(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】免疫チェックポイント治療に抵抗性のある癌の治療のための方法および医薬組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 39/395 20060101AFI20220124BHJP
A61P 35/00 20060101ALI20220124BHJP
A61P 17/00 20060101ALI20220124BHJP
A61K 45/00 20060101ALI20220124BHJP
A61P 43/00 20060101ALI20220124BHJP
A61K 47/68 20170101ALI20220124BHJP
C07K 16/28 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
A61K39/395 T
A61P35/00 ZNA
A61K39/395 E
A61P17/00
A61K45/00
A61P43/00 121
A61K47/68
C07K16/28
【審査請求】未請求
【予備審査請求】有
(21)【出願番号】P 2021516357
(86)(22)【出願日】2019-09-18
(85)【翻訳文提出日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2019075080
(87)【国際公開番号】W WO2020058372
(87)【国際公開日】2020-03-26
(32)【優先日】2018-09-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
(71)【出願人】
【識別番号】507042442
【氏名又は名称】インサーム (インスティテュート ナショナル デ ラ サンテ エ デ ラ ルシェルシェ メディカル)
(71)【出願人】
【識別番号】511025226
【氏名又は名称】ユニヴェルシテ デクス-マルセイユ
【氏名又は名称原語表記】UNIVERSITE D’AIX-MARSEILLE
【住所又は居所原語表記】Jardin du Pharo, 58, Bld Charles Livon, F-13284 Marseille cedex 07, France
(71)【出願人】
【識別番号】521112729
【氏名又は名称】サントル ナシオナル デ ラ ルシェルシェ サイアンティフィク(シーエヌアールエス)
【氏名又は名称原語表記】CENTRE NATIONAL DE LA RECHERCHE SCIENTIFIQUE(CNRS)
【住所又は居所原語表記】3, Rue Michel Ange, 75016 Paris FRANCE
(71)【出願人】
【識別番号】509168656
【氏名又は名称】オーフス ウニベルシテット
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】特許業務法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス,トビー
(72)【発明者】
【氏名】モーストルップ,ソーレン クラー
(72)【発明者】
【氏名】エゼロット,アンダース
【テーマコード(参考)】
4C076
4C084
4C085
4H045
【Fターム(参考)】
4C076AA95
4C076CC27
4C076CC41
4C076EE59
4C084AA17
4C084AA19
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB26
4C084ZC75
4C085AA13
4C085AA14
4C085CC23
4C085DD62
4C085EE01
4C085EE03
4C085GG01
4H045AA11
4H045AA20
4H045AA30
4H045BA10
4H045DA76
4H045EA20
4H045FA72
4H045FA74
(57)【要約】
