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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】区分を有する建築用パネル
(51)【国際特許分類】
   E04F 13/14 20060101AFI20220121BHJP
   E04F 15/08 20060101ALI20220121BHJP
   B27N 3/04 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
E04F13/14 102B
E04F15/08 A
B27N3/04 C
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526378
(86)(22)【出願日】2018-12-21
(85)【翻訳文提出日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2018000580
(87)【国際公開番号】W WO2020125919
(87)【国際公開日】2020-06-25
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510094539
【氏名又は名称】クナウフ ギプス カーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100135633
【弁理士】
【氏名又は名称】二宮 浩康
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】アンドレ マウン
【テーマコード(参考)】
2B260
2E110
2E220
【Fターム(参考)】
2B260BA07
2B260BA13
2B260BA15
2B260BA19
2B260CB01
2B260CD02
2B260CD03
2B260CD04
2B260CD05
2B260DA01
2B260EA01
2B260EA03
2B260EA11
2E110AA46
2E110AA47
2E110AB03
2E110AB04
2E110AB05
2E110AB22
2E110AB23
2E110BA02
2E110BA03
2E110BA12
2E110BB18
2E110CA07
2E110CA08
2E110DA12
2E110EA04
2E110EA09
2E110GA13W
2E110GA23W
2E110GA33W
2E110GA42W
2E110GB01W
2E110GB12W
2E110GB16W
2E110GB17W
2E110GB23W
2E110GB32W
2E110GB35W
2E110GB62W
2E220AA23
2E220AA25
2E220AB12
2E220AB14
2E220AC03
2E220BA01
2E220CA02
2E220EA01
2E220FA02
2E220GA12X
2E220GA22X
2E220GA25X
2E220GA27X
2E220GB01X
2E220GB12X
2E220GB22X
2E220GB28X
2E220GB42X
(57)【要約】
本発明は、耐荷重能力および抗折強度に関して、高度の等方性を有する建築用パネルに関する。建築用パネルは、第1の区分および第2の区分を含み、各区分は、少なくとも1つの層を含み、少なくとも1つの層の各々は、繊維を含み、繊維は、各層全体に実質的に均一に、パネルの主要な方面に対して実質的に平行に分布されており、かつ主に同じ方向に配向され、区分は、第1の区分が第2の区分よりも薄いということを特徴とする横方向においてしっかりと接合されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の区分および第2の区分を含む建築用パネルであって、各区分が、少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層の各々が、繊維を含み、前記繊維が、各層全体に実質的に均一に、前記パネルの主要な表面に対して実質的に平行に分布されており、かつ主に同じ方向に配向されており、前記区分が、前記第1の区分が前記第2の区分よりも薄いということを特徴とする横方向においてしっかりと接合されている、建築用パネル。
【請求項2】
前記第1の区分が、加えられる力から最も遠い前記区分であることを特徴とする、請求項1に記載の建築用パネル。
【請求項3】
