(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】ハリコンドリン系化合物の製造のための中間体及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
C07F 7/08 20060101AFI20220119BHJP
C07D 263/22 20060101ALI20220119BHJP
C07D 277/36 20060101ALI20220119BHJP
C07D 317/22 20060101ALI20220119BHJP
C07D 493/22 20060101ALI20220119BHJP
【FI】
C07F7/08 H
C07D263/22
C07D277/36
C07D317/22
C07D493/22
C07F7/08 A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020523997
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(85)【翻訳文提出日】2020-04-28
(86)【国際出願番号】 CN2019116349
(87)【国際公開番号】W WO2020119345
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】201811508481.1
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】519425958
【氏名又は名称】北京天一緑甫医葯科技有限公司
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】徐為平
【テーマコード(参考)】
4C071
4H049
【Fターム(参考)】
4C071AA03
4C071BB03
4C071CC14
4C071EE07
4C071FF17
4C071GG03
4C071JJ06
4C071LL07
4H049VN01
4H049VP01
4H049VQ24
4H049VR23
4H049VR41
4H049VT03
4H049VT23
4H049VW01
4H049VW02
(57)【要約】
本発明は、ハリコンドリン系化合物の製造に用いられる中間体、その製造方法および使用に関し、特にハリコンドリン、エリブリンまたはその類似体の製造に用いられる中間体、その製造方法および使用に関する。前記中間体、その製造方法および使用はハリコンドリン系化合物のC20-C26構造断片の構築に用いられる。本発明の合成経路の出発原料は、安価で容易に入手可能であり、由来が安定で品質が信頼性が高く、キラル中心構築方法の選択は反応物自体の構造的特徴を活用し、合成効率を確実に向上させ、製品品質管理の困難性およびリスクを低減し、かつ毒性が高く高価な有機スズ触媒の使用を回避することができ、コストおよび環境に対する配慮が著しく改善される。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記の式(8)で示す化合物の製造方法であって、
【化1】
(そのうち、R
1はヒドロキシル保護基であり、
R
2、R
3は同一または異なって、互いに独立してHおよびOR
aから選ばれたものであり、R
aは独立してH、C
1-10アルキル、R
bSO
2から選ばれたものであり、R
bはC
1-10アルキルであり、あるいは、R
2とR
3は、いずれもOR
aであり、かつ、2つのR
aが結合してC
1-6アルキレンに形成され、あるいは、R
2およびR
3はこれらに結合する炭素とカルボニル基を形成し、
Xは、ハロゲン、スルホニルオキシ基から選ばれたものであり、
好ましくは、R
1がモノシラン系ヒドロキシル保護基、例えば、TMS、TES、TBDMS、TBDPS、DIPS、DPS、TIPDSなどから選ばれたものであり、
R
2、R
3の一方はHから選択されたものであり、他の一方はOR
aから選択されるものであり、かつ、R
aはHまたはi-PrSO
2であり、あるいは、R
2とR
3はいずれもOR
aであり、かつ、2つのR
aが結合してn-プロピレンに形成し、あるいは、R
2及びR
3は、これらに結合する炭素とカルボニル基を形成し、
Xは、塩素、臭素、ヨウ素などから選ばれたものである。)
前記方法は下記の工程を含み、
【化2】
(そのうち、式(2)におけるR
5はシリル基、例えば、TMS、TES、TBDMS、TBDPS、DIPS、DPS、TIPDSなどから選ばれたものであり、式(1)-(2)におけるオキサゾリジノン構造部分がオキサゾリジノン系キラル補助基であり、例えば、R
4がC
1-10アルキル、置換もしくは非置換のフェニル基、または置換もしくは非置換のベンジル基である2-オキソオキサゾリジノンである。好ましくは、前記R
4がイソプロピル基、非置換もしくはヒドロキシ基、ニトロ基、ジメチルアミノ基でモノ置換もしくは複数置換されたフェニル基またはベンジル基である。)
好ましくは、さらに式(2)を1回、2回または複数回再結晶する工程を含む式(8)で示す化合物の製造方法。
【請求項2】
さらに下記の式(2)から式(3)を製造する工程を含み、
【化3】
好ましくは、さらにオキサゾリジノン系キラル補助基および対応するアシル化合物から式(1)で示す化合物を製造する工程を含み、
【化4】
好ましくは、さらに下記の式(3)から式(4)を製造する工程を含み、
【化5】
好ましくは、さらに下記の式(4)から式(5)を製造する工程を含み、
【化6】
好ましくは、さらに下記の式(5)及びアルデヒドから式(6)を製造する工程を含み、
【化7】
好ましくは、さらに下記の式(6)から式(7)を製造する工程を含み、
【化8】
好ましくは、さらに下記の式(7)から式(8)を製造する工程
【化9】
を含む請求項1に記載の式(8)で示す化合物の製造方法。
【請求項3】
前記式(2)は、式(1)とグリニャール試薬であるR
6MgXまたはR
6Liと反応してなり、R
6は
【化10】
であり、
前記グリニャール試薬の製造方法がビニルシラン
【化11】
とハロゲン化試薬とを比較的に低い温度(例えば-30~-10℃)で混合し、室温で酸結合剤を添加し、還流反応してハロゲン化ビニルシランを得る工程、および、
前記ハロゲン化ビニルシランを非プロトン性溶媒に金属マグネシウムまたは金属リチウムと反応させて対応するグリニャール試薬またはリチウム試薬を得る工程、あるいは、前記ハロゲン化ビニルシランを、前記溶媒に簡単に入手できる他のグリニャール試薬、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルグリニャール試薬など、または、簡単に入手できるアルキルリチウム、例えば、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムと金属-ハロゲン交換反応を進行させて対応するグリニャール試薬またはリチウム試薬を生成する工程、
を含む、請求項1または2に記載の式(8)で示す化合物の製造方法。
【請求項4】
式(5)及びアルデヒドから式(6)を製造する工程において、
【化12】
前記アルデヒドの製造方法は、
(I)ブタンジオールとR
nSiX
4-nとをカップリング剤の存在で反応させてモノヒドロキシ保護生成物を得る工程であって、そのうち、Xは塩素、臭素、ヨウ素から選ばれるハロゲンであり、RはC
1-10アルキル、フッ素置換アルキルから選ばれたものであり、nは1~3の整数であり、前記ハロシランの実例としてTMSCl、TMSI、TBDPSCl、TBDPSIなどであってもよい工程、および、
(II)工程(I)の生成物を酸化する工程、
を含む、請求項1~3のいずれに記載の製造方法。
【請求項5】
下記の工程を含む式(8)で示す化合物の製造方法であって、
【化13】
本発明における式(8)で示す化合物によれば、
好ましくは、さらに下記のR
2、R
3がそれぞれH、OHである式(7)から酸化反応してR
2、R
3がこれらに結合する炭素と共にカルボニルを形成する式(7)を得る工程を含み、
【化14】
好ましくは、さらに下記の式(5)及び式(6)からR
2、R
3がそれぞれH、OHである式(7)を製造する工程を含み、
【化15】
好ましくは、さらに、請求項2に記載の式(4)から式(5)で示す化合物を得る工程を含み、
好ましくは、さらに、請求項2に記載の式(3)から式(4)で示す化合物を得る工程を含み、
好ましくは、さらに、請求項2に記載の式(2)から式(3)で示す化合物を得る工程を含み、
好ましくは、さらに、請求項2に記載の式(1)から式(2)で示す化合物を得る工程を含み、
好ましくは、さらに式(2)を1回、2回または複数回再結晶する工程を含み、
好ましくは、さらに請求項2に記載のオキサゾリジノン系キラル補助基から式(1)で示す化合物を製造する工程を含む、
式(8)で示す化合物の製造方法。
【請求項6】
下記の式(2)で示す化合物およびその製造方法であって、
【化16】
(そのうち、R
4、R
5の定義は請求項1~4に記載される通りである。)
式(2)で示す化合物の製造方法は、
請求項1に記載の式(1)から式(2)を製造する工程を含み、
好ましくは、さらに前記の1回、2回または複数回再結晶する工程を含み、
好ましくは、さらにオキサゾリジノン系キラル補助基および対応するアシル化合物から式(1)を製造する工程を含む、
式(2)で示す化合物およびその製造方法。
【請求項7】
下記の式(3)で示す化合物およびその製造方法であって、
【化17】
(そのうち、R
