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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-27
(54)【発明の名称】軟磁性金属材料の処理方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 8/74 20060101AFI20220120BHJP
   C23C 8/24 20060101ALI20220120BHJP
【FI】
C23C8/74
C23C8/24
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021551328
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(85)【翻訳文提出日】2021-06-21
(86)【国際出願番号】 CN2019117840
(87)【国際公開番号】W WO2020098667
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】201811355733.1
(32)【優先日】2018-11-14
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910125908.8
(32)【優先日】2019-02-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201910221888.4
(32)【優先日】2019-03-22
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521206176
【氏名又は名称】王静然
【氏名又は名称原語表記】WANG, Jingran
【住所又は居所原語表記】Room 102, Unit 2, Building 18,West of Baiwangjiayuan, Haidian Beijing 100193 CN
(71)【出願人】
【識別番号】521206187
【氏名又は名称】王佳皓
【氏名又は名称原語表記】WANG, Jiahao
【住所又は居所原語表記】Room 102, Unit 2, Building 18,West of Baiwangjiayuan, Haidian Beijing 100193 CN
(71)【出願人】
【識別番号】521206198
【氏名又は名称】王佳▲フイ▼
【氏名又は名称原語表記】WANG, Jiahui
【住所又は居所原語表記】Room 102, Unit 2, Building 18,West of Baiwangjiayuan, Haidian Beijing 100193 CN
(74)【代理人】
【識別番号】100169904
【弁理士】
【氏名又は名称】村井 康司
(74)【代理人】
【識別番号】100132698
【弁理士】
【氏名又は名称】川分 康博
(72)【発明者】
【氏名】王静然
【テーマコード(参考)】
4K028
【Fターム(参考)】
4K028AA01
4K028AA02
4K028AA03
4K028AB01
4K028AB02
4K028AB06
4K028AC03
4K028AC07
(57)【要約】
金属材料の分野に属する軟磁性金属材料の処理方法を開示する。
当該処理方法は、熱処理プロセスによって、軟磁性金属材料に対して表面処理剤を浸透させて、前記軟磁性金属材料の磁気誘導強度を増加させることを含み、ここで、表面処理剤は、炭素および/または窒素を含み、軟磁性金属材料は、アモルファス材料、ナノ結晶、ケイ素鋼または純鉄である。当該処理方法を利用することで、軟磁性金属材料の磁気誘導強度を効率的に向上させることができ、電力分野への軟磁性金属材料の応用に大きなメリットをもたらすことができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理プロセスによって、軟磁性金属材料に対して表面処理剤を浸透させて、前記軟磁性金属材料の磁気誘導強度を増加させることを含み、
ここで、前記表面処理剤は、炭素および/または窒素を含み、
前記軟磁性金属材料は、アモルファス材料、ナノ結晶、ケイ素鋼または純鉄である、
軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項2】
前記アモルファス材料は、鉄基アモルファス材料またはコバルト基アモルファス材料であり、
前記ナノ結晶は、鉄基ナノ結晶である、
請求項1に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項3】
前記軟磁性金属材料は、いずれもシート状構造である請求項1に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項4】
前記アモルファス材料は、アモルファスリボンであり、
前記ナノ結晶は、ナノ結晶リボンであり、
前記ケイ素鋼は、ケイ素鋼リボンである、
請求項3に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項5】
前記軟磁性金属材料は、いずれも粉末状構造である請求項1に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項6】
前記表面処理剤は、炭素源であり、前記軟磁性金属材料に対して前記炭素源を利用して浸炭処理を行う請求項1に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項7】
