(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】アンペアの法則を利用した安全システムによる停止のための受動電気部品
(51)【国際特許分類】
G21D 3/04 20060101AFI20220124BHJP
G21C 17/02 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
G21D3/04 H
G21C17/02 100
G21C17/02 200
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021515134
(86)(22)【出願日】2019-10-29
(85)【翻訳文提出日】2021-03-18
(86)【国際出願番号】 US2019058521
(87)【国際公開番号】W WO2020092339
(87)【国際公開日】2020-05-07
(32)【優先日】2018-10-31
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】508177046
【氏名又は名称】ジーイー-ヒタチ・ニュークリア・エナジー・アメリカズ・エルエルシー
【氏名又は名称原語表記】GE-HITACHI NUCLEAR ENERGY AMERICAS, LLC
(74)【代理人】
【識別番号】110002516
【氏名又は名称】特許業務法人白坂
(72)【発明者】
【氏名】ローウェン,エリック ピー.
(72)【発明者】
【氏名】ウィーバー,デイビッド ダブリュー.
(72)【発明者】
【氏名】ストレージ,セス ライアン ポール
(72)【発明者】
【氏名】フェファー,マリア イー.
(72)【発明者】
【氏名】フェファー,スコット エル.
【テーマコード(参考)】
2G075
【Fターム(参考)】
2G075AA01
2G075DA03
2G075DA04
2G075DA05
(57)【要約】
電気技術装置は、電圧源から予め定められた電流を受け取るように電圧源に接続されるとともに出力装置に接続されたコイルを含む回路を備える。回路は、破断可能な接合部と、光ファイバケーブルからの光信号を受信するためのフォトダイオードとを含む。フォトダイオードは、センサからの光信号を受信する。永久磁石は、コイルの共通極端部に対向する極端部を含み、コイルがフォトダイオードから増加した電流を受け取ると、コイルは、破断可能な接合部を破断させるとともに電圧源と出力装置との間の接続を中断させるために、永久磁石の共通極に対して反発する磁束を生成する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
電圧源から予め定められた電流を受け取るように電圧源に接続されるとともに出力装置に接続されたコイルを含む回路であって、
前記回路は、破断可能な接合部を含み、
前記回路は、センサからの光信号を受信する光ファイバケーブルからの光信号を受信するためのフォトダイオードを含む、回路と、
前記コイルの共通極端部に対向する極端部を有する永久磁石と、
を備え、前記コイルは前記フォトダイオードから増加した電流を受け取ると、前記コイルは、前記破断可能な接合部を破断させるとともに前記電圧源と前記出力装置との間の接続を中断させるために、前記永久磁石の前記共通極に対して反発する磁束を生成する、電気技術装置。
【請求項2】
前記破断可能な接合部が、前記永久磁石と前記コイルとの間に配置されている、請求項1に記載の電気技術装置。
【請求項3】
前記破断可能な接合部が3D印刷により形成されている、請求項1に記載の電気技術装置。
【請求項4】
前記センサが、温度センサ、圧力センサ、および流量センサのうちの1つを含む、請求項1に記載の電気技術装置。
【請求項5】
電圧源から予め定められた電流を受け取るように電圧源に接続されるとともに出力装置に接続されたコイルを各々が含む複数の回路を備え、
前記複数の回路の各々が破断可能な接合部を含み、
前記複数の回路の各々がセンサからの光信号を受信する光ファイバケーブルからの光信号を受信するためのフォトダイオードを含み、
前記複数の回路の前記コイルの各々が、1つ以上の永久磁石の共通極端部に対向する極端部を有し、前記コイルが対応する前記フォトダイオードから増加した電流を受け取ると、前記コイルは、前記破断可能な接合部を破断させるとともに前記電圧源と前記出力装置との間の接続を中断させるために、前記永久磁石の前記共通極に対して反発する磁束を生成する、電気技術装置。
【請求項6】
前記複数の回路の各々の前記破断可能な接合部が、前記永久磁石と前記コイルとの間に配置されている、請求項5に記載の電気技術装置。
