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▶ エフ・ホフマン−ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフトの特許一覧

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】凍結乾燥物容器および点滴キット
(51)【国際特許分類】
   A61J 1/05 20060101AFI20220121BHJP
   A61J 1/10 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
A61J1/05 351Z
A61J1/10 333A
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021529292
(86)(22)【出願日】2019-11-25
(85)【翻訳文提出日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 EP2019082340
(87)【国際公開番号】W WO2020109194
(87)【国際公開日】2020-06-04
(31)【優先権主張番号】18208303.0
(32)【優先日】2018-11-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】306021192
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】レマ マルティネス, カルメン
(72)【発明者】
【氏名】ルーエムケマン, イェルク
(72)【発明者】
【氏名】ズムスタイン, トーマス
(72)【発明者】
【氏名】カルマン, ダニエル
【テーマコード(参考)】
4C047
【Fターム(参考)】
4C047AA13
4C047CC04
4C047CC14
4C047DD04
4C047DD12
4C047DD13
4C047DD34
(57)【要約】
凍結乾燥物容器(39)であって、コンパートメントと、コンパートメントを限定する壁(3119、3129)と、コンパートメント内側に配された凍結乾燥物とを備える、凍結乾燥物容器。壁(3119、3129)の少なくとも一部分は、半透過性であり、壁(3119、3129)を通り抜けてコンパートメントから出る一方向の蒸気透過を可能にし、壁(3119、3129)を通り抜けてコンパートメントに入る反対方向の蒸気透過を防止する。
【選択図】図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)であって、
コンパートメントと、
前記コンパートメントを限定する壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)と、
前記コンパートメント内側に配された凍結乾燥物(34;350;326;317;338;379)とを備え、
前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)の少なくとも一部分が、半透過性であり、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)を通り抜けて前記コンパートメントから出る一方向の蒸気透過を可能にし、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)を通り抜けて前記コンパートメントに入る反対方向の蒸気透過を防止する、凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項2】
前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)が、前記一方向に蒸気透過性であり、他方向に蒸気密封性である半透過性膜を備える、請求項1に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項3】
前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)が、フレーム構造(3119)を備え、該フレーム構造(3119)によって前記半透過性膜が広げられる、請求項2に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項4】
外側収納部(329)と、前記外側収納部(329)内側に配置された内側収納部(319)とを備え、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)が、前記内側収納部(319)の一部分である、請求項1から3のいずれか一項に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項5】
前記コンパートメントが、前記外側収納部(329)と前記内側収納部(319)との間に配され、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)の前記少なくとも一部分が、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)を通り抜けて前記コンパートメントから前記内側収納部(319)への前記一方向の蒸気透過を可能にし、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)を通り抜けて前記内側収納部(319)から前記コンパートメントへの前記反対方向の蒸気透過を防止するように配向される、請求項4に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項6】
前記コンパートメントが、前記内側収納部(319)内に配され、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)の前記少なくとも一部分が、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)を通り抜けて前記コンパートメントから前記外側収納部(329)と前記内側収納部(319)との間への前記一方向の蒸気透過を可能にし、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)を通り抜けて前記外側収納部(329)と前記内側収納部(319)との間から前記コンパートメントへの前記反対方向の蒸気透過を防止するように配向される、請求項4に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項7】
前記外側収納部(329)または前記内側収納部(319)が、円錐状の横方向領域を有する、請求項4から6のいずれか一項に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項8】
孔を有する剛性本体(31;310)を備え、前記孔は、前記本体の一方の端側において開き、前記本体の前記一方の端側から前記本体の他の端側に延び、前記孔は前記コンパートメントを形成し、前記半透過性膜は、前記本体(31;310)に取り付けられ、それによって前記本体(31;310)の前記一方の端側において前記孔を閉じる、請求項2または3に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項9】
高い熱伝導率を有する不透過性ホイル(33;330;336)を備え、前記ホイルは、前記本体(31;310)に取り付けられ、それによって前記本体(31;310)の前記他方の端側において前記貫通孔を閉じる、請求項8に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項10】
前記本体(31;310)が、円錐状の横方向領域を有する、請求項8または9に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項11】
パッド様構造であり、前記コンパートメントが、2つのシート(318、328)間に形成され、前記2つのシートの少なくとも1つが、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)である、請求項1から3のいずれか一項に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項12】
前記凍結乾燥物(34;350;326;317;338;379)が、凍結乾燥された薬物製剤であり、特に、前記凍結乾燥物(34;350;326;317;338;379)は、極めて効能がある薬物製剤であり、より具体的には、前記凍結乾燥された薬物製剤は、生物学的成分を含む、請求項1から11のいずれか一項に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)。
【請求項13】
