(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】車両照明用のリフレクタ
(51)【国際特許分類】
C23C 14/06 20060101AFI20220124BHJP
F21S 41/37 20180101ALI20220124BHJP
F21V 7/28 20180101ALI20220124BHJP
【FI】
C23C14/06 R
F21S41/37
F21V7/28 210
F21V7/28 220
F21V7/28 230
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021507649
(86)(22)【出願日】2019-08-09
(85)【翻訳文提出日】2021-04-01
(86)【国際出願番号】 IB2019000695
(87)【国際公開番号】W WO2020035727
(87)【国際公開日】2020-02-20
(32)【優先日】2018-08-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】391011607
【氏名又は名称】ヴァレオ ビジョン
【氏名又は名称原語表記】VALEO VISION
(74)【代理人】
【識別番号】100091487
【氏名又は名称】中村 行孝
(74)【代理人】
【識別番号】100120031
【氏名又は名称】宮嶋 学
(74)【代理人】
【識別番号】100127465
【氏名又は名称】堀田 幸裕
(74)【代理人】
【識別番号】100106655
【氏名又は名称】森 秀行
(72)【発明者】
【氏名】トーマス、ノーラン
(72)【発明者】
【氏名】ロバート、フレイザー
(72)【発明者】
【氏名】シビ、シン
(72)【発明者】
【氏名】スコット、アダスカ
【テーマコード(参考)】
4K029
【Fターム(参考)】
4K029AA11
4K029BA03
4K029BA08
4K029BA46
4K029BB02
4K029BC07
4K029BD09
4K029DC16
4K029DC39
4K029FA04
4K029FA05
4K029GA03
4K029JA02
(57)【要約】
部品を加工する方法は、バルクモールディングコンパウンド(BMC)部品をマグネトロン・スパッリング装置の真空チャンバ内に配置することと、真空チャンバ内でプラズマを点火することとを含んでいる。BMC部品の表面上に充填材層を堆積させ、充填材層上に金属層をスパッタ堆積させて、BMC部品の反射面を作り出す。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
部品を加工する方法であって、
バルクモールディングコンパウンド(BMC)部品をマグネトロン・スパッリング装置の真空チャンバ内に配置することと、
前記真空チャンバ内でプラズマを点火することと、
前記BMC部品の表面に充填材層を堆積させることと、
前記充填材層上に金属層をスパッタ堆積させて、前記BMC部品の反射面を作り出すことと、
を含んだ方法。
【請求項2】
前記BMC部品は、BMCコンパウンド内に分散された粉砕/超微細ガラスを含有している、請求項1記載の方法。
【請求項3】
前記粉砕ガラスは、300から600nmの粒径を有している、請求項2記載の方法。
【請求項4】
前記BMC部品は、200ミクロン以下の表面粗さを有している、請求項1記載の方法。
【請求項5】
前記BMC部品は、200ミクロン以下120から150ミクロンの表面粗さを有している、請求項4記載の方法。
【請求項6】
前記充填材層を堆積させることは、銅、SiO
2、およびSiO
x(xは酸素の量を表す2以外の数字)のうち少なくとも1つを含有した層を堆積させることを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項7】
前記充填材層を堆積させることは、
SiO
2とSiO
X(xは酸素の量を表す2以外の数字)のうち少なくとも一方を含有した第1層を堆積させることと、
前記第1層上に、スパッタされた銅の第2層を堆積させるか、または、その逆を行うことと、
を含む、請求項6記載の方法。
【請求項8】
前記充填材層を形成する前に前記BMC部品を清浄化することを更に含んだ、請求項1記載の方法。
【請求項9】
