(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】コンパクトに配置されたアクチュエータを有する付加製造機
(51)【国際特許分類】
B29C 64/255 20170101AFI20220121BHJP
B33Y 30/00 20150101ALI20220121BHJP
B29C 64/153 20170101ALI20220121BHJP
B29C 64/232 20170101ALI20220121BHJP
B29C 64/245 20170101ALI20220121BHJP
【FI】
B29C64/255
B33Y30/00
B29C64/153
B29C64/232
B29C64/245
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532397
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(85)【翻訳文提出日】2021-06-08
(86)【国際出願番号】 FR2019052978
(87)【国際公開番号】W WO2020120888
(87)【国際公開日】2020-06-18
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】517160927
【氏名又は名称】アッドアップ
(74)【代理人】
【識別番号】100094569
【氏名又は名称】田中 伸一郎
(74)【代理人】
【識別番号】100103610
【氏名又は名称】▲吉▼田 和彦
(74)【代理人】
【識別番号】100109070
【氏名又は名称】須田 洋之
(74)【代理人】
【識別番号】100098475
【氏名又は名称】倉澤 伊知郎
(74)【代理人】
【識別番号】100130937
【氏名又は名称】山本 泰史
(74)【代理人】
【識別番号】100144451
【氏名又は名称】鈴木 博子
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルラント ジル
(72)【発明者】
【氏名】オルソマー デヴィッド
(72)【発明者】
【氏名】エッフェルネッリ アルビン
【テーマコード(参考)】
4F213
【Fターム(参考)】
4F213AC04
4F213WA25
4F213WB01
4F213WL03
4F213WL13
4F213WL72
4F213WL73
4F213WL74
(57)【要約】
本発明は、粉体床溶融式付加製造機に関し、付加製造機は、作業面(42)と、作業面からその下方に延びる構造スリーブ(44)と、アクチュエータ(48)の作用のもとで、構造スリーブ内で上昇位置と下降位置との間で並進運動する構造プラットフォーム(46)とを備え、プラットフォームは、支持体(50)によってアクチュエータに結合される。構造スリーブ(44)は、構造プラットフォームが構造スリーブ内で上昇位置から下降位置に並進運動する場合に、支持体(50)が構造スリーブを貫通してプラットフォームをアクチュエータに結合するのを可能にするその高さ内のスロット(66)と、プラットフォームが、スリーブ内で上昇位置から下降位置に並進運動を行う際に、スリーブ内のスロット(66)を漸進的に閉鎖する、閉鎖テープ(70)である閉鎖要素(68)とを備え、閉鎖テープ(70)の上端(U70)が構造スリーブの上縁(U44)に又は作業面(42)に固定される。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
粉体床溶融式付加製造機(40)であって、
作業面(42)と、前記作業面からその下方に延びる構造スリーブ(44)と、アクチュエータ(48)の作用のもとで、前記構造スリーブ内で上昇位置と下降位置との間で並進運動する構造プラットフォーム(46)と、を備え、
前記プラットフォームは、支持体(50)によって前記アクチュエータに結合され、
前記構造スリーブ(44)は、前記構造プラットフォームが前記構造スリーブ内で上昇位置から下降位置に並進運動する場合に、前記支持体(50)が前記構造スリーブを貫通して前記プラットフォームを前記アクチュエータに結合するのを可能にするその高さ(H44)内のスロット(66)と、前記プラットフォームが、前記スリーブ内で上昇位置から下降位置に並進運動を行う際に、前記スリーブ内のスロット(66)を漸進的に閉鎖する、閉鎖テープ(70)である閉鎖要素(68)と、を備え、
前記付加製造機は、前記閉鎖テープ(70)の上端(U70)が前記構造スリーブの上縁(U44)に又は前記作業面(42)に固定される、