請求項1から12のいずれか一項に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)と、前記凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)内に配置された凍結乾燥された薬物製剤と、再構成液体で充填された第1のコンパートメント(21;216;217;219)およびポート(23;240;226;256;247)を有する可撓性容器(2;20;26;27)とを備える点滴キットであって、具体的には、前記可撓性容器は、脆弱シール(230)によって前記第1のコンパートメント(21;216;217;219)から分離された第2のコンパートメント(220;229)を備え、前記凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)は、前記可撓性容器(2;20;26;27)の前記第2のコンパートメント(220;229)内に配され、より具体的には、前記凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)は、前記可撓性容器(2;20;26;27)の前記ポート(23;240;226;256;247)内に取り入れられる、点滴キット。
【請求項14】
前記ポートが、第1の装着構造を有し、前記凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)が、対応する第2の装着構造を有し、それによって前記凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)は、前記凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)を通して液体を排出するために前記可撓性容器(2;20;26;27)に装着可能となる、請求項13に記載の点滴キット。
【請求項15】
請求項1から12のいずれか一項に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)を準備する方法であって、
前記凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)のコンパートメントを限定する壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)によって限定された前記コンパートメント内側に湿性物質を配置することであって、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)の少なくとも一部分は、半透過性であり、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)を通り抜けて前記コンパートメントの内側から出る一方向の蒸気透過を可能にし、前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)を通り抜けて前記コンパートメントの内側に入る反対方向の蒸気透過を防止する、湿性物質を配置することと、
前記凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)の前記コンパートメントを閉じることと、
蒸気が前記壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)を通り抜けて透過して前記コンパートメントの内側から出るように、前記コンパートメント内で前記湿性物質を凍結乾燥することとを含む、方法。
【請求項16】
請求項1から12のいずれか一項に記載の凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)の使用であって、前記凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)の凍結乾燥物(34;350;326;317;338;379)を前記凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)のコンパートメント内において液体中で再構成することと、前記再構成された凍結乾燥物(34;350;326;317;338;379)を含む液体溶液を前記コンパートメントの壁(31、32、33;310、320、330;336;318、328;3119、3129)を通して濾過することとを含む、凍結乾燥物容器(3;30;36;37;38;39)の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、凍結乾燥物容器、そのような凍結乾燥物容器を有する点滴キット、そのような凍結乾燥物容器を準備する方法、およびそのような凍結乾燥物容器の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
多くの化学的、薬学的、栄養学的、および他の用途では、物質は乾燥形態で提供される。それにより、長い耐用年数を達成するために、物質をできるだけ乾燥させることを目的とすることが多い。この観点から、物質を凍結乾燥するか、またはフリーズドライすることが知られている。特に、物質を、たとえば不適切な方法で加熱することなく穏やかに乾燥させることが必要であるか、または有益である場合、凍結乾燥が好まれることが多い。
【0003】
たとえば、多くの医療用途では、医薬品または薬物物質は、経口で、非経口で、静脈内に、または皮下内に液体形態で投与される。一例として、静脈内投与の場合、点滴バッグを使用することが知られており、点滴バッグは、支持体上に吊り下げられ、点滴針を通して液体薬物物質または薬物希釈混合物を患者に滴入することができる。しかし、液体薬物物質に関連して、多くの医薬品、特にバイオ医薬品は、一般的に液体形態では不安定であるため、これらを液体形態で適切な期間保管し、供給することはできない。より詳細には、多くの抗生物質または他の生物学的薬物は、液体形態では不安定であり、それにより、その品質を液体として維持することはできない。特に、揺れ、微生物学的成長、凝集などによって引き起こされるストレスが、薬物を損ない得る。しかし、言及したように、薬物を粉末などの乾燥形態で供給することが知られており、乾燥形態では薬物は、液体形態と比較して本質的により安定的であり、頑強である。乾燥薬物製剤はそのため、投与の直前に再構成されるか、または溶解される。
【0004】
適切な衛生上および品質の基準を達成または維持するために、物質は、無菌環境などの特有の状態において慎重に凍結乾燥されることが多い。それにより、物質は通常、特有の容器内で凍結乾燥され、この容器から保管および供給のための他の容器またはパッケージに移送される。次いで、施与または投与される直前に、物質は再構成される。典型的には、そのような手順は複雑であり、間違いを犯しやすい。物質を移送する際、損失または汚染のリスクも生じ得る。これは、極めて効能がある薬物物質などの物質が比較的少量で提供される、ならびに/または精確な量を取り扱う必要がある場合に特に重要となり得る。また、これにより、介護者または臨床医が、高い効能の薬物物質を準備する必要がありこれらの物質に接触し得る場合に、危険にさらされる場合がある。通常、患者のために薬物物質を準備する必要がある人を保護するために、たとえば層流空気流、アイソレータボックス、重ね手袋、および保護スリーブを使用するなど、比較的多大な労力が払われている。さらに、特に工業的レベルでは、準備は比較的不効率になり得る。たとえば、典型的には、凍結乾燥に必要とされる時間は、さまざまな理由で比較的長くなる。
【0005】
さらに、医薬品または薬物物質が係わるとき、物質の取扱者は、比較的高い需要に直面し得る。したがって、そのような用途は、特にスキルが比較的低いか、またはあまり教育されていない人が係わるとき、しばしば間違いを犯しやすい。たとえば、点滴バッグでの投与が目的とされる場合、点滴バッグ内の再構成および提供を含む薬物物質の準備は、適切な治療を確実にするために最も重要なものである。特に極めて効能がある薬物物質が係わるとき、点滴による治療は、たとえば無菌状態および/または層流空気流を伴う適切な臨床環境が欠乏している、どちらかといえば低所得国および中所得国の場合によくあるように、準備を適切に実行することが確実にできない場合に不適切になることがある。また、緊急な状況など、準備の速度が重要である場合の用途では、極めて効能がある薬物物質の知られている準備は、十分に効率的ではない。
【0006】
したがって、準備から開始して投与で終了する消耗可能な凍結乾燥物の効率的なライフサイクルを可能にするシステムまたはプロセスが、必要とされている。
【発明の概要】
【0007】
本発明によれば、この必要性は、独立請求項1の特徴によって定義するような凍結乾燥物容器によって、独立請求項13の特徴によって定義するような点滴キットによって、独立請求項15の特徴によって定義するような凍結乾燥物容器を準備するための方法によって、そして独立請求項16の特徴によって定義するような凍結乾燥物容器の使用によって解決される。好ましい実施形態は、従属請求項の主題である。
【0008】
1つの態様では、本発明は、凍結乾燥物容器であって、コンパートメントと、コンパートメントを限定する壁と、コンパートメント内側に配された凍結乾燥物とを備える、凍結乾燥物容器である。壁の少なくとも一部分は半透過性であり、壁を通り抜けてコンパートメントから出る一方向の蒸気透過を可能し、壁を通り抜けてコンパートメントに入る反対方向の蒸気透過を防止する。
【0009】
本発明の観点からの凍結乾燥は、基材を凍結し、圧力を低下させ、次いで昇華および脱離によって氷を除去することを伴う低温脱水プロセスである。凍結乾燥の結果得られるのが、凍結乾燥物である。凍結乾燥はまた、フリーズドライとも呼ばれる。凍結乾燥は、凍結乾燥させた粉末、微粒子を生み出し得るバルクフリーズドライ、または噴霧乾燥をカバーすることができる。
【0010】
