(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】アルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物、その結晶並びにその製造方法と応用
(51)【国際特許分類】
G02F 1/361 20060101AFI20220124BHJP
C30B 29/00 20060101ALI20220124BHJP
C30B 7/00 20060101ALI20220124BHJP
G02F 1/39 20060101ALI20220124BHJP
G02F 1/37 20060101ALI20220124BHJP
C07D 251/34 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
G02F1/361
C30B29/00
C30B7/00
G02F1/39
G02F1/37
C07D251/34 A
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021503086
(86)(22)【出願日】2018-08-01
(85)【翻訳文提出日】2021-01-20
(86)【国際出願番号】 CN2018098122
(87)【国際公開番号】W WO2020024179
(87)【国際公開日】2020-02-06
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】516290586
【氏名又は名称】中国科学院福建物質結構研究所
(71)【出願人】
【識別番号】521061689
【氏名又は名称】▲みん▼都創新実験室
(74)【代理人】
【識別番号】110000338
【氏名又は名称】特許業務法人HARAKENZO WORLD PATENT & TRADEMARK
(72)【発明者】
【氏名】叶寧
(72)【発明者】
【氏名】林棟鴻
(72)【発明者】
【氏名】羅敏
【テーマコード(参考)】
2K102
4G077
【Fターム(参考)】
2K102AA06
2K102AA08
2K102AA32
2K102AA33
2K102AA34
2K102BA18
2K102BB02
2K102BC01
2K102CA30
2K102DD01
4G077AA01
4G077AB08
4G077BE50
4G077CB10
4G077HA11
(57)【要約】
本発明は、光電子機能材料技術分野に属し、具体的には、アルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物、その結晶、ならびにその製造方法及び応用に関するものである。本発明では、化学式がAM(HC3N3O3)・nH2O(具体的にKLi(HC3N3O3)・2H2O、RbLi(HC3N3O3)・2H2O、RbNa(HC3N3O3)・2H2O)であるアルカリ金属シアヌル酸一水素化合物及びその非線形光学結晶を提供しており、当非線形光学結晶は極めて強力な位相整合能力(粉末周波数逓倍測定法で測定した際、その粉末周波数逓倍効果は約KH2PO4(KDP)の2―3倍である)を有する;その紫外線吸収端は250nm以下である。そして、当非線形光学結晶はNd:YAG(λ=1.064μm)を2倍周波数、3倍周波数、4倍周波数にさせる高調波発生機を実現できる。なお、当非線形光学結晶は単結晶構造の無色透明なものであり、空気中では潮解性を持たない。想定できるように、AM(HC3N3O3)・nH2O(具体的にはKLi(HC3N3O3)・2H2O、RbLi(HC3N3O3)・2H2O、RbNa(HC3N3O3)・2H2Oのよう)は、様々な非線形光学分野で広く活用され、紫外線領域での非線形光学の活用を開拓する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
アルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物であり、上記化合物の化学式はAM(HC
3N
3O
3)・nH
2Oであり、その内、Aと、Mと、は、同じまたは異なるが、お互い独立的にアルカリ金属から選ばれるし、例としてLi、Na、K、Rb、Cs、Frが挙げられるし、nは0以上の整数から選ばれることを特徴とする化合物。
