(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】鋳造製品の取り扱い装置及び方法
(51)【国際特許分類】
B22D 29/04 20060101AFI20220124BHJP
B22D 45/00 20060101ALI20220124BHJP
B22D 11/12 20060101ALI20220124BHJP
B22D 31/00 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B22D29/04
B22D45/00 Z
B22D11/12 B
B22D31/00 B
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020558597
(86)(22)【出願日】2019-05-14
(85)【翻訳文提出日】2020-10-21
(86)【国際出願番号】 EP2019062325
(87)【国際公開番号】W WO2019238336
(87)【国際公開日】2019-12-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】591237869
【氏名又は名称】ノルスク・ヒドロ・アーエスアー
【氏名又は名称原語表記】NORSK HYDRO ASA
【住所又は居所原語表記】0240 OSLO,NORWAY
(74)【代理人】
【識別番号】100110423
【氏名又は名称】曾我 道治
(74)【代理人】
【識別番号】100111648
【氏名又は名称】梶並 順
(74)【代理人】
【識別番号】100221729
【氏名又は名称】中尾 圭介
(72)【発明者】
【氏名】オーネスバグ、ガイア・オラヴ
(72)【発明者】
【氏名】ファーガリー、ヨン・オラヴ
(57)【要約】
縦長の鋳造製品(10)の長手方向軸線が垂直方向に配置されるように鋳造ピット(15)内に配置される、鋳造製品(10)を鋳造ピット(15)から持ち上げるための持ち上げ装置(1)であって、鋳造ピット(15)を囲む地面(25)、特に鋳造施設の床に、任意選択的に永久的に、固定される支持構造体(20)と、支持軸受(40)を介して支持構造体(20)に回転可能に接続される端部(35)を有する持ち上げ構造体(30、31、32)と、持ち上げ構造体(30)に、任意選択的に回転可能に、接続されるとともに、鋳造製品(10)に選択的に取り付くことができる頭部(45)であって、持ち上げ距離(L)が支持軸受(40)と頭部(45)との間に画定される、頭部(45)とを備え、装置(1)が、鋳造製品(10)を鋳造ピット(15)から持ち上げるために、鋳造ピット内で鋳造製品に接触するように、支持軸受の周囲で持ち上げ構造体(30)を第1の方向に回転させ、頭部を鋳造製品に選択的に取り付け、鋳造製品を鋳造ピット(15)から、特に鋳造ピット(15)から外に持ち上げるために頭部(45)が鋳造製品(10)に取り付けられたまま、支持軸受(40)の周囲で持ち上げ構造体(30)を反対の第2の方向に回転させるように構成される、持ち上げ装置(1)を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
縦長の鋳造製品(10)の長手方向軸線が垂直方向に配置されるように鋳造ピット(15)内に配置される、前記鋳造製品(10)を前記鋳造ピット(15)から取り出すことを目的とする持ち上げ装置(1)であって、
前記鋳造ピット(15)を囲む地面(25)、特に鋳造施設の床に、任意選択的に永久的に、固定される支持構造体(20)と、
第1の縦長の持ち上げアーム(31)と第2の縦長の持ち上げアーム(32)とを備えた持ち上げ構造体(30)であって、前記第1の持ち上げアーム(31)及び前記第2の持ち上げアーム(32)が各々、それぞれの支持軸受(40)を介して前記支持構造体(20)に回転可能に接続され、並びに頭部(45)が、前記第1の持ち上げアーム(31)及び前記第2の持ち上げアーム(32)に対して横断方向に配置され、且つ前記第1の持ち上げアーム(31)及び前記第2の持ち上げアーム(32)に接続される、前記持ち上げ構造体(30)と
を備え、