【請求項7】
前記複数の回路の各々の前記破断可能な接合部が、3D印刷により形成されている、請求項5に記載の電気技術装置。
【請求項8】
前記複数の回路の各々の前記センサが、温度センサ、圧力センサ、および流量センサのうちの1つを含む、請求項5に記載の電気技術装置。
【請求項9】
電圧源から予め定められた電流を受け取るための前記電圧源と出力装置との間に回路を接続する工程であって、
前記回路は、3D印刷された破断可能な接合部を含み、
前記回路は、センサからの光信号を受信する光ファイバケーブルからの光信号を受信するためのフォトダイオードを含む、回路接続工程と、
前記コイルの共通極端部に対向する極端部を有する永久磁石を取り付ける工程と、
を含み、前記コイルは前記フォトダイオードから増加した電流を受け取ると、前記コイルは、前記破断可能な接合部を破断させるとともに前記電圧源と前記出力装置との間の接続を中断させるために、前記永久磁石の前記共通極に対して反発する磁束を生成する、電気技術装置の形成方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、システムパラメータを検知し、また、予め定められた設定点に達して、これによりシステム内のアクションを実行するための信号が送信された場合にトリップ状態になる受動電気部品を含む安全システムによる停止に関する。受動電気部品は、アンペアの磁気の法則の原理を利用している。
【背景技術】
【0002】
ここでは、必ずしも先行技術ではない本開示に関連する背景情報を提供する。
【0003】
現代の原子炉は、分散制御情報システム(DCIS)と呼ばれる制御および安全のための様々なデジタルシステムを使用する。これらのシステムは、冗長性があり、多様性があり、フォールトトレラント性があり、システムが動作している間に広範囲の自己診断を行う。一方、原子力デジタル産業では、一般的な原因であるソフトウェアの不具合が懸念されている。さらに被害が大きいのは、システムの安全システムへの、あるいはシステムの安全システムを介したサイバー攻撃である。デジタル産業では、コンポーネントサイズを小さくしながら計算能力を高めたいという願望から、ソフトウェアが埋め込まれた非常に小さなデジタルデバイスが生まれている。これらのシステムが一般的な原因である不具合を有し得ないことを規制機関に納得させることは非常に困難である。この小型のデジタルシステムがサイバー攻撃を受けた場合には、さらに大きな被害を受ける作動が生じる可能性がある。このような原子力発電所の安全システムの極端な未知の状態は、冗長性、独立性、決定性の原因となり、これらのすべてが相当な追加コストの原因となっている。
【0004】
図3は、制御パネル203がインターフェイスとなる、安全部202および非安全部204の両者を備える従来の分散制御情報システム(DCIS)200を示す概略図である。本開示は、
図3に示すDCIS200の安全部202に向けられている。DCIS200の安全部202は、4つの独立して構成された部202A乃至202Dを含み、これらはそれぞれ、収集され、また、リモートマルチプレクサユニットRMU205から送信される測定されたシステム信号を受信する。リモートマルチプレクサユニットRMU205は、デジタルトリップモジュールDTM206に出力を行う。デジタルトリップモジュールDTM206はそれぞれトリップ論理ユニットTLU208に出力を行う。トリップ論理ユニットTLU208はそれぞれ出力論理ユニットOLU210に出力信号を提供する。従来の安全部202は、故障を判定するために、異なる4つの部202A乃至202Dのうちの少なくとも2つの部が同様の信号を受信するという投票ロジックを使用する(すなわち、圧力および温度は互いに比較されない)。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
原子力発電所の制御システムの設計者、購入者、設置者、および操作者は、システムが確実に設計通りに機能するように、本質的な安全信号を確立するとともに追跡することがより困難になっている。人間が「信号の流れ」を変化させたり、電子/データの流れを追跡して、システムがサイバー攻撃を受けないようにすることができる規模の装置および方法が必要とされている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本項は、本開示の一般的な概要を提供するものであり、その完全な範囲またはすべての要素を包括的に開示するものではない。
【0007】
