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特表2022-510731患者の液体試験サンプル中の糖化ヘモグロビンパーセントを決定するためのキャリブレーターおよびコントロール
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】患者の液体試験サンプル中の糖化ヘモグロビンパーセントを決定するためのキャリブレーターおよびコントロール
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/72 20060101AFI20220120BHJP
【FI】
G01N33/72 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021547391
(86)(22)【出願日】2020-01-17
(85)【翻訳文提出日】2021-09-30
(86)【国際出願番号】 US2020014014
(87)【国際公開番号】W WO2020167411
(87)【国際公開日】2020-08-20
(31)【優先権主張番号】62/806,163
(32)【優先日】2019-02-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508147326
【氏名又は名称】シーメンス・ヘルスケア・ダイアグノスティックス・インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100127926
【弁理士】
【氏名又は名称】結田 純次
(74)【代理人】
【識別番号】100140132
【弁理士】
【氏名又は名称】竹林 則幸
(72)【発明者】
【氏名】クレイグ・ヒクソン
【テーマコード(参考)】
2G045
【Fターム(参考)】
2G045CA25
2G045DA48
2G045DA51
2G045JA02
(57)【要約】
診断アッセイのキャリブレーター、キャリブレーション物質、およびコントロールを調製するための方法論、ならびにそれに関連するキット、装置、およびキャリブレーションの方法の非限定的な実施形態。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
分析物検出アッセイ装置で使用するための少なくとも2つのキャリブレーターを含むキャリブレーションシステムを準備する方法であって、以下のステップ:
第1のキャリブレーターを調製するステップであって、該第1のキャリブレーターは、患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の第1の濃度を有し、該第1の濃度は、該患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の平均閾値濃度よりも高い、ステップと;
第2のキャリブレーターを調製するステップであって、該第2のキャリブレーターは、患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の第2の濃度を有し、該第2の濃度は、患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の平均閾値濃度よりも低い、ステップと
を含む方法。
【請求項2】
患者の液体検試験サンプルが全血である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
目的の分析物が、総ヘモグロビン、糖化ヘモグロビン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
糖化ヘモグロビンの平均閾値濃度が、患者の液体試験サンプル中に存在する総ヘモグロビンの濃度の約4%から約8%までである、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
糖化ヘモグロビンの第1の濃度が約8.1%以上である、請求項4に記載。
【請求項6】
糖化ヘモグロビンの第2の濃度が約3.9%以下である、請求項4に記載の方法。
【請求項7】
第1キャリブレーターの第1濃度が、グルコースの添加および反応、ヘムの除去、合成フルクトシル-ペプチド基質を介した修飾、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって、糖化ヘモグロビンの平均閾値濃度よりも上に増加される、請求項3に記載の方法。
【請求項8】
合成ペプチドがN末端フルクトシルペプチドである、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
第2のキャリブレーターの第2の濃度が、化学修飾、少なくとも1つの固相結合酵素の利用、少なくとも1つの色素の利用、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって、糖化ヘモグロビンの平均閾値濃度より下に減少される、請求項3に記載の方法。
【請求項10】
化学修飾が、過ヨウ素酸による糖化ヘモグロビンの酸化を含む、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
少なくとも1つの固相結合酵素が、磁気ビーズに結合したフルクトシルペプチドオキシダーゼを含む、請求項9に記載の方法。
【請求項12】
キャリブレーションシステムを利用して少なくとも1つの診断アッセイをキャリブレーションする方法であって、以下のステップ:
少なくとも診断アッセイを実施するために診断アッセイ装置内に存在するキャリブレーションシステムを利用して、少なくとも2回のキャリブレーション測定を行うステップであって、該キャリブレーションシステムが、以下:
第1のキャリブレーターであって、該第1のキャリブレーターは、患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の第1の濃度を有し、該第1の濃度は、患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の平均閾値濃度よりも高い、第1のキャリブレーター;および
第2のキャリブレーターであって、該第2のキャリブレーターは、患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の第2の濃度を有し、該第2の濃度は、該患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の平均閾値濃度より低い、第2のキャリブレーター
を含む、ステップと;
少なくとも2回の測定から得られた値を利用してキャリブレーション曲線を計算するステップと;