凍結乾燥物は、たとえば、飲む、食べるなどによって人が消費することを意図した栄養学的または食事療法的物質とすることができる。これはまた、分析物質または化学プロセスにおいて使用される物質とすることもできる。しかし、好ましくは、凍結乾燥物は、凍結乾燥された薬物製剤、特に、モノクローナル抗体、抗体薬物複合体、抗体断片、ロックド核酸(LNA)、遺伝子ベクター、ウィルス様粒子などの生物学的化合物を含むことができる極めて効能がある薬物である。有利には、凍結乾燥物は、約3%未満の水分範囲、すなわち約0.05未満の水分活性を有する。
【0011】
本明細書で使用する用語「薬物」は、一般的には有効活性成分(API)とも呼ばれる治療的活性剤、ならびに複数のそのような治療的活性物質の組み合わせに関する。この用語はまた、患者に液体形態で投与する必要がある、たとえば造影剤(たとえばMRI造影剤)、トレーサ(たとえばPETトレーサ)、およびホルモンのような診断剤またはイメージング剤を包含する。
【0012】
本明細書で使用する用語「薬物製剤」は、上記で定義したような単一の薬物、または混合もしくは製剤された複数のそのような薬物に関する。たとえば、薬物以外に、薬物製剤は、賦形剤および/または他の補助的成分をさらに含んでもよい。乾燥薬物製剤である場合、凍結乾燥物は、固体、半固体、または粉末状の薬物製剤とすることができる。
【0013】
本明細書で使用する用語「薬物物質」は、患者への投与に適した形態の上記で定義したような薬物製剤に関する。それにより、薬物物質は、純粋な薬物製剤、または投与可能な形態に再構成され、希釈され、もしくは溶解された薬物製剤とすることができる。本発明における観点からの特に好ましい薬物物質は、溶液、特に、経口、非経口、くも膜下腔内、または眼科的な投与、注射、または点滴のための溶液である。
【0014】
本明細書で使用する用語「薬物製品」は、薬物物質または複数の薬物物質を含む完成した最終製品に関する。特に、薬物製品は、投与に適切な投薬量および/または適切な形態で薬物物質を有する、すぐ使用できる製品であってもよい。たとえば、薬物製品は、可撓性容器などの取扱用または保管用の装置を含んでもよい。
【0015】
薬物製剤に関連して使用する用語「効能性」は、所与の強度の効果を生み出すために必要とされる量に関して表される薬物活性の尺度とすることができる。したがって、「高い効能性」、「極めて効能がある」、または類似のものは、比較的少ない量または投薬量で活性化する製剤または物質に関し得る。換言すれば、極めて効能がある薬物製剤は、比較的低い濃度で所与の応答を引き起こすことができ、その一方で低い効能性の薬物製剤は、より高い濃度でしか同じ応答を引き起こすことができない。効能性は、薬物製剤の親和性と効き目の両方に依存し得る。それにより、比較的少ない投薬のバリエーションまたは比較的小さい汚染が比較的効果的となり得るため、そのような薬物製剤または物質は、特に問題となる可能性がある。
【0016】
数量では、極めて効能がある薬物製剤は、人の体内で体重1キログラム(kg)あたり約15マイクログラム(μg)以下で生物学的活性を有する薬物製剤として定義することができる。これは、人の体内における約1ミリグラム(mg)以下の治療的用量に等しい。極めて効能がある薬物製剤は、したがって、1.5μg/d以下の1日あたりの吸入の暴露限界(Acceptable Daily Exposure)(ADE)値を有し、0.15μg/m3の暴露限界指針値(Indicative Occupational Exposure Limit)となる薬物として定義することができる。特に、極めて効能がある薬物製剤は、クラス3Bの薬物などとすることができる。点滴によって投与される極めて効能がある薬物製剤と共に使用される場合、本発明による方法は、特に有益となり得る。
【0017】
本発明に関連する用語「コンパートメント」は、凍結乾燥物を中に配置するか、または保管することができる任意の適切な内部に関する。これは、凍結乾燥物を湿気、機械的応力、および汚染から保護するように密封して閉じられるか、または少なくともそのようにすることができる。コンパートメントは、容器の軟質、可撓性、弾性または剛性の構造によって形成することができる。
【0018】
コンパートメントを形成する構造に関連する用語「壁」は、コンパートメントを形成するのに適した任意の軟質、硬性、可撓性、または剛性の構造に関し得る。これは、単一構造または複数の異なる部分の複合物とすることができる。壁は、半透過性材料で作製されることによって、半透過性材料のセクションを有することによって、または類似の構造によって半透過性であることができる。
【0019】
蒸気、特に水蒸気に少なくとも部分的に半透過性となる壁を提供することにより、フリーズドライによる凍結乾燥物の最終的生成を、凍結乾燥物が供給され最終的には共に投与に使用される容器の内側で実行できることを達成することができる。より詳細には、凍結乾燥される元の薬物製剤を容器の内側に配置することができ、容器はその後閉じられ、次いで凍結乾燥を誘発する状態にさらされる。凍結乾燥中、水または他の蒸気は、壁を通り抜けて容器から逃げることができる。それにより、極めて効率的で高速の凍結乾燥を達成するために、壁の大部分が半透過性であることが有益となり得る。
【0020】
コンパートメント内側での凍結乾燥を可能にすることにより、本発明による容器は、凍結乾燥物の準備およびその投与に係わるステップの数および複雑性を低減することを達成する。さらに、凍結乾燥物に暴露するリスクを低減することによって安全性を高めることができ、それにより、高品質の凍結乾燥物を効率的に達成することができる。
【0021】
さらに、壁は、内側から外側への蒸気に対してのみに透過性であり、外側から内側への蒸気にはそうではないため、コンパートメント内側の凍結乾燥物を良好に保護することができる。これにより、凍結乾燥物をその投与まで安全に保管し、保存することが可能になる。所望の場合、壁は、コンパートメント内側での凍結乾燥物の無菌保存を可能にする。
【0022】
さらに、容器はまた、介護者または臨床医が高い効能の薬物を準備する必要がある場合に保護されることを可能にする。暴露の所望の低減を容易に達成することができ、保護のために払われる多大な労力を防止するか、または少なくとも低減することができる。したがって、本発明による容器により、凍結乾燥から開始して投与で終了する凍結乾燥物の効率的なライフサイクルを提供することが、可能になる。
【0023】
好ましくは、容器の壁は、一方向では蒸気透過性であり、他方向では蒸気密封性である半透過性膜を備える。半透過性膜は、さまざまな異なる特質を有することができる。これは、穿孔可能、伝熱性、UV密封性、水蒸気不透過性/選択的不透過性であることができ、またはこれらの複数または他の特質と組み合わせることができる。そのような膜は、壁の半透過性を達成することを効率的に可能にする。さらに、コンパートメント内側の凍結乾燥物を効率的に安全に投与することができる。たとえば、投与前に凍結乾燥物を溶解するための液体をコンパートメント内に提供するために、膜を穿孔することができる。さらに、この膜を使用して凍結乾燥物容器を濾過することができ、その結果、微粒子が無い純粋な液体または溶液を投与することができる。
【0024】
好ましくは、壁は、半透過性膜を広げおよび/または保持するフレーム構造を含む。そのようなフレーム構造および膜の組み合わせにより、凍結乾燥物およびその意図する用途または投与に従って適応され得る所定の形状で、容器を提供することが可能になる。特に、フレーム構造は、特定の安定性を与えることを実現することができ、膜は、半透過性の機能を提供することができる。
【0025】
好ましい実施形態では、凍結乾燥物容器は、外側収納部と、外側収納部の内側に配置された内側収納部とを備え、壁は、内側収納部の一部分である。外側収納部および内側収納部は、たとえば本質的に円筒状であることができる。特に、内側収納部は、外側収納部の直径より十分に小さい直径を有することができ、それにより、内側収納部と外側収納部との間に、適切な空間または容積部が提供される。
【0026】
互いの内側に配置された2つの収納部を有し、内側収納部内に壁を配することにより、壁の比較的大部分を半透過性にし、いずれにしても、凍結乾燥物を保護する比較的頑強な容器を有することが可能になる。そのような大きな半透過性領域により、効率的な凍結乾燥が可能になる。またこれにより、凍結乾燥物をコンパートメント内側で溶解することによって作り出された溶液を効率的に濾過することも可能になる。
【0027】
より詳細には、内側収納部は、半透過性膜を広げるフレーム構造を有することができる。それにより、フレーム構造は、好ましくは平坦な上側リング部分と、好ましくは平坦な下側リング部分と、上側リング部分と下側リング部分との間を延びる複数のバーとによって形成することができる。半透過性膜は、上側および下側リング部分とバーとによって作り出された窓内に広げられる。
【0028】
内側収納部の壁内で使用される半透過性膜は、蒸気を内側収納部の内側から外側に案内し、内側収納部の内側への蒸気の透過を制限することができ、またはこの膜は、水蒸気が外側バリアから内側収納部の内側に透過するが、内側収納部からその外側に向かわないことを可能にするように逆行して取り付けることができる。
【0029】
