(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】完全に交換可能な方法での、受信機における最適な回復のために符号化された複数のページへの衛星航法メッセージの送信
(51)【国際特許分類】
G01S 19/02 20100101AFI20220124BHJP
H04L 1/00 20060101ALI20220124BHJP
G01S 19/37 20100101ALI20220124BHJP
【FI】
G01S19/02
H04L1/00 B
G01S19/37
【審査請求】有
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2020543973
(86)(22)【出願日】2019-10-03
(85)【翻訳文提出日】2020-08-28
(86)【国際出願番号】 EP2019076846
(87)【国際公開番号】W WO2020074366
(87)【国際公開日】2020-04-16
(32)【優先日】2018-10-09
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】510304715
【氏名又は名称】ザ ヨーロピアン ユニオン、リプレゼンテッド バイ ザ ヨーロピアン コミッション
【氏名又は名称原語表記】The European Union,represented by the European Commission
(74)【代理人】
【識別番号】110000659
【氏名又は名称】特許業務法人広江アソシエイツ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】フェルナンデス-ヘルナンデス,イグナシオ
【テーマコード(参考)】
5J062
5K014
【Fターム(参考)】
5J062CC07
5J062DD14
5K014BA06
5K014BA08
(57)【要約】
本明細書で説明されているのは、いくつかのページに分割され、1つ又はいくつかの衛星によって送信される衛星航法メッセージの受信を改善するための方法である。k個のページの衛星航法メッセージMはn個のページに符号化され、任意の衛星からのk個の回復されたページは元の衛星航法メッセージMの復号化を可能にする。この方法の実施では、高パリティでゼロオーバーヘッドの2元消失通信路についての並列ブロック符号化を使用し、すべてのページの固定位置にあるシンボルは並列により短いコードに符号化される。この方法は、メッセージ送信において完全なページ交換可能性を実現し、メッセージ受信を最適化し、復号化コストを削減する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の衛星を介して少なくとも1つのユーザ受信機に送信するために、いくつかのページの形で、符号化された衛星航法メッセージを生成する方法であって、
a)地上局において、衛星航法メッセージMをk個のページに分割するステップと、
b)前記地上局において、各ページをj個のシンボルに分割し、前記衛星航法メッセージMは、k×j個のシンボルに分割される、ステップと、
c)各シンボル位置について、前記地上局において、前記k個のページの前記シンボルを、前記ページの前記シンボルの各列を合計j個のブロックコードについて別々に符号化することによって、符号化するステップであって、前記n個のページのそれぞれは、j個の並列なコードからのシンボルを含む、ステップと、
d)前記地上局において、n個のページについての符号化された衛星航法メッセージM´を生成するステップと、
e)前記地上局において、前記符号化された衛星航法メッセージの前記n個のページの少なくともサブセットを前記複数の衛星のそれぞれに割り当てるステップと、
f)前記地上局によって、前記割り当てられたページを前記複数の衛星のうちのそれぞれの衛星に送信するステップと、
g)前記複数の衛星によって、前記割り当てられたページを前記少なくとも1つのユーザ受信機に送信するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップc)は、前記元の衛星航法メッセージの回復に前記n個のページの任意のk個のシンボルが使用されることを可能にする、ブロック符号化スキームを使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ブロックコードはリードソロモンコードを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップd)は、2元消失通信路をシミュレートするために各ページに巡回冗長検査を付加することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのユーザ受信機において、符号化された衛星航法メッセージを復号化する方法であって、前記符号化された衛星航法メッセージは、請求項1から4のいずれか一項に従って生成され、
i)前記少なくとも1つのユーザ受信機において、前記少なくとも1つのユーザ受信機の視野内の前記複数の衛星によって送信されたページを受信するステップと、
ii)前記少なくとも1つのユーザ受信機において、前記複数の衛星から受信された前記ページから、前記符号化された衛星航法メッセージを、各列を合計j個のブロックコードについて別々に復号化することによって、復号化処理をそれに再帰的に適用することによって復号化するステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
前記ブロックコードはリードソロモンコードを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップi)は、前記複数の衛星のうちの異なる衛星から異なるページを受信することをさらに含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
ステップi)は、前記ページを経時的にシーケンシャルに受信することをさらに含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
その視野内の複数の衛星から異なるページとして送信された符号化された衛星航法メッセージを復号化し、前記符号化された衛星航法メッセージは、請求項1から4のいずれか一項の方法に従って生成されて送信され、各ユーザ受信機は、
その視野内の前記複数の衛星によって送信されたページを受信し、
前記複数の衛星から受信された前記ページから、前記符号化された衛星航法メッセージを、各列を合計j個のブロックコードについて別々に復号化することによって、復号化処理をそれに再帰的に適用することによって復号化する、
ように構成される、ように構成される、ユーザ受信機。
【請求項10】
前記ブロックコードはリードソロモンコードを含む、請求項9に記載のユーザ受信機。
【請求項11】
符号化された衛星航法メッセージをいくつかのページの形で生成、送信、及び復号化するための衛星航法システムであって、
複数の衛星と、
