(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-28
(54)【発明の名称】治療用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 31/198 20060101AFI20220121BHJP
A61K 31/202 20060101ALI20220121BHJP
A61K 31/20 20060101ALI20220121BHJP
A61K 31/201 20060101ALI20220121BHJP
A61K 31/4172 20060101ALI20220121BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220121BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220121BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220121BHJP
A61K 9/107 20060101ALI20220121BHJP
A61K 9/08 20060101ALI20220121BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220121BHJP
A61P 31/10 20060101ALI20220121BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220121BHJP
A61L 27/54 20060101ALI20220121BHJP
A61L 27/28 20060101ALI20220121BHJP
A61L 29/08 20060101ALI20220121BHJP
A61L 29/16 20060101ALI20220121BHJP
A61L 31/08 20060101ALI20220121BHJP
A61L 31/16 20060101ALI20220121BHJP
【FI】
A61K31/198
A61K31/202
A61K31/20
A61K31/201
A61K31/4172
A61P17/00 101
A61P35/00
A61P43/00 121
A61K9/107
A61K9/08
A61P31/12
A61P31/10
A61P31/04
A61L27/54
A61L27/28
A61L29/08
A61L29/16
A61L31/08
A61L31/16
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021542081
(86)(22)【出願日】2019-10-01
(85)【翻訳文提出日】2021-05-26
(86)【国際出願番号】 US2019054044
(87)【国際公開番号】W WO2020072479
(87)【国際公開日】2020-04-09
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2018-10-01
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-05-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521142036
【氏名又は名称】ウィンターミュート バイオメディカル,インク.
【氏名又は名称原語表記】WINTERMUTE BIOMEDICAL,INC.
(74)【代理人】
【識別番号】100107364
【氏名又は名称】斉藤 達也
(72)【発明者】
【氏名】ラウ,トーマス,エフ.
(72)【発明者】
【氏名】ロジャーズ,ジェフリー,ダブリュ.
【テーマコード(参考)】
4C076
4C081
4C086
4C206
【Fターム(参考)】
4C076AA11
4C076AA12
4C076AA17
4C076AA24
4C076BB01
4C076BB21
4C076BB29
4C076BB32
4C076CC19
4C076CC27
4C076CC31
4C076CC32
4C076CC34
4C076CC35
4C081BA14
4C081BB06
4C081CE02
4C081DC12
4C086AA01
4C086AA02
4C086BC38
4C086MA02
4C086MA04
4C086MA16
4C086MA22
4C086MA52
4C086MA55
4C086MA56
4C086MA60
4C086MA63
4C086NA03
4C086NA05
4C086NA06
4C086ZA90
4C086ZB26
4C086ZB32
4C086ZB33
4C086ZB35
4C086ZB37
4C086ZC75
4C206AA01
4C206AA02
4C206DA03
4C206DA04
4C206DA05
4C206FA53
4C206HA05
4C206MA02
4C206MA04
4C206MA36
4C206MA42
4C206MA72
4C206MA75
4C206MA76
4C206MA80
4C206MA83
4C206NA03
4C206NA05
4C206NA06
4C206ZA90
4C206ZB26
4C206ZB32
4C206ZB33
4C206ZB35
4C206ZB37
4C206ZC75
(57)【要約】
【解決手段】抗病原性組成物として使用する為の、脂肪酸(例えば、1以上のC4~C40脂肪酸、例えばC4~C20脂肪酸)と1以上のアミノ酸(及び特には、荷電塩基性側鎖を有する1以上のアミノ酸、例えば、アルギニン、リジン等)との組成物。これらの組成物は、特に抗細菌性組成物として、及び幾つかの変形形態では、抗ウィルス性、抗真菌性、及び抗癌性組成物として使用され得る。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物。
【請求項2】
脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物であって、前記脂肪酸はC4~C40脂肪酸である、治療用組成物。
【請求項3】
脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物であって、前記脂肪酸はC4~C20脂肪酸である、治療用組成物。
【請求項4】
脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物であって、前記アミノ酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸である、治療用組成物。
【請求項5】
脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物であって、前記脂肪酸はC4~C40脂肪酸であり及び前記アミノ酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸である、治療用組成物。
【請求項6】
脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物であって、前記脂肪酸はC4~C20脂肪酸であり及び前記アミノ酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸である、治療用組成物。
【請求項7】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比は1:0.6~約1:1の間である、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項8】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ1:1のモル比である、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項9】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ5:4のモル比である、請求項1~6のいずれかに記載の組成物。
【請求項10】
前記組成物は水性の組成物である、請求項1~9のいずれかに記載の組成物。
【請求項11】
pHが6~10の間である、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項12】
pHが6.9~7.8の間である、請求項1~10のいずれかに記載の組成物。
【請求項13】
賦形剤、希釈剤、若しくは担体を更に含む、請求項1~12のいずれかに記載の組成物
【請求項14】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は局所適用向けに構成される、請求項13に記載の組成物。
【請求項15】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は乳化剤を含む、請求項13に記載の組成物。
【請求項16】
冷却若しくは加熱添加剤を更に含む、請求項1~15のいずれかに記載の組成物。
【請求項17】
前記組成物はヒトへの局所投与に好適な形態の液体若しくはエマルションとして構成される、請求項1~16のいずれかに記載の組成物。
【請求項18】
前記組成物は、経口、非経口、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸、吸入可能、及び局所投与のうちの1以上の為に構成される、請求項1~16のいずれかに記載の組成物。
【請求項19】
前記組成物は医療デバイスをコーティングする為に構成される、請求項1~16のいずれかに記載の組成物。
【請求項20】
病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む、方法。
【請求項21】
抗病原性組成物を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記脂肪酸はC4~C40脂肪酸である、方法。
【請求項22】
抗病原性組成物を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記脂肪酸はC4~C20脂肪酸である、方法。
【請求項23】
抗病原性組成物を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記アミノ酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸である、方法。
【請求項24】
抗病原性組成物を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記脂肪酸はC4~C40脂肪酸であり、及び前記アミノ酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸である、方法。
【請求項25】
抗病原性組成物を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記脂肪酸はC4~C20脂肪酸であり、及び前記アミノ酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸である、方法。
【請求項26】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ1:1のモル比である、請求項20~25のいずれかに記載の方法。
【請求項27】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ5:4のモル比である、請求項20~25のいずれかに記載の方法。
【請求項28】
前記抗病原性組成物は水性の組成物である、請求項20~27のいずれかに記載の方法。
【請求項29】
前記抗病原性組成物のpHは6~10の間である、請求項20~28のいずれかに記載の方法。
【請求項30】
前記抗病原性組成物のPHは6.9~7.8の間である、請求項20~28のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
投与することは前記抗病原性組成物を前記患者の皮膚に適用することを含む、請求項20~30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
投与することは前記抗病原性組成物を前記患者の創傷に適用することを含む、請求項20~30のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
投与することは前記抗病原性組成物を前記患者に全身的に適用することを含む、請求項20~30のいずれかに記載の方法。
【請求項34】
投与することは前記抗病原性組成物を前記患者に噴霧することを含む、請求項20~30のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
投与することは前記抗病原性組成物を医療デバイスから放出させることを含む、請求項20~30のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
投与することは前記患者を前記抗病原性組成物を含む医療デバイスの表面と接触させることを含む、請求項20~30のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記病原体はグラム陰性細菌、グラム陽性細菌、真菌、マイコバクテリア、肺炎細菌、大腸細菌、ウィルスの1以上である、請求項20~25のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記抗病原性組成物は、セチルアルコールを除く、賦形剤、希釈剤、若しくは担体を更に含む、請求項20~25のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は局所適用向けに構成される、請求項38に記載の方法。
【請求項40】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は乳化剤を含む、請求項38に記載の方法。
【請求項41】
前記抗病原性組成物は冷却若しくは加熱添加剤を更に含む、請求項20~25のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記抗病原性組成物はヒトへの局所投与に好適な形態の液体若しくはエマルションとして構成される、請求項20~25のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
癌を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の治療用組成物を投与することを含み、前記治療用組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む、方法。
【請求項44】
治療用組成物を用いて癌を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記治療用組成物を投与することを含み、前記治療用組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記脂肪酸はC4~C40脂肪酸である、方法。
【請求項45】
治療用組成物を用いて癌を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記治療用組成物を投与することを含み、前記治療用組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記脂肪酸はC4~C20脂肪酸である、方法。
【請求項46】
治療用組成物を用いて癌を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記治療用組成物を投与することを含み、前記治療用組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記アミノ酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸である、方法。
【請求項47】
治療用組成物を用いて癌を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記治療用組成物を投与することを含み、前記治療用組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記脂肪酸はC4~C40脂肪酸であり、及び前記アミノ酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸である、方法。
【請求項48】
治療用組成物を用いて癌を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記治療用組成物を投与することを含み、前記治療用組成物は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記脂肪酸はC4~C20脂肪酸であり、及び前記アミノ酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸である、方法。
【請求項49】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ1:1のモル比である、請求項43~48のいずれかに記載の方法。
【請求項50】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ5:4のモル比である、請求項43~48のいずれかに記載の方法。
【請求項51】
前記治療用組成物は水性の組成物である、請求項43~50のいずれかに記載の方法。
【請求項52】
前記治療用組成物のpHは6~10の間である、請求項43~51のいずれかに記載の方法。
【請求項53】
前記治療用組成物のPHは6.9~7.8の間である、請求項43~51のいずれかに記載の方法。
【請求項54】
投与することは前記治療用組成物を前記患者の皮膚に適用することを含む、請求項43~53のいずれかに記載の方法。
【請求項55】
投与することは前記治療用組成物を前記患者に全身的に適用することを含む、請求項43~53のいずれかに記載の方法。
【請求項56】
投与することは前記治療用組成物を医療デバイスから放出させることを含む、請求項43~53のいずれかに記載の方法。
【請求項57】
投与することは前記患者を前記治療用組成物を含む医療デバイスの表面と接触させることを含む、請求項43~53のいずれかに記載の方法。
【請求項58】
前記治療用組成物は、セチルアルコールを除く、賦形剤、希釈剤、若しくは担体を更に含む、請求項43~48のいずれかに記載の方法。
【請求項59】
脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物であって、前記アミノ酸はL-アルギニン、ヒスチジン、及びリジンの1以上である、治療用組成物。
【請求項60】
脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物であって、前記脂肪酸はC4~C40脂肪酸の1以上であり、及び前記アミノ酸はアルギニン、ヒスチジン、及びリジンの1以上である、治療用組成物。
【請求項61】
脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物であって、前記脂肪酸はC4~C20脂肪酸の1以上であり、及び前記アミノ酸はアルギニン、ヒスチジン、及びリジンの1以上である、治療用組成物。
【請求項62】
前記脂肪酸はオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、リノール酸、アラキドン酸、及びアラキジン酸の1以上である、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項63】
脂肪酸:アミノ酸の前記混合物は約35%~約0.001%w/wの間の合計濃度である、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項64】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比は1:0.6~約1:1の間である、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項65】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ1:1のモル比である、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項66】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ5:4のモル比である、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項67】
前記組成物は水性の組成物である、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項68】
pHが6~10の間である、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項69】
pHが6.9~7.8の間である、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項70】
賦形剤、希釈剤、若しくは担体を更に含む、請求項59~61に記載の治療用組成物
【請求項71】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は局所適用向けに構成される、請求項70に記載の治療用組成物。
【請求項72】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は乳化剤を含む、請求項70に記載の治療用組成物。
【請求項73】
冷却若しくは加熱添加剤を更に含む、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項74】
前記組成物はヒトへの局所投与に好適な形態の液体若しくはエマルションとして構成される、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項75】
前記組成物は、経口、非経口、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸、吸入可能、及び局所投与のうちの1以上の為に構成される、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項76】
前記組成物は医療デバイスをコーティングする為に構成される、請求項59~61に記載の治療用組成物。
【請求項77】
病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法はそれを必要とする患者に治療上効果的な量の脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む組成物を投与することを含み、前記アミノ酸はアルギニン、ヒスチジン、及びリジンの1以上である、方法。
【請求項78】
病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法はそれを必要とする患者に治療上効果的な量の脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む組成物を投与することを含み、前記脂肪酸はC4~C20脂肪酸の1以上であり、及び前記アミノ酸はアルギニン、ヒスチジン、及びリジンの1以上である、方法。
【請求項79】
前記脂肪酸はオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、リノール酸、アラキドン酸、及びアラキジン酸の1以上である、請求項77~78に記載の方法。
【請求項80】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ1:1のモル比である、請求項77~78に記載の方法。
【請求項81】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ5:4のモル比である、請求項77~78に記載の方法。
【請求項82】
前記組成物は水性の組成物である、請求項77~78に記載の方法。
【請求項83】
前記組成物のpHは6~10の間である、請求項77~78に記載の方法。
【請求項84】
前記組成物のpHは6.9~7.8の間である、請求項77~78に記載の方法。
【請求項85】
投与することは前記組成物を前記患者の皮膚に適用することを含む、請求項77~78に記載の方法。
【請求項86】
投与することは前記組成物を前記患者の創傷に適用することを含む、請求項77~78に記載の方法。
【請求項87】
