(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】強化された量子ドットオンカラーフィルタLCD
(51)【国際特許分類】
G02F 1/1335 20060101AFI20220121BHJP
G02F 1/13357 20060101ALI20220121BHJP
G02B 5/20 20060101ALI20220121BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
G02F1/1335 505
G02F1/13357
G02B5/20
G02B5/20 101
G02B5/30
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530904
(86)(22)【出願日】2019-11-21
(85)【翻訳文提出日】2021-07-28
(86)【国際出願番号】 US2019062526
(87)【国際公開番号】W WO2020112470
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】397068274
【氏名又は名称】コーニング インコーポレイテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100073184
【氏名又は名称】柳田 征史
(74)【代理人】
【識別番号】100123652
【氏名又は名称】坂野 博行
(74)【代理人】
【識別番号】100175042
【氏名又は名称】高橋 秀明
(72)【発明者】
【氏名】ハン,ソンフォン
(72)【発明者】
【氏名】イシカワ,トモヒロ
(72)【発明者】
【氏名】キセリョフ,ヒョードル ドミトリエヴィッチ
(72)【発明者】
【氏名】ムレイネク,ミハル
【テーマコード(参考)】
2H148
2H149
2H291
2H391
【Fターム(参考)】
2H148AA16
2H148AA18
2H148AA24
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2H149EA10
2H149FC01
2H149FC08
2H149FC09
2H291FA02X
2H291FA16X
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2H291FA22Z
2H291FA30X
2H291FA30Z
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2H291GA02
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2H391AA12
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2H391AB45
2H391AC53
2H391EA02
2H391EA05
2H391EA13
2H391EA16
(57)【要約】
LCDスタックの内部の高角度の入射光を除去または最小化することによってコントラスト比を向上させるエンハンスメントフィーチャの特定の組み合わせを有する、量子ドットオンカラーフィルタ(QDCF)LCD装置が開示されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置であって、
当該量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置は、
カバーガラスと、
背面リフレクタ層と、
前記カバーガラスと前記背面リフレクタ層との間の液晶パネル層と、
前記液晶パネル層と前記背面リフレクタ層との間に設けられていて、前記液晶パネル層のための像形成光を生成するように構成されたバックライトユニットと、
前記カバーガラスと前記液晶パネル層との間の量子ドット層と、
前記カバーガラスと前記量子ドット層との間のカラーフィルタ層であって、当該カラーフィルタ層と前記量子ドット層とが組み合わされて、コリメートされた前記像形成光の波長を変換することにより色を形成するように構成されている、カラーフィルタ層と、
前記液晶パネル層と前記バックライトユニットとの間に位置する下部の偏光子層と、
前記液晶パネル層と前記量子ドット層との間に位置する上部の偏光子層と
を含み、
当該量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置は、以下のうちの1つ以上をさらに含み、すなわち、
(a)前記カラーフィルタ層と前記量子ドット層との間の低屈折率材料層(LIML)、
(b)前記液晶パネル層のためのコリメートされた像形成光を生成するように構成されたバックライトユニット、
(c)前記下部の偏光子層および前記上部の偏光子層のうちの一方または両方がE型偏光子材料を含むこと、
(d)前記下部の偏光子層および前記上部の偏光子層が、それぞれAプレート、Cプレート、および二軸性プレートのうちの1つ以上を含む補償フィルムを含むこと、
(e)前記上部の偏光子層と前記量子ドット層との間のプライバシーフィルタフィルム、
のうちの1つ以上をさらに含む、
量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置。
【請求項2】
当該QDCF LCD装置が、
前記(a)を含み、
前記LIMLと前記量子ドット層との間の界面のためのASTM D1003ヘイズ値は、50%以下である、
請求項1記載のQDCF LCD装置。
【請求項3】
当該QDCF LCD装置が、
前記(a)を含み、
前記LIMLの屈折率値は、1.5~1.0の範囲内である、
請求項1記載のQDCF LCD装置。
【請求項4】
当該QDCF LCD装置が、
前記(a)を含み、
前記量子ドット層と前記上部の偏光子層との間のショートパスフィルタと、
前記量子ドット層と前記ショートパスフィルタ層との間の追加的なLIMLと
をさらに含む、
請求項1記載のQDCF LCD装置。
【請求項5】
当該QDCF LCD装置が、
前記(e)を含み、
前記量子ドット層と前記上部の偏光子層との間のショートパスフィルタをさらに含み、
前記プライバシーフィルタフィルムは、前記上部の偏光子層と前記ショートパスフィルタとの間にある、
請求項1記載のQDCF LCD装置。
【請求項6】
前記バックライトユニットによって生成されて、コリメートされた前記像形成光は、±30度以下の半頂角を有する、
請求項1記載のQDCF LCD装置。
【請求項7】
前記カラーフィルタ層および前記量子ドット層は、一緒に複数のピクセル領域を含み、それぞれのピクセル領域は、赤色サブピクセル領域、緑色サブピクセル領域、および青色サブピクセル領域を含み、
当該装置は、黒色マトリクスバリア構造体をさらに有し、前記黒色マトリクスバリア構造体は、前記カラーフィルタ層および前記量子ドット層を貫通して延在していて、隣り合う2つのサブピクセル領域を分離しており、前記黒色マトリクスは、前記カラーフィルタ層と前記量子ドット層とに接する側面を含み、
前記黒色マトリクスの側面は、±20度以下の偏差を伴って45度の角度で傾斜している、
請求項1記載のQDCF LCD装置。
【請求項8】
量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置であって、
当該量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置は、
カバーガラスと、
背面リフレクタ層と、