マクロファージの生物学を理解するうえでの最近の進歩により、腫瘍関連マクロファージが極めて異種性であり、いくつかの異なるサブセットが腫瘍微小環境に共存することが明らかになった。これらのサブセットは発現特性や起源だけでなく、腫瘍促進性であるか、抗腫瘍であるかの機能においても異なる。本発明者らは、CD163を発現する転移性黒色腫のマウスモデル中のマクロファージサブセットを記載する。αCD163 mAbと結合した細胞毒性脂質ナノ粒子を用いて、抗-PD-1チェックポイント阻害剤抵抗性黒色腫モデル中においてCD163発現細胞を特異的に枯渇すると、CD4+の大きな浸潤とCD8+T細胞の活性化をもたらす。さらに本発明者らは、抗-PD-1抗体との組合せ処置により腫瘍が迅速に再発することを示す。よって、本発明は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤と、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤との治療的に有効な組合せを被験者に投与することを含む、これを必要とする被験者における癌を治療する方法に関する。
【選択図】 なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる治療的有効量の薬剤を患者に投与することを含む、癌を患う患者における腫瘍浸潤性CD8+ T細胞の量を増加させる方法。
【請求項2】
少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤と、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤との治療的に有効な組合せを被験者に投与することを含む、これを必要とする被験者における癌を治療する方法。
【請求項3】
癌が黒色腫である、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-1 アンタゴニスト, PD-L1 アンタゴニスト, PD-L2 アンタゴニスト, CTLA-4 アンタゴニスト, VISTA アンタゴニスト, TIM-3 アンタゴニスト, LAG-3 アンタゴニスト, IDO アンタゴニスト, KIR2D アンタゴニスト, A2AR アンタゴニスト, B7-H3 アンタゴニスト, B7-H4 アンタゴニスト, および BTLA アンタゴニストからなる群から選択される、請求項2に記載の方法。
【請求項5】
i)患者から得られた腫瘍組織試料中のCD8+ T細胞の密度を定量する、ii)工程i)で定量した密度を予め定めた参照値と比較する、そしてiii)工程i)で定量したCD8+ T細胞の密度が対応の予め定めた参照値よりも低いときに、組合せ治療的に有効量のCD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤と免疫チェックポイント阻害剤とを患者に投与することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項6】
i)患者から得られた腫瘍組織試料中のCD8+ T細胞の密度とCD163+腫瘍関連マクロファージの密度とを定量する、ii)工程i)で定量した密度を予め定めた参照値と比較する、そしてiii) 工程i)で定量したCD163+腫瘍関連マクロファージの密度が対応の予め定めた参照値よりも高く、且つ工程i)で定量したCD8+ T細胞の密度が対応の予め定めた参照値よりも低いときに、組合せ治療的に有効量のCD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤と免疫チェックポイント阻害剤とを患者に投与することを含む、請求項2に記載の方法。
【請求項7】
CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる治療的有効量の薬剤を被験者に投与することを含む、これを必要とする被験者における免疫チェックポイント療法に抵抗性である癌を治療する方法。
【請求項8】
癌を患う被験者に治療計画の一部として投与する免疫チェックポイント阻害剤の有効性/効力を増加する方法であって、該方法は、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる医薬的有効量の薬剤を少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤と組合せて被験者に投与することを含む方法。