投与することは前記組成物を前記患者に全身的に適用することを含む、請求項77~78に記載の方法。
【請求項88】
投与することは前記組成物を前記患者に噴霧することを含む、請求項77~78に記載の方法。
【請求項89】
投与することは前記組成物を医療デバイスから放出させることを含む、請求項77~78に記載の方法。
【請求項90】
投与することは前記患者を前記組成物を含む医療デバイスの表面と接触させること含む、請求項77~78に記載の方法。
【請求項91】
前記病原体はグラム陰性細菌、グラム陽性細菌、真菌、マイコバクテリア、肺炎細菌、大腸細菌、及びウィルスの1以上である、請求項77~78に記載の方法。
【請求項92】
前記組成物は、セチルアルコールを除く、賦形剤、希釈剤、若しくは担体を更に含む、請求項77~78に記載の方法。
【請求項93】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は局所適用向けに構成される、請求項92に記載の方法。
【請求項94】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は乳化剤を含む、請求項92に記載の方法。
【請求項95】
前記組成物は冷却若しくは加熱添加剤を更に含む、請求項77~78に記載の方法。
【請求項96】
前記組成物はヒトへの局所投与に好適な形態の液体若しくはエマルションとして構成される、請求項77~78に記載の方法。
【請求項97】
それを必要とする患者に治療上効果的な量の脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む組成物を投与することを含む癌処置方法であって、前記アミノ酸はアルギニン、ヒスチジン、及びリジンの1以上である、方法。
【請求項98】
それを必要とする患者に治療上効果的な量の脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む組成物を投与することを含む癌処置方法であって、前記脂肪酸はC4~C20脂肪酸の1以上であり、及び前記アミノ酸はアルギニン、ヒスチジン、及びリジンの1以上である、方法。
【請求項99】
前記脂肪酸はオクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデシレン酸、ラウリン酸、トリデシル酸、ミリスチン酸、リノール酸、アラキドン酸、及びアラキジン酸の1以上である、請求項97~98に記載の方法。
【請求項100】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ1:1のモル比である、請求項97~98に記載の方法。
【請求項101】
脂肪酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ5:4のモル比である、請求項97~98に記載の方法。
【請求項102】
前記組成物は水性の組成物である、請求項97~98に記載の方法。
【請求項103】
前記組成物のpHは6~10の間である、請求項97~98に記載の方法。
【請求項104】
前記組成物のpHは6.9~7.8の間である、請求項97~98に記載の方法。
【請求項105】
投与することは前記組成物を前記患者の皮膚に適用することを含む、請求項97~98に記載の方法。
【請求項106】
投与することは前記組成物を前記患者の創傷に適用することを含む、請求項97~98に記載の方法。
【請求項107】
投与することは前記組成物を前記患者に全身的に適用することを含む、請求項97~98に記載の方法。
【請求項108】
投与することは前記組成物を前記患者に噴霧することを含む、請求項97~98に記載の方法。
【請求項109】
投与することは前記組成物を医療デバイスから放出させることを含む、請求項97~98に記載の方法。
【請求項110】
投与することは前記患者を前記組成物を含む医療デバイスの表面と接触させること含む、請求項97~98に記載の方法。
【請求項111】
前記病原体はグラム陰性細菌、グラム陽性細菌、真菌、マイコバクテリア、肺炎細菌、大腸細菌、及びウィルスの1以上である、請求項97~98に記載の方法。
【請求項112】
前記組成物は、セチルアルコールを除く、賦形剤、希釈剤、若しくは担体を更に含む、請求項97~98に記載の方法。
【請求項113】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は局所適用向けに構成される、請求項112に記載の方法。
【請求項114】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は乳化剤を含む、請求項112に記載の方法。
【請求項115】
前記組成物は冷却若しくは加熱添加剤を更に含む、請求項97~98に記載の方法。
【請求項116】
前記組成物はヒトへの局所投与に好適な形態の液体若しくはエマルションとして構成される、請求項97~98に記載の方法。
【請求項117】
ウンデシレン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物。
【請求項118】
ウンデシレン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物であって、前記治療用組成物はセチルアルコールを含まない、治療用組成物。
【請求項119】
ウンデシレン酸:L-アルギニンの混合物を約1:0.6~約1:1の間のモル比で約35%~約0.001%w/wの間の合計濃度で含む治療用組成物。
【請求項120】
デカン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物。
【請求項121】
デカン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む治療用組成物であって、前記治療用組成物はセチルアルコールを含まない、治療用組成物。
【請求項122】
デカン酸:L-アルギニンの混合物を約1:0.6~約1:1の間のモル比で約35%~約0.001%w/wの間の合計濃度で含む治療用組成物。
【請求項123】
ウンデシレン酸:L-アルギニンの前記モル比は1:0.6~約1:1の間である、請求項117~119のいずれかに記載の組成物。
【請求項124】
ウンデシレン酸:L-アルギニンの前記モル比はおよそ1:1のモル比である、請求項117~119のいずれかに記載の組成物。
【請求項125】
ウンデシレン酸:L-アルギニンの前記モル比はおよそ5:4のモル比である、請求項117~119のいずれかに記載の組成物。
【請求項126】
デカン酸:L-アルギニンの前記モル比は1:0.6~約1:1の間である、請求項120~122のいずれかに記載の組成物。
【請求項127】
デカン酸:L-アルギニンの前記モル比はおよそ1:1のモル比である、請求項120~122のいずれかに記載の組成物。
【請求項128】
デカン酸:L-アルギニンの前記モル比はおよそ5:4のモル比である、請求項120~122のいずれかに記載の組成物。
【請求項129】
前記組成物は水性の組成物である、請求項117~128のいずれかに記載の組成物。
【請求項130】
pHが6~10の間である、請求項117~129のいずれかに記載の組成物。
【請求項131】
PHが6.9~7.8の間である、請求項117~130のいずれかに記載の組成物。
【請求項132】
賦形剤、希釈剤、若しくは担体を更に含む、請求項117~131のいずれかに記載の組成物。
【請求項133】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は局所適用向けに構成される、請求項132に記載の組成物。
【請求項134】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は乳化剤を含む、請求項132に記載の組成物。
【請求項135】
冷却若しくは加熱添加剤を更に含む、請求項117~134のいずれかに記載の組成物。
【請求項136】
前記組成物はヒトへの局所投与に好適な形態の液体若しくはエマルションとして構成される、請求項117~135のいずれかに記載の組成物。
【請求項137】
前記組成物は、経口、非経口、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸、吸入可能、及び局所投与のうちの1以上の為に構成される、請求項117~136のいずれかに記載の組成物。
【請求項138】
前記組成物は医療デバイスをコーティングする為に構成される、請求項117~137のいずれかに記載の組成物。
【請求項139】
病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物はウンデシレン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む、方法。
【請求項140】
抗病原性組成物を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物はウンデシレン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記治療用組成物はセチルアルコールを含まない、方法。
【請求項141】
抗病原性組成物を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物はウンデシレン酸:アミノ酸の混合物を約1:0.6~約1:1.6の間のモル比で含み、前記アミノ酸はL-アルギニン、リジン、及びヒスチジンの1以上である、方法。
【請求項142】
病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物はデカン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む、方法。
【請求項143】
抗病原性組成物を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物はデカン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記治療用組成物はセチルアルコールを含まない、方法。
【請求項144】
抗病原性組成物を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含み、前記抗病原性組成物はデカン酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記アミノ酸はL-アルギニン、リジン、及びヒスチジンの1以上である、方法。
【請求項145】
ウンデシレン酸:L-アルギニン若しくはウンデシレン酸:アミノ酸又はデカン酸:L-アルギニン若しくはデカン酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ1:1のモル比である、請求項139~144のいずれかに記載の方法。
【請求項146】
ウンデシレン酸:L-アルギニン若しくはウンデシレン酸:アミノ酸又はデカン酸:L-アルギニン若しくはデカン酸:アミノ酸の前記モル比はおよそ5:4のモル比である、請求項138~143のいずれかに記載の方法。
【請求項147】
前記抗病原性組成物は水性の組成物である、請求項139~146のいずれかに記載の方法。
【請求項148】
前記抗病原性組成物のpHは6~10の間である、請求項139~147のいずれかに記載の方法。
【請求項149】
前記抗病原性組成物のpHは6.9~7.8の間である、請求項139~148のいずれかに記載の方法。
【請求項150】
投与することは前記抗病原性組成物を前記患者の皮膚に適用することを含む、請求項139~149のいずれかに記載の方法。
【請求項151】
投与することは前記抗病原性組成物を前記患者の創傷に適用することを含む、請求項139~150のいずれかに記載の方法。
【請求項152】
投与することは前記抗病原性組成物を前記患者に全身的に適用することを含む、請求項139~151のいずれかに記載の方法。
【請求項153】
投与することは前記抗病原性組成物を前記患者に噴霧することを含む、請求項139~152のいずれかに記載の方法。
【請求項154】
投与することは前記抗病原性組成物を医療デバイスから放出させることを含む、請求項139~153のいずれかに記載の方法。
【請求項155】
投与することは前記患者を前記抗病原性組成物を含む医療デバイスの表面と接触させることを含む、請求項139~154のいずれかに記載の方法。
【請求項156】
前記病原体はグラム陰性細菌、グラム陽性細菌、真菌、マイコバクテリア、肺炎細菌、大腸細菌、及びウィルスの1以上である、請求項139~155のいずれかに記載の方法。
【請求項157】
前記抗病原性組成物は、セチルアルコールを除く、賦形剤、希釈剤、若しくは担体を更に含む、請求項139~156のいずれかに記載の方法。
【請求項158】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は局所適用向けに構成される、請求項157に記載の方法。
【請求項159】
前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は乳化剤を含む、請求項157に記載の方法。
【請求項160】
前記抗病原性組成物は冷却若しくは加熱添加剤を更に含む、請求項139~159のいずれかに記載の方法。
【請求項161】
前記抗病原性組成物は、ヒトへの局所投与に好適な形態の液体若しくはエマルションとして構成される、請求項139~160のいずれかに記載の方法。
【請求項162】
癌を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の治療用組成物を投与することを含み、前記治療用組成物は、ウンデシレン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む、方法。
【請求項163】
治療用組成物を用いて癌を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記治療用組成物を投与することを含み、前記治療用組成物はウンデシレン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記治療用組成物はセチルアルコールを含まない、方法。
【請求項164】
癌を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の治療用組成物を投与することを含み、前記治療用組成物はデカン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む、方法。
【請求項165】
治療用組成物を用いて癌を破壊する為に患者を処置する方法であって、前記方法は前記患者に治療上効果的な量の前記治療用組成物を投与することを含み、前記治療用組成物はデカン酸:L-アルギニンの約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含み、前記治療用組成物はセチルアルコールを含まない、方法。
【請求項166】
ウンデシレン酸:L-アルギニン若しくはデカン酸:L-アルギニンの前記モル比はおよそ1:1のモル比である、請求項162~165のいずれかに記載の方法。
【請求項167】
ウンデシレン酸:L-アルギニン若しくはデカン酸:L-アルギニンの前記モル比はおよそ5:4のモル比である、請求項162~165のいずれかに記載の方法。
【請求項168】
前記治療用組成物は水性の組成物である、請求項162~167のいずれかに記載の方法。
【請求項169】
前記治療用組成物のpHは6~10の間である、請求項162~168のいずれかに記載の方法。
【請求項170】
前記治療用組成物のpHは6.9~7.8の間である、請求項162~169のいずれかに記載の方法。
【請求項171】
投与することは前記治療用組成物を前記患者の皮膚に適用することを含む、請求項162~170のいずれかに記載の方法。
【請求項172】
投与することは前記治療用組成物を前記患者に全身的に適用することを含む、請求項162~171のいずれかに記載の方法。
【請求項173】
投与することは前記治療用組成物を医療デバイスから放出させることを含む、請求項162~172のいずれかに記載の方法。
【請求項174】
投与することは前記患者を前記治療用組成物を含む医療デバイスの表面と接触させることを含む、請求項162~173のいずれかに記載の方法。
【請求項175】
前記治療用組成物は、セチルアルコールを除く、賦形剤、希釈剤、若しくは担体を更に含む、請求項162~174のいずれかに記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年10月1日出願の「抗病原性治療用組成物(ANTI-PATHOGENIC THERAPEUTIC COMPOSITIONS)」と表題が付けられた米国特許仮出願第62/739,844号、2019年5月9日出願の「治療用組成物(THERAPEUTIC COMPOSITIONS)」と表題が付けられた米国特許仮出願第62/845,858号、及び2019年5月9日出願の「治療用組成物(THERAPEUTIC COMPOSITIONS)」と表題が付けられた米国特許仮出願第62/845,859号の各々の優先権を主張するものである。これらの出願の各々は、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
参照による援用
本明細書において言及される全ての刊行物及び特許出願は、その全体が、各個々の刊行物若しくは特許出願が具体的に及び独立に参照により組み込まれることが示されたのと同様の程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0003】
脂肪酸(例えば、デカン酸、オクタン酸、及びウンデシレン酸等が挙げられるがそれらに限定されない、C4~C40の脂肪酸、C4~C20の脂肪酸、C8~C20の脂肪酸)とアミノ酸(例えば、L-アルギニン及びL-リジンが挙げられるがそれらに限定されない、荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸)との組成物、及びそれらを使用する、例えば、抗病原性(抗細菌性、抗ウィルス性、抗真菌性、抗微生物性)及び抗癌性の使用の為の、治療方法。
【背景技術】
【0004】
疾病を引き起こす恐れのある細菌、ウィルス、若しくは他の微生物等の病原体は、特に病原体の耐抗生物質形態の出現の増大に伴い、ますます処置が難しくなっている。アメリカ疾病管理予防センター(The United States Center for Disease Control(CDC))は病原性の脅威のリストを公表しており、それらの多くが薬物耐性の微生物及び有効な薬物治療が存在しない微生物を含む。例えば、皮膚及びその下の組織の細菌感染は、顕著な臨床の処置課題を提示する。この種の感染は通常、皮膚及びその下の組織上にコロニーを形成するグラム陽性細菌に関連し、症状は軽度の不快症状から死亡までの範囲に渡る可能性がある。細菌は、膿痂疹、蜂巣炎、おでき、及び挫創等の数々の皮膚状態を引き起こす。手術創若しくは傷部外傷の深部組織の感染は、血流に侵入して敗血症及び死に繋がる恐れがある。
【0005】
現在、グラム陽性細菌により引き起こされる多くの皮膚感染は、抗生物質を用いて攻撃的に処置されている。しかしながら、病原性の細菌株は抗生物質耐性機構を発現する為、伝統的な抗生物質を用いずに細菌生育を阻止する新規な療法を開発することが極めて重要となっている。近年、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)及びバンコマイシン耐性腸球菌(VRE)等のいわゆる「スーパーバグ」の発現と共に、細菌の抗生物質耐性の問題はさらに認識されるようになってきた。これらの細菌は有意な抗生物質耐性を発現してきた一般的な皮膚病原体である。ヒト及び消費目的で飼育される動物の両方における抗生物質の連続使用に伴って、多くの一般的な皮膚細菌株が広範な抗生物質耐性を発現しており、深刻な保健医療の課題をもたらしている。皮膚感染に関与する一般的な細菌には、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌、化膿性連鎖球菌及び肺炎球菌、フェカリス菌及びストレプトコッカス・アガラクチアがある。これらの細菌は皮膚にコロニーを形成する為、それらは表皮を破壊し、炎症反応を誘発し、もし処置しなければ、より深い組織に侵入して蜂巣炎を引き起こす。極端なケースではこの細菌は循環系に入り込み敗血症を引き起こし、死に至る可能性もある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この問題に対処する為に新規の処置を開発する必要があるということが医学界で明らかとなってきている。しかしながら、多くの製薬会社は皮膚及び創傷感染の為の新しい抗菌処置の開発の積極的な追求はしてこなかった。
【0007】
癌及び多耐性の感染を患う人々の数は近年増加しており、両疾病は既に現在の及び将来的な主要な死因と見られている。更に、免疫系が不安定性となると癌細胞の増殖を許すことになる為、慢性的な感染は癌の主要な原因の一つである。同様に、癌に伴う若しくは抗癌治療に伴う身体的な衰弱自体が日和見感染の下地を作ることも多い。有効性がより高く副反応がより少ない新しい治療方法を開発することが急務である。特に、抗癌性の利益をも有し得る抗病原性の剤を提供することは有益であり得る。
【0008】
本明細書には、グラム陰性及びグラム陽性の両方の細菌、真菌、及びウィルスを包含する数々の病原体を処置する為の化合物及びその為にそれらを使用する方法が記載される。これらの化合物はまた、癌を処置する為にも有用であり、及び癌を処置する若しくは予防する方法もまた記載される。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、治療用組成物として使用する為の脂肪酸及びアミノ酸の組成物に関する。脂肪酸の例としては、不飽和脂肪酸(例えば、ウンデシレン酸(UCA))及び飽和脂肪酸(例えばラウリン酸)が挙げられる。アミノ酸の例としては、脂肪族アミノ酸(例えば、L-アルギニン(LARG))、芳香族アミノ酸(例えばヒスチジン)、及びイミノアミノ酸(例えばプロリン)、並びに荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン、及びリジン)が挙げられる。幾つかの変形形態では、前記アミノ酸類はアルギニン(例えば、LARG)及び/若しくはリジンを有してもよい。これらの組成物は、高い有効性及び高い安全性と共に、特により低温における、比較的高い化学的安定性の為、及び比較的長い貯蔵寿命の為に、選択され得る。
【0010】
本明細書には、抗病原性組成物及び/若しくは抗癌性組成物等のこれらの組成物を用いて患者を処置する為の、伝染病を処置する為の使用を包含する、治療方法もまた記載される。抗病原性は、抗微生物性、抗細菌性、抗真菌性、抗ウィルス性等を包含し得る。抗癌性は抗腫瘍性、抗増殖性、抗悪性腫瘍性等を包含し得る。これらの組成物は、抗細菌性、抗ウィルス性、及び幾つかの変形形態では、抗癌性組成物として特別に使用されてもよい。前記組成物は局所適用の為に使用されてよい。例えば、幾つかの変形形態では、それらは特定部位の(局所的な)若しくは体中の(全身的な)効果の為に、皮膚に対して(皮膚的に)適用されてよく、全身的効果の為のパッチによる(経皮的な)皮膚全体に渡る送達を介した適用を包含する。幾つかの変形形態では、それらは経口的に適用されてよく、幾つかの変形形態では、それらは注射により(例えば、静脈内、筋肉内、クモ膜下腔内、皮下等に)適用されてよい。幾つかの変形形態では、それらは舌下に若しくは歯肉と頬との間に(例えば、頬に)適用されてよい。幾つかの変形形態では、それらは直腸に若しくは膣に適用されてよい。幾つかの変形形態では、それらは眼内に及び/若しくは視神経により適用されてよい。幾つかの変形形態では、それらは鼻中に噴霧され鼻膜を通して(経鼻的に)吸収されてよく及び/若しくは通常は口を通して(吸入により)若しくは口及び鼻を通して(噴霧により)、肺中に吹き込まれてもよい。
【0011】
一般に、本明細書には、脂肪酸及びアミノ酸を含む、特にはC4~C20脂肪酸及び荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸等のアミノ酸を含む治療用組成物が記載されており、例えば、本明細書には、抗病原性及び/若しくは抗癌性効果を生ずる為の作用範囲内の比率のウンデシレン酸及びL-アルギニンの(例えば、脂肪酸とアミノ酸のモル比が約1:0.6~約1:1.6、例えば、約1:0.7~約1:1.6の間の)治療用組成物が記載される。例えば、本明細書には、約1:0.6~約1:1.6の間の比率のウンデシレン酸:L-アルギニンの混合物を含む治療用組成物が記載される。幾つかの変形形態では、治療用組成物は、約1:0.6~約1:1.6の間の比率のウンデシレン酸:L-アルギニンの混合物を含み、この治療用組成物はセチルアルコールを含まない。本明細書に記載される組成物は有機溶媒を含まなくてもよい。幾つかの変形形態では、治療用組成物は約1:0.6~約1:1の間の比率のウンデシレン酸:L-アルギニンの混合物を含み、L-アルギニンの濃度は0.01mg/mL~182mg/mLの間である。
