(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】機械的に拡張可能な補綴心臓弁および送達装置
(51)【国際特許分類】
A61F 2/24 20060101AFI20220121BHJP
A61F 2/966 20130101ALI20220121BHJP
【FI】
A61F2/24
A61F2/966
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532060
(86)(22)【出願日】2019-12-04
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 US2019064373
(87)【国際公開番号】W WO2020117887
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】500218127
【氏名又は名称】エドワーズ ライフサイエンシーズ コーポレイション
【氏名又は名称原語表記】Edwards Lifesciences Corporation
【住所又は居所原語表記】One Edwards Way, Irvine, CALIFORNIA 92614, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】ハノック・コーヘン-ゼマク
(72)【発明者】
【氏名】タミール・エス・リーヴァイ
(72)【発明者】
【氏名】ヤイール・エー・ニューマン
(72)【発明者】
【氏名】トメル・サール
(72)【発明者】
【氏名】グレゴリー・リンバーグ
【テーマコード(参考)】
4C097
4C267
【Fターム(参考)】
4C097AA27
4C097BB01
4C097BB04
4C097BB09
4C097CC05
4C097MM09
4C097SB03
4C097SB09
4C267AA44
4C267AA56
4C267CC08
4C267CC19
(57)【要約】
径方向に拡張可能な補綴弁が、環状フレームと、少なくとも1つの拡張機構と、コードと、を備え得る。環状フレームは、径方向折り畳み構成と径方向拡張構成との間で径方向に折り畳み可能かつ拡張可能とできる。拡張機構は、第1の場所においてフレームに取り付けられる第1の部材と、第1の場所から軸方向に離間される第2の場所においてフレームに取り付けられる第2の部材と、を備え得る。コードは、少なくとも部分的に第1の方向において拡張機構に沿って延在することができ、第2の部材の一部分の周りに巻かれて留めることができ、少なくとも部分的に第1の方向と反対の第2の方向において拡張機構に沿って延在することができる。近位へ向かう力をコードの第1の部分に加えることで、第2の部材を第1の部材に対して移動させることができ、これによってフレームを軸方向に短縮させ、径方向に拡張させることができる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
径方向に拡張可能な補綴弁であって、
流入端および流出端を備え、径方向折り畳み構成と径方向拡張構成との間で径方向に折り畳み可能かつ拡張可能である環状フレームと、
第1の場所において前記フレームに取り付けられる第1の部材、および、前記第1の場所から軸方向に離間される第2の場所において前記フレームに取り付けられる第2の部材を備える少なくとも1つの拡張機構と、
少なくとも部分的に第1の方向において前記拡張機構に沿って延在し、前記第2の部材の一部分の周りに巻かれて留められ、少なくとも部分的に前記第1の方向と反対の第2の方向において前記拡張機構に沿って延在するコードと、
を備え、
近位へ向かう力を前記コードの第1の部分に加えることで、前記コードを前記第2の部材に対して移動させ、前記第2の部材を前記第1の部材に対して移動させ、これによって前記フレームを軸方向に短縮させ、径方向に拡張させる、補綴弁。
【請求項2】
前記フレームの中で位置決めされ、かつ前記フレームに固定される、弁尖構造体をさらに備える、請求項1に記載の補綴弁。
【請求項3】
近位へ向かう力を前記コードの第2の部分に加えることで、前記コードを前記拡張機構から解放する、請求項1または2に記載の補綴弁。
【請求項4】
前記コードに結合され、前記近位へ向かう力が前記コードの前記第1の部分に加えられるときに前記コードが前記拡張機構を通じて引っ張られることを防止する大きさとされる停止部材をさらに備える、請求項1から3のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項5】
前記停止部材は結び目を備える、請求項4に記載の補綴弁。
【請求項6】
前記拡張機構は筐体をさらに備え、前記第2の部材は前記筐体の中で少なくとも部分的にスライド可能である、請求項1から5のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項7】
前記コードは、前記筐体の第1の部分を通って延在し、前記第2の部材の前記一部分の回りで延在し、前記筐体の第2の部分を通るという順番で延在する、請求項1から6のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項8】
前記近位へ向かう力を前記コードの前記第1の部分に加えることで、前記第2の部材を、前記筐体を通じて前記フレームにおける前記第1の場所に向けて引っ張る、請求項7に記載の補綴弁。
【請求項9】
前記フレームを前記径方向拡張構成において保持するように構成される係止機構をさらに備える、請求項1から8のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項10】
前記少なくとも1つの拡張機構はラチェット組立体を備える、請求項1から9のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項11】
前記第1の部材は前記ラチェット組立体のラックおよびツメの一方を備え、前記第2の部材は前記ラチェット組立体の前記ラックおよび前記ツメの他方を備える、請求項10に記載の補綴弁。
【請求項12】
前記ラックは、細長い棒材を備え、前記棒材は、前記棒材の長さに沿って配列される複数のラチェット歯を備え
前記ラックは前記ツメに対して移動可能であり、
前記近位へ向かう力を前記コードの前記第1の部分に加えることで、前記ラックを前記第2の方向において移動させ、それによって前記環状フレームを軸方向に短縮させ、径方向に拡張させ、
前記ラチェット歯のうちの1つとの前記ツメの係合は、前記環状フレームの径方向の圧縮を防止するために前記第1の方向における前記ラックの移動を防止する、請求項11に記載の補綴弁。
【請求項13】
前記ツメは、前記ラックの前記ラチェット歯と係合するように構成される係合部分と、前記ラックから離れるように延在する解放部分と、前記係合部分と前記解放部分との間の中間部分と、を備え、前記解放部分に加えられる内向きの径方向の力が、前記係合部分を前記ラチェット歯から係合解除させて、前記第1の方向における前記ラックに沿っての前記ツメの移動を許容する、請求項12に記載の補綴弁。
【請求項14】
前記コードは第1のコードであり、前記補綴弁は、第2のコードをさらに備え、前記第2のコードは、前記第2のコードに加えられる引っ張り力が前記係合部分を前記ラチェット歯から係合解除させるように、前記ツメの前記解放部分に連結される、請求項11から13のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項15】
前記第2のコードは、前記ツメの前記解放部分における第1の開口部および第2の開口部を通じて延在するループを備える、請求項14に記載の補綴弁。
【請求項16】
前記少なくとも1つの拡張機構は少なくとも2つの拡張機構を備え、各々の拡張機構の前記第2のコードは、各々の前記拡張機構の前記第2のコードに加えられる引っ張り力が前記フレームを径方向に圧縮させるように構成される、請求項14または15に記載の補綴弁。
【請求項17】
前記フレームは、複数の旋回継手において互いと連結される複数の支柱を備え、前記第2の部材は、前記旋回継手のうちの1つを形成するために前記支柱のうちの2つにおける開口部へと延在する柱を備える、請求項1から16のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項18】
前記拡張機構は、前記ツメを前記ラックと係合した状態で弾性的に保持するために付勢力を前記ツメに加えるように構成される保持部材をさらに備える、請求項11から17のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項19】
前記コードが周りに巻かれて留められる前記第2の部材の前記一部分は滑車である、請求項1から18のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項20】
前記コードは縫合糸である、請求項1から19のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項21】
前記第2のコードは縫合糸である、請求項14から20のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項22】
取っ手を備える送達装置との組み合わせで、前記コードの前記第1の部分は前記取っ手に動作可能に連結される、請求項1から21のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項23】
前記拡張機構は、前記第2の方向において前記第2の部材に付勢力を及ぼすように構成される付勢部材をさらに備え、前記付勢力は、前記補綴弁が自然心臓弁輪の中に移植されるとき、前記第2の部材が前記付勢力の下で前記第2の方向に移動させられ、前記自然弁輪が時間と共に拡大するにつれて前記フレームをさらに拡張させるように選択される、請求項1から22のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項24】
前記付勢部材はバネを備える、請求項23に記載の補綴弁。
【請求項25】
径方向に拡張可能な補綴弁であって、
流入端および流出端を備え、径方向折り畳み構成と径方向拡張構成との間で径方向に折り畳み可能かつ拡張可能である環状フレームと、
第1の場所において前記フレームに取り付けられる第1の部材、および、前記第1の場所から軸方向に離間される第2の場所において前記フレームに取り付けられる第2の部材を備える少なくとも1つの拡張機構と、
コードに力を加えることで、1より大きい機械的倍率で前記第2の部材を前記第1の部材に対して移動させるように前記第1の部材および前記第2の部材に動作可能に連結されるコードであって、前記第1の部材に対する前記第2の部材の移動は前記フレームを径方向に拡張させる、コードと、
を備える径方向に拡張可能な補綴弁。
【請求項26】
前記フレームの中で位置決めされ、かつ前記フレームに固定される、弁尖構造体をさらに備える、請求項25に記載の補綴弁。
【請求項27】
前記機械的倍率は少なくとも2:1である、請求項25または26に記載の補綴弁。
【請求項28】
前記コードは、少なくとも部分的に前記拡張機構に沿って遠位へ延在し、前記第2の部材の一部分の回りで延在し、少なくとも部分的に前記拡張機構に沿って近位へ延在する、請求項25から27のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項29】
径方向に拡張可能な補綴弁であって、
流入端および流出端を備え、径方向圧縮構成と径方向拡張構成との間で径方向に折り畳み可能かつ拡張可能である環状フレームと、
第1の場所において前記フレームに取り付けられる第1の部材、および、前記第1の場所から軸方向に離間される第2の場所において前記フレームに取り付けられる第2の部材を備える少なくとも1つの拡張機構であって、第1の方向における前記第2の部材に対する前記第1の部材の移動は前記フレームを径方向に拡張させ、前記第1の方向と反対の第2の方向における前記第2の部材に対する前記第1の部材の移動は前記フレームを径方向に圧縮させる、少なくとも1つの拡張機構と、
前記第1の方向において前記第1の部材に付勢力を及ぼすように構成される付勢部材であって、前記付勢力は、前記補綴弁が自然心臓弁輪の中に移植されるとき、前記第1の部材が前記付勢力の下で前記第2の部材に対して前記第1の方向に移動させられ、前記自然弁輪が時間と共に拡大するにつれて前記フレームをさらに拡張させるように選択される、付勢部材と、
を備える径方向に拡張可能な補綴弁。
【請求項30】
前記少なくとも1つの拡張機構はラチェット組立体を備える、請求項29に記載の補綴弁。
【請求項31】
前記第1の部材は前記ラチェット組立体のラックおよびツメの一方を備え、前記第2の部材は前記ラチェット組立体の前記ラックおよび前記ツメの他方を備える、請求項30に記載の補綴弁。
【請求項32】
前記付勢部材はバネを備える、請求項29から31のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項33】
径方向に拡張可能な補綴弁であって、
流入端および流出端を備え、径方向圧縮構成と径方向拡張構成との間で径方向に折り畳み可能かつ拡張可能である環状フレームと、
少なくとも1つの拡張機構であって、
第1の場所において前記フレームに取り付けられる第1の部材と、
前記第1の場所から軸方向に離間される第2の場所において前記フレームに取り付けられる第2の部材と、
前記第1の場所および前記第2の場所から軸方向に離間される第3の場所において前記フレームに取り付けられる第3の部材であって、第1の方向における前記第2の部材に対する前記第1の部材の移動は前記フレームを径方向に拡張させ、前記第1の方向と反対の第2の方向における前記第2の部材に対する前記第1の部材の移動は前記フレームを径方向に圧縮させる、第3の部材と、
を備える少なくとも1つの拡張機構と、
