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特表2022-510743丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 36/537 20060101AFI20220121BHJP
   A61P 5/28 20060101ALI20220121BHJP
   A61P 13/08 20060101ALI20220121BHJP
   A61P 17/14 20060101ALI20220121BHJP
   A61K 31/343 20060101ALI20220121BHJP
   A23L 33/105 20160101ALI20220121BHJP
【FI】
A61K36/537
A61P5/28
A61P13/08
A61P17/14
A61K31/343
A23L33/105
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020567509
(86)(22)【出願日】2020-10-30
(85)【翻訳文提出日】2020-11-30
(86)【国際出願番号】 KR2020015058
(87)【国際公開番号】W WO2021086120
(87)【国際公開日】2021-05-06
(31)【優先権主張番号】10-2019-0137533
(32)【優先日】2019-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2019-0157928
(32)【優先日】2019-12-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0049163
(32)【優先日】2020-04-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2020-0142540
(32)【優先日】2020-10-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
(71)【出願人】
【識別番号】520470084
【氏名又は名称】株式会社 キュロム・バイオサイエンス
【氏名又は名称原語表記】CUROME BIOSCIENCES CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】3106,Building for tenants 1,136,Jiksan-ro,Jiksan-eup,Seobuk-gu,Cheonan-si,Chungcheongnam-do 31035,Republic of Korea
(74)【代理人】
【識別番号】100130111
【弁理士】
【氏名又は名称】新保 斉
(72)【発明者】
【氏名】ユン、ジュ ソク
(72)【発明者】
【氏名】ソ、ガン シク
(72)【発明者】
【氏名】ハン、ジョン ス
(72)【発明者】
【氏名】キム、ウン ギョン
【テーマコード(参考)】
4B018
4C086
4C088
【Fターム(参考)】
4B018LB08
4B018LB10
4B018LE03
4B018MD64
4B018ME14
4B018MF01
4B018MF06
4B018MF07
4C086AA01
4C086AA02
4C086BA06
4C086GA17
4C086MA01
4C086MA52
4C086NA14
4C086ZA81
4C086ZA92
4C086ZC10
4C088AB38
4C088AC11
4C088BA10
4C088CA03
4C088MA52
4C088NA14
4C088ZA81
4C088ZA92
4C088ZC10
(57)【要約】
丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物に関し、丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物は、タンシノン1、タンシノン2a、クリプトタンシノン及びジヒドロタンシノンを含むタンシノン類を2%~70%含有することを特徴とし、脱毛症及び前立腺肥大症治療及び予防のための薬学組成物及び健康機能食品を提供することができる。
【選択図】 図1

【特許請求の範囲】
【請求項1】
丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物を有効成分として含む
ことを特徴とする前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物。
【請求項2】
前記丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物は、丹参を水、炭素数1~6のアルコール、又はこれらの混合溶媒で抽出した抽出物を含む
請求項1に記載の前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物。
【請求項3】
前記丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物は、40%~99%エタノール抽出物である
請求項1に記載の前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物。
【請求項4】
前記丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物は、タンシノン類が全重量の2%~70%含まれている
請求項1に記載の前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物。
【請求項5】
前記タンシノン類は、タンシノン1、タンシノン2a、クリプトタンシノン、15,16-ジヒドロタンシノン、タンシノン酸からなる群から選ばれる一つ以上を有効成分として含む
請求項4に記載の前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物。
【請求項6】
前記タンシノン類は、15,16-ジヒドロタンシノンを有効成分として含む
請求項4に記載の前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物。
【請求項7】
前記丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物は、5α還元酵素タイプ2(5AR2)、前立腺特異的抗原(PSA)、ステロイド受容共活性因子-1(SRC-1)及びアンドロゲン受容体(AR)からなる群から選ばれる一つ以上のタンパク質発現を減少させる
請求項1に記載の前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物。
【請求項8】
前記丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物は、
不純物を除去した丹参を破砕させる段階(1);
前記(1)段階の破砕した丹参を50℃~80℃で40%~99%の酒精(EtOH)に浸漬させ、2~24時間放置する段階(2);
前記(2)段階の丹参が抽出された酒精を分離し、残った残渣に新しい酒精を入れ、50℃~80℃で40%~99%の酒精(EtOH)に浸漬させ、2~12時間放置する段階(3);
前記(3)段階の丹参が抽出された酒精を分離し、残った残渣に新しい酒精を入れ、50℃~80℃で40%~99%の酒精(EtOH)に浸漬させ、2~5時間放置する段階(4);
前記(2)~(4)段階で分離しておいた酒精を集めて45℃~75℃で蒸発、乾燥させる段階(5);
前記(5)段階で蒸発、乾燥させた固形抽出物を粉砕し、80mesh以上でフィルタリングして丹参抽出物を得る段階(6);を含む丹参抽出物製造方法によって製造される
請求項1ないし7のいずれかに記載の前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物。
【請求項9】
前記不純物を除去した丹参を破砕させる段階(1)は、丹参を-196℃~-80℃の極低温で短時間に凍結し、5mm以下に粉砕する超微細粉砕工程(Cryogenic Micro Grinding Technology,CMGT)で粉砕する
請求項8に記載の前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物。
【請求項10】
丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物を有効成分として含む
ことを特徴とする前立腺肥大症又は脱毛症の予防又は改善用健康機能食品。
【請求項11】
前記丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物は、丹参を水、炭素数1~6のアルコール、又はこれらの混合溶媒で抽出した抽出物を含む
請求項10に記載の前立腺肥大症又は脱毛症の予防又は改善用健康機能食品。
【請求項12】
前記アルコールは、40%~99%エタノールである
請求項11に記載の前立腺肥大症又は脱毛症の予防又は改善用健康機能食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
良性前立腺肥大症(BPH)は、50歳以上の男性における尿路系の一般的な慢性疾患である(非特許文献1:Berry S.J.et al.,1984)。BPHはまた、尿線途絶、頻尿、尿意切迫感、尿勢低下及び残尿感を含む尿路症状低下(LUTS)と関連があり、これにより、高齢者の生活の質が悪くなり、日常生活に否定的な影響を及ぼすことになる(非特許文献2:Sarma,A.V.et al.,2012)。