【0012】
ウンデシレン酸:L-アルギニンの比率は1:0.6~約1:1の間であってよい。幾つかの変形形態では脂肪酸とアミノ酸との比率(例えば、ウンデシレン酸:L-アルギニン)は、およそ1:1のモル比である。他の変形形態では、脂肪酸とアミノ酸との比率(例えば、ウンデシレン酸:L-アルギニン)はおよそ5:4のモル比である。これらの組成物のいずれかは水性の組成物であってよい。前記組成物のpHは、例えば、約6~約10の間であってよく、幾つかの変形形態では前記pHは約6.9~約7.8の間である。
【0013】
本明細書に記載された脂肪酸及びアミノ酸は脂肪酸とアミノ酸との複合体を形成してよい。本明細書に記載された脂肪酸とアミノ酸との組成物のいずれかは、UCAとLARGとの複合体等のような)脂肪酸とアミノ酸との複合体(これは脂肪酸/アミノ酸複合体と呼ばれ得る)を含む組成物と呼ばれ得る。
【0014】
前記アミノ酸がL-アルギニンである変形形態では、L-アルギニン(LARG)の濃度は、LARGの溶解度限界未満であってよい。例えば、L-アルギニンの濃度は、約182mg/mL以下であってよい。これらの変形形態のいずれかでは、L-アルギニンの濃度は約0.01mg/mL~約182mg/mLの間であってよい。同様に、任意の他の追加的な若しくは代替的なアミノ酸(例えば、リジン、ヒスタジン等)の組成物はそのアミノ酸の溶解度限界未満であってよい。
【0015】
一般に、前記組成物は賦形剤、希釈剤、若しくは担体(幾つかの変形形態ではセチルアルコールを除く)を含んでよい。前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は局所適用向けに構成されてよい。幾つかの変形形態では、前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は乳化剤を含んでよい。これらの組成物のいずれかは冷却若しくは加熱添加剤を含んでよい。
【0016】
前記組成物はヒトへの局所投与に好適な形態の液体若しくはエマルションとして構成されてよい。例えば、前記組成物は、経口、非経口、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸、吸入可能、及び局所投与のうちの1以上の為に構成されてよい。前記組成物は、医薬デバイスをコーティングする為に構成されてもよい。
【0017】
本明細書には、感染(例えば、細菌、酵母、ウィルス等の病原体)及び/若しくは癌の1以上について患者を処置する方法もまた記載される。例えば、病原体を破壊する為に患者を処置する方法は、前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含んでよく、前記抗病原性組成物は、約1:0.6~約1:1.6の間の比率の、ウンデシレン酸:L-アルギニン等であるがそれに限定されない、脂肪酸(例えば、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、若しくはC20脂肪酸)とアミノ酸(例えば、L-アルギニン、リジン、ヒスチジン等)との混合物を含む。
【0018】
幾つかの変形形態では、抗病原性組成物を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法は、前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含んでよく、前記抗病原性組成物は、約1:0.6~約1:1.6の間の比率の、ウンデシレン酸:L-アルギニン等であるがそれに限定されない、脂肪酸(例えば、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17 C18、C19、若しくはC20脂肪酸)とアミノ酸(例えば、L-アルギニン、リジン、ヒスチジン等)との混合物を含み、この治療用組成物はセチルアルコールを含まない。
【0019】
抗病原性組成物を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法は、前記患者に治療上効果的な量の前記抗病原性組成物を投与することを含んでよく、前記抗病原性組成物は、約1:0.6~約1:1.6の間の比率の、ウンデシレン酸:L-アルギニン等であるがそれに限定されない、脂肪酸(例えば、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、若しくはC20脂肪酸)とアミノ酸(例えば、L-アルギニン、リジン、ヒスチジン等)との混合物を含み、アミノ酸(例えば、L-アルギニン)の濃度は0.01mg/mL~182mg/mLの間である。
【0020】
本明細書には、それを必要とする患者(例えば、癌を有する患者)に、ウンデシレン酸:L-アルギニン等であるがそれに限定されない、脂肪酸(例えば、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、若しくはC20脂肪酸)とアミノ酸(例えば、L-アルギニン、ヒスチジン、リジン等)との約1:0.6と約1:1との間の比率の混合物を含む組成物の治療上効果的な量を投与することを含む癌処置方法もまた記載される。幾つかの変形形態では、アミノ酸(例えば、L-アルギニン)の濃度は0.01mg/mL~182mg/mLの間である。
【0021】
これらの方法及び組成物のいずれかにおいて、脂肪酸とアミノ酸の比率はおよそ1:1若しくは5:4のモル比であってよい。重量基準のUCA:LARGについてのおよそ1:0.95及び1:0.76のこの比率はそれぞれ、有効性及び増強された化学的安定性の両方を提供し得、特に-20℃を含む低温において、延長された時間に渡り、脂肪酸及びアミノ酸が経時的に溶液中に残存することを可能にする。
【0022】
これらの方法のいずれかにおいて、前記抗病原性組成物は水性の組成物であってよい。前記抗病原性組成物のpHは約6~約10の間であってよく、例えば、前記抗病原性組成物のpHは約6.9~約7.8の間であってよい。
【0023】
これらの方法のいずれかにおいて、組成物中のアミノ酸(例えば、L-アルギニン)の濃度は182mg/mL以下であってよく、例えば、アミノ酸(例えば、L-アルギニン)の濃度は0.01mg/mL~182mg/mLの間であってよい。
【0024】
投与することは前記抗病原性組成物を前記患者の皮膚に適用することを含んでよい。幾つかの変形形態では、投与することは前記抗病原性組成物を前記患者の創傷に適用することを含む。幾つかの変形形態では、投与することは前記抗病原性組成物を前記患者に全身的に適用することを含む。幾つかの変形形態では、投与することは前記抗病原性組成物を前記患者に噴霧することを含む。幾つかの変形形態では、投与することは前記抗病原性組成物を医療デバイスから放出させることを含む。例えば、投与することは前記患者を前記抗病原性組成物を含む医療デバイスの表面と接触させることを含んでよい。
【0025】
前記組成物(例えば、前記抗病原性組成物、前記抗癌性組成物等)はセチルアルコールを除く、賦形剤、希釈剤、若しくは担体を更に含んでよく、前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は局所適用向けに構成されてよい。前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は乳化剤を含んでよい。
【0026】
これらの組成物(例えば、前記抗病原性組成物、前記抗癌性組成物等)のいずれかは、冷却若しくは加熱添加剤を更に含んでよく、及び/若しくはヒトへの局所投与に好適な形態の液体若しくはエマルションとして構成されてよい。
【図面の簡単な説明】
【0027】
本発明の新規な特徴は、特に後続の特許請求の範囲において記載される。例示的な実施形態を記載する以下の詳細な説明を参照することによって本発明の特徴及び利点のより良い理解が得られるであろう。この詳細説明においては、本発明の原理が使用され、及びその添付図面は以下の通りである。
【
図1】LARGとUCAとを含む異なる組成物の抗細菌性効果を示すグラフである。
【
図2B】LARGとUCAとの組成物の細菌生育を防止する能力に対するセチルアルコール(CA)の阻害効果を示すグラフである。
【
図3】溶解度限界超のLARGを有する場合のUCA:LARG溶解性を示す表(表1)である。
【
図4】溶解度限界未満のLARGを有する場合のUCA:LARG溶解性を示す表(表2)である。
【
図5】種々の比率のUCA:LARGの3種のMRSA分離株に対する殺菌効果を示すグラフである。
【
図6】種々の比率のUCA:LARGの3種のMRSA分離株に対する殺菌効果を
図5よりも細かいスケールで示したグラフである。
【
図7】種々の比率のUCA:LARGの3種のMRSA分離株に対する殺菌効果を
図5及び
図6よりも細かいスケールで示したグラフである。
【
図8】3種のMRSA分離株(MRSA10、11、及び12)から得られた平均細菌濃度をUCA:LARG比の関数として示す。
図8におけるy軸(細菌の濃度、単位:CFU/mL)は、140,000,000(1.4×10
8)CFU/mLの濃度まで対数的に延びている。
【
図9】3種のMRSA分離株(MRSA10、11、及び12)から得られた平均細菌濃度をUCA:LARG比の関数として示す。
図8と同じデータを示すが、y軸は1,000,000(1.0×10
6)CFU/mLまで延びている。
【
図10】3種のMRSA分離株(MRSA10、11、及び12)から得られた平均細菌濃度をUCA:LARG比の関数として示す。100,000(1.0×10
5)CFU/mLまで延びているy軸上の同じデータを示す。
【
図11】3種のMRSA分離株(MRSA10、11、及び12)から得られた平均細菌濃度をUCA:LARG比の関数として示す。30,000(3.0×10
4)CFU/mLまで延びているy軸上の同じデータを示す。
【
図12】水中の異なるUCA:LARG比を含む種々の組成物のpHを示すグラフである。
【
図13】本明細書に記載された化合物の一変型形態(「GS-1」と称される)の、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の8つの分離株に対する、1:16の薬物希釈におけるインビトロの有効性を示すグラフである。MRSAはグラム陽性である。
【
図14】前記GS-1化合物の大腸菌(EC)の2つの分離株に対する、1:16の薬物希釈における有効性を例示するグラフである。ECはグラム陰性である。
【
図15】GS-1のCRE陽性肺炎桿菌(KPCRE)の3つの分離株に対する、1:16の薬物希釈におけるインビトロ有効性を例示するグラフの例である。KPCREはグラム陰性である。
【
図16】GS-1の緑膿菌(PSA)の2つの分離株に対する、1:8の薬物希釈におけるインビトロ有効性を例示する。PSAはグラム陰性である。
【
図17】GS-1のC6ラットグリオーマ癌細胞に対する、薬物希釈の関数としてのインビトロ有効性を示す。
【
図18E】GS-1のC6ラットグリオーマ癌細胞に対する、薬物希釈に応じたインビトロ有効性の顕微鏡画像を例示する。
図18AはGS-1の1:64希釈物で処置された細胞を示し、最大量の細胞死を示している。
図18BはGS-1の1:128希釈物で処置された細胞を示す。
図18CはGS-1の1:256希釈物で処置された細胞を示す。
図18DはGS-1の1:512希釈物で処置された細胞を示す。
図18Eは未処置コントロールを示す。
【
図19】本明細書で記載したような例示的組成物についてのフリーザ安定性の検討の結果を示す表である。
【
図20】約1:0.76(脂肪酸:アミノ酸)の重量比における脂肪酸:アミノ酸の4つの組成物の、MRSAを処置する為に希釈して使用した場合の治療効果を例示するグラフである。上述したようにGS-1は、およそ32%w/w混合物の1:128の希釈における、UCA:LARG(1:0.8のモル比)に相当し、結果として約0.25%の全有効活性成分(API)の濃度となる。GS-2は、およそ32%w/w混合物の1:128の希釈における、デカン酸:LARGの混合物(約1:0.8のモル比を有する)に相当し、結果として約0.25%w/wの全API濃度となる。GS-3は、およそ32%w/w混合物の1:128の希釈における、オクタン酸:LARGの混合物(約1:0.6のモル比を有する)に相当し、結果として約0.25%w/wの全APIの濃度となる。GS-4は、約1.64mg/mL(0.16%w/w)の全APIの濃度におけるリノール酸:LARGの混合物に相当し、約1:6.1のモル比を有する。
【
図21】6つの臨床分離株について、生理食塩水で24時間処置したコントロールと比較した、MRSAに対するGS-2(デカン酸:LARG、約0.25%w/wの全APIの濃度、約1:0.8のモル比)の活性を示すグラフである。デカン酸:LARG組成物は前記分離株の100%において殺細菌効果を生じた。
【
図22】6つの臨床分離株について生理食塩水で24時間処置したコントロールと比較した、MRSAに対するGS-3(オクタン酸:LARG、約0.25%w/wの全APIの濃度、約1:0.6のモル比)の活性を示すグラフである。オクタン酸:LARG組成物は、前記分離株の66.7%において阻止効果を生じ及び33.3%において静菌効果を生じた。
【
図23】6つの臨床分離株について生理食塩水で24時間処置したコントロールと比較した、MRSAに対するGS-4(リノール酸:LARG、全APIの濃度:約0.16%w/w、モル比:約1:6.1)の活性を示すグラフである。GS-4は、前記分離株の50%において殺細菌効果を生じ及び50%において阻止効果を生じた。
【
図24】5つの臨床分離株について生理食塩水で24時間処置したコントロールと比較した、MRSAに対するGS-5(UCA:リジン、全API濃度:約0.25%w/w、モル比:約1:1.0)の活性を示すグラフである。GS-5は、この濃度において前記分離株の全てにおいて殺細菌効果を生じた。
【
図25】約1:0.8(例えば、5:4)のモル比におけるGS-6(UCA:ヒスチジン)の活性を示すグラフである。重量比は約1:0.76である。前記アミノ酸としてのヒスチジンの使用はまた、図示のように有意な量の活性を示した。予備的な結果は、UCA:リジン及びUCA:L-アルギニンを用いて見られたのと同様の範囲の有効性を示唆している。
【
図26】種々のアミノ酸と脂肪酸との組み合わせの試験の結果を示すテーブルマトリクスである。列内には例示的なC4~C20脂肪酸を示しており、最上部に沿って(特徴によりグループ分けした)アミノ酸を示す。対応するボックス内に負の結果及び正の結果が示されており、ここで、負の結果は溶液を形成することができなかった及び/若しくは有意な抗病原性/抗癌性効果を有することができなかったということを示している。正の結果はそのアミノ酸と脂肪酸との組み合わせが、例えば、脂肪酸:アミノ酸のモル比約1:0.6~約1:1.6で、治療用組成物を形成したことを示している。クエスチョンマーク、(-)、及び(+)は予備試験を示しており、「Yes」若しくは「No」は確認されたデータを示した。
【
図27】本明細書に記載されるような脂肪酸とアミノ酸との混合物であって脂肪酸:アミノ酸のモル比が約1:0.6~約1:1.6の間である混合物を含む剤の治療用組成物の抗癌有効性を示すグラフであり、この例では前記剤は、ヒト癌細胞に対して試験されたGS-1(LARG及びUCA)の溶液であり、0.3%w/wの作用薬物濃度を示している。
【
図28】本明細書に記載されるような脂肪酸とアミノ酸との混合物であって脂肪酸:アミノ酸のモル比が約1:0.6~約1:1.6の間である混合物の例(この例では、LARG及びUCA、GS-1)の異なる濃度での、種々の濃度の前記剤と共に24時間インキュベートした後の培養PC3ヒト前立腺癌細胞に対する抗癌性効果を示すグラフである。
【
図29】本明細書に記載されるような脂肪酸とアミノ酸との混合物であって脂肪酸:アミノ酸のモル比は約1:0.6~約1:1.6の間である混合物の例(この例においては、LARG及びUCA、GS-1)の異なる濃度での、種々の濃度の前記剤と共に24時間インキュベートした後の培養MCF7乳癌細胞に対する抗癌性効果を示すグラフである。
【
図30】本明細書に記載されるような脂肪酸とアミノ酸との混合物であって脂肪酸:アミノ酸のモル比が約1:0.6~約1:1.6の間である混合物の例(この例においては、LARG及びUCA、GS-1)の異なる濃度での、種々の濃度の前記剤と共に24時間インキュベートした後の培養MM170ヒトメラノーマ癌細胞に対する抗癌性効果を示すグラフである。
【
図31】本明細書に記載されるような脂肪酸とアミノ酸との混合物であって脂肪酸:アミノ酸のモル比が約1:0.6~約1:1.6の間である混合物の例(この例においては、LARG及びUCA、GS-1)の異なる濃度での、種々の濃度の前記剤と共に24時間インキュベートした後の培養U937ヒト白血病癌細胞に対する抗癌性効果を示すグラフである。
【
図32】本明細書に記載されるような脂肪酸とアミノ酸との混合物であって脂肪酸:アミノ酸のモル比が約1:0.6~約1:1.6の間である混合物の例(この例においては、LARG及びUCA、GS-1)の異なる濃度での、種々の濃度の前記剤と共に24時間インキュベートした後の培養A549ヒト肺癌細胞に対する抗癌性効果を示すグラフである。
【
図33】本明細書に記載されるような脂肪酸とアミノ酸との混合物であって脂肪酸:アミノ酸のモル比が約1:0.6~約1:1.6の間である混合物の別の例(この例においては、LARG及びデカン酸、GS-2)の異なる濃度での、種々の濃度の前記剤と共に24時間インキュベートした後の培養A549ヒト肺癌細胞に対する抗癌性試験結果を示すグラフである。
【
図34】本明細書に記載されるような脂肪酸とアミノ酸との治療用組成物であって脂肪酸:アミノ酸のモル比が約1:0.6~約1:1.6の間である治療用組成物の例(この例においては、LARG及びUCA、GS-1)の、種々の濃度での、単純ヘルペスウィルス(HSV)感染細胞に対するインビトロ抗ウィルス性活性を例示するグラフである。
【
図35】本明細書に記載されるような脂肪酸とアミノ酸との治療用組成物であって脂肪酸:アミノ酸のモル比が約1:0.6~約1:1.6の間である治療用組成物の例(この例においては、LARG及びUCA、GS-1)の、種々の濃度での、偽エボラ感染細胞に対するインビトロ抗ウィルス性活性を例示するグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
一般に、本明細書には、脂肪酸(例えば、C4、C5、C6、C7、C8、C9、C10、C11、C12、C13、C14、C15、C16、C17、C18、C19、若しくはC20脂肪酸等の1以上、例えばウンデシレン酸、デカン酸、オクタン酸、リノール酸等の1以上)及びアミノ酸(例えば、L-アルギニン、リジン、ヒスチジン等の1以上)の両方を含み、全脂肪酸と全アミノ酸との比率が約1:0.60~約1:1.6(例えば、約1:0.6~1:1.2の間、約1:0.6~1:1.0の間、約1:<1.0等)の範囲内である治療用組成物(例えば、抗病原性及び/若しくは抗癌性組成物)が記載される。前記組成物中の前記アミノ酸の濃度は前記アミノ酸の溶解度限界未満であってよい。幾つかの変形形態では、前記組成物は、およそ1:1モル比(例えば、重量基準で約1:0.95)である脂肪酸とアミノ酸の比率(例えば、UCA:LARG比)を含んでよい。幾つかの変形形態では、前記組成物は、およそ5:4モル比(例えば、重量基準で約1:0.76)である脂肪酸とアミノ酸の比率(例えば、UCA:LARG比)を含んでよい。これらの組成物は、-20℃以下における延長された期間に渡る安定性及び有効性を包含する、増強された安定性及び有効性を有し得る。
【0029】
この範囲外の組成物は、はるかに効果が低いか効果がなく、及び/若しくは不安定であり得る。例えば、その全体が参照として本明細書に組み込まれる2018年2月13日出願のPCT/US2018/018077(標題「抗病原性治療用組成物(ANTI-PATHOGENIC THERAPEUTIC COMPOSITIONS)」)及び2014年1月27日に(PCT出願番号PCT/US14/13120として)出願された米国特許第2015/0366925号は、中国大黄抽出物の抗細菌性組成物、及び特に、中国大黄抽出物の有効成分、レインを含む組成物を記載している。これらの組成物は典型的に、処置の為に抗微生物性物質として他の物質を含む組成物中に、アクセサリ分子としてL-アルギニン(LARG)及びウンデシレン酸(UCA)を含んでおり、LARG及びUCAは中国大黄抽出物/レインの添加なしでは細菌生育に対して効果がないということが示されていた(例えば、米国特許第2015/0366925号の
図4~7を参照のこと)。この先行の研究ではL-アルギニン、ウンデシレン酸、中国大黄/レイン、セチルアルコール(賦形剤)、及び水の組み合わせを含む薬物製品が記載された。これらの初期の出願によれば、堅牢な治療効果を達成する為には少なくとも前記の3つの成分、LARG、UCA、及び中国大黄抽出物/レインが必要であった。この研究は更にこれらの成分を共に溶液とする為にセチルアルコールが必要であることを教示した。従って、最も高い有効性は3成分全て(個々に及び集合的に)の達成可能な最大濃度において生じ得ると考えられた。結果として、LARGは常にその溶解度限界を超える濃度で(例えば、過飽和で)含まれた。
【0030】
驚くべきことに、本発明者らは、中国大黄抽出物(レインを包含する)が前記組成物から欠如した場合に、UCA等の脂肪酸とLARG等のアミノ酸とのみが一緒になって際立って効果的な抗病原性及び抗癌性組成物を形成し得る組成物を開発した。特に、本明細書には、抗病原性及び/若しくは抗癌性の療法としての有効性だけでなく溶液中での超安定性をも有する規定された濃度範囲内の、UCA及びLARGが挙げられるがそれらに限定されない、実質的に任意のC4~C40(例えば、C4~C20、C8~C20、C8~C18、C4~C18)脂肪酸と特定のアミノ酸(例えば、アルギニン、ヒスチジン、リジン)との組成物が記載される。更に、UCA及びLARGの組成物を包含するこれらの組成物のいずれかは、それらの脂肪酸及びアミノ酸の溶解性の為に(例えば、UCA及びLARGを一緒に溶液中に保持する為に)必要であると以前から教示されていた、セチルアルコール若しくは他の類似の賦形剤なしで作製され得る。驚くべきことに、セチルアルコール等の賦形剤は前記脂肪酸及びアミノ酸(例えば、UCA及びLARG)組成物の有効性を有意に阻害する。例えば、UCA/LARG組成物の最も高い有効性は、3成分全ての達成可能な最大濃度をはるかに下回るUCA及びLARGの濃度で生じ、及び特に、その溶解度限界を下回るLARG濃度で生ずる。本明細書に記載されるように、脂肪酸とアミノ酸との組成物(例えば、UCA/LARG)は、LARGがその溶解度限界であるか又はそれ未満である(且つ中国大黄抽出物/レイン及び/若しくはセチルアルコールが存在しない)場合にのみ達成することのできるUCA:LARG濃度比率の特定の枠内でのみ有意な有効性(例えば、抗病原性及び/若しくは抗癌性有効性)を有する。更に、この最適な範囲(例えば、約1:0.6~1:1.6の間、例えば約1:0.6~1:1の間等の、1~<1のUCAのLARGに対する比率)は、厳密に限局性であり、前記枠の一端(例えば、約1:1.6超)において有効性の急激な減少が見られる。前記最適な範囲の枠のもう一方の端部では、溶解性の減少が見られ、前記脂肪酸(例えば、UCA)の溶解性がかなり急激に減少する。枠内では、有効性は以前に観察された有効性よりもはるかに大きく、及び最適値に向かう強い傾向が見られる。
【0031】
抗微生物性として使用する為のUCA及びLARGの先行の組成物は中国大黄/レイン及びセチルアルコール(CA)を含んでおり、及び前記中国大黄抽出物(レイン)及びセチルアルコールは必要であると考えられた。驚くべきことに、本発明者らは、中国大黄/レイン及びCAの両方を取り除くことで、得られる化合物の活性が劇的に改善することを見出し、この改善は、UCA:LARGの比率を約1:0.6~1:1.6の間に調節した場合に更により大きかった。レインは抗微生物活性を有し及びCAは広く受け入れられている賦形剤である(及び従って有効性に悪影響を与えるものではない)為、このことは予想外であった。
【0032】
例えば、
図1は、UCA及びLARGを包含する種々の組成物の、3種のMRSA分離株に対する抗微生物効果を示している。