前記頭部(45)が、前記持ち上げ構造体(30)に回転可能に接続されるとともに、前記鋳造製品(10)に選択的に取り付くことができ、且つ持ち上げ距離(L)が前記支持軸受(40)と前記頭部(45)との間に画定され、
前記装置(1)が、前記鋳造製品(10)を前記鋳造ピット(15)から持ち上げるために、前記鋳造ピット内で前記鋳造製品に接触するように、前記支持軸受の周囲で前記持ち上げ構造体(30)を第1の方向に回転させ、前記頭部を前記鋳造製品に選択的に取り付け、
前記鋳造製品を前記鋳造ピット(15)から、特に前記鋳造ピット(15)から外に持ち上げるために前記頭部(45)が前記鋳造製品(10)に取り付けられたまま、前記支持軸受(40)の周囲で前記持ち上げ構造体(30)を反対の第2の方向に回転させるように構成される、
持ち上げ装置(1)。
【請求項2】
前記持ち上げ構造体(30)が、前記持ち上げ距離(L)を調整する手段(50)を備える、請求項1に記載の持ち上げ装置(1)。
【請求項3】
前記持ち上げ距離(L)を調整する前記手段(50)が、前記持ち上げ構造体(30)を互いに対して移動可能なセグメント(31a、32a、31b、32b)に分割する少なくとも1つの軸受によって実現され、請求項1を参照する限りにおいて、前記第1の持ち上げアーム(31)及び前記第2の持ち上げアーム(32)が各々、前記それぞれの持ち上げアーム(31、32)を互いに対して移動可能なセグメント(31a、31b、32a、32b)に分割/連接する少なくとも1つの軸受を備える、請求項2に記載の持ち上げ装置(1)。
【請求項4】
前記持ち上げ距離(L)を調整する前記手段(50)が、軸方向に調整可能な少なくとも1つの軸受、特に軸方向に調整可能な直動伸縮軸受によって実現される、請求項2又は3に記載の持ち上げ装置(1)。
【請求項5】
前記軸受が回転軸受である、請求項3又は4に記載の持ち上げ装置(1)。
【請求項6】
前記持ち上げ構造体(30)が、少なくとも1つのアクチュエータ、特に油圧アクチュエータ、空気圧アクチュエータ又は電動アクチュエータを備える、請求項1~5のいずれか一項に記載の持ち上げ装置(1)。
【請求項7】
前記頭部(45)が、同時に2つ以上の鋳造製品(10)に選択的に取り付くことができるように構成される、請求項1~6のいずれか一項に記載の持ち上げ装置(1)。
【請求項8】
複数の鋳造製品(10)が、マトリックス配列を形成するように、前記持ち上げ距離(L)の方向を横断する横列と前記持ち上げ距離(L)の方向に平行な縦列とで前記鋳造ピット(15)内に配置され、
前記頭部が、横一列の全ての鋳造製品(10)に同時に取り付くように構成され、且つ前記マトリックス配列の横列の数に対応する多数の持ち上げ作業で全ての鋳造製品(10)を前記鋳造ピット(15)から持ち上げることができるように、前記持ち上げ距離(L)を調整することによって前記マトリックス配列から横列が選択される、請求項2~6のいずれか一項を参照する限りにおいて請求項7に記載の持ち上げ装置(1)。
【請求項9】
前記装置(1)が、前記鋳造製品(10)を垂直方向から水平方向に回転させるための手段(70、75、80)を備える、請求項1~8のいずれか一項に記載の持ち上げ装置(1)。
【請求項10】
前記持ち上げ構造体(30)が、前記頭部(45)の垂直運動と前記頭部(45)の水平運動とを互いに別々に制御できるように構成される、請求項1~9のいずれか一項に記載の持ち上げ装置(1)。
【請求項11】
縦長の鋳造製品(10)が、鋳造ピット(15)内にマトリックス配列を形成する縦列及び横列で配置され、且つ前記鋳造ピット(15)内の前記鋳造製品(10)の長手方向が垂直方向である、前記鋳造製品(10)を請求項1~10のいずれか一項に記載の持ち上げ装置によって鋳造ピット(15)から取り出すことを目的とする方法であって、
前記鋳造ピット(15)から外に持ち上げるべき鋳造製品(10)の横列を決定することと、
持ち上げ装置(1)の静止部、特に支持構造体(20)と、前記鋳造ピット(15)から持ち上げるべき鋳造製品(10)の前記列との間の距離を決定することと、
前記距離の前記決定に基づいて前記持ち上げ装置(1)の持ち上げ距離(L)を調整することと、
