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特表2022-511302GPR119リガンドを有効成分として含む非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】GPR119リガンドを有効成分として含む非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/506 20060101AFI20220124BHJP
   A61P 1/16 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 29/00 20060101ALI20220124BHJP
   C07D 413/12 20060101ALI20220124BHJP
   A61K 31/497 20060101ALI20220124BHJP
   A61K 31/444 20060101ALI20220124BHJP
   A61K 31/454 20060101ALI20220124BHJP
   A61K 31/4545 20060101ALI20220124BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20220124BHJP
   A23K 20/132 20160101ALI20220124BHJP
   A23K 20/111 20160101ALI20220124BHJP
   A23K 20/121 20160101ALI20220124BHJP
【FI】
A61K31/506
A61P1/16
A61P29/00
C07D413/12
A61K31/497
A61K31/444
A61K31/454
A61K31/4545
A23L33/10
A23K20/132
A23K20/111
A23K20/121
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021513203
(86)(22)【出願日】2019-09-11
(85)【翻訳文提出日】2021-03-08
(86)【国際出願番号】 KR2019011839
(87)【国際公開番号】W WO2020055170
(87)【国際公開日】2020-03-19
(31)【優先権主張番号】10-2018-0109219
(32)【優先日】2018-09-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TWEEN
2.witepsol
(71)【出願人】
【識別番号】513131590
【氏名又は名称】ドン-ア エスティ カンパニー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110001999
【氏名又は名称】特許業務法人はなぶさ特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】キム、ミーキョン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ボラム
(72)【発明者】
【氏名】パーク、ハンス
(72)【発明者】
【氏名】リー、スンホ
(72)【発明者】
【氏名】チェ、ユナ
【テーマコード(参考)】
2B150
4B018
4C063
4C086
【Fターム(参考)】
2B150AA01
2B150AB10
2B150CE01
2B150CE16
2B150CE26
2B150CJ07
2B150CJ08
2B150DB01
2B150DB10
2B150DB12
2B150DB16
2B150DB21
2B150DC13
2B150DH35
4B018MD18
4B018ME14
4C063AA01
4C063BB07
4C063CC58
4C063DD29
4C063EE01
4C086AA01
4C086AA02
4C086AA03
4C086BC17
4C086BC21
4C086BC42
4C086BC48
4C086GA07
4C086GA09
4C086GA10
4C086MA01
4C086MA04
4C086NA14
4C086ZA75
4C086ZB11
(57)【要約】
本発明は、GPR119(G protein coupled receptor 119)リガンドを有効成分として含む非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物に関し、本発明に係る薬学的組成物は、脂質代謝を改善し、肝組織中の脂肪蓄積を減らし、肝組織の炎症と線維化を通じた組織学的損傷を防ぐ優れた効果を示すため、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用途として有用に使用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物を有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【化1】
(式中、Aはオキサジアゾール(oxadiazole)、ジヒドロオキサゾール(dihydrooxazole)、チアゾール(thiazole)またはチアジアゾール(thiadiazole)であり、前記Aは独立に非置換されるかまたはハロゲン、C-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基およびC-Cアルコール基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されてもよく、前記アルキル基またはアルコール基は独立に非置換されるかまたはハロゲンまたはC-Cアルコキシ基で置換されてもよく、
Bはピリジン(pyridine)、ピリミジン(pyrimidine)、ピラジン(pyrazine)またはオキサジアゾール(oxadiazole)であり、前記Bは独立に非置換されるかまたはハロゲン、C-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C-Cアルコール基、C-Cアルコキシ基およびオキサジアゾール基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されてもよく、前記C1-C6直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C-Cアルコール基、C-Cアルコキシ基またはオキサジアゾール基は独立に非置換されるかまたはハロゲン、C-Cアルキル基またはC-Cアルコキシ基で置換されてもよく、
Xは独立にF、Cl、BrまたはIである。)
【請求項2】
前記化学式1において、Aは




または
であり、
~R、RおよびRは各々独立に水素、ハロゲン、C-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基およびC-Cアルコール基からなる群より選択される1種以上の置換基であり、アルキル基またはアルコール基は独立に非置換されるかまたはハロゲンまたはC-Cアルコキシ基で置換されてもよい、請求項1に記載の非アルコール性脂肪肝疾
患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項3】
前記化学式1において、Bは



または
であり、
前記R~R11は水素、ハロゲン、C-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C-Cアルコール基、C-Cアルコキシ基およびオキサジアゾール基からなる群より選択された1種以上の置換基であり、前記アルキル基、アルコール基、アルコキシ基またはオキサジアゾール基は独立に非置換されるかまたはハロゲン、C-Cアルキル基またはC-Cアルコキシ基で置換されてもよい、請求項1に記載の非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項4】
前記化学式1において、XはFである、請求項1に記載の非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項5】
