(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】車両減速サブシステムを備えた車両の操作
(51)【国際特許分類】
B60T 8/17 20060101AFI20220124BHJP
B60L 50/16 20190101ALI20220124BHJP
B60L 58/12 20190101ALI20220124BHJP
B60L 7/24 20060101ALI20220124BHJP
B60W 10/18 20120101ALI20220124BHJP
【FI】
B60T8/17 C
B60L50/16
B60L58/12
B60L7/24 Z
B60W10/18 900
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021510323
(86)(22)【出願日】2018-09-13
(85)【翻訳文提出日】2021-02-25
(86)【国際出願番号】 EP2018074766
(87)【国際公開番号】W WO2020052764
(87)【国際公開日】2020-03-19
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】512272672
【氏名又は名称】ボルボトラックコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100099623
【氏名又は名称】奥山 尚一
(74)【代理人】
【識別番号】100129425
【氏名又は名称】小川 護晃
(74)【代理人】
【識別番号】100087505
【氏名又は名称】西山 春之
(74)【代理人】
【識別番号】100168642
【氏名又は名称】関谷 充司
(74)【代理人】
【識別番号】100217076
【氏名又は名称】宅間 邦俊
(74)【代理人】
【識別番号】100218604
【氏名又は名称】池本 理絵
(74)【代理人】
【識別番号】100107319
【氏名又は名称】松島 鉄男
(74)【代理人】
【識別番号】100096769
【氏名又は名称】有原 幸一
(72)【発明者】
【氏名】タゲッソン,クリストファー
(72)【発明者】
【氏名】ヘンダーソン・レオン
【テーマコード(参考)】
3D202
3D246
5H125
【Fターム(参考)】
3D202BB55
3D202CC04
3D202CC57
3D202DD01
3D202DD45
3D246AA13
3D246AA14
3D246BA05
3D246DA01
3D246EA03
3D246EA05
3D246EA07
3D246GB40
3D246HA32A
3D246HA39A
3D246HB02A
3D246HB21A
5H125AA01
5H125AC08
5H125AC12
5H125CB02
5H125CB06
5H125EE27
5H125EE31
5H125EE70
(57)【要約】
本発明は、車両(1)を減速するように制御可能な少なくとも第1の車両減速サブシステム(3;5;13)と、これに接続された処理回路(15)と、を備えた車両(1)を操作する方法に関する。この方法は、処理回路(15)によって、第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による現在のエネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値を少なくとも第1の車両減速サブシステム(3;5;13)から取得するステップ(S10)と、処理回路(15)によって、取得された第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による現在のエネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値、第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による減速エネルギー蓄積量の予め定義されたモデル、及び第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による最大許容エネルギー蓄積量を示す予め定義された限度に基づいて、車両(1)の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量を示す尺度を決定するステップ(S11)と、を備えている。
【選択図】
図3
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車両(1)を減速するように制御可能な少なくとも第1の車両減速サブシステム(3;5;13)と、前記少なくとも第1の車両減速サブシステム(3;5;13)に接続された処理回路(15)を、を備えた車両(1)を操作する方法であって、