ことを特徴とする粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項2】
前記閉鎖テープの下端(B70)は、テープ張力装置(72)に結合される、
請求項1に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項3】
前記テープ張力装置(72)は、前記構造スリーブ(44)の内部でかつ前記構造プラットフォーム(46)の真下に配置される、
請求項2に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項4】
前記テープ張力装置(72)は、前記テープの前記下端(B70)を前記付加製造機の固定部分(78)に結合する少なくとも1つのバネ(76)と、前記テープを押し付ける板バネ(80)とを備える、
請求項2又は3に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項5】
前記プラットフォーム(46)を前記アクチュエータ(48)に連結する前記支持体(50)は、前記テープ(70)上の力に対抗する端部停止部(84)を備え、前記支持体の前記端部停止部(84)によってテープ上に与えられた反作用力(F3)は、前記テープを押し付ける前記張力装置の板バネ(80)によって与えられた押付力F2に対抗する、
請求項4に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項6】
前記テープが前記構造スリーブと前記プラットフォームとの間を通過できるように、機能的隙間(88)が、前記構造スリーブ(44)と前記プラットフォームとの間に設けられる、
請求項1から5のいずれか1項に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項7】
前記テープ(70)は、所定長さの金属ストリップの形態をとる、
請求項1から6のいずれか1項に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項8】
前記閉鎖要素(68)は、前記プラットフォームが、前記構造スリーブ内で漸進的に並進運動を行う際に製造された被覆壁(104)をさらに備える、
請求項1から7のいずれか1項に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項9】
前記構造スリーブ内で前記プラットフォームの並進運動を引き起こす前記アクチュエータ(48)は、前記構造スリーブ(44)の外側に位置する、
請求項1から8のいずれか1項に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項10】
前記構造スリーブ内で前記支持体(50)を介して前記プラットフォームの並進運動を引き起こす前記アクチュエータ(48)に関して、前記アクチュエータは、前記プラットフォーム(46)が前記構造スリーブ内で下降位置にある場合、前記支持体(50)の上方に広がる、
請求項1から9のいずれか1項に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項11】
前記構造スリーブ内で前記プラットフォームの並進運動を引き起こす前記アクチュエータ(48)は、前記作業面の下に広がる、
請求項10に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項12】
前記構造スリーブ内で前記支持体(50)を介して前記プラットフォームの並進運動を引き起こす前記アクチュエータ(48)に関して、前記アクチュエータは、前記プラットフォーム(46)が前記構造スリーブ内で上昇位置にある場合、前記支持体(50)の下に広がる、
請求項11に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項13】
前記アクチュエータは、モーターによって回転駆動されるねじ付きスピンドル(90)の形態をとり、前記支持体は、前記ねじ付きスピンドルにねじ込まれるナット(92)を備える、
請求項1から12のいずれか1項に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項14】
前記構造プラットフォーム(46)は、複数のアクチュエータ(48-1、48-2、48-3)の作用のもとで、前記構造スリーブ(44)内で上昇位置と下降位置との間を並進運動し、前記プラットフォームは、前記支持体(50)によって前記アクチュエータの各々に結合され、前記構造スリーブは、前記構造プラットフォームが前記構造スリーブ内で上昇位置から下降位置に並進運動を行う際に、前記支持体(50)が、前記構造スリーブを貫通して前記構造プラットフォームを前記アクチュエータ(48-1,48-2,48-3)の各々に結合するのを可能にする、その高さ内で複数のスロット(66-1、66-2、66-3)を備える、