図1において、1つの例示的な組成物、「WT13-13」はUCA、LARG、レイン、CA、及び水を含有し、UCA+LARG+CAの組成物はレインを含有せず(水は含む)、及びUCA+LARGの組成物はレイン及びCAを含有しない(水は含む)。全てのケースにおいて、UCA及びLARGの濃度は一定に保たれた。尚、有効性は、薬物製品による処置の24時間後に残存する生菌濃度(単位:CFU/mL)として報告されている(CLSIガイドラインに準拠)。この第1の実施例では、UCA及びLARGだけを含む組成物は、中国大黄抽出物/レイン、UCA、及びLARGを含む組成物、若しくは更にはUCA及びLARGを賦形剤、CAと共に含む組成物よりも、強力に抗微生物性であった。
図1では、UCAとLARGとの比率は最適化されていない。
【0033】
UCA+LARG及び賦形剤(例えば、CA)化合物をCAの濃度を変更して更に試験し、抗微生物有効性を調べた。
図2A~2Bは得られた有効性(3種のMRSA分離株に渡って取られた平均)を示す。
図2Aはy軸上のフルスケール(例えば、8×10
6CFU/mLまで)を示し、
図2Bはズームしたy軸を示し、低いCA濃度の挙動をより見易くしている。有効性は処置の24時間後に残存する生菌の濃度(単位:CFU/mL)として報告する。図示のように、UCA及びLARG組成物におけるCAの量の増加は有効性の低下をもたらした。
【0034】
このように、中国大黄/レイン及びCAを除去することでより良好な有効性がもたらされる。更に、CAはその濃度の関数としての明白な阻害効果を付与した。これらの所見は、UCA及びLARG単独(又は併用)では有意な抗微生物性(例えば、抗細菌性)効果を示さなかったということを示す、以前に公開されたデータと食い違っている。例えば、米国特許第2015/0366925号の
図4~7参照のこと。
【0035】
特に、以前に記載されたUCA及びLARGの組成物は厳密に制御されたUCA及びLARG濃度を含んでいた。例えば、最大効力において、LARGの濃度は293mg/mL及びUCAは180mg/mLであり、結果としてUCA:LARG比は1:1.62であった。LARGの溶解度限界は182mg/mLである。中国大黄抽出物/レインを有するこれらの組成物におけるLARGのUCAに対する最も高い比率が、溶液中に前記抽出物/レインを維持することを補助することを含め、中国大黄の有効性を高めると考えられていた。
【0036】
最初の実験はLARGとUCAとの比率を変化させることによって開始した。例えば、
図3(表1)に示すように、LARGを293mg/mLに保ち、UCAの濃度を10%の幅で増減した。
図3にこれらの変化がUCA及び/若しくはLARGの溶解性に与える効果をまとめたが、両成分の溶解性を達成する為にはUCA:LARG比を厳密に制御する必要があるということが示されている。
【0037】
これまでは、推定される活性成分、中国大黄抽出物/レインの活性及び/若しくは溶解性を維持する為に、LARGは過剰に、及び特に、その溶解度を超える濃度に(例えば、293mg/mL等の過飽和状態で)維持すべきであると考えられていた。しかしながら、本明細書に記載されるように、LARG濃度をその溶解度限界未満に減少させることで、特に、例えば1:1以下の比率(即ち重量基準でLARGよりもUCAが多い比率)を包含する、はるかに広範囲のUCA:LARG比が達成可能となり、より低い比率は、中国大黄抽出物/レインを使用することなく、より高い治療有効性を示す。例えば、
図4(表2を示す)に溶解性の結果がまとめられており、LARG濃度がLARGの溶解度限界未満(例えば、182mg/mL)である組成物を示しており、また種々のUCA:LARGの比率を試験した。
【0038】
図4から、1:0.67~1:0.64のUCA:LARG比の間に、UCAが不溶性となる溶解性の「レッジ(ledge)」が存在することが明らかである。非常に厳密な範囲が観測された。UCA及びLARGの実際の濃度は、これらの2点間で2mg/mL(例えば、それぞれ1.9%及び2.9%)だけ異なる。
【0039】
このように、その溶解度限界未満のLARG(その限界を超える場合とは対照的に)を用いて、UCA:LARG濃度のより広い範囲を処方することが可能であるものの、これらの比率の部分集合のみが治療有効性を有する。全溶解性範囲に渡る(例えば、1:2.00~1:0.67の間の)数々のUCA:LARG比を細菌に対して試験した。全てのケースにおいて、薬物製品は、UCA、LARG、及び滅菌水を含み(レイン及びCAの両方は除外され)、及び水分量を調節することによって、活性成分の合計割合を17%で一定に保持した。
図5~7及び8~11にこれらの有効性試験の結果をまとめる。例えば、
図5は、UCA:LARGの異なる比率で適用されたUCA及びLARGの(レイン若しくはCAは含まない)組成物の例を示すが、約1:1.6(例えば、約1:<1.5)の比率で劇的な抗微生物効果を示している。
図5では、y軸はフルスケール(1.5×10
8CFU/mLまで)を示し、
図6及び
図7は、UCA:LARGの比率に強く依存する有効性の変化をより分かり易くする為にズームしたy軸を提供する。尚、有効性は、薬物製品による処置の24時間後に残存する生菌の濃度(単位:CFU/mL)として報告される(CLSIガイドラインに準拠)。
図5、
図6、及び
図7を通し、これらの実施例における薬物希釈は、17%活性からの1:16とした。
【0040】
言及したように、以前に記載された薬物製品はその溶解度限界を上回るLARGを含有しており、そのようなものとして、1:1を超える(例えば、典型的に1:1.6よりも大きな)UCA:LARG比を有していた。例えば、レインを含む以前に記載された化合物、WT13は、1:1.62のUCA:LARG比を有しており、これは効果的な治療範囲外(例えば、治療活性が劇的に落ちる前記「レッジ」領域内)であった。UCA:LARG比を低下させると有効性は劇的に改善した。例えば、1:0.67のUCA:LARG比は、1:1.62の比率(過飽和のLARGを有する以前に記載された薬物製品において使用された比率)よりも50,000倍有効である。
【0041】
約1:1未満のUCA:LARG比(その場合上記のグラフで細菌濃度がゼロである)における有効性の挙動を更に調べる為に、17%活性からの1:64のより高い薬物希釈を用いて上記の実験を反復した。
図8~11は3種のMRSA分離株(MRSA10、11、及び12)から得られた平均細菌濃度をUCA:LARG比の関数として示した。
図8は水平及び垂直軸上のフルスケールを示し、
図9及び
図10はズームした垂直軸を示し、
図11はズームした垂直及び水平軸を提供する。このデータによると、約1:1以下(例えば、1:≦1)のUCA:LARG比は、1:1超(例えば、1:>1)よりも優れている。本明細書により詳細に記載されるように、UCA:LARG比の最適な活性枠が存在し得、例えば、一般にはUCAの質量単位毎に1.5質量単位以下のLARGが存在する比率である。より詳細には、UCAの質量単位毎に、1.4質量単位以下のLARG、1.3質量単位以下のLARG、1.2質量単位以下のLARG、1.1質量単位以下のLARG、1.0質量単位以下のLARG等が存在する。例えば、UCA:LARGの比率の範囲は、UCAの質量単位当たり約0.65質量単位のLARG~約1.5質量単位のLARGの間(例えば、1:0.6~1:1.6の間のUCA:LARG比)であり得る。
【0042】
この最適な枠の更なる支持として、UCA:LARGの種々の化合物においてpH試験を行い、UCAとLARGとの間の最適な濃度関係を示す相関関係を特定した。
図12は、UCA:LARG比の関数としてのpHを示す。この例においては、約1:0.80を上回る比率において、pHは急激に上昇するが、このことは、UCAと比較してLARGが相対的に豊富となることに起因し得る(LARGは塩基性が高い為)。薬物組成物における高いpHは一部の患者において皮膚刺激のリスクを提示することがあり、及びまた、身体が全身適用に対して緩衝作用を示すことを困難にする恐れもある。最適な比率(例えば、1:1.0以下、例えば、1:<1)のより中性のpHが望まれ得る。
【0043】
以前に記載された1:1.62のUCA:LARG比では、セチルアルコール(CA)及びレインを溶液中に容易に入れることができ、及びアンモニア(LARGから放出される)の放出が検出されることも多かった。それに対して、最適化された比率の範囲(例えば、1:0.6~1:1.6の間、例えば、約1:0.7~1:1.6の間)では、CAもいずれのレインも溶液中に容易には入れ若しくは維持され得ない(及びアンモニアの放出は検出されなかった)。
【0044】
故に、本明細書には、約1:0.6~約1:1.6の間の効果的な範囲以内のUCA:LARGモル比の範囲を有する薬剤的に効果的な組成物が記載される。下端(例えば、1:0.6)は、例えば、UCAが可溶性となされるならば、より低く、例えば1:<0.65でもよい。これらの組成物は、明白にCAを除外してよいがしかし、任意の他の賦形剤若しくは緩衝剤を使用してもよい。前記範囲は、例えば、約1:0.6(又は約1:0.65、約1:0.66、約1:0.67、約1:0.68、約1:0.69、約1:0.7、約1:0.72等)~約1:1.6(例えば、約1:1.55、約1:1.5、約1:1.45、約1:1.4、約1:1.35、約1:1.30、約1:1.25、約1:1.20、約1:1.15、約1:1.10、約1:1.05、約1:1.0、約1:0.9等)の間(それらの間の任意の部分範囲を包含する)であってよい。
【0045】
本明細書には、UCA及びLARGの(それらの各ファミリー内の他の類似の化学物質による)代替物の組成物もまた記載される。
【0046】
例えば、本明細書には、約1:0.6及び1:1.6のモル比の範囲内、例えば、約1:0.6~1:1.6の間(例えば、約1:0.7~約1:1.6の間、幾つかの変形形態では、脂肪酸とアミノ酸のモル比が約1:1若しくは約5:4である)の脂肪酸:アミノ酸比率の脂肪酸とアミノ酸との組成物が記載される。一般に、前記脂肪酸は不飽和脂肪酸(例えば、UCA及びリノール酸等であるがそれらに限定されない)若しくは飽和脂肪酸(例えば、ラウリン酸、オクタン酸、デカン酸等であるがそれらに限定されない)であってよい。前記アミノ酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、LARG、リジン等であるがそれらに限定されない)、若しくは芳香族アミノ酸(例えば、ヒスチジンであるがそれに限定されない)、若しくはイミノアミノ酸(例えば、プロリンであるがそれに限定されない)であってよい。驚くべきことに、これらの規定されたモル範囲外では、前記抗病原性活性は顕著に失われる。前記範囲は、例えば、約1:0.6(若しくは約1:0.62、約1:0.63、約1:0.64、約1:0.65、約1:0.66、約1:0.67、約1:0.68、約1:0.69、約1:0.7、約1:0.72等)~約1:1.5(若しくは約1:1.45、約1:1.4、約1:1.35、約1:1.30、約1:1.25、約1:1.20、約1:1.15、約1:1.10 約1:1.05等)の間(これらの中の任意の部分範囲を包含する)であり得る。
【0047】
本明細書に記載される組成物は、1以上の他のAPI若しくは賦形剤を含んでよい。これらの組成物は、抗細菌性、抗ウィルス性、抗真菌性、抗癌性を包含する広範な用途/目的に渡って、皮膚、全身、経口、吸入、静脈内、及び筋肉内を包含する広範な送達経路により、使用されてよい。特に、本明細書に記載される組成物は、グラム陽性及びグラム陰性の両方の細菌に対して強力な有効性を示す。本明細書に記載された抗病原性化合物(本明細書においては抗病原性の剤と称する場合もある)は、特にグラム陰性及びグラム陽性細菌、真菌、及びウィルスを包含する多様な病原体に対して効果的である。これらの組成物は、マイコバクテリウムを包含する細菌の他の部類に対して、並びに真菌に対しても、効果的であり得る。
【0048】
これらの抗病原性化合物は、例えば、ヒトの若しくはヒト以外の患者における、細菌性感染を包含する感染を処置若しくは予防する為に使用されてもよい。これらの抗病原性化合物は、病原性感染の進行を死滅させる、止める、若しくは遅らせる(又は身体若しくは材料中又は上の、例えば表面上の、病原体を死滅させる及び/又はその生育を遅らせる若しくは止める)為に使用されてよい。例えば、本明細書には、静菌性の組成物が記載される。例えば、本明細書には、1:0.6~1:1.6の間の脂肪酸:アミノ酸(例えば、UCA:LARG)の混合物を含む静菌性の組成物が記載され、追加の物質(賦形剤、希釈剤、若しくは担体)が前記混合物と組み合わされて前記抗病原性化合物を形成してもよい。幾つかの変形形態では、前記アミノ酸はL-アルギニンを含み、前記脂肪酸はウンデシレン酸を含む。
【0049】
本明細書に記載された治療用(例えば、抗病原性、抗癌性)組成物のいずれかは、感染及び/若しくは癌を患っている若しくは発現するリスクのある患者、例えば、ヒトの若しくはヒト以外の患者を、1以上のアミノ酸及び1以上の脂肪酸を記述された範囲で含む本明細書に記載された治療用組成物の1以上の治療上効果的な量を投与することによって処置する為に、使用されてよい。例えば、本明細書には、感染を患っている若しくは発現するリスクのある患者、例えば、ヒト若しくはヒト以外の患者を、1以上の脂肪酸及び1以上のアミノ酸を約1:0.6~1:1.6の間のモル比で含有する組成物の治療上効果的な量を投与することによって処置する方法が記載される。前記範囲は、例えば、約1:0.6(若しくは約1:0.66、約1:0.67、約1:0.68、約1:0.69、約1:0.7、約1:0.72等)~約1:1.45(若しくは約1:1.4、約1:1.35、約1:1.30、約1:1.25、約1:1.20、約1:1.15、約1:1.10 約1:1.05、約1:1、約1:9等)の間(これらの中の任意の部分範囲を包含する)であり得る。
【0050】
本明細書に記載された抗病原性組成物のいずれかは、前記抗病原性組成物の1以上を患者への投与の為の指示と共に含むキットの一部であってよい。
【0051】
前記1以上のアミノ酸は、例えば、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸塩、グルタミン酸塩、グルタミン、ヒスチジン、セリン、トレオニン、及びリジンの1以上を含んでよい。前記1以上のアミノ酸は、例えば、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、セリン、トレオニン、及びバリンの1以上を包含する脂肪族アミノ酸を含んでよい。特に、前記1以上のアミノ酸は、アルギニン、ヒスチジン、及び/若しくはリジンを含んでよい。脂肪酸は、飽和若しくは不飽和(例えばモノ不飽和若しくはポリ不飽和)であってよい。特に、前記脂肪酸は、C4~C20、若しくはC4~C18の間の脂肪数(例えば、炭素数)を有する脂肪酸(例えば、ブタン酸、イソ酪酸塩、ペンタン酸、3-メチルブタン酸塩、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸、トリデカン酸、テトラデカン酸、(9Z)-ヘキサデセン酸、ヘキサデカン酸、ヘプタデカン酸、オクタデカン酸、(9Z,12Z)-オクタデカ-9,12-ジエン酸、(9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-9,12,15-トリエン酸、(6Z,9Z,12Z)-オクタデカ-6,9,12-トリエン酸、(5E,9E,12E)-オクタデカ-5,9,12-トリエン酸、(6Z,9Z,12Z,15Z)-オクタデカ-6,9,12,15-テトラエン酸、(Z)-オクタデカ-9-エン酸、(11E)-オクタデカ-11-エン酸、(E)-オクタデカ-9-エン酸等の1以上)であってよい。幾つかの変形形態では、前記脂肪酸は、C4~C18の間の非分枝脂肪酸(例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸等)であってよい。例えば、不飽和脂肪酸は、例えばウンデシレン酸(例えば、ウンデカン酸)とすることができる。幾つかの変形形態では、前記脂肪酸は、C4~C12脂肪酸(例えば、ブタン酸、イソ酪酸塩、ペンタン酸、3-メチルブタン酸塩、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸)の1以上、若しくは非分枝C4~C12脂肪酸(例えば、ブタン酸、ペンタン酸、ヘキサン酸、ヘプタン酸、オクタン酸、ノナン酸、デカン酸、ウンデカン酸、ドデカン酸)の1以上、又はC8~C20若しくはC8~C18を含んでよい。
【0052】
これらの組成物のいずれかは、メントール等の冷却若しくは加熱添加剤を含んでよい。前記組成物は、前記混合物に加えて、薬剤的に許容可能な賦形剤、希釈剤、若しくは担体を含有してよい。賦形剤、希釈剤、若しくは担体の量は、アミノ酸及び脂肪酸の相対的比率(パーセンテージ)を変化させない。
【0053】
幾つかの変形形態では、局所製剤は、乳化剤等のいずれの追加の賦形剤も含まない。幾つかの変形形態では、前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は、局所適用向けに構成されてよい。例えば、前記賦形剤、希釈剤、若しくは担体は、乳化剤を含んでもよい。一般に、賦形剤、希釈剤、若しくは担体(水を包含する)は、薬物若しくは他の活性物質の為のビヒクル若しくは媒体として働く不活性な物質である。賦形剤は、増容剤、充填剤等を包含し得る。前記賦形剤は、粉末流動性若しくは非粘着特性を促進すること、インビトロ安定性を補助すること(例えば、期待される貯蔵寿命に渡る変性若しくは凝集の防止)、溶解性を増強すること、吸収及び/若しくは摂取を改善すること、より良い審美的及び/若しくは美容的特徴を提供すること、物性を変更すること等によって、活性物質の混合物の取り扱いを補助し得る。
【0054】
賦形剤の例としては、以下を挙げてよい:抗付着剤(antiadherents)(例えば、ステアリン酸マグネシウム等);結合剤(例えば、糖類及びそれらの誘導体(二糖類、スクロース、ラクトース);多糖類及びそれらの誘導体(デンプン類、セルロース、若しくはマイクロクリスタリンセルロース等の変性セルロース、及びヒドロキシプロピルセルロース等のセルロースエーテルを包含するセルロース誘導体);キシリトール、ソルビトール、若しくはマンニトール等の糖アルコール類;タンパク質(ゼラチン);合成ポリマー類(ポリビニルピロリドン、即ちPVP、ポリエチレングリコール、即ちPEG、ポリビニルピロリドン、デンプン、スクロース、及びポリエチレングリコール、メチルセルロース));コーティング類(例えば、セルロースエーテルヒドロキシプロピルメチルセルロース、合成ポリマー類、シェラック、トウモロコシタンパク質ゼイン若しくは他の多糖類、ゼラチン);腸内細菌(enterics)(脂肪酸類、ワックス類、シェラック、プラスチック類、及び植物繊維類);着色剤(酸化チタン、アゾ染料類等);崩壊剤(例えば、架橋ポリマー類(クロスポピドン等の架橋ポリビニルピロリドン、架橋カルボキシメチルセルロースナトリウム若しくはクロスカルメロースナトリウム、グリコレート等));風味剤(果実抽出物等);滑剤(例えば、フュームドシリカ、タルク、及び炭酸マグネシウム等);潤滑剤(例えば、タルク若しくはシリカ、及び脂肪類、例えば植物性ステアリン、ステアリン酸マグネシウム、若しくはステアリン酸等);保存料(例えば、ビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、パルミチン酸レチニル、及びセレニウムのような酸化防止剤;システイン、メチオニン;クエン酸、クエン酸ナトリウム;パラベン類(メチルパラベン及びプロピルパラベン));吸着剤;甘味料(例えば、砂糖);ビヒクル(ペトロラタム、ジメチルスルホキシド、鉱油等);軟化剤/剛化剤(カルナウバ蝋、セチルアルコール、セチルエステルワックス、乳化ワックス、加水ラノリン、ラノリン、ラノリンアルコール類、マイクロクリスタリンワックス、パラフィン、ペトロラタム、ポリエチレングリコール、ステアリン酸、ステアリルアルコール、白蝋、黄蝋等);乳化剤(emulsifier)/乳化剤(emulsifying agent)/可溶化剤(ポリソルベート(Polysorbate)20、ポリソルベート80、ポリソルベート60、ポロキサマー(Poloxamer)、乳化ワックス、ソルビタンモノステアレート、ソルビタンモノオレエート、ラウリル硫酸ナトリウム、プロピレングリコールモノステアレート、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ドクサート(Docusate)ナトリウム等);保水剤(例えば、グリセリン、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ソルビトール溶液、1,2,6ヘキサントリオール等);増粘/ゲル化剤(カルボマー(Carbomer)、メチルセルロース、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、カラギーナン、コロイド状二酸化ケイ素、グアーガム、ヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ゼラチン、ポリエチレンオキシド、アルギン酸、アルギン酸ナトリウム、フュームドシリカ等);保存料(安息香酸、プロピルパラベン、メチルパラベン、イミド尿素、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、塩化ベンザルコニウム、酢酸フェニル水銀、クロロブタノール、フェノキシエタノール等);透過促進剤(プロピレングリコール、エタノール、イソプロピルアルコール、オレイン酸、ポリエチレングリコール等);キレート剤(エチレンジアミン四酢酸等);酸性化/アルカリ化/緩衝化剤(クエン酸、リン酸、水酸化ナトリウム、リン酸二水素ナトリウム、トロラミン等);ビヒクル/溶媒(精製水、ヘキシレングリコール、プロピレングリコール、オレイルアルコール、炭酸プロピレン、鉱油等)。これらの例は過剰であり得、及び異なる理由で異なる賦形剤を使用してもよく、及び二重若しくは多重の機能性を有していてもよい。
【0055】
前記組成物は、スプレー、ローション、クリーム、軟膏、チンキ等を包含する、ヒトへの局所投与に好適な形態の液体若しくはエマルションとして構成されてよい。
【0056】
本明細書には、グラム陰性及びグラム陽性細菌、ウィルス、及び真菌に対して効果的な抗病原性の剤を用いて病原体を破壊する為に患者を処置する方法もまた記載される。例えば、前記方法は、治療上効果的な量の前記抗病原性の剤を前記患者に投与することを含んでよく、前記抗病原性の剤は、本明細書に記載されるような脂肪酸とアミノ酸との混合物を含み、脂肪酸:アミノ酸のモル比は約1:0.6~約1:1.6の間、及びその任意の部分範囲にある。
【0057】
投与することは、前記抗病原性の剤を前記患者の皮膚、前記患者の創傷等に適用することを含んでよい。例えば、投与することは、前記抗病原性の剤を前記患者に噴霧することを含んでよい。代替的に若しくは追加的に、投与することは、前記抗病原性の剤を前記患者に全身的に適用することを含んでよい。本明細書に記載される組成物はまた、コーティング(例えば、医療デバイス、インプラント等に対する)として使用されてもよい。
【0058】
それらを使用するこれらの組成物及び方法は、種々の病原体及び/若しくは癌に対して使用されてよい。例えば、それらを使用する前記組成物び方法は、グラム陰性細菌、グラム陽性細菌、真菌、マイコバクテリア、肺炎細菌、大腸細菌、及び/若しくはウィルスの1以上を処置する為に使用されてよい。このリストは例示にすぎず、網羅的であることを意図していない。ウィルスの例としては、天然痘ウィルス(大痘瘡及び小痘瘡)、インフルエンザウィルス(タイプA、タイプB、タイプC、及びタイプD)、麻疹ウィルス、流行性耳下腺炎ウィルス、風疹ウィルス、水痘帯状疱疹ウィルス、A型肝炎ウィルス、B型肝炎ウィルス、単純ヘルペスウィルス1及び2、ポリオウィルス、狂犬病ウィルス、エボラウィルス、ハンタウィルス類、ヒト免疫不全ウィルス(HIV)、重症急性呼吸器症候群(SARS)コロナウィルス、デング熱ウィルス、ジカウィルス、及びエプスタインバーウィルスを挙げてよい。
【0059】
言及したように、これらの組成物は、癌に対して使用されてもよい。例えば、本明細書に記載される組成物は、以下を処置する為に使用されてよい:腺様嚢胞癌、副腎癌、アミロイドーシス、肛門癌、毛細血管拡張性運動失調症、非定型母斑症候群、基底細胞癌、胆管癌、バート・ホッグ・デューベ症候群、膀胱癌、骨癌、脳腫瘍、乳癌、カルチノイド腫瘍、子宮頸癌、結腸直腸癌、腺管癌、子宮内膜癌、食道癌、胃癌、消化管間質腫瘍-GIST、HER2陽性乳癌、膵島腫瘍、若年性ポリポーシス症候群、腎臓癌、喉頭癌、白血病、急性リンパ芽球性白血病、急性リンパ性(ALL)白血病、急性骨髄性AML白血病、慢性リンパ性白血病、慢性骨髄性白血病、肝臓癌、小葉癌、肺癌、ホジキンリンパ腫、非ホジキンリンパ腫、悪性神経膠腫、メラノーマ、髄膜腫、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群(MDS)、上咽頭癌、神経内分泌腫瘍、口腔癌、骨肉腫、卵巣癌、膵臓癌、膵内分泌腫瘍、副甲状腺癌、陰茎癌、腹膜癌、ポイツ・ジェガース症候群、下垂体腫瘍、真性多血症、前立腺癌、腎細胞癌、網膜芽細胞腫、胆液腺癌、肉腫、皮膚癌、小腸癌、胃癌、精巣癌、胸腺腫、甲状腺癌、子宮(子宮内膜)癌、膣癌、及び/若しくはウィルムス腫瘍。癌の処置は、癌細胞を死滅させる若しくは破壊すること、癌の増殖を減少させること、腫瘍サイズを減少させること等を含んでよい。