【請求項9】
CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる治療的有効量の薬剤を被験者に投与することを含む、癌を患う被験者における、投与された免疫チェックポイント阻害剤への抵抗性を防ぐ方法。
【請求項10】
前記薬剤が、CD163への結合アフィニティをもち、被験者の腫瘍中のCD163+ TAMの枯渇に至らしめる抗体である、前記請求項のいずれかに記載の方法。
【請求項11】
抗体がCD163の細胞外ドメインに結合する、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
抗体が抗体-依存性細胞-仲介性細胞毒性を仲介する、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
抗体が、CD163に向けられた第1の抗原結合部位を含む多重特異性抗体である、請求項10に記載の方法。
【請求項14】
抗体が抗体-医薬結合体である、請求項10に記載の方法。
【請求項15】
抗体が細胞毒性部分と結合されている、請求書14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、免疫チェックポイント治療に抵抗性のある癌の治療のための方法および医薬組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍関連マクロファージ(TAM:Tumor-associated macrophages)は、固形腫瘍に最も多い免疫細胞であり、腫瘍の進行への重要な寄与が多く報告されている1。その栄養機能、血管新生の支持、浸潤、および転移の他、TAMは、免疫抑制サイトカインIL-102の放出を介するT細胞の増殖と活性化および、T細胞が大きく依存するアルギニン3とトリプトファン4の局在的枯渇を阻害することも示唆されている。腫瘍の進行に関するマクロファージの重要な機能は、TAMを標的とする新しい治療戦略の開発において、既に大きな関心を引いてきた。臨床試験における現在の戦略には、骨髄由来単球の移動を中和することによってTAMの補充を阻害するケモカインCCL2またはその受容体CCR2をブロックすること、およびマクロファージ成長因子受容体CSF1R (M-CSFR; c-FMS; CD115)5 を標的とすることを含む。CCL2/CCR2のブロックは単球由来のマクロファージの補充を標的とするだけであるが、CSF1は組織常駐マクロファージの生存と分化の両方のみならず、単球由来マクロファージの成熟にも本質的な役割を演じている6。実際、臨床データはまだ限られているが、CSF1Rに対するモノクローナル抗体(mAB)治療の後、TAM数が減少したと報告し、これは腱滑膜巨細胞腫(tenosynovial giant cell tumors)の興味ある治療効果の可能性を示す7,8。
【0003】
TAMの蓄積と大規模臨床試験における臨床結果の乏しさとの強い関連性にもかかわらず、いくつかの報告は、特定のTAMサブセットにおけるTAMの数または蓄積と良好な予後とを関連づけている。一例は、いくつかの研究9.10における、有益な結果と関連するHLA-DR+TAMの頻度であり、これは保護免疫応答11の調整における役割を反映するものであろう。この点で、最近のマスサイトメトリー(mass cytometry)とRNA配列解析による対シングルセル分析研究で、肺腺癌および腎細胞癌(RCC)患者における腫瘍浸潤骨髄細胞(TIM)中の前例のない多様性レベルを明らかにした12,13。RCCの場合、17の異なるTAM表現型が報告されている12。異なるTAMサブセットの機能およびそれらの腫瘍進行へのそれぞれの貢献についての深い理解には欠けるが、腫瘍促進メカニズムを停止し、一方生来の免疫機能を保持するTAMサブセットを選択的に標的とすることは、抗腫瘍免疫を促進し、有意義な臨床の恩恵を提供すると考えることは魅力的である。
【0004】