前記複数の衛星への送信のために、いくつかのページの形で、符号化された衛星航法メッセージを生成し、前記符号化された衛星航法メッセージは、
衛星航法メッセージMをk個のページに分割すること、
各ページをj個のシンボルに分割することであって、前記衛星航法メッセージMはk×j個のシンボルに分割される、分割すること、
各シンボル位置について、前記k個のページの前記シンボルを、前記ページの前記シンボルの各列を合計j個のブロックコードについて別々に符号化することによって、符号化すること、
n個のページについての符号化された衛星航法メッセージM´を生成することであって、n個のページのそれぞれは、j個の並列な符号からのシンボルを含む、生成すること、
前記符号化された衛星航法メッセージの前記n個のページの少なくともサブセットを前記複数の衛星のそれぞれに割り当てること、及び
前記割り当てられたページを前記複数の衛星のうちのそれぞれの衛星に送信すること、
によって生成される、ように構成された地上局と、
請求項9又は10に記載の少なくとも1つのユーザ受信機と、
を含む、システム。
【請求項12】
前記ブロックコードはリードソロモンコードを含む、請求項11に記載の衛星航法システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、最適化された衛星航法メッセージ送信のための方法及びシステムに関し、より詳細には、複数の衛星から少なくとも1つのユーザ受信機へのデジタルメッセージの最適化された符号化、送信及び復号化に関する。
【背景技術】
【0002】
GPS、GLONASS、又はGalileoなどの、衛星航法システムは、通常、送信衛星の軌道及びクロックオフセットと共に数百ビットのメッセージを送信するので、ユーザ受信機は自身の位置を計算することができる。衛星航法システムは、アルマナック、デジタル署名、精密単独測位衛星データ、又は正確な電離層情報など、1000ビットを超える可能性のある長いメッセージを送信する必要もあり得る。航法衛星によって許可されるビットレートは一般に低いので、長いメッセージの送信は、ユーザ受信機が数秒間又は数分もの間ビットエラーなしで衛星信号を受信することを必要とする。これは、ビルの谷間や樹冠の下など、受信状態や視界状態が劣化している状況では不可能な場合がある。都市の高層ビルは、ユーザ受信機の視野内の衛星の数を制限しがちであり、「ビルの谷間」という用語は、こうした高層ビルに起因する信号の欠如を指し、データ受信が損なわれる結果となる。
【0003】
ただし、ビルの谷間及び樹冠の下に起因するフェージングチャネルにおけるデータ受信を改善するために、最新の衛星航法メッセージは通常、さまざまな種類の畳み込みコード及びブロックコードを介して符号化される。
【0004】
参照文献の非特許文献1では、2000ビット/秒の高精度メッセージの送信について説明している。こうしたメッセージは、49ビットのヘッダ、1695ビットのデータ部分、及びリードソロモン(RS:Reed-Solomom)コードを含み、各メッセージ内のエラーを独立して修正するために256ビットの冗長性を提供する。
【0005】
欧州委員会からの参照文献の非特許文献2では、レート=1/2で長さ7の、前方誤り訂正畳み込み符号化を提案しており、すべての、Galileoの2秒のページに適用されている。この符号化層によって、所与の2秒メッセージのGalileoデータは、メッセージがその中にエラーを含んで受信された場合でも復調されることができる。この参照文献では、GalileoのI/NAVサブフレームのWord Type7、8、9及び10が合計のコンステレーションのうちの3つの衛星についてのアルマナックを送信する、いくつかのより短いチャンクに分割されたアルマナックメッセージである、長いコンステレーション内メッセージの送信も提案している。
【0006】
この手法は実施するのが比較的容易であるものの、いくつかの欠点があり、主なものは、1つのチャンクの受信の欠如が、メッセージ全体の受信を危うくするということである。
【0007】
特許文献1は、外部リードソロモン(RS)、クロック及びエフェメリスデータ(CED:Clock and Ephemeris)の符号化、を含む航法メッセージを送信する方法に関し、これは、巡回冗長検査(CRC:cyclic redundancy)の使用にさらに関与している。この参照文献では、単一のRSコードが、低パリティで、数百ビットのCEDメッセージに適用される。したがって、この方法は、単一の衛星からの短いメッセージには有用であるものの、高いパリティ/データ比を有する、複数の衛星から送信される長いメッセージ用に最適化されていない。
【0008】
非特許文献3では、異なる衛星からの同じ衛星航法メッセージのページの送信をオフセットすることを提案している。ただし、ページオフセットによって、衛星航法メッセージの最適な復元が可能にはならない。
【0009】
非特許文献4では、GNSS信号を使用して高速かつロバストな方法で大きなメッセージを広めるための噴水符号の使用について説明している。こうしたメッセージはK個のパケットに分割され、各パケットは、K個の行と潜在的に無制限の数の列とを有するランダムバイナリマトリックスG´の要素で符号化される。すべてのケースにおいてN>Kである、N個のパケットを受信した後、受信機は、元のメッセージを再構成するために、受信されたパケットに対応するG´の列を有する行列G´を作成する。
【0010】
特許文献2では、入力データが所定数の並列チャネルのデータに分割され、所定数のチャネルのデータに対してマルチコードワード並列処理を同時に実行することによって符号化される、RSエンコーダの符号化方法を開示している。符号化後、入力制御信号有効化状態が決定され、有効にされた場合は、ゼロパディング操作を使用して、符号化されたデータが、事前に符号化されたデータストリームの指定された位置に挿入される。並列の所定数のチャネルのデータのシリアル処理の後、データに対してDe-zero処理が実行される。
【0011】
特許文献3は、たとえば、メッセージパケットと1又は複数のパリティパケットとを含む、複数の符号化されたパケットを生成するために、複数のメッセージパケットを符号化することを含む、ネットワークコーディングのための方法を対象としている。各メッセージパケット及び符号化された各パケットは、インデックスを有する複数のシンボルを含み、符号化されたパケットの各シンボルは、符号化されたパケットのシンボルと同じインデックスを有するメッセージパケットのシンボルにリードソロモンコードを適用することによって生成される。符号化されたパケットの長さは、メッセージパケットの長さと同じである。複数の符号化されたパケットを生成するために複数のメッセージパケットを符号化するためのネットワークエンコーダと、無線アンテナを介して、符号化されたパケットを送信するための物理層とを含む、無線通信デバイスも開示されている。
【0012】
したがって、完全に交換可能な方法で、かつ、ユーザ受信機において手ごろな復号化コストで、いくつかのソースから、いくつかのページで構成された衛星航法メッセージの最適な回復を可能にする方法は、文献には見当たらない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】国際公開第2017/216058号