前記第1の区分が、前記パネルの厚さの少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも12%、および前記パネルの厚さの最大で30%、好ましくは最大で20%、さらに好ましくは最大で18%で構成されていることを特徴とする、請求項1または2に記載の建築用パネル。
【請求項4】
前記第2の区分が、前記第1の区分と比較して2.5~10倍大きい厚さ、好ましくは前記第1の区分と比較して4.5~6.5倍大きい厚さを有することを特徴とする、請求項1または2に記載の建築用パネル。
【請求項5】
前記少なくとも1つの層が、同じ配向の繊維を含む、複数の薄層を含むことを特徴とする、請求項1~4のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項6】
前記建築用パネルが、モノリシックな外観を有することを特徴とする、請求項1~5のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項7】
前記建築用パネルが、結合材料、好ましくはセメント系材料、より好ましくは硫酸カルシウム材料、最も好ましくは石膏材料を含むことを特徴とする、請求項1~6のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項8】
前記建築用パネルが、石膏繊維板またはセメント繊維板であることを特徴とする、請求項1~7のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項9】
前記繊維が、鉱物起源、合成起源、および/または生物学的起源であることを特徴とする、請求項1~8のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項10】
前記繊維が、1mm~5mmの平均長さを有し、および/または15μm~50μmの平均直径を有することを特徴とする、請求項1~9のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項11】
前記建築用パネルが、前記第1の区分が前記第2の区分の下にある状態で、EN 12825(2001)により前記破壊荷重を判定するときの耐荷重能力に関して、0.83以上、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.97以上の等方性の程度を有することを特徴とする、請求項1~10のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項12】
前記建築用パネルが、EN 15283-2(2009)による前記抗折強度を判定するときの前記抗折強度に関して、0.88以上、好ましくは0.93以上の等方性の程度を有することを特徴とする、請求項1~11のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項13】
前記建築用パネルが、1200kg/m超~2000kg/m未満、好ましくは1400kg/m超~1800kg/m未満、さらに好ましくは1500kg/m~1700kg/m未満の密度を有することを特徴とする、請求項1~12のいずれか1項に記載の建築用パネル。
【請求項14】
好ましくは請求項1~13のいずれか1項に記載の建築用パネルを製造する方法であって、
第1の区分および第2の区分を提供する工程であって、各区分が少なくとも1つの層を含み、前記少なくとも1つの層の各々が、繊維を含む、提供する工程と、
横方向において前記第1の区分および前記第2の区分をしっかりと接合する工程と、を含み、
前記第1の区分が、前記第2の区分よりも薄い、方法。
【請求項15】
前記繊維が、各層全体に実質的に均一に、前記パネルの前記主要な表面に対して実質的に平行に分布されており、主に同じ方向に配向されている、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
請求項14または15に記載の方法であって、
前記繊維と他の構成成分を混合して、混合物を形成することと、
前記混合物を移動するウェブ上に排出することと、
ロール上に複数の薄層を蓄積して、層を形成することと、
前記ロールから少なくとも1つの層を除去することと、をさらに含む、方法。
【請求項17】
前記移動ウェブが、50m/分~150m/分の速度で、好ましくは70m/分~120m/分の速度で進行することを特徴とする、請求項16または17に記載の方法。
【請求項18】
請求項1~13のいずれか1項に記載の建築用パネルの、床パネル、天井パネル、または壁パネルとして、好ましくは上げ床パネルとしての使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