付勢部材であって、前記付勢部材は、前記フレームを前記径方向圧縮構成から前記径方向拡張構成へと径方向に拡張させるために前記第1の部材が前記第2の部材に対して移動させられるときに前記付勢部材のポテンシャルエネルギーが増加するように、前記第1の部材および前記第3の部材に動作可能に連結され、前記付勢部材の前記ポテンシャルエネルギーは、前記第3の部材を前記第2の部材に対して移動させ、前記補綴弁が移植される自然弁輪が時間と共に拡大するにつれて前記フレームをさらに拡張させる付勢力を前記第3の部材にかける、付勢部材と、
を備える径方向に拡張可能な補綴弁。
【請求項34】
前記付勢部材はバネを備える、請求項33に記載の補綴弁。
【請求項35】
前記第1の部材と前記第2の部材とはラチェット組立体を集合的に備え、前記第1の部材は前記ラチェット組立体のラックおよびツメの一方を備え、前記第2の部材は前記ラチェット組立体の前記ラックおよび前記ツメの他方を備える、請求項33または34に記載の補綴弁。
【請求項36】
前記付勢部材は、前記第1の部材が前記フレームを径方向に拡張させるように前記第2の部材に対して移動させられるときに前記付勢部材が圧縮されるように、前記第1の部材と前記第3の部材との間に位置決めされる、請求項33から35のいずれか一項に記載の補綴弁。
【請求項37】
径方向に拡張可能な補綴弁と、
部分圧縮構成において前記補綴弁の遠位端部分を覆うような大きさとされる末広部分を伴うノーズコーンを備える送達装置と、
を備える医療組立体。
【請求項38】
補綴心臓弁を移植する方法であって、
前記補綴弁および送達装置の遠位端部分を患者の血管系に挿入するステップであって、前記補綴心臓弁は径方向圧縮状態にある、ステップと、
前記補綴弁を患者の心臓の自然弁に隣接して位置決めするステップと、
近位へ向かう力を第1のコードの第1の端に加えて前記補綴弁を前記径方向圧縮状態から径方向拡張状態へと拡張させるステップであって、前記第1のコードは、前記近位へ向かう力が、1より大きい機械的倍率で前記補綴弁に伝達されるように、前記補綴弁に動作可能に連結される、ステップと、
を含む方法。
【請求項39】
近位へ向かう力を、前記補綴弁に動作可能に連結される第2のコードに加えて、前記補綴弁を径方向に圧縮させるステップをさらに含む、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
近位へ向かう力を前記第1のコードの第2の端に加えて前記第1のコードを前記補綴弁から解放するステップをさらに含む、請求項38または39に記載の方法。
【請求項41】
補綴心臓弁を移植する方法であって、
前記補綴弁および送達装置の遠位端部分を患者の血管系へと挿入するステップであって、前記補綴弁は、前記送達装置の前記遠位端部分に沿って径方向圧縮状態にあり、前記送達装置はノーズコーンを備える、ステップと、
前記補綴弁を前記径方向圧縮状態から径方向拡張状態へと径方向に拡張させるステップと、
前記補綴弁を少なくとも部分圧縮状態へ径方向に圧縮するステップと、
前記少なくとも部分圧縮された補綴弁の遠位端部分を前記ノーズコーンの末広部分で覆うステップと、
前記少なくとも部分圧縮された補綴弁の前記遠位端部分が前記ノーズコーンの前記末広部分によって覆われる間に前記補綴弁を再位置決めするステップと、
を含む方法。
【請求項42】
前記補綴弁を前記少なくとも部分圧縮状態から前記径方向拡張状態へと再拡張するステップをさらに含む、請求項41に記載の方法。
【請求項43】
前記補綴弁を再拡張した後、前記補綴弁を前記送達装置から解放するステップと、前記送達装置のシースを前記ノーズコーンの前記末広部分にわたって位置決めして前記末広部分を遠位方向において折り畳ませるステップと、をさらに含む、請求項42に記載の方法。
【請求項44】
前記補綴弁を再位置決めするステップは、自然大動脈弁を交差するステップを含む、請求項41から43のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願への相互参照
本出願は、2018年12月6日に出願された米国仮特許出願第62/776,348号への便益を主張し、この特許出願は本明細書において参照により組み込まれている。
【0002】
本開示は、補綴心臓弁などの移植可能で機械的に拡張可能な補綴装置と、このような補綴装置のための方法および送達組立体と、このような補綴装置を備える方法および送達組立体と、に関する。
【背景技術】
【0003】
人の心臓は様々な弁膜症を患う可能性がある。これらの弁膜症は、心臓の相当の機能不全をもたらし、自然弁の修復、または人工弁による自然弁の置き換えを最終的には必要とする可能性がある。いくつかの知られている修復装置(例えば、ステント)および人工弁と、これらの装置および弁を人に移植するいくつかの知られている方法と、がある。従来の心臓切開手術と関連付けられる欠点のため、経皮の低侵襲手術法が注目を集めている。ある技術では、補綴装置は、カテーテル法を用いて、より低い侵襲性の処置で移植されるように構成されている。例えば、折り畳み可能な経カテーテルによる補綴心臓弁が圧縮状態へと縮められ、その圧縮状態においてカテーテルで経皮的に導入され、機械的な拡張によって、または、自己拡張するフレームまたはステントを用いることによって、所望の位置で機能する大きさへと拡張させることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許出願公開第2018/0153689号明細書
【特許文献2】米国特許出願第15/995,528号明細書
【特許文献3】米国特許第6,730,118号明細書
【特許文献4】米国特許第7,393,360号明細書
【特許文献5】米国特許第7,510,575号明細書
【特許文献6】米国特許第7,993,394号明細書
【特許文献7】米国特許第8,652,202号明細書
【特許文献8】米国特許出願第15/978,459号明細書
【特許文献9】米国特許出願公開第2014/0343670号明細書
【特許文献10】米国特許出願公開第2017/0065415号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
経皮弁技術における最近の進歩にも拘らず、向上した経カテーテルによる心臓弁、およびこのような弁のための送達装置への要求がある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
機械的に拡張可能な補綴心臓弁の実施形態と送達装置とが本明細書において開示されている。ある代表的な実施形態において、径方向に拡張可能な補綴弁が、環状フレームと、少なくとも1つの拡張機構と、コードと、を備え得る。環状フレームは、流入端および流出端を備えることができ、径方向折り畳み構成と径方向拡張構成との間で径方向に折り畳み可能かつ拡張可能とできる。拡張機構は、第1の場所においてフレームに取り付けられる第1の部材と、第1の場所から軸方向に離間される第2の場所においてフレームに取り付けられる第2の部材と、を備え得る。コードは、少なくとも部分的に第1の方向において拡張機構に沿って延在することができ、第2の部材の一部分の周りに巻かれて留めることができ、少なくとも部分的に第1の方向と反対の第2の方向において拡張機構に沿って延在することができる。近位へ向かう力をコードの第1の部分に加えることで、コードを第2の部材に対して移動させ、第2の部材を第1の部材に対して移動させることができ、これによってフレームを軸方向に短縮させ、径方向に拡張させることができる。
【0007】
一部の実施形態では、補綴弁は、フレームの中で位置決めされ、かつフレームに固定される、弁尖構造体を備え得る。
【0008】
一部の実施形態では、近位へ向かう力をコードの第2の部分に加えることで、コードを拡張機構から解放することができる。
【0009】
一部の実施形態では、補綴弁は、コードに結合され、近位へ向かう力がコードの第1の部分に加えられるときにコードが拡張機構を通じて引っ張られることを防止する大きさとされる停止部材をさらに備え得る。一部の実施形態では、停止部材は結び目を備え得る。
【0010】
一部の実施形態では、拡張機構は筐体をさらに備えることができ、第2の部材は筐体の中で少なくとも部分的にスライド可能であり得る。一部の実施形態では、コードは、筐体の第1の部分を通って延在し、第2の部材の一部分の回りで延在し、筐体の第2の部分を通るという順番で延在することができる。
【0011】
一部の実施形態では、近位へ向かう力をコードの第1の部分に加えることで、第2の部材を、筐体を通じてフレームにおける第1の場所に向けて引っ張ることができる。一部の実施形態では、補綴弁は、フレームを径方向拡張構成において保持するように構成される係止機構をさらに備え得る。
【0012】
一部の実施形態では、拡張機構はラチェット組立体を備え得る。一部の実施形態では、第1の部材はラチェット組立体のラックおよびツメの一方を備えることができ、第2の部材はラチェット組立体のラックおよびツメの他方を備えることができる。
【0013】
一部の実施形態では、ラックは、細長い棒材を備え、棒材は、棒材の長さに沿って配列される複数のラチェット歯を備えることができ、ラックはツメに対して移動可能とでき、近位へ向かう力をコードの第1の部分に加えることで、ラックを第2の方向において移動させることができ、それによって環状フレームを軸方向に短縮させ、径方向に拡張させ、ラチェット歯のうちの1つとのツメの係合は、環状フレームの径方向の圧縮を防止するために第1の方向におけるラックの移動を防止することができる。
【0014】
一部の実施形態では、ツメは、係合部分と、解放部分と、中間部分と、を備え得る。係合部分は、ラックのラチェット歯と係合するように構成でき、解放部分は、ラックから離れるように延在することができ、中間部分は、係合部分と解放部分との間に位置決めできる。解放部分に加えられる内向きの径方向の力が、係合部分をラチェット歯から係合解除させて、第1の方向におけるラックに沿ってのツメの移動を許容することができる。
【0015】
一部の実施形態では、コードは第1のコードとでき、補綴弁は、第2のコードをさらに備え、第2のコードは、第2のコードに加えられる引っ張り力が係合部分をラチェット歯から係合解除させるように、ツメの解放部分に連結されることができる。一部の実施形態では、第2のコードは、ツメの解放部分における第1の開口部および第2の開口部を通じて延在するループを備え得る。
【0016】
一部の実施形態では、少なくとも1つの拡張機構は少なくとも2つの拡張機構を備えることができ、各々の拡張機構の第2のコードは、各々の拡張機構の第2のコードに加えられる引っ張り力がフレームを径方向に圧縮させるように構成され得る。
【0017】
一部の実施形態では、フレームは、複数の旋回継手において互いと連結される複数の支柱を備えることができ、第2の部材は、旋回継手のうちの1つを形成するために支柱のうちの2つにおける開口部へと延在する柱を備えることができる。
【0018】
一部の実施形態では、拡張機構は、ツメをラックと係合した状態で弾性的に保持するために付勢力をツメに加えるように構成される保持部材をさらに備え得る。
【0019】
一部の実施形態では、コードが周りに巻かれて留められる第2の部材の一部分は滑車とできる。一部の実施形態では、コードは縫合糸とできる。一部の実施形態では、第2のコードは縫合糸とできる。一部の実施形態では、補綴弁は、取っ手を備える送達装置との組み合わせとできる。コードの第1の部分は取っ手に動作可能に連結され得る。
【0020】
一部の実施形態では、拡張機構は、第2の方向において第2の部材に付勢力を及ぼすように構成される付勢部材をさらに備え得る。付勢力は、補綴弁が自然心臓弁輪の中に移植されるとき、第2の部材が付勢力の下で第2の方向に移動させられ、自然弁輪が時間と共に拡大するにつれてフレームをさらに拡張させるように選択され得る。一部の実施形態では、付勢部材はバネを備え得る。
【0021】
別の代表的な実施形態において、径方向に拡張可能な補綴弁が、環状フレームと、少なくとも1つの拡張機構と、コードと、を備え得る。環状フレームは、流入端および流出端を備えることができ、径方向折り畳み構成と径方向拡張構成との間で径方向に折り畳み可能かつ拡張可能とできる。拡張機構は、第1の場所においてフレームに取り付けられる第1の部材と、第1の場所から軸方向に離間される第2の場所においてフレームに取り付けられる第2の部材と、を備え得る。コードは、コードに力を加えられることで、1より大きい機械的倍率で第2の部材を第1の部材に対して移動させるように第1の部材および第2の部材に動作可能に連結され得る。第1の部材に対する第2の部材の移動はフレームを径方向に拡張させることができる。
【0022】
一部の実施形態では、補綴弁は、フレームの中で位置決めされ、かつフレームに固定される弁尖構造体をさらに備え得る。一部の実施形態では、機械的倍率は少なくとも2:1であり得る。一部の実施形態では、コードは、少なくとも部分的に拡張機構に沿って遠位へ延在し、第2の部材の一部分の周りで延在し、少なくとも部分的に拡張機構に沿って近位へ延在することができる。
【0023】
別の代表的な実施形態において、径方向に拡張可能な補綴弁が、環状フレームと、少なくとも1つの拡張部材と、付勢部材と、を備え得る。環状フレームは、流入端および流出端を備えることができ、径方向圧縮構成と径方向拡張構成との間で径方向に折り畳み可能かつ拡張可能とできる。拡張機構は、第1の場所においてフレームに取り付けられる第1の部材と、第1の場所から軸方向に離間される第2の場所においてフレームに取り付けられる第2の部材と、を備え得る。第1の方向における第2の部材に対する第1の部材の移動はフレームを径方向に拡張させることができ、第1の方向と反対の第2の方向における第2の部材に対する第1の部材の移動はフレームを径方向に圧縮させることができる。付勢部材は、第1の方向において第1の部材に付勢力を及ぼすように構成され得る。付勢力は、補綴弁が自然心臓弁輪の中に移植されるとき、第1の部材が付勢力の下で第2の部材に対して第1の方向に移動させられ、自然弁輪が時間と共に拡大するにつれてフレームをさらに拡張させるように選択され得る。
【0024】
一部の実施形態では、拡張機構はラチェット組立体を備え得る。一部の実施形態では、第1の部材はラチェット組立体のラックおよびツメの一方を備えることができ、第2の部材はラチェット組立体のラックおよびツメの他方を備えることができる。一部の実施形態では、付勢部材はバネを備え得る。
【0025】