4、Xの定義は請求項1~4に記載される通りである。)
式(3)で示す化合物の製造方法は、
前記請求項2に記載の式(2)から式(3)を製造する工程を含み、
好ましくは、さらに請求項6に記載の式(2)で示す化合物を製造する工程を含む、式(3)で示す化合物およびその製造方法。
【請求項8】
下記の式(7)で示す化合物およびその製造方法であって、
【化18】
(そのうち、R
1はヒドロキシ保護基から選ばれたものであり、
R
2、R
3は同一または異なって、互いに独立してHおよびOR
aから選ばれたものであり、R
aは独立してH、C
1-10アルキル、R
bSO
2から選ばれたものであり、R
bはC
1-10アルキルであり、あるいは、R
2とR
3は、いずれもOR
aであり、かつ、2つのR
aが結合してC
1-6アルキレンに形成され、あるいは、R
2およびR
3はこれらに結合する炭素とカルボニル基を形成し、
Xは、ハロゲン、スルホニルオキシ基から選ばれたものであり、
好ましくは、R
1がモノシラン系ヒドロキシル保護基、例えば、TMS、TES、TBDMS、TBDPS、DIPS、DPS、TIPDSなどから選ばれたものであり、
R
2、R
3の一方はHから選択されたものであり、他の一方はOR
aから選択されるものであり、かつ、R
aはHまたはi-PrSO
2であり、あるいは、R
2とR
3はいずれもOR
aであり、かつ、2つのR
aが結合してn-プロピレンに形成し、あるいは、R
2及びR
3は、これらに結合する炭素とカルボニル基を形成し、
Xは、塩素、臭素、ヨウ素などから選ばれたものである。)
前記式(7)で示す化合物の製造方法は、下記の工程を含み、
【化19】
示例的なものとして、前記反応は、四塩化チタン(TiCl
4)とトリエチルアミン(TEA)の存在で不活性雰囲気の保護で比較的に低い温度-10~10℃、好ましくが0℃で反応を行い、前記反応溶媒はジクロロメタン(DCM)などであってもよい、式(7)で示す化合物およびその製造方法。
【請求項9】
請求項1~8に記載のオキサゾリジノン系キラル補助基、式(1)~式(7)のいずれの化合物、および/または請求項1~8のいずれに記載の製造方法の一段階または多段階反応を使用することを含む、ハリコンドリン、エリブリン、薬学的に許容されるその塩、その類似体またはこれらのC20-C26部分の製造方法。
【請求項10】
ハリコンドリン、エリブリン、薬学的に許容されるその塩、その類似体またはこれらのC20-C26部分の製造への請求項1-8に記載のオキサゾリジノン系キラル補助基、式(1)~式(7)のいずおれの化合物の使用。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本出願は、2018年12月10日に中国国家知識産権局に出願された、出願番号が2018115084811であり、発明の名称が「ハリコンドリン系化合物の製造のための中間体及びその製造方法」である先行出願の優先権を主張し、その全体は参照により本出願に組み込まれる。
【0002】
〔技術分野〕
本発明は、ハリコンドリンまたはその類似体、特にエリブリンの製造に用いられる中間体化合物およびこれらの中間体化合物の製造方法に関し、有機合成分野に属する。
【0003】
〔背景技術〕
ハリコンドリン(Halichondrin、以下、HBと略称する)は、スポンジ内に存在するポリエーテルマクロライド構造を持つ天然物であり、強力な抗腫瘍効果と幅広い医学的展望がある。これらの天然物は、その構造の違いに基づいて、ノルハリコンドリン(norhalichondrin)、ハリコンドリン(Halichondrin)、ホモハリコンドリン(homohalichondrin)などに分類され、かつ、各クラスは、一連の代表的なサブタイプを有し、前記サブタイプおよびその具体的な構造は、当業界で公知のものであり、かつ、WO2016003975A1に詳しく開示され、この先行技術文献は、その全体が参照により援用される。エリブリン(Eribulin、以下、EBと略称する)は、構造的に単純化されたハリコンドリンの類似体であり、現在、後期乳がんおよび脂肪肉腫の治療に臨床的に使用されている。
【0004】
【0005】
HB、EBは、いずれも天然由来から大量に取得することができず、人工合成だけに依存しかできない。これらの化合物は、構造が類似し、特にC1~C29の部分が全く同じ構造を有するため、これらの化合物を合成するのに好適な中間化合物を用いることができる。例えば、下記の式1a及び式4で示す中間体はエリブリンのC20~C35断片部分の構築に用いられる。
【0006】
【0007】
また、下記の式1b及び式6で示す中間体は、エリブリンのC20~C35断片部分の構築に用いられる。
【0008】
【0009】
しかし、従来技術において、前記式4または式6で示す化合物の製造方法は多くの欠陥がある。例えば、合成経路が長すぎ、出発物質の光学純度の制御が困難であり、毒性の高い高価なn-Bu3SnH試薬の使用を伴い、立体選択性が低いなどの欠陥がある。これらの欠陥は、コスト制御、環境および労働保護、製品品質などに関して一連の生産上の問題をもたらす。したがって、ハリコンドリン系薬物化合物の製造方法を改善するために、合成効率を改善し、製造コストを改善し、工業的な大量生産を容易にし、選択性、収率及び純度を向上させ、環境に優しい中間体または合成方法の開発が急務である。
【0010】
〔発明の詳細な説明〕
前述した課題を改善するために、本発明は下記のハリコンドリンおよびその類似体、特にエリブリンのC20~C26構造断片を構築するための中間体およびその製造方法を提供する。
【0011】
本発明の第1の態様は、
下記の式(8)で示す化合物の製造方法であって、
【0012】
【0013】
(そのうち、R1はヒドロキシル保護基であり、
R2、R3は同一または異なって、互いに独立してHおよびORaから選ばれたものであり、Raは独立してH、C1-10アルキル、RbSO2から選ばれたものであり、RbはC1-10アルキルであり、あるいは、R2とR3は、いずれもORaであり、かつ、2つのRaが結合してC1-6アルキレンに形成し、あるいは、R2およびR3はこれらに結合する炭素とカルボニル基を形成し、
Xは、ハロゲン、スルホニルオキシ基から選ばれたものであり、
例示的なものとして、R1はモノシラン系ヒドロキシル保護基、例えば、TMS、TES、TBDMS、TBDPS、DIPS、DPS、TIPDSなどから選ばれたものである。
【0014】
例示的なものとして、R2、R3の一方はHから選択されたものであり、他の一方はORaから選択されるものであり、かつ、RaはHまたはi-PrSO2であり、あるいは、R2とR3はいずれもORaであり、かつ、2つのRaが結合してn-プロピレンに形成し、あるいは、R2及びR3は、これらに結合する炭素とカルボニル基を形成し、
例示的なものとして、Xは、塩素、臭素、ヨウ素などから選ばれたものである。)
前記方法は下記の工程を含み、
【0015】
【0016】
(そのうち、式(2)におけるR5は、シリル基、例えば、TMS、TES、TBDMS、TBDPS、DIPS、DPS、TIPDSなどから選ばれたものであり、式(1)-(2)におけるオキサゾリジノン構造部分はオキサゾリジノン系キラル補助基であり、例えば、R4はC1-10アルキル、置換もしくは非置換のフェニル基、または置換もしくは非置換のベンジル基である2-オキソオキサゾリジノンである。好ましくは、前記R4は、イソプロピル基、非置換もしくはヒドロキシ基、ニトロ基、ジメチルアミノ基でモノ置換もしくは複数置換されたフェニル基またはベンジル基である。)
好ましくは、さらに式(2)を1回、2回または複数回再結晶する工程を含む、前記式(8)で示す化合物の製造方法。
【0017】
本発明によれば、前記式(2)は式(1)とグリニャール試薬R6MgXまたはR6Liと反応して生成するものであり、R6は
【0018】
【0019】
である。
【0020】
本発明によれば、前記反応は、塩化第一銅、臭化第一銅、ヨウ化第一銅(CuI)、シアン化第一銅などの第一銅塩の存在で不活性雰囲気下、-50℃~0℃で溶媒にて行う。前記溶媒は、テトラヒドロフランまたは無水ジエチルエーテルであってもよく、第一銅塩の使用量(質量)は、反応物である式(1)の約10-25%であり、好ましくは15-20%である。
【0021】
本発明によれば、式(1)から式(2)を製造した後、式(2)を再結晶することにより、その光学異性体の含有量を低く抑えることができる。前記再結晶の溶媒は、室温またはそれより若干高い温度で式(2)を溶解し、より低い温度(例えば-10~-30℃)で晶析するものであれば、どのような溶媒でもよく、例えば、非極性有機溶媒、好ましくはアルカン、例えばn-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、イソオクタン、またはこれらの混合溶媒、例えば石油エーテルが挙げられる。
【0022】
好ましくは、前記再結晶は、複数回繰り返してもよい。1回再結晶するにより、本発明の式(2)で示す異性体の含有量を1%以下に制御することができ、2回再結晶するにより、異形体含有量を1‰以下に制御することができ、複数回再結晶することにより、異形体含有量をより低い範囲に制御することができる。本発明の式(2)のβ-メチル基に結合されているキラル炭素原子の配置は、その後の転化プロセスにおいても変化しないため、キラル炭素の配置に関連する純度が維持されることは当業者に理解される。
【0023】
本発明によれば、前記グリニャール試薬の製造方法では、
ビニルシラン
【0024】
