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特表2022-510814PEGアクリレート-HNBRコポリマーを製造するためのプロセス
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】PEGアクリレート-HNBRコポリマーを製造するためのプロセス
(51)【国際特許分類】
   C08C 19/02 20060101AFI20220121BHJP
【FI】
C08C19/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021527950
(86)(22)【出願日】2019-11-26
(85)【翻訳文提出日】2021-05-19
(86)【国際出願番号】 EP2019082612
(87)【国際公開番号】W WO2020126353
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18213090.6
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TEFLON
(71)【出願人】
【識別番号】516112462
【氏名又は名称】アランセオ・ドイチュランド・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】カローラ・シュナイダース
(72)【発明者】
【氏名】スザンナ・リーバー
【テーマコード(参考)】
4J100
【Fターム(参考)】
4J100AL08R
4J100AM02Q
4J100AS02P
4J100BA04R
4J100BA08R
4J100CA05
4J100CA31
4J100EA07
4J100FA20
4J100GC16
4J100GC17
4J100HA04
4J100HB02
4J100HC90
4J100HD22
4J100HE12
4J100HE41
(57)【要約】
本発明は、PEGアクリレート-NBRラテックスをラテックス水素化させてPEGアクリレート-HNBRラテックスを得、次いでコアグレーションさせることによって、優れた加工性を示すPEGアクリレート-HNBRコポリマーを製造するためのプロセスに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
PEGアクリレート-HNBRコポリマーを製造するためのプロセスであって、PEGアクリレート-NBRラテックスを水素化にかけ、次いでコアグレーションさせるが、ここで、前記PEGアクリレート-NBRラテックスが、
モノマー単位の全量を基準にして、
(a)10重量%~60重量%の少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、
(b)20重量%~80重量%の少なくとも1種の共役ジエン単位、及び
(c)10重量%~60重量%の、一般式(I)のPEGアクリレートから誘導されるPEGアクリレート単位、
【化1】
(式中、
Rは、水素、又は分岐状若しくは非分岐状のC1~C20-アルキルであり、
nは、1~8であり、そして
は、水素又はメチルである)、
を含む、プロセス。
【請求項2】
前記少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位の量が、モノマー単位の全量を基準にして、15重量%~40重量%、好ましくは15重量%~35重量%である、請求項1に記載のプロセス。
【請求項3】
前記少なくとも1種の共役ジエン単位の量が、モノマー単位の全量を基準にして、好ましくは30重量%~65重量%、特に好ましくは35重量%~60重量%である、請求項1又は2に記載のプロセス。
【請求項4】
一般式(I)の前記PEGアクリレートから誘導される前記PEGアクリレート単位の量が、モノマー単位の全量を基準にして、10重量%~50重量%、好ましくは20重量%~50重量%である、請求項1~3のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項5】
前記PEGアクリレート-NBRラテックスが、15重量%~35重量%の前記少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、好ましくは20重量%~25重量%の前記少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、35重量%~60重量%の前記少なくとも1種の共役ジエン単位、好ましくは45重量%~60重量%の前記少なくとも1種の共役ジエン単位、及び一般式(I)の前記PEGアクリレートから誘導される20重量%~50重量%の前記PEGアクリレート単位、好ましくは20重量%~30重量%の前記PEGアクリレート単位を含む、請求項1~4のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項6】
一般式(I)のPEGアクリレートから誘導される前記PEGアクリレート単位が、2~12個のエチレングリコール繰り返し単位を有する、エトキシ、ブトキシ又はエチルヘキシルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、好ましくは2~5個のエチレングリコール繰り返し単位を有するエトキシ又はブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、特に好ましくは2個又は3個のエチレングリコール繰り返し単位を有する、エトキシ又はブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、極めて特に好ましくはブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(BDGMA)から誘導される単位である、請求項1~5のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項7】
前記PEGアクリレート-NBRラテックスが、アクリロニトリル単位、ブタジエン単位、及びブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート単位を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項8】
前記PEGアクリレート-NBRラテックスが、前記PEGアクリレート-NBRラテックスの全重量を基準にして、10重量%~50重量%、好ましくは15重量%~40重量%、特に好ましくは15重量%~25重量%の固形分濃度を有することを特徴とする、請求項1~7のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項9】
前記水素化が、水素化触媒の存在下、好ましくは水に対して安定な貴金属含有水素化触媒の存在下、特に好ましくは一般式Bの水素化触媒の存在下、
【化2】
(式中、
Mは、ルテニウムであり、
及びXは、同一であるか又は異なったアニオン性配位子、好ましくはハロゲンであり、
Lは、N-ヘテロ環状カルベン(NHC)配位子であり、
、R、R及びRは、同一であるか又は異なっていて、それぞれの場合において、水素、アルキル、好ましくはC1~C30-アルキル、シクロアルキル、好ましくはC3~C20-シクロアルキル、アルケニル、好ましくはC2~C20-アルケニル、アルキニル、好ましくはC2~C20-アルキニル、アリール、好ましくはC6~C24-アリール、カルボキシレート、好ましくはC1~C20-カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC1~C20-アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC2~C20-アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC2~C20-アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC6~C24-アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC2~C20-アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC1~C30-アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC1~C30-アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC6~C24-アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC1~C20-アルキルスルホニル、又はアルキルスルフィニル、好ましくはC1~C20-アルキルスルフィニルであるが、ここで、これらの基は、それぞれの場合において、場合によっては1種又は複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリール又はヘテロアリール基で置換されているか、或いは別な形として、二つの基のRが、それらが結合されている共通の炭素原子を共有して、橋架けされて、脂肪族的又は芳香族的性質を有していてもよい環状基を形成するが、それらは置換されていてもよく、そして1種又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよく、
Yは、酸素(O)、硫黄(S)、N-R基、又はP-R基であり、ここでRは、それぞれの場合において、場合によっては、1種又は複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリール、又はヘテロアリール基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、又はアルキルスルフィニル基であり、そして
は、水素又はアルキル、アルケニル、若しくはアリール基である)、
そして極めて特に好ましくは、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン)ジクロロ(o-イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムの存在下に実施される、
請求項1~8のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項10】
前記水素化が、ドデシル硫酸ナトリウム(SDS)の存在下に実施される、請求項1~9のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項11】
前記水素化が、5~15MPaの圧力で実施される、請求項1~10のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項12】
前記水素化が、100℃~150℃の温度で実施される、請求項1~11のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項13】
前記水素化の時間が、1~10時間である、請求項1~12のいずれか一項に記載のプロセス。
【請求項14】
請求項1~13のいずれか一項に記載のプロセスによって得ることが可能なPEGアクリレート-HNBRコポリマー。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、PEGアクリレート-NBRラテックスをラテックス水素化させてPEGアクリレート-HNBRラテックスを得、次いでコアグレーションさせることによって、優れた加工性を示すPEGアクリレート-HNBRコポリマーを製造するためのプロセスに関する。
【背景技術】
【0002】
ゴム業界は、ユーザーの、ますます増大する要求を満たすために、改良された合成ゴムを常に追い求めている。ニトリルゴム、特に水素化ニトリルゴムが、主要な役割を果たしている。
【0003】
ニトリルゴム(「NBR」;ニトリルゴムのコポリマー)とは、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエン、及び場合によっては1種又は複数のさらなる共重合性モノマーの、コポリマー又はターポリマーであるゴムを意味していると理解されたい。水素化ニトリルゴム(「HNBR」)とは、その中に組みこまれたジエン単位のC=C二重結合が、全面的又は部分的に、選択的に水素化されたニトリルゴムを意味していると理解されたい。
【0004】
NBRとHNBRのいずれもが、特定のエラストマー分野において、多年にわたって重要な役割を果たしてきた。HNBRは、傑出した耐油性、良好な耐熱性、並びにオゾン及び化学物質に対する優れた抵抗性の形で、傑出した性能プロファイルを有している。HNBRはさらに、極めて良好な機械的性能及び実用的性能を有しており、高い引き裂き抵抗性、低い摩耗性、圧力及び引張応力を受けた後の低い永久変形、並びに良好な耐油性、しかし特には熱及び酸化の作用に対する顕著な安定性を特徴としている。