【請求項2】
請求項1に記載の化合物において、nは0-10の整数から選ばれるが、例として0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10が挙げられるし、具体的には2であることを特徴とする化合物。
【請求項3】
請求項1または2に記載の化合物において、上記化合物は、シアヌル酸一水素カリウムリチウム二水和物(化学式:KLi(HC
3N
3O
3)・2H
2O)と、シアヌル酸一水素ルビジウムリチウム二水和物(化学式:RbLi(HC
3N
3O
3)・2H
2O)と、シアヌル酸一水素ルビジウムナトリウム二水和物(化学式:RbNa(HC
3N
3O
3)・2H
2O)と、から選ばれるし、
好ましくは、上記化合物は非線形光学結晶の形式であることを特徴とする化合物。
【請求項4】
請求項1―3の何れの一項に記載の化合物において、上記化合物は、シアヌル酸一水素カリウムリチウム二水和物非線形光学結晶であり、上記結晶の化学式はKLi(HC
3N
3O
3)・2H
2Oであり、
好ましくは、上記シアヌル酸一水素カリチウムリチウム二水和物非線形光学結晶は、基本的に
図3が示すX線回折パターンを有し、
好ましくは、上記シアヌル酸一水素カリチウムリチウム二水和物非線形光学結晶は、対称中心がなく、直方晶系に属しており、空間群はPna2(1)であり、単位胞パラメータ:a=15.387(6)Å、b=3.6524(16)Å、c=12.755(6)Å、α=β=γ=90°、Z=4、単位胞の体積:V=716.82Å
3であることを特徴とする化合物。
【請求項5】
請求項1―3の何れの一項に記載の化合物において、上記化合物は、シアヌル酸一水素ルビジウムリチウム二水和物非線形光学結晶であり、上記結晶の化学式はRbLi(HC
3N
3O
3)・2H
2Oであり;
好ましくは、上記シアヌル酸一水素ルビジウムリチウム二水和物非線形光学結晶は、基本的に、
図4が示すX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、上記シアヌル酸一水素ルビジウムリチウム二水和物非線形光学結晶は、対称中心がなく、直方晶系に属しており、空間群はPna2(1)であり、単位胞パラメータ:a=15.682(7)Å、b=3.7453(17)Å、c=12.768(6)Å、α=β=γ=90°、Z=4、単位胞の体積:V=749.9Å
3であることを特徴とする化合物。
【請求項6】
請求項1―3の何れの一項に記載の化合物において、上記化合物は、シアヌル酸一水素ルビジウムナトリウム二水和物非線形光学結晶であり、上記結晶の化学式はRbNa(HC
3N
3O
3)・2H
2Oであり、
好ましくは、上記シアヌル酸一水素ルビジウムナトリウム二水和物非線形光学結晶は、基本的に、
図5が示すX線粉末回折パターンを有し、
好ましくは、上記シアヌル酸一水素ルビジウムナトリウム二水和物非線形光学結晶は、対称中心がなく、直方晶系に属しており、空間群はPna2(1)であり、単位胞パラメータ:a=15.829(18)Å、b=3.964(5)Å、c=13.068(16)Å、α=β=γ=90°、Z=4、単位胞の体積:V=819.8Å
3であることを特徴とする化合物。
【請求項7】
請求項1―6の何れの一項に記載の化合物の製造方法であり、上記製造方法は、AOH・xH
2Oと、MOH・yH
2Oと、を、H
3C
3N
3O
3と反応させて、アルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物を製造し得ることを含み、その内、Aと、Mと、は、請求項1に記載の定義を有し、xと、yと、は、同じまたは異なり、お互い独立的に0以上の整数から選ばれることを特徴とする製造方法。
【請求項8】
請求項7に記載の化合物の製造方法において、上記xと、yと、は、同じまたは異なり、お互い独立的に0-10の整数から選ばれるが、例として0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10が挙げられるし、0、1でありえるし、
好ましくは、上記AOH・xH
2Oと、MOH・yH
2Oと、H
3C
3N
3O
