の金属酸化物、好ましくは酸化チタン、を含む。
【0042】
無機組成物4のマトリックスは、1種以上のホットメルト重合体からなる。マトリックスは本質的に有機物である。
【0043】
「ホットメルト重合体」とは、熱の影響下で軟化する重合体を意味する。
【0044】
本発明の枠組みにおいて好適であり得るホットメルト重合体の例としては、ポリ乳酸(PLA)、ポリビニルアルコール(PVA)、アクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン、ポリエチレンテレフタレート(PET)、熱可塑性ポリウレタン(TPU)、ポリオレフィン、熱可塑性エラストマー(TPE)、ポリオレフィン系エラストマー(TPE-O)、及びポリカーボネートといった重合体又は重合体ファミリーが挙げられ、これらは官能化されていてもよく、マトリックスにおいて単独で使用されても混合物として使用されてもよい。
【0045】
無機組成物4における粉末無機材料の質量含有量は、無機組成物4の総重量に対して40~95重量%の範囲であってよく、70~90重量%であることが好ましい。
【0046】
本発明の枠組みにおいて、無機組成物4は、較正フローオリフィス8を通して押し出す際の流動性の点で好適なレオロジーを有する。
【0047】
本発明の枠組みにおいて、ホットメルト重合体が軟化するように、無機組成物4(好ましくはフィラメント又はペレットの形態)を押出ヘッド6で加熱する。通常、押出ヘッド6のフローオリフィス8のみを加熱して、ホットメルト重合体をフローオリフィス8で軟化させてから無機組成物4を押し出すことができる。フローオリフィス8の温度は、無機組成物4に存在するホットメルト重合体に応じて調整できる。
【0048】
本発明の枠組みにおいて、押出ヘッドでの無機組成物4の温度、及び/又は粉末固体無機相の粒度、及び/又はホットメルト重合体の性質及び/又は割合により、無機組成物4のレオロジーを調整できる。
【0049】
「粉末固体無機相の粒度」とは、粉末固体無機相を構成する粒子の寸法を意味する。粒度は、上述した平均径の概念により特徴付けられる。
【0050】
図2に示すように、無機組成物4のストリング7
1,1は、無機組成物4の押出しに必要な圧力を確保するように機械的作用が無機組成物4に印加されることで無機組成物4が較正フローオリフィス8を通過するのに続いて形成される。
【0051】
較正フローオリフィス8の出口において、無機組成物4のストリング7i,jの温度が(場合によっては室温まで)低下するため、その剛性が高まり、三次元未処理構造体の安定性を確保できる。しかしながら、該三次元構造体の形状によっては、構築中に崩壊現象が起こることがある。この場合、本発明においては、後述する通り、制御冷却が可能な装置を用いて、ストリング及び三次元構造体の硬化を促進できる。
【0052】
図3に示すように、無機組成物4のストリング7
1,jがフローオリフィス8から押し出されるとすぐに、水平プレート5上方のフローオリフィス8の水平変位によって、ストリング7
1,jがコンピュータ設計ソフトで予め決定した3DデジタルモデルMに従って水平プレート5上に堆積して、第1の層3
1を形成する。
【0053】
フローオリフィス8は、3DデジタルモデルMに従って所定の経路に沿って水平に、従って水平プレート5に対して平行に移動して、第1の層3
1を形成する。この段階で、水平プレート5上に単一の層が形成される。
図3に示す例示的な実施形態において、第1の層3
1は、角を丸めた三角形状のオリフィス9を4つ有する円形である。この形状は例として示したものであり、限定的なものではない。
【0054】
第1の層3
1の堆積後、
図4及び5に示すように、堆積ストリング7
2,1が3DデジタルモデルMに従って第2の層3
2を形成するようにフローオリフィス8が移動する。そのために、フローオリフィス8は、所望の位置まで垂直に(すなわち、z軸に沿って)及び水平に(すなわち、x及び/又はy軸に沿って)移動する。フローオリフィス8を通した無機組成物4の押出しは、連続的であっても、非連続的であってもよい。このように、3DデジタルモデルMに従って、先に堆積させた層3
1上にストリング7
2,jを重ね合わせることで、第1の層3
1上に第2の層3
2を堆積させる。
【0055】