建設には、セメント系繊維板または木質系繊維板および集成材(例えば、配向性ストランド板OSB、高密度繊維板HDF、中密度繊維板MDF、または低密度繊維板LDF)などの、さまざまなタイプの繊維板が使用される。すべての繊維板は、繊維またはフレークがマットに分布され、結合材料、例えば、樹脂またはセメント系材料と頻繁に混合され、その後、圧縮または押圧されるという共通点を有する。例えば、セメント系繊維板は、多くの場合、少なくともエンドレスの製造ベルトまたは移動ウェブを備える、ハチェクプロセスに基づく湿式プロセスによって製造される。結果として得られる建築用パネルまたは板は、製造方法に起因する可能性のある明確な特徴を有し得る。
【0002】
先行技術では、例えば、繊維が典型的にランダムに配向されず、移動するウェブの進行方向に配向され、このため主に機械方向において長さ方向に位置合わせまたは配向される、パネルまたは板を製造するプロセスが存在する。しかしながら、上記のパネルは、極めて異方性であり得る、すなわち、機械的強度に関して等方性の程度が低い可能性がある。等方性の程度が1に等しい場合、パネルは、等方性であると見なすことができる。より具体的には、機械的強度は、例えば、耐荷重能力またはパネルの抗折強度に関して説明することができる。耐荷重能力ならびに抗折強度の両方は、パネル上のさまざまな領域の破壊荷重によって判定することができる(詳細については、例えば、EN 12825(2001)および/またはEN 15283-2(2009)を参照)。破壊荷重は、パネルが破壊、すなわちパネルが破断または亀裂が発生するまで、加えられる力または荷重を着実に増加させることによって試験することができる。等方性の程度が低いパネルでは、破壊荷重は、EN 12825(2001)および/またはEN 15283-2(2009)による試験においてパネルの方向に対して異なる。
【0003】
最も低い破壊荷重、すなわち、最も弱い領域が、多くの場合、パネルの機械的強度を定義する。最も弱い領域は、縁部の中心(EN 12825(2001)による試験の場合)またはパネルの中心線(EN 15283-2(2009)による試験の場合)に位置付けられ得る。例えば、床パネルでは、最も低い破壊荷重は、パネルの耐荷重能力を判定することができる。一方、天井パネルおよび壁パネルでは、最も低い抗折強度が、パネルの最も低い耐破壊性と相関する可能性がある。
【0004】
特定の先行技術(DE 2613976 C3)は、ハチェク法に基づいて、石膏繊維板を製造するプロセスを示しており、少なくとも2つの区分が、圧力によって重ね合わされ、かつ成形され、その結果、各区分における主な繊維配向の方向は、重ね合わされた区分における配向から約90°それる。DE 2613976 C3は、横方向における区分の数が偶数であると、曲げ強度が増加し、等方性になるとさらに主張する。これは、同じ厚さの2つの区分を有するパネルに関して開示される。
【0005】
しかしながら、石膏繊維板を使用した試験では、DE 2613976 C3の開示とは異なり、横方向において接合された同じ厚さの2つの区分は、耐荷重能力および抗折強度に関して等方性の程度が低くなることが示される(表1、表2、および表3)。この低い等方性の程度は、パネルを建築する上で不利である。このため、十分な耐荷重能力のために、床、例えば、上げ床で使用される建築用パネルは、現在のところ、概して、28mm~42mmの厚さを必要とする。
【0006】
パネルの厚さに関係なく、すべての方向において十分な機械的強度を提供する、耐荷重能力および抗折強度に関して高度な等方性を備えたパネルを製造する必要性が依然として存在することが見られ得る。
【0007】
したがって、本発明の目的は、耐荷重能力に関して、また抗折強度に関して高度な等方性を有する建築用パネルを製造することである。本発明のさらなる目的は、当技術分野で既知のものと比較してより経済的に製造することもできる、より軽い建築用パネルを製造することである。
【0008】
本目的は、第1の区分および第2の区分を含む建築用パネルによって達成され、各区分は、少なくとも1つの層を含み、少なくとも1つの層の各々は、繊維を含み、繊維は、各層全体に実質的に均一に、パネルの主要な表面に対して実質的に平行に分布され、かつ主に同じ方向に配向され、および区分は、第1の区分が第2の区分よりも薄いということを特徴とする横方向においてしっかりと接合される。
【0009】
本発明による建築用パネルという用語は、壁、床、または天井を組み立てるために建設に使用される平らなシートを指す。これらの建築用パネルの例は、限定されるものではないが、壁板、乾式壁、石膏板、繊維板、セメント系繊維板、木質系繊維板、および集成材を含む。