TAMによるCD163の発現はいくつかの異なる癌での、悪い予後の特に強い指標であることが示されている。CD163は、ハプトグロビン-ヘモグロビン複合体のスカベンジャー受容体として機能するマクロファージおよび単球特異的膜貫通タンパク質であり、血管内溶血で形成される14。CD163の発現はIL-6やIL-10などの腫瘍促進性サイトカインによって誘導され、一方リポ多糖(LPS)、TNFα および IFNγを含む炎症性刺激は、タンパク質分解脱落(proteolytic shedding)を介して膜結合CD163の発現の迅速な下方制御と除去を促す15,16。このことが、ヘモグロビンスカベンジからの抗炎症性ヘム代謝物の生成と一緒になって、CD163+マクロファージと抗炎症性機能とを関連づけることになる15。しかし、CD163+TAM蓄積と腫瘍進行との関連は臨床の進展にのみ基づいており、特定の腫瘍促進機能についての実験的エビデンスはまだ不足している。
【0005】
抗-PD-1などの免疫チェックポイント阻害剤(ICI)の最近の開発は癌治療、特に悪性黒色腫に多大な影響を及ぼした17,18。癌細胞上でPD-1 リガンド (PD-L1) の発現が増加すると、PD-1-発現CD8+ 細胞毒性 T 細胞(CTL)の活性化を抑制する19。したがって、抗-PD-1 または PD-L1 mAbsを用いてPD-1/PD-L1シグナル伝達を阻害すると、CTLの活性化が増加し、究極的に腫瘍の退行が予期せぬ比率で得られることになる20。不幸なことに、ごく少数の患者だけがICI治療に応答するが、その理由は現在探求中である。さらに、ICI治療が限定される主な理由はT細胞の無差別な活性化であり、これは重篤な免疫関連副作用に至り、継続した治療を不可能にする21,22。したがって、ICI抵抗性を克服し、あるいは重篤な副作用を改善することのできる、抗腫瘍免疫を進めるための新規な治療戦略がおおいに求められている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、免疫チェックポイント治療に抵抗性のある癌の治療のための方法および医薬組成物に関する。特に、本発明は特許請求の範囲に定義されている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
発明の詳細な説明
マクロファージ生物学の理解における最近の研究により、腫瘍関連マクロファージは極めて異種であり、腫瘍の微小環境中でいくつかの異なるサブセットが共存していることを明らかにした。これらのサブセットは発現プロファイルや起源だけでなく、腫瘍促進機能または抗腫瘍機能を示すかにおいても異なる。本明細書において、本発明者らは、CD163およびIL10, Ido1 やLgals1のような免疫調節サイトカインを発現する転移性黒色腫のマウスモデルにおけるマクロファージサブセットを記載する。αCD163 mAbと結合した細胞毒性脂質ナノ粒子を用いる抗PD-1チェックポイント阻害剤抵抗性黒色腫モデル中のCD163発現細胞の特異的枯渇は、CD4+ と活性化 CD8+ T-細胞の大きな浸潤をもたらす。CD163+TAMのみの特異的枯渇はCD163neg炎症性マクロファージの蓄積をもたらし、これは活性化T-細胞と一緒になって抗腫瘍性免疫応答と腫瘍の退行を引き起こす。これらのデータを考え合わせると、CD163+マクロファージは強い免疫抑制機能をもち、CD163+マクロファージを失うことは腫瘍免疫微小環境の再教育に至ることが明らかとなる。このことは、CD163+マクロファージが腫瘍促進性の腫瘍免疫微小環境を維持するために極めて重要であること、およびこの集団を標的にすることが免疫チェックポイント阻害剤抵抗性腫瘍の魅力的な治療標的となることを示している。
【0008】