前記処理回路(15)によって、前記第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による現在のエネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値を前記第1の車両減速サブシステム(3;5;13)から取得するステップ(S10)と、
前記処理回路(15)によって、前記取得された第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による現在のエネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値、前記第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による減速エネルギー蓄積量の予め定義されたモデル、及び前記第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による最大許容エネルギー蓄積量を示す予め定義された限度に基づいて、前記車両(1)の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量を示す尺度を決定するステップ(S11)と、
を備えた、方法。
【請求項2】
前記少なくとも第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による減速エネルギーの蓄積なしに、前記車両(1)によって提供される持続可能な減速能力を示す尺度を決定するステップ(S10)を更に備えた、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記車両(1)は、前記車両(1)を減速するように制御可能な第2の車両減速サブシステム(3;5;13)を更に備え、前記処理回路(15)は、前記第2の車両減速サブシステム(3;5;13)に更に接続され、
前記処理回路(15)によって、前記第2の車両減速サブシステム(3;5;13)による現在のエネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値を前記第2の車両減速サブシステム(3;5;13)から取得するステップ(S10)を更に備え、
前記車両の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量を示す尺度は、前記取得された第2の車両減速サブシステム(3;5;13)による現在のエネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値、前記第2の車両減速サブシステム(3;5;13)による減速エネルギー蓄積量の予め定義されたモデル、及び前記第2の車両減速サブシステム(3;5;13)による最大許容エネルギー蓄積量を示す予め定義された限度に基づいて、さらに決定される、
請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記処理回路(15)によって、前記車両(1)の減速に現在利用可能な減速エネルギー蓄積量を示す信号を提供するステップ(S12)を更に備えた、
請求項1~3のいずれか1つに記載の方法。
【請求項5】
前記車両(1)は、少なくとも標高情報を含んだ将来の車両経路を推定する経路サブシステム(17)を更に備え、前記経路サブシステム(17)は、前記処理回路(15)に接続され、
前記処理回路(15)によって、前記将来の車両経路の標高情報を示す信号を前記経路サブシステム(17)から取得するステップ(S20)と、
前記車両(1)の減速に現在利用可能な減速エネルギー蓄積量を示す尺度、前記将来の車両経路の標高情報を示す信号、及び前記車両(1)の重量に基づいて、前記車両(1)の最高許容速度(V
max)を決定するステップと、
を更に備えた、
請求項1~4のいずれか1つに記載の方法。
【請求項6】
少なくとも1つの周囲条件パラメータ値を取得するステップ(S10)を更に備え、
前記車両(1)の最高許容速度(V
max)は、前記少なくとも1つの周囲条件パラメータ値に基づいてさらに決定される、
請求項5に記載の方法。
【請求項7】
前記少なくとも第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による減速エネルギーの蓄積なしに、前記車両(1)によって提供される持続可能な減速能力を示す尺度を決定するステップを更に備え、
前記車両(1)の最高許容速度(V
max)は、前記持続可能な減速能力を示す尺度に基づいてさらに決定される、
請求項5又は6に記載の方法。
【請求項8】
前記車両(1)の最高許容速度(V
max)を示す信号を提供するステップを更に備えた、
請求項5~7のいずれか1つに記載の方法。
【請求項9】