前記持ち上げ装置の頭部(45)を鋳造製品(10)の前記横列に向けて移動させるために、前記静止部(20)を中心に前記持ち上げ装置(1)の持ち上げ構造体(30)を第1の方向に回転させることと、
前記頭部(45)を鋳造製品の前記決定した横列の前記鋳造製品(10)に取り付けることと、
前記鋳造製品(10)を前記鋳造ピット(15)から外に持ち上げるために、前記鋳造製品(10)が前記頭部(45)に取り付けられた状態で前記持ち上げ構造体(30)を反対の第2の方向に回転させることと、
前記頭部(45)に取り付けられた各鋳造製品(10)の長手方向軸線を前記垂直方向から水平方向に回転させるように前記鋳造製品(10)を回転させることと
を含む方法。
【請求項12】
請求項8に記載の持ち上げ装置(1)を用いて前記方法を実行することをさらに含む、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記鋳造製品(10)が、アルミニウム又はアルミニウム合金からなる、請求項1~12のいずれか一項に記載の方法又は装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、鋳造製品を取り扱うための装置及び方法に関し、特に直接チル鋳造工程後に鋳造設備内の鋳造製品を持ち上げるための、例えばさらなる加工のために鋳造ピットから外に鋳造製品を持ち上げるための、装置及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
金属の製造では、種々の形態の鋳造物、例えば、熱間圧延及び冷間圧延によって平らな金属製品を製造するために使用される板状インゴット、並びに押出工程によって異なる断面及び設計を有する押出製品を製造するために使用されるビレットが製造される。
【0003】
板状インゴットとビレットの両方は、フレーム構造体内に線状及び列状に配置された非常に多くの冷却鋳型を備え得る半連続鋳造設備によって製造される場合がある。液体金属は、上方から高温上部を通って金属マニホールドを経由して各冷却鋳型の空洞内に導かれる。金属は2段階で冷却凝固させる。第1の段階は、冷却鋳型の空洞の壁を通しての冷却によって金属の初期凝固が達成される、1次冷却と呼ばれる。第2の段階は、1次冷却領域の真下の水が冷却鋳型の周囲に沿った通水間隙又は通水孔を通して金属に直接吹き付けられる、2次冷却と呼ばれる。鋳造設備は、可動支持体の構造的高さを加えた鋳造すべき製品の長さに対応する深さを有する鋳造ピットの上に置かれる場合がある。そのような鋳造ピットの全深さは、10~11メートル程度であってもよい。冷却鋳型の下にある可動支持体又はスタータブロックは、鋳造製品の使用目的、すなわち、後続の圧延工程用であるか又は押出工程用であるかに応じて、例えば150~400mmの直径を有し得る縦長の鋳造製品を作製するために、金属が凝固するにつれて下方に移動させる。前述の種類の鋳造設備は、「直接チル(DC)鋳造設備」とも称され、例えば、特許文献1で説明されており、その内容全体がこの参照により本明細書に組み込まれる。しかしながら、本発明による方法及び装置は、任意の鋳造設備と共に使用され得る。
【0004】
後続の製造ステップのために、鋳造製品を鋳造ピットから取り出す必要がある。鋳造ピットからの取り出しを達成するために、鋳造設備は、鋳造製品を露出させて鋳造ピットから取り出すことができるように、鋳造ピットの開口部から持ち上げられ、枢動させられ、又は何か別の方法で取り出されることがある。
【0005】
従来では、この取り出しは、リングの各々がワイヤでスプレッダに接続された、多数のリングが設けられたスプレッダを備えた天井クレーン(橋形クレーン)を使用して行われていた。リングの各々はビレットの端部に手動でねじ込まれ、スプレッダを持ち上げ、次いで、各ワイヤで引っ張ることによって、各リングは、リングがねじ込まれたビレットをリングが締め付けによって保持してビレットを持ち上げることができるように斜めに引っ張られる。各持ち上げ作業では、一列のビレットが、通常、ピットから外に真っ直ぐに一度に持ち上げられ、次いで、倉庫への移送又はさらなる処理/加工のために、移送装置、通常はローラコンベア上に水平に置かれる。ビレットが鋳造ピットから外に真っ直ぐに持ち上げられる持ち上げ作業は、事故が発生した場合にビレットが落下する高さが高いことを意味する。このことは、ビレットが手で取り扱われる事実と相まって、作業を行う作業者にとっての高い危険性と、作業者に重傷を負わせる危険性を伴う。