【0025】
とハロゲン化試薬とを比較的に低い温度(例えば-30~-10℃)で混合し、室温で酸結合剤を添加し、還流反応してハロゲン化ビニルシランを得る工程を含む。前記酸結合剤は、ジエチルアミン、エチレンジアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルアミン、ピリジン、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸セシウムなどの有機または無機の弱塩基が挙げられる。
【0026】
前記ハロゲン化ビニルシランを非プロトン性溶媒に金属マグネシウムまたは金属リチウムと反応して対応するグリニャール試薬またはリチウム試薬を生成する。前記非プロトン性溶媒として、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、t-ブチルメチルエーテル、シクロヘキシルメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル系溶媒、または、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、ベンゼン、トルエン、キシレンなどの炭化水素系溶剤が挙げられる。
【0027】
あるいは、前記ハロゲン化ビニルシランを前記溶媒に簡単に入手できる他のグリニャール試薬、例えば、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピルグリニャール試薬など、または、簡単に入手できるアルキルリチウム試薬、例えば、メチルリチウム、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、tert-ブチルリチウムと金属-ハロゲン交換反応を進行させて対応するグリニャール試薬またはリチウム試薬を生成する。
【0028】
本発明における前記式(8)で示す化合物の製造方法によれば、さらに下記の式(2)から式(3)を製造する工程を含む。
【0029】
【0030】
(そのうち、式(3)において、Xはハロゲンまたはスルホニルオキシである。)
本発明によれば、前記反応は、当業者に公知のハロゲン化反応であり、適切な溶媒中、穏和な反応温度、例えば、0℃~室温の条件で行われる。用いられるハロゲン化試薬はX2、RCO2X、RnSiX4-nであってもよく、そのうち、Xは塩素、臭素、ヨウ素から選ばれたハロゲンであり、かつ、X2における2つのXは異なってもよく、RはC1-10アルキルまたはフッ素置換C1-10アルキルから選ばれたものであり、nは1~3の整数である。前記ハロゲン化試薬の実例として塩素、臭素、ヨウ素の単体、BrCl、ICl、TMSCl、TMSI、CF3CO2Iなどが挙げられる。
【0031】
あるいは、本発明における製造方法は、さらにXがハロゲンである式(3)で示す化合物を、当業界に公知の置換反応でXがスルホニルオキシである式(3)で示す化合物に転化する工程を含む。
【0032】
本発明における前記式(8)で示す化合物の製造方法によれば、さらにオキサゾリジノン系キラル補助基と対応するアシル化合物から式(1)で示す化合物を製造する工程を含む。
【0033】
【0034】
本発明によれば、前記反応は、塩基性、低温条件(-80℃~-20℃)で行われ、前記反応は任意に触媒量の塩化リチウムと溶媒を用いてもよい。前記塩基は、有機塩基、無機塩基またはそれらの混合物、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸セシウム、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジン、n-ブチルリチウム(n-BuLi)から選択される1種または複数種である。前記溶媒は、例えば、テトラヒドロフラン、N,N-ジメチルホルムアミド( DMF )、ジクロロエタン、ジエチルエーテル、四塩化炭素、トルエンなどであり、前記アシル化合物は、エステル、カルボン酸、酸ハライドまたは酸無水物であってもよい。本発明の1つの実施形態によれば、前記オキサゾリジノン系キラル補助基と酸ハライドとを-80~-60℃でテトラヒドロフランを溶媒とし、アルゴンの保護およびn-ブチルリチウムの存在で反応させ、前記n-ブチルリチウムの使用量は質量でオキサゾリジノンの約30-50%であり、あるいは、前記オキサゾリジノン系キラル補助基と酸無水物とを-30~-20℃でテトラヒドロフランを溶媒とし、塩化リチウムとトリエチルアミンの存在で反応させ、前記塩化リチウムの使用量は質量でオキサゾリジノンの約35%-55%である。
【0035】
本発明における前記式(8)で示す化合物の製造方法によれば、さらに下記の式(3)から式(4)を製造する工程を含む。
【0036】
【0037】
前記反応は、オキサゾリジノンキラル補助基を脱離分離する条件で行い、好ましくは塩基性条件で加水分解除去する。
【0038】
本発明によれば、前記反応は-15~5℃、塩基性条件、溶媒媒体および任意選択的な過酸化水素中で行うことができる。前記反応温度は-10~0℃、好ましくは-5~0℃である。前記塩基は有機塩基、無機塩基またはそれらの混合物、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水、酢酸ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジンから選択される1種または複数種である。前記溶媒は、水と、アルコール系、エーテル系、例えばテトラヒドロフラン(THF)またはジオキサン、アセトンから選ばれた1種または複数種とからなる混合溶媒であり、混合溶媒における水と有機溶媒との比率(体積比)は、約1:1~約1:6であってもよく、好ましくは約1:2~1:3である。本発明の1つの実施形態によれば、前記反応は-5~0℃でテトラヒドロフランと水との混合溶媒に水酸化リチウム一水和物、過酸化水素の存在で行われ、前記式(3)で示す化合物、過酸化水素、水酸化リチウム一水和物の質量比は12-20:3-9:1-6である。
【0039】
本発明における前記式(8)で示す化合物の製造方法によれば、さらに式(4)から式(5)を製造する工程を含む。
【0040】
【0041】
本発明によれば、前記反応はカップリング剤の存在で行われ、前記カップリング剤はEDCI/DMAP、EDC/DMAP、EDC/NHS、DCC/NHSシステムであってもよく、前記反応は15-40℃、好ましくは室温(20-25℃)で行われる。反応溶媒はジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)やジメチルホルムアミド(DMF)などであってもよい。
【0042】
本発明における前記式(8)で示す化合物の製造方法によれば、さらに式(5)とアルデヒドから式(6)を製造する工程を含む。
【0043】
【0044】
本発明によれば、前記反応は四塩化チタン(TiCl4)とトリエチルアミン(TEA)の存在で不活性雰囲気の保護で比較的に低い温度の-10~10℃、好ましくは0℃で反応を行い、前記反応溶媒はジクロロメタン(DCM)などであってもよい。
【0045】
本発明によれば、前記アルデヒドの製造方法は、
ブタンジオールとRnSiX4-nをカップリング剤の存在で反応させてモノヒドロキシ保護生成物を得る工程(I)であって、
Xは、塩素、臭素、ヨウ素から選ばれたハロゲンであり、RはC1-10アルキルまたはフッ素置換C1-10アルキルから選ばれたものであり、nは1~3の整数である。前記ハロシランであるRnSiX4-nの実例としてTMSCl、TMSI、TBDPSCl、TBDPSIなどであってもよく、
前記カップリング剤はEDCI/DMAP、EDC/DMAP、EDC/NHS、DCC/NHSシステムであってもよく、前記反応は15-40℃、好ましくは室温(20-25℃)で行う。反応溶媒はジクロロメタン(DCM)、テトラヒドロフラン(THF)およびジメチルホルムアミド(DMF)などであってもよい工程(I)、および、
工程(I)の生成物を酸化する工程(II)であって、
前記酸化は、下記のアルコールをアルデヒドまたはケトンに酸化するいずれの方法である工程(II)を含む。
【0046】
本発明における前記式(8)で示す化合物の製造方法によれば、さらに式(6)から式(7)を製造する工程を含む。
【0047】
【0048】
本発明によれば、前記酸化は、当業者に公知のアルコールをアルデヒドまたはケトンに酸化できるいずれの方法であり、例えばswern酸化、Pfitzner-Moffatt酸化、Albright-Goldman酸化法がある。本発明の1つの実施形態によれば、前記酸化はジメチルスルホキシド(DMSO)と三酸化硫黄-ピリジン錯体(SO3・py)を、-15~25℃、塩基性条件でアルコールと反応するParikh-Doering酸化法を採用する。前記塩基はトリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)であってもよく、前記反応温度は、好ましくは0℃~室温(室温は20-25℃である)であり、前記反応は、DMSOの添加量に応じて、任意に溶媒を添加することもできるが、少量のDMSOでは、溶媒を多く使用し、多量のDMSOでは、溶媒を少なくまたは使用せずに済み、前記溶媒は例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルムなどがある。
【0049】
