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  • 特表-リヨセル繊維の処理方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】リヨセル繊維の処理方法
(51)【国際特許分類】
   D06M 13/256 20060101AFI20220121BHJP
【FI】
D06M13/256
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532383
(86)(22)【出願日】2019-12-13
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 EP2019085141
(87)【国際公開番号】W WO2020126931
(87)【国際公開日】2020-06-25
(31)【優先権主張番号】18213015.3
(32)【優先日】2018-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507127314
【氏名又は名称】レンチング アクチエンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】100149076
【弁理士】
【氏名又は名称】梅田 慎介
(72)【発明者】
【氏名】アイグナー,ルドルフ
(72)【発明者】
【氏名】レドリンジャー,シグリド
(72)【発明者】
【氏名】シュトイラー,マリアン メデ ホフ
【テーマコード(参考)】
4L033
【Fターム(参考)】
4L033AA02
4L033AB01
4L033AC08
4L033BA28
4L033BA99
(57)【要約】
本発明は、リヨセル繊維を処理する方法であって、繊維を少なくとも1つの処理媒体と接触させるステップであり、少なくとも1つの処理媒体はある量の架橋剤を含有し、架橋剤はアルカリ性条件下でセルロースを架橋させることができ、かつ20g/l以下の20℃の水への溶解度を有する、ステップと、アルカリ性条件下で繊維を架橋剤で処理するステップとを含み、架橋剤が懸濁液の形態または固体形態で繊維に添加されることを特徴とする、方法に関する。本発明は、本発明の方法によって得られるリヨセル繊維にも関する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
リヨセル繊維を処理する方法であって、繊維を少なくとも1つの処理媒体と接触させるステップであり、少なくとも1つの処理媒体はある量の架橋剤を含有し、架橋剤はアルカリ性条件下でセルロースを架橋させることができ、かつ20g/l以下の20℃の水への溶解度を有する、ステップと、アルカリ性条件下で繊維を架橋剤で処理するステップとを含み、繊維を接触させるステップにおいて架橋剤が懸濁液の形態または固体形態で存在することを特徴とする、方法。
【請求項2】
繊維を処理媒体と接触させるステップが、少なくとも第1の接触させるステップおよび第2の接触させるステップを含むことを特徴とする、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
第1の接触させるステップでは第1の処理媒体が、第2の接触させるステップでは第2の処理媒体が用いられ、第1の処理媒体の組成と第2の処理媒体の組成は異なることを特徴とする、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
第1の処理媒体が、用いられる架橋剤の総量の大部分を含有することを特徴とする、請求項2または3に記載の方法。
【請求項5】
第1の処理媒体が、架橋剤の水性懸濁液であることを特徴とする、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
第1の処理媒体および第2の処理媒体のうち少なくとも1つが、アルカリ性であることを特徴とする、請求項3から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第2の処理媒体のみがアルカリ性であることを特徴とする、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
接触させるステップの温度が、10℃~50℃であることを特徴とする、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
繊維を架橋剤で処理するステップの温度が、接触させるステップの温度より高く、好ましくは60℃~120℃、より好ましくは80℃~110℃であることを特徴とする、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
繊維を架橋剤で処理するステップが、蒸気の存在下で行われることを特徴とする、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
繊維を架橋剤で処理するステップが、蒸気チャンバー内で行われることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