内側収納部および最終的には外側収納部も、たとえば不可逆的に収納部に連結された蓋の下方に収容することができる。内側収納ユニットの一部であってもよい蓋は、こうして、内側収納部を外側収納部に接合してもよい。内側収納部を覆う蓋の中心には、カップラを取り入れることができ、このカップラは、中空であり、それぞれ内側収納部内へのまたはそこからの物質の移送を可能にする。このカップラは、蓋の一部とすることができ、取り外し可能な密封性キャップによって閉じられるように設計することができる。この密封性キャップは、容器内側の凍結乾燥物を環境障害から保護し、または容器の外側に凍結乾燥物が漏れないように保護する。そのようなカップラは、内側収納部に連結された蓋上に見出すことができるだけでなく、外側収納部の底部の容器の他方の端部上に見出してもよい。これらのカップラは、針またはソーンによって穿孔される必要があるダイアフラムまたは隔膜としてバリアを収容することができる。さらに、制限バリア無しで物質移送を容易にするために、カップラ通路も同様に中空であることができる。
【0030】
内側収納部の蓋上のカップラは、可撓性容器に、またはポーチ、バッグ、ボトルもしくは他の容器に接合されるように意図することができる。外側収納部にある同一のカップラは、容器を空の他の容器、ポーチ、バッグ、またはボトルに取り付けて、準備されたばかりの、または移送する必要がある溶解した凍結乾燥物、溶液、または薬物物質を収集するために使用することができる。内側収納部の蓋上のカップラおよび/または外側収納部にあるカップラは、容器、ポーチ、バッグ、またはボトルに可撓性チューブによって連結することができる。この可撓性チューブは、容器の蓋または底部それぞれ上のカップラに対するそれぞれの対応部となる、別の同一のカップラを提供することができる。チューブを介したそのような連結により、可撓性容器、ポーチ、バッグ、ボトルまたは他の容器から、製品を含む容器へのまたはその逆の形の保護された移送を確実にすることができる。
【0031】
比較的繊細なフレーム構造および膜を備えてもよい内側収納部を取り囲む外側収納部は、収容された凍結乾燥物を、水蒸気もしくは酸素、UV放射の透過からの変質から、そして過剰な機械的応力からも保護する。
【0032】
内側収納部および外側収納部を結合させるために、いくつかの技術を適用することができる。たとえば、ねじカップリング、推力カップリング、スナップもしくは圧入、接着結合、超音波溶接、超音波ステーキング、電磁溶接、または気密で強力な結合を達成するが品質劣化を回避する類似の技術。
【0033】
より詳細には、容器の好ましい実施形態の変形形態では、凍結乾燥物のコンパートメントは、外側収納部と内側収納部との間に配される。そこでは、壁の少なくとも一部は、壁を通り抜けてコンパートメントから内側収納部への一方向の蒸気透過を可能にし、壁を通り抜けて内側収納部からコンパートメントへの反対方向の蒸気透過を防止するように配向される。
【0034】
そのような変形形態では、コンパートメントは、外側収納部と内側収納部との間に形成されたスペースに配置される。それにより、凍結乾燥物は、内側フレームが外側収納部内に差し込まれるか、または配置される前に、外側収納部を所望の物質で充填することによって充填および/または生成することができる。充填後、特に過剰な液体を除去するための凍結乾燥を含む、製品のさらなる最適化または製品保護ステップを行うことができる。また、容器内側を不活性ガスでフラッシングすることができ、望ましくないガスを除去するために容器を排気することができ、または組み込まれた物質もしくは薬物の安定性および効き目を長くし確実にする他の技術を適用することができる。凍結乾燥およびフラッシングまたは排気の最適化は、外側収納部および内側収納部が互いにすでに関連付けられているときに行うように意図される。それにより、壁は、内側収納部を通り抜けて外側収納部を出る水蒸気の透過を可能にする。内側収納部に上記で言及したフレーム構造が設けられる場合、この変形形態では、膜は、有利には、内側収納部周りに配される。このようにして、膜のみが、凍結乾燥物または凍結乾燥物を生成もしくは再構成するために使用される任意の成分に接触し、フレーム構造のいずれの部分も接触しないことを達成することができる。
【0035】
容器の好ましい実施形態の別の変形形態では、コンパートメントは、内側収納部内に配され、そこでは、壁の少なくとも一部分は、一方向の蒸気透過を可能にするように配向される。蒸気は、壁を通り抜けて内側コンパートメントから外側収納部と内側収納部との間のスペースに流れ、壁を通り抜けて外側収納部と内側収納部との間のスペースから内側コンパートメントに向かう反対方向の蒸気透過を防止するように意図される。
【0036】
それにより、凍結乾燥物は、内側収納部および外側収納部を合わせる前に溶液によって内側収納部を充填することにより、内側収納部の内側に充填および/または生成することができる。充填後、少なくとも過剰な液体を除去するための凍結乾燥を含む、上記で言及した最適化を実行することができる。最適化は、内側収納部が外側収納部内にあるとき、または外側収納部の外側に配置されているときに実行することができる。内側収納部には上記で言及したフレーム構造が設けられ、この他の変形形態では、膜は、有利には、フレーム構造を覆って内側収納部内に配される。このようにして、膜のみが、凍結乾燥物または凍結乾燥物を生成もしくは再構成するために使用される任意の成分に接触し、フレーム構造のいずれの部分も接触しないことを達成することができる。
【0037】
容器の好ましい実施形態のすべての変形形態では、外側収納部または内側収納部は、好ましくは円錐状の横方向領域を有する。それにより、用語「横方向領域」は、外側または内側の収納部を取り囲む外側または内側の収納部の表面または領域に関することができる。これは、容器の最終外側領域または表面とすることができる。
【0038】
そのような円錐状領域を有することにより、複数の収納部を隣り合わせに配することを達成することができ、この場合にも、これらの収納部間にはいくらかの自由スペースが存在する。より詳細には、コンパートメントが外側収納部と内側収納部との間にある変形形態では、外側収納部は、有利には、円錐状の横方向領域を有する。コンパートメントが内側収納部の内側にある他の変形形態では、内側収納部は、有利には、円錐状の横方向領域を有する。これにより、収納部周りに熱および/または冷気を効率的に循環させ、たとえば凍結乾燥棚上に置かれたときに、互いに隣にある容器の壁から昇華した水蒸気を効率的に除去することが可能になる。このようにして、特に有益な温度の伝達および蒸気の除去を達成することができ、これによって容器内側の凍結乾燥の効率性を高めることが可能になる。特に、比較的多くの数の容器を並行して準備することが望まれる工業レベルでは、これは極めて有益となり得る。
【0039】
別の好ましい実施形態では、凍結乾燥物容器は、孔を有する剛性本体を備え、この孔は、この本体の一方の端側において開き、この本体または容器本体の一方の端側から容器本体の他方の端側に延び、孔はコンパートメントを形成し、半透過性膜は、容器本体に取り付けられ、それによって容器本体の一方の端側において孔を閉じる。孔はまた、本体の他方の端側にある第2の開口部内で終端することができる。そのような実施形態では、孔は貫通孔である。あるいは、孔は、これが止まり孔であるように他方の端側において閉じることができる。
【0040】
そのような容器は、特に頑強でそれと同時に簡単な構造を提供することを可能にすることができる。コンパートメントを形成する内側を膜で覆うことにより、効率的な凍結乾燥を容器内側で実行することができる。また、孔を覆うそのような半透過性膜は、凍結乾燥物をコンパートメント内側で溶解することによって作り出された溶液を濾過するために、効率的に使用することができる。
【0041】
剛性本体または容器本体は、任意の適切なプラスチックまたは他の材料から作製することができる。これは、成形同時充填(blow fill and seal)、深絞り成形、または他のプロセスで製造することができる。より詳細には、そのような容器は、形成された深絞り型の上部に円筒孔をパンチ加工し、その後この孔を覆い、コンパートメントからの水の蒸発を容易にし、成形型の内側を水の透過から保護する半透過性膜または多孔性ホイルに溶接することにより、製造することができる。
【0042】
容器または容器本体は、さらに、深絞り成形された容器本体を逆さまに向け、それによってパンチ加工された開口部が地面に向けられ、開いた底端が上向きになるようにすることによって製造することができる。次いで半透過性膜を、本体または容器本体の内側のパンチ加工された孔の下方に取り付けることができる。パンチ加工された開口部に膜を置き溶接することに続き、本体または容器本体は、所望の原料物質によって充填される。これは、本体の底部または底側の開口部が、これを上向きにしながら充填に使用されることを意味する。過剰な液体を除去するための凍結乾燥またはフリーズドライは、容器が閉じられる前か、または特にその後に実行することができる。
【0043】
有利には、剛性本体または容器本体は、本質的には円筒状または中空円筒状である。用語「本質的に円筒状」はまた、幾何学的円筒形からわずかに逸脱する形態もカバーする。特に、ある程度円錐状である円筒形が、依然として本質的に円筒状であってもよい。たとえば、最大約5°、約3°、または約2°まで傾けられた側壁を有する円錐状円筒形は、依然として本質的に円筒状であることができる。また管状カートリッジの側壁は、幾何学的なまっすぐな形状からある程度異なっていてもよい。管状カートリッジは、中空円筒形として取り入れることができ、この場合開放端部は、円筒形の一方の端部に配置されている。
【0044】
孔が、本体または容器本体の他方の端側にも開口部を有する貫通孔である場合、他方の端側にも半透過性膜を設けることができる。しかし、好ましくは、凍結乾燥物容器は、高い熱伝導率を有する不透過性ホイルを備え、このホイルは、容器または容器本体に取り付けられ、それによって本体または容器本体の他方の端側において貫通孔を閉じる。用語「高い熱伝導率」は、コンパートメント内への効率的な熱または冷気伝達を可能にする不透過性ホイルの特性に関することができる。特に、不透過性ホイルの熱伝導率は、本体の熱伝導率と比較して高くなり得る。