前記清浄化することは、前記BMC部品の表面にグロー放電処理を受けさせることを含んでいる、請求項1記載の方法。
【請求項10】
前記金属層はアルミニウムからなる、請求項1記載の方法。
【請求項11】
前記部品上にコーティングを堆積させた後で前記部品上に保護層を付けることを更に含んだ、請求項1記載の方法。
【請求項12】
前記保護層は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)またはテトラメチルジシロキサン(TMDSO)のいずれか一方を含有している、請求項11記載の方法。
【請求項13】
ベースモールディングコンパウンド(BMC)部品と、
前記BMC部品上に直接設けられた、真空チャンバ堆積充填材層と、
前記充填材層上に直接設けられた金属層と、
を備えた車両の照明装置。
【請求項14】
前記BMC部品は、BMCコンパウンド内に分散された粉砕ガラスを含有している、請求項13記載の装置
【請求項15】
前記粉砕ガラスは、300から600nmの粒径を有している、請求項14記載の装置
【請求項16】
前記充填材層は、銅、SiO
2、およびSiO
x(xは酸素の量を表す2以外の数字)のうち少なくとも1つを含有している、請求項13記載の装置。
【請求項17】
前記金属層はアルミニウムを含有している、請求項13記載の装置。
【請求項18】
記金属層はアルミニウムからなる、請求項17記載の装置。
【請求項19】
前記金属層上に直接形成された保護層を更に備える、請求項18記載の装置。
【請求項20】
前記保護層は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)またはテトラメチルジシロキサン(TMDSO)のいずれか一方を含有している、請求項11記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車両灯火類のリフレクタに用いられる成型プラスチック部品に関する。
【背景技術】
【0002】
バルクモールディングコンパウンド(BMC)は、現代の自動車の照明装置を作るために広く使用されている材料である。BMCは、コンパウンドへと混合される樹脂、ガラス繊維、および充填材料の組合せである。そのコンパウンドは、複雑な放物線形状の部品へと射出成型することができる。その部品は、照明装置のための放物線状のリフレクタを形成するように金属でコーティングされる。ガラス繊維や充填材は、BMCを主材料とするリフレクタの強度を向上させ全体的なコストを低減させるが、これらの材料はBMC成型部品を粗く不整な表面を持ったものにしてしまい得る。そのような表面の直接的な金属膜化は概して、多くの車両照明機能に必要な光学特性をもたらし得ない、低品質のリフレクタに帰着してしまう。特に、直接付けられた金属膜化層は、BMC部品と同じ表面の不整を有し、BMC樹脂からの脱ガスのせいであり得るぼやけが、しばしば金属上に生じてしまう。
【0003】
これらの問題に取り組むため、リフレクタを形成すべきBMC部品の表面にアクリル・ベースコートが施される。このベースコートは、BMC部品の粗面を均して、リフレクタに必要とされる平滑な素地をもたらし、直接的に金属膜化されたBMC部品に生じるぼやけを防止する。しかしベースコートは、大きな資本や床面積の投資を必要とする複雑なスプレーコーティングおよび硬化プロセスによって施されねばならない。かくして、ベースコーティングを用いることなく、車両照明についての光学的要件を満たすBMCリフレクタを提供する努力がなされてきた。例えば、特許文献1(U.S. patent No. 5,865,530)は、BMC部品に直接金属膜化が施され得るように表面平滑性を向上させるBMC製法や成型プロセスを開示している。にもかかわらず、結果として得られるリフレクタは、多くの車両照明用途に適した測光的特性をもたらすものではなく、しばしば、透明レンズの車両照明装置にとって審美的に望ましくない、ぼやけを有するものである。かくして、特許文献1に開示されたプロセスは、車両照明産業によって広く採用されきてはおらず、ベースコーティングは概して、高品質の車両照明用リフレクタを製造するのに必要なプロセスとして受け入れられている。
【0004】