【0003】
BPHの根本的な原因は知られていないが、老化した男性の前立腺はアンドロゲンによって影響を受けることがよく知られている(非特許文献3:Kim S.K.et al.,2015)。BPHの進行中に、アンドロゲンは自己分泌又はパラクリーン方式で前立腺の上皮細胞又は基質細胞の増殖を促進し、前立腺細胞増殖と細胞自殺の不均衡をもたらす。これはBPHの重要な原因とされてきた(非特許文献4:Choi,H.M.et al.,2016)。
【0004】
特に、ジヒドロテストステロン(dihydrotestosteron、DHT)は、BPHの発達と関連があることがよく知られている。加齢するにつれて男性の性ホルモンであるテストステロン(testosteron)が前立腺でジヒドロテストステロン(DHT)に高い割合で転換し始めるが、これは、一次的にテストステロンをDHTに転換させる酵素であるレダクターゼ(reductase)酵素の濃度が高くなることが原因である。DHTはアンドロゲン受容体(AR)の結合力が高いため、TSTに比較して、より強力なアンドロゲンである。5α還元酵素タイプ-2(5AR2)は前立腺でTSTをDHTに変換し、DHTはARと結合してアンドロゲン依存性遺伝子の転写を増加させ、最終的に前立腺増殖に関連するタンパク質の合成の刺激を誘発し、前立腺特異的抗原(PSA)レベルを向上させる。一方、BPHと前立腺癌の進行中にPSAレベルが増加するが、このことから、PSAはBPHの診断に広く用いられている(非特許文献5:Chen,Y.et al.,1996)。
【0005】
細胞周期は、前立腺基質及び上皮細胞から発生し、これらの分裂及び複製につながる。G1/S進行は、サイクリンD1によって高度に規制される。また、増殖細胞核抗原(PCNA)は、細胞周期においてG1/S段階に対する組織学的マーカーとして認識された酸性核タンパク質である。したがって、PCNAとcyclin D1の発現は、BPHの間に前立腺細胞の増殖状態を反映することができる(非特許文献6:Wang,W.,et al.,2004)。
【0006】
逆に、前立腺上皮の細胞自殺は、BPHよりも正常な状態で前立腺においてより頻繁に発生する。細胞自殺を抑制するBcl-2はまた、前立腺の上皮で発見され、前立腺組織の増殖につながる(非特許文献7:Cardillo,M.,et al.,1997)。
【0007】
ジヒドロテストステロン(DHT)などの男性ホルモンによる別の症状の一つは、男性型脱毛症(male pattern baldness)である。脱毛の原因としては、血液循環不良説、男性ホルモン作用過剰説、皮脂分泌過剰説、フケ菌およびその他の細菌などによる頭皮機能低下説、遺伝的要因、加齢、ストレスなどが挙げられているが、現在まで、男性ホルモンの過剰分泌と直接関係がある、最も一般的な脱毛の一類型であるアンドロゲン性脱毛症(androgenic alopecia)の原因が明らかになっている。
【0008】
アンドロゲン性脱毛症がある場合、健康な毛髪は徐々に細くなり、短くなり、毛髪が弱くなって砕けやすくなる現象が現れるが、このような現象を縮小化(miniaturization)という。縮小化が起こる毛嚢は、最終的に細くて目に見えない短い綿毛に変わって脱毛に進む。そこで、最近、男性ホルモン活性抑制を用いた脱毛の予防及び治療のための多くの研究が報告されている。
【0009】
テストステロン(testosterone)が5α還元酵素(5α-reductase)によって活性型男性ホルモンであるジヒドロテストステロン(dihydrotestosterone、DHT)に転換され、このように活性化されたジヒドロテストステロンがアンドロゲン受容体と結合して毛嚢細胞のタンパク質合成を遅延させ、毛嚢の成長期が短縮され、毛嚢が萎縮され、脱毛を誘発する。また、アンドロゲン性脱毛の過程で、皮脂が過剰生成されることもあり、その結果として、頭皮では炎症を伴う脱毛が発生することもある(非特許文献8:Dennis A.Holt,et.al,.1990)。
【0010】
現在開発されているテラゾシン、ドキサゾシン、タムスロシン、アルフゾシンなどのようなalpha-1アドレナリン遮断薬として用いられる前立腺肥大症治療剤は、前立腺平滑筋を弛緩させて尿道閉塞症状を緩和させるが、交感神経遮断による低血圧、血管拡張性頭痛などの副作用が報告されている。
【0011】
5α還元酵素阻害剤であるフィナステリド(Fi)とデュタステリドは、テストステロンが5α還元酵素によって活性代謝物であるジヒドロテストステロン(DHT)に転換することを抑制し、前立腺のサイズを減らし、BPH及び脱毛症に用いられる効果的なものとして知られているが(非特許文献9:Park,E.S.,et al.,2018)、これらの薬物は、勃起不全、性欲の減少、及び射精における精液体積の減少のような副作用を伴うことが知られている。このように、現在使用している薬物治療に多少効果があるといえるが、その副作用が問題であり、事実上、前立腺肥大症は継続する老化現象の一つであって、根本的治療が難しい。
【0012】
そこで、副作用の少ない効果的な治療戦略を見つけようとする研究者らは、天然材料で製造された薬剤を含む代替医療に関心が高い。現在、天然材料の中ではソーパルメット抽出物だけがBPHに効果を有する機能性食品として広く知られている(非特許文献10:Marks,L.S.,et al.,2000)。
【0013】
丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)は、シソ科に属する多年生草で、根が高麗人参に似ており、色が赤いことから丹参と名付けられたものである。丹参は昔から、血管を丈夫にする薬草として知られており、丹参のタンシノン成分が、血管中の老廃物が酸化することを抑えて血管の若返りを助け、血管を拡張させて血液の循環を改善し、高血圧や心筋梗塞のような血管疾患を予防することが知られている。漢方医学でも丹参は、血液の流れを促進し、お血を除去し、新しい血液生成に役立つ薬草として記録されている。
【0014】
特許文献1:韓国公開特許公報第2012-0020639号には、丹参を含む前立腺癌治療用組成物が開示されており、特許文献2:韓国公開特許公報第2001-0076810号には前立腺疾患及び痔疾治療用組成物の製造方法及びその製造方法による組成物として、虎杖根、馬歯けん、益智仁、車前子、蒲公英、金銀花、龍胆草、大黄,鶏内金、蘇木、木瓜、川楝子、五霊脂、丹参、沒薬、破故紙、威霊仙、乳香、龍脳、玄胡索、白屈菜、小茴香、三稜、蓬朮、蛇床子、香附子、烏薬、地龍、水蛭をそれぞれ2~5wt%を混合して製造した丸剤が開示されているが、本発明の丹参抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症の予防治療組成物は記載されていない。
【0015】
また、特許文献3:韓国登録特許公報第0259037号には、半夏、丁香、トックリイチゴ、山椒、蔓荊子、丹参及び柏子仁の粉末を油及びエタノールのそれぞれに浸漬後に一定期間熟成させて結果した抽出物を用いて外用液剤を製造し、直接適用する発毛促進用外用液剤が記載されているが、本発明の構成とは異なる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0016】
【特許文献1】韓国公開特許第2012-0020639号、丹参を含む前立腺癌治療用組成物、2012.03.08.公開
【特許文献2】韓国公開特許第2001-0076810号、前立腺疾患及び痔疾治療用組成物の製造方法及びその製造方法による組成物、2001.08.16.公開。
【特許文献3】韓国登録公報第0259037号、発毛促進用外用液剤、2000.03.16.登録
【非特許文献】
【0017】
【非特許文献1】Berry, S.J.; Coffey, D.S.; Walsh, P.C.;Ewing, L.L. The development of human benign prostatic hyperplasia with age. J. Urol. 1984, 132, 474-479.
【非特許文献2】Sarma, A.V.; Wei, J.T. Clinical practice. Benign prostatic hyperplasia and lower urinary tract symptoms. N. Engl. J. Med. 2012, 367, 248-257.
【非特許文献3】Kim, S.K.; Seok, H.; Park, H.J.; Jeon, H.S.; Kang, S.W.; Lee, B.C.; Yi, J.; Song, S.Y.; Lee, S.H.; Kim, Y.O.; et al. Inhibitory effect of curcumin on testosterone induced benign prostatic hyperplasia rat model. BMC Complement. Altern. Med. 2015, 15, 380-386
【非特許文献4】Choi, H.M.; Jung, Y.; Park, J.B.; Kim, H.L.; Youn, D.H.; Kang, J.W.; Jeong, M.Y.; 3 Lee, J.H.; Yang, W.M.; Lee, S.G.; et al. Cinnamomi cortex (Cinnamomum verum) suppresses testosterone-induced benign prostatic hyperplasia by regulating 5α-reductase. Sci. Rep. 2016, 6, 31906-31917.