別の代表的な実施形態において、径方向に拡張可能な補綴弁が、環状フレームと、少なくとも1つの拡張機構と、付勢部材と、を備え得る。環状フレームは、流入端および流出端を備えることができ、径方向圧縮構成と径方向拡張構成との間で径方向に折り畳み可能かつ拡張可能とできる。拡張機構は、第1の場所においてフレームに取り付けられる第1の部材と、第1の場所から軸方向に離間される第2の場所においてフレームに取り付けられる第2の部材と、第1の場所および第2の場所から軸方向に離間される第3の場所においてフレームに取り付けられる第3の部材と、を備え得る。第1の方向における第2の部材に対する第1の部材の移動はフレームを径方向に拡張させることができ、第1の方向と反対の第2の方向における第2の部材に対する第1の部材の移動はフレームを径方向に圧縮させることができる。付勢部材は、フレームを径方向圧縮構成から径方向拡張構成へと径方向に拡張させるために第1の部材が第2の部材に対して移動させられるときに付勢部材のポテンシャルエネルギーが増加するように、第1の部材および第3の部材に動作可能に連結され得る。付勢部材のポテンシャルエネルギーは、第3の部材を第2の部材に対して移動させる付勢力を第3の部材にかけることができ、補綴弁が移植される自然弁輪が時間と共に拡大するにつれてフレームをさらに拡張させることができる。
【0026】
一部の実施形態では、付勢部材はバネを備え得る。一部の実施形態では、第1の部材および第2の部材はラチェット組立体を集合的に備えることができる。第1の部材はラチェット組立体のラックおよびツメの一方を備えることができ、第2の部材はラチェット組立体のラックおよびツメの他方を備えることができる。一部の実施形態では、付勢部材は、第1の部材がフレームを径方向に拡張させるように第2の部材に対して移動させられるときに付勢部材が圧縮されるように、第1の部材と第3の部材との間に位置決めされ得る。
【0027】
別の代表的な実施形態において、医療組立体が、径方向に拡張可能な補綴弁と、部分圧縮構成において補綴弁の遠位端部分を覆うような大きさとされる末広部分を伴うノーズコーンを備える送達装置と、を備え得る。
【0028】
別の代表的な実施形態において、補綴心臓弁を移植する方法が、補綴弁および送達装置の遠位端部分を患者の血管系に挿入するステップであって、補綴心臓弁は径方向圧縮状態にある、ステップと、補綴弁を患者の心臓の自然弁に隣接して位置決めするステップと、近位へ向かう力を第1のコードの第1の端に加えて補綴弁を径方向圧縮状態から径方向拡張状態へと拡張させるステップと、を含み得る。第1のコードは、近位へ向かう力が、1より大きい機械的倍率で補綴弁に伝達されるように、補綴弁に動作可能に連結され得る。
【0029】
一部の実施形態では、方法は、近位へ向かう力を、補綴弁に動作可能に連結される第2のコードに加えて、補綴弁を径方向に圧縮させるステップをさらに含み得る。一部の実施形態では、方法は、近位へ向かう力を第1のコードの第2の端に加えて第1のコードを補綴弁から解放するステップをさらに含み得る。
【0030】
別の代表的な実施形態において、補綴心臓弁を移植する方法が、補綴弁および送達装置の遠位端部分を患者の血管系へと挿入するステップであって、補綴弁は、送達装置の遠位端部分に沿って径方向圧縮状態にあり、送達装置はノーズコーンを備える、ステップと、補綴弁を径方向圧縮状態から径方向拡張状態へと径方向に拡張させるステップと、補綴弁を少なくとも部分圧縮状態へ径方向に圧縮するステップと、少なくとも部分圧縮した補綴弁の遠位端部分をノーズコーンの末広部分で覆うステップと、少なくとも部分圧縮した補綴弁の遠位端部分がノーズコーンの末広部分によって覆われる間に補綴弁を再位置決めするステップと、を含み得る。
【0031】
一部の実施形態では、方法は、補綴弁を少なくとも部分圧縮状態から径方向拡張状態へと再拡張するステップをさらに含み得る。一部の実施形態では、方法は、補綴弁を再拡張した後、補綴弁を送達装置から解放するステップと、送達装置のシースをノーズコーンの末広部分にわたって位置決めして末広部分を遠位方向において折り畳ませるステップと、をさらに含み得る。一部の実施形態では、補綴弁を再位置決めするステップは、自然大動脈弁を交差するステップを含み得る。
【0032】
本発明の前述および他の目的、特徴、および利点は、添付の図面を参照して進行する以下の詳細な記載からより明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0033】
【
図1】補綴心臓弁の例示の実施形態の一部分の図である。
【
図2】
図1の補綴心臓弁、および補綴心臓弁に結合された送達装置の遠位端部分の斜視図である。
【
図3】例示の拡張機構、および
図1の補綴心臓弁のフレームの一部分の図である。
【
図4】例示の拡張機構、および
図1の補綴心臓弁のフレームの一部分の図である。
【
図5】例示の拡張機構、および
図1の補綴心臓弁のフレームの一部分の図である。
【
図7】拡張機構の径方向外面を示す、
図6の拡張機構の別の斜視図である。
【
図9】隠されている構成要素を点線で示している
図6の拡張機構の斜視図である。
【
図10】
図6の拡張機構の側方からの立面図である。
【
図11】
図7の線11-11に沿って切り取られた拡張機構の断面図である。
【
図12】
図6の拡張機構の側方からの分解斜視図である。
【
図13】
図2の補綴心臓弁を送達および移植するために使用され得る例示の送達装置の側方からの立面図である。
【
図14】径方向折り畳み構成で示されている
図2の補綴心臓弁の斜視図である。
【
図15】送達装置の遠位端部分に結合されている
図2の補綴心臓弁の径方向折り畳み構成における図である。
【
図16】送達装置の遠位端部分に結合されている
図2の補綴心臓弁の径方向折り畳み構成における図である。
【
図17】
図2の補綴心臓弁と使用され得る別の例示の拡張機構の概略図である。
【
図18】
図2の補綴心臓弁と使用され得る拡張機構の別の例示の実施形態の概略図である。
【
図19】
図2の補綴心臓弁と使用され得る拡張機構の別の例示の実施形態の概略図である。
【
図20】
図2の補綴心臓弁と使用され得る拡張機構の別の例示の実施形態の概略図である。
【
図21】
図2の補綴心臓弁など、補綴心臓弁を送達するために送達装置で使用され得る例示のノーズコーンの断面図である。
【
図22A】
図21のノーズコーンを組み込んでいる例示の送達装置の遠位端部分の側面図である。
【
図22B】
図21のノーズコーンを組み込んでいる例示の送達装置の遠位端部分の側面図である。
【
図22C】
図21のノーズコーンを組み込んでいる例示の送達装置の遠位端部分の側面図である。
【
図22D】
図21のノーズコーンを組み込んでいる例示の送達装置の遠位端部分の側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1~
図2は、一実施形態による補綴心臓弁100の様々な図を示している。図示されている補綴弁は、自然の大動脈弁輪に移植されるように適合されているが、他の実施形態では、心臓の他の自然弁輪(例えば、肺動脈弁、僧帽弁、および三尖弁)に移植されるように適合させることができる。補綴弁は、身体における他の管状の器官または通路に移植されるように適合させることもできる。補綴弁100は、ステントまたはフレーム102と、弁構造(図示せず)と、1つまたは複数の拡張機構108と、を備え得る。図示されている例では、補綴弁100は、フレーム102の周囲の周りに互いから等距離で位置決めされた3つのこのような拡張機構108を備える。他の実施形態では、3つより多くかまたは3つより少ない拡張部材があってもよい。弁構造は、弁尖構造体を形成することができる3つの弁尖を備え、三尖弁配置で折り畳むように配置され得る。
【0035】
フレーム102は、フレーム流入端105を定める流入端部分104と、フレーム流出端107を定める流出端部分106と、を備え得る。補綴弁100は、流入端部分104および流出端部分106を通って延在する長手方向軸を定め得る。拡張機構108は、後でより完全に検討されているように、フレーム102を径方向に拡張および圧縮するように構成され得る。
【0036】
フレーム102は、ステンレス鋼、または、例えばニチノールといったニッケルチタン合金(「NiTi」)など、様々な適切な材料のいずれかから作ることができる。フレーム102は、格子式のパターンで配置され、フレーム102の流入端105に複数の頂部112を形成する相互連結した複数の支柱110を備え得る。フレーム102は、フレーム102の流出端107において同様の頂部114を備え得る。支柱110は、斜めに位置決めされるとして、または、補綴弁100の長手方向軸に対してある角度でずれ、その長手方向軸から径方向にずれるとして示されている。他の実施では、支柱110は、
図1~
図2に描写されているものと異なる量でずれてもよい、または、支柱110の一部または全部が補綴弁100の長手方向軸と平行に位置決めされてもよい。
【0037】
支柱110同士は互いと旋回可能に結合され得る。図示されている実施形態では、フレーム102の流入端105における頂部112と流出端107における頂部114とを形成する支柱110の端部分はそれぞれの開口部または開口116を有し得る。支柱110には、支柱の反対の端同士の間で長さに沿って離間された開口部または開口118が形成されてもよい。それぞれのヒンジが、支柱110同士が留め具120を介してフレームの端同士の間で互いと重なる頂部112および接合部/場所において形成でき、留め具120は、開口116、118を通じて延在するリベットまたはピンを備え得る。ヒンジは、補綴弁100の組み立て、準備、または移植の間など、フレーム102が径方向に拡張または圧縮されるにつれて、支柱110同士を互いに対して旋回させることができる。例えば、フレーム102(延いては、補綴弁100)は、径方向に圧縮または収縮した構成(例えば、
図13参照)へと操作させることができ、移植のための患者へと挿入させることができる。身体の内部に入ると、補綴弁100は、拡張状態(例えば、
図2参照)へと操作され、後でさらに記載されているように、送達装置から解放され得る。
【0038】
フレーム102は、任意の適切な技術を用いて形成され得る。適切な技術は、フレームの個々の構成要素(例えば、支柱110および留め具120)を別々に形成することと、次に、フレーム102を形成するために個々の構成要素を機械的に組み立ておよび連結することと、を含み得る。支柱110および留め具120は、例えば、金属の薄板または管からそれらの構成要素をレーザー切断することによって、または、電鋳(電気メッキまたは電着)もしくは物理気相堆積によって形成できる。一部の実施形態では、電鋳または物理気相堆積は、フレーム102の下位構成要素、または、支柱110同士の間に旋回可能連結を伴うフレーム102全体を形成するために使用できる。一実施形態では、例えば、電鋳または物理気相堆積は、一体の留め具120を有する支柱110を形成するために使用できる。個々の支柱110は、各々の支柱の一体の留め具120を、隣接する支柱の対応する開口を通じて挿入することで一緒に組み立ててフレームにすることができる。一部の実施形態では、電鋳または物理気相堆積は、フレーム102全体をその最終的な円筒形で形成するために使用できる。他の実施形態では、電鋳または物理気相堆積はフレーム全体を平坦な構成で形成するために使用でき、その後、平坦なフレームの端同士が、フレームの最終的な円筒形を形成するために互いと連結される。
【0039】
他の実施形態では、支柱110は、それぞれのヒンジ(例えば、留め具120)で互いと結合されず、フレーム102の径方向の拡張および圧縮を許容するために互いに対して旋回可能または屈曲可能である。例えば、フレーム102は、(例えば、レーザー切断、電鋳、または物理気相堆積を介して)一体の材料片(例えば、金属管)から形成できる。フレーム102の構築に関するさらなる詳細は、特許文献1、および2018年6月1日に出願された特許文献2に開示されており、それらは全体で本明細書において参照により組み込まれている。
【0040】
弁構造が補綴弁100のフレーム102に結合され得る手法を含め、経カテーテルによる補綴心臓弁に関するさらなる詳細は、例えば、特許文献3、特許文献4、特許文献5、特許文献6、特許文献7、および、2018年5月14日に出願された特許文献8において見出すことができ、それらは全体で本明細書において参照により組み込まれている。
【0041】
図2は、送達装置の位置決め部材608の遠位端部分に解放可能に連結されている補綴弁100を示している。
図13は、本明細書で開示されている補綴弁のいずれかを患者の身体の中に送達および移植するために使用され得る送達組立体600の一例を示している。送達組立体600は、2つの主構成要素、すなわち、送達装置602と、補綴心臓弁100などの補綴心臓弁と、を備え得る。補綴弁100は、患者の身体への挿入のために、送達装置602の遠位端部分の周りに径方向圧縮構成で搭載できる。一部の実施形態では、補綴弁100は、流出端が流入端に対して近位に位置決めされるように配向され得る。この配向において、補綴弁は、自然大動脈弁における移植のために、患者の血管系を通じて(例えば、大腿動脈および大動脈を通じて)逆行性アプローチで心臓へと前進させることができる。他の実施形態では、補綴弁100は、使用される具体的な送達アプローチと、補綴弁のための移植場所とに依存して、流入端が流出端に対して近位に位置決めされるように配向され得る。
【0042】
図示されている実施形態における送達装置602は、取っ手604と、第1のシャフト606と、第1のシャフト606にわたって同軸で延在する第2のシャフト608の形態での位置決め部材と、第2のシャフト608にわたって同軸で延在する第3のシャフト610と、ノーズコーン612と、を備える。第1のシャフト606は、図示されている実施形態では最も内側のシャフトであり、送達装置602の内側シャフトと称することができる。同様に、第3のシャフト610は、図示されている実施形態では最も外側のシャフトであり、送達装置602の外側シャフトまたは外側シースと称することができる。シャフト606、608、610は互いに対して軸方向および/または回転式に移動可能とできる。
【0043】