繊維がトウの形態で存在することを特徴とする、請求項1から11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
連続的に実行されることを特徴とする、請求項1から12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
繊維を接触させるステップおよび処理するステップが、全く乾燥されていない形態の繊維で行われることを特徴とする、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
架橋剤が、13以上のpH値で本質的に可溶性であることを特徴とする、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
架橋剤が、p-[(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]ベンゼンスルホン酸および/またはその塩であることを特徴とする、請求項1から15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
請求項1から16のいずれか一項に記載の方法によって得られるリヨセル繊維であって、200回転以上の湿潤摩耗値を示し、9分の間ブレンドした後に、ブレンドする前の繊維のml CSFでのカナダ標準ろ水度値の少なくとも80%のml CSFでのカナダ標準ろ水度値を示すことを特徴とする、リヨセル繊維。
【請求項18】
400回転以上の湿潤摩耗値を示すことを特徴とする、請求項17に記載のリヨセル繊維。
【請求項19】
ブレンドする前の繊維のml CSFでのカナダ標準ろ水度値の少なくとも85%のml CSFでのカナダ標準ろ水度値を示すことを特徴とする、請求項17または18に記載のリヨセル繊維。
【請求項20】
p-[(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]ベンゼンスルホン酸および/またはその塩で架橋されていることを特徴とする、請求項17から19のいずれか一項に記載のリヨセル繊維。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、リヨセル繊維の処理方法、および本発明の方法によって得られるリヨセル繊維に関する。
【背景技術】
【0002】
「リヨセル」という用語は、誘導体を形成することなくセルロースを有機溶媒に溶解させ、前記溶液から乾湿式紡糸プロセスによって繊維を押し出すことによって、またはメルトブローンプロセスによって製造されるセルロース繊維に、BISFA(国際人造繊維標準化局)によって割り当てられた一般名称である。現在、商業規模ではN-メチル-モルホリン-N-オキシド(NMMO)が有機溶媒として使用さている。
【0003】
前記プロセスでは、セルロースの溶液は通常、成形ツールによって押し出され、それによって成型される。成型された溶液はエアギャップを介して沈澱槽に入り、そこで溶液を沈殿させることによって成型体が得られる。成型体は洗浄され、さらなる処理ステップの後に、必要に応じて乾燥される。アミンオキシド溶媒は、工場の閉ループにおいてリサイクルされる。99.5%を超える回収率が達成されている。添加剤のリサイクルは、環境へのプロセスの影響が非常に少ないことを意味する。これはプロセスの経済性にとっても不可欠である。
【0004】
標準的なリヨセル繊維を製造する方法は、とりわけ、米国特許第4,246,221号または国際公開第93/19230号から周知である。リヨセル繊維は、高い引張り強度、高い湿潤弾性率および高いループ強度によって特徴付けられる。それらは、アパレル、家庭内服飾品、作業服および不織物品において使用される。市販の繊維は、例えば、Lenzing AGにより製造され、TENCEL(商標)リヨセルと商標化されている。
【0005】
リヨセル繊維が湿潤状態で機械的応力に供されるとフィブリル化する傾向を示すことは周知である。フィブリル化とは、繊維構造が縦方向に分解することを意味する。湿潤状態での機械的摩耗によって、繊維から微細なフィブリルが部分的に剥がれて、布地は毛状外観を呈するようになる。この現象は、染色または精練のような湿潤布地加工ステップ中、および洗濯中に起こる。布地の表面は、容認できない外観となる。フィブリルが互いにもつれるにつれて布地の表面はつや消しになり、フィブリル化が起こると、フィブリルの表面からのスペクトル反射に起因して布地はより淡い色を有する。フィブリル化は通常、布地の高い点で起こり、しわの上のフィブリル化が起こる場所に白い線が現われる場合がある。
【0006】
布地が湿潤摩耗に供されるたびに、布地のフィブリル化が起こる可能性がある。これは、布地の湿潤加工中、例えば、衣類のジェット染色または洗濯中に起こる可能性がある。
【0007】
繊維の製造中に繊維を架橋剤で処理することによって、リヨセル繊維のフィブリル化を低減するための集中的な努力がなされてきた。適切なプロセスは、例えば、EP0785304、国際公開第95/28516号および国際公開第99/19555号に記載されている。架橋剤を、繊維、好ましくは全く乾燥されていない繊維に塗布する。次いでこれは、薬剤を繊維中のセルロースと反応させて、繊維中の分子同士を通常結合する天然の水素結合で起こり得るよりも強くセルロース分子同士を付着させる条件にかける。水素結合は、水で濡れることによって切断される可能性があり、従ってフィブリル化が起こる可能性がある。架橋剤で形成された結合は、水への曝露によって切断することができず、従って繊維はフィブリル化しない。市販の架橋したリヨセル繊維は、例えば、LENZING(商標)リヨセルA100およびLENZING(商標)リヨセルLFである。
