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特表2022-511026ポロキサミンを使用するウイルスの形質導入
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】ポロキサミンを使用するウイルスの形質導入
(51)【国際特許分類】
   C12N 7/01 20060101AFI20220121BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220121BHJP
   C12N 5/071 20100101ALI20220121BHJP
   C12N 15/48 20060101ALI20220121BHJP
   C07K 14/78 20060101ALI20220121BHJP
   A61K 35/12 20150101ALI20220121BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220121BHJP
   A61K 47/34 20170101ALI20220121BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220121BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220121BHJP
   A61K 38/13 20060101ALI20220121BHJP
   A61K 31/5575 20060101ALI20220121BHJP
   A61K 38/14 20060101ALI20220121BHJP
   A61K 31/553 20060101ALI20220121BHJP
   A61K 47/42 20170101ALI20220121BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20220121BHJP
   A61P 7/06 20060101ALI20220121BHJP
   A61P 25/14 20060101ALI20220121BHJP
   A61P 3/00 20060101ALI20220121BHJP
   A61P 7/00 20060101ALI20220121BHJP
   A61P 25/00 20060101ALI20220121BHJP
   A61P 21/04 20060101ALI20220121BHJP
   A61P 13/12 20060101ALI20220121BHJP
   A61P 37/02 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
C12N7/01
C12N5/10
C12N5/071
C12N15/48
C07K14/78
A61K35/12
A61K48/00
A61K47/34
A61K35/76
A61P43/00 121
A61K38/13
A61K31/5575
A61K38/14
A61K31/553
A61P43/00
A61K47/42
A61P35/00
A61P43/00 105
A61P7/06
A61P25/14
A61P3/00
A61P7/00
A61P25/00
A61P21/04
A61P13/12
A61P37/02
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021531715
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-07-30
(86)【国際出願番号】 EP2019083637
(87)【国際公開番号】W WO2020115114
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】18210207.9
(32)【優先日】2018-12-04
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513165908
【氏名又は名称】シリオン・バイオテック・ゲゼルシャフト・ミット・ベシュレンクテル・ハフツング
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【弁理士】
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ティリオン,クリスティアン
(72)【発明者】
【氏名】ハーゼンエーダー,シュテファン
(72)【発明者】
【氏名】シュレーデル,ジルケ
【テーマコード(参考)】
4B065
4C076
4C084
4C086
4C087
4H045
【Fターム(参考)】
4B065AA94X
4B065AA97X
4B065AB01
4B065AC20
4B065BA02
4B065CA44
4C076CC01
4C076CC07
4C076CC09
4C076CC14
4C076CC17
4C076CC21
4C076CC26
4C076CC27
4C076EE25
4C076EE41
4C076FF70
4C084AA13
4C084BA44
4C084CA01
4C084CA53
4C084DA11
4C084MA02
4C084MA05
4C084NA05
4C084NA10
4C084ZA021
4C084ZA022
4C084ZA511
4C084ZA512
4C084ZA551
4C084ZA552
4C084ZA811
4C084ZA812
4C084ZA941
4C084ZA942
4C084ZB071
4C084ZB072
4C084ZB211
4C084ZB212
4C084ZB261
4C084ZB262
4C084ZC021
4C084ZC022
4C084ZC211
4C084ZC212
4C084ZC751
4C084ZC801
4C084ZC802
4C086AA01
4C086AA02
4C086CB22
4C086DA01
4C086MA03
4C086MA05
4C086NA05
4C086NA10
4C086ZA02
4C086ZA51
4C086ZA55
4C086ZA81
4C086ZA94
4C086ZB07
4C086ZB21
4C086ZB26
4C086ZC02
4C086ZC21
4C086ZC75
4C086ZC80
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087MA02
4C087MA05
4C087NA05
4C087NA10
4C087ZA02
4C087ZA51
4C087ZA55
4C087ZA81
4C087ZA94
4C087ZB07
4C087ZB21
4C087ZB26
4C087ZC02
4C087ZC21
4C087ZC75
4C087ZC80
4H045AA10
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045BA53
4H045CA40
4H045EA20
4H045EA50
(57)【要約】
本発明は、(a)ポロキサミン;および(b)(i)レトロウイルスベクター;および/または(ii)脊椎動物細胞を含むか、またはからなる、組成物に関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)ポロキサミン;
(b)(i)レトロウイルスベクター;および
(ii)脊椎動物細胞
を含むか、またはからなる、組成物。
【請求項2】
(a)該ポロキサミンが、シーケンシャルな(sequential)ポロキサミンである;および/または
(b)式(I)
【化1】
または式(II)
【化2】
の構造を有し、
いずれの式においても、
は、H-(O(CH-(OCH(CH)CH-であり;
は、H-(O(CH-(OCH(CH)CH-であり;
は、-(CHCH(CH)O)-((CHO)-Hであり;
は、-(CHCH(CH)O)-((CHO)-Hであり;
およびRは、独立して、存在しないか、またはH、CからCアルキル、CからCアルケニルおよびCからCアルキニルから選択され;RまたはRが存在しないとき、RまたはRに結合したNは正電荷を有さず;
C-lは、式(II)の構造を電気的中性にさせる1つ以上の対イオンを表し;
a、c、fおよびhは、独立して、約25から約200、好ましくは約50から約120の整数であり;および
b、d、eおよびgは、独立して、約5から約50、好ましくは約10から約25の整数である、
請求項1に記載の組成物。
【請求項3】
a=c;f=h;b=d;および/またはe=g;および好ましくは
a=c=f=h;および/またはb=d=e=g
である、請求項2(b)に記載の組成物。
【請求項4】
(b+d+e+g)/(a+c+f+h)として定義されるプロピレンオキシド-エチレンオキシド比(#PO/#EO)が、約0.05から約1.5、好ましくは約0.1から約1.0、さらに好ましくは約0.15から約0.67、およびより好ましくは約0.18から約0.35の範囲である、請求項2(b)または3に記載の組成物。
【請求項5】
該組成物が、
(a)ポリカチオン性ポリマーまたはポリカチオン性ペプチドの群から選択される1つ以上のポリカチオン性物質;
(b)プロスタグランジン;
(c)糖タンパク質;
(d)ポロキサマー;および/または
(e)シクロスポリン;および/または
(f)スタウロスポリン
をさらに含むか、またはさらにからなる、請求項1から4のいずれかに記載の組成物。
【請求項6】
請求項1から5のいずれかに記載の組成物を含むか、またはからなる医薬組成物であって、該請求項1から5のいずれかに記載の組成物は、該ウイルスベクターを含む、医薬組成物。
【請求項7】
該レトロウイルスベクターが、疾患に罹患しているか、または該疾患を発症する危険性がある個体のために有益である遺伝子を有する、請求項6に記載の医薬組成物。
【請求項8】
脊椎動物細胞にレトロウイルスベクターを形質導入するためのポロキサミンの使用であって、所望により、さらに、
(a)ポリカチオン性ポリマーまたはポリカチオン性ペプチドの群から選択される1つ以上のポリカチオン性物質;
(b)プロスタグランジン;
(c)糖タンパク質;
(d)ポロキサマー;
(e)シクロスポリン;および/または
(f)スタウロスポリン
が使用される、使用。
【請求項9】
脊椎動物細胞にレトロウイルスベクターを形質導入する方法であって、該方法は、該脊椎動物細胞、ポロキサミン、および該ウイルスベクターを接触させることを含むか、またはからなり、
好ましくは、該接触させることが、以下の順序:
(a)該細胞を提供すること;
(b)該ポロキサミンを加えること;および
(c)該ベクターを加えること、
で行われる、方法。
【請求項10】
形質導入が、参照方法と比較して増強されており、参照方法が、該ポロキサミンを加えることなく、該参照方法が、他の点では脊椎動物細胞に形質導入する該方法と同一である、請求項9に記載の方法。
【請求項11】
ウイルスコピー数(VCN)を増強する方法であって、該方法は、請求項9に記載の方法を含み、VCNは、参照方法と比較して増強されており、参照方法は、該ポロキサミンを加えることなく、該参照方法は、他の点ではVCNを増強する該方法と同一であり、好ましくは、VCNの増強は、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍または少なくとも10倍である、方法。
【請求項12】
(a)該レトロウイルスベクターがレンチウイルスベクターである;および/または
(b)該ポロキサミンがT1107である、
請求項9から11のいずれかに記載の方法。
【請求項13】
該接触させることが、
(a)ポリカチオン性ポリマーまたはポリカチオン性ペプチドの群から選択される1つ以上のポリカチオン性物質;
(b)プロスタグランジン;
(c)糖タンパク質;
(d)ポロキサマー;
(e)シクロスポリン;および/または
(f)スタウロスポリン
と接触させることを含むか、またはさらにからなる、請求項9から12のいずれかに記載の方法。
【請求項14】
該レトロウイルスベクターが、レンチウイルスベクターである、前記請求項のいずれかに記載の組成物、使用または方法。
【請求項15】
該ポロキサミンが、約0.1から約40mg/ml、好ましくは約0.2から約30mg/ml、さらに好ましくは約0.3から約20mg/mlの範囲における濃度で提供され、
(a)該細胞が懸濁液中の細胞であるとき、約0.3から約20mg/mlが好ましく;および
(b)該細胞が付着しているとき、約0.3から約10mg/mlが好ましい、
前記請求項のいずれかに記載の組成物、使用または方法。
【請求項16】
(a)該ポリカチオン性ポリマーが、1,5-ジメチル-1,5-ジアザ-ウンデカ-メチル-ポリメトブロミド(ポリブレン)およびポリ(エチレングリコール)-ポリ(L-リジン)ブロックコポリマー(PEG-PLL)から選択され;
(b)該ポリカチオン性ペプチドが、プロタミン硫酸塩、約1から約300kDaの平均分子量を有するポリ-L-リジン(PLL)およびVectofusin-1(登録商標)から選択され;
(c)該糖タンパク質が、フィブロネクチン(RetroNectin(登録商標))であり;
(d)該プロスタグランジンが、PGE2であり;
(e)該ポロキサマーが、Synperonic(登録商標)F108またはSynperonic(登録商標)F98であり;および/または
(f)該シクロスポリンが、CsAまたはCsHである、
前記請求項のいずれかに記載の組成物、使用または方法。
【請求項17】
(a)ポロキサミン;
(b)以下の(i)から(iii):
(i)(1)から(6):
(1)ポリカチオン性ポリマーおよびポリカチオン性ペプチドから選択されるポリカチオン性物質;
(2)プロスタグランジン;
(3)糖タンパク質;
(4)ポロキサマー;
(5)シクロスポリン;および
(6)スタウロスポリン
の1つ、複数、または全て、
(ii)レトロウイルスベクター;および
(iii)脊椎動物細胞
の1つ、複数、または全て;および
(c)所望により、請求項8または11から16のいずれかに記載の使用および/または請求項9から16のいずれかに記載の方法を行うための指示を含むマニュアル
を含むか、またはからなるキット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、(a)ポロキサミン;および(b)(i)レトロウイルスベクター;および/または(ii)脊椎動物細胞を含むか、またはからなる、組成物に関する。
【0002】
本明細書において、特許出願および製造業者のマニュアルを含む多くの文書が引用されている。これらの文書の開示は、本発明の特許性に関連しないと考えられるが、その全体において出典明示によりここに包含させる。さらに具体的には、参照される全ての文書は、個々の文書が出典明示により包含させることが具体的かつ個別に示された場合と同じ程度に出典明示により包含させる。