前記化学式1において、AはC-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基で置換されたオキサジアゾール基であり、BはC-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基で置換されたピリミジン基であり、XはFである、請求項1に記載の非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項6】
前記化学式1で表される化合物は、3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾールである、請求項1に記載の非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項7】
前記非アルコール性脂肪肝疾患は、単純脂肪肝、非アルコール性脂肪性肝炎、肝線維化および肝硬変からなる群より選択される、請求項1に記載の非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項8】
前記薬学的組成物は、肝組織内の中性脂肪沈着を抑制する、請求項1に記載の非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項9】
前記薬学的組成物は、肝組織内の炎症細胞浸潤を抑制する、請求項1に記載の非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項10】
前記薬学的組成物は、肝組織の線維化を抑制する、請求項1に記載の非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物。
【請求項11】
治療学的に有効な量の下記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物を治療が必要な対象体に投与するステップを含む、非アルコール性脂肪肝疾患を予防または治療する方法。
【化2】
(式中、A、BおよびXは請求項1に記載のものと同様である。)
【請求項12】
下記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物を有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または改善用の食品組成物。
【化3】
(式中、A、BおよびXは請求項1に記載のものと同様である。)
【請求項13】
下記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物を含む食品組成物を改善が必要な対象体に投与するステップを含む、非アルコール性脂肪肝疾患を予防または改善する方法。
【化4】
(式中、A、BおよびXは請求項1に記載のものと同様である。)
【請求項14】
下記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物を有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または改善用の飼料組成物。
【化5】
(式中、A、BおよびXは請求項1に記載のものと同様である。)
【請求項15】
非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療のための下記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物の使用。
【化6】
(式中、A、BおよびXは請求項1に記載のものと同様である。)
【請求項16】
非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療のための薬学的製剤を製造するための下記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物の使用。
【化7】
(式中、A、BおよびXは請求項1に記載のものと同様である。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、GPR119(G protein coupled receptor 119)リガンドを有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物、食品組成物および飼料組成物;非アルコール性脂肪肝疾患の治療方法および改善方法;または非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用途に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪肝は、肝細胞に中性脂肪が過多に蓄積される病的状態であって、医学的には中性脂肪が肝重さの5%以上を占める状態に定義される。脂肪肝は、過度なアルコール摂取に起因したか否かにより、アルコール性と非アルコール性の脂肪肝に分類される。非アルコール性脂肪肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease;NAFLD)は、非アルコール性脂肪肝から脂肪性肝炎、肝硬変までの全体疾患の様相を包括する疾患群である。肝内脂肪沈着だけがあり、肝細胞損傷および線維化の所見がなく、インスリン抵抗性などの原因により肝組織に脂肪沈着だけが高くなっている単純な非アルコール性脂肪肝(non-alcoholic fatty liver)は、酸化的ストレスなどに応じた炎症反応による肝細胞損傷と、時には線維化を伴う非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis;NASH)に進行し、適切な治療を受けないと、不可逆的な肝損傷を伴う肝硬変症(liver cirrhosis)に進行する。
【0003】
最近、全世界的に非アルコール性脂肪肝疾患の有病率も急激に増加する傾向であり、単純脂肪肝の有病率は6.3~33%に推定され、炎症を伴う非アルコール性脂肪性肝炎は3~5%と報告された(Hepatology、2012(55):2005-2023)。単純脂肪肝の場合は、深刻な肝疾患への進行が非常に遅く、肝疾患と関連した死亡率を高めることはないが、脂肪性肝炎の場合は、肝硬変および肝臓癌に進行しうるし、肝疾患と関連した死亡率および全体的な死亡率を高める。また、単純脂肪肝は一般的な生活習慣の改善により3~5%の体重減量をする場合に容易に改善されたりもするが、炎症減少のためには最小10%以上の体重減少を勧告しており、このような体重減少が肝内炎症および線維化の改善を誘導できるかどうかは明らかではない(Korean J Gastroenterol、2012(60):64-66)。
【0004】
非アルコール性脂肪性肝炎を対象に開発された治療剤は未だに存在せず、疾病が悪化すれば肝移植を受けるが、米国の統計資料によれば、2013年、現在の肝移植の原因疾患として、C型肝炎に続いて非アルコール性脂肪性肝炎が二番目に多い状況である。また、2004年から10年間、肝移植増加率において、C型肝炎は14%であるのに対し、非アルコール性脂肪性肝炎は170%に急激に増加し、2020年以後にはC型肝炎を追い抜いて肝移植の一番目の原因疾患になると予想されており、非アルコール性脂肪性肝炎をはじめとする非アルコール性脂肪肝疾患の効果的な治療剤の開発が至急な状況である。
【0005】
現在、非アルコール性脂肪性肝炎の薬物療法としては、非アルコール性脂肪性肝炎患者を対象に小規模の臨床試験を通じて脂肪蓄積と炎症改善の所見が確認されたインスリン抵抗性改善剤(例えば、ピオグリタゾン)や抗酸化剤(例えば、ビタミンE)を服用する方法があるが、炎症および線維化を改善する効果が明らかではなく、長期服用に対する安全性への懸念により積極的な薬物療法を通じた治療が不可能な状況である。
【0006】
GPR119(G protein-coupled receptor 119)は