本発明における前記式(8)で示す化合物の製造方法によれば、さらに前記式(7)を加水分解して「R2、R3がこれらに結合する炭素と共にカルボニルを形成する」式(8)を得る工程を含む。
【0050】
本発明によれば、前記加水分解反応は、15-40℃で塩基性条件で溶媒媒体に行う。前記反応温度は室温(20-25℃)であってもよく、前記塩基は、有機塩基、無機塩基またはそれらの混合物、例えば、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸セシウム、水酸化リチウム、水酸化リチウム水和物、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、アンモニア水、酢酸ナトリウム、トリエチルアミン、ピリジン、ピペリジンから選択される1種または複数種である。前記溶媒は、水と、アルコール系、エーテル系、例えばテトラヒドロフラン(THF)またはジオキサン、アセトンから選ばれた1種または複数種とからなる混合溶媒であり、混合溶媒における水と有機溶媒との比率(体積比)は、約1:1~約1:6であってもよく、好ましくは約1:4である。本発明の1つの実施形態によれば、加水分解反応は室温でテトラヒドロフランと水との混合溶媒に水酸化リチウム一水和物の存在で行う。
【0051】
本発明における前記式(8)で示す化合物の製造方法によれば、式(6)で示す化合物から式(8)を得る工程であって、そのうち、「R2、R3は、同一または異なって、互いに独立してHおよびORaから選ばれたものであり、Raは独立してH、C1-10アルキル、RbSO2から選ばれたものであり、RbはC1-10アルキルである」工程を任意に含む。前記反応は、当業界に公知のヒドロキシアルキル化またはスルホニル化反応である。
【0052】
本発明における前記式(8)で示す化合物の製造方法によれば、任意に「R2およびR3がこれらに結合する炭素とカルボニル基を形成する式(8)から、R2とR3がいずれもORaであり、かつ、2つのRaが結合してC1-6アルキレンを形成する」式(8)を製造する工程を含む。前記反応はケタールを製造するための当業界に公知の反応であり、例えば、ケトンと対応するエチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類とを、p-トルエンスルホン酸の触媒で水同伴剤としてのベンゼン、トルエンなどの存在で前記ケタールを得る反応がある。
【0053】
本発明によれば、前記式(8)はハリコンドリン、特にエリブリンまたはその薬学的に許容される塩のC20-C26構造断片を構築する中間体である。
【0054】
本発明の第2態様は、下記の式(2)で示す化合物およびその製造方法を提供する。
【0055】
【0056】
(そのうち、R4、R5は前記定義の通りである。)
式(2)で示す化合物の製造方法は、前記式(1)から式(2)を製造する工程を含む。
【0057】
本発明によれば、前記式(2)で示す化合物の製造方法は、さらに前記1回、2回または複数回再結晶する工程を含む。
【0058】
本発明によれば、前記式(2)で示す化合物の製造方法は、さらにオキサゾリジノン系キラル補助基と対応するアシル化合物から式(1)を製造する工程を含む。
【0059】
本発明の第3の態様は、下記の式(3)で示す化合物およびその製造方法を提供する。
【0060】
【0061】
(そのうち、R4、Xは前記定義の通りである。)
式(3)で示す化合物の製造方法は、前述した式(2)から式(3)を製造する工程を含む。
【0062】
本発明によれば、前記製造方法はさらに前記式(2)で示す化合物の製造方法を含む。好ましくは、さらに前記式(2)で示す化合物を1回、2回または複数回再結晶する工程を含む。
【0063】
好ましくは、さらにオキサゾリジノン系キラル補助基と対応するアシル化合物から式(1)を製造する工程を含む。
【0064】
本発明の第4の態様は、下記の式(7)で示す化合物およびその製造方法を提供する。
【0065】
【0066】
(そのうち、R1はヒドロキシ保護基である。
【0067】
R2、R3は同一または異なって、互いに独立してHおよびORaから選ばれたものであり、Raは独立してH、C1-10アルキル、RbSO2から選ばれたものであり、RbはC1-10アルキルであり、あるいは、R2とR3は、いずれもORaであり、かつ、2つのRaが結合してC1-6アルキレンに形成し、あるいは、R2およびR3はこれらに結合する炭素とカルボニル基を形成し、
Xは、ハロゲン、スルホニルオキシ基から選ばれたものである。)
好ましくは、R1はモノシラン系ヒドロキシ保護基、例えば、TMS、TES、TBDMS、TBDPS、DIPS、DPS、TIPDSなどがある。
【0068】
R2、R3の一方はHから選択されたものであり、他の一方はORaから選択されるものであり、かつ、RaはHまたはi-PrSO2であり、あるいは、R2とR3はいずれもORaであり、かつ、2つのRaが結合してn-プロピレンに形成し、あるいは、R2及びR3はこれらに結合する炭素とカルボニル基を形成し、
Xは塩素、臭素、ヨウ素などから選ばれたものである。
【0069】
前記式(7)で示す化合物の製造方法は下記の工程を含む。
【0070】
方法一:R2およびR3はこれらに結合する炭素とカルボニル基を形成する式(7)は、R2、R3がそれぞれH、OHである式(7)から酸化し得る。
【0071】
【0072】
本発明によれば、前記酸化は、当業者に公知されているアルコールをアルデヒドまたはケトンに酸化できるいずれの方法であり、例えば、swern酸化、Pfitzner-Moffatt酸化、Albright-Goldman酸化法がある。本発明の1つの実施形態によれば、前記酸化はジメチルスルホキシド(DMSO)と三酸化硫黄-ピリジン錯体(SO3・py)とを-15~25℃、塩基性条件でアルコールと反応するParikh-Doering酸化法を採用する。前記塩基は、トリエチルアミンまたはN,N-ジイソプロピルエチルアミン(DIPEA)であってもよく、前記反応温度は、好ましくは0℃~室温(20-25℃)であり、前記反応は、DMSOの添加量に応じて、任意に溶媒を添加することもできるが、少量のDMSOでは溶媒を多く使用し、多量のDMSOでは溶媒を少なくまたは使用せずに済み、前記溶媒は例えばジクロロメタン、テトラヒドロフラン、クロロホルムなどがある。
【0073】
方法二:R2、R3がそれぞれH、OHである式(7)は下式の化合物(5)から製造し得る。
【0074】
【0075】
本発明によれば、前記反応は四塩化チタン(TiCl4)とトリエチルアミン(TEA)の存在で不活性雰囲気の保護で比較的に低い温度の-10~10℃、好ましくは0℃で反応を行い、前記反応溶媒はジクロロメタン(DCM)などであってもよい。
【0076】
式(7)におけるR2とR3が他の定義である化合物は、当業界に公知の置換または縮合などの方法でR2およびR3がこれらに結合する炭素と共にカルボニルを形成する式(7)、あるいはR2、R3がそれぞれH、OHである式(7)で示す化合物から製造し得る。
【0077】
本発明の第5の態様は、さらにハリコンドリン、特にエリブリン、その薬学的に許容される塩および類似体を製造するための式(2)、式(3)、式(7)で示す化合物の使用を提供する。具体的に、前記式(2)、式(3)、式(7)で示す化合物は、式(8)で示す化合物の製造に用いられ、前記式(8)は、ハリコンドリン、特にエリブリンのC20-C26構造断片を構築する中間体である。
【0078】
本発明の第6の態様は、下記の工程を含む前記式(8)化合物の製造方法を提供する。
【0079】
【0080】
本発明における式(8)で示す化合物の製造方法は、
好ましくは、さらに下記のR2、R3がそれぞれH、OHである式(7)から酸化反応によってR2およびR3がこれらに結合する炭素とカルボニル基を形成する式(7)を製造する工程を含む。
【0081】
【0082】
好ましくは、さらに下記の式(5)および式(6)からR2、R3がそれぞれH、OHである式(7)を製造する工程を含む。
【0083】
【0084】
好ましくは、さらに前述した式(4)から式(5)で示す化合物を製造する工程を含む。
【0085】
好ましくは、さらに前述した式(3)から式(4)で示す化合物を製造する工程を含む。
【0086】
好ましくは、さらに前述した式(2)から式(3)で示す化合物を製造する工程を含む。
【0087】
好ましくは、さらに前述した式(1)から式(2)で示す化合物を製造する工程を含む。
【0088】
好ましくは、さらに式(2)を1回、2回または複数回再結晶する工程を含む。
【0089】
好ましくは、さらに前述したオキサゾリジノン系キラル補助基から式(1)で示す化合物を製造する工程を含む。
【0090】
本発明の第7の態様は、ハリコンドリン、エリブリン、その類似体またはその薬学的に許容される塩、あるいはこれらのC20-C26部分を製造する方法であって、前記オキサゾリジノン系キラル補助基、式(1)~式(7)のいずれの化合物、および/または前記1種または複数種の式(1)~式(8)の製造方法を用いることを含む方法を提供する。
【0091】
本発明は、さらにハリコンドリン、エリブリン、その類似体またはこれらのC20-C26部分を製造するための前記オキサゾリジノン系キラル補助基、式(1)~式(7)のいずれの化合物の使用を提供する。
【0092】
本発明の上記の化合物の記号、基の定義、反応条件は、列挙されたもの以外は、それらの前述のものと同じ定義または意味を有する。
【0093】
用語および定義