【0006】
代替的に、露出した鋳造製品は、例えば特許文献2で説明されているように、台車を使用して鋳造ピットから取り出される場合がある。しかしながら、本特許文献で説明されている技術は、鋳造ピットに通じる傾斜路が必要になるので、鋳造所内に広い床面積を必要とする。上記の広い床面積は、全ての鋳造所で利用できるわけではないので、技術の改良が不可能であり、また、新たに建設される「未開発地の」鋳造所の場合には建設費を増加させる場合がある。
【0007】
それゆえ、鋳造製品を鋳造ピットから取り出すより効率的な装置及び方法を有することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】欧州特許第1648635号明細書
【特許文献2】米国特許第8800636号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上述の問題を解決又は緩和することを目的とし、且つ鋳造製品を鋳造ピットから取り出すより効率的な装置及び方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0010】
実施形態によれば、本発明は、縦長の鋳造製品の長手方向軸線が垂直方向に配置されるように鋳造ピット内に配置される、例えば鋳造製品を鋳造ピットから取り出すために、鋳造製品を上方に持ち上げるための装置(本明細書では「持ち上げ装置」又は「装置」とも称される)であって、鋳造ピットを囲む地面、特に鋳造所などの鋳造施設の床に、任意選択的に永久的に、固定される支持構造体と、支持軸受を介して支持構造体に回転可能又は枢動可能に接続される端部(例えば基端部)を有する持ち上げ構造体と、(例えば、持ち上げ構造体の先端部において)持ち上げ構造体に、任意選択的に回転可能に、接続されるとともに、鋳造製品に選択的に取り付くことができる頭部であって、持ち上げ距離が支持軸受と頭部との間に画定される、頭部と備え、装置が、鋳造製品を鋳造ピットから持ち上げるために、鋳造ピット内で鋳造製品に接触するように、支持軸受の周囲で持ち上げ構造体を第1の方向に回転させ、頭部を鋳造製品に選択的に取り付け、鋳造製品を鋳造ピットから外に持ち上げるために頭部が鋳造製品に取り付けられたまま、支持軸受の周囲でアームを反対の第2の方向に回転させるように構成される、装置を提供してもよい。
【0011】
さらなる実施形態によれば、持ち上げ構造体は、第1の縦長の持ち上げアームと第2の縦長の持ち上げアームとを備え得、第1の持ち上げアーム及び第2の持ち上げアームは各々、それぞれの支持軸受を介して支持構造体に回転可能に接続されてもよく、並びに頭部は、第1の持ち上げアーム及び第2の持ち上げアームに対して横断方向に配置されてもよく、且つ第1の持ち上げアーム及び第2の持ち上げアームに接続されてもよい。
【0012】
さらなる実施形態によれば、持ち上げ構造体は、持ち上げ距離を調整する手段を備え得る。
【0013】
さらなる実施形態によれば、持ち上げ距離を調整する手段は、軸方向に調整可能な少なくとも1つの軸受、特に軸方向に調整可能な伸縮軸受によって実現されてもよい。
【0014】
さらなる実施形態によれば、持ち上げ距離を調整する手段は、持ち上げ構造体を互いに対して移動可能な、例えば回転可能なセグメントに分割/連接する少なくとも1つの継手によって実現されてもよく、第1の持ち上げアーム及び第2の持ち上げアームは各々、それぞれの持ち上げアームを互いに対して移動可能なセグメントに分割/連接する少なくとも1つの継手を備える。
【0015】
さらなる実施形態によれば、持ち上げ構造体は、少なくとも1つのアクチュエータ、任意選択的に油圧アクチュエータを備え得る。
【0016】
さらなる実施形態によれば、頭部は、同時に2つ以上の鋳造製品に選択的に取り付くことができるように構成されてもよい。
【0017】