前記カバーガラスと前記背面リフレクタ層との間の液晶パネル層と、
前記液晶パネル層と前記背面リフレクタ層との間に設けられていて、前記液晶パネル層のための像形成光を生成するように構成されたバックライトユニットと、
前記カバーガラスと前記液晶パネル層との間の量子ドット層と、
前記カバーガラスと前記量子ドット層との間のカラーフィルタ層であって、当該カラーフィルタ層と前記量子ドット層とが組み合わされて、前記液晶パネル層を透過した前記バックライトユニットからのコリメートされた像形成光の波長を変換することにより色を形成するように構成されている、カラーフィルタ層と、
前記液晶パネル層と前記バックライトユニットとの間に位置する下部の偏光子層と、
前記液晶パネル層と前記量子ドット層との間に位置する上部の偏光子層と、
前記カラーフィルタ層と前記量子ドット層との間に設けられた低屈折率材料層(LIML)と
を含み、
当該量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置は、以下のうちの1つ以上をさらに含み、すなわち、
(a)前記下部の偏光子層および前記上部の偏光子層のうちの一方または両方がE型偏光子材料から形成されていること、
(b)前記液晶パネル層のためのコリメートされた像形成光を生成するように構成されたバックライトユニット、
(c)前記下部の偏光子層および前記上部の偏光子層が、それぞれAプレート、Cプレート、および二軸性プレートのうちの1つ以上を含む補償フィルムから形成されていること、
(d)前記上部の偏光子層と前記量子ドット層との間に設けられたプライバシーフィルタフィルム、
のうちの1つ以上をさらに含む、
量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置。
【請求項9】
前記LIMLと前記量子ドット層との間の界面のためのASTM D1003ヘイズ値は、50%以下である、
請求項8記載のQDCF LCD装置。
【請求項10】
前記LIMLの屈折率値は、1.5~1.0の範囲内である、
請求項8記載のQDCF LCD装置。
【請求項11】
当該QDCF LCD装置は、
前記量子ドット層と前記上部の偏光子層との間のショートパスフィルタと、
前記量子ドット層と前記ショートパスフィルタ層との間の追加的なLIMLと
をさらに含む、
請求項8記載のQDCF LCD装置。
【請求項12】
当該QDCF LCD装置が、
前記(d)を含み、
前記量子ドット層と前記上部の偏光子層との間のショートパスフィルタをさらに含み、
前記プライバシーフィルタフィルムは、前記上部の偏光子層と前記ショートパスフィルタとの間にある、
請求項8記載のQDCF LCD装置。
【請求項13】
前記バックライトユニットによって生成されて、コリメートされた前記像形成光は、±30度以下の半頂角を有する、
請求項8記載のQDCF LCD装置。
【請求項14】
前記カラーフィルタ層および前記量子ドット層は、一緒に複数のピクセル領域を含み、それぞれのピクセル領域は、赤色サブピクセル領域、緑色サブピクセル領域、および青色サブピクセル領域を含み、
当該装置は、黒色マトリクスバリア構造体をさらに有し、前記黒色マトリクスバリア構造体は、前記カラーフィルタ層および前記量子ドット層を貫通して延在していて、隣り合う2つのサブピクセル領域を分離しており、前記黒色マトリクスは、前記カラーフィルタ層と前記量子ドット層とに接する側面を含み、
前記黒色マトリクスの前記側面は、±20度以下の偏差を伴って45度の角度で傾斜している、
請求項8記載のQDCF LCD装置。
【発明の詳細な説明】
【関連出願】
【0001】
本願は、米国特許法第119条のもと、2019年1月30日に出願された米国仮特許出願第62/798607号および2018年11月30日に出願された米国仮特許出願第62/773449号の優先権の利益を主張し、その内容は本発明の依拠するところであって、その内容全体を参照により本明細書に援用するものとする。
【技術分野】
【0002】
本開示は、強化された量子ドットオンカラーフィルタLCDに関する。
【背景技術】
【0003】
液晶ディスプレイ(LCD)業界は、有機発光ディスプレイ(OLED)製品に対抗するために、LCDの効率を改善し、かつLCDの色域(ディスプレイの色含有率)を改善する解決策を模索している。従来のLCDは、特に色域性能の点でOLEDに遅れを取っている。LCDにおける量子ドット(QD)の使用は、LCDの色域性能を改善する。実際に、そのような改善は、バックライトユニット(BLU)において、すなわち、LCDピクセル化パネルの液晶(LC)で充填されたピクセルのアクティブマトリクスを通過する光を提供する光源においてQDフィルム素子が使用されているような、LCD設計において既に見受けられる。これらのBLU設計では、青色LEDの光が導光板(LGP)に結合され、LCDピクセル化パネルに向かう方向にLGPから抽出される。ガイドされた青色光は、次いで、青色光の一部を吸収して緑色および赤色のスペクトルの光を放射するQDに遭遇する。結果として生じる赤色、緑色、および青色のスペクトルの光は、LCDピクセル化パネルのための白色光源を提供する。
【0004】
他の設計では、QD材料は、LCDピクセル化パネルの内部の対応する個々のピクセル内へと直接的に配置される。この設計は、より広い色域が見込まれるだけでなく、場合によっては、従来の(QDを用いない)LCD設計において個々のピクセルの色を定義するカラーフィルタ(CF)に取って代わるものとなる。このような設計は、「量子ドットオンカラーフィルタ」(QDCF)設計と称される。QDCF設計では、QDピクセルは、LCとともに光の偏光を操作するLCDの一部である2つの偏光子に光が遭遇したその下流に配置される。
【0005】
一対の完璧な偏光子であっても、これらの偏光子に「シート状の偏光子の平面に対して非法線」方向(法線方向は、発光素子の面に対して垂直である)で入射する光に対しては光漏れを許してしまう。
図1Aおよび
図1Bは、LC媒体を模倣するために位相リターダが間に挿入されている一対の交差偏光子を通した光透過を、視野角度の関数として示す。
図1Aおよび
図1Bは、それぞれピクセルが「オン」である場合および「オフ」である場合における、一対の交差偏光子を通した光透過を、視野角度(法線視野角度は、図面の中心である)の関数として示す。x軸のラベルHおよびy軸のラベルVは、それぞれ水平方向および垂直方向において法線視野角度(図面の中心)から偏差した「水平」および「垂直」の角度(単位:度)を表す。
図1Aは、一対の交差偏光子を透過して、オン状態にある従来のLCDから放射された光を示す図である。高角度の光線は、高入射角度(または高視野角度)でのコントラスト比(CR)の急激な低下をもたらす。したがって、
図1Aの90度の視野角度に近い周縁部の周りの暗い領域は、比較的高い視野角度における比較的低い透過を示す。
図1Bは、一対の交差偏光子を透過して、オフ状態にある従来のLCDから放射された光(すなわち、光漏れ)を示す図である。
【0006】
図1Aおよび
図1Bに示されているオン状態とオフ状態との間の発光を比較すると、従来のLCDでは、高角度の光線は、高入射角度(または高視野角度)でのコントラスト比(CR)の劇的な低下をもたらす。CRは、オン状態にあるLCDによって放射された光と、オフ状態にあるLCDによって放射された光との間の比を測定したものである。理想的には、オフ状態は、全ての入射角度に対して可能な限り暗くあるべきであり、したがって、暗状態と呼ばれる。CRは、暗状態(分母)では光に非常に敏感である。暗状態では、少量の光でさえもCRを著しく低下させる。