前記表面処理剤は、浸炭促進剤をさらに含む請求項6に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項8】
前記表面処理剤は、トナーおよび/またはグラファイトパウダーをさらに含む請求項7に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項9】
前記表面処理剤は、浸炭窒化剤であり、前記軟磁性金属材料に対して前記浸炭窒化剤を利用して浸炭窒化処理を行う請求項1に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項10】
前記浸炭窒化剤は、炭素源と窒素源とを含む混合物である請求項9に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項11】
前記炭素源は、油脂系炭素源または樹脂系炭素源であり、
前記窒素源は、アンモニア系窒素源またはアミン系窒素源である、
請求項10に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項12】
前記炭素源は、トナーおよび/またはグラファイトパウダーをさらに含む請求項11に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項13】
前記浸炭窒化剤は、炭素と窒素とを含む有機物である請求項9に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項14】
熱処理を行う前に、前記炭素源は、コーティングプロセスによって前記軟磁性金属材料の表面に置かれる請求項6に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項15】
熱処理を行う前に、前記炭素源は、真空含浸プロセスによって前記軟磁性金属材料の表面に置かれる請求項6に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項16】
熱処理を行う際に、前記軟磁性金属材料を前記炭素源に浸漬させる請求項6に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項17】
熱処理を行う前に、前記炭素源を前記軟磁性金属材料の表面に置いて、この後、前記熱処理を行う際に、ガス状態の前記窒素源を導入する請求項10に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項18】
コーティング、点滴または真空含浸プロセスによって、前記炭素源を前記軟磁性金属材料の表面に置かせる請求項17に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項19】
熱処理を行う際に、前記軟磁性金属材料を液体状態の前記炭素源に浸漬し、この後、ガス状態の前記窒素源を導入する請求項10に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【請求項20】
熱処理を行う際に、熱処理温度は、200℃~1000℃であり、
熱処理時間は、5分間以上である、
請求項1から19の何れか一項に記載の軟磁性金属材料の処理方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2018年11月14日に提出された出願番号201811355733.1、発明名称「アモルファスリボンの処理方法」、2019年02月20日に提出された出願番号201910125908.8、発明名称「アモルファス材料及びナノ結晶の処理方法」、及び2019年03月22日に提出された出願番号201910221888.4、発明名称「ケイ素鋼の処理方法」の中国特許出願の優先権を主張し、その全ての内容は参照により本明細書に援用する。
【0002】
本発明は、金属材料の分野に関し、特に軟磁性金属材料の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0003】
アモルファス材料、ナノ結晶、ケイ素鋼、純鉄粉末またはそれらの混合体などの軟磁性金属材料は、電力分野に広く使われ、特に、アモルファスリボンは、例えばモータや変圧器などの電気機器に応用でき、損失を著しく低減することができる。ここで、アモルファス材料に対して熱処理を行うと、ナノ結晶を形成することができ、アモルファス材料及びナノ結晶の内部の原子配置が不規則状態になる。
【0004】
しかしながら、以上の軟磁性金属材料の磁気誘導強度(通常は記号Bで表され、B値と簡単に呼ばれる)は低く、電気機器に使用される場合、より高い磁気誘導強度を得るために、それらの使用量を増やす必要があり、同時にコストも高くなり、この結果、電力分野でのそれらの応用が制限される。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の実施例は、軟磁性金属材料の磁気誘導強度が低いという問題を解決するための軟磁性金属材料の処理方法を提供する。技術案は以下の通りである。
【0006】
熱処理プロセスによって、軟磁性金属材料に対して表面処理剤を浸透させて、前記軟磁性金属材料の磁気誘導強度を増加させることを含み、
ここで、前記表面処理剤は、炭素および/または窒素を含み、
前記軟磁性金属材料は、アモルファス材料、ナノ結晶、ケイ素鋼または純鉄である、
軟磁性金属材料の処理方法に関する。
【0007】