【0060】
本明細書に記載される治療剤(組成物)は、典型的にはセチルアルコールを除く、賦形剤、希釈剤、若しくは担体を含んでよい。故に、本明細書には、抗病原性(例えば、抗細菌性及び/若しくは抗ウィルス性及び/若しくは抗真菌性及び/若しくは抗微生物性)化合物及びそれらを使用する方法が記載される。本明細書に記載される化合物及びそれらを作製する及び使用する方法は、部分的には、混合物の各成分の比率若しくはパーセンテージが特定の範囲である混合物を形成する為の、1以上のアミノ酸と1以上の脂肪酸(例えば、C4~C18)との混合物の発見に基づく。それらの成分が前記混合物中で所望の範囲内にある場合、前記組成物は、グラム陽性細菌(マイコバクテリア等の抗酸グラム陽性細菌を包含する)及びグラム陰性細菌の両方並びに特定の病原性真菌及びウィルスにまたがる広範な抗病原性治療特性を発現する。驚くべきことに、これらの規定された範囲外では、特にグラム陰性細菌を包含する、特に病原体の特定のカテゴリーに関しては、前記抗病原性活性は有意に失われる。
【0061】
これらの組成物は、病原体に暴露された若しくは暴露される可能性のある患者(例えば、ヒト若しくはヒト以外の動物)を直接処置する為に、医療表面を包含する表面を衛生化する為に、医療デバイス若しくはインプラント用のコーティングとして、若しくは抗病原性材料が有用であり得る任意の他の用途において、使用されてよい。本明細書に記載される組成物はまた、患者に対して直接の悪影響(例えば、毒性)をほとんど与えないように思われる。
【0062】
別途規定しない限り、本明細書で使用される全ての技術的及び科学的用語は、本発明が属する分野の当業者に通常理解される意味を有する。以下の参考文献は、当業者に本発明において使用される用語の多くの一般的な定義を提供する:シングルトン(Singleton)ら、ディクショナリー オブ ミクロバイオロジー アンド モレキュラー バイオロジー(Dictionary of Microbiology and Molecular Biology)(第2版、1994年);ザ ケンブリッジ ディクショナリー オブ サイエンス アンド テクノロジー(The Cambridge Dictionary of Science and Technology)(ウォーカー(Walker)ら、1988年);ザ グロサリー オブ ジェネティクス(The Glossary of Genetics)第5版、R.リーガー(R. Rieger)ら(編)、スプリンガーバーラグ(Springer Verlag)(1991年);及びヘイル アンド マーカム(Hale & Marham)、ザ ハーパー コリンズ ディクショナリー オブ バイオロジー(The Harper Collins Dictionary of Biology)(1991年)。本明細書で使用するとき、別途特定しない限り、下記の用語はそれらに帰属する意味を有する。アミノ酸の定義はアメリカ国立生物工学情報センター(National Center for Biotechnology Information、NCBI)により記載される通りであり得る。
【0063】
本明細書で使用するとき、下記の用語は指定された意味を有する。
【0064】
用語「アシル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、そのカルボニルに結合される原子が炭素である、アルケニル、アルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、ヘテロシクリル、若しくは任意の他の部位に結合されたカルボニルを指す。「アセチル」基は-C(O)CH3基を指す。
【0065】
「アルキルカルボニル」若しくは「アルカノイル」基は、カルボニル基を介して親分子部位に結合されるアルキル基を指す。かかる基の例としては、メチルカルボニル及びエチルカルボニルが挙げられる。アシル基の例としてはホルミル、アルカノイル、及びアロイルが挙げられる。
【0066】
用語「アルケニル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、任意で置換され及び2~20、好ましくは2~6個の炭素原子を含有する、1以上の二重結合を有する直鎖若しくは分枝鎖炭化水素ラジカルを指す。アルケニルとは、エテニレン[(-CH=CH-)、(-C::C-)]等の、2箇所以上において結合される炭素-炭素二重結合系を指す。アルケニルラジカルの例としてはエテニル、プロペニル、2-メチルプロペニル、1,4-ブタジエニル等が挙げられる。
【0067】
用語「アルコキシ」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、任意で置換されたアルキルエーテルラジカルを指し、用語アルキルについては以下に規定する。アルキルエーテルラジカルの例としてはメトキシ、エトキシ、n-プロポキシ、イソプロポキシ、n-ブトキシ、イソブトキシ、sec-ブトキシ、tert-ブトキシ等が挙げられる。
【0068】
用語「アルキル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、1~20及び20を包含する、好ましくは1~10、及びより好ましくは1~6個の炭素原子を含有する、任意で置換された直鎖若しくは分枝鎖アルキルラジカルを指す。アルキル基は任意で、本明細書で規定されるように置換されてよい。アルキルラジカルの例としては、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、ペンチル、イソアミル、ヘキシル、オクチル、ノニル等が挙げられる。
【0069】
用語「アルキルアミノ」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、アミノ基を介して親分子部位に付着された、任意で置換されたアルキル基を指す。アルキルアミノ基はモノ若しくはジアルキル化されていて、例えば、N-メチルアミノ、N-エチルアミノ、N,N-ジメチルアミノ、N,N-エチルメチルアミノ等の基を形成してよい。
【0070】
用語「アルキルチオ」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、アルキルチオエーテル(R-S-)ラジカルを指し、用語アルキルは上記で規定された通りであり、及び硫黄は一重に若しくは二重に酸化されてよい。アルキルチオエーテルラジカルの例としては、メチルチオ、エチルチオ、n-プロピルチオ、イソプロピルチオ、n-ブチルチオ、イソブチルチオ、sec-ブチルチオ、tert-ブチルチオ、メタンスルホニル、エタンスルホニル等が挙げられる。
【0071】
用語「アルキニル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、1以上三重結合を有し及び2~20、好ましくは2~6、より好ましくは2~4個の炭素原子を含有する、直鎖若しくは分枝鎖炭化水素ラジカルを指す。「アルキニル」はエチニレン(-C:::C-、-C≡C-)等の2箇所で結合される炭素-炭素三重結合を指す。アルキニルラジカルの例としてはエチニル、プロピニル、ヒドロキシプロピニル、ブチン-1-イル、ブチン-2-イル、ペンチン-1-イル、3-メチルブチン-1-イル、ヘキシン-2-イル等が挙げられる。
【0072】
用語「アミド」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、カルボニル基を介して親分子部位に結合される、若しくはその逆の、下記に記載するようなアミノ基を指す。
【0073】
用語「アミノ」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、-NRR’を指し、式中、R及びR’は水素、アルキル、アシル、ヘテロアルキル、アリール、シクロアルキル、ヘテロアリール、及びヘテロシクロアルキルから成る群から独立して選択され、これらの全てが任意でそれ自身置換されていてよい。
【0074】
用語「アリール」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、少なくとも1つのハロゲン、1~3個の炭素原子を含有するアルキル、アルコキシ、アリールラジカル、ニトロ官能基、ポリエーテルラジカル、ヘテロアリールラジカル、ベンゾイルラジカル、アルキルエステル基、カルボン酸、任意でアセチル若しくはベンゾイル基で保護されたヒドロキシ、或いは任意でアセチル若しくはベンゾイル基で保護された又は任意で1~12個の炭素原子を含有する少なくとも1つのアルキルにより置換されたアミノ官能性により、置換されていてもよい、1、2、若しくは3つの環を含有する炭素環式芳香族系を意味し、これらの環は互いにペンダント様に結合されていても若しくは縮合されていてもよい。
【0075】
用語「アリールアルキル」若しくは「アラルキル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、アルキル基を介して親分子部位に結合されるアリール基を指す。
【0076】
用語「アリールオキシ」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、酸素原子を介して親分子部位に結合されるアリール基を指す。
【0077】
用語「ポリエーテルラジカル」は、メトキシメチル、エトキシメチル、若しくはメトキシエトキシメチルラジカル、又はメトキシエチル等の、少なくとも1つの酸素原子に遮られた2~6個の炭素原子を含有するポリエーテルラジカルを意味する。
【0078】
用語「ベンゾ」及び「ベンズ」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、ベンゼンから誘導される二価のラジカルC6H4=を指す。例としてはベンゾチオフェン及びベンズイミダゾールが挙げられる。
【0079】
用語「カルバメート」及び「カルバモイル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、窒素若しくは酸端部のいずれかから親分子部位に結合され得る、及び任意で本明細書で規定されるように置換されてよい、カルバミン酸(-NHCOO-)のエステルを指す。
【0080】
用語「カルボニル」は本明細書で使用するとき、単独の場合はホルミル[-C(O)H]を包含し及び組み合わせでは-C(O)-基を包含する。
【0081】
用語「カルボキシ」は本明細書で使用するとき、-C(O)OH若しくはカルボン酸塩中にある場合のように対応する「カルボキシレート」アニオンを指す。「Oカルボキシ」基はRC(O)O-基を指し、式中Rは本明細書で規定される通りである。「Cカルボキシ」基は-C(O)OR基を指し、式中Rは本明細書で規定される通りである。
【0082】
本発明に従う用語「化学的安定性」は、その含有量が最初の含有量に対して変化をほとんど示さないこと、即ち、時点Tにおける活性成分の含有量における変化がT0における最初の含有量の90%未満とならない、より詳細には95%未満とならないことを意味する。
【0083】
用語「シアノ」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、-CNを指す。
【0084】
用語「シクロアルキル」又は代替的に「カルボサイクル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、各環状部位が3~12、好ましくは5~7個の炭素原子環員を含有し及び任意で、任意で本明細書で規定されるように置換された、ベンゾ縮合環系であってよい、飽和若しくは部分的に飽和な単環、二環、若しくは三環のアルキルラジカルを指す。かかるシクロアルキルラジカルの例としては、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、オクタヒドロナフチル、2,3-ジヒドロ-1H-インデニル、アダマンチル等が挙げられる。「二環」及び「三環」は本明細書で使用するとき、デカヒドロナフタレン、オクタヒドロナフタレン等の縮合環系、並びに多環(多中心)飽和若しくは部分的に不飽和のタイプの両方を包含することが意図される。後者のタイプの異性体は一般にビシクロ[1,1,1]ペンタン、カンファー、アダマンタン、及びビシクロ[3,2,1]オクタンよって例示される。
【0085】
用語「エステル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、炭素原子において連結された2つの部位を架橋するカルボキシ基を指す。
【0086】
用語「エーテル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、炭素原子において連結された2つの部位を架橋する酸素原子を指す。
【0087】
用語「ハロ」若しくは「ハロゲン」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、フッ素、塩素、臭素、若しくはヨウ素を指す。
【0088】
用語「ハロアルキル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、上記規定されたような意味を有するアルキルラジカルであって1以上水素がハロゲンで置換されたアルキルラジカルを指す。具体的には、モノハロアルキル、ジハロアルキル、及びポリハロアルキルラジカルが包含される。モノハロアルキルラジカルは、一例として、そのラジカル内にヨード、ブロモ、クロロ、若しくはフルオロ原子を有してよい。ジハロ及びポリハロアルキルラジカルは2以上の同一のハロ原子若しくは異なるハロラジカルの組み合わせを有してよい。ハロアルキルラジカルの例としては、フルオロメチル、ジフルオロメチル、トリフルオロメチル、クロロメチル、ジクロロメチル、トリクロロメチル、ペンタフルオロエチル、ヘプタフルオロプロピル、ジフルオロクロロメチル、ジクロロフルオロメチル、ジフルオロエチル、ジフルオロプロピル、ジクロロエチル、及びジクロロプロピルが挙げられる。「ハロアルキレン」は、2箇所以上で結合されるハロアルキル基を指す。例としては、フルオロメチレン(-CHF-)、ジフルオロメチレン(-CF2-)、クロロメチレン(-CHCl-)等が挙げられる。
【0089】
用語「ヘテロアルキル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、完全に飽和した若しくは1~3度の不飽和を含有し、記述した数の炭素原子及びO、N、及びSから成る群から選択される1~3個のヘテロ原子から成る安定な直鎖若しくは分枝鎖、若しくは環状炭化水素ラジカル、若しくはそれらの組み合わせを指し、窒素及び硫黄原子は任意で酸化されていてもよく及び窒素ヘテロ原子は任意で四級化されていてもよい。前記ヘテロ原子(類)O、N、及びSは、ヘテロアルキル基の任意の内部位置に配置されてよい。例えば、-CH2-NH-OCH3のように、2つまでのヘテロ原子が連続していてもよい。
【0090】
用語「ヘテロアリール」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、3~7員の、好ましくは5~7員の、不飽和ヘテロ単環式環、若しくは縮合した多環式環であってその縮合環の少なくとも1つが不飽和である多環式環を指し、少なくとも1つの原子はO、S、及びNから成る群から選択される。この用語は、複素環式ラジカルがアリールラジカルと縮合され、ヘテロアリールラジカルが他のヘテロアリールラジカルと縮合され、又はヘテロアリールラジカルがシクロアルキルラジカルと縮合された縮合多環基もまた包含する。ヘテロアリール基の例としては、ピロリル、ピロリニル、イミダゾリル、ピラゾリル、ピリジル、ピリミジニル、ピラジニル、ピリダジニル、トリアゾリル、ピラニル、フリル、チエニル、オキサゾリル、イソキサゾリル、オキサジアゾリル、チアゾリル、チアジアゾリル、イソチアゾリル、インドリル、イソインドリル、インドリジニル、ベンズイミダゾリル、キノリル、イソキノリル、キノキサリニル、キナゾリニル、インダゾリル、ベンゾトリアゾリル、ベンゾジオキソリル、ベンゾピラニル、ベンゾキサゾリル、ベンゾキサジアゾリル、ベンゾチアゾリル、ベンゾチアジアゾリル、ベンゾフリル、ベンゾチエニル、クロモニル、クマリニル、ベンゾピラニル、テトラヒドロキノリニル、テトラゾロピリダジニル、テトラヒドロイソキノリニル、チエノピリジニル、フロピリジニル、ピロロピリジニル等が挙げられる。例示的な三環複素環式基としては、カルバゾリル、ベンジドリル(benzidolyl)、フェナントロリニル、ジベンゾフラニル、アクリジニル、フェナントリジニル、キサンテニル等が挙げられる。
【0091】
用語「ヘテロシクロアルキル」及び、交換可能に、「ヘテロシクリル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、それぞれ、少なくとも1つの、好ましくは1~4、及びより好ましくは1~2個のヘテロ原子を環員として含有する、飽和、部分的に不飽和、若しくは完全不飽和の単環、二環、若しくは三環複素環式ラジカルを指し、前記の各ヘテロ原子は窒素、酸素、及び硫黄から成る群から独立して選択されてよく、及び好ましくは各環中に3~8個の環員、より好ましくは各環中に3~7個の環員、及び最も好ましくは各環中に5~6個の環員が存在する。「ヘテロシクロアルキル」及び「ヘテロシクリル」は、スルホン、スルホキシド、第3級窒素環員のN-オキシド、及び炭素環式縮合及びベンゾ縮合環系を包含することが意図され、追加的に、両用語はまた、本明細書で規定されるようにヘテロ環式環がアリール基若しくは更なるヘテロ環基に縮合された系、も包含する。本発明のヘテロシクリル基は、アジリジニル、アゼチジニル、1,3-ベンゾジオキソリル、ジヒドロイソインドリル、ジヒドロイソキノリニル、ジヒドロシノリニル(dihydrocinnolinyl)、ジヒドロベンゾジオキシニル、ジヒドロ[1,3]オキサゾロ[4,5-b]ピリジニル、ベンゾチアゾリル、ジヒドロインドリル、ジヒドロピリジニル、1,3-ジオキサニル、1,4-ジオキサニル、1,3-ジオキソラニル、イソインドリニル、モルホリニル、ピペラジニル、ピロリジニル、テトラヒドロピリジニル、ピペリジニル、チオモルホリニル等により例示される。前記ヘテロシクリル基は、具体的に禁止されない限り、任意で置換されていてよい。
【0092】
用語「ヒドロキシル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、-OHを指す。
【0093】
語句「主鎖において」は、基の本発明の化合物に対する結合点において出発する最も長い連続的な若しくは隣接する炭素原子の鎖を指す。
【0094】
語句「原子の線状鎖」は、炭素、窒素、酸素、及び硫黄から独立に選択される原子の最も長い直鎖を指す。
【0095】
用語「低級」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、1~6(6を含む)の炭素原子を含有することを意味する。
【0096】
用語「負に荷電したイオン」は本明細書で使用するとき、無機(例えば、Cl-、Br-、I-)若しくは有機(例えば、TsO-(即ちトシレート))のいずれかの、任意の負に荷電したイオン若しくは分子を指す。
【0097】
用語「ニトロ」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、-NO2を指す。
【0098】
用語「パーハロアルキル」は本明細書で使用するとき、単独で若しくは組み合わせて、水素原子の全てがハロゲン原子によって置換されたアルキル基を指す。
【0099】
本明細書における任意の定義は、複合構造基を記載する為に任意の他の定義と組み合わせて使用されてよい。慣例により、任意のかかる定義の末尾の要素が、親部位に結合する要素である。例えば、複合基アルキルアミドは、アミノ基を介して親分子に結合されるアルキル基を表し得、及び用語アルコキシアルキルは、アルキル基を介して親分子に結合されるアルコキシ基を表し得る。
【0100】
基が「ゼロ」であると規定される場合、それは前記基が存在しないことを意味する。
【0101】
用語「任意で置換された」は、先行する基が置換されても置換されていなくてもよいということを意味する。置換される場合、「任意で置換された」基の置換基の非限定例としては、単独で若しくは組み合わせて、以下の基若しくは特別に設計された一連の基から独立して選択される1以上置換基が挙げられる:低級アルキル、低級アルケニル、低級アルキニル、低級アルカノイル、低級ヘテロアルキル、低級ヘテロシクロアルキル、低級ハロアルキル、低級ハロアルケニル、低級ハロアルキニル、低級パーハロアルキル、低級パーハロアルコキシ、低級シクロアルキル、フェニル、アリール、アリールオキシ、低級アルコキシ、低級ハロアルコキシ、オキソ、低級アシルオキシ、カルボニル、カルボキシル、低級アルキルカルボニル、低級カルボキシエステル、低級カルボキサミド、シアノ、水素、ハロゲン、ヒドロキシ、アミノ、低級アルキルアミノ、アリールアミノ、アミド、ニトロ、チオール、低級アルキルチオ、アリールチオ、低級アルキルスルフィニル、低級アルキルスルホニル、アリールスルフィニル、アリールスルホニル、アリールチオ、スルホネート、スルホン酸、トリ置換シリル、N3、SH、SCH3、C(O)CH3、CO2CH3、CO2H、ピリジニル、チオフェン、フラニル、低級カルバメート、及び低級ウレア。2つの置換基が互いに結合して、例えばメチレンジオキシ若しくはエチレンジオキシを形成する0~3個のヘテロ原子から成る、縮合5、6、若しくは7員炭素環式若しくは複素環式環を形成してもよい。任意で置換された基は、非置換(例えば、-CH2CH3)であってもよく、完全に置換され(例えば、-CF2CF3)、一置換され(例えば、-CH2CH2F)、若しくは完全置換と一置換との間のいずれかのレベルで置換され(例えば、-CH2CF3)てよい。置換基が置換に関する条件なしで記述された場合、置換及び非置換形態の両方が包含される。置換基が「置換された」と条件付けされた場合、具体的に置換された形態が意図されている。加えて、特定の部位に対する任意の置換基の異なるセットが、必要に応じて規定されてもよく、これらのケースでは、その任意の置換基は定義される通りとなり、「optionally substituted with」との語句のすぐ後(「で任意に置換された」のすぐ前)に続くことが多い。
【0102】
本発明の化合物中に、非対称中心が存在する。これらの中心は、キラルな炭素原子の周りの置換基の構成によって、記号「R」若しくは「S」によって示される。本発明は、ジアステレオマー、エナンチオマー、及びエピマー形態、並びにd-異性体及び1-異性体、及びそれらの混合物を含む、全ての立体化学異性体形態を包含することを理解すべきである。化合物の個々の立体異性体は、不斉中心を含有する市販の出発物質から合成により、又はエナンチオマー生成物の混合物を調製した後、分離することによって、例えばジアステレオマーの混合物への転換後、再結晶、クロマトグラフィ技術、キラルクロマトグラフィーカラム上でのエナンチオマーの直接分離、若しくは当該技術分野で既知の任意の他の適切な方法を用いて分離することによって、調製することができる。特定の立体化学の出発化合物は市販品であるか、又は当該技術分野で既知の技術によって作製し及び分離することもできる。加えて、本発明の化合物は幾何異性体として存在し得る。本発明は、全てのシス、トランス、シン、アンチ、エントゲーゲン(entgegen)(E)、及びツザメン(zusammen)(Z)異性体、並びにそれらの適切な混合物を包含する。加えて、化合物は互変異性体として存在してよく、本発明によって全ての互変異性体が提供される。加えて、本発明の化合物は、溶媒化されていない形態並びに水、エタノール等の薬剤的に許容可能な溶媒で溶媒化された形態で存在できる。一般に、溶媒化された形態は溶媒化されていない形態と、本発明の目的に関して等価であると考えられる。
【0103】
光学異性体は、同じ分子式を有するが平面偏光を回転する方向が異なる化合物である。光学異性体の2つのタイプが存在する。光学異性体の第1のタイプは、互いに鏡像であるが互いに重ねることはできない化合物である。これらの異性体は、「エナンチオマー」と呼ばれる。光学異性体の第2のタイプは、鏡像ではないが各分子が平面偏光を回転し及び光学的に活性と見做される分子である。かかる分子は、「ジアステレオマー」と呼ばれる。ジアステレオマーは、それらが平面偏光の回転の仕方においてだけではなくそれらの物性においても異なる。用語「光学異性体」はより詳細には、純粋な形態若しくは混合物の形態のエナンチオマー及びジアステレオマーを包含する。
