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特表2022-511215環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法
(51)【国際特許分類】
   C01F 11/22 20060101AFI20220124BHJP
   C01B 9/08 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
C01F11/22
C01B9/08
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020573542
(86)(22)【出願日】2020-01-03
(85)【翻訳文提出日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 CN2020070272
(87)【国際公開番号】W WO2021134785
(87)【国際公開日】2021-07-08
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521003302
【氏名又は名称】大連民族大学
【氏名又は名称原語表記】DALIAN MINZU UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】DALIAN MINZU UNIVERSITY NO.18 Liaohe West Road, Development Zone Dalian, Liaoning 116600, China
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】董 斌
(72)【発明者】
【氏名】羅 昔賢
【テーマコード(参考)】
4G076
【Fターム(参考)】
4G076AA05
4G076AA26
4G076AB04
4G076AB09
4G076AB12
4G076BA13
4G076BA43
4G076BB03
4G076BD02
4G076BE11
4G076CA02
4G076CA26
(57)【要約】
本発明はフッ化物ナノ材料の製作技術分野に属し、フッ化物ナノ材料の閉鎖式規模化製作方法に関し、揮発性酸で初期原料を水溶性塩に溶解させて、余分の酸を減圧蒸発させて回収し、その後高沸点油性有機物を入れて、引き続き結合された揮発性酸を減圧蒸発させて、生成された油溶性塩中に油溶性フッ素源に入れると同時に、反応温度を上げてフッ化物の結晶度を向上し、温度を下げた後産物と油性有機物分離して回収する段階を含み、このプロセスを繰り返すことによって、量産化を実現する。この方法は閉鎖式循環プロセスを使用して、外部に廃棄物を排出せず、単位体積設備の産出量が高く、生産原価と所定資産の投資が低く、産物の粒度が均一であり、分散性が良いなどの特徴があって、ユーザーと環境に優しいフッ化物ナノ粒子の規模化製作方法である。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法であって、
前記フッ化物はMF2、REF3または複合フッ化物であり、複合フッ化物はAMF3、AREF4、A2REF5、A3REF6、ARE2F7、A2RE2F8、ARE3F10、ARE7F22、A5RE9F32、MREF5、M2REF7、MRE2F8、MRE4F14、REOF中の一つまたは二つ以上であり、MはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Mn中の一つまたは二つ以上であり、REはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、Sc、Al、GaまたはBi中の一つまたは二つ以上であり、AはLi、Na、K、RbまたはCs中の一つまたは二つ以上であり、具体的な製作は、
1、Mおよび/またはREを含有する酸化物、炭酸塩、アルカリ性炭酸塩または水酸化物の希土類塩を原料として、原料中に揮発性酸aを入れるか、直接Mおよび/またはRE含有の揮発性酸塩を原料として、原料を加熱・還流・溶解させて、原料を水溶性塩類に転化させて、水溶性塩溶液bを獲得し、溶液中に沈殿物があれば、沈殿物をろ過して除去する段階、
2、段階1中の水溶性塩溶液bを、減圧プロセスを経て、反応に参与しなかった余分の揮発性酸aと水を蒸発させるが、そのうち、蒸発温度は50-130℃、相対真空度は-(0.01-0.09)MPaであり、その後、高沸点油性有機物cを入れて、引き続き減圧蒸発させて、Mおよび/またはREと結合された揮発性酸を置換し出すが、蒸発温度は80-160℃、真空度は1-3000Paであり、すべての水溶性塩類bを油溶性前駆体塩類に転化させて、油溶性塩溶液dを得る段階、
3、段階2から得た油溶性塩溶液d中に油浸潤性フッ素源eを入れて、産物が複合フッ化物である場合には、またAの油浸潤性化合物を入れる必要があり、80℃以下の温度で加熱してナノフッ化物を生成させ、その後、不活性ガスの雰囲気にて加熱結晶させ、加熱温度を180-330℃、反応時間を0.5-5hとし、冷却した後、遠心、洗浄することによって、産物であるフッ化物ナノ粒子と高沸点油性有機物cを分離する段階、
4、段階2中の蒸発される揮発性酸aを収集して、段階1の酸溶解中に使用する段階、
5、段階3中の高沸点油性有機物cを収集して、段階2の減圧蒸発中に使用する段階、
を含むことを特徴とする環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法。
【請求項2】
前記揮発性酸aは、塩酸や過塩素酸、臭化水素酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸中の一つまたは二つ以上を混合したものであり、揮発性酸aと段階1中原料との化学量論比は110%を超える、ことを特徴とする請求項1に記載の環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法。