1つの可能な実施形態において、前記アモルファス材料は、鉄基アモルファス材料またはコバルト基アモルファス材料であり、
前記ナノ結晶は、鉄基ナノ結晶である。
【0008】
1つの可能な実施形態において、前記軟磁性金属材料は、いずれもシート状構造である。
【0009】
1つの可能な実施形態において、前記アモルファス材料は、アモルファスリボンであり、
前記ナノ結晶は、ナノ結晶リボンであり、
前記ケイ素鋼は、ケイ素鋼リボンである。
【0010】
1つの可能な実施形態において、前記軟磁性金属材料は、いずれも粉末状構造である。
【0011】
1つの可能な実施形態において、前記表面処理剤は、炭素源であり、前記軟磁性金属材料に対して前記炭素源を利用して浸炭処理を行う。
【0012】
1つの可能な実施形態において、前記表面処理剤は、浸炭促進剤をさらに含む。
【0013】
1つの可能な実施形態において、前記表面処理剤は、トナーおよび/またはグラファイトパウダーをさらに含む。
【0014】
1つの可能な実施形態において、前記表面処理剤は、浸炭窒化剤であり、前記軟磁性金属材料に対して前記浸炭窒化剤を利用して浸炭窒化処理を行う。
【0015】
1つの可能な実施形態において、前記浸炭窒化剤は、炭素源と窒素源とを含む混合物である。
【0016】
1つの可能な実施形態において、前記炭素源は、油脂系炭素源または樹脂系炭素源であり、
前記窒素源は、アンモニア系窒素源またはアミン系窒素源である。
【0017】
1つの可能な実施形態において、前記炭素源は、トナーおよび/またはグラファイトパウダーをさらに含む。
【0018】
1つの可能な実施形態において、前記浸炭窒化剤は、炭素と窒素とを含む有機物である。
【0019】
1つの可能な実施形態において、熱処理を行う前に、前記炭素源は、コーティングプロセスによって前記軟磁性金属材料の表面に置かれる。
【0020】
1つの可能な実施形態において、熱処理を行う前に、前記炭素源は、真空含浸プロセスによって前記軟磁性金属材料の表面に置かれる。
【0021】
1つの可能な実施形態において、熱処理を行う際に、前記軟磁性金属材料を前記炭素源に浸漬させる。
【0022】
1つの可能な実施形態において、熱処理を行う前に、前記炭素源を前記軟磁性金属材料の表面に置いて、この後、前記熱処理を行う際に、ガス状態の前記窒素源を導入する。
【0023】
1つの可能な実施形態において、コーティング、点滴または真空含浸プロセスによって、前記炭素源を前記軟磁性金属材料の表面に置かせる。
【0024】
1つの可能な実施形態において、熱処理を行う際に、前記軟磁性金属材料を液体状態の前記炭素源に浸漬し、この後、ガス状態の前記窒素源を導入する。
【0025】
1つの可能な実施形態において、熱処理を行う際に、熱処理温度は、200℃~1000℃であり、
熱処理時間は、5分間以上である。
【0026】
本発明の実施例に係る技術案による有益な効果は、以下の通りである。
【0027】
本発明の実施例による軟磁性金属材料の処理方法では、熱処理プロセスによって、軟磁性金属材料に対して表面処理剤を利用して浸炭処理、浸窒処理または浸炭窒処理を行うことができる。ここで、熱処理の後、炭素と軟磁性金属材料中の鉄からセメンタイトを形成し、セメンタイトは、磁性を持ち、軟磁性金属材料の磁気誘導強度(磁束密度またはB値とも呼ばれる)を著しく向上させることができる。熱処理の後、窒素と軟磁性金属材料中の鉄から窒化鉄FeNを形成し、窒化鉄FeNも、磁性を持ち、軟磁性金属材料の磁気誘導強度を向上させることもできる。本発明の実施例による方法を利用することにより、軟磁性金属材料の磁気誘導強度を効果的に向上させることができ、この結果、電力分野でのその適用に大きなメリットをもたらすことが分かる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明の目的、技術案および利点をより明確にするために、以下、本発明の実施形態をさらに詳細に説明する。
【0029】
本発明の実施例では、軟磁性金属材料の処理方法を提供し、ここで、当該処理方法は、熱処理プロセスによって、軟磁性金属材料に対して表面処理剤を浸透させて、軟磁性金属材料の磁気誘導強度を増加させることを含み、ここで、表面処理剤は、炭素および/または窒素を含み、軟磁性金属材料は、アモルファス材料、ナノ結晶、ケイ素鋼または純鉄である。
【0030】
本発明の実施例による軟磁性金属材料の処理方法では、熱処理プロセスによって、軟磁性金属材料に対して表面処理剤を利用して浸炭処理、浸窒処理または浸炭窒処理を行うことができる。ここで、熱処理の後、炭素と軟磁性金属材料中の鉄からセメンタイトを形成し、セメンタイトは、磁性を持ち、軟磁性金属材料の磁気誘導強度(磁束密度またはB値とも呼ばれる)を著しく向上させることができる。熱処理の後、窒素と軟磁性金属材料中の鉄から窒化鉄FeNを形成し、窒化鉄FeNも、磁性を持ち、軟磁性金属材料の磁気誘導強度を向上させることもできる。本発明の実施例による方法を利用することにより、軟磁性金属材料の磁気誘導強度を効果的に向上させることができ、この結果、電力分野でのその適用に大きなメリットをもたらすことが分かる。
【0031】
研究によると、ケイ素鋼に対して上記の浸炭および/または浸窒を行うことにより、ケイ素鋼の内部抵抗を増加させ、その渦電流損失を減少させることができることがわかった。
【0032】
ここで、上述した軟磁性金属材料中の鉄は、その表面の鉄だけでなく、その内部の鉄(例えば、表面に近い部分)も含む。上記のセメンタイトの化学式がFeCであることが理解できる。
【0033】