請求項1から13のいずれか1項に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【請求項15】
前記構造プラットフォームは、前記構造スリーブの周りに均等に分散配置され3つのアクチュエータ(48-1、48-2、48-3)の作用のもとで、前記構造スリーブ内で上昇位置と下降位置との間で並進運動を行う、
請求項14に記載の粉体床溶融式付加製造機(40)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンパクトな配置の粉体床溶融式付加製造機に関する。より詳細には、本発明は、その上部で構成要素が粉体床溶融式付加製造法を使用して製造されるプラットフォームを動かすための1又は2以上のアクチュエータのコンパクトな配置に関する。
【背景技術】
【0002】
図1及び2は、従来の公知の粉体床溶融式付加製造機10を示す。この付加製造機10は、構造チャンバ11の内部に、重ね合わされる粉体の様々な層を受け取ることができる作業ゾーン14を備える作業面12と、粉体層を固化するための選択的固化装置16とを備える。
【0003】
作業ゾーン14は、構造スリーブ18及び構造プラットフォーム20によって画定される。構造スリーブ18は、作業面12の真下に垂直に延びて作業面に開口する。構造プラットフォーム20は、ラム22の作用のもとで構造スリーブ18の内部で垂直方向に摺動する。構造プラットフォーム20は、支持体24によってラム22上に取り付けられる。
【0004】
付加製造機10は、作業面12上に粉体のラインCを堆積させることができる粉体分配装置26と、粉体のラインCを作業ゾーン14上に分散することができる粉体分散装置28とを備えることができる。また、付加製造機10は、粉体の各層の生成において堆積された、余分な粉体を回収することができる容器30を備える。
【0005】
製造開始時、
図1に示すようにラムは完全に伸びており、構造プラットフォーム20は、作業面の平面に位置する。
製造終了時、
図2に示すように、構造プラットフォーム20は、構造スリーブ18の底部に位置し、ラムは完全に収縮している。
【0006】
図2に示すように、作業面の高さは、構造スリーブの高さと完全に収縮した場合のラムの高さの合計で決まる。
プラットフォームが構造スリーブの全高を移動するのを可能にするために、ラムは、少なくとも構造スリーブの高さに等しいストロークをもつ必要がある。
【0007】
その結果、完全に収縮した場合のラムの高さ方向の嵩は、少なくとも構造スリーブの高さに等しく、作業面は、少なくとも構造スリーブの高さの2倍に等しい高さに位置する必要がある。
【0008】
従来のラムによる構造プラットフォームの並進運動の駆動には欠点がある。
一方で、作業面の高さ及び機械の全体的な嵩を低減するためには、構造スリーブの高さを、従って製造される部品の高さを低減する必要があり、これは付加製造機の生産能力の改善を妨げるものである。
【0009】
他方で、より高さの高い部品を製造するためには、構造スリーブの高さ及びラムのストロークを大きくする、従って、構造スリーブの高さを追加しかつラムのストロークを追加することで作業面を持ち上げる必要があり、これは作業面のアクセス容易性を妨げ、付加製造機の全体的な嵩を低減させる能力を妨げるものである。
【0010】
国際公開第2018/007941号は、機械の作業面を過度に持ち上げることなく、非常に高い部品を製造することを可能にする構成を提示する。この構成において、構造スリーブの外部に位置するアクチュエータは、この目的で構造スリーブの高さに設けられたスロットを介してスリーブの壁を貫通する支持体によって構造プラットフォームに結合する。プラットフォームが漸進的に降下すると、構造プラットフォームに固定された金属ストリップは、構造スリーブのスロットを閉鎖し始める。
【0011】
その結果、国際公開第2018/007941号に提示された構成によって、閉鎖ストリップは、製造開始時に、その全長に従って作業面の上に飛び出し、プラットフォームと同じくこのような箇所がスリーブ内の最低位置に到達するまで作業面上に飛び出し続ける。
【0012】
このように作業面の上に飛び出すことで、国際公開第2018/007941号に提示された閉鎖ストリップは、溶融による粉体の選択的固化に起因する煙霧を除去するために使用される空気流の流れを妨げ、これらのストリップは、構造プラットフォームの上の粉体層の分散を悪化させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0014】