少なくとも1つの診断アッセイの実施から得られた結果の正確性を決定するために、第1の濃度および第2の濃度に対する数値を確立するステップと
を含む方法。
【請求項13】
患者の液体試験サンプルが全血である、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
目的の分析物が、総ヘモグロビン、糖化ヘモグロビン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
糖化ヘモグロビンの平均閾値濃度が、患者の液体試験サンプル中に存在する総ヘモグロビンの濃度の約4%から約8%までである、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
糖化ヘモグロビンの第1の濃度が約8.1%以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
糖化ヘモグロビンの第2の濃度が、約3.9%以下である、請求項15に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願に対する相互参照
適用なし。
【0002】
連邦政府による資金提供を受けた研究または開発に関する声明
適用なし。
【0003】
本願で開示および特許請求された発明の概念は、少なくとも1つの診断アッセイを実施するに少なくとも1つの液体試薬および/または緩衝液を含むが、これらに限定されない、少なくとも1つの液体を投薬する装置、キットおよび方法に関する。より詳しくは、本願で開示および特許請求された発明の概念は、アッセイキャリブレーター、キャリブレーション物質および/または良質なコントロールのための非限定的な実施形態に関する。
【背景技術】
【0004】
流体サンプル中に存在しうる分析物を検出するための多数の装置および方法がある。このような装置は、総ヘモグロビン、糖化ヘモグロビン(HbA1c)、微量アルブミンおよびクレアチニン、ならびにコレステロール、トリグリセリドおよび/または高密度リポタンパク質などの脂質ベースの分析物を含むがこれらに限定されない、患者の健康状態を示す特定の分析物の存在および量を検出する診断アッセイにおいて有効であることが証明されている。
【0005】
患者の血液サンプル中に存在する糖化ヘモグロビンのパーセンテージの測定は、過去3ヶ月程度の期間にわたって患者の血液内に存在する平均血漿グルコース濃度を示している。血漿グルコースの平均量が増加すると、患者の血液中のヘモグロビンの少なくとも一部が非酵素的に糖化ヘモグロビンに変換され、その結果、患者の血液中に存在するHb1Acのパーセンテージまたは分画が増加する(患者の血液中に存在するヘモグロビンの総量と比較した場合)。
【0006】
しかしながら、少なくとも1つの目的の分析物(例えば、例として、糖化ヘモグロビン(HbA1c))の存在および/または濃度を検出するために診断アッセイを行う場合、得られた結果が正確であることを保証するために、測定機器をキャリブレーションしなければならない。目的の分析物が糖化ヘモグロビンである場合、患者の液体試験サンプル(例えば、患者の全血サンプルなど)中に存在するHb1Acの極めて低いレベル(すなわち、約4%未満の糖化ヘモグロビン)および/または極めて高いレベル(すなわち、約12%を超える糖化ヘモグロビン)の両方を検出するキャリブレーターを構築することは非常に困難であるといえる。現在、血液サンプルが所望のレベル(低濃度および高濃度の両方)の糖化ヘモグロビンを含む患者を探し出すのが一般的である。一旦発見されると、この層の患者から血液サンプルが採取され、総ヘモグロビンおよび糖化ヘモグロビンパーセントの両方を検出するキャリブレーターの上方および下方閾値を設定するために利用される。
【0007】
血液サンプルがキャリブレーションの閾値を最適化するために必要な低濃度および高濃度の糖化ヘモグロビンを含む十分な数の患者を見つけることは、診断用キャリブレーターの低い閾値および高い閾値を設定するには効果的であるが、不可能ではなくても、非常に困難であることが多い。したがって、非常に低いもの(すなわち、約3%以下)から非常に高い(すなわち、約18%以上)糖化ヘモグロビンパーセントの臨床アッセイ範囲にわたる診断アッセイキャリブレーターを製造する改良された方法が必要とされている。本願で開示および特許請求された発明の概念は、このような方法、ならびにそれに関連する装置およびキットに関する。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】グルコースと結合したヘモグロビンサブユニットの概略図である。
図2】本願で開示および/または特許請求された発明の概念に従って、高糖化ヘモグロビンキャリブレーターを製造および/または調製するための方法論の非限定的な実施形態のフローチャートである。
図3】本願で開示および/または特許請求された発明の概念に従って、ヘモグロビンからのヘムの除去を介して高糖化ヘモグロビンキャリブレーターを製造および/または調製するための方法論の非限定的な実施形態のフローチャートである。
図4】本願で開示および/または特許請求された発明の概念に従って、合成フルクトシル-ペプチド基質を利用して高糖化ヘモグロビンキャリブレーターを製造および/または調製するための方法論の非限定的な実施形態のフローチャートである。
図5】本願で開示および/または特許請求された発明の概念に従って、過ヨウ素酸塩による糖化ヘモグロビンの化学修飾を介して、還元型および/または低糖化ヘモグロビンキャリブレーターを製造および/または調製するための方法論の非限定的な実施形態のフローチャートである。
図6】本願で開示および/または特許請求された発明の概念に従って、固相酵素の利用を介して還元および/または低糖化ヘモグロビンキャリブレーターを製造および/または調製するための方法論の非限定的な実施形態のフローチャートである。
図7】本願で開示および/または特許請求された発明の概念に従って、少なくとも1つの色素の利用を介して還元型および/または低糖化ヘモグロビンキャリブレーターを製造および/または調製するための方法論の非限定的な実施形態に関連する色素の吸光度スペクトルである。
図8】本願で開示および/または特許請求された発明の概念に従って、ヒトの血液および少なくとも1つの動物からの血液の混合を介して還元型および/または低糖化ヘモグロビンキャリブレーターを製造および/または調製するための方法論の非限定的な実施形態に関連する、ヒトおよび様々な動物のヘモグロビンβサブユニットのためのN末端アミノ酸配列の非網羅的なリストである。
【発明を実施するための形態】
【0009】