【背景技術】
【0003】
ほとんどの細胞、特に初代細胞の遺伝的修飾のために、ウイルスベクターによって介在される形質導入が好ましい方法である。特に、レトロウイルスベクター、例えばレンチウイルスベクターが使用される。水疱性口内炎ウイルス(VSV-G)の糖タンパク質でシュードタイプ(pseudotyped)されているレンチウイルス(LV)ベクターは、増殖細胞および非増殖細胞の両方の染色体に安定に組み込まれる(Bukrinsky et al. 1993; Burns et al. 1993; Funke et al. 2008)。改善された安全性特徴、例えば、第3世代のスプリットゲノムレンチウイルスパッケージングデザインおよび転移ベクターの3’の長い末端反復(LTR)の欠失は、多くの研究者によって支持されるシステムであるLVを作り上げた(Dull et al. 1998)。レンチウイルスで形質導入された細胞は、ストレスシグナル経路の活性化または任意の他の表現型の変化をほとんど示さず、したがって、多くの遺伝子治療および免疫療法適用が期待されている(Gruber et al. 2000; Rouas et al. 2002)。
【0004】
現在、研究グループおよび臨床グループの中で使用される標的細胞への効率的なLV遺伝子送達のための形質導入条件について大きな違いがある(Millington et al. 2009)。正常なリンパ球および原発性腫瘍、ならびにリンパ系の細胞株は、効率的に形質導入することが難しいことが知られている(Anastasov et al. 2009)(Anastasov et al. 2010)。初代細胞への高い遺伝子導入率および患者細胞の大規模な形質導入のための高力価のウイルス粒子を生産する能力は、臨床試験の必要条件である。これらのウイルスの大規模生産は非常に複雑でコストがかかるため(Wurm et al. 2010)、レンチウイルスの形質導入率のあらゆる改善が、ウイルス生産のための必要性の低下につながり、さらに臨床試験のコストを低下させることを助ける。
【0005】
遺伝子導入のより高い効率は、さまざまな異なる戦略によってなし遂げることができる:超遠心分離(Burns et al. 1993)または限外濾過(Anastasov et al. 2009)によるウイルス上清の濃縮は、遺伝子導入の効率を向上させる1つの可能な方法である。遺伝子導入率を増強するために頻繁に使用される別の戦略は、ポリカチオンまたはカチオン性リポソームなどの様々な薬剤の補足である。しかしながら、これらのアジュバント処理のほとんどは細胞に対して毒性があるため、初代起源の感受性の標的細胞への使用は制限される(Wurm et al. 2010)。他の候補の中で、ポリブレン(polybrene)(線状ポリカチオン性ポリマー)は、広範囲の標的細胞における遺伝子導入率を向上させ、この分野における代表的な形質導入アジュバントとなった(Castro et al. 1988; Hesse, Ebbesen, and Kristensen 1978)。残念ながら、polybreneは、細胞毒性および/または膜貫通電位の有意な変化を回避するために、短い適用時間および10μg/ml以下の濃度(標的細胞型に依存する)のみで使用することができ(Aubin, Weinfeld, and Paterson 1988)、造血細胞のような感受性の細胞における使用を限定する。
【0006】
ウイルスの形質導入効率を増強するための別の一般的な方法は、レンチウイルスおよび標的細胞の共局在化を促進する組み換えヒトフィブロネクチンフラグメントであるレトロネクチン(Retronectin)の使用である(Lee et al. 2009)。
【0007】
ベクトフシン(Vectofusin)-1は、比較的新しいウイルスの形質導入エンハンサーである。それは、LHA4ペプチドファミリーに由来するヒスチジンリッチなカチオン性両親媒性ペプチドである(Fenard et al. 2013)。それは、ウイルス膜および細胞膜間の接着および融合を促進することによって作用し、ヒト造血幹細胞および前駆細胞(HSPCs)の形質導入を改善させることが示された(Fenard et al. 2013; Ingrao et al. 2014)。
【0008】
さらに、形質導入される細胞にウイルスを加えた直後に、形質導入される細胞の遠心分離接種(頻繁に「スピノキュレーション(spinoculation)」と呼ばれる)もまた、形質導入を促進することができる(Guo et al. 2011)。遠心分離によって動的なアクチンおよびコフィリン活性が誘発され、HIV-1受容体および共受容体であるCD4およびCXCR4の上方調節につながることが実証された(Guo et al. 2011)。スピノキュレーションは、形質導入エンハンサーの使用と組み合わせて、形質導入効率をさらに増加させることもできる。
【0009】
治療関連物質を細胞に送達するさらに別の方法は、生体高分子またはポリマーにパッケージ化することである。Wntのようなタンパク質について、リポソームまたはリン脂質およびコレステロールへのパッケージングが、安定性および活性を増強し、したがって標的細胞に対する生物学的活性を向上させることが実証されている(Morrell et al. 2008; Tueysuez et al. 2017)。また、細胞への核酸の非ウイルス性移動も、線状(Kabanov, Zhu, and Alakhov 2005; Lemieux and Guerin 2000; Mahajan et al. 2017; Song et al. 2014)および分岐状両親媒性共ポリマー(Zhang et al. 2009)を使用することによって成功裏に成し遂げられた。さらに、様々なポリマーが、疎水性薬物をミセルに可溶化して標的細胞への送達を可能にするのに有用であることが証明されている(Alakhov et al. 1999; Alvarez-Lorenzo et al. 2010; Chiappetta and Sosnik 2007; Erukova et al. 2000)。これらのポリマー物質は、特に、ポリエチレングリコール(PEG)、ポリ(プロピレンオキシド)(PPO)、ポリ(D,L-乳酸)(PDLLA)、ポロキサマーおよびポロキサミンを含む。ミセルの疎水性コア内の薬物のカプセル化は、溶解度、安定性および標的細胞への摂取を有意に増加させる。
【0010】
Cas9タンパク質sgRNAリボヌクレオプロテイン(RNP)の複合体は、潜在的なオフターゲット効果を最小限にしながら、効率的な遺伝子修飾のために価値があることが証明されている(Gundry et al. 2016)。ポロキサミンなどの非ウイルス性ポリマー性送達系および他のポリマーは、RNPを標的細胞に送達して、インビトロおよびインビボでの遺伝子異常の修正を可能にするための重要なツールとして機能することができた(Khan et al. 2016)。
【0011】
さらに、非レトロウイルスベクターが、最近開発され、HSV-1、アカゲザルCMV(RhCMV)、MCMVを含むエンベロープ型ヘルペスウイルスに基づく遺伝子導入ベクターのために使用され、神経の遺伝子導入能力、およびワクチン担体としての良い特性について高い注目を受けている(Hansen et al. 2011; Marconi, Manservigi, and Epstein 2010; Mohr et al. 2010)。最近、Arenviridaeのファミリーに属するリンパ球性脈絡髄膜炎(LCM)ウイルスに由来するウイルスベクターは、同種および異種のワクチン接種レジメンにおいて強力な免疫応答を誘導した(Wingerath et al. 2017)。
【発明の概要】
【0012】
本発明の基礎をなす技術的問題は、細胞にウイルスベクターを形質導入するための改善された手段および方法を同定することであった。
【0013】
この技術的問題の解決は、請求項において特徴づけられた態様を提供することによってなし遂げられる。
【0014】
したがって、本発明は、第1の局面において、(a)ポロキサミン;および(b)(i)レトロウイルスベクター;および/または(ii)脊椎動物細胞を含むか、またはからなる、組成物に関する。
【0015】
第1の局面に関連して、本発明は、(a)ポロキサミン;および(b)(i)エンベロープウイルスベクター;および/または(ii)脊椎動物細胞を含むか、またはからなる、組成物を提供する。
【0016】
また、第1の局面に関連して、本発明は、(a)ポロキサミン;(b)(i)レトロウイルスベクター;および(ii)脊椎動物細胞を含むか、またはからなる、組成物を提供する。
【0017】
さらに、本発明は、(a)ポロキサミン;(b)(i)レトロウイルスベクター;および(ii)脊椎動物細胞を含むか、またはからなる、組成物であって、該ポロキサミンは、約0.1から約40mg/mlの範囲における濃度で提供される、組成物を提供する。
【0018】
「ポロキサミン」という用語は、その技術的に確立された意味を有する。それは、中央の1,2-エチレンジアミンを含む両親媒性ブロックコポリマーであって、いずれかの窒素原子の2つの原子価が、複数のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド構成要素をそれぞれ含む部分で置換されている両親媒性ブロックコポリマーを指す。さらに説明すると、該部分は、エーテル結合によって連結された複数のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシドの構成要素を含む。その好ましい態様は、さらに以下の式(I)で示される。これらの部分のそれぞれが、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド構成要素の両方を含むことが好ましい。しかし、その点において、本発明に従った必要条件ではない。構成要素がエチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの両方を含む範囲において、好ましくは、2つの部分、すなわちプロピレンオキシド構成要素のみからなる部分およびエチレンオキシド構成要素のみからなる第2の部分に分けられる部分が与えられる。再び、その点において、本発明に従った必要条件ではない。したがって、1つ以上の部分がエチレンオキシドおよびプロピレンオキシド構成要素が交互に並んだ鎖である、または、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド構成要素がランダムに並んでいることも考えられる。
【0019】
該部分が、上述の定義された二部構造、すなわちエチレンオキシドモノマーのみからなる部分およびプロピレンオキシド構成要素のみからなる第2の部分を有する範囲において、好ましくは、窒素原子に直接的に結合されるプロピレンオキシド構成要素からなる部分、および窒素原子から離れた位置に配置されるエチレンオキシド構成要素からなる部分が与えられる(「シーケンシャルな(sequential)」ポロキサミンとしても知られている)。また、この特徴は、さらに以下で示される式(I)の好ましい態様において説明されている。
【0020】
特に好ましいことではないが、単一のポロキサミン分子内の上記定義のとおりの4つの部分がそれぞれ異なる構造を有することは、本発明の範囲内である。一例を挙げると、4つの部分はすべて、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド構成要素の(異なる)ランダムコポリマーである可能性がある。別の例では、2つの部分が、プロピレンオキシド構成要素からなる近位部の窒素、エチレンオキシド構成要素からなる遠位部の窒素を有する二部構造を有している可能性があり、さらに2つの部分が、いずれかのエチレンオキシド構成要素のみ、またはプロピレンオキシド構成要素のみからなる可能性がある。
【0021】
上述の分子のクラスにおいて、窒素上の3つの原子価が占有されている。窒素上の4つの原子価が占有され、窒素が正電荷を持つことも、本発明の範囲内である。その場合、1つ以上の対イオンが好ましくは存在し、それによって物質の組成を電気的に中性にする。該ポロキサミンの一方または両方の窒素上の第4の価数を占有する部分は、好ましくは水素、低級アルキル、低級アルケニルまたは低級アルキニルである。この文脈における「低級」という用語は、好ましくはCからC(アルケニルおよびアルキニルの場合、CからC)、好ましくはCからC(アルケニルおよびアルキニルの場合、CからC)を指す。特に好ましいアルキル部分は、メチル、エチル、n-プロピルおよびi-プロピルである。両方の窒素原子が4級である場合、両方の窒素原子上の第4の価数を占有する部分は好ましくは同一である。特に好ましくは、両方の窒素が4級であり、対応する部分がいずれの場合もメチルであることである。
【0022】
一方または両方の窒素上の第4の価数を占有するさらに考えられる部分は、シクロヘキシル、アリール、アリールアルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルを含むシクロアルキルを含む。好ましいアリール基はフェニルである。アラルキルおよびヘテロアリールアルキルにおける好ましいアルキル基は、メチルおよびエチルである。好ましいヘテロアリール基は、N、SおよびOから独立して選択される1、2または3個のヘテロ原子を有する6員環である。シクロアルキル、アリール、アラルキル、ヘテロアリールおよびヘテロアリールアルキルのいずれもが、置換または非置換であってよい。好ましい置換基は、低級アルキル、低級アルコキシおよびハロゲンを含む。この文脈における「低級」は、上記定義と同じ意味(CからC、好ましくはCからC)を有する。ハロゲンは、フッ素、塩素および臭素を含む。
【0023】
組成物は、1つのポロキサミンを含んでもよい。また、2つ、3つ、4つ、5つまたはそれ以上の異なるポロキサミンを含んでもよい。
【0024】
好ましい対イオンは、フッ化物、塩化物、臭化物、ヨウ化物を含むハロゲノイドである。さらに好ましい対イオンは、硫酸塩、リン酸塩、酢酸塩、ならびにギ酸塩(formide)、プロピオン酸塩および酪酸塩などの他のモノカルボン酸の陰イオンを含む。サリチル酸塩は別の想定される対イオンである。好ましいものは、薬学的に許容される対イオンである。
【0025】
最も広い定義において、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシド構成要素の比率は、特に限定されない。好ましい態様において、該比は約0,05から約1,5の間である。より好ましいプロピレンオキシド-エチレンオキシド比は、好ましい態様と併せて以下にさらに開示される。それらは、本発明によるポロキサミンの最も広い定義に変更すべきところは変更して適用される。
【0026】