3と、のモル比は(0.5―2.5):(0.5―2.5):1であり、好ましくは、(0.8―1.2):(0.8―1.2):1であり、例として1:1:1が挙げられるし、
好ましくは、上記反応は溶媒中で行うし、上記溶媒は有機溶媒または無機溶媒から選ばれるし、好ましくは無機溶媒であり、例として水を挙げられるし、
好ましくは、上記反応の温度は50―110℃であり、好ましくは60―100℃であり、例として80℃であることを特徴とする製造方法。
【請求項9】
請求項7または8に記載の製造方法において、反応が完了した後、反応溶液を一定の冷却速度で降温させるし、温度を下げた後、溶媒で洗浄することで、アルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物が得られるし、
好ましく、冷却速度は1―10℃/時間であり、好ましくは1―5℃/時間であり、例として1℃/時間、5℃/時間が挙げられるし、
好ましくは、反応溶液を0―40℃までに降温するが、好ましくは10―40℃であり、例として10℃、40℃があり、
好ましくは、洗浄に使う溶媒は、水、アセトン、またはそれらの混合物であり、例えばアセトンであることを特徴とする製造方法。
【請求項10】
請求項1-6の何れの一項に記載の化合物の用途であり、上記化合物はレーザー発射機の出力レーザーの周波数変換と、紫外線領域の高調波発生器と、光パラメトリック増幅器および光導波路デバイスと、に用いられるし、
好ましくは、上記化合物は、波長1.064μmのレーザービームを、2倍、または3倍、または4倍、または5倍、または6倍周波数の高調波光の出力に生成させることができるし、
好ましくは、上記化合物は、赤外線から紫外線までの光パラメトリック増幅器に用いることを特徴とする用途。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光電子機能材料技術分野に属し、具体的には、アルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物、その結晶、ならびにその製造方法及び応用に関するものである。
【背景技術】
【0002】
結晶の非線形光学効果とは、特定偏光方向のレーザービームが特定入射方向に非線形光学結晶(例としてホウ酸塩系非線形光学結晶)を通過する場合、当光ビームの周波数は変化を起こすことを指す。
【0003】
非線形光学効果を持つ結晶を非線形光学結晶と称する。非線形光学結晶をレーザー周波数変換に持ち込み、レーザー波長の範囲を広げることで、レーザーの活用範囲をより広くする。特に、ホウ酸塩系の非線形光学結晶が挙げられるし、例としてはBaB2O4(BBO)、LiB3O5(LBO)、KBe2BO3F2(KBBF)、Sr2Be2B2O7(SBBO)、Ba2Be2B2O7(TBO)、K2Al2B2O7(KABO)、BaAl2B2O7(BABO)などがあり、その優れた光学特性のため特に注目を集めている。光学写真、光エッチング、精密機器加工など業界の発展には、ますます、紫外線および深紫外線レーザーコヒーレント光源を必要としている。つまり、優れた機能性をもつ紫外線および深紫外線非線形光学結晶を必要としている。
【0004】
BBO結晶の基本的な構造体プリミティブは、(B3O6)3-平面基であり、このような基は大きな共役π結合を持っているため、BBOの紫外線吸収端が189nm前後になり、結晶の紫外線領域での活用が制限されている;なお、大きい共役π結合は、複屈折(Δn= 0.12)をより大きくさせるため、その高調波の変換効率及び高調波光の品質にも影響を与えている。
【0005】
KBBFの基本的な構造体プリミティブは、(BO3)3-平面基であり、当結晶の紫外線吸収端は155nm前後にあり、適中な複屈折(Δn=0.07)を持っており、広い位相整合範囲を実現するので、現時点では、最高の深紫外線非線形光学結晶である。ただし、KBBFは層状結晶構造であるため、層と層との間は原子価結合ではなく静電引力でつながっており、層状習性が強く、z方向での成長速度が非常に遅く、成長された単結晶にも層分現象が明らかであり、結晶成長しにくい。
【0006】
