(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】粒径分布を有するシクロデキストリンを含む化粧品組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 8/73 20060101AFI20220121BHJP
A61Q 19/00 20060101ALI20220121BHJP
A61Q 5/00 20060101ALI20220121BHJP
A61Q 11/00 20060101ALI20220121BHJP
A61Q 1/00 20060101ALI20220121BHJP
A61Q 7/02 20060101ALI20220121BHJP
A61Q 17/04 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
A61K8/73
A61Q19/00
A61Q5/00
A61Q11/00
A61Q1/00
A61Q7/02
A61Q17/04
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530248
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 FR2019052932
(87)【国際公開番号】W WO2020115438
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591169401
【氏名又は名称】ロケット フレール
【氏名又は名称原語表記】ROQUETTE FRERES
(74)【代理人】
【識別番号】100090398
【氏名又は名称】大渕 美千栄
(74)【代理人】
【識別番号】100090387
【氏名又は名称】布施 行夫
(72)【発明者】
【氏名】マンティンク、レオン
(72)【発明者】
【氏名】ピオット、ソフィー
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA122
4C083AB032
4C083AB222
4C083AB232
4C083AC092
4C083AC122
4C083AC132
4C083AC172
4C083AC212
4C083AC242
4C083AC302
4C083AC342
4C083AC352
4C083AC392
4C083AC422
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4C083AC472
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4C083AD092
4C083AD251
4C083AD252
4C083AD352
4C083CC04
4C083CC05
4C083CC19
4C083DD08
4C083DD11
4C083DD17
4C083DD22
4C083DD23
4C083DD31
4C083DD33
4C083DD39
4C083DD41
4C083EE01
4C083EE06
4C083EE07
4C083EE17
(57)【要約】
本発明は、生理学的に許容される媒体中に分散した固体粒子の形態で少なくとも部分的に存在する少なくとも1つのシクロデキストリンを含む化粧品組成物であって、シクロデキストリン粒子が、レーザー粒径分析によって測定される、20μm以下、より好ましくは12μm以下、及び最も好ましくは8μm以下の体積平均粒径d(4.3)と、レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布であって、その代表径d(10)、d(50)及びd(90)が、
a.直径d(10)が5.0μm以下であり、好ましくは2.5μm以下であり、
b.直径d(50)が15.0μm以下であり、好ましくは10.0μm以下であり、
c.直径d(90)が30.0μm以下であり、好ましくは25.0μm以下であるような、体積粒径分布と、を有することを特徴とする、化粧品組成物に関する。
本発明はまた、化粧品組成物の感覚プロファイルを改善するためのこのようなシクロデキストリンの使用、特に、広がりやすさ、及び/又は柔らかい、粉末状の脂っぽくない感触を付与し、ピリングの形成を防止するための使用にも関する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
生理学的に許容される媒体中に分散した固体粒子の形態で少なくとも部分的に存在する少なくとも1つのシクロデキストリンを含む化粧品又は皮膚科学的組成物であって、前記シクロデキストリン粒子が、
レーザー粒径分析によって測定される20μm以下、より好ましくは12μm以下、及び最も好ましくは8μm以下の体積平均粒径d(4.3)と、
レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布であって、その代表径d(10)、d(50)及びd(90)が、
a.前記直径d(10)が5.0μm以下、好ましくは2.5μm以下であり、
b.前記直径d(50)が15.0μm以下、好ましくは10.0μm以下であり、
c.前記直径d(90)が30.0μm以下、好ましくは25.0μm以下であるような、体積粒径分布と、を有することを特徴とする、化粧品又は皮膚科学的組成物。
【請求項2】
前記固体シクロデキストリン粒子が、100%以下、好ましくは90%以下、及び最も好ましくは73%以下の変動係数を有する、レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布を有することを特徴とする、請求項1に記載の化粧品又は皮膚科学的組成物。
【請求項3】
前記組成物中に存在するシクロデキストリンの総重量に対して少なくとも5重量%のシクロデキストリンが、好ましくは少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、より好ましくは少なくとも25重量%、及び最も好ましくは少なくとも50重量%のシクロデキストリンが、固体粒子の形態であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の化粧品又は皮膚科学的組成物。
【請求項4】
前記組成物中のシクロデキストリンの含有量が、前記組成物の前記生理学的に許容される媒体中のその溶解度よりも5%大きく、好ましくは、前記媒体中のその溶解度よりも10%大きく、より好ましくは、前記媒体中のその溶解度よりも15%大きく、最も好ましくは、前記媒体中のその溶解度よりも25%大きく、及びより好ましくは、前記媒体中のその溶解度よりも50%大きいことを特徴とする、請求項1~3のいずれか一項に記載の化粧品又は皮膚科学的組成物。
【請求項5】
前記シクロデキストリンが、β-シクロデキストリン、好ましくは「天然」であることを特徴とする、請求項1~4のいずれか一項に記載の化粧品又は皮膚科学的組成物。
【請求項6】
前記化粧品又は皮膚科学組成物が、スキンケア製品、毛髪処理、口腔歯科処理、メイクアップ、又は脱毛処理を形成することを特徴とする、請求項1~5のいずれか一項に記載の化粧品又は皮膚科学的組成物。
【請求項7】
生理学的に許容される媒体中に分散した固体粒子の形態で少なくとも部分的に存在する少なくとも1つのシクロデキストリンの、化粧品又は皮膚科学的組成物における使用であって、前記シクロデキストリン粒子が、
レーザー粒径分析によって測定される20μm以下、より好ましくは12μm以下、及び最も好ましくは8以下の体積平均粒径d(4.3)と、
レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布であって、その代表径d(10)、d(50)及びd(90)が、
a.前記直径d(10)が5.0μm以下、好ましくは2.5μm以下であり、
b.前記直径d(50)が15.0μm以下、好ましくは10.0μm以下であり、