本明細書で提供される「背景」の説明は、本開示の文脈を一般的に提示するためのものである。(この背景部分に記載されている範囲での)本願発明者らの研究、および(普通ならば出願時に従来技術とは見做され得ない)明細書の諸態様は、明示的にも暗示的にも本開示に対する従来技術として認められるものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【0006】
本明細書で説明される諸実施形態は、以下の諸態様を含むものである。
【0007】
(1)部品を加工する方法であって、バルクモールディングコンパウンド(BMC)部品をマグネトロン・スパッリング装置の真空チャンバ内に配置することと、真空チャンバ内でプラズマを点火することと、BMC部品の表面に充填材層を堆積させることと、充填材層上に金属層をスパッタ堆積させて、BMC部品の反射面を作り出すことと、を含んだ方法。
【0008】
(2)BMC部品は、BMCコンパウンド内に分散された粉砕/超微細ガラスを含有している、請求項1記載の方法。
【0009】
(3)粉砕ガラスは、300から600nmの粒径を有している、請求項2記載の方法。
【0010】
(4)BMC部品は、200ミクロン以下の表面粗さを有している、請求項1記載の方法。
【0011】
(5)BMC部品は、200ミクロン以下120から150ミクロンの表面粗さを有している、請求項4記載の方法。
【0012】
(6)充填材層を堆積させることは、銅、SiO2、およびSiOx(xは酸素の量を表す2以外の数字)のうち少なくとも1つを含有した層を堆積させることを含んでいる、請求項1記載の方法。
【0013】
(7)充填材層を堆積させることは、
SiO2とSiOX(xは酸素の量を表す2以外の数字)のうち少なくとも一方を含有した第1層を堆積させることと、
第1層上に、スパッタされた銅の第2層を堆積させるか、または、その逆を行うことと、
を含んでいる、請求項6記載の方法。
【0014】
(8)充填材層を形成する前にBMC部品を清浄化することを更に含んだ、請求項1記載の方法。
【0015】
(9)清浄化することは、BMC部品の表面にグロー放電処理を受けさせることを含んでいる、請求項1記載の方法。
【0016】
(10)金属層はアルミニウムからなる、請求項1記載の方法。
【0017】
(11)部品上にコーティングを堆積させた後で部品上に保護層を付けることを更に含んだ、請求項1記載の方法。
【0018】
(12)保護層は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)またはテトラメチルジシロキサン(TMDSO)のいずれか一方を含有している、請求項11記載の方法。
【0019】
(13)ベースモールディングコンパウンド(BMC)部品と、BMC部品上に直接設けられた、真空チャンバ堆積充填材層と、充填材層上に直接設けられた金属層と、を含んだ車両の照明装置。
【0020】
(14)BMC部品は、BMCコンパウンド内に分散された粉砕ガラスを含有している、請求項13記載の装置。
【0021】
(15)粉砕ガラスは、300から600nmの粒径を有している、請求項14記載の装置。
【0022】
(16)充填材層は、銅、SiO2、およびSiOx(xは酸素の量を表す2以外の数字)のうち少なくとも1つを含有している、請求項13記載の装置。
【0023】
(17)金属層はアルミニウムを含有している、請求項13記載の装置。
【0024】
(18)金属層はアルミニウムからなる、請求項17記載の装置。
【0025】
(19)金属層上に直接形成された保護層を更に含んだ、請求項18記載の装置。
【0026】
(20)保護層は、ヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)またはテトラメチルジシロキサン(TMDSO)のいずれか一方を含有している、請求項11記載の装置。
以上の各段落は、一般的な導入部として供されたものであって、次に続く特許請求の範囲を限定することを意図したものではない。添付図面と共になされる以下の詳細な説明を参照することにより、記述される諸実施形態が更なる利点と共に最もよく理解されることとなる。
【0027】
本開示と、それに付随する利点の多くとは、添付の図面と関連して考察されるときには、下記詳細な説明を参照することによってより深く理解されるので、それらのより完全な認識が容易に得られるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【
図1】一実施形態による、スパッタコーティングされた例示的な部品を示す図。