特に定義されない限り、本明細書の全ての技術用語の意味は請求の範囲の主題が属する技術分野の技術者が一般的に理解する意味と同じである。特に明記しない限り、本発明に引用されたすべての特許、特許出願、開示されている材料の全文は、引用により本明細書に組み込まれている。
【0094】
本発明の明細書および請求の範囲に記載の数値範囲について、当該数値範囲が「整数」として理解される場合、当該範囲の2つの端点および当該範囲内の各整数が列挙されることを理解されたい。例えば、「0~10の整数」は、0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10の各整数が記載されていることを理解されたい。当該数値範囲が「数値」として理解される場合、当該範囲の2つの端点、当該範囲内の各整数および当該範囲内の各小数が記載されていることを理解されたい。例えば、「1~10の数」は、1、2、3、4、5、6、7、8、9、および10の各整数が記載されているだけでなく、少なくとも各整数と0.1、0.2、0.3、0.4、0.5、0.6、0.7、0.8、または、0.9との合計を表すことを理解されたい。
【0095】
用語「ハリコンドリン、その類似体」は、ポリエーテルマクロライド構造を有するものであって、エリブリンのC20-C26構造断片を有するものであると理解されるべきである。例えば、エリブリン、ノルハリコンドリンA-C(norhalichondrin)、ハリコンドリンB-C(Halichondrin)、ホモハリコンドリンA-C(homohalichondrin)、または、これらの薬学的に許容される塩、例えば、薬学的に許容される酸と形成した塩、例えば、メタンスルホン酸塩、例えばエリブリンメタンスルホン酸塩が挙げられる。
【0096】
用語「C1~10アルキル」は、好ましくは1、2、3、4、5、6、7、8、9または10個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の飽和一価炭化水素基を表すことが理解されるべきである。前記アルキルは例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、ペンチル、ヘキシル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、イソペンチル、2-メチルブチル、1-メチルブチル、1-エチルプロピル、1,2-ジメチルプロピル、ネオペンチル、1,1-ジメチルプロピル、4-メチルペンチル、3-メチルペンチル、2-メチルペンチル、1-メチルペンチル、2-エチルブチル、1-エチルブチル、3,3-ジメチルブチル、2,2-ジメチルブチル、1,1-ジメチルブチル、2,3-ジメチルブチル、1,3-ジメチルブチルまたは1,2-ジメチルブチルなどまたはそれらの異性体である。特に好ましくは前記の基は、1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有するもの(「C1~6アルキル」)であり、例えばメチル、エチル、プロピル、ブチル、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチルであり、より好ましくは前記の基が1、2または3個の炭素原子を有するもの(「C1~3アルキル」)であり、例えばメチル、エチル、n-プロピルまたはイソプロピルがある。
【0097】
用語「C1~6アルキレン」は、好ましくは1、2、3、4、5または6個の炭素原子を有する直鎖または分岐鎖の飽和二価炭化水素基を表すことが理解されるべきであり、例えば、メチレン、エチレン、n-プロピレン、イソプロピレンがある。
【0098】
用語「ヒドロキシル保護基」は、結合している酸素原子を反応または結合しないように保護することができる任意の基を意味する。これらのヒドロキシル保護基は、本分野で知られているものである。示例的なヒドロキシル保護基として、アシル、エステル基、炭酸エステル基、ウレタン基、スルホン酸エステル基およびエーテル基が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0099】
本明細書に定義されるように、示例的なエーテル基であるヒドロキシル保護基として、C1~12アルキル(例えば、C1~8、C1~6、C1~4、C2~7、C3~12およびC3~6アルキル)、および、シリル系(例えば、トリス(C1-6アルキル)シリル、トリス(C6-10アリールまたはC1-6ヘテロアリール)シリル、ビス(C6-10アリールまたはC1-6ヘテロアリール)(C1-6アルキル)シリルおよび(C6-10アリールまたはC1-6ヘテロアリール)ビス(C1-6アルキル)シリル)を含む。アルキルの具体的な実例として、メチルおよびtert-ブチルを含み、シリルの具体的な実例として、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)およびトリフェニルシリル(TPS)エーテル、TBDMS、DIPS、DPS、TIPDSなどがある。
【0100】
上記で定義されたヒドロキシル保護基は、除去剤を用いて脱保護されたものであってもよい。前記ヒドロキシル保護基除去剤は、保護されたヒドロキシルを有する化合物と反応して脱保護されたヒドロキシル基を有する化合物を提供する試薬である。ヒドロキシル保護基除去剤と脱保護反応条件は本分野で知られているものである。非限定的な実例として、シリルエーテルとしてマスクされたヒドロキシル基は、フッ化物源(例えば、フッ化物塩、例えばKFまたはTBAF)との反応によってアンマスキングすることができる。また、代替案としてTMSまたはTESエーテルとして保護されたヒドロキシルはブレンステッド酸(例えば、カルボン酸)との反応によって保護を取り外すことができる。もう1つの非限制的な実例として、エステルとして保護されたヒドロキシルは、C1~6アルコキシド(例えば、アルカリ金属C1~6アルコキシドまたはアルカリ土類金属C1~6アルコキシド)との反応によって保護を取り外すことができる。もう1つの非限定的な実例として、アリールアルキルエーテル(例えば、1-アリールアルキル-1-イルエーテル)として保護されたヒドロキシルは、還元反応(例えば、Pd/C及びH2との反応、またはNa/NH3との反応)を利用して保護を取り外すことができる。代替案として、アルコキシ-アリールアルキルエーテル(例えば、MPMエーテル)として保護されたヒドロキシルは2,3-ジクロロ-5,6-ジシアン基-1,4-ベンゾキノン(DDQ)との反応によって保護を取り外すことができる。もう1つの非限制的な実例として、アルコキシアルキルエーテル(例えば、1-アルコキシアルキル-1-イル)またはTHPエーテルとして保護されたヒドロキシルは、ブレンステッド酸との反応によって保護を取り外すことができる。環状で保護されたジオール(例えば、アセタールまたはケタール(例えば、2-アルキル-1,3-ジオキソラン、2,2-ジアルキル-1,3-ジオキソラン、2-アルキル-1,3-ジオキサンまたは2,2-ジアルキル-1,3-ジオキサン))は、ブレンステッド酸(例えば、カルボン酸)との反応によって保護を取り外すことができる。
【0101】
本発明におけるスルホニルオキシ基としては、アルキルスルホニルオキシ基(例えば、C1-10アルキル基)、アルケニルスルホニルオキシ基(例えば、C2-10アルケニル基)、アリールスルホニルオキシ基が挙げられる。実例として、メタンスルホニルオキシ基、トルエンスルホニルオキシ基(例えば、p-トルエンスルホニルオキシ基)、トリフルオロメタンスルホニルオキシ基、ニトロベンゼンスルホニルオキシ基(o-、p-ニトロベンゼンスルホニルオキシ基)、ブロモベンゼンスルホニルオキシ基(o-、p-ブロモベンゼンスルホニルオキシ基)を含むがこれらに限定されていない。
【0102】
本発明におけるシリルは、トリ(C1-6アルキル)シリル、トリ(C6-10フェニルまたはC6-10ヘテロアリール)シリル、ジ(C6-10フェニルまたはC6-10ヘテロアリール)(C1-6アルキル)シリルおよび(C6-10フェニルまたはC6-10ヘテロアリール)ジ(C1-6アルキル)シリルがある。シリルの実例として、トリメチルシリル(TMS)、トリエチルシリル(TES)、tert-ブチルジメチルシリル(TBS)、tert-ブチルジフェニルシリル(TBDPS)、トリイソプロピルシリル(TIPS)およびトリフェニルシリル(TPS)エーテル、TBDMS、DIPS、DPS、TIPDSなどがあるがこれらに限定されていない。
【0103】
本発明における適当なフェニルまたはベンジルの置換基は、ハロゲン(フッ素、塩素、臭素、ヨウ素)、C1-10アルキル、C1-10アルコキシ基、水酸基、ニトロ基、アミノ基、1つまたは2つのC1-10アルキルで置換されたアミノ基、SO3H、SO3C1-10アルキルがあるがこれらに限定されていない。
【0104】
本発明における塩基は有機塩基、無機塩基またはこれらの混合物であってもよく、例えば、アルカリ金属またはアルカリ土類金属の炭酸塩または炭酸水素塩として、例えば炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、炭酸カルシウム、炭酸セシウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸水素カルシウム、アルカリ金属アルコキシドとして、例えばナトリウムtert-ブトキシドまたはカリウムtert-ブトキシド、有機リチウムとして、例えばブチルリチウムまたはフェニルリチウム、アルカリ金属水素化物として、例えば、水素化ナトリウムまたは水素化カリウム、アンモニア化合物として、例えばリチウムビス(トリメチルシリル)アミド、カリウムビス(トリメチルシリル)アミドまたはリチウムジイソプロピルアミド(LDA)、有機アミンとして、例えばトリエチルアミン、N-メチルモルホリン、ピペリジン、N-メチルピペリジン、N,N-ジイソプロピルエチルアミン、1,5-ジアザビシクロ[4.3.0]-5-ノネン(DBN)、1,8-ジアザビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン(DBU)、ピリジンまたは4-ジメチルアミノピリジン(DMAP)がある。