【0007】
本発明者らは、QDCFのシミュレーションにおいて、CRの大幅な低下は、偏光子を高視野角度で通過する光漏れの結果であることを観察した。従来のLCDでは、漏れた光は、高視野角度の方へ向かうままであるが、QDCFでは、青色の光源光を含むこの光が著しく散乱される。このことはつまり、漏れた光が、法線視野角度に近い角度にも向けられ、法線(および他の)方向に関してCRの定義の分母における暗状態での光の値を増加させ、種々の視野角度にわたってCRを有効に平均化することを意味する。このような平均化は、CRを格段に低減し、望ましくないことである。
【0008】
図2Aは、従来のLCDの例に関するCRのプロットであり、
図2Bは、従来のQDCFに関するCRのプロットである。x軸のラベルHおよびy軸のラベルVは、それぞれ水平方向および垂直方向の法線視野角度(図面の中心)から偏差した「水平」および「垂直」の角度(単位:度)を表す。
図2Aは、従来のLCDに関するCRを示す。従来のLCDでのCRは、プロットの中心のピークによって表されている法線視野角度(すなわち、水平および垂直の角度が0度である)において~3200:1であると計算されたが、水平および垂直の視野角度が増加するにつれて著しく降下する。したがって、従来のLCDでのCRは、観察者がLCDを法線視野角度で見ていない場合には格段に劣化する。このことは、観察者に対して非常に不均一な観察体験を与えることとなる。
図2Bは、QDCF LCDに関するCRを示す。QDCF LCDのCRは、より均一であるが、その値は、~128:1と非常に低くなっている。低CRは、結果として観察者にとっての画質の低下をもたらす。たとえ法線視野角度でのCRが、数1000の値を有することができたとしても(垂直配向LCモードディスプレイは、~5000のCRを有することができる)、高視野角度の場合には、CRは10未満に降下する。
【0009】
QDベースのディスプレイは、一般に、比較的高い色精度と、比較的広い色域とを提供する。現在の技術は、バックライトのための青色LEDと、バックライトユニット(BLU)の内側の赤色および緑色のQDの混合物を有するQDフィルムとを使用して、青色光を白色光に変換する。QDCFの別の概念は、BLUではなくカラーフィルタ(CF)において変換を行うことによってさらに良好な色域を可能にする。このような設計では、ショートパスフィルタは、QD層/カラーフィルタ層とBLUとの間にある。内容全体が参照により本明細書に援用される特許文献1に開示されている別のアプローチでは、変換後の青色光をフィルタリングするためにバンドカットフィルタが使用される。バックライトから到来するUV光と、青色のQDとを利用するスキームも存在し、これも特許文献1に記載されている。
【0010】
低CRに加えてこれらの設計において観察される別の問題は、高出力角度での光が内部全反射(TIR)によりカバーガラスの内側でトラップされることである。従来のLCD設計では、光出力は、制限された出力角度に集中することが多いので、TIRは、制限要因ではない。しかしながら、QDCF設計では、QD層が種々の角度で光を再放射するので、相当な量の光がTIRを経験することになる。TIRによって反射された光は、異なる色または同じ色のカラーフィルタ(CF)によって吸収され(典型的な吸収性のCFは、80%~90%の透過率を有する)、その結果、最終的にLCDによって放射される光の量が著しく失われる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【特許文献1】米国特許出願公開第2017/0153366号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
したがって、改善されたCRを有する改善されたQDCFアーキテクチャが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本開示の一実施形態によれば、QDCF LCD装置が開示される。当該QDCF LCD装置は、カバーガラスと、背面リフレクタ層と、カバーガラスと背面リフレクタ層との間の液晶パネル層と、液晶パネル層と背面リフレクタ層との間に設けられていて、液晶パネル層のための像形成光を生成するように構成されたバックライトユニットと、カバーガラスと液晶パネル層との間の量子ドット層と、カバーガラスと量子ドット層との間のカラーフィルタ層であって、当該カラーフィルタ層と量子ドット層とが組み合わされて、液晶パネル層を透過したバックライトユニットからの像形成光の波長を変換することにより色を形成するように構成されている、カラーフィルタ層と、液晶パネル層とバックライトユニットとの間に位置する下部の偏光子層と、液晶パネル層と量子ドット層との間に位置する上部の偏光子層とを含み、当該QDCF LCD装置は、以下のエンハンスメントフィーチャのうちの1つ以上をさらに含み、すなわち、
(a)カラーフィルタ層と量子ドット層との間に設けられた低屈折率材料層(LIML)、
(b)液晶パネル層のためのコリメートされた像形成光を生成するように構成されたバックライトユニット、
(c)下部の偏光子および上部の偏光子のうちの一方または両方がE型偏光子材料から形成されていること、
(d)下部の偏光子および上部の偏光子が、それぞれAプレート、Cプレート、および二軸性プレートのうちの1つ以上を含む補償フィルムから形成されていること、
(e)上部の偏光子と量子ドット層との間に設けられたプライバシーフィルタフィルム、
のうちの1つ以上をさらに含む。
【0014】
いくつかの実施形態によれば、当該QDCF LCD装置は、液晶パネル層のための像形成光を生成するように構成されたバックライトユニットと、カラーフィルタ層と量子ドット層との間に設けられたLIMLとを含み、当該QDCF LCD装置は、以下のエンハンスメントフィーチャのうちの1つ以上をさらに含み、すなわち、
(a)下部の偏光子および上部の偏光子のうちの一方または両方がE型偏光子材料から形成されていること、
(b)液晶パネル層のためのコリメートされた像形成光を生成するように構成されたバックライトユニット、
(c)下部の偏光子および上部の偏光子が、それぞれAプレート、Cプレート、および二軸性プレートのうちの1つ以上を含む補償フィルムから形成されていること、
(d)上部の偏光子と量子ドット層との間に設けられたプライバシーフィルタフィルム、
のうちの1つ以上をさらに含む。
【0015】
上記の概括的な説明および以下の詳細な説明は、両方とも本開示の実施形態を提示しており、特許請求される主題の性質および特性を理解するための概観または枠組みを提供することを意図したものであることを理解されたい。添付の図面は、本開示のさらなる理解を提供するために含まれており、本明細書の一部に組み込まれており、かつ本明細書の一部を構成している。図面は、種々の実施形態を例示し、本明細書とともに、特許請求される主題の原理および動作を説明するために使用される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
これらの図面は、例示する目的で提供されており、本明細書に開示および説明されている実施形態は、図示された配置および手段に限定されていないことを理解されたい。
【
図1A】ピクセルが「オン」である場合における一対の交差偏光子を通した光透過の角度依存性を示す図である。
【
図1B】ピクセルが「オフ」である場合における一対の交差偏光子を通した光透過の角度依存性を示す図である。