図4及び5に示す例において、各層3
iはセラミック組成物4のストリング7
i,jを1本のみ含み、ある層3
iから隣接する層3
i+1へとストリングが整列している。しかしながら、好ましくは、各層3
iを複数のストリング7
i,jから形成してもよい。
図6に示す実施形態において、層3
1及び3
2はそれぞれ、5つのストリング(前者では7
1,1、7
1,2、7
1,3、7
1,4、及び7
1,5、後者では7
2,1、7
2,2、7
2,3、7
2,4、及び7
2,5)を並置することで形成されている。ストリング7
1,1~7
1,5及び7
2,1~7
2,5は、互いの層に対して90°で堆積されている。ストリング7
1,1~7
1,5は並置されており、連続している。ストリング7
2,1~7
2,5は、図示した例では、不連続であって、長方形の空隙を形成している。
【0056】
ストリング72,jを堆積させて第2の層32を形成する場合、上述の、押出ヘッド6を垂直及び水平に移動させる工程を必要な回数繰り返して、コンピュータ設計ソフト及び「スライス」ソフトで決定した3DデジタルモデルMに従って、操作可能な三次元未処理構造体2を形成する。操作可能な三次元未処理構造体2はz軸に沿って成長させる。より具体的には、3DデジタルモデルMに従ってストリング71,1~7n,mから形成された層31~3nを積み重ねることで、操作可能な三次元未処理構造体2を水平プレート5上に構築する。
【0057】
図示する通り、各層3
iは厚さeにより特徴付けられ、ストリング7
i,jは厚さe及び幅Lにより特徴付けられる。ストリング7
i,jの厚さeは、堆積される直前の層3
i-1の表面又は水平プレート5の表面と、押出ヘッド6のフローオリフィス8との間で測られる該ストリング7
i,jの寸法である。従って、層3
iの厚さはストリング7
i,jの厚さと同一であり、各ストリング7
i,jは同じ厚さeを有する。ストリング7
i,jの幅Lは、較正オリフィス8から押し出される無機組成物4の体積流量、較正オリフィス8の変位速度、及びe/D比(Dはフローオリフィス8の直径)によって決まる。
図5及び8に示す例示的な実施形態において、ストリング7
i,j及び7
i+1、
j+1の幅Lは同じである。
【0058】
本出願人は、三次元未処理構造体の機械的強度が不充分である結果、三次元未処理構造体が崩壊して変形する場合があることを確認した。この変形は、充分に固化していない層が、その上に堆積された層の重さで変形して崩壊することで生じ得る。この崩壊現象を
図7に示す。本出願人は、この変形が、押出し直後のストリングが崩壊することによっても生じ得ることを確認した。すなわち、押出ヘッドを出た直後にストリングの崩壊が起こることがあり、それによりストリングの断面が変形する。特に、ストリングの最終高さが、3Dデジタルモデルに従って設定した高さより低くなる。また、三次元構造体が傾斜を有する場合は、三次元未処理構造体を支持手段を用いずに構築する際に、張り出したストリング部分が崩壊して変形が生じることもある。
【0059】
一実施形態によれば、崩壊現象を避けるために、
図8に示すように、焼結工程前に固化の促進を行って、デジタルモデルMに従って三次元未処理構造体の機械的強度を急速に向上させる。この場合、時間が経過しても、各層3
iの初期形状及び初期寸法、特に初期厚さe及び初期幅Lが維持される。
【0060】
このような固化の促進は、フローオリフィス8と同様に移動する固化装置10を用いて、操作可能な三次元未処理構造体2の構築とともに行うことができる。
図1に模式的に示す通り、固化装置10は押出ヘッド6近傍に配置され、押出ヘッド6に支持されていてもいなくてもよい。より具体的には、固化装置10は押出ヘッド6に固定されていてもいなくてもよく、押出ヘッド6の一部を構成していてもいなくてもよい。固化装置10が押出ヘッド6に支持されていない場合、その変位に追従する。従って、固化の促進は、無機組成物4を押し出すとともに行う。固化の促進は、フローオリフィス8の出口のストリング7
i,jが押し出されてすぐに行うことが好ましい。
【0061】
この固化装置10は、無機組成物4に含まれる少なくとも1種のホットメルト重合体の固形化を促進できる。言い換えれば、固化装置10によるホットメルト重合体の固形化は、操作可能な三次元未処理構造体2に機械的強度を付与するのに充分な速さであり、且つ、該構造体が傾斜を有していてもその崩壊を避けるのに充分なものである。