本開示は、制御システムに結合され、また、アンペアの法則を利用して受動システム安全停止を行うことができる電気技術装置を提供する。これらの装置は、デジタル安全システムの固有の限界である共通の原因であるソフトウェア障害やサイバーセキュリティ攻撃の課題を解決する。アンペアの法則接触器は、原子力発電所、または他の敏感なインフラストラクチャを保護するために複数の構成で設定することができる電気技術装置を提供する。本開示の電気技術装置は、電気技術装置を確実に一貫して製造することができる金属およびプラスチックの3D印刷機を使用して部分的に製造することができ、これに関してその製造データをキャプチャするとともに保存して、装置の一貫した動作特性を確認することに利用することができる。この装置は、簡単な合否チェックやゴー/ノー・ゴーチェックを使用して、電気安全システムに伝達して、安全な停止に状態を変更する。プリントされた装置は、3つの基本的なタスクを実行するために安全システムに配置される。基本的なタスクとは、すなわち、システムパラメータ(例、温度、流量、圧力、電力、変化率など)を検知し、予め設定されたポイントに達した場合は「トリップ」状態になり、最後に、安全システムの論理が満たされた場合は、停止などのシステム内のアクションを実行するための信号を送信するか装置を活性化することである。装置は、さらに、ソフトウェアやデジタルサイバー攻撃による障害を解消する。
【0008】
電気技術装置は、電圧源から予め定められた電流を受容するように電圧源に接続されるとともに出力装置に接続されたコイルを含む回路を備える。回路は、破断可能な接合部と、光ファイバケーブルからの光信号を受信するためのフォトダイオードとを含む。フォトダイオードは、センサからの光信号を受信する。永久磁石は、コイルの共通極端部に対向する極端部を含み、コイルがフォトダイオードから増加した電流を受容すると、コイルは、破断可能な接合部を破断させるとともに電圧源と出力装置との間の接続を中断させるために、永久磁石の共通極に対して反発する磁束を生成する。
【0009】
適用可能なさらなる領域は、本明細書で提供される説明から明らかになるであろう。本課題を解決するための手段における説明および具体例は、例示のみを目的とするものであり、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図2】本開示の原理に従ったアンペアの法則接触器を採用した安全システムを示す概略図である。
【
図3】原子炉用分散制御情報システムの従来のデジタルシステムを示す概略図である。
【
図4】
図3の分散制御情報システムの従来のデジタルシステムの安全部を示す概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書に記載された図面は、選択された実施形態のみを例示する目的であり、すべての可能な実施形態を示すものではなく、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0012】
対応する参照符号は、図面のいくつかの図にわたって対応する部分を示している。
【0013】
例示的な実施形態は、ここで添付の図面を参照して、より完全に説明される。
【0014】
例示的な実施形態が提供され、これにより、本開示は、本発明の範囲を徹底的に、当業者に十分に伝達することができる。本開示の実施形態が完全に理解されるように、特定の構成要素、装置、および方法の例のような多数の具体的な詳細が記載されている。特定の詳細を採用する必要の無いこと、例示的な実施形態が多くの異なる形態で具現化され得ること、およびいずれも本開示の範囲を限定するように解釈されるべきではないことは、当業者には明らかであろう。いくつかの例示的な実施形態では、周知のプロセス、周知のデバイス構造、および周知の技術は、詳細には記載されていない。
【0015】
本明細書で使用される用語は、特定の例示的な実施形態のみを説明する目的であり、限定することを意図していない。本明細書で使用されるように、単数形の「a」、「an」、および「the」は、文脈が明らかに別段のことを示さない限り、複数形も含むことを意図している。用語「comprises」、「comprising」、「including」、および「having」は包括的であり、したがって、記載された特徴、整数、ステップ、操作、要素、および/または構成要素の存在を特定するが、1つまたは複数の他の特徴、整数、ステップ、操作、要素、構成要素、および/またはそれらのグループの存在または追加を排除するものではない。本明細書に記載された方法のステップ、プロセス、および操作は、具体的に所定の順序の性能として特定されない限り、議論または例示された特定の順序でのそれらの性能を必ずしも必要とするものとして解釈されるものではない。追加のステップまたは代替のステップが採用されてもよいことも理解されよう。