【非特許文献5】Chen, Y.; Robles, A.I.; Martinez, L.A.; Liu, F.; Gimenez-Conti, I.B.; Conti, C.J. Expression of G1 cyclins, cyclin-dependent kinases, and cyclin-dependent kinase inhibitors in androgen-induced prostate proliferation in castrated rats. Cell Growth Differ. 1996, 7, 1571-1578.
【非特許文献6】Wang, W.; Bergh, A.; Damber, J.E. Chronic inflammation in benign prostate hyperplasia is associated with focal upregulation of cyclooxygenase-2, Bcl-2, and cell proliferation in the glandular epithelium. Prostate 2004, 61, 60-72.
【非特許文献7】Cardillo, M.; Berchem, G.; Tarkington, M.A.; Krajewski, S.; Krajewski, M.; Reed, J.C.; Tehan, T.; Ortega, L.; Lage, J.; Gelmann, E.P. Resistance to apoptosis and up regulation of Bcl-2 in benign prostatic hyperplasia after androgen deprivation. J. Urol. 1997, 158, 212-216.
【非特許文献8】Dennis A. Holt; Mark A. Levy; Hye Ja Oh; Jill M. Erb; Julie I.; Heaslip; Martin Brandt; Hsuan Yin Lan-Hargest; Brian W. Metcalf, Inhibition of steroid 5.alpha.-reductase by unsaturated 3-carboxy steroids, J. Med. Chem. 1990, 333, 943-950.
【非特許文献9】Park, E.S.; Lee, M.Y.; Jeon, W.W.; Seo, C.S.; You, S.S.; Shin, H.K. Paljung-San, a traditional herbal medicine, attenuates benign prostatic hyperplasia in vitro and in vivo. J. Ethnopharmacol. 2018, 218, 109-115.
【非特許文献10】Marks, L.S.; Partin, A.W.; Epstein, J.I.; Tyler, V.E.; Simon, I.; Macairan, M.L.; Chan, T.L.; Dorey, F.J.; Garris, J.B.; Veltri, R.W.; et al. Effects of a saw palmetto herbal blend in men with symptomatic benign prostatic hyperplasia. J. Urol. 2000, 163, 1451-1456.
【非特許文献11】SHAN GAO, SHIQIN LI, QIN LI, FUYONG ZHANG, MENGQI SUN, ZILIN WAN and SHURONG WANG, Protective effects of salvianolic acid B against hydrogen peroxide-induced apoptosis of human umbilical vein endothelial cells and underlying mechanisms, INTERNATIONAL JOURNAL OF MOlecular medicine 44: 457-468, 2019
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0018】
本発明の目的は、丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症治療又は予防用組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0019】
上記の課題を解決するために、本発明は、丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物の有効成分を含む前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物を提供する。
【0020】
前記丹参抽出物は、蒸留水又はエタノール抽出物であってもよく、他の溶媒が用いられてもよい。抽出溶媒の種類によって、抽出温度、抽出時間、溶媒の量及び残留成分処理方式などを異ならせて設計することができる。抽出溶媒も、様々な溶媒が使用可能であり、抽出可能な溶媒には、水、エタノール、メタノール、脂肪油、グリセリン、麻油、エチルアセテート、アセトン、ブタノール、イソプロパノール及びメチレンクロリドなどがある。
【0021】
前記丹参抽出物は、特に、炭素数1~6のアルコール又はこれらの混合溶媒で抽出した抽出物であり得る。前記アルコールはエタノールでよく、40~99%エタノールであり得る。
前記丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物は、40~99%エタノール抽出物であり得る。
【0022】
前記丹参抽出物は濃縮され得る。マイクロ波乾燥方法で抽出物を40~80℃で加熱して水分を除去できる。または、低温真空乾燥方法で抽出物を濃縮乾燥できる。低温真空乾燥は、乾燥器内部の圧力を真空に維持し、温度を5~15℃程度に調節して乾燥させる方法であり、抽出成分の変性がなく、味も香りも消失しない。設計条件によっては、噴霧乾燥、冷風乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、遠赤外線乾燥、陰干し、減圧乾燥などの方法が利用できる。
【0023】
丹参はまた、極低温超微細粉砕工程(Cryogenic Micro Grinding Technology,CMGT)を用いて製造できる。より具体的には、-196℃~-80℃の極低温で丹参根を短時間に凍結後に微細粉末に粉砕し、向上した物性を有する粉末を製造できる。
【0024】
前記丹参濃縮物は乾燥させて様々な剤形にすることができる。噴霧乾燥方法で抽出物を濃縮乾燥させた後、様々な剤形に製造できる。例えば、粉末に製造できる。低温真空乾燥は、乾燥器内部の圧力を真空に維持し、温度を5℃~15℃程度に調節して乾燥する方法であり、抽出成分の変性がなく、味も香りも消失しない。設計条件によっては、冷風乾燥、熱風乾燥、凍結乾燥、遠赤外線乾燥、陰干し、減圧乾燥などの方法が利用できる。好ましくは、丹参(S.miltiorrhza)はエタノール50lで24時間溶出させた後、減圧濃縮できる。ここに、水1500mlを添加し、同量のn-ヘキサン、ジクロロメタン(CHCl)及びエチルアセテート(EtOAc)を入れ、順に2回反復抽出し、ゲル(gel)状の赤色抽出物の丹参抽出物が製造できる。
【0025】
丹参は、極低温冷凍凍結微細粉末の蒸留水又はエタノール溶解物であり得る。しかし、これに限定されず、丹参は、熱水抽出法、蒸留抽出法、エタノール抽出法、超音波エタノール抽出法、超音波水抽出法など、利用可能な公知の抽出方法で抽出できる。前記丹参抽出物は、0.01~700μg/mlの量で含むことができる。
【0026】