【0062】
制御冷却は、対流型又は放射型であってもよい固化装置10で得られる。
【0063】
対流固化装置10の場合、1つ以上のエアジェットをストリング7
i,jに向ける。そして、該ストリング
i,jの周囲の雰囲気の更新によってのみ冷却を行う。
図9、10A、及び10Bに示す通り、固化装置10は、フローオリフィス8の周囲で押出ヘッド6と一体化していてもよい。対流固化装置10は、フローオリフィス8の周囲に設けられた円錐形環状スロット10
1の形態であってもよく(
図10A)、フローオリフィス8の周囲に設けられた複数のオリフィス10
2の形態であってもよい(
図10B)。
【0064】
放射固化装置10の場合、該装置は、
図11に示すように、フローオリフィス8の周囲に設置することができ、押出ヘッド6に固定されていてもいなくてもよい。
【0065】
固化の促進は、使用する無機組成物4に応じて調整できる。実際、無機組成物4の性質、特にそのレオロジーによっては、操作可能な三次元未処理構造体2の崩壊現象を避けるために、固化の促進は多少なりとも重要とならざるをえない。固化の促進の調整は、固化装置10により生じる気流及び/又は放射エネルギーを利用して行うことができる。
【0066】
図5及び8に示す実施形態によれば、層3
iは同一の形状及び寸法であり、整列している(すなわち、z軸に沿って積み重ねられている)。従って、1本以上の直線流路11を有するモノリシック無機多孔質支持体1を製造できる。この実施形態は限定的ではない。例えば、
図12A及び12Bに示す実施形態によれば、操作可能な三次元未処理構造体2が、ストリング7
i,jとそれが堆積される層3
i-1とのずれにより生じた傾斜、オーバーハング、又は張り出しdeを有するように、異なる各層3
iをz軸に沿って積み重ねる。オーバーハング角度α(Arc tg(e/de)に相当する)は、傾斜の大きさを表し、αが小さいほど、傾斜の大きさは大きくなる。
【0067】
本発明の方法、及び場合によってはストリング7
i,jの堆積時の固化の促進、及び必要により無機組成物4のレオロジーによって、操作可能な三次元未処理構造体2が傾斜を有していたとしても変形せず、時間が経過しても機械的に安定であるように充分な機械的強度が付与され、これにより、傾斜を有する三次元未処理構造体の崩壊を避けるのに通常必要である支持手段12が不要となる(構築中の三次元構造体と相補的な形状である仮支持手段12が同時に印刷される
図13参照)。このような固化の促進によって、所与の無機組成物4及び所与の印刷パラメータ(フローオリフィス8の直径、ストリング7
i,jの押出速度、押出ヘッド6の変位速度)について、傾斜の大きさに適合させることができる。要約すると、三次元未処理構造体2が傾斜を有し、且つ支持手段を用いない場合でも、崩壊現象が観察されることなく、該構造体を構築できる。
【0068】
本出願人による仏国特許出願公開第3060410号明細書に記載の通り、操作可能な三次元未処理構造体2において少なくとも1つの傾斜が存在することで、少なくとも1本のらせん状流路を有するモノリシック無機多孔質支持体1を製造できる。そのような多孔質支持体によって、分離層が目詰まりするリスクを減少でき、それにより濾液流を増加できる好適な形状のタンジェンシャル濾過膜が得られる。
【0069】
図14に示すように、本発明に係る方法によって、層3
1~3
nを3DデジタルモデルMに従って積み重ねることで、操作可能な三次元未処理構造体2を構築できる。
【0070】
最後に、操作可能な三次元未処理構造体2が得られたら、これを加熱処理して焼結操作を行う。そのために、無機組成物4に存在する少なくとも1種の粉末固体無機材料の溶融温度の0.5~1倍の範囲の温度の炉に、操作可能な三次元未処理構造体2全体が焼結するのに充分な時間、該操作可能な三次元未処理構造体2を配置する。
【0071】
焼結工程中、多孔質支持体1の寸法は操作可能な三次元未処理構造体2の寸法に対して変動し得る。この変動は、無機組成物4の性質及び焼結条件に依存する。本発明の枠組みにおいて使用するコンピュータ設計ソフトによって、この変動を予想することができ、これに基づいて3DデジタルモデルMが決定される。