【0010】
本発明の建築用パネル内の繊維は、典型的に、製造中に移動するウェブの進行方向に配向され、このため、主に同じ方向に配向される。好ましくは、それらは、機械方向において実質的に長さ方向に位置合わせされる。繊維は、概して、繊維の長さよりも小さい直径を有する細い糸状の構造を有するため、配向が区別可能となる。繊維は、建築用パネルの主要な表面に対して実質的に平行であり得、建築用パネルの主要な表面は、建築用パネルの上面および下面であり、共に、建築用パネルの表面積の少なくとも60%、好ましくは、建築用パネルの表面積の少なくとも70%を構成する。繊維は、各層全体に実質的に均一に分布され得る。これは、繊維が均一に分布されるように見え、層の一部分において凝集され、または束ねられているようには見えないということを理解されたい。
【0011】
建築用パネルは、2つの区分を含むことができる。各区分は、1つ以上の層からなり得る。区分が2つ以上の層を含む場合、1つの区分のすべての層における繊維は、主に同じ方向に配向される。本発明によれば、2つの区分は、横方向においてしっかりと接合される。その結果、一方の区分における繊維は、機械方向において長さ方向に配向され、他方の区分における繊維は、機械方向に対して垂直または横方向、すなわち機械方向を横切って約90°の角度で配向される。横方向層は、例えば、圧力または接着剤もしくはそれらの組み合わせによってしっかりと接合することができる。
【0012】
繊維は、伸びによる力に耐える能力を有する。この機能により、特に、耐荷重能力および抗折強度に関して、機械的強度が加えられた繊維を有する建築用パネルが得られる。2つの区分を横方向に接合することにより、加えられた力は、2つの方向において吸収され得、加えられた力または荷重に対するさらに高い抵抗をパネルに与える。驚くべきことに、EN 12825(2001)またはEN 15283-2(2009)で試験されたような、加えられた力に対するこの抵抗は、1つの区分がより薄い場合、さらに高いことが示される。
【0013】
理論に拘束されることなく、重ね合わされた区分が横方向に接合された場合、好ましくは等しくない厚さの、3つ以上の区分が同程度の等方性を有する可能性があると考えられている。
【0014】
本発明による好ましい建築用パネルでは、第1の区分は、床パネルの場合のように、加えられる力、例えば、圧縮力から最も遠い。設置された床パネルでは、第1の区分は、第2の区分を下回る場合がある。驚くべきことに、区分の構成は、抗折強度における等方性の程度とは無関係である可能性がある。歪む、または撓む可能性がある、天井パネルとして使用される建築用パネルでは、第1の区分は、上部区分または下部区分のいずれかになり得る。これは、壁パネルにおける前面区分または背面区分に対応し得る。床パネルと比較した主要な違いは、天井パネルおよび壁パネルの両方が平行な支持部上に頻繁に配設することができるということである。
【0015】
好ましくは、第1の区分は、パネルの厚さの少なくとも5%、好ましくは少なくとも10%、さらに好ましくは少なくとも12%を構成することができる。また、第1の区分は、パネルの厚さの最大で30%、好ましくは最大で20%、さらに好ましくは最大で18%を構成できることが好ましい。壁パネルおよび天井パネルは、典型的に、全体の厚さまたは高さが6mm~13mmを有し、床パネルは、典型的に、全体の厚さまたは高さが25mm~45mm、好ましくは28mm~42mmを有する。
【0016】
本発明による建築用パネルでは、第2の区分または厚い区分は、第1の区分と比較して2.5~10倍大きい、好ましくは第1の区分または薄い区分と比較して4.5~6.5倍大きい厚さを有することができる。
【0017】
本発明によれば、区分は、少なくとも1つの層を含むことができる。例えば、石膏繊維板の場合、この少なくとも1つの層は、混合物を製造ベルトまたは移動ウェブ上に排出すること、混合物を複数の薄層の形態でロール上に蓄積すること、続いて、例えば、ロールからのシート形態の層を除去することによって製造することができる。複数の層を含む区分を得るために、層は接合され得、その結果、1つの区分のすべての層における繊維が、主に同じ方向に配向される。区分の層を接合し、同じ工程でそれぞれの区分を接合することが可能である。
【0018】
層の厚さは、ロール上に蓄積された薄層の数によって制御することができる。石膏繊維板の場合、個々の薄層は、約1~2ミリメートルの厚さを有し得る。
【0019】