c.前記直径d(90)が30.0μm以下、好ましくは25.0μm以下であるような、体積粒径分布と、を有することを特徴とし、前記使用が、前記組成物の感覚特性を改善するための、好ましくは、広がりやすさ、及び/又は柔らかい、粉末状の脂っぽくない感触を付与し、かつ/若しくはピリングを防止するためのものである、使用。
【請求項8】
前記固体シクロデキストリン粒子が、100%以下、好ましくは90%以下、及び最も好ましくは73%以下の変動係数を有する、レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布を有することを特徴とする、請求項7に記載の使用。
【請求項9】
前記シクロデキストリンが、天然β-シクロデキストリンであることを特徴とする、請求項7又は8に記載の使用。
【請求項10】
前記化粧品又は皮膚科学的組成物が、スキンケア製品、毛髪処理剤、口腔歯科処理剤、メイクアップ、又は脱毛処理剤から選択されることを特徴とする、請求項7~9のいずれか一項に記載の使用。
【請求項11】
前記化粧品組成物が、ゲル、エマルション、懸濁液、ローション、セラム、エアロゾル、ムース、ペースト、粉末又はスティックの形態であり、好ましくはエマルションの形態であることを特徴とする、請求項10に記載の使用。
【請求項12】
化粧品又は皮膚科学的組成物、好ましくは水中油型エマルションを調製する方法であって、以下の
a.生理学的に許容される媒体を準備する工程と、
b.前記生理学的に許容される媒体内で、少なくとも1つのシクロデキストリンを分散させる工程であって、前記シクロデキストリンが、レーザー粒径分析によって測定される、20μm以下、より好ましくは12μm以下、及び最も好ましくは8以下の体積平均粒径d(4.3)と、レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布であって、その代表径d(10)、d(50)及びd(90)が、
a.前記直径d(10)が5.0μm以下、好ましくは2.5μm以下であり、
b.前記直径d(50)が15.0μm以下、好ましくは10.0μm以下であり、
c.前記直径d(90)が30.0μm以下、好ましくは25.0μm以下であるような、体積粒径分布と、を有することを特徴とする、工程を含む、方法。
【請求項13】
前記媒体中のシクロデキストリンの含有量が、前記生理学的に許容される媒体中のその溶解度よりも5%大きい、好ましくはその溶解度よりも10%大きい、より好ましくはその溶解度よりも25%大きい、及びより好ましくはその溶解度よりも50%大きいことを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、固体粒子の形態で分散された少なくとも1つのシクロデキストリンを含む化粧品又は皮膚科学的組成物であって、固体粒子が、レーザー粒径分析によって測定される20μm以下の体積平均粒径d(4.3)と、レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布であって、その代表径d(10)、d(50)及びd(90)が、直径d(10)が5.0μm以下であり、直径d(50)が15.0μm以下であり、直径d(90)が30.0μm以下であるような、体積粒径分布と、を有する、化粧品又は皮膚科学的組成物に関する。これにより、シクロデキストリンは、これらの組成物の生理学的に許容される媒体中のその溶解度よりも高い量で存在する。このような組成物は、特に感触に関して、改善された感覚プロファイルを有する。本発明はまた、化粧品組成物の感覚プロファイルを改善するため、及び化粧品中の感覚粉末としてのシクロデキストリンの使用にも関する。
【0002】
本発明による化粧品組成物は、化粧品の全ての分野、特にスキンケア及び保護、身体衛生、ヘアケア、口腔歯科ケア、メイクアップ並びに香料において使用することができる。
【背景技術】
【0003】
化粧品製品は、有効性、安全性、及び感覚特性を同時に要求する消費者のニーズを満たす必要がある。感覚認知は、有益性が観察され得るよりもかなり前に、使用される製品への消費者を引きつける主要な点を形成する。したがって、化粧品製品は、適用前又は適用中に可能な限り心地よい感覚を提供しながら、有益な美容効果を提供するという課題に挑戦しなければならない。有益かつ魅力的な感覚プロファイルを得るために、化粧品製品の配合物は、一般に石油化学物質に由来する合成起源の機能性又は感覚成分の量を増加させることによって、時間とともにますます複雑になっている。
【0004】
しかしながら、今日、化粧品製品は、消費者の新たな期待に応じなければならず、天然起源、及び更にはより厳しい、組成物の自然度に応じなければならない。実際に、消費者は、ここで、可能な限り化学修飾又は合成添加物又は石油化学添加物が少ない天然成分又は天然起源の成分から実質的に構成される化粧品製品を求めている。
【0005】
石油化学物質由来の機能性若しくは感覚成分の除去、又は天然起源の成分によるそれらの置換は、新規化粧品製品を開発するための重要な方向を構成する。しかしながら、これらの新規な天然成分、又は天然起源の成分の導入は、皮膚又は外皮に適用されると、その外観、それらの取り扱い、それらの用途、又はそれらの特性に関して、程度の差はあるが化粧品製品の明確な感覚特性の低下を伴う場合がある。したがって、自然度の基準を満たす組成物は、むらなく広げることが困難であることが判明する場合があるか、小さい玉を形成する(pill)場合があるか、又は適用すると、きしみ若しくは脆い感覚を与えるか、あるいは十分な滑りを有さない感覚を与える場合がある。これらの不十分又は劣化した感覚認知は、化粧品製品の品質又はイメージに有害である。
【0006】
スキンケア用のクリーム、例えば、特に水中油型エマルションの形態のものの分野では、一般に使用される機能性成分は、石油化学物質に由来する界面活性剤である乳化剤である。これらの界面活性剤を天然化合物と置換することは、依然として活発な研究分野である。ある種の乳化系が本出願人によって開発されており、現在まで公開されていない仏国特許出願第1,762,841号の主題である。この乳化系は、β-シクロデキストリンと天然水中油型乳化剤、例えば、ポリグリセリル-3-ジイソステアレートとの混合物であり、これにより、組成物の物理化学的特性及び感覚特性を調整することを可能にし、並びに適合され安定した粘度を有する水中油型エマルションを得ることを可能にする。
【0007】
例えばクリームなどのエマルションを生成することによって、本出願人によって開発されたこの自然な乳化系では、非常に魅力的かつ許容可能な感覚認知が観察されたが、これらの認知は、間違いなく更に完成される可能性がある。石油化学乳化剤を含む配合物と比較して、この天然乳化系を含むクリームは、一部の皮膚上で、広がりがあまり良くなく、あまりよく浸透せず、小さい玉を形成しやすく、柔らかさが少なくかつ粉っぽさが少なく、しばしば脂っぽい感触を有し得る。
【0008】
感覚成分は、物理的効果を通してその感覚プロファイルを調整するために、化粧品組成物に添加される成分である。最も一般的に使用されるものの中でも、一般に、脂質、特に皮膚によって生成される皮脂などの天然起源のもの、又は意図的に化粧品組成物に導入されるものの吸収を可能にしながら、柔らかく、粉っぽい感触及びビロードのような感触を提供するために一般的に使用されるタルクがある。しかしながら、最近の研究では、乾燥粉末状態でのタルクの毒性の可能性が示されており、このことは、化粧品業界がこの成分に対する天然の代替物を探すことを余儀なくしている。効率性のために、タルクを感じるときの感覚認知、及び脂質を吸収するその能力を再現する代用品が特に求められている。
【発明の概要】
【0009】
第1の態様によれば、本発明の主題は、生理学的に許容される媒体中に分散した固体粒子の形態で少なくとも部分的に存在する少なくとも1つのシクロデキストリンを含む化粧品又は皮膚科学的組成物であって、粒子が、レーザー粒径分析によって測定される20μm以下、好ましくは12μm以下、及び最も好ましくは8μm以下の体積平均粒径d(4.3)と、レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布であって、その代表径d(10)、d(50)及びd(90)が、