【請求項3】
前記高沸点油性有機物cはC10-C18である有機長鎖アルキルカルボン酸、カルボン酸塩中の一つまたは二つ以上の混合物であるか、融点が30℃以下、沸点が180℃以上のその他の有機長鎖アルキルカルボン酸、またはカルボン酸塩中の一つまたは二つ以上の混合物であり、高沸点油性有機物cの添加量はMおよび/またはREとの化学量論比の100-200mol%である、ことを特徴とする請求項1または2に記載の環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法。
【請求項4】
高沸点油性有機物cは酸や酸に対応する塩類、酸に対応するアミン類中の一つまたは二つ以上の混合物であり、前記酸はリノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸またはラウリン酸である、ことを特徴とする請求項3に記載の環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法。
【請求項5】
前記油浸潤性フッ素源eは浸潤角度が65°未満である有機または無機フッ化物であり、浸潤媒質は高沸点油性有機物cであり、油浸潤性フッ素源eの添加量はA+M+RE化学量論比和の90%-120%である、ことを特徴とする請求項1、2または4に記載の環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法。
【請求項6】
前記無機フッ化物は、アルカリ金属フッ化物、フルオロホウ酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩中の一つまたは二つ以上の混合物であり、アルカリ金属フッ化物はNH4F、AF、またはAHF2であり、有機フッ化物は、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸の塩類、テトラメチルフッ化アンモニウム、テトラブチルフッ化アンモニウム中の一つまたは二つ以上の混合物である、ことを特徴とする請求項5に記載の環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法。
【請求項7】
前記段階2と段階3において、また不活性高沸点有機溶媒を添加することもでき、反応に参与せず、反応物濃度を希釈する用途だけに使用し、産物の粒径および顆粒の生長プロセスをコントロールし、添加される不活性高沸点有機溶媒はC10-C18であるアルキル類、アミン類、パラフィン、高温シラン、トリ‐n‐オクチルホスフィンオキシド中の一つまたは二つ以上の混合物である、ことを特徴とする請求項1、2、4または6に記載の環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法。
【請求項8】
前記段階2と段階3において、また不活性高沸点有機溶媒を添加することもでき、反応に参与せず、反応物濃度を希釈する用途だけに使用し、産物の粒径および顆粒の生長プロセスをコントロールし、添加される不活性高沸点有機溶媒はC10-C18であるアルキル類、アミン類、パラフィン、高温シラン、トリ‐n‐オクチルホスフィンオキシド中の一つまたは二つ以上の混合物である、ことを特徴とする請求項3に記載の環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法。
【請求項9】
前記段階2と段階3において、また不活性高沸点有機溶媒を添加することもでき、反応に参与せず、反応物濃度を希釈する用途だけに使用し、産物の粒径および顆粒の生長プロセスをコントロールし、添加される不活性高沸点有機溶媒はC10-C18であるアルキル類、アミン類、パラフィン、高温シラン、トリ‐n‐オクチルホスフィンオキシド中の一つまたは二つ以上の混合物である、ことを特徴とする請求項5に記載の環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法。
【請求項10】
油浸潤性フッ素源e顆粒粒径をコントロールすると同時に、強極性有機溶媒を入れて浸潤性を増強することによって、油浸潤性フッ素源eの高沸点油性有機物c中における分解を促進し、強極性有機溶媒は炭素鎖長さが2を超えない有機酸やアルコール、アルカリ類であり、添加量は高沸点油性有機物c体積比の10%を超えず、且つその極性と酸アルカリ性は油浸潤性フッ素源eと一致する、ことを特徴とする請求項5に記載の環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はフッ化物ナノ材料製作の技術分野に属し、環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法に関し、これは高効率且つ環境に優しいナノ級フッ化物材料の規模化製作方法である。
【背景技術】
【0002】
組成物元素の種類によって、フッ化物は二元フッ化物(例えば、MF2、REF3,M=アルカリ金属、RE=希土類など元素)と多元フッ化物(例えば、MREF4,M´REF5,M´=アルカリ土類金属)に分けられる。フッ化物は比較的広い吸収帯域を有し、その吸収帯は通常真空紫外線エリアに位置し、紫外線、可視光および赤外線エリアでは吸収がなく、レーザー結晶体や光学装置の窓口、光学コーティングなど分野に使用することができる。また、フッ化物の比較的低いフォノンエネルギーは、活性化イオンの活性化状態における無放射緩和を減らすことに有利であり、活性化イオンの発光効率を向上し、優れたアップコンバージョンとダウンコンバージョン発光の基板材料であり、光学やバイオラベリング、触媒作用、新光源ディスプレイ、現像(医学放射学画像の各種撮影技術)、X線増感スクリーン、核物理と放射場の探測と記録、赤外線放射探測、印刷の偽造防止、3D立体ディスプレイ、レーザー冷却と光学センサーなど多くの分野に使用される。
【0003】