例示的な図面、実験、結果、および実験室での手順によって、本発明の概念の少なくとも1つの実施形態を詳細に説明する前に、本発明の概念は、その適用において、以下の説明に記載された、または図面、実験および/または結果に図示された構造の詳細および構成要素の配置に限定されないことを理解されたい。本発明の概念は、他の実施形態が可能であり、または、様々な方法で行うもしくは実施することができる。そのため、本明細書で使用される言語は、可能な限り広い範囲および意味を与えることを意図しており、実施形態は例示的なものであり、網羅的なものを意味するものではない。また、本明細書で採用される言い回しおよび用語は、説明のためのものであり、限定的なものとみなすべきではないことを理解されたい。
【0010】
本明細書で特に定義されていない限り、本願で開示および特許請求された発明の概念に関連して使用される科学的および技術的用語は、当業者によって一般的に理解される意味を持つべきものとする。さらに、文脈上特に必要とされない限り、単数形の用語は複数形を含み、複数形の用語は単数形を含むものとする。前述の技術および手順は、一般的に、本明細書全体を通して引用され、議論されている様々な一般的およびより具体的な文献に記載されている、当技術分野でよく知られている従来の方法に従って実施される。本明細書に記載されている分析化学、有機合成化学、ならびに医薬および製薬化学に関連して利用される命名法、ならびに実験の手順および技術は、当技術分野でよく知られ、一般的に使用されているものである。
【0011】
本明細書に記載されたすべての特許、公開特許出願、および非特許出版物は、本願で開示および特許請求された発明の概念に関連する技術分野における当業者の技術レベルを示すものである。本出願のいずれかの部分で参照されているすべての特許、公開特許出願、および非特許出版物は、個々の特許または出版物が参照により組み込まれることが具体的かつ個別に示されている場合と同程度に、その全体が参照により本明細書に明示的に組み込まれる。
【0012】
本願で開示および特許請求された装置、キット、および/または方法のすべては、本開示に照らして、過度の実験をすることなく製造および実行することができる。この本願で開示および特許請求された発明の概念の組成物および方法を好ましい実施形態の観点から説明しているが、本願で開示および特許請求された発明の概念の概念、精神および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載された組成物および/または方法、ならびにステップまたはステップの順序に変化を適用することができることは、当業者にとって明らかであろう。当業者にとって明らかなそのような類似の代替品および変更はすべて、添付の特許請求の範囲によって定義される発明の概念の精神、範囲、および概念の範囲内にあるものとみなされる。
【0013】
本開示に従って利用される場合、以下の用語は、特に明記されない限り、以下の意味を有すると理解されるものとする。
【0014】
特許請求の範囲および/または明細書において、「含む」という用語と組み合わせて使用される「a」または「an」という単語の使用は、「1つ」を意味してもよいが、「1つまたはそれ以上」、「少なくとも1つ」および「1つまたは1つ以上」の意味とも一致する。単数形の「a」、「an」および「the」は、文脈が明らかに別のことを示す場合を除き、複数の意味を含む。したがって、例えば、「化合物」という表現は、1つまたはそれ以上、2つまたはそれ以上、3つまたはそれ以上、4つまたはそれ以上、またはそれより多い数の化合物を指すことがありうる。また、「複数」という用語は、「2つまたはそれ以上」を意味する。特許請求の範囲における用語「または」の使用は、選択肢のみを示すことが明示的に示されているか、または選択肢が相互に排他的である場合を除き、「および/または」を意味するために使用されるが、本開示は、選択肢のみおよび「および/または」を意味する定義を支持する。本願では、「約」という用語は、数値を決定するために用いられる装置、方法に固有の誤差のばらつき、または研究対象間に存在するばらつきを含むことを示すために用いられる。例えば、限定されるわけではないが、「約」という用語が用いられる場合、指定された値は、開示された方法を実行するのに適切であり、当業者によって理解されているように、指定された値から±20%または±10%、または±5%、または±1%、または±0.1%の範囲で変動することがありうる。用語「少なくとも1つ」の使用は、1つだけでなく、2、3、4、5、10、15、20、30、40、50、100などを含むがこれらに限定されない、1つよりも多い任意の量を含むことが理解される。「少なくとも1つ」という用語は、それが付されている用語に応じて、100または1000またはそれ以上にまで拡張されうる。さらに、100/1000という量は、より高い限界でも満足のいく結果が得られることがありうるため、限定的なものとみなすべきではない。さらに、「X、YおよびZのうちの少なくとも1つ」という用語の使用は、X単独、Y単独、およびZ単独、ならびにX、YおよびZの任意の組み合わせを含むものと理解される。序数の用語(すなわち、「第1」、「第2」、「第3」、「第4」など)の使用は、2つまたはそれ以上の項目を区別することのみを目的としたものであり、例えば、ある項目の他ものに対する順序もしくは順番もしくは重要性、または追加の順番を意味するものではない。
【0015】
本明細書および特許請求の範囲で使用される用語「含む(comprising)」(および「含む(comprise)」および「含む(comprises)」などの含む(comprising)の任意の形式)、「有する(having)」(および「有する(have)」および「有する(has)」などの有する(having)の任意の形式)、「含む(including)」(および「含む(includes)」および「含む(include)」などの含む(including)の任意の形式)、または「含有する(containing)」(および「含有する(contains)」および「含有する(contain)」などの含有する(containing)の任意の形式)は、包括的または無制限であり、追加の記載されていない要素または方法のステップを除外するものではない。
【0016】
本明細書で使用される「またはそれらの組み合わせ」という用語は、その用語に先行して列記された項目のすべての順列および組み合わせを意味する。例えば、「A、B、C、またはそれらの組み合わせ」は、A、B、C、AB、AC、BC、またはABC、また特定の文脈で順序が重要な場合には、BA、CA、CB、CBA、BCA、ACB、BAC、またはCABの少なくとも1つを含むことを意図している。この例に続いて、BB、AAA、AAB、BBC、AAABCCCC、CBBAAA、CABABBなど、1つまたはそれ以上の項目または用語の繰り返しを含有する組み合わせが明示的に含まれる。当業者は、文脈から明らかでない限り、典型的には、任意の組み合わせにおける項目または用語の数に制限がないことを理解するであろう。