本発明による単層は、強度、耐荷重能力、抗折および/または曲げ強度などの物理的パラメータを提供することを目的としている。このため、それらは、非装飾層と見なされる。層は、概して、同じ混合物から生成される。しかしながら、異なる混合物に由来する層を組み合わせることが可能である。
【0020】
横方向における区分の接合は、建築用パネルがモノリシックな外観を有することができるように、すなわち、視認可能である接合部または継ぎ目がない単一のユニットとして現れ得るように好ましくは実行される。好ましくは、これは、セメント系材料などの結合材料が固化、または硬化する前に、好ましくは圧力によって区分を接合することによって達成される。
【0021】
本発明による一実施形態では、建築用パネルは、結合材料、例えば、樹脂またはセメント系材料を含み得る。セメント系材料は、例えば、セメントまたはスタッコなどの、化学的に固化することができる材料である。好ましくは、セメント系材料は、硫酸カルシウム材料であり、さらに好ましくは、石膏材料である。建築用パネルは、少なくとも50%w/wのセメント系材料を含む。特に、建築用パネルは、石膏繊維板またはセメント繊維板であり得る。
【0022】
建築用パネル中の繊維は、概して、パネルを補強するために使用される。これらの繊維は、鉱物、合成、または生物学的起源のもの、例えば、セルロース繊維、ガラス繊維、複合繊維、炭素繊維、金属繊維、鉱物繊維、合成繊維、ナノ繊維、生物工学的方法または遺伝子工学によって製造された繊維、もしくはそれらの任意の組み合わせであり得る。
【0023】
本発明によれば、繊維は、1mm~5mm、好ましくは1mm~4mm、さらに好ましくは1mm~3mmの平均長さを有することができる。本発明によれば、繊維は、15μm~50μmの平均直径を有することができる。建築用パネルは、5%~25%の繊維含有量を有することができる。
【0024】
本発明による建築用パネルは、第1の区分が第2の区分の下である状態で、EN 12825(2001)により破壊荷重を判定するとき、その耐荷重能力に関して、0.83以上、好ましくは0.90以上、より好ましくは0.97以上の等方性の程度を有し得る。特に先行技術のセメント系繊維板では、耐荷重能力は、パネルの隣接する縁部によって大きく異なる可能性がある。これは、主に繊維の優先配向に起因する。単一区分パネル、すなわち、表2のように上層から下層の相対厚さが100%/0%のパネルでは、繊維の長さ方向の配向に対して実質的に平行な縁部は、概して、繊維を横方向区分で切断する縁部と比較して、より高い耐荷重能力を呈する。
【0025】
本発明による建築用パネルは、その耐荷重能力に関して高度な等方性を有し得る。サンプリングスポットは、中心が、典型的に縁部の最も弱いスポットであるため、EN 12825(2001)により、パネルの隣接する縁部の中心において選択される。等方性の程度を判定するために、相対的な破壊荷重、すなわち、弱い縁部の破壊荷重の隣接する強い縁部の破壊荷重に対する比が、判定される。値1は、耐荷重能力に関する等方性を示す。横方向において第1の区分または薄い区分と第2の区分または厚い区分を接合することによって、隣接する縁部の破壊荷重は、同様の値に近づき、その結果、建築用パネルの耐荷重能力は、等方性に近づく。しかしながら、この等方性は、一方向性であり、第1の区分は、EN 12825(2001)による試験において、理想的には設置されたパネルにおいて、最下部の区分である必要があることを意味する。実際、第1の区分が試験または設置された床パネルにおける最上部の区分である場合、等方性の程度は減少する。
【0026】
本発明による建築用パネルは、EN 15283-2(2009)により抗折強度を判定するとき、抗折強度に関して0.88以上、好ましくは0.93以上の等方性の程度を有し得る。550mmx300mmのサイズの横方向および縦方向の試験片が、この試験のためにパネルから切り取られる。等方性の程度は、縦方向の試験片の破壊を引き起こす力で判定される抗折強度を、パネルの横方向の試験片に関連付けることによって判定される。等方性の程度1は、等方性と見なされる。等方性の程度を判定するために、より小さい値、すなわち低い抗折強度が、大きい値、すなわち大きい抗折強度によって常に除算される。
【0027】
第1の区分の第2の区分に対する相対的な厚さに関する最適値が存在するということが予想される。第1の区分が薄すぎる場合、耐荷重能力ならびに抗折強度に関する等方性の程度が減少するということがさらに予想される。
【0028】
本発明による建築用パネルは、1200kg/m超~2000kg/m未満、好ましくは1400kg/m超~1800kg/m未満、さらに好ましくは1500kg/m超~1700kg/m未満の密度を有し得る。
【0029】