ノーズコーン612は内側シャフト606の遠位端に連結され得る。案内ワイヤ(図示せず)が内側シャフト606の中心内腔およびノーズコーン612の内側内腔を通じて延在することができ、それによって送達装置602は、患者の血管系の内側で案内ワイヤにわたって前進させることができる。
【0044】
シャフト606、608、610の近位端は取っ手604に結合され得る。補綴弁の送達の間、取っ手604は、患者の血管系を通じて送達装置を前進または後退させるために、外科医によって操作され得る。一部の実施形態では、取っ手604は、補綴弁を拡張および/または展開するために、送達装置602の異なる構成要素を制御するための複数のノブおよび他の作動機構を備え得る。例えば、取っ手604は、選択されたシャフト606、608、または610の互いに対する相対的な軸方向および/または回転方向の移動を作り出すように各々構成された1つまたは複数のノブまたは他の作動機構を備え得る。
【0045】
図13においてさらに示されているように、外側シース610の遠位端部分610dは、補綴弁100にわたって延在し、送達装置602の送達構成においてノーズコーン612に接触することができる。したがって、外側シース610の遠位端部分610dは、患者の血管系を通じた送達のための径方向圧縮構成において、補綴弁100を包含または収容する送達カプセルとして供することができる。外側シース610と内側シャフト606とは、内側シャフト606に対する外側シース610の近位への移動(または、外側シース610に対する内側シャフト606の遠位への移動)が補綴弁100を外側シース610から露出させることができるように、互いに対して軸方向で移動可能であるように構成され得る。代替の実施形態では、補綴弁100は、送達の間、外側シース610の中に収容される必要がない。そのため、一部の実施形態では、送達装置602は外側シース610を含まない。
【0046】
図9および
図12に最も良く示されているように、図示された実施形態における各々の拡張機構108は、筐体122と、第1の拡張部材124と、第2の拡張部材126と、を備え得る。第1の拡張部材124は第1の場所においてフレーム102に固定され得、第2の拡張部材126は、第1の場所から軸方向に離間された第2の場所においてフレームに固定され得る。さらに、第1の拡張部材124と第2の拡張部材126とは、筐体122の中で互いに対して軸方向において移動可能とできる。そのため、第1の拡張部材124および第2の拡張部材126は、軸方向に離間された場所においてフレーム102に固定され、第1の拡張部材と第2の拡張部材とを伸縮の様態で互いに対して軸方向で移動させることで、拡張部材がどの方向に移動するかに依存して、フレームを径方向に拡張または圧縮させることができる。
【0047】
例えば、図示されている実施形態では、第1の拡張部材124は流出端107の近くでフレーム102に固定されており、第2の拡張部材126は流入端105の近くでフレームに固定されている。そのため、第1の拡張部材を固定位置で保持しながら第2の拡張部材をフレームの流出端に向けて移動させることで、フレームを軸方向に短縮させ、径方向に拡張させることができる。
【0048】
図示されている例では、拡張機構108はラチェット機構またはラチェット組立体を備え、第2の拡張部材126は、複数の歯128を有する直線的なラックを備え、第1の拡張部材124は、直線的なラックの歯と係合するように構成されるツメを備える。ツメ124とラック126とは、ツメがラックと係合させられるとき、ツメとラックとの間の移動が、一方の軸方向では可能であるが、反対の軸方向では禁止されるように構成される。図示されている例では、
図4および
図11に最も良く示されているように、ツメ124がラック126と係合させられるとき、ラックは一方の軸方向において(
図4の配向において上に)移動できるが、反対の軸方向において(
図4の配向において下に)移動できない。これによって、ツメ124がラック126と係合させられる間、フレーム102が径方向に拡張させることができるが、径方向に圧縮させることができないことを確保している。したがって、補綴弁100が患者に移植された後、フレーム102は、本明細書において記載されているように、患者の生体構造に基づいて所望の直径まで拡張させることができる。
【0049】
補綴弁についての所望の直径に到達されると、弁100を移植するために使用される送達装置は、補綴弁から連結解除され、患者から除去され、患者に移植された補綴弁を残すことができる。患者の自然の生体構造(例えば、自然の大動脈弁輪)は、フレーム102を圧縮しようとする補綴弁に抗する径方向の力を及ぼすことができる。しかしながら、ツメ124とラック126との間の係合は、このような力がフレーム102を圧縮することを防止し、それによって、フレームが所望の径方向拡張状態において係止されたままとなることを確保している。ツメ124は、後でさらに記載されているように、補綴弁の再位置決めまたは再捕獲および除去が望まれる場合、フレームの径方向の圧縮を許容するために、使用者によってラック126から選択的に係合解除されるように構成されてもよい。
【0050】
図4~
図5および
図11を参照すると、直線的なラック126は、筐体122を通って延在する細長い棒材を備え得る。
図3において最も良く見られるように、筐体122は、ラック126が筐体を通り、筐体の端を越えて延在することができるように、一端(例えば、フレームの流出端107に最も近い端)において開放し得る。別の例では、筐体122はこの端において閉じられてもよい。図示されている例において、フレーム102の流出端107の近くのラック126の一部分は複数の歯128を備える。他の例では、ラック126の実質的に全長が歯128を備え得る。
【0051】
ラック126は、流入端105の近くでフレーム102に固定され得る。図示されている例では、ラック126は、ラックをフレーム102に固定するために使用され得る柱130を一端に備える。柱130は、フレーム102の頂部112において、2つの支柱110における開口部116を通じて延在するように構成され得る。そのため、ラック126が筐体122の中で軸方向に移動させられるとき、柱130はラックと共に移動し、それによって、柱が取り付けられるフレームの一部分を同じく軸方向に移動させ、これによってフレーム102を軸方向に短縮させ、径方向に拡張させる。柱130が連結される支柱110は、フレームが拡張または圧縮させられるにつれて、柱および互いに対して自由に旋回する。この手法では、柱130は、支柱同士の間に旋回可能な連結を形成する留め具として供する。
【0052】
他の実施形態では、柱130は、フレームの流入端105からずれた場所において2つの支柱110の交差部に連結され得る。代替の実施形態では、ラック126は、柱130を備える必要がなく、代わりに、留め具120に、または、フレームにおける他の都合の良い場所に搭載されてもよい。
【0053】
図4~
図9および
図11を参照すると、ツメ124は、係合部分134と、中間部分136と、解放部分138と、を備え得る。係合部分134は、ラック126の歯128と係合することができる歯135において途切れる指状の部材を備え得る。歯135は、歯128の形と相補的である形を有することができ、そのため、歯135は、ラックの歯128のうちの1つと係合しているとき、ツメ124に対する一方の方向における(図示されている実施形態では上向きの)ラック126のスライド移動を許容し、反対方向における(図示されている実施形態では下向きの)ラック126のスライド移動に抗する。
【0054】
ツメの中間部分136は、フレーム102にさらに固定され得る結合部材140に結合され得る。解放部分138は、
図4に示されているように、係合部分134がラック126の歯128と係合させられるとき、ラック126から径方向外向きに離れるように延在することができる。結合部材140は、ツメがラックとの係合へと旋回できるように、および、その係合から外れるように旋回できるように、フレーム102に対するツメの軸方向の位置を固定しつつ、ツメ124をフレーム102およびラック126に対してなおも旋回させる、ツメ124との旋回可能な連結を形成するように構成され得る。図示されている構成では、
図6~
図7に最も良く示されているように、結合部材140は、内側本体部分141と、内側本体部分141から径方向外向きに延在する柱142と、を備え得る。内側本体部分141は、ツメ124のそれぞれの旋回要素を受け入れるように構成される1つまたは複数の耳部194(例えば、図示されている実施形態では離間した第1および第2の耳部194)で形成され得る。
【0055】
柱142は、フレームの流出端107における頂部114を形成する2つの重なる支柱110の開口116を通じて延在し得る。柱142が連結される支柱110は、フレームが拡張または圧縮させられるにつれて、柱および互いに対して自由に旋回する。この手法では、柱142は、支柱同士の間に旋回可能な連結を形成する留め具として供する。
【0056】
他の実施形態では、柱142は、フレームの流出端107からずれた場所において2つの支柱110の交差部に連結され得る。代替の実施形態では、結合部材140は、柱142を備える必要がなく、代わりに、留め具120に、または、フレームにおける他の都合の良い場所に搭載されてもよい。
【0057】
ツメ124の中間部分136は、結合部材140の耳部194における対応する切込みまたは開口部に受け入れられる1つまたは複数の旋回要素196(図示されている実施形態では2つ)を備え得る。耳部194との旋回要素196の連結は、ツメ124を、旋回要素を通じて延在する軸198(
図7)の周りで結合部材140およびラック126に対して旋回させることができる。さらに、耳部194は、そこで旋回要素196を保持し、それによってフレーム102に対するツメ124の軸方向の位置を固定するように成形され得る。
【0058】
図5に最も良く示されているように、結合部材の内側本体部分141は、ツメの中間部分136の隣接する外面198に係合する丸いかまたは湾曲した内面144を備え得る。外面198は、結合部材140に対するツメ124の揺動または旋回の運動を容易にするために、結合部材140の内面144の形に対応するように丸められ得るかまたは湾曲させられ得る。内向きの径方向の力がツメ124の解放部分138に加えられるとき、(
図5に最も良く示されているように)歯135がラック126の歯128から係合解除させられるように、解放部分138が径方向内向きに移動し、係合部分134が径方向外向きに移動する状態で、ツメは軸198に対して旋回する。ツメ124がラック126から係合解除すると、ラックは筐体122を通じていずれの軸方向にも自由に移動する。これは、後でさらに詳細に記載されているように、フレームの径方向の圧縮が移植処置の間に望まれる場合、有用であり得る。
【0059】
図4~
図9および
図11を再び参照すると、筐体122は、ツメ124を、ラック126と係合する位置(係止位置とも称され得る)で弾性的に保持するように構成される保持部材132を備え得る。保持部材132は、ツメ124の係合部分134の径方向外面にわたって延在してその外面に接触する筐体122の柔軟で弾性的な部分であり得る。図示されている実施形態では、保持部材132は、筐体と一体的に形成され得る、または、別に形成されて筐体に後で連結され得る板バネの形態である。
【0060】
保持部材132は、ツメ124の係合部分134に対して径方向内向きの付勢力を加えることができる。これは、通常の動作の下では、後でさらに記載されているように、保持部材132の付勢に抗してツメ124をラック126との係合から解除するための係止解除ステップを使用者が実施しない場合、ツメ124はラック126の歯128と係合されたままであることを確保している。したがって、ツメ124がラックの歯128と係合できる直径まで補綴弁100が拡張されると、補綴弁100は通常の係止された構成で保持され、補綴弁はさらに拡張され得るが折り畳むことはできない。しかしながら、保持部材132は、ラックから離れるツメの係合部分134の旋回を許容するために、使用者によって解放部分138に加えられる径方向内向きの力が保持部材132の付勢力に打ち勝てるように十分に柔軟である。
【0061】
図1および
図2に概して示されているように、各々の拡張機構108には、フレーム102の径方向の拡張を作り出すための拡張コード158と、解放コード174と、が設けられ得る。各々の拡張コード158は、対応する拡張機構108のラック126と、拡張コードに加えられる引っ張りを選択的に増加および低減し、それによってフレーム102の拡張を制御することができるアクチュエータを有し得る送達装置(例えば、送達装置602)とに動作可能に連結されている。拡張コード158における引っ張りを増加させることは、ツメ124に対するラック126の軸方向の移動を作り出してフレーム102を径方向に拡張させる効果がある。
【0062】
各々の解放コード174は、対応する拡張機構108のツメ124と、解放コードに加えられる引っ張りを選択的に増加および低減し、それによってラック126に対するツメ124の位置を制御することができるアクチュエータを有し得る送達装置(例えば、送達装置602)とに動作可能に連結されている。解放コード174における引っ張りを増加することは、ツメ124を第1の方向に旋回させる効果があり、それによって、ツメ124の解放部分138は径方向内向きに引っ張られ、係合部分134は保持部材132の付勢に抗してラックから離れるように移動する(
図5)。解放コード174における引っ張りを低減または解放することは、保持部材132の付勢の下で、第1の方向と反対の第2の方向にツメを旋回させ、これはツメ124の係合部分134をラック126と係合させる。
【0063】
さらに、特定の実施形態では、ツメ124を介してフレーム102に作用する複数のコード174の径方向内向きの力は、フレーム102を折り畳む効果がある。さらに説明すると、コード174のうちの少なくとも2つが近位方向に引っ張られるとき、コードは、ツメ124を介して、フレームにおける周方向に離間した2つの場所に径方向内向きの力を加える。径方向の力は支柱を内向きに引っ張り、フレームを折り畳むことを開始する。支柱110の剛性および支柱同士の間の旋回可能な連結のため、径方向の力はフレーム102全体を折り畳ませる。したがって、図示されている実施形態におけるコード174は、2つの機能、つまり、ツメをそれぞれのラックから係合解除することによりフレーム102を「係止解除」することと、ツメがそれぞれのラックから係合解除されるとフレームを折り畳むことと、を提供する。