【0008】
架橋した繊維は、繊維を布地に変換するのに必要な機械的および化学的処理、ならびに布地に施される染色および仕上げプロセスに、フィブリル化が引き起こされることなく耐えるはずである。これは、架橋したリヨセル繊維を、従来のテキスタイル加工およびプロセス機械を使用して、仕上がった布地に変換することができるはずであることを意味する。
【0009】
染色、仕上げおよび洗濯という次の加工において、フィブリル化を防ぐ処理が、木綿繊維と少なくとも同等の可染性を繊維に与えることが非常に望ましい。酸性またはアルカリ性のいずれかの媒体を使用する染色および仕上げシステムにおいても、加工される能力を有さなければならない。架橋処理は、特別の貯蔵条件を必要とせずに、貯蔵中に安定なはずである。
【0010】
架橋したリヨセル繊維は、羊毛、ポリエステルおよびナイロンなどの他の繊維タイプとブレンドされ、次に染色する場合、酸性媒体中で安定である必要がある。これらの繊維は、それらを着色するために使用する染色システムのために、酸性の条件を必要とする。条件は、典型的には130℃以下の温度でpH5である。
【0011】
架橋したリヨセル繊維は、木綿または他のセルロース系繊維とブレンドする場合、アルカリ性の媒体中で安定である必要がある。セルロース繊維は、高い堅牢度の鮮明で深い色を与えるので、反応性染料を使用して最も一般的に染色される。アルカリ性条件は、40~80℃で、pH12~13まで到達してもよい。
【0012】
使用する架橋化学物質が、湿潤加工の任意の段階中にホルムアルデヒドを放出しないことも有益である。
【0013】
しかしながら、リヨセル繊維の公知の抗フィブリル化処理はいずれも、上に列挙した特性または加工要件を一度にすべてもたらすことはできない。
【0014】
EP0538977およびEP0785304は、リヨセル繊維を架橋させるための、あるクロロトリアジン化合物の使用を開示している。これらの化合物は、アルカリ性条件下でセルロースと反応し、セルロースを架橋させる。これらの化合物は、市販され、周知の物質である。EP0903434では、リヨセル繊維の架橋剤として使用される、さらなるクロロトリアジン化合物が提案されている。
【0015】
EP0538977によって使用される1つの例示的な化合物、以下でSDTBと呼ばれる、ナトリウム-p-[(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]ベンゼンスルホネートは、EP0538977によれば、溶液の形態でリヨセル繊維に塗布される。この化合物は、室温の水への溶解度は低いが、アルカリ性の媒体には溶解する。
【0016】
国際公開第95/28516号では、EP0538977に記載されているポリハロゲン化ポリアジン、または2つ以上のビニルスルホン基を有するポリアジン環を含有する化合物、またはこれらの前駆体によってもたらされるフィブリル化保護は、処理した繊維を含有する布地を精練および洗濯した場合、失われる傾向があると言及している。本発明者らも、EP0538977に記載されている手順を使用することによって、テキスタイルの加工および洗濯に対して不十分なフィブリル化保護を有する繊維をもたらすことを見出した。
【0017】
国際公開第03/038164号は、アルカリ性条件下で可溶性でない架橋剤は、分散体の形態でリヨセル繊維に塗布される必要があり、これはむらのある処理効果につながると言及している。
【0018】
リヨセル繊維を架橋剤で処理するためのさらなる現況技術は、例えば、EP0691426A2、国際公開第2005/073443号および国際公開第94/09191号から公知である。
【0019】
フィブリル化傾向の測定のための、いくつかの方法が存在する。
【0020】
湿潤摩耗値(NSF値と呼ばれる)
この方法により、湿潤条件で摩耗力に耐える繊維の能力が決定される。繊維はロールの上で回転し、摩耗する。繊維が擦り切れるまでの回転数を決定する。
【0021】
NSFに関して、指針として50~150回転はフィブリル化繊維の代表であり、一方200以上、特に400回転以上を示す繊維は、従来の湿潤プロセスでフィブリル化せず、フィブリル化に耐性があるとみなすことができる。
【0022】
TAPPI標準T227om-94による崩壊試験カナダ標準ろ水度(Canadian Standard Freeness)(CSF)
湿潤状態での機械作業におけるフィブリル化への繊維の感受性は、CSF試験(TAPPI標準T227om-99によるカナダ標準ろ水度)を使用して測定することができる。
【0023】
この試験は、パルプがますます小さな部分へ分割されることを意味する、叩解された程度を評価するために、製紙産業で元来開発された。人造繊維の場合には、繊維の希薄な水性スラリーを標準条件下で機械作業に供し、次に、繊維の希薄な懸濁液の排出特性を測定する。
【0024】