、小腸のL細胞、K細胞に分布し、中性脂肪の代謝物(2-monoacylglycerol)などにより活性化されれば、GLP-1(glucagon-like peptide-1)やGIP(Glucose-dependent insulinotropic polypeptide)のようなインクレチンホルモン分泌を増加させる。GPR119は、膵臓β細胞とα細胞にも分布し、ブドウ糖依存的にインスリン分泌とグルカゴン分泌を調節して血糖を維持することに寄与する。また、ヒトのマクロファージ細胞株にGPR119を過発現させると、GLP-1受容体の発現を増加させてコレステロールを細胞外に放出する輸送体であるABCA1(ATP-binding cassette protein A1)を高め、それにより、ApoA1を媒介したコレステロールの回収を増加させて脂質代謝を改善して血中炎症性サイトカイン濃度を下げることが報告された(J Lipid Res、2014(55):681-697)。
【0007】
しかし、GPR119リガンドが直接的に炎症反応を抑制して非アルコール性脂肪肝疾患の肝細胞損傷の核心になる炎症反応を抑制するかについて未だに報告されたことはなく、非アルコール性脂肪肝疾患の誘発後にGPR119リガンドによって炎症および線維化が改善できるかについても報告されたことがない。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、GPR119リガンドを有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、下記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物を有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物を提供する。
【化1】
【0010】
本発明に係る前記薬学的組成物は、肝組織内の中性脂肪沈着、炎症および線維化を顕著に抑制して、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用途として有用に使用できる。
【0011】
前記化学式1において、
Aはオキサジアゾール(oxadiazole)、ジヒドロオキサゾール(dihydrooxazole)、チアゾール(thiazole)またはチアジアゾール(thiadiazole)であり、前記Aは独立に非置換されるかまたはハロゲン、C-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基およびC-Cアルコール基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されてもよく、前記アルキル基またはアルコール基は独立に非置換されるかまたはハロゲンまたはC-Cアルコキシ基で置換されてもよく、
Bはピリジン(pyridine)、ピリミジン(pyrimidine)、ピラジン(pyrazine)またはオキサジアゾール(oxadiazole)であり、前記Bは独立に非置換されるかまたはハロゲン、C-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C-Cアルコール基、C-Cアルコキシ基およびオキサジアゾール基からなる群より選択される1種以上の置換基であり、前記C-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C-Cアルコール基、C-Cアルコキシ基またはオキサジアゾール基は独立に非置換されるかまたはハロゲン、C-Cアルキル基またはC-Cアルコキシ基で置換されてもよく、
Xは各々独立にF、Cl、BrまたはIであってもよいが、これらに制限されるものではない。
【0012】
本発明の一実現例によれば、前記化学式1において、
前記Aは



または
であり、
~R、RおよびRは各々独立に水素、ハロゲン、C-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基およびC-Cアルコール基からなる群より選択される1種以上の置換基であり、アルキル基またはアルコール基は独立に非置換されるかまたはハロゲンまたはC-Cアルコキシ基で置換されてもよい。
【0013】
本発明の他の実現例によれば、前記化学式1において、
Bは



または
であり、
前記R~R11は各々独立に水素、ハロゲン、C-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基、C-Cアルコール基、C-Cアルコキシ基およびオキサジアゾール基からなる群より選択された1種以上の置換基で置換されてもよく、前記アルキル基、アルコール基、アルコキシ基またはオキサジアゾール基は独立に非置換されるかまたはハロゲン、C-Cアルキル基またはC-Cアルコキシ基で置換されてもよい。
【0014】
本発明の一実施例において、前記化学式1において、AはC-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基で置換されたオキサジアゾール基であり、BはC-C直鎖もしくは分枝鎖アルキル基で置換されたピリミジン基であり、XはFであってもよい。
【0015】
本発明において、用語「ハロゲン」は、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素を意味する。
【0016】
本発明において、用語「アルキル」は、特に言及しない限り、直鎖状もしくは分枝状の炭化水素残基を意味する。前記C-Cアルキル基の例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などを含む。
【0017】
本発明において、用語「アルコキシ基」は、特に言及しない限り、上記のように定義されたアルキル基を有するアルキル-酸素ラジカル基を含む。前記C-Cアルコキシ基の例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ペントキシ基などを含む。
【0018】
本発明において、用語「複素環」または「複素環式」は、特に言及しない限り、N、OおよびSからなる群より選択される1~3個のヘテロ原子を含む5~13員のヘテロ芳香族または非芳香族化合物を意味する。
【0019】
本発明において、前記化学式1で表される化合物は、具体的には、下記化合物からなる群より選択される化合物であってもよい。
【0020】
2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール、
(R)-2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-4-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾール、
(S)-2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-4-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾール、
(S)-2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾール、
(R)-2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾール、
2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロオキサゾール、
(R)-(2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-5-イル)メタノール、
(S)-(2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-4,5-ジヒドロオキサゾール-5-イル)メタノール、
(R)-3-(2-(4-(3-(3,5-ジフルオロ-4-(5-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)フェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)ピリミジン-5-イル)-5-イソブチル-1,2,4-オキサジアゾール、
(R)-5-(4-(3-(3,5-ジフルオロ-4-(4-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)フェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)-3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