a.直径d(10)が5.0μm以下、好ましくは2.5μm以下であり、
b.直径d(50)が15.0μm以下、好ましくは10.0μm以下であり、
c.直径d(90)が30.0μm以下、好ましくは25.0μm以下であるような、体積粒径分布と、を有する、化粧品又は皮膚科学的組成物である。
本発明はまた、このようなシクロデキストリンによって化粧品製品の感覚特性を改善するための解決策を提案する。
【0010】
実際に、本出願人は、驚くべきことに、選択された粒径の、好ましくは、それらの特定の粒径分布に基づいて選択される粒子から構成される、粉末形態のシクロデキストリンの使用が、特に、広がりやすさの観点から、及び柔らかく、粉末状の脂っぽくない感触の観点から、非常に有利で改善された感覚特性を有する化粧品組成物を得ることを可能にすることを発見した。
【0011】
化粧品組成物では、シクロデキストリンは、通常、活性分子の安定化剤として、又は活性分子の生物学的利用能を改善するための薬剤として、又は活性分子の分散性若しくは水溶性を促進する薬剤として使用されている。したがって、シクロデキストリンは、化粧品有効成分の有効性を改善すること、又は更にはその効果を観察することを可能にすることが知られている。しかしながら、シクロデキストリンは、化粧品又は皮膚科学的組成物の感覚特性を改善することは知られていない。
【0012】
本発明の目的のために、化粧品又は皮膚科学的組成物又は製品は、ケラチン材料(皮膚、毛髪、体毛、爪、唇及び外生殖器など)と、又は歯及び口腔粘膜と、独占的に又は主として、それらを洗浄し、それらを香り付けし、それらの外観を修正し、それらを保護し、それらを良好な状態に維持し、又は体臭を調整することを目的として、接触させることを意図した原材料の任意の混合物を意味すると理解される。この定義はまた、皮膚化粧品組成物を含む。しかしながら、これは、マキシパッド又はおむつなどの衛生用品を除外する。
【0013】
本発明の第2の主題は、生理学的に許容される媒体中に分散した固体粒子の形態で少なくとも部分的に存在する少なくとも1つのシクロデキストリンの、化粧品又は皮膚科学的組成物における使用であって、シクロデキストリン粒子が、レーザー粒径分析によって測定される、20μm以下、より好ましくは12μm以下、及び最も好ましくは8μm以下の体積平均粒径d(4.3)と、レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布であって、その代表径d(10)、d(50)及びd(90)が、
a.直径d(10)が5.0μm以下、好ましくは2.5μm以下であり、
b.直径d(50)が15.0μm以下、好ましくは10.0μm以下であり、
c.直径d(90)が30.0μm以下、好ましくは25.0μm以下であるような、体積粒径分布と、を有することを特徴とし、
使用が、組成物の感覚特性を改善するための、好ましくは、広がりやすさ、及び/又は柔らかい、粉末状の脂っぽくない感触を付与し、かつ/若しくはピリング(pilling)を防止するためのものである、使用に関する。
【0014】
本発明の第3の主題は、本発明によるシクロデキストリンを含有する化粧品組成物を調製するための方法に関する。
【発明を実施するための形態】
【0015】
シクロデキストリン
【0016】
本発明による組成物は、固体粒子の形態で少なくとも部分的に存在する少なくとも1つのシクロデキストリンを用いる。
【0017】
本出願において、用語「シクロデキストリン」は、炭素1と4との間の共有結合によって結合された6~12個のグルコース単位を含有する、特に、それぞれ6、7、及び8個のグルコース単位を含有するα-、β-及びγ-シクロデキストリンを含有する、天然及び非置換シクロデキストリンなどの、他の既知のシクロデキストリンのうちのいずれか1つを意味し、包含する。
【0018】
この用語はまた、「シクロデキストリン誘導体」、すなわち、ヒドロキシルOH基の少なくとも一部がOR基(このRは、一般にアルキル基を示す)に変換された分子を網羅する。この観点から考えると、シクロデキストリン誘導体としては、特にメチル化又はエチル化シクロデキストリンが挙げられるが、ヒドロキシプロピル化及びヒドロキシエチル化シクロデキストリンなどのヒドロキシアルキル基で置換されたものが挙げられる。
【0019】
それでもなお、それらの完全に天然の特質により、本発明に好ましいシクロデキストリンは、天然α-、β-、及びγ-シクロデキストリンであり、すなわち、変性されていないシクロデキストリンである。
【0020】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物に使用されるシクロデキストリンは、β-シクロデキストリン、好ましくは「天然」である。
【0021】
シクロデキストリンは、特に、結晶性、準結晶性、又は非晶質の粉末の形態であってもよい。
【0022】
シクロデキストリンは、「遊離」と呼ばれる形態、すなわちその空洞が空である形態、又は既知の包接錯体形態であってもよい。シクロデキストリンは、好ましくは遊離形態である。
【0023】
本発明による化粧品組成物において、シクロデキストリンは、固体粒子の形態で少なくとも部分的に存在する。「少なくとも部分的に」とは、本出願人は、好ましくは、組成物中のシクロデキストリンの総重量に対して少なくとも5重量%のシクロデキストリンが固体粒子の形態で存在することを意味する。好ましくは、組成物中のシクロデキストリンの総重量に対して、少なくとも10重量%、より好ましくは少なくとも15重量%、又は更に好ましくは少なくとも25重量%、なおより好ましくは少なくとも50重量%、更により好ましくは少なくとも75重量%、最も好ましくは少なくとも95重量%のシクロデキストリンが、固体粒子の形態で存在する。
【0024】
一実施形態によれば、化粧品又は皮膚科学的組成物中の固体粒子の形態のシクロデキストリンの含有量は、化粧品組成物の総重量に対して0.1重量%~100重量%の範囲である。好ましくは、この含有量は、0.1重量~50重量%、好ましくは0.1重量%~25重量%、より好ましくは0.1重量%~10重量%、及び更により好ましくは0.1重量%~5重量%の範囲である。
【0025】
その固体形態での存在以外に、シクロデキストリンは、固体液体平衡、遊離状態又は包接錯体状態のために、溶解形態で本発明による組成物中に存在し得るが、溶解したシクロデキストリンは、前述した固体シクロデキストリン粒子で得られた改善された感覚特性を組成物にもたらさない。
【0026】
既知であるか、又は単純な測定を使用して容易にアクセス可能であるように、生理学的に許容される媒体中のシクロデキストリンの溶解度は、媒体が水相及び/又は油相を含むかどうかにかかわらず、生理学的に許容される媒体がシクロデキストリンで飽和される、溶解したシクロデキストリンの濃度の値である。シクロデキストリン濃度がこの溶解度を超えると、換言すれば、生理学的に許容される媒体がシクロデキストリンで「飽和される」とき、シクロデキストリンは、媒体にもはや溶解せず、固体シクロデキストリン粒子は分散し、それらのバルク固体状態を保持する。
【0027】
したがって、固体粒子の形態のシクロデキストリンの最小含有量を保証するために、化粧品組成物中で、好ましくは20℃でのシクロデキストリンの溶解度を考慮することが可能である。したがって、好ましい実施形態によれば、本発明による組成物中のシクロデキストリンの含有量は、化粧品組成物の生理学的に許容される媒体中のシクロデキストリンの溶解度よりも大きい。特に、組成物中のシクロデキストリンの含有量は、組成物の生理学的に許容される媒体中のその溶解度よりも5%大きくてもよく、好ましくは、媒体中のその溶解度よりも10%大きくてもよく、より好ましくは、媒体中のその溶解度よりも15%大きくてもよく、最も好ましくは、媒体中のその溶解度よりも25%大きくてもよく、及びより好ましくは、媒体中のその溶解度よりも50%大きくてもよい。
【0028】