繊維の希薄な懸濁液が排出される速度、いわゆる20℃でのろ水度を測定する。フィブリル化の程度が増加するにつれて、スラリーのろ水度は減少する。
【0025】
フィブリル化保護のない未フィブリル化リヨセル繊維は、約700の開始CSFを示す(Lenzinger Berichte、84(2005)110~115)が、このCSFは、ブレンドのわずか数分後に非常に早く下がる。フィブリル化保護を有するリヨセル繊維は、ブレンド後36分までろ水度値の小さな変化しか示さないはずである(Lenzinger Berichte、84(2005)110~115)。
【0026】
高いNSFであるが低いCSFを示す繊維は、湿潤状態の加工中の機械的応力に耐えない、すなわち、湿潤加工処理中のフィブリル化に対して耐性ではなく、他方で、高いNSFおよびCSFの両方を有する繊維は、湿潤加工中の機械的応力下でフィブリルに分解することから保護されることが見出された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0027】
安定で恒久的なフィブリル化保護を有するリヨセル繊維を提供することが、本発明の目的である。「安定な」フィブリル化保護とは、NSFおよびCSF値の両方に関して低いフィブリル化傾向を意味する。「恒久的な」フィブリル化保護とは、酸性またはアルカリ性条件下、すなわち、5~14のpH範囲内での繊維の処理中に、失われないフィブリル化保護を意味する。
【課題を解決するための手段】
【0028】
この目的は、リヨセル繊維を処理する方法であって、繊維を少なくとも1つの処理媒体と接触させるステップであり、少なくとも1つの処理媒体はある量の架橋剤を含有し、架橋剤はアルカリ性条件下でセルロースを架橋させることができ、かつ20g/l以下の20℃の水への溶解度を有する、ステップと、アルカリ性条件下で繊維を架橋剤で処理するステップとを含み、繊維を接触させるステップにおいて架橋剤が懸濁液の形態または固体形態で存在することを特徴とする、方法によって達成される。
【0029】
好ましい実施形態は、従属請求項において説明される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明による架橋剤と接触させた後の、リヨセル繊維のUV-顕微鏡写真の図である。
図2】EP0538977の現況技術による架橋剤と接触させた後の、リヨセル繊維のUV-顕微鏡写真の図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、アルカリ性条件下でセルロースを架橋させるが室温において水溶性ではないかまたは水溶性が不十分な、架橋剤を用いる。
【0032】
架橋剤とセルロースとの化学反応は、2つのステップで行うことができる。第1のステップでは、架橋剤は、その官能基の1つにより、繊維と第1の結合を形成する。
【0033】
第2のステップでは、架橋剤は、そのさらなる官能基により、繊維と第2の結合を形成する。この第2の結合の形成により、繊維、または繊維内のセルロース分子はそれぞれ互いに結合し、すなわち、それらは架橋する。
【0034】
架橋剤の性質に応じて、繊維との前記第1の結合は(中性のpH値などの)穏やかな条件下で形成することができ、一方、前記第2の結合の形成には、(アルカリ性のpH値などの)よりの厳しい条件が必要である。
【0035】
本発明は、少なくとも繊維と前記第2の結合を形成するためにアルカリ性条件を必要とする、架橋剤を用いる。
【0036】
さらに、本発明は、20℃の水に可溶性ではないかまたは可溶性非常に不十分である、すなわち、20g/l以下の20℃の水への溶解度を有する架橋剤を用いる。
【0037】
他方で、好ましくは、用いられる架橋剤は、5g/l以上などのある低い、室温の水への溶解度を有してもよい。
【0038】
これらの条件を満たす架橋剤は、p-[(4、6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]ベンゼンスルホン酸および/またはそのナトリウム塩(SDTB)である。上で言及したように、EP0538977によれば、この種の薬剤は高温のアルカリ性溶液の形態でリヨセル繊維に塗布される。やはり上で言及したように、この処理方法は、満足すべき結果につながらないことが見出された。
【0039】
それとは対照的に、上で規定する架橋剤を、溶液の代わりに懸濁液の形態または固体形態でリヨセル繊維に塗布することによって、本発明の目的が達成できることが驚くべきことに示された。
【0040】
本発明の目的では、懸濁液は、架橋剤と(特に、水などの)液体との混合物を意味し、架橋剤は最大で50%の程度まで溶解している。
【0041】
当業者は、粒子の懸濁液を繊維に含浸することが、化学試薬の不均一で正確な(punctual)分布を繊維表面にもたらすことを知っており、これが不均質な繊維特性をもたらすと予想するであろう。
【0042】
驚くべきことに、上で規定する架橋剤の場合、架橋剤が水性懸濁液で繊維に塗布されると、すなわち、架橋剤を含有する処理媒体が架橋剤の水性懸濁液であると、リヨセル繊維のフィブリル化保護は永続的で安定していることが見出された。
【0043】