本発明の実施例では、アモルファス材料及びナノ結晶は、鉄基アモルファス材料またはコバルト基アモルファス材料、及び鉄基ナノ結晶である。
【0034】
一例として、本発明の実施例における軟磁性金属材料は、モータや変圧器などの電気機器への応用を容易にするために、いずれも例えば薄いシート状のシート状構造である。一例として、当該アモルファス材料は、アモルファスリボンであり、ナノ結晶は、ナノ結晶リボンであり、ケイ素鋼は、ケイ素鋼リボンである。もちろん、上述のアモルファスリボン、ナノ結晶リボン、ケイ素鋼リボンを用いて作製された種々の形状のデバイスも、本発明の実施例の保護範囲内にあり、本発明の実施例による処理方法を用いると、同様に磁気誘導強度を増加させる効果が得られる。
【0035】
別の例として、本発明の実施例における軟磁性金属材料は、いずれも粉末状構造であり、例えば、アモルファス材料は、アモルファス粉末であり、ナノ結晶は、ナノ結晶粉末であり、ケイ素鋼は、ケイ素鋼粉末であり、純鉄は、純鉄粉末である。さらに、例えば純鉄粉末である。これにより、インダクタなどの電気機器へのそれらの応用が容易になる。
【0036】
本発明の実施例に係る処理プロセスは、以下を含むことができる。
【0037】
軟磁性金属材料に対して炭素を含む表面処理剤を利用して浸炭処理を行い、例えば、アモルファスリボン、ナノ結晶リボンまたはケイ素鋼リボンに対してそれぞれ浸炭処理を行う。
【0038】
軟磁性金属材料に対して窒素を含む表面処理剤を利用して浸窒処理を行い、例えば、アモルファスリボン、ナノ結晶リボンまたはケイ素鋼リボンに対してそれぞれ浸窒処理を行う。
【0039】
軟磁性金属材料に対して炭素と窒素とを含む表面処理剤を利用して浸炭窒化処理を行い、例えば、アモルファスリボン、ナノ結晶リボンまたはケイ素鋼リボンに対してそれぞれ浸炭窒化処理を行う。
【0040】
上述の炭素を含む表面処理剤については、炭素源であってもよく、軟磁性金属材料に対して炭素源を利用して浸炭処理を行う。
有機炭素源と無機炭素源とを含む多くの種類の炭素源があり、例を挙げると、有機炭素源は、油脂系炭素源、樹脂系炭素源、糖系炭素源、脂肪酸系炭素源などを含むが、これらに限らない。無機炭素源は、二酸化炭素などを含むが、これに限らない。
【0041】
例えばアモルファス材料、ナノ結晶またはケイ素鋼などの軟磁性金属がリボン構造である場合、炭素源とアモルファスリボンとの結合を容易にするために、例えば、熱処理の前に、本発明の実施例において使用される炭素源は、油脂系炭素源または樹脂系炭素源であってもよい。
【0042】
油脂系炭素源を例に挙げると、油系炭素源と脂肪系炭素源とを含むが、これらに限らず、油系炭素源を例に挙げると、植物油(例えば、豆油など)、鉱物油(例えば石油とその副産物など)、有機合成油などであってもよく、ここで、熱伝導性の油系炭素源として、ダウサームは、熱処理プロセスにおける浸炭量の向上に寄与し、本発明の実施例における炭素源として使用されることができる。
【0043】
樹脂系炭素源を例に挙げると、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂、ロジンなどの樹脂を含むが、これらに限らず、それらは、粘着性を有し、アモルファスリボン、ナノ結晶リボンまたはケイ素鋼リボンの表面に容易に粘着することができる。
【0044】
浸炭量をさらに向上させるために、本発明の実施例による表面処理剤は、トナーおよび/またはグラファイトパウダーをさらに含むことができる。
【0045】
一例として、トナーおよび/またはグラファイトパウダーを油系炭素源または樹脂系炭素源に混ぜることにより、より高い炭素含有量を有する炭素源を形成することができる。ここで、トナーおよび/またはグラファイトパウダーのドーピング質量パーセントは、例えば10%、15%、20%、30%などのように、総炭素源質量の5%~50%を占めることができる。
【0046】
トナーとグラファイトパウダーが同時に存在する場合、両者の質量比は、任意の質量比であってもよい。
【0047】
ここで、トナーとグラファイトパウダーの粒径を例えば5~50ナノメートルのようなナノスケールに制御することにより、浸炭効果を向上させる。
【0048】
本発明の実施例による表面処理剤は、浸炭促進剤をさらに含むことができ、ここで、浸炭促進剤は、BaCO、CaCOまたはNaCOなどであってもよく、浸炭促進剤のドーピング質量パーセントは、例えば2%~10%のように、総炭素源質量の10%以内を占めることができ、例を挙げると3%、4%、5%、6%などであってもよい。
【0049】
一例として、油系炭素源および/または樹脂系炭素源、トナーおよび/またはグラファイトパウダー、および浸炭促進剤を含む表面処理剤を提供することができる。
【0050】
別の例として、油系炭素源および/または樹脂系炭素源、および浸炭促進剤を含む表面処理剤を提供することができる。
【0051】
さらに別の例として、油系炭素源および/または樹脂系炭素源、およびトナーおよび/またはグラファイトパウダーを含む表面処理剤を提供することができる。
【0052】
さらに別の例として、油系炭素源および/または樹脂系炭素源を含む表面処理剤を提供することができる。
【0053】
窒素を含む表面処理剤については、窒素源であってもよく、そして、窒素源は、アンモニア系またはアミン系であってもよく、例を挙げると、窒素源は、アンモニアであってもよく、そして、アンモニアを導入することにより、浸窒処理を行うことができる。窒素源は、トリエタノールアミンや尿素などであってもよく、そして、点滴または浸漬によって浸窒処理を行うことができる。