特に、本発明による化粧品又は皮膚科学的組成物中に存在するシクロデキストリンの総含有量は、組成物の生理学的に許容される媒体の総重量に対して1~20重量%、好ましくは5~15重量%を表す。シクロデキストリンがβ-シクロデキストリンであり、生理学的に許容される媒体が水からなる特定の場合では、シクロデキストリンは好ましくは天然であり、シクロデキストリンの総含有量は、組成物中に存在する水の総重量に対して1.8重量%を超える値を表し、この値は、20℃の水中でのβ-シクロデキストリンの溶解度にほぼ相当する。
【0029】
化粧品組成物が粉末又は粉末の混合物の形態であるという意味で「乾燥」と称される粉末組成物である場合、シクロデキストリンの溶解度は0に等しいと考えることができる。実際に、粉末状化粧品組成物は、一般に、粉末の形態の固体成分の混合物からなり、これは、β-シクロデキストリンに対して0.01%~20%、例えば、最大16%の範囲の残留水分含量と、任意選択的に非水性結合剤と、を含有してもよい。この水分は、粉末に結合した水であり、溶解にはまったく利用できず、したがって特にシクロデキストリンを溶解することを可能にしない。したがって、これらの乾燥化粧品組成物の場合、シクロデキストリンは、常に、組成物中に溶解度よりも高い量で存在する。
【0030】
本発明の文脈において、シクロデキストリンは、20μm以下、より好ましくは12μm以下、及び最も好ましくは8μm以下の、レーザー粒径分析によって測定される体積平均粒径d(4.3)の固体粒子の形態で、化粧品又は皮膚科学的組成物中に少なくとも部分的に存在する。
【0031】
好ましい実施形態によれば、固体シクロデキストリン粒子の体積平均粒径は、2μm~20μm、好ましくは3μm~12μm、及び最も好ましくは4μm~8μmである。
固体シクロデキストリン粒子は、レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布であって、その代表径d(10)、d(50)及びd(90)が、
直径d(10)が5.0μm以下、好ましくは2.5μm以下であり、
直径d(50)が15.0μm以下、好ましくは10.0μm以下であり、
直径d(90)が30.0μm以下、好ましくは25.0μm以下であるような、体積粒径分布によって特徴付けられる。
【0032】
表記×10、×50、及び×90を用いてISO規格13320:2009で定義される代表径d(10)、d(50)及びd(90)は、体積による累積粒径分布の10%、50%及び90%にそれぞれ相当する粒子の直径である。
【0033】
更により好ましくは、固体シクロデキストリン粒子は、100%以下、好ましくは90%以下、及び最も好ましくは73%以下の変動係数を有する、レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布によって特徴付けられる。ISO規格13320:2009で定義されるように、粒径分布の変動係数は、体積平均直径とも称される体積平均粒径d(4.3)で除した粒径分布の標準偏差である。
【0034】
固体シクロデキストリン粒子は、任意の均一又は不均一な幾何学的形状であってもよく、結晶性架橋によって互いに結合したシクロデキストリンの高度に個別化された結晶又はシクロデキストリンの結晶の凝集体であってもよい。
【0035】
一般にd4.3又はd(4.3)と表示される体積平均粒径は、レーザー回折式粒径分布分析によって、例えば、MasterSizer(登録商標)からのレーザー粒径分析器の並び、例えば、Malvern Instruments(登録商標)からの「Mastersizer 2000(商標)」、「Mastersizer 3000(商標)」、「Mastersizer 3000E(商標)」、又はHoriba(著作権)からの「Particula LA960」レーザー粒径分析器を使用して測定される体積による粒径分布に基づいて決定される。レーザー回折によるこれらの測定方法は、湿式経路又は乾式経路を介して実施することができる。湿式経路が使用される場合、2-プロパノールを測定流体として使用することが推奨される。
この好ましい実施形態によれば、したがってシクロデキストリンは、固体粒子の形態で存在し、その体積粒径分布は、レーザー回折式粒径分布分析によって測定され、以下の特性を有する:
a.20μm以下、好ましくは12μm以下、及び最も好ましくは8μm以下の体積平均粒径d(4.3)、
b.100%以下、好ましくは90%以下、及び最も好ましくは73%以下の変動係数。
【0036】
本発明が関連する化粧品の分野
【0037】
本発明による化粧品組成物は、スキンケア及び保護、身体衛生、毛髪処理、口腔歯科処理、香料、オードトワレ及びオーデコロン、脱毛処理、並びにまぶた、睫毛、頬、唇、爪、又は身体の他の部分のメイクアップ及びメイク落としを網羅する化粧品の全ての分野で使用することができる。
【0038】
好ましくは、本発明による化粧品組成物は、スキンケア及び保護、ヘアケア、口腔歯科処理、メイクアップ及びメイク落とし、並びに脱毛処理に使用される。
【0039】
スキンケア又はリップケアの分野では、本発明による化粧品組成物は、皮膚用のクリーム、エマルション、ローション、ゲル、及びゲル及び油、老化防止製品又はしわ防止製品、美容マスク、太陽ケア製品、自己日焼け製品、皮膚ホワイトニング製品、若しくはその他のリップクリームであってもよい。
【0040】
身体衛生及びボディケアの分野では、本発明による化粧品組成物は、石鹸、液体石鹸、防臭石鹸、シャワージェル、シャンプー、バスパウダー、塩、ムース、オイルの形態のバス及びシャワー用の調製物、練り歯磨き及びマウスウォッシュなどの歯科衛生製品、シェービング用製品、並びにメイク落とし製品であってもよい。
【0041】
毛髪の分野では、化粧品組成物は、毛髪にウェーブを添加するか、又は毛髪を滑らかにするための製品若しくはヘアスタイリング製品、ヘアセッティング製品、ローション若しくはパウダー若しくはシャンプーなどの毛髪を洗浄するための製品、ローション若しくはクリーム若しくはオイルなどのヘアアップ保持製品、ローション若しくはヘアスプレー若しくはワックスの形態のヘアスタイリング製品、又は毛染め製品であってもよい。
【0042】
メイクアップ分野では、本発明による化粧品組成物は、液体、ペースト、又は粉末形態のファンデーションであってもよく、又は口紅などの、睫毛、爪、頬又は唇に適用されることを意図したメイクアップ製品であってもよい。
【0043】
感覚粉末
【0044】
本発明による化粧品組成物において、シクロデキストリンは、感覚粉末として作用する。「感覚粉末」とは、本出願人は、形態、表面状態、構造又は機械的特性、特に、可撓性及び硬度の特性、並びに粒径の特性を有し、有益な感覚効果をもたらす、固体形態で、好ましくは粉末形態で存在する化粧品成分を指定することを意味する。本発明の文脈において、これらの有益な感覚効果は、脂っぽい感覚の低減、より乾燥し、より柔らかな感触、及びべたつかない仕上がりであり得る。
【0045】
適用の形態
【0046】
本発明による化粧品組成物は、水性若しくは水性-アルコール性ゲルなどのゲルの形態で、エマルション、懸濁液、ローション、セラム、エアロゾル若しくはムースなどの水性及び/又は油性液体分散液の形態で、あるいはペースト若しくは粉末の形態で、又は固体の形態で存在してもよい。
【0047】
本発明の一実施形態によれば、化粧品組成物は、油中水型エマルション又は水中油型エマルションである。油中水型エマルションは、皮膚の表面上に脂質膜を形成する能力により、脂っぽい、滑りやすい、及び柔らかではない感触を提供するが、水中油型エマルションは、一般に、この油中水型エマルションよりも柔らかい感触及びより少ない脂っぽくない感触を提供する。エマルションは、それらの配合に応じて、流体から濃厚なものまで、例えばセラム、ミルク、ムース、流体又は濃厚なクリーム、又はゲルまで、異なる使用形態で存在してもよい。このようなエマルションは、いくつかの用途分野:フェース及びボディミルク、太陽ケア製品(噴霧可能なエマルション及びミルク)、メイクアップ(マスカラ、ファンデーション、アイシャドウ、クリーム)、フェイシャルケアクリーム、コールドクリーム、ハンドクリーム及びボディクリーム、ヘアケア(コンディショナー、シャンプー、クリーム及びクリームマスク)を有する。