本明細書では、M130 MM130 またはSCARI1としても知られる「CD163」 (Cluster of Differentiation 163)は当業界における一般的意味をもち、ヒト中でCD163 遺伝子 [Gene ID: 9332]によってコードされるタンパク質をいう。CD163は単球およびマクロファージでのみ発現される。CD163はマクロファージによるヘモグロビン/ハプトグロビン複合体の排出およびエンドサイトーシスに関与する急性期制御受容体として機能し、それゆえ遊離のヘモグロビンが仲介する酸化的損傷から組織を保護し得る。またこのタンパク質は、細菌および局所的炎症の誘引物質に関する生来の免疫センサーとしても機能するのかも知れない。分子の大きさは130 kDaである。この受容体はスカベンジャー受容体システインリッチファミリータイプBに属し、1048アミノ酸残基の細胞外ドメイン、1回膜貫通セグメントおよびいくつかのスプライス変異をもつ細胞質尾部からなる。ヒトアミノ酸配列の例を配列番号1に示す。CD163の細胞外ドメインは配列番号1の42位のアミノ酸残基から1050位のアミノ酸残基である。
【表1】
【0009】
本明細書では、用語「腫瘍関連マクロファージ」または「TAM」は当業界における一般的意味をもち、マクロファージ系統に属する細胞のタイプをいう。これは腫瘍塊のすぐ近くまたは内部に見られる。TAMは循環性単球または常在組織マクロファージに由来し、多くの腫瘍型の間質中に見られる主要白血球浸潤を形成する。したがって、用語「CD163+腫瘍関連マクロファージ」は、CD163の発現を特徴とするTAMのサブセットをいう。ある態様では、本発明のCD163+腫瘍関連マクロファージの集団は、IL10, Ido1 や Lgals1のような免疫調節サイトカインの発現でさらに特徴付けられる。
【0010】
よって、本発明の第1の目的は、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる治療的有効量の薬剤を患者に投与することを含む、癌に苦しむ患者における腫瘍浸潤性CD8+ T細胞の数を増加する方法に関する。
【0011】
本明細書では、用語「CD8+ T細胞」は当業界における一般的意味をもち、その表面にCD8を発現するT細胞のサブセットをいう。これらはMHCクラスI限定的で、細胞毒性T細胞として機能する。「CD8+ T細胞」は細胞毒性Tリンパ球(CTL)、Tキラー細胞、細胞溶解性T細胞、またはキラーT細胞とも呼ばれる。CD8抗原は免疫グロブリンスーパー遺伝子ファミリーの一員であり、主要組織適合性複合体クラスI限定的相互作用における連想認識要素(associative recognition elements)である。本明細書では、用語「腫瘍浸潤性CD8+ T細胞」は、血流を離れて腫瘍に移動した患者のCD8+ T細胞のプールをいう。
【0012】
本明細書では、用語「癌」は当業界における一般的意味をもち、固形癌および血液由来腫瘍を含むが、これに限定されない。用語「癌」は皮膚、組織、臓器、骨、軟骨、血液および血管の疾患を含む。さらに用語「癌」は原発癌および転移癌を含む。本発明の方法および組成物で治療される癌の例は、膀胱、血液、骨、骨髄、脳、胸、大腸、食道、胃腸管、歯肉、頭、腎臓、肝臓、肺、鼻咽頭、首、卵巣、前立腺、皮膚、胃、精巣、舌、または子宮由来の癌細胞を含むが、これに限定されない。さらに、癌は、これらに限定される訳ではないが、特に以下の組織学的タイプのものでありうる:悪性新生物;癌腫;未分化癌腫;巨細胞紡錘細胞癌;小細胞癌;乳頭癌;扁平上皮癌;リンパ上皮癌;基底細胞癌;基質癌;移行上皮癌;乳頭状移行上皮癌;腺癌;悪性ガストリノーマ;胆管癌;肝細胞癌;混合型胆管癌および肝細胞癌;小柱腺癌;腺様嚢胞癌;腺腫性ポリープにおける腺癌家族性大腸ポリポーシス;固形癌;悪性カルチノイド腫瘍;細気管支-肺胞腺癌;乳頭腺癌;色素嫌性癌;好酸性癌;好酸性腺癌;好塩基性癌;明細胞腺癌;顆粒球癌;卵胞腺癌;乳頭および卵胞腺癌;非被包性硬化性癌;副腎皮質癌;類内膜癌;皮膚付属器癌;アポクリン腺癌;脂腺癌;耳垢腺癌;粘表皮癌;嚢胞腺癌;乳頭嚢胞腺癌;乳頭状漿液嚢胞腺癌;粘液性嚢胞腺癌;粘液性腺癌;印環細胞癌;浸潤性乳管癌;髄様癌;小葉癌;炎症性癌;乳腺ページェット病;腺房細胞癌;腺扁平上皮癌;扁平上皮化生随伴腺癌;悪性胸腺腫;悪性卵巣間質癌;悪性卵胞膜細胞腫;悪性顆粒膜細胞腫;悪性神経芽細胞腫;セルトリ細胞癌;悪性ライディヒ細胞癌;悪性脂質細胞癌;悪性傍神経節腫;悪性副腎外傍神経節腫;褐色細胞腫;グロムス肉腫;悪性黒色腫;無色素性黒色腫;表在拡大型黒色腫;巨大色素母斑における