【特許文献2】国際公開第2012/174933号
【特許文献3】米国特許出願公開第2016/0056920号明細書
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Quasi-Zenith Satellite System Interface Specification Centimeter-Level Augmentation Service(IS-QZSS-L6-001)Draft Edition,2017
【非特許文献2】Europian GNSS(Galileo)OPEN Service Signal In Space Interface Control Document,(OS SIS ICD V1.3)
【非特許文献3】Fernandez-Hernandez,l.らによる、記事「Packet transmission therough navigation satellites:A preliminary analysis using Monte Carlo simulations」,ENC2017
【非特許文献4】Fernandez-Hernandez,l.らによる、記事「Fountain Codes for GNSS」、Institute of Navigationの衛星部門の第30回国際技術会議の議事録(ION GNSS+2017)、1496~1507頁
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
したがって、本発明の目的は、完全に交換可能な方法で、いくつかのソースから受信された、いくつかのページを含む符号化された衛星航法メッセージの、最適な回復を可能にする方法を提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、いくつかのページを含む符号化された衛星航法メッセージの最適な回復の方法を実施する衛星航法システムを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明の一態様によれば、複数の衛星を介して少なくとも1つのユーザ受信機に送信するために、いくつかのページの形で、符号化された衛星航法メッセージを生成する方法であって、
a)地上局において、衛星航法メッセージMをk個のページに分割するステップと、
b)地上局において、各ページをj個のシンボルに分割し、衛星航法メッセージMは、k×j個のシンボルに分割される、ステップと、
c)各シンボル位置について、地上局において、k個のページのシンボルを、ページのシンボルの各列を合計j個のブロックコードについて別々に符号化することによって、符号化するステップであって、n個のページのそれぞれは、j個の並列なコードからのシンボルを含む、ステップと、
d)地上局において、n個のページについての符号化された衛星航法メッセージM´を生成するステップと、
e)地上局において、符号化された衛星航法メッセージのn個のページの少なくともサブセットを複数の衛星のそれぞれに割り当てるステップと、
f)地上局によって、割り当てられたページを複数の衛星のうちのそれぞれの衛星に送信するステップと、
g)複数の衛星によって、割り当てられたページを少なくとも1つのユーザ受信機に送信するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0018】
このようにして、いくつかのページの形での符号化された衛星航法メッセージの生成が実現されることができ、複数の衛星によってユーザ受信機に送信されたとき、完全に交換可能な方法で、かつ、ユーザ受信機において手ごろな復号化コストで復号化されることができる。
【0019】
一実施形態では、ステップc)は、元の衛星航法メッセージの回復にn個のページの任意のk個のシンボルが使用されることを可能にする、ブロック符号化スキームを使用することをさらに含み得る。
【0020】
一実施形態では、ブロックコードはリードソロモンコードを含む。
一実施形態では、ステップd)は、2元消失通信路をシミュレートするために各ページに巡回冗長検査を付加することをさらに含み得る。
【0021】
これによって、ユーザ受信機におけるページ受信が2元消失通信路におけるように扱われることを確実にする。
【0022】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1つのユーザ受信機において、符号化された衛星航法メッセージを復号化する方法であって、符号化された衛星航法メッセージは前述のように生成され、
i)少なくとも1つのユーザ受信機において、少なくとも1つのユーザ受信機の視野内の複数の衛星によって送信されたページを受信するステップと、
ii)少なくとも1つのユーザ受信機において、複数の衛星から受信されたページから、符号化された衛星航法メッセージを、各列を合計j個のブロックコードについて別々に復号化することによって、復号化処理をそれに再帰的に適用することによって復号化するステップと、
を含む、方法が提供される。
【0023】
これによって、符号化された衛星航法メッセージが完全に交換可能な方法で復号化されることを可能にする。
一実施形態では、ブロックコードはリードソロモンコードを含む。
一実施形態では、ステップi)は、複数の衛星のうちの異なる衛星から異なるページを受信することをさらに含み得る。
【0024】
これには、すべてのページが同じ衛星から受信される場合よりも速くメッセージが受信されることができるという利点がある。
【0025】
一実施形態では、ステップi)は、ページを経時的にシーケンシャルに受信することをさらに含む。
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、その視野内の複数の衛星から異なるページとして送信された符号化された衛星航法メッセージを復号化し、符号化された衛星航法メッセージは、前述の方法に従って生成されて送信され、各ユーザ受信機は、
その視野内の複数の衛星によって送信されたページを受信し、
複数の衛星から受信されたページから、符号化された衛星航法メッセージを、各列を合計j個のブロックコードについて別々に復号化することによって、復号化処理をそれに再帰的に適用することによって復号化する、
ように構成される、ように構成される、ユーザ受信機が提供される。
【0027】
ユーザ受信機のこうした構成は、完全に交換可能な方法で、かつ、ユーザ受信機に対して手ごろな復号化コストで、符号化された衛星航法メッセージの最適な回復を提供する。
一実施形態では、ブロックコードはリードソロモンコードを含む。
【0028】
本発明のさらに別の態様によれば、符号化された衛星航法メッセージをいくつかのページの形で生成、送信、及び復号化するための衛星航法システムであって、
複数の衛星と、
複数の衛星への送信のために、いくつかのページの形で、符号化された衛星航法メッセージを生成し、符号化された衛星航法メッセージは、
衛星航法メッセージMをk個のページに分割すること、