【0072】
本発明に係る方法によって、濾過、特にタンジェンシャル濾過に使用するのに好適な相互接続多孔質組織を有するモノリシック無機支持体1を得ることができる。更に、このようにして得られたモノリシック無機多孔質支持体1は、濾過、特にタンジェンシャル濾過に使用するのに好適な機械的抵抗を有する。より正確には、モノリシック無機多孔質支持体1は、破裂せずに少なくとも30バールの内圧に耐え、好ましくは破裂せずに少なくとも50バールの内圧に耐える。破裂圧力は、水により流路にかかる内圧の影響で支持体が破裂するときの圧力に相当する。
【0073】
構築した三次元構造体の形状は特に限定されない。特に、
図15に示すように、横断面が円形であり、外面が円筒状である細長い形状であってよい。しかしながら、必ずしもこの形状である必要はなく、所望の用途に応じて別の形状が想定されうる。実際、本発明に係る方法によって、様々な形状のモノリシック無機多孔質支持体1を形成できる。特に、モノリシック無機多孔質支持体1をタンジェンシャル濾過膜に使用するつもりの場合、該支持体は、被処理流体を循環させるための流路11を少なくとも1本有し、複数の流路11を有することが有利である。これらの流路11は、直線であっても非直線であってもよく、相互に接続されていてもいなくともよい。
図15に示す例では、モノリシック多孔質支持体1は、積み重ねられた層3
1~3
nのオリフィス9が重なり合うことで形成された4本の流路11を有する。該流路11は直線であり、相互に接続しておらず、角を丸めた三角形状の断面を有する。流路11の形状及び数は、選択した3DデジタルモデルMにより決定されるため、
図15に示すものに限定されない。例えば、
図16A及び16Bに示す通り、支持体は、直線中央流路11
1と、直線中央流路11
1の周囲にらせんを形成するらせん状流路11
a、11
b、11
c、11
d、11
e、11
f、11
gとを有していてもよい。
【0074】
第1の実施形態によれば、本発明に係る方法によって、一度に単一の操作可能な三次元未処理構造体2を作製することができ、焼成後、一度に単一のモノリシック多孔質支持体1が得られる。
【0075】
図17に示す第2の実施形態によれば、上述の方法によって、焼結工程を経て2つのモノリシック多孔質支持体1
1及び1
2を形成するための独立した(すなわち、互いに接続されていない)2つの操作可能な三次元未処理構造体2
1及び2
2を同時に作製できる。そのために、上記印刷機は2つのフローオリフィス8
1及び8
2を有する。そして、各独立した操作可能な三次元未処理構造体2
1及び2
2は、それぞれ別々のフローオリフィス(それぞれ8
1及び8
2)からのストリングで形成される各層を積み重ねることで作製される。
図17に示す例では、2つの操作可能な三次元未処理構造体2
1及び2
2は同一の形状及び寸法であり、フローオリフィス8
1及び8
2が同一に変位することで構築される。フローオリフィス8
1及び8
2は、互いに固定して取り付けられることが好ましい。しかしながら、示した例は限定的ではなく、2つを超える、特に3つ又は4つの操作可能な三次元未処理構造体を同時に作製することも想定でき、これらの操作可能な三次元未処理構造体の形状及び/又は寸法は同一であっても異なっていてもよい。
【0076】
第3の実施形態によれば、上述の方法によって、互いに分離可能な複数の同一又は異なる三次元サブ構造体の形態で、操作可能な三次元未処理構造体2を作製できる。本実施形態によれば、三次元サブ構造体は、無機組成物4のストリング7i,jで形成された少なくとも1つの破壊可能なブリッジ13で互いに接続されている。互いに離れており、好ましくは整列している、同一又は異なる形状及び/又は寸法の複数のブリッジ13で接続されていることが好ましい。
【0077】
図18に示す本実施形態によれば、本発明に係る方法によって、2つの三次元サブ構造体2
3及び2
4が複数の同一の破壊可能なブリッジ13で該三次元未処理サブ構造体2
3及び2
4の高さ全体にわたって接続されている形態で、操作可能な三次元未処理構造体2を製造できる。2つの三次元サブ構造体2
3及び2
4は同一の形状及び寸法であり、横断面が角を丸めた三角形状である4本の直線流路11を有する。