前記最高許容速度(V
max)よりも低い速度で走行するように、前記車両を制御するステップ(S32)を更に備えた、
請求項5又は8に記載の方法。
【請求項10】
前記少なくとも第1の車両減速サブシステム(3;5;13)は、摩擦ブレーキサブシステム(13)、内燃機関(3)、リターダ、及び電気推進システム(5)の少なくとも1つを含む、
請求項1~9のいずれか1つに記載の方法。
【請求項11】
車両(1)を減速するように制御可能な少なくとも第1の車両減速サブシステム(3;5;13)を備えた車両(1)の動作を制御する車両制御ユニット(15)であって、
前記第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による現在のエネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値を前記第1の車両減速サブシステム(3;5;13)から取得し、
前記取得された第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による現在のエネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値、前記第1の車両減速サブシステムによる減速エネルギー蓄積量の予め定義されたモデル、及び前記第1の車両減速サブシステム(3;5;13)による最大許容エネルギー蓄積量を示す予め定義された限度に基づいて、前記車両(1)の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量を示す尺度を決定する、
ように構成された車両制御ユニット(15)。
【請求項12】
前記車両(1)の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量を示す信号を提供する通信インターフェイスを更に備えた、
請求項11に記載の車両制御ユニット(15)。
【請求項13】
コンピュータで実行されるとき、請求項11又は12に記載の前記車両制御ユニット(15)を制御して、請求項1~10のいずれか1つに記載の方法を実行するように構成されたコンピュータプログラム。
【請求項14】
車両(1)を減速するように制御可能な少なくとも第1の車両減速サブシステム(3;5;13)と、
請求項11又は12に記載の前記車両制御ユニット(15)と、
を備えた車両(1)。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの車両減速サブシステムを備えた車両を操作する方法、車両制御ユニット、及び車両に関する。
【0002】
本発明は、トラック、バス及び建設機械などの大型車両に適用することができる。トラックについて本発明を説明するが、本発明は、この特定車両に限定されず、バスなどの他の車両、又はホイールローダ若しくは掘削機などの作業機械などにも使用することができる。特に、車両はトレーラを含んでいてもよく、少なくとも1つの車両減速サブシステムがトレーラに備えられていてもよい。
【背景技術】
【0003】
車両が丘陵地帯において自律的又は人間のドライバによって操作される場合、状況に適した速度を選択して、ブレーキの過熱(ブレーキフェードとしても知られている)を回避することは重要である。
【0004】
しかしながら、トラックなどの大型車両では、ブレーキ動作を実現するために組み合わせることができる、本質的に利用可能ないくつかの車両減速サブシステムがあるため、適切な降坂速度を選択する課題は自明ではない。
【0005】
米国特許出願公開第2006/0069488号明細書は、電気的な駆動システム及び機械的なブレーキシステムを有する推進機械においてエネルギー(power)を消費する方法を開示している。機械の傾斜が決定される。機械の速度が決定される。決定された傾斜及び速度に基づいて減速要求が決定される。減速要求の第1の部分は、電気的な駆動システムによって満たされるように割り当てられ、第1の部分は、電気的な駆動システムの減速容量以下である。減速要求の第2の部分は、減速要求が電気的な駆動システムの減速容量より大きければ、機械的なブレーキシステムによって満たされるように割り当てられる。
【0006】
しかしながら、少なくとも1つの車両減速サブシステムを備えた車両の改善された制御を提供することが望ましい。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】米国特許出願公開第2006/0069488号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