【0045】
より詳細には、容器または容器本体の製造中、底端または他の端側にある開口部は、不透過性ホイルによって閉じられてもよい。ホイルは、穿孔可能または剥離可能なホイルとすることができる。取り付けられた剥離可能なホイルは、別の容器内への凍結乾燥物の移送またはその直接的再構成が意図されるまで、容器内に凍結乾燥物を保管することを可能にする。それに加えて、ホイルは、剥離することによって容器から除去することができる。あるいは、剥離可能なホイルは、たとえば容器に取り付けられ容器内に液体を強制する針セットによって、凍結乾燥物の溶解を容易にすることができる。
【0046】
溶解した凍結乾燥物の取り出しは、半透過性膜が設けられた端側で実行することができる。したがって、コネクタを取り付けて、準備されたばかりの溶液を収集し、その輸送の準備をする空の容器との連携を容易にすることができる。特に、溶解した溶液を半透過性膜を介して濾過して、たとえばコレクタ容器内に移送されたときに非経口用途で投与可能である、微粒子が無い溶液を達成することができる。
【0047】
好ましくは、本体または容器本体は、円錐状の横方向領域を有する。本体または容器本体の横方向領域は、本体または容器本体の外側表面とすることができる。円錐状の横方向領域は、本体の一部分上だけに取り入れることもでき、それによって本体は、まっすぐなセクションおよび円錐状セクションを有する。上記で言及したように、横方向領域は、円錐状である、すなわち完全に広がるか、または広がったセクションを有する場合、その主要外観は依然として円筒形とすることができるため、依然として本質的に円筒状とすることができる。
【0048】
使用において、より小さい外径を有する本体の端側は、上側の端側とすることができる。より大きい外径を有する本体の端側は、下側の端側とすることができる。下側の端側を下にして本体を配置することにより、本体は、比較的安定して立つことができる。
【0049】
上記で説明したのと同様に、そのような円錐状領域により、複数の容器または容器本体を隣り合わせに配することを達成することができ、これらの容器間には、いくらかの自由スペースが依然として存在する。これにより、容器周りの熱および/または冷気の効率的な循環が可能になる。このようにして、特に高温度の伝達を達成することができ、それによって容器内側の凍結乾燥の効率を高めることが可能になる。特に、比較的多くの容器を並行して準備することが望まれる工業レベルでは、これは有益となり得る。
【0050】
さらに別の好ましい実施形態では、凍結乾燥物容器は、パッド様構造であり、この場合コンパートメントは、2つのシート間に形成され、2つのシートの少なくとも一方は壁であり、すなわち少なくとも部分的に半透過性である。パッド様構造は、ポーチまたはクッション形状の要素とすることができ、この要素は、コンパートメントが中に形成される内部を形成する2つのシートを有する。パッド様構造を形成するために、2つのシートをその縁に沿って、たとえばその縁に沿ってそれぞれのシール継ぎ目を形成することによって連結することができる。2つのシートは、2つの別個のまたは分離可能なユニットならびに2つの隣り合うシートを形成するように折り畳まれた1つのユニットとすることができる。2つのシートは、任意の適切なプラスチック、金属、複合物、または可撓性であることが有利である他の材料から作製することができる。有利には、パッド様構造は、成形同時充填プロセスで作製される。パッド様構造はまた、ブリスタホイルの製造のプロセスに類似する深絞り成形によって生成することもできる。切欠部は、次いで充填され、凍結され、その後半透過性膜によってシールされるか、または充填され、半透過性ホイルなどによってシールされ、次いでフリーズドライヤに移送されることが可能である。
【0051】
そのようなパッド様構造により、比較的大きい半透過性領域を有する比較的簡単な構造部を提供することが可能になる。このようにして、コンパートメント内側の効率的な凍結乾燥を実行することができる。また凍結乾燥物を、投与前に準備されるときに効率的に再構成し、最終的に壁の半透過性部分を通して濾過することができる。たとえば、希釈剤をコンパートメント内に提供するために、シートの一方を穿孔するか、または破ることができる。
【0052】
別の態様では、本発明は、上記で説明した凍結乾燥物と、凍結乾燥物容器内に配置された凍結乾燥した薬物製剤と、再構成液体が充填された第1のコンパートメントおよびポートを有する可撓性容器とを備える点滴キットである。
【0053】
再構成液体は、凍結乾燥した薬物製剤を再構成するのに適した任意の液体とすることができる。これは、特に塩化ナトリウム(NaCl)溶液などの生理溶液、しょ糖溶液、水性ぶどう糖、または任意の他の類似の溶液などの希釈剤とすることができる。NaCl溶液は、たとえば0.9%のNaCl溶液とすることができる。しょ糖溶液は、たとえば5%しょ糖溶液とすることができる。水性ぶどう糖は、たとえば10%のぶどう糖溶液とすることができる。
【0054】
材料または容器に関連して使用する用語「可撓性」は、形状安定性ではない比較的軟質の材料に関することができる。特に、そのような材料は通常、異なって配置されるか、または配向されたときにその形状を保たない。典型的な可撓性材料は、ホイル、特にプラスチックホイルまたは密封メッシュなどのホイル様構造である。
【0055】
可撓性容器は、次のように製造することができる。可撓性容器の第1のコンパートメントが、可撓性シート様材料から形成される。再構成液体が可撓性容器の第1のコンパートメント内に充填され、第1のコンパートメントはシールされる。可撓性容器は、特にサイドフィルアンドシール(side fill and seal)プロセスまたは成形同時充填プロセスにおいて製造することができる。
【0056】
可撓性容器を作製することができる材料に関連して使用する用語「シート様」は、長さおよび幅よりかなり小さい厚さを有する平坦で典型的には本質的に平らな基材に関する。特に、シート様材料は、ホイルまたは類似の構造とすることができる。
【0057】
シート様材料は、シート様の単一のプラスチック、複合材、プラスチック混合物または複層プラスチックとすることができる。その材料の表面特性は、抽出性を改善し、ガス透過および添加物の浸出を低減または排除し、および/またはシーリングを簡易化するように変えることができる。シート様材料は、非経口または経口溶液との適合など、意図する目的に適合可能であること、化学薬品が可撓性容器内に保管されたときに不反応であること、および/または薬物物質に適用可能な必要とされるガイドライン、たとえばアメリカ食品医薬品局(FDA)のガイドラインまたは欧州医薬品庁(EMA)のガイドラインに合わせられることが必要である。
【0058】
本明細書において使用する用語「シーリング」は、2つ以上の要素、または要素の部分同士を互いに取り付けて、取り付けられた部分をガス、液体、または別の流体が通過できないようにするプロセスまたはステップに関する。可撓性のシート様材料がホイル、特にプラスチックホイルである実施形態では、ホイルの特定の場所に所定の温度および/または圧力を適用することによって、シーリングを実現することができる。それにより、ホイルを接着剤でコーティングすることができ、この接着剤は、温度および/または圧力を適用することによってその接着特性を活性化する。あるいはまたはさらに、シーリングは、超音波溶接、高周波溶接およびまたは無線周波溶接を伴うことができる。特に、シーリングは、シール継ぎ目を作り出すことを伴うことができる。シール継ぎ目は、堅いシールおよび/または脆弱シールとして取り入れることができる。
【0059】
可撓性容器の第1のコンパートメントは、約20mlから約2000mlの範囲内の体積を有するようにサイズ設定することができる。
【0060】
可撓性容器は、2つの同一のシート様材料、または2つの異なるシート様材料からなることができる。たとえば、一方のシート様材料は透明であってもよく、他方のものは、水蒸気または酸素の侵入を低減するためにアルミめっきされてもよい。
【0061】
ポートは、キットの意図する適用に適切な任意の種類のものとすることができる。たとえば、ポートは、液体が意図せずにこぼれることからの保護を確実にしながら液体の引き出しを可能にする、長い円筒状開口部またはセプタムであるか、またはこれを含むことができる。これらの引き出しポートは通常、点滴バッグ、セプタムボトル、または栄養剤の圧迫ポーチに見出される。ポートは、可撓性容器の開放層またはシート間にこれらをシールする前に置くことができ、または層またはシートが互いにシールされた後に取り付けることができる。ポートの近位または可撓性容器の反対側の境界部に、他のポートを取り付けることができる。また、ポートは、上部から底部に向けられた垂直ラインまたは継ぎ目シールの縁内に置くこともできる。可撓性容器を形成する可撓性シートの横方向縁にポートを取り付けることを容易にするために、シート内の穿孔が必要とされる可能性があり、ここにポートを、可撓性容器の最終溶接が行われる前に置くことができる。可撓性容器内のポート/複数のポートは、可撓性容器の内容物の投与または提供に使用される他の容器または装置との連結性を管理することができる。
【0062】