前記のような方法において、丹参の有効成分であるタンシノン類の含有量を増加させることができる。丹参(S.miltiorrhiza Bunge)抽出物は、タンシノン類が全重量の2%~70%含まれたものであり得る。
前記で丹参抽出物は、メチレンクロリドを含む有機溶媒で分別抽出でき、カラムを用いて特定成分を濃縮することができる。
前記丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物は、タンシノン類が全重量の2%~70%で含まれたものであり得る。
【0027】
前記タンシノン類は、タンシノン1(1,6-Dimethylphenanthro[1,2-b]furan-10,11-dione又は1,6-dimethylnaphtho[1,2-g]benzofuran-10,11-dione)、タンシノン2a(1,6,6-Trimethyl-6,7,8,9-tetrahydrophenanthro[1,2-b]furan-10,11-dione)、クリプトタンシノン((R)-1,2,6,7,8,9-Hexahydro-1,6,6-trimethyl-phenanthro(1,2-b)furan-10,11-dione)、15,16-ジヒドロタンシノン((1R)-1,6-dimethyl-1,2-dihydronaphtho[1,2-g][1]benzofuran-10,11-dione Dihydrotanshinone-I)からなる群から選ばれる一つ以上を有効成分として含むことができ、前記4種のタンシノン以外のタンシノンであってもよい。
【0028】
本発明は、タンシノン1、タンシノン2a、クリプトタンシノン、ジヒドロタンシノン及びタンシノン酸からなる群から選ばれる一つ以上を有効成分として含むことを特徴とする前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物を提供する。
【0029】
今まで知られた主要タンシノン類には、タンシノン1、タンシノン2a、クリプトタンシノン又はジヒドロタンシノンがあり、タンシノン酸をはじめとして、末端作用基を異にするその他タンシノンが含まれる。丹参の有効成分は、タンシノン1、タンシノン2a、クリプトタンシノン又はジヒドロタンシノンであり得、有効成分は、好ましくはタンシノン2a、又はジヒドロタンシノン又はタンシノン酸を含むその他タンシノン類でよく、より好ましくはジヒドロタンシノン又はその他タンシノン類であり得る。
【0030】
本発明は、丹参抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症治療又は予防薬学組成物を提供する。本発明の薬学組成物は、丹参抽出物、タンシノン1、タンシノン2a、クリプトタンシノン、ジヒドロタンシノン及び/又はタンシノン酸など、その他タンシノン類を含む丹参の有効成分を含むことができる。
【0031】
前記薬学組成物は担体又は賦形剤を含むことができ、これらはそれぞれ、薬学的組成物全重量に対して、好ましくは0.001重量%~90重量%、より好ましくは0.001重量%~50重量%、最も好ましくは0.001重量%~30重量%となるように添加できる。
【0032】
前記薬学組成物の適度の投与量は、製剤化方法、投与方式、患者の年齢、体重、性別、病的状態、食べ物、投与時間、投与経路、排泄速度及び反応感応性のような要因に基づいて様々に処方できる。本発明の薬学組成物は、前記タンシノン誘導体を有効成分として含有する。前記薬学組成物は、臨床投与時に、経口又は非経口で投与可能であり、通常の医薬品製剤の形態で使用可能である。すなわち、本発明の組成物は、実際の臨床投与時に、経口及び非経口の様々な剤形で投与できるが、製剤化する場合には、通常用いる充填剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤及び界面活性剤などの希釈剤又は賦形剤を用いて調製される。経口投与のための固形製剤には、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤及びカプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、タンシノン誘導体に少なくとも一つ又はそれ以上の賦形剤、例えば、澱粉、炭酸カルシウム、スクロース、ラクトース及びゼラチンなどを混ぜて調製する。また、単純な賦形剤の他に、マグネシウムステアレート、タルクのような潤滑剤も用いられる。経口投与のための液状製剤には、懸濁剤、耐溶液剤、乳剤及びシロップ剤などが挙げられるが、通常使用される単純希釈剤である水、リキッドパラフィンの他にも様々な賦形剤、例えば湿潤剤、甘味剤、芳香剤及び保存剤などが含まれてもよい。非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水溶性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥剤及び坐剤が含まれる。非水溶性溶剤と懸濁溶剤には、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物性油、エチルオレエートのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤には、ウィテップゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイン(tween)61、カカオジ、ラウリンジ、グリセロール及びゼラチンなどを用いることができる。
【0033】
投薬単位は、例えば、個別投薬量の1、2、3又は4倍を含有したり、又は1/2、1/3又は1/4倍を含有できる。個別投薬量は、好ましくは、有効薬物が1回投与される量を含有し、これは通常、1日投与量の全部、1/2、1/3又は1/4倍に該当する。タンシノン誘導体の有効容量は濃度依存的であるが、好ましくは0.1mg~1,000mg/kg、より一層好ましくは0.4~500mg/kgであり、1日1~6回投与できる。したがって、成人体重1kg当たり0.1~6,000mg/日の範囲で投与できる。
【0034】
前記薬学的組成物は、ネズミ、家畜、ヒトなどの哺乳動物に様々な経路で投与できる。投与の全ての方式が予想可能であり、例えば、経口、直腸又は静脈、筋肉、皮下、子宮内硬膜又は脳血管内注射によって投与できる。
【0035】
前記丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物は、5α還元酵素タイプ2(5AR2)、前立腺特異的抗原(PSA)、ステロイド受容共活性因子-1(SRC-1)及びアンドロゲン受容体(AR)からなる群から選ばれる一つ以上のタンパク質の発現を減少させることができる。前記タンパク質は、アンドロゲン関連タンパク質であり、前立腺肥大症又は脱毛症において増加する様相を示す。
本発明は、前記丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物が、
不純物を除去した丹参を破砕させる段階(1);
前記(1)段階の破砕した丹参を50~80℃で40~99%の酒精(EtOH)に浸漬させ、2~24時間放置する段階(2);
【0036】
前記(2)段階の丹参が抽出された酒精を分離し、残った残渣に新しい酒精を入れ、50~80℃で40~99%の酒精(EtOH)に浸漬させ、2~12時間放置する段階(3);
【0037】
前記(3)段階の丹参が抽出された酒精を分離し、残った残渣に新しい酒精を入れ、50~80℃で40~99%の酒精(EtOH)に浸漬させ、2~5時間放置する段階(4);
前記(2)~(4)段階で分離しておいた酒精を集めて45~75℃で蒸発、乾燥させる段階(5);
【0038】
前記(5)段階で蒸発、乾燥させた固形抽出物を粉砕して80mesh以上でフィルタリングし、丹参抽出物を得る段階(6);を含む丹参抽出物製造方法によって製造されることを特徴とする前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物を提供する。