【0104】
用語「結合」は、2つの原子間の、又は結合によって連結される原子がより大きな下部構造の一部と考えられる場合には2つの部位間の、共有結合を指す。別途特定されない限り、結合は単結合、二重結合、若しくは三重結合であってよい。分子の図における2つの原子間の点線は、その位置に追加的な結合が存在しても存在していなくてもよいということを示す。
【0105】
用語「併用治療」とは、本開示において記載される治療状態若しくは障害を処置する為の2つ以上の治療剤の投与を意味する。かかる投与は、固定された比率の活性成分を有する単一のカプセル中、若しくは各活性成分の為の複数の別個のカプセル中等の、実質的に同時の態様におけるこれらの治療剤の併用投与を包含する。加えて、かかる投与はまた、各タイプの治療剤の逐次的な態様における使用も包含する。いずれのケースでも、処置レジメンは、本明細書に記載した状態若しくは障害の処置において、薬物の組み合わせの有効な効果を提供することになる。
【0106】
用語「イメージング剤」は本明細書で使用するとき、本発明の化合物の検出、追跡、若しくは視覚化の為に、それらと連結させた場合に有用ないずれかの部位を指す。イメージング剤としては、例えば、酵素、蛍光ラベル(例えば、フルオレセイン)、発光ラベル、生物発光ラベル、磁性ラベル、金属粒子(例えば、金粒子)、ナノ粒子、抗体若しくはその断片(例えば、Fab、Fab’、若しくはF(ab’)2分子)、及びビオチンが挙げられる。イメージング剤は、例えば、共有結合、イオン結合、ファンデルワールス相互作用、若しくは疎水結合によって、本発明の化合物と連結することができる。本発明のイメージング剤は、本発明の化合物と連結される放射標識若しくは本発明の化合物の化学構造中に組み込まれた放射性同位体とすることができる。かかるイメージング剤を検出する方法としては、限定されないが、陽電子放射断層撮影(PET)、X線コンピュータ断層撮影(CT)、及び磁気共鳴画像法(MRI)が挙げられる。
【0107】
語句「治療上効果的な」とは、疾病若しくは障害の処置に使用される活性成分の量をより具体的にすることを意図している。この量が、疾病若しくは障害を減少させる若しくは除去するという目標を達成することになる。
【0108】
用語「治療上許容可能な」は、過度の毒性、刺激、及びアレルギー反応を生ずることなく患者の組織と接触させて使用するのに好適である、合理的な利益/危険比に見合う、及びそれらの意図される使用の為に効果的である、それらの化合物(又はそれらの塩、エステル、プロドラッグ、互変異性体、双性イオン性形態等)を指す。
【0109】
本明細書で使用するとき、患者の「処置」に対する言及は、予防を包含することが意図される。用語「患者」は、哺乳類及び非哺乳類を意味する。哺乳類は、ヒト;チンパンジー及び他の類人猿及びサル種等のヒト以外の霊長類;ウシ、ウマ、ヒツジ、ヤギ、及びブタ等の家畜;ウサギ、イヌ、及びネコ等の飼育動物;ラット、マウス、及びモルモット等の齧歯類を包含する実験動物;等が挙げられるがそれらに限定されない、哺乳網のいずれかのメンバーを意味する。非哺乳類の例としては、限定されないが、トリ等が挙げられる。用語「患者」は、特定の年齢若しくは性別を指定しない。
【0110】
用語「プロドラッグ」は、インビボにおいてより活性となるようになされた化合物を指す。本発明の特定の化合物は、ヒドロリシス イン ドラッグ アンド プロドラッグ メタボリズム:ケミストリー,バイオケミストリー,アンド エンザイモロジー(薬物及びプロドラッグ代謝における加水分解:化学、生物化学、及び酵素学(Hydrolysis in Drug and Prodrug Metabolism: Chemistry, Biochemistry, and Enzymology)テスタ バーナード(Testa, Bernard)及びワイリーVHCA(Wiley-VHCA)、スイス、チューリッヒ(Zurich、Switzerland)、2003年に記載されるような、プロドラッグとして存在してもよい。本明細書に記載された化合物のプロドラッグは、生理的条件下で容易に化学変化してその化合物を与える化合物の構造的に改変された形態である。加えて、プロドラッグは、エクスビボの環境において化学的若しくは生物化学的方法によって前記化合物に変換され得る。例えば、プロドラッグは、好適な酵素若しくは化学試薬と共に経皮のパッチのリザーバ中に置かれたときに、化合物にゆっくりと変換され得る。プロドラッグは、一部の状況において、化合物若しくは親薬物よりも投与し易いことがある為、有用であることが多い。それらは、例えば、経口投与によって生物学的に利用可能であり得るが、親薬物はそうではない。プロドラッグはまた、薬剤組成物において親薬物を超える改善された溶解性も有し得る。そのプロドラッグの加水分解的開裂若しくは酸化的活性化に頼るものなど、広範なプロドラッグ誘導体が当該技術分野で既知である。プロドラッグの非限定的な一例としては、エステル(前記「プロドラッグ」)として投与されるがその後代謝的に、活性な実態であるカルボン酸に加水分解される化合物が挙げられる。追加の例としては化合物のペプチジル誘導体が挙げられる。
【0111】
本発明の化合物は、治療上許容可能な塩として存在することができる。本発明は、塩、特に酸付加塩の形態の上記で挙げた化合物を包含する。好適な塩としては、有機及び無機の両方の酸を用いて形成されるものが挙げられる。かかる酸付加塩は、通常薬剤的に許容可能となる。しかしながら、薬剤的に許容可能ではない塩である塩が、当該化合物の調製及び精製において利用されてもよい。塩基付加塩もまた形成され、薬剤的に許容可能であり得る。塩の調製及び選択のより完全な議論については、シュタール P ハインリッヒ(Stahl, P. Heinrich)、ファーマシューティカル ソルツ:プロパティーズ,セレクション,アンド ユーズ(薬剤塩:特性、選択、及び使用)(Pharmaceutical Salts: Properties, Selection, and Use)、ワイリーVCHA(Wiley-VCHA)、スイス、チューリッヒ(Zurich, Switzerland)(2002年)を参照のこと。
【0112】
用語「治療上許容可能な塩」は本明細書で使用するとき、水若しくは油溶性又は分散性であり且つ本明細書で規定されるように治療上許容可能である、本発明の化合物の塩若しくは双性イオン性の形態を表す。前記塩は、前記化合物の最終的な単離及び精製の間に、若しくは別個にフリー塩基の形態の適切な化合物を好適な酸と反応させることによって、調製することができる。代表的な酸付加塩としては、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、L-アスコルビン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホン酸塩(ベシル酸塩)、重硫酸塩、酪酸塩、カンフル酸塩、カンファースルホン酸塩、クエン酸塩、ジグルコン酸塩、ギ酸塩、フマル酸塩、ゲンチジン酸塩、グルタル酸塩、グリセロリン酸塩、グリコール酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプタン酸塩、ヘキサン酸塩、馬尿酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2-ヒドロキシエタンスルホン酸塩(イセチオン酸塩)、乳酸塩、マレイン酸塩、マロン酸塩、DL-マンデル酸塩、メシチレンスルホン酸塩、メタンスルホン酸塩、ナフチレンスルホン酸塩、ニコチン酸塩、2-ナフタレンスルホン酸塩、シュウ酸塩、パモ酸塩、ペクチニン酸塩、過硫酸塩、3-フェニルプロピオン酸塩、ホスホン酸塩、ピクリン酸塩、ピバル酸塩、プロピオン酸塩、ピログルタミン酸塩、コハク酸塩、スルホン酸塩、酒石酸塩、L-酒石酸塩、トリクロロ酢酸塩、トリフルオロ酢酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、重炭素塩、パラトルエンスルホン酸塩(p-トシル酸塩)、及びウンデカン酸塩が挙げられる。また、本発明の化合物中の塩基性基は、メチル、エチル、プロピル、及びブチルクロリド、ブロミド、及びヨージド;ジメチル、ジエチル、ジブチル、及びジアミルスルフェート;デシル、ラウリル、ミリスチル、及びステリル(steryl)クロリド、ブロミド、及びヨージド;及びベンジル及びフェネチルブロミドを用いて四級化され得る。治療上許容可能な付加塩を形成する為に採用することのできる酸の例としては、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸等の無機酸、及びシュウ酸、マレイン酸、コハク酸、及びクエン酸等の有機酸が挙げられる。塩はまた、化合物のアルカリ金属若しくはアルカリ土類イオンとの配位によって形成することもできる。このように、本発明は、本発明の化合物等の化合物のナトリウム、カリウム、マグネシウム、及びカルシウム塩を企図している。
【0113】
組成物
本明細書に記載された組成物及び療法は、病原体及び/若しくは癌を効果的に死滅させる及び/若しくは阻止する為に使用されてよい。具体的には、前記組成物は細菌生育を死滅させる若しくは阻止し得、及び同時に、創傷治癒が挙げられる(がそれに限定されない)治癒を補助し得る。本明細書に記載される組成物(抗病原性組成物)は、治療上効果的な量の1以上のアミノ酸及び1以上の脂肪酸(例えば、UCA及びLARG、デカン酸及びLARG等)を含有し得る。指定された比率範囲内のこれらの化合物の組み合わせは、例えば、病原体の生育を阻止し及び/若しくは病原体の死滅(排除)を増強することによって、感染を防ぎ及び治癒を補助し得る作用の、付加的ではなく相乗的な生物機構を発揮し得る。更に、本明細書に記載される組成物は、処置される患者(例えば、ヒト)に対して、その代替化合物(the substituent compounds)の逐次投与よりも大きな治療利益を与え得る。更に、これらの組成物は、癌細胞(腫瘍を包含する)の生育及び/若しくは広がりを阻止することが挙げられるがそれに限定されない、抗癌治療効果を有することが実証された。
【0114】
このように、本明細書に記載される組成物及び療法は、患者(例えば、ヒト)における病原性の感染及び/若しくは癌によって引き起こされる症状、状態、及び疾病を処置する為に有用であり得る。本明細書には、それらから得られる医薬品及び薬品もまた記載される。本明細書に記載される組成物を調製する為の方法及び処方もまた本明細書に開示される。
【0115】
標準的な(即ち基準の)若しくは非標準的な(即ち非基準の)アミノ酸(D若しくはL異性体における)、及び特に荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸と、不飽和若しくは飽和脂肪酸(例えば、C4~C18脂肪酸、C8~C18、C4~C20、C4~C18等)との組み合わせを、グラム陽性及びグラム陰性の両方の細菌において急速で強力な殺菌効果を生ずる混合物を形成する為に使用してよい。混合物内のこれらの混合成分(例えば、アミノ酸及び脂肪酸)の割合は、その抗病原性効果の為に最適化され得る。
【0116】
本明細書で使用するとき、抗病原性材料は、抗細菌性(殺菌性)組成物を包含する。殺菌剤は、経時的な細菌生育率を上回る殺菌率を生ずる化学的実体と見做され得る一方、静菌剤は、細菌の再生を阻止するが細菌を直接殺さない化学的実体と見做され得る。
【0117】
不飽和脂肪酸の例としては(上述したものに加えて)、限定されないがクロトン酸(CAS登録番号107-93-7)、ミリストレイン酸(CAS登録番号544-64-9)、パルミトレイン酸(CAS登録番号373-49-9)、サピエン酸(CAS登録番号17004-51-2)、エライジン酸(CAS登録番号112-79-8)、バクセン酸(CAS登録番号506-17-2)、ガドレイン酸(CAS登録番号29204-02-2)、エイコセン酸(CAS登録番号5561-99-9)、エルカ酸(CAS登録番号112-86-7)、ネルボン酸(CAS登録番号506-37-6)、リノール酸(CAS登録番号60-33-3、463-40-1)、ピノレン酸(CAS登録番号16833-54-8)、エレオステアリン酸(PubChem#5281115)、ミード酸(CAS登録番号20590-32-3)、ジホモ-γ-リノレン酸(CAS登録番号1783-84-2)、エイコサトリエン酸(CAS登録番号17046-59-2)、ステアリドン酸(CAS登録番号20290-75-9)、アラキドン酸(CAS登録番号506-32-1)、エイコサテトラエン酸(PubChem#231)、アドレン酸(CAS登録番号28874-58-0)、ボセオペンタエン酸(CAS登録番号133205-91-1)、エイコサペンタエン酸(CAS登録番号10417-94-4)、オズボンド(ozubondo)酸(CAS登録番号25182-74-5)、テトラコサノールペンタエン酸、ドコサヘキサエン酸(CAS登録番号6217-54-5)、及びオレイン酸(CAS登録番号112-80-1)を挙げてよい。
【0118】
飽和脂肪酸の例としては(上述したものに加えて)、限定されないが、プロパン酸(CAS登録番号79-09-04)、ブタン酸(CAS登録番号107-92-6)、ペンタン酸(CAS登録番号109-52-4)、ヘキサン酸(CAS登録番号142-62-1)、ヘプタン酸(CAS登録番号111-14-8)、オクタン酸(CAS登録番号124-07-2)、ノナン酸(CAS登録番号112-05-0)、デカン酸(CAS登録番号334-48-5)、ウンデカン酸(CAS登録番号112-37-8)、ドデカン酸(CAS登録番号143-07-7)、トリデカン酸(CAS登録番号638-53-9)、テトラデカン酸(CAS登録番号544-63-8)、ペンタデカン酸(CAS登録番号1002-84-2)、ヘキサデカン酸(CAS登録番号57-10-3)、ヘプタデカン酸(CAS登録番号506-12-7)、オクタデカン酸(CAS登録番号57-11-4)、ノナデカン酸(CAS登録番号646-30-0)、エイコサン酸(CAS登録番号506-30-9)、ヘンエイコサン酸(CAS登録番号2363-71-5)、ドコサン酸(CAS登録番号112-85-6)、トリコサン酸(PubChem#17085)、テトラコサン酸(CAS登録番号557-59-5)、ペンタコサン酸(PubChem#10468)、ヘキサコサン酸(CAS登録番号506-46-7)、ヘプタコサン酸(PubChem#23524)、オクタコサン酸(CAS登録番号506-48-9)、ノナコサン酸(PubChem#20245)、トリアコンタン酸(CAS登録番号506-50-3)、ヘナトリアコンタン酸(CAS登録番号28232-01-8)、ドトリアコンタン酸(CAS登録番号3625-52-3)、トリトリアコンタン酸(CAS登録番号38232-03-0)、テトラトリアコンタン酸(CAS登録番号506-50-3)、ペンタトリアコンタン酸(PubChem#5282595)、ヘキサトリアコンタン酸(CAS登録番号4299-38-1)、及びヘプタトリアコンタン酸(PubChem#5282597)が挙げられる。
【0119】
上述したように、幾つかの変形形態では、本発明の対象の特定の脂肪酸はウンデシレン酸等のC11脂肪酸である。前記C11脂肪酸は、ウンデシレン酸と同様に11個の炭素を含む分子を包含し、及び他の部位と組み合わされてもよい。対象の他の脂肪酸は、デカン酸及びオクタン酸(例えば、C4~C18、C8~C18、C8~C20等)等である(が限定されない)非分枝C4~C20脂肪酸を特に包含するC4~C20脂肪酸を挙げてよい。
【0120】
標準的な(基準の)若しくは非標準的な(非基準の)アミノ酸は、アミン(-NH2)及びカルボキシル(-COOH)官能基を各アミノ酸に特有の側鎖(R基)と共に含有する有機化合物として定義される。これは、タンパク新生の及び非タンパク新生のアミノ酸を包含する。これは、D及びLの両方の異性体(エナンチオマー)を包含する。D及びL両方の異性体における以下のアミノ酸を包含するがそれらに限定されないこと:アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン酸、グルタミン、グリシン、ヒスチジン、イソロイシン、ロイシン、リジン、メチオニン、フェニルアラニン、プロリン、セリン、トレオニン、トリプトファン、チロシン、バリン、セレノシステイン、及びピロリジン。荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸は、特に本明細書の対象である。脂肪族アミノ酸としては、アラニン、アルギニン、アスパラギン、アスパラギン酸、システイン、グルタミン、グルタミン酸、グリシン、イソロイシン、リジン、ロイシン、メチオニン、セリン、トレオニン、及びバリンが挙げられる。非脂肪族アミノ酸としては、芳香族アミノ酸(例えばフェニルアラニン、ヒスチジン、チロシン、トリプトファン)及びイミノアミノ酸(例えばプロリン)を挙げてよい。
【0121】
塩基付加塩は、前記化合物の最終的な異性化及び精製の間に、カルボキシ基の金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩、若しくは重炭素塩等の好適な塩基との又はアンモニア若しくは有機第一級、第二級、若しくは第三級アミンとの反応により、調製することができる。治療上許容可能な塩の陽イオンとしては、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、及びアルミニウム、並びに非毒性の第四級アミンカチオン、例えばアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエチルアミン、エチルアミン、トリブチルアミン、ピリジン、N,N-ジメチルアニリン、N-メチルピペリジン、N-メチルモリホリン、ジシクロヘキシルアミン、プロカイン、ジベンジルアミン、N,N-ジベンジルフェネチルアミン、1-エフェナミン、及びN,N’-ジベンジルエチレンジアミンが挙げられる。塩基付加塩の形成の為に有用な他の代表的な有機アミンとしては、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、及びピペラジンが挙げられる。
【0122】
化合物の塩は、フリー塩基の形態の適切な化合物を適切な酸と反応させることによって作製することができる。本明細書に記載される新規な化合物は、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第2鉄、第1鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩類、マンガナス、カリウム、ナトリウム、亜鉛等が挙げられるがそれらに限定されない非毒性の無機若しくは有機塩基から調製されることになる薬剤的に許容可能な塩の形態で調製することができる。薬剤的に許容可能な有機の非毒性塩基から誘導される塩としては、第一級、第二級、及び第三級アミン、天然に生ずる置換アミンを包含する置換アミン、環状アミン、及び塩基性イオン交換樹脂、例えばアルギニン、ベタイン、カフェイン、コリン、エチルアミン、2-ジエチルアミノエタノ(2-diethylaminoethano)、1,2-ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N-エチル-モリホリン、N-エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドロキシルアミン、イソプロピルアミン、リジン、メチルグルカミン、モリホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン類、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミン、トリスヒドロキシメチルアミノメタン、トリプロピルアミン、及びトロメタミン、の塩が挙げられる。
【0123】
本発明の化合物が塩基性である場合、塩類は、塩酸、臭化水素酸、リン酸、硫酸、酒石酸、クエン酸、酢酸、ギ酸、アルキルスルホン酸、ナフタレンスルホン酸、パラトルエンスルホン酸、カンフル酸、ベンゼンスルホン酸、安息香酸、カンファースルホン酸、クエン酸、エタンスルホン酸、グルコン酸、グルタミン酸、イソトニック(isethonic)、乳酸、マレイン酸、リンゴ酸、マンデル酸、メタンスルホン酸、ムチン酸、硝酸、パモ酸、パントテン酸、ホスホン酸、及びコハク酸が挙げられるがそれらに限定されない非毒性の無機若しくは有機酸から調製されることになる薬剤的に許容可能な塩の形態で調製され得る。
【0124】
本発明の化合物を原料化学物質として投与することは可能であり得るが、それらを医薬製剤として提示することもまた可能である。従って、本発明は、化合物若しくは薬剤的に許容可能な塩、エステル、プロドラッグ、若しくはそれらの溶媒和物を、それらの1以上の薬剤的に許容可能な担体及び任意で1以上の他の治療成分と共に含む医薬製剤を提供する。前記担体(類)は、製剤中の他の成分と適合可能でありそのレシピエントにとって有害ではないという意味において「許容可能」でなければならない。適切な製剤は選択される投与経路に依存する。周知の技術、担体、及び賦形剤のいずれかを、好適であるように及び当該技術分野で、例えば、レミントンズ ファーマシューティカル サイエンシズ(Remington’s Pharmaceutical Sciences)において、理解されるように使用してよい。本発明の薬剤組成物は、それ自体は既知である態様で、例えば、従来の混合、溶解、顆粒化、糖衣作製、湿式粉砕(levigating)、乳化、カプセル封入、封入、若しくは圧縮プロセスによって、製造され得る。
【0125】
製剤は、経口、非経口(皮下、経皮、筋肉内、静脈内、間接内、及び髄内を包含する)、腹腔内、経粘膜、経皮、直腸、及び局所(皮膚、頬、舌下、及び眼内を包含する)投与の為に好適であり得るが、最も好適な経路は、例えばレシピエントの状態及び障害によって決められてよい。前記製剤は便利には単位剤形で提示されてよく及び製薬の技術分野で周知の方法のいずれかによって調製されてよい。全ての方法は、本発明の化合物又はその薬剤的に許容可能な塩、エステル、プロドラッグ、若しくは溶媒和物(「活性成分」)を、1以上のアクセサリ成分を構成する担体と関連付ける工程を含む。一般に、前記製剤は、前記活性成分を液体担体若しくは微細化した固体担体若しくは両方と均質に及び緊密に関連づけた後、必要に応じて、その生成物を所望の製剤に成形することによって調製される。
【0126】
経口投与に好適な本発明の製剤は、それぞれが予め決められた量の活性成分を含有する、カプセル、カッシェ、若しくは錠剤等の分離された単位として、粉末若しくは顆粒として、水性液体若しくは非水性液体中の溶液若しくは懸濁液として、又は水中油液体エマルション若しくは油中水液体エマルションとして、提示されてよい。前記活性成分は、ボーラス、舐剤、若しくはペーストとして提示されてもよい。
【0127】
経口的に使用することができる医薬品としては、錠剤、ゼラチンで作られるプッシュフィットカプセル、並びにゼラチンやグリセロール若しくはソルビトール等の可塑剤で作られるソフト封止カプセルが挙げられる。錠剤は、任意で1以上のアクセサリ成分と共に、圧縮する若しくは成型することによって作製されてよい。圧縮錠剤は、任意で結合剤、不活性希釈剤、又は潤滑性の界面活性剤若しくは分散剤と混合された、粉末若しくは顆粒等の自由流動形態の活性成分を、好適な機械において圧縮することによって調製されてよい。成型錠剤は、不活性液体希釈剤で湿らせた粉末化化合物の混合物を好適な機械において成型することによって作製されてよい。前記錠剤は、任意でコーティングされ若しくは印をつけられてもよく、及びその中の活性成分のゆっくりとした若しくは制御された放出を提供するように処方されてもよい。全ての経口投与用製剤は、かかる投与の為に好適な剤形とするべきである。前記プッシュフィットカプセルは、ラクトース等の充填剤、デンプン等の結合剤、及び/又はタルク若しくはステアリン酸マグネシウム等の潤滑剤、及び任意で安定剤との混和物中に活性成分を含有することができる。ソフトカプセルにおいて、前記活性化合物は、脂肪油、液体パラフィン、若しくは液体ポリエチレングリコール等の好適な液体中に溶解若しくは懸濁されてよい。加えて、安定剤を添加してよい。糖衣芯には好適なコーティングが施される。この目的で、任意でアラビアゴム、タルク、ポリビニルビロリドン、カルボポールゲル、ポリエチレングリコール、及び/若しくは二酸化チタン、ラッカー溶液、及び好適な有機溶媒若しくは溶媒混合物を含有してよい、濃縮糖溶液を使用してよい。活性化合物の用量の異なる組み合わせを識別する為に若しくは特徴づける為に、前記錠剤若しくは糖衣コーティングに色素若しくは顔料を添加してよい。
【0128】