【0054】
炭素と窒素とを同時に含む表面処理剤については、当該表面処理剤は、浸炭窒化剤であってもよく、軟磁性金属材料に対して浸炭窒化剤を利用して浸炭窒化処理を行う。例えば、アモルファスリボン、ナノ結晶リボンまたはケイ素鋼リボンに対して浸炭窒化剤を利用してそれぞれ浸炭窒化処理を行う。
【0055】
熱処理プロセスによって、軟磁性金属材料に対して浸炭窒化剤を利用して浸炭窒化処理を行い、浸炭窒化の過程において、炭素と軟磁性金属材料中の鉄からセメンタイトFeCを形成し、窒素と軟磁性金属材料中の鉄から窒化鉄FeNを形成し、セメンタイトFeCと窒化鉄FeNは、いずれも磁性を持つので、両者の組み合わせによって、軟磁性金属材料の磁気誘導強度を著しく向上させることができる。
【0056】
軟磁性金属材料に対して浸炭窒化処理を行うことにより、軟磁性金属材料の表面及び内部に浸炭窒化化合物を形成し、且つ、浸炭窒化原理に基づいて、浸炭量が浸窒量より高く、即ち、浸炭を主とし、浸窒を補助とする。
【0057】
浸炭窒化剤は、炭素と窒素を同時に提供することができ、ここで、浸炭窒化剤は、混合物であってもよく、即ち、浸炭窒化剤は、炭素源と窒素源とを含む混合物であってもよく、炭素元素と窒素元素とを同時に含む化合物であってもよく、つまり、浸炭窒化剤は、炭素と窒素とを同時に含む化合物である。これらの2つの形態の浸炭窒化剤については、浸炭量が浸窒量より高いことを確保するために、含まれた炭素元素と窒素元素のモル比を2~5:1とすることができる。
【0058】
浸炭窒化剤が炭素源と窒素源とを含む混合物である場合、炭素源と窒素源は、いずれも気体状態または液体状態であり得て、そして、両者は同じでもよいし、異なってもよい。
【0059】
炭素源と窒素源が同時に気体状態である場合、熱処理の際に、軟磁性金属材料を流動する浸炭窒化剤雰囲気に置いてもよく、軟磁性金属材料の反応系に一定時間の浸炭窒化剤を連続的に導入してもよい。
【0060】
炭素源と窒素源が同時に液体状態である場合、熱処理の際に、軟磁性金属材料を浸炭窒化剤に浸漬してもよい。
【0061】
例示的に、炭素源は、有機炭素源と無機炭素源とを含んでもよく、ここで、有機炭素源は、油脂系炭素源、樹脂系炭素源、糖系炭素源、脂肪酸系炭素源、有機アルコール系炭素源、有機ケトン系炭素源などを含むが、これらに限らない。無機炭素源は、二酸化炭素などを含むが、これに限らない。
【0062】
軟磁性金属材料の材質、及び熱処理プロセスによって表面処理を行う必要があることを考慮して、表面処理剤と軟磁性金属材料との結合を容易にするために、本発明の実施例では、炭素源を油脂又は樹脂系とすることができる。
【0063】
油脂系炭素源を例に挙げると、油系炭素源と脂肪系炭素源とを含むが、これらに限らず、油系炭素源を例に挙げると、植物油、鉱物油(例えば石油、灯油など)、有機合成油などであってもよく、ここで、熱伝導性の油系炭素源として、ダウサームは、熱処理プロセスにおける浸炭量の向上に寄与し、本発明の実施例における炭素源として使用されることができる。
【0064】
樹脂系炭素源を例に挙げると、エポキシ樹脂、フェノール樹脂、アルキド樹脂などの液体樹脂を含むが、これらに限らず、それらは、粘着性を有し、アモルファスリボン、ナノ結晶リボンまたはケイ素鋼リボンの表面に容易に粘着することができる。
【0065】
浸炭量を向上させるために、本発明の実施例による表面処理剤は、トナーおよび/またはグラファイトパウダーをさらに含むことができる。
【0066】
一例として、トナーおよび/またはグラファイトパウダーを油系炭素源または樹脂系炭素源に混ぜることにより、より高い炭素含有量を有する炭素源を形成することができる。ここで、トナーおよび/またはグラファイトパウダーのドーピング質量パーセントは、例えば10%、15%、20%、30%、50%、70%、90%などのように、総炭素源質量の5%~95%を占めることができる。
【0067】
トナーとグラファイトパウダーが同時に存在する場合、両者の質量比は、任意の質量比であってもよい。
【0068】
ここで、トナーとグラファイトパウダーの粒径を例えば5~50ナノメートルのようなナノスケールに制御することにより、浸炭効果を向上させる。
【0069】
本発明の実施例による表面処理剤は、浸炭促進剤をさらに含むことができ、ここで、浸炭促進剤は、BaCO、CaCOまたはNaCOなどであってもよく、浸炭促進剤のドーピング質量パーセントは、例えば2%~10%のように、総炭素源質量の10%以内を占めることができ、例を挙げると3%、4%、5%、6%などであってもよい。
【0070】
一例として、窒素源、油系炭素源および/または樹脂系炭素源、トナーおよび/またはグラファイトパウダー、および浸炭促進剤を含む表面処理剤を提供することができる。
【0071】
別の例として、窒素源、油系炭素源および/または樹脂系炭素源、および浸炭促進剤を含む表面処理剤を提供することができる。
【0072】
さらに別の例として、窒素源、油系炭素源および/または樹脂系炭素源、およびトナーおよび/またはグラファイトパウダーを含む表面処理剤を提供することができる。
【0073】
さらに別の例として、窒素源、油系炭素源および/または樹脂系炭素源を含む表面処理剤を提供することができる。
【0074】
本発明の実施例では、適用された窒素源は、アンモニア系窒素源またはアミン系窒素源であってもよく、例を挙げると、アンモニア系窒素源は、アンモニアであってもよく、そして、アンモニアを導入することにより、浸炭窒化処理を行うことができる。アミン系窒素源は、トリエタノールアミンや尿素などであってもよく、そして、点滴または浸漬によって浸炭窒化処理を行うことができる。