【0005】
この理由から、それは、大部分の各種の応用分野で、広く用途を見出してきて、たとえば、自動車分野においては、シール、ホース、ベルト、及び制震要素、さらには採油の分野では、ステーター、油井シール、及びバルブシール、そして、電気分野、機械工学、及び海洋工学での数多くの部品を製造するのに使用されている。応用分野に合わせて、各種のモノマー、分子量、多分散性、及び機械的性質及び物理的性質を特徴とする、各種多彩なタイプのものが、市販されている。標準的なタイプに加えて、特に、特定のターモノマー含んでいたり、特定の官能基を有していたりする、特殊なタイプに対する要望が、増大している。
【0006】
従来技術からも、特殊な性能を有するHNBRターポリマーが、数多く知られている。
【0007】
(特許文献1)には、0.1重量%~20重量%のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、15重量%~74.9重量%の共役ジエン単位、及び25重量%~65重量%のα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単位を含む、水素化ニトリル-ジエンカルボン酸エステルのコポリマーが開示されているが、ここで、そのα,β-エチレン性不飽和カルボン酸エステル単位の少なくとも15重量%が、PEGアクリレートから誘導されたものである。
【0008】
(特許文献2)には、25重量%~38重量%の少なくともα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、40重量%~60重量%の少なくとも1種の共役ジエン単位、及び10重量%~25重量%の少なくとも1種のPEGアクリレート単位を含む、水素化ニトリル-ブタジエン-PEGアクリレートコポリマーが開示されている。
【0009】
(特許文献3)には、10重量%~60重量%のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、31重量%~89重量%の共役ジエン単位、及び1重量%~9重量%のα,β-エチレン性不飽和モノカルボン酸モノエステル単位を含む、ニトリル含有コポリマーが開示されている。
【0010】
さらに、水素化によりHNBRコポリマー及びHNBRターポリマーを製造するための数多くのプロセスが、従来技術から公知である。
【0011】
乳化重合で製造されたNBRラテックス(=「一次ラテックス(primary latex)」)を直接水素化することは、従来技術からも公知である(=「ラテックス水素化法」)。このプロセスは、たとえば以下の特許に記載されている:(特許文献4)、(特許文献5)、及び(特許文献6)。典型的な反応条件は、反応温度80℃~160℃、水素圧3.000,000~8.000,000パスカル、第8、9、又は10族からの遷移金属触媒、そして、場合によっては水性ラテックスの中に触媒を導入するための有機溶媒である。
【0012】
(特許文献7)には、ヒドラジン、酸化性化合物、及び触媒の存在下に、ラテックス中の不飽和ポリマーの少なくとも1種の炭素-炭素二重結合を水素化するステップが含まれる、水素化ポリマーを製造するためのプロセスが開示されている。
【0013】
(特許文献8)には、触媒系の存在下に共役ジエンポリマーを水素化するためのプロセスが開示されているが、この場合、その共役ジエンポリマーは、ラテックス状態で水素化されている。
【0014】
(特許文献9)には、水素化ジエンベースポリマーを製造するためのプロセスが開示されているが、そこでは、ジエンベースポリマーを、第一のステップにおいてはメタセシス分解にかけ、そして第二のステップにおいては水素化にかけるが、ここでそのジエンベースポリマーは、水性分散体の形態にあり、両方のステップが、そのような水性分散体の形で実施され、そして両方のステップが、少なくとも1種の触媒の存在下に実施される。
【0015】
(特許文献10)には、水素化ジエンベースポリマーを製造するためのプロセスが開示されているが、そこでは、水性分散体中に存在しているジエンベースポリマーを、触媒の存在下に水素化にかけるが、その触媒は、ジエンベースポリマーの水性分散体に対して、固体の形状で添加される。
【0016】
有機溶媒中での、非水素化ニトリルゴムの水素化反応は、なかんずく、以下の特許からも公知である:(特許文献11)、(特許文献12)、(特許文献13)、(特許文献14)、(特許文献15)、(特許文献16)、(特許文献17)、(特許文献18)(「溶液水素化法反応」)。
【0017】
残念ながら、その水素化の方式が、以下のものに対してどのような効果を与えるかについては、容易に予見することはできない:製造される水素化ニトリルゴムのラテックス、それから製造されるコアグレート化させた(=沈殿させた)水素化ニトリルゴムコポリマー、並びにそれらから製造される組成物及び加硫物。
【0018】
ニトリルゴムを水素化させると、典型的には、そのムーニー粘度が、約2.5倍となる(特許文献19)。したがって、HNBRのムーニー粘度が、最低でも、水素化されるニトリルゴム、すなわちいわゆるNBRのフィードストックのそれの、2倍を超える。70MUのムーニー粘度は、多くの用途では適切ではあるものの、この高いムーニー粘度の値は、射出成形の場合には、大問題となる。ゴムの流動性は、その化合物の粘度に依存する。粘度が高すぎる化合物では、金型への充填が不十分となる可能性がある。
【0019】
たとえば、可塑剤を使用したり、剪断力を作用させたりする粘度を低下させるための選択肢は、最終的な製品の性能に望ましくない変化をもたらす。
【0020】
従来技術から公知のムーニー粘度を低下させる方法は、非水素化ニトリルゴムを用いたメタセシス反応を実施することである。
【0021】
(特許文献20)及び(特許文献21)には、ニトリルゴムを製造するためのプロセスが開示されているが、そこでは、ニトリルゴムを、共オレフィン及びメタセシス触媒の存在下でのメタセシス反応にかけている。
【0022】
その結果、加工性及び加硫プロセスでは改良が得られる。しかしながら、一つの欠点は、追加の反応ステップを実施する必要があることで、それにより、高価な触媒をさらに消費し、ポリマー鎖に変化がもたらされる。
【0023】
したがって、公知の製造プロセス及び、そのようにして製造された水素化ニトリルゴムは、さらなる加工及びある種の用途においては、いまだに満足のいくものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0024】
【特許文献1】欧州特許出願公開第A3333196号明細書
【特許文献2】国際公開第A2017/129535号パンフレット
【特許文献3】国際公開第A2015/063162号パンフレット
【特許文献4】米国特許第A5,208,296号明細書
【特許文献5】米国特許第A5,210,151号明細書
【特許文献6】米国特許第A5,783,625号明細書
【特許文献7】国際公開第A2004/009655号パンフレット
【特許文献8】欧州特許出願公開第A1454924号明細書
【特許文献9】国際公開第A2013/190371号パンフレット
【特許文献10】国際公開第A2013/190373号パンフレット
【特許文献11】米国特許第A3,700,637号明細書
【特許文献12】独国特許出願公開第A2 539 132号明細書
【特許文献13】独国特許出願公開第A3 046 008号明細書
【特許文献14】独国特許出願公開第A3 046 251号明細書
【特許文献15】独国特許出願公開第A3 227 650号明細書
【特許文献16】独国特許出願公開第A3 329 974号明細書
【特許文献17】欧州特許出願公開第A0 111 412号明細書
【特許文献18】仏国特許第B2 540 503号明細書
【特許文献19】欧州特許出願公開第1 921 436A号明細書
【特許文献20】国際公開第A2003/002613号パンフレット
【特許文献21】欧州特許出願公開第A1826220号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0025】
したがって、本発明が取り組んだ課題は、改良された加工性能を有しながらも、それらの類い希な加硫物及び化合物の性能を維持している、PEGアクリレート-HNBRコポリマーを製造するためのプロセスを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0026】
本発明によって提供されるその問題の解決法は、PEGアクリレート-NBRラテックスを水素化させ、次いでコアグレーションさせることを特徴とするPEGアクリレート-HNBRコポリマーを製造するための方法であるが、それが特徴としているのは、そのPEGアクリレート-NBRラテックスが、以下のものを含んでいることである:
モノマー単位の全量を基準にして、
(a)0重量%~60重量%、好ましくは15重量%~40重量%、特に好ましくは15重量%~35重量%の、少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、
(b)20重量%~80重量%、好ましくは30重量%~65重量%、特に好ましくは35重量%~65重量%の、少なくとも1種の共役ジエン単位、及び
(c)10重量%~60重量%、好ましくは10重量%~50重量%、特に好ましくは20重量%~50重量%の、一般式(I)のPEGアクリレートから誘導されるPEGアクリレート単位。
【化1】
(式中、
Rは、水素であるか、又は分岐状若しくは非分岐状のC1~C20-アルキル、好ましくはC1~C10-アルキル、特に好ましくはC1~C4-アルキル、極めて特に好ましくはメチル、エチル、又はブチルであり、
nは、1~8、好ましくは2~8、特に好ましくは2~5、極めて特に好ましくは2又は3であり、そして
R1は、水素又はメチル、好ましくはメチルである。)
【発明を実施するための形態】
【0027】
以下の実施態様の文脈において、本発明をさらに詳しく説明する。ここで注目すべきは、本発明の範囲には、ここまで及び以後において一般的又は好ましい範囲として記載した、成分、値の範囲、及びプロセスパラメーターの各種望ましい可能な組合せが含まれるということである。
【0028】
「コポリマー」という用語には、2種以上のモノマー単位を有するポリマーが含まれる。
【0029】
本発明の一つの実施態様においては、そのPEGアクリレート-NBRラテックス、それから製造されるPEGアクリレート-HNBRラテックス、及びPEGアクリレート-HNBRコポリマーが、たとえば、3種のモノマータイプ、(a)、(b)及び(d)からもっぱら誘導され、したがって、ターポリマーである。
【0030】
「コポリマー」という用語に同様に含まれるのはさらに、たとえば3種のモノマータイプ、(a)、(b)及び(c)、並びにさらなる共重合性モノマー単位(d)から誘導される四元ポリマーである。
【0031】
本発明の文脈においては、「PEGアクリレート-HNBRコポリマー」という用語は、少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、少なくとも1種の共役ジエン単位、及び少なくとも1種の、一般式(I)のPEGアクリレート単位を含むコポリマーを意味していると理解されたい。したがって、その用語にはさらに、2種以上のα,β-エチレン性不飽和ニトリルモノマー単位、2種以上の共役ジエンモノマー単位、及び2種以上の、一般式(I)のPEGアクリレート単位を有するコポリマーが含まれる。
【0032】
「水素化」という用語は、水素化PEGアクリレート-HNBRコポリマーの中に組みこまれた共役ジエンモノマーのC=C二重結合の水素化度(degree of hydrogenation)が、50%~100%、好ましくは90%~100%、特に好ましくは95%~100%、極めて特に好ましくは99%~100%であるということを述べている。
【0033】
PEGアクリレート-NBRラテックス
本発明の文脈においては、本発明において採用される「PEGアクリレート-NBRラテックス」は、少なくとも1種のα,β-エチレン性不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエン、及び少なくとも1種の、一般式(I)のPEGアクリレートから誘導される繰り返し単位を含む、非水素化PEGアクリレート-NBRコポリマーの水性分散体である。