本発明の好ましい実施形態は、繊維を処理媒体と接触させるステップが、少なくとも第1の接触させるステップおよび第2の接触させるステップを含むことを特徴とする。
【0044】
好ましくは、第1の接触させるステップでは第1の処理媒体が、第2の接触させるステップでは第2の処理媒体が用いられ、第1の処理媒体の組成と第2の処理媒体の組成は異なる。
【0045】
2つの処理媒体のうちの1つが、用いられる架橋剤の総量の大部分を含有してもよい。好ましくは、第1の処理媒体が、用いられる架橋剤の総量の大部分を含有する。
【0046】
処理媒体、または前記第1の処理媒体および/もしくは第2の処理媒体中の架橋剤の濃度は、特にSDTBの場合には、5~200g/lの範囲であってもよい。
【0047】
第1の処理媒体および第2の処理媒体中の架橋剤のそれぞれの濃度は、互いに異なってもよい。特に第1の処理媒体中の架橋剤の濃度は、第2の処理媒体中の架橋剤の濃度より高くてもよい。
【0048】
第2の処理媒体は、架橋剤を全く含有しなくてもよく、または有意ではない量で含有してもよい。
【0049】
好ましくは、第1の処理媒体は、架橋剤の水性懸濁液である。
【0050】
第1の処理媒体および第2の処理媒体のうち少なくとも1つは、アルカリ性であり得る。
【0051】
好ましくは、第2の処理媒体のみがアルカリ性である。
【0052】
接触させるステップの温度は、10℃~50℃であってもよい。
【0053】
繊維を架橋剤と接触させるステップの条件、特に媒体のpH値および/または温度は、当業者が調節することができ、架橋剤は、処理溶液に溶解しないか、またはわずかな程度しか溶解しないように選択されるべきである。従って、繊維は、主にその表面に架橋剤が含侵される。
【0054】
繊維を接触させた後、繊維を架橋剤で処理するステップは、架橋反応が行われるある期間、繊維と架橋剤が接触したままであることを意味する。接触させるステップの条件に応じて、セルロース繊維との前記第1の結合の形成などの架橋反応の一部は、接触させるステップ中にすでに行われてもよい。
【0055】
繊維を架橋剤と接触させた後の繊維を処理するステップでは、条件は、架橋剤が可溶性であるか、または可溶性になるようなものであってもよい。架橋剤がセルロース繊維と前記第2の結合を形成できるように、条件を選択する必要がある。
【0056】
特に、繊維を架橋剤で処理するステップの温度は、接触させるステップの温度より高く、好ましくは60℃~120℃、より好ましくは、80℃~110℃であってもよい。
【0057】
好ましい実施形態では、繊維を架橋剤で処理するステップは、蒸気の存在下で行われる。
【0058】
特に繊維を架橋剤で処理するステップは、J-ボックスなどの蒸気チャンバー内で行ってもよい。
【0059】
架橋反応中に繊維を高温条件、特に蒸気に曝露することは、それ自体公知である。
【0060】
繊維を接触させるステップと繊維を処理するステップは、異なる試薬容器で行われる必要はないが、段階的に条件を変更することによって1つの容器のみで行われてもよいということは、言及する必要がある。
【0061】
本発明の方法は、切断された形態、すなわちステープルファイバーの形態と、無限フィラメントの形態、すなわちトウの形態の両方の繊維に適用することができる。
【0062】
好ましくは、繊維はトウの形態で存在する。
【0063】
さらに、好ましくは、この方法は連続的に実行される。
【0064】
さらに好ましい実施形態では、繊維を接触させるステップおよび処理するステップは、全く乾燥されていない形態の繊維で行われる。「全く乾燥されていない」という用語は、当業者に公知のように、紡糸口金から押し出されることによって繊維が形成された以後、乾燥するステップを繊維はまだ経ていないことを意味する。
【0065】
本発明によって用いられる架橋剤は、13以上のpH値で本質的に可溶性である。
【0066】
従って、繊維を架橋剤で処理するステップは、好ましくは13以上のpH値で実行され得る。
【0067】
好ましくは、架橋剤は、p-[(4,6-ジクロロ-1,3,5-トリアジン-2-イル)アミノ]ベンゼンスルホン酸および/またはその塩、特にそのナトリウム塩(SDTB)である。
【0068】
繊維を接触させるためにSDTBの懸濁液を使用することによって、SDTB粒子は繊維の表面に位置し、繊維の中に浸透しないことが見出された(図1を参照)。含侵された繊維を例えばスチーマ中で加熱することによる架橋のステップ中に、SDTBは可溶性になり、従って、フィブリルが分割されることから保護する均一な架橋セルロース繊維の表面フィルムを形成する、と考えられる。均一な架橋された表面が、均質な繊維特性、例えば、染料吸収をもたらすことが見出された。
【0069】
上で言及したように、本発明の方法によって処理されたリヨセル繊維は、安定なフィブリル化特性、すなわち、湿潤摩耗値(NSF)およびCSF値の両方を示すことが見出された。
【0070】
従って、本発明の目的は、本発明による方法によって得られる、すなわち、上で規定する架橋剤で架橋したリヨセル繊維であって、200回転以上の湿潤摩耗値を示し、9分の間ブレンドした後に、ブレンドする前の繊維のml CSFでのカナダ標準ろ水度値の少なくとも80%のml CSFでのカナダ標準ろ水度値を示すことを特徴とする、リヨセル繊維によっても達成される。
【0071】