SBBOの基本的な構造体プリミティブも(BO3)3-平面基であるが、酸素がフッ素イオンを代替し、層と層との間は酸素ブリッジを介に相互接続されており、KBBFの層状習性を改善しているが、基本的に、各層の構造は変わらない。SBBOは、比較的大きい巨視的周波数逓倍係数を有するだけではなく、紫外線吸収端(165nm)も低く、複屈折(Δn=0.06)も適中であり、結晶の層状習性を完全克服し、結晶成長の問題を解決している。これを基盤に、(BO3)3-基の構造条件は基本的に変わらせないまま、カチオンSr2+とBe原子とを置き換えてることで、TBO、KABO、BABOなど一連の非線形光学結晶を開発し、これらをまとめてSBBO族結晶と称している。それらはKBBF単結晶成長における層状習性は克服しているけど、TBO結晶の構造的完全性が良くないことと、その巨視的機能が示す光学的均一性も非常に悪いため、今の時点では未だKBBF結晶を代替することができず、実際のデバイスに活用されてない状況である;KABO結晶及びBABO結晶の構造的完全性は良好で、比較的よい光学的均一性もあるが、AlがBeを代替され、これらの吸収端が180nm前後に赤方偏移されたため、深紫外線の高調波出力に用いることは困難である。
【0007】
LBOの基本的な構造体プリミティブは(B3O6)3-基中の1個のB原子を、3配位から4配位に変化させることで、(B3O7)5-基を形成する。これは比較的大きい周波数逓倍係数を有し、紫外線吸収端は約160nmであるが、実際結晶内の(B3O7)5-基が互いにつながっているため、空間構造上、z軸に対して45°の螺旋状鎖が形成され、結晶格子内で平行配列にはなれず、結晶の複屈折が低くくなりすぎて(Δn= 0.04~0.05)、紫外線領域での位相整合範囲が厳しく制限され、バンドギャップが広い利点が十分に生かされれない。
【0008】
従って、様々な面で優れた性能をもつ紫外線および深紫外線非線形光学結晶材料を開発することは、既に、非線形光学材料研究分野の難題並びにフロンティアの1つになっている。
【発明の概要】
【0009】
従来技術の欠点を克服するため、本発明では、アルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物を提供するが、その化学式はAM(HC3N3O3)・nH2Oであり、その内、Aと、Mと、は同じまたは異なり、お互い独立的にアルカリ金属から選ばれるし、例としてLi、Na、K、Rb、Cs、Frから選ばれる;nは0以上の整数から選ばれる。
【0010】
好ましくは、nは0-10の整数から選ばれるが、例として0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10があるし、好ましくは2である。
【0011】
本発明の実施案において、上記化合物は、シアヌル酸一水素カリウムリチウム二水和物(化学式:KLi(HC3N3O3)・2H2O;略称:KLHCY)と、シアヌル酸一水素ルビジウムリチウム二水和物(化学式:RbLi(HC3N3O3)・2H2O;略称:RLHCY)と、シアヌル酸一水素ルビジウムナトリウム二水和物(化学式:RbNa(HC3N3O3)・2H2O;略称:RNHCY)と、から選ばれる。
【0012】
本発明において、上記化合物は非線形光学結晶の形式でよい。
【0013】
本発明では、さらに、シアヌル酸一水素カリチウムリチウム二水和物非線形光学結晶を提供するが、その化学式はKLi(HC3N3O3)・2H2Oである。
【0014】
本発明において、上記シアヌル酸一水素カリチウムリチウム二水和物非線形光学結晶は、基本的に
図3が示すX線回折パターンをゆうする。
【0015】
本発明において、上記シアヌル酸一水素カリチウムリチウム二水和物非線形光学結晶は、対称中心がなく、直方晶系に属しており、空間群はPna2(1)であり、単位胞パラメータ:a=15.387(6)Å、b=3.6524(16)Å、c=12.755(6)Å、α=β=γ= 90°、Z=4、単位胞の体積:V = 716.82 Å3である。
【0016】
本発明は、さらに、シアヌル酸一水素ルビジウムリチウム二水和物非線形光学結晶を提供し、その化学式はRbLi(HC3N3O3)・2H2Oである。
【0017】
本発明において、上記シアヌル酸一水素ルビジウムリチウム二水和物非線形光学結晶は、基本的に、
図4が示すX線粉末回折パターンを有する。