【
図2A】従来のLCDに関するコントラスト比のプロットである。
【
図2B】従来のQDCF LCDに関するコントラスト比のプロットである。
【
図3】QDCFに関するコントラスト比の改善傾向を、光源光のコリメーションの関数として示すプロットである。
【
図4A】コリメートされていない光を用いた従来のQDCF LCDに関するコントラスト比のプロットである。
【
図4B】コリメートされた光を用いたQDCF LCDに関するコントラスト比のプロットである。
【
図5】本開示による例示的なQDCF LCD構造体の概略図である。
【
図6】本開示によるQDCF LCD構造体における1つのピクセル領域の概略断面図である。
【
図7A】従来技術のQDCF構造体におけるピクセル領域の一部の概略断面図である。
【
図7B】本開示の一実施形態によるLIMLを用いたQDCF構造体におけるピクセル領域の一部の概略断面図である。
【
図8】LIMLの屈折率に対する相対的な発光効率を示すプロットである。
【
図9】本開示の一実施形態による黒色マトリクス構造体の一例の概略図である。
【0017】
本明細書には詳細が含まれている場合があるが、これらの詳細は、範囲を限定するものとして解釈されるべきではなく、特定の実施形態に特有である可能性のある特徴を説明するものとして解釈されるべきである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
発光コーティングおよびデバイスに関する種々の実施形態を、図面を参照しながら説明する。なお、図面では、理解を容易にするために同様の要素には同様の参照符号が付されている。
【0019】
また、別段の明記がない限り、「上部」、「下部」、「外部」、「内部」等のような用語は便宜上の用語であり、限定する用語として解釈されるべきではないことも理解されたい。さらに、あるグループが、複数の要素からなる群および組み合わせのうちの少なくとも1つを含むと記載されている場合には常に、そのグループは、単独でもまたは互いに組み合わせても、列挙されたそれらの要素のうちの任意の個数の要素を含むことができるか、任意の個数の要素から実質的に構成可能であるか、または任意の個数の要素から構成可能である。
【0020】
同様に、あるグループが、複数の要素からなる群または組み合わせのうちの少なくとも1つから構成されていると記載されている場合には常に、そのグループは、単独でもまたは互いに組み合わせても、列挙されたそれらの要素のうちの任意の個数の要素から構成可能である。別段の明記がない限り、値の範囲は、列挙されている場合、その範囲の上限および下限の両方を含む。本明細書において使用する場合には、不定冠詞「a」ならびに「an」および対応する定冠詞「the」は、別段の明記がない限り、「少なくとも1つ」または「1つ以上」を意味する。
【0021】
当業者は、記載されている実施形態に多数の変更を加えることが可能であって、それでもなお、本開示の有利な結果が得られることを認識するであろう。また、本開示の所望の利益のいくつかは、その他の特徴を使用することなく、記載されている特徴のいくつかを選択することによって得られることも明らかになるであろう。したがって、当業者は、多数の修正および適合が可能であり、それどころか特定の状況では望ましい場合もあり、本開示の一部であることを認識するであろう。したがって、以下の説明は、本開示の原理の例示として提供するものであって、本開示を限定するものではない。
【0022】
当業者は、本開示の思想および範囲から逸脱することなく、本明細書に記載されている例示的な実施形態に対する多数の修正が可能であることを理解するであろう。したがって、本明細書は、記載されている例に限定されることを意図するものではなく、そのように解釈されるべきではなく、添付の特許請求の範囲およびその等価形態によって得られる保護の全範囲が付与されるべきである。さらに、本開示の特徴のいくつかを、その他の特徴を相応に使用することなく使用することができる。したがって、例示的または例証的な実施形態の前述の説明は、本開示の原理を説明するために提供されており、本開示を限定するものではなく、本開示に対する修正形態および代替形態を含むことができる。
【0023】
発明者らは、QDCFディスプレイにおけるCR低下の理由が、「暗状態」における偏光子を通した光漏れであることを特定した。本開示は、光漏れを低減または除去することによって課題を解決する。このことは、従前は公知でなかった1つ以上の特定の技術をQDCFに組み込むことによって達成される。そのような技術とは、以下の通りであり、すなわち、(1)バックライトユニット(BLU)光源からの光をコリメートすることにより、LCD構造体の内部の光に関する高入射角度を除去すること、(2)高入射角度での光漏れがO型偏光子よりも少ないE型偏光子を使用すること、(3)偏光子の光漏れを引き起こす高入射角度を低減する補償フィルムを使用すること、(4)偏光子の光漏れを引き起こす高入射角度を低減する覗き見防止用プライバシーフィルムを使用すること、および(5)QDCF構造体内のQD層の上部に低屈折率材料層(LIML)を追加することである。本開示によれば、これらの技術は、QDCF構造体にそれぞれ個別に組み込まれるか、または場合により、これらの技術の2つ以上を組み合わせて組み込まれる。
【0024】
本明細書に開示されている技術の利益は、(ピクセル化された)LCセルの内部のQDを、CRまたは輝度を損なうことなくQDの色域の利点、QDの色角度の均一性(色ずれが最小)とともに使用できることである。結果として得られるQDCFは、従来のQDCF LCDよりも高効率なものとなる。
【0025】
LCDのBLU光源からの実質的にコリメートされた光を使用することにより、従来のLCDで見られる負の視差の問題が最小限に抑えられるので、厚い偏光子を使用することが可能となる。E型偏光子、補償フィルム、または覗き見防止用プライバシーフィルムを使用することにより、バックライトユニット(BLU)における光リサイクルの利益を維持しつつ、特定の技術を使用することが可能となる。
【0026】
光源光をコリメートする:LCD光源からの光をコリメートすることにより、LCD構造体の内部の光に関する高入射角度を除去することにより、CRが改善される。
図3は、QDCF LCDに関するCRの改善傾向を、光源光のコリメーションの関数として示す。これらの測定のために、BLUの代わりに矩形のランベルト光源が使用された。コリメーションは、光源光の角度範囲を特徴付ける円錐の半頂角(単位:度)として与えられている。したがって、0度の半頂角は、光源光がLCD平面に直角で入射する完全にコリメートされた光を表す。コリメーションは、複数の異なる半頂角を有する円錐の内部に光源を閉じ込めることによってシミュレーションされた。
図3のプロットは、CRに対するコリメーションの有益な効果が指数関数的であることを示す。本発明の例では、コリメーションを±30度以下の、好ましくは±20度以下の、より好ましくは±15度以下の半頂角に制限することにより、CRを1277:1~3885:1の範囲にすることが可能となる。
【0027】
図4Aおよび
図4Bにおいて、コリメートされた光を用いたQDCFの性能が、コリメートされていない光を用いた従来のQDCFの性能と比較された。
図4Aは、
図2Bに示されているプロットと同じであり、これは、(モデル化されたBLUユニットによって生成された角度分布を有する)コリメートされていない光を用いたQDCFに関するCRを、「水平」角度についての視野角度Hと、「垂直」角度についての視野角度Vとの関数としてプロットしたものである。CRは、~128:1の値を有していて均一である。