従って、本発明の目的は、少なくとも1つの車両減速サブシステムを備えた車両の改善された制御を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、この目的は、車両を減速するように制御可能な少なくとも第1の車両減速サブシステムと、少なくとも第1の車両減速サブシステムに接続された処理回路と、を備えた車両を操作する方法によって達成される。この方法は、処理回路によって、第1の車両減速サブシステムによる現在のエネルギー蓄積量(accumulation)を示す少なくとも1つの値を第1の車両減速サブシステムから取得するステップと、処理回路によって、取得された第1の車両減速サブシステムによる現在のエネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値、第1の車両減速サブシステムによる減速エネルギー蓄積量の予め定義されたモデル、及び第1の車両減速サブシステムによる最大許容エネルギー蓄積量を示す予め定義された限度に基づいて、車両の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量(capacity)を示す尺度(measure)を決定するステップと、を備えている。
【0010】
第1の車両減速サブシステムによる現在のエネルギー蓄積量を示す上記の少なくとも1つの値は、車両減速サブシステムのタイプに依存する特性の少なくとも1つであってもよい。
【0011】
摩擦ブレーキサブシステムの場合、エネルギー蓄積量は、例えば、ブレーキコンポーネントの温度、サービスブレーキの過熱度合いを示す割合、現在の設定での残りのブレーキ時間容量などの1つ以上によって示すことができる。電気推進システムが減速モードにある場合、エネルギー蓄積量は、例えば、バッテリの充電状態、電動モータの温度などの1つ以上によって示すことができる。内燃機関(ICE)が減速モードにある場合、エネルギー蓄積量は、例えば、温度、エンジン回転速度などの1つ以上によって示すことができる。
【0012】
少なくとも第1の車両減速サブシステムによる減速エネルギー蓄積量の上記の予め定義されたモデルは、特定の車両減速サブシステムの分析的モデル又は経験的モデルであってもよい。
【0013】
摩擦ブレーキサブシステムの場合、このモデルは、例えば、摩擦ブレーキサブシステムのコンポーネントにおける温度上昇とエネルギー蓄積量との間の関連を提供してもよい。電気推進システムが減速モードにある場合、このモデルは、例えば、バッテリにダメージを与えることなくバッテリが受け入ることができる残りの充電量、並びに考えられる充電率を考慮に入れてもよい。内燃機関が減速モードにある場合、このモデルは、例えば、内燃機関における温度上昇とエネルギー蓄積量との間の関連を提供してもよい。
【0014】
上記の予め定義された限度は、車両減速サブシステムによるダメージ及び/又は減速容量の喪失を回避するように選択することができる。この限度は、例えば、シミュレーション及び/又は実験に基づいて決定することができる。
【0015】
本発明は、車両の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量が車両の減速サブシステムの能力(capability)を伝達するのに非常に有用な特性であり、特に、丘陵地帯において車両の安全な操作を提供するという認識に基づいている。例えば、車両の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量に関する情報は、車両に対する自律走行アプリケーションの実装を容易にすることができる。特に、異なるセットの車両減速サブシステムを持つ異なる車両について、自律走行アプリケーションの適用が最小又は不要とすることができる。これによって、自律車両の開発時間を短縮することができる。本明細書の説明において、車両の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量は、車両組み合わせ減速エネルギー容量(VCREC)と呼ばれることがある。
【0016】
実施形態によれば、この方法は、少なくとも第1の車両減速サブシステムによる減速エネルギーの蓄積なしに、車両によって提供される持続可能な減速能力(retardation power)を示す尺度を決定するステップを更に備えていてもよい。
【0017】
いくつかのモーションアクチュエータは、常にエネルギーを消費する。ブレーキパッドからの放熱は、この一例である。また、車両は、例えば、空気抵抗及び転がり抵抗などの外力の影響を受ける。これらの2つの種類の持続可能なエネルギー消費は、減速エネルギーの蓄積なしに、車両によって提供される持続可能な減速能力で表すことができる。本明細書の説明において、この能力は、車両組み合わせ減速閾値能力(VCRTP)と呼ばれることがある。
【0018】
車両の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量に加えて、持続可能な減速能力を示す上記の尺度へのアクセスは、車両のより正確な制御を提供し、潜在的に車両の高速な走行を可能にする一方、丘陵地帯における安全な操作を依然として保証することができる。