市販のフッ化物材料は主に固体焼結法によって製作されるが、焼結される製品は性能が優れており、例えば、発光効率が高く、生産原価が低く、規模化生産に適合する。しかし、この方法は粒子のサイズが大きく(マイクロ級)、粒径が不均一であり、形状の差異が大きく、結集し易いなどの欠点があって、この材料の応用分野が大きな制限を受けている。生物医学や偽造防止、3Dディスプレイ、光学センサーなど分野にナノ材料を使用することによって、感度と解像度を著しく向上できるだけでなく、コンパクトにして、その応用能力をより一層向上することができる。ここ数年来、人々は多くのフッ化物ナノ材料の製作方法を発明しており、そのうち、ある方法は性能が優れたフッ化物ナノ材料を製作することができ、その材料は発光効率が高く、コンパクトであり、粒径が均一であり、形状も均一であり、分散性も良いなどの長所を有する。例えば、
【0004】
(1)水熱法:Li(X. Wang, J. Zhuang, Q. Peng, Y. D. Li, A general strategy for nanocrystal synthesis, Nature, 2005, 437, 121-124.)らは、液体相(エタノールとオレイン酸)、固体相(オレイン酸ナトリウムと希土類オレイン酸塩)および溶液相(エタノールと水)の界面制御による相転移分離機構に基づく水熱法新策略を提出して、一連の単分散フッ化物ナノ粒子を製作することに成功した。この方法の欠点はサンプルの収率が非常に低いということであり、僅か0.1gレベルしかなく、しかも超高圧工程(100大気圧以上)によって製作されるので、設備に対する条件が厳しく、原価が極めて高い。
【0005】
(2)高温熱分解法:Yan(Y. W. Zhang, X. Sun, R. Si, L. P. You and C. H. Yan, Single-Crystalline and Monodisperse LaF3 Triangular Nanoplates from a Single-Source Precursor, J. Am. Chem. Soc., 2005, 127, 3260-3261. H. Mai, Y. Zhang, R. Si, Z. Yan, L. Sun, L. You and C. Yan, High-Quality Sodium Rare-Earth Fluoride Nanocrystals: Controlled Synthesis and Optical Properties, J. Am. Chem. Soc., 2006, 128, 6426)らは、金属有機化合物であるトリフルオロ酢酸の希土類塩を原料として、高沸点・非配位性有機溶媒であるオクタデセンと表面活性剤であるオレイン酸とオレイルアミンの中で、当該前駆体に対する高温熱分解、且つ不活性ガス(通常はアルゴンガス)の保護によって、ナノ結晶体を製作した。溶媒や前駆体濃度、反応温度と実際の実験パラメータに対する精細な制御によって、粒径の分布が狭くて、結晶度の高い高品質の希土類フッ化物のナノ粒子を得ることができる。この方法の欠点は、サンプルの収率がやはり0.1gレベルであり、しかも反応温度が高く、分解温度範囲が狭く(10℃未満)、再現性が良くなく、高くて、空気に敏感であり、毒性の高いトリフルオロ酢酸の希土類塩前駆体が必要であるため、製作中HFなど毒性のある産物が発生する。
【0006】
(3)高温共沈法:Liu(Feng Wang, Renren Deng, Xiaogang Liu, Preparation of core-shell NaGdF4 nanoparticles doped with luminescent lanthanide ions to be used as upconversion-based probes, Nature Protocols, 2014, 9, 1634,対照書類1)らは、オレイン酸をエンドキャッピング配位子とし、オクタデセンを非配位溶媒として、先ず約160℃にてオレイン酸塩前駆体を合成し、室温まで冷やした後、フッ素源を含有するメタノール溶液を入れて、低い温度において共沈法によってNaYF4結晶核を生成し、約80℃にてメタノールを蒸発させた後、温度を約320℃まで上げて熱処理を行い、オストワルド熟成法によって、結晶度と粒子の均一度を向上し、形状と大きさが制御できるフッ化物ナノ粒子を得る。
【0007】
この方法の製作プロセスは上記二種の方法に比べて、ある程度環境に優しくて、安全であり、操作性が強化されが、メタノールを導入したため、溶媒の体積がさらに大きくなるので、サンプルの産出量がさらに低くなり、0.1gレベル以下となる。メタノールを導入することによって、製作工程がさらに煩雑になり、生産原価が著しく増える。生産設備の容量を拡張する方法は産出量を2g/ロットまで産出量を増やすことができる(Stefan Wilhelm, Martin Kaiser, Christian Wurth, Josef Heiland, Carolina Carrillo-Carrion, Verena Muhr, Otto S. Wolfbeis, Wolfgang J. Parak, Ute Resch-Genger, Thomas Hirsch, Water Dispersible Upconverting Nanoparticles: Effects of Surface Modification on Luminescence and Colloidal Stability, Nanoscale, 2015, 7, 1403,対照書類2)。フッ素源(NH4F)のメタノール中における溶解度は非常に低いため、大量のメタノールを入れてフッ素源を十分溶解させなければならないが、こうすれば約50%の設備容量を占めることになり、従って産出量が半分ほど低下するとともに、後のメタノール蒸発に長い時間が消耗され、極めて不安全であり、安保設備への投資を強化しなければならないので、原価が高くなる。