さらなる実施形態によれば、複数の鋳造製品は、マトリックス配列を形成するように、持ち上げ距離の方向を横断する横列と持ち上げ距離の方向に平行な縦列とで鋳造ピット内に配置されてもよく、頭部は、横一列の全ての鋳造製品に同時に取り付くように構成されてもよく、且つマトリックス配列の横列の数に対応する多数の持ち上げ作業で全ての鋳造製品を鋳造ピットから持ち上げることができるように、持ち上げ距離を調整することによってマトリックス配列から横列が選択されてもよい。
【0018】
さらなる実施形態によれば、装置は、例えば、鋳造製品を鋳造所内の従来の横置きステーションに載置するために、鋳造製品を垂直方向から水平方向に回転させるための手段を備え得る。
【0019】
さらなる実施形態によれば、持ち上げ構造体は、頭部の垂直運動と頭部の水平運動とを互いに別々に制御できるように構成されてもよい。垂直運動と水平運動に対する制御が同時であってもよい。
【0020】
実施形態によれば、本発明は、縦長の鋳造製品が、鋳造ピット内にマトリックス配列を形成する横列及び縦列で配置され、且つ鋳造ピット内の鋳造製品の長手方向が垂直方向である、鋳造製品を鋳造ピットから持ち上げるための方法であって、鋳造ピットから外に持ち上げるべき鋳造製品の横列を決定することと、持ち上げ装置の静止部、特に支持構造体と、鋳造ピットから外に持ち上げるべき鋳造製品の横列との間の距離を決定することと、距離の決定に基づいて持ち上げ装置の持ち上げ距離を調整することと、持ち上げ装置の頭部を鋳造製品の横列に向けて移動させるために、静止部を中心に持ち上げ装置の持ち上げ構造体を第1の方向に回転させることと、頭部を鋳造製品の決定した横列の鋳造製品に取り付けることと、鋳造製品を鋳造ピットから外に持ち上げるために、鋳造製品が頭部に取り付けられた状態で持ち上げ構造体を反対の第2の方向に回転させることと、鋳造製品を垂直方向から水平方向に回転させることとを含む方法を提供する。実施形態によれば、本明細書で説明するような横列の鋳造製品は、鋳造製品を1つしか含まなくてもよく、又は2つ以上の鋳造製品を含んでもよい。
【0021】
本発明のさらなる実施形態を図に示し本明細書で説明する。
図1~
図3は、原寸に比例したものではなく、本発明による実施形態で用いられるいくつかの原理を抽象的に示す概略図である。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【
図1】本発明の実施形態による持ち上げ用装置の概略図を示す。
【
図2】本発明の実施形態による持ち上げ用装置の概略斜視図を示す。
【
図3a】本発明の実施形態による持ち上げ距離を調整する手段を概略的に示す。
【
図3b】本発明の実施形態による持ち上げ距離を調整する手段を概略的に示す。
【
図4】本発明による持ち上げ構造体の実施形態の詳細図を示す。
【
図5】動作状態にある本発明の実施形態による持ち上げ用装置の実施形態を示す。
【
図6】頭部に取り付けられた鋳造製品の長手方向軸線が垂直方向に配置された、動作状態にある本発明の実施形態による持ち上げ用装置の実施形態を示す。
【
図7】頭部に取り付けられた鋳造製品の長手方向軸線が水平方向に配置された、動作状態にある本発明の実施形態による持ち上げ用装置の実施形態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の実施形態による持ち上げ用装置の原寸に比例しない概略図を示している。
図1を参照すると、本発明は、縦長の鋳造製品10を鋳造ピット15から持ち上げるための装置1を提供する。鋳造工程、特にDC鋳造工程の終了後に、鋳造製品10は、鋳造製品10の長手方向軸線が垂直方向と一致するように鋳造ピット15内に配置される。鋳造製品10は、円形断面、矩形断面又は他の断面を備えた略縦長形状を有し得る。装置1は、支持構造体20を備え得る。支持構造体20は、地面、例えば鋳造施設の床25に固定されてもよい。支持構造体20は、コンクリートなどに部分的に埋設されることによって、例えばボルト及びナットを介して、鋳造ピット15を囲む床25に永久的に固定されてもよい。
【0024】