【0039】
また、前記不純物を除去した丹参を破砕させる段階(1)は、丹参を-196℃~-80℃の極低温で短時間に凍結させ、5mm以下に粉砕する超微細粉砕工程(Cryogenic Micro Grinding Technology,CMGT)で粉砕させることを特徴とする前立腺肥大症又は脱毛症の治療又は予防用組成物を提供する。
【0040】
本発明は、丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症又は脱毛症の予防又は改善用健康機能食品を提供する。
【0041】
前記健康機能食品は、丹参抽出物、タンシノン1、タンシノン2a、クリプトタンシノン、ジヒドロタンシノン又はタンシノン酸などのその他タンシノン類を含む丹参の有効成分及び食品学的に許容可能な食品補助添加剤を含む健康機能食品を提供する。
【0042】
前記健康機能食品は、前記丹参抽出物、タンシノン1、タンシノン2a、クリプトタンシノン、ジヒドロタンシノン及び/又はタンシノン酸などその他タンシノン類を含む丹参の有効成分が、健康機能食品全重量に対して、好ましくは0.001重量%~50重量%、より好ましくは0.001重量%~30重量%、最も好ましくは0.001重量%~10重量%となるように添加できる。
【0043】
本発明の丹参抽出物は、健康機能食品全重量に対して、好ましくは0.001重量%~50重量%、より好ましくは0.001重量%~30重量%、最も好ましくは0.001重量%~10重量%となるように添加できる。
【0044】
前記健康機能食品は、錠剤、カプセル剤、丸剤又は液剤などの形態を含み、本発明の抽出物を添加できる食品には、例えば、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディ類、クッキー類、菓子類、ピザ、ラーメン、その他麺類、ガム類、粉ミルク、禅食、生食、乳酸菌発酵乳、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料水、茶、ドリンク剤、アルコール飲料及びビタミン複合剤などがある。具体的に、丹参抽出物を含む健康食品には、丹参抽出物を主成分として作った汁、茶、ジェリー、ジュースなどの健康食品及び嗜好品が挙げられ、浮腫、腎臓炎、尿道炎などを目的とする民間療法剤などが挙げられる。
【0045】
前記丹参抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症治療又は予防用組成物は、化粧料組成物として製造されてもよい。化粧料組成物として用いる場合、丹参抽出物をそのまま添加してもよいが、他の化粧品成分と共に用いられてもよく、通常の方法によって適切に用いることができる。有効成分の混合量は、その使用目的によって適切に決めることができ、一般に、丹参抽出物を用いた化粧品製造時に、原料の全重量に対して0.0001~10重量%、好ましくは0.1~5重量%の量で添加できる。化粧品には、皮膚外用軟膏、クリーム、柔軟化粧水、栄養化粧水、パッグ、エッセンス、ヘアトニック、シャンプー、リンス、ヘアコンディショナー、ヘアトリートメント、ジェル、スキンローション、スキンソフナー、スキントナー、アストリンゼント、ローション、ミルクローション、モイスチャーローション、栄養ローション、マッサージクリーム、栄養クリーム、モイスチャークリーム、ハンドクリーム、ファウンデーション、色調化粧品、栄養エッセンス、サンスクリーン、石鹸、クレンジングフォーム、クレジングローション、クレンジングクリーム、ボディーローション及びボディークレンザーからなる群から選ばれるいずれか一つの剤形を有する化粧料組成物であるが、これに制限されない。
【0046】
本発明の剤形が界面活性剤含有クレンジングである場合は、担体成分として、脂肪族アルコールサルフェート、脂肪族アルコールエーテルサルフェート、スルホコハク酸モノエステル、イセチオネート、イミダゾリニウム誘導体、メチルタウリン(methyl taurate)、サルコシネート、脂肪酸アミドエーテルサルフェート、アルキルアミドベタイン、脂肪族アルコール、脂肪酸グリセリド、脂肪酸ジメタノールアミド、植物性油、リノリン誘導体又はエトキシル化グリセロール脂肪酸エステルなどを用いることができる。
【0047】
本発明の剤形は、蛍光物質、殺真菌剤、屈水性誘発物質、保湿体、芳香剤、芳香剤担体、タンパク質、溶解化剤、糖乳導体、日光遮断剤、ビタミン及び植物抽出物などを含む賦形剤をさらに含有できる。
【発明の効果】
【0048】
以上のように、本発明によれば、丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物を有効成分として含む前立腺肥大症治療又は予防用組成物は、従来副作用の多い治療剤を代替可能な安全で強力な前立腺肥大症の治療及び予防組成物を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】DHT誘導されたLNCaP細胞株において丹参が主成分として含有(約10~20%)されている丹参抽出物S、タンシノン類(Tanshinone)が主成分として含有(約22%)されている丹参抽出物T、及びその有効成分タンシノン1(Tan1)、タンシノン2a(Tan2a)、クリプトタンシノン(CryT)及びジヒドロタンシノン(DihT)による5α還元酵素タイプ2(5α reductase type2,5AR2)、アンドロゲン受容体(Androgen Receptor,AR)、ステロイド受容共活性因子-1(Steroid Receptor Coactivator-1,SRC-1)、前立腺特異抗原(Prostate Specific Antigen,PSA)の発現変化を、ウェスタンブロッティングで確認した結果である。
図2図1の各タンパク質を定量化して示すグラフである。
図3】DHT処理LNCaP細胞株に丹参抽出物T95、T70、T40を濃度別に処理し、アンドロゲン受容体(AR)及び前立腺特異抗原(PSA)の発現に及ぼす効果を示すウェスタンブロッティング結果である。
図4図3のアンドロゲン受容体(AR)(A)及び前立腺特異抗原(PSA)(B)をそれぞれ定量化して示すグラフである。
図5】前立腺肥大症動物モデルにおいて丹参抽出物T70~T10処理によるラットの体重変化を示すグラフである。
図6】前立腺肥大症動物モデルにおいて丹参抽出物T70~T10処理によるラットの前立腺サイズの変化を示す写真である。
図7】前立腺肥大症動物モデルにおいて丹参抽出物T70~T10処理によるラットの前立腺重さの変化を示すグラフである。
図8】前立腺肥大症動物モデルにおいて丹参抽出物T70~T10処理によるラットの前立腺の指数(Prostate index)(体重に対する前立腺の重さ)変化を示すグラフである。
図9】前立腺肥大症動物モデルにおいて丹参抽出物T40がラットの前立腺肥大関連蛋白である5α-還元酵素(5α-reductase,5AR2)、アンドロゲン受容体(Androgen receptor,AR)、前立腺特異抗原(PSA)の発現に及ぼす効果を示すウェスタンブロッティング結果である。
図10】BPHにおいてテストステロンの信号伝達経路及び丹参抽出物の薬理機転を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0050】
前立腺肥大症(BPH)は、高齢者における尿路系の一般的な慢性疾患で、特に、高齢者のアンドロゲン代謝不均衡はBPHの主な原因の一つである。アンドロゲン受容体(AR)と結合する5α還元酵素タイプ2(5AR2)によるジヒドロテストステロン(DHT)は、前立腺増殖と成長に影響を与える。BPHにおいて、アンドロゲン信号伝達関連タンパク質の発現レベルが高く現れることが報告されており、アンドロゲン信号伝達は、前立腺特異的抗原(PSA)の過発現と関係がある。また、ジヒドロテストステロン(DHT)の調節に関連する別の症状として脱毛症を挙げることができる。