ポロキサミンは、小分子薬物または簡単なDNAプラスミドを製剤化するための薬剤として考えられてきた。しかし、先行技術は、レトロウイルスおよびレンチウイルスを含むエンベロープウイルスを形質導入するためのポロキサミンの使用について、記載していない。本明細書において示されている結果は、レンチウイルスおよびレトロウイルスベクターを用いた脊椎動物細胞の形質導入を増強するためのポロキサミンの驚くべき特異的な高い活性を示す。
【0027】
本開示の残りの部分から明らかなように、該ポロキサミンは、本発明によると形質導入エンハンサーとして作用する。該ポロキサミンは、賦形剤、分散剤または粘度調整剤として役割を果たさない。
【0028】
所望により、該組成物は、他の形質導入エンハンサーを含まない、すなわち、それは、形質導入を増強する薬剤に関して、1つ以上のポロキサミンのみを含む。代わりに、さらなる形質導入エンハンサー、特にポロキサミン類以外の化合物クラスに属する形質導入エンハンサーが存在してもよい。これは、以下にさらに開示される好ましい態様の対象である。
【0029】
該組成物は、ポロキサミンが考慮される範囲において、溶液である。言い換えれば、それはゲルではない。
【0030】
また、該組成物が単離されていることも理解される。言い換えれば、それは、細胞を含まない対応する組成物の投与により、例えばヒトまたは動物の体内でのみ形成されるであろう細胞を含む組成物ではない。
【0031】
ウイルスベクターは、天然ウイルスに由来する粒子である。天然ウイルスは、一般的に、核酸およびタンパク質を含む。エンベロープウイルスは、さらに、典型的には宿主細胞に由来する脂質二重層を含み、一般的にウイルスエンベロープタンパク質を含む。本発明によるウイルスベクターの最小要件は、該ウイルスエンベロープタンパク質を含む該脂質二重層である。核酸および/またはさらなるタンパク質は、存在してもよいが、存在しなくてもよい。「核酸」という用語は、元のウイルス核酸、異種核酸、またはその両方の組み合わせを指す。レトロウイルスベクターの場合、ウイルス核酸はRNAである。核酸は、レトロウイルスに由来する少なくとも1つの長い末端反復(LTR)配列およびパッケージングシグナル配列をさらに含んでいてもよい。所望により、核酸は、RRE配列などのさらなる遺伝的要素を含んでいてもよい。さらなるタンパク質は、存在する範囲で、逆転写酵素、インテグラーゼ、およびキャプシドタンパク質を含んでもよい。インテグラーゼは、組み込み機能が欠損していてもよい。
【0032】
したがって、「誘導体」および「由来」という用語は、少なくとも、異種核酸をウイルスの遺伝物質に導入すること、またはウイルスのコード化遺伝子の全部または大部分を異種核酸配列で置き換えること、および該異種核酸をウイルス粒子にパッケージすることを可能にすること、という修飾を指す。あまり好ましくはないが、パッケージ化されたウイルス由来の核酸を欠いている天然ウイルスまたはウイルス様粒子は、「ウイルスベクター」という用語に含まれる。その例は、ウイルス様粒子(VLP)である。ウイルス様粒子は、非感染性であり、ウイルスの遺伝物質も異種核酸も含まない。それらは、ウイルスの構造タンパク質および/または付属タンパク質、例えば、エンベロープタンパク質またはカプシドタンパク質の発現によって生成され、ウイルス様粒子(VLP)の自己集合をもたらすことができる。レトロウイルスおよびレンチウイルス由来のVLPは、組換えタンパク質を送達するために使用され、高収率で生産することができる(Robert et al. 2017)。
【0033】
エキソソームは、タンパク質、核酸および脂質を細胞間で輸送するために使用することができる脂質二重層に包まれた細胞外輸送手段である(Kowal, Tkach, および Thery 2014)。これらのエキソソームはまた、哺乳動物細胞への送達を改善するために、ウイルス糖タンパク質VSV-Gでシュードタイプすることもできる(Meyer et al. 2017)。これらの特性に基づいて、エキソソームが遺伝子治療的適応において使用することができることが示唆されている(O'Loughlin, Woffindale, and Wood 2012)。
【0034】
あるいは、または加えて、天然ウイルスのタンパク質成分を改変したり、交換したりしてもよい。その例は、シュードタイプされているレトロウイルスベクター、例えば、Rhabdoviridaeのファミリーに属する水疱性口内炎ウイルス(VSV)に由来する糖タンパク質であるVSV-Gでシュードタイプされているレトロウイルスベクターを含む(詳細は後述)。
【0035】
ウイルスに関して「エンベロープ」という用語は、ウイルス粒子を囲む脂質二重層の存在を指す。一般的に、1種類以上の膜タンパク質(膜貫通タンパク質、膜関連タンパク質など)がエンベロープに含まれているが、必ずしもそうではない。
【0036】
分類学的な意味で、および本発明によれば、「エンベロープウイルス」という用語は、以下のDNAウイルス:ヘルペスウイルス科(Herpesviridae)およびヘパドナウイルス科(Hepadnaviridae)を包含する。さらに、「エンベロープウイルス」という用語には、以下のRNAウイルス:レトロウイルス科(Retroviridae)、トガウイルス科(Togaviridae)、アレナウイルス科(Arenaviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、オルソミキソウイルス科(Orthomyxoviridae)、パラミクソウイルス科(Paramyxoviridae)、ブニヤウイルス科(Bunyaviridae)、ラブドウイルス科(Rhabdoviridae)、フィロウイルス科(Filoviridae)、コロナウイルス科(Coronaviridae)、ボルナウイルス科(Bornaviridae)、アルテリウイルス科(Arteriviridae)、フラビウイルス科(Flaviviridae)、およびレオウイルス科(Reoviridae)を包含する。
【0037】
レトロウイルスベクターを含む、そのようなウイルスベクターは、当分野で知られている。例えば、レトロウイルスベクターは、Retroviruses, Coffin JM, Hughes SH, Varmus HE, Cold Spring Harbor (NY): Cold Spring Harbour Laboratory Press; 1997; ISBN-10:0-87969-571-4に記載されている。簡潔には、レトロウイルスベクターは、それらが含む遺伝物質を安定な様式において宿主ゲノムに組み込む能力を有する。レトロウイルスに共通しているとおり、それらは、RNAを相補的DNA(cDNA)にRNA逆転写、および所望により、標的細胞のゲノムへの組み込みを可能にする、逆転写酵素、および所望によりインテグラーゼを含む。細胞侵入後、逆転写酵素は、ウイルスcDNAおよび標的配列のcDNAを合成し、それらは環状化され、次に標的細胞のゲノムに挿入される。レトロウイルスベクターは複製能力を持つこともあるが、安全上の理由から、ほとんどのレトロウイルスベクターは複製能力がないように設計されている。対応するウイルスは、まだ、感染して標的細胞に遺伝物質を送達することはできるが、新しいビリオンの生産のために不足しているウイルスタンパク質を提供するヘルパータンパク質などがなければ、複製サイクルに入ることができない。これは、ビリオン複製およびパッケージングのために必要な遺伝子を欠失または置換することによってなし遂げることができる。レトロウイルスベクター複製を欠損させる一つの方法は、gag、polおよびenv遺伝子を除去することであり、標的細胞のゲノムに導入するための標的配列を含む発現カセットによって置き換えてよい。ベクター生産中に導入遺伝子の発現およびウイルスカプシドへのパッケージングを可能にするために、長い末端反復(LTR)およびプシー(Ψ)要素は一般的に保持される。
【0038】
考えられるところでは、本明細書で定義されるベクターに含まれる標的配列は、任意の配列、特に標的細胞のゲノムへの組み込みを可能にする配列であることができる。例えば、タンパク質またはペプチドコード配列、RNA干渉、miRNA発現または腫瘍溶解性ウイルスに関する調節配列を、形質導入後に細胞内で発現させることができ、タンパク質は、例えば、マーカーまたは治療上価値のあるタンパク質であることができる。レトロウイルス形質導入を介する安定な組み込み後、治療タンパク質を発現させるという概念は、当技術分野でよく知られている「遺伝子治療」という用語に包含される。また、標的配列は、形質導入時に、形質導入された細胞または形質導入された細胞を受け取った生物体において効果を有するタンパク質または非コーディングRNA転写産物(RNA干渉による)の下方調節をもたらすことがある。マイクロRNA(miRNA)および低分子干渉RNA(siRNA)は、標的メッセンジャーRNAの安定性または翻訳効率を制御する機能性小分子である。それらの作用は、タンパク質合成の抑制および標的mRNAの分解の誘導を含む(例えば(Bartel 2009)参照)。
【0039】
本発明の方法の別の好ましい態様において、レトロウイルスベクターはレンチウイルスベクターである。
【0040】
レンチウイルスベクターは、他のレトロウイルスベクターとは対照的に、複製の自己不活性化(SIN)領域を有するようにレンチウイルスのユニークな特徴である分裂しない標的細胞のゲノムに組み込まれることができる、レンチウイルスビリオンに基づくベクター、すなわちレトロウイルスのサブクラスである。レンチウイルスは、例えば、Retroviruses, Coffin JM, Hughes SH, Varmus HE, Cold Spring Harbor (NY): Cold Spring Harbour Laboratory Press; 1997; ISBN-10:0-87969-571-4; (Matrai, Chuah, and VandenDriessche 2010; O'Connell et al. 2010)に詳細に記載されている。レンチウイルスベクターは、例えば、ウシ、ウマ、ネコ、ヒツジ/ヤギまたは霊長類のレンチウイルス群のレンチウイルスに基づくことができる。好ましくは、レンチウイルスベクターは、HIV1、HIV2またはSIVウイルスなどの霊長類レンチウイルスに基づく。最も好ましくは、レンチウイルスベクターはHIV1レンチウイルスに基づく。当業者は気付くとおり、ほとんどの(市販の)レンチウイルスベクターは、異なるウイルスからのウイルス成分の混合物を表し、したがって、ある程度、「ハイブリッド」ベクターである。例えば、レンチウイルスベクターは、HIV1(ヒト免疫不全1ウイルス)、VSV(水疱性口内炎ウイルス)、CMV(サイトメガロウイルス)、WHV(ウッドチャック肝炎ウイルス(WHP))ウイルスからの構成要素を含んでよい。したがって、シュードタイプされているベクターもまた、本発明において想定される。
【0041】
より好ましい態様において、レンチウイルスベクターは、VSV-Gと;VSV-Gと融合された抗体フラグメントまたはタンパク質スカフォールド、例えば、CD3-VSV-G、CD4-VSV-G、CD8-VSV-G、CD34-VSV-G、CD30-VSV-G、CD44-VSV-G、EGFR-VSV-G;および/またはトランスフェリン受容体(TnfR)とシュードタイプされている。
【0042】
ウイルスベクターの文脈において、「シュードタイプ(pseudotyped)されている」という用語は、当分野でよく知られており、例えば(Bischof and Cornetta 2010)に記載されている。シュードタイプは、限定はしないが、RD114、GALV、LCMV、MLV、gp160、ウマ感染性貧血ウイルス(EIAV)gp、ネコ免疫不全ウイルス(FIV)gp、狂犬病ウイルス糖タンパク質(RV-G)、融合糖タンパク質タイプE(FuG-E)gpを含む外来ウイルスエンベロープ糖タンパク質(gp)を組み込むことによる、ウイルスベクターの細胞型特異性の調節を指す(Curr Gene Ther. 5, 387-398 (2005))参照のこと)。このアプローチを使用して、宿主指向性を変化させることができ、および/またはウイルスの安定性を減少または増加させることができる。例えば、水疱性口内炎ウイルスの糖タンパク質G(VSV-G)を、例えば(Burns et al. 1993)に記載されているように、レンチウイルスをシュードタイプするために使用することができる。VSV-Gの使用は、有利には、多種多様な細胞型の形質導入を可能にするが、形質導入効率は細胞型によって異なり、初代リンパ球およびリンパ腫細胞株などの形質導入することが困難な細胞では特に低い。
【0043】
本発明による「標的細胞」は、ウイルスベクターによる形質導入について標的とされる任意の細胞であることができる。本発明に関連して使用される用語「細胞」は、単一および/または単離された細胞、培養中の細胞、または組織や生物体などの多細胞体の一部である細胞を指すことができる。言い換えれば、本方法は、インビボ、エキソビボまたはインビトロ、好ましくはエキソビボまたはインビトロで行うことができる。細胞は、好ましくは、脊椎動物細胞である。
【0044】
好ましくは、細胞は哺乳動物細胞である。本明細書において使用される「哺乳動物細胞」という用語は、当分野でよく知られており、哺乳動物のクラスに属する動物に属するか、または由来するあらゆる細胞を指す。本発明の方法による形質導入することによって哺乳動物細胞のゲノムを修飾することを介してなし遂げられる特定の目的に依存して、原獣類または獣亜綱などの様々な哺乳動物サブクラスの細胞を使用してもよい。例えば、獣亜綱のサブクラス内で、下綱の真獣亜綱の動物の、特に霊長類、偶蹄目、奇蹄目、齧歯目およびウサギ目の細胞が好ましい。
【0045】
さらに、種の中で、本発明の方法による標的細胞を形質導入することを介してゲノムを修飾することによってなし遂げられる目的に依存して組織型および/または等しく分化する能力に基づいて細胞を選択することができる。哺乳動物体を構成する細胞の3つの基本的カテゴリー:生殖細胞、体細胞および幹細胞。生殖細胞は、配偶子を生み出す細胞であり、したがって世代を超えて連続的である。幹細胞は、分裂して種々の特殊な細胞型に分化する、ならびに自己複製してさらに多くの幹細胞を生産することができる。哺乳動物において、主に2つの型の幹細胞が存在する:胚性幹細胞および成体幹細胞。体細胞は、配偶子、配偶子母細胞または未分化である幹細胞ではない全ての細胞を含む。哺乳動物の細胞はまた、分化する能力によってグループ化することができる。全能性(全能としても知られている)細胞は、接合体(受精卵)および後の割球などの胎盤組織を含む成体の生物体の全ての細胞型に分化することができる細胞であるが、胚性幹細胞などの多能性細胞は、胎盤などの胚体外組織に貢献することはできないが、3つの胚葉の内胚葉、中胚葉および外胚葉のいずれかに分化する可能性を有する。多能性前駆細胞は、限られた数の細胞系統ではあるが、複数の細胞を生み出す可能性を有する。さらに、少数のみの細胞型に発達することができる小能性(oligopotent)細胞および1つのみの細胞型に発達することができる単能性(unipotent)細胞(ときどき前駆細胞とも称される)がある。本発明の方法において使用される細胞が例えば造血幹細胞または神経幹細胞などに由来することができる組織の4つの基本的型:筋肉組織、神経組織、結合組織および上皮組織がある。好ましくは、ヒト胚から得られない、特にヒト胚の破壊を伴う方法を介さない、ヒト細胞である。他方では、ヒト胚性幹細胞は、市販されている既存の胚性幹細胞系から得られるなどの当業者の売却でのものである。したがって、本発明は、ヒト胚を使用または破壊する必要なく、ヒト胚性幹細胞を用いて実施してよい。あるいは、またはヒト胚性幹細胞の代わりに、人工多能性幹(iPS)細胞のような胚性幹細胞に似ている多能性細胞を使用してもよい、この産生は最先端である(Hargus et al. 2010; Jaenisch and Young 2008; Takahashi and Yamanaka 2006)。