【0078】
図19に示すように、この第3の実施形態によって、三次元構造体の高さにわたって分布した複数の破壊可能なブリッジで3つの未処理サブ構造体2
5、2
6、2
7が連続して接続された形態で、操作可能な三次元未処理構造体を製造することもできる。示される通り、3つの未処理サブ構造体2
5、2
6、2
7は同一であり、それぞれ、断面が円形である直線中央流路11
1と、断面が角を丸めた三角形状であり、直線中央流路11
1の周囲にらせんを形成する7本のらせん状流路11
a、11
b、11
c、11
d、11
e、11
f、11
gとを有する。
【0079】
あるいは、図示しないが、三次元サブ構造体は、操作可能な三次元未処理構造体2の高さ全体にわたって存在してもしなくともよい単一の破壊可能なブリッジ13で接続されていてもよく、様々な数及び形状の流路を有していてよい。同様に、図示しないが、本発明に係る方法によって、3つを超える分離可能な三次元サブ構造体を作製できる。図示しないが、この後者の実施形態に従って作製された三次元サブ構造体は、形状及び/又は寸法が異なっていてもよい。
【0080】
焼結工程の前に、三次元サブ構造体を接続するブリッジ13を破壊することで、焼結工程後にモノリシック多孔質支持体を製造できる。
【0081】
本発明に係る方法は、単一の製造工程でモノリシック無機多孔質支持体1に一定且つ均一な特性を付与し、且つ多種多様な形状を得ることができるという利点がある。また、本発明に係る方法によって、製造時に支持手段を必要とすることなく、傾斜を有するモノリシック無機多孔質支持体1を作製できる。
【0082】
本発明はまた、本発明に係る方法で得たモノリシック無機多孔質支持体1に関する。そのような支持体は、構造が均一であるという利点があり、濾過膜支持体として使用できる。
【0083】
最後に、本発明は、タンジェンシャル濾過膜を作製する方法、及び該方法で得たタンジェンシャル濾過膜に関する。
【0084】
本発明に係るタンジェンシャル濾過膜において、モノリシック無機多孔質支持体1に配設された循環流路11の壁部は、被処理流体と接触し、且つ被濾過流動媒体を確実に濾過するための少なくとも1層の分離濾過層で覆われている。分離層は、モノリシック無機多孔質支持体1の形成後に作製する。従って、本発明に係るタンジェンシャル濾過膜を作製する方法は、上述の方法に従ってモノリシック無機多孔質支持体1を作製する工程の後(すなわち、モノリシック無機多孔質支持体1を作製するための最終焼結工程後)、1層以上の分離濾過層を形成する工程を含む。この方法は、本出願人による仏国特許第2723541号明細書に記載されているものであることが有利である。
【0085】
分離濾過層の形成は、当業者に既知である任意の技術で行うことができる。特に、分離層は、硬化後に分離濾過層を構成するための少なくとも1種の焼結性組成物を含有する懸濁液を塗布することで、支持体1の流路11の壁部に堆積させることができる。そのような組成物は、無機濾過膜の製造に従来使用される組成を有する。この組成物は少なくとも1種の酸化物、1種の窒化物、1種の炭化物、若しくはそれ以外の1種のセラミック材料、又はそれらの混合物を含み、酸化物、窒化物、及び炭化物が好ましい。焼結性組成物は、例えば水中に懸濁させる。凝集体が存在するリスクを無くし、且つ液中での粒子分散を最適化するために、得られた懸濁液を破砕して凝集体を破壊し、本質的に素粒子で構成された組成物を得る。その後、支持体の流路に入り込むための流体力学的要件を満たすように、有機添加剤で懸濁液のレオロジーを調整する。分離層を堆積させたら、乾燥させた後、分離層の性質、平均粒子径、及び目標カットオフ閾値に応じて決定される温度で焼結する。
【0086】
多層分離層の場合は、この分離濾過層堆積工程を繰り返す。
【0087】
本発明に係る膜は、機械的抵抗が良好である。より具体的には、本発明に係る膜は、破裂せずに少なくとも30バール、好ましくは少なくとも50バールの内圧を有する。一般的に、50バールの内圧は、稼働時に膜の機械的強度を保証するのに必要且つ充分であると認められている。
【0088】
本発明の枠組みを逸脱することなく様々な変更を加えることが可能であるため、本発明は記載した実施形態及び表した実施形態に限定されない。
【国際調査報告】