【0048】
本発明によるエマルションは、好ましくは、シクロデキストリンの総含有量が水の総重量に対して1.8重量%~10重量%である水中油型エマルションである。好ましくは、この実施形態では、シクロデキストリンはβ-シクロデキストリンである。好ましい実施形態によれば、エマルションは、本発明によるβ-シクロデキストリンと、以下に定義される天然起源の乳化剤とからなる乳化系によって安定化されたエマルションであり得る。
【0049】
別の実施形態によれば、本発明による化粧品組成物は、液体、水性又は脂肪分散液、例えば、液体、水相、又は脂肪相、及び粉末相を含有するローションであり、粉末相は、本発明による固体粒子の形態で少なくとも部分的に存在する少なくとも1つのシクロデキストリンを含む。
【0050】
別の実施形態によれば、本発明による化粧品組成物は、固体シクロデキストリン粒子が分散している高粘稠な連続相からなる半固体媒体として存在する、化粧用途のためのペーストである。例えば、これは、練り歯磨き又はリップクリームの形態をとってもよい。
【0051】
別の実施形態によれば、本発明による化粧品組成物は、口紅、防臭スティック、又は石鹸などの固体である。
【0052】
別の実施形態によれば、本発明による化粧品組成物は、顔料及び充填剤を含む粉末相と、最終製品の適用中に密度、皮膚軟化、及び柔らかさの定義された特性を付与する結合剤として作用する脂肪族物質を含む脂肪相と、を含む化粧品用途のための粉末である。このような粉末組成物は、アイシャドウ、頬紅、しわ防止製品、フェースパウダー及びボディパウダー、並びに顔及び身体をメイクアップするための製品の形態である。
【0053】
この粉末形態の化粧品組成物の場合、組成物は、「スラリー」型の方法、すなわち、水性アルコール溶媒相中に粉末相を分散させ、次いで溶媒相を蒸発させることによって得ることができる。
【0054】
したがって、本発明の好ましい実施形態によると、化粧品又は皮膚科学的組成物は、スキンケア製品、ヘアケア製品、口腔歯科製品、メイクアップ、又は脱毛処理の形態で存在する。
【0055】
化粧品組成物の成分
【0056】
生理学的に許容される媒体
【0057】
本発明による組成物はまた、生理学的に許容される、好ましくは美容的に許容される媒体、すなわち、有害な副作用を有さず、特に、化粧品の使用者が容認できない赤み、熱、痛み、又は刺痛を生じないものを含む。
【0058】
生理学的に許容される媒体は、例えば、脂肪相及び/又は水相を含む。
【0059】
脂肪相
【0060】
脂肪相は、少なくとも1つの油を含有してもよい。
【0061】
本発明の目的のために、「油」は、室温(25℃)で液体であり、25℃で水に少なくとも1重量%の量で導入されるとき、水に全く可溶性でないか、又は水に導入された油の重量に対して10重量%未満の範囲で可溶性である化合物を意味すると理解される。
【0062】
液体脂肪相は、有利には、皮膚に皮膚軟化効果をもたらす1つ以上の不揮発性油を含む。イソノナン酸セテアリル、イソノナン酸イソトリデシル、イソステアリン酸イソステアリル、イソステアリン酸イソプロピル、ミリスチン酸イソプロピル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸ブチル、ラウリン酸ヘキシル、イソノナン酸イソノニル、パルミチン酸2-エチルヘキシル、ラウリン酸2-ヘキシルデシル、パルミチン酸2-オクチルデシル、ミリスチン酸若しくは乳酸2-オクチルドデシル、コハク酸2-ジエチルヘキシル、リンゴ酸ジイソステアリル、トリアセチン、トリカプリン、カプリル酸/カプリン酸トリグリセリド、カプリン酸及びカプリル酸ヤシアルキル(coco)混合物、C12~C15アルコールの安息香酸塩、ヤシ油脂肪酸ブチレングリコールなどのグリコールエステル、トリイソステアリン酸グリセリル、酢酸トコフェロール、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、オレイン酸、リノール酸、リノレン酸又はイソステアリン酸などの高級脂肪酸、高級脂肪アルコール、例えば、オレインアルコール、アボカド油、ツバキ油、ヘーゼルナッツ油、ツバキ油、カシューナッツ油、アルガン油、大豆油、ブドウ種子油、ゴマ油、トウモロコシ油、胚芽油、菜種油、ヒマワリ油、綿実油、ホホバ油、ピーナッツ油、オリーブ油及びこれらの混合物などの植物油、シアバター、ツバキバターなどの植物性バターなどの脂肪酸エステルを挙げることができる。
【0063】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、カプリン酸及びカプリル酸ヤシアルキル混合物、ヤシ油脂肪酸ブチレングリコールなどのグリコールエステル、及びこれらの混合物から選択される不揮発性油を含む。
【0064】
これらの油は、パラフィン油、スクアレン、ワセリン、ジメチルシロキサン、及びこれらの混合物などの炭化水素系又はシリコーン系の油であってもよい。
【0065】
液体脂肪相は、任意選択的に揮発性油を含んでもよい。揮発性油は、室温及び大気圧で1時間未満で皮膚から蒸発可能な油を意味することが意図される。揮発性油は、例えば、脂っぽい感触を低減するために、シリコーン油又は短鎖脂肪酸トリグリセリドから選択されてもよい。
【0066】
本発明による組成物は、好ましくは、再生可能起源の油、特に植物起源の油、好ましくは精製された油のみを含有する。
【0067】
本発明による組成物に含有される油の量は、好ましくは、本組成物の総重量の10~80%を表す。
【0068】
本発明による組成物の脂肪相は、有利には、親油性ゲル化剤などの少なくとも1つの脂肪相構造化剤を更に含有し得る。
【0069】
脂肪相はまた、1つ以上のワックス及び/又は1つ以上のペースト状化合物を含有してもよい。
【0070】
「ペースト状化合物」は、ワックスのように、可逆的な液体固体状態変化を受けることができ、固体状態では異方性結晶組織を有するが、23℃の温度で液体画分及び固体画分を含有するという点でワックスとは異なる親油性脂肪物質を意味すると理解される。
【0071】
「ワックス」は、可逆的な液体固体状態変化を有し、かつ30℃を超え、一般に90℃未満の融点を有する脂肪物質を意味することを意図しており、これは組成物の調製条件下で液体であり、固体状態で異方性結晶組織を有する。本発明に従って使用されるワックスは、極性若しくは非極性ワックス、又はこれらの2つの混合物からなり得る。「非極性」は、炭素、水素及び/又はリン原子、特に炭化水素のみを含有するワックスを意味することを意図する。
【0072】
極性ワックスは、動物ろう、植物ワックス、及びエステルなどの極性基を含有する合成又はシリコーンワックスから選択されてもよい。したがって、カルナウバワックス、キャンデリラろう、蜜蝋(Cera alba)、中国昆虫ワックス(Ericerus pela)、日本ろう(Japan wax)、コメろう(sumac wax)、モンタンろう、C8~C20酸とグリセリンとのトリエステル、例えば、特に商品名CETACENEでVEVYにより販売されているトリベヘン酸グリセリル、アセチル化ステアリン酸グリコール、及びこれらの混合物を挙げることができる。これらのワックスは、特に、キャンデリラろうと、商品名GREEN GREASEでINA TRADINGにより販売されているホホバ種子油との混合物の場合のように、油中に予め分散された形態で使用され得る。
【0073】
本発明による組成物の脂肪相はまた、組成物によって提供されるメイクアップに保持特性及び/又は非移動特性及び/又は光沢を提供することができる、少なくとも1つの皮膜形成ポリマーを含んでもよい。
【0074】
水相
【0075】
本発明による組成物は、水と、任意選択的に1つ以上の水混和性有機溶媒及び/又は1つ以上のレオロジー剤を含む水相を更に含んでもよい。
【0076】