この問題を解決するために、Haase(Christian Homann, Lisa Krukewitt, Florian Frenzel, Bettina Grauel, Christian Wurth, Ute Resch-Genger, Markus Haase, NaYF4:Yb,Er/NaYF4 core/shell nanocrystals with high upconversion luminescence quantum yield, Angew. Chem. Int. Ed. 2018, 57, 8765,対照書類3)らは、個体ナトリウム源(固体オレイン酸ナトリウム)と固体フッ素源(固体NH4F)を入れる方法を発明して、プロセスを簡略化することにしたが、この方法は煩雑し過ぎであり、産出量も僅かグラムレベルしかなく、量産化を実現することができなかった。Chen(Wenwu You, Datao Tu, Wei Zheng, Xiaoying Shang, Xiaorong Song, Shanyong Zhou, Yan Liu, Renfu Li and Xueyuan Chen, Large-scale synthesis of uniform lanthanide doped NaREF4 upconversion/ downshifting nanoprobes for bioapplications, Nanoscale, 2018, 10, 11477,対照書類4)らは、個体NaHFをナトリウム源とフッ素源として、製作工程をさらに簡略化し、産出量を向上するようにしたが、この方法の問題はNa/Fの割合が産物の化学量論比に合わなく、反応試薬のリサイクル生産利用ができず、さもないと、Naが蓄積されるので、原価が高くなる。
【0008】
上記方法はいずれもオープン式技術方法を使用しており、製作中は陰イオン(例えば、Cl-、CH3COO-、CF3COO-)を導入し、生産中にエタノールやメタノール、シクロヘキサン、オクタデセンおよびオレイン酸などの溶媒と表面活性剤を添加して、直接排出する方法を使用し、回収利用を行なっていない。その結果、これらの方法は工程が煩雑で、汚染も酷く、生産原価が高いだけでなく、規模化生産能力もないため、これらの問題は実際応用に大きな障害となっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
上記既存技術の欠点を鑑みて、本発明は規模化生産を実現できるフッ化物ナノ材料の製作方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法であって、前記フッ化物はMF2、REF3または複合フッ化物であり、複合フッ化物はAMF3、AREF4、A2REF5、A3REF6、ARE2F7、A2RE2F8、ARE3F10、ARE7F22、A5RE9F32、MREF5、M2REF7、MRE2F8、MRE4F14、REOF中の一つまたは二つ以上であり、MはBe、Mg、Ca、Sr、Ba、Zn、Cd、Mn中の一つまたは二つ以上であり、REはLa、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Y、Sc、Al、GaまたはBi中の一つまたは二つ以上であり、AはLi、Na、K、RbまたはCs中の一つまたは二つ以上であり、具体的な製作段階は以下のとおりである。
【0011】
段階1:Mおよび/またはREを含有する酸化物、炭酸塩、アルカリ性炭酸塩または水酸化物の希土類塩を原料として、原料中に揮発性酸aを入れるか、直接Mおよび/またはRE含有の揮発性酸塩を原料として、原料を加熱・還流・溶解させて、原料を水溶性塩類に転化させて、水溶性塩溶液bを獲得し、溶液中に沈殿物があれば、沈殿物をろ過して除去し、そのうち、揮発性酸aと原料との化学量論比は110%を超える。
【0012】
前記揮発性酸aは、塩酸や過塩素酸、臭化水素酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸中の一つまたは二つ以上を混合したものである。
【0013】
段階2:段階1中の水溶性塩溶液bを、減圧プロセスを経て、反応に参与しなかった余分の揮発性酸aと水を蒸発させるが、そのうち、蒸発温度は50-130℃、相対真空度は-(0.01-0.09)MPaであり、その後、高沸点油性有機物cを入れて、引き続き減圧蒸発させて、Mおよび/またはREと結合された揮発性酸を置換し出すが、蒸発温度は80-160℃、真空度は1-3000Paであり、すべての水溶性塩類bを油溶性前駆体塩類に転化させて、油溶性塩溶液dを得る。
【0014】
前記高沸点油性有機物cはC10-C18である有機長鎖アルキルカルボン酸、カルボン酸塩中の一つまたは二つ以上の混合物であるか、融点が30℃以下、沸点が180℃以上のその他の有機長鎖アルキルカルボン酸、またはカルボン酸塩中の一つまたは二つ以上の混合物であり、高沸点油性有機物cの添加量はMおよび/またはREとの化学量論比の100-200mol%である。
【0015】
段階3:段階2から得た油溶性塩溶液d中に油浸潤性フッ素源eを入れて、産物が複合フッ化物である場合には、またAの油浸潤性化合物を入れる必要があり、油浸潤性フッ素源eの添加量はA+M+RE化学量論比の和の90%-120%であり、80℃以下の温度で加熱してナノフッ化物を生成させ、その後、不活性ガスの雰囲気にて加熱結晶させ、加熱温度を180-330℃、反応時間を0.5-5hとし、冷却した後、遠心、洗浄することによって、産物であるフッ化物ナノ粒子と高沸点油性有機物cを分離する。
【0016】
通常、反応温度は高沸点油性有機物cの沸点と近いので、反応温度は添加される高沸点有機物cの沸点によって決められる。沸点により高い高沸点油性有機物cは反応温度の向上に有利であるが、粒径が大きくなる可能性もある。高沸点油性有機物cは酸や酸に対応する塩類、酸に対応するアミン類中の一つまたは二つ以上の混合物であり、前記酸はリノール酸、オレイン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、パルミチン酸またはラウリン酸である場合、反応温度を効果的に向上することができ、製作されたフッ化物ナノ粒子の結晶性能が最適である。
【0017】