【0017】
本明細書で使用される場合、「実質的に」という用語は、その後に記載された事象もしくは状況が完全に起こること、またはその後に記載された事象もしくは状況が大部分もしくはかなりの程度まで起こることを意味する。例えば、「実質的に」という用語は、その後に記載された事象または状況が、少なくとも90%の確率で起こること、または少なくとも95%の確率で起こること、または少なくとも98%の確率で起こることを意味する。
【0018】
本明細書で使用される場合、「と会合する」という語句は、2つの部分の互いに直接的な会合だけでなく、2つの部位の互いの間接的な会合の両方を含む。会合の非限定的な例としては、直接的な結合またはスペーサー基を介しての一方の部位の他方の部位への共有結合、直接的または部位に結合した特定の結合対メンバーによる一方の部位の他方の部位への非共有結合、一方の部位を他方の部位に溶解させるかまたは合成するなどにより一方の部位を他方の部位に組み込むこと、および一方の部位を他方の部位にコーティングすることなどが含まれる。
【0019】
本明細書で使用される「目的の分析物」という用語は、少なくとも1つの診断アッセイを介して患者の液体試験サンプル中で検出されることが使用者によって望まれる任意の物質、化合物、分子、化学物質、および/またはタンパク質のことである。本願で開示および/または特許請求された発明の概念の非限定的な一実施形態では、目的の分析物は、総ヘモグロビン、糖化ヘモグロビン、およびそれらの組み合わせを含むか、またはそれらからなる。
【0020】
本明細書で使用される「液体試験サンプル」という用語は、本願で開示および特許請求された発明の概念に従って利用され得る任意のタイプの生物学的流体サンプルを含むことが理解されるであろう。利用可能でありうる生物学的サンプルの例には、全血またはそのいずれか一部が含まれるが、それらに限定されない。本明細書で使用される場合、本願で開示および特許請求された発明の概念に従って利用される液体試験サンプルに関する用語「体積」は、約0.1マイクロリットルから約100マイクロリットルまで、または約1マイクロリットルから約75マイクロリットルまで、または約2マイクロリットルから約60マイクロリットルまで、または約50マイクロリットル以下を意味する。本願で開示および/または特許請求された発明の概念の1つの非限定的な実施形態では、液体試験サンプルは、全血の体積である。
【0021】
用語「患者」は、ヒトおよび獣医学的対象を含む。特定の実施形態では、患者は哺乳動物である。他の特定の実施形態では、患者はヒトである。処置の目的のための「哺乳動物」は、ヒト、飼育動物および家畜、ヒト以外の霊長類、および動物園、競技会、または愛玩動物、例えばイヌ、ウマ、ネコ、ウシなどを含む、哺乳動物として分類される任意の動物を指す。
【0022】
ここで特定の実施形態に目を向けると、本願で開示および特許請求された発明の概念は、分析物検出アッセイで使用するための少なくとも2つの液体試薬を分注するための装置、キット、および方法に関する。より具体的には、本明細書で開示され、特許請求された発明の概念は、分析物検出アッセイで使用するための少なくとも2つの液体試薬を分注することができる反応カセット内に存在する改良された装置、ならびにそれに関連するキットおよび使用方法に関する。
【0023】
生物学的、化学的、または生化学的な分析およびアッセイの分野で使用される事実上あらゆる試薬が、本願で特許請求および開示された発明の概念の装置、キット、および方法で使用され得ることが企図されている。これらの試薬は目的の分析物と結合したときに物理的および/または化学的変化を起こし、それにより試薬-分析物複合体によって生成される信号の強度、性質、周波数、または種類が、流体サンプル内に存在する分析物の濃度に正比例または反比例することが考えられる。これらの試薬には、目的の分析物と反応したときに色の変化を示すことができる、指標色素、金属、酵素、ポリマー、抗体、および電気化学的反応性成分および/または化学物質が含まれうる。
【0024】
液体試験サンプル中の分析物を検出および測定する任意の方法は、本願で特許請求された発明の概念の装置、キット、および方法に使用することができる。分析物を検出するための様々なアッセイが当技術分野でよく知られており、化学アッセイ、酵素阻害アッセイ、抗体染色、ラテックス凝集、ラテックス凝集阻害、およびイムノアッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ、化学発光イムノアッセイ、電気化学発光イムノアッセイ、酵素イムノアッセイ、および蛍光イムノアッセイが含まれるが、これらに限定されない。本明細書において「抗体」という用語は、最も広い意味で使用され、例えば、インタクトなモノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、多特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、および所望の生物学的活性(例えば、抗原/分析物-結合)を示す抗体断片を指す。抗体は、任意のタイプまたはクラス(例えば、IgG、IgE、IgM、IgD、およびIgA)もしくはサブクラス(例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2)のものであり得る。
【0025】
イムノアッセイ(系列分析化学およびイムノアッセイを含むが、これらに限定されない)は、液体試験サンプル中に存在する少なくとも1つの目的の分析物を検出するために利用することができるが、当業者であれば、本願で開示および特許請求された発明の概念は、厳密にはイムノアッセイに限定されず、例として、限定されるわけではないが、化学および化学ベースのアッセイ、核酸アッセイ、脂質ベースのアッセイ、ならびに血清学ベースのアッセイを含むことができることを容易に理解するべきである。ラジオイムノアッセイおよび酵素結合イムノアッセイを含むイムノアッセイは、本願で特許請求および開示された発明の概念で使用するための有用な方法である。例えば、競合的および非競合的イムノアッセイフォーマット、抗原/分析物捕捉アッセイおよび2抗体サンドイッチアッセイを含む様々なイムノアッセイフォーマットが本発明の方法に使用できる。酵素結合免疫吸着アッセイ(ELISA)およびフェニルボロナートアフィニティ法も、本願で特許請求および開示された発明の概念において使用することができる。酵素イムノアッセイの場合、酵素は、一般的に、グルタルアルデヒド、過ヨウ素酸塩、ヘテロ二官能性架橋剤、またはビオチン-ストレプトアビジン複合体を用いて、典型的には少なくとも1つの抗体に結合される。しかし、容易に認識されるように、多種多様な異なる結合技術が存在し、当業者にとっては、本願で開示および特許請求された発明の概念に使用するために容易に利用可能である。