このポートに加えて、他のポートをポートの近位にまたは可撓性容器の反対側の境界部に取り付けることができる。またポートは、上部から底部に向けられた垂直ラインまたは継ぎ目シールの縁内に置くこともできる。可撓性容器を形成する可撓性シートの横方向縁にポートを取り付けることを容易にするために、シート内の穿孔が必要とされる可能性があり、ここにポートを、容器の最終溶接が行われる前に置くことができる。可撓性容器内のポート/複数のポートは、可撓性容器の内容物の投与または提供に使用される他の容器または装置との連結性を管理することができる。
【0063】
キットは、点滴による薬物製剤の投与に必要とされるすべての構成要素を有する、点滴システムなどのすぐ使用できるシステムを提供することを可能にする。特に、可撓性容器は、点滴バッグとすることができる。
【0064】
また、1つの単一の可撓性容器と一緒にキット内に複数の凍結乾燥物容器を提供することも可能である。このようにして、凍結乾燥物の適切な量を溶解することによって投薬量を調整するオプションを施術者に与えることができる。また、一緒に保管できないが並行して投与または施与する必要がある薬物物質の組み合わせの投与を達成することができる。さらに、プロセスの段階を追っての起動を実現することができる。複数の凍結乾燥物容器を一緒に連結するために、たとえばアダプタまたは中間部材を凍結乾燥物容器に設けることができる。次いで最終組み合わせを可撓性容器に同様に連結することができる。
【0065】
好ましい実施形態では、可撓性容器は、脆弱シールによって第1のコンパートメントから分離された第2のコンパートメントを備え、凍結乾燥物容器は、可撓性容器の第2のコンパートメント内に配される。
【0066】
そのような複数のコンパートメントは、上記で言及したステップに加えて、可撓性のシート様材料から容器の第2のコンパートメントを形成し、凍結乾燥物容器を第2のコンパートメント内に充填することによって製造することができる。第1のコンパートメントがたとえば手動で圧縮されたときに開くように、脆弱シールを取り入れることができる。
【0067】
任意の数のコンパートメントを、容器内のいずれの場所にも配置することができる。たとえば、特に効率的な充填を可能にするために、コンパートメントは、一方の側からしか充填できないように、容器の一方の側縁までの全範囲とすることができる。または、特定の起動順序などの容器の安全適用を達成するために、コンパートメントを容器内のその対向する側縁などに分散させることができる。
【0068】
用語「脆弱シール」は、脆弱シールに隣接するコンパートメントを圧縮する際に離し、破断し、または破くことができる可撓性シール様材料の2つの対向する可撓性シートの連結に関する。脆弱シールはまた、剥離可能シール、非恒久的な弱いシール、または破断可能なシールと呼ぶこともできる。
【0069】
第1のコンパートメントと同様に、第2のコンパートメントもまた、約20mlから約2000mlの範囲の体積を有することができる。
【0070】
詳細には、第1および第2のコンパートメントを形成することは、2つのホイルまたはシートを互いに配置し、次いでホイルの縁に沿ってまたは任意の他の適切な部分において2つのホイルをシールすることによって取り入れることができる。あるいはまたはさらに、1つの単一ホイルまたはシートを適切に折り畳み、次いでホイルの縁に沿って、または任意の他の適切な場所においてシールすることができる。最終的に容器は、点滴バッグ、ポーチまたは類似のものなどのバッグまたはバッグ様装置となることができる。
【0071】
そのような複数コンパートメントの可撓性容器により、あらゆる汚染または薬物物質の損失のリスクを有さずに投与前に便利にかつ素早く準備することができる、すぐに使用できる閉システムを提供することが可能になる。特に、投与前に、第1のコンパートメントを手動で圧縮することにより、第1のコンパートメントと第2のコンパートメントとの間のシールを開くことができる。次いで、液体または希釈剤を凍結乾燥物容器内に提供することができる。この目的のために、凍結乾燥物容器を、たとえばこれを手動で圧縮することによって破断するか、または破くことができる。または、凍結乾燥物容器を開く、切断する、穿孔する、または破断するのを可能にする構造を、第2のコンパートメント内に設けることができる。または、脆弱シールを開いたときに凍結乾燥物容器も開かれるように、凍結乾燥物容器を脆弱シールに結合させることができる。
【0072】
他の好ましい実施形態では、凍結乾燥物容器は、可撓性容器のポート内に取り入れられる。このようにして、ポートから液体を提供した際にこの液体が凍結乾燥物を溶解し、たとえば点滴によって投与される溶液を形成することを達成することができる。
【0073】
さらに別の好ましい実施形態では、ポートは第1の装着構造を有し、凍結乾燥物容器は対応する第2の装着構造を有し、それによって凍結乾燥物容器は、凍結乾燥物容器を通して液体を排出するために可撓性容器に装着可能となる。ここでも、これにより、ポートから外に液体を提供することが可能になり、それによって液体は、凍結乾燥物を溶解し、たとえば点滴によって投与される溶液を形成する。
【0074】
さらに他の実施形態では、本発明は、上記で説明したような凍結乾燥物容器を準備する方法である。方法は、(i)容器のコンパートメントを限定する壁によって限定されたコンパートメントの内側に湿性物質を配置するステップであって、壁の少なくとも一部分は、半透過性であり、壁を通り抜けてコンパートメントの内側から出る一方向の蒸気透過を可能にし、壁を通り抜けてコンパートメントの内側に入る反対方向の蒸気透過を防止する、湿性物質を配置するステップと、(ii)容器のコンパートメントを閉じるステップと、(iii)蒸気が壁を通り抜けて透過してコンパートメントの内側から出るようにコンパートメント内の湿性物質を凍結乾燥するステップとを含む。
【0075】
湿性物質は、物質の溶液、半固体、ペースト状物質、または固体物質とすることができる。特に、液体溶液をコンパートメント内に充填できるだけでなく、シロップ、顆粒、マイクロタブレット、噴霧フリーズドライ粉末、事前に凍結乾燥された流動性粒子(free flowing pre-lyophilized spheres)、事前に凍結乾燥された活性乾燥粉末(active pre-lyophilized dry powder)、または異なって製造された物質の意味で事前に処理された材料を含むことも可能である。
【0076】
そのような方法により、工業レベルでも凍結乾燥物容器を効率的に準備することが可能になる。さらに、そのような方法を栄養学、薬学、および他のものなどのさまざまな分野に適用することができる。
【0077】
さらに他の態様では、本発明は、上記で説明したような凍結乾燥物容器の使用である。この使用は、凍結乾燥物容器の凍結乾燥物を凍結乾燥物容器のコンパートメント内において液体中で再構成するステップと、再構成された凍結乾燥物を含む液体溶液をコンパートメントの壁を通して濾過するステップとを含む。
【0078】
そのような容器内の再構成により、投与される溶液の特に保護された安全な準備が可能になる。準備された溶液を壁、特にその半透過性部分を通して濾過することにより、たとえば点滴による投与などの医療用途において有益となるような、クリーンで微粒子が無い溶液を提供することが可能になる。
【0079】
言及したように、本発明はすべての態様において、栄養学、化学、および診断学の分野において使用されるように設計されているが、主に医療または製薬用途を意図している。
【0080】
本発明による凍結乾燥物容器、本発明によるキット、本発明による凍結乾燥物容器を準備する方法、および本発明による使用は、例示的な実施形態によって、添付の図を参照して本明細書の以下でより詳細に説明される。
【図面の簡単な説明】
【0081】
図1】本発明による凍結乾燥物容器の第1の実施形態を有する本発明によるキットの第1の実施形態の斜視図である。
図2】本発明による凍結乾燥物容器の第2の実施形態を有する本発明によるキットの第2の実施形態の斜視図である。
図3】本発明による凍結乾燥物容器の第3の実施形態を有する本発明によるキットの第3の実施形態の斜視図である。
図4】本発明による凍結乾燥物容器の第4の実施形態を有する本発明によるキットの第4の実施形態の斜視図である。
図5】本発明による凍結乾燥物容器の第5の実施形態を有する本発明によるキットの第5の実施形態のいくつかの構成要素の斜視図である。
図6】本発明による凍結乾燥物容器の第6の実施形態を有する本発明によるキットの第6の実施形態のいくつかの構成要素の分解斜視図である。
図7】凍結乾燥物が再構成され、可撓性容器の1つのコンパートメントから別のものに移送される間の図6のキットを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0082】
以下の説明では、特定の用語は、便宜上使用され、本発明を限定するように意図しない。用語「右」、「左」、「上」、「下」、「下方」、および「上方」は、図における方向を指す。この用語法は、明示的に言及した用語およびその派生物ならびに類似の意味を有する用語を含む。また、「下」、「下方」、「下側」、「上方」、「上側」、「近位」、「遠位」などの空間的相対用語は、1つの要素または特徴と別の要素または特徴との関係を図に示すように説明するために使用されてもよい。これらの空間的相対用語は、図に示す位置および配向に加えて、使用または作動における装置の異なる位置および配向を包含するように意図する。たとえば、図の装置が逆さまになる場合、他の要素または特徴の「下方」または「下」と説明した要素はそのため、他の要素または特徴の「上方」または「上」となる。したがって、例示的な用語「下方」は、上方および下方の両方の位置および配向を包含することができる。装置は別の形で配向されてもよく(90°または他の配向に回転される)、本明細書において使用する空間的相対記述子は、それに従って解釈されてもよい。同様に、さまざまな軸線に沿ってその周りを移動するという説明は、さまざまな特別な装置の位置および配向を含む。