【0018】
本発明において、上記シアヌル酸一水素ルビジウムリチウム二水和物非線形光学結晶は、対称中心がなく、直方晶系に属しており、空間群はPna2(1)であり、単位胞パラメータ:a=15.682(7)Å、b=3.7453(17)Å、c=12.768(6)Å、α=β=γ=90°、Z=4、単位胞の体積:V=749.9Å3である。
【0019】
本発明は、さらに、シアヌル酸一水素ルビジウムナトリウム二水和物非線形光学結晶を提供し、その化学式はRbNa(HC3N3O3)・2H2Oである。
【0020】
本発明において、上記シアヌル酸一水素ルビジウムナトリウム二水和物非線形光学結晶は、基本的に、
図5が示すX線粉末回折パターンを有する。
【0021】
本発明において、上記シアヌル酸一水素ルビジウムナトリウム二水和物非線形光学結晶は、対称中心がなく、直方晶系に属しており、空間群はPna2(1)であり、単位胞パラメータ:a=15.829(18)Å、b=3.964(5)Å、c=13.068(16)Å、α=β=γ=90°、Z=4、単位胞の体積:V =819.8Å3である。
【0022】
本発明は、さらに、上記アルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物の製造方法を提供するが、AOH・xH2Oと、MOH・yH2Oと、を、H3C3N3O3と反応させることでアルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物を製造し得る;その内、Aと、Mと、は、上記定義を有する;xと、yと、は、同じまたは異なり、お互い独立的に0以上の整数から選ばれる。
【0023】
好ましくは、xと、yと、は、同じまたは異なり、お互い独立的に0-10の整数から選ばれるが、例として0、1、2、3、4、5、6、7、8、9、10を挙げられるし、好ましくは、0、1である。
【0024】
本発明において、上記AOH・xH2Oと、MOH・yH2Oと、H3C3N3O3と、のモル比は(0.5―2.5):(0.5―2.5):1であってよいし、好ましくは(0.8―1.2):(0.8―1.2):1であり、例として1:1:1である。
【0025】
上記反応を溶媒中で行うことができるし、上記溶媒は有機溶媒または無機溶媒から選ばれてよいものの、好ましくは無機溶媒であり、例として水がある;
原料総質量と溶媒との比例は、5―50g原料/100ml溶媒でよいし、好ましくは、10―30g原料/100ml溶媒である;
上記反応の温度は50―110℃でよいし、好ましくは60―100℃であり、例として80℃である;
本発明において、反応が完了した後、反応溶液を一定の冷却速度で降温することができるし、温度を下げた後、溶媒で洗浄することで、アルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物が得られる。
【0026】
本発明において、冷却速度は1―10℃/時間であり、好ましくは1―5℃/時間であり、例として1℃/時間、5℃/時間が挙げられる;
本発明において、反応溶液を0―40℃までに降温するが、好ましくは10―40℃であり、例として10℃、40℃がある;
洗浄に使う溶媒は、水、アセトン、またはそれらの混合物であり、上記溶媒にて数回洗浄してよいし、好ましくは、洗浄に使う溶媒は、アセトンである。
本発明において、上記製造方法により製造し得るものは結晶であり、上記結晶の体積は2.0mm3以上である。
【0027】
本発明は、さらに、上記アルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物(例えば結晶)の用途を提供するが、それを、レーザー発射機の出力レーザーの周波数変換と、紫外線領域の高調波発生器と、光パラメトリック増幅器および光導波路デバイスと、に用いられる;
好ましくは、上記化合物は、波長1.064μmのレーザービームに対して2倍、または3倍、または4倍、または5倍、または6倍周波数の高調波光を生成出力することができる;