【0046】
好ましい態様において、標的細胞は、リンパ球、腫瘍細胞、リンパ球系細胞、神経細胞、上皮細胞、内皮細胞、初代細胞、幹細胞からなる群から選択される細胞である。
【0047】
「リンパ球系細胞」なる用語は、リンパ球の産生に関与する細胞およびリンパ球それ自体を指す。「リンパ球」なる用語は、当技術分野でよく知られているように、小リンパ球(BおよびTリンパ球、形質細胞)およびナチュラルキラー細胞を指す。リンパ球系細胞は、さらに、例えば、リンパ球樹状細胞、ならびにリンパ球前駆細胞、例えば、前リンパ球、リンパ芽球、リンパ球共通前駆細胞を含む。
【0048】
本発明によるおよび当分野でよく知られている「腫瘍細胞」は、良性腫瘍、前悪性腫瘍または悪性腫瘍の形成に関与する腫瘍性細胞である。悪性である腫瘍細胞は、一般的に癌細胞と呼ばれ、隣接する組織に転移または拡散する能力を有している可能性がある。好ましい腫瘍細胞は、例えば、膵臓腫瘍細胞(例えば、AsPC-1およびPANC-1細胞など)、卵巣癌株(例えば、A2780など)、リンパ腫細胞株(例えば、KARPAS-299、SUDHL-1、SUP-M2、SupT-1、JVM-3、Jeko-1、DoHH-2、HuT-78およびSR-786細胞など)、皮膚黒色腫細胞株(例えば、A375など)および乳癌細胞(例えば、MCF7、MDA-MB-361およびT47D細胞など)および腫瘍に直接的に由来する初代細胞などである。
【0049】
「神経細胞」は、当分野でよく知られており、電気的および化学的なシグナル伝達によって情報を伝達する電気的に興奮可能な細胞を指す。様々な特殊な神経細胞、例えば、感覚ニューロンおよび運動ニューロンなどが、存在する。例えば、バスケット細胞、ベッツ細胞、中型有棘細胞、プルキンエ細胞、錐体細胞、レンショー細胞、顆粒細胞または前角細胞などが、本発明による標的細胞として使用することができる。「神経系腫瘍細胞」は、神経系起源の腫瘍細胞、例えば、神経膠腫、髄芽腫、星状細胞腫および神経系由来の他の癌である。神経膠腫細胞株(例えば、U87およびLN18など)を使用することができる。
【0050】
「幹細胞」という用語は、当分野でよく知られており、上記で詳述している。本発明の方法による使用のための好ましい幹細胞は、例えば、胚性幹細胞、誘導多能性幹細胞、造血幹細胞、神経幹細胞、癌幹細胞、人工多能性幹細胞(iPS)である。
【0051】
「上皮細胞」という用語は、当分野でよく知られている。上皮細胞は、全身の構造物の空洞および表面を覆っており、また多くの腺を形成している。上皮組織は、単純上皮(1つの細胞の厚さ)と層状上皮(数層の細胞の厚さ)に分類することができる。上皮細胞は、さらに、その形態によって扁平、立方、円柱および多列上皮細胞に分類される。例えば、ヒトの胃および腸は上皮細胞で覆われている。さらに、上皮細胞株はまた、乳房癌腫細胞(MCF7、MDA-MB-361およびT47D細胞など)または細胞株HEKT293Tの細胞を含む。
【0052】
「内皮細胞」という用語は、血管の内面を覆う細胞を指すことが当分野で知られており、本明細書において他の意味を有さない。様々な種類の内皮細胞、例えば、Ea.hy96、HUVECおよびHCAEC細胞などが存在する。
【0053】
本明細書において使用される「初代細胞」という用語は、組織から単離されており、そしてインビトロでの増殖について確立されている細胞を指すことが当分野で知られている。対応する細胞は、集団倍化を経験することが極めて少なく、およびしたがって連続的な細胞株と比較して、由来する組織の主要な機能要素のより典型的であり、したがってインビボ状態に対するより典型的なモデルを示す。様々な組織からサンプルを得る方法および初代細胞株を確立する方法は、当分野でよく知られている(例えばJones and Wise, Methods Mol Biol. 1997参照)。本発明の方法における使用のための初代細胞は、例えば、血液、リンパ腫および上皮性腫瘍に由来する。初代細胞はまた、組織から単離されており、そしてレンチウイルスの形質導入によってゲノムへの遺伝子の安定な組み込みによる不死化された細胞を含む。これらの遺伝子は、CDK-2、CDK4、CDK-6、hTERT、SV40ラージT抗原、Bmi1、HPV16 E-6/7または該遺伝子の2つ以上の任意の組合せを含む。
【0054】
ウイルスベクターでの、特にレトロウイルスベクターでの形質導入に関して、初代細胞、リンパ球、リンパ球系細胞および神経細胞は、形質導入するために困難であると考えられている。
【0055】
より好ましい態様において、リンパ球は初代リンパ球であり、および/または、腫瘍細胞は造血性腫瘍細胞、神経性腫瘍細胞または上皮性腫瘍細胞である。
【0056】
好ましくは、上皮性腫瘍細胞は乳房細胞腫瘍起源のものである。後者の細胞ならびに上記初代細胞、リンパ球およびリンパ球系細胞は、レトロウイルスベクターおよびアデノウイルスベクターを含む他のウイルスベクターを使用して形質導入することが特に困難であることが当分野で知られている。本発明において、該細胞における形質導入率を、最先端の方法を超えて有意に増強させることができる。
【0057】
培養中の細胞は、懸濁または付着、例えば細胞の層または人工的な基質への付着、のいずれかであってよいことが知られている。
【0058】
第1の局面にしたがう該組成物は、好ましくは、該ポロキサミンの溶液および該レトロウイルスベクターおよび/または該脊椎動物細胞の懸濁液である。
【0059】
本発明者らは、驚くべきことに、ポロキサミンがレトロウイルスのための形質導入エンハンサーとして有用であることを見いだした。レトロウイルスは、エンベロープウイルスであり、小分子薬物または核酸と非常に異なるものである。
【0060】
ポロキサミンは、非常に低い毒性または毒性なしを示す;実施例も参照。ペプチド-およびタンパク質-ベースの形質導入エンハンサーと比較して、ポロキサミンは、臨床使用のためのGMP品質レベルで比較的低コストで製造することができる。体内に入ると、ポロキサミンは、通常は約2週間から約5週間の間の時間で、毒性の分解産物を生じさせることなく加水分解的に破壊される(Cho, Lee, and Webb 2012)。ポロキサミンのこれらの有利な特性は、例えばSubbaraman et al. 2006およびTonge et al. 2001において記載されている、眼科的適用によってさらに説明される。
【0061】
好ましい態様において、(a)該ポロキサミンは、シーケンシャルなポロキサミンである;および/または(b)式(I)
【化1】
または式(II)
【化2】
の構造を有し、
いずれの式においても、
は、H-(O(CH-(OCH(CH)CH-であり;
は、H-(O(CH-(OCH(CH)CH-であり;
は、-(CHCH(CH)O)-((CHO)-Hであり;
は、-(CHCH(CH)O)-((CHO)-Hであり;
およびRは、独立して、存在しないか、またはH、CからCアルキル、CからCアルケニルおよびCからCアルキニルから選択され;RまたはRが存在しないとき、RまたはRに結合したNは正電荷を有さず;
C-lは、式(II)の構造を電気的中性にさせる1つ以上の対イオンを表し;
a、c、fおよびhは、独立して、約25から約200、好ましくは約50から約120の整数であり;および
b、d、eおよびgは、独立して、約5から約50、好ましくは約10から約25の整数である。
【0062】
「シーケンシャルなポロキサミン」という用語は、分野で確立された用語である。我々は、この点において、(Alvarez-Lorenzo et al. 2010)の図1を指す。さらに説明するために、シーケンシャルなポロキサミンは、ポリプロピレンオキシド構成要素が、中央のエチレンジアミン基の2つの窒素に結合している4つの鎖のセグメントに限定され、これらは該窒素に直接的に結合していることを特徴とする。該セグメントは、ポリプロピレンオキシド構成要素からなる。言い換えれば、シーケンシャルなポロキサミンにおいて、4つの鎖の遠位のセグメントがポリエチレンオキシドで構成される。
【0063】
逆が、本発明によって好ましくないシーケンシャルなポロキサミンを逆にするように適用する。
【0064】
上記議論のとおり、式IIの化合物はまた、式(lla):
【化3】
の化合物を包含する。
【0065】
好ましい対イオンは、さらに上述の通りである。
【0066】
上記項目(b)に示される式(I)および(II)は、シーケンシャルなポロキサミンを示しており、構成要素(それぞれエチレンオキシド(EO)およびプロピレンオキシド(PO))の数が指定されている。好ましいPO/EOの比率は以下に開示されている。
【0067】
一般的に言えば、および本明細書を通して、「約」という用語は、「約」という用語によって先行される数値から+/-30%、好ましくは+/-25%、+/-20%、+/-15%、+/-10%または+/-5%の平均偏差を指す。
【0068】
a、c、fおよびhについての特に好ましい範囲は、約27から約170、約32から約160、約38から約148、約40から約142、約43から約136、約46から約131、約49から約125、約51から約119、および約54から約114である。b、d、eおよびgについての特に好ましい範囲は、約5から約50、約6から約40、約7から約35、約8から約29、約9から約27、約10から約26、約11から約25、約12から約24、約12から約23、および約11から約22である。
【0069】
とりわけポロキサミンを定義する構造パラメーターに関して、製造方法の違いにより、一定の可変性があることに注意が必要である。より詳細には、同じ製造業者から得られるときも、所定の製品についてバッチ間のばらつきがある。加えて、製造業者に依存する変動もある可能性がある。このことは、構造パラメーターの前に「約」という用語によって反映される。
【0070】
さらに、所定の製造業者からの所定のバッチの中で、異なる分子種が含まれている可変性もある。この理由のため、特に断りのない限り、すべての構造パラメーターは、所定のバッチに含まれる個々の分子種の構造パラメーターの平均を表す。これはまた、製造業者によって一般的に提供される情報とも一致する。
【0071】
そうは言っても、以下のことを考慮しなければならない。ポロキサミンの所定のサンプルは、異なる分子を含む、または、言い換えれば、構造的不均一性を示すという事実により、かかるサンプルは、本明細書に記載されている態様の構造的要件を満たすポロキサミン分子を含んでよく、および同時に、本明細書に記載されている態様の構造的要件を満たさないさらなるポロキサミン分子を含む。好ましくないとはいえ、これは本発明を実施する手段である。その結果は以下の通りである:検討中のポロキサミンサンプルを特徴付ける平均構造パラメーターが本明細書に記載されている態様の要件を満たさないにもかかわらず、それにもかかわらず、該サンプル中に含まれるポロキサミン分子の画分はそうである。かかる状況が発生するか否かの決定は、質量分析および/またはガスクロマトグラフィーを含むクロマトグラフィーなどの技術的に確立された分析方法を使用することによって行うことができる。このような状況下で、本明細書に記載されている態様に記載された構造パラメーターは、単一のポロキサミン分子または前記画分を特徴付けるパラメーターである。本明細書に記載されている態様の構造要件を満たす所定のサンプル中のポロキサミンの少なくとも10%、少なくとも20%、少なくとも30%、少なくとも40%、または少なくとも50%が、有意な形質導入増強効果を引き起こすのに十分であると考えられる。
【0072】
本発明の上記記載された局面の特に好ましい態様において、a=c;f=h;b=d;および/またはe=g、および好ましくはa=c=f=h;および/またはb=d=e=gである。特に好ましくは、a=c=f=hおよびb=d=e=gである。言い換えれば、R、R、RおよびRが同一であることが好ましい。
【0073】
本発明の上記記載された局面のさらに特に好ましい態様において、(b+d+e+g)/(a+c+f+h)として定義されるプロピレンオキシド-エチレンオキシド比(#PO/#EO)は、約0.05から約1.5、好ましくは約0.1から約1.0、さらに好ましくは約0.15から約0.67、およびより好ましくは約0.18から約0.35の範囲である。好ましくは、また、約0.20、約0.25および約0.30の#PO/#EO比である。約0.25から約0.35のような対応する範囲もまた想定される。
【0074】
別の一般的な基準は、重量比EO/(EO+PO)である。好ましいポロキサミンは、約0.3~約0.95、さらに好ましくは約0.5~約0.9、およびさらに好ましくは約0.7~約0.8の間であるEO/(EO+PO)重量比を有する。
【0075】
好ましい態様において、(a)該ポロキサミンは流体状態であり、および/または(b)該組成物は、該ベクターが溶解および/または懸濁されているポロキサミン溶液であり、および/または該細胞は懸濁または付着している。
【0076】
ポロキサミンは、一般的に約200mg/mlで水への溶解度の上限を有することが当分野で知られている(Serra-Gomez et al. 2016)。この好ましい態様の要件は、ポロキサミンの懸濁、ゲル、ならびに溶解したポロキサミンが固体ポロキサミンと平衡状態にあるであろうあらゆる混合物を除外する。
【0077】
さらに好ましい態様において、該組成物は、(a)ポリカチオン性ポリマーまたはポリカチオン性ペプチドの群から選択される1つ以上のポリカチオン性物質;(b)プロスタグランジン;(c)糖タンパク質;(d)ポロキサマー(e)シクロスポリン;および/または(f)スタウロスポリンをさらに含むか、またはさらにからなる。
【0078】
第2の局面において、本発明は、第1の局面の組成物を含むか、またはからなる医薬組成物であって、第1の局面の該組成物は、該エンベロープウイルスベクター、好ましくは該レトロウイルスベクターを含む医薬組成物を提供する。
【0079】