各ページをj個のシンボルに分割することであって、衛星航法メッセージMはk×j個のシンボルに分割される、分割すること、
各シンボル位置について、k個のページのシンボルを、ページのシンボルの各列を合計j個のリードソロモンコードについて別々に符号化することによって、符号化すること、
n個のページについての符号化された衛星航法メッセージM´を生成することであって、n個のページのそれぞれは、j個の並列な符号からのシンボルを含む、生成すること、
符号化された衛星航法メッセージのn個のページの少なくともサブセットを複数の衛星のそれぞれに割り当てること、及び
割り当てられたページを複数の衛星のうちのそれぞれの衛星に送信すること、
によって生成される、ように構成された地上局と、
前述のような少なくとも1つのユーザ受信機と、
を含む、システムが提供される。
【0029】
こうしたシステムは、高いパリティ/データ比を有する衛星航法メッセージ又はデータの送信を可能にする。
本発明をよりよく理解するために、ここで、例として、添付の図面が参照される。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【
図1】所与の衛星航法メッセージがブロックに分割される(「メッセージ分割」と呼ばれる)従来の衛星航法メッセージ送信スキームを示す。
【
図2】各衛星が、異なるオフセットで同じ衛星航法メッセージを送信する、ページオフセットに基づく従来の衛星航法メッセージ送信スキームを示す。
【
図3】ページ内の所与の位置にあるすべてのシンボルが別々のコードに符号化される送信方法を示す。
【
図4】4ページの衛星航法メッセージが12ページに符号化されて3つの衛星によって送信され、ユーザ受信機は4ページだけを受信することによって衛星航法メッセージを再構成する、フェージングチャネルにおける受信処理を示す。
【
図6】本発明の方法の復号化コストと従来の方法の復号化コストとの比較を示す。
【
図7a】「Open Sky」シナリオについて、本発明の方法の受信時間(黒のアスタリスク「
*」で示される)と標準的な方法の受信時間(灰色の十字「+」で示される)との比較を示す。
【
図7b】「Soft Urban」シナリオについて、本発明の方法の受信時間(黒のアスタリスク「
*」で示される)と標準的な方法の受信時間(灰色の十字「+」で示される)との比較を示す。
【
図7c】「Hard Urban」シナリオについて、本発明の方法の受信時間(黒のアスタリスク「
*」で示される)と標準的な方法の受信時間(灰色の十字「+」で示される)との比較を示す。
【
図8】両方がユーザ受信機によって先験的に知られている、送信衛星の衛星IDと時間とに基づいて、衛星航法メッセージのページIDを定義するためのスキームを示す。
【発明を実施するための形態】
【0031】
本発明は、具体的な実施形態に関して、及びある一定の図面を参照して説明されるが、本発明はそれには限定されない。説明されている図面は、単なる概要であり、限定するものではない。図面において、要素のいくつかのサイズは、例示目的のために、誇張されており縮尺どおりに描かれていない場合がある。
【0032】
本発明は、衛星航法の分野に関連していて、衛星通信の分野では起こらないかもしれない、特定の問題を解決することを対象としていることが留意されるべきである。具体的には、本発明に従って符号化されるような衛星航法データは、一般に、純粋な衛星通信信号よりも受信が困難である。一般に、衛星通信信号は非常に高い電力で受信される(衛星航法信号は約-155dbW、つまり熱雑音レベル未満で受信される)。このことによって、衛星航法信号の典型的なデータレートは100bps(GPS L1C/Aの場合は50bps)のオーダであり、これは衛星通信システムで使用される通常のデータレートよりもはるかに低い。また、衛星通信メッセージは一般に単一のソースから送信され、衛星航法信号及びデータは、空中、海、及び陸上を含むすべての環境において静的及び動的ユーザの両方に対して低電力で利用可能でなければならず、陸上は、樹冠及びビルの谷間を含む。
【0033】
衛星航法システムにおける低データ受信レートで、本発明は、たとえば数千又は数万ビットのオーダの長いメッセージを送信する問題を解決しており、これらの信号は、非常に高いデータ冗長性をとおしてではあるが、オーバーヘッドなしでかつ低い復号化複雑度で、劣化した環境において受信される必要があり、これは、最先端の方法でなければ実現されることができない。RS(又は類似の)標準コードの実施は、本発明の問題を解決するために必要とされるものに関して非常に低いパリティを提供する。典型的には、本発明は、ただでさえ長いメッセージに対して、1/10~1/6のパリティ/データ比を必要とする。これは、より長いシンボル、たとえば16ビットを有するRS(又は類似の)コードで実現され得る一方、これらの実施は標準ではなく、ユーザ受信機において復号化するのがより困難である。具体的には、本発明の方法は、劣化した環境において弱い信号で、すなわち潜在的に非常に高いエラーレートで、長いメッセージを送信する特定の衛星航法の問題を解決するために、必要に応じて高いパリティ/データ比を有する長いメッセージに適用される。
【0034】
さらに、従来技術に対する根本的な違いは、本発明の方法は、「シンボル内」レベル、すなわち、ビットレベルでではなく、「シンボル間」レベル、すなわちいくつかのシンボルに対して、並列処理を利用することである。完全なシンボルレベルで動作することにより、必要なできる限り多くのコードを並列化することができる。本発明の方法は、54、すなわち(448-16)/8ベクトルの並列化を利用し、これは、先行技術から知られている方法では実現可能ではない。
【0035】
シンボル間並列化を利用することによって、衛星航法メッセージ又は信号を復号化する、より柔軟な方法が得られることができる。
【0036】
さらに、衛星通信システムと比較して、衛星航法システムは、高いエラーレートに対処し、それらのメッセージを2つ以上のソース又は衛星から送信するために、非常に高い冗長レートでメッセージを送信する必要がある。
【0037】
本明細書で使用される「Open Sky」という用語は、4つの送信衛星からの信号が、各衛星について0.5%のページエラーレートで受信される環境を指す。
【0038】
本明細書で使用される「Soft Urban」という用語は、4つの送信衛星からの信号が、その4つの衛星についてそれぞれ0.5%、1%、10%及び20%のページエラーレートで受信される環境を指す。
【0039】
本明細書で使用される「Hard Urban」という用語は、2つの送信衛星からの信号が、その2つの衛星についてそれぞれ10%及び20%のページエラーレートで受信される環境を指す。
【0040】
「フェージングチャネル」という用語は、時間、地理的位置、及び無線周波数、などの複数の変数で信号の減衰の変動に見舞われる通信を指す。
【0041】
「C/NAV」という用語は、Galileo衛星によって周波数E6でブロードキャストされる商用航法メッセージを指す。
【0042】
「I/NAV」という用語は、Galileo衛星によって周波数E1及びE5でブロードキャストされる完全性航法メッセージを指す。