【0034】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位(a)を形成するα,β-エチレン性不飽和ニトリルとしては、各種公知のα,β-エチレン性不飽和ニトリルを採用することができる。好ましいのは、以下のものである:(C3~C5)-α,β-エチレン性不飽和ニトリル、たとえばアクリロニトリル、α-ハロアクリロニトリルたとえばα-クロルアクリロニトリル及びα-ブロムアクリロニトリル、α-アルキルアクリロニトリル、たとえばメタクリロニトリル、エタクリロニトリル、又は2種以上のα,β-エチレン性不飽和ニトリルの混合物。アクリロニトリル、メタクリロニトリル、エタクリロニトリル、又はそれらの混合物が、特に好ましい。アクリロニトリルが極めて特に好ましい。
【0035】
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位の量は、そのPEGアクリレート-NBRラテックス中のモノマー単位の全量を基準にして、典型的には10重量%~60重量%、好ましくは15重量%~40重量%、特に好ましくは15~35重量%の範囲である。
【0036】
共役ジエン
共役ジエン単位(b)を形成する共役ジエンとしては、各種の共役ジエン、特には、共役C4~C12-ジエンを採用することができる。1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチルブタジエン、1,3-ペンタジエン(ピペリレン)、又はそれらの混合物が、特に好ましい。1,3-ブタジエン及びイソプレン又はそれらの混合物が、特に好ましい。1,3-ブタジエンが、極めて特に好ましい。
【0037】
共役ジエン単位の量は、PEGアクリレート-NBRラテックスの中のモノマー単位の全量を基準にして、典型的には20重量%~80重量%、好ましくは30重量%~65重量%、特に好ましくは35~60重量%の範囲である。
【0038】
PEGアクリレート
PEGアクリレート単位(c)を形成するPEGアクリレートとして採用可能なのは、一般式(I)のPEGアクリレートである。
【化2】
(式中、
Rは、水素であるか、又は分岐状若しくは非分岐状のC1~C20-アルキル、好ましくはC1~C10-アルキル、特に好ましくはC1~C4-アルキル、極めて特に好ましくはメチル、エチル、又はブチルであり、
nは、1~8、好ましくは2~8、特に好ましくは2~5、極めて特に好ましくは2又は3であり、そして
R1は、水素又はメチル、好ましくはメチルである。)
【0039】
PEGアクリレート単位の量は、PEGアクリレート-NBRラテックスの中のモノマー単位の全量を基準にして、典型的には10重量%~60重量%、好ましくは10重量%~50重量%、特に好ましくは20~50重量%の範囲である。
【0040】
本発明の文脈においては、「(メタ)アクリレート」という用語は、「アクリレート」及び「メタクリレート」を意味していると理解されたい。一般式(I)の中の基R1がCH3-である場合には、メタクリレートに関連している。本発明の文脈においては、「ポリエチレングリコール」又は略して「PEG」という用語は、1個のエチレングリコール繰り返し単位を有するモノエチレングリコールセクション(PEG-1;n=1)と、2~8個のエチレングリコール繰り返し単位を有するポリエチレングリコールセクション(PEG-2~PEG-8;n=2~8)の両方を表している。「PEGアクリレート」という用語もまた、略してPEG-X-(M)Aとされるが、ここで「X」は、エチレングリコールの繰り返し単位の数を表し、「MA」はメタクリレートを表し、そして「A」は、アクリレートを表している。本発明の文脈においては、一般式(I)のPEGアクリレートから誘導されたアクリレート単位は、「PEGアクリレート単位」と呼ばれる。
【0041】
好ましいPEGアクリレート単位は、次の式1~8のPEGアクリレートから誘導されるが、ここで、n=2、3、4、5、6、7、8、9、10、11又は12、好ましくは2、3、4、5、6、7又は8、特に好ましくは2、3、4又は5、極めて特に好ましくは2又は3である。
【0042】
【表1】
【0043】
エトキシポリエチレングリコールアクリレート(式no.1)に対して一般的に使用されているその他の呼び方は、たとえばポリ(エチレングリコール)エチルエーテルアクリレート、エトキシ-PEGアクリレート、エトキシポリ(エチレングリコール)モノアクリレート、又はポリ(エチレングリコール)モノエチルエーテルモノアクリレートなどである。
【0044】
また別の実施態様においては、そのPEGアクリレート-NBRラテックスには、PEGアクリレート単位として、2~12個のエチレングリコール繰り返し単位を有する、エトキシ、ブトキシ又はエチルヘキシルオキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、特に好ましくは、2~5個のエチレングリコール繰り返し単位を有する、エトキシ又はブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート、極めて特に好ましくは、2個又は3個のエチレングリコール繰り返し単位を有する、エトキシ又はブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレートが含まれる。最も好ましいのは、ブトキシポリエチレングリコール(メタ)アクリレート(BDGMA)である。
【0045】
これらのPEGアクリレートは、たとえば、ArkemaからSartomer(登録商標)の商品名で、EvonikからVisiomer(登録商標)の商品名で、或いはSigma Aldrichから市販されている。
【0046】
好ましい実施態様においては、そのPEGアクリレート-NBRラテックスには、15重量%~35重量%のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、特に好ましくは20重量%~25重量%のα,β-エチレン性不飽和ニトリル単位;35重量%~60重量%の共役ジエン単位、特に好ましくは45重量%~60重量%の共役ジエン単位;並びに20重量%~50重量%のPEGアクリレート単位、特に好ましくは20重量%~30重量%のPEGアクリレート単位(一般式(I)のPEGアクリレートから誘導される)が含まれる。
【0047】
さらなる共重合性モノマー
α,β-エチレン性不飽和ニトリル単位、共役ジエン単位、及びPEGアクリレート単位に加えて、PEGアクリレート-NBRラテックスには、1種又は複数のさらなる共重合性モノマーをさらに含んでいてもよい。
【0048】
カルボキシル含有モノマー
また別の実施態様においては、そのPEGアクリレート-NBRラテックスにカルボキシル含有モノマー、すなわち、共重合性カルボン酸をさらに含んでいてもよい。カルボキシル含有モノマー単位を形成するカルボキシル含有モノマーとは、そのモノマー分子の中に少なくとも1個のカルボキシル基を有しているか、或いは、インサイチューで反応して、少なくとも1個のカルボキシル基を放出することが可能な共重合性モノマーを意味していると理解されたい。
【0049】
カルボキシル基含有共重合性モノマーと考えられるものとしては、たとえば、α,β-不飽和モノカルボン酸、α,β-不飽和ジカルボン酸、それらのモノエステル、又はそれらに相当する無水物が挙げられる。好ましいカルボキシル含有共重合性モノマーは、α,β-不飽和モノカルボン酸及びα,β-不飽和ジカルボン酸、並びにそれらのモノエステルである。
【0050】
好適に採用されるα,β-不飽和モノカルボン酸としては、アクリル酸及びメタクリル酸が挙げられる。やはり採用可能なのが、そのヒドロキシアルキル基の炭素原子の数が1~12個であるアクリル酸ヒドロキシアルキル及びメタクリル酸ヒドロキシアルキル、好ましくはアクリル酸2-ヒドロキシエチル、メタクリル酸2-ヒドロキシエチル、及びアクリル酸3-ヒドロキシプロピルである。同様に採用可能であるのが、エポキシ含有エステル、たとえばメタクリル酸グリシジルである。
【0051】
カルボキシル含有モノマーとして同様に採用可能であるのが、以下のものである:α,β-不飽和ジカルボン酸、好ましくはマレイン酸、フマル酸、イタコン酸、シトラコン酸、及びメサコン酸、又はα,β-不飽和ジカルボン酸無水物、好ましくは無水マレイン酸、無水フマル酸、無水イタコン酸、無水シトラコン酸、及び無水メサコン酸。
【0052】
たとえば以下の形態にあるα,β-不飽和ジカルボン酸のモノエステルを採用することも、さらに可能である:アルキル、好ましくはC1~C10-アルキル、特にはエチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、若しくはn-ヘキシル、シクロアルキル、好ましくはC5~C12-シクロアルキル、特に好ましくはC6~C12-シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、好ましくはC6~C12-アルキルシクロアルキル、特に好ましくはC7~C10-アルキルシクロアルキル、並びにアリール、好ましくはC6~C14-アリールのモノエステル。
【0053】
α,β-不飽和ジカルボン酸のモノエステルの例には、以下のものが含まれる:
・ マレイン酸モノアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノプロピル、及びマレイン酸モノ-n-ブチル;
・ マレイン酸モノシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノシクロペンチル、マレイン酸モノシクロヘキシル、及びマレイン酸モノシクロヘプチル;
・ マレイン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはマレイン酸モノメチルシクロペンチル、及びマレイン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ マレイン酸モノアリール、好ましくはマレイン酸モノフェニル;
・ マレイン酸モノベンジル類、好ましくはマレイン酸モノベンジル;
・ フマル酸モノアルキル、好ましくはフマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、フマル酸モノプロピル、及びフマル酸モノ-n-ブチル;
・ フマル酸モノシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノシクロペンチル、フマル酸モノシクロヘキシル、及びフマル酸モノシクロヘプチル;
・ フマル酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはフマル酸モノメチルシクロペンチル、及びフマル酸モノエチルシクロヘキシル;
・ フマル酸モノアリール、好ましくはフマル酸モノフェニル;
・ フマル酸モノベンジル類、好ましくはフマル酸モノベンジル;
・ シトラコン酸モノアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチル、シトラコン酸モノエチル、シトラコン酸モノプロピル、及びシトラコン酸モノ-n-ブチル;
・ シトラコン酸モノシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノシクロペンチル、シトラコン酸モノシクロヘキシル、及びシトラコン酸モノシクロヘプチル;
・ シトラコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸モノメチルシクロペンチル、及びシトラコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ シトラコン酸モノアリール、好ましくはシトラコン酸モノフェニル;
・ シトラコン酸モノベンジル類、好ましくはシトラコン酸モノベンジル;
・ イタコン酸モノアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノプロピル、及びイタコン酸モノ-n-ブチル;
・ イタコン酸モノシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノシクロペンチル、イタコン酸モノシクロヘキシル、及びイタコン酸モノシクロヘプチル;
・ イタコン酸モノアルキルシクロアルキル、好ましくはイタコン酸モノメチルシクロペンチル、及びイタコン酸モノエチルシクロヘキシル;
・ イタコン酸モノアリール、好ましくはイタコン酸モノフェニル;
・ イタコン酸モノベンジル、好ましくはイタコン酸モノベンジル;
・ メサコン酸モノアルキル、好ましくはメサコン酸モノエチル。
【0054】