好ましくは本発明のリヨセル繊維は、400回転以上の湿潤摩耗値を示す。
【0072】
本発明のリヨセル繊維の湿潤摩耗値は、1000まで、2000まで、3000まで、またはそれ以上の回転の量に到達し得る。
【0073】
さらに、本発明によるリヨセル繊維は、好ましくは、ブレンドする前の繊維のml CSFでのカナダ標準ろ水度値の少なくとも80%のml CSFでのカナダ標準ろ水度値を示す。
【0074】
さらに、本発明によるリヨセル繊維が達成するフィブリル化保護は、染色加工など、テキスタイル物品加工の通常適用される多くのステップの条件に、広範囲のpH値にわたって耐えることが見出された。
【0075】
本発明によるリヨセル繊維は、0.9~3.0dtex、好ましくは1.3~1.7dtexの繊度範囲に存在し得る。
【0076】
本発明は、ヤーンおよび布地などのテキスタイル物品を製造するための、本発明によるリヨセル繊維の使用も包含する。
【0077】
さらに、本発明は、本発明によるリヨセル繊維を含有する、ヤーンおよび布地などのテキスタイル物品も包含する。
【実施例
【0078】
試験方法
湿潤摩耗値(NSF)
Helfried Stoverによる出版物:「Zur Fasernassscheuerung von Viskosefasern」Faserforschung and Textiltechnik 19(1968)Issue 10, p.447~452に記載されている方法を用いた。
【0079】
用いる装置は、上で引用した出版物からのLenzing Technik InstrumentsのAbrasion Machine Delta 100である。フィラメントホースに溝が形成されるのを防ぐために、スチール軸は測定中に縦方向に連続的に移動される。
【0080】
フィラメントホースの供給元:Vom Baur GmbH & KG.Marktstraβe 34,D-42369 Wuppertal
【0081】
長さ38mmの20本の繊維を、金属ロール上に1cmの厚さで配置し、予引張おもり(pre-tensing weight)で押し下げる。ロールをビスコースフィラメントヤーンのストッキングで覆い、連続的に湿らせる。測定中にロールを毎分500回転の速度で回し、同時に、繊維軸に斜めに前後に回し、それによっておよそ1cmの振り子の動きが起こる。
【0082】
繊維が擦り切れ、予めかけたおもりが接触を引き起こすまでの回転数を決定する。
【0083】
試験条件
水の流速:8.2ml/分
回転数:500U/分
摩耗角度:40°
予めかけるおもり:50mg
【0084】
20本の繊維の摩耗サイクルの平均値を、測定値として採用する。繊維が擦り切れるまでの回転数が大きいほど、繊維のより少ないフィブリル化が起こっている。
【0085】
カナダ標準ろ水度試験(CSF)
リヨセル繊維のフィブリル化を試験するために、繊維を5mm長さに切断し、3.3gの風乾繊維をメスシリンダー中の1000mlの水道水に入れ、シリンダーの上面を閉じて、シリンダーを3回穏やかに180°反転させた。
【0086】
この繊維懸濁液を、TAPPI T227 om-99によるカナダ標準ろ水度試験装置(Lorentzen & Wetters社、スウェーデンが製造)に移す。温度およびCSF値を測定する。105℃の炉で4時間乾燥後に、試料の重量を決定する。繊維スラリーの濃度および温度を考慮するために、測定したCSF結果の補正を行う。補正は、以下の式に基づく。
【0087】
濃度補正=(X-0.3)×590×(1+(((0.4-X)/0.2)×(C/1000)))×(1-((C-390)/((C0.2)×87000)))
温度補正=(20-T)×4.6×(1-(((400-C))/((C0.25)×61000)))
【0088】
[式中、
X=繊維スラリーの濃度
T=繊維スラリーの温度
C=測定CSF]。
【0089】
次に、2つの得られた補正値を、それぞれ、任意の順序で測定したCSFに加えるかまたはそれから引く。
【0090】
これは、まだ機械的応力をかけられていない、フィブリル化されていない繊維試料に対する湿潤状態でのCSF値を示す。上で言及したように、フィブリル化保護をせず、フィブリル化されていないリヨセル繊維は、約700の開始CSFを示す(Lenzinger Berichte、84(2005)110~115)。
【0091】
繊維を分解するために、500mlの水道水中3.3gのルトロ繊維(lutro fibre)の繊維懸濁液で満たされた、2つの蓋を有する1リットルステンレス鋼容器を備えるブレンダー(Waringブレンダー8011EBモデル38BL41)を、18000RPMの速度でフィブリル化が起こり得るある期間運転する。より長くブレンダーを運転するほど、繊維がフィブリル化する可能性が高い。ブレンドした後、繊維スラリーをメスシリンダーに移し、水道水で希釈して1000mlの懸濁液とし、シリンダーを3回穏やかに180°反転させ、CSFを測定し、値を上述のように補正する。
【0092】
ブレンドの厳格さに関して、ブレンダーユニット/装置を較正しなければならない。
【0093】
この目的のために、標準的なリヨセル繊維の参照試料(1.3dtex/38mm切断長さ、引張り強さ条件付け36cN/tex、伸び条件付け13%、明色、700mlの開始CSFを示す)、例えば、LENZING(商標)リヨセルを用いる。