【0019】
実施形態によれば、車両は、車両を減速するように制御可能な第2の車両減速サブシステムを更に備え、処理回路が、第2の車両減速サブシステムに更に接続されていてもよい。この方法は、処理回路によって、第2の車両減速サブシステムによる現在のエネルギー容量を示す少なくとも1つの値を第2の車両減速サブシステムから取得するステップを更に備えていてもよい。車両の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量を示す尺度は、取得された第2の車両減速サブシステムによる現在の減速エネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値、第2の車両減速サブシステムによる減速エネルギー蓄積量の予め定義されたモデル、及び第2の車両減速サブシステムによる最大許容エネルギー蓄積量を示す予め定義された限度に基づいて更に決定することができる。
【0020】
第1及び第2の車両減速サブシステムは、例えば、摩擦ブレーキサブシステム、減速モードにある電気推進システム、及び減速モードにある内燃機関(ICE)などの異なるものなど、異なるタイプの車両減速サブシステムであってもよい。
【0021】
実施形態によれば、この方法は、処理回路によって、車両の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量を示す信号を提供するステップを更に備えていてもよい。この信号は、例えば、車両の自律走行アプリケーション、又はドライバ支援モジュールに提供されてもよい。この信号は、例えば、車両の現在の許容最高速度を決定するために使用することができる。
【0022】
様々な実施形態によれば、車両は、少なくとも標高情報を含んだ将来の車両経路を推定する経路サブシステムを更に備え、経路サブシステムが、処理回路に接続されていてもよい。この方法は、処理回路によって、将来の車両経路の標高情報を示す信号を経路サブシステムから取得するステップと、車両の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量を示す尺度、将来の車両経路の標高情報を示す信号、及び車両の重量に基づいて、車両の最高許容速度を決定するステップと、を更に備えていてもよい。上記の最高許容速度は、例えば、前方の経路の地形に依存して時間とともに変化する、現在許容される最高速度であってもよい。処理回路は、例えば、前方の道路区間について時変又は一定の予測最高許容速度を決定してもよい。
【0023】
有利なことには、この方法は、少なくとも1つの周囲条件パラメータ値を取得するステップを更に備えていてもよい。車両の最高許容速度は、少なくとも1つの周囲条件パラメータ値に基づいて更に決定することができる。周囲条件パラメータ値の例には、周囲温度、風速、風向、推定道路摩擦などを含んでいてもよい。
【0024】
また、この方法は、少なくとも第1の車両減速サブシステムによる減速エネルギーの蓄積なしに、車両によって提供される持続可能な減速能力を示す尺度を決定するステップを更に備えていてもよい。車両の最高許容速度は、持続可能な減速能力を示す尺度に基づいて更に決定することができる。
【0025】
実施形態において、この方法は、車両の最高許容速度を示す信号を提供するステップを更に備えていてもよい。この信号は、例えば、車両の自律走行アプリケーション、又はドライバ支援モジュールに提供することができる。原動機(内燃機関及び/若しくは電気推進システム)、並びに/又は少なくとも1つの車両減速サブシステムの操作などの車両の操作は、この信号に基づいて制御することができる。
【0026】
実施形態によれば、この方法は、最高許容速度より低い速度で走行するように車両を制御するステップを更に備えていてもよい。
【0027】
実施形態において、少なくとも第1の車両減速サブシステムは、摩擦ブレーキサブシステム、内燃機関、リターダ、及び電気推進システムの少なくとも1つを含んでいてもよい。
【0028】
本発明の第2の態様によれば、上記の目的は、請求項11によって定義される車両制御ユニットによって達成される。
【0029】
実施形態において、車両制御ユニットは、車両の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量を示す信号を提供する、通信インターフェースを更に備えていてもよい。
【0030】
本発明の第3の態様によれば、上記の目的は、請求項13によって定義されるコンピュータプログラムによって達成される。
【0031】