前記油浸潤性フッ素源eは浸潤角度が65°未満である有機または無機フッ化物であり、浸潤媒質は高沸点油性有機物cである。研磨などの措置によって油浸潤性フッ素源eの顆粒粒径を小さくすると同時に、一定量の強極性有機溶媒を入れて浸潤性を増強することができる。油浸潤性フッ素源eの粒径が小さければ小さいほど、性能が良く、強極性有機溶媒は炭素鎖の長さが2以下の有機酸やアルコール、アルカリ類であり、添加量は高沸点油性有機物c体積比の10%を超えず、且つその極性と酸アルカリ性は油浸潤性フッ素源eと一致しなければならず、これによって、高沸点油性有機物cからの油浸潤性フッ素源e分離を促進することができる。無機フッ化物は、アルカリ金属フッ化物(例えばNH4F、AF、AHF2)、フルオロホウ酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩中の一つまたは二つ以上の混合物であり、有機フッ化物は、トリフルオロ酢酸、トリフルオロ酢酸の塩類、テトラメチルフッ化アンモニウム、テトラブチルフッ化アンモニウム中の一つまたは二つ以上の混合物である。
【0018】
段階4:段階2中の蒸発される揮発性酸aを収集して、段階1の酸溶解中に使用する。
【0019】
段階5:段階3中の高沸点油性有機物cを収集して、段階2の減圧蒸発中に使用する。
【0020】
前記段階2と段階3において、また不活性高沸点有機溶媒を添加することもでき、反応に参与せず、反応物濃度を希釈する用途だけに使用し、産物の粒径および顆粒の生長プロセスをコントロールする。添加される不活性高沸点有機溶媒はC10-C18であるアルキル類、アミン類、パラフィン、高温シラン、トリ‐n‐オクチルホスフィンオキシド中の一つまたは二つ以上の混合物である。
【0021】
前記段階3において、製作中に充填されるNまたはArなど不活性ガスは、フッ化物が酸化されないように保護する用途に使用される。
【発明の効果】
【0022】
(1)閉鎖循環プロセスを利用し、一方では、副産物を合理的に、十分利用することができ、プロセス全体が廃棄物を外部に排出しないようにし、通常のオープン式生産工程の欠点を克服することができ、ユーザーと環境に優しいフッ化物ナノ粒子の規模化製作方法であり、他方では、生産原価を75%以上大きく低減することができる。
(2)製作は有機溶媒中にて行われ、得られるフッ化物ナノ粒子の顆粒が均一であり、結集がなく、応用に有利である。
(3)この方法は単位体積設備の産出量を3倍以上の産出量に向上することができ。設備投資を50%著しく低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
図1】本発明の主要プロセス図である。
図2】本発明の実施例1によって製作されたCaF粉末の走査顕微鏡形状図である。
図3】本発明の実施例2によって製作されたLaF粉末の走査顕微鏡形状図である。
図4】本発明の実施例3によって製作されたNaYF粉末の走査顕微鏡形状図である。
図5】実施例4によって製作されたNaYF4:Yb,Er@NaYF4粉末の走査顕微鏡形状図である。
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に具体的な実施例に結合して、本発明をさらに詳しく説明することにするが、本発明の保護範囲を制限するものではない。
【0025】
本発明の環境に優しいフッ化物ナノ材料の規模化製作方法と、そのプロセスは図1に示すとおりである。
【実施例1】
【0026】
(1)炭酸カルシウム(純度99%、10.0mol)1010gを量り取って、25.0mol塩酸(濃度は0.5mol/L以上)溶液中に溶解させ、約110℃になるまで加熱して溶液が透明状になるまで還流させ、不溶性物質をろ過除去する。
【0027】
(2)80℃(最初相対真空度-0.01MPa、最終相対真空度-0.09MPa)にて残留塩酸を減圧蒸発させた後(約5.0mol)、21.0molオレイン酸を入れる同時に、不活性高沸点有機溶媒トリオクチルアミンを12.0mol入れて、80℃(真空度2000Pa)にて引き続き結合された塩酸(約20.0mol)を減圧蒸発させて、オレイン酸カルシウムに転化させる。
【0028】
(3)20.0molNH4F粉末(粒径は約1-2μm)中に100mLメチルアミンを入れるとともに、十分湿潤させた後、上記オレイン酸カルシウムを転入して、室温下で1h攪拌して、無定形ナノCaFを生成させ、80℃以下にてメチルアミンとアンモニアを真空(真空度10Pa)蒸発させた後、Nを充填すると同時に、反応温度を280℃まで上げて1h反応させて、産物の結晶度を向上し、反応が終了された後温度を下げて、完成品CaFナノ粒子と高沸点油性有機物を遠心分離する。
【0029】
(4)遠心分離した完成品CaFナノ粒子を少量のエタノールで洗浄し、60℃にて12h真空乾燥させる。製作されたCaFナノ材料粉末は約9.7molであり、その走査顕微鏡による形状写真は図2のとおりであり、平均粒径は約20nm、顆粒が非常に均一であり、非極性有機溶媒中に分散されることができ、変性によって、水および極性有機溶媒中にも溶解できる。
【0030】
(5)段階(2)の蒸発から得た塩酸を約24.9mol収集して、次循環の段階(1)に入れる。
【0031】
(6)段階(3)によって分離された高沸点油性有機物を約32.5mol収集して、次循環の段階(2)に入れる。
【0032】
(7)段階(5)と(6)によって収集された回収物質を利用すると同時に、循環中損失される少量の塩酸(約0.1mol)とオレイン酸(約0.5mol)を補足し、上記プロセスの段階(1)-(6)を繰り返して、このCaFナノ材料粉を循環製作し、本当の意味での規模化生産を実現する。
【0033】
段階(1)の酸溶解中において、カルシウムの原料は、酸化物、水酸化物を使用することもできる。炭酸塩を原料として使用する場合には、COガスが発生するので、大量のガスが発生しないように、酸添加速度を遅くする必要がある。水酸化物を原料として使用する場合には、産物中に水が発生するので、初期塩酸濃度を適当に増加する必要がある。さもないと、一方では、酸の初期濃度を低下させて、反応速度が低くなり、他方では、水の量の増加によって、段階(2)の減圧蒸発量を増やして、エネルギー消耗が増えると同時に、工程が煩雑になる。CaClを原料として使用する場合には、段階(1)がなくても似たような結果が得られるが、次の循環にやはり段階(1)が必要である。