装置1は、持ち上げ構造体30をさらに備え得る。持ち上げ構造体30は、支持構造体20に回転可能に接続され得る端部(基端部)35を有し得る。基端部35は、支持軸受40を介して支持構造体20に接続されてもよい。支持軸受40は、例えば、支持構造体20と持ち上げ構造体30との相対回転を可能にする転がり軸受又は任意の他の軸受によって実現されてもよい。支持軸受40によって可能にされる支持構造体20と持ち上げ構造体30との回転運動は、
図1に半円状両矢印によって表されている。装置1は、頭部45をさらに備え得る。頭部45は、例えば、持ち上げ構造体30の先端部33(
図4を参照)において、持ち上げ構造体30に接続されてもよい。頭部45は、頭部45を介して鋳造製品10と持ち上げ構造体30とを取り外し可能に接続するために、鋳造製品10に選択的に取り付くことができるように構成されてもよい。持ち上げ距離Lは、直線両矢印によって
図1に概略的に表すように、支持軸受40と頭部45との間の半径方向距離として定義され得る。
【0025】
頭部45は、例えば、グリッパ若しくはトングとして実現されてもよく、又は真空システム若しくはクランプ機構若しくはこれらの組み合わせを含み得る。頭部45はまた、鋳造製品10が磁性を有する場合に(例えば、鋳造製品10が十分な量の鉄、ニッケル又はコバルトを含む場合に)、電磁石として実現されてもよい。
【0026】
鋳造製品10を上方に持ち上げるために、例えば鋳造製品10を鋳造ピット15から取り出すために、鋳造ピット15内で頭部45が鋳造製品10に接触するように、支持軸受40の周囲で持ち上げ構造体30を第1の方向(
図1では反時計回り)に回転させてもよい。次いで、頭部45を鋳造製品10に選択的に取り付けてもよく、その後、鋳造製品10を上方に持ち上げるために、例えば鋳造製品10を鋳造ピット15から取り出すために、頭部45が鋳造製品10に取り付けられたまま、支持軸受40の周囲で持ち上げ構造体30を反対の第2の方向(
図1では時計回り)に回転させる。
【0027】
頭部45は、頭部45に取り付けられた鋳造製品10と持ち上げ構造体30との干渉なしに、支持軸受40を中心とする持ち上げ構造体30の回転を可能にするために、鋳造製品10が頭部45に取り付けられたときに、鋳造製品10が持ち上げ構造体30からの横方向/横断方向距離を有するように設計されてもよい。
【0028】
実施形態によれば、
図2を参照すると、持ち上げ構造体30は、第1の持ち上げアーム31と第2の持ち上げアーム32とを備え得る。第1の持ち上げアーム31及び第2の持ち上げアーム32は各々、それぞれの支持軸受40を介して支持構造体20に回転可能に接続されてもよい。頭部45は、第1の持ち上げアーム31及び第2の持ち上げアーム32に対して横断方向に配置されてもよく、且つ第1の持ち上げアーム31及び第2の持ち上げアーム32に接続されてもよい。よって、持ち上げ構造体30の第1の持ち上げアーム31及び第2の持ち上げアーム並びに頭部45は、
図2に概略的に示すような、矩形フレーム構造体を形成してもよい。2つの持ち上げアーム31、32と、持ち上げアーム31、32の間に配置された頭部45とを使用することによって、持ち上げ用装置1の機械的安定性を高めることができる。
【0029】
持ち上げ用装置1は、持ち上げ距離Lが調整可能であるように構成されてもよい。実施形態によれば、持ち上げ構造体30は、持ち上げ距離Lを調整する手段50を備え得る。持ち上げ距離Lを調整する手段50は、例えば、持ち上げ構造体30を互いに対して移動可能である2つのセグメント30a、30bに分ける少なくとも1つの軸受、例えば軸方向に調整可能な軸受、特に軸方向に調整可能な伸縮軸受によって実現されてもよい。持ち上げ構造体30が2つの持ち上げアーム31、32によって実現される実施形態では、持ち上げアーム31、32の各々には、持ち上げ距離Lを調整する手段50が設けられてもよい。
図3aは、持ち上げ構造体30のセグメント30aが持ち上げ構造体30bの他のセグメント30b内に入り込み得る、軸方向に調整可能な伸縮軸受として実現される、実施形態による持ち上げ距離Lを調整する手段50の概略図を示す。