【0105】
本発明に記載した酸は、有機酸、無機酸またはそれらの混合物であってもよく、例えば、酢酸またはトリフルオロ酢酸などのカルボン酸、例えばメタンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸などのスルホン酸、ホスホン酸、塩酸、硫酸、リン酸から選ばれた1種類または複数種類であってもよい。前記の酸は、さらに、ルイス酸を含む。前記のルイス酸は、例えばBF3・OEt2、MgCl2、MgBr2、ZnBr2、ZnI2、ZnCl2、ZnSO4、CuCl2、CuCl、Cu(O3SCF3)2、CoCl2、CoI2、FeI2、FeCl3、FeCl2、FeCl2、SnCl4、TiCl4、TiCl3、MnCl2、ScCl3、AlCl3、(i-C4H9)2AlCl、(C6H5)2AlCl、(C6H5)AlCl2、ReCl5、ZrCl4、NbCl5、VCl3、CrCl2、MoCl5、YCl3、CdCl2、LaCl3、Er(O3SCF3)3、Yb(O2CCF3)3、SmCl3、B(C6H5)3、TaCl5またはトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルから選ばれた1種類または複数種類であってもよく、その具体的な実例として、BF3・OEt2、MgCl2、ZnCl2、MgBr2、ZnBr2、AlCl3、SnCl4、TiCl4またはトリフルオロメタンスルホン酸トリメチルシリルから選ばれた1種類または複数種類であってもよい。
【0106】
本発明に記載した溶媒は例えば水、例えばアセトンおよびメチルエチルケトンなどのケトン系溶媒、例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどの非環式エーテルおよび環状エーテルを含めるエーテル系溶媒、例えば酢酸エチルまたは酢酸ブチルなどのエステル系溶媒、例えばn-ヘキサンまたはn-ヘプタンなどのアルカン系溶媒、例えば塩化メチル、ジクロロメタン、クロロホルム、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタンなどのハロアルカン系溶媒、例えばシクロヘキサンまたはシクロヘプタンなどのシクロアルカン系溶媒、例えばベンゼン、トルエン、キシレン、クロロベンゼンなどの置換または非置換の芳香族炭化水素系溶媒、例えばメタノール、エタノール、n-プロパノール、イソプロパノール、n-ブタノールまたはtert-ブタノールなどのアルコール系溶媒、または例えば、N,N-ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、N-メチルピロリドン(NMP)、アセトニトリルまたはピリジンなどのほかの溶媒から選ばれた1種類または2種類以上の混合物を含んでもよい。好ましくは、前記溶媒は、反応基質および触媒と反応しない不活性溶媒から選ばれたものである。実例として、前記不活性溶媒は、例えばアルコール系溶媒(例えばメタノール、エタノール)、エーテル系溶媒(例えばジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン)、ハロアルカン系溶媒(例えばジクロロメタン、トリクロロメタン、四塩化炭素、1,2-ジクロロエタン)、置換または非置換芳香族炭化水素(例えばベンゼン、トルエン、クロロベンゼン)からの1種類または複数種類である。
【0107】
特に明記しない限り、本発明における溶媒は無水溶媒である。
【0108】
有益效果
本発明は、ハリコンドリン、エリブリンまたはその類似体、特にそのC20-C26構造断片部分の合成に用いられる中間体、その製造方法および使用を提供する。本発明の合成経路の出発原料は、安価で容易に入手可能であり、かつ、式(2)、式(3)で示す化合物はいずれも結晶体であり、再結晶精製方式により生成物の純度を簡単に高めることができる。特に、式(2)で示す化合物を2回再結晶した後、99.9%超える光学純度が得られ、しかも当該化合物のβ位のメチル基に結合したキラルな炭素原子の配置が後工程で変化しないため、ハリコンドリン、エリブリンまたはその類似体のC20-C26の光学純度を保証できる。したがって、本発明のC20-26構造断片のキラル中心を構築する方法では、比較的に高いジアステレオマー選択性及び収率を有し、再結晶などの簡便な方法で副生物を除去することができる。当該方法では、いずれの工程、特に式(7)で示す化合物から式(8)で示す化合物を製造する工程が比較的低温で穏和な反応条件下で行われるため、高温加熱による生成物の熱分解損失を回避できる。本発明の製造方法、特に初期工程の生成物は、全て結晶性固体であり、純化及び精製が容易である。以上の利点から、本発明の方法は、低コストで、高収率及び高純度であり、精製が簡単であり、したがって、工業的な大量生産により適している。
【0109】
〔図面の説明〕
〔
図1〕
図1は、本発明の実施例1の合成経路図である。
【0110】
〔発明を実施するための形態〕
本発明の前述した特徴および他の特徴および利点は、本発明の実施例の説明によってより詳細に説明および図示される。以下の実施例は、本発明の技術範囲を例示することを意図しており、特許請求の範囲およびその均など物によって定義される本発明の範囲を限定することを意図していないことを理解されたい。
【0111】
特に明記しない限り、本明細書の材料および試薬は、市販されているか、または先行技術に照らして当業者が調製することができる。
【0112】
以下の実施例における出発物質、試薬、中間体、目的化合物または反応式は、前述した一般式で示す化合物またはそれらの反応の例示的な構成であり、1つまたは複数の特定の化合物または特定の反応式は、本発明の前述した一般的な実施形態と組み合わせることができ、かつ、組み合わせることによって得られた構成は、本明細書に記載された構成であると理解されるべきである。
【0113】
特に明記しない限り、下記の実施例において、収率は、製品の純度99.5%以上で計算されたものである。
【0114】
実施例1:化合物8の製造方法一(
図1を参照)
1.1化合物1の製造
方法一
(s)-4-フェニル-2-オキサゾリジノン(15.6g)を500ml三口フラスコに加え、乾燥THF(200ml)を添加して溶解させ、アルゴンガスに置換し、アルゴンガスで保護し、そして反応液を-78℃に降温しn-BuLiのTHF溶液(2.5M、38ml)(内温≦-60℃に維持する)を滴下し、滴下終了後、-78℃を維持して15min反応させ、そしてクロトン酸クロリド(10g)を滴下し、滴下終了後、-78℃を維持して30min反応させ、そして0℃に昇温して1.5h反応した。TLCにより反応終了を確認した後、塩化アンモニウム飽和溶液をゆっくりと加えてクエンチし、固体が消失するまでよく攪拌し、明らかに層を分離した。分液し、水相を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせた後、飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄した。有機相に無水硫酸ナトリウムを添加して乾燥、濾過して濾液を濃縮した。得られた濃縮物に酢酸エチル(100ml)を添加し、加熱還流して溶解し、そしてn-ヘキサン(500ml)を添加し、冷却し、撹拌晶析させた。ろ過して白色固形製品17.7gを收率80%で得た。
【0115】
方法二:
(s)-4-フェニル-2-オキサゾリジノン(60g)を2000ml三口フラスコに加え、一般的な(無水処理を行わない試薬グレード) THF(1200ml)を添加して溶解し、室温条件でLiCl(26.4g)およびTEA(91.2ml)を加え、そして無水クロトン酸(82.2ml)をゆっくりと滴下し、内温≦25℃を維持し、滴下終了後、室温条件を維持して3h反応させた。TLCモニターにより原料(s)-4-フェニル-2-オキサゾリジノンの消失を確認した後、水(800ml)を加え、反応液にて固体を溶解し、分液し、水層を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせた後、飽和塩化ナトリウム溶液で1回洗浄した。有機相に無水硫酸ナトリウムを添加して乾燥、濾過して濾液を濃縮した。得られた濃縮物に酢酸エチル(400ml)を添加し、加熱還流して溶解し、そしてn-ヘキサン(2000ml)を添加し、冷却し、撹拌晶析させた。ろ過して白色固形製品72gを收率85%で得た。
【0116】
1H NMR (400 MHz, ) δ 7.44 - 7.23 (m, 6H), 7.21 - 6.96 (m, 1H), 5.47 (dd, J = 8.7, 3.9 Hz, 1H), 4.68 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 4.26 (dd, J = 8.9, 3.9 Hz, 1H), 1.92 (dd, J = 6.9, 1.6 Hz, 3H).