【0026】
イムノアッセイ、核酸捕捉アッセイ、脂質ベースのアッセイ、および血清学ベースのアッセイを含むがこれらに限定されないアッセイは、液体試験サンプル内に含まれ得るタンパク質、ペプチド、脂質、薬物、および核酸の多重化パネルについて開発することができ、このようなタンパク質およびペプチドには、例えば、アルブミン、微量アルブミン、コレステロール、トリグリセリド、高密度リポタンパク質、低密度リポタンパク質、ヘモグロビン、ミオグロビン、α-1-ミクログロビン、免疫グロブリン、酵素、タンパク質、糖タンパク質、プロテアーゼインヒビター、薬物、サイトカイン、クレアチニン、グルコースが含まれるが、これらに限定されるものではない。本明細書で開示および/または特許請求された装置、キット、および方法は、全血、血漿、血清、または尿を含むがこれらに限定されない、任意の流体試料の分析に使用することができる。
【0027】
糖化ヘモグロビン(Hb1Ac)は、主に一定期間にわたって患者の液体試験サンプル(例えば、患者の全血サンプル)中に存在する平均グルコース濃度を特定するために測定されるヘモグロビンの形態である。糖化ヘモグロビンは、ヘモグロビンが血漿グルコースにさらされることで生じる非酵素的な機構によって形成される。グルコースの平均量が時間とともに増加すると、糖化ヘモグロビンのパーセントも増加する。この関係により、糖化ヘモグロビンは、ヘモグロビン検体採取前の(通常)2~3ヶ月間にわたる患者の平均血糖値のマーカーとして役立つことができる。糖尿病でない人に関して、糖化ヘモグロビンの正常範囲は、総ヘモグロビン数の約5.6%未満である。総ヘモグロビン数の5.6%より高く、約6.4%未満の糖化ヘモグロビンレベルは、糖尿病のリスクが高まっていることを示し、総ヘモグロビン数の約6.4%より高い糖化ヘモグロビンレベルは、糖尿病の存在を示唆している。糖尿病の存在によって引き起こされる合併症が深刻であるため、この疾患を患っている患者では、糖化ヘモグロビンレベルを総ヘモグロビン数の約7%未満に管理することが臨床的に望ましい。糖尿病および糖尿病予備軍の診断基準として糖化ヘモグロビンを使用することは、空腹時血糖値または経口ブドウ糖負荷のいずれかと比較して、(i)全体的な血糖曝露のより良好な指標、(ii)増加した構造的安定性、(iii)例えば、食前の状態および/または急性ストレスによる少ない変動を含むいくつかの利点を提供する。
【0028】
糖化ヘモグロビンは、ヘモグロビンのβサブユニットのN末端のバリン残基が血中グルコースによって修飾されたタンパク質分子である。図1により詳細に示すように、この修飾は、例えば、グルコースが遊離α-基と非酵素的に反応し、シッフケース中間体(アルジミン)を通して進行して、比較的安定なケトアミン生成物を生成する結果である。
【0029】
患者の血液サンプル中に存在する糖化ヘモグロビンを測定するアッセイは、得られた結果が臨床的に正確であることを保証するために,定期的なキャリブレーションを必要とする。キャリブレーターは、診断手順および/または機器の標準化またはキャリブレーションに使用される、既知濃度の標準または参照物質である。コントロール物質は、診断アッセイ手順および/または機器が正しく動作していることを保証するために使用される。
【0030】
キャリブレーターおよび/またはキャリブレーション物質は、典型的には、事前に定めたられた間隔で、また診断アッセイ装置に変化および/または変更があったとき、単なる例として、装置の修理中、試薬のロットが変更されたとき、または診断アッセイから得られた結果が疑わしい、および/または臨床範囲外であると思われるときなどにいつでも実行される。目的の分析物を同定するための診断アッセイの性能は、キャリブレーターおよび/またはキャリブレーション物質を分析し、次いで試験サンプルから得られた観測値をキャリブレーターおよび/またはキャリブレーション物質の既知の値と比較することによって、監視および/または計算することができる。既知の値とは、キャリブレーターおよび/またはキャリブレーション物質の許容値および/または上限および/または下限の範囲によって示される。少なくとも1つの診断アッセイの実施に起因する患者の液体試験サンプルから得られた値がコントロール限界内にある場合、使用者は分析方法および/または診断アッセイから得られた結果が適切に機能していることを保証することができる。しかし、観察された結果がコントロール限界を外れた場合には、得られた分析結果が不正確である可能性があることを使用者に警告する必要がある。キャリブレーター、キャリブレーション物質、およびコントロールを調製するとき、そのようなキャリブレーター、キャリブレーション物質、およびコントロールは、診断手順および/または機器の信頼性を監視し、誤った試験結果の報告を排除しないまでも最小限にするために使用されるので、試験にかける試料にできるだけ近い組成であるべきである。
【0031】
本明細書で前述したように、本願で開示および/または特許請求された発明の概念の一態様には、患者の液体試験サンプル中に存在する糖化ヘモグロビンパーセントを決定するためのキャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールを調製するための改良された方法、ならびにキャリブレーションの改良された方法が含まれる。このような改良されたキャリブレーターおよびそれに関連する方法は、非常に低いもの(単なる例として、約3%以下の糖化ヘモグロビンなど)から非常に高い(単なる例として、約18%以上の糖化ヘモグロビンなど)糖化ヘモグロビンパーセントの臨床アッセイにわたる診断アッセイ手順および/または機器のキャリブレーションを可能にする。
【0032】
本願で開示および/または特許請求された発明の概念の1つの非限定的な実施形態では、患者の液体試験サンプル中に存在する糖化ヘモグロビンのパーセントは、患者の液体試験サンプルの少なくとも2つの診断アッセイ測定値、例えば、総ヘモグロビン濃度および糖化ヘモグロビン濃度を取ることによって計算される。糖化ヘモグロビンのパーセントは、糖化ヘモグロビン濃度を総ヘモグロビン濃度で割って100%をかけた比率として計算される。
【0033】
患者の液体試験サンプル中の糖化ヘモグロビンパーセントを計算するためには、総ヘモグロビンおよび糖化ヘモグロビン成分の濃度を決定しなければならない。したがって、本願で開示および/または特許請求された発明の概念の一態様は、総ヘモグロビンおよび/または糖化ヘモグロビンのキャリブレーションおよび計算のための、キャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールの生成および/または調製、ならびにそれらに関連する方法を含み、かつ/またはそれらからなる。