【0083】
さまざまな態様および図示する実施形態の図および説明における反復を回避するために、多くの特徴が多くの態様および実施形態に共通であることを理解されたい。説明または図からの態様の省略は、その態様が、その態様を組み込む実施形態から欠失していることを示唆するものではない。そうではなく、その態様は、明確にし、冗長な説明を回避するために省略されていてもよい。この観点から、本説明の残りの部分に次のことが適用される:図を明確にするために、本説明の直接関連する部分において説明されない参照記号を図が含む場合、これは、前後の説明セクションに参照される。さらに、明快さのために、図において部材のすべての特徴に参照記号が付されない場合、これは、同じ部分を示す他の図に参照される。2つ以上の図の同様の番号は、同じまたは類似の要素を表す。
【0084】
図1は、点滴バッグ2の形態の可撓性容器と、本発明による凍結乾燥物容器3とを含む、本発明によるキット1の第1の実施形態を示す。点滴バッグ2は、液体希釈剤24を収容する第1のコンパートメント21を有する。第1のコンパートメント21の内側には、凍結乾燥物容器3が配置され、この凍結乾燥物容器は、極めて効能がある凍結乾燥された薬物製剤34を凍結乾燥物として収容する。可撓性容器2は、前部セクション内に、脆弱シール22によって第1のコンパートメントから分離された出口コンパートメント25を有する。コンパートメント21、25は、可撓性プラスチック材料の2つのシートで、その縁に沿った堅いシールおよび脆弱シール22を適切に設けることによって形成される。特に、第1のコンパートメント25は、シートの外縁の堅いシールおよび脆弱シール22によって形成される。出口コンパートメント25は、前部の堅いシールおよびその後端の脆弱シール22によって形成される。前部の堅いシールの中央に、出口コンパートメント25と流体連結するポート23が、装着される。ポート23は、静脈内投与のための構造または装置に連結されるために取り入れられる。
【0085】
凍結乾燥物容器3は、本質的に円筒状の剛性本体31を有し、この剛性本体を通り抜けて、軸方向貫通孔が延びる。底端において、貫通孔は、不透過性または密封ホイル33によって閉じられる。貫通孔の上側端部の辺りで、半透過性膜32が貫通孔を閉じる。こうして、ホイル33と膜32との間の貫通孔の内側にコンパートメントが形成され、このコンパートメント内に、凍結乾燥された薬物物質が配される。
【0086】
点滴バッグ2の使用において、ユーザは、凍結乾燥物容器3のコンパートメントを手動で開く。これは、たとえばホイル31を破断するまで押し込むことによって行うことができる。または、これは、容器3または可撓性容器2を圧迫し、それによって膜32とホイル33との間の距離の増加を達成し、膜32およびホイル33を容器3から剥離することによって行うことができる。次いで、希釈剤24がコンパートメントに流れ込み、薬物製剤34を溶解し、それによって薬物溶液が得られる。薬物製剤34の溶解は、薬物物質が揺れ運動にかかりにくい場合、ユーザが点滴バッグ1を揺らすことによって支援することができる。次いでユーザは、第1のコンパートメント21の内側の圧力が上昇するように第1のコンパートメント21を圧縮する。この圧力上昇により引き起こされて、脆弱シール22は破れ、それによって第1のコンパートメント21および出口コンパートメント25は、共通のコンパートメントを形成する。次いで点滴バッグ1は、ポート23を下にして支持体に吊り下げられ、静脈内装置がポート23に取り付けられる。それにより、点滴バッグ1は、単一のコンパートメントの点滴バッグに変えられ、当技術分野で知られているように適用することができる。
【0087】
図2では、点滴バッグ20の形態の可撓性容器と、本発明による凍結乾燥物容器30とを含む、本発明によるキット10の第2の実施形態が示される。点滴バッグ20は、液体希釈剤250を収容する第1のコンパートメント210と、凍結乾燥物として極めて効能がある凍結乾燥された薬物製剤350が中に配置される凍結乾燥物容器30を収容する、第2のコンパートメント220と、可撓性容器20の前部セクションの出口コンパートメント260とを有する。第1のコンパートメント210、第2のコンパートメント220、および出口コンパートメント260は、脆弱シール230によって互いから分離される。コンパートメント210、220、260は、可撓性プラスチック材料の2つのシートで、それらの縁に沿った堅いシールおよび脆弱シール230を適切に設けることによって形成される。前部の堅いシールの中央に、出口コンパートメント260と流体連結するポート240が、装着される。ポート240は、静脈内投与のための構造または装置に連結されるために取り入れられる。
【0088】
凍結乾燥物容器30は、本質的に円筒状の剛性本体310を有し、この剛性本体を通り抜けて、軸方向貫通孔が延びる。底端において、貫通孔は、不透過性または密封ホイル330によって閉じられる。上端において、貫通孔は、半透過性膜320によって閉じられる。こうして、ホイル330と膜320との間の貫通孔の内側にコンパートメントが形成され、このコンパートメント内に、凍結乾燥された薬物物質が配される。さらに、ソーン340が、第2のコンパートメントの内側の上側シートに配置される。
【0089】
キット10の使用において、ユーザは、ソーン340をホイル310に押し込むことによって、凍結乾燥物容器30のコンパートメントを手動で開く。次いでユーザは、点滴バッグ20の第1のコンパートメント210を手動で圧縮し、それにより、第1のコンパートメント210と第2のコンパートメント220との間の脆弱シールが開く。希釈剤250が第2のコンパートメント220に流れ込み、凍結乾燥物容器30のコンパートメントの内側で薬物製剤350を溶解し、それによって薬物溶液が得られる。薬物製剤350の溶解は、薬物物質が揺れ運動にかかりにくい場合、ユーザが点滴バッグ10を揺らすことによって支援することができる。次いでユーザは、第2のコンパートメント220を圧縮し、それによって右の脆弱シール230が破れ、第1のコンパートメント210、第2のコンパートメント220、および出口コンパートメント260は一緒になって、共通コンパートメントを形成する。次いで点滴バッグ10は、ポート240を下にして支持体上に吊り下げられ、静脈内装置がポート240に取り付けられる。それにより、点滴バッグ10は、単一のコンパートメントの点滴バッグに変えられ、当技術分野で知られているように適用することができる。
【0090】
図3は、点滴バッグ26の形態の可撓性容器と、本発明による凍結乾燥物容器36とを含む、本発明によるキット16の第3の実施形態を示す。点滴バッグ26は、液体希釈剤236を収容する第1のコンパートメント216を有する。第1のコンパートメント216は、可撓性プラスチック材料の2つのシールをその周辺縁でシールすることによって生成される。特に、堅いシール継ぎ目が、その縁に沿って確立される。
【0091】
可撓性容器26の前部セクションでは、凍結乾燥物容器36がレシーバプラグ226内に置かれ、このレシーバプラグ226は、第1のコンパートメント216と流体連結している。凍結乾燥物容器36は、円筒形状を有し、レシーバプラグ226に対応して寸法設定される。特に、凍結乾燥物容器36は、レシーバプラグ226内に適合するように寸法設定される。より詳細には、凍結乾燥物容器は、レシーバプラグ226内に分離バリア246近くまで一定の程度挿入される。レシーバプラグの底端において、レシーバプラグは、不透過性の剥離可能なホイル336によって閉じられる。ホイル336と先端が先細になったソーン316との間に、凍結乾燥コンパートメント246が形成され、この凍結乾燥コンパートメントは、凍結乾燥物として極めて効能がある凍結乾燥された薬物製剤326を収容する。
【0092】
点滴バッグ26の使用において、ユーザは、凍結乾燥物容器36をポート226に手動で押し込む。それにより、凍結乾燥物容器36のソーン316は膜246を破き、それによって希釈剤が、凍結乾燥物容器36のコンパートメント326に流入する。それにより、薬物製剤326は再構成され、薬物溶液が点滴バッグ26内側に生成される。溶液が完全に混合されたことを確実にした後、ポート256は静脈内装置に連結される。それにより、点滴バッグ26は、知られている単一コンパートメントの点滴バッグのように適用することができる。
【0093】
図4では、点滴バッグ27の形態の可撓性容器と、本発明による凍結乾燥物容器37とを含む、本発明によるキット17の第4の実施形態が示される。点滴バッグ27は、液体希釈剤237を収容する第1のコンパートメント217と、レシーバプラグ257を備えた第2のコンパートメント227とを有する。第1のコンパートメント217および第2のコンパートメント227は、脆弱シール267によって互いに分離される。そうでない場合、コンパートメント217、227は、可撓性プラスチック材料の2つのシートで、その縁に沿った堅いシールおよび脆弱シール267を適切に設けることによって形成される。中央には、第1のコンパートメント217にポート247が設けられ、このポートは、第1のコンパートメント217と選択的に流体連結している。ポート247は、静脈内投与のための構造または装置に連結されるように取り入れられる。