【0051】
本発明は、前記前立腺肥大症(BPH)及び脱毛症の信号伝達経路を研究している中で、丹参(Salvia miltiorrhiza Bunge)抽出物及びその有効成分が当該経路に関与することによって前立腺肥大症(BPH)又は脱毛症の治療及び予防に優れた効果を示すことを確認し、本発明を完成するに至った。
【0052】
以下、本発明の好ましい実施例を詳細に説明する。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、別の形態に具体化されてもよい。これらの実施例は、むしろ、ここで紹介される内容が徹底且つ完全になり、当業者に本発明の思想を十分に伝達するために提供するものである。
【0053】
<実施例1.丹参抽出物の成分分析>
1.1.丹参抽出物Sの製造
【0054】
破砕させた丹参根を50~100℃の熱水で抽出した。前記熱水で2時間~24時間抽出した後、濾過して残渣を除去し、抽出液を集め、加熱して蒸発乾燥させた。蒸発させた固形物は、必要によって100℃の高温の水で洗浄後、マイクロウエーブで55℃、25~30分間乾燥後に粉砕し、60mesh以上でフィルタリングして準備した。前記段階で丹参から抽出した丹参抽出物Sの主要成分はサルビアノール酸(Savianolic acid)で、抽出物中に約10~20%含まれることが見られた。
【0055】
丹参抽出の効率を上げるために、丹参根に極低温超微細粉砕工程(Cryogenic Micro Grinding Technology,CMGT)を用いることができる。CMGT(Cryogenic Micro Grinding Technology)は、液体窒素を用いて-196℃の超低温状態で天産物や食品素材を急速冷凍粉砕し、本然の物性と味、栄養、香などの変化を最小化する加工技術である。常温で粉砕し難いか、脂肪含有量の高い素材、水分の多い素材などが加工でき、特に、原物固有特性の損傷無しで溶解力と分散力の向上が可能である。また、CMGTは、原料を超低温で冷却して脆性破壊(衝撃に対して著しく砕けやすくする。)に有効な衝撃式粉砕方式である。粒子間摩擦による粉砕により粒子の形態が円形をなし、他の粉砕方式に比べて同一粒度において変性が少なく、粉砕発熱が低いので、脂分の多い素材の連続粉砕が可能であり、食品素材への適用が容易である。原物サイズが大きいものは、粗粉砕機(ドクサン製、韓国)で5mm以下に粉砕して使用し、Hosokawa製の物(Linrex Mill LX-1,Japan)とドクサン製の物のスクリュー(screw)を利用できるサイズの原物はそのままで粉砕する。
【0056】
丹参根を、極低温超微細粉砕工程(Cryogenic Micro Grinding Technology,CMGT)を用いて丹参CMGTを製造した。より具体的には、-110~-90℃の極低温で丹参根を短時間に凍結させ、4500~5500rpmで粉砕させて、丹参抽出物S及び下記丹参抽出物Tの製造に用いることができる。
【0057】
1.2.丹参抽出物Tの製造
丹参抽出物Tは、破砕させた丹参根を50~80℃で酒精(EtOH)で抽出した(丹参抽出物T)。また、抽出酒精の濃度による効果を確認するために、酒精の濃度を異にして丹参抽出物T10(EtOH10%)、T40(EtOH40%)、T70(EtOH70%)、T95(EtOH95%)、T99(EtOH99%)をそれぞれ得た。前記酒精で2~24時間抽出し、必要によって新しい酒精でさらに2~12時間抽出した後、必要によって新しい酒精で2~5時間さらに抽出して遠心分離し、上澄液を得た。その後、得られた上澄液を集めて45~75℃で蒸発、乾燥させた後に粉砕し、80mesh以上でフィルタリングして準備した。
【0058】
1.3.丹参抽出物の成分分析
前記実施例1.1及び1.2で抽出した丹参抽出物S及び丹参抽出物Tの成分及び含有量を測定した。特に、丹参に含まれている主要タンシノン4種成分を設定するために、既存研究者によって明らかにされた様々な化合物のうち、標準品が販売されているタンシノン1、タンシノン2a、クリプトタンシノン、ジヒドロタンシノン及びサルビアノール酸Bなどの成分が丹参抽出物に存在するか否かをHPLC分析で確認した。HPLC条件は、次の通りである。カラム(Column);cadeza cd-C18 3.0μm、3.0mm×250mm、検出器(Detector);DAD(254nm)、温度(Temp.);40℃、試料量(Injection Volume);10μL、流速(Flow rate);0.2mL/min、移動相(Mobile phase);80% MeOHである。
【0059】
丹参抽出物には、主要タンシノン成分の他にも、様々なその他タンシノン類が含まれている。その他タンシノン類の標準品は購買し難い。このため、一般に、タンシノン類は、分子構造において共通骨格を有し、分子量が一定(分子量300kDa前後)で、物理化学的性質が類似している点に着目し、タンシノン2aを指標成分とした後、濃度別吸光度標準曲線(standard curve)を設定し、分光光度計(spectrophotometer)で270nm波長帯で吸光度を測定し、回帰方程式で全タンシノンを定量した。これを下記の表1に示す。
【0060】
【表1】
【0061】
前記表1に示すように、熱水抽出物である丹参抽出物Sには、タンシノン類は殆ど検出されず、サルビアノール酸Bが抽出物中15.14%検出された。また、エタノール10%でタンシノン類は1.72%、エタノール40%で10.79%抽出され、エタノールの濃度を上げるほどタンシノン類の抽出効率が高くなることを確認した。エタノール95%溶媒条件で抽出物中に全タンシノン類は22.22%含まれた。これと逆に、エタノールの濃度が上がるにつれてサルビアノール酸Bの含有量は急に減少した。
【0062】
タンシノン類のうちクリプトタンシノンが最も多く検出され、タンシノン2a、タンシノン1、15,16-ジヒドロタンシノンの順に検出され、主要タンシノン類以外のその他タンシノン類も、エタノール濃度が増加するにつれて抽出効率が増加した。丹参抽出物T99の場合も丹参抽出物T95と類似であったが、抽出過程時に加熱過程において不安定性が高く、大量生産への効率性が低いため、その後には丹参抽出物T95を代表として用いた。
【0063】
<実施例3.丹参抽出物がDHT処理LNCaP細胞においてアンドロゲン経路関連タンパク質レベルに及ぼす効果確認>
3.1.細胞の培養
【0064】
本発明の丹参抽出物の前立腺肥大症及び脱毛症に対する効果を確認するために動物細胞を培養した。このとき、動物細胞は、アンドロゲンに敏感なヒト前立腺腺癌細胞株であるLNCaP細胞を使用し、韓国細胞株銀行(ソウル、韓国KCLB #:21740)から購入した。細胞は、100mg/mlペニシリン/ストレプトマイシンと10% FBS(fetal bovine serum)が添加されたRPMI(Roswell Park Memorial Institute)培地で培養され、37℃に維持されているCO培養器内で培養された。
【0065】
3.2材料の準備
ヤギ抗ウサギ免疫グロブリンG(IgG,7074)及び抗マウスIgG(7076)に対する抗体は、Cell Signaling(Danvers,MA)から購入した。AR(SC-816)、SRC1(SC-32789)、PSA(SC-7638)及びβ-アクチン(SC-1616)に対する抗体は、Santa Cruz Biotechnology(米国テキサス州ダラス)から、5AR2に対する抗体(ab124877)はAbcam Inc.(米国マサチューセッツ州ケンブリッジ市)から購入した。RPMI(Roswell Park Memorial Institute medium)培地、胎児ウシ血清(FBS)及びペニシリン/ストレプトマイシンはGibco(ビックキャビン、OK、米国)から購入した。その他、フィナステリド、Fi(≧97%純度)及びDHT(≧99%純度)を含む試薬は、Sigma-Aldrich Inc.(米国ミズーリ州セントルイス市)から購買した。