【0064】
具体的な実施形態において、拡張コード158および解放コード174は、本明細書において記載されているように、拡張機構の開口部を通じて経路決定され、ラック126およびツメ124の移動を作り出すために引っ張って配置され得る任意の柔軟な材料片を備え得る。本開示では、コード158、174は、例えば、縫合糸(例えば、単繊維縫合糸または多繊維縫合糸)、ワイヤ(例えば、ステンレス鋼、ニチノール、または他の適切な金属から形成される金属ワイヤ)、ケーブル(例えば、金属またはポリマの撚糸から形成される編組ケーブル)、または、本明細書に記載されているように、拡張機構を通じて装着させることができ、引っ張って配置され得る任意の他の同様の材料であり得る。
【0065】
図6~
図7において最も良く見られるように、筐体122の上方部分は、第1のコード受入部材146と第2のコード受入部材148とをさらに備え得る。第1のコード受入部材146および第2のコード受入部材148は、拡張機構108のいずれかの側面においてフレーム102の流出端部分106の近くに位置決めされ得る。第1のコード受入部材146は、
図3において最も良く見られるように、径方向に配向された第1の径方向開口部150と、
図6~
図7において最も良く見られるように、軸方向に配向された第1の軸方向開口部152と、を備えることができ、第1の軸方向開口部152は、第1のコード受入部材を通る第1の通路を形成するために、開口部150と連通している。第2のコード受入部材148は、
図2において最も良く見られるように、径方向に配向された第2の径方向開口部154と、
図7において最も良く見られるように、軸方向に配向された第2の軸方向開口部156と、を備えることができ、第2の軸方向開口部156は、第2のコード受入部材を通る第2の通路を形成するために、開口部154と連通している。第1のコード受入部材146および第2のコード受入部材148は開口部150、152、154、156を通じて拡張コード158を受け入れるように構成でき、開口部150、152、154、156は、後でさらに詳細に説明されているように、補綴弁100を拡張させるために使用できる。
【0066】
図6~
図9において最も良く見られるように、ラック126の下端部分はコード経路決定部材160を備え得る。柱130は、コード経路決定部材160から径方向外向きに延在し得る。部材160は、軸方向に配向された第1の開口部または通路162と、周方向に配向された第2の開口部または通路166と、軸方向に配向された第3の開口部または通路170と、を備え得る。第1の開口部162、第2の開口部166、および第3の開口部170は、後でさらに詳細に検討されているように、拡張コード158を受け入れるように構成される。
【0067】
図1~
図2に最も良く示されているように、各々の拡張機構108からの拡張コード158および解放コード174は、送達装置の位置決め部材608を通じて近位に延在し得る。移植処置の間、位置決め部材608は、フレーム102の中心長手方向軸に沿って位置決めおよび配向され得る。
図15および
図16は、フレームが径方向折り畳み状態にあるときの位置決め部材608およびフレーム102を示している。拡張コード158および/または解放コード174は、補綴弁100の送達および展開の間、補綴弁を位置決め部材608に解放可能に連結するために使用できる。補綴弁100が患者の身体の中の所望の移植部位において拡張させられた後、後でさらに記載されているように、コード158、174は補綴弁100から取り外しでき、送達装置は患者の身体から除去できる。
【0068】
再び
図2を参照すると、位置決め部材608は、拡張コード158および解放コード174を各々の拡張機構108から受け入れるために複数の開口部を備え得る。位置決め部材608は、対応する拡張機構108を向く位置決め部材の各々の面または表面の部分に開口部のセットが形成され得る。開口部の各々のセットは、拡張コード158を受け入れるための第1の開口部176および第2の開口部178と、解放コード174を対応する拡張機構108から受け入れるための第3の開口部180および第4の開口部182を備え得る。第1の開口部176と第2の開口部178とは互いから離間させることができ、第3の開口部180と第4の開口部182は、第1の開口部および第2の開口部の上方(近位)の場所において、同様に互いから離間させることができる。第3の開口部180および第4の開口部182が第1の開口部176および第2の開口部178の上方に位置決めされ、第1の開口部176および第2の開口部178から若干ずれている状態で、拡張コード158と解放コード174との両方は、互いと干渉することなく位置決め部材608を通じて装着させられ得る。
【0069】
図2に最も良く示されているように、図示されている例では、補綴弁100は3つの拡張機構108を備え、位置決め部材608の遠位端部分は、拡張機構108の各々と平行に配列された3つの面または表面の部分を備える。位置決め部材の各々の面は、各々の面が拡張コードおよび解放コードを拡張機構108のうちの1つから受け入れることができるように、開口部176、178、180、182と同様の4つの開口部のセットを備え得る。開口部のセットにおける各々の開口部176、178、180、182は、位置決め部材608を通って延在するそれぞれの内腔と連通することができる。本開示の残りの部分は、1つの拡張コード158、1つの解放コード174、および位置決め部材608の一方の側面にしばしば言及している。しかしながら、本開示が、追加の拡張機構および位置決め部材608の追加の側面にも当てはまることができることは、理解されるべきである。
【0070】
図2、
図6、および
図7に最も良く示されているように、各々の拡張コード158は、取っ手604に近位端を有し、取っ手604から位置決め部材608を通って遠位へ延在し、対応する拡張部材を通って経路決定される長いループを形成することができる。より明確には、取っ手604において始まって、各々の拡張コード158は、位置決め部材608を通って(例えば、位置決め部材の内腔を通って)長手方向に延在し、第1の開口部176を通って外向きに延在し、筐体122の第1のコード受入部材146における開口部150、152を通って延在し、拡張機構108の一方の側面に沿って長手方向に延在し、ラック126のコード経路決定部材160における開口部162、166、170を通って延在し、拡張機構の他方の側面に沿って長手方向に延在し、第2のコード受入部材148における開口部154、156を通って延在し、位置決め部材608における第2の開口部178を通って内向きに延在し、位置決め部材608を通って(例えば、位置決め部材の内腔を通って)長手方向に戻るように延在し、送達装置の取っ手604へと延在する。説明の容易性のために、拡張機構から取っ手604へと戻るように延在するループの部分は符号158aが付され、取っ手604から拡張機構へと延在するループの部分は符号158bが付されている。
【0071】
ループ部分158a、158bの近位端の一方または両方は、コード158における引っ張りを調節するために使用できる取っ手604におけるそれぞれのアクチュエータ(例えば、ノブ)に動作可能に連結され得る。一実施形態では、例えば、各々の拡張コード158のループ部分158aの近位端は、それぞれの拡張コードの引っ張りを調節し、使用者に個々の拡張コード158の引っ張りを選択的に調節させるように動作可能であるそれぞれのアクチュエータに、動作可能に連結され得る。他の実施形態では、複数のループ部分158aの近位端は、各々の拡張コードの引っ張りを同時に調節するように動作可能である同じアクチュエータに動作可能に連結され得る。後でさらに説明されているように、補綴弁100の拡張は、ループ部分158bの近位端を送達装置に対して固定されたままとする一方で、ループ部分158aの近位端を引っ張ることで、または、近位へ向かう力をループ部分158aの近位端に加えることで達成できる。このような場合、ループ部分158bの近位端は、送達装置における任意の都合の良い場所に固定できる。例えば、ループ部分158bの近位端は、送達装置の取っ手604の内側に固定できる。
【0072】
図1~
図2に最も良く示されているように、各々の拡張コード158は、例えば、拡張機構108と位置決め部材608との間に位置決めされる結び目184の形態で、停止部材を備え得る。図示されている例では、結び目184は、第1のコード受入部材146における第1の径方向開口部150と位置決め部材608における第1の開口部176との間に位置決めされている。結び目184は、開口部150を通過できないような大きさとされ得る。図示されている例では、結び目184は、拡張コード158の周りで結ばれるかまたは結び目の作られる別体のコード(例えば、縫合材料)から形成され得る。
【0073】
他の例では、結び目184は、拡張コード158において結び目を直接的に形成することで形成されてもよい。なおも他の例では、結び目184の代わりに、停止部材は、拡張コード158に固定され、開口部150を通過できないような大きさとされる材料片を備え得る。例えば、停止部材は、小さい球形の玉など、玉または玉状の部材を備えてもよく、拡張コードは、玉を完全に貫いて延在する孔を通過することができ、玉がコードの長さに沿って移動できないように、長手方向で拡張コードに固定される。結び目184(または、他の停止部材)は、後でさらに詳細に記載されているように、フレーム拡張の間、拡張機構108に対して対抗する力を加えるように機能する。
【0074】
フレーム102を拡張させるために、コード部分158aの近位端は、送達装置602の近位端において、直接的に、または、取っ手604におけるアクチュエータを介してのいずれかで、医師によって引っ張られる。拡張コード158における引っ張りが増加させられるにつれて、結び目184は、コード部分158bが筐体122における開口部150を通じて引っ張られることを防止する。したがって、近位への力がコード部分158aに加えられるとき、コードはコード経路決定部材160を通じて引っ張られ、その間、コード経路決定部材160に対して近位へ向かう力を加え、それによって、ラック126を、フレーム102の流出端に向けて、筐体122およびツメ124に対して近位方向に引っ張る。ラック126はある場所でフレーム102に固定され、ツメ124は別の場所でフレーム102に(結合部材140を介して)固定されているため、ラック126を移動させることは、フレームの径方向の拡張を作り出す効果がある。補綴弁100が複数の拡張機構108(例えば、3つの拡張機構)を備える例では、補綴弁は、各々の拡張機構と関連付けられた拡張コードにおける同時の引っ張りによって径方向に拡張させられ得る。ラック126におけるコード経路決定部材を通るかまたは周る拡張コード158の経路決定は、ツメに対してラックを移動させることについて2:1の機械的倍率を提供し(移動滑車システムと同様である)、それによって、補綴弁を径方向拡張させるために必要とされる力の大きさを小さくしている。
【0075】
ラック126がツメ124に対して移動するにつれて、歯135はラックの歯128と連続的に係合し、各々の歯128は補綴弁の径方向の拡張の異なる度合いを表している。歯128と歯135とは、補綴弁を拡張させるために、ラックが筐体へと(図示されている実施形態では近位方向に)移動するとき、歯128に歯135を通過させるように成形されているが、歯128のうちの1つとの歯135の係合は、反対方向におけるラックの移動に抗する。保持部材132は、ツメ124の歯135がラック126の歯128と係合されたままとなることを確保する。
【0076】
補綴弁100の所望の拡張の度合いが到達されると、(ループ部分158aがアクチュエータに連結されている場合)使用者は、ループ部分158aの近位端を取っ手におけるそれぞれのアクチュエータから連結解除し、ループ部分158bを近位方向に引っ張ることで、拡張コード158を拡張機構108から取り外すことができる。これは、ループ部分158aの近位端をそれぞれの拡張機構108を通じて送達装置の位置決め部材608の開口部176へと引っ張らせ、補綴弁を拡張コード158から効果的に自由にする。開口部176は、使用者がループ部分158bの近位端を引っ張るとき、結び目184が開口部176を通って位置決め部材608へと通過できるような大きさとできる。
【0077】
補綴弁100が移植処置の間に径方向に圧縮される必要がある場合(例えば、補綴弁が過度に拡張させられた場合、または、補綴弁が再位置決めまたは再捕獲され、患者から除去される必要がある場合)、本明細書に記載されているように、解放コード174が使用され得る。拡張コード158と同様に、各々の解放コード174は、取っ手から遠位へ延在し、送達装置を通って延在し、拡張機構108の一部分の周りに延在する細長いループであり得る。
【0078】
各々のツメ124の解放部分138は、解放コード174が貫いて延在するコード経路決定部材186を備え得る。経路決定部材は、径方向に配向された第1の開口部188と、周方向に配向された第2の開口部190と、径方向に配向された第3の開口部192と、を備え得る。
【0079】
図2および
図3を参照すると、取っ手から始まって、各々の解放コード174は、位置決め部材608を通って(例えば、位置決め部材の内腔を通って)長手方向に延在し、(
図2に最も良く示されているように)位置決め部材608の第3の開口部180を通って外向きに延在し、対応する拡張機構108のコード経路決定部材186の開口部188、190、192を通って延在し(ツメ124の周りで効果的にループになり)、位置決め部材の第4の開口部182を通って内向きに延在し、位置決め部材608を通って(例えば、位置決め部材の内腔を通って)長手方向に戻るように延在し、送達装置の取っ手604へと延在している。
【0080】