悪性黒色腫;類上皮細胞黒色腫;悪性青色母斑;肉腫;線維肉腫;線維性組織球種;粘液肉腫;脂肪肉腫;平滑筋肉腫;横紋筋肉腫;胚性横紋筋肉腫;卵巣状横紋筋肉腫;基底肉腫;悪性混合腫瘍;ミュラー管混合腫瘍;腎芽腫;肝芽腫;癌肉腫;悪性間葉腫;悪性ブレンナー腫瘍;悪性葉状腫瘍;滑膜肉腫;悪性中皮腫;未分化胚細胞腫;胎生期癌;悪性奇形腫;悪性卵巣甲状腺癌;絨毛癌;悪性中腎癌;血管肉腫;悪性血管上皮腫;カポジ肉腫;悪性血管周皮腫;リンパ管肉腫;骨肉腫;骨膜性骨肉腫;軟骨肉腫;悪性軟骨芽細胞腫;間葉性軟骨肉腫;腱鞘巨細胞腫;ユーイング肉腫;悪性歯原性腫瘍;骨髄芽球性歯肉腫;悪性エナメル上皮腫;エナメル上皮線維肉腫;悪性松果体腫瘍;脊索腫;悪性グリオーマ;上衣腫;星細胞腫;原形質性星細胞腫;線維性星細胞腫;星芽腫;膠芽腫;乏突起神経膠腫;乏突起膠芽細胞腫;原始神経外胚葉性腫瘍;小脳肉腫;神経節細胞芽腫;神経芽腫;網膜芽腫;嗅神経原腫瘍;悪性髄膜腫;神経線維肉腫;悪性神経鞘腫 ;悪性顆粒細胞腫;悪性リンパ腫;ホジキン病;ホジキンリンパ腫;側肉芽腫;小リンパ球悪性リンパ腫;びまん性大細胞型リンパ腫;悪性濾胞性リンパ腫;菌状息肉症;その他の特定された非ホジキンリンパ腫;悪性組織球症;多発性骨髄腫;マスト細胞肉腫;免疫増殖性小腸疾患;白血病;リンパ性白血病;血漿細胞白血病;赤白血病;リンパ肉腫細胞白血病; 骨髄性白血病;好塩基性白血病;好酸性白血病;単球性白血病;マスト細胞白血病;巨核芽球性白血病;骨髄性肉腫;および有毛細胞白血病。
【0013】
ある態様では、被験者は黒色腫を患ってる。本明細書では、「黒色腫」は皮膚およびその他の器官のメラニン形成細胞系に由来する腫瘍の成長によって特徴付けられる症状をいう。ほとんどのメラニン形成細胞は皮膚で生じるが、髄膜、消化管、リンパ節および眼でも生じる。黒色腫が皮膚で生じるときは、皮下黒色腫と呼ばれる。黒色腫は目でも生じ、眼黒色腫または眼内黒色腫と呼ばれる。黒色腫はまれに髄膜、消化管、リンパ節、またはメラニン形成細胞が見られるその他の領域で生じる。黒色腫の40-60 %はセリン-スレオニンタンパク質キナーゼB-RAF (BRAF)をコードする遺伝子中に活性変異をもつ。黒色腫に見られるBRAF変異のうち、90 % 以上がコドン600においてであり、そのうち90 % 以上が単一ヌクレオチド変異であり、グルタミン酸をバリンに置換する(BRAFV600E)。
【0014】
本発明のさらなる目的は、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤と、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤との治療的に有効な組合せを被験者に投与することを含む、これを必要とする被験者における癌の治療法に関する。
【0015】
本明細書では、用語「治療」または「治療する」は、予防または防御的な処置、ならびに治療または疾患調整的処置の両方をいい、病気にかかる危険があるか、あるいは病気にかかったと疑われる患者、および病気であるか、あるいは病気や医学症状に苦しむと診断された患者の治療を含み、また臨床の再発抑制を含む。治療は、医学症状をもつ患者または究極的に疾患を得た患者に、予防、治療、開始の遅延、重症度の軽減、疾患もしくは疾患の再発の1以上の症状の軽減をするために、またはこのような治療をしない場合に予測される以上に患者の生存を延長するために施される。「治療計画」とは、病気治療のパターン、例えば治療中に用いる投与パターンをいう。治療計画には、初期計画および維持計画を含み得る。「初期計画」または「初期」との用語は、病気の初期治療に用いる治療計画(もしくは治療計画の一部)をいう。初期計画の一般的目標は、治療計画の初期に患者に高レベルの薬剤を提供することである。初期計画では、「増量計画」を(部分的または全部で)用い得、これは医師が維持計画期で用いるよりも高い投与量で投与するか、医師が維持計画期で用いるよりも高い頻度で投与するか、あるいはその両方行うことを含むことができる。「維持計画」または「維持期」との用語は、病気の治療中の患者を維持するために、例えば長期間(何か月間または何年間)患者を緩解に保つために用いる治療計画(または治療計画の一部)をいう。維持計画では、連続治療(例えば、週ごと、月ごと、あるいは年ごとのように定期的に薬剤を投与する)を用いるか、または断続治療(例えば、中断治療、断続治療、再発時に治療、もしくは特定の予め定められた基準に達したとき[例えば、痛み、病気の拡大など])を用い得る。