図4Bは、±15度の円錐光源のコリメーションを用いたQDCFに関するCRのプロットである。CRは、同じく均一であるが、CR値は、~3885:1に著しく向上している。光源光の角度分散の範囲を特徴付ける円錐の半頂角(単位:度)として、±15度のコリメーションが与えられている。本発明に適用可能な、BLUのためのコリメートされた光源の一例は、米国特許第7,530,721号明細書に開示されている両面転向フィルムであり、同明細書の内容を参照により本明細書に援用するものとする。別の一例は、T. IshikawaおよびXiang-Dong Mi, P-82: 「New Design for a Highly Collimating Turning Film,」 SID 06 DIGEST (2006)に記載されており、同文献の内容を参照により本明細書に援用するものとする。
【0028】
図5は、本開示による例示的なQDCF LCDパネル構造体500の概略垂直断面図を示す。QDCF LCDパネル構造体500は、カバーガラス595から遠い順に、背面リフレクタ層510、導光板(LGP)520、1つ以上の光学シート530、下部の偏光子540、液晶(LC)層550、上部の偏光子560、ショートパスフィルタ(SPF)570、パターニングされた量子ドット(QD)層580、カラーフィルタ(CF)590、およびカバーガラス595を含む。QD層580およびCF層590は、
図6に示されているように、赤色、緑色、および青色のサブピクセル領域へと画定される、パターニングまたはピクセル化された構造体を有する。CF層590のサブピクセル領域同士は、黒色マトリクス600の構造体によって分離されている。QDCF LCDパネル構造体500を構成する層は、
図5に示されている層のみに限定されているわけではない。QDCF LCDパネルの別の異なる実施形態は、QDCF LCDパネルおよびLCDパネルの、当技術分野において公知の1つ以上のその他の機能層を含むことができる。このような追加的な機能層の例は、輝度向上フィルムおよび拡散板である。本開示のいくつかのエンハンスメントフィーチャの位置は、
図5に示されているQDCF構造体500の左側に沿って記載されている。
【0029】
効率的なコリメートされた光源を作製することは困難かつ高コストである場合があるので(例えば、光リサイクルの利用率は限られており、構造体の製造は複雑であるので)、QDCFにおいて使用するための、高入射角度を低減する追加的な方法も開示されている。
図5に示されている例示的なQDCF構造体500を参照すると、一実施形態によれば、上部の偏光子560および下部の偏光子540のうちの一方または両方を、従来のQDCFデバイスにおいて使用されるO型偏光子ではなくE型偏光子とすることができる。O型偏光子は、(方向の3次元空間内の1次元に相当する、一軸性材料内の)異常光波を抑制する。しかしながら、E型偏光子は、方向の3次元空間内の2次元を占めている正常光波を抑制し、より効果的であろう。種々のE型偏光子が利用可能である。その一例は、米国特許第5,739,296号明細書に記載されている方法によって製造された単層E型偏光子であり、同明細書の内容を参照により本明細書に援用するものとする。
【0030】
いくつかの実施形態では、本明細書に開示されているQDCFのための新規のエンハンスメントフィーチャのうちの1つ以上と組み合わせて、高入射角度の光を除去するように設計された補償フィルムをQDCF構造体500に組み込むこともできる。例えば、QDCF構造体における暗状態での光漏れを低減するために、コリメートされた光と組み合わせて、補償フィルムをQDCF構造体に組み込むことができる。このような補償フィルムの例は、米国特許第6,995,816号明細書に開示されており、その内容を参照により本明細書に援用するものとする。米国特許第6,995,816号明細書は、補償フィルムのためにAプレートと、Cプレートと、二軸性プレートとの種々異なる組み合わせを利用している偏光子パッケージの例を開示している。一対のこのような偏光子パッケージを、QDCF構造体500内の上部の偏光子560および下部の偏光子540のために使用することができる。補償フィルムの別の一例は、T. IshikawaおよびXiang-Dong Mi, 「Compensation of Various LCD Modes by Positive O-Plates,」 SID 06 DIGEST (2006)に開示されており、その内容を参照により本明細書に援用するものとする。補償フィルムは、上部の偏光子560および下部の偏光子540の代わりに使用されるので、補償フィルムとE型偏光子とが同時にQDCF構造体に組み込まれることはない。
【0031】
いくつかの実施形態では、QDCF構造体における暗状態での光漏れを低減するために、上述した技術のうちの1つ以上と組み合わせて、プライバシーフィルタフィルムをQDCF構造体500に組み込むこともできる。プライバシーフィルタフィルムとは、観察者に向かって真っ直ぐの方向を指し示すベネチアンブラインドに類似した機能を有するマイクロルーバーを採用した透過型の光学フィルムである。したがって、プライバシーフィルタフィルムは、高放射角度の光をフィルタリングして、低放射角度の光を透過させることができる。
図5に示されているように、プライバシーフィルタフィルムは、QD層580の上流で、上部の偏光子560とショートパスフィルタ570との間に配置可能である。
【0032】
図5および
図6を参照すると、別の実施形態によれば、改善されたQDCF構造体500は、TIR作用に起因する光効率損失を最小化または除去するために、CF層590とQD層580との間の低屈折率材料層(LIML)層585を含む。上部から観察したときのQDCF構造体500は、複数のピクセル領域からなる配列を含み、
図6は、QDCF構造体500における1つのピクセル領域内の関連する層のうちのいくつかの層の概略垂直断面図である。
図6は、ショートパスフィルタ570の層から、上方はカバーガラス595までを示す。ピクセル領域は、QD層580上の赤色フィルタ591、緑色フィルタ592、および青色フィルタ593によって画定された赤色サブピクセルR、緑色サブピクセルG、および青色サブピクセルBを含む。黒色マトリクス600のバリアは、カラーフィルタ591、592、および593の間にあり、サブピクセル領域R、G、およびBを画定するQD層580を下方に貫通して延在している。バックライトユニット(BLU)からのコリメートされた青色光は、
図6の下部における垂直の矢印によって表されている。青色光は、QD層580のR、G、およびBのサブピクセル領域内の量子ドットによって再放射され、それぞれのカラーフィルタ591、592、および593とカバーガラス595とを透過する。
図6に示されているように、QD層580とCF層590との間のLIML層585は、サブピクセルカラーフィルタ591、592、および593と一緒にピクセル化されている。サブピクセルカラーフィルタ591、592、および593の間の黒色マトリクス600は、LIML層585内へと下方に延在していて、LIML585を、サブピクセルカラーフィルタ591、592、および593に対応する複数のサブ領域へと画定している。LIML585は、LCDの発光効率を改善する。この作用について、
図7Aおよび
図7Bを参照しながらさらに説明する。