医薬組成物は、有益な効果を有することが理解される。そのため、該医薬組成物に含まれるウイルスベクターは、細胞または生物体への投与時に有益な効果を誘発することができる核酸を含み、前記生物体は、脊椎動物、哺乳動物、霊長類およびヒトを含むことが想定される。
【0080】
第2の局面の好ましい態様において、該医薬組成物は、薬学的に許容される担体、賦形剤および/または希釈剤をさらに含むか、またはさらにからなる。その例は、緩衝食塩水(PBSおよびHBSSなど)、細胞培養培地(DMEM、RPMI1640およびIMDMなど)および水を含む。
【0081】
第3の局面において、本発明は、脊椎動物細胞にレトロウイルスベクターを形質導入するためのポロキサミンの使用を提供する。
【0082】
ウイルスベクターを使用する細胞調節の文脈における「形質導入」という用語は、当分野でよく知られており、本明細書において他の意味を有さない。簡潔には、この用語は、遺伝物質を細胞に導入するプロセス、および所望により、ウイルスベクターを介して該細胞のゲノムへのその後の組み込みを指す。該遺伝物質は、標的細胞(のゲノム)への組み込みのために意図される該ベクターに含まれる1つ以上の標的RNA配列(以下、標的配列と称する)と組み合わせられたウイルスRNAを含むか、またはからなる。
【0083】
好ましい細胞ならびに好ましいエンベロープウイルスベクターは、本明細書の上記で定義されたものである。
【0084】
好ましくは、(a)治療によるヒトまたは動物体の処置における使用は除外され、(b)該使用はインビトロまたはエキソビボの使用であり、および/または(c)該細胞は生体の一部ではない。
【0085】
エキソビボでの使用が特に好ましい。言い換えれば、細胞は、脊椎動物生物体から採取され、本発明によって形質導入され、およびその後、脊椎動物生物体、限定はしないが好ましくは細胞が採取された生物体に、再導入されてよい。形質導入のプロセスは、該生物体外で起こる。好ましくは、ポロキサミンは、再導入する該工程の前に除去される。
【0086】
一般的に言えば、本発明によると、ポロキサミンは、形質導入を増強することが知られている1つ以上のさらなる薬剤(本明細書において「アジュバント」としても称される)と組み合わされてよい。
【0087】
したがって、さらなる好ましい態様において、さらなる使用は、(a)ポリカチオン性ポリマーまたはポリカチオン性ペプチドの群から選択される1つ以上のポリカチオン性物質;(b)プロスタグランジン;(c)糖タンパク質;(d)ポロキサマー;(e)シクロスポリン;および/または(f)スタウロスポリンから構成される。
【0088】
本発明による「ポリカチオン性ポリマー」は、繰り返し単位が正電荷を持つ荷電ポリマーを指し、繰り返し単位上の正電荷はプロトン化された窒素部分からの幹である。例えば、ポリエチレニミン(PEI)において、正に帯電した基はイミン基である。
【0089】
「ポリカチオン性ペプチド」という用語は、正に帯電したペプチドを指す。例えば、ポリ-L-リジンは、(C12O)の分子式を有するホモポリマーのポリカチオン性ペプチドであり、本発明によると、限定はしないが、nは、少なくとも2、例えば、少なくとも20、好ましくは200から500、より好ましくは500から2500であってよい。
【0090】
さらなる好ましい態様において、さらに、使用は、フィブロネクチンおよびフィブロネクチンフラグメント(RetroNectinを含むフラグメント)などの1つ以上の糖タンパク質またはそのフラグメント、ならびにLAH4ペプチドファミリーから選択されるタンパク質フラグメントまたはペプチドで構成される。
【0091】
「糖タンパク質」という用語は、1つ以上のアミノ酸側鎖に共有結合したオリゴ糖鎖(糖鎖)を含むタンパク質を指す。フィブロネクチンは、230kDaから270kDaのサイズを有するマルチドメイン糖タンパク質である(Schwarzbauer and DeSimone 2011)。Retronectinは、CS-1、RGDSおよびヘパリン結合ドメインの3つのドメインを含むフィブロネクチンフラグメントを指す(Lee et al. 2009)。ヘパリン結合ドメインはウイルスベクターと結合し、RGDSおよびCS-1ドメインはそれぞれVLA-5およびVLA-4を介して標的細胞と結合し、したがって、ウイルス粒子および細胞を接近させる。
【0092】
「LAH4ペプチドファミリー」という用語は、ヒスチジンに富むカチオン性両親媒性ペプチドを指す(Fenard et al. 2013; Moulay et al. 2017)。
【0093】
さらなる好ましい態様において、さらなる使用はスタウロスポリンから構成される。
【0094】
スタウロスポリンという用語は、細菌ストレプトミセス・スタウロスポレウス(Streptomyces staurosporeus)からもともと単離されたセリン/スレオニンキナーゼインヒビターを指し、抗真菌活性を有する(Tamaoki and Nakano 1990)。中期細胞においてクロマチン弛緩を引き起こし、中期停止細胞においてHIV-1組み込みを増加させることも示されている。さらに、スタウロスポリンは、ヒトCD34+末梢血細胞へのレンチウイルス形質導入後、ベクターコピー数(VCN)を増加させることが実証されている(Lewis et al. 2018)。
【0095】
さらに好ましい態様において、さらなる使用は、プロスタグランジンから構成される。
【0096】
「プロスタグランジン」という用語は、ホルモン様効果を有し、炎症応答を含む病的メカニズムを媒介する生理学的に活性な脂質のグループを指す。プロスタグランジンE2(PGE2)は、主にマクロファージによって生産され、免疫応答、血圧、消化器完全性および生殖能力の制御に関与する(Ricciotti, Emanuela and FitzGerald 2011)。特に、PGE2は、CD34+HSPCにおけるレンチウイルスの形質導入を促進することが実証されている(Heffner et al. 2018)。
【0097】
PGE2は、天然のPGE2受容体アゴニストである。本発明によると、他のPGE2受容体アゴニストもまた使用してよい。好ましくは、PGE2受容体アゴニストは、15d-PGJ;デルタ12-PGJ;2-ヒドロキシヘプタデカトリエン酸(HHT);トロンボキサンA2;トロンボキサンB2;イロプロスト(lloprost);トレプロスチニル(Treprostinil);トラボプロスト(Travoprost);カルボプロスト(Carboprost) トロメタミン(tromethamine);タフルプロスト(Tafluprost);ラタノプロスト(Latanoprost);ビマトプロスト(Bimatoprost);ウノプロストン(Unoprostone) イソプロピル(isopropyl);クロプロステノール(Cloprostenol);オエストロファン(Oestrophan);スーパーファン(Superphan);ミソプロストール(Misoprostol);ブタプロスト(Butaprost);リノール酸;13(s)-HODE;LY171883;ミード酸(Mead Acid);エイコサトリエン酸(Eicosatrienoic Acid);エポキシエイコサトリエン酸(Epoxyeicosatrienoic Acid);ONO-259;Cay1039;16,16-ジメチルPGE;19(R)-ヒドロキシPGE;16、16-ジメチルPGE p-(p-アセトアミドベンザミド)フェニルエステル;11-デオキシ-16、16-ジメチル PGE;9-デオキシ-9-メチレン-16、16-ジメチル PGE;9-デオキシ-9-メチレン PGE;スルプロストン(Sulprostone);PGE セリノールアミド;PGE メチルエステル;16-フェニルテトラノールPGE;15(S)-15-メチル PGE;および15(R)-15-メチル PGEからなる群から選択される。
【0098】
より一般的に言えば、プロスタグランジンE受容体のシグナル伝達を刺激する薬剤を使用してよい。かかる薬剤は、PGA;PGB;PGD;PGE(アルプロスタジル(Alprostadil));PGF;PGI(エポプロステノール(Epoprostenol));PGH;およびPGJを含む。
【0099】
プロスタグランジンシグナル伝達経路を刺激することが知られているさらなる薬剤は、メベベリン(Mebeverine)、フルラントレノリド(Flurandrenolide)、アテノロール(Atenolol)、ピンドロール(Pindolol)、ガボキサドール(Gaboxadol)、キヌレン酸(Kynurenic Acid)、ヒドララジン(Hydralazine)、チアベンダゾール(Thiabendazole)、ビクリン(Bicuclline)、ベサミコール(Vesamicol)、ペルボシド(Peruvoside)、イミプラミン(Imipramine)、クロルプロパミド(Chlorpropamide)、1,5-ペンタメチレンテトラゾール、4-アミノピリジン、ジアゾキシド(Diazoxide)、ベンフォチアミン(Benfotiamine)、12-メトキシドデセン酸、N-ホルミル-Met-Leu-Phe、ガラミン(Gallamine)、IAA94およびクロロトリアニセン(Chlorotrianisene)である。
【0100】
本発明によると、1つ以上の該ポリカチオン性物質を標的細胞と接触させてよい。該接触は、標的細胞をウイルスベクターおよび該ポロキサミンと接触させる前に、同時に、または後に、後者の成分のすべてが最終的に同時に存在して標的細胞と同時に接触する限り、なし遂げることができる。
【0101】
1つより多いポリカチオン性物質、例えば、少なくとも2、少なくとも3、少なくとも4、少なくとも5または少なくとも6のポリカチオン性物質を標的細胞とさらに接触させるとき、それらはポリカチオン性ポリマーまたはポリカチオン性ペプチドのいずれかに属していてもよく、または、それらは両方から選択されてよく、すなわちポリカチオン性ポリマーはポリカチオン性ペプチドと混合することができる。
【0102】
特定の理論に縛られることなく、本明細書に記載されている全てのポリカチオン性物質は、レトロウイルスベクターおよび標的細胞の間の静電的な反発を橋渡しすることが可能であり、およびしたがって、形質導入効率をさらに増強することができることが示唆される。
【0103】
より好ましい態様において、該ポリカチオン性ポリマーは、ポリ(エチレングリコール)-ポリ(L-リジン)ブロックコポリマー(PEG-PLL)および1,5-ジメチル-1,5-ジアザ-ウンデカ-メチル-ポリメトブロミド(Polybrene)からなる群から選択される;および/または、該ポリカチオン性ペプチドは、プロタミン硫酸塩および約1から約300kDaの平均分子量を有するポリ-l-リジン(PLL)からなる群から選択される。さらに想定されることは、PGE-2、レトロネクチン、ポロキサマー、および他の形質導入増強物質である。
【0104】
ポロキサマーは、2本のポリオキシエチレン鎖により隣接された中央のポリプロピレンオキシドを含むコポリマーである。いくつかの商品名、例えば、Synperonic(登録商標)、Pluronic(登録商標)およびKolliphor(登録商標)が、ポロキサマーについて使用されている。頻繁に、ポロキサマーは、数値コードにより特徴付けられる。例を挙げると、ポロキサマー407は、分子量4000g/molおよび70%ポリオキシエチレン含有率を有するポリオキシプロピレン部分を有するポロキサマーである。形質導入のために特に適切なポロキサマーを含むポロキサマーは、本出願人の以前の出願WO 2013/127964に記載されている。特に好ましいポロキサマーは、以下にさらに記載されている。
【0105】
プロタミンは、小さい高度に塩基性のアルギニンに富むタンパク質のグループである。それらは、多くの種の精子におけるDNAと関連していることがわかっている。プロタミン硫酸塩は、魚の精子または卵から抽出されるこれらの塩基性のペプチドの硫酸塩からなる。一般的に、プロタミンは、いくつかの類似したペプチドの混合物である。典型的な長さは、約30アミノ酸である。平均分子量は、4000から7000、好ましくは5000から5500Daである。プロタミン硫酸塩は、例えば、欧州医薬品庁のプロタミン含有医薬品の評価報告書EMA/741250/2012に記載されている。
【0106】
「ポリ(エチレングリコール)-ポリ(L-リジン)ブロックコポリマー(PEG-PLL)」という用語は、[C12O]-[CO]-HOの分子式を有する正に帯電した高分子を指し、好ましくはxは約48であり、yは約272,72であり、約12000Daのポリ(エチレングリコール)(PEG)についての平均分子量に相当する。PEG-PLLは、(Harada and Kataoka 1995)により記載されているように合成される。
【0107】
PEG-PLLは単独で、またはポリブレン、プロタミン硫酸塩および/またはポリ-L-リジンのいずれかと組み合わせて使用することができる。考えられるところでは、任意のポリカチオン性物質を、細胞生存能力に本質的に影響を与えない濃度で使用される。例えば、ポリブレンについて一般的に受け入れられる使用濃度は8から10μg/mlである。
【0108】
よりさらに好ましい態様において、ポリカチオン性物質は、1,5-ジメチル-1,5-ジアザ-ウンデカ-メチル-ポリメトブロミドおよび/またはプロタミン硫酸塩である。
【0109】
1,5-ジメチル-1,5-ジアザ-ウンデカ-メチル-ポリメトブロミドおよびプロタミン硫酸塩を、単独で、またはそれぞれ他のおよび/またはさらなるポリカチオン性物質と組み合わせて使用することができる。
【0110】
本発明によると、LAH4ペプチドファミリーからの1つ以上の糖タンパク質またはペプチド、および/またはプロスタグランジンおよびまたはを、標的細胞と接触させてよい。該接触は、標的細胞をウイルスベクターおよび該ポロキサミンと接触させる前に、同時に、または後に、後者の成分のすべてが最終的に同時に存在して標的細胞と同時に接触する限り、なし遂げることができる。
【0111】
上記の開示された(すなわち、少なくとも1つのポロキサミンに加えて)さらなる薬剤の1つ、複数または全てを使用してよい。
【0112】
我々は、特定のプロピレンオキシド-エチレンオキシド比率(#PO/#EO)を有するポロキサミンについて、ポロキサミンとプロタミン硫酸塩との組合せ使用の相乗効果が観察されることを示す。我々は、この点において、本明細書に含まれる実験データに言及する。「プロピレンオキシド-エチレンオキシド比率」という用語は、本明細書で以下のように定義される。記載されている相乗効果に関してこの比率の好ましい範囲は、約0.18から約0.35である。
【0113】
シクロスポリンは、免疫抑制剤としての適用を見る真菌に見られるマクロライドのグループである。本発明によると、それらは、ポロキサミンおよび所望により本明細書に記載されている形質導入を増強するさらなる薬剤と共に形質導入の増強のために使用されてよい。