【0034】
高レベルの糖化ヘモグロビンパーセントをキャリブレーションするためのキャリブレーター、キャリブレーター物質、および/またはコントロール物質の生成に関する、本願で開示された発明の概念の非限定的な実施形態。
【0035】
図2に示すように、本願で開示および/または特許請求された発明の概念の1つの非限定的な実施形態では、生体外の血液サンプル中に存在する糖化ヘモグロビン、または部分的もしくは完全に精製されたヘモグロビンを、高濃度の外因性グルコース(すなわち、約200mMを超えるグルコース)と反応させて、例えば、シッフ塩基中間体を生成する。続いて、シッフ塩基中間体を還元剤(例として挙げるだけであるが、水素化ホウ素ナトリウムおよび/またはシアノ水素化ホウ素ナトリウムなど)で還元して、最大で約25%糖化ヘモグロビンを含むが、これに限定されない多量および/または高濃度の糖化ヘモグロビンが生成される。次いで、上昇した濃度の糖化ヘモグロビンを含む物質をヒトの血液に補充して糖化ヘモグロビン濃度を上昇させ、これを利用して、キャリブレーター、キャリブレーター物質、および/またはコントロールの糖化ヘモグロビンの上方閾値が設定される。
【0036】
本願で開示および/または特許請求された発明の概念の別の非限定的な実施形態では、図3に示すように、ヘモグロビンのタンパク質構造は、それぞれがヘム基(ヘモグロビンの非タンパク質部分を形成するポルフィリンクラスの着色された鉄含有化合物)に結合した鉄原子を含む4つのサブユニット(2つのαおよび2つのβ)を含む。ヒトのアポヘモグロビン(ヘモグロビンのアポタンパク質、すなわち共役ヘモグロビンタンパク質のポリペプチド部分)が生成され、これは無色であり、糖化アポヘモグロビンを含む。ヘム基は、当技術分野で一般的に知られている任意の方法、例えば、単なる例として、冷酸性アセトンでヘモグロビンを沈殿させ、その後、続いて緩衝液中で沈殿物を透析する方法によりアポヘモグロビン生成物から除去することができる。部分糖化アポヘモグロビンを、ヘモグロビンを含むキャリブレーター、キャリブレーター物質、および/またはコントロールに添加すると、診断アッセイにおいて総ヘモグロビンによって生成されるシグナルが減少するため、診断アッセイによって測定される糖化ヘモグロビンが増加する。したがって、キャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロール中に存在する糖化ヘモグロビンの上方閾値を定量化し、ヘモグロビン関連の診断アッセイを実施するために設定することができる。
【0037】
次に図4を参照すると、そこに示されているのは、フルクトシルペプチドオキシダーゼを使用する酵素アッセイのための糖化ヘモグロビンキャリブレーション物質および/またはコントロールを製造する方法の非限定的な実施形態である。単なる例として、合成フルクトシルペプチド(非限定的な一実施形態では、配列がヒトβサブユニットのN末端に由来する)は、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼの基質として使用される。いくつかの糖化ヘモグロビン酵素ベースの検出アッセイは、フルクトシルアミノ酸オキシダーゼ(本明細書では、フルクトシルペプチドオキシダーゼまたはFPOXとも呼ばれる)を利用する。これらの酵素ベースの検出アッセイは、特に、迅速かつ再現性があるため、有利であり、望ましい。
【0038】
FPOXは、フルクトシル含有アミノ酸のフルクトシル部分のC1とアミノ基の窒素とをつなぐ炭素-窒素結合の酸化を触媒する。この反応により、不安定なシッフ塩基中間体に進み、加水分解によりグルコソンならびにアミノ酸および/またはペプチドを生成する。次いで、FPOXの還元型フラビンアデニンジヌクレオチド(FAD)補因子は、溶液中の分子状酸素によって再酸化され、過酸化水素が放出されることになる。
【0039】
FPOXを利用して糖化ヘモグロビンの濃度を測定する現在の方法は、3ステップのプロセスを用いる。まず、ヘモグロビンをタンパク質分解的に消化する。次に、FPOX酵素をフルクトシル化ペプチドと反応させて、グルコソン、アミノ酸および過酸化水素を生成する。最後のステップには、過酸化水素と基質を反応させて着色した生成物を得て、それを分光光度計で測定することが含まれる。
【0040】
本明細書で既に開示したように、FPOXは、患者の血液サンプル中に存在する糖化ヘモグロビンの濃度を測定および/または検出するため用いることができる。本願で開示および/または特許請求された発明の概念の1つの非限定的な実施形態において、フルクトシルペプチドは、前述のFPOX反応のための基質としてタンパク質分解ヘモグロビンに部分的に置換される。糖化ヘモグロビンキャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールを調製するための物質として糖化ヘモグロビンを使用することにより、(ヘモグロビンのタンパク質分解を介して)N末端の糖化ペプチドをFPOXに提供し、過酸化水素の生成のための基質として働く。合成基質を利用することにより、総ヘモグロビン含量に影響を与えることなく、見かけの糖化ヘモグロビン濃度が上昇し、それにより、キャリブレーター、キャリブレーター物質、および/またはコントロール内の上方閾値として使用するため測定された糖化ヘモグロビンのパーセントが増加する。
【0041】
合成基質に関して、非限定的な一実施形態では、合成基質は、フルクトシル-バリンおよび/またはフルクトシル-バリン-Xを含む、および/またはからなってもよく、ここで、Xは、約2アミノ酸から約10アミノ酸を含む、および/またはそれらからなる短いペプチドである。非限定的な一実施形態では、ペプチド配列Xは、ヒトヘモグロビンβ鎖のN末端配列(単なる例として、NH-Val-His-Leu-Thr-Pro-Glu-Glu-Lys-Ser-など)に類似している。しかしながら、当業者であれば、ペプチド配列Xは、フルクトシル-ペプチドがFPOXの有効な基質として働き、かつ/または機能することを可能にする任意の配列を含み、かつ/またはそれらからなってもよいことを容易に理解できるはずである。したがって、この方法論によって作成されたキャリブレーター物質は、総ヘモグロビンを測定するのに必要なヘモグロビンとペプチド基質との組み合わせを含み、かつ/またはそれらからなる。
【0042】
低レベルの糖化ヘモグロビンパーセントをキャリブレーションするためのキャリブレーター、キャリブレーター物質、および/またはコントロール物質を調製するために本願で開示された発明の概念の非限定的な実施形態。