本発明の目的は、作業面を上昇させることなく及び機械の全体的な嵩を増大させることなく、構造スリーブの高さ、従って製造される部品の高さを増大させることができる構成の粉体床溶融式付加製造機を提供することである。
【0015】
もしくは、本発明は、構造プラットフォームがラムによって並進運動で駆動される従来の機械と同様に、構造スリーブを同じ高さに維持し、従って同じ部品製造能力を維持しながら、作業面の高さ、従って機械の全体的な嵩を低減するのを可能にする構成の粉体床溶融式付加製造機を提示する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
好都合には、本発明は、溶融による粉体の選択的固化に起因する煙霧を除去するために使用される空気流の流れを妨げるのを回避しながら及び構造プラットフォームの上の粉体層の分散が悪化するのを回避しながら、同時に上記の目的を達成することができる。
【0017】
この目的のために、本発明の主題は、粉体床溶融式付加製造機であり、この付加製造機は、作業面と、作業面からその下方に延びる構造スリーブと、アクチュエータの作用のもとで、構造スリーブ内で上昇位置と下降位置との間を並進運動する構造プラットフォームとを備え、プラットフォームは、支持体によってアクチュエータに結合され、構造スリーブは、構造プラットフォームが構造スリーブ内で上昇位置から下降位置に並進運動する場合に、支持体が構造スリーブを貫通してプラットフォームをアクチュエータに結合するのを可能にするその高さ内のスロットと、プラットフォームが、スリーブ内で上昇位置から下降位置に並進運動を行う際に、スリーブ内のスロットを漸進的に閉鎖する、閉鎖テープである閉鎖要素と、を備える。
【0018】
本発明によれば、閉鎖テープの上端は、構造スリーブの上縁に又は作業面に固定される。
【0019】
構造スリーブ内のスロットによって、アクチュエータは、構造スリーブの隣に位置することができ、構造スリーブの真下に空間を確保するこができる。このように確保された空間は、作業面の高さを低減するために、従って機械の全体的な嵩を低減するために利用することができ、又は構造スリーブの高さを増加させるために、従って製造される部品の高さを増加させるために利用することができる。
【0020】
閉鎖テープの上端を構造スリーブの上縁又は作業面に固定することは、この閉鎖要素が、機械の作業面の上の空気流の流れを妨害しないこと又は構造プラットフォーム上の粉体層の分散を妨害しないことを保証する。
【0021】
また、本発明は以下を規定する。
-閉鎖テープの下端が、テープ張力装置に結合する。
-テープ張力装置が、構造スリーブ内部かつ構造プラットフォームの真下に位置する。
-テープ張力装置が、テープの下端を機械の固定部分に結合する少なくとも1つのバネと、テープを押し付ける板バネとを備える。
-プラットフォームをアクチュエータに連結する支持体は、テープ上の力に対抗する端部停止部を備え、支持体の端部停止部によってテープ上に与えられた反作用力は、テープを押し付ける張力装置の板バネによって与えられた押付力に対抗する。
-テープが構造スリーブとプラットフォームとの間を通過できるように、機能的隙間が、構造スリーブとプラットフォームとの間に設けられる。
-テープは、所定長さの金属ストリップの形態をとる。
-閉鎖要素は、プラットフォームが、構造スリーブ内で漸進的に並進運動を行う際に製造された被覆壁をさらに備える。
-構造スリーブ内でプラットフォームの並進運動を引き起こすアクチュエータは、構造スリーブの外側に位置する、
-構造スリーブ内で支持体を介してプラットフォームの並進運動を引き起こすアクチュエータに関して、アクチュエータは、プラットフォームが構造スリーブ内で下降位置にある場合、支持体の上方に広がる。
-構造スリーブ内でプラットフォームの並進運動を引き起こすアクチュエータは、作業面の下に広がる。
-構造スリーブ内で支持体を介してプラットフォームの並進運動を引き起こすアクチュエータに関して、アクチュエータは、プラットフォームが構造スリーブ内で上昇位置にある場合、支持体の下に広がる。
-アクチュエータは、モーターによって回転駆動されるねじ付きスピンドルの形態をとり、支持体は、ねじ付きスピンドルにねじ込まれるナットを備える。