本発明による組成物は、特に、組成物の総重量に対して10~50重量%の範囲の含水量を含んでもよい。
【0077】
レオロジー剤は、特に、水相を増粘するための薬剤、ゲル化剤又は懸濁化剤、例えば、アラビアゴム、コンニャクガム、グアーガム又はこれらの誘導体などの植物由来ガム、藻類から抽出されるガム、例えば、アルギン酸塩又はカラギーナン、微生物発酵から生じるガム、例えば、キサンタン、マンナン、スクレオグリカン又はその誘導体、セルロース及びその誘導体、例えば、カルボキシメチルセルロース又はヒドロキシエチルセルロース、デンプン及びその誘導体、例えば、化工デンプン、特にアセチル化、カルボキシメチル化、オクテニルコハク酸又はヒドロキシプロピル化、合成ポリマー、例えば、ポリアクリル酸又はカルボマーであり得る。
【0078】
好ましい実施形態によれば、レオロジー剤はキサンタンガムである。
【0079】
本発明による組成物は、好ましくは、植物又は発酵から誘導される天然多糖類から選択されるレオロジー剤を含み、任意選択的に改質されている。
【0080】
界面活性剤
【0081】
本発明による組成物はまた、好ましくは油中水型(W/O)又は水中油型(O/W)乳化剤、好ましくは天然起源のものから選択される1つ以上の界面活性剤を含んでもよい。
【0082】
水中油型乳化剤は、特に、任意選択的に、ポリエトキシル化ソルビタンエステル、グリセロール脂肪酸エステル、スクロース脂肪酸エステル又はポリエステル、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリエーテル変性ポリシロキサン、ポリエチレングリコール脂肪アルコールエーテル、アルキルポリグリコシド及び水素添加レシチンから選択されてもよく、このリストは非限定的である。
【0083】
油中水型(W/O)乳化剤は、非エトキシル化ポリオール脂肪酸エステルから、特にグリセロールの非エトキシル化脂肪酸エステル、ポリグリセロールの非エトキシル化脂肪酸エステル、ソルビトールの非エトキシル化脂肪酸エステル、ソルビタンの非エトキシル化脂肪酸エステル、無水ヘキシトールの非エトキシル化脂肪酸エステル、例えば、特に、イソソルビド、マンニトール、キシリトール、エリスリトール、マルチトール、スクロース、グルコース、ポリデキストロース、水素添加グルコースシロップ、デキストリン及び加水分解デンプンから選択され得る。
【0084】
W/O乳化剤は、脂肪酸から得られる又は油若しくは油混合物からのエステル交換によって得られる非エトキシル化ポリオール脂肪酸エステルから選択され得る。使用される脂肪酸は、8~22個の炭素原子、好ましくは10~18個の炭素原子、特に12~18個の炭素原子を含む。これらの酸は、直鎖又は分枝鎖、飽和又は不飽和であってもよく、1つ以上の側方ヒドロキシル官能基を有してもよい。油は、飽和又は不飽和であってもよく、室温で液体から固体であってもよく、任意選択的にヒドロキシル官能基、好ましくは1~145のヨウ素価、特に5~105のヨウ素価を有してもよい。
【0085】
天然起源のW/Oエマルションはまた、天然の水和媒体中で自然に生分解する製品、特に1.5~6、好ましくは2~5、より良好には更に3~5の親水性-親油性バランス(HLB)を有する製品から選択されてもよい。
【0086】
天然起源のW/O乳化剤は、特に、グリセロール脂肪酸エステルから、特にオレイン酸、ステアリン酸、及びイソステアリン酸グリセリル、例えば、以下の製品:Lubrizol Schercemolからのラウリン酸グリセリルHLB5.2、オレイン酸グリセリルHLB4、例えば、IMWITOR948、イソステアリン酸グリセリルSchercemol GMIS HLB3.5、並びにSympatens-GMSからのモノステアリン酸グリセリルHLB3.5から選択され得る。
【0087】
これは、ソルビタン又はソルビトール脂肪酸エステルから、特にラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸ソルビタン、例えば、製品トリオレイン酸ソルビタンKosteran-O/3HLB1.8、オレイン酸ソルビタンMONTANE80VG又はSPAN80-LQ-(RB)又はKosteran-O/1HLB4.3、イソステアリン酸ソルビタンKosteran-I/1HLB4.3、ステアリン酸ソルビタンKosteran-S/1HLB4.7、モノパルミチン酸ソルビタンHLB6,6、ラウリン酸ソルビタンKosteran-L/1HLB8.6から選択されてもよい。
【0088】
スクロース脂肪酸エステルから、例えばSisternaからのジステアリン酸スクロースSP60-C、Sisternaからのポリステアリン酸スクロースSP10-C、ヤシ油脂肪酸スクロースHLB6から選択されてもよい。
【0089】
天然起源のW/O乳化剤は、特にポリグリセロールエステルから選択されてもよく、好ましくは、2~12個のグリセロール単位、好ましくは3~6個のグリセロール単位を含むポリグリセロールと、1~15及び特に5~10のヨウ素価を有する少なくとも1つの部分水素添加又は非水素添加植物油との反応から生じるエステルから選択され得る。これは特に、オレイン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸及びリシノール酸ポリグリセロールエステル、特に以下の製品:イソステアリン酸ポリグリセリル-4HLB3(HYDRIORからのHYDRIOL(登録商標)PGIなど)、ペンタオレイン酸ポリグリセリル-10HLB3.5(DECAGLYN5-OVなど)、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6(HEXAGLYN PR-15など)、セスキイソステアリン酸ポリグリセリル-2HLB~4(ClariantからのHostcerin DGI、及びEvonik Dr.StraetmansからのDermofeel(登録商標)GO softなど)、リシノレイン酸ポリグリセリル-3HLB3.5、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3HLB4(IMWITOR 600など)、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3HLB:~4(Evonik Dr.Straetmans GmbHからのDermofeel(登録商標)PGPRなど)、セスキオレイン酸ポリグリセリル-2 HLB4(Evonik Dr.Straetmans GmbHからのDermofeel(登録商標)GO softなど)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(Res PharmaからのEmulpharma(登録商標)PG20など)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3 HLB:5.5(GattefosseからのPlurol(登録商標)Diisostearique CG、BASFからのLameform(登録商標)TGI、IOI Oleo GmbHからのIMWITOR(登録商標)PG3 DIS、CrodaからのCithrol(商標)PG32IS、Stearinerie DuboisからのDUB ISO G3、LonzaからのPolyaldo(登録商標)3-1-S、OleonからのJolee 7245及びMassoからのMASSOCARE PG3Dなど)、オレイン酸ポリグリセリル-3 HLB6.2(Ivanhoe IndustriesからのI-MUL PGO 31など)、モノステアリン酸ポリグリセリル-3 LB7.2、オレイン酸ポリグリセリル-4 HLB8(HYDRIORからのHYDRIOL(登録商標)PGMO.4など)、ジオレイン酸ポリグリセリル-5 HLB 8(Evonik Dr.Straetmans GmbHからのDermofeel(登録商標)G5 DOなど)、ジポリヒドロキシステアリン酸ポリグリセリル-2(CognisからのDehymuls PGPHなど)、ジイソステアリン酸ポリグリセリル-2(Res PharmaからのEmulpharma PG20など)、ヤシ油脂肪酸ポリグリセリル-3(Res PharmaからのEmulpharma(登録商標)など)であり得る。