【0043】
図5に示すように、本願で開示および/または特許請求された発明の概念の1つの非限定的な実施形態では、ヘモグロビンβ鎖のN末端のフルクトースを化学的に修飾することによって、低レベルの糖化ヘモグロビンパーセントを含むキャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールが作成される(限定されるわけではないが、約0%の糖化ヘモグロビンパーセントレベルを含む)。限定されるわけではないが、例として、低レベルの糖化ヘモグロビンパーセントは、約0%から約4%まで、または約0.5%から約3.5%まで、または約1%から約3%まで、または約1.5%から約2.5%まで、または約2%以下の範囲を含み、かつ/またはそれらからなる。修飾後、ヘモグロビンに結合したフルクトースは化学的に変化し、糖化ヘモグロビン抗体またはFPOXまたはフェニルボロナート基によって認識されなくなる。少なくとも1つの酸化剤、例えば、単なる例として、過ヨウ素酸塩により糖化ヘモグロビンを酸化した後、中和剤、例えば、単なる例としてエチレングリコールの添加により反応を停止(quench)させることができる。反応を停止した後、低分子量の物質を除去するために、当技術分野で一般的に知られている方法で混合物を透析または脱塩することができる。
【0044】
次に図6を参照すると、そこに示されているのは、患者の液体試験サンプル中に存在する低レベルの糖化ヘモグロビンを含む、および/または検出することができるキャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールを製造するための方法の非限定的な実施形態である。この方法では、溶血血液(赤血球の溶解/破裂によって生じる生成物)中のヘモグロビンβサブユニットを残基2と3との間でタンパク質分解するFPOX酵素を固相(例えば、磁気ビーズなど)に結合させる。次いで、低分子量のフルクトシル-Val-His-NHを当技術分野で一般的に知られている透析または脱塩方法により除去する。FPOX結合ビーズを、続いて、単なる例として1つまたはそれ以上の磁石により除去する。タンパク質分解的に切断されたヘモグロビンを、次いで、単なる例として、ヘモグロビンパーセントが約4%から約6.5%まで、または約4.5%から約6%まで、または約5%から約5.5%まで、または約5.25%以下の範囲を含み、かつ/またはそれらからなるヘモグロビンの通常の調製物を含む、ヘモグロビンの通常の調製物に添加する。その結果、ヘモグロビンの総濃度は同じままであるが、糖化ヘモグロビンの濃度は減少する。
【0045】
本願で開示および/または特許請求された発明の概念の別の非限定的な実施形態では、キャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールを、所望のスペクトルプロファイル、例えば、単なる例として、約400ナノメートルから約700ナノメートルまでのスペクトル範囲における吸光度を有する、少なくとも1つの色素または色素の組み合わせと配合してもよい。糖化ヘモグロビンパーセントアッセイに関しては、少なくとも1つの色素は、アッセイにおいて総ヘモグロビンを測定するための波長で吸収するが、糖化ヘモグロビンまたはアッセイブランクのいずれかを測定するための波長では吸収しない。適した色素には、単なる例として、QCR Solution Corp.から販売されているVIS423Aおよび/またはVIS433Aが含まれるがこれらに限定されない、上記の基準を満たす色素が含まれる。例えば、図7に示すように、総ヘモグロビンは、少なくとも1つの色素によって吸収される波長、約405ナノメートルで測定される。しかし、少なくとも1つの色素は、糖化ヘモグロビンの測定に用いられる約340ナノメートまたはアッセイのブランクに用いられる約700ナノメートルでは吸収されない。この方法論では、総ヘモグロビンの読み取りが高くなり、糖化ヘモグロビンの読み取りが正常になるため、低い糖化ヘモグロビンパーセント値となる(すなわち、糖化ヘモグロビンの値が約4%未満になる)。
【0046】
本願で開示および/または特許請求された発明の概念の別の非限定的な実施形態では、低糖化ヘモグロビンパーセント閾値を検出および/またはキャリブレーションするためのキャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールは、動物(単なる例として、ヒツジ、ウシ、ヤギ、ウマ、ブタ、およびそれらの組み合わせなど)の血液をヒトの血液と混合することによって調製してもよい。イムノアッセイを用いる場合、選択された動物の血液は、イムノアッセイで使用される、糖化ヘモグロビンβサブユニットのN末端に結合する抗糖化ヘモグロビン抗体と交差反応するN末端アミノ酸配列を有してはならない。本願で開示および/または特許請求された発明の概念に従って利用される例示的なアミノ酸配列の非限定的なリストは、図8に詳述されている。この方法論は、ほぼ正常な総ヘモグロビンアッセイ結果(すなわち、約4%から約5.6%までの糖化ヘモグロビン)および低い糖化ヘモグロビン結果(すなわち、約4%未満の糖化ヘモグロビン)をもたらし、それによって低い糖化ヘモグロビンパーセント値をもたらす。
【0047】
本願で開示および/または特許請求された発明の概念の別の非限定的な実施形態では、低糖化ヘモグロビンパーセント閾値を検出および/またはキャリブレーションするためのキャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールは、単なる例として、陽イオン交換クロマトグラフィーおよび/またはボロナートアフィニティークロマトグラフィーなどの技術を用いて、血液サンプル中の総ヘモグロビンから糖化ヘモグロビンの一部または全部を枯渇させることによって調製してもよい。得られた生成物は、正常な量の総ヘモグロビンを含み、糖化ヘモグロビンの濃度が低減されており、それにより、本明細書の他の箇所に記載されているように、低い糖化ヘモグロビンパーセント値となる。
【0048】