3.3 DHT処理LNCaP細胞に対する丹参抽出物の効果
【0066】
LNCaP細胞株を10% FBS、100U/mLペニシリン及び100mg/mLストレプトマイシンが補充された2mLのRPMI培地で6ウェルプレート(1×10細胞/ウェル)に接種(seed)した。1日後、細胞を、24時間DHT(10nmol)及び丹参抽出物S、丹参抽出物T95を15μg/ml、タンシノン1、タンシノン2a、クリプトタンシノン及び15,16-ジヒドロタンシノンをそれぞれ5μM濃度になるように処理した。得られたLNCaP細胞は、プロテアーゼ抑制剤カクテルを含有する冷放射線免疫沈殿分析(RIPA)緩衝液を用いて溶解させた。溶解された細胞を4℃で20分間13,000RPMで遠心分離し、タンパク質濃度をBCA分析で測定した。細胞溶解物(30μgタンパク質/サンプル)を120%で90分間10%ラウリル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分離し、ニトロセルロース膜に移した。膜を室温で1時間5%脱脂乳でブロックした。
【0067】
その直後、AR、5AR2、PSA及びSRC-1のような1次抗体(1:2000に希釈)を一晩膜に反応させた。膜を洗浄した後、これらは、ヤギ抗ウサギIgG及び抗マウスIgGホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)接合された二次抗体(1:10000に希釈)と共に室温で1時間培養された。強化化学発光(ECL)検出試薬を用いて免疫検出を行い、それを図1に示した。その後、ダビンチ(Davinch-Chemi)イメージングシステム(Davinch-K.,ソウル)を用いて膜を撮影した。タンパク質信号の化学発光強度をImageJ 1.47vソフトウェアを用いて定量化し、図2に示した。結果は、ウィンド(Windows)用SPSSバージョン11.5(SPSS Inc.、米国イリノイ州シカゴ市)によって得られたデータを、平均±平均標準誤差(SEM)で示した。
【0068】
2つの連続正規分布変数の平均を独立標本に対してスチューデントt-検定で比較した。Dunnettの多重範囲検定を用いて、正規分布に従わない2個又は3個以上の変数グループの平均を比較した。p<0.05及びp<0.01は、統計的留意性に対する基準と見なした。
【0069】
図1及び図2に示すように、LNCaP細胞株は、DHTによってアンドロゲン受容体(AR)以外のアンドロゲン関連タンパク質の発現レベルが増加した。ここに丹参抽出物Sを処理した場合、DHTによって増加したSRC-1の発現が多少減少し、アンドロゲン受容体(AR)の発現量を40%減少させた。しかし、前立腺肥大症に主要に増加する5α還元酵素タイプ2(5AR2)及び前立腺特異抗原(PSA)は、却って発現が増加する様相が見られた。
【0070】
しかし、丹参抽出物Tの場合、5α還元酵素タイプ2(5AR2)、前立腺特異的抗原(PSA)、ステロイド受容体共活性因子-1(SRC-1)及びアンドロゲン受容体(AR)のタンパク質発現を全て著しく減少させた。特に、丹参抽出物Tは、5α還元酵素タイプ2(5AR2)、前立腺特異的抗原(PSA)及びアンドロゲン受容体(AR)の発現を、対照群に比べて低いレベルに抑制した。
【0071】
また、丹参から確認された主要タンシノンであるタンシノン1、タンシノン2a、クリプトタンシノン及び15,16-ジヒドロタンシノンの各5μMをDHT誘導LNCaP細胞株に処理した場合、15,16-ジヒドロタンシノンにおいて、DHTによって増加したアンドロゲン関連タンパク質の抑制効果が最も高かった。特に、15,16-ジヒドロタンシノンは同一濃度でタンシノン2aに比べて、前立腺特異的抗原(PSA)及びアンドロゲン受容体(AR)の発現を5倍以上抑制した。これは、前立腺肥大症又は脱毛症のようなアンドロゲン関連タンパク質を媒介とする疾病の治療及び予防に効果的な組成物が提供できるということを意味する。
【0072】
15,16-ジヒドロタンシノンは、5α還元酵素タイプ2(5AR2)及びステロイド受容共活性因子-1(SRC-1)の発現も、タンシノン2aに比べてより効果的に抑制した。一方、丹参抽出物T15μg/ml処理は、15,16-ジヒドロタンシノンに比べてより効果的にアンドロゲン関連タンパク質の発現を抑制した。これが処理濃度の差によるものかを確認するために、丹参抽出物T 15μg/mlの個別タンシノンの含有量を前記表1の結果に基づいて換算し、表2に示した。
【0073】
【表2】
【0074】
前記表2に示すように、丹参抽出物Tに3.33μg/mlでタンシノン類が含まれており、ここには、アンドロゲン関連タンパク質の抑制効果に最も優れた15,16-ジヒドロタンシノンの含有量が0.26μg/mlしかなかったが、他の主要タンシノン類の効果に比べて優れたアンドロゲン関連タンパク質の抑制効果を示すことを確認した。これは、丹参抽出物Tに含まれた種々のタンシノン混合物が相乗効果を生んだり、又は4種の主要タンシノン以外のその他タンシノン類にアンドロゲン関連タンパク質の抑制効果に優れた化合物が含まれている可能性があるからとみられる。
【0075】
3.4 DHT処理LNCaP細胞に対する丹参抽出物Tの濃度別効果
エタノール濃度による丹参抽出物のアンドロゲン関連タンパク質の抑制効果を確認するために、エタノール95%、70%、40%でそれぞれ抽出した丹参抽出物T95、T70、T40を、DHT処理LNCaP細胞に濃度別に処理し、その効果を確認した。
【0076】
実施例3.3と同じ方法でLNCaP細胞にDHTを処理し、丹参抽出物T95、T70、T40をそれぞれ、5、10、15μg/mlで投与した後、アンドロゲン受容体(AR)及び前立腺特異抗原(Prostate PSA)の発現を確認し、図3及び図4に示した。
【0077】
図3及び図4に示すように、丹参抽出物T95、T70、T40は、濃度依存的にアンドロゲン受容体(AR)及び前立腺特異抗原(Prostate PSA)の発現を抑制し、丹参抽出物T95が最も優れた効果を示した。また、丹参抽出物T70はT40に比較して大差はなかったが、丹参抽出物T70がT40に比べて抑制効果に優れる傾向を示した。このような結果を、表1の成分含有量に基づいて分析すると、タンシノン類の抽出比率が顕著に増加し、サルビアノール酸などの物質含有量が減少するエタノール40%~99%が、最適の溶媒濃度であることが確認できる。
【0078】
<実施例4.前立腺肥大症動物モデルにおいて丹参抽出物Tの効果確認>
4.1.テストステロンで誘導した前立腺肥大症動物モデル構築
【0079】
9週齢(体重350g以下)のSprague-Dawleyラットを1週間以上馴化飼育後に実験に使用した。前立腺肥大症を誘導するために、睾丸を除去した後、テストステロン(Testosterone、トウモロコシ油に溶かして使用)を3mg/kgの容量で1回/3日、合計10回皮下注射(subcutaneous injection)した。
【0080】
4.2.前立腺肥大症動物モデルにおいて丹参抽出物の効果確認
9週齢(体重350g以下)のSprague-Dawleyラットを無作為に(1)正常群、(2)前立腺肥大症誘導及びビークル投与群(陰性対照群)、(3)前立腺肥大症誘導及び丹参抽出物S投与群、(4)前立腺肥大症誘導及び丹参抽出物T70投与群、(5)前立腺肥大症誘導及び丹参抽出物T40投与群、(6)前立腺肥大症誘導及び丹参抽出物T10投与群、(7)前立腺肥大症誘導及びソーパルメットの実抽出物投与群(陽性対照群、告示型原料)、(8)前立腺肥大症誘導及びフィナステリド(Finasteride)投与群(陽性対照群、治療剤)に分離した。