図3bは、さらなる実施形態による持ち上げ距離Lを調整する手段50の概略図を示しており、本実施形態によれば、持ち上げ構造体30のセグメント30a、30bは、並べて設けられ、且つダブテールスライドなどの直動軸受を介して互いに軸方向に移動可能である。本発明によれば、持ち上げ構造体30はまた、持ち上げ距離Lを調整するための2つ以上の手段50を備え得る。本発明によれば、各持ち上げアーム31、32は、持ち上げ距離Lを調整する2つ以上の手段50を備え得る。本発明によれば、持ち上げ用装置1は、持ち上げ構造体30を回転させるための、及び機能性を提供する実施形態では、持ち上げ距離Lを調整するための、油圧アクチュエータ又は電動アクチュエータなどの、1つ又は複数のアクチュエータを備え得る。
図4は、油圧アクチュエータが設けられる実施形態であって、持ち上げ距離Lを調整するための手段50が、持ち上げ構造体30の持ち上げアーム31、32のそれぞれのセグメント31a、32aと31b、32bとの回転運動を可能にする継手として実現される実施形態を示している。
【0030】
さらにこの点において、
図4~
図7は、縦長の鋳造製品10を鋳造ピット15から持ち上げるための装置1のさらなる実施形態を示している。実施形態によれば、持ち上げ構造体30は、2つの持ち上げアーム31、32を備える。持ち上げアーム31、32の各々には、持ち上げ距離Lを調整する手段50が設けられ、手段50は、枢動自在/回転自在継手として実現される。持ち上げ距離Lを調整する手段50は、各持ち上げアーム31、32を、持ち上げ距離Lを調整するために互いに対して回転可能である2つのセグメント31a、31b、32a、32bに分ける(
図5を参照)。それぞれのセグメント31a、31b、32a、32bを互いに対して回転させる力は、本発明によれば、他のアクチュエータも使用され得るが、それぞれのアクチュエータ、
図4~
図7aでは、油圧アクチュエータによって生成される。頭部45は、2つの持ち上げアーム31、32の間に設けられ、2つの持ち上げアーム31、32を接続する。頭部45は、2つの持ち上げアーム31、32に対して回転可能である。
【0031】
頭部45は、頭部45の向きが重量及び重力によって決定されるように回転自在であってもよく、又は、持ち上げ構造体30に対して制御された方式で重量及び重力とは無関係に頭部45を回転させることを可能にするアクチュエータが設けられてもよい。
【0032】
加えて、持ち上げ構造体30は、支持軸受40を介して支持構造体20に対して回転可能である。
図4~
図7に示す実施形態では、持ち上げ構造体30のセグメント31a及び32aは、それぞれの支持軸受40を介して支持構造体20に接続され、制御可能な方式で支持軸受40の周囲でセグメント31a及び32aを支持構造体20に対して回転させる力を生成するために、少なくとも1つのアクチュエータ、
図4~
図7では油圧アクチュエータがさらに設けられる。
図4~
図7に示す実施形態では、4つの油圧アクチュエータが設けられ、持ち上げ構造体の2つの持ち上げアーム31、32の各々に対して2つのアクチュエータが設けられる。各持ち上げアーム31、32について、1つのアクチュエータが、第1のセグメント31a又は32aと第2のセグメント31b又は32bとをそれぞれ調整可能に接続しており、且つ1つのアクチュエータが、第1のセグメント31a、32aと支持構造体20とを調整可能に接続している。よって、第1のセグメント31a、32aと第2のセグメント31b、32bとの角度は、各持ち上げアーム31、32の第1のセグメント31a、32aと支持構造体20との角度とは無関係に調整することができる。図は油圧アクチュエータを備えた実施形態を示しているが、あらゆる種類のアクチュエータが持ち上げ装置1と共に使用されてもよく、1つの持ち上げ装置1は、同時に、異なる種類のアクチュエータ、例えば油圧アクチュエータ及び電動アクチュエータも備え得る。
【0033】
さらに
図4~
図7に関して、本発明の実施形態による、縦長の鋳造製品10を鋳造ピット15から持ち上げるための方法と、本発明の実施形態による持ち上げ用装置1とについて説明する。本方法の実施形態によれば、最初に、鋳造作業後、鋳造製品10は、