【0043】
「パリティ/データ比」という用語は、符号化されたメッセージ内の情報ビットの量に対するパリティビットの量を指す。
【0044】
「ブロックコード」又は「ブロック符号化スキーム」という用語は、並列化が実現されることができるコード又は符号化スキームを指す。本発明は、リードソロモンコードを参照して説明されるが、それに限定されない。たとえば、ボーズ・チョドーリ・オッケンジェム(BCH:Bose-Chaudhuri-Hocquengem)符号化スキームも実施され得る。
【0045】
「2元消失通信路」又は「BEC:binary erasure channel」という用語は、送信機がビット(「0」又は「1」)を送信し、受信機がビットを受信するか、又はビットが受信されなかったか若しくは「消去された」というメッセージを受信する、一般的な通信チャネルモデルを指す。実際には、ビットのパケットが送信機によって送信され、受信機がパケットを受信するか、又はパケットが消去される。本方法では、C/NAVのページのCRCがチェックされ、CRCが不合格の場合、そのページは破棄される。
【0046】
記事「European GNSS(Galileo)Open Service Signal In Space Interface Control Document,(OS SIS ICD V1.3)」で提案された手法が
図1に示されている。
図1では、ユーザ受信機12と3つの衛星14、16、18とを含む衛星航法システム10が示されている。示されているように、各衛星14、16、18は、2つの4ページのチャンクで衛星航法メッセージをユーザ受信機12に送信する。このことはメッセージ分割として知られている。2つの4ページのチャンクは、衛星14、16、及び18のうちのそれぞれの衛星からの14a及び14b、16a及び16b、並びに18a及び18bとして示されている。ここで、チャネル障害によって、ユーザ受信機12は、灰色で示されたブロックのみを受信するが、ブロックデータは、任意のページがそれに寄与するように、交換可能に符号化されている。この例では、ユーザ受信機12は、衛星14、16、18のうちのいずれの1つからもチャンク14a、14b、16a、16b、18a及び18bのすべてを受信することができず、したがって、衛星航法メッセージを復号化することができない。しかしながら、後述のようにページが完全に交換可能である場合、以下でより詳細に説明されるように衛星航法メッセージを復号化することが可能である。
【0047】
前述のように、ページオフセットは衛星航法メッセージの最適な復元を可能にしはしない。
図2は、
図1のシステム10と類似した、ユーザ受信機22と3つの衛星24、26、28とを含む、衛星航法システム20を示している。ただし、このケースでは、各衛星24、26、28は、ページオフセットがそれぞれ0、1、2で4ページ衛星航法メッセージを送信する。この例では、ユーザ受信機は衛星のそれぞれからページの半分のみを(灰色で表示されている)受信し、したがって完全な衛星航法メッセージを受信することができない。
図1を参照して前述したように、すべてのページが交換可能である場合、衛星航法メッセージは2秒で受信される。
【0048】
しかしながら、ユーザ受信機は、可能であれば、関連する遅延を伴って、衛星航法メッセージの再ブロードキャストを待つべきであるため、ページオフセットだけでは受信を可能にはしない。システムは、各ユーザ受信機によってどの衛星が観測されるかを制御することができず、衛星航法メッセージの復号化又は復調の成功を可能にすることができないページの組合せを受信するユーザが常に存在することになる。
【0049】
本発明によって解決される問題は、以下のように数学的に定義されることができる。2元消失通信路を介して所与の時間にいくつかの航法衛星によって送信されなければならない、kページ(M1,...,Mk)で構成される高精度サービス(HAS:high accuracy service)衛星航法メッセージMがあり、BECは、C/NAVのページが正しく受信されるか又は破棄されると仮定する。BECは、C/NAVのページのCRCをチェックしてCRCが不合格の場合にページを破棄することによってモデル化される。
【0050】
衛星航法メッセージMは、任意の衛星から受信されたCの任意のk個の回復されたページが元の衛星航法メッセージMの復号化を可能にするように、n個のページの符号化された衛星航法メッセージC(C1,...,Cn)に符号化され、n>kであり、複数の衛星によって同時に送信され、衛星航法メッセージ受信において完全なページ交換可能性を可能にする。この方法は、異なるメッセージ長に対して有効でなければならず、復号化処理は、ユーザ受信機において手ごろでなければならない。
【0051】
本発明の方法は、以下のステップに基づいており、制限がないようにシンボル間レベルでの並列処理を使用する。
【0052】
・衛星航法メッセージMをk個のページ(M1,...,Mk)に分割する
・衛星航法メッセージM全体がk×j個のシンボル(w1,1,...,wk,j)に分割されるように各ページをj個のシンボルに分割する
・各シンボル位置c=1,...,jについて、k個のページのシンボル(w1,c,...,wk,c)を、元の衛星航法メッセージを回復するために、n個の符号化されたシンボルのうちの任意のk個のシンボルが使用されることができるという特性を有するブロック符号化スキームで、(w´1,c,...,w´n,c)に符号化する。
・n個のページの完全な符号化された衛星航法メッセージM´(w´1,1,...w´n,j)を生成し,各ページはj個の並列コードからのシンボルで構成される。
・ページ受信が2元消失通信路におけるように扱われるように、CRC又は類似のチェックを各ページに添付する。
・M´のn個のページ又はそれらのサブセットを異なる衛星に割り当て、各衛星が異なるページを送信するように、衛星を介して衛星航法メッセージを送信する。
・ユーザ受信機側において、可視衛星のいずれかからM´のk個のページが成功裏に受信されたとき、復号化処理をj回再帰的に適用することによって、衛星航法メッセージMを復号化する。
【0053】
符号化及びメッセージの衛星への割り当て処理が
図3に示されており、n個のページ(C
1,...,C
n)はシンボルw
1,1からw
n、jに符号化され、jはC/NAVページ内のシンボルの総数である。たとえば、jは、448ビットから16ビットヘッダを引いたものについては52であり得る。衛星航法メッセージのすべてのシンボルに同じRSコードを使用する代わりに、各列(w
1,1,...w
n,1,w
1,2,...w
n,2,など)が合計j個のRSコードについて別々に符号化及び復号化される。ページC
i=1,n、又はそのサブセットは、異なる衛星によって経時的にシーケンシャルに送信され、このことによってユーザ受信機が各C
iを識別することを可能にする。ユーザ受信機がk個のページを受信したとき、シンボル間レベルでの並列化を使用して、衛星航法メッセージを提供するためにj個のコードが復号化されることになる。