【0094】
使用において、凍結乾燥物容器37は、レシーバプラグ257内に差し込まれ、第2のコンパートメント227に向けて開かれる。この挿入により、凍結乾燥物容器37およびコンパートメント227は、これらの2つの連結を可能にする貫通孔を作り出す。次いで、ユーザは第1のコンパートメント217を圧縮し、それによって脆弱シール267は開き、1つの単一共通コンパートメントが生成される。次いで希釈剤は、凍結乾燥物容器37の内側に最初から位置している薬剤製剤317と混合され、それによって薬物溶液が、共通コンパートメント内側に生成される。
【0095】
本明細書において説明する可撓性容器の実施形態に係わるすべてのシールは、可撓性シート様材料の2つ以上の要素または部分を取り付け、それによって取り付けられた部分をガス、液体、または別の流体が通過できないようにするプロセスまたはステップによって得ることができる。可撓性シート様材料がホイル、特にプラスチックホイルである実施形態では、シーリングは、ホイルの特定の場所に所定の温度/エネルギーおよび/または圧力を適用することによって実現することができる。それにより、熱およびまたは圧力で活性化する接着剤でホイルをコーティングすることができる。あるいはまたはさらに、シーリングは、超音波溶接、高周波溶接、およびまたは無線周波溶接を伴うことができる。堅いシールおよび脆弱シールを生成するために、目的とする特性が結果として生じるように、温度/エネルギーおよび/または圧力を調整することができる。
【0096】
図5は、点滴バッグの形態の可撓性容器と、チューブ28と、本発明による凍結乾燥物容器としてパッド38とを含む、本発明によるキット18の第5の実施形態を示す。チューブ28は、下側収集コンパートメント218と、上側フラッシング部分228とを有する。フラッシング部分228には、レセプタクルスリット238が存在する。パッド38は、上側可撓性シート318と、下側可撓性シート328とを壁として備え、これらのシートは、その縁に沿った周辺シール継ぎ目によって互いに取り付けられる。下側可撓性シート328は、コンパートメントからの蒸気透過を可能にする半透過性膜を備える。シート318、328間には、コンパートメントが形成され、このコンパートメント内に、凍結乾燥された薬物製剤338が、凍結乾燥物として配される。
【0097】
使用において、パッド38はスリット238内に導入され、上側シート318は、穿孔されるか、または剥離される。次いで希釈剤が、パッド38を通ってフラッシング部分228からフラッシングされ、薬物製剤338を溶解する。次いで溶液は、下側シート328の半透過性膜を通して濾過され、収集コンパートメント218内に集められる。必要に応じて、同じ薬物製剤を有する追加のパッドをその後同じように処理して、収集コンパートメント218内に集められた溶液中の薬物製剤の投薬量を調整することができ、ならびに/または別の物質を有する追加のパッドを同じように処理して、収集コンパートメント218内に組み合わせられた薬物製剤溶液を生成することができる。チューブ28の下側端部には、点滴バッグなどに結合されるコネクタまたはポートが、設けられる。
【0098】
図6では、点滴バッグの形態の可撓性容器と、本発明による凍結乾燥物容器39とを含む、本発明によるキット19の第6の実施形態が示される。凍結乾燥物容器39は、円筒状の内側収納部319と、円筒状の外側収納部329とを有する。内側収納部319は、半透過性膜3129が広げられるフレーム構造3119からなる。それにより、半透過性膜3129は、フレーム構造3119の内部を覆う。特に、フレーム構造3119は、平坦化された上部リングと、平坦化された底部リングと、リング間を延び、リング同士を連結する垂直バーとを備えて取り入れられる。さらに、底部リングには透明な伝熱性のホイルが装備され、それにより、凍結乾燥された、極めて効能がある薬物製剤379が凍結乾燥物として中に配されるコンパートメントが、内側収納部319内に生成され、また、視覚的制御および改善された伝熱を行うことができるようになる。膜3119の配置により、薬物製剤379は膜3119とのみ接触し、フレーム構造3129とは接触しない。上部リングは、内側収納部319の内部に上からアクセスできるように開く。半透過性膜3129は、蒸気が内側収納部319の内側から逃げることができるが、内側収納部319の内部への蒸気の透過は限定または防止されるように配向される。
【0099】
外側収納部329は、底端側と開いた上端側とを有する剛性円筒形からなる。内側収納部319は、外側収納部329に同軸に差し込まれる。内側および外側収納部319、329は、内側収納部319と外側収納部329との間に自由な空間または容積部が存在するようにして寸法設定される。
【0100】
内側および外側収納部319、329は、外側蓋369によって互いに結合される。さらに、内側収納部319に内側蓋339が設けられ、内側蓋は、その中心において上部カップラ349に連結される。上部カップラは、中空であり、内側収納部319内への物質の移送を可能にする。外側収納部329の底部において、底部カップラ359が設けられる。
【0101】
凍結乾燥物容器39の準備において、薬物製剤379が、内側収納部319内側で凍結乾燥される。それにより、蒸気は膜3129を通って、場合によっては上部カップラ349を通っても逃げる。より詳細には、膜3129の全体面積が比較的大きく、また薬物製剤379とフリーズドライ棚との間の密な接触により、効率的な凍結乾燥を達成することができる。
【0102】
図7に示すように、凍結乾燥物容器39は、上部カップラ349およびその底部カップラ359によって、可撓性容器とする点滴バッグ29に差し込まれる。より詳細には、点滴バッグ29は、希釈剤239が充填された第1のコンパートメント219と、第2のコンパートメント229とを有する。希釈剤239は、第1のコンパートメント219から第1のチューブおよび上部カップラ349を介して内側収納部319内に提供され、内側収納部において薬物製剤379が溶解される。次いで作り出された薬物溶液249は、膜3129を通して濾過されて、内側収納部319と外側収納部329との間の空間に入る。この空間からこの溶液は、底部カップラ359および第2のチューブ269を通して点滴バッグ29の第2のコンパートメント229内に提供され、ここに収集される。
【0103】
代替的な使用では、複数の容器39が、点滴バッグに連続して結合される。それにより、容器に同じ薬物製剤379を充填して薬物溶液中の投薬量を調整することができ、または異なる薬物製剤を充填して薬物製剤329と混合することができる。
【0104】
本説明ならびに本発明の態様および実施形態を図示する添付の図は、保護された本発明を定義する特許請求の範囲を限定するものとして捉えられてはならない。換言すれば、本発明を図および前述の説明において図示し詳細に説明してきたが、そのような図示および説明は、限定的ではなく例証的または例示的であると考えられるものである。本説明および特許請求の範囲の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな機械的、組成的、構造的、電気的、および作動的変更がなされてもよい。いくつかの場合では、本発明をあいまいにしないために、よく知られている回路、構造、および技術は、詳細には示していない。したがって、特許請求の範囲の範囲および趣旨内で変更および改変が当業者によってなされてもよいことが、理解されよう。特に、本発明は、上記および下記で説明する種々の実施形態からの特徴の任意の組み合わせを備えたさらなる実施形態をカバーする。たとえば、上記で説明したほとんどの例は、薬物製剤に関係しているが、栄養学、化学プロセス、分析方法または類似のものなどの非製薬的用途にも同様に本発明を運用することが可能である。
【0105】
本開示はまた、図に個々に示すすべてのさらなる特徴をカバーしているが、これらは、本前後の説明において説明されていない場合がある。また、図および本説明に説明する実施形態の単一の代替策ならびにその特徴の単一の代替策を、本発明の主題または開示する主題から権利放棄することができる。本開示は、特許請求の範囲または例示的な実施形態で定義された特徴からなる主題、ならびに前記特徴を含む主題を含む。
【0106】
さらに、特許請求の範囲において、単語「備える」は、他の要素またはステップを除外せず、不定冠詞「1つ(a)」または「1つ(an)」は、複数を除外しない。単一のユニットまたはステップは、特許請求の範囲において列挙する複数の特徴の機能を実行してもよい。特定の対策が相互に異なる従属請求項で列挙されるという事実だけで、これらの対策の組み合わせを有利に使用できないことを示すものではない。特質または特に値に関連する用語「本質的に」、「約」、「およそ」などは、正確にその特質もまたは正確にその値もそれぞれ定義する。所与の数値または範囲の文脈における用語「約」は、たとえば所与の値または範囲の20%以内、10%以内、5%以内、もしくは2%以内である値または範囲を指す。結合または連結されると説明する構成要素は、電気的もしくは機械的に直接結合されてもよく、またはこれらは、1つまたは複数の中間構成要素を介して間接的に結合されてもよい。特許請求の範囲の任意の参照記号は、範囲を限定するものとして解釈されてはならない。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
【国際調査報告】