【
図2】一実施形態による、部品をコーティングするプロセスのための第1の例示的なアルゴリズムを示す図。
【
図3】一実施形態による、例示的なスパッタリング装置の断面図。
【
図4】一実施形態による、車両照明リフレクタを形成するプロセスのための例示的なアルゴリズムを示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
本明細書で説明される実施形態は、反応性スパッタリングされるコーティングのためのシステムおよび方法を提供する。特に、プラスチック自動車部品に金属窒化物コーティングを施して、過酷な自動車灯火の環境に耐えられる金属的な外観をもたらすものである。
【0030】
以下の説明は、本開示の具体例や実施形態を与えることによって、本開示をさらに明確にすることを意図している。これらの実施形態は、網羅的ではなく例示的なものであることを意図している。本開示の全範囲は、本明細書に開示された如何なる特定の実施形態にも限定されず、寧ろ特許請求の範囲によって定められるものである。
【0031】
明確性のため、本明細書で説明される実施内容の全特徴が詳細に示されたり説明されたりしているわけではない。如何なるそのような現実の実施内容の開発においても、開発者の特定の目標(例えば、用途や商取引に関連した制約の遵守など)を達成するために実施内容に特有の多くの決定がなされることとなり、これらの特定の目標は、実施内容毎に、また開発者毎に変わることとなる、ということを認識されたい。
【0032】
上記の背景部分で言及されているように、ベースコーティングは概して、高品質のBMC車両照明リフレクタを製造するのに必要なプロセスとして受け入れられている。しかしながら本発明者らは、ベースコーティングされたBMCリフレクタでさえも、しばしば現代の車両照明装置の光学的要件を満たせない、ということを認識してきた。この問題を研究する際に本発明者らは、ベースコート層が典型的には数マイクロメートル程度の厚さを有し、コーティング材料が部品のエッジ上に溜まってしまうせいで不整な表面プロファイルを作り出してしまう、ということを見い出した。この不整なプロファイルは、光装置の意図した光学的性能からの逸脱という結果を生じさせてしまう(特に、これらの装置としてLED光源が用いられる場合は、不整なプロファイルに対して非常に敏感なのである)。
【0033】
図1は、本明細書で説明する実施形態による例示的な車両照明部品の断面図を示している。部品100は、装飾的および/または機能的な層としてコーティングされた基板を含んでおり、自動車産業におけるリフレクタ、ベゼル、またはトリム部分、特に、自動車産業における灯火用リフレクタ、灯火用ベゼル、または灯火用トリム部分として使用することができる。
【0034】
基板110は、BMC材料から作られ、清浄化された表面120を有している。ヘッドランプ製造に用いられる典型的な熱硬化性成型用コンパウンドは、不飽和ポリエステル樹脂、スチレン、低収縮性添加剤、無機充填材、およびガラス製強化材を含む。このようなBMCバルク成型材料は、当該技術分野で既知のものであり、特定の組成に対して多くの変形が可能である。しかしながら、本発明者らは、粉砕ガラスを内部に分散させるBMC製法は、成型された部品の表面粗さを改善することができる、ということを見い出した。例えば、従来の成型BMC部品は、200ミクロンの典型的な表面粗さを有している。BMCコンパウンド内に粒径300から600nm(または30から50メッシュサイズ)の粉砕ガラスを分散させることによって、約120から150ミクロンの表面粗さがもたらされる。このBMC製法は、概して以下のものを含むものである:
充填材 - CaCO3;
ガラス繊維 - SiO2;
ポリエステル樹脂 - オルソフタル酸またはイソフタル酸またはビニルエステルまたはフェノール樹脂など;
低収縮性樹脂 - PMMA(ポリメチルメタクリレート);
スチレン - スチレンまたはビニルトルエンまたはDAP;
触媒/抑制剤 - ケトンまたはコバルトまたはペルオキシエステル;および
離型剤 - ZnStまたはCaSt(ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸カルシウム)。
【0035】
下記で更に説明されるように、基板110の表面をグロー放電に曝すことによって、BMC成型部品上で清浄化が行われる。