(S)-5-(4-(3-(3,5-ジフルオロ-4-(5-メチル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)フェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)-3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
5-(4-(3-(4-(5,5-ジメチル-4,5-ジヒドロオキサゾール-2-イル)-3,5-ジフルオロフェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)-3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-プロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)
プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
5-(tert-ブチル)-3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール、
(3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メタノール、
2-(3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)エタン-1-オール、
(S)-1-(3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)プロパン-1-オール、
(R)-1-(3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)プロパン-2-オール、
(S)-1-(3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)プロパン-2-オール、
2-(3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)-2-メチルプロパン-1-オール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-プロピルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-ペンチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-メトキシピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-イソプロポキシピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(4-(3-(1-(5-クロロピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(4-(3-(1-(5-ブロモピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(5-イソブチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(5-イソブチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-エチル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(5-イソブチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
5-(sec-ブチル)-3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(5-イソブチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(5-イソブチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-(メトキシメチル)-1,2,4-オキサジアゾール、
(S)-1-(3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(5-イソブチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)プロパン-1-オール、
2-(3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(5-イソブチル-1,2,4-オキサジアゾール-3-イル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)-2-メチルプロパン-1-オール、
3-(4-(3-(1-(5-クロロピラジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-メチル-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
(3-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-1,2,4-オキサジアゾール-5-イル)メタノール、
2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール、
2-エチル-5-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-1,3,4-オキサジアゾール、
2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-イソプロピル-1,3,4-オキサジアゾール、
5-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-N-イソプロピル-1,3,4-オキサジアゾール-2-アミン、
2-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール、
2-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-エチル-1,3,4-オキサジアゾール、
2-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,3,4-オキサジアゾール、
2-(4-(3-(1-(5-クロロピラジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール、
2-(4-(3-(1-(5-クロロピラジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-エチル-1,3,4-オキサジアゾール、
2-(4-(3-(1-(5-クロロピラジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-イソプロピル-1,3,4-オキサジアゾール、
5-(4-(3-(3,5-ジフルオロ-4-(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)-3-プロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
5-(4-(3-(3,5-ジフルオロ-4-(5-エチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)-3-プロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
5-(4-(3-(3,5-ジフルオロ-4-(5-イソプロピル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)-3-プロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
5-(4-(3-(3,5-ジフルオロ-4-(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)-3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