好ましくは、上記化合物は、赤外線から紫外線までの光パラメトリック増幅器に用いることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明では化学式AM(HC3N3O3)・nH2O(具体的にKLi(HC3N3O3)・2H2O、RbLi(HC3N3O3)・2H2O、RbNa(HC3N3O3)・2H2Oのようなもの)のアルカリ金属シアヌル酸一水素塩化合物及び非線形光学結晶を提供するが、当非線形光学結晶は極めて強力な位相整合能力(粉末周波数逓倍測定法で測定した際、その粉末周波数逓倍効果は約KH2PO4(KDP)の2―3倍である)を有する;その紫外線吸収端は250nm以下である。そして、当非線形光学結晶はNd:YAG(λ=1.064μm)を2倍周波数、3倍周波数、4倍周波数にさせる高調波発生機を実現できる。なお、当非線形光学結晶は単結晶構造の無色透明なものであり、空気中では潮解性を持たない。想定できるように、AM(HC3N3O3)・nH2O(具体的にはKLi(HC3N3O3)・2H2O、RbLi(HC3N3O3)・2H2O、RbNa(HC3N3O3)・2H2Oのよう)は、様々な非線形光学分野で広く活用され、紫外線領域での非線形光学の活用を開拓する。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【
図1】
図1はKLHCY結晶と、RLHCY結晶と、RNHCY結晶と、を周波数逓倍結晶として活用した場合の非線形光学効果の典型的なイメージ図であり、その内、1はレーザー発射機、2は入射レーザービーム、3は結晶の仕上げ処理と光学処理をへた単結晶、4は生成された出力レーザービーム、5は光学フィルターである。
【
図2】
図2はKLHCY結晶と、RLHCY結晶と、RNHCY結晶と、の構造概略図であり、(KLHCY、RLHCY、RNHCYは同一構造の化合物である)。
【
図3】
図3はKLHCY単結晶を粉末に研磨したX線回折パターンである。
【
図4】
図4はRLHCY単結晶を粉末に研磨したX線回折パターンである。
【
図5】
図5はRNHCY単結晶を粉末に研磨したX線回折パターンである。
【発明を実施するための形態】
【0030】
上記のように、本発明は、全新構造の化合物およびその結晶を提供し、その構造式は、AM(HC3N3O3)・nH2O(具体的にはKLHCY、RLHCY、RNHCYのようである)であり、その内、シアヌル酸一水素基は結晶成長において優れた水溶液成長性及び非線形性能を提供している。
以下、具体的な実施例をもって、本発明に対してさらに詳しく説明する。理解されるべきなことは、以下の実施例は、本発明を例示的に説明及び解釈するものに限り、本発明の保護範囲を限定するものとして解釈されではないことである。本発明の上記内容に基づき実現される凡ゆる技術は、全て本発明が目指す範囲内に含まれる。
【0031】
特に説明のない限り、以下の実施例で使われる原材料および試薬は、すべて市販品であるか、または既知の方法で造ることができる。
【0032】
〔実施例1〕
水溶液法を採用してKLi(HC3N3O3)・2H2Oと、RbLi(HC3N3O3)・2H2Oと、RbNa(HC3N3O3)・2H2Oと、の単結晶を製造し得る。
【0033】
KLi(HC3N3O3)・2H2O単結晶の製造に使われる原料:
KOH 3.44g(0.06mol)
LiOH・H2O 2.60g(0.06mol)
H3C3N3O3 7.74g(0.06mol)
H2O50ml
具体的な操作手順は下記通り:上記原料を上記投与量通りに計量した後、100mlのビーカーに入れ、マグネトンを1個入れてから、ビーカーを磁力加熱攪拌機に入れ、ビーカーを攪拌しながら80℃に加熱してから、5℃/時間の冷却速度で40°Cまでに冷却させる。冷却後、サンプルをアセトンで洗浄することで、5×1×1mmサイズのKLi(HC3N3O3)・2H2O単結晶が得られる。
【0034】
RbLi(HC3N3O3)・2H2O単結晶の製造に使われる原料:
RbOH・H2O 7.23g(0.06mol)
LiOH・H2O 2.60g(0.06mol)
H3C3N3O3 7.74g(0.06mol)
H2O50ml
具体的な操作手順は下記通り:上記原料を上記投与量通りに計量した後、100mlのビーカーに入れ、マグネトンを1個入れてから、ビーカーを磁力加熱攪拌機に入れ、ビーカーを攪拌しながら80℃に加熱してから、5℃/時間の冷却速度で40°Cまでに冷却させる。冷却後、サンプルをアセトンで洗浄することで、1×1×5mmサイズのRbLi(HC3N3O3)・2H2O単結晶が得られる。