また、本発明の実施形態による車両制御ユニットは、車両を減速するように制御可能な少なくとも第1の車両減速サブシステムを更に備えた車両に含まれていてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0032】
添付の図面を参照して、例として挙げられる本発明の実施形態について以下詳細に説明する。
【0033】
【
図1】少なくとも第1の車両減速サブシステムを含んだトラックの形態をとる、本発明の実施形態による車両の側面図である。
【
図2】
図1の車両の簡略化された概略ブロック図である。
【
図3】本発明の第1の例示的な実施形態による方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図4】本発明の第2の例示的な実施形態による方法を概略的に示すフローチャートである。
【
図5】本発明の第3の例示的な実施形態による方法を概略的に示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0034】
図1は、ここではトラック1の形態をとる、本発明の例示的な実施形態による車両を概略的に示しており、内燃機関装置3、電気推進システム5、車輪11、摩擦ブレーキサブシステム13、及び車両1の動作を制御する車両制御ユニット15を含んでいる。電気推進システム5は、電動モータ7、及びバッテリモジュール9を備えている。
【0035】
図1の車両1は、3つの異なる車両減速サブシステム、即ち、摩擦ブレーキサブシステム13、減速モードにあるときの内燃機関装置3、及び減速モードにあるときの電気推進システム5を含んでいる。車両1は、例えば、フライホイールなどの機械式エネルギー貯蔵装置、及び/又は油圧アキュムレータなどの油圧式エネルギー貯蔵装置など、さらなる車両減速サブシステムを備えていてもよいことを理解されたい。
【0036】
図2は、
図1の車両の簡略化された概略ブロック図である。
図2を参照すると、車両制御ユニット15は、減速容量決定ブロック19と、モーション計画ブロック21と、車両制御ブロック23と、を備えている。
図2で概略的に示すように、減速容量決定ブロック19は、内燃機関3、電気推進システム5、摩擦ブレーキサブシステム13、及び参照符号18によって集合的に示される車両センサに接続されている。そのような車両センサ18は、例えば、周囲温度、風速、路面摩擦を計測するセンサを含んでいてもよい。モーション計画ブロック21は、経路サブシステム17に接続されており、車両制御ブロック23は、内燃機関装置3、電気推進システム5、及び摩擦ブレーキサブシステム13に接続されている。
【0037】
車両制御ユニット15の異なるブロック間のインターフェースは、例えば、ソフトウエアインターフェース(いわゆるAPI)、又はハードウエアインターフェース(例えば、イーサネットバス、又はCANバス)であってもよい。換言すると、このインターフェースは、ECU間のインターフェースの一部、又はソフトウエアコンポーネント間のインターフェースのいずれでもある。
【0038】
本発明による方法の第1の例示的な実施形態について、
図3のフローチャートを参照するとともに、
図1及び
図2を引き続いて参照して説明する。
【0039】
最初のステップS10において、減速容量決定ブロック19は、車両1の車両減速サブシステムのそれぞれによる現在のエネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値を取得する。従って、
図1及び
図2に概説される例示的な実施形態では、減速容量決定ブロック19は、内燃機関装置3、電気推進システム5、及び摩擦ブレーキサブシステム13のそれぞれからそのような値を取得する。例えば、減速容量決定ブロック19は、内燃機関装置3から1つ以上の温度、電気推進システム5からバッテリ9の充電状態、及び摩擦ブレーキサブシステム13から1つ以上の温度を取得することができる。また、減速容量決定ブロック19は、車両センサ18から少なくとも1つの周囲条件パラメータ値を取得することができる。
【0040】
取得されたパラメータ値に基づいて、減速容量決定ブロック19は、ステップS11において、車両の減速に現在利用可能な減速エネルギー容量を示す尺度(VCREC)、及び車両減速サブシステムによる減速エネルギーの蓄積なしに、車両1によって提供される持続可能な減速能力を示す尺度(VCRTP)を決定する。
【0041】
VCRECの決定はさらに、それぞれの車両減速サブシステムによる減速エネルギー蓄積量の予め定義されたモデル、及びそれぞれの車両減速サブシステムによる最高許容エネルギー蓄積量を示す予め定義された限度に基づいている。
【0042】