5-(4-(3-(4-(5-エチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)-3,5-ジフルオロフェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)-3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
5-(4-(3-(3,5-ジフルオロ-4-(5-イソプロピル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)-3-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
5-(4-(3-(3,5-ジフルオロ-4-(5-メチル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)-3-(2,2,2-トリフルオロエチル)-1,2,4-オキサジアゾール、
3-(4-(3-(3,5-ジフルオロ-4-(5-イソプロピル-1,3,4-オキサジアゾール-2-イル)フェノキシ)プロピル)ピペリジン-1-イル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール、
2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-イソプロピル-1,3,4-チアジアゾール、
2-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-プロピルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,3,4-チアジアゾール、
2-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-ペンチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,3,4-チアジアゾール、
2-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-フルオロピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,3,4-チアジアゾール、
2-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(トリフルオロメチル)ピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1
,3,4-チアジアゾール、
2-(2,6-ジフルオロ-4-(3-(1-(5-(トリフルオロメチル)ピリジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)フェニル)-5-イソプロピル-1,3,4-チアジアゾール、および
4-エチル-2-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)チアゾール。
【0021】
本発明の実現例において、本発明の前記化学式1で表される化合物は、具体的には、3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾールであってもよい。
【0022】
本発明において、前記化学式1で表される化合物の薬剤学的に許容可能な塩の非制限的な例としては、塩酸、臭素酸、リン酸または硫酸のような無機酸との塩;酢酸、トリフルオロ酢酸、クエン酸、マレイン酸、シュウ酸、コハク酸、安息香酸、酒石酸、フマル酸、マンデル酸、アスコルビン酸またはリンゴ酸のような有機カルボン酸や、メタンスルホン酸またはp-トルエンスルホン酸のようなスルホン酸との塩;ナトリウム、カリウムまたはリチウムのようなアルカリ金属との塩;あるいはその他の薬剤学的に許容可能な塩を形成できるものとして知られた様々な酸との塩などを含むことができる。
【0023】
本発明の具体的な一実施例においては、特殊飼料の供給により非アルコール性脂肪肝疾患が誘導されたob/obマウスモデルにおいて、組織学的検査、血中ALTおよびAST濃度の測定、炎症および線維化関連遺伝子およびタンパク質発現量の測定実験などを通じて、前記化学式1で表される化合物を疾患誘導過程で投与することにより、肝組織の損傷、肝組織内の中性脂肪沈着、炎症細胞浸潤および線維化が顕著に抑制されることを確認した(実施例1)。
【0024】
本発明の具体的な一実施例においては、炎症反応抑制メカニズムによりヒト単球細胞の分化および分化したマクロファージの炎症因子による活性化能を、化学式1で表される化合物が濃度依存的に抑制することを初めて確認した(実施例2)。
【0025】
本発明の具体的な一実施例においては、特殊飼料の供給により非アルコール性脂肪肝疾患が誘導されたC57BL6マウスモデルにおいて、前記化学式1で表される化合物を疾患誘導後に投与することにより、肝組織の損傷、肝組織内の中性脂肪沈着、炎症細胞浸潤および線維化が顕著に改善されることを確認した(実施例3)。
【0026】
本発明に係る非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物は、一般的な医薬品製剤の形態で使用できる。医薬品製剤は投与時に経口および非経口の様々な剤形で投与してもよく、剤形は使用方法に応じて多様に決定できる。
【0027】
経口および非経口の様々な剤形に製剤化する場合には、一般的に用いられる充填剤、希釈剤、増量剤、結合剤、湿潤剤、崩壊剤、界面活性剤などの賦形剤を用いて製造することができる。
【0028】
経口投与のための固形製剤としては、錠剤、丸剤、散剤、顆粒剤、カプセル剤などが含まれ、このような固形製剤は、前記薬学的組成物に少なくとも一つ以上の賦形剤、例えば、デンプン、炭酸カルシウム(calcium carbonate)、スクロース(sucrose)またはラクトース(lactose)、ゼラチンなどを混ぜて製造することができる。また、単純な賦形剤以外にマグネシウムステアレート、タルクなどの滑沢剤も用いられる。
【0029】
また、経口投与のための液状製剤としては、懸濁剤、内用液剤、乳剤、シロップ剤などが該当し、多く用いられる単純希釈剤である水、リキッドパラフィン以外に様々な賦形剤、例えば、湿潤剤、甘味剤、芳香剤、保存剤などが含まれる。
【0030】
非経口投与のための製剤には、滅菌された水溶液、非水性溶剤、懸濁剤、乳剤、凍結乾燥製剤、坐剤が含まれる。非水性溶剤、懸濁溶剤としては、プロピレングリコール(propylene glycol)、ポリエチレングリコール、オリーブオイルのような植物油、オレイン酸エチルのような注射可能なエステルなどが使用できる。坐剤の基剤としては、ウイテプゾール(witepsol)、マクロゴール、ツイーン(tween)61、カカオ脂、ラウリン脂、グリセロゼラチンなどが使用できる。
【0031】
また、本発明に係る非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用の薬学的組成物は、約1~約1,000mgの投与範囲で有効量を示すことができる。投与量または服用量は、対象体の体重、年齢、性別、健康状態、食餌、投与時間、投与方法、排泄率および疾患の重症度に応じて、1日に1回~数回に分けて投与できるなどの様々な投与用量および方法によって投与可能である。
【0032】
本発明において、非アルコール性脂肪肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease、NAFLD)は、原発性と続発性に応じた非アルコール性脂肪肝疾患を全て含む。具体的には、本発明において、非アルコール性脂肪肝疾患(non-alcoholic fatty liver disease、NAFLD)は、単純脂肪肝(simple steatosis)、非アルコール性脂肪性肝炎(non-alcoholic steatohepatitis、NASH)およびこのような疾患の進展によって発生する肝線維症(liver fibrosis)と肝硬変(liver cirrhosis)を含むが、これらに制限されるものではない。
【0033】