-構造プラットフォームは、複数のアクチュエータの作用のもとで、構造スリーブ内で上昇位置と下降位置との間を並進運動し、プラットフォームは、支持体によってアクチュエータの各々に結合され、構造スリーブは、構造プラットフォームが構造スリーブ内で上昇位置から下降位置に並進運動を行う際に、支持体が、構造スリーブを貫通して構造プラットフォームをアクチュエータの各々に結合するのを可能にする、その高さ内で複数のスロットを備える。
-構造プラットフォームは、構造スリーブの周りに均等に分散配置され3つのアクチュエータの作用のもとで、構造スリーブ内で上昇位置と下降位置との間で並進運動を行う。
【0022】
本発明のさらなる特徴及び効果は、以下の説明から明らかになるであろう。この非限定的な説明は、添付図面を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【
図1】従来技術の粉体床溶融式付加製造機の概略的な正面断面図であり、構造プラットフォームは上昇位置にある。
【
図2】従来技術の粉体床溶融式付加製造機の概略的な正面断面図であり、構造プラットフォームは下降位置にある。
【
図3】本発明による粉体床溶融式付加製造機の概略的な正面断面図であり、構造プラットフォームは上昇位置にある。
【
図4】本発明による粉体床溶融式付加製造機の概略的な正面断面図であり、構造プラットフォームは下降位置にある。
【
図5】本発明によるテープの形態の閉鎖要素が構造スリーブ内のスロットを閉鎖することができる粉体床溶融式付加製造機の概略的な正面断面図である。
【
図6】本発明によるテープの形態の閉鎖要素が構造スリーブ内のスロットを閉鎖することができる粉体床溶融式付加製造機の斜視断面図である。
【
図7】本発明による被覆壁の形態の閉鎖要素が構造スリーブ内のスロットを閉鎖することができる粉体床溶融式付加製造機の概略的な正面断面図である。
【
図8】本発明による複数のスロット及び複数のアクチュエータを備える粉体床溶融式付加製造機の構造スリーブの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
本発明は、粉体床溶融式付加製造機に関する。粉体床溶融式付加製造は、1又は2以上の部品が付加製造用粉体の様々な相互に重ね合わされた層の選択的固化によって製造される、付加製造法である。固化は、製造されることになる部品のセクションに対応する粉体層のゾーンのみが固化されるという理由で選択的と言われる。
【0025】
例えば、1又は2以上の部品は、付加製造用粉体の様々な相互に重ね合わされた層の選択的溶融によって製造される。溶融は、全て又は部分的とすることができる(焼結)。選択的溶融は、レーザービームを用いて(選択的レーザー溶融)、及び/又は電子ビームを用いて(電子ビーム溶融)得ることができる。
【0026】
粉体床溶融式付加製造を実施するために、本発明による付加製造機40は、作業面42と、作業面からその下方に延びる構造スリーブ44と、アクチュエータ48の作用のもとで構造スリーブの内部で上昇位置(
図3に示す)と下降位置(
図4に示す)との間で並進運動する構造プラットフォーム46とを備える。プラットフォーム46は、支持体50によってアクチュエータ48に結合される。
【0027】
プラットフォーム46は、アクチュエータ48の作用のもとで構造スリーブの内部で漸進的に下降する間に粉体の様々な層の重ね合わせを受け取ることができる。
【0028】
粉体層の選択的固化のために、付加製造機40は、少なくとも1つの供給源54から放出された少なくとも1つのビーム52を備える。例えば、ビーム52は、レーザー光源から放出されたレーザービームである。変形例として、例えば、半導体レーザーなどの複数のビーム52は、複数のレーザー光源から放出することができる。さらなる変形例として、ビーム52は、電子銃から放出された電子ビームとすることができる。また、1又は2以上のレーザービームは、1又は2以上の電子ビームと組み合わせることができる。粉体層の選択的固化、すなわち製造される部品のセクションに対応する所定のパターン及び経路に従う固化を可能にするために、供給源54は、1又は複数のビーム52を動かして制御するための手段と関連する。例えば、ミラー、光学レンズ、及び/又は機械的アクチュエータは、1又は2以上のレーザービームを動かして変更するために使用することができるが、電磁石コイルは、電子ビームを動かして制御するために使用することができる。
【0029】
作業面42は水平である。スリーブ44は、作業面42の真下で垂直方向に、すなわち垂直軸に沿って延びる。例えば、スリーブ44は、作業面に形成された開口によって作業面42上で開口する。
【0030】
図3及び4に示す実施例において、作業面42及びスリーブ44は、固定的に取り付けられ、構造プラットフォーム46は、スリーブ44内でアクチュエータ48の作用のもとで垂直方向に並進運動する。