1.2化合物2の製造
1)(1-ブロモビニル)トリメチルシランの製造
ビニルトリメチルシラン(100g)を2000ml三口フラスコに加え、-35℃~-30℃に降温し、臭素水をゆっくりと滴下し、滴下時に激しく発熱し、滴下中に内温を-30℃~-10℃の間に保ち(内温が-30℃未満である場合反応系が固体になり)、滴下終了後、温度を室温まで自然上昇し、ジエチルアミン(676ml)をゆっくりと滴下し、滴下初期では発熱し、滴下終了後、1.2時間加熱還流反応した。反応完了後、反応液を室温に降温し、ジエチルエーテル(1000ml)を加えて希釈し、2~3回加水洗浄した後2N塩酸で洗浄し、水層PH=1まで洗浄し、有机相を順番に飽和炭酸水素ナトリウム、飽和塩化ナトリウムで1回ずつ洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過し、濾液を濃縮した。減圧蒸留し、留出分80g(38-42℃)を取った。收率は45%であった。
【0117】
1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 6.27 (s, 1H), 6.19 (s, 3H), 0.20 (s, 9H).
2)化合物2の製造
Mg粒(8.4g)とヨウ素粒(1-2粒)を三口フラスコに加え、アルゴンガスに置換し、アルゴンガスで保護した。(1-ブロモビニル)トリメチルシラン(62.7g)を乾燥THF(159ml)に溶解し、室温条件でその一部(20ml)を前記三口フラスコに加え、三口フラスコを反応フラスコ中で反応が起こるまで加熱し、還流し、滴下を続け、還流状態を維持し、滴下終了後、反応フラスコを油浴中で1時間加熱還流した。グリニャール試薬を製造した。
【0118】
CuI(6.69g)を1000ml三口フラスコに加え、THFを添加し、アルゴンガスに置換して保護し、そして反応液を-40℃に降温し、前記グリニャール試薬を滴下し、内温≦-30℃に維持し、滴下終了後、-40℃に維持しながら0.5h反応した後、化合物1のTHF(40.45g/40ml THF)溶液を滴下し、滴下終了後、0℃に昇温して2h反応させた。TLCモニターにより化合物1の消失を確認した後、飽和塩化アンモニウム溶液をゆっくりと添加して反応をクエンチし、4-6h激しく攪拌して清澄な二相を得、分液し、水相を酢酸エチルで2回抽出し、有機相を合わせた後、飽和食塩水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過し、濃縮して粗品57gを得た。粗品を常温でn-ヘキサン570mlに溶解し、-20℃冷蔵庫に入れ、静置晶析した。翌日、冷時ろ過、冷n-ヘキサンで洗浄して白色固形物42gを得た。2回再結晶を経って、純度99.94%になった。
【0119】
1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.63 - 7.26 (m, 5H), 5.74 (d, J = 1.9 Hz, 1H), 5.51 (dd, J = 8.7, 3.8 Hz, 1H), 5.42 (d, J = 2.2 Hz, 1H), 4.76 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 4.35 (dd, J = 9.0, 3.8 Hz, 1H), 3.30 (q, J = 9.4 Hz, 1H), 3.08 - 2.84 (m, 2H), 1.09 (d, J = 6.2 Hz, 3H), 0.12 (s, 9H).
1.3化合物3の製造
ヨウ素(43.2g)をDCM(752ml)に溶解し、0℃条件で原料2(18.8g)を分割添加し、添加終了後、室温に昇温して約12-20h反応し、TLCモニターにより原料点が基本的に消失することを確認した後、飽和亜硫酸ナトリウム溶液を加えて反応をクエンチし、溶液が紫色の退色が起こるまで激しく攪拌して無色にし、分液し、水層をDCMで1回抽出し、有機相を合わせた後、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過し、濃縮して粗品20gを得た。カラムクロマトグラフィーで単離して製品15gを得た。製品をn-ヘキサン-酢酸エチル混合溶媒(70ml)に加熱溶解し、冷却し、攪拌晶析した。ろ過して白色固体9.4gを收率43%で得た。
【0120】
1H NMR (500 MHz, Chloroform-d) δ 7.41 - 7.27 (m, 5H), 6.09 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 5.62 (d, J = 1.6 Hz, 1H), 5.43 (dd, J = 8.8, 4.0 Hz, 1H), 4.70 (t, J = 8.8 Hz, 1H), 4.27 (dd, J = 9.0, 4.0 Hz, 1H), 3.23 (dd, J = 16.9, 6.6 Hz, 1H), 2.85 (dd, J = 16.9, 7.0 Hz, 1H), 2.56 (q, J = 6.8 Hz, 1H), 1.04 (d, J = 6.7 Hz, 3H).
1.4化合物4の製造
原料3(14.27g)をTHF-H2O混合溶液(148ml-37ml)に溶け、そして約-5℃に降温し、過酸化水素(35%、15.8ml)、水酸化リチウム一水和物の水溶液(3.1g/30ml H2O)を順次添加し、添加終了後、0℃に維持しながら2h反応させた。TLCモニターにより原料点の消失を確認した後、反応液を室温に加温し、亜硫酸ナトリウム飽和溶液を澱粉ヨウ化カリウム試験紙が変色しないまでゆっくりと添加し、THFを減圧留去し、水相を(s)-4-フェニル-2-オキサゾリジノンがなくなるようにDCMで2-3回洗浄して水相を丸底フラスコに入れ、0℃に冷却し、10%希塩酸溶液でPHを1に調整した。そして、DCMで2-3回抽出し、乾燥、ろ過、濃縮して化合物4を得た。
【0121】
1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 6.21 (s, 1H), 5.90 - 5.59 (m, 1H), 2.62 - 2.54 (m, 1H), 2.54 - 2.46 (m, 1H), 2.31 (dd, J = 15.0, 6.4 Hz, 1H), 1.11 (d, J = 6.5 Hz, 3H).
1.5化合物5の製造
得られた前記化合物4をDCM(185ml)に溶け、室温条件でチアゾリン-2-チオン(4.84g)、EDCI(8.86g)およびDMAP(0.7g)を加えた。室温を維持して4-6h反応させ、TLCモニターにより原料点の消失を確認した後、飽和硫酸水素ナトリウム溶液を加えて反応をクエンチし、攪拌、分液し、水相をDCMで2回抽出し、有機相を合わせた後、飽和重炭酸ナトリウム、飽和食塩水で順次洗浄し、そして無水硫酸ナトリウムを添加して乾燥、濾過、濃縮し、カラムクロマトグラフィーで単離精製して黄色シロップ状製品10.06g(放置または凍結すると固化する)を收率80%で得た。
【0122】
1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 6.22 (dd, J = 1.6, 0.9 Hz, 1H), 5.76 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 4.65 - 4.45 (m, 2H), 3.47 (dd, J = 17.1, 7.3 Hz, 1H), 3.35 - 3.22 (m, 2H), 1.10 (d, J = 6.7 Hz, 3H).