【0075】
表面処理剤が炭素源である場合、炭素源と軟磁性金属材料との結合方式及び熱処理過程で関与する作業パラメータに対して、以下、例を挙げて説明する。
【0076】
一例として、熱処理を行う前に、炭素源は、コーティングプロセスによって軟磁性金属材料に置かれてもよく、例えばアモルファス材料、ナノ結晶またはケイ素鋼の表面に置かれてもよく、例えば塗布、スプレー等によって、炭素源を軟磁性金属に置いてもよく、例えばアモルファス材料、ナノ結晶やケイ素鋼、またはナノ結晶の表面に置いてもよい。
【0077】
別の例として、熱処理を行う前に、炭素源は、真空含浸プロセスによってアモルファス材料の表面またはナノ結晶に置かれてもよく、当該形態は、浸炭量の向上に役立つ。
【0078】
さらに別の例として、熱処理を行う際に、例えばアモルファス材料、ナノ結晶またはケイ素鋼のような軟磁性金属材料を炭素源に浸漬させ、例を挙げると、炭素源が油系を含む場合、例えばアモルファス材料、ナノ結晶またはケイ素鋼のような軟磁性金属材料をそれに浸漬させ、油浴で加熱すればよく、当該方式によると、浸炭を均一にするだけでなく、熱処理の際に加熱領域をより均一にし、浸炭効果を向上させることができる。
【0079】
熱処理プロセスを利用して浸炭を行う場合、熱処理炉で浸炭を行うことができるため、浸炭過程を簡単に制御しやすくなる。
【0080】
熱処理を利用して浸炭を行う場合、熱処理温度は、200℃~1000℃であってもよく、例えば、アモルファスリボンまたはナノ結晶リボンについては、熱処理温度は、200℃~650℃であってもよく、例えば200℃~450℃であり、さらに200℃~400℃であり、例を挙げると、250℃、280℃、300℃、380℃、400℃などであってもよい。ケイ素鋼リボンについては、熱処理温度は、200℃~450℃であってもよく、さらに200℃~400℃であってもよく、200℃、230℃、250℃、280℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、400℃などである。処理すべきケイ素鋼リボンの厚さに応じて、熱処理温度を調整することができる。
【0081】
熱処理を行う際に、熱処理時間は、少なくとも5分間を超え、例えば5分間~24時間であってもよく、さらに例を挙げると、アモルファスリボンまたはナノ結晶リボンについては、熱処理時間は、10分間、30分間、1時間、2時間、3.5時間、5時間、6.5時間、7時間、7.5時間などであってもよい。ケイ素鋼リボンについては、熱処理時間は、10分間、30分間、1時間、2時間、3.5時間、5時間、6.5時間、7時間、7.5時間、15時間、24時間またはより長い時間であってもよい。熱処理時間の長さは、熱処理温度に応じて変化し、例えば、熱処理温度が高い場合、短い熱処理時間で良い浸炭効果を得ることができる。
【0082】
上記の軟磁性金属材料の浸炭量は、熱処理時間を制御することにより確定されることができ、熱処理時間が長いほど、浸炭量が大きくなり、一定の値に達したときに安定していることが理解できる。
【0083】
一例では、アモルファスリボンをダウサーム(すなわち油浴)に浸漬し、且つ熱処理炉に置いて熱処理を行うことにより、浸炭された後のアモルファスリボンを得ることができる。ここで、熱処理温度は、320℃に制御され、熱処理時間は、6時間に制御される。
【0084】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、上記の例において浸炭された前と浸炭された後のアモルファスリボンの磁気誘導強度(即ち、飽和磁気誘導強度)をそれぞれ測定し、測定結果によると、浸炭された前に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.598T(即ちテスラ)であり、浸炭された後に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.651Tである。
【0085】
別の一例では、アモルファスリボンをダウサーム(すなわち油浴)に浸漬し、且つ熱処理炉に置いて熱処理を行うことにより、浸炭された後のアモルファスリボンを得ることができる。ここで、熱処理温度は、320℃に制御され、熱処理時間は、7.5時間に制御される。
【0086】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、上記の例において浸炭された前と浸炭された後のアモルファスリボンの磁気誘導強度をそれぞれ測定し、測定結果によると、浸炭された前に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.598Tであり、浸炭された後に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.718Tである。
【0087】
別の一例では、アモルファスリボンをダウサーム(すなわち油浴)に浸漬し、且つ熱処理炉に置いて熱処理を行うことにより、浸炭された後のアモルファスリボンを得ることができる。ここで、熱処理温度は、320℃に制御され、熱処理時間は、7.5時間に制御される。
【0088】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、上記の例において浸炭された前と浸炭された後のアモルファスリボンの磁気誘導強度をそれぞれ測定し、測定結果によると、浸炭された前に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.62Tであり、浸炭された後に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.86Tである。