【0016】
図1は、磁界の渦巻きを利用して時間的に変化する電束密度を検知する方法を例示するためのフォトダイオード404を示す図である。
図1に示すように、光信号402は、光波の方向と直交する方向に振動する電界および磁界からなる電磁波であるフォトダイオード404によって拾われている。信号からの光子は、フォトダイオード404の半導体材料に吸収され、これにより電流が生成される。生成される電流量は、フォトダイオード404に入射する光の量に比例する。アンペアの法則は、電流の周囲の磁場が、磁場の源を提供する電流に比例することを説明している。加えて、電場の経時変化が磁場を発生させ得ることも記載されている。光子吸収後のフォトダイオード404内に流れる電流は、この法則に従う。電流とそれに続く磁場を測定し、続いてシステム全体に伝達することができる。
【0017】
図2に示すように、アンペアの法則論理接触器410は、システムトリップ状態が存在する場合にソフトウェアなしで論理装置を生成するために原子力安全システムで利用される。
図2に示すように、アンペアの法則論理接触器410は、各々が入力信号420,422を提供される対応する入力コネクタ416,418を含む一対の回路412,414を含む。入力コネクタ416,418は、破断可能/切断可能な接合部432,434を介して対応するシステムソレノイド428,430に接続される対応するコイル424,426に接続されている。一対のフォトダイオード404A,404Bは、一対の回路412,414に接続され、これらの回路412,414に追加の電流を供給する。コイル424は、電流の流れによって発生する磁界が、電流の流れ方向に対してコイル424の下流側に北極を有するように配置され、コイル426は、電流の流れによって発生する磁界が、電流の流れ方向に対してコイル426の上流側に南極を有するように配置されている。永久磁石436は、コイル424の北極側に対向する北極「N」と、コイル426の南極側に対向する永久磁石436の南極「S」とを備えている。
【0018】
フォトダイオード404A,404Bには、それぞれ、温度、圧力、流量、または停止の必要性を示すためのシステム安全係数に関連する他のパラメータのうちの1つを検知するセンサ442,444の代表的な信号を提供する光ファイバ線438,440からの光ファイバ信号が提供される。
【0019】
フォトダイオード404A,404Bは、光ファイバ線438,440からの光信号Oを、コイル424,426により多くの電流を供給する電流密度Jに変換する。コイル424,426は、破断可能な接合部432,434に平衡力があるように永久磁石436と平衡を取っている。
図2に示すように、破断可能な接合部432,434の右側の部分は固定され、接合部の左側の部分は可動コイル424,426に取り付けられている。光波Oによりセンサ442,444からの光トリップ信号が受信されてフォトダイオード404A,404Bにより電流Jに変換されると、これによりコイル424,426の磁場Hに発散変化が生じる。この不均衡により、コイル424,426および永久磁石436の磁場が互いに対向し、その結果、破断可能な接合部432,434の一方または両者で分離が生じる。これにより、ソレノイド接続部428,430への電流の流れが停止し、安全システムが動作する。生成される電流量は、フォトダイオード404A,404Bに当たる光Oの量に比例しており、光Oの量は、磁場の発散と永久磁場436に対する不均衡とに比例する。したがって、アンペアの法則接触器410は、上述したように、原子力安全システムに利用することができ、
図3および
図4を参照して上述したDTM、TLUおよびOLUを置き換えることができる。
【0020】
定常状態の間、アンペアの法則接触器の作動は、フォトダイオード404A,404Bからの入力を受ける。光子レベルが装置のベースラインを超えると、安全システム応答が作動する。装置の破断可能な接続部432,434は、ヒューズのような一生に一度の部品の活性化として応答する。
【0021】
上述した実施形態の説明は、図示および説明を目的として提供されている。網羅的に開示することを意図したものではなく、開示を限定するものでもない。特定の実施形態の個別の要素または特徴は、一般に、その特定の実施形態に限定されるものではないが、適用可能な場合には、特に示されていなくても、または説明されていなくても、交換可能であり、選択された実施形態で使用することができる。また、これらは様々に変形可能である。そのような変形は、本開示からの逸脱とみなされるものではなく、すべてのそのような変形は、本開示の範囲内に含まれることが意図されている。
【国際調査報告】