考えられる共重合性モノマーとしてさらに、たとえばα,β-不飽和モノカルボン酸のエステルが挙げられる。α,β-不飽和モノカルボン酸の採用可能なエステルは、それらのアルキルエステル及びアルコキシアルキルエステルである。α,β-不飽和モノカルボン酸のアルキルエステル、特にC1~C18アルキルエステルが好ましいが、特に好ましいのはアルキルエステル、特に以下のものである:アクリル酸又はメタクリル酸のC1~C18アルキルエステル、特にアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸n-ブチル、アクリル酸tert-ブチル、アクリル酸2-エチルヘキシル、アクリル酸n-ドデシル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸ブチル、及びメタクリル酸2-エチルヘキシル。α,β-不飽和モノカルボン酸のアルコキシアルキルエステルもまた好ましく、特に好ましいのはアクリル酸又はメタクリル酸のアルコキシアルキルエステル、特にアクリル酸又はメタクリル酸のC2~C12-アルコキシアルキルエステル、極めて特に好ましくはアクリル酸メトキシメチル,(メタ)アクリル酸メトキシエチル,(メタ)アクリル酸エトキシエチル、及び(メタ)アクリル酸メトキシエチルである。採用可能なものは、さらに、アルキルエステル、たとえば上に挙げたものと、アルコキシアルキルエステル、たとえば上に挙げた形態のものとの混合物である。採用可能なものは、さらに、そのシアノアルキル基の中に2~12個の炭素原子を有する、アクリル酸シアノアルキル及びメタクリル酸シアノアルキル、好ましくはアクリル酸α-シアノエチル、アクリル酸β-シアノエチル、及びメタクリル酸シアノブチルである。フッ素置換された、ベンジル含有アクリレート又はメタクリレート、好ましくはアクリル酸フルオロベンジル及びメタクリル酸フルオロベンジルを採用することも可能である。フルオロアルキル含有アクリレート及びメタクリレート、好ましくはアクリル酸トリフルオロエチル及びメタクリル酸テトラフルオロプロピルも採用可能である。アミノ含有α,β-不飽和カルボン酸エステル、たとえばアクリル酸ジメチルアミノメチル及びアクリル酸ジエチルアミノエチルも採用可能である。
【0055】
たとえば以下の形態にあるα,β-不飽和ジカルボン酸のジエステルを採用することも、さらに可能である:アルキル、好ましくはC1~C10-アルキル、特にはエチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、tert-ブチル、n-ペンチル、若しくはn-ヘキシル、シクロアルキル、好ましくはC5~C12-シクロアルキル、特に好ましくはC6~C12-シクロアルキル、アルキルシクロアルキル、好ましくはC6~C12-アルキルシクロアルキル、特に好ましくはC7~C10-アルキルシクロアルキル、並びにアリール、好ましくはC6~C14-アリールのジエステル(ここで、混合エステルもまた、それぞれの場合において、考えられる)。
【0056】
α,β-不飽和ジカルボン酸のジエステルの例には、以下のものが含まれる:
・ マレイン酸ジアルキル、好ましくはマレイン酸ジメチル、マレイン酸ジエチル、マレイン酸ジプロピル、及びマレイン酸ジ-n-ブチル;
・ マレイン酸ジシクロアルキル、好ましくはマレイン酸ジシクロペンチル、マレイン酸ジシクロヘキシル、及びマレイン酸ジシクロヘプチル;
・ マレイン酸ジアルキルシクロアルキル、好ましくはマレイン酸ジメチルシクロペンチル、及びマレイン酸ジエチルシクロヘキシル;
・ マレイン酸ジアリール、好ましくはマレイン酸ジフェニル;
・ マレイン酸ジベンジル類、好ましくはマレイン酸ジベンジル;
・ フマル酸ジアルキル、好ましくはフマル酸ジメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジプロピル、及びフマル酸ジ-n-ブチル;
・ フマル酸ジシクロアルキル、好ましくはフマル酸ジシクロペンチル、フマル酸ジシクロヘキシル、及びフマル酸ジシクロヘプチル;
・ フマル酸ジアルキルシクロアルキル、好ましくはフマル酸ジメチルシクロペンチル、及びフマル酸ジエチルシクロヘキシル;
・ フマル酸ジアリール、好ましくはフマル酸ジフェニル;
・ フマル酸ジベンジル、好ましくはフマル酸ジベンジル;
・ シトラコン酸ジアルキル、好ましくはシトラコン酸ジメチル、シトラコン酸ジエチル、シトラコン酸ジプロピル、及びシトラコン酸ジ-n-ブチル;
・ シトラコン酸ジシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸ジシクロペンチル、シトラコン酸ジシクロヘキシル、及びシトラコン酸ジシクロヘプチル;
・ シトラコン酸ジアルキルシクロアルキル、好ましくはシトラコン酸ジメチルシクロペンチル、及びシトラコン酸ジエチルシクロヘキシル;
・ シトラコン酸ジアリール、好ましくはシトラコン酸ジフェニル;
・ シトラコン酸ジベンジル、好ましくはシトラコン酸ジベンジル;
・ イタコン酸ジアルキル、好ましくはイタコン酸ジメチル、イタコン酸ジエチル、イタコン酸ジプロピル、及びイタコン酸ジ-n-ブチル;
・ イタコン酸ジシクロアルキル、好ましくはイタコン酸ジシクロペンチル、イタコン酸ジシクロヘキシル、及びイタコン酸ジシクロヘプチル;
・ イタコン酸ジアルキルシクロアルキル、好ましくはイタコン酸ジメチルシクロペンチル、及びイタコン酸ジエチルシクロヘキシル;
・ イタコン酸ジアリール、好ましくはイタコン酸ジフェニル;
・ イタコン酸ジベンジル類、好ましくはイタコン酸ジベンジル、並びに
・ メサコン酸ジアルキル、好ましくはジメサコン酸エチル。
【0057】
PEGアクリレート-NBRラテックスの中のさらなるモノマー単位の量は、PEGアクリレート-NBRラテックスの中のモノマー単位の全量を基準にして、0重量%~30重量%、好ましくは1重量%~20重量%、特に好ましくは2~7重量%の範囲である。
【0058】
PEGアクリレート-HNBRラテックス
本発明においては、本発明のプロセスによって得られた「PEGアクリレート-HNBRラテックス」は、少なくとも1種のα,β-不飽和ニトリル、少なくとも1種の共役ジエン、及び一般式(I)の少なくとも1種の共重合性PEGアクリレートから誘導される繰り返し単位を含むPEGアクリレート-HNBRコポリマーの水性分散体であるが、ここで、そのPEGアクリレート-HNBRコポリマーの中に組みこまれた共役ジエンモノマーのC=C二重結合の水素化度は、50%~100%、好ましくは90%~100%、特に好ましくは95%~100%、極めて特に好ましくは99%~100%である。このことは、そのPEGアクリレート-HNBRラテックスの中で、そのPEGアクリレート-NBRコポリマーの中に元々存在していた二重結合の50%~100%、好ましくは90%~100%、特に好ましくは95%~100%、極めて特に好ましくは99%~100%が水素化されているということを意味している。
【0059】
PEGアクリレート-HNBRラテックスを製造するためのプロセス
重合
これには、典型的には、最初に、先に述べたような本発明における相当するモノマーを乳化重合させることにより、非水素化PEGアクリレート-NBRラテックスを製造することが含まれる。
【0060】
相当するNBRラテックスを製造するためのプロセスは、たとえばW.Hofmann,Rubber Chem.Technol.,36(1963),1、及びUllmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Verlagsgesellschaft,Weinheim,1993,p255~261からも、当業者に公知である。
【0061】
PEGアクリレート-NBRラテックスの水素化
それに続けて、その水性PEGアクリレート-NBRラテックスを、均一系又はそうでなければ不均一系の触媒を使用して水素化することにより、PEGアクリレート-HNBRラテックスを得る。
【0062】
本発明の文脈においては、「水素化」とは、そのPEGアクリレート-NBRラテックスの中に存在している二重結合の、少なくとも50%、好ましくは70~100%、特に好ましくは80%~100%を転化させることを意味していると理解されたい。さらに、HNBR中の残存二重結合含量が0%~8%であれば、特に好ましい。
【0063】
ラテックスの水素化の実施方法は、当業者には公知である。それは、典型的には、水素化されるPEGアクリレート-NBRラテックスを、温度100℃~150℃、圧力50~150barで、1~10時間、水素と接触させることにより、実施される。
【0064】
典型的には、重合から乳化剤が生成するが、乳化剤には、なんら特段の制限はない。典型的に採用されるのは、脂肪酸、樹脂酸、α-オレフィン-スルホネートすなわちSDS(ドデシル硫酸ナトリウム)、好ましくはSDSである。
【0065】
本発明によるプロセスにおいては、そのPEGアクリレート-NBRラテックスの固形分濃度は、PEGアクリレート-NBRラテックスの全重量を基準にして、10重量%~50重量%、好ましくは15重量%~40重量%、特に好ましくは15重量%~25重量%である。
【0066】
水素化のための本発明によるプロセスは、典型的には、少なくとも1種の水素化触媒の存在下に実施される。水素化触媒のタイプについては、なんら特段の制限はない。好ましい実施態様においては、水に対して安定な貴金属含有水素化触媒が使用される。さらに好ましい実施態様においては、一般式(A)又は(B)の触媒が採用される。
【化3】
(式中、
Mは、オスミウム又はルテニウムであり、
X1及びX2は、同一であるか又は異なったアニオン性配位子、好ましくはハロゲンであり、
Lは、同一であるか又は異なった配位子、好ましくは非負荷の(unladen)電子供与体であるが、ここで、一般式(A)における二つの配位子Lは、相互に結合されて、二座配位子を形成していてもよく、
R、R2、R3、R4及びR5は、同一であるか又は異なっていて、それぞれの場合において、水素、アルキル、好ましくはC1~C30-アルキル、シクロアルキル、好ましくはC3~C20-シクロアルキル、アルケニル、好ましくはC2~C20-アルケニル、アルキニル、好ましくはC2~C20-アルキニル、アリール、好ましくはC6~C24-アリール、カルボキシレート、好ましくはC1~C20-カルボキシレート、アルコキシ、好ましくはC1~C20-アルコキシ、アルケニルオキシ、好ましくはC2~C20-アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、好ましくはC2~C20-アルキニルオキシ、アリールオキシ、好ましくはC6~C24-アリールオキシ、アルコキシカルボニル、好ましくはC2~C20-アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、好ましくはC1~C30-アルキルアミノ、アルキルチオ、好ましくはC1~C30-アルキルチオ、アリールチオ、好ましくはC6~C24-アリールチオ、アルキルスルホニル、好ましくはC1~C20-アルキルスルホニル、又はアルキルスルフィニル、好ましくはC1~C20-アルキルスルフィニルであるが、ここで、これらの基は、それぞれの場合において、場合によっては1種又は複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリール又はヘテロアリール基で置換されているか、或いは別な形として、二つの基のRが、それらが結合されている共通の炭素原子を共有して、橋架けされて、脂肪族的又は芳香族的性質を有していてもよい環状基を形成するが、それらは置換されていてもよく、そして1種又は複数のヘテロ原子を含んでいてもよく、
Yは、酸素(O)、硫黄(S)、N-R1基、又はP-R1基であるが、ここでR1は、それぞれの場合において、場合によっては、1種又は複数のアルキル、ハロゲン、アルコキシ、アリール、又はヘテロアリール基で置換されている、アルキル、シクロアルキル、アルケニル、アルキニル、アリール、アルコキシ、アルケニルオキシ、アルキニルオキシ、アリールオキシ、アルコキシカルボニル、アルキルアミノ、アルキルチオ、アリールチオ、アルキルスルホニル、又はアルキルスルフィニル基であり、そして
R6は、水素又はアルキル、アルケニル、若しくはアリール基である)、
又は
一般式(C)の触媒、
MQ・aHO (C)
(式中、
Mは、第VIII族の遷移貴金属、好ましくはルテニウム、ロジウム、オスミウム、又はイリジウムであり、
Qは、同一であるか又は異なっていて、水素化物又は他のアニオンであり、
xは、1、2又は3であり、そして
aは、0~3の範囲である)、
又は
一般式(D)の触媒、
RhQ’L (D)
(式中、
Q’は、水素化物又は他のアニオンであり、
yは、1、2、3又は4であり、そして
Lは、同一であるか又は異なっていて、水溶性の配位子である)、
又は
一般式(E)の触媒、
RhQL (E)
(式中、Qは、水素又はアニオン、好ましくはハロゲン化物、特に好ましくは塩化物又は臭化物であり、
ここで、Lは、一般式RmBの配位子であるが、ここでRは、C1~C3-アルキル、C4~C8-シクロアルキル、C6~C15-アリール、又はC7~C15-アラルキルであり、Bは、リン、ヒ素、硫黄、又は硫黄酸化物であり、そしてmは、2又は3であるが、好ましくはBが硫黄又は硫黄酸化物の場合には2、そしてBがリン又はヒ素の場合には3であり、そしてxは、2、3又は4であるが、好ましくは、Qがハロゲンの場合にはXが3であり、Qが水素である場合には、4である)。