本明細書に記載される化合物(例えば、抗病原性、及び/若しくは抗癌性化合物)は、注射による、例えば、ボーラス注射若しくは持続点滴による、非経口投与用に処方されてもよい。注射用製剤は、保存料を添加した、単位剤形、例えばアンプル若しくはマルチドーズ容器において、提示されてよい。前記組成物は、油性若しくは水性のビヒクルにおける懸濁液、溶液、若しくはエマルションとしてそのような形態をとってよく、及び懸濁剤、安定剤、及び/若しくは分散剤等の調合剤を含有してもよい。前記製剤は、ユニットドーズ若しくはマルチドーズ容器において、例えば封止されたアンプル及びバイヤルにおいて提示されてよく、及び粉末形態において、又は使用直前に無菌の液体担体、例えば生理食塩水若しくは無菌のパイロジェンフリー水等を添加するだけでよいフリーズドライ(凍結乾燥)状態において、貯蔵されてよい。前述した種類の無菌粉末、顆粒、及び錠剤から即時注射溶液及び懸濁液が調製されてよい。
【0129】
非経口投与用の製剤としては、意図されるレシピエントの血液と前記製剤を等張性にする抗酸化剤、緩衝剤、静菌薬、及び溶質を含有してよい活性化合物の水性及び非水性の(油性の)無菌注射溶液、並びに懸濁剤及び増粘剤を含んでよい水性及び非水性の無菌の懸濁液が挙げられる。好適な親油性溶媒若しくはビヒクルとしては、ゴマ油等の脂肪油、又はオレイン酸エチル若しくはトリグリセリド等の合成脂肪酸エステル、又はリポソームが挙げられる。水性の注射懸濁液は、ナトリウムカルボキシメチルセルロース、ソルビトール、若しくはデキストラン等の、前記懸濁液の粘度を増加させる物質を含有してよい。任意で、前記懸濁液はまた、高度に濃縮された溶液の調製を可能にする為に、好適な安定剤若しくは化合物の溶解性を増加させる剤を含有してもよい。
【0130】
本明細書に記載される化合物(例えば、抗病原性化合物)に加えて、本発明の化合物はまたデポ剤として処方されてもよい。こうした長期作用性の製剤は、インプランテーションによって(例えば皮下に若しくは筋肉内に)若しくは筋肉内注射によって投与されてよい。このように、例えば、前記化合物は好適な高分子若しくは疎水性材料と共に(例えば、許容可能な油中のエマルションとして)若しくはイオン交換樹脂と共に、又は低度に可溶性の誘導体として、例えば、低度に可溶性の塩として処方されてよい。
【0131】
頬若しくは舌下の投与の為には、本明細書に記載される化合物(例えば、抗病原性化合物)は、従来の態様で処方された錠剤、ロゼンジ、トローチ、若しくはゲルの形態をとってよい。かかる組成物は、スクロース及びアカシア若しくはトラガカント等の風味付けしたベース中に活性成分を含んでよい。
【0132】
本明細書に記載される化合物(例えば、抗病原性化合物)はまた、例えば、カカオバター、ポリエチレングリコール、若しくは他のグリセリド等の従来の坐薬ベースを含有する、坐薬若しくは保持浣腸剤等の直腸組成物中に処方されてもよい。
【0133】
本明細書に記載される化合物(例えば、抗病原性化合物)は、局所的に、即ち非全身投与によって投与されてよい。これは、前記化合物が血流中に有意に入り込まないような、化合物の表皮若しくは頬側口腔への外部からの適用、及びかかる化合物の耳、目、及び鼻への滴下注入を包含する。それに対して、全身投与は経口の、静脈内、腹腔内の、及び筋肉内の投与を指す。
【0134】
局所投与に好適な製剤としては、ゲル、リニメント、ローション、クリーム、軟膏、若しくはペースト等の感染部位への皮膚を通した浸透に好適な固体、液体、若しくは半液体調製剤、及び目、耳、若しくは鼻への投与に好適な滴下剤が挙げられる。幾つかの実施例では、活性成分は、局所投与の為に、前記製剤の重量基準で、0.001%~40%w/w、例えば1%~5%(例えば、0.001%~35%、0.002%~30%、0.01%~25%、0.05%~20%、0.1%~15%、0.1%~12.5%、0.5%~10%、0.5%~8%、1%~7%、1%~6%、1%~5%等)を構成してよい。それは、しかしながら、10%w/w超(例えば、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下等、及び/若しくは幾つかの変形形態では、0.001%超、0.01%超、0.1%超、1%超等)を構成してよい。
【0135】
局所経路による場合、本明細書に記載される薬剤化合物(例えば、抗病原性化合物)は液体若しくは軟膏等の半液体の形態、又は粉末等の固体の形態であってよい。それは、高分子ミクロスフィア等の懸濁液、若しくは制御された放出が可能なポリマーパッチ及びヒドロゲルの形態であってもよい。この局所組成物は、水和形態、水性形態、若しくはエマルションの形態であってもよい。前記化合物は、組成物の総重量に対して重量基準で0.001%~10%の間(例えば、重量基準で0.01%~1%の間)の濃度で、局所的に使用されてよい。幾つかの変形形態では、前記化合物は、重量基準で10%超(例えば、20%以下、25%以下、30%以下、35%以下、40%以下、45%以下、50%以下等)で局所的に使用されてよい。
【0136】
吸入による投与の為には、本明細書に記載される化合物(例えば、抗病原性化合物)はインサフレータ、ネブライザ加圧パック、又は、エアロゾルスプレーを送達する他の便利な手段から、便利に送達されてよい。加圧パックは、ジクロロジフルオロメタン、トリクロロフルオロメタン、ジクロロテトラフルオロエタン、二酸化炭素、若しくは他の好適な気体等の、好適な噴霧剤を含んでよい。加圧エアロゾルの場合には、その投薬単位は計量された量を送達する為のバルブを提供することにより決定されてよい。或いは、吸入若しくはガス注入による投与の為には、本発明による化合物は、乾燥粉末組成物、例えば前記化合物とラクトース若しくはデンプン等の好適な粉末ベースとの粉末ミックスの形態をとってよい。前記粉末組成物は、前記粉末が吸入器若しくはインサフレータの助けを借りて投与され得る単位剤形において、例えば、カプセル、カートリッジ、ゼラチン、若しくはブリスターパックにおいて、提示されてよい。他の可能な用途としては、農業、食品製造等において使用する為の、産業的用途、例えば「殺菌剤(micro-biocides)」を挙げてよい。
【0137】
好ましい単位製剤としては、活性成分の、本明細書中で以下に記載されるような効果的な用量、若しくはその適切な分画を含有するものが挙げられる。
【0138】
上記で詳述された成分に加えて、本発明の製剤は、当該製剤のタイプを考慮して、当該技術分野で慣習的な他の剤を含んでよいということを理解すべきであり、例えば、経口投与に好適なものとしては着香剤を挙げてよい。
【0139】
本明細書に記載される化合物(例えば、抗病原性化合物)は、ある用量において、経口的に若しくは注射を介して投与されてよい。錠剤、又は個別の単位で提供される提示の他の形態は、かかる投薬量において若しくはその倍数として効果的となる本発明の化合物の量を含有するのが便利であり得る。例えば、本明細書に記載される化合物(例えば、抗病原性化合物)は、約0.001mg/kg~100mg/kg体重の一日用量を1~3回の投薬摂取において投与することができる。幾つかの変形形態では、化合物は、一般に前記組成物の重量に対して重量基準で0.001%~10%の間、及び好ましくは重量基準で0.01%~1%の間の濃度で、全身的に使用することができる。
【0140】
担体材料と組み合わされて単回投与剤形を生じ得る活性成分(若しくは別々の場合には、活性成分類)として集合的に若しくは別々に見做され得るアミノ酸及び脂肪酸(例えば、L-Arg及びUCA、L-Arg及びデカン酸等)の混合物は、処置されているホスト及び投与の特定の形態に応じて変わることになる。
【0141】
本明細書に記載される化合物(例えば、抗病原性化合物)は、種々の態様で、例えば経口的に、局所的に、若しくは注射によって、投与することができる。患者に投与される化合物の正確な量は、担当医師の責任で決められてよい。任意の特定の患者の為の具体的な用量レベルは、使用される具体的な化合物の活性、年齢、体重、全般的な健康、性別、食事、投与時間、投与経路、分泌率、薬物の組み合わせ、処置されている障害の詳細、及び処置されている兆候若しくは状態の重篤度を包含する種々の因子に依存し得る。また、投与経路は前記状態及びその重篤度によって変わる得る。
【0142】
ある場合には、本明細書に記載される化合物(例えば、抗病原性化合物)又はそれら薬剤的に許容可能な塩、エステル、若しくはプロドラッグの少なくとも1つを、別の治療剤と組み合わせて投与することが適切であり得る。ほんの一例として、本明細書の化合物の1つを受ける際に患者によって経験される副作用の1つが高血圧である場合には、最初の治療剤と組み合わせて降圧剤を投与することが適切であり得る。又は、ほんの一例として、本明細書に記載される化合物の1つの治療効果をアジュバント投与によって増強してもよい(即ち、アジュバント単独では最小限の治療利益を有するのみであり得るが、別の治療剤と組み合わせて、患者に対する全体的な治療利益が増強される)。又は、ほんの一例として、患者により経験される利益は、本明細書に記載される化合物の1つを同様に治療利益を有する別の治療剤(治療レジメンも包含)と共に投与することによって増大され得る。ほんの一例として、本明細書に記載される化合物の1つの投与を伴う痛みの処置において、その患者に痛み用の別の治療剤も提供することによって、増大された治療利益が得られ得る。いずれのケースでも、処置されている疾病、障害、若しくは状態にかかわらず、その患者によって経験される全体的利益は、単純に2つの治療剤の加算である場合もあり若しくは前記患者は相乗的な利益を経験する場合もある。
【0143】
本明細書に記載される化合物との可能な組み合わせの具体的な非限定例としては、前記化合物を不活性若しくは活性化合物又は以下を包含する他の薬物と共に使用することを挙げてよい:湿潤剤、風味増強剤、保存剤、安定剤、湿度調整剤、pH調整剤、浸透圧調節剤、乳化剤、UV-A及びUV-B遮断剤、抗酸化剤、脱色素剤、例えばヒドロキノン若しくはコウジ酸、軟化剤、保湿剤、例えばグリセロール、PEG400、若しくは尿素、抗脂漏若しくは抗挫創剤、例えばS-カルボキシメチルシステイン、S-ベンジルシステアミン、それらの塩若しくは誘導体、若しくは過酸化ベンゾイル、抗生物質、例えばエリスロマイシン及びテトラサイクリン類、化学治療剤、例えばパクリタキセル、抗真菌性剤、例えばケトコナゾール、毛髪の再生育を促進する剤、例えばミノキシジル(2,4-ジアミノ-6-ピペリジノピリミジン 3-オキシド)、非ステロイド抗炎症剤、カロテノイド類、及び特にp-カロテン、抗乾癬剤、例えばアントラリン及びその誘導体、エイコサ-5,8,11,14-テトライン酸及びエイコサ-5,8,11-トリイン酸、及びそれらのエステル及びアミド、天然若しくは合成であってよいレチノイド類、例えば、RAR若しくはRXRレセプターリガンド、コルチコステロイド類若しくはエストロゲン類、α-ヒドロキシ酸類及びa-ケト酸類若しくはそれらの誘導体、例えば乳酸、リンゴ酸、クエン酸、及びまたそれらの塩、アミド、若しくはエステル、又はp-ヒドロキシ酸類若しくはそれらの誘導体、例えばサリチル酸及びそれらの塩、アミド、若しくはエステル、イオンチャネル遮断剤、例えばカリウムチャネル遮断剤。又は別法として、より詳細には免疫系を妨害することが知られている薬品と組み合わせた前記薬剤組成物のためには、抗痙攣剤として、限定されないが、トピラマート、トピラマートの類縁体、カルバマゼピン、バルプロ酸、ラモトリギン、ガバペンチン、フェニトイン等及びそれらの混合物若しくは薬剤的に許容可能な塩が挙げられる。これらの組成物に添加すべき前記他の化合物(類)の選択に当たって当業者は、本発明の化合物に本来伴う有利な特性がその想定された添加によって負の影響を受けない若しくは実質的に負の影響を受けないように注意を払うであろう。
【0144】
いずれのケースでも、複数の治療剤(そのうちの少なくとも1つが本発明の化合物である)はいずれの順番で投与されてもよく、若しくは同時に投与されてもよい。同時の場合には、前記複数の治療剤は、単回の統合された形態で若しくは複数回形態で(ほんの一例として、単一のピルとして若しくは2つの別個のピルとしてのいずれかで)提供されてよい。治療剤のうちの1つが多数回投与において与えられてよく、若しくは両方が多数回投与として与えられてもよい。同時でない場合には、多数回投与間のタイミングは、2,3分から4週間に渡る任意の期間であってよい。
【0145】
故に、別の態様において、かかる処置を必要とする患者(例えば、ヒト若しくは動物)において疾病、障害、状態、若しくは症状を処置する為の方法が、本明細書に提示され、前記方法は、前記疾病、障害、状態、若しくは症状を低減する若しくは予防する為に効果的な本発明の化合物の量を、当該技術分野で既知である前記障害の処置の為の少なくとも1つの追加的剤と組み合わせて、前記患者に投与する工程を含む。
【0146】
本明細書に記載される抗病原性若しくは抗癌性組成物のいずれかは、細菌コロニー形成、バイオフィルムの形成、及び病院内感染の発現を予防する為に、医療デバイスのコーティング面を包含する表面をコーティングする為に処方されてもよい。それらの長期使用を包含する、医療デバイスの適用は、細菌のコロニー形成、バイオフィルムの形成、及び院内感染と呼ばれることの多い病院内細菌感染の発生につながる可能性がある。これには、カテーテル関連血流感染、整形外科移植作業、人工呼吸器関連肺炎、手術部位感染、及びカテーテル関連尿管感染が包含される。この結果、その医療デバイスの除去及び/若しくは交換が必要となる可能性がある。抗病原性製剤(例えば、前記アミノ酸及び脂肪酸を包含する)は、表面へのイオン結合、受動的吸着、若しくは前記製剤のポリマーマトリクス内への埋め込みを包含する数々の方法で医療デバイスの表面に適用されてよい。前記製剤は、他の分子、バイオフィルムマトリクス分解物質、若しくは他の抗細菌性の剤と組み合わせて使用されてよい。例えば、移植可能医療デバイス(ステント、シャント、血管閉塞コイル、グラフト、ピン、プレート等)及び非移植可能デバイス(カテーテル、マスク、手術用具等)を包含する、任意の医療デバイスが、本明細書に記載されるようにコーティングされてよい。
【0147】
本明細書に記載される方法(ユーザーインターフェースを包含)のいずれかは、ソフトウェア、ハードウェア、若しくはファームウェアとして実行されてよく、及び処理装置(例えば、コンピュータ、タブレット、スマートフォン等)によって実行することが可能な一連の指示を記憶する固定コンピュータ読み出し可能記憶媒体として記載されてもよく、処理装置によって実行される場合には、その記憶媒体はその処理装置に、表示、ユーザーとの通信、分析、パラメータの修正(タイミング、頻度、強度等を包含)、決定、警告等を包含するが限定されない工程のいずれかの実施を制御させる。
【0148】
図26は、1:1モル比でアミノ酸と組み合わされた脂肪酸(C4~C20アミノ酸)の例のマトリクスを示す表である。個々のセルは、各特定の組み合わせの、安定な溶液を形成し及び抗病原性/抗癌性効果を提供する能力を示す。見て分かる通り、アルギニン、ヒスチジン、及びリジン等の荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸(「荷電側鎖-塩基性」)は、溶液を形成して治療効果を提供する堅牢な能力を示した。この予備分析において、アルギニン及びリジンはヒスチジンと比較して混和性溶液の形成においてわずかに堅牢性が高く、加えて、実質的に全ての脂肪酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸(アルギニン、ヒスチジン、リジン)のいずれかと組み合わせる能力を示したが、C8~C20脂肪酸はわずかに堅牢生が高かった。「no」と記した若しくは推定的に(-)で示された組み合わせは、前記アミノ酸と脂肪酸を1:1モル比で組み合わせただけでは非混和性である(及び従って抗病原性の/抗癌性効果を示すことができない)ことが分かった。
【実施例】
【0149】
治療上効果的な組成物の一例を、本明細書においてGS-1と称する。GS-1はUCA及びLARGの組成物であり、UCA:LARGのモル比は5:4(重量基準では1:0.76)である。GS-1は、例えば、15gのLARGを75gの水中、65℃で完全に溶解するまで加熱及び攪拌した後、加熱及び攪拌しながら19.8gのUCAを加えることによって製造され得る。
【0150】
図13は、GS-1の、1:16の薬物希釈におけるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)の8つの分離株に対する治療有効性を示している。MRSAはグラム陽性である。
図13において、GS-1はMRSA分離株のほぼ全般的な完全な(100%)死滅をもたらした。この例では、細菌(MRSA分離株)を新鮮なプレート上に置いて30時間生育させた。このプレートから、濁度を光学的に読み取り得る懸濁種菌(例えば、滅菌水中マクファーランド1の溶液)を作製する。次いで標準種菌を培地中で培養し、及びその溶液100μLを100μLの薬物製品と組み合わせて種々の希釈率で16~20時間生育させてよい。次いで複製物を試験してよい(例えば、7,000RPMで15分間ペレット化した後、PBS中に再懸濁し、段階希釈物をプレートに蒔いて24時間生育させる)。次いで複数希釈における複製物のプレートをイメージングし及びコロニーを数えてよい。処置されたサンプルを未処置サンプル(例えば、UCA及びLARGを含まない水が含まれた)及び種菌と比較した(細胞生存度を示す)。
【0151】
図14は、GS-1組成物の大腸菌(EC)に対する治療効果を例示する。大腸菌(EC)の2つの分離株を1:16の薬物希釈で試験した。図示されるように、GS-1組成物はこの希釈率において細菌の完全な(100%)死滅をもたらした。上記と同様にデータを収集し、未処置の細菌と種菌との比較を示す。
【0152】
同様に、
図15は、CRE陽性肺炎桿菌(KPCRE)の3つの分離株に対する、1:16の薬物希釈におけるGS-1のインビトロの有効性を図示する。EC及びMRSAと同様、GS-1は前記分離株のそれぞれについて細菌の完全な死滅(100%)をもたらした。
【0153】
図16は、緑膿菌(PSA)の2つの分離株に対する、1:8の薬物希釈におけるGS-1の同様の有効性を示す。この例において、細菌の全て(100%)が死滅した。1:16希釈でも同様の結果(>99.9%死滅)が見られた(図示せず)。
【0154】
GS-1はまた、抗癌活性を有することが分かった。例えば、培養されたラットグリオーマ癌細胞を段階的な希釈濃度のGS-1により処置し、
図17及び
図18A乃至18Eに示されているように、1:128の希釈濃度で全ての若しくは全てに近い癌細胞の阻止が得られ、及びより低い(例えば、1:256及び1:512)の希釈率で有意な阻止が得られた。例えば、
図17においては、ラットグリオーマ癌細胞をおよそ90%コンフルエンスまで培養し、トリプシン処理し、及び高い力価(例えば、ウェル当たり4500)で接種し、一晩定着及び付着させてからGS-1により特定の用量希釈物で処置した。各GS-1用量について段階的細胞希釈を試験し、及び処置細胞を24時間培養した後、培地(GS-1を含む)を新鮮な培地で置換し及びMTSアッセイ(生細胞によるMTSテトラゾリウム化合物の減少に基づく)を行って、発色の変化による健康細胞の定量が可能となるようにした。
図17は未処置の細胞と比較した場合の癌細胞増殖の阻止のパーセンテージを示している。
【0155】
図18A乃至18Eは、GS-1の希釈率を増しながら処置した(
図18A乃至18D)及び未処置の(
図18E)癌細胞の画像を示している。各画像は、C6ラットグリオーマ癌細胞を死滅させるGS-1のインビトロ有効性を、薬物希釈に応じて示す、顕微鏡図である。
図18A乃至18Eの各々は、非健康細胞(死滅した若しくは死滅しつつある癌細胞)対健康細胞を視覚的に示す為に、生体(例えば、PI)染色を用いた蛍光画像を非蛍光画像と重ね合わせて示している。
図18A乃至18Dに示されるように、非健康細胞はPI染色及び蛍光を取り込み、一方健康な細胞は取り込まない。
図17と一致して、GS-1のより高い希釈率(1:64及び1:128)は、癌細胞の死滅において完全に近い有効性を示し、ほぼ全ての細胞が蛍光を発し、一方でより高い希釈率(例えば、1:256及び1:512)は、有効性が低下し、ほとんどの細胞は蛍光を発しなかった。未処置コントロールの
図18Eにおいては、蛍光を発している細胞は無い。これらの画像の各々は、比較を可能にするように同一の露光において撮影された。
【0156】
健康な動物細胞を包含する「正常な」細胞に対するGS-1の効果を試験する付随研究では、高い(未希釈)濃度を含めて、癌細胞と比較して全く効果を示さなかった。
【0157】
GS-1のインビボの安全性及び有効性を確立すべく動物研究も行った。研究の一例においては、16匹のラットの皮膚を4×4cmの面積において擦過させた後、メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)に感染させた。24時間後、一日2回、7日間に渡り、前記ラットの半数をGS-1で処置し、及び半数を生理食塩水で処置した(未処置コントロール)。7日目の終わりに、感染部位における皮膚スワブ及び組織パンチを収集して感染の証拠(有効性)について分析し、及び血液を採って毒性の証拠(安全性)について分析した。GS-1で処置した全てのラットは、未処置の対照動物と比較して、7日後に感染の兆候を示さず、及び毒性若しくは副作用の兆候を示さなかった。
【0158】
上記したように、一般に本明細書に記載される組成物は1以上の脂肪酸と1以上のアミノ酸とを脂肪酸:アミノ酸のモル比約1:0.6~約1:1.6で含んでよい。
図1乃至18は、前記脂肪酸がUCAであり前記アミノ酸がLARGである組成物を例示しているが、本明細書に記載される組成物及び方法はUCA及びLARGに限定されない。例えば、
図20は、UCA/LARG組成物(「GS-1」)の、デカン酸/LARG(「GS-2」)、オクタン酸/LARG(「GS-3」)、及びリノール酸/LARG(「GS-4」)の混合物との比較を示しており、これらの各々が同様の濃度において及び未処置の状態及び種菌コントロールと比較して、有意な抗病原性活性を示した。例えば、
図20におけるこれらの実施例の各々において、組成物中のアミノ酸に対する脂肪酸は、MRSAを処置する為に希釈して用いた場合、重量基準で約1:0.76(脂肪酸:アミノ酸)の比率であった。GS-1、GS-2、及びGS-3は全て、脂肪酸:アミノ酸の水性混合物を有し、全有効活性成分(API)はおよそ32%w/wで、これが水中に1:128に希釈されており、結果として約0.25%w/wの全APIの濃度を有していた。GS-4は約1.64mg/mL(0.16%w/w)の全API濃度を有した。
図20において、GS-1及びGS-2はMRSAに対して完全に近い殺菌効果をもたらし(バーの欠損によって示される)、GS-3及びGS-4は未処置コントロールと比較してMRSAにおける実質的な低下を有した。尚、GS-4は、GS-1~GS-3よりも低い濃度(GS-1~GS-3についての0.25%w/wに対して、例えば0.16%w/wの全API)において使用された。これらの結果の全ては、局所抗生物質ムピロシン(「バクトロバン(Bactroban)」)等の市販の抗生物質に匹敵する若しくはそれらよりも優れた有効性を示した。
【0159】
図21~23はGS-2、GS-3、及びGS-4の各々についての具体的な結果を例示している。
図21はデカン酸及びLARGの(重量基準で1:0.76の比率における)組成物の活性を示している。
図21では、処置濃度は約2.51mg/mL(0.25%w/w)の全API(例えば、デカン酸及びLARG)とした。6つの個々の臨床分離株を、溶液中のGS-2で24時間処置し、及び存在するMRSAの全ての完全な死滅(例えば、100%殺細菌性)をもたらした。
【0160】
図22は、オクタン酸とLARG(GS-3)の1:0.76w/w比を含む組成物を用いた同様のアッセイを示している。処置溶液中のオクタン酸/LARGの濃度は、全APIについて2.52mg/mL(0.25%w/w)であり、及び6つの臨床のMRSA分離株に対して添加して24時間処置した。このアッセイにおいて、GS-3(オクタン酸/LARG)は分離株の66.7%において阻止効果を生じ、及び33.3%において静菌効果を生じた。完全な殺菌効果を獲得する為に前記オクタン酸/LARG組成物の濃度を増大させてもよい。
【0161】
図23はリノール酸とLARG(GS-4)との混合物を組み合わせた例を示している。この例においては、C18リノール酸を使用して、溶液中1.64mg/mL(0.16%w/w)の全APIの濃度で24時間、6つのMRSA臨床分離株を処置した。このGS-4混合物は、分離株の50%において殺菌効果を及び50%において阻止効果をもたらした。
【0162】
図24は、上述したような、1:0.76w/wの比率を有する脂肪酸とアミノ酸との組成物の一例を例示している。この例においては、脂肪酸はUCAであり、及びアミノ酸はリジンである(GS-5)。