【0054】
フェージングチャネルにおける受信処理が
図4に示されており、4ページの衛星航法メッセージが12ページに符号化され、3つの衛星によって送信され、受信機は4つのページだけを受信することによって衛星航法メッセージを再構成する。
図4では、ユーザ受信機110と3つの衛星120、130、140とを含む衛星航法システム100が示されている。各衛星120、130、140は、4つのページをユーザ受信機110に送信する。しかしながら、フェージングチャネルに起因して、灰色で示されたページだけがユーザ受信機110によって受信され、これらのページが、元の4ページの衛星航法メッセージを復号化及び再構成するために使用される。
【0055】
リードソロモンコードは、n個の送信されたシンボルのうちの任意のk個のシンボルで、衛星航法メッセージの復元を可能にする特性を有している。したがって、本発明の一実施形態は、リードソロモン符号化に基づいている。複数の衛星で完全なページ交換可能性を実現するには、nがkよりもはるかに大きくなければならず、すなわち、異なる衛星が同じページを送信しないように、衛星航法メッセージは大量のパリティデータを伴って符号化されなければならない。このことは、Westallらによって「An introduction to Galois Field and Reed-Solomon Coding」、School of Computing Clemson University,SC(2010):29634-1906において説明されている。
【0056】
GalileoのE6B信号で448bpsで送信される精密単独測位(PPP:precise point positioning)メッセージについての最大メッセージサイズの現在の推定に基づいて、次のことが想定されることができる。
・最大の衛星航法メッセージ長(kmax)は20ページ、又は8640ビット、又は1080バイト(たとえばionoメッセージ)であり、各ページは432ビット(54バイト)に、ページに含まれる情報を識別するために使用されるヘッダ用に16ビットを加えて、合計448ビットを提供することができる。
・Galileoのコンステレーション能力による、最大20の送信衛星で、20/1のパリティ/データ比を必要とする。
【0057】
ただし、パリティ/データ比の量20/1を低減するために、軌道の反対のスロットにある衛星は、同じユーザ受信機によって観測されることができないと想定されることができる。これによって、冗長性をすでに半分低減している(20から10に)。他の想定は、衛星は空に均一に分布されることができるということ、及びクリーンな空の場合、地球上の受信機は20個のGalileo接続の衛星のうち最大で3分の1を観測することができるということである。このケースでは、RSメッセージは、合計(データ+パリティ)で7560バイトについて6/1のパリティ/データ比を有し得る。しかしながら、ほとんどの標準的なRS符号化手法はGF(2m)に基づいており、m=8であり、256バイト以下が符号化されることができることを暗示している。m=16又はm=32での他の実施も可能であるが、ガロア体演算(特にm=32についての多項式乗算)を複雑にし、受信機の復号化コスト及びストレージ要件を増加させる。
【0058】
図5に、20ページまでの、異なるメッセージ長でのいくつかの例が提供されている。1番目の例では、20ページのメッセージが1/5のコードレートで送信され、すなわち、ユーザ受信機の視野内の最大5つの衛星についてページ交換可能性を保証している。20個のデータシンボルと80個のパリティシンボルを有する、100個の8ビットのシンボルメッセージが符号化され、多くのRSコード、例としては、Cheungらによって「End-to-end system consideration of the Galileo image compression system」(国際地球科学・リモートセンシングシンポジウム、第2巻、米国電気電子学会(IEE)、1996)に説明されているようなRS(255,161,8)においてよく適合する。B.E.Schotschによって「Specification of Outer Reed-Solomon Encoding of the CED in the Galileo E1 I/NAV Message」、2017に説明されているように、余分な情報シンボルはゼロでフィルされる(たとえば、20ページの例では、161個のデータシンボルのうち20個だけが使用され、141個はゼロでフィルされることになる)。
【0059】
2番目の例では、16ページの衛星航法メッセージが1/6のコードレートで送信される。96個の8ビットのシンボルメッセージが、16個のデータシンボルと80個のパリティシンボルとで符号化され、余分な情報シンボルはゼロでフィルされる。3番目の例では、10ページの衛星航法メッセージが1/8のコードレートで送信される。80個の8ビットのシンボルメッセージが、10個のデータシンボルと70個のパリティシンボルとで符号化され、余分な情報シンボルはゼロでフィルされる。
【0060】
冗長性の少ない4番目の例では、前述のSchotschによる記事で提案されているように、18ページの衛星航法メッセージが、I/NAV RSコード、RS(255,195,8)で1/4のコードレートで送信され、60シンボルのパリティを提供する。
【0061】
単一のコードでの標準的なRS符号化と比較して、本発明の方法の利点の1つは、大幅に低い復号化コストである。復号化処理をj回繰り返すことで、1回のデコーダの繰り返しに対して復号化コストを直線的に増加させるが、衛星航法メッセージが非常に短いため、復号化コストは指数関数的に減少する。復号化コストは、k×k行列を反転するコストと線形k×kシステムを解くコストとして推定される。行列反転コストは通常、ガウスの消去法のコストであるO(k3)として推定される。線形システムを解くコストはO(k2)として推定される。
【0062】
標準的な方法との比較が
図6に示されている。比較は、432ビットのデータページ長並びにk=20及びk=4のメッセージサイズに基づいている。3つの実施が選択されている。
【0063】
・衛星航法メッセージ全体について単一のRSコード。短いメッセージについてはm=8(n=216<28)、長いメッセージについてはm=16(28<n<216)。これは「Standard1」と呼ばれる。
・衛星航法メッセージを4ページの5つのチャンクに分割することに基づく実装で、各チャンクが別々に符号化される。これは「Standard2」と呼ばれる。
・本発明の方法は、「MRSC」(マルチプルRSコーディング:multiple RS coding)と呼ばれる。
【0064】
図6では、mはシンボルサイズ(GFサイズが2
m)を表し、「最大ページ数/コード」は、(MRSCのケースでは全体的又は部分的に)RSコードで符号化されているC/NAVページの数を表し、「並列コード数/メッセージ」は、所与の衛星航法メッセージを並列に符号化するRSコードの数であり、「チャンク」は、所与の衛星航法メッセージを符号化するRSコードの数であり、「コード」は衛星航法メッセージについてのコードの総数であり、「k」は、コードごとに符号化されたバイトの総数であり、そして「復号化動作/コード」は、コードごとの復号化動作の数ある(O(k