図5に概略的に示すように、鋳造ピット15内にマトリックス配列を形成する横列及び縦列で配置される。さらに、鋳造ピット15内の鋳造製品10の長手方向は垂直方向である。本発明による方法は、鋳造ピット15から外に持ち上げるべき鋳造製品10の横列を決定することを含む。本明細書では、横列は、持ち上げ距離の方向に直交する方向を有するものと定義される。そのような任意の横列は、実用上の考慮事項などに基づいて選択されてもよい。本方法は、持ち上げ用装置1の静止部、特に支持構造体20と、鋳造ピット15から外に持ち上げるべき鋳造製品10の横列との間の距離を決定することをさらに伴う。
【0034】
決定した距離に基づいて、持ち上げ装置1の持ち上げ距離Lが調整される。本方法は、持ち上げ装置1の頭部45を鋳造製品10の選択した横列に向けて移動させるために、(例えば、支持軸受40及び/又は持ち上げ距離Lを調整する手段50の周囲での回転によって)静止部20を中心に/静止部20の周囲で持ち上げ装置1の持ち上げ構造体30を第1の方向に回転させることをさらに含む。
【0035】
持ち上げ距離Lは、持ち上げ装置1の頭部45が、鋳造ピット15から外に持ち上げるべき鋳造製品10の選択した横列に接触できるように調整される。持ち上げ距離Lの調整は、持ち上げ構造体30を第1の方向に、例えば支持軸受40の周囲で回転させる間に、持ち上げ構造体30を第1の方向に回転させる前に、又は持ち上げ構造体30を第1の方向に回転させた後に行うことができる。
【0036】
本方法は、頭部45を鋳造製品10の決定した横列の鋳造製品10に取り付けることをさらに含む。上述したように、頭部45を鋳造製品10の決定した列の鋳造製品10に取り付けることは、例えば、トングを閉じること、グリッパを閉じること、又は鋳造製品10の選択した列の鋳造製品10を頭部45に締結する他の任意の手段を閉じる/作動させることを含み得る。
【0037】
対応する鋳造製品10が頭部45に選択的に取り付けられたときに、本方法は、
図5及び
図6に示すように鋳造製品10を鋳造ピット15から外に持ち上げるために、鋳造製品10が頭部45に取り付けられた状態で持ち上げ構造体30を第1の方向とは反対の第2の方向に回転させることをさらに含む。
【0038】
本方法は、
図7に示すように鋳造製品10の長手方向軸線を少なくとも略垂直方向から少なくとも略水平方向に回転させるように、頭部45に取り付けられた鋳造製品10を回転させることをさらに含む。実施形態では、鋳造製品10は、鋳造製品10などの頭端部及び後端部を除去するなどのさらなる加工のために鋳造製品10を従来の横置きステーションに載置するために回転させる。鋳造製品10を少なくとも略水平方向に回転させた後に、頭部45は、鋳造製品10から外されてもよい。鋳造製品10を少なくとも略垂直方向から少なくとも略水平方向に回転させることは、鋳造製品10が頭部45に取り付けられた状態で頭部45を回転させるアクチュエータによって達成されてもよい。鋳造製品10を少なくとも略垂直方向から少なくとも略水平方向に回転させることは、頭部45を回転させるアクチュエータによって又は他の手段によって達成されてもよい。
図4を参照すると、鋳造製品10を垂直方向から水平方向に回転させることはまた、2つの歯車80に接続された少なくとも1つの無端チェーン75に取り付けられた水平ビーム70を用いて達成されてもよい。水平ビーム70は、頭部45と平行であってもよい。例えば対応する歯車80の1つを駆動することによって、無端チェーン75が駆動されたときに、水平ビーム70は、無端チェーン75と一緒に移動し、水平ビーム70が鋳造製品10の先端部に接触すると、鋳造製品10が頭部45に取り付けられたまま、鋳造製品10を垂直方向から水平方向に回転させる。この移動中に、持ち上げ構造体30は、さらなる加工のために鋳造製品10を従来の横置きステーション100に水平方向に静かに横置きするなどの対応する方式で移動させてもよい。水平ビーム70は、荷重及び歪みの良好な分散のために、
図4に示すように、2つの無端チェーン75に接続されてもよい。
【0039】
本発明によれば、持ち上げ装置1は、持ち上げ装置、例えば、持ち上げ装置1が備えるアクチュエータを制御するための、電子制御ユニットなどの、コントローラを備え得る。コントローラは、本明細書で説明する本発明による方法を実行するように構成されてもよい。
【国際調査報告】