【0031】
製造される1又は複数の部品の付加製造に使用される粉体の様々な層を作るために、付加製造機40は、作業面42上に少なくとも1つの粉体のラインCを堆積することができる粉体分配装置56と、分配装置によって堆積された粉体のラインをプラットフォーム46上に分散させることができる粉体分散装置58とを備える。
粉体分配装置56は、作業面42の上を移動することができるインジェクタ、又は粉体計量装置に関連し、作業面に形成された溝の中を摺動するドロワー(drawer)の形態をとることができる。
【0032】
分散装置58は、スクレーバー又はキャリッジ62上に取り付けられたローラー60の形態をとる。このキャリッジ62は、作業面42上で長手方向かつ水平方向に並進運動することができるように取り付けられている。
【0033】
また、付加製造機40は、各粉体層の生成において堆積された、余分な粉体を回収することができる容器64を備える。
【0034】
回転対称を示す部品を製造するために、又は電子ビーム溶融付加製造を目的として真空に耐えるための構造スリーブ44の機械的性能を改善するために、構造スリーブ44は、直円柱の形態をとることができる。また、構造スリーブ44は、多角形、矩形、方形,楕円形などのベース上の他の直円柱の形態をとることもできる。
【0035】
アクチュエータ48と並行して、付加製造機は、スリーブ内のプラットフォームの並行運動を案内する案内装置94を備え、プラットフォームは、支持体50によって案内装置94に結合される。案内装置94は、支持体50上に固定されかつ垂直案内レール98上に取り付けられたランナー96を備える。
【0036】
本発明によれば、構造スリーブ44は、その高さH44内にスロット66を備え、スロット66は、構造プラットフォームが構造スリーブ内で上昇位置から下降位置に並進運動する場合に、支持体50が、構造スリーブを貫通してプラットフォーム46をアクチュエータ48に連結することを可能にする。また、スロット66は、構造プラットフォームが構造スリーブ内で下降位置から上昇位置に並進運動する場合に、支持体50が、構造スリーブを貫通してプラットフォーム46をアクチュエータ48に連結することを可能にする。
【0037】
構造スリーブ44は、作業面42の真下に垂直に延びるので、スロット66も同様に垂直に延びる。例えば、スロット66は、構造スリーブ44の全高H44にわたって延びる。例えば、スロット66は、直線様式で構造スリーブ44の全高H44にわたって延びる。
【0038】
縮尺比の着想を与えるために、スロット66の幅は数ミリメートルであり、スリーブの高さH44は、数十センチメートルである。
【0039】
好都合には、
図3及び4に示すように、スロット66により、アクチュエータ48は、構造スリーブ44の真下ではなく、それに隣接して位置することができる。
【0040】
製造過程において非固化の粉体をスリーブの内部に保持するために、プラットフォームがスリーブの内部で上昇位置から下降位置に並進運動を行う際に、閉鎖要素68は、スリーブ内のスロット66を漸進的に閉鎖することができる。また、プラットフォームがスリーブの内部で下降位置から上昇位置に並進運動を行う際に、閉鎖要素68は、スリーブ内のスロット66を漸進的に閉鎖することができる。
【0041】
図5及び6に示すように、閉鎖要素68は、例えばテープ70である。例えば、このテープ70は、所定の長さの金属ストリップの形態をとる。もしくは、このテープ70は、ケブラーで作られている。テープは、例えば、厚さ0.5ミリメートル及び幅50ミリメートルである。
【0042】
スロット66の最適な閉鎖のために、テープ70の幅はスロットの幅よりも大きい。例えば、テープ70の幅は、これがカバーするスロットの幅よりも40%以上大きい。例えば、35ミリメートルの幅のスロットに関して、テープの幅は50ミリメートルである。
【0043】
閉鎖テープの上端U70は、例えば、ねじを使用して、構造スリーブの上縁U44又は作業面42に固定される。
【0044】
同時に、テープ70はまた、構造プラットフォーム46によって構造スリーブ44の内壁74にぴったり押し付けられる。
【0045】
さらに、スロット66の最適な閉鎖、及びプラットフォームがスリーブの中を漸進的に下降する際に粉体がスロット66を通って漏洩するのを防ぐことを目的として、閉鎖テープの下端B70は、テープ張力装置72に結合される。
【0046】
テープ70は、構造スリーブ44と構造プラットフォーム46との間に、すなわちスリーブ44の内部に横たわる。また、テープ張力装置72は、構造スリーブ44の内部で、構造プラットフォーム46の真下に位置する。
【0047】