第1の区分および第2の区分を提供する工程を含む建築用パネルを製造する方法について、別個の保護がまた求められ、各区分は、少なくとも1つの層を含み、少なくとも1つの層の各々は繊維を含み、第1の区分および横方向における第2の区分をしっかりと接合し、第1の区分は第2の区分よりも薄い。
【0030】
有利には、前述の方法における繊維は、各層全体に実質的に均一に、パネルの主要な表面に対して実質的に平行に分布され、主に同じ方向に配向される。
【0031】
本発明による方法は、
繊維と他の構成成分を混合して、混合物を形成することと、
混合物を移動するウェブ上に排出することと、
ロール上に複数の薄層を蓄積して、層を形成することと、
ロールから少なくとも1つの層を除去することと、をさらに含み得る。
【0032】
部分的にハチェクプロセスに基づくことができる本発明による方法では、パルプの形態の繊維を、他の構成成分と混合することができる。パルプは、典型的に、再生紙および/または段ボールから調製され得、これらは多くの場合、約80%のセルロースを含む。
【0033】
本発明による好ましい方法では、他の構成成分は、結合材料および/または添加剤を含むことができ、一方で、添加剤は、限定されるものではないが、遅延剤、凝集剤、分散剤を含むことができる。結合材料は、セメント系材料または樹脂を含み得る。セメント系材料は、例えば、セメントまたはスタッコなどの、化学的に固定することができる材料である。好ましくは、セメント系材料は、硫酸カルシウム材料であり、さらに好ましくは、石膏材料である。セメント系材料は、炭酸塩および/またはケイ酸塩をさらに含み得る。
【0034】
このように得られた混合物は、次いで、移動ウェブまたは製造ベルト上に排出、好ましくは連続的に排出することができる。好ましくは、移動ウェブは、50m/分~150m/分の速度で、好ましくは70m/分~120m/分の速度で進行することができる。混合物のエンドレスマットは、いくつかの薄層の形態でロール上に蓄積されることができる。十分な厚さに達した後、多層の薄層シートは、切断することによってロールから除去することができる。この多層シートは、層を含むことができる。プロセスが、様々な厚さの層および/または区分を製造するために生産ラインを調節するオプションを含む場合、有利である。各々が少なくとも1つの層を含む、少なくとも2つの区分が横方向において重ね合わされた後、区分は、混合物が固化および/または硬化する前に、プレス内で圧縮することができる。混合物ならびに層および/または区分の脱水は、移動ウェブ上、ロール上、および圧縮プレス内で行うことができる。得られたシート状のパネルは、より小さいパネルにさらに切断し、最終的に固化、硬化、および/または乾燥させることができる。得られたシート状のパネルは、モノリシックな外観の連続した固形のパネルであり得る。
【0035】
本発明による建築用パネルを床パネル、天井パネル、または壁パネルとして、好ましくは上げ床パネルとして使用するために、別個の保護がまた求められる。さらに、耐発射体乾式壁として使用されるパネル、軟体の衝撃を受ける壁パネル、床用素子、プレハブのスクリードパネル、および/または天井パネルが、等方性の程度の増加のため利益を得る可能性がある。天井パネルでは、特に湿度の高い環境における撓みの程度もまた低減され得る。
【0036】
本発明は、さらに図において説明される。しかしながら、図中の例は、本発明の範囲を限定するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0037】
図1】本発明による建築用パネルの概略図である。
図2】本発明による建築用パネルの代替的な実施形態の概略図である。
図3】耐荷重能力、すなわちEN 12825(2001)によるパネルの破壊荷重を試験するための配置の概略図である。
図4】EN 15283-2(2009)によるパネルの抗折強度を試験するための配置の概略図である。
【0038】
参照番号
1 第1の区分
2 第2の区分
3 横方向区分における繊維
4 縦方向区分における繊維
5 上部主要表面
6 層
7 縁部
8 鋼製円柱
9 試験片
10 圧子
11 平行支持部
12 圧盤
13 加えられた力の方向
14 歪みを測定するセンサ
15 隣接する縁部
【0039】
図1は、2つの区分を有するパネルを図示し、第1の区分1は、第2の区分2よりも薄い。この実施形態では、各区分1および2は、1つの層6からなる。縁部7の下で見られ得るように、第1の区分の繊維は横方向区分3で切断され、一方で第2の区分の繊維は長手方向区分4で切断される。これは、隣接する縁部15の下で逆になる。パネルは、2つの主要な表面を有する。ここでは、上部の主要な表面5が示され、下部の主要な表面は、非表示になっている。