本発明の薬学的組成物は、化学式1で表される化合物または類似した機能を示す有効成分を1種以上含むことができる。
【0034】
また、本発明は、治療学的に有効な量の前記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物を治療が必要な対象体に投与するステップを含む、非アルコール性脂肪肝疾患を予防または治療する方法を提供する。
【0035】
本明細書において、用語「治療が必要な対象体」とはヒトをはじめとする哺乳動物を意味し、用語「投与」とは任意の適切な方法により対象体に所定の物質を提供することを意味する。用語「治療学的に有効な量」とは、研究者、獣医師、医師またはその他の臨床医によって考えられる、動物またはヒトにおける生物学的または医学的反応を誘導する活性成分または薬学的組成物の量を意味し、これは、治療される疾患または障害の症状緩和を誘導する量を含む。本発明の有効成分に対する治療上の有効投与量および投与回数は、所望する効果に応じて変化できることは当業者に明らかなことである。
【0036】
本発明の薬学的組成物の投与経路は、目的とする組織に到達できる限り、いかなる一般的な経路を通して投与されてもよい。
【0037】
経口投与、腹腔内投与、静脈内投与、筋肉内投与、皮下投与、皮内投与、鼻内投与、肺内投与、直腸内投与、腔内投与、腹腔内投与、硬膜内投与することができ、これらに制限されるものではない。
【0038】
本発明の薬学的組成物は、1日1回または一定の時間間隔をおいて1日2回以上投与できる。
【0039】
本発明の薬学的組成物は、非アルコール性脂肪肝疾患の予防および治療のために、単独で、または手術、ホルモン治療、薬物治療および生物学的反応調節剤を用いる方法と併用して使用できる。
【0040】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物を有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または改善用の食品組成物を提供する。
【0041】
本発明の用語「改善」とは、前記組成物の投与により疾患が好転するかまたは有益に変更される全ての行為を意味する。
【0042】
本発明の用語「食品」としては、肉類、ソーセージ、パン、チョコレート、キャンディー類、スナック類、菓子類、ピザ、インスタントラーメン、その他の麺類、ガム類、アイスクリーム類を含む酪農製品、各種スープ、飲料、お茶、ドリンク剤、アルコール飲料、ビタミン複合剤、健康機能食品、健康食品および健康補助食品などがあり、通常の意味での食品の全てを含む。
【0043】
前記「健康機能(性)食品(functional food)」とは、特定保健用食品(food for special health use、FoSHU)と同じ用語であり、栄養供給のほか、生体調節機能が効率的に現れるように加工された医学、医療効果の高い食品を意味する。ここで、「機能(性)」とは、人体の構造および機能に対して栄養素を調節するかまたは生理学的作用などのように保健用途に有用な効果を得ることを意味する。
【0044】
前記「健康食品(health food)」とは、一般的な食品に比べて積極的な健康維持や増進効果を有する食品を意味し、「健康補助食品(health supplement food)」とは、健康補助の目的の食品を意味する。場合によっては、健康機能食品、健康食品、健康補助食品の用語は混用できる。
【0045】
本発明の食品は、当業界で通常用いられる方法により製造可能であり、前記製造時には当業界で通常に添加する原料および成分を添加して製造することができる。具体的には、タンパク質、炭水化物、脂肪、栄養素、調味剤および香味剤を含むことができ、前記炭水化物の例としてはブドウ糖、果糖、マルトース、スクロース、オリゴ糖、デキストリン、シクロデキストリン、キシリトール、ソルビトール、エリトロール、サッカリンまたは合成香味剤が挙げられるが、これらに制限されるものではない。本発明の食品組成物は、食品として認められる剤形であれば特に制限されることなく様々な形態の剤形に製造できる。
【0046】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物を有効成分として含む食品組成物を改善が必要な対象体に投与するステップを含む、非アルコール性脂肪肝疾患を予防または改善する方法を提供する。
【0047】
また、本発明は、前記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物を有効成分として含む、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または改善用の飼料組成物を提供する。
【0048】
本発明の用語「飼料」とは、家畜が摂取し、消化させるための、またはこれに適した任意の天然または人工規定食、一食などまたは前記一食の成分を意味する。前記飼料は、飼料添加剤または補助詞料を含むことができる。
【0049】
前記飼料の種類は特に制限されず、当該技術分野で通常用いられる飼料を使用できる。前記飼料の非制限的な例としては、穀物類、根果類、食品加工副産物類、藻類、繊維質類、製薬副産物類、油脂類、デンプン類、ウリ類または穀物副産物類などのような植物性飼料;タンパク質類、無機物類、油脂類、鉱物性類、油脂類、単細胞タンパク質類、動物性プランクトン類または飲食物などのような動物性飼料が挙げられる。これらは単独で用いるかまたは2種以上を混合して用いてもよい。
【0050】
また、本発明は、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療のための前記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物の使用を提供する。
【0051】
また、本発明は、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療のための薬学的製剤を製造するための前記化学式1で表される化合物、その薬剤学的に許容可能な塩、その光学異性体、その水和物または溶媒和物、またはその混合物の使用を提供する。
【0052】
前記治療方法、食品組成物、改善方法、飼料組成物および使用において、前記化学式1で表される化合物は、具体的には、3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾールであってもよい。
【0053】
本発明の薬学的組成物、治療方法、食品組成物、改善方法、飼料組成物および使用において言及された事項は、互いに矛盾しない限り、同様に適用される。
【発明の効果】
【0054】
本発明に係る薬学的組成物は、脂質代謝を改善し、肝組織中の脂肪蓄積を減らし、肝組織の炎症と線維化を通じた組織学的損傷を防ぐ優れた効果を奏するため、非アルコール性脂肪肝疾患の予防または治療用途として有用に使用できる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
図1】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、本発明の化合物による中性脂肪の減少および炎症細胞浸潤の抑制効果を示す組織標本写真である。
図2】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、本発明の化合物による炎症細胞浸潤の抑制効果および線維化の抑制効果を示す分析グラフである(#、p<0.05 vs.Normal;**、p<0.05&p<0.01 vs.Ob-NASH)。
図3】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、本発明の化合物による線維化の抑制効果を示す組織標本写真である。
図4】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、本発明の化合物によるASTおよびALTの減少効果を示すものである(#、p<0.05 vs.Normal;、p<0.05 vs.Ob-NASH)。
図5】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、炎症および線維化関連タンパク質の濃度を測定した結果を示すものである(###、p<0.001 vs.Normal;*****、p<0.01&p<0.001 vs.Ob-NASH)。