【0114】
第4の局面において、本発明は、脊椎動物細胞にレトロウイルスベクターを形質導入する方法であって、該方法は、該脊椎動物細胞、ポロキサミン、および該ウイルスベクターを接触させることを含むか、またはからなり、好ましくは、該接触させることが、以下の順序(a)該細胞を提供すること;(b)該ポロキサミンを加えること;および(c)該ベクターを加えること、で行われ、好ましくは、該接触させることの後に、スピノキュレーション(spinoculation)を行う、方法を提供する。
【0115】
これに関連して、本発明は、脊椎動物細胞にレンチウイルスベクターを形質転換する方法であって、該方法は、該脊椎動物細胞、ポロキサミン、および該ウイルスベクターを接触させることを含むか、またはからなり、好ましくは、該接触させることが、以下の順序(a)該細胞を提供すること;(b)該ポロキサミンを加えること;および(c)該ベクターを加えること、で行われ、好ましくは、該接触させることの後に、スピノキュレーション(spinoculation)を行う、方法を提供する。
【0116】
工程(b)および(c)もまた同時に行ってもよい。
【0117】
「接触」および「接触させる」という用語は、形質導入事象が起こることができるように標的細胞とウイルスベクターおよびポロキサミンを混合することを指す。形質導入事象が起こることができる接触する条件は、当分野ではよく知られており、選択される標的細胞およびウイルスベクターにある程度依存し得る。例えば、いくつかの標的細胞は、他の細胞よりも形質導入することが難しく、ウイルスベクターによる形質導入を達成することができる前に、特定の培養培地に移行させる必要がある場合がある。対応する方法および条件は、例えば(Chu, Cornetta, and Econs 2008; Jacome et al. 2009; Poczobutt et al. 2010)において記載されている。さらなる例示的な条件は、実施例セクションに記載されている。レトロウイルスベクターおよびポロキサミンは、同時に、例えば混合物として、標的細胞に、または連続モードにおいて、両方の化合物が同時に標的細胞と接触して、形質導入を可能にする限り、加えることができる。好ましくは、標的細胞、ウイルスベクターおよびポロキサミンを、少なくとも5時間、例えば、少なくとも6、少なくとも7、少なくとも8、より好ましくは少なくとも9、少なくとも10、少なくとも11、およびさらに好ましくは少なくとも12時間、接触させる。また想定されることは、より長い接触時間、例えば、少なくとも13、少なくとも14、少なくとも15、少なくとも16、少なくとも24、少なくとも36、少なくとも48または少なくとも72時間である。好ましくは、約24から約72時間である。
【0118】
本明細書に記載されている1つ以上の形質導入アジュバントを使用する場合、該アジュバントを工程(b)中で;および/または工程(a)の後、および工程(c)の前に加えることが好ましい。
【0119】
第3の局面の使用の好ましい態様は、第4の局面の方法の好ましい態様を定義する。
【0120】
該方法の好ましい態様において、(a)治療によるヒトまたは動物体の処置の方法は除外され、(b)該方法はインビトロまたはエキソビボ方法であり、および/または(c)該細胞は生体の一部ではない。
【0121】
該方法のさらなる好ましい態様において、および本発明による使用の好ましい態様の例示において、該接触させることは、(a)ポリカチオン性ポリマーまたはポリカチオン性ペプチドの群から選択される1つ以上のポリカチオン性物質;(b)プロスタグランジン;(c)糖タンパク質;(d)ポロキサマー;(e)シクロスポリン;および/または(f)スタウロスポリンと接触させることを含むか、またはさらにからなる。
【0122】
好ましいポリカチオン性ポリマー、ポリカチオン性ペプチド、糖タンパク質、プロスタグランジンおよびポロキサマーは、本明細書の上記に記載されているものである。
【0123】
別の好ましい態様において、上記の方法は、該標的細胞を該ポロキサミンと接触させるのと同時に、または後に、該ウイルスベクターと該標的細胞をスピノキュレーションするさらなる工程を含む。
【0124】
「スピノキュレーション」という用語は、レトロウイルスの細胞摂取の密接な接触を保証するために、標的細胞とウイルスベクターの遠心分離接種に関する。スピノキュレーションのプロトコールは、当分野ではよく知られており、本文書の序文で述べた文献にも記載されている。スピノキュレーション工程は、該標的細胞を該ポロキサミンと接触させることと同時に、または後に、実行することができる。好ましくは、スピノキュレーション工程は、標的細胞をポロキサミンおよびウイルスベクターと接触させた後に実行される。
【0125】
スピノキュレーション工程は、特に形質導入することが困難である細胞において、本発明の方法で達成される形質導入率をさらに増加させる。
【0126】
必ずしもスピノキュレーションと共にのみではないが、スピノキュレーションと共に、VSVでシュードタイプされているレトロウイルスベクターおよびVSVでシュードタイプされているレンチウイルスベクターの使用が好ましい。VSVシュードタイプは、とりわけベクターに機械的安定性を与える手段である。かかる機械的安定性は、スピノキュレーションの文脈において有利である。VSVでシュードタイプされているベクターは、出願人の特許出願WO 2015/104376に記載されており、この全体の開示を出典明示により包含させる。VSVでシュードタイプされているに関してさらなる開示は、本明細書の上記において提供される。
【0127】
好ましい態様において、形質導入は、参照方法と比較して増強されており、参照方法は、該ポロキサミンを加えることなく、該参照方法は、他の点では脊椎動物細胞に形質導入する該方法と同一である。
【0128】
形質導入および形質導入の増強は、技術的に確立された方法によって定量化されてよい。実施例において説明されているように、これは、例えば、蛍光活性化細胞分類(FACS)によって行うことができる。FACSは、形質導入された細胞の数を決定することができる。細胞は、蛍光マーカーが存在するか否かに基づいて、形質導入されたか形質導入されていないかに分類される。形質導入は、例えば、形質導入された細胞の数を所定の形質導入アッセイで使用された細胞の総数で割った比率など、相対的な用語で表してよい。
【0129】
第5の局面において、本発明は、第1の局面の組成物がウイルスベクターを含む第1の局面の組成物、または医薬における使用のための第2の局面の医薬組成物を提供する。
【0130】
第6の局面において、本発明は、レトロウイルスベクターが、疾患に罹患しているか、または該疾患を発症する危険性がある個体のために有益である遺伝子を有する、第2の局面の医薬組成物または第4の局面の使用のための組成物を提供する。好ましい疾患および関連する遺伝子をそれぞれ以下の表1に示す。
【0131】
表1
【表1】
【0132】
さらなる好ましい態様において、該レトロウイルスベクターは、レンチウイルスベクターである。
【0133】
本発明の上記の局面のさらに好ましい態様において、該ポロキサミンは、約5~約50kDa、好ましくは約10~約40kDa、または約10~約30kDa、およびさらに好ましくは約15kDa~約30kDa、または約15~約25kDaの分子量を有する。
【0134】
好ましいポロキサミンは、T1504、T1304、T1104、T904、T704、T504、T304、T1307、T1107、T707、T1508およびT908である。特に好ましいものは、ポロキサミンT1307、T1107、T707、T1508およびT908である。とりわけ好ましいものは、T908、T1107およびT1307から選択されるポロキサミンである。最も好ましいものはT1107である。
【0135】
最後の桁(例えばT908の場合は「8」)は、重量比(EO/(EO+PO))の値を示す。最後の桁が8の場合、該比率は約0.8である。
【0136】
これら3つの特に好ましいポロキサミンのプロピレンオキシド(PO)構成要素の数、エチレンオキシド(EO)構成要素の数、および分子量を以下の表2に示す。
【0137】
表2
【表2】
【0138】
「T」の表示は当分野で確立されている。我々は、この点において、(Chiappetta and Sosnik 2007; Schmolka 1977)を引用する。
【0139】
「T」の文字は、市販のポロキサミンを表すために当分野でよく使われる用語「Tetronic(登録商標)」に由来する。ポロキサミンは、BASFおよびCrodaを含むいくつかの製造業者から利用できる。
【0140】
本発明の前記局面のいずれかの好ましい態様において、該ポロキサミンは、約0.1から約40mg/ml、好ましくは約0.2から約30mg/ml、約0.25から約25mg/ml、さらに好ましくは約0.3から約20mg/mlの範囲における濃度で提供され、
(a)該細胞が懸濁液中の細胞であるとき、約0.3から約20mg/mlまたは約5から約20mg/mlが好ましく、約1から約20mg/mlまたは約10から約20mg/mlがより好ましく;および
(b)該細胞が付着しているとき、約0.3から約10mg/ml、約0.3から約5mg/ml、約0.3から約2mg/ml、約0.3から約1.25mg/ml、および約0.3から約1mg/mlがますます好ましい。とりわけ好ましくは、約0.6から約1mg/ml、例えば、約0.63mg/mlの濃度である。
【0141】
懸濁液中の細胞の例は、JVM-3およびDoHH-2細胞である;データについて、図4および5参照。付着細胞の例は、A2780細胞である;図1参照。Hut78細胞(懸濁液中の細胞)は、0.5から5mg/mlの濃度が好ましい;図3参照。
【0142】
本明細書において定義されるポロキサミンは、好ましくは、水、リン酸バッファーに、または細胞培養培地に直接的に、溶解される。ポロキサミンは、例えば、水またはリン酸バッファーに溶解して、例えば100mg/mlまたは50mg/mlの貯蔵溶液を得て、所定の作業濃度に希釈することができる。200mg/ml以上の濃度で、ポロキサミン溶液は、通常、ゲル状である。200mg/ml以下の濃度で、ポロキサミン溶液は、流体状態である。好ましくは、ポロキサミンが流体状態または溶液において提供されるような濃度である。
【0143】
より好ましい態様において、該ポロキサミンは、約500~約1000μg/mlの濃度で提供される。
【0144】
本明細書において定義されるポロキサミンは、水またはリン酸バッファーにおいて希釈されるとき、流体状態である。当業者により理解されるように、流体ポロキサミンを用いて細胞を形質転換することは、より便利、例えばピペッティングがより容易になるなど取り扱いが便利、であり得る。
【0145】
本発明による組成物または使用のための組成物の好ましい態様において、該組成物は、(a)ポリカチオン性ポリマーまたはポリカチオン性ペプチドの群から選択される1つ以上のポリカチオン性物質;(b)プロスタグランジン(protaglandin);(c)糖タンパク質;(d)ポロキサマー;(e)シクロスポリン;および/または(f)スタウロスポリンを含むか、またはさらにからなる。
【0146】
好ましいポリカチオン性ポリマーまたはポリカチオン性ペプチドは、本明細書の上記に記載されているものである。
【0147】
さらなる好ましい態様において、該ポロキサミンは、流体状態および/または溶液である。
【0148】
前記局面のいずれかのさらなる好ましい態様において、該脊椎動物細胞は、哺乳動物細胞、好ましくは霊長類細胞またはヒト細胞である。
【0149】
前記局面のいずれかの好ましい態様において、形質導入効率は、(a)統計的に有意な様式において;および/または(b)該ポロキサミンの非存在下での形質導入と比較して、少なくとも1.25倍、少なくとも1.5倍、少なくとも1.75倍、少なくとも2倍または少なくとも5倍、増加する。遺伝的に修正された患者細胞の大規模生産のために、かかる増加は非常に有意であることは注目に値する。
【0150】
所定の実験のための形質導入効率は、ベクターによって形質導入される細胞の割合として、または標的細胞における導入遺伝子発現の総レベルによって定義される。ポロキサミンは、形質導入エンハンサーなしで形質導入される細胞と比較して、該割合または該導入遺伝子レベルの列挙された増加を提供する。形質導入効率を決定するための例示的なアッセイは、実施例1に記載されている。形質導入の増強についての証拠は、本明細書の実施例において見ることができる。
【0151】
一般的に言えば、特に、(a)該ポリカチオン性ポリマーは、1,5-ジメチル-1,5-ジアザ-ウンデカ-メチル-ポリメトブロミド(Polybrene)およびポリ(エチレングリコール)-ポリ(L-リジン)ブロックコポリマー(PEG-PLL)から選択される;(b)該ポリカチオン性ペプチドは、プロタミン硫酸塩、約1から約300kDa、さらに好ましくは約1kDaから約100kDaの平均分子量を有するポリ-L-リジン(PLL)、およびVectofusin-1(登録商標)から選択される;(c)該糖タンパク質は、フィブロネクチン(RetroNectin(登録商標))である;(d)該プロスタグランジンは、PGE2である;(e)該ポロキサマーは、Synperonic(登録商標)F108またはSynperonic(登録商標)F98である(WO 2013/127964も参照);および/または(f)該シクロスポリンは、CsAまたはCsHである、ことが好ましい。
【0152】
好ましいプロスタグランジンは、プロスタグランジン-E2(PGE2)である(Heffner et al. 2018)。好ましい糖タンパク質は、RetroNectinである(Murray et al. 1999)。
【0153】
さらなる有用なポロキサマーは、ポロキサマー407である。
【0154】
特に好ましい態様において、プロタミン硫酸塩はポリカチオン性ペプチドであり、#PO/#EOは約0.18から約0.35であり、および/または該ポロキサミンはT1107、T1307またはT908である。
【0155】
後者の特に好ましい態様は、プロタミン硫酸塩および言及されているプロピレンオキシド-エチレンオキシド比率を満たすポロキサミンの組合せ使用によって与えられる驚くべき相乗効果により特徴付けられる。証拠は、実施例に含まれる。
【0156】
第7の局面において、本発明は、(a)ポロキサミン、好ましくは本明細書に定義されているもの;(b)所望により、以下の(i)から(iii):(i)(1)から(3):(1)ポリカチオン性ポリマーおよびポリカチオン性ペプチドから選択されるポリカチオン性物質;(2)プロスタグランジン;(3)糖タンパク質;(4)ポロキサマー;および(5)シクロスポリンの1つ、複数、または全て;(ii)レトロウイルスベクター;および(iii)脊椎動物細胞の1つ、複数、または全て;および(c)所望により、本発明の使用および/または方法を行うための指示を含むマニュアルを含むか、またはからなるキットを提供する。