各々の解放コード174によって形成されたループの一端または両端は、使用者によって操作できるように送達装置の近位端において露出され得る。代替で、各々の解放コードの両端は、各々の解放コードに加えられる引っ張りを増加および低減するように動作可能であるそれぞれのアクチュエータに動作可能に連結されてもよい。代替の実施形態では、各々の解放コード174の端は、解放コードのすべてに加えられる引っ張りを同時に増加および低減するように動作可能である共通のアクチュエータに動作可能に連結されてもよい。
【0081】
いずれの場合でも、(端を手で引っ張るかまたはアクチュエータを作動させるかのいずれかによって)近位へ向かう力を解放コード174の端に加えることは、対応するツメ124の解放部分138を径方向内向きに引っ張る効果がある。これによって、歯135がラック126の歯128から離れるように旋回し、歯128から係合解除するように、ツメ124を旋回軸198に対して旋回させる。これは、拡張機構108を係止解除させ、フレーム102を径方向に圧縮させることができる。
【0082】
解放コード174がさらに引っ張られる場合、ツメ124の解放部分138はフレーム102の流出端部分106に対して内向きの径方向の力を及ぼし、これはフレーム(延いては、補綴弁)を径方向に圧縮する。フレーム102が所望の量で圧縮されると、解放コード174に加えられる引っ張り力が解放でき、これによって、保持部材132の付勢力がツメ124の歯135を押し戻してそれぞれのラック126と係合させ、拡張機構108をそれらの係止状態へと効果的に配置してフレームのさらなる径方向の圧縮を防止する。望まれる場合、補綴弁100は、患者の身体の中で再位置決めできる、または、完全に圧縮され、患者の身体から完全に除去できる。補綴弁が再位置決めされる場合、使用者は、拡張コード158を先に記載されているように作動させることで補綴弁を再拡張することができる。
【0083】
補綴弁が所望の移植位置において選択された直径まで拡張されると、使用者は、各々の解放コード174の一端において近位方向に引っ張ることで、解放コード174を補綴弁から取り外すことができる。これは、各々の解放縫合糸174の反対の端を、対応するツメ124のコード経路決定部材186を通じて、送達装置の位置決め部材608へと戻すように引っ張らせることになる。各々の解放コード174および各々の拡張コード158を先に記載されているように除去することは、補綴弁を送達装置から効果的に連結解除し、その後、送達装置は患者の身体から除去できる。
【0084】
代替の実施形態では、拡張機構108が、ラック126を通じて輪にされていない拡張コード158で作動させられ得る。例えば、拡張コードが、任意の都合の良い場所においてラック126に固定された遠位端を有することができ、拡張コードの近位端は、送達装置の近位端において露出され得る、または、取っ手604に連結され得る。この手法では、近位へ向かう力を拡張コードの近位端に加えることで、機械的利益はないが、フレーム102を拡張させるために、ラック126をツメ124に対して引っ張る。
【0085】
本明細書に開示されている拡張機構のいずれも、図面に示されているものとは逆の配向でフレームに連結できることは、留意されるべきである。例えば、ラック126をフレーム102の流出端の近くに連結し、ツメ124をフレーム102の流入端の近くに連結する代わりに、拡張機構が180度回転させられ、ラック126がフレーム102の流入端の近くで連結され、ツメ124がフレーム102の流出端の近くで連結されてもよい。さらに、各々の拡張機構のための拡張コードは、ツメをラックに対して移動させてフレーム102を径方向に拡張させるために、ラックの代わりに、拡張機構のツメ124に動作可能に連結されてもよい。同様に、各々の拡張機構のための解放コード174は、ラックの歯をツメから係合解除させるために、ツメの代わりに、拡張機構のラック126に動作可能に連結されてもよい。
【0086】
あまり望ましくないが、代替の実施形態では、拡張機構108は解放コード174を有しておらず、ツメ124はラックから離すように移動させるように構成されない。
【0087】
さらに、代替の実施形態では、解放コード174は、拡張機構108を有していない補綴弁において実施されてもよい。例えば、解放コード174は、フレーム102の選択された支柱110を通じてまたは選択された支柱110の周りに装着させることができ、コード174によるフレームへの径方向の力の適用によって、フレームを径方向に圧縮するために使用され得る。
【0088】
なおも代替の実施形態では、拡張コード158の代わりに、拡張機構108は送達装置の他の構成要素で作動させられ得る。例えば、拡張コード158の代わりに、ラック126は、近位へ向かう力をラック126に加えるように動作可能である棒材またはシャフトの形態で、送達装置のアクチュエータ部材に解放可能に連結され得る、および/または、ツメ124は、フレームを径方向に拡張させるために、遠位へ向かう力をツメ124に加えるように動作可能である棒材またはシャフトの形態で、別のアクチュエータ部材に解放可能に連結され得る。拡張機構108が逆の配向でフレームに搭載される場合、アクチュエータ部材は、遠位へ向かう力をラックに加えることができる、および/または、別のアクチュエータ部材は、フレームを径方向に拡張させるために、近位へ向かう力をツメに加えることができる。したがって、送達装置の様々なアクチュエータのいずれかを使用してラックおよびツメの一方または両方を特定の方向に移動させることで、フレームを径方向に拡張または圧縮するために、拡張機構108がいずれかの方向で動作させられ得ることが理解され得る。
【0089】
図17は、拡張機構108の代わりの、フレーム102(および補綴弁100)を径方向に拡張および圧縮するための、(1つまたは複数の他の拡張機構200と共に)フレーム102に搭載できる別の実施形態による拡張機構200の概略図である。拡張機構200は、拡張機構108と同様とでき、筐体122、ラック126、拡張コード158、および結び目184を含む同じ構成要素のすべてを含み得る。ツメ124および解放コード174など、拡張機構108の他の構成要素も拡張機構200に含まれ得るが、図示の容易性のために
図13では示されていない。
【0090】
拡張機構200の動作は拡張機構108の動作と同様であり、それによって拡張コード158は、近位へ向かう力をコード158のループ部分158aに加えることで、補綴弁100を軸方向に短縮および径方向に拡張させることができる。しかしながら、拡張機構200は、コードの滑り摩擦を低減することで、後で記載されているように補綴弁100を拡張させるために必要とされる力の大きさを低減することができる第1の滑車202および第2の滑車204を備え得る。
【0091】
第1の滑車202は、コード受入部材148に、またはコード受入部材148に隣接してなど、筐体122の上方部分に沿って搭載され得る。第2の滑車204は、コード経路決定部材160の代わりにラックの下方部分になど、ラック126に搭載され得る。滑車202、204は、それぞれの車軸206、208の周りに回転することができる従来の滑車であり得る。拡張コード158は、近位方向においてループ部分158aに加えられる引っ張り力がラック126を筐体へと(
図17における上向きに)さらに移動させ、フレーム102を径方向に拡張させるように、
図17に示されているように滑車202、204の周りに巻かれて留められ得る。滑車202、204は、拡張機構の表面に対するコードの滑り摩擦を低減または排除するために、ラック126が移動させられるときに回転する。
【0092】
代替の実施形態では、追加の滑車が、拡張機構の隣接する表面に対するコード158の滑り摩擦をさらに低減するために、および/または、組立体の機械的倍率をさらに増加させるために(これは、コードを引っ張り、フレームを拡張させるために必要とされる力をさらに低減する)、1つまたは複数の他の場所に加えられてもよい。
【0093】
図18は、拡張機構108の代わりの、フレーム102(および補綴弁100)を径方向に拡張および圧縮するための、(1つまたは複数の他の拡張機構300と共に)フレーム102に搭載できる別の実施形態による拡張機構300の概略図である。
図18の実施形態では、拡張機構300は筐体302、ツメ304、およびラック306を備え得る。
【0094】
ラック306は複数の歯308を備え得る。ツメ304は、歯308と係合する対応する歯305(または、単一の歯305)を有し得る。ツメ304は、筐体302の中で長手方向に移動でき、ツメの移動が一方の軸方向だけにおいて許容可能となるように、ラック306の歯308と係合できる。ツメ304とラック306とは、フレーム102に沿って軸方向に離間された場所において、フレーム102(
図14では示されていない)に直接的または間接的に結合でき、それによって、ラック306に対する特定の方向(
図18の配向における上向き)でのツメ304の軸方向の移動は、フレーム102を径方向に拡張させる。
【0095】
拡張コード310は、近位方向(
図18における上向き)で拡張コードに加えられる引っ張り力がツメ304をラックに対して移動させてフレームを拡張させるように、ツメ304に固定され得る。ラック306とのツメ304の係合は、フレーム102の径方向の圧縮を防止するように、反対方向(
図18における下向き)におけるツメ304の移動を防止する。
【0096】
拡張機構300は、拡張方向(つまり、フレームの径方向の拡張を作り出すツメの移動の方向)においてツメ304を弾性的に付勢するように構成されている付勢部材をさらに備え得る。最初の移植の後、補綴弁が移植された自然弁輪が患者の疾患または成長により膨張する場合、付勢部材は、時間と共に補綴弁を連続的に拡張させるために十分である付勢力をツメに対して望ましくは加える。
【0097】
図示されている実施形態では、付勢部材は、
図18において示されているように、ツメ304と筐体302の隣接する内面との間に位置決めされたバネ312(例えば、コイル圧縮バネ)を備える。バネ312の一端は、ツメ304の隣接する表面に圧し掛かることができ、バネ312の反対の端は、筐体302の隣接する内面に圧し掛かることができる。バネ312は、一定の付勢力を軸方向(
図18の配向における上向き)においてツメ304に加えることができる。
【0098】
付勢力は、補綴弁100が患者に移植された後、バネ312によって連続的に加えられ、それによって、一定の拡張力を補綴弁に加える。具体的な実施形態では、バネ312(または、他の付勢部材)は、所望の展開直径での最初の移植において補綴弁に対して及ぼされる周囲の自然弁輪の径方向の力に抗して補綴弁を拡張させることはないが、補綴弁の拡張以外の要因によって引き起こされる自然弁輪の膨張において補綴弁をさらに拡張させることができる付勢力を有するように選択される。例えば、バネ312(または、他の付勢部材)は、径方向内向きの方向において補綴弁に作用する任意の外側からの力のない場合、補綴弁を径方向に拡張させるために十分であるが、補綴弁が移植される自然弁輪によって補綴弁に及ぼされる力に打ち勝つだけの強さのない付勢力を有するように選択できる。具体的な実施形態では、例えば、バネ312(または、他の付勢部材)は少なくとも3Nの力を提供する。
【0099】
一部の実施形態では、すべての拡張機構300によって補綴弁に提供される全体の拡張力が、少なくとも10N、少なくとも50N、少なくとも100N、少なくとも150N、または少なくとも200Nであり得る。各々の拡張機構のバネ312によって提供される力はF/nであり、ここで、Fは全体の拡張力であり、nは拡張機構の全体の数である。したがって、補綴弁が3つの拡張機構を備える場合、各々のバネ312は、例えば少なくとも3.33N、少なくとも16.67N、少なくとも33.33N、少なくとも50N、または少なくとも66.67Nといった、全体の拡張力の3分の1である拡張を提供することができる。全体の拡張力、および、バネを有する各々の個別の拡張機構の拡張力は、
図19~
図20の実施形態について同じとでき、これは後で記載されている。
【0100】
したがって、補綴弁100が患者の自然弁輪に最初に移植されるとき、補綴弁は、1つまたは複数の拡張機構300を作動させることなどによって、自然弁輪を満たすように拡張させられ得る。したがって、患者の生体構造は、補綴弁への圧縮力(つまり、補綴弁を径方向に圧縮させようとする力)を付与することができる。ラック306とのツメ304の係合は、フレーム102が圧縮することを防止でき、一方、患者の生体構造から補綴弁に作用する圧縮力は、バネ312の力の下での補綴弁のさらなる拡張を防止することができる。しかしながら、時間(日、週、月、または年)と共に、患者の自然弁輪は、例えば患者の疾患または成長のため、弛緩および拡張し、それによって補綴弁における圧縮力を低減する可能性がある。これが起こるため、バネ312は、ツメ304をラック306に対して軸方向に移動させ、それによってフレーム102を拡張させる。したがって、補綴弁100は、患者における移植の後、時間と共に、何年にもわたって拡張し続けることができ、それによって、補綴弁を調節または交換するための追加の外科的介入への必要性を低減する。
【0101】
一部の場合では、自然心臓弁の粘弾性的性質のため、自然の組織は、移植に続いてすぐに(例えば、移植に続いて数分間、数時間、または数日間で)若干拡張する可能性がある。この手法では、バネによって提供される拡張力は、移植にすぐ続く数分間、数時間、または数日間で、補綴弁をその最終的な意図されている直径まで完全に拡張させることができる。一部の適用では、医師は、自然の組織を裂傷させること、または、自然の組織に他の外傷を引き起こすことを回避するように、および、移植にすぐ続く数分間、数時間、または数日間で、バネの拡張力によって補綴弁をその最終的な直径まで完全に拡張させるように、1つまたは複数の拡張機構を使用して、補綴弁を若干小さく拡張させることができる。
【0102】
付勢部材の他の利点は、組織の弛緩などによって補綴弁が拡張するとき、補綴弁の有効な流出領域が増加でき、補綴弁の前後の圧力勾配が小さくなることができるため、補綴弁の血行動態を向上させることができることである。
【0103】