例えば、CVRECは、摩擦ブレーキが過熱(即ち、ブレーキ能力が本質的に低下又はダメージを受ける)し始める前に吸収できる最大ブレーキ熱エネルギー、ダメージ/性能を本質的に低下させるリスクが生じる前に、すべての原動機(例えば、内燃機関又は電動モータ)が吸収できる最大ブレーキ熱エネルギー、バッテリパック又は他の電気的なエネルギー貯蔵装置に貯蔵できる最大ブレーキ電気エネルギー、ダメージ又は性能を本質的に低下させるリスクが生じる前に、フライホイールなどの機械的なエネルギー貯蔵装置に貯蔵できる最大ブレーキ機械エネルギー、及び油圧エネルギー貯蔵装置(油圧アキュムレータなど)に貯蔵できる最大ブレーキ油圧エネルギーの合計として算出することができる。
【0043】
例えば、VCRTPは、速度の関数として求めることができる。特定の速度について、VCRTPは、上記の速度で算出された、車両の組み合わせの空気抵抗によるブレーキ能力、上記の速度で算出された、車両の転がり抵抗によるブレーキ能力、上記の速度で算出された、すべての摩擦ブレーキからの放熱能力、上記の速度で算出された、ブレーキにも使用されるすべての原動機からの放熱能力の合計として算出することができる。
【0044】
例えば、空気抵抗及び転がり抵抗は、VCRTPの算出の一部である必要はなく、そのような要因は別の用語として考慮され得ることに留意されたい。
【0045】
次のステップS12において、減速容量決定ブロック19は、VCREC及びVCRTPを示す信号を提供する。実施形態では、この信号は、車両制御ユニット15のモーション計画ブロック21に提供することができる。ステップS12の後、この方法は、ステップS10へと戻ることができる。
【0046】
次に、本発明による方法の第2の例示的な実施形態について、
図4のフローチャートを参照するとともに、
図1及び
図2を引き続いて参照して説明する。
【0047】
最初のステップ20において、車両1の車両減速サブシステムのそれぞれによる現在のエネルギー蓄積量を示す少なくとも1つの値、及び車両センサ18からの少なくとも1つの周囲条件パラメータ値は、
図3のフローチャートのステップS10で説明したように取得される。また、将来の車両経路の標高情報を示す信号は、
図2の車両制御ユニット15のモーション計画ブロック21によって、経路サブシステム17から取得される。
【0048】
次のステップS21において、VCREC及びVCRTPは、
図3のフローチャートのステップS11で説明したように取得される。また、最高許容車速V
maxは、例えば、
図2のモーション計画ブロック21によって決定される。
【0049】
1つの例示的な実装によれば、速度プロファイルは、次の関係に基づいて安全であると見做されることを検証することができる。
【数1】
【0050】
ここで、mは車両組み合わせ重量、axは所要の前後方向減速レベル、gは重力定数、δslopeは、路面勾配(上りが正)、vxは所要の前後方向速度、積分変数sは走行距離、sendは任意の距離パラメータである。この関係は、sendのいくつかの異なる値を有利に検証することができる。1つの重要な候補として、sendを近づく勾配の長さと等しく設定することができる。そして、検証された安全速度プロファイルvx(s)は、車両1の前方の経路に沿った異なる地点で最高許容速度を定義する。
【0051】
他の例示的な実装によれば、速度プロファイルは、次の関係に基づいて安全であると見做されることを検証することができる。
【数2】
【0052】
ここで、Faは空気抵抗力であり、Frは転がり抵抗力である。この例では、VCRTPは、空気抵抗及び転がり抵抗を考慮せずに決定されている。
【0053】
次のステップS22において、検証された安全速度プロファイルを示す信号が、モーション計画ブロック21によって提供される。実施形態では、この信号は、車両制御ユニット15の車両制御ブロック23に提供することができる。ステップS22の後、この方法はステップS20へと戻ることができる。
【0054】
次に、本発明による方法の第3の例示的な実施形態について、
図5のフローチャートを参照するとともに、
図1及び
図2を引き続いて参照して説明する。
【0055】
最初のステップS30において、値が
図4のフローチャートのステップS20で説明したように取得される。
【0056】
次のステップS31において、車両1の前方の経路に沿った異なる地点における最高許容速度を定義する、検証された安全速度プロファイルv
x(s)が、
図4のフローチャートのステップS21で説明したように決定される。
【0057】
次のステップS32において、内燃機関装置3、電気推進システム5、及び摩擦ブレーキサブシステム13などの様々な車両サブシステムが、ステップ31において決定された検証された安全速度プロファイルが達成されるように、車両制御ユニット15の車両制御ブロック23によって制御される。
【0058】
本発明は、上述及び図示の実施形態に限定されないことを理解されたい。むしろ、当業者であれば、添付の特許請求の範囲の範囲内で、多くの変更及び修正がなされ得ることを理解するであろう。
【国際調査報告】