【0067】
本発明によるプロセスの特に好ましい実施態様においては、PEGアクリレート-NBRラテックスの水素化は、一般式(B)の触媒の存在下に実施されるが、ここでMは、ルテニウムであり、そしてLは、N-ヘテロ環状カルベン(NHC)配位子である。極めて特に好ましい実施態様においては、PEGアクリレート-NBRラテックスの水素化を、1,3-ビス(2,4,6-トリメチルフェニル)-2-イミダゾリジニリデン)ジクロロ(o-イソプロポキシフェニルメチレン)ルテニウムの存在下に実施する。
【0068】
採用される水素化触媒の量は、典型的には0.01~0.2phr、好ましくは0.2~0.1phrである。
【0069】
PEGアクリレート-HNBRコポリマーを製造するためのプロセス
(PEGアクリレート-HNBRコポリマーを得るための、PEGアクリレート-HNBRラテックスの)ラテックスのコアグレーション
本発明によるプロセスの間に製造されたPEGアクリレート-HNBRラテックスは、次いで、コアグレート化(=沈殿化)させて、PEGアクリレート-HNBRコポリマーを得る。
【0070】
本発明によるPEGアクリレート-HNBRラテックスのラテックスコアグレーションの前又は途中で、1種又は複数の老化防止剤を混合してもよい。そのためには、フェノール系、アミン系、及びその他の老化防止剤が好適である。
【0071】
好適なフェノール系老化防止剤としては、以下のものが挙げられる:アルキル化フェノール、スチレン化フェノール、立体障害フェノールたとえば、2,6-ジ-tert-ブチルフェノール、2,6-ジ-tert-ブチル-p-クレゾール(BHT)、2,6-ジ-tert-ブチル-4-エチルフェノール、エステル基含有立体障害フェノール、チオエーテル含有の立体障害フェノール、2,2’-メチレン-ビス-(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(BPH)、及び立体障害チオビスフェノール。
【0072】
ゴムの変色がさほど重要ではない場合には、アミン系の老化防止剤たとえば、ジアリール-p-フェニレンジアミン(DTPD)の混合物、オクチル化ジフェニルアミン(ODPA)、フェニル-α-ナフチルアミン(PAN)、フェニル-β-ナフチルアミン(PBN)、好ましくはフェニレンジアミンをベースとしたものも採用される。フェニレンジアミンの例としては、N-イソプロピル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン、N-1,3-ジメチルブチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(6PPD)、N-1,4-ジメチルペンチル-N’-フェニル-p-フェニレンジアミン(7PPD)、N,N’-ビス-1,4-(1,4-ジメチルペンチル)-p-フェニレンジアミン(77PD)などが挙げられる。
【0073】
その他の老化防止剤としては、ホスファイトたとえばトリス(ノニルフェニル)ホスファイト、重合させた2,2,4-トリメチル-1,2-ジヒドロキノリン(TMQ)、2-メルカプトベンズイミダゾール(MBI)、メチル-2-メルカプトベンズイミダゾール(MMBI)、亜鉛メチルメルカプトベンズイミダゾール(ZMMBI)などが挙げられる。フェノール系老化防止剤と組み合わせた形で、ホスファイトが使用されることも多い。ペルオキシド加硫にかけられる非水素化ニトリルゴムに適した老化防止剤としては、TMQ、MBI、及びMMBIが公知である。
【0074】
コアグレーションのためには、ラテックスを、塩基、好ましくはアンモニア若しくは水酸化ナトリウム若しくは水酸化カリウム、又は酸、好ましくは硫酸若しくは酢酸を添加することによって、当業者には公知のpHに調節する。
【0075】
そのプロセスの一つの実施態様においては、アルミニウム、カルシウム、マグネシウム、ナトリウム、カリウム、及びリチウムの塩からなる群より選択される少なくとも1種の塩を使用して、コアグレーションが実施される。
【0076】
それらの塩のアニオンとしては、典型的には、一価又は二価のアニオンが使用される。好ましいのは、ハロゲン化物、特に好ましくは塩化物、硝酸塩、硫酸塩、炭酸水素塩、炭酸塩、ギ酸塩、及び酢酸塩である。
【0077】
好適な塩は、たとえば、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化カルシウム、塩化マグネシウム、硝酸ナトリウム、硝酸カリウム、硫酸ナトリウム、硫酸カリウム、炭酸水素ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、硫酸アルミニウム、硫酸アルミニウムカリウム(カリミョウバン)、硫酸アルミニウムナトリウム(ナトリウムミョウバン)、酢酸ナトリウム、酢酸カルシウム、及びギ酸カルシウムである。ラテックスのコアグレーションのために水溶性のカルシウム塩を使用するのなら、塩化カルシウムが好ましい。
【0078】
塩は、PEGアクリレート-HNBRラテックス分散体の固形分含量を基準にして、0.05重量%~10重量%、好ましくは0.5重量%~8重量%、特に好ましくは1重量%~5重量%の量で添加する。
【0079】
先に定義された群からの少なくとも1種の塩に加えて、コアグレーションにおいて沈殿助剤を採用してもよい。好適な沈殿助剤としては、たとえば、水溶性ポリマーが挙げられる。それらは、ノニオン性、アニオン性、又はカチオン性である。
【0080】
ノニオン性の高分子量沈殿助剤の例は、変性セルロース、たとえばヒドロキシアルキルセルロース又はメチルセルロース、並びに、酸性水素を担持する化合物の上へのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドのアダクトである。酸性水素を担持する化合物の例としては、以下のものが挙げられる:脂肪酸、糖たとえばソルビトール、脂肪酸のモノグリセリド及びジグリセリド、フェノール、アルキル化フェノール、(アルキル)フェノール/ホルムアルデヒド縮合物など。それらの化合物の上へのエチレンオキシド及びプロピレンオキシドの付加反応生成物は、ランダム構造であっても、ブロック構造であってもよい。それらの反応生成物の内でも、温度が上昇すると溶解度が低下するようなものが好ましい。特性曇り温度は、0℃~100℃の範囲、特には20℃~70℃の範囲である。
【0081】
アニオン性の高分子量沈殿助剤の例は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸などのホモポリマー及びコポリマーである。ポリアクリル酸のNa塩が好ましい。
【0082】
カチオン性の高分子量沈殿助剤は、典型的には、ポリアミンをベースとするか、又は(メタ)アクリルアミドのホモポリマー及びコポリマーをベースとしている。ポリメタクリルアミド、並びに特にはエピクロロヒドリン及びジメチルアミンをベースとしたポリアミンが、好ましい。高分子量沈殿助剤の量は、100重量部のPEGアクリレート-HNBRコポリマーを基準にして、0.01~5重量部、好ましくは0.05~2.5重量部である。
【0083】
その他の沈殿助剤を使用することも考えられる。しかしながら、追加の沈殿助剤を存在させずに本発明によるプロセスを実施することも、容易に可能である。コアグレーションのために使用されるPEGアクリレート-HNBRラテックスが、重量で1%~40%の範囲、好ましくは5%~35%の範囲、特に好ましくは15%~30%の範囲の固形分濃度を有しているのが有利である。
【0084】
ラテックスのコアグレーションは、10℃~110℃、好ましくは20℃~100℃、特に好ましくは50℃~98℃の温度範囲で実施される。ラテックスのコアグレーションは、連続法でも非連続法でも実施できるが、連続法で実施するのが好ましい。
【0085】
また別の実施態様においては、典型的には、未転化のモノマーから分離されたPEG-アクリレート-HNBRラテックスを、6以下、好ましくは4以下、特に好ましくは2のpH範囲にある酸を用いて処理して、ポリマーを沈殿させてもよい。その沈殿のためには、選択されたpH範囲に調節することが可能な、いかなる鉱酸及び有機酸を使用してもよい。pH調節に、鉱酸を採用するのが好ましい。次いで、当業者に慣用される方法で、そのポリマーを、分散体から分離させる。これもまた、連続法でも非連続法でも実施できるが、連続法で実施するのが好ましい。
【0086】
コアグレート化させたPEGアクリレート-HNBRコポリマーの洗浄及び乾燥
コアグレーションの後では、PEGアクリレート-HNBRコポリマーは、典型的には、いわゆる団粒(crumb)の形態にある。したがって、コアグレート化させたHNBRの洗浄は、団粒洗浄とも呼ばれている。この洗浄では、脱イオン水、非脱イオン水のいずれも採用可能である。その洗浄は、15℃~90℃の範囲の温度、好ましくは20℃~80℃の範囲の温度で実施する。洗浄水の量は、PEGアクリレート-HNBRコポリマー100重量部を基準にして、0.5~20重量部、好ましくは1~10重量部、特に好ましくは1~5重量部である。ゴムの団粒を多段洗浄にかける場合、個々の洗浄ステージの間に、ゴムの団粒を部分的に脱水するのが好ましい。個々の洗浄ステージの間の団粒の残存湿分含量は、5重量%~50重量%の範囲、好ましくは7重量%~25重量%の範囲である。洗浄ステージの段数は、典型的には1~7段、好ましくは1~3段である。その洗浄は、非連続法又は連続法で実施する。多段連続プロセスを採用するのが好ましく、その場合、水の使用量を節約するために、向流洗浄が好ましい。洗浄が完了したら、本発明においては、そのPEGアクリレート-HNBRコポリマーの団粒を脱水するのが有利であることがわかった。本発明においては、予め脱水させたPEGアクリレート-HNBRコポリマーの乾燥は、ドライヤー中で実施するが、好適な例としては、流動床ドライヤー又はプレートドライヤーが挙げられる。乾燥温度は、80℃~150℃である。温度プログラムを含む乾燥が好ましく、その場合、乾燥プロセスの終わりに向けて、温度を下げていく。
【0087】
本発明において製造されるPEGアクリレート-HNBRコポリマーは、典型的には10,000g/mol~2,000,000g/mol、好ましくは50,000g/mol~1,000,000g/mol、特に好ましくは100,000g/mol~500,000g/mol、極めて特に好ましくは150,000g/mol~300,000g/molの数平均分子量(Mn)を有している。
【0088】
本発明において製造されるPEGアクリレート-HNBRコポリマーは、2.0~6.0の範囲、好ましくは2.0~5.0の範囲の多分散性PDI(=Mw/Mn、ここで、Mwは重量平均分子量、そしてMnは数平均分子量である)を有している。
【0089】
本発明において特に好ましいPEGアクリレート-HNBRコポリマーは、以下のコポリマーのラテックス水素化法により製造されたものである:
アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート;
アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/アクリル酸、アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/メタクリル酸、アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/マレイン酸モノn-ブチル;
アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/アクリル酸メチル、アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/アクリル酸エチル、アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/アクリル酸ブチル、アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/アクリル酸2-エチルヘキシル;
アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/(メタ)アクリル酸メトキシメチル、アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/(メタ)アクリル酸メトキシエチル、アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/アクリル酸エトキシエチル;
アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/アクリル酸/アクリル酸ブチル、アクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/メタクリル酸/アクリル酸ブチル、及びアクリロニトリル/ブタジエン/PEGアクリレート/マレイン酸モノn-ブチル/アクリル酸ブチル。