【0033】
図7Aの概略図に示されているように、LIML層を用いない従来のQDCF構造体では、内部全反射(TIR)と、CF層590およびカバーガラス595の内側でのリサイクルとに起因して、QD層580からの高放射角度を有する多くの光が失われている。この作用は、QD層580からの高放射角度の光を表す矢印L
Bによって示されている。高放射角度の光L
Bは、カバーガラスと空気との間の界面597に高入射角度で到達し、これにより、カバーガラスと空気との間の界面597においてTIRを経験する。カバーガラス595は、一般に、約1.5の屈折率を有する高屈折率ガラスから形成されている。これらの光線の多くは、CF層590内のカラーフィルタによって吸収される可能性が高いので、LCDパネルからは出ない。典型的なCFは、80%~90%の透過率を有するので、吸収は、異なる色または同じ色のカラーフィルタによって実施可能である。
【0034】
図7Bを参照すると、QD層580は、全方向に光を生成し、したがって、全ての可能な角度で光を放射する。QD層によって放射された光のうち、矢印L
Aによって例示された、垂直放射角度(すなわち、QD層580に直交する放射角度)、または一般に低放射角度を有する光線は、カバーガラス595を透過してLCDパネルから出る。
【0035】
QD層580とCF590との間にLIML585が設けられている場合には、QD層580とLIML585との間の境界におけるTIRは、高放射角度の光線LBをQD層580の内部でリサイクルして、この光線LBを、高屈折率のカバーガラス595から出ることができる低角度の光線LB’に変換する。QD層580の内部での高角度の光線LBのリサイクルは、QD層の内部の散乱の結果である。したがって、このことにより、QDCF構造体500の全体的な効率が増加する。
【0036】
いくつかの実施形態では、QDCF LCDパネル500は、QD層580とショートパスフィルタ層(SPF)570との間に追加的なLIMLをさらに含むことができる。このような追加的なLIMLは、高角度の入射光の反射に関してSPF570を支援することができる。この追加的なLIMLは、ピクセル化されていなくてもよく、SPF570上に直接的に積層可能である。
【0037】
好ましくは、LIML585とQD層580との間の界面は、過度な散乱を引き起こすべきではない。好ましくは、LIML585とQD層580との間の界面における光の散乱を制御するために、LIMLとQD層との間の界面の平面性は、カバーガラスと空気との間の界面597においてTIRに遭遇するほど十分に大きい角度を有する光線へと変化する散乱される光エネルギが、最小化されるように制御されるべきである。LIML585からの体積散乱と、LIML585とQD層580との間の界面587からの表面散乱とは、有益には、カバーガラスと空気との間の界面597においてTIRに遭遇するほど十分に大きい角度を有する光線へと変化する散乱される光エネルギが、最小化されるように制御されている。フィルムの散乱は、体積散乱および表面散乱の両方を考慮するヘイズ(透過)によって特徴付け可能である。LIML585とQD層580との間の界面587の平面性は、ASTM D1003規格に準拠して測定した場合のヘイズ値が50%以下、好ましくは30%以下、最も好ましくは5%以下に制限されるように制御される。
【0038】
LIMLからのQDCFの発光効率の改善の程度は、LIML585の屈折率に依存している。LIML585として、CFおよびQD層580の屈折率よりも低い屈折率を有する任意の材料を使用することができる。QD層580とLIML585との間の屈折率の差が大きくなればなるほど、LIMLの性能がより良好となる。屈折率のこの関係性は、QD層580を1.5(カバーガラス595の屈折率)よりも高い屈折率を有するように形成可能であることを意味し、これにより、LIML材料のために利用可能な屈折率をより広範囲にすることができる。カバーガラス595は、一般に、1.5の屈折率を有する。
【0039】
LIML585の屈折率が1.5から1.0に低下するにつれて、QDCFの発光効率が徐々に増加することが計算によって示されている。このデータは、
図8にプロットされている。LIMLの屈折率がx軸上で1.5から1.0になるにつれて、相対的な発光効率は、0.65から約1.025に変化する。一実施形態によれば、端点を含めて1.5~1.0の範囲内にある屈折率値を有するLIMLが望ましい。いくつかの実施形態によれば、LIMLの屈折率は、1.4~1.0の範囲内、好ましくは1.3~1.0の範囲内、より好ましくは1.2~1.0の範囲内にある。
【0040】
LIMLのために使用することができる低屈折率および低散乱特性を有するナノポーラス材料のいくつかの例が、Werdehausen et al., 「Design rules for customizable materials based on nanocomposites,」 Optical Materials Express 8 (11), 3456 (2018)に開示されている。LIML585のための利用可能な材料の追加的な例を、以下の表に示す:
【0041】
【0042】
サブピクセルR、G、およびBの間の空間に位置する黒色マトリクスは、これがなければQDCFパネルの観察側に出現し得るような、ひいては全体的なCRを低減し得るような、ディスプレイにとって無関係な光を遮断する。一般に、黒色マトリクスによる望ましくない光の遮断は、入射光を反射する黒色マトリクス材料によって達成される。従来の黒色マトリクスは、クロムのような反射性の金属層を含む。黒色マトリクスによって反射された光の殆どは、最終的な画像に到達することは決してないが、この光の一部は、LCDパネル構造体の内部のいくつかの光学的な界面のうちの1つ以上での散乱および反射によって方向転換させられて、結局、最終的な画像の一因となり、それにより、コントラストレベルを低減し、すなわちCRが減少する。したがって、例示的なQDCFパネル構造体では、黒色マトリクスは、黒色マトリクスによる望ましくない反射を一般に低減するために、ポリマーまたは酸化物のような光吸収材料の層によってコーティングされる。他の例では、黒色マトリクスは、反射率を低減するために黒色色素が中に分散されたフォトレジスト樹脂によって作製される。
【0043】
しかしながら、
図9を参照すると、本開示の一実施形態によれば、黒色マトリクス構造体600は、傾斜した側面によって構成されていて、かつ部分的に反射性であり、こうすることによっても単独で、QDCF構造体の発光効率が改善される。ここで、「部分的に反射性である」という特徴は、QD層580に曝された反射面が含まれた黒色マトリクスのみを指し、黒色マトリクスの残りの面は、上述したような従来の光吸収性または非反射性の面である。
図9は、そのような黒色マトリクス構造体600の一例の概略図である。黒色マトリクス600は、カラーフィルタ層590内のカラーフィルタ間のバリアであり、サブピクセル領域R、G、およびBを画定するQD層580を下方に貫通して延在している(
図6を参照)。黒色マトリクス600は、αの角度で傾斜した側面602を含み、したがって、