【0034】
段階(1)には、塩酸や過塩素酸、臭化水素酸、硝酸、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの揮発性酸が使用される。この揮発性酸は、循環利用できるので、過量に添加しても生産原価を増加せず、過量の揮発性酸を使用することによって酸溶解速度が倍増し、単位時間の産出量が増えて、生産原価を著しく低下させる。揮発性酸の添加量は化学量論比の110%以上であり、最適添加量は150-1200%であり、甚だしくはもっと高くすることもでき、これは酸の強弱によって決められる。塩酸や過塩素酸、臭化水素酸、硝酸などの強酸の最適添加量は150-200%であり、ギ酸や酢酸、プロピオン酸などの弱酸の添加量は200-1000%である。硫酸やリン酸などの非揮発性酸を使用してはならない。さもないと、後続プロセス中の余分の不純物除去工程が必要となり、製作プロセスの煩雑化を招来する。
【0035】
揮発性酸の選択は酸自体の値段および量産状況を総合的に考慮しなければならず、実験室小規模生産の際は、ガラス器具を用いて、塩酸と硝酸を選んで、酸溶解速度を加速化することによって、原価を低減することができる。しかし、産業化生産の際は、ギ酸や酢酸およびプロピオン酸またはその混合物を使用することができ、酸溶解速度が塩酸や硝酸に比べることはできなくて、その値段も高いけど、ギ酸と酢酸の揮発性が良いため、段階(2)の減圧プロセスを著しく加速化することができる。それと同時に、ギ酸と酢酸は腐食性が弱いため、設備に対する要求も低く、投資原価が低くなる。単独にプロピオン酸を使用する場合、段階(1)に要る時間が長くなるので、ギ酸または酢酸の混合物を使用すると総合的効果が良くなる。
【0036】
段階(2)と段階(3)の高沸点油性有機物はC10-C18である有機長鎖アルキルカルボン酸またはカルボン酸塩を使用することができ、添加量を化学量論比で100-200%とすることができる。アルキル基の炭素鎖数量が短い場合、例えばC10-C15である時、沸点が低く、この時段階(3)の反応温度(約200℃)が低くなり、産物の粒径が小さく、製作されたCaFナノ顆粒に粒径が2-4nmに達するが、結晶度が低くなる。アルキル基の炭素鎖数量が長い場合、例えばC16-C18である時、沸点が高く、この時段階(3)の反応温度は280℃またはもっと高くなり、産物の粒径(粒径10-50nm、甚だしくはもっと大きい)も大きくなるが、結晶度が高く、性能が良くなる。炭素鎖数量がC19以上になると、常温の下で固体になり、先ず温度を上げて溶解した場合のみ使用が可能となる。
【0037】
ある結晶度に対する要求が高くない製品、例えばフッ化物発光材料である場合には、なるべくアルキル基炭素鎖が長いC17-C18である高沸点油性有機物を使用した方が良い。しかし、C17-C18である高沸点油性有機物は粘度が高いため、生産操作に不利である。溶液の粘度を下げるために、通常段階(2)または(3)に一定量の不活性高沸点有機溶媒を入れるが、反応には参与しない。それと同時に、この不活性高沸点有機溶媒は反応物濃度を希釈する用途にも用いられ、産物の粒径をコントロールすることができ、この高沸点有機溶媒はC10-C18であるアルキル類、アミン類、パラフィン、高温シラン、トリ‐n‐オクチルホスフィンオキシドなどである。添加される高沸点油性有機物と不活性高沸点有機溶媒の数量と種類を調節することによって、産物の粒径や顆粒の形状および結晶度を変えることもできる。
【0038】
NHF中に10mol%以下のアルカリ金属フッ化物AFまたはAHF、例えばNaFを入れることによって、産物の結晶度を著しく向上することができるが、産物中に微量のNaを含有することとなる。5mol%以下のフルオロホウ酸塩、トリフルオロメタンスルホン酸塩またはその混合物を添加して極性を調節することができ、湿潤時間を25%ぐらい短縮することができる。フッ素源としては、トリフルオロ酢酸およびその塩類、テトラメチルフッ化アンモニウム、テトラブチルフッ化アンモニウムなどの有機フッ化物を使用することもでき、効果がNHFよりもっと優れているが、原価が高い。
【0039】
その他の元素、例えばBe、Mg、Sr、Ba、Zn、Cd、Mnまたはその組み合わせにおいて、そのフッ化物の製作方法はCaFと同様である。その他の三元フッ化物、例えばAMFの製作方法は実施例1と似ており、最初原料の化学量論比を変えるさえすれば、例えば、フッ素源中にAFを増やして、NHFおよびAFのモル比を2:1とし、強極性有機溶媒はメチルアミンとメタノール(体積比1:1)とすて、対応する強極性有機溶媒のアルカリ性を低下させることができる。
【0040】
各種試薬はいずれも循環利用が可能であるので、本実施例の有益な効果は、この閉鎖式規模化製作は生産原価を75%以上低下させると同時に、排出がないため、廃液処分の原価を低下させることもできる。また、この方法は単位体積設備の産出量を10倍にアップさせることができ、固定資産投資を50%以上低下させる。
【実施例2】
【0041】
(1)Laを5mol量り取って、150mLの水を入れて、60molギ酸(99%)溶液中に溶解させ、約100℃になるまで加熱して溶液が透明状になるまで還流させ、不溶性物質をろ過除去する。
【0042】
(2)50℃(最初相対真空度-0.01MPa、最終相対真空度-0.09MPa)にて残留ギ酸を減圧蒸発させた後(約30mol)、熱いうちに33molパルミチン酸を入れる同時に、不活性高沸点有機溶媒オクタデセンとトリオクチルアミンを60mol(モル比1:1)入れて、140℃(真空度3000Pa)にて引き続き結合されたギ酸(約30mol)を減圧蒸発させて、パルミチン酸ランタンに転化させる。
【0043】