【0090】
極めて特に好ましいPEGアクリレート-HNBRコポリマーは、以下のコポリマーのラテックス水素化法により製造されたものである:
アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA、
アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/アクリル酸、アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/メタクリル酸、アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/マレイン酸モノn-ブチル、
アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/アクリル酸メチル、アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/アクリル酸エチル、アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/アクリル酸ブチル、アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/アクリル酸2-エチルヘキシル、
アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/(メタ)アクリル酸メトキシメチル、アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/(メタ)アクリル酸メトキシエチル、アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/アクリル酸エトキシエチル、
アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/アクリル酸/アクリル酸ブチル、アクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/メタクリル酸/アクリル酸ブチル、及びアクリロニトリル/ブタジエン/BDGMA/マレイン酸モノn-ブチル/アクリル酸ブチル。
【0091】
PEGアクリレート-HNBRコポリマーを含む加硫可能な混合物
本発明はさらに、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマー、及び少なくとも1種の架橋剤を含む、加硫可能な混合物も提供する。一つの好ましい実施態様においては、少なくとも1種の充填剤を追加して含む加硫可能な混合物が対象である。
【0092】
たとえばペルオキシド系架橋剤として好適な架橋剤としては、以下のもの挙げられる:ビス(2,4-ジクロロベンジル)ペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス(4-クロロベンゾイル)ペルオキシド、1,1-ビス-(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、tert-ブチルペルベンゾエート、2,2-ビス(tert-ブチルペルオキシ)ブテン、4,4-ジ-tert-ブチルペルオキシノニルバレレート、ジクミルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、tert-ブチルクミルペルオキシド、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、ジ-tert-ブチルペルオキシド、及び2,5-ジメチル-2,5-ジ(tert-ブチルペルオキシ)-3-ヘキシン。
【0093】
これらのペルオキシド系架橋剤だけではなく、架橋収率を向上させることが可能なさらなる添加物を採用するのも有利となり得る:そのために好適なものとしては、たとえば以下のものが挙げられる:トリアリルイソシアヌレート、トリアリルシアヌレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリアリルトリメリテート、エチレングリコールジメタクリレート、ブタンジオールジメタクリレート、二アクリル酸亜鉛、二メタクリル酸亜鉛、1,2-ポリブタジエン、又はN,N’-m-フェニレンビスマレイミド。
【0094】
ペルオキシド系架橋剤の全量は、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーを基準にして、典型的には1~20phrの範囲、好ましくは1.5~15phrの範囲、特に好ましくは2~10phrの範囲である。
【0095】
好適な架橋剤としてはさらに、元素状で可溶性若しくは不溶性の形態にある硫黄、又は硫黄供与体が挙げられる。
【0096】
好適な硫黄供与体としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジモルホリルジスルフィド(DTDM)、2-モルホリノジチオベンゾチアゾール(MBSS)、カプロラクタムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド(DPTT)、及びテトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)。
【0097】
本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーを硫黄加硫させるためにはさらに、架橋収率を向上させることが可能なさらなる添加物を使用することも可能である。しかしながら、原理的には、その架橋を、硫黄又は硫黄供与体だけを用いて実施してもよい。
【0098】
逆に、上述の添加物を存在させるだけ、すなわち元素状の硫黄又は硫黄供与体を添加することなく、本発明のPEGアクリレート-HNBRコポリマーの架橋を実施することもまた可能である。
【0099】
架橋収率を向上させることが可能な好適な添加物としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジチオカルバメート、チウラム、チアゾール、スルフェンアミド、キサントゲン酸塩、グアニジン誘導体、カプロラクタム、及びチオ尿素誘導体。
【0100】
採用可能なジチオカルバミン酸塩としては、たとえば以下のものが挙げられる:アンモニウムジメチルジチオカルバメート、ナトリウムジエチルジチオカルバメート(SDEC)、ナトリウムジブチルジチオカルバメート(SDBC)、亜鉛ジメチルジチオカルバメート(ZDMC)、亜鉛ジエチルジチオカルバメート(ZDEC)、亜鉛ジブチルジチオカルバメート(ZDBC)、亜鉛エチルフェニルジチオカルバメート(ZEPC)、亜鉛ジベンジルジチオカルバメート(ZBEC)、亜鉛ペンタメチレンジチオカルバメート(Z5MC)、テルルジエチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、ニッケルジメチルジチオカルバメート、及び亜鉛ジイソノニルジチオカルバメート。採用可能なチウラムとしては、たとえば以下のものが挙げられる:テトラメチルチウラムジスルフィド(TMTD)、テトラメチルチウラムモノスルフィド(TMTM)、ジメチルジフェニルチウラムジスルフィド、テトラベンジルチウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、及びテトラエチルチウラムジスルフィド(TETD)。採用可能なチアゾールとしては、たとえば以下のものが挙げられる:2-メルカプトベンゾチアゾール(MBT)、ジベンゾチアジルジスルフィド(MBTS)、亜鉛メルカプトベンゾチアゾール(ZMBT)、及び銅2-メルカプトベンゾチアゾール。採用可能なスルフェンアミド誘導体としては、たとえば以下のものが挙げられる:N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(CBS)、N-tert-ブチル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(TBBS)、N,N’-ジシクロヘキシル-2-ベンゾチアジルスルフェンアミド(DCBS)、2-モルホリノチオベンゾチアゾール(MBS)、N-オキシジエチレンチオカルバミル-N-tert-ブチルスルフェンアミド、及びオキシジエチレンチオカルバミル-N-オキシエチレンスルフェンアミド。採用可能なキサントゲン酸塩としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジブチルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルジブチルキサントゲン酸亜鉛、及びジブチルキサントゲン酸亜鉛。採用可能なグアニジン誘導体としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジフェニルグアニジン(DPG)、ジ-o-トリルグアニジン(DOTG)、及びo-トリルビグアニド(OTBG)。採用可能なジチオリン酸塩としては、たとえば以下のものが挙げられる:ジアルキルジチオリン酸亜鉛(アルキル基の鎖長:C2~C16)、ジアルキルジチオリン酸銅(アルキル基の鎖長:C2~C16)、及びジチオホスフォリルポリスルフィド。採用可能なカプロラクタムとしては、たとえば、ジチオビスカプロラクタムが挙げられる。採用可能なチオ尿素誘導体としては、たとえば以下のものが挙げられる:N,N’-ジフェニルチオ尿素(DPTU)、ジエチルチオ尿素(DETU)、及びエチレンチオ尿素(ETU)。同様に好適である添加物としては、たとえば以下のものが挙げられる:亜鉛ジアミンジイソシアネート、ヘキサメチレンテトラミン、1,3-ビス(シトラコンイミドメチル)ベンゼン、及び環状ジスルファン。
【0101】
列記した添加物及び架橋剤は、個別に採用しても、或いは混合物として採用してもよい。本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーを架橋させるためには、次の物質を採用するのが好ましい:硫黄、2-メルカプトベンゾチアゾール、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラメチルチウラムモノスルフィド、亜鉛ジベンジルジチオカルバメート、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド、亜鉛ジアルキルジチオホスフェート、ジモルホリルジスルフィド、テルルジエチルジチオカルバメート、ニッケルジブチルジチオカルバメート、亜鉛ジブチルジチオカルバメート、亜鉛ジメチルジチオカルバメート、及びジチオビスカプロラクタム。
【0102】
上述の架橋剤及び添加物は、それぞれの場合において、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーを基準にして、0.05phr~10phr、好ましくは0.1phr~8phr、特には0.5phr~5phrの量で採用することができる(それぞれの場合において、その活性物質を基準にして、単一計量添加(single metered addition))。
【0103】
先に挙げた架橋剤と添加物に加えて、硫黄架橋において、たとえば以下のような、さらなる無機物質又は有機物質を、同時に使用することも有用となり得る:酸化亜鉛、炭酸亜鉛、酸化鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウム、飽和若しくは不飽和の有機脂肪酸、それらの亜鉛塩、ポリアルコール、アミノアルコールたとえばトリエタノールアミン、並びにアミン、たとえば、ジブチルアミン、ジシクロヘキシルアミン、シクロヘキシルエチルアミン、ポリアミン、及びポリエーテルアミン。
【0104】
その他の任意選択成分:
そのような加硫可能な混合物には、場合によっては、ゴム関係の当業者には馴染みのある1種又は複数の添加剤及び繊維状物質をさらに含んでいてもよい。それらとしては、以下のものが挙げられる:老化防止剤、加硫戻り防止剤、光安定剤、抗オゾン剤、加工助剤、離型剤、可塑剤、鉱油、粘着付与剤、発泡剤、染料、顔料、ワックス、樹脂、エクステンダー、充填剤、たとえば、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化マグネシウム、酸化アルミニウム、酸化鉄、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、ケイ酸アルミニウム、珪藻土、タルク、カオリン、ベントナイト、カーボンナノチューブ、グラフェン、Teflon(後者は、好ましくは粉体の形態)、又はケイ酸塩、カーボンブラック、シリカ、熱分解法シリカ、シリカ、シラン化処理シリカ、天然物、たとえば、アルミナ、カオリン、ウォラストナイト、有機酸、加硫遅延剤、金属酸化物、脂肪族及び芳香族ポリアミド(ナイロン(登録商標)、アラミド(登録商標))、ポリエステル、及び天然繊維製品から作られたガラス、コード、布帛、繊維で作製された補強部材(繊維)、不飽和カルボン酸の塩、たとえば二アクリル酸亜鉛(ZDA)、メタクリル酸亜鉛(ZMA)、及びジメチルアクリル酸亜鉛(ZDMA)、液状アクリレート又はその他のゴム業界では公知の添加剤(Ullmann’s Encyclopedia of Industrial Chemistry,VCH Verlagsgesellschaft mbH,D-69451 Weinheim,1993,vol.A23“Chemicals and Additives”,pp.366~417)。