【0090】
好ましい実施形態によれば、本発明による組成物は、W/O乳化剤として、ポリグリセロール-3とイソステアリン酸との反応から生じるエステル(INCI名:ジイソステアリン酸ポリグリセリル-3)を含む。
【0091】
天然起源のW/O乳化剤は、脂肪酸エステル、特にポリグリセロール脂肪酸エステル、ソルビタン脂肪酸エステル又はグルコースエステル、例えば、特に、製品Nikko ChemicalsからのNikkomulse WO-NS(ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-6、イソステアリン酸ポリグリセリル-2、ジステアルジモニウムヘクトライト)、EvonikからのTego Care LTP(ラウリン酸ソルビタン、ラウリン酸ポリグリセリル-4、クエン酸ジラウリル)、Sympatens-W/4500(オレイン酸ソルビタン、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3)、Sympatens-O/2500G(ステアリン酸ソルビタン、セスキステアリン酸メチルグルコース)、Dr.StraetmansからのSymbio(登録商標)muls WO(ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3、セスキオレイン酸ソルビタン、リシノレイン酸セチル、カプリン酸グリセリル、ミツロウ、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸アルミニウム)、Natura-TecからのEcomuls 2 in 1(オレイン酸グリセリル、ポリリシノレイン酸ポリグリセリル-3、olea europaea(オリーブ)油不鹸化物)、AlchemyからのHIPEgel Olea(グリセリン、パルミチン酸イソプロピル、水、ステアリン酸スクロース、ラウリン酸スクロース)の混合物からなり得る。
【0092】
好ましい実施形態によれば、本発明の組成物に使用される乳化剤は、天然起源のものである。用語「天然起源」は、化粧品組成物で使用されるための、再生可能資源に由来する任意の分子を意味し、特に物理的、化学的又は酵素的改変後に、植物、微生物又は藻類から抽出されるか、あるいは植物、微生物又は藻類によって分泌される。
【0093】
本発明による組成物に実施される界面活性剤は、組成物の総重量に対して0.01~5重量%、好ましくは0.1~1重量%の範囲の量で存在する。
【0094】
染料
【0095】
本発明による組成物は、水溶性又は脂溶性色素、顔料、ナクレ、レーキ(不活性鉱物支持体上に吸着された水溶性色素)などの、組成物を着色及び/又は不透明化する効果及び/又は唇を着色する効果を有する充填剤並びにこれらの混合物から選択される少なくとも1つの染料を更に含んでもよい。これらの染料は、シラン、シリコーン、脂肪酸石鹸、C9~15フルオロアルコールホスフェート、アクリレート/ジメチコンコポリマー、C9~15フルオロアルコールホスフェート/ケイ素混合コポリマー、レシチン、カルナウバワックス、ポリエチレン、キトサンなどの疎水性剤、及び任意選択的に、ラウロイルリジン、ジナトリウムステアロイルグルタメート及びアルミニウムアシルグルタメートなどのアシル化され得るアミノ酸によって任意選択的に表面処理されてもよい。顔料は、鉱物又は有機、天然又は合成であってもよい。顔料の例は、特に鉄、チタン又は亜鉛酸化物であり、また複合顔料及びゴニクロマティック、真珠光沢、干渉、フォトクロミック又はサーモクロミック顔料であり、このリストは非限定的である。
【0096】
有利には、1つ以上の顔料を含有する場合、本発明による組成物は、ヤシ油脂肪酸ブチレングリコール又はリンゴ酸ジイソステアリルなどの少なくとも1つの分散剤を更に含有する。
【0097】
充填剤
【0098】
本発明に従って使用される組成物は、前述したシクロデキストリン以外の少なくとも1つの充填剤を更に含有してもよい。この用語は、組成物に不溶性である任意の形態(特に球状又は層状)、鉱物又は有機の粒子を意味することが意図される。充填剤の例は、タルク、雲母、シリカ、カオリン、窒化ホウ素、デンプン、オクテニルコハク酸無水物を用いた加工デンプン、ポリアミド、シリコーン樹脂、シリコーンエラストマー粉末及びアクリルポリマー粉末、特にポリ(メチルメタクリレート)の粉末、又はスチレンアクリレートコポリマーの粉末(DowからのSunsphere Powder)である。充填剤は、特に、異なる化学的性質及び/又は物理的形態のいくつかの層からなる場合があり、特に球状充填剤にコーティングされたラメラの形態で存在してもよい。これらは、異なる表面処理を用いて改変されてもよい。表面処理された充填剤の例は、特にKOBOにより商品名DSPCS 20N-I2、3H-I2及びI2で販売される、エチレン/メタクリレートコポリマーによって改変されたシリカからなる。
【0099】
活性成分
【0100】
本発明に従って使用される組成物は、1つ以上の親水性又は親油性の活性成分を更に含有してもよい。
【0101】
慣習的な追加の化粧品成分
【0102】
本発明による組成物はまた、特に酸化防止剤、芳香剤、防腐剤、中和剤、界面活性剤、日焼け止め剤、ビタミン類、保湿剤、自己日焼け化合物、抗しわ活性成分、皮膚軟化剤、親水性又は親油性活性成分、抗フリーラジカル剤、脱臭剤、封鎖剤、皮膜形成剤、及びこれらの混合物から選択され得る任意の慣習的な化粧品成分を含んでもよい。
【0103】
特に、本発明による組成物は、少なくとも1つの日焼け止め剤を含んでもよい。
【0104】
本発明によるシクロデキストリンの使用
【0105】
第1の実施形態によれば、本発明の主題のうちの1つは、生理学的に許容される媒体中に分散した固体粒子の形態で少なくとも部分的に存在する少なくとも1つのシクロデキストリンの、化粧品又は皮膚科学的組成物における使用であって、シクロデキストリン粒子が、レーザー粒径分析によって測定される、20μm以下、より好ましくは12μm以下、及び最も好ましくは8以下の体積平均粒径d(4.3)と、レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布であって、その代表径d(10)、d(50)及びd(90)が、
a.直径d(10)が5.0μm以下、好ましくは2.5μm以下であり、
b.直径d(50)が15.0μm以下、好ましくは10.0μm以下であり、
c.直径d(90)が30.0μm以下、好ましくは25.0μm以下であるような、体積粒径分布と、を有することを特徴とし、使用が、組成物の感覚特性を改善するための、好ましくは、広がりやすさ、及び/又は柔らかい、粉末状の脂っぽくない感触を付与し、かつ/若しくはピリングを防止するためのものである、使用に関する。
【0106】
また、この使用により、適用時のきしみ感覚を明確に低減することができ、また、皮膚の種類に応じて、ピリングの軽減、又は更には消失を可能にする。
【0107】
特に、この用途で使用されるシクロデキストリンは、上記の通りである。
【0108】
本発明による化粧品組成物の調製方法
【0109】
本発明の最終的な主題は、化粧品組成物、好ましくは水中油型エマルションを調製するための方法であって、
a)生理学的に許容される媒体を準備する工程と、
b)生理学的に許容される媒体内で、少なくとも1つのシクロデキストリンを分散させる工程であって、シクロデキストリンが、レーザー粒径分析によって測定される、20μm以下、より好ましくは12μm以下、及び最も好ましくは8以下の体積平均粒径d(4.3)と、レーザー回折式粒径分布分析によって測定される体積粒径分布であって、その代表径d(10)、d(50)及びd(90)が、
a.直径d(10)が5.0μm以下、好ましくは2.5μm以下であり、
b.直径d(50)が15.0μm以下、好ましくは10.0μm以下であり、