図6】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、炎症および線維化関連遺伝子の発現量を測定した結果を示すものである。
図7】ヒト単球細胞株をマクロファージに分化させる前、24時間、48時間分化後の時点で細胞内GPR119の遺伝子発現を評価した結果を示すものである。
図8】ヒト単球をマクロファージに分化させる間、本発明の化合物の処理による影響を評価した結果を示すものである。
図9】本発明の化合物の処理により、分化したマクロファージ活性化に対する影響を評価した結果を示すものである。
図10】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、本発明の化合物による肝組織中の中性脂肪の減少および炎症細胞浸潤の抑制効果を示す組織標本写真である。
図11】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、肝組織内のトリグリセリド含量を測定した結果を示すものである(*****、p<0.01&p<0.001 vs.DIO-NASH)。
図12】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、同一個体の投与前/後のNAS(NAFLD activity score)変化を示すものである。
図13】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、本発明の化合物による線維化の抑制効果を示す組織標本写真である。
図14】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、肝組織中のtype I collagenの含量を測定した結果を示すものである(***、p<0.05&p<0.001 vs.DIO-NASH)。
図15】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルにおいて、血中ASTおよびALTの濃度を測定した結果を示すものである(*****、p<0.01&p<0.001 vs.DIO-NASH)。
図16】非アルコール性脂肪性肝炎が誘導されたマウスモデルの肝組織中の単球誘引因子、マクロファージ指標および線維化指標の遺伝子発現量を測定した結果を示すものである(*****、p<0.05、p<0.01&p<0.001 vs.DIO-NASH)。
【発明を実施するための形態】
【0056】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、詳細に後述している実施例を参照すれば明らかになる。ただ、本発明は、以下にて開示される実施例に限定されるものではなく、互いに異なる様々な形態に実現できるものであり、本実施例は本発明の開示が単に完全になるようにし、本発明が属する技術分野における通常の知識を有した者に本発明の範疇を完全に知らせるために提供されるものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるのみである。
【0057】
<実施例1>特殊飼料を供給した脂肪性肝炎誘導マウスモデルでのGPR119リガンドの効能確認
本発明に係るGPR119リガンド化合物の非アルコール性脂肪肝疾患に対する予防効果を確認するために、次のような実験を行った。
【0058】
非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルの作製
6週齢の雄性のレプチン欠損ob/obマウスに高脂肪、高果糖、高コレステロールの特殊飼料を10週間供給して非アルコール性脂肪性肝炎を誘発させた。化学式1で表される化合物のうち、3-(4-(3-(1-(5-エチルピリミジン-2-イル)ピペリジン-4-イル)プロポキシ)-2,6-ジフルオロフェニル)-5-イソプロピル-1,2,4-オキサジアゾール(3-(4-(3-(1-(5-ethylpyrimidin-2-yl)piperidin-4-yl)propoxy)-2,6-difluorophenyl)-5-isopropyl-1,2,4-oxadiazole;以下、「化合物1」と称する)を1日用量が100mg/kg/dayになるように混合
飼料の形態で製作して、特殊飼料の供給開始時点から10週間供給した。
【0059】
組織学的検査
組織学的検査のために、前記作製された非アルコール性脂肪性肝炎誘導マウスモデルを剖検して分離した肝組織を10%ホルマリンに固定し、パラフィンブロックを製造して2μm厚さの組織切片を得て、炎症細胞浸潤を確認するために、自動染色装置(Autostainner XL、Leica)を用いてHematoxylin and Eosin(HE) Stainを実施し、その結果を図1および図2に示す。
【0060】
図1および図2から確認できるように、特殊飼料を10週間供給したob/obマウス(Ob-NASH)は、正常飼料を給餌したC57BL/6マウス(Normal)に比べて、肝組織中の中性脂肪球が顕著に増加し、炎症細胞の浸潤も確認された。その反面、特殊飼料と共に本発明の化合物1を同時に供給した場合(Ob-NASH+Compd 1)には、炎症細胞の浸潤が有意に抑制されることを確認した。
【0061】
次に、線維化の評価のために、Masson’s Trichrome stainまたはSirius Res stainを用いて肝組織中の線維質を特異的に染色し、その結果を図2および図3に示す。
【0062】
図2および図3から確認できるように、特殊飼料を10週間供給したob/obマウスは、正常飼料を給餌したC57BL/6マウスとは異なり、肝組織が全般的に紫色を帯びて線維化が顕著に進行していたが、特殊飼料と共に本発明の化合物1を同時に供給した場合には、肝組織の線維化が有意に抑制されることを確認した。
【0063】
血中ASTおよびALTの測定
前記非アルコール性脂肪性肝炎誘導マウスモデルを剖検後に血漿を分離し、自動血液分析装置(Konelab 20i)を用いて、AST(aspartate aminotransferase)およびALT(alanine aminotransferase)を定量し、その結果を図4に示す。
【0064】
図4から確認できるように、特殊飼料を10週間供給したob/obマウスは、正常飼料を給餌したC57BL/6マウスとは異なり、肝組織の損傷により肝損傷指標である血中ALTおよびAST濃度が有意に増加したのに対し、特殊飼料と共に本発明の化合物1を投与した場合には、ALTおよびASTの増加が有意に抑制され、これにより肝細胞損傷が軽減されることを確認した。
【0065】
炎症および線維化関連タンパク質濃度の確認
肝組織中の炎症関連遺伝子および線維化関連タンパク質の発現に対する影響を評価するために、前記マウスモデルから得た肝組織をRIPA buffer(Cell Signaling)に入れ、TissueLyser IITM(Quiagen)で粉砕した後、Pierce BCA Protein Assay Kit(Thermo Fisher Scientific)で総タンパク質濃度を定量した後、商用化されたELISA kitを用いて肝組織中のマウスCcl2(=Mcp1;R&D Systems、MJE00)およびTimp1(R&D Systems、MTM100)タンパク質濃度を定量し、その結果を図5に示す。
【0066】
図5から確認できるように、特殊飼料を供給したマウスは、肝組織に炎症細胞を誘引する因子であるCcl2(=Mcp1)と肝組織に沈着した線維質を分解する酵素を抑制する内因性阻害剤であるTimp1の肝組織中のタンパク質濃度が増加したのに対し、特殊飼料と共に本発明の化合物1を投与した場合には、Ccl2およびTimp1の濃度が有
意に抑制されることを確認した。
【0067】
炎症および線維化関連遺伝子の発現の確認
肝組織中の炎症関連遺伝子および線維化関連遺伝子の発現量を測定するために、前記マウスモデルから分取した肝組織にTrizol(Invitrogen)を加えた後、製造会社が提供した方法により組織中の総RNAを抽出し、逆転写酵素を用いてcDNAを合成した。その次に、SYBR Green I Master Mix(Roche、04707516001)試薬を用いて、LightCycler 480 InstrumentII(RocheLifeScience)装置にてリアルタイムPCR(Real-time polymerase chain reaction)を実施し、その結果を図6に示す。