【0089】
上記の具体的な例から分かるように、本発明の実施例による処理方法を用いて、アモルファスリボン、ナノ結晶リボン又はケイ素鋼リボンを処理した後、アモルファスリボン、ナノ結晶リボン又はケイ素鋼リボンの磁気誘導強度が著しく増強し、且つ、熱処理時間の延長に伴い、磁気誘導強度の増強効果がより顕著になる。
【0090】
表面処理剤が浸炭窒化剤であり、浸炭窒化剤が炭素源と窒素源とを含む場合、浸炭窒化剤とアモルファス材料またはナノ結晶との結合方式、および熱処理過程で関与する作業パラメータに対して、以下、例を挙げて説明する。
【0091】
一例として、熱処理を行う前に、炭素源は、コーティング、点滴または真空含浸プロセスによって、アモルファス材料またはナノ結晶の表面に置かれ、且つ、熱処理を行う際に、ガス状態の窒素源を導入する。
【0092】
例を挙げると、例えば塗布、スプレー、点滴等によって、炭素源をアモルファス材料の表面に置いて、この後、アモルファス材料またはナノ結晶に対して熱処理を行うことができ、熱処理過程において、アンモニアを導入することができる。さらに例を挙げると、浸炭窒化過程において、灯油、エタノールまたはアセトンを点滴することにより、炭素源をアモルファス材料またはナノ結晶の表面に置き、且つアンモニアを導入することができる。あるいは、トリエタノールアミン又は尿素を溶融したアルコールを連続的に点滴することにより、浸炭窒化を行うこともできる。
【0093】
別の例として、熱処理を行う際に、アモルファス材料またはナノ結晶を液体状態の炭素源に浸漬させ、同時にガス状態の窒素源を導入する。
【0094】
例を挙げると、窒素源がダウサームである場合、アモルファス材料またはナノ結晶をダウサームに浸漬させ、窒素ガスを導入して、油浴で加熱すればよく、当該方式によると、浸炭窒化を均一にするだけでなく、熱処理の際に加熱領域をより均一にし、浸炭効果を向上させることができる。
【0095】
さらに別の例として、熱処理を行う際に、アモルファス材料またはナノ結晶を液体状態の浸炭窒化剤に直接に浸漬させる。
【0096】
さらに別の例として、熱処理を行う際に、例えばアモルファス材料、ナノ結晶又はケイ素鋼のような軟磁性金属をガス状態の浸炭窒化剤に浸漬させる。
【0097】
例を挙げると、炭素源は、有機アルコールであってもよく、窒素源は、尿素であってもよく、両者を混合して液体状態の浸炭窒化剤を形成し、応用する際に、アモルファス材料をこのような浸炭窒化剤に浸漬して熱処理すればよい。
【0098】
熱処理プロセスを利用して熱処理を行う場合、熱処理炉で行うことができるため、浸炭窒化過程を簡単に制御しやすくなる。
【0099】
熱処理を利用して浸炭窒化を行う場合、熱処理温度は、200℃~1000℃であってもよく、例えば、アモルファスリボンまたはナノ結晶リボンについては、熱処理温度は、200℃~650℃であってもよく、例えば200℃~450℃であり、さらに200℃~400℃であり、例を挙げると、250℃、280℃、300℃、380℃、400℃などであってもよい。ケイ素鋼リボンについては、熱処理温度は、200℃~450℃であってもよく、さらに200℃~400℃であってもよく、200℃、230℃、250℃、280℃、300℃、310℃、320℃、330℃、340℃、350℃、360℃、370℃、380℃、400℃などである。処理すべきケイ素鋼リボンの厚さに応じて、熱処理温度を調整することができる。
【0100】
熱処理を行う際に、熱処理時間は、少なくとも5分間を超え、例えば5分間~24時間であってもよく、さらに例を挙げると、アモルファスリボンまたはナノ結晶リボンについては、熱処理時間は、10分間、30分間、1時間、2時間、3.5時間、5時間、6.5時間、7時間、7.5時間などであってもよい。ケイ素鋼リボンについては、熱処理時間は、10分間、30分間、1時間、2時間、3.5時間、5時間、6.5時間、7時間、7.5時間、15時間、24時間などであってもよい。熱処理時間の長さは、熱処理温度に応じて変化し、例えば、熱処理温度が高い場合、短い熱処理時間で良い浸炭窒化効果を得ることができる。
【0101】
軟磁性金属材料の浸炭窒量は、熱処理時間を制御することにより確定されることができ、熱処理時間が長いほど、浸炭窒量が大きくなり、一定の値に達したときに安定していることが理解できる。
【0102】
一例では、アモルファスリボンをダウサーム(すなわち油浴)に浸漬し、且つ熱処理炉に置いて熱処理を行い、熱処理過程において、熱処理炉にアンモニアを導入することにより、浸炭窒化された後のアモルファスリボンを得ることができる。ここで、熱処理温度は、350℃に制御され、熱処理時間は、6時間に制御される。
【0103】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、上記の例において浸炭窒化された前と浸炭窒化された後のアモルファスリボンの磁気誘導強度をそれぞれ測定し、測定結果によると、浸炭窒化された前に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.54Tであり、浸炭窒化された後に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.646Tである。
【0104】