テープ70を構造スリーブ44の内壁74に押し付けた状態にするために、テープ張力装置72は、テープの下端B70を機械の固定部分78に結合する少なくとも1つのバネ76と、テープを押し付ける板バネ80とを備える。バネ76は、その弾性特性の結果として力を及ぼす構成要素である。バネ76は、コイルバネ、バネ板、ラムとすることができる。バネ76は、テープにその長さに沿って張力を加えるように、テープ70上に実質的に垂直かつ下向きの緊張力F1を加える。板バネ80は、テープ70を構造スリーブ44の内壁74に対してぴったり押し付けるように、構造スリーブ44の内壁74に向けられた実質的に水平の押付力を加える。
【0048】
図6に示すように、緊張力をテープの上に分配するために、テープ張力装置72は、テープの下端B70を機械の固定部分78に結合する複数のバネ76を備える。
【0049】
プラットフォーム46の並進運動を伴い、スリーブ44の内部のプラットフォームのどの位置でもプラットフォーム46にできるだけ接近してその力をテープに加えるために、板バネ80は、支持体50上に取り付けられている。例えば、板バネ80の上端U80は、プラットフォーム46の直下でテープ70を押し付ける。板バネ80の上端U80には、テープに対する板バネの摩擦の制限を目的とするシュー82が取り付けられている。
【0050】
スリーブ44内のプラットフォーム及び支持体のどのような位置でも下端B70及び1又は複数のバネ76を同じ垂直面に保持するために、プラットフォーム46をアクチュエータ48に結合する支持体50は、テープ70上の力に対抗する端部停止部84を備える。支持体の端部停止部84によってテープ上に与えられた反作用力F3は、テープを押し付ける張力装置の板バネ80によって与えられた押付力F2に対抗する。反作用力F3は、構造スリーブ44の内壁74から離れてテープ70を押すように、実質的に水平であり構造スリーブ44の内部に向けられる。端部停止部84には、テープに対する端部停止部84の摩擦の制限を目的とするシュー86を取り付けることができる。
【0051】
閉鎖テープの上端U70が構造スリーブの上縁U44及び/又は作業面42に固定されるので、及びテープの下端B70がプラットフォーム46の下方で機械の固定部分78に固定されるので、テープ70は、プラットフォーム46と構造スリーブ44との間を通過する必要がある。構造スリーブ44とプラットフォームとの間の機能的隙間88により、プラットフォームは、詰まることなくスリーブ内で並進運動を行うことができる。詳細には、この機能的隙間88は、プラットフォームの外周とスリーブの内壁との間に設けられる。この機能的隙間88は、1又は2以上のテープ70が構造スリーブ44とプラットフォーム46との間を通過できるようにするのに十分なものである。そうでなければ、機能的隙間88の大きさは、1又は2以上のテープ70が構造スリーブ44とプラットフォーム46との間を通過できるように増やすことができる。1又は2以上のテープ70の通過を可能にする機能的隙間88は、例えば、2から5ミリメートルである。
【0052】
機能的隙間88の別の方法として、テープがスリーブとプラットフォームとの間を通過できるように、プラットフォームの外周に垂直溝を設けること、又はスリーブの内壁に垂直溝を設けることができる。
【0053】
図6は、支持体50が構造プラットフォーム46を支持し、同時にテープ70がスリーブ44とプラットフォームとの間を通過することができる方法を示す。このために、テープ70の下端B70は、スリーブ44の中心に向かってオフセットしている。テープ70の下端B70がスリーブ44の中心に向かってオフセットすることで、支持体は、プラットフォーム46を支持するために、スリーブ44に入り、スリーブの内壁74とテープ70との間を通過することができる。
【0054】
図7に示すように、閉鎖要素68は、プラットフォームが構造スリーブ内で漸進的に並進運動を行うときに製造された被覆壁104の形態をとることもできる。詳細には、被覆壁104は、スロット66に面して焼結又は溶融によって、固化したいくらかの量の粉体で構成されている。被覆壁104は、部品Pがプラットフォーム46上で製造される際に同時に付加製造される。被覆壁104は、例えば、数ミリメートルの厚さ及び50ミリメートルの幅である。スロット66の最適な閉鎖のために、被覆壁104の幅はスロットの幅よりも大きい。例えば、被覆壁104の幅は、これがカバーするスロットの幅より40%以上大きい。例えば、35ミリメートルの幅のスロットに関して、被覆壁104の幅は50ミリメートルである。
【0055】