3)+O(k
2))。示されているように、本発明(MRSC)の実施は、同じ衛星航法メッセージについての他の実施(「Standard1」及び「Standard2」)よりもはるかに低い復号化コストを有する。
【0065】
本発明の方法の別の利点は、フェージング条件下での改善された受信能力である。5つの4ページのチャンクでの同等の従来の方法と比較した、MRSCを介した20ページの衛星航法メッセージの受信が
図7aから
図7cに示されている。
図7a~
図7cのそれぞれは、5000個の事例で実行されたMonte-Carloシミュレーションを使用してモデル化されており、それぞれのケースにおいて衛星航法メッセージを復号化するための時間を測定している。
【0066】
図7aは、ユーザ受信機の視野内に4つの衛星を有する「open sky」のケースについて、黒で「
*」として示されている本発明の方法における受信時間と、灰色で「+」として示されている4ページ/5チャンク方法の受信時間との間の比較を示している。従来の方法では、衛星がユーザ受信機に対して相補的なチャンクシーケンスを送信するように、チャンクシーケンスが最適化される。4つの衛星のそれぞれについて、ページエラーレート0.5%が得られた。
【0067】
図7bは
図7aに類似しているが、ユーザ受信機の視野内に4つの衛星を有する「soft urban」のケースについてのものである。衛星のうちのそれぞれの衛星について1%、5%、10%及び20%のページエラーレートが得られた。
【0068】
図7cは
図7a及び7bに類似しているが、ユーザ受信機の視野内に2つの衛星だけを有する「hard urban」のケースについてのものである。衛星のうちのそれぞれの衛星について10%及び20%のページエラーレートが得られた。
【0069】
図7a~
図7cに示されるように、本発明の方法は、メッセージ受信のロバスト性を大幅に改善し、衛星航法メッセージがはるかに迅速に受信される。
【0070】
本発明の方法の具体的な実施は、メッセージIDフィールド、メッセージ長フィールド、及びページIDフィールドを伴う、ヘッダを含むあらゆるページに基づくことができる。
【0071】
ヘッダサイズが縮小される別の具体的な実施は、ページIDフィールドが、ヘッダ内のスペースを占有する代わりに、マトリックスから定義されることができるように、所与の数の衛星と時間とについての衛星/時間マトリックスを定義することに基づくことができ、長い、符号化された衛星航法メッセージを有する可能性を可能にする。このことは
図8に示されている。
【0072】
図8は、最大で(n+1)
*Tページで構成されるメッセージのページを、衛星の識別(n)と時刻(1~T)とを識別するだけで、ヘッダ内でこの情報を必ずしも送信する必要なしに、識別する方法を示している。
【0073】
別の具体的な実施は、衛星航法メッセージを符号化している符号化スキームがヘッダ内で定義されているページヘッダを含み得、それによって複数のスキームを可能にする。
【0074】
別の具体的な実施は、衛星マスク、軌道補正、バイアス、及びユーザレンジ精度(URA:user ranging accuracy)についての1つのメッセージ、電離層補正についての1つのメッセージ、並びに衛星マスク内の衛星の数に応じて1~3ページで構成される衛星クロック補正についての1つのメッセージの、3つのメッセージ内のメッセージサブタイプをグループ化することに基づく高精度メッセージの符号化を含む。
【0075】
別の実施は、RSとは異なる他のブロックコード、又は8ビットとは異なる他のシンボル長(たとえば、両方ともRSに使用可能であるため16ビット又は32ビット)を含む。
【0076】
別の実施では、符号化される衛星航法メッセージは高精度メッセージではなく、デジタル署名又はアルマナックなど、GNSSコンステレーションによって送信される別の一般的な衛星航法メッセージである。
【0077】
別の実施では、異なる衛星からのいくつかの異なる衛星航法メッセージの時間内でのインタリーブを可能にする。すなわち、所与の時間間隔で1つのメッセージを送信する代わりに、システムはその時間間隔中にいくつかのメッセージを送信することができ、具体的なメッセージのヘッダは、具体的なメッセージIDでそのメッセージを識別する。
【手続補正書】
【提出日】2020-01-23
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の衛星
(120、130、140)を介して少なくとも1つのユーザ受信機
(110)に送信するために、いくつかのページの形で、符号化された衛星航法メッセージを生成する方法であって、
a)地上局において、衛星航法メッセージMをk個のページに分割するステップと、
b)前記地上局において、各ページをj個のシンボルに分割し、前記衛星航法メッセージMは、k×j個のシンボルに分割される、ステップと、
c)各シンボル位置について、前記地上局において、前記k個のページの前記シンボルを
符号化するステップと、
d)前記地上局において、n個のページについての符号化された衛星航法メッセージM´を生成するステップと
、を含み、
前記ステップc)は、前記ページの前記シンボルの各列を合計j個のブロックコードについて別々に符号化し、前記n個のページのそれぞれは、j個の並列なコードからのシンボルを含んでおり、
さらに本方法は、
e)前記地上局において、前記符号化された衛星航法メッセージの前記n個のページの少なくともサブセットを前記複数の衛星
(120、130、140)のそれぞれに割り当てるステップと、
f)前記地上局によって、前記割り当てられたページを前記複数の衛星のうちのそれぞれの衛星
(120、130、140)に送信するステップと、
g)前記複数の衛星によって、前記割り当てられたページを前記少なくとも1つのユーザ受信機
(110)に送信するステップと、
を含む、方法。
【請求項2】
ステップc)は、前記元の衛星航法メッセージの回復に前記n個のページの任意のk個のシンボルが使用されることを可能にする、ブロック符号化スキームを使用することをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記ブロックコードはリードソロモンコードを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
ステップd)は、2元消失通信路をシミュレートするために各ページに巡回冗長検査を付加することをさらに含む、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
少なくとも1つのユーザ受信機
(110)において、符号化された衛星航法メッセージを復号化する方法であって、前記符号化された衛星航法メッセージは、請求項1から4のいずれか一項
の方法に従って生成される
と共に送信され、
i)前記少なくとも1つのユーザ受信機
(110)のそれぞれにおいて、前記少なくとも1つのユーザ受信機