【0068】
図6から確認できるように、特殊飼料を10週間供給したマウスは、炎症関連マウス遺伝子(Ccl2、Lgals3、Tnfa)および線維化関連遺伝子(Tgfb1、Col1a、Timp1、Timp2、Acta2)の発現が増加したのに対し、特殊飼料と共に本発明の化合物1を投与した場合には、炎症および線維化関連遺伝子の発現の増加が有意に抑制されることを確認した。
【0069】
前記のような結果は、本発明の化合物が肝組織の損傷、炎症および線維化を抑制して、非アルコール性脂肪肝疾患に優れた効果があるということを示唆する。
【0070】
<実施例2>ヒト単球細胞の分化および分化したマクロファージの活性化抑制効果の確認
本発明に係る化合物の直接的な抗炎症効果を評価するために、ヒト単球細胞の分化およびその活性化に及ぼす効果を確認した。
【0071】
先ず、ヒト単球細胞株(THP-1、ATCC TIB-202TMを、PMA(Phorbol 12-myristate 13-acetate)を用いて、マクロファージに分化させる前、24時間、48時間分化後の時点で細胞内GPR119の遺伝子発現を評価した結果、単球からマクロファージに分化するにつれてGPR119受容体の発現が経時的に増加することを確認した(図7)。
【0072】
次に、THP-1単球をPMA(50ng/ml)で48時間処理してマクロファージに分化させる間、化合物1を併用処理した後に血清が含まれていない培地に取り替え、LPS(Lipopolysaccharides;0.5ng/ml)を4時間処理して、培地中に分泌されたIL-1β(interleukin-1β;R&D Systems、DY201)を商用化されたELISKA kitを用いて定量して単球分化に対する影響を評価し、その結果を図8に示す。
【0073】
図8から確認できるように、単球がマクロファージに分化する過程で本発明の化合物を処理した場合には、濃度依存的にマクロファージ活性化に応じたIL-1β分泌が減少することを確認した。
【0074】
また、分化したマクロファージに化合物1を48時間処理した後、LPSによる免疫細胞活性化を、前記と同様の方法により、分泌されたIL-1βを定量して、分化したマクロファージ活性化に対する影響を評価し、その結果を図9に示す。
【0075】
図9から確認できるように、本発明の化合物を分化したマクロファージに処理した場合にも、濃度依存的にマクロファージ活性化に応じたIL-1β分泌が減少することを確認した。
【0076】
前記のような結果は、本発明の化合物が免疫細胞分化および活性化を直接的に抑制して、非アルコール性脂肪肝疾患の予防および治療に優れた効果を示すことができるということを示唆する。
【0077】
<実施例3>特殊飼料を供給した脂肪性肝炎誘導マウスモデルでのGPR119リガンドの効能の確認
本発明に係るGPR119リガンド化合物の非アルコール性脂肪肝疾患に対する治療効果を確認するために、次のような実験を行った。
【0078】
非アルコール性脂肪性肝炎マウスモデルの作製および実験群の設定
6週齢の雄性のC57BL/6Jマウスに高脂肪、高果糖、高コレステロールの特殊飼料を最小26週間供給して非アルコール性脂肪性肝炎を誘発させた。薬物供給の3週前に肝組織生検を通じて脂肪肝、炎症、線維化が誘発されたことを確認し、肝組織中のコラーゲン染色面積を基準にマウスを各群に均等に配分した。特殊飼料に本発明に係る化合物を混合した飼料を製作してさらに8週間供給した。マウスに供給した食餌に応じて、各群を、正常飼料を供給した対照群(normal)、特殊飼料で非アルコール性脂肪性肝炎を誘発したマウスに薬物を供給していない陽性対照群(DIO-NASH)、および非アルコール性脂肪性肝炎を誘発したマウスに化合物1を30mg/kg/day(L)、100mg/mg/day(H)として供給した群(各々、Cmpd1(L)およびCmpd1(H))に分類した。
【0079】
組織学的検査
組織学的検査のために、前記作製されたC57BL/6Jマウスモデルを剖検して分離した肝組織を10%ホルマリンに固定し、パラフィンブロックを製造して2μm厚さの組織切片を得て、それを自動染色装置(Autostainner XL、Leica)を用いてHematoxylin and Eosin(HE) Stainを実施し、その結果を図10に示す。また、C57BL/6Jマウスモデルから分離した肝組織をTriglyceride reagent(Roche Diagnotics、#22-045-795)を用いて肝組織内のトリグリセリド含量を測定し、その結果を図11に示す。
【0080】
図10および図11から確認できるように、特殊飼料のみを供給したマウス(DIO-NASH)は、正常飼料を供給したマウス(normal)に比べて、肝組織中の脂肪沈着および炎症細胞の浸潤が顕著に増加したのに対し、特殊飼料と共に本発明の化合物1を同時に供給したDIO-NASH_Compd1(H)群は、脂肪沈着および炎症細胞の浸潤が有意に減少した。
【0081】
また、前記組織学的検査に基づいて、脂肪球の比率、炎症細胞浸潤と肝細胞損傷を反映したNAS(NAFLD activity score)を投与前/後に計算した結果、DIO-NASH群の50%が疾病がさらに悪化したのに対し、化合物を投与した場合には悪化した個体はおらず、DIO-NASH_Compd1群は約50%が改善された(図12)。
【0082】
次に、線維化の評価のために、Sirius Res stainを用いて前記各群のマウス肝組織中の線維質を特異的に染色し、肝組織中のtype Iコラーゲンの含量は免疫染色後に画像分析方法により測定し、その結果を図13および図14に示す。
【0083】
図13および図14から確認できるように、特殊飼料のみを供給したマウス(DIO-NASH)は、正常飼料を供給したマウス(normal)に比べて、肝組織中の線維化
が顕著に進行したのに対し、特殊飼料と共に本発明の化合物1を同時に供給した群(DIO-NASH_Compd1)は、肝組織中の線維質の架橋形成が顕著に減少し、またtype Iコラーゲンも有意に減少した。
【0084】
血中ASTおよびALTの測定
前記各マウス群を剖検後に血漿を分離し、自動血液分析装置(Konelab 20i)を用いて、AST(aspartate aminotransferase)およびALT(alanine aminotransferase)を定量し、その結果を図15に示す。
【0085】
図15から確認できるように、特殊飼料のみを供給したDIO-NASH群は、正常飼料を供給したマウスに比べて、血中ALTおよびAST濃度が有意に増加したのに対し、特殊飼料と共に本発明の化合物1を投与した群(DIO-NASH_Compd1)は、ALTおよびASTの増加が有意に抑制された。
【0086】
遺伝子発現の変化の確認
薬物を投与して8週後に前記マウスモデルから分離した肝組織中の全体遺伝子発現の変化を分析するために、分離したRNA分画をNeoPrep(Illumina)を用いてlibraryを生成し、NexSeq 500(Illumina)を通じてRNAseq profilingを実施した後にbioinformatics分析を実施し、主要遺伝子グループの変化を機能別に分類して図16に示す。
【0087】
図16から確認できるように、特殊飼料のみを供給したマウス(DIO-NASH)は、正常飼料を供給したマウス(normal)に比べて、肝組織中の単球誘引因子、マクロファージ指標および線維化指標の発現が増加したのに対し、特殊飼料と共に本発明の化合物1を同時に供給したDIO-NASH_Compd1群は、前記指標が顕著に減少した。
【0088】
前記のような結果は、肝組織の損傷、炎症および線維化を抑制して本発明の化合物が非アルコール性脂肪肝疾患に効果があり、DPPIV阻害剤を併用投与することによってより優れた治療効果を示すことができるということを示唆する。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
【国際調査報告】