図9に示されている断面図において、黒色マトリクス600は、カバーガラス595に近い上部において下部よりも狭くなっている実質的に台形の形状を有する。さらに、CF層590およびQD層580に面している側面602は反射性であるが、その一方で、カバーガラス595に面している上部の側面603のような残りの側面は非反射性である。側面602の傾斜角度αは、+/-20度以下、好ましくは+/-10度以下、より好ましくは+/-5度以下の偏差を伴って45度である。青色光源の光を利用するQDCFデバイスでは、傾斜した側面602は、結果として赤色光および緑色光をもたらし、この赤色光および緑色光は、QD層において生成されて、QD層580において「ガイドされ」または「トラップされ」て、観察者に向かって再び方向付けられる。青色光源の光は、黒色マトリクス600によって観察者に向かって反射されてカラーフィルタ(RG)によって吸収可能であるか、または黒色マトリクスによって吸収可能である。
【0044】
いくつかの実施形態によれば、QDCF LCD装置500が開示されており、当該QDCF LCD装置500は、カバーガラス595と、背面リフレクタ層510と、カバーガラスと背面リフレクタ層との間の液晶パネル層550と、液晶パネル層550と背面リフレクタ層510との間に設けられていて、液晶パネル層のための像形成光を生成するように構成されたバックライトユニット520(青色LED光源および導光板を含む)と、カバーガラスと液晶パネル層との間のパターニングされた量子ドット層580と、カバーガラスと量子ドット層との間のカラーフィルタ層590であって、当該カラーフィルタ層590と量子ドット層580とが組み合わされて、液晶パネル550を透過したバックライトユニットからの像形成光の波長を変換することにより色を形成するように構成されている、カラーフィルタ層590と、液晶パネル層550とバックライトユニット520との間に位置する下部の偏光子層540と、液晶パネル層と量子ドット層との間に位置する上部の偏光子層560とを含む。この実施形態のQDCF LCD装置には、以下のエンハンスメントフィーチャのうちの1つ以上も組み込まれ、すなわち、(a)カラーフィルタ層590と量子ドット層580との間に設けられたLIML585、(b)液晶パネル層のためのコリメートされた像形成光を生成するように構成されたバックライトユニット、(c)下部の偏光子540および上部の偏光子560のうちの一方または両方がE型偏光子材料から形成されていること、(d)下部の偏光子540および上部の偏光子560が、それぞれAプレート、Cプレート、および二軸性プレートのうちの1つ以上を含む補償フィルムから形成されていること、(e)上部の偏光子560と量子ドット層580との間に設けられたプライバシーフィルタフィルム、のうちの1つ以上も組み込まれる。
【0045】
他の実施形態では、QDCF LCD装置500は、カラーフィルタ層590と量子ドット層580との間のLIML585を含み、以下のエンハンスメントフィーチャのうちの1つ以上も組み込まれ、すなわち、(a)下部の偏光子540および上部の偏光子560のうちの一方または両方がE型偏光子材料から形成されていること、(b)液晶パネル層のためのコリメートされた像形成光を生成するように構成されたバックライトユニット、(c)下部の偏光子540および上部の偏光子560が、それぞれAプレート、Cプレート、および二軸性プレートのうちの1つ以上を含む補償フィルムから形成されていること、(d)上部の偏光子560と量子ドット層580との間に設けられたプライバシーフィルタフィルム、のうちの1つ以上も組み込まれる。
【0046】
本開示の好ましい実施形態について説明してきたが、説明したこれらの実施形態は、単なる例示に過ぎず、本明細書の精読から当業者に自然に想到される等価形態、多数の変形形態、および修正形態の全範囲が認められる場合、本発明の範囲は、添付の特許請求の範囲のみによって定義されるべきであると理解されるべきである。
【0047】
以下、本発明の好ましい実施形態を項分け記載する。
【0048】
実施形態1
量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置であって、
当該量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置は、
カバーガラスと、
背面リフレクタ層と、
前記カバーガラスと前記背面リフレクタ層との間の液晶パネル層と、
前記液晶パネル層と前記背面リフレクタ層との間に設けられていて、前記液晶パネル層のための像形成光を生成するように構成されたバックライトユニットと、
前記カバーガラスと前記液晶パネル層との間の量子ドット層と、
前記カバーガラスと前記量子ドット層との間のカラーフィルタ層であって、当該カラーフィルタ層と前記量子ドット層とが組み合わされて、コリメートされた前記像形成光の波長を変換することにより色を形成するように構成されている、カラーフィルタ層と、
前記液晶パネル層と前記バックライトユニットとの間に位置する下部の偏光子層と、
前記液晶パネル層と前記量子ドット層との間に位置する上部の偏光子層と
を含み、
当該量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置は、以下のうちの1つ以上をさらに含み、すなわち、
(a)前記カラーフィルタ層と前記量子ドット層との間の低屈折率材料層(LIML)、
(b)前記液晶パネル層のためのコリメートされた像形成光を生成するように構成されたバックライトユニット、
(c)前記下部の偏光子層および前記上部の偏光子層のうちの一方または両方がE型偏光子材料を含むこと、
(d)前記下部の偏光子層および前記上部の偏光子層が、それぞれAプレート、Cプレート、および二軸性プレートのうちの1つ以上を含む補償フィルムを含むこと、
(e)前記上部の偏光子層と前記量子ドット層との間のプライバシーフィルタフィルム、
のうちの1つ以上をさらに含む、
量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置。
【0049】
実施形態2
当該QDCF LCD装置が、
前記(a)を含み、
前記LIMLと前記量子ドット層との間の界面のためのASTM D1003ヘイズ値は、50%以下である、
実施形態1記載のQDCF LCD装置。
【0050】
実施形態3
前記LIMLと前記量子ドット層との間の界面のためのASTM D1003ヘイズ値は、30%以下である、
実施形態2記載のQDCF LCD装置。
【0051】
実施形態4
前記LIMLと前記量子ドット層との間の界面のためのASTM D1003ヘイズ値は、5%以下である、
実施形態2記載のQDCF LCD装置。
【0052】
実施形態5
当該QDCF LCD装置が、
前記(a)を含み、
前記LIMLの屈折率値は、1.5~1.0の範囲内である、
実施形態1記載のQDCF LCD装置。
【0053】
実施形態6
前記LIMLの屈折率値は、1.4~1.0の範囲内である、
実施形態5記載のQDCF LCD装置。
【0054】
実施形態7
前記LIMLの屈折率値は、1.3~1.0の範囲内である、
実施形態5記載のQDCF LCD装置。
【0055】
実施形態8
前記LIMLの屈折率値は、1.2~1.0の範囲内である、
実施形態5記載のQDCF LCD装置。
【0056】
実施形態9
当該QDCF LCD装置が、
前記(a)を含み、
前記量子ドット層と前記上部の偏光子層との間のショートパスフィルタと、
前記量子ドット層と前記ショートパスフィルタ層との間の追加的なLIMLと
をさらに含む、
実施形態1記載のQDCF LCD装置。
【0057】
実施形態10
当該QDCF LCD装置が、
前記(e)を含み、
前記量子ドット層と前記上部の偏光子層との間のショートパスフィルタをさらに含み、
前記プライバシーフィルタフィルムは、前記上部の偏光子層と前記ショートパスフィルタとの間にある、