【0094】
繊維を、それぞれ、4分間および6分間ブレンドし、CSF値を決定する。4分間ブレンドした後のCSF値は200ml未満のはずであり、6分間ブレンドした後のCSF値は100ml未満のはずである。
【0095】
これらの閾値と合致しない場合、用いる装置のブレンド強度を、これらの値に到達するまで適合させる。
【0096】
繊維調製方法1
セルロースとNMMOの水溶液を水性凝固浴槽へ押し出し、リヨセルの1.3dtexフィラメントを形成した。水で洗浄した後、すべての過剰なNMMOを除去し、リヨセルフィラメントを125%の含水率まで圧搾して、20cm長さの繊維の束に切断した。
【0097】
繊維調製方法2
セルロースとNMMOの水溶液を水性凝固浴槽へ押し出し、リヨセルの1.3dtexフィラメントを形成した。フィラメントを水で洗浄し、すべての過剰なNMMOを除去し、150~200%の含水率まで圧搾し、次にさらに処理した。
【0098】
実施例1
リヨセルのフィラメントを繊維調製方法2によって製造し、次に、セルロースに対して8.3重量%のSDTBを50℃の温度で水循環装置に投入して、水性ペースト状懸濁液の40g/lの濃度を示す、第1の含浸槽へ通過させた。フィラメントを110~140%の含水率まで圧搾し、次に、セルロースに対して1.34重量%のNaOHおよび1.1重量%のNaCOを水循環装置に投入した、10℃の第2の含浸槽を通過させた。次に、フィラメントを160~190%の含水率まで圧搾し、蒸気チャンバー内で100℃まで9分間加熱し、次に酸性水(pH3.5)を添加し、次に水によって過剰な化学物質がなくなるまで徹底的に洗浄し、乾燥した。
【0099】
実施例2
リヨセルのフィラメントを繊維調製方法2によって製造し、次に、セルロースに対して8.3重量%のSDTBを35℃の温度で水循環装置へ投入して、水性ペースト状懸濁液の40g/lの濃度を示す、第1の含浸槽へ通過させた。フィラメントを180~210%の含水率まで圧搾し、次に、セルロースに対して1.34重量%のNaOHおよび1.1重量%のNaCOを水循環装置へ投入した、10℃の第2の含浸槽を通過させた。次に、フィラメントを170~200%の含水率まで圧搾し、蒸気チャンバー内で100℃まで8.5分間加熱し、次に酸性水(pH3.5)を添加し、次に水によって過剰な化学物質がなくなるまで徹底的に洗浄し、乾燥した。
【0100】
実施例3:EP0538977、実施例4fによる参照例
リヨセルのフィラメントを、繊維調製方法1によって製造した。30gの全く乾燥されていないリヨセル繊維の束を、Thiotan Rの70℃の温溶液、NaCOの70℃溶液およびNaSOの70℃溶液を合わせて作製した(最終濃度:50g/lのThiotan R(=13g/lのSDTB)、20g/lのNaCO、100g/lのNaSO)600gの水性槽において、70℃で30秒間含浸した。繊維をフーラード上で3barで圧搾し、蒸気チャンバー内で102℃まで20分間加熱した。フィラメントを、1g/lの濃度の酢酸水溶液600gで洗浄して中性にした。繊維を60℃で終夜乾燥した。
【0101】
参照例4
リヨセルのフィラメントを繊維調製方法2によって製造し、次に、セルロースに対して9.5重量%のSDTB、2.7重量%のNaOHおよび1.1重量%のNaCOを10℃の温度で水循環装置へ投入して、92g/lのSDTBの濃度を示す含浸槽へ直接通過させた。SDTBは、槽において50%を超える程度まで溶解した。次に、フィラメントを150~170%の含水率まで圧搾し、蒸気チャンバーを使用して100℃まで8.5分間加熱し、次に酸性水(pH3.5)を添加し、次に水によって過剰な化学物質がなくなるまでフィラメントを洗浄し、乾燥した。
【0102】
実施例5
リヨセルのフィラメントを繊維調製方法2によって製造し、次に、セルロースに対して8.1重量%のSDTBおよび0.35重量%のNaOHを50℃の温度で水循環装置へ投入して、58g/lの水性ペースト状懸濁液の濃度を示す、第1の含浸槽へ通過させた。フィラメントを160~190%の含水率まで圧搾し、次に、セルロースに対して1.2重量%のNaOHおよび1.1重量%のNaCOを水循環装置へ投入した、10℃の第2の含浸槽を通過させた。次に、フィラメントを160~190%の含水率まで圧搾し、蒸気チャンバー内で100℃まで8.5分間加熱し、次に、酸性水(pH3.5)を添加し、次に水によって過剰な化学物質がなくなるまで徹底的に洗浄し、乾燥した。
【0103】
繊維の湿潤摩耗値(NSF)およびCSF値に関して、繊維を分析した。結果を以下の表で比較する。
【0104】
【表1】
【0105】
参照例3は、EP0538977から公知の現況技術による例である。これらの繊維の湿潤摩耗値は十分に見える一方で、CSF値はブレンドの9分後に著しく下がることが分かる。
【0106】
参照例4では、接触させるステップで用いた条件に起因して、SDTBの50%を超える部分が溶解した。ここでも、CSF値の著しい減少が観察される。
【0107】
実施例1、2および5は、本発明による実施例である。すべての実施例は十分な湿潤摩耗値を示すが、加えて、ブレンド後もまだ非常に高い、すなわちブレンドの9分後で、もとの値の85%を超えるCSF値を示している。