1.6化合物6の製造
1)4-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)ブチルアルデヒドの製造
第1段階:室温条件で1、4-ブタンジオール(100ml)を2000mlの三口フラスコに加え、そしてDCM(1300ml)、トリエチルアミン(59ml)およびDMAP(4.7g)を添加し、TBSClをゆっくり滴下した。滴下終了後、室温を維持して一晩反応した(約17時間)。TLCモニターによりTBSClの原料点の消失を確認した後、飽和塩化アンモニウム溶液を加えてクエンチし、分液し、水層をDCMで2回抽出し、有機相を合わせた後、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過、濃縮した。カラムクロマトグラフィーで単離精製して、108gのシロップ状製品を収率80%で得た。
【0123】
1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 7.89 - 7.56 (m, 4H), 7.53 - 7.35 (m, 6H), 3.68 (dt, J = 15.2, 5.9 Hz, 4H), 1.74 - 1.59 (m, 4H), 1.05 (s, 9H).
第2段階:4-((tert-ブチルジフェニルシリル)オキシ)ブタノール(11.6g)を乾燥DCM(71ml)に加え、そして0℃に降温し、乾燥DMSO(12.6ml)およびDIPEA(15.4ml)を順次添加し、次いで三酸化硫黄ピリジン(11.3g)を分割添加し、内部温度≦10℃に維持した。添加が終了した後、室温に昇温して0.5~1時間反応させ、TLCモニターにより原料点の消失を確認した後、水を加えて反応をクエンチし、1N希塩酸で1回洗浄し、水層をDCMで1回抽出し、有機相を合わせた後、飽和重炭酸ナトリウム、飽和食塩水で1回ずつ洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、濃縮してシロップ状製品を得、そのまま次の反応に用いられるため、使用する際に製造することができる。
【0124】
1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 9.79 (s, 1H), 7.65 (t, J = 7.6 Hz, 4H), 7.52 - 7.30 (m, 6H), 3.79 - 3.49 (m, 2H), 2.55 (d, J = 6.7 Hz, 2H), 1.88 (t, J = 8.3 Hz, 2H), 1.04 (s, 9H).
2)1000ml三口フラスコに原料5(10.1g)を入れ、乾燥DCMを加えて溶解し、アルゴンに置換した後、反応液を0℃に降温し、四塩化チタン(3.4ml)を滴下し、トリエチルアミン(3.58ml)を速やかに加え、滴下終了後0℃に維持して1時間反応させた。4-((t-ブチルジフェニルシリル)オキシ)ブチルアルデヒドのDCM溶液(11g/20ml)を滴下し、滴下終了後、0℃に保持して4~6時間反応し、飽和食塩水を加えて反応をクエンチし、分液し、水相をDCMで2回抽出し、有機相を合わせた後、飽和炭酸水素ナトリウムで2回、飽和食塩水で1回洗浄し、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過、濃縮、カラム分離精製した。黄色シロップ状製品13.1gを収率84%で得た。
【0125】
化合物6は4つのジアステレオマーを含む。
【0126】
異性体A:1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 7.65 (ddd, J = 7.9, 4.3, 1.8 Hz, 4H), 7.44 - 7.35 (m, 6H), 6.37 (dd, J = 1.3, 0.6 Hz, 1H), 5.84 (d, J = 1.4 Hz, 1H), 5.26 (dd, J = 10.0, 3.8 Hz, 1H), 4.56 (td, J = 7.4, 5.8 Hz, 2H), 3.69 (t, J = 6.1 Hz, 3H), 3.23 - 3.07 (m, 2H), 2.85 (d, J = 10.1 Hz, 1H), 2.67 (dd, J = 9.9, 6.6 Hz, 1H), 1.88 - 1.56 (m, 3H), 1.07 (d, J = 6.7 Hz, 3H), 1.04 (s, 9H).
異性体B:1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 7.72 - 7.63 (m, 4H), 7.45 - 7.34 (m, 6H), 6.17 (s, 1H), 5.76 - 5.73 (m, 1H), 4.74 (dd, J = 10.3, 3.4 Hz, 1H), 4.56 (ddd, J = 11.9, 7.5, 2.1 Hz, 1H), 4.38 - 4.26 (m, 1H), 3.72 - 3.62 (m, 3H), 3.41 (ddd, J = 12.3, 11.0, 7.5 Hz, 1H), 3.13 (ddd, J = 10.9, 7.3, 2.1 Hz, 1H), 2.87 (d, J = 10.9 Hz, 1H), 2.67 (dd, J = 10.3, 6.4 Hz, 1H), 2.21 - 2.06 (m, 1H), 1.97 - 1.72 (m, 2H), 1.15 (d, J = 5.7 Hz, 3H), 1.04 (s, 9H).
異性体Cの特性ピーク:1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 6.22 (dt, J = 1.8, 0.9 Hz, 1H), 5.72 (d, J = 1.5 Hz, 1H), 5.38 (dd, J = 9.7, 5.3 Hz, 1H).
異性体Dの特性ピーク:1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 6.19 - 6.18 (m, 1H), 5.76 - 5.75 (m, 1H), 4.96 (dd, J = 10.6, 5.2 Hz, 1H).
1.7化合物7の製造
原料6(13.07g)を乾燥DCM(40ml)に溶解し、次いで0℃に降温し、乾燥DMSO(6.95ml)およびDIPEA(8.54ml)を順次添加し、次いで三酸化硫黄ピリジン(6.23g)を分割添加し、内部温度≦10℃に維持した。添加が終了した後、室温に昇温して0.5~1時間反応させ、TLCモニターにより原料点の消失を確認した後、水を加えて反応をクエンチし、1N希塩酸で1回洗浄し、水層をDCMで1回抽出し、有機相を合わせた後、飽和重炭酸ナトリウム、飽和食塩水で1回ずつ洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥、濾過、濃縮してシロップ状製品を得、カラムクロマトグラフィーで精製して製品10.4gを収率80%で得た。
【0127】
1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 7.92 - 7.54 (m, 10H)(A/B), 7.39 (q, J = 7.8, 7.1 Hz, 10H) (A/B), 6.25 (d, J = 8.5 Hz, 1H) (A), 6.21 (s, 2H) (A/B), 5.77 (d, J = 1.7 Hz, 1H) (A), 5.75 (d, J = 1.7 Hz, 1H) (B), 5.07 (d, J = 9.4 Hz, 1H)(A), 4.61-4.08 (m, 2H) (A/B), 4.26 - 4.05 (m, 2H) (A/B), 3.69 - 3.61 (m, 4H) (A/B), 3.33 - 3.13 (m, 4H) (A/B), 3.00 - 2.86 (m, 1H)(A),2.79 (dt, J = 15.2, 7.8 Hz, 5H) (A/B), 1.81 (q, J = 6.9 Hz, 3H) (A), 1.12 (d, J = 6.7 Hz, 3H) (A), 1.09 (d, J = 6.5 Hz, 2H) (B), 1.05 (s, 18H) (A/B).
1.8化合物8の製造
原料7(10.4g)をTHFとH2Oの混合溶媒(120ml/30ml)に溶解し、室温条件で水酸化リチウム一水和物(6.54g)を加え、室温を保持して反応を6~8時間撹拌した。反応終了後、水を加え、分液し、水相をn-ヘキサンで抽出し、THF層を減圧濃縮後n-ヘキサンで溶解し、有機相を合わせた後飽和リン酸二水素ナトリウム、飽和食塩水で洗浄、無水硫酸ナトリウムを加えて乾燥し、ろ過、濃縮した。カラムクロマトグラフィーにより精製して7.08gを収率87%で得た。
【0128】
1H NMR (400 MHz, Chloroform-d) δ 7.65 (dd, J = 7.8, 1.5 Hz, 5H), 7.54 - 7.27 (m, 5H), 6.16 (dd, J = 1.5, 0.8 Hz, 1H), 5.70 (d, J = 1.7 Hz, 1H), 3.78 - 3.55 (m, 2H), 2.63 (dd, J = 16.4, 6.5 Hz, 1H), 2.52 (td, J = 7.1, 1.5 Hz, 3H), 2.29 (dd, J = 16.3, 6.6 Hz, 1H), 1.88 - 1.75 (m, 2H), 1.05 (s, 9H), 1.02 (d, J = 6.5 Hz, 3H).
【図面の簡単な説明】
【0129】
【
図1】
図1は、本発明の実施例1の合成経路図である。
【国際調査報告】