【0157】
好ましい態様において、キットは、好ましくは上記使用または方法にしたがう、使用のための指示を含む。
【0158】
本明細書に上記されている特徴の定義および組合せは、ポリカチオン性ポリマー、ポリカチオン性ペプチド、糖タンパク質、プロスタグランジン、およびポロキサマーに関して、本発明のキットにも変更すべきところは変更して適用する。
【0159】
好ましい態様において、該キットは、該ポロキサミンおよび該レトロウイルスベクターを含むか、またはからなる。
【0160】
さらなる好ましい態様において、該キットは、該ポロキサミンおよび該脊椎動物細胞を含むか、またはからなる。
【0161】
さらなる好ましい態様において、該キットは、該ポロキサミン、該レトロウイルスベクターおよび該脊椎動物細胞を含むか、またはからなる。
【0162】
キットの種々の構成要素は、1つ以上のバイアルなどの1つ以上の容器にパッケージされてよい。バイアルは、前述の構成要素に加えて、保存のための防腐剤またはバッファー、維持および保存のための培地、例えば細胞培養培地、DMEM、MEM、HBSS、PBS、HEPES、ハイグロマイシン、ピューロマイシン、ペニシリン-ストレプトマイシン溶液、ゲンタマイシンなどを含んでもよい。有利には、キットは、当業者が、例えば本発明の種々の態様を、便利に実施することができるように、構成要素の使用のための指示を含む。いずれの構成要素も、実験的状況において使用されてよい。
【0163】
さらなる局面において、本発明は、ウイルスコピー数(VCN)を増強する方法であって、該方法は、第4の局面の形質導入する方法を含み、VCNは、参照方法と比較して増強されており、参照方法は、該ポロキサミンを加えることなく、該参照方法は、他の点ではVCNを増強する該方法と同一であり、好ましくは、VCNの増強は、少なくとも1.5倍、少なくとも2倍、少なくとも3倍、少なくとも5倍または少なくとも10倍である、方法を提供する。
【0164】
言い換えれば、ウイルスコピー数(VCN)を増強する方法であって、該方法は、脊椎動物細胞、ポロキサミン、およびウイルスベクターを接触させることを含み、好ましくは、該接触させることが、以下の順序:(a)該細胞を提供すること;(b)該ポロキサミンを加えること;および(c)該ベクターを加えること、で行われ、好ましくは、該接触させることの後にスピノキュレーションが実施され、およびVCNは、参照方法と比較して増強されており、参照方法は、該ポロキサミンを加えることなく、該参照方法は、他の点ではVCNを増強する該方法と同一である、方法が提供される。
【0165】
VCNを増強する上記の方法の、およびさらに第4の局面の方法の好ましい態様において、(a)該レトロウイルスベクターはレンチウイルスベクターである;および/または(b)該ポロキサミンはT1107である。
【0166】
「ベクターコピー数」という用語は、技術的に確立された意味を有する。それは、細胞内の、好ましくは細胞のゲノム内のベクターまたはその一部のコピーの数を指す。ベクターコピー数は、個々の細胞について決定してもよく、および細胞の集団について決定してもよい。後者の場合、平均VCNが得られる。ベクターコピー数を決定する方法は、当分野で知られている。それらは、例えば、Hauber et al. 2018 (Lin et al. 2016)に記載されているような定量的ポリメラーゼ連鎖反応(qPCR)およびデジタル液滴ポリメラーゼ連鎖反応(ddPCR)を含む。
【0167】
VCNの制御および改善は、遺伝子治療適用において重要な局面である。VCNは、細胞内で発現される治療用遺伝子の量を決定し、治療の成功に直接的に影響する。形質導入エンハンサーを使用することによってVCNを増加させることは、使用されるレンチウイルスベクターを低下させることができ、したがって潜在的なリスクおよびまた処置のコストを低下させる。
【0168】
本発明の方法を使用するとき、VCNの増強の実験的証拠は、実施例および図面に見ることができる。
【0169】
本明細書に上記されている特徴の定義および組合せは、ウイルスベクターおよびポロキサミンに関して、本発明のキットのウイルスベクターおよびポロキサミンにも変更すべきところは変更して適用する。例えば、レトロウイルスベクターは、例えばシュードタイプなどでさらに修飾されていてもよく、または修飾されていなくてもよい、レンチウイルスベクターであることができる。
【0170】
本明細書、特に特許請求の範囲において特徴付けられる態様に関して、従属請求項に記載された各態様が、該従属請求項が従属する各請求項(独立または従属)の各態様と組み合わされることが意図されている。例えば、3つの選択肢A、BおよびCを列挙している独立請求項1、3つの選択肢D、EおよびFを列挙している従属請求項2および請求項1および2に従属しており、および3つの選択肢G、HおよびIを列挙している請求項3の場合において、明細書は、特に言及しない限り、組合せA、D、G;A、D、H;A、D、I;A、E、G;A、E、H;A、E、I;A、F、G;A、F、H;A、F、I;B、D、G;B、D、H;B、D、I;B、E、G;B、E、H;B、E、I;B、F、G;B、F、H;B、F、I;C、D、G;C、D、H;C、D、I;C、E、G;C、E、H;C、E、I;C、F、G;C、F、H;C、F、Iに対応する態様を明白に記載していると理解されるべきである。
【0171】
同様に、および独立および/または従属請求項が選択肢を列挙していない場合においてもまた、従属請求項が複数の先行する請求項を参照するとき、それによりカバーされる発明特定事項の任意の組合せが明白に記載されていると考慮されると理解される。例えば、独立請求項1、請求項1を参照する従属請求項2、および請求項2および1の両方を参照する従属請求項3の場合において、請求項3および1の発明特定事項の組合せは、請求項3、2および1の発明特定事項の組合せと同様に、明確におよび一義的に記載されていることになる。請求項1から3のいずれか1つを参照するさらなる従属請求項4が存在する場合において、請求項4および1の、請求項4、2および1の、請求項4、3および1の、ならびに請求項4、3、2および1の発明特定事項の組合せが、明確におよび一義的に記載されていることになる。
【0172】
図は示す:
【図面の簡単な説明】
【0173】
図1】(a)ルシフェラーゼを発現するレンチウイルスで形質導入されたA2780細胞の発光シグナル。ルシフェラーゼを発現するレンチウイルスでトリプリケートにおいてA2780細胞の形質導入。0.31mg/mlから5mg/mlの濃度での3つの異なるポロキサミン(T908、T1107、T1307)を使用した。図は、プレートリーダーを用いて形質導入の3日後に測定した相対発光量(RLU)を示す。コントロールとして、ポリブレン(8μg/ml)およびウイルスのみ(アジュバントなし)を使用した。点線は、ウイルスのみのルシフェラーゼレベルを示す。(b)形質導入された細胞のルシフェラーゼシグナルに基づくウイルスのみと比較してのA2780における形質導入効率の改善倍数。(c)ルシフェラーゼを発現するレンチウイルスで形質導入されたNCI-H1838細胞の発光シグナル。ルシフェラーゼを発現するレンチウイルスでのトリプリケートにおけるA2780細胞の形質導入。すべての条件は、図1aに記載されているものと同じである。(d)形質導入された細胞のルシフェラーゼシグナルに基づくウイルスのみと比較してのNCI-H1383における形質導入効率の倍数改善。
【0174】
図2】ポロキサミンおよび他の形質導入を増強する物質の相加効果。1mg/mlの各ポロキサミンT1107、T1307およびT908を、5μg/lまたは40μg/mlのプロタミン硫酸塩(PS)または1mg/mlの対応する他のポロキサミンと組み合わせた。細胞ベースでの形質導入増強の効率を、GFPを発現するウイルスで形質導入し、形質導入の3日後の総細胞と比較してGFPを発現する細胞をカウントすることによって測定した(図2a-c)。ウイルスのみ、8μg/ml ポリブレン、40μg/ml プロタミン硫酸塩、1mg/ml T1107、8μ/ml ポリブレンを有する1mg/ml T1107および40μg/ml プロタミン硫酸塩を有する1mg/ml T1107の条件あたり3つの異なるウェルからの画像例を、図2dにおいて示されている。総形質導入効率を決定するために、細胞をルシフェラーゼを発現するレンチウイルスで形質導入した。発光を、形質導入の3日後に測定し、相対発光量(RLU;図2e-g)において示す。ポロキサミンのみおよび40μg/ml プロタミン硫酸塩を有するポロキサミン間での違いの有意性を、2-tailed student t-検定により計算し、p値として示した。グラフの点線は、ウイルスのみのコントロールのレベルを指す。
【0175】
図3】スピノキュレーションをa)およびc)無しでおよびb)およびd)有りで、ルシフェラーゼを発現するレンチウイルスで形質導入されたHut78懸濁液細胞の相対発光量(RLU)における発光レベル。Tetronicおよびコントロールを、指定された濃度で加えた。(c)および(d)は、ウイルスのみのコントロールに対する形質導入の対応する倍数改善を示す。
【0176】
図4】JVM-3懸濁液細胞を、ルシフェラーゼを発現するレンチウイルスでスピノキュレーション無しで形質導入した。a)は、形質導入3日後に測定された相対発光量(RLU)における発光レベルを示す。Tetronicおよびコントロールを、指定された濃度で加えた。(b)は、ウイルスのみのコントロールに対する対応する倍数改善を示す。
【0177】
図5】DoHH-2懸濁液細胞を、ルシフェラーゼを発現するレンチウイルスでスピノキュレーション無しで形質導入した。a)は、形質導入3日後に測定された相対発光量(RLU)における発光レベルを示す。Tetronicおよびコントロールを、指定された濃度で加えた。(b)は、ウイルスのみのコントロールに対する対応する倍数改善を示す。
【0178】
図6】MTT比色アッセイにより測定される種々の濃度のポロキサミンで処理されたA2780細胞の生存能力。グラフa)は、測定された吸光度の平均値を示し、バーは、標準偏差を示す。グラフ中の点線は、培地コントロールを示す。b)中の%値は、培地単独と比較しての相対的な生存能力である。
【0179】
図7】ウイルスのみでの形質導入と比較しての、1mg/ml T1107単独または5μg/ml PSと組み合わせてのいずれかを使用する相対的な形質導入増強。形質導入増強を、独立ドナーからのPBMCにおいて形質導入後9/10日目にFACS分析により測定した。バーは、3つの異なるドナーからの平均値を示す。形質導入エンハンサーで形質導入されたGFP+細胞のパーセンテージを、ウイルスのみで形質導入された細胞と比較した。この比率は、相対的な形質導入増強を与える。エラーバーは標準偏差を示す。P値を、2-tailed student t-検定で計算する。
【0180】
図8】ウイルスのみでの形質導入と比較しての、1mg/ml T1107単独または5μg/ml PSと組み合わせてのいずれかを使用する相対的なベクターコピー数(VCN)改善。分析を、独立ドナーからのPBMC上で形質導入後9/10にddPCRにより行った。形質導入エンハンサーで形質導入された細胞のVCNを、ウイルスのみで形質導入された細胞と比較した。この比率は、相対的な形質導入増強を与える。バーは、3つの異なるドナーからの平均値を示し、エラーバーは標準偏差を示す。P値を、2-tailed student t-検定で計算する。
【0181】
実施例は本発明を説明する:
【実施例
【0182】
実施例1
材料および方法
細胞株
ヒト卵巣癌腫細胞A2780(Sigma Aldrich)およびヒト肺腺癌細胞NCI H1838(ATTC)を、10%(vol/vol)ウシ胎仔血清(FCS; Biochrom)および2mM L-グルタミン(PAN Biotech)を補ったRPMI 1640培地において培養した。
【0183】
ヒト皮膚Tリンパ球 HuT78(ATCC)を、20% FCS(Biochrom)を補ったIMDB(Invitrogen)培地において培養した。
【0184】
ヒト慢性B細胞白血病(JVM-3)およびヒトB細胞リンパ腫(DoHH-2)を、10% FCS(Biochrom)を補ったRPMI 1640培地において培養した。
【0185】
レンチウイルス生産
レンチウイルスの形質導入ベクター p-Ubic-Luc2-IRES-Puroおよびp-CMV-copGFP-IRES-Puroは、それぞれUbicプロモーターにより駆動されるルシフェラーゼまたはCMVプロモーターによるcopGFPの発現を可能にする。複製欠損型レンチウイルス粒子を、製造業者の指示にしたがって形質導入試薬としてLipofectamine 2000(Life Technologies)を使用して、10μgのパッケージングプラスミド pMDL、pVSV-G、pRev(Roche)および2μgの形質導入ベクターを有するT75フラスコ中でHEK293-TN細胞の一過性の共形質導入により生産した。ウイルス粒子を形質導入の48時間後に回収し、低速遠心分離により細胞残屑を取り除き、PEGで沈殿させた。ウイルス粒子を遠心分離により濃縮し、-80℃で貯蔵した。
【0186】
細胞株のレンチウイルスの形質導入
適当な培養培地において96ウェルプレートにウェル当たり1.5E+05で、付着細胞を播種した。24時間インキュベーション(37℃、5%CO2)後、培地を交換し、細胞を指定されたとおり定義のアジュバント(すなわちポロキサミン)濃度で処理した。次に、細胞に、MOI 15(感染の多重度-細胞当たりの感染性ウイルス粒子)でルシフェラーゼまたはcopGFPを発現するレンチウイルス(LV)ベクターで形質導入し、培地の交換なしで37℃および5%CO2の細胞培養インキュベーターにおいて72時間培養した。懸濁液細胞を上記のように播種し、MOI 15で上記のとおり同じLVで播種された同じ日数形質導入した。所定の場合において、播種された細胞を有するプレートを、形質導入の直後に800gで60分間遠心分離した(スピノキュレーション)。
【0187】
形質導入効率の定量化
ルシフェラーゼにより総ウイルス導入遺伝子発現を定量するために、ウイルスの形質導入の3日後に細胞に100μl Steady-Glo試薬(Promega)を加えた。細胞を有するプレートを、Tecan Infinite M200プレートリーダーに入れ、30秒間振とうした。室温で10分間インキュベーション後、プレートリーダーにより発光シグナルを測定した。測定値を相対発光量(RLU)で示した。
【0188】
copGFPを発現するベクターで形質導入された細胞の形質導入効率を分析するために、形質導入3日後に10x対物レンズを備えた蛍光顕微鏡(DFC 3000G カメラを備えたLeica DM IL LED)でウェルごとにランダムな画像を撮影した。培地に1μg/ml Hoechst 33342を加えること、および37℃で15分間インキュベーションにより、細胞を対比染色した。copGFPおよびHoechstを発現する細胞をカウントし、GFPを発現する細胞の数をHoechstで染色された細胞の数で割ることによって形質導入効率を計算した。