【0108】
布地加工ステップに対するフィブリル化特性の耐性
本発明による繊維を、編物に加工した。
【0109】
編物を、酸性およびアルカリ性環境の両方を含む、布地に一般的な様々な湿潤加工処理に供した。編物の表面は、フィブリル化またはもつれたフィブリルの毛玉(pill)によってもたらされる毛状外観を示すことなく清浄に保たれることが、光学的評価によって見出され、湿潤摩耗値によって決定されるように、反応性(アルカリ性)染色およびポリエステルの染色に好適な条件(酸染色)下での染色などの、様々な条件に供された後、フィブリル化特性は少なくともある程度まで保護が保たれることが見出された。
【0110】
本発明による繊維からのリング糸Nm50/1アルファ105を使用して、約130gsmの坪量を有するシングルジャージー布地を製造した。
【0111】
染色の前に、布地試料を、スイス、Mathis社製Labomat Type BFA-12を使用して、浴比1:30、回転20rpmで、5リットルのビーカー中で80℃で20分間洗浄した。
【0112】
以下の洗浄溶液:1g/lのテキスタイル仕上げ用洗剤、例えば、BASF社商標のKieralon JET、1g/lの炭酸ナトリウム、1g/lのHuntsman社製Albaflow FFAのような湿潤剤、および1g/lの潤滑剤、例えばTanatex Chemicals社製Persoftal L を調製した。洗浄後、布地を加温および冷却してすすいだ。
【0113】
布地の染色も、5リットルのビーカー中、Labomat Type BFA-12にて、浴比1:30、回転20rpmで実行した。
【0114】
実施例1 加温反応性染色(アルカリ性)
軟水を使用する染浴の組成:
4.0%のHuntsman社商標のNovacron marineblau FG
40g/lの硫酸ナトリウム(塩)
6g/lの炭酸ナトリウム
1g/lの潤滑剤
1g/lの消泡剤
【0115】
布地および染浴を、ラボマット(labomat)中で毎分6℃の加熱速度で60℃まで加熱した。染浴が60℃に到達したら、染料、潤滑剤および消泡剤を添加した。25分後に塩を添加し、5分後に炭酸ナトリウムを添加した。15分後、60℃で槽を排出させ、布地を20℃の水中で10分間すすぎ、次に排出した。次に、布地を1ml/lの酢酸(60%)で40℃で10分間処理した。次に水を排出し、次に布地を40℃の水で10分間すすいだ。この槽を排出させ、次に、ソープニング(soapening)を行い、これは、布地を洗浄液(軟水中1g/lのKieralon JET)で、90℃で処理したことを意味する。槽を排出させ、布地を最後の1回、20℃の水道水で10分間すすぎ、次に、排出した。次に、布地をニードル枠に掛け、室温で乾燥させた。
【0116】
この手順の後、青色の布地の表面はフィブリル化を示すことなく完全に清浄に保たれた。染色された布地から取り出された繊維は、染色の前のもとの繊維のNSF値と比較して、NSF値の低下を示さなかった。
【0117】
染色された布地の洗濯性能は、家庭用洗濯機中40℃で中性洗剤を使用して、10回の家庭用洗濯を行うことによって試験した。各洗濯ステップの後、布地を回転式乾燥機で乾燥した。この手順の後、目視検査は、布地の表面はまだ良好であり、毛玉または灰色化は見られず、単に小さな無視できる繊維のスプライスのみが見られることを示した。
【0118】
実施例2 高温酸染色(「ポリエステル染色」)
軟水を使用する染浴の組成:
1.0%のDyStar社商標Dianix blue FBL
1g/lの酢酸ナトリウム
1g/lの潤滑剤
1g/lのアニオン性しわ防止剤
酢酸で、染浴のpHを4.5に調節。
【0119】
布地とともに染浴を毎分2℃の加熱速度で130℃まで加熱し、130℃で60分間保持した。毎分2℃で70℃に冷却後、加温および冷却すすぎを行い、続いて還元洗浄(reductive cleaning)した。
【0120】
還元洗浄浴の組成:
2g/lのヒドロ亜硫酸ナトリウム
2ml/lの34%パーセントカセイソーダ溶液
1g/lの潤滑剤
【0121】
布地および液比1:30を有する清浄浴を、20rpmのラボマット中で、80℃まで6℃/分で加熱した。20分後、80℃で槽を排出させ、布地を20℃の水中で10分間すすぎ、次に排出した。次に布地を、1ml/lの酢酸(60%)で、40℃で10分間処理した。次に水を排出し、次に布地を40℃の水で10分間すすいだ。この槽を排出させ、布地を最後に20℃の水で10分間すすぎ、次に排出した。次に布地をニードル枠に掛け、室温で乾燥させた。
【0122】
この手順の後、淡い青色の布地の表面は完全に清浄に保たれ、フィブリル化を示さなかった。染色された布地から取り出した繊維は、染色前のもとの繊維のNSF値と比較してNSF値の低下を示さなかった。
【0123】
染色された布地の洗濯性能は、家庭用洗濯機中40℃で中性洗剤を使用して、10回の家庭用洗濯を行うことによって試験した。各洗濯ステップの後、布地を回転式乾燥機で乾燥した。この手順の後、目視検査によれば、布地の表面は、洗濯の前の染色された布地と異なっていなかった。酸性の染色条件は、布地の洗濯性能にマイナスの影響を与えない。
図1
図2
【国際調査報告】