【0035】
RbNa(HC3N3O3)・2H2O単結晶の製造に使われる原料:
NaOH 2.40g(0.06mol)
RbOH・H2O 7.23g(0.06mol)
H3C3N3O3 7.74g(0.06mol)
H2O50ml
具体的な操作手順は下記通り:上記原料を上記投与量通りに計量した後、100mlのビーカーに入れ、マグネトンを1個入れてから、ビーカーを磁力加熱攪拌機に入れ、ビーカーを攪拌しながら80℃に加熱してから、5℃/時間の冷却速度で10°Cまでに冷却させる。冷却後、サンプルをアセトンで洗浄することで、1×5×1mmサイズのRbNa(HC3N3O3)・2H2O単結晶が得られる。
【0036】
〔実施例2〕
水溶液法を採用しKLi(HC3N3O3)・2H2Oと、RbLi(HC3N3O3)・2H2Oと、RbNa(HC3N3O3)・2H2Oと、の単結晶を製造し得る。
【0037】
KLi(HC3N3O3)・2H2O単結晶の製造に使われる原料:
KOH 3.44g(0.06mol)
LiOH・H2O 2.60g(0.06mol)
H3C3N3O3 7.74g(0.06mol)
H2O50ml
具体的な操作手順は下記通り:上記原料を上記投与量通りに計量した後、100mlのビーカーに入れ、マグネトンを1個入れてから、ビーカーを磁力加熱攪拌機に入れ、ビーカーを攪拌しながら80℃に加熱してから、1℃/時間の冷却速度で40°Cまでに冷却させる。冷却後、サンプルをアセトンで洗浄することで、5×2×2mmサイズのKLi(HC3N3O3)・2H2O単結晶が得られる。
【0038】
RbLi(HC3N3O3)・2H2O単結晶の製造に使われる原料:
RbOH・H2O 7.23g(0.06mol)
LiOH・H2O 2.60g(0.06mol)
H3C3N3O3 7.74g(0.06mol)
H2O50ml
具体的な操作手順は下記通り:上記原料を上記投与量通りに計量した後、100mlのビーカーに入れ、マグネトンを1個入れてから、ビーカーを磁力加熱攪拌機に入れ、ビーカーを攪拌しながら80℃に加熱してから、1℃/時間の冷却速度で40°Cまでに冷却させる。冷却後、サンプルをアセトンで洗浄することで、2×2×5mmサイズのRbLi(HC3N3O3)・2H2O単結晶が得られる。
【0039】
RbNa(HC3N3O3)・2H2O単結晶の製造に使われる原料:
NaOH 2.40g(0.06mol)
RbOH・H2O 7.23g(0.06mol)
H3C3N3O3 7.74g(0.06mol)
H2O50ml
具体的な操作手順は下記通り:上記原料を上記投与量通りに計量した後、100mlのビーカーに入れ、マグネトンを1個入れてから、ビーカーを磁力加熱攪拌機に入れ、ビーカーを攪拌しながら80℃に加熱してから、1℃/時間の冷却速度で10°Cまでに冷却させる。冷却後、サンプルをアセトンで洗浄することで、2×5×2mmサイズのRbNa(HC3N3O3)・2H2O単結晶が得られる。
【0040】
〔実施例3〕
実施例2で得られたKLi(HC
3N
3O
3)・2H
2Oと、RbLi(HC
3N
3O
3)・2H
2Oと、RbNa(HC
3N
3O
3)・2H
2Oと、の結晶を裁断加工し、配向し、研磨後、
図1に示すデバイスの位置3に配置し、室温で、QスイッチNd:YAGレーザーを入力光源として使うが、入射波長が1064nmの時点で、明らかに532nm波長の2倍周波数の緑色光の出力が観察され、出力強度は同じ条件でのKDPの約2―3倍であった。具体的に、KLi(HC
3N
3O
3)・2H
2O結晶の出力強度は、同じ条件でのKDPの3倍であり、RbLi(HC
3N
3O
3)・2H
2O結晶の出力強度は、同じ条件でのKDPの2倍であり、RbNa(HC
3N
3O
3)・2H
2O結晶の出力強度は同じ条件でのKDPの2倍である。
【0041】
以上、本発明の実施方法に対して上記のように説明している。但し、本発明は、上記の実施方法に限るものではない。凡ゆる本発明の精神および原則の範囲内で行われる何れの修正、同等の交換、改良などは、全て本発明の保護範囲に含まれるものとする。
【国際調査報告】