また、閉鎖要素68は、テープ70及び被覆壁104の両方を有することができる。この場合、テープ70はスリーブの内壁に接触し、壁104はテープ70をカバーする。
【0056】
種々の図面に示すように、スロット66は、支持体50がスリーブ46の全高にわたってスリーブ46を貫通するのを可能にするので、構造スリーブ44内でプラットフォーム46の並進運動を引き起こすアクチュエータ48は、構造スリーブの外部に位置する。例えば、アクチュエータ48は、構造スリーブに平行でその外側上に位置する。
【0057】
作業面42の高さ及び機械の全体的な嵩を制限するために、構造スリーブ内で支持体50を介してプラットフォームの並進運動を引き起こすアクチュエータ48に関して、このアクチュエータは、プラットフォーム46が構造スリーブ内で下降位置にある場合、この支持体50の上方に広がる。
【0058】
同様に、作業面42の高さ及び機械の全体的な嵩を制限するために、構造スリーブ内でプラットフォームの並進運動を引き起こすアクチュエータ48は、作業面42の下に広がる。
【0059】
詳細には、構造スリーブ内で支持体50を介してプラットフォームの並進運動を引き起こすアクチュエータ48に関して、このアクチュエータ48は、プラットフォームが構造スリーブ内で上昇位置にある場合、この支持体50の下に広がる。
【0060】
上記の嵩に対する制約に適合するために、アクチュエータは、例えば、モーターMで回転駆動されるねじ付きスピンドル90の形態をとり、支持体50は、ねじ付きスピンドルにねじ込まれるナット92を備える。また、アクチュエータ48は、モーターMで回されるボールねじの形態、又はピニオンがモーターMで回されるラックアンドピニオン組立体の形態をとることができる。
【0061】
特に大きな寸法のスリーブ及びプラットフォームの場合に、1つの支持体及び1つのアクチュエータを有する支持されていないオーバーハングの配置を回避するために、構造プラットフォーム46は、複数のアクチュエータ48-1、48-2、48-3の作用のもとで、構造スリーブ44内で上昇位置と下降位置との間で並進運動を行い、構造プラットフォーム46は、支持体50によって各アクチュエータに結合される。
図8に示すように、構造スリーブ44は、その高さH44内に複数のスロット66-1、66-2、66-3を備え、これによって、構造プラットフォームが構造スリーブ内で上昇位置から下降位置に並進運動する場合に、及び構造プラットフォームが構造スリーブ内で下降位置から上昇位置に並進運動する場合に、支持体50は、構造スリーブを貫通して構造プラットフォームを各アクチュエータ48-1、48-2、48-3に結合することができる。
【0062】
構造スリーブ44が複数のスロット66-1、66-2、66-3を備える場合、付加製造機は、プラットフォームがスリーブ内で上昇位置から下降位置に漸進的に並進運動する場合に、及びプラットフォームがスリーブ内で下降位置から上昇位置に漸進的に並進運動する場合に、スリーブの各スロット66-1、66-2、66-3を閉鎖することができる複数の閉鎖テープ70-1、70-2、70-3を備える。
【0063】
図8に示す実施例のように、プラットフォーム46は、構造スリーブの周りで各々互いに120度で均等に分散配置された3つのアクチュエータ48-1、48-2、48-3の作用のもとで、構造スリーブ44の内部で上昇位置と下降位置との間で並進運動を行う。
【0064】
付加製造機は、3つのアクチュエータ48-1、48-2、48-3に平行に、支持体を、従ってプラットフォームを並進的に案内することができる3つの案内装置94-1、94-2、94-3を備える。各案内装置94-1、94-2、94-3は、支持体50に固定されかつ垂直ガイドレール98-1、98-2、98-3上に取り付けられたランナー96-1、96-2、96-3を備える。
【0065】
図6に示すように、プラットフォーム46は、粉体をシールする少なくとも1つのシール102のための周囲ハウジング100を備える。シール102は、例えば、金属又はセラミックひも(braid)の形態をとる。このシール102は、プラットフォームとスリーブとの間で1又は2以上のテープ70によって生じる過大な厚さを補償し、機能的隙間88の結果として、粉体がプラットフォームとスリーブとの間から流出するのを防ぐ。
【0066】
本発明において、アクチュエータは、特に大きな高さの部品の付加製造の場合に製造終了時の非常に高い荷重に耐える必要があるので、1又は複数のアクチュエータは1又は複数の案内装置から離れており、コンマ数マイクロメートルの厚さでその厚さが一定の粉体層を得るために、プラットフォームのほぼ数マイクロメートルの範囲の高精度の案内が必要である。
【国際調査報告】