【0036】
清浄化された表面120上に充填材層130が設けられる。充填材層130は、反射性材料を直接付けるのに適したBMC表面の巨視的な平滑化をもたらすコンフォーマル層である。充填材層130は、SiO2または不定比SiOX(xは酸素の含有量を表す2以外の数字)から作られていてよい。充填材層130は、SiO2とSiOXとの組み合わせであってもよい。或いは充填材層130は、単独の、ないしはSiO2やSiOXの層に加えて設けられた、銅の層であってもよい。充填材層130の最大厚さは1ミクロンである。一実施形態では、充填材層は約20から100nmの厚さである。
【0037】
部品に反射性を与えるよう、充填材層130上に金属膜化層140が直接設けられる。金属は、例えばアルミニウムであってよいが、反射性の表面をもたらすのに適した任意の金属を用いてもよい。金属層140上には、金属コーティング140を保護するように透明保護層150(HMDSOなど)が設けられる。一実施形態では、保護コーティングはPlasil(商標)である。但し、保護コーティング150用には、金属140に透明な保護コーティングを与えて過酷な自動車灯火環境からの保護をもたらす他の諸材料を用いることが可能である。アルミニウムの金属層は60nmから150nmの範囲に及び、HMDSO保護層は40nmから200nmの範囲に及ぶ。
【0038】
部品100は、大量生産された照明装置の全てに亘るビームパターンの再現を(但し、複雑で高価なベースコート・プロセスを用いることなく)果たすBMCリフレクタをもたらしてくれる。また、部品100は、LEDが表面プロファイルに対して非常に敏感であることから、リフレクタの技術にLEDの使用を組み入れるのにも役立つ。さらに部品100は、ベースコーティングを排した先行技術のリフレクタによくある、ぼやけや曇りを有することがない。
【0039】
図2は、BMC部品を反射性材料でコーティングするプロセスのための第1の例示的なアルゴリズム200を示す。アルゴリズム200の各段階は、マグネトロン・スパッリング装置(例えば、
図3に示して後述する真空チャンバ300を用いたマグネトロン・スパッタリング装置)を用いて実行され得る。段階110では、スパッタされたコーティングを基板上に施すために、マグネトロン・スパッタリング装置の高真空チャンバ内へとBMC部品が配置される。一実施形態では、基板を自動車部品とすることができ、特に、基板は、放物線状リフレクタなどの自動車灯火の反射部品とすることができる。
【0040】
段階220では、真空スパッタ・チャンバ内のターゲットがグロー放電に曝され、ターゲットから酸化物および/または他の汚染物質が取り除かれる。
図3に示すように、スパッタリング・チャンバは、複数のターゲットソースを含み得る。段階230においては、基板がグロー放電に曝され、如何なるガスも基板から取り除かれる。
【0041】
段階240においては、BMC部品の表面に充填材層が付けられる。一実施形態において、充填材層は、充填材層材料内にSiO2および/または不定比SiOX(xは酸素の量を表す2以外の数字)の層のような珪素系の層を含む。但し充填材層は、BMC表面粗さを平滑化するのに適した他の成分を含むことができる。TMDMSO(テトラメチルジシロキサン)および空気/酸素をチャンバ内へ流入させて、SiO2/SiOXを得る。一実施形態では、充填材層は約20から100nmの厚さである。或いは充填材層は、スパッタされた銅の層であってもよい。充填材層は更に、珪素系の層と銅の層との両方であってもよい。
【0042】
段階250では、充填材層上に反射性金属層が付けられる。反射性金属層は、真空チャンバ内で基板上にスパッタされたコーティングを形成するようにターゲットをスパッタリングすることによって形成される。スパッタリング電力レベルおよびスパッタリング処理時間などのプロセスパラメータによって、充填材層上に堆積されるターゲット材料の量を制御することができる。
【0043】
段階260では、スパッタされた金属層上に保護トップコートが付けられる。一実施形態では、保護トップコートはPlasil(商標)である。Plasil(商標)は、シロキサン材料、例えばヘキサメチルジシロキサン(HMDSO)などである。テトラメチルジシロキサン(TMDSO)が、本明細書に記載の実施形態で用いることのできる別のシロキサン材料である。HMDSOおよびテトラメチルジシロキサンは、公開特許CA 2294658Cに記載されており、その全体が本明細書に援用される。但し、保護トップコート用には、反応性スパッタされたコーティングに透明な保護コーティングを与えて過酷な自動車灯火環境からの保護をもたらす他の諸材料を用いることができる。