【0105】
考えられる充填剤活性化剤としては、特に、たとえば以下のような有機シランが挙げられる:ビニルトリメチルオキシシラン、ビニルジメトキシメチルシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(2-メトキシエトキシ)シラン、N-シクロヘキシル-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、トリメチルエトキシシラン、イソオクチルトリメトキシシラン、イソオクチルトリエトキシシラン、ヘキサデシルトリメトキシシラン、又は(オクタデシル)メチルジメトキシシラン。充填剤活性化剤としてはさらに、たとえば、トリエタノールアミン及び74~10,000g/molの分子量を有するエチレングリコールのような表面活性物質が挙げられる。充填剤活性化剤の量は、典型的には、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーの100重量部を基準にして、0~10重量部である。
【0106】
添加剤と繊維を合わせた量は、典型的には、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーの100重量部を基準にして、1~300重量部の範囲である。
【0107】
PEGアクリレート-HNBRコポリマーを含む、加硫可能な混合物を製造するためのプロセス
本発明はさらに、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーを、少なくとも1種の架橋剤及び場合によっては、存在しているさらなる成分と混合することによる、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーを含む、加硫可能な混合物を製造するためのプロセスも提供する。この混合操作は、ゴム産業において慣用される各種の混合装置、たとえばインターナルミキサー、バンバリーミキサー、又はローラーミルの中で実施すればよい。当業者であれば、適切な実験により、計量添加の順は容易に決めることができよう。
【0108】
たとえば、可能な手順のための二つの変法を、以下に記載する。
【0109】
プロセスA:インターナルミキサー中での製造
かみ合いローター様式を備えたインターナルミキサーが好ましい。
【0110】
開始時には、ベールの形態にある本発明におけるPEGアクリレート-HNBRコポリマーをインターナルミキサーに仕込み、そのベールを微粉砕させる。適切な混合時間の後に、充填剤及び添加剤を加える。混合は温度制御下で実施するが、ただし、混合物を、適切な時間、80℃~150℃の範囲の温度に保持する。さらなる適切な混合時間の後に、さらなる混合物構成成分、たとえば、場合によってはステアリン酸、抗酸化剤、可塑剤、白色顔料(たとえば二酸化チタン)、染料、及びその他の加工助剤を添加する。さらなる適切な混合時間の後に、インターナルミキサーのガス抜きをし、シャフトをきれいにする。さらなる適切な時間の後に、インターナルミキサーを空にして、加硫可能な混合物を得る。「適切な時間」とは、数秒~数分を意味していると理解されたい。架橋用薬剤は、(特に高い混合温度で混合を実施する場合には)ローラーミル上で別々の工程で組み入れてもよいし、或いはインターナルミキサーの中に直接添加してもよい。その混合温度が、それらの架橋用薬剤の反応温度よりも低くなるようにしなければならない。
【0111】
そのようにして製造された加硫可能な混合物は、慣用される方法、たとえばムーニー粘度、ムーニースコーチ、又はレオメーター試験で、評価することができる。
【0112】
プロセスB:ローラーミル上での製造
混合装置としてローラーミルを使用するのなら、最初に、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーをローラーに供給する。均質なミルドシートが形成されたら、充填剤、可塑剤、及び他の添加剤(架橋用薬剤は除く)を添加する。混合によりすべての成分が取り込まれたら、架橋用薬剤を添加し、混合により組み入れる。次いで、その混合物の右側に3回、そして左側に3回刻み目を入れ、5回折り重ねる。そのようにして仕上がったミルドシートにロールがけして所望の厚みとし、所望の試験方法に合わせて、さらなる加工にかける。
【0113】
PEGアクリレート-HNBRコポリマーをベースとする加硫物を製造するためのプロセス
本発明はさらに、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーを含む、好ましくは成形物としての、加硫物を製造するためのプロセス(加硫)も提供するが、それが特徴としているのは、そのプロセスに、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーを含む加硫可能な混合物を、好ましくは成形プロセスにおいて、より好ましくは100℃~250℃の範囲の温度、特に好ましくは120℃~250℃の範囲の温度、極めて特に好ましくは130℃~250℃の範囲の温度で加硫にかけることを含んでいることである。この目的のために、その加硫可能な混合物を、カレンダー、ローラー、又はエクストルーダーを用いたさらなる加工にかける。次いで、そのようにして予備成形した物質を、プレス、オートクレーブ、加熱空気システム、又はいわゆる自動マット加硫プラント(「Auma」=automatic matt vulacanization plant)の中で加硫させるが、ここで、100℃~250℃の範囲の温度が好ましいことが判明し、120℃~250℃の範囲の温度が特に好ましいことが判明し、そして130℃~250℃の範囲の温度が極めて特に好ましいことが判明した。その加硫時間は、典型的には1分~24時間、好ましくは2分~1時間である。加硫物の形状及びサイズによっては、完全な加硫を得るために、再加熱による第二の加硫が必要になることもある。
【0114】
本発明はさらに、そのようにして得ることが可能な、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーをベースとする加硫物も提供する。
【0115】
本発明はさらに、以下のものからなる群より選択される成形物を製造するための、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーをベースとする加硫物の使用も提供する:ベルト、シール、ローラー、靴部品、ホース、制震要素、ステーター、及びケーブルシース、好ましくはベルト及びシール。
【0116】
したがって、本発明は、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーを含む、好ましくはベルト、シール、ローラー、靴の部品、ホース、制震要素、ステーター、及びケーブルシースから、特に好ましくはベルト及びシールから選択される、成形物としての加硫物も提供する。たとえばこの目的のために採用することが可能な方法、たとえば、型込め成形、射出成形、又は押出し成形のプロセス、並びにそれらに対応する射出成形装置又はエクストルーダーは、当業者には周知である。これらの成形物の製造においては、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーには、当業者に公知であって、当業者の通常の知識を用いて適切に選択することが可能な、標準的な助剤、たとえば充填剤、充填剤活性化剤、加硫促進剤、架橋剤、抗オゾン剤、抗酸化剤、加工オイル、エクステンダーオイル、可塑剤、活性化剤、又はスコーチ禁止剤を補助的に使用してもよい。
【0117】
本発明の利点は、特に、本発明によるPEGアクリレート-HNBRコポリマーが、予想外の低いムーニー粘度を有していて、そのため、さらなる加工、特に加硫物を製造するのに特に好適であるということにある。
【実施例
【0118】
採用される原料
以下の薬剤は、それぞれの場合において特定した会社からの商品として購入するか、又は特定した会社の製造プラント由来のものである。
アクリロニトリル:CAS番号107-13-1
ブタジエン:CAS番号106-99-0
BDGMA:ブトキシジエチレングリコールメタクリレート(BDGMA)、分子量230.3g/mol(Evonik Industries AGから市販)
Corax(登録商標)N330:カーボンブラック(Orion Engineered Carbonから市販)
Rhenofit(登録商標)DDA 70:30%のシリカに結合された70%のスチレン化ジフェニルアミン(LANXESSから市販)
Vulkanox(登録商標)ZMB2/C-5:4-及び5-メチル-2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩(LANXESSから市販)
MgO:酸化マグネシウム(CP Hallから市販)
TAIC-70:トリアリルイソシアヌレート、70%マスターバッチ;シリカ上に担持(Kettlitzから市販)
Perkadox(登録商標)14-40:ジ(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン(シリカ上、40%担持)(Akzo Nobel Polymer Chemicals BVから市販)
Polystay 29:スチレン化ジフェニルアミン;(Goodyear Chemicalから市販)
Vulkanox(登録商標)BKF:2,2’-メチレン-ビス(4-メチル-6-tert-ブチルフェノール)(LANXESSから市販)
Disponil(登録商標)SDS G:ラウリル硫酸ナトリウム(BASFから市販)
不均化樹脂酸のNa塩 CAS番号61790-51-0
脂肪酸のNa塩
NaCO:炭酸ナトリウム(Merck KGaAから市販)
KCl:塩化カリウム(VWRから市販)
EDTA:エチレンジアミン四酢酸(VWRから市販)
Glidox(登録商標)500:2,6,6-トリメチルビシクロ[3.1.1]ヘプチルヒドロペルオキシド(パラ-ヒドロキシピナン)(Symriseから市販)
モノクロロベンゼン(MCB):(VWRから市販)
ウィルキンソン触媒:クロリドトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム(I)、C5445ClPRh、CAS番号14694-95-2(Umicoreから市販)
トリフェニルホスフィン(TPP):C1815P;CAS番号603-35-0(VWRから市販)
【0119】
測定方法
ガラス転移温度は、ASTM E 1356-03に従うか、又はDIN 53765に従うDSC測定の手段によって得た。この目的のためには、10mg~15mgの間のサンプルをアルミニウムボートの上に秤込み、封入した。TA Instruments製のDSC装置の中で、そのボートを、-150℃から150℃まで、10K/分の加熱速度で2回加熱した。ガラス転移温度は、二回目の加熱曲線から、標準平均値法により求めた。
【0120】
RDB含量(残存二重結合含量)(単位:%)は、以下のFT-IR測定法に従って求める。水素化の前、途中、及び後のニトリル-ブタジエンコポリマーのIRスペクトルを、AVATAR360 Thermo Nicolet FT-IR分光計IR装置の手段により記録する。この目的のためには、ニトリル-ブタジエンコポリマーのモノクロロベンゼン溶液をNaCl板に塗布し、乾燥させてフィルムとし、そして分析する。水素化度は、ASTM D 567095方法に従ったFT-IR分析法によって求める。
【0121】
分子量は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって求める。以下のものを含むモジュラーシステムを使用した:Shodex RI-71示差屈折計、S 5200オートサンプラー(SFD製)、カラムオーブン(ERC-125)、Shimadzu LC 10ATポンプ、及びAgilet製の、3本のPLgel 10μm Mixed B 300×7.5mmの組合せ。使用した溶媒は、テトラヒドロフランであって、表示される分子量は、PSS(Mainz)製のポリスチレン標準をベースとしたものである。出来上がったサンプルのTHF溶液を、0.45μm、直径25mmのPTFE膜を用いたシリンジフィルターで濾過する。測定は40℃で実施し、流量は、テトラヒドロフラン中1mL/分であった。数平均分子量Mn、質量平均分子量Mw、及びそれらから得られる多分散性指数PDIのような分子パラメーターは、Waters製の「Empower 2 data base」ソフトウェアの手段によって、RI信号から求める。