本願で開示および/または特許請求された発明の概念に従って作成されたキャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールは、以下を含むがこれらに限定されない明確な利点を提供する。(i)非常に低いまたは非常に高い糖化ヘモグロビンパーセントを有するキャリブレーターを調製することができる;(ii)本願で開示および/または特許請求された方法論(キャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールの調製、ならびにアッセイのキャリブレーション方法を含むが、これらに限定されない)により、そのようなキャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールにおける糖化ヘモグロビンレベルのパーセントを、ヒトの血液中に見出されるパーセントヘモグロビンの最低値および/または最高値と等しくすることができる;(iii)本願で開示および/または特許請求された方法論は、既存のアッセイフォーマットを変更する必要がない;および(iv)非常に低いまたは非常に高い糖化ヘモグロビンパーセント含有量を有する血液検体(これは発見および入手が困難でありうる)を探す必要がない。
【0049】
本発明の概念の非限定的な例
分析物検出アッセイ装置で使用するための少なくとも2つのキャリブレーターを含むキャリブレーションシステムを準備する方法であって、以下のステップを含む方法:
第1のキャリブレーターを調製するステップであって、該第1のキャリブレーターは、患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の第1の濃度を有し、該第1の濃度は、該患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の平均閾値濃度よりも高い、ステップと;第2のキャリブレーターを調製するステップであって、該第2のキャリブレーターは、該患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の第2の濃度を有し、該第2の濃度は、該患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の平均閾値濃度よりも低い、ステップとを含む方法。
【0050】
患者の液体試験サンプルが全血である、方法。
【0051】
目的の分析物が、総ヘモグロビン、糖化ヘモグロビン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0052】
糖化ヘモグロビンの平均閾値濃度が、患者の液体試験サンプル中に存在する総ヘモグロビンの濃度の約4%から約8%までである、方法。
【0053】
糖化ヘモグロビンの第1の濃度が、約8.1%以上である、方法。
【0054】
糖化ヘモグロビンの第2の濃度が、約3.9%以下である、方法。
【0055】
第1のキャリブレーターの第1の濃度が、グルコースの添加および反応、ヘムの除去、合成フルクトシル-ペプチド基質を介した修飾、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって、糖化ヘモグロビンの平均閾値濃度よりも上に増加される、方法。
【0056】
合成ペプチドがN末端フルクトシルペプチドである、方法。
【0057】
第2のキャリブレーターの第2の濃度が、化学修飾、少なくとも1つの固相結合酵素の利用、少なくとも1つの色素の利用、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される方法によって、糖化ヘモグロビンの平均閾値濃度より下に減少されることを、方法。
【0058】
化学修飾が、過ヨウ素酸による糖化ヘモグロビンの酸化を含む、方法。
【0059】
少なくとも1つの固相結合酵素が、磁気ビーズに結合したフルクトシルペプチドオキシダーゼを含む、方法。
【0060】
キャリブレーションシステムを利用して少なくとも1つの診断アッセイをキャリブレーションする方法であって、
少なくとも診断アッセイを実施するための診断アッセイ機器内に存在するキャリブレーションシステムを利用して少なくとも2回のキャリブレーション測定を行うステップであって、該キャリブレーションシステムは、第1のキャリブレーターであって、該第1のキャリブレーターは、患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の第1の濃度を有し、該第1の濃度は、該患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の平均閾値濃度よりも高い、第1のキャリブレーター;および第2のキャリブレーターであって、該第2のキャリブレーターは、患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の第2の濃度を有し、該第2の濃度は、患者の液体試験サンプル中に存在する目的の分析物の平均閾値濃度よりも低い、第2のキャリブレーターを含む、ステップと;少なくとも2回の測定から得た値を利用してキャリブレーション曲線を計算するステップと;少なくとも1回の診断アッセイの実施から得られた結果の正確性を決定するために、第1の濃度および第2の濃度に対する数値を確立するステップとを含む、方法。
【0061】
患者の液体試験サンプルが全血である、方法。
【0062】
目的の分析物が、総ヘモグロビン、糖化ヘモグロビン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、方法。
【0063】
糖化ヘモグロビンの平均閾値濃度が、患者の液体試験サンプル中に存在する総ヘモグロビンの濃度の約4%から約8%までである、方法。
【0064】
糖化ヘモグロビンの第1の濃度が約8.1%以上である、方法。
【0065】
糖化ヘモグロビンの第2の濃度が、約3.9%未満である、方法。
【0066】
このように、本願で開示および請求された発明の概念に従って、少なくとも1つの診断アッセイをキャリブレーションするために使用されるキャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールを調製するための方法が提供されている。本明細書に記載されているように、本願で開示および請求された発明の概念は、非常に低いもの(すなわち、約3%以下)から非常に高い(すなわち、約18%以上)糖化ヘモグロビンパーセントの臨床アッセイ範囲に及ぶ診断アッセイのキャリブレーター、キャリブレーション物質、および/またはコントロールを製造するための改良された方法の実施形態、ならびにそれに関連するキット、装置、および使用方法に関する。したがって、本願で開示および/または特許請求された発明の概念は、本明細書に記載された目的および利点を十分に満たしている。本願で開示および請求された発明の概念を、本明細書に記載された特定の図面、実験、結果、および言語と併せて説明してきたが、多くの代替案、改変、および変更が当業者にとって明らかであるは明白である。したがって、本発明は、本願で開示および請求された発明の概念の精神および広い範囲内にある、すべてのそのような代替案、改変、および変更を包含することを意図している。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】