【0040】
図2は、2つの区分1および2を有するパネルを図示し、区分1は、1つの層6を含み、区分2は、2つの層6を含む。パネルの全体的な厚さを大きくするために、同じ配向の繊維を有する2つの層が、第2の区分2を構成し、1つだけの層6が、第1の区分1を構成する。3つの層6すべてが圧力によって接合することができ、その結果、繊維3、4の配向によって見られ得るように、区分1および区分2は、横方向に接合され得る。
【0041】
図3および図4は、12825(2001)およびEN 15283-2(2009)による測定のための試験配置の主要な態様を図示する。
【0042】
耐荷重能力のための試験配置が、図3に描写される。典型的に600mmx600mmのサイズの試験片9は、通常の台座の代わりに、同じ高さ(直径90mm)の4つの鋼製円柱8上に配置される。試験片9の四隅は各々、円柱の円形表面の4分の1を覆う。圧子10は、25mm×25mm×25mmの鋼の立方体であり、着実に増加する圧縮力13で試験片上に押し下げられる。歪みセンサ14は、パネルに亀裂が生じ、破壊荷重が判定されるまで、力を増加させながら試験片の歪みまたは変形を測定する。
【0043】
抗折強度を判定するための試験配置が、図4に描写される。20mmを超える建築用パネルに対して、典型的に550mmx300mmのサイズの試験片を、建築用パネルから縦方向および横方向に切断する。試験片9は、平行な支持体11上に配置される。圧盤12は、圧縮力13で試験片の中心に押し下げられる。歪みセンサ14は、パネルが破損して破壊荷重が判定されるまで、力を増加させながら試験片の歪みまたは変形を測定する。次いで、EN 15283-2(2009)に記載されるように、抗折強度が判定される。等方性の程度については、縦方向に切断された試験片の抗折強度は、横方向に切断された試験片の抗折強度に関する。
【0044】
実施例は、本発明をさらに説明することを意図する。
サンプルを、EN 12825(2001)、EN 15283-2(2009)、図3および図4に従って試験する。破壊荷重を、台座の代わりに鋼製円柱を使用して600mmx600mmのパネル上で試験する。このため、耐荷重能力に対する破壊荷重は、実質的にEN 12825(2001)により判定される。この変更は、試験結果に影響を与えないと考えられる。すべての試験を、石膏繊維板上で実施する。異なる相対厚さに対する結果を、表2および表3にまとめる。これらの結果から、耐荷重能力および抗折強度の両方に関する等方性の程度は、第1の区分の厚さが減少するにつれて増加するように見える。しかしながら、第1の区分が薄すぎる場合、等方性の程度が減少することが予想される。
【0045】
耐荷重能力に関する等方性の程度は、一方向であるように見え、つまり、第1の区分は、EN 12825(2001)による試験において、理想的には設置されたパネルにおいて、最下部の区分である必要があることを意味する。第1の区分の厚さの薄い区分の厚さに対する最適な比は、84%/16%の比に近いように見える。試験結果はまた、区分がパネルの厚さの約16%を構成する場合、他のすべての例と比較して、弱い縁部および強い縁部が逆になることも示す。これまでのところ、これが実験誤差に起因するものか、または最適な比率をわずかに超えたものなのかは不明である。
【0046】
予期せぬことに、抗折強度に関する等方性の程度は、パネルの構成、すなわち、第1の区分が試験において下部区分であるかまたは上部区分であるかに関係なく改善する。抗折強度の等方性の程度もまた、68%/32%のパネルおよび84%/16%のパネルに対する構成に関係なく増加することが予想される。
【表1】
【表2】
【表3】
【0047】
本明細書で使用されるように「およそ」または「約」などの程度の用語の説明は、結果が大幅に変化しないような程度の用語の妥当な量の偏差として理解されるべきである。これらの程度の用語は、少なくとも±5%または少なくとも±10%の偏差を含むと解釈されるべきである。
【0048】
本明細書で使用される際、「実質的に」および「主に」という用語は、効果に対して十分であると理解されるか、または絶対性が存在するように同一の全体的な結果を得ることを意図する。しかしながら、両方の用語は、最大40%、好ましくは最大20%、より好ましくは最大10%、最も好ましくは最大2%の偏差を含み得る。
【0049】
本発明による等方性の程度は、±0.02の許容誤差を含み得る。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】