【0189】
MTTアッセイ(細胞生存能力)
アジュバントの細胞毒性を、比色MTTアッセイにより試験した。A2780細胞を96ウェルプレートに播種し、細胞を0,031mg/mlから20ml/mlの範囲である濃度でアジュバントで処理した。5% CO2で37℃で72時間インキュベーション後、20μl MTT試薬(2,5mg/ml)を細胞に加え、細胞を37℃で4時間インキュベートした。100μl SDS溶解溶液(0,001N HCl中で10% SDS)を各ウェルに加え、37℃で24時間インキュベートした。Tecan プレートリーダーで560/690nmで吸光度を測定した。生存可能である健常な細胞中のNAD(P)H依存性細胞性オキシドレダクターゼ酵素は、MTTを不溶性形態に還元し、これはプレートリーダーにおいて測定することができる;吸光度における還元は、健常細胞の数の減少を指す。
【0190】
実施例3に対する材料および方法
ヒトCD34+ 造血幹細胞を、3つの独立ドナーからの末梢血単核細胞(PBMC)から単離した。形質導入のために、StemMACS HSC Expansion Cocktailを補ったStemMACS HSC Expansion Media XF中で12-ウェルプレートにウェルごとに2x10e6細胞で細胞を播種した。播種の翌日、CMVプロモーター下でGFPを発現するレンチウイルスベクターをMOI1で細胞に形質導入した。形質導入前に、ポロキサミン T1107を1mg/mlの最終濃度で単独または5μg/ml プロタミン硫酸塩(PS)と組み合わせてのいずれかで加えた。各ドナーについて、エンハンサーなしでウイルスでのコントロール形質導入を行った(ウイルスのみ)。形質導入のために、室温で600g、90分でのスピノキュレーションを適用した。
【0191】
形質導入の24時間後、細胞をPBSで2回洗浄し、培地を交換した。形質導入の9/10日後に、GFPを発現する形質導入された細胞のパーセンテージをFACS分析により分析した。
【0192】
さらに、形質導入の9/10日後に、QIAmp DNA micro Kitを用いて形質導入された細胞およびコントロール細胞からゲノムDNA(gDNA)を単離し、細胞あたりの組み込まれたウイルスベクターゲノムの数(ベクターコピー数、VCN)をddPCRにより分析した。組み込まれたウイルスベクターゲノムの検出のために、ddPCR PRE特異的プライマーおよびコントロールとしてシングルコピー遺伝子RPP30を用いた(Hauber et al. 2018)。
【0193】
実施例2
結果
ポロキサミンは付着細胞において形質導入を増強する
レンチウイルスベクターの形質導入効率に対するポロキサミンの効果を分析するために、MOI15でルシフェラーゼを発現するレンチウイルスでのこれらの細胞の形質導入後に、ポロキサミンT908、T1107、T1307を付着A2780細胞に指定された濃度で加えた。コントロールとして、ウイルスのみ(アジュバントの代わりにH20を有する)、または8mg/ml ポリブレンを、形質導入前にウェルに加えた。すべての条件はトリプリケートで設定した。形質導入3日後に、プレートリーダーでルシフェラーゼ活性を測定することによって、形質導入の効率を評価した。結果は相対的発光量(RLU)において示される。5mg/mlから0.31mg/mlの濃度で、T908、T1107、およびT1307のそれぞれについて、ウイルスのみと比較して、形質導入後の導入遺伝子発現が最大で2.13倍、2.55倍、または2.91倍改善した。A2780細胞に対するすべてのポリマーについての最も優れた改善は、0.63mg/mlで見ることができる(図1aおよび1b)。
【0194】
この形質導入試験は、付着ヒト肺腺癌細胞株NCI-H1838においても再現された。一般的に、ルシフェラーゼ活性によって測定される形質導入レベルは、A2780細胞よりも低かった(図1c)。我々は、さらに、ポロキサミンの付加が、形質導入エンハンサーなしでのウイルスでの形質導入と比較して、最大2.86倍(0.63mg/mlでT1107)、2.77倍(0.31mg/mlでT1307)および2.68倍(0.31mg/mlでT908)の形質導入効率を増加させたことを確認することができた(図1d)。
【0195】
ポロキサミンおよびプロタミン硫酸塩は、形質導入増強に対して相加効果を有する
相加効果を測定するために、A2780細胞を、1mg/mlでのポロキサミンT1107、T1307、またはT908の付加と共に、copGFPを発現するレンチウイルスで形質導入した。さらに、1mg/mlの各ポロキサミンと、5μg/mlまたは40μg/ml プロタミン硫酸塩または1mg/mlのポロキサミンとの組合せを用いて相乗効果を分析した。各ウェルにおいて、6枚の画像を撮影し(図2dに示されるT1107の実施例)、copGFPを発現する細胞をカウントし、Hoechst 33342色素で染色された総細胞と比較した。各条件ごとに3つのウェルからのGFPを発現する細胞の平均パーセンテージおよび標準偏差が、図2a-cに示される。単独で使用されたすべての形質導入エンハンサーは、ウイルスのみと比較して、1.67倍のレンチウイルスの形質導入を増加させた(ポリブレン)(図2a-c)。それぞれ1mg/mlでのポロキサミンT1107、T1307およびT908が、ウイルスのみと比較して、形質導入される細胞のパーセンテージがそれぞれ2.46倍、2.54倍および2.68倍に増加した。興味深いことに、我々は、T1107と40μg/mlのプロタミン硫酸塩との組み合わせが、T1107単独よりも1.43倍以上の細胞が形質導入されることを見いだした(図2a)。また、T1307およびT908について、我々は、ポロキサミン単独に比べて、ポロキサミンと40μg/mlのプロタミン硫酸塩との組み合わせでの、それぞれ1.49倍および1.71倍の、有意に改善された形質導入割合を観察した(図2bおよびc)。この改善はまた、40μg/mlのプロタミン硫酸塩単独と比較して見られることができる。ポロキサミンと他のポロキサミンの組み合わせは、有意な改善が見られなかった。
【0196】
総導入遺伝子発現レベルに対するこの相加効果も確認するために、レンチウイルスの形質導入を、ルシフェラーゼを発現するレンチウイルスを用いて行った。ポロキサミンおよび他のすべての形質導入エンハンサーの濃度および組み合わせは、上記の実験に記載されているとおりに使用した。
【0197】
形質導入エンハンサー単独は、総導入遺伝子発現が1.14倍(5μg/ml プロタミン硫酸塩)から2.08倍(40μg/ml プロタミン硫酸塩)に増加した(図2e-g)。ポロキサミンT1107、T1307およびT908は、ウイルスのみと比較して、それぞれ1.54倍、1.51倍および1.58倍に導入遺伝子発現レベルを増加させた(図2e-g)。我々は、ポロキサミン単独と比較して40μg/mlのプロタミン硫酸塩と組み合わせてのポロキサミンの改善された形質導入を確認することができた。40μg/mlのプロタミン硫酸塩と組み合わせてのT1107、T1307およびT908は、ポロキサミン単独と比較して、それぞれ1.96倍、2.11倍および1.89倍の導入遺伝子発現を増加した(図2e-g)。他のポロキサミンとの組み合わせは、有意な改善が見られなかった。
【0198】
ポロキサミンは懸濁液細胞中の形質導入を増強する
前臨床研究における確立された腫瘍細胞株の多くは、一般的なウイルスおよび非ウイルス性ツールで乏しい形質導入率のみを提供する。懸濁培養において増殖する未分化大細胞リンパ腫(ALCL)細胞株は、このような感染しにくい腫瘍細胞株のサブセットに属する。LV感染中に所望のスピノキュレーション工程を含む修飾されたプロトコールを用いて、我々は、レンチウイルス感染を促進するためのポロキサミンを試験した。最初に、スピノキュレーションの有りおよび無しで、ポロキサミンによる形質導入効率の増強を、HuT78ヒト皮膚Tリンパ球懸濁液細胞上で評価した。ルシフェラーゼを発現するレンチウイルスを用いて形質導入を行い、総導入遺伝子発現に対する効果を測定した。最大の形質導入効率は5mg/mlから1.25mg/mlのポロキサミンの間で達し、より低い濃度で減少した。ウイルスのみのコントロールに対するルシフェラーゼシグナルの最大の改善は、スピノキュレーション無しで、それぞれ3.53倍(T908、5mg/ml)、5.98倍(T1107、2.5mg/ml)および4.85倍(T1307、2.5mg/ml)であった(図3a+c)。スピノキュレーション有りで、最大の改善は、それぞれ4,08倍(T908、2.5mg/ml)、5.06倍(T1107(1.25mg/ml)および4.32倍(T1307、1.25mg/ml)であった(図3b+d)。一般的に、導入遺伝子の発現レベルは、付着A2780細胞と比較して実質的に低かった。スピノキュレーション有りで、発現レベルはスピノキュレーション無しと比較して最大で2.6倍に増加したが(図3dと比較して図3c)、総導入遺伝子発現レベルは付着細胞と比較してまだ比較的低かった(図1)。
【0199】
我々はまた、2つのさらなる懸濁液細胞系、JVM-3(ヒト慢性B細胞白血病)およびDoHH-2(ヒトB細胞リンパ腫)を試験した。JVM-3細胞において、我々は、20mg/mlでのT908で2.46倍、10mg/mlでのT1107で2.17倍および20mg/mlでのT1307で2.47倍の形質導入の最大の増強を観察した(図4a+b)。DoHH-2細胞において、ウイルスのみと比較して2.26倍(20mg/mlでT908)、2.42倍(20mg/mlでT1107)および3.29倍(20mg/mlでT1307)の増強が、それぞれ観察された(図5a+b)。JVM-3細胞は、使用された全ての条件下で、DoHH-2と比較してより高い総導入遺伝子発現レベルを有した。JVM-3およびDoHH-2の両方の懸濁液細胞系について、最も強い効果が10mg/mlから20mg/mlの間の濃度で見られた。一般的に、これらの2つの懸濁液細胞系はまた、付着A2780細胞と比較して、形質導入後に有意に低い導入遺伝子発現レベルを有した。
【0200】
細胞生存能力
遺伝子治療適用における形質導入エンハンサーの適用のために、使用される物質が細胞に対して生存能力に影響を与えない、および毒性効果を有さないことが重要である。
【0201】
MTTアッセイは、細胞において代謝活性を評価するための比色アッセイである。テトラゾリウム色素であるMTT(3-(4,5-ジメチルチアゾール-2-イル)-2,5-ジフェニルテトラゾリウムブロマイド)は、細胞性オキシドレダクターゼ(oxidureductase)酵素によって、紫色を呈し、吸光度測定によって定量することができる不溶性形態のホルマザンに還元される。細胞の生存能力についての効果を試験するために、20mg/mlから0,31mg/mlの間で形質導入増強のために使用される最終濃度でのポロキサミンを細胞に添加し、生存能力を3日後にMTTアッセイによって測定した。次に、吸光度値を、培地のみまたは水コントロールと比較した。T908について、生存能力は、0.31mg/mlで観察された最も高い生存能力で、69~90%であった。形態学的には、我々は、細胞においてアポトーシスを観察しなかった。T1107について、生存能力は、20mg/mlで最も高い生存能力で、99%~116%であった。同様の結果が、T1307について84%(0.31mg/ml)~109%(20mg/ml)の生存能力で見ることができる(図3(a)および(b))。100%を超える値は、これらの細胞がコントロールよりも高い酵素活性およびより高い生存能力を有することを示す。T1107およびT1307について、5mg/mlを超える高い濃度で100%を超える生存能力値が、これらのポロキサミンが細胞の増殖または酵素活性に対してポジティブな効果を有することを示すことができた。我々はアポトーシスの形態学的な兆候を観察することができなかったため、T908についてのより低い生存能力は毒性効果を明らかには示さない。これは、むしろ、細胞の代謝活性がT908によって影響されたことを示すことができた。
【0202】
実施例3
形質導入およびVCNの増強
ポロキサミン T1107による形質導入の改善を測定するために、3つの異なるドナーからヒトCD34+PBMCを回収し、12-ウェルプレートにウェル当たり2x10e6細胞で播種した。次の日に、細胞を、600gで90分間のスピノキュレーションを使用してMOI1でGFPを発現するレンチウイルスで形質導入した。形質導入エンハンサーとして、1mg/ml T1107単独または5μg/ml プロタミン硫酸塩(PS)と組み合わせてのいずれかを、ウイルスの前に添加した。形質導入の9/10日後に、GFPを発現する(GFP+)細胞のパーセンテージを、FACS分析により測定した。形質導入エンハンサーで形質導入されたGFP+細胞のパーセンテージを、ウイルスのみで形質導入されたGFP+細胞と比較した。この比率は、相対的な形質導入増強を与える。
【0203】
1mg/ml T1107単独で、9/10日目にウイルスのみと比較して3.95倍の有意な形質導入増強を観察した。5μg/mlのPSと組み合わせてのT1107は、ウイルスのみと比較して、さらに改善した5.09倍の形質導入を示した(図1)。この結果は、T1107単独を超える28.6%のより良い形質導入改善でのPSと組み合わせてのT1107の効果を示す。
【0204】
さらに、形質導入後9および10日目に、細胞あたりのベクターコピー数(VCN)をddPCRで分析した。VCN数は、標的細胞に組み込まれている導入遺伝子コピーの平均数を示す。ウイルス単独での形質導入により、VCNは0.07に達したが、1mg/ml T1107の添加は、0.3のVCNをもたらした。T1107と5μg/ml PSとの組合せは、VCNを0.43にさらに増加させた。T1107単独またはPSと組み合わせてのいずれかを添加することが、ウイルスのみと比較してVCNをそれぞれ4.44倍および6.28倍に増加した(図2)。T1107とPSとの組合せは、T1107単独の使用よりも、41.2%のより良いVCN改善をもたらした。これらの結果は、1mg/ml T1107の添加が、ウイルス単独での形質導入よりも、レンチウイルスの形質導入におけるVCNを有意に増強させることを明確に証明する。さらに、T1107とPSとの組合せは、VCNにおけるさらなる増加をもたらす。
【0205】
文献
【表3】

【表4】

【表5】

【表6】

【表7】
図1-1】
図1-2】
図1-3】
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図2-4】
図2-5】
図2-6】
図2-7】
図3-1】
図3-2】
図3-3】
図4
図5
図6
図7
図8
【国際調査報告】