別の一例では、アモルファスリボンをダウサーム(すなわち油浴)に浸漬し、且つ熱処理炉に置いて熱処理を行い、熱処理過程において、熱処理炉にアンモニアを導入することにより、浸炭窒化された後のアモルファスリボンを得ることができる。ここで、熱処理温度は、360℃に制御され、熱処理時間は、7.5時間に制御される。
【0105】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、上記の例において浸炭窒化された前と浸炭窒化された後のアモルファスリボンの磁気誘導強度をそれぞれ測定し、測定結果によると、浸炭窒化された前に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.54Tであり、浸炭された後に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.7Tである。
【0106】
さらに別の一例では、アモルファスリボンをダウサーム(すなわち油浴)に浸漬し、且つ熱処理炉に置いて熱処理を行い、熱処理過程において、熱処理炉にアンモニアを導入することにより、浸炭窒化された後のアモルファスリボンを得ることができる。ここで、熱処理温度は、650℃に制御され、熱処理時間は、9時間に制御される。
【0107】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、上記の例において浸炭窒化された前と浸炭窒化された後のアモルファスリボンの磁気誘導強度をそれぞれ測定し、測定結果によると、浸炭窒化された前に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.62Tであり、浸炭された後に、アモルファスリボンの磁気誘導強度は、1.87Tである。
【0108】
一例では、ケイ素鋼リボンをダウサーム(すなわち油浴、且つ高圧下で密封される)に浸漬し、且つ熱処理炉に置いて熱処理を行い、熱処理過程において、熱処理炉にアンモニアを導入することにより、浸炭窒化された後のアモルファスリボンを得ることができる。ここで、熱処理温度は、350℃に制御され、熱処理時間は、6時間に制御される。
【0109】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、上記の例において浸炭窒化された前と浸炭窒化された後のアモルファスリボンの磁気誘導強度をそれぞれ測定し、測定結果によると、浸炭窒化された前に、ケイ素鋼リボンの磁気誘導強度は、2.03Tであり、浸炭窒化された後に、ケイ素鋼リボンの磁気誘導強度は、2.2Tである。
【0110】
一例では、ケイ素鋼リボンをダウサームに浸漬し、且つ熱処理炉に置いて熱処理を行い、熱処理過程において、熱処理炉にアンモニアを導入することにより、浸炭窒化された後のケイ素鋼リボンを得ることができる。ここで、熱処理温度は、450℃に制御され、熱処理時間は、7.5時間に制御される。
【0111】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、上記の例において浸炭窒化された前と浸炭窒化された後のアモルファスリボンの磁気誘導強度をそれぞれ測定し、測定結果によると、浸炭窒化された前に、ケイ素鋼リボンの磁気誘導強度は、2.03Tであり、浸炭された後に、ケイ素鋼リボンの磁気誘導強度は、2.24Tである。
【0112】
一例では、ケイ素鋼リボンをダウサームに浸漬し、且つ熱処理炉に置いて熱処理を行うことにより、浸炭された後のケイ素鋼リボンを得ることができる。ここで、熱処理温度は、400℃に制御され、熱処理時間は、6時間に制御される。
【0113】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、上記の例において浸炭窒化された前と浸炭窒化された後のアモルファスリボンの磁気誘導強度をそれぞれ測定し、測定結果によると、浸炭窒化された前に、ケイ素鋼リボンの磁気誘導強度は、2.03Tであり、浸炭窒化された後に、ケイ素鋼リボンの磁気誘導強度は、2.12Tである。
【0114】
一例では、ケイ素鋼リボンを熱処理炉に置いて熱処理を行うことにより、浸炭された後のケイ素鋼リボンを得ることができる。熱処理過程において、熱処理炉にアンモニアを導入することにより、浸窒された後のケイ素鋼リボンを得ることができる。ここで、熱処理温度は、800℃に制御され、熱処理時間は、6時間に制御される。
【0115】
米国lakeshore社が販売している磁束計を用いて、上記の例において浸炭窒化された前と浸炭窒化された後のケイ素鋼リボンの磁気誘導強度をそれぞれ測定し、測定結果によると、浸炭窒化された前に、ケイ素鋼リボンの磁気誘導強度は、1.9Tであり、浸炭窒化された後に、ケイ素鋼リボンの磁気誘導強度は、2.06Tである。
【0116】
上記の具体的な例から分かるように、本発明の実施例によるケイ素鋼の処理方法を用いて、ケイ素鋼を処理した後、ケイ素鋼の磁気誘導強度が著しく増強し、且つ、熱処理時間の延長に伴い、磁気誘導強度の増強効果がより顕著になる。
【0117】
上記から分かるように、本発明の実施例による処理方法を用いて、軟磁性金属材料に対して浸炭窒化処理を行なった後、軟磁性金属材料の磁気誘導強度が著しく増強し、且つ、熱処理時間の延長に伴い、磁気誘導強度の増強効・BR>ハがより顕著になる。
【0118】
上記は、本発明の好ましい実施例に過ぎない、本発明を限定するものではなく、本発明の精神および原則内でなされた任意の変更、等効な置換、改善などは、本発明の範囲に含まれるものとする

【国際調査報告】