(3)テトラブチルフッ化アンモニウム30molを上記パルミチン酸ランタン中に入れて、60℃にてナノLaFを生成させ、130℃以下にて水と溶媒を(真空度10Pa)蒸発させた後、Arを充填する(微弱な正圧を維持)と同時に、反応温度を330℃まで上げて0.5h反応させて、産物の結晶度を向上し、反応が終了された後温度を下げて、完成品LaFナノ粒子と高沸点油性有機物を遠心分離する。
【0044】
(4)遠心分離した完成品LaFナノ粒子を少量のエタノールで洗浄し、60℃にて12h真空乾燥させる。製作されたLaFナノ材料粉末は約9.5molであり、粒径は約15nmであり、走査顕微鏡による形状写真は図3のとおりである。
【0045】
(5)段階(2)により得たギ酸を約59mol収集して、次循環の段階(1)に入れる。
【0046】
(6)段階(3)により得た高沸点油性有機物を約92mol収集して、次循環の段階(2)に入れる。
【0047】
(7)段階(1)-(6)を繰り返すと同時に、ギ酸(約1mol)とパルミチン酸(約1mol)を補足して、LaF3ナノ材料粉末を約9.5mol得ることができる。
【0048】
フッ素源はNHFを使用することもでき、この時、メチルアミンを入れるとともに、十分湿潤させる。NHF中に25mol%以下のAFを混ぜ入れることによって、産物の結晶度を向上することができるだけでなく、アンモニアの排出にも有利であるが、第二回循環(段階7)およびそれ以降の循環製作中において、AF含有量が25mol%を超えないようにしなければならない。さもないと、不純物相が現れ易い。NHF中に15mol%以下のAHFを混ぜ入れるとともに、メタノールを入れて十分湿潤させることによって、もっと良い効果が得られる。その他のフッ素源も似たような効果があるが、浸潤性を増強する強極性有機溶媒はフッ素源の種類によって対応する調節を行わなければならない。製作プロセスの各種影響要素は実施例1と似ているが、反応温度は実施例1に比べて高い。
製作中において、微弱な負圧を維持することによって、LaOFナノ材料粉末を得ることができる。
【0049】
その他の元素のフッ化物REF3および酸化フッ化物REOF、例えば、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、 Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、 Lu、Y、Sc、Al、Ga、Biまたはその組み合わせにおいて、その製作方法はLaFおよびLaOFと似ている。
【実施例3】
【0050】
(1)Yを5mol量り取って、100molの氷酢酸溶液(99%)中に溶解させ、約110℃になるまで加熱して溶液が透明状になるまで還流させ、不溶性物質をろ過除去する。
【0051】
(2)80℃(最初相対真空度-0.01MPa、最終相対真空度-0.09MPa)にて残留氷酢酸を減圧蒸発させた後(約70mol)、35molリノール酸を入れる同時に、不活性高沸点有機溶媒オレイルアミンとトリオクチルアミンを25mol(モル比1:1)入れて、140℃(真空度1500Pa)にて引き続き結合された氷酢酸(約30mol)を減圧蒸発させて、リノール酸希土類に転化させる。
【0052】
(3)酢酸ナトリウム(約18mol)とNHF(37mol)の混合粉末を約1μm粒径に加工すると同時に、250mLのメチルアミンを入れて十分湿潤させた後、上記リノール酸希土類を転入して、室温下で1h攪拌した後、150℃以下にて揮発性有機物を(真空度10Pa)蒸発させた後、Arを充填して微弱な正圧を維持すると同時に、反応温度を300℃まで上げて1h反応させて、NaYFを生成させると同時に、産物の結晶度を向上し、反応が終了された後温度を下げて、完成品NaYFナノ粒子と高沸点油性有機物を遠心分離する。
【0053】
(4)遠心分離した完成品NaYFナノ粒子を少量のエタノールで洗浄し、60℃にて12h真空乾燥させる。製作されたNaYFナノ材料粉末は約9.5mol(約1780g)であり、粒径は約50nmであり、走査顕微鏡による形状写真は図4のとおりである。
【0054】
(5)段階(2)により得た氷酢酸を約99mol収集して、次循環の段階(1)に入れる。
【0055】
(6)段階(3)により得た高沸点油性有機物を約59mol収集して、次循環の段階(2)に入れる。
【0056】
(7)段階(1)-(6)を繰り返すと同時に、メチルアミン(約1mol)とリノール酸(約1mol)を補足し、段階(3)の酢酸ナトリウムの添加量を10molに変えて、その他のパラメータはそのままにして、またNaYFナノ材料粉末を約9.5mol得ることができる。
【0057】
実施例1および実施例2との違いは、循環中において、またアルカリ性金属イオンを導入し、且つアルカリ金属イオンとフッ素源との間に一定の比率を維持するということである。この比率が大きければ産物の粒径が小さく、この比率が小さければ粒径が大きい。産物の粒径を一致させるために、ある粒径の産物製作中において、この比率を維持させるとともに、産物の粒径の変化に応じてこの比率を調整しなければならない。特に複数回の循環中において、アルカリ金属イオンとフッ素源との間の添加量を調節しなければならない。アルカリ金属の種類(Li, Na, K, RbまたはCs中の一つまたは複数)によっては、産物の結晶相も異なってくる。
【0058】
その他の元素、例えば、Ce、Pr、Nd、Sm、Eu、Gd、 Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、 Lu、Y、Sc、Al、Ga、Biまたはその組み合わせにおいて、そのフッ化物の製作方法はNaYFと変わらない。その他の類似した三元フッ化物、例えばMREF5、M2REF7、MRE2F8、MRE4F14の製作プロセスと方法は実施例3と変わらないが、実施例1の段階(1)を増やそうとすれば、その他の面で最初原料の化学量論比さえ変えれば良い。
【0059】
本発明の方法を利用して、異なるイオンの混合およびコア-セル構造を実現することもでき、その方法は原料の酸溶解段階にそれぞれ添加すればよく、その他の段階は変わらない。本発明の有益な効果を十分説明するために、本発明の実施例4において対照4と同じ容積の反応容器を使用する。