実施形態1記載のQDCF LCD装置。
【0058】
実施形態11
前記バックライトユニットによって生成されて、コリメートされた前記像形成光は、±30度以下の半頂角を有する、
実施形態1記載のQDCF LCD装置。
【0059】
実施形態12
前記バックライトユニットによって生成されて、コリメートされた前記像形成光は、±20度以下の半頂角を有する、
実施形態1記載のQDCF LCD装置。
【0060】
実施形態13
前記バックライトユニットによって生成されて、コリメートされた前記像形成光は、±15度以下の半頂角を有する、
実施形態1記載のQDCF LCD装置。
【0061】
実施形態14
前記カラーフィルタ層および前記量子ドット層は、一緒に複数のピクセル領域を含み、それぞれのピクセル領域は、赤色サブピクセル領域、緑色サブピクセル領域、および青色サブピクセル領域を含み、
当該装置は、黒色マトリクスバリア構造体をさらに有し、前記黒色マトリクスバリア構造体は、前記カラーフィルタ層および前記量子ドット層を貫通して延在していて、隣り合う2つのサブピクセル領域を分離しており、前記黒色マトリクスは、前記カラーフィルタ層と前記量子ドット層とに接する側面を含み、
前記黒色マトリクスの側面は、±20度以下の偏差を伴って45度の角度で傾斜している、
実施形態1記載のQDCF LCD装置。
【0062】
実施形態15
前記側面は、±10度以下の偏差を伴って45度の角度で傾斜している、
実施形態14記載のQDCF LCD装置。
【0063】
実施形態16
前記側面は、±5度以下の偏差を伴って45度の角度で傾斜している、
実施形態14記載のQDCF LCD装置。
【0064】
実施形態17
前記黒色マトリクスの前記側面および底面は、反射性である、
実施形態14記載のQDCF LCD装置。
【0065】
実施形態18
量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置であって、
当該量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置は、
カバーガラスと、
背面リフレクタ層と、
前記カバーガラスと前記背面リフレクタ層との間の液晶パネル層と、
前記液晶パネル層と前記背面リフレクタ層との間に設けられていて、前記液晶パネル層のための像形成光を生成するように構成されたバックライトユニットと、
前記カバーガラスと前記液晶パネル層との間の量子ドット層と、
前記カバーガラスと前記量子ドット層との間のカラーフィルタ層であって、当該カラーフィルタ層と前記量子ドット層とが組み合わされて、前記液晶パネル層を透過した前記バックライトユニットからのコリメートされた像形成光の波長を変換することにより色を形成するように構成されている、カラーフィルタ層と、
前記液晶パネル層と前記バックライトユニットとの間に位置する下部の偏光子層と、
前記液晶パネル層と前記量子ドット層との間に位置する上部の偏光子層と、
前記カラーフィルタ層と前記量子ドット層との間に設けられた低屈折率材料層(LIML)と
を含み、
当該量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置は、以下のうちの1つ以上をさらに含み、すなわち、
(a)前記下部の偏光子層および前記上部の偏光子層のうちの一方または両方がE型偏光子材料から形成されていること、
(b)前記液晶パネル層のためのコリメートされた像形成光を生成するように構成されたバックライトユニット、
(c)前記下部の偏光子層および前記上部の偏光子層が、それぞれAプレート、Cプレート、および二軸性プレートのうちの1つ以上を含む補償フィルムから形成されていること、
(d)前記上部の偏光子層と前記量子ドット層との間に設けられたプライバシーフィルタフィルム、
のうちの1つ以上をさらに含む、
量子ドットカラーフィルタ(QDCF)液晶ディスプレイ(LCD)装置。
【0066】
実施形態19
前記LIMLと前記量子ドット層との間の界面のためのASTM D1003ヘイズ値は、50%以下である、
実施形態18記載のQDCF LCD装置。
【0067】
実施形態20
前記LIMLと前記量子ドット層との間の界面のためのASTM D1003ヘイズ値は、30%以下である、
実施形態19記載のQDCF LCD装置。
【0068】
実施形態21
前記LIMLと前記量子ドット層との間の界面のためのASTM D1003ヘイズ値は、5%以下である、
実施形態19記載のQDCF LCD装置。
【0069】
実施形態22
前記LIMLの屈折率値は、1.5~1.0の範囲内である、
実施形態18記載のQDCF LCD装置。
【0070】
実施形態23
前記LIMLの屈折率値は、1.4~1.0の範囲内である、
実施形態22記載のQDCF LCD装置。
【0071】
実施形態24
前記LIMLの屈折率値は、1.3~1.0の範囲内である、
実施形態22記載のQDCF LCD装置。
【0072】
実施形態25
前記LIMLの屈折率値は、1.2~1.0の範囲内である、
実施形態22記載のQDCF LCD装置。
【0073】
実施形態26
当該QDCF LCD装置は、
前記量子ドット層と前記上部の偏光子層との間のショートパスフィルタと、
前記量子ドット層と前記ショートパスフィルタ層との間の追加的なLIMLと
をさらに含む、
実施形態18記載のQDCF LCD装置。
【0074】
実施形態27
当該QDCF LCD装置が、
前記(d)を含み、
前記量子ドット層と前記上部の偏光子層との間のショートパスフィルタをさらに含み、
前記プライバシーフィルタフィルムは、前記上部の偏光子層と前記ショートパスフィルタとの間にある、
実施形態18記載のQDCF LCD装置。
【0075】
実施形態28
前記バックライトユニットによって生成されて、コリメートされた前記像形成光は、±30度以下の半頂角を有する、
実施形態18記載のQDCF LCD装置。
【0076】
実施形態29
前記バックライトユニットによって生成されて、コリメートされた前記像形成光は、±20度以下の半頂角を有する、
実施形態18記載のQDCF LCD装置。
【0077】
実施形態30
前記バックライトユニットによって生成されて、コリメートされた前記像形成光は、±15度以下の半頂角を有する、
実施形態18記載のQDCF LCD装置。
【0078】
実施形態31
前記カラーフィルタ層および前記量子ドット層は、一緒に複数のピクセル領域を含み、それぞれのピクセル領域は、赤色サブピクセル領域、緑色サブピクセル領域、および青色サブピクセル領域を含み、
当該装置は、黒色マトリクスバリア構造体をさらに有し、前記黒色マトリクスバリア構造体は、前記カラーフィルタ層および前記量子ドット層を貫通して延在していて、隣り合う2つのサブピクセル領域を分離しており、前記黒色マトリクスは、前記カラーフィルタ層と前記量子ドット層とに接する側面を含み、
前記黒色マトリクスの前記側面は、±20度以下の偏差を伴って45度の角度で傾斜している、
実施形態18記載のQDCF LCD装置。
【0079】
実施形態32
前記側面は、±10度以下の偏差を伴って45度の角度で傾斜している、
実施形態31記載のQDCF LCD装置。
【0080】
実施形態33
前記側面は、±5度以下の偏差を伴って45度の角度で傾斜している、
実施形態31記載のQDCF LCD装置。
【0081】
実施形態34
前記黒色マトリクスの前記側面および底面は、反射性である、
実施形態31記載のQDCF LCD装置。
【国際調査報告】