(110)のそれぞれの視野内の前記複数の衛星
(120、130、140)によって送信されたページを受信するステップと、
ii)前記少なくとも1つのユーザ受信機
(110)のそれぞれにおいて、前記複数の衛星
(120、130、140)から受信された前記ページから、前記符号化された衛星航法メッセージを、各列を合計j個のブロックコードについて別々に復号化することによって、復号化処理をそれに再帰的に適用することによって復号化するステップと、
を含む、方法。
【請求項6】
前記ブロックコードはリードソロモンコードを含む、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
ステップi)は、前記複数の衛星
(120、130、140)のうちの異なる衛星から異なるページを受信することをさらに含む、請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
ステップi)は、前記ページを経時的にシーケンシャルに受信することをさらに含む、請求項5から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
その視野内の複数の衛星
(120、130、140)から異なるページとして送信された符号化された衛星航法メッセージを復号化し、前記符号化された衛星航法メッセージは、請求項1から4のいずれか一項の方法に従って生成されて送信
される、ユーザ受信機であって、
その視野内の前記複数の衛星
(120、130、140)によって送信されたページを受信する
手段と、
前記複数の衛星
(120、130、140)から受信された前記ページから、前記符号化された衛星航法メッセージを、各列を合計j個のブロックコードについて別々に復号化することによって、復号化処理をそれに再帰的に適用することによって復号化する
手段と、
を備える、ユーザ受信機
(110)。
【請求項10】
前記ブロックコードはリードソロモンコードを含む、請求項9に記載のユーザ受信機
(110)。
【請求項11】
符号化された衛星航法メッセージをいくつかのページの形で生成、送信、及び復号化するための衛星航法システム
(100)であって、
複数の衛星
(120、130、140)と、
前記請求項9又は10に記載の少なくとも1つのユーザ受信機(110)と、
前記複数の衛星への送信のために、いくつかのページの形で、符号化された衛星航法メッセージを生成し、前記符号化された衛星航法メッセージは、
衛星航法メッセージMをk個のページに分割すること、
各ページをj個のシンボルに分割することであって、前記衛星航法メッセージMはk×j個のシンボルに分割される、分割すること、
各シンボル位置について、前記k個のページの前記シンボルを、前記ページの前記シンボルの各列を合計j個のブロックコードについて別々に符号化することによって、符号化すること、
n個のページについての符号化された衛星航法メッセージM´を生成することであって、n個のページのそれぞれは、j個の並列な符号からのシンボルを含む、生成すること、
前記符号化された衛星航法メッセージの前記n個のページの少なくともサブセットを前記複数の衛星のそれぞれに割り当てること、及び
前記割り当てられたページを前記複数の衛星のうちのそれぞれの衛星に送信すること、
によって
生成する手段を備えた地上局と、
を含み、
前記複数の衛星(120、130、140)は、少なくとも1つのユーザ受信機に、前記割り当てられたページを送信する手段を含む、システム
(100)。
【請求項12】
前記ブロックコードはリードソロモンコードを含む、請求項11に記載の衛星航法システム
(100)。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0022
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0022】
本発明の別の態様によれば、少なくとも1つのユーザ受信機において、符号化された衛星航法メッセージを復号化する方法であって、符号化された衛星航法メッセージは前述のように生成されると共に送信され、
i)少なくとも1つのユーザ受信機のそれぞれにおいて、少なくとも1つのユーザ受信機のそれぞれの視野内の複数の衛星によって送信されたページを受信するステップと、
ii)前記少なくとも1つのユーザ受信機のそれぞれにおいて、複数の衛星から受信されたページから、符号化された衛星航法メッセージを、各列を合計j個のブロックコードについて別々に復号化することによって、復号化処理をそれに再帰的に適用することによって復号化するステップと、
を含む、方法が提供される。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0026
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0026】
本発明のさらなる態様によれば、その視野内の複数の衛星から異なるページとして送信された符号化された衛星航法メッセージを復号化し、符号化された衛星航法メッセージは、前述の方法に従って生成されて送信され、各ユーザ受信機は、
その視野内の複数の衛星によって送信されたページを受信し、
複数の衛星から受信されたページから、符号化された衛星航法メッセージを、各列を合計j個のブロックコードについて別々に復号化することによって、復号化処理をそれに再帰的に適用することによって復号化する、手段を含む、ユーザ受信機が提供される。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0028
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0028】
本発明のさらに別の態様によれば、符号化された衛星航法メッセージをいくつかのページの形で生成、送信、及び復号化するための衛星航法システムであって、
複数の衛星と、
上述されたような少なくとも1つのユーザ受信機と、
複数の衛星への送信のために、いくつかのページの形で、符号化された衛星航法メッセージを生成し、符号化された衛星航法メッセージは、
衛星航法メッセージMをk個のページに分割すること、
各ページをj個のシンボルに分割することであって、衛星航法メッセージMはk×j個のシンボルに分割される、分割すること、
各シンボル位置について、k個のページのシンボルを、ページのシンボルの各列を合計j個のリードソロモンコードについて別々に符号化することによって、符号化すること、
n個のページについての符号化された衛星航法メッセージM´を生成することであって、n個のページのそれぞれは、j個の並列な符号からのシンボルを含む、生成すること、
符号化された衛星航法メッセージのn個のページの少なくともサブセットを複数の衛星のそれぞれに割り当てること、及び
割り当てられたページを複数の衛星のうちのそれぞれの衛星に送信すること、
によって生成される手段を含む地上局と、を含み、
前記複数の衛星は、少なくとも1つのユーザ受信機に、前記割り当てられたページを送信する手段を含む、システムが提供される。
【国際調査報告】