代替の実施形態では、様々な他の種類の付勢部材が、圧縮バネ312の代替または追加で使用され得る。限定されることなく、使用され得る付勢部材の一部の例には、力が加えられると圧縮でき、力が除去されるとその通常の大きさおよび形へと戻るように弾性的に拡張できる様々な種類のバネ(例えば、引張バネ、捩じりバネ、板バネ)、伸縮性および/または弾性のコード、および弾性体(例えば、一片のシリコーンまたはポリウレタン)がある。同様に、これらの種類の付勢部材のいずれも、後で記載されている実施形態において、バネ408および514の代替または追加で使用できる。
【0104】
図19は、拡張機構108の代わりの、フレーム102(および補綴弁100)を径方向に拡張および圧縮するための、(1つまたは複数の他の拡張機構400と共に)フレーム102に搭載できる別の実施形態による拡張機構400の概略図である。拡張機構400は、筐体402と、筐体内で軸方向に移動できるラック404と、を備え得る。ラック404は、その一端において、補綴弁100のフレーム102(
図19には示されていない)に固定され得る柱406を有し得る。ラック404は、ツメ124などのツメ(
図19には示されていない)と係合し、それによって、ラックの軸方向の移動を一方の軸方向において許容するが、反対の軸方向において許容しないように構成され得る。したがって、ラック404の軸方向の移動は、
図1~
図12の実施形態との関連で記載されているように、フレーム102を軸方向に短縮させ、径方向に拡張させることができる。拡張コード(例えば、拡張コード158)が、引っ張ると、または、拡張コードに加えられる力を増加させると、フレーム102の径方向の拡張を作り出すために、
図1~
図12の実施形態との関連で先に記載されているように、ラック404に動作可能に連結され得る。
【0105】
拡張機構400は、ラック404に対して一定の拡張力を加える、図示されているバネ408(例えば、コイル圧縮バネ)などの付勢部材をさらに備え得る。図示されているように、バネ408は、バネの一端がラックに圧し掛かり、バネの反対の他端が筐体の隣接する内面に圧し掛かるように、ラック404と、筐体402の隣接する内面との間に位置決めされ得る。バネ408は、軸方向に向けられた付勢力をラック404に加えることができる。これは、
図18の実施形態の関連で先に検討されたのと同様の手法で、自然弁輪が時間と共に拡張するにつれて、患者の自然弁輪における移植の後、拡張機構400に補綴弁100をさらに拡張させることができる。したがって、バネ408は、付勢力をツメではなくラックに加えることを除いて、
図18の実施形態との関連で先に記載されているような大きさおよび構成とされ得る。代替の実施形態では、先に記載されている付勢部材のいずれも拡張機構400において使用できる。
【0106】
図20は、拡張機構108の代わりの、フレーム102(および補綴弁100)を径方向に拡張および圧縮するための、(1つまたは複数の他の拡張機構500と共に)フレーム102に搭載できる別の実施形態による拡張機構500の概略図である。
図20の拡張機構は、ツメ502と、ラック508と、筐体520と、を備え得る。ツメ502は、係合部分504と、延在部分506と、を備えることができ、係合部分は、延在部分の軸方向の端に位置決めされている。ラック508は、ツメ502およびラック508がラチェット組立体を形成するように、ツメ502の1つまたは複数の歯516と係合することができる複数のラチェット歯510を有し得る。筐体520は、孔または内腔524が貫いて延在している横方向に延在する唇部または突出部522を有し得る。ツメ502の延在部分506は、図示されているように、孔524を貫いて延在し得る。ツメ502と筐体520とは、後でさらに説明されているように、近位方向および遠位方向において互いに対して軸方向に移動可能とできる。
【0107】
ツメ502の歯516は、ツメが一方の軸方向(
図20の配向における上向き)に移動できるが、反対の軸方向(
図20の配向における下向き)に移動できないように、ラック508の歯510と係合するように構成され得る。ツメ502とラック508とは、ツメとラックとの間の相対的な軸方向の移動がフレームの径方向の拡張を生み出すように、軸方向に離間した場所においてフレーム102に対して固定され得る。ラック508とツメ502とは、フレームに対するそれらの軸方向の場所を固定するように、本明細書において先に記載されているようにフレーム102に直接的または間接的に結合され得る(例えば、これらの構成要素は、フレームのそれぞれのヒンジに結合され得る)。
【0108】
拡張機構の動作を記載する目的のために、ラック508は、場所Aにおいてフレーム102に結合されるとして示されており、ツメ502は、場所Bにおいてフレーム102に結合されるとして示されている。具体的な実施形態では、場所Aは、フレーム102の流出端107とできるか、または、相対的に、流入端105よりフレーム102の流出端107に近くとでき、場所Bは、フレーム102の流入端105とできるか、または、相対的に、流出端107よりフレーム102の流入端105に近くとできる。
【0109】
このようにして、上向きの力(近位方向であり得る)をツメ502に加えることは、本明細書において先に記載されているように、ツメ502をラック508に沿って軸方向に移動させる一方で、フレーム102を軸方向において短縮し、フレームを径方向において拡張させる。ラック508の歯510とのツメ502の歯516の係合は、フレーム102の径方向の圧縮を防止するために、反対方向におけるツメの移動に抗する。拡張機構500は、引っ張ることで、または、拡張コードに加えられる力を増加させることで、フレーム102の径方向の拡張を作り出すために、ツメ502に動作可能に連結される拡張コード(例えば、拡張コード158)を備え得る。
【0110】
拡張機構500は、付勢部材のポテンシャルエネルギーが補綴弁の最初の拡張において増加し、自然弁輪が時間と共に膨張するかまたは弛緩するにつれて、補綴弁をさらに拡張させるために保存されたポテンシャルエネルギーが使用されるように、ラチェット組立体に動作可能に連結される付勢部材を備え得る。
図20においてさらに示されているように、例えば、付勢部材は、ツメ502の延在部分506の周りに同軸で配置される圧縮バネ514を、バネ514の一端が係合部分504の隣接する表面に圧し掛かり、バネ514の反対の端が筐体520の突出部522の隣接する表面に圧し掛かることができるように備える。この手法では、(荷重の掛けられているとき)バネ514は、筐体520をツメ502およびラック508に対して軸方向(
図20における上向き)に移動させる付勢力を突出部522に及ぼす。代替の実施形態では、先に記載されている付勢部材のいずれも拡張機構500において使用できる。
【0111】
筐体520は、ツメ502がフレームに結合される場所から離間され、ラック508がフレーム102に結合される場所から離間される場所において、フレーム102に対する筐体の軸方向の位置を固定するように、フレーム102に直接的または間接的に結合され得る。典型的には、筐体520は、ツメ502とラック508がフレームに結合される複数の場所の間の軸方向の場所で、フレーム102に結合される。拡張機構の配向を記載する目的のために、筐体520は、場所Cにおいてフレーム102に結合されるとして示されており、場所Cは、軸方向において場所Aと場所Bとの間に位置させられている。
【0112】
補綴弁100についての移植処置の間、補綴弁は、ツメ502をラック508に対して近位(
図20において上向き)に移動することなどによって、径方向に拡張させられ得る。ツメ502がラック508に対して軸方向で移動させられるとき、ツメ502の係合部分504は、筐体の突出部522に向けて移動し、バネ514を圧縮する(または、最初に圧縮されていた状態からバネをさらに圧縮する)。この手法では、補綴弁の最初の拡張は、バネ514のポテンシャルエネルギーを確立または増加させる効果がある。圧縮したバネ514は、ラック508がフレームに結合される場所Aに向かう方向(例えば、
図20において上向きである近位方向)において、筐体520に付勢力を及ぼす。患者の自然弁輪における補綴弁100の最初の拡張の後、患者の弁輪はバネ514の力の下でさらなる拡張に抗する。ツメ502の歯516とラック508の歯510との係合は、補綴弁の径方向の圧縮に抗するために、バネ514の付勢力と、自然弁輪によってフレーム102に及ぼされる内向きの力との下でのラック508に対するツメ502の移動に抗する。しかしながら、時間と共に(例えば、移植に続いて数分間、数時間、数日間、数週間、または数年間で)、自然弁輪が弛緩および拡張するにつれて、バネ514の付勢力が筐体520をラック508に対して軸方向(
図20における上向き)に移動させ、それによって、追加の外科的介入なしで補綴弁をさらに拡張させる。
【0113】
拡張機構500が、近位へ向かう力をツメ502に加えることの代替または追加で、力をラック508に加えることで補綴弁を最初に拡張させるように作動させることができることは、留意されるべきである。例えば、近位へ向かう力をツメ502に加えることの代替または追加で、遠位へ向かう力(
図20における下向き)が、送達装置のアクチュエータ部材でラックに押す力を加えることなどで、ラック508に加えられ得る。
【0114】
他の実施形態では、(
図18~
図20の実施形態にあるように)付勢部材を拡張機構に組み込むことの代替または追加で、補綴弁のフレーム(例えば、フレーム102)は、最初の移植の後に時間と共にさらに拡張できるように少なくとも部分的に自己拡張可能となるように構成され得る。一例では、フレーム102の支柱は、最初の移植の後に組織の弛緩または膨張に応じて補綴弁を時間と共に拡張させ続ける残留拡張力を保存するように大きさまたは形が決定され得る。別の例では、補綴弁のフレーム(例えば、フレーム102)は、特定の直径まで自己拡張可能とできるが、弁尖、裾部、フレームと弁尖との間の連結部、および/または、フレームもしくは裾部の間の連結部の形状によって、最初に移植されたときにはより小さい直径で最初に保持される可能性があり、これは、最初の移植の後の組織の弛緩または膨張に応じて、フレームを時間と共にさらに拡張させることができる。
【0115】
図21および
図22A~
図22Dは、例えば、補綴弁(例えば、補綴弁100)を患者の自然弁(例えば、自然大動脈弁)に移植するために使用され得る送達装置700の遠位端部分の例示の実施形態を示している。移植の前、補綴弁は送達装置において縮めることができ、これは、径方向で圧縮された補綴弁を送達装置の送達シースの中に配置することを含み得る。逆行方向において経大腿で送達される場合、送達装置の一部分と補綴弁とは患者の自然の大動脈弁輪を交差し、次に補綴弁は、本明細書に記載されているような1つまたは複数の拡張機構を作動させることなどで、自然弁輪の中で径方向に拡張させられる。しかしながら、このような移植処置の間、補綴弁を再位置決めするために補綴弁をその場で再び縮めることが望ましくなることがあり得る。これは、補綴弁および送達装置を自然弁尖の下流の下行大動脈へと戻すように後退させることを必要とし得る。補綴弁のフレームに搭載された1つまたは複数の拡張機構は補綴弁を圧縮することができる一方で、補綴弁を送達シースの中にその場で再挿入するだけ補綴弁を径方向に圧縮することは難しい可能性がある。一部の場合では、補綴弁の遠位端と自然弁尖との間の接触が、自然大動脈弁の再度の交差を妨げる可能性がある。送達装置700は、後で詳細に記載されているように、このような困難なしで自然大動脈の再度の交差を容易にする。
【0116】
送達装置700は、外側シャフト704を通って同軸に延在する内側シャフト702と、内側シャフト702の遠位端部分に搭載されるノーズコーン706と、を備え得る。内側シャフト702および外側シャフト704の近位端部分は取っ手(図示せず)に連結でき、取っ手は、送達装置602との関連で先に記載されているように、シャフト702、704の間の相対的な移動を制御するための様々なアクチュエータを有し得る。シャフト704の遠位端部分704dは、患者の血管系を通じた送達の間に補綴弁を収容するための外側シースとして使用できる。送達装置700は、送達装置602との関連で先に記載されている特徴のいずれも有することができるが、簡潔性のためにここでは繰り返さない。
【0117】
図21に最も良く示されているように、図示された実施形態におけるノーズコーン706が、先細りの遠位部分708と、円筒形の中間部分710と、先細りの近位部分712と、中間部分710から径方向外向きに延在する末広がりの裾部分714と、を備える。ノーズコーン706は、遠位部分708、中間部分710、および近位部分712を通じてノーズコーンの長さで延在する内腔716を備え得る。内腔716は、シャフト702の遠位端部分を内腔に挿入させ、適切な接着剤などでノーズコーンの隣接する内面に固定させることができる大きさとできる。シャフト702も、技術的に知られているように、送達装置700が患者の血管系を通じて案内ワイヤ718にわたって前進させられ得るように、案内ワイヤ718を受け入れる大きさとされたそれぞれの内腔を備え得る。
【0118】
中間部分710は、中間部分710と遠位部分708との間に環状の肩部720を定めるように、遠位部分708の最も近位の端より小さい外形を有し得る。中間部分710の直径は、望ましくは、シース704dを近位部分712および中間部分710にわたって延在させ、シース704dの最も遠位の端を環状の肩部720に当接させる大きさとされる。(肩部720における)遠位部分708の最大直径は、望ましくは、ノーズコーンとシースとの間に滑らかで傷つけない移行を提供するために、シース704dの外径と同じかまたは実質的に同じである。
【0119】
近位部分712は、中間部分710の最も近位の端におけるより大きい直径から、ノーズコーンの最も近位の端におけるより小さい直径まで先細りとなり得る。これは、補綴弁が拡張させられた後に、補綴弁を通じてシースへとノーズコーン706を戻すように後退させることを助ける。しかしながら、他の実施形態では、近位部分712は、中間部分710と同様の円筒形など、他の形または構成であり得る。
【0120】
裾部分714は、裾部分において外側からの力のない場合、
図21に示されているように径方向拡張状態へと付勢されるが、近位部分712にわたって近位へ延在する第1の圧縮または折り畳みの位置(