図24に示されるように、MRSAの5つの臨床分離株を、GS-5(UCA/リジン)で溶液中2.46mg/mL(0.25%w/w)の全APIの濃度で24時間処置した。このGS-5組成物は、図示されているように(対数スケールであることに留意)全ての分離株において殺菌効果をもたらした。
【0163】
同様に、
図25は、アミノ酸がヒスチジンである脂肪酸とアミノ酸との組成物の例を例示している。ヒスチジンとUCAとの複合体は、1:0.76w/wの比率(例えば、約1.25:1のUCA:ヒスチジンのモル比)を有し得る。
図25に示されているように、前記ヒスチジンは、メチシリン感受性黄色ブドウ球菌(MSSA)に対する明白な殺細菌性及び静菌効果を有した。この例においては、4つの臨床分離株をGS-6(上述したようなUCA:ヒスチジン)で溶液中2.71mg/ML(0.25%w/w)の全APIの濃度で24時間処置した。GS-6は、
図25に図示されているように分離株の全て(100%)において殺菌効果を生じた。
【0164】
このように、正に荷電された(生理的pHにおいて塩基性の)脂肪酸を用いてアミノ酸を変化させた前記データ及び他の実験(例えば、UCA:L-ARG、UCA:リジン、及びUCA:ヒスチンデ(Histinde))に基づいて、他のアミノ酸は殺菌効果を喚起することにおいて効果がより低かった(又はD-アルギニン及び他の非荷電アミノ酸のように効果がない)。故に、幾つかの変形形態では、アミノ酸は荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸等の荷電された(及び特には、正に荷電された)アミノ酸に限定され得る。
【0165】
他の活性剤(類)との組み合わせ
一般に、本明細書に記載される治療用組成物のいずれかは、脂肪酸及びアミノ酸として働き得る若しくはその活性を増強し得る1以上の追加的な成分を含んでよい。例えば、本明細書に記載される治療用組成物のいずれかは、増強された有効性等の、異なる若しくは増強された特性を提供する為に1以上追加的な活性成分と組み合わされてよい。
【0166】
幾つかの変形形態では、本明細書に記載される組成物は細胞膜を崩壊させる追加的な剤を含んでよい。幾つかの変形形態では、本明細書に記載される組成物は、有効性を更に増強する為にポリミキシン(例えばポリミキシンB若しくはポリミキシンE)等の抗生物質を含んでよい。一般に、本明細書に記載される治療用組成物は、1以上の非リボソーム性ペプチド(例えば、アクチノマイシン、バシトラシン、ダプトマイシン、バンコマイシン、テキソバクチン、チロシジン、グラミシジン、ツビッターマイシンA、ACV-トリペプチド、エポチロン、ブレオマイシン、シクロスポリン(シクロスポリンA)等)と組み合わされてよい。本明細書に記載される組成物と共にポリミキシン等の追加的な成分を添加することによって、実質的により少ない量の抗生物質の使用が可能となり得及び/若しくは抗生物質の有効性が劇的に強められ得る。
【0167】
上述したように、本明細書に記載される組成物は、抗病原性(例えば、抗細菌性、抗ウィルス性、抗真菌性等)有効性だけでなく抗癌性有効性との両方を有する。例えば、
図27は、およそ1:1モル比でのLARG及びUCAを包含する本明細書に記載されるような組成物の一例(GS-1)についての試験結果を要約するグラフを示している。この例においては、ヒト癌細胞に対するインビトロ活性が示されている。このグラフは、種々の癌細胞株の各々についての未処置及び処置値を示している。全ての結果は0.3%w/wの作用薬物濃度についての結果である。試験された癌細胞株の全てが、吸光度(例えば、493nmにおける吸収)によって測定した場合に、組成物に暴露後24時間の癌細胞生存度において顕著な減少を示した。この例においては、前立腺癌細胞、乳癌細胞、メラノーマ癌細胞、白血病細胞、及び肺癌細胞の各々が、0.3%のGS-1溶液による処置後に減少を示した。
【0168】
図28~32は、本明細書に記載された治療用組成物(例えば、GS-1)の一例の抗癌性効果を例示している。実質的にあらゆるC4~C20脂肪酸及びアミノ酸(アルギニン、ヒスチジン、及び/若しくはリジン等を包含)を含む脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物を含む他の治療用組成物でも、同様の結果が見られ若しくは見られることが予測される。
【0169】
例えば、
図28は脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の混合物の組成物の結果を例示するグラフであり、培養中のPC3ヒト前立腺癌細胞に対して抗癌性有効性を示している。この混合物は、LARG及びUCAの混合物であり、ヒト前立腺癌細胞を処置する。
図28において、0.30%の前記組成物(GS-1)を用いた処置の24時間後の癌細胞の生存率における完全な減少が存在し、及び0.150%の前記組成物を用いた培養癌細胞の生存率において99.5%の減少が存在した。PC3ヒト前立腺癌細胞を無菌の96ウェルプレート上にウェル当たり7000細胞で播種した。24時間の生育後、前記細胞を、GS-1(GS-1-2)の30%の原液濃度からの希釈物を用いて37℃で24時間更にインキュベートした。インキュベーション後、培地及び試験品を取り出し及び新鮮な予め加温した培地で置換した。100μLの培地を含有する各ウェルに20μLのMTSを加えて2時間インキュベートした。インキュベーション後、96ウェル比色プレートリーダーでプレートを分析した。全てのデータにおいて、細胞を有さない100μL培地及び20μLMTSを用いてブランクの減算を行った(処置当たりn=12ウェル及び未処置n=24ウェル)。エラーバーは標準偏差である。
【0170】
培養された乳癌細胞でも同様の結果が見られた。例えば、
図29において、グラフは無菌の96ウェルプレートにウェル当たり7000細胞でMCF7乳癌細胞を播種したアッセイから得られたMTS細胞生存度を示している。24時間の生育後、前記細胞をGS-1(GS-1-2)の30%の原液濃度からの希釈物を用いて37℃で24時間更にインキュベートした。インキュベーション後、培地及び試験品を除去して新鮮な予め加温した培地で置換した。100μLの培地を含有する各ウェルに20μLのMTSを加えて2時間インキュベートした。インキュベーション後、このプレートを96ウェル比色プレートリーダーで分析した。細胞を有さない100μL培地及び20μLMTSを用いて全てのデータに対してブランクの減算を行った(処置当たり12ウェル、12ウェルは未処置とした)。0.300%の組成物(GS-1)を用いたインキュベーションは、培養乳癌細胞生存度における89.8%の低下を示した。
【0171】
図30は、24時間処置後の培養ヒト皮膚癌(MM170ヒトメラノーマ細胞)の処置の結果を示している。
図30では、MM170ヒトメラノーマ細胞を無菌の96ウェルプレート上にウェル当たり7000細胞で播種した。上記のように、24時間の生育後、前記細胞をGS-1の(30%の原液濃度からの)希釈物を用いて37℃で24時間更にインキュベートした。インキュベーション後、培地及び試験品を除去して新鮮な予め加温した培地で置換した。100μLの培地を含有する各ウェルに20μLのMTSを加えて2時間インキュベートした。インキュベーション後、このプレートを96ウェル比色プレートリーダーで分析した。細胞を有さない100μL培地+20μLMTSを用いて全てのデータに対してブランクの減算を行った。処置ウェル=12ウェル。未処置ウェル=24。エラーバーは標準偏差を表す。0.300%濃度を用いると、生存率において完全な(例えば、100%)低下が見られた。
【0172】
培養ヒト白血病細胞の処置も同様の傾向を示した。0.075%の溶液を用いたインキュベーションにより、培養細胞の生存率における99.8%の低下がもたらされた。U937ヒト白血病細胞を無菌の96ウェルプレート上にウェル当たり7000細胞で播種した。24時間の生育後、前記細胞をGS-1の(30%の原液濃度からの)希釈物を用いて37℃で24時間更にインキュベートした。インキュベーション後、培地及び試験品を除去して新鮮な予め加温した培地で置換した。100μLの培地を含有する各ウェルに20μLのMTSを加えて2時間インキュベートした。インキュベーション後、このプレートを96ウェル比色プレートリーダーで分析した。細胞を有さない100μL培地及び20μLMTSを用いて全てのデータに対してブランクの減算を行った。処置ウェル:n=4(n当たり3ウェル、全体で12ウェル)。未処置ウェルn=8(n当たり3ウェル、全体で24ウェル)。
【0173】
培養ヒト肺癌細胞(A549ヒト濾胞状腺癌細胞)もまた、GS-1治療用組成物の0.30%溶液による処置後の生存率において完全に近い減少(例えば、98.8%まで)を示した。
図32に示されるように、A549ヒト肺癌細胞を無菌の96ウェルプレート上にウェル当たり7000細胞で播種した。上記と同様に、24時間の生育後、前記細胞をGS-1の(30%の原液濃度からの)希釈物を用いて37℃で24時間更にインキュベートした。インキュベーション後、培地及び試験品を除去して新鮮な予め加温した培地で置換した。100μLの培地を含有する各ウェルに20μLのMTSを加えて2時間インキュベートした。インキュベーション後、このプレートを96ウェル比色プレートリーダーで分析した。細胞を有さない100μL培地及び20μLMTSを用いて全てのデータに対してブランクの減算を行った。処置当たりn=12ウェル(3複製×4)。n=35ウェルは未処置。エラーバーは標準偏差である。
【0174】
上述したように、アミノ酸と脂肪酸との他の組み合わせを用いて同様の抗癌性の結果が見られた。例えば、
図33はGS-2(LARG及びデカン酸の混合物)についての非常に類似したデータを示すグラフである。
図33には、A549ヒト濾胞状腺癌細胞に対するGS-2の効果が示されている。GS-2の0.300%の濃度で、肺癌細胞の生存率における98.2%の減少が見られた。GS-1について上記したのと同様に、A549ヒト肺癌細胞を無菌の96ウェルプレート上にウェル当たり7000細胞で播種した。24時間の生育後、前記細胞をGS-2の(30%の原液濃度からの)希釈物を用いて37℃で24時間更にインキュベートした。インキュベーション後、培地及び試験品を除去して新鮮な予め加温した培地で置換した。100μLの培地を含有する各ウェルに20μLのMTSを加えて2時間インキュベートした。インキュベーション後、このプレートを96ウェル比色プレートリーダーで分析した。細胞を有さない100μL培地及び20μLMTSを用いて全てのデータに対してブランクの減算を行った。処置当たりn=12ウェル(3複製×4)。n=70ウェルは未処置。エラーバーは標準偏差である。
【0175】
言及したように、脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比におけるこれらの治療用組成物はまた、強力な抗ウィルス性剤でもある。例えば、
図34はこれらの治療用組成物のHSV感染細胞に対する有効性を示すグラフである。このグラフにおいて、HSV感染細胞に対してGS-1の2つの濃度が示されている(150μg/mL及び75μg/mL)。
図35は、脂肪酸:アミノ酸の治療用組成物の一例(例えば、GS-1)の3つの作用濃度における偽エボラ感染細胞に対する同様の結果を示している。予備的結果は、これらの治療用組成物がインフルエンザ及び天然痘等の他のウィルス剤を処置する為に使用された場合にも同じ効果を示している。
【0176】
このように、本明細書に記載される組成物は一般に、グラム陽性及びグラム陰性の両方の細菌を包含する細菌に対して効果的である。例えば、GS-1及びGS-2(並びに試験された指定されたモル比以内の全ての他の脂肪酸:アミノ酸治療用組成物)は、グラム陽性及びグラム陰性両方の細菌に対して活性な抗細菌性効果を示した。例えば、本明細書に記載される脂肪酸:アミノ酸治療用組成物のいずれかはまた、クロストリジウムディフィシル(C.difficile)に対しても有効性を示した(データは省略)。
【0177】
全身安全性
齧歯類からの全身安全性の研究によって、本明細書に記載される治療用組成物(例えば、脂肪酸:アミノ酸の約1:0.6~約1:1.6の間のモル比の治療用組成物)は、比較的高い濃度であっても安全であるということが示された。故に、これらの組成物は、(例えば、抗病原性理由及び/若しくは抗癌性処置の為に)それを必要とする患者を処置する為に局所的に及び/若しくは全身的に与えられ得る。例えば一研究において、1つの例示的組成物(例えば、GS-1)を単回用量において皮下注射により最大効力において1.25mL/kgの用量レベル(381mg/kgのAPIに相当)で投与した。副作用は観察されなかった。
【0178】
別の研究においては、GS-2を単回用量において皮下注射により最大効力において10mL/kgの用量レベル(3,050mg/kgのAPIに相当)で投与した。副作用は観察されなかった。また、GS-2を、1日1回14日間、皮下注射により最大効力において5mL/kgの用量レベル(1,525mg/kgのAPIに相当)で投与した。副作用は観察されなかった。
【0179】
抗微生物性コーティング及び添加剤
上述したように、本明細書に記載される組成物は、例えば、ペイン(pain)、プラスチック等に対する)材料添加剤を包含する、コーティング及び/若しくは添加剤の為に使用されてよい。例えば、GS-1を、中心静脈カテーテルをコーティングしてグラム陽性(MRSA)及びグラム陰性(大腸菌)細菌に対する抗微生物性活性を与える為に使用した。実薬対照試験においてGS-1は、市場において既に使用されているクロルヘキシジンコーティング及び銀コーティングと同等の若しくはより優れた性能を提供した。コーティングは、噴霧する、浸漬する等によって適用されてよい。コーティングは、封入されても、部分的に封入されても、及び/若しくは封入されなくてもよい。
【0180】
本明細書に記載されるような治療用組成物は、添加剤として使用されてもよい。例えば、抗微生物活性を提供する為にGS-1を、市販されている水性塗料に5%w/w、10%w/w、及び20%w/wの濃度で添加した。全濃度において、前記GS-1添加剤は、表面に植え付けられたグラム陽性(MRSA)及びグラム陰性(大腸菌)細菌を24時間以内に首尾よく根絶した。また、抗微生物特性を提供する為に、GS-1を市販されているプラスチック(ポリウレタン)に5%w/w及び10%w/wの濃度で添加した。両方の濃度において、前記GS-1添加剤は、表面上に植え付けられたグラム陽性(MRSA)及びグラム陰性(大腸菌)細菌を24時間以内に首尾よく根絶した。
【0181】
本明細書に記載される方法及び組成物はまた、産業使用を包含する非医療/健康用途の為に使用されてもよい。一般に、これらの方法及び組成物は、脂肪酸を可溶化する為にアミノ酸が使用され得る任意のプロセス若しくは用途において使用されてよい。脂肪酸は、それらの炭素骨格の為に、ナイロンを作製する為等の広範な産業用途において使用される。脂肪酸を用いる作業における共通の問題点は、それらが不溶性であり、高温でなければ液体にならない(それにより加熱の為に多くのエネルギーを必要とする)ということである。本明細書に記載される方法及び組成物は、アミノ酸、及び特に荷電塩基性側鎖を有するアミノ酸(例えば、リジン、ヒスチジン、アルギニン)が脂肪酸(例えば、C4~C40脂肪酸、C4~C20脂肪酸、C8~C20脂肪酸、C8~C18脂肪酸等)を可溶化する為に約1:0.6~約1:1.6の間のモル比で使用され得、及び従って溶液中に脂肪酸を有することが望ましいときはいつでも有効であり得る。
【0182】
用量
一般に、本明細書に記載されるような処置の一部として任意の適切な用量を使用してよい。本明細書に記載される組成物は、非常に低い濃度(例えば、0.1%w/w未満)で効果的であり得る用量範囲で提供され得るが、より高い濃度でも、副作用は有るとしてもほとんど無いに等しい状態で効果的であり得るということが、予備的研究により示唆されている。例えば、本明細書に記載される方法のいずれかは、約30%w/w~約0.001%w/wの範囲内で被験者を処置する為に使用されてよい。幾つかの変形形態では、患者は約15%w/w~約0.01%w/wの間の用量を与えられてよい。患者は約10%~約0.01%w/wの間の用量を用いて処置されてよい。患者は約5%~約0.01%w/wの間の用量を用いて処置されてよい。幾つかの変形形態では、患者は約2.5%~約0.01%w/wの間の用量を用いて処置されてよい。幾つかの変形形態では、前記患者は約1%~約0.01%w/wの間の用量を用いて処置されてよい。幾つかの変形形態では、前記患者は約0.5%~約0.001%w/wの間の用量を用いて処置されてよい。幾つかの変形形態では、前記患者は約0.25%~約0.001%w/wの間の用量を用いて処置されてよい。幾つかの変形形態では、前記患者は約0.25%~約0.01%w/wの間の用量を用いて処置されてよい。
【0183】
2種類以上の用量(例えば、1日1回、1日2回、1日3回、1日4回、1日5回等、36時間に1回、48時間に1回、60時間に1回、1週に1回等)が提供されてもよい。
【0184】
安定性
一般に、本明細書に記載される治療用組成物は、貯蔵に安定である脂肪酸(例えば、ウンデシレン酸)とアミノ酸(例えば、L-アルギニン)との比率を含んでよい。例えば、UCAとLARGとの、例えば、約1:0.6~約1:1.6(特に約1:0.65~1:1.4、例えば、約1:0.65~1:1.3、約1:0.65~1:1等)の間のUCAとLARGとのモル比(UCA:LARG)を有する組成物は、0℃を上回る温度において数日、数週、若しくは数ヶ月間安定であり得る。更に幾つかの変形形態では、本明細書に記載される組成物(例えば、UCAとLARGとの組成物)は、更に低い温度、特に-20℃等の温度において、延長された期間、例えば、24時間超(2日間、3日間、4日間、7日間、10日間、14日間、21日間、30日間、60日間、120日間、6ヶ月間、1年間等)に渡り安定であり得る。
【0185】
特に、約1:1(例えば重量基準で約1:0.95)若しくは約5:4(例えば、重量基準で約1:0.76)のモル比を有するUCAとLARGとの組成物は、より低い温度で及びより長い時間に渡り特に安定であり得る。例えば、
図19を参照のこと。
図19(表3)において、フリーザ安定性(-20℃、24時間)の結果が示されており、1:1(例えば、重量基準で1:0.95)及び5:4(例えば、重量基準で1:0.76)の前記UCAとLARGとの具体的なモル比が、UCA:LARGの他の比率と比較して、より低い温度でより優れた安定性を発現したことを示している。
図19において、試験された組成物の全てが抗病原性及び/若しくは抗癌性組成物として効果的であり得、及び試験された組成物の全てが上記の冷凍(例えば、>0℃で>24時間)で保存した場合に長期間安定であり得るがしかし、1:1及び5:4のモル比でのUCA:LARGは、並外れて安定であった。これらの例のいずれにおいても、安定性を向上させる為に追加的な安定化剤が含まれてもよい。
【0186】
本明細書で使用された技術用語は特定の実施形態を記載するだけの目的を有し、本明細書を限定することを意図しない。例えば、本明細書で使用するとき、単数形「a」、「an」、及び「the」は、文脈が別途明確に指定しない限り複数形もまた包含することが意図されている。用語「含む(comprises)」及び/若しくは「含むこと(comprising)」は、本明細書で使用されるとき、記述される特徴、工程、作業、要素、及び/若しくは構成成分の存在を明示するが、1以上他の特徴、工程、作業、要素、構成成分、及び/若しくはそれらの群の存在若しくは添加を排除しないことが更に理解されるであろう。本明細書で使用するとき、用語「及び/若しくは」は関連する列挙された項目の1以上の任意の及び全ての組み合わせを包含し、「/」をもって省略され得る。
【0187】
用語「第1の」及び「第2の」は本明細書において、種々の特徴/要素(工程を包含する)を記載する為に使用されてよいが、これらの特徴/要素は、文脈が別途指定しない限り、これらの用語によって限定されるべきではない。これらの用語は、1つの特徴/要素を別の特徴/要素から区別する為に使用されてよい。故に、本発明の教示から逸脱しない限り、以下に議論される第1の特徴/要素は第2の特徴/要素と呼ばれ得、及び同様に、以下に議論される第2の特徴/要素は第1の特徴/要素と呼ばれ得る。
【0188】
本明細書及びそれに続く特許請求の範囲を通して、文脈が別途要求しない限り、言葉「含む(comprise)」及び「comprises」及び「comprising」等の変形形態は、方法及び物品(例えば、組成物及びデバイスを包含する装置及び方法)において種々の構成成分を併用することができることを意味する。例えば、用語「含むこと(comprising)」は、記述された要素若しくは工程の包含を含蓄するが任意の他の要素若しくは工程の排除を含蓄しないことが理解されよう。
【0189】
一般に、本明細書に記載される装置及び方法のいずれかは包括的であると理解されるべきであるが、代替的に構成成分及び/若しくは工程の全て若しくはそれらのサブセットが排除的であってもよく、及び種々の構成成分、工程、サブコンポーネント、若しくはサブステップ「から成る(consisting of)」若しくは代替的に「から本質的に成る(consisting essentially of)」と表現されてもよい。
【0190】
実施例で使用する場合を含め本明細書及び特許請求の範囲において使用するとき、及び別途明確に特定しない限り、全ての数字は、そうした言葉が明確に表れていなくても「約」若しくは「およそ」の言葉が前置されたのと同様に読まれ得る。語句「約」若しくは「およそ」は、大きさ及び/若しくは位置を記載する場合に、その記載された値及び/若しくは位置が合理的に予想される値及び/若しくは位置の範囲以内であることを示す為に使用され得る。例えば、数値は、記述された値(若しくは値の範囲)の+/-0.1%、記述された値(若しくは値の範囲)の+/-1%、記述された値(若しくは値の範囲)の+/-2%、記述された値(若しくは値の範囲)の+/-5%、記述された値(若しくは値の範囲)の+/-10%等である値を有してよい。本明細書に与えられた任意の数値はまた、文脈が別途指定しない限り、約若しくはおよそその値を包含すると理解されるべきである。例えば、値「10」が開示される場合には、「約10」もまた開示される。本明細書に記述された任意の数値範囲は、そこに含まれる全ての部分範囲を包含することが意図される。当業者には適切に理解されるように、値が開示される場合にはその値「以下」、「その値以上」、及び値間の可能な範囲もまた開示されることもまた理解される。例えば、値「X」が開示される場合、「X以下」並びに「X以上」(例えば、Xが数値である場合)もまた開示される。その適用を通して数々の異なるフォーマットにおいてデータが提供され、及びこのデータは、終点及び出発点、及びそれらのデータポイントの任意の組み合わせについての範囲を表すこともまた理解される。例えば、特定のデータポイント「10」及び特定のデータポイント「15」が開示される場合、10及び15超、以上、未満、以下、及びそれらと同等も、10と15の間と同様に開示されていると見なされる。2つの特定の単位間の各単位が開示されていることも理解される。例えば、10及び15が開示される場合には、11、12、13、及び14もまた開示される。
【0191】
種々の例示的実施形態を上記に記載したが、特許請求の範囲によって記載されるような本発明の範囲から逸脱することなく種々の実施形態に対して数々の変更のいずれかを行ってよい。例えば、種々の記載された方法工程が行われる順番は多くの場合に代替の実施形態において変更され、及び別の代替の実施形態では、1以上方法工程が完全にスキップされ得る。種々のデバイス及び系の実施形態の任意選択の特徴が、幾つかの実施形態においては含まれ他の実施形態においては含まれていなくてもよい。従って、前述の説明は、主として例示的な目的の為に提供され、及び特許請求の範囲に記載されるような本発明の範囲を限定すると解釈されるべきではない。
【0192】
本明細書に含まれる実施例及び図示は、例示の目的の為であって限定の為ではなく、その主題が実行され得る特定の実施形態を示す。言及したように、他の実施形態は、構造及び論理的置換及び変化が本開示の範囲から逸脱することなく成され得るように、利用され及び誘導され得る。発明主題のかかる実施形態は、本明細書において単に便宜上の理由で個々に若しくは集合的に用語「発明」と呼ばれる場合があり、及び実際に1つを超えるものが開示された場合に、本出願の範囲を任意の単独の発明若しくは発明的概念に自発的に限定することを意図しない。このように、特定の実施形態を本明細書に例示し及び記載してきたが、同じ目的を達成する為に計算された任意のアレンジで、示された特定の実施形態を置き換えてもよい。本開示は、種々の実施形態の任意の及び全ての適応若しくは変形形態を包含することが意図されいる。上記の記載を検討する上で、上記の実施形態の組み合わせと本明細書では具体的に記載していない他の実施形態が、当業者には明らかとなるであろう。
【国際調査報告】