【0044】
図3は、一実施形態によるマグネトロン・スパッタリング装置の真空チャンバ100の断面図である。フィラメント110が、放電電源120を介して、真空チャンバ100内にフィラメント生成プラズマ115をもたらす。
【0045】
回転式ワークテーブル125が、駆動モータ130によって回転軸135を用いて駆動される。回転式ワークテーブル125の側面には、複数の基板などの試料140が固定されている。但し、回転式ワークテーブル1251上には単一の試料140が存在することもある。
図3は、処理ガスポート145および反応性ガスポート150も示している。
【0046】
真空チャンバ100はまた、第1スパッタリング・ターゲット装置155および第2スパッタリング・ターゲット装置160も示している。各スパッタリング・ターゲット装置155および160は、それぞれの独立した第1スパッタリング・ターゲット電源10aおよび独立した第2スパッタリング・ターゲット電源10bと協力して機能する。独立した第1および第2スパッタリング・ターゲット電源10aおよび10bは、互いに別々に動作するように構成されている。その結果、独立した第1および第2スパッタリング・ターゲット電源10aおよび10bは、互いに異なる電力レベルや異なるスパッタリング周波数で動作することができる。また、独立した第1および第2スパッタリング・ターゲット電源10aおよび10bは、同時に、或いは交互にスパッタリングすることができる。
【0047】
各スパッタリング・ターゲット装置155および160は、それぞれの第1マグネトロン15aおよび第2マグネトロン15bを含んでいる。それらのマグネトロン15aおよび15bは、それぞれ複数の磁石を含んでいる。第1ターゲット20aおよび第2ターゲット20bが、それぞれの第1バッキングプレート25aおよび第2バッキングプレート25bを介して、各自のマグネトロン15aおよび15bに取り付けられている。ターゲット20aおよび20bは、同じターゲット材料または異なるターゲット材料とすることができる。例えば、これらのターゲットが両方とも、アルミニウム反射層の堆積のためのアルミニウムで形成されていてよい。或いは、一方のターゲットがアルミニウムで形成され、他方のターゲットが銅充填材層を高成膜速度で堆積させるための銅で形成されていてもよい。さらには、装置内に単一のスパッタリング・ターゲットのみが設けられていてもよい。
【0048】
マグネトロン・スパッリング装置の作動中には、第1マグネトロン生成プラズマ30aおよび第2マグネトロン生成プラズマ30bが、それぞれのターゲット20aおよび20bと、試料140との間に形成される。マグネトロン・スパッリング装置の作動中には、第1磁界35aおよび第2磁界35bも発生する。マグネトロン・スパッリング装置の作動中、それぞれのターゲット20aおよび20bから試料140に向かってターゲット材料がスパッタされる。回転式ワークテーブル125を介した各試料140の回転によって、各試料140上への均一なコーティングがもたらされる。
【0049】
図4は、一実施形態による、車両照明リフレクタを形成するプロセスのための例示的なアルゴリズムを示している。段階410において、BMC製法が準備される。ヘッドランプ製造に使用される典型的な熱硬化性成型用コンパウンドは、不飽和ポリエステル樹脂、スチレン、低収縮性添加剤、無機充填材、およびガラス製強化材を含む。このようなバルク成型材料は、当該技術分野で既知のものであり、特定の組成に対する多くの変形が可能である。しかしながら、本発明者らは、粉砕ガラスを内部に分散させるBMC製法は、成型部品の表面粗さを改善することができる、ということを見い出した。例えば、従来の成型BMC部品は、250ミクロンの典型的な表面粗さを有している。BMCコンパウンド内に粒径300から600nmまたは30から50メッシュサイズの粉砕ガラスを分散させることによって、120から150ミクロンの表面粗さがもたらされる。
【0050】