図22A参照)と、中間部分710にわたって遠位へ延在する第2の圧縮または折り畳みの位置(
図22D参照)との間で移動可能または折り畳み可能である。裾部分714は、径方向拡張状態にあるとき、自然弁の再度の交差の間に補綴弁の隣接する端を自然の組織から遮蔽するために、補綴弁100の隣接する端(図示されている実施形態では、補綴弁の流入端)より大きい最大直径Dを有する(
図22C参照)。また、裾部分714は、望ましくは、中間部分710への連結部から近位部分712に向かう方向に末広がりとなる円錐形を有する。
【0121】
ノーズコーン706は、Pebax(登録商標)(例えば、ショア硬さ35のPebax)など、低デュロメータ硬さのポリマ(a low durometer polymer)から作られ得る。裾部分714は、ノーズコーンの残りの部分と一体に形成され得る。例えば、ノーズコーン全体は、例として成型によって形成される一体品の単一構造を有し得る。裾部分714は、第1の折り畳み位置と第2の折り畳み位置とに曲げることができるように、十分な柔軟性を呈することができる。
【0122】
図示されている実施形態では、裾部分714はその全長に沿って閉じた環状の形を有し、これは、裾部分714が、その全長に沿って、その中心軸の周りに360度を通じて連続的に延在していることを意味する。代替の実施形態では、裾部分714は他の形または構成を有してもよい。例えば、裾部分714は、互いに対して屈曲または撓むことができる複数のフラップまたは部分へと裾部分を分離するように、裾部分の長さに沿って一部または全部で延在する長手方向に延在する1つまたは複数の裂け目を備えてもよい。
【0123】
移植処置の間、補綴弁100は、送達装置700に結合され、
図22Aに示されているような折り畳み構成へと縮められる。補綴弁は、先に記載されているように、コード158、174を用いて、送達装置700の位置決め部材(位置決め部材608と同様である)に解放可能に結合され得る。裾部分714は近位方向において第1の折り畳み位置へと折り畳むことができ、シース704dは、
図22Aに示されているように、補綴弁100と、ノーズコーンの裾部分714および中間部分710とにわたって配置させることができる。
図22Aに示されているように、縮められた補綴弁は、シース704dの中でノーズコーン706の近位に位置決めされ得る。他の実施形態では、縮められた補綴弁は、(第1の折り畳み位置にした後)裾部分714の周りに少なくとも部分的に配置でき、任意選択で、ノーズコーンの中間部分710の周りに配置できる。
【0124】
次に、送達装置700および補綴弁100は、患者の血管系へと挿入され、経大腿の逆行性送達アプローチを用いて、血管系を通じて前進させられ得る。補綴弁100は、補綴弁の少なくとも一部分を自然弁の中に位置決めするために、大動脈弓、上行大動脈を通じ、自然大動脈弁を一部で越えて、前進させられる。
【0125】
補綴弁を送達装置から展開するために、ノーズコーン706は、(例えば、内側シャフト702を前進させること、および/または、シース704dを後退させることによって)遠位に前進させられ得る。これは、
図22Bに示されているように、裾部分714をそれ自体の弾力性の下で拡張状態へと自己拡張させることができる。次に、補綴弁100は、先に記載されている技術(例えば、1つまたは複数の拡張機構108を作動させること)を用いて拡張させることができる。
【0126】
補綴弁100が再位置決めのために上行大動脈へと戻るように後退させられる必要がある場合、補綴弁は、先に記載されている技術(例えば、1つまたは複数の拡張機構108を逆に作動させること)を用いて径方向に圧縮させることができる。補綴弁を径方向に圧縮した後、シース704dは、補綴弁の近位端部分にわたって前進させることができ、裾部分714は、
図22Cにおいて描写されているように、補綴弁の遠位端部分に接触するように後退させられ得る。裾部分714は、望ましくは、少なくとも部分的にこの位置において補綴弁の遠位端部分にわたって延在するような大きさとされる。次に、送達装置700および補綴弁100は、大動脈基部または上行大動脈へと戻るように後退させることができる。シース704dおよび裾部分714を補綴弁の端に接触して配置する前に、医師が送達装置および補綴弁を不用意に後退させた場合、裾部分714は、自然弁尖の外傷を回避または最小限にするために、自然弁尖との接触において撓むことができる。その後、裾部分714およびシース704dは、
図22Cに示されているように、補綴弁の反対の端部分に接触して配置できる。
【0127】
図22Cに示された構成にある間、送達装置700および補綴弁100は、自然大動脈弁を通じて戻るように前進させられ得る。有利には、ノーズコーン706の遠位部分708および裾部分714の円錐形は、再度の交差を容易にするために、案内ワイヤ718から弁100への滑らかな移行を形成する。さらに、先に記されているように、裾部分714は、フレーム102の金属構成要素(具体的には、フレームの遠位端における頂部)が、自然弁尖に引っ掛かることなく、または、自然弁尖に外傷をもたらすことなく、自然弁尖を越えて滑ることができるように、補綴弁の遠位端部分を遮蔽する。
【0128】
補綴弁100が所望の場所に位置決めされると、先に記載されているように、シース704dは後退させられ、ノーズコーン706は遠位へ前進させられ、補綴弁は拡張させられて送達装置700から解放され得る。補綴弁100が送達装置から解放された後、シース704dは、裾部分714にわたって遠位へ前進させることができる、および/または、ノーズコーンはシースへと近位へ後退させることができ、これは、
図22Dに示されるように、裾部分714を第2の折り畳み位置へと屈曲または折り畳ませる。
図22Dでは、シース704dは裾部分714にわたって一部延在している。望まれる場合には、シース704dは、裾部分714の全体の範囲にわたって前進させることができ、シースの最も遠位の端は肩部720と接触して配置させることができる。シース704dを裾部分714の全体の範囲にわたって前進させることで、裾部分714を中間部分710に接触させるように完全に折り畳める。裾部分714を一部または全部で覆った後、送達装置700は患者の身体から引き込まれ得る。
【0129】
代替の実施形態では、ノーズコーン706は、任意の種類の機械的に拡張可能な弁または非機械的に拡張可能な弁(例えば、自己拡張可能な弁およびバルーン拡張式の弁)を含め、補綴弁100または他の種類の補綴弁を送達するために使用できる他の送達装置で実施または組み込みされ得る。例えば、ノーズコーン706は、本明細書において参照により組み込まれている特許文献1において開示されている送達装置のいずれかで実施または組み込みされ得る。特許文献1は、機械的に拡張可能な心臓弁およびそのための送達装置を開示している。他の例では、ノーズコーンは、本明細書において参照により組み込まれている特許文献9において開示されている送達装置のいずれかで実施され得る。特許文献9は、自己拡張可能な補綴心臓弁およびそのための送達装置を開示している。他の例では、ノーズコーンは、本明細書において参照により組み込まれている特許文献10において開示されている送達装置のいずれかで実施され得る。特許文献10は、バルーン拡張式の補綴心臓弁およびそのための送達装置を開示している。
【0130】
一般的な留意事項
開示されている実施形態が、補綴装置を送達し、心臓の自然弁輪(例えば、肺弁輪、僧帽弁輪、および三尖弁輪)のいずれかにおいて補綴装置を移植するように適合でき、様々な送達の手法(例えば、逆行性、順行性、経中隔、経心室、経心房など)のいずれかと使用できることは、理解されるべきである。開示されている実施形態は、補綴物を身体の他の内腔に移植するために使用されてもよい。さらに、補綴弁に加えて、本明細書に記載されている送達組立体の実施形態は、ステントおよび/または他の補綴修復装置など、様々な他の補綴装置を送達および移植するために適合させることができる。
【0131】
本記載の目的について、本開示の実施形態の特定の態様、利点、および新規の特徴が本明細書に記載されている。開示されている方法、装置、およびシステムは、何らかの形で限定するとして解釈されるべきではない。代わりに、本開示は、単独で、ならびに、互いとの様々な組み合わせおよび下位の組み合わせで、様々な開示されている実施形態のすべての新規および非自明の特徴および態様に向けられている。方法、装置、およびシステムは、それらの特定の態様、特徴、または組み合わせに限定されず、開示されている実施形態は、1つまたは複数の特定の利点が存在すること、または、問題が解決されることを必要としない。任意の例からの技術は、他の例のうちの任意の1つまたは複数に記載されている技術と組み合わせることができる。開示されている技術の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、図示された実施形態が単なる好ましい例であり、開示されている技術の範囲を限定するとして取られるべきではないことは、認識されるべきである。
【0132】
開示されている実施形態の一部の動作が、都合の良い提示のために特定の連続した順番で記載されているが、この手法の記載は、特定の順番が後で述べられている明確な言葉によって要求されていない場合、再編成を包含していることは理解されるべきである。例えば、連続して記載されている動作は、ある場合には、再編成されてもよい、または、並行して実施されてもよい。さらに、単純化のために、添付されている図は、開示されている方法が他の方法との組み合わせで使用できる様々な方法を示さない可能性がある。また、本記載は、開示されている方法を記載するために、「提供する」または「達成する」などの用語を使用することがある。これらの用語は、実施される実際の動作の高度の抽象化である。これらの用語に対応する実際の動作は、特定の実施に応じて変わる可能性があり、当業者によって容易に認識可能である。
【0133】
本出願および請求項において使用されるとき、「1つ」および「その」といった単数形は、文脈が他に明確に指定していない場合、複数形を含んでいる。また、「含む」という用語は「備える」を意味する。さらに、「結合」および「関連」という用語は、電気的、電磁的、および/または物理的(例えば、機械的または化学的)に結合または繋げられることを概して意味し、特定の反対の言葉のない場合、結合または関連する項目同士の間の中間要素の存在を排除しない。
【0134】
本明細書で使用されるとき、「近位」という用語は、使用者により近く、移植部位からさらに離れる装置の位置、方向、または部分を言っている。本明細書で使用されるとき、「遠位」という用語は、使用者からさらに離れ、移植部位により近い装置の位置、方向、または部分を言っている。したがって、例えば、装置の近位への運動は、使用者に向かう装置の運動であり、装置の遠位への運動は、使用者から離れる装置の運動である。「長手方向」および「軸方向」という用語は、他に明示的に定められていない場合、近位方向および遠位方向において延在する軸を言っている。
【0135】
本明細書で使用されるとき、「一体に形成される」および「単一構造」は、別々に形成された材料片を互いと固定するための任意の溶接、留め具、または他の手段を含まない構造を言っている。
【0136】
本明細書において使用されるとき、「同時」または「並行」で起こる動作は、概して互いと同じときに起こるが、例えば、ネジ、歯車などの機械的な連係での構成要素同士の間の間隔、遊び、または緩みによる、一方の動作の発生の他方の動作の発生に対する遅れは、明確に反する言葉のない場合、明示的に先の用語の範囲内にある。
【0137】
本開示の原理が適用され得る多くの可能な実施形態を考慮して、図示された実施形態が単なる好ましい例であり、本開示の範囲を限定するとして取られるべきではないことは、認識されるべきである。むしろ、本開示の範囲は以下の請求項によって定められる。
【符号の説明】
【0138】
100 補綴心臓弁
102 ステント、フレーム
104 流入端部分
105 フレーム流入端
106 流出端部分
107 フレーム流出端
108 拡張機構
110 支柱
112、114 頂部
116、118 開口部、開口
120 留め具
122 筐体
124 第1の拡張部材、ツメ
126 第2の拡張部材、ラック
128 歯
130 柱
132 保持部材
134 係合部分
135 歯
136 中間部分
138 解放部分
140 結合部材
141 内側本体部分
142 柱
144 内面
146 第1のコード受入部材
148 第2のコード受入部材
150 第1の径方向開口部
152 第1の軸方向開口部
154 第2の径方向開口部
156 第2の軸方向開口部
158 拡張コード
158a ループ部分
158b ループ部分
160 コード経路決定部材
162 第1の開口部、通路
166 第2の開口部、通路
170 第3の開口部、通路
174 解放コード
176 第1の開口部
178 第2の開口部
180 第3の開口部
182 第4の開口部
184 結び目
186 コード経路決定部材
188 第1の開口部
190 第2の開口部
192 第3の開口部
194 耳部
196 旋回要素
198 外面、軸
200 拡張機構
202 第1の滑車
204 第2の滑車
206、208 車軸
300 拡張機構
302 筐体
304 ツメ
305 歯
306 ラック
308 歯
312 バネ
400 拡張機構
402 筐体
404 ラック
406 柱
408 バネ
500 拡張機構
502 ツメ
504 係合部分
506 延在部分
508 ラック
510 歯
514 圧縮バネ
516 歯
520 筐体
522 唇部、突出部
524 孔、内腔
600 送達組立体
602 送達装置
604 取っ手
606 第1のシャフト、内側シャフト
608 位置決め部材、第2のシャフト
610 第3のシャフト、外側シャフト、外側シース
610d 遠位端部分
612 ノーズコーン
700 送達装置
702 内側シャフト
704 外側シャフト
704d 遠位端部分、シース
706 ノーズコーン
708 遠位部分
710 中間部分
712 近位部分
714 裾部分
716 内腔
718 案内ワイヤ
720 肩部
A、B、C 場所
D 最大直径
【国際調査報告】