【実施例4】
【0060】
(1)REを0.3mol(そのうち、Y2O3 0.234 mol, Yb2O3 0.06 mol, Er2O3 0.006 mol)量り取って、10.0molの氷酢酸溶液(99%)中に溶解させ、約110℃になるまで加熱して溶液が透明状になるまで還流させ、不溶性物質をろ過除去する。
【0061】
(2)130℃(最初相対真空度-0.01MPa、最終相対真空度-0.09MPa)にて残留氷酢酸を減圧蒸発させた後(約8.2mol)、1.8molリノール酸を入れる同時に、不活性高沸点有機溶媒オクタデセンを0.2mol入れて、反応溶液の粘度を調節し、160℃(真空度1Pa)にて引き続き結合された氷酢酸(約1.8mol)を減圧蒸発させて、リノール酸希土類に転化させる。
【0062】
(3)酢酸ナトリウム(約1.08mol)とNHF(1.92mol)を混ぜて粉末を約1μm粒径に加工すると同時に、20mLのメチルアミンを入れて十分湿潤させた後、上記リノール酸希土類を転入して、室温下で1h攪拌した後、150℃以下にて揮発性有機物を(真空度10Pa)蒸発させた後、Arを充填して微弱な正圧を維持すると同時に、反応温度を180℃まで上げて5h反応させて、NaYF:Yb,Erナノ発光粒子を生成させ、反応が終了された後、室温まで冷やして、後の使用に備える。
【0063】
(4)Yを0.15mol量り取って、段階(2)により収集された氷酢酸約10.0molを添加し、約110℃になるまで加熱して溶液が透明状になるまで還流させ、不溶性物質をろ過除去する。
【0064】
(5)80℃(最初相対真空度-0.01MPa、最終相対真空度-0.09MPa)にて残留氷酢酸を減圧蒸発させた後(約9.1mol)、0.9molリノール酸を入れる同時に、不活性高沸点有機溶媒オクタデセンを0.1mol入れて、反応溶液の粘度を調節し、90-140℃(真空度2000-10Pa)にて引き続き結合された氷酢酸(約0.9mol)を減圧蒸発させて、リノール酸希土類に転化させる。
【0065】
(6)酢酸ナトリウム(約0.54mol)とNHF(0.96mol)を混ぜて粉末を約1μm粒径に加工すると同時に、10mLのメチルアミンを入れて十分湿潤させた後、上記段階(3)により得たNaYF:Yb,Erを転入して、室温下で1h攪拌した後、150℃以下にて揮発性有機物を(真空度10Pa)蒸発させた後、Arを充填して微弱な正圧を維持すると同時に、反応温度を280℃まで上げて1h反応させて、反応が終了された後、室温まで冷やして、完成品NaYF4:Yb,Er@NaYF4コア-セルナノ発光粒子と高沸点油性有機物を遠心分離する。
【0066】
(7)遠心分離した完成品ナノ粒子を少量のエタノールで洗浄し、60℃にて12h真空乾燥させる。製作されたNaYF4:Yb,Er@NaYF4コア-セルナノ発光粒子粉末は約0.85mol(約172g)であり、粒径は約80nmであり、980nmレーザー照射の下で明るい緑の光を出し、走査顕微鏡による形状写真は図5のとおりである。
【0067】
(8)段階(5)により得た氷酢酸を約9.9mol収集して、次循環の段階(1)に入れる。
【0068】
(9)段階(3)により得た高沸点油性有機物を約2.9mol収集すると同時に、0.1molのオレイン酸を補足して、次循環の段階(2)に入れる。
【0069】
(10)段階(1)-(9)を繰り返すが、しかし、段階(3)と段階(5)の酢酸ナトリウムの添加量をそれぞれ0.6と0.3molに変えて、その他のパラメータはそのままにして、またNaYF4:Yb,Er@NaYF4コア-セルナノ発光粒子粉末を約0.85mol得ることができる。
【0070】
さらに比較するために、対照書類1を100倍拡大し、対照書類2を2倍拡大し、対照書類3を2倍拡大し、対照書類4のデータをそのまま使用する。対照書類1-4の産物は実施例4と同様であり、且つ反応窯の体積も同様であるので、直観的に各自の優位を比較することができ、その結果は以下表とおりである。
【0071】
表から見ると、本発明の生産効率は対照書類4に比べて約3倍向上され、対照書類1-3に比べて30倍も向上される。単位産物の原料原価(実施例4を1とする場合)は、対照書類4に比べて約13倍低下され、対照書類1-3に比べて100倍も低下される。
【実施例5】
【0072】
(1)Gdを0.5mol量り取って、3.0molのギ酸(99%)と6.0molの氷酢酸溶液(99%)の混合溶液中に溶解させ、約110℃になるまで加熱して溶液が透明状になるまで還流させ、不溶性物質をろ過除去する。
【0073】
(2)80℃にて残留ギ酸と酢酸を減圧蒸発させた後、5.3molラウリン酸を入れる同時に、不活性高沸点有機溶媒オクタデセンを6.7mol入れて、140℃にて引き続き結合された揮発性酸を減圧蒸発させて、ラウリン酸イットリウムに転化させる。
【0074】
(3)NHF粉末を4.0mol、NaOHを4.5mol入れて、Arを充填する同時に、反応温度を290℃まで上げて1h反応させて、NaGdFを生成させると同時に、産物の結晶度を向上し、反応が終了された後温度を下げて、完成品NaGdFナノ粒子と高沸点油性有機物を遠心分離する。
【0075】
(4)遠心分離した完成品NaGdFナノ粒子を少量のエタノールで洗浄し、60℃にて12h真空乾燥させる。製作されたNaGdFナノ材料粉末は約0.95molであり、粒径は約12nmである。
【0076】
(5)段階(2)により得たギ酸と酢酸を約8.9mol収集して、次循環の段階(1)に入れる。
【0077】
(6)段階(3)により得た高沸点油性有機物を約11.9mol収集すると同時に、0.1molのオレイン酸を補足して、次循環の段階(2)に入れる。
【0078】
(7)段階(1)-(6)を繰り返して、またNaGdFナノ材料粉末を約0.95mol得ることができる。また、複数回の循環によって、量産を実現することができる。
図1
図2
図3
図4
図5
【国際調査報告】