段階420では、BMC製法を用いて部品が成型される。成型技術は、バルク材料が熱・圧力下で金型内へと急速に送り込まれる高速射出であってよい。或いは、高速射出と加圧とが行われるが、その場合は熱・圧力下で僅かに開いた金型内へとバルク材料が急速に送り込まれる。金型は、充填段階の間中、僅かに開いたままになって、間隙の空きをもたらしている。金型が充填された後、金型の間隙を閉じることによって材料に付加的な圧力が加えられる。そして完全に閉じられた金型は、材料が硬化している間、圧力下に保持される。複雑な、或いは放物線状のヘッドランプリフレクタのための最良な部品を作り出すと判明している成型パラメータは、例えば、バレル温度、背圧、バレル滞留時間、圧縮用間隙、射出速度、射出流量、射出圧力、クッション材、保持圧力、圧力保持時間、金型表面温度、および硬化時間である。
【0051】
次にBMC成型部品が、段階430にて清浄化される。清浄化は、処理チャンバ外での脱イオン水および/または種々の溶媒を用いた初期清浄化を含み得る。そして、硬化した部品が、ダストや粒子を除去するように清浄化される。ダスト除去の清浄化は、水や溶媒で行うことができる。但し、選択された流体や適用方法は、リフレクタの部位の表面上に如何なる汚染(スポッティングなど)も残すべきではない。リフレクタの部位における如何なる残留物や汚染も、金属膜化後に可視化され、制御されない光の散乱による性能の低下に帰着してしまうのである。脱イオン水およびIPAイソプロピルアルコール溶媒による洗浄は、両者とも、350Fに達する環境温度でうまくいくことが判明している。残留した水や溶媒を取り去るための次の乾燥プロセスの一部として、強制対流空気が用いられ得る。
【0052】
段階440では、
図2で説明したすように、BMC部品上に反射性の層が設けられる。この段階は一般に、上記で言及した溶媒清浄化に加えて、真空チャンバ内でのプラズマ清浄化を含む。
【0053】
次に、段階440において、成型部品が固定具上へと組み付けられ、上述した
図2のコーティング・プロセスのために真空金属膜化チャンバ内に配置される。典型的な真空金属膜化サイクルは:0.002ミリバールで38から42分間の真空引き(より大きなポンプでのマグネトロン・スパッタリングでは2から3分間の真空引き)、0.01Mbarで3から5分間のグロー放電(1から2分間のグロー放電)、0.0004Mbarで1分間のアルミニウム堆積である。そして段階450において、保護層が付けられる。好適な方法は、金属膜化に続いての、0.002Mbarで12から15分間のシロキサン堆積(我々は1から3分に亘ってシロキサンを堆積させる)、および1分間の換気である。シロキサンは、反射性アルミニウム層の上に保護オーバーコーティングを形成する。チャンバから取り出したら、各部品が、場合に応じて各自の適切なレンズ、ランプ、および関連ハードウェアと接合されて組み立てられる。
【0054】
かくして、開示された諸実施形態は、良好な金属膜化された表面を得るように粗さの小さな表面を作り出すための、新たなBMC製法および処理技術を含み得るのである。BMCは(水分をより少なく避けるための)不活性雰囲気内で作られて、ぼやけのない表面と約120から150nmの表面粗さを得る。様々な型式の光源やリフレクタの設計のためにBMC上に高反射性表面を作り出すよう、チャンバ内での充填材プロセスが提供される。中間充填材層の次には、金属膜化と、アルミニウムを保護するためのHMDSOとが続く。
【0055】
このチャンバ内プロセスは、機構上のコスト削減と、従来のベースコーティング・プロセスに対してのサイクル時間の短縮とに備えたものである。さらに、チャンバ内プロセスは、アクリルスプレー・ベースコーティングの使用を避けた従来の直接的な金属膜化プロセスで観察される曇りやぼやけのない、高品質の反射面をもたらす。
【0056】
一定の諸実施形態が本明細書に記載されているが、これらの実施形態は、例としてのみ提示され、本開示の範囲を限定することを意図してはいない。この開示における諸教示を用いて、当業者は、当該開示の趣旨から逸脱することなく、当該開示を種々のやり方で(本明細書記載の諸実施形態における形態の省略、置換、および/または変更を行って)変形させたり適合させたりすることができる。加えて、本開示を解釈する際には、全ての用語が、文脈と一致した出来る限り最も広いやり方で解釈されるべきである。添付特許請求の範囲およびそれらの均等物は、本開示の範囲および趣旨の内にあるであろうような形態や変形を含むように意図されている。
【国際調査報告】