【0122】
ニトリルゴム中のACN含量を求めるための窒素含量は、Vario EL cubeにより測定する。秤量した量を、酸化触媒及び酸素の存在下約1150℃で燃焼させ、その燃焼ガスを分割し、分解(disruptive)成分を吸収させ、熱伝導率測定セル(TCD)によってNを検出する。
【0123】
個々のポリマーの微細構造及びターモノマー含量は、1H-NMRの手段により測定した(装置:Bruker DPX400、TopSpin 1.3ソフトウェア使用、測定周波数:400MHz、溶媒:1,1,2,2-テトラクロロエタン-d2)。
【0124】
HNBRの貴金属(Rh又はRu)含量は、0.5gのサンプル量のHNBRを使用し、白金るつぼの中で550℃灰化させることにより、求めた。その残渣を塩酸の中に溶解させ、水で希釈した。ルテニウム及びロジウムの含量は、ICP-OES(高周波誘導結合プラズマ発光分光法)で、ルテニウム及びロジウムの特性波長のところで測定した。相当する金属の酸性溶液を用いて、その特定波長のところで較正を実施した。信号の高さとサンプルの濃度を調節して、その検量線の直線域で測定が実施できるようにしてから、サンプルの含量を定量した。
【0125】
乳化剤の含量は、溶解させたHNBRをメタノールを用いて沈殿させた、沈殿の上澄み(precipitation serum)から、ガスクロマトグラフィー(GC)により、求める。この目的のためには、その沈殿の澄みの中の乳化剤を、最初にシリル化し、次いで、質量分析計を直結した水素炎イオン化検出器を有するガスクロマトグラフィーを使用して、分析する。
【0126】
ムーニー粘度値(ML1+4@100℃)は、それぞれの場合において、ASTM D 1646-07に従い、剪断ディスク粘度計の手段によって求める。
【0127】
混合物の加硫挙動及び架橋密度は、ムービングダイレオメーター(MDR 2000E)を用いて測定したが、その測定は、180℃、角度0.5度、振動数1.7Hzで30分間かけて実施した。
【0128】
引張試験のために、加硫可能な混合物を180℃で加硫させることによって、2mmのシートを作成した。それらのシートからダンベル形状の試験片を打ち抜き、ASTM D2240-81に従って引張強度及び伸びを測定した。
【0129】
硬度は、ASTM D2240-81に従い、硬度計を使用して求めた。
【0130】
膨潤を測定するためには、DIN ISO 1817に従い、引張試験に使用するようなダンベル形状の試験片をIRM903の中に、150℃で168時間保存した。次いでそれらのサンプルを計測及び秤量して、体積膨潤度及び質量増加を求めた。その後で、ASTM D2240-81に従って、引張強度及び伸びを測定した。
【0131】
以下の表に現れる略称は次の意味合いを有する:
「Smin」:架橋等温式の最小トルクである
「Smax」:架橋等温式の最大トルクである
「デルタS」:「Smax-Smin」である
「M10」:10%伸びの時のモジュラス(RTで測定)
「M25」:25%伸びの時のモジュラス(RTで測定)
「M50」:50%伸びの時のモジュラス(RTで測定)
「M100」:100%伸びの時のモジュラス(RTで測定)
「M300」:300%伸びの時のモジュラス(RTで測定)
「EB」:破断時伸び(RTで測定)
「TS」:引張強度(RTで測定)
「H」:硬度(RTで測定)
【0132】
製造プロセス
NBRラテックス及びPEGアクリレート-NBRラテックスの製造
以下の一連の実施例で採用されるニトリルゴムラテックスL1及びL2の製造は、表1に示した配合に基づいて実施したが、ここで、すべての使用原料は、100重量%のモノマー混合物を基準にした重量パーセント(phm)で表されている。表1にはさらに、それぞれの重合条件も明記している。
【0133】
【表2】
【0134】
ニトリルゴムラテックスの製造は、撹拌機を取り付けた20Lのオートクレーブの中で、非連続法で実施した。EDTAは、Fe-IIを基準にして等モルで使用した。全水分量の90%、及びさらに乳化剤を、オートクレーブの中に仕込み、窒素気流を用いてパージした。次いで、安定剤を除去したモノマー及び表1に記載の量の分子量調節剤t-DDMを添加し、反応器を閉じた。反応器の内容物の温度を調節してから、プレミックス溶液及びパラ-ヒドロキシピナン(Glidox(登録商標)500)を添加することによって、重合を開始させた。
【0135】
重合の進行は、重量法の転化率測定によりモニターした。目標とする転化率に達したら、ジエチルヒドロキシルアミンの水溶液を添加することによって、重合を停止させた。水蒸気蒸留によって、未転化モノマー及びその他の揮発性成分を除去した。CaClを用いて沈殿させたサンプルを使用して、ムーニー粘度、ACN含量、ターモノマー含量、及びガラス転移温度に関連した、その物質のキャラクタリゼーションを実施した。
【0136】
CaClを用いたL1及びL2のラテックスの沈殿
20Lの沈降容器の中に、最初にCaCl(4phr)と水(20phr)とを最初に仕込み、L1の場合には、60℃にまで加熱した。L2の場合には、溶液は加熱しない。1000rpmの激しい撹拌をしながら、希釈したラテックス(17.5%)を、そのコアグレーション溶液の中に滴下により徐々に添加する(L1の沈殿でNBR1が得られ;L2の沈殿で、NBR2が得られる)。さらなる撹拌時間としての10分が完了したら、そのゴムを、1mmのふるいを通して濾過し、水(20phr)を用いて洗浄する。NBR1の場合には、次いでこの水を加熱して60℃とする。沈殿したNBRゴムのNBR1及びNBR2を次いで、1mmのふるいを通して濾過し、トレーに載せ、真空乾燥キャビネットで、55℃で約48時間かけて乾燥させて、残存含水率を0.5%未満とした。
【0137】
【表3】
【0138】
水素化
先に合成したニトリルゴムを、それぞれの場合において、溶液の水素化及びラテックスの水素化にかけた。
【0139】
ラテックスの水素化:L1及びL2(本発明)の水素化
以下の水素化は、先に合成したニトリルゴムラテックス(L1及びL2)を使用して実施した。
【0140】
水素化は、2Lの高圧反応器の中で、以下の条件下で実施した:
溶媒:水
固形分濃度:15~20重量%
反応器温度:120℃
反応時間:1~3時間(RDBが1%未満になるまで)
触媒及び使用量:Grubbs-Hoveyda-II:0.03phr(L1);0.09phr(L2)
水素圧(p H):8.4MPa
攪拌機速度:600rpm
【0141】
触媒は、5~15mLのトルエンの中に溶解させ、圧力ビュレットの中に移した。
【0142】
ニトリルゴムラテックスL1及びL2は、反応器の中で、激しく撹拌しながら、H(23℃、2MPa)を用いて、3回パージした。次いで、撹拌機速度600min-1で、反応器を加熱して、重合開始温度の100℃とし、反応器の中に、ガラスビュレットを介し、窒素を使用して触媒溶液を注入した。反応が開始したら、水素圧力を段階的に上昇させて8.4MPaとし、反応器の内温を調節して120℃とした。
【0143】
1時間又は2時間後に反応を停止させ、水素圧力を放出させると、1%未満のRDB含量が達成された。
【0144】
CaClを用いたHNBRのコアグレーション
5Lの沈降容器の中に、最初にCaCl(4phr)と水(20phr)とを最初に仕込み、HNBR1の場合には、60℃にまで加熱する。HNBR2の場合には、溶液を加熱しない。そのコアグレーション溶液の中に、1000rpmで激しく撹拌しながら、希釈したラテックス(17.5%)を滴下により徐々に添加した。さらなる撹拌時間としての10分が完了したら、そのゴムを、1mmのふるいを通して濾過し、水(20phr)を用いて洗浄する。HNBR1の場合には、次いでこの水を加熱して60℃とする。次いでそのポリマーを、1mmのふるいを通して濾過し、トレーに載せ、真空乾燥キャビネットで、55℃で約48時間かけて乾燥させて、残存含水率を0.5%未満とした。
【0145】
溶液水素化法:NBR1及びNBR2(本発明ではない)の水素化
先に合成し、沈殿させたニトリルゴム(NBR1及びNBR2)を使用して、以下の溶液水素化法を実施した。
【0146】
水素化は、10Lの高圧反応器の中で、以下の条件下で実施した:
溶媒:モノクロロベンゼン
固形分濃度:MCB中12~13重量%のポリマー
反応器温度:137~140℃
反応時間:3時間
触媒及び使用量:ウィルキンソン触媒:0.065phr
助触媒:トリフェニルホスフィン:1.0phr
水素圧(p H):8.4MPa
攪拌機速度:600rpm
【0147】
反応器の中で、激しく撹拌しながら、H(23℃、2MPa)を用いて、ニトリルゴム溶液を3回パージした。反応器の温度を上げて100℃とし、H圧を6MPaに上げた。123.9gの、ウィルキンソン触媒(0.065phr)及びトリフェニルホスフィン(1phr)のクロロベンゼン溶液を添加し、圧力を上げて8.4MPaとしたが、その間反応器の温度は137~140℃に調節した。反応の間ずっと、両方のパラメーターは一定に維持した。反応の進行は、IR分光法によって残存二重結合含量(RDB)を測定することによりモニターした。3時間後に反応を停止させ、水素圧力を放出させると、1%未満のRDB含量が達成されていた。
【0148】
水蒸気コアグレーション
そのようにして形成された水素化ニトリルゴムは、水蒸気コアグレーションによって、その溶液から単離した。この目的のためには、そのクロロベンゼン溶液をポリマー含量7重量%になるまで希釈して、水を充満させ100℃に予め加熱した、撹拌下のガラス反応器の中に連続的に計量仕込みした。0.5barの圧力で水蒸気を、コアグレーション水の中に同時に導入した。そのようにして沈殿させたポリマーの団粒を、ざっと脱水し、次いで真空下55℃で、恒量になるまで乾燥させた。
【0149】
水素化ニトリルゴムの組成及び性質
溶液水素化法及びラテックス水素化法により製造したHNBRコポリマーの性質を、表3に示す。
【0150】
【表4】
【0151】
NBRコポリマーにおいては、ラテックス水素化法の実施では、製造されたHNBRのムーニー粘度が、やや増加した(すなわち、悪化した)。
【0152】
溶液水素化法及びラテックス水素化法により製造したPEGアクリレートHNBRコポリマーの性質を、表4に示す。
【0153】
【表5】
【0154】
ラテックス水素化法によるPEGアクリレート-NBRコポリマーの製造では、製造されたPEGアクリレート-HNBRコポリマーのムーニー粘度が、溶液水素化法により製造されたPEGアクリレート-HNBRコポリマーに比較して、激烈に低下し、したがって、改良された。
【0155】
加硫可能なHNBR組成物の製造
HNBR組成物はすべて、ミキシングミル上で製造した。ローラーの直径は80mm、長さは200mmであった。ローラーは予熱して40℃とし、フロントローラーの速度を16.5rpm、リアローラーの速度を20rpmとして、それにより1:1.2の摩擦が得られるようにした。
【0156】
最初にゴムを仕込み、1分間混合させて、滑らかなミルドシートを形成させた。これに続けて、混合により、最初にカーボンブラック、次いで各種添加剤、そして最後に架橋用化学薬品を組み入れた。混合時間は合計して、5~8分であった。
【0157】
HNBR加硫物の製造(加硫)
このようにして製造した加硫可能な混合物を使用して、180℃で10分間かけて加硫させることによって、厚み2mmのシートを作製した。それらのシートから、試験片を打ち抜いた。
【0158】
【表6】
【0159】
ラテックス水素化法により製造されたHNBR及びPEGアクリレート-HNBRコポリマーは、溶液水素化法によって製造されたタイプに比較して、未加硫のポリマーが、より低いムーニー粘度を示す。より低いムーニー粘度を有する水素化ニトリルゴムコポリマーは、加工しやすいという面で有利である。
【0160】
ラテックス-水素化法のニトリルゴムコポリマーの加硫物は、溶液-水素化法のニトリルゴムコポリマーと同程度の硬度及び体積膨潤度を示し、そのため、それらの性能プロファイル及び応用分野の面では、同等である。
【0161】
PEGアクリレート-HNBRコポリマーの製造は、溶液水素化法、ラテックス水素化法のいずれによっても可能である。しかしながら、ラテックス水素化法は、以下の点で溶液水素化法よりも明らかに有利である:ラテックス水素化法によって製造された水素化ニトリルゴムコポリマーの場合においては、そのムーニー粘度が、溶液水素化法によって製造されたPEGアクリレート-HNBRコポリマーの場合よりも、顕著に低い。
【国際調査報告】