【0081】
前立腺肥大症誘導群は、前記実施例4.1の方法で睾丸を除去した後、ジヒドロテストステロン(Dihydro-testosterone、トウモロコシ油に溶かして使用)を3mg/kgの容量で1回/3日、合計10回皮下注射(subcutaneous injection)し、正常群は、同量のトウモロコシ油を皮下注射した。
【0082】
丹参抽出物T70~T10とソーパルメットの実抽出物は蒸留水に溶かして10~25mg/kgの容量で1回/日、14日間経口投与した。フィナステリド投与群(シグマ、0.2%ツイン80に溶かして使用)は、10mg/kgの容量で1回/1日、14日間経口投与した。陰性対照群は、蒸留水だけを経口投与した。実験が終了する時点に体重を測定し、最後の投薬及び処理が終わった次の日にSD-ラットを二酸化炭素ガスで犠牲させた後、前立腺組織を摘出して重さを測定し、その結果を図5図7に示した。全ての動物関連手続きは、建国大学校動物保護機関と使用委員会によって検討され承認された。
【0083】
図5は、前立腺肥大症動物モデルにおいて丹参抽出物T70~T10処理によるラットの体重変化を示すグラフである。図5に示すように、前立腺肥大症動物モデル(BPH)は、対照群(Con)に比較して体重に有意の差がなく、睾丸除去手術後、テストステロン処理される前立腺肥大症動物モデルが適切に確立されたことを確認した。ここに、陽性対照群であるソーパルメット(BPH+Saw)及びフィナステリド(BPH+Fi)を投与した場合、対照群(Con)と大差がなく、丹参抽出物T(BPH+丹参T70~T10)を処理した場合にも体重に有意の変化はなかった。しかし、丹参抽出物Sの場合、対照群に比較して体重が減少した。丹参抽出物Sは、表1に示した通り、サルビアノール酸Bが15%以上含まれている。非特許文献11:SHAN GAOら(2019)によれば、サルビアノール酸Bは細胞内で強力な抗酸化機能をし、酸化状態によって開始されるプログラムされた細胞死を抑制する機能を有し、その他にも、抗炎、抗癌機能が多数知られている。しかし、SHAN GAOら(2019)が報告した通り、サルビアノール酸Bは、一定濃度で細胞毒性を有しており、他の抗癌機能も、癌細胞への細胞毒性効果を用いる場合が多い。本発明者等は、丹参抽出物Sがサルビアノール酸Bを高い濃度で含んでおり、前立腺肥大症動物モデルにおいて一定の細胞毒性を示し、このような過程がSDラットの体重減少につながると解析した。特に、図1及び表1に示したように、サルビアノール酸Bを主に含んでいる丹参抽出物Sは、前立腺肥大症に主要に増加する5α還元酵素タイプ2(5AR2)及び前立腺特異抗原(PSA)を却って増加させる様相を示し、丹参抽出物を前立腺肥大症に用いるにはサルビアノール酸Bの除去が必要であると考えられる。
【0084】
図6は、前立腺肥大症動物モデルにおいて丹参抽出物T70~T10処理によるラットの前立腺サイズの変化を示す写真である。BPH処理によってサイズが増加したラットの前立腺は、丹参抽出物T70~T10処理によって減少した。図7は、前立腺肥大症動物モデルにおいて丹参抽出物T70~T10処理によるラットの前立腺重さの変化を示すグラフであり、図8は、各サンプルの前立腺の指数(体重に対する前立腺の重さ)変化を示すグラフである。図6図8に示すように、丹参抽出物Sは全体的にラットの体重を減少させ、前立腺のサイズを殆ど縮小させず、前立腺の指数(体重に対する前立腺の重さ)が前立腺肥大症モデル(BPH)に比べて却って増加した。
【0085】
これに対し、丹参抽出物T70及びT40は、対照群(Con)に類似する程度に前立腺重さ及び前立腺の指数を示し、40%エタノール抽出物で前立腺肥大症や男性型脱毛を治療するために主に用いられる薬物であるフィナステリドと略同じ効果を示した。丹参抽出物T10は、前立腺重さ及び前立腺の指数の減少に、ある程度効果はあったが、丹参抽出物T70及びT40のように顕著な差を示すことはできなかった。これは、エタノール濃度を上げて抽出するにつれて増加するタンシノン類の含有量が減少し、サルビアノール酸Bが減少する傾向があり、エタノール40%以上で抽出した丹参抽出物がアンドロゲン関連酵素の抑制に効果があると理解できよう。
【0086】
4.3.前立腺肥大症動物モデル由来前立腺組織において丹参抽出物の効果確認
図9では、丹参抽出物T40の前立腺肥大症動物モデルにおいて前立腺肥大関連蛋白である5α-還元酵素(5α-reductase,5AR2)、アンドロゲン受容体(Androgen receptor,AR)、前立腺特異抗原(PSA)の発現に及ぼす効果を確認した。
【0087】
前記実施例4.2で得られた前立腺組織は、プロテアーゼ抑制剤カクテルを含有する冷放射線免疫沈殿分析(RIPA)緩衝液を用いて溶解させた。溶解された細胞を4℃で20分間13,000RPMで遠心分離し、タンパク質濃度をBCA分析で測定した。細胞溶解物(30μgタンパク質/サンプル)を120%で90分間10%ラウリル硫酸ナトリウム-ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS-PAGE)によって分離し、ニトロセルロース膜に移した。膜を室温で1時間5%脱脂乳でブロックした。その直後、AR、5AR2、PSA及びβ-アクチンのような一次抗体を一晩膜に反応させた。膜を洗浄した後、これらは、ヤギ抗ウサギIgG及び抗マウスIgGホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)接合された二次抗体と共に室温で1時間培養された。強化化学発光(ECL)検出試薬を用いて免疫検出を行い、ダビンチ(Davinch-Chemi)イメージングシステム(Davinch-K.,ソウル)を用いて膜を撮影し、これを図9に示した。
【0088】
図9に示すように、前立腺肥大症誘導動物モデルにおいて5AR2及びPSAが顕著に増加し、丹参抽出物40Tによって5AR2、AR及びPSAの全てのタンパク質の発現が顕著に抑制されることを確認した。
【0089】
図10は、BPHにおいてテストステロンの信号伝達経路及び丹参抽出物の薬理機転を示す模式図である。前立腺肥大症の原因はまだ明らかにされていないが、加齢、男性ホルモンの不均衡(特に、ジヒドロテストステロン,DHT)、代謝障害が前立腺肥大症を誘発する主要発生要因として推測されている。現在使用中のソーパルメットの実抽出物(健康機能食品告示型素材)とフィナステリド(前立腺肥大症治療剤)は男性ホルモンだけを標的とするが、治療効果を極大化するためには、加齢、不均衡状態の男性ホルモン、代謝障害を複合的に改善できる戦略が必要である。丹参酒精抽出物の主要タンシノン成分は、NAD-促進剤として細胞質内‘NQO1’酵素を標的とし、同時に補基質(co-substrate)であるNADHをNADに転換して生体内NADの濃度を増加させる。NQO1酵素は、フラボタンパク質系統の2-電子還元酵素で、NADH又はNADPHを補助因子としてキノン(Quinone)系統の化合物をヒドロキノン(hydroquinone)に還元し、一般的に活性酸素の除去、ビタミンK代謝を行う。NAD-促進剤(主要タンシノン成分)による細胞内NAD増加は、サーチュインとAMPK及びPGC-1αを活性化し、これはミトコンドリアの量と機能を同時に増進させ、細胞内エネルギー代謝を活性化させることができる。特に、サーチュイン(Sirtuin)は、抗老化効果に、AMPK及びPGC-1αは代謝疾患改善効果に中核的な役割を担うタンパク質であり、‘加齢、代謝疾患、男性ホルモン不均衡’に誘発される‘前立腺肥大症’を効果的に好転させる可能性が大きいものと期待し、前記のような結果から、丹参抽出物の40%以上(40~99%)のエタノール抽出物は、前立腺肥大症又は脱毛症の予防又は治療に優れた効果があることを確認した。

図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
【国際調査報告】