c.直径d(90)が30.0μm以下であり、好ましくは25.0μm以下であるような、体積粒径分布と、を有する、少なくとも1つのシクロデキストリンを分散させる工程と、を含む方法からなる。
【0110】
1つの変形によれば、本発明による方法は、生理学的に許容される媒体中のシクロデキストリンの含有量が、媒体中のその溶解度よりも5%大きい、好ましくはその溶解度よりも10%大きい、より好ましくはその溶解度よりも25%大きい、及びより好ましくはその溶解度よりも50%大きいことを特徴とする。
【実施例】
【0111】
実施例1:エマルション
【0112】
本発明に従って製造されたO/Wエマルションを、以下の組成を有する本発明に従って生成されない「参照」エマルションと比較した。
【0113】
【0114】
表1:エマルションの組成
【0115】
参照エマルションは、本出願人による「Beaute by Roquette(登録商標)CD102」という名称で販売されているβ-シクロデキストリンを使用して得られる。本発明によるエマルションは、この同じβ-シクロデキストリンを使用して得られ、予め20μm未満の体積平均粒径d(4.3)を有するように乾燥粉砕されたものであり、このようにして得られたβ-シクロデキストリンは、「超微細」と呼ばれる。これら2つのβ-シクロデキストリンの粒径特性を表2に示す。
【0116】
【0117】
表2:β-シクロデキストリンの粒径特性
【0118】
エマルションを調製するためのプロトコルは、以下の通りである。増粘剤(この場合、キサンタンガム)は、500rpmで解膠ブレード(deflocculating blade)を用いて撹拌しながら40℃で水中に分散される。別個に、β-シクロデキストリンをソルビトール及びジイソステアリン酸ポリグリセリル-3と混合する。次いで、この混合物を、水相を得るために、1000rpmで撹拌しながら、増粘剤を含有する水に添加する。
【0119】
β-シクロデキストリンの量は、2つのエマルションの組成物の2.5重量%に固定される。
【0120】
ヒマワリ油は油相を構成し、40℃に加熱される。
【0121】
次いで、3000rpmで20分間撹拌しながら、油相を40℃の水相中で乳化させる。
【0122】
これを冷却し、室温(20℃)でフェノキシエタノール系防腐剤を最後に添加する。
【0123】
エマルションのそれぞれについて、物理化学的特性、すなわち粘度及び液滴サイズが測定され、感覚特性、すなわち、不透明度、白色度、光沢、流動性、滑らかな流動性、滑り、白化、広がり、脂っぽさ、粘着性、柔らかさ、きしみ感、浸透性、粉っぽさ、及びピリングが測定される。
【0124】
粘度は、Brookfield DV-II+Pro粘度計を使用して測定される。固定サイズのスピンドル(装置推奨に従って、粘度レベルに応じて使用されるスピンドルSP2及びSP7)を、生成された試料と接触させて20rpmの速度で回転させる。この回転運動に対する製品の抵抗を1分間記録し、ミリパスカル秒に変換する。各試料について、粘度を3回測定し、3つの値の算術平均を保持する。
【0125】
液滴サイズは、光学顕微鏡で10倍の倍率で観察される。使用される顕微鏡は、LEICA DMLSである。
【0126】
感覚特性は、化粧品の質感を分析する専門家である10人のパネルによって評価される。
評価された3つの第1の記述子は、製品の視覚特性である。この検査は、5500K温度電球を取り付けたランプ下でポット内で実施される。
記述子流体は、親指と人差し指との間の製品に圧力が加えられたときに評価される。抵抗がなく、かつそれが指から流れ落ち、圧力ゾーンから離れて移動する場合、それは流体であり、その逆である場合、非流体である。
製品が広げられると、4つの他の記述子が評価される。50~100μlの試験された製品を手に載せ、ランプの下で10回転で広げた後に、製品を試験した。
記述子の粉っぽさは、2回目の回転と5回目の回転との間で評価される。指を、皮膚の上で十分に摺動させる。製品は、皮膚上の粉末状物質として認知される。
広がりは、50~100μlの製品を手の上に載せた後、ランプ下で10回転でそれを広げる間に製品を検査することによって評価される。広がりが大きくなると、移動に対する抵抗が小さくなり、手の上の5回目~10回目の回転の間に存在する移動に対する抵抗がより小さくなる。
【0127】
最終記述子は、10回転を行った後に評価される。
以下の4つの記述子の場合、試験は、50~100μlの製品を広げた1分後に、ランプの下で皮膚上で実施される。
柔らかさの記述子は、皮膚上で摺動することによって評価され、乾燥及び滑りやすい感触が認知される。
きしみ感の記述子は、親指を人差し指上で摺動させることによって評価され、抵抗が認知され、きしむ音が聞こえる。
以下の2つの記述子の場合、試験は、50~100μlの製品を広げた2分後に、ランプの下で皮膚上で実施される。
製品の浸透性記述子は、皮膚上で摺動させることによって評価される。次いで、評価者のパネルは、回収された製品残渣の量を評価する。
ピリングは、皮膚に対して機械的摩擦作用を行うことによって評価され、製品はピリングをもたらす。
【0128】
【0129】
表3:参照エマルションと比較して感覚認知を改善する
【0130】
本発明によるエマルションにおいて改善される感覚特性の基準は、流動性、粉っぽさ、広がり、脂っぽさ、柔らかさ、きしみ感、浸透性、ピリングである。
【0131】
実施例2:日焼け止めクリーム
【0132】
平均直径200μmのβ-シクロデキストリン(実施例1のBeaute by Roquette(登録商標)CD102)を用いて調製した日焼け止めクリーム配合物の感覚プロファイルを、以下の手順に従って、体積平均粒径11.43μmのβ-シクロデキストリン(実施例1の超微細β-シクロデキストリン)を用いて調製したものと比較した。
【0133】
まず、表4の組成に従って相A1を調製する:Sunsphere粉末を水及びセチオールC5中に分散させた後、ローター-ステーターを用いて2000rpmで15分間撹拌しながら、55℃で加熱する。
【0134】
【0135】
表4:相A1の組成
【0136】
別個に、相A2を、皿内の全ての成分を秤量し、次いでローター-ステーターで2000rpmで15分間撹拌しながら相A1に添加することによって調製した。相A1+A2を撹拌しながら70℃に維持する。
【0137】
【0138】
表5:相A2の組成
【0139】
次に、相B1を、表6の組成を10分間磁気撹拌しながら、70℃で加熱することによって調製する。
【0140】
【0141】
表6:相B1の組成
【0142】
相B1を撹拌しながら70℃に維持し、相B2を添加し、これを別個に調製し、表7の組成に従って形成し、これを撹拌下で10分間維持し、その後、相B1+B2を相A中で乳化する。
【0143】
【0144】
表7:相B2の組成
【0145】
相A中で相B1+B2を乳化させるために、相B1+B2の全体を55℃の相Aに、ローター-ステーターで2500rpmで撹拌しながら注ぎ入れ、次いで温度を55℃で5分間、及び冷水浴中で10分間維持する。速度を1200rpmに低下させ、エマルションが冷水浴中で室温になるまで撹拌を継続する。
【0146】
次いで、相Cを添加し、次いで、相Dを用いて着色を行う。
【0147】
次いで、着色され及び香り付けしたクリームが得られる。皮膚に塗布されるとき、クリームは小さい玉を形成し、それは快適であるが、それを広げる間にきしみ効果が認められる。
【0148】
【0149】
表8:相C及びDの組成
【0150】
日焼け止めクリームを、「Beaute by Roquette(登録商標)CD102」を実施例1の「超微細」β-シクロデキストリンで置き換えて、前述のプロトコルに従って調製する。クリームは皮膚に適用され、これは、もはや小さい玉を形成せず、クリームはより快適である。わずかなきしみ効果はクリームの浸透の最後に残るが、β-シクロデキストリン「Beaute by Roquette(登録商標)CD102」を含む参照配合物よりも著しく少ない。
【国際調査報告】