【0016】
本明細書では、用語「免疫チェックポイント阻害剤」は当業界における一般的意味をもち、免疫阻害性チェックポイントタンパク質の機能を阻害するあらゆる化合物をいう。本明細書では、用語「免疫チェックポイントタンパク質」は当業界における一般的意味をもち、シグナルを上昇させる(刺激性チェックポイント分子)またはシグナルを下降させる(阻害性チェックポイント分子)の何れかにおいて、T細胞で発現される分子をいう。免疫チェックポイント分子は当業界では、CTLA-4 および PD-1依存性経路と似た免疫チェックポイント経路を構成すると認識されている(例えば、Pardoll, 2012. Nature Rev Cancer 12:252-264; Mellman et al., 2011. Nature 480:480- 489を参照)。阻害性チェックポイント分子の例としては、A2AR, B7-H3, B7-H4, BTLA, CTLA-4, CD277, IDO, KIR, PD-1, LAG-3, TIM-3 および VISTAを含む。阻害には機能の減少および完全な阻害を含む。好ましい免疫チェックポイント阻害剤は免疫チェックポイントタンパク質を特異的に認識する抗体である。多数の免疫チェックポイント阻害剤が公知であり、これらの公知の免疫チェックポイント阻害剤と同様に、代替的な免疫チェックポイント阻害剤が(近い)将来に開発されるであろう。免疫チェックポイント阻害剤は、ペプチド、抗体、核酸分子および小分子を含む。免疫チェックポイント阻害剤の例としては、PD-1 アンタゴニスト, PD-L1 アンタゴニスト, PD-L2 アンタゴニスト, CTLA-4 アンタゴニスト, VISTA アンタゴニスト, TIM-3 アンタゴニスト, LAG-3 アンタゴニスト, IDO アンタゴニスト, KIR2D アンタゴニスト, A2AR アンタゴニスト, B7-H3 アンタゴニスト, B7-H4 アンタゴニスト, および BTLA アンタゴニストを含む。
【0017】
ある態様では、PD-1 (Programmed Death-1) axisアンタゴニストは、PD-1 アンタゴニスト(例えば、抗-PD-1 抗体), PD-L1 (Programmed Death Ligand-1) アンタゴニスト(例えば、抗-PD-L1 抗体) および PD-L2 (Programmed Death Ligand-2) アンタゴニスト(例えば、抗-PD-L2 抗体)を含む。ある態様では、抗-PD-1 抗体は、MDX-1106 (ニボルマブ, MDX-1106-04, ONO-4538, BMS-936558, およびOpdivo(登録商標)としても知られている)、 Merck 3475 (ペムブロリズマブ, MK-3475, ラムブロリズマブ, Keytruda(登録商標), および SCH-900475としても知られている)、および CT-011 (ピジリズマブ, hBAT, および hBAT-1としても知られている)からなる群から選択される。ある態様では、PD-1 結合性アンタゴニストは AMP-224 (B7-DCIgとしても知られている)である。ある態様では、抗-PD-L1 抗体は YW243.55.S70, MPDL3280A, MDX-1105, およびMEDI4736からなる群から選択される。BMS-936559 としても知られているMDX-1105は WO2007/005874に記載されている抗-PD-L1 抗体である。抗体 YW243.55. S70 はWO 2010/077634 A1に記載されている抗-PD-L1である。MEDI4736 はWO2011/066389 および US2013/034559に記載されている抗-PD-L1 抗体である。MDX-1106-04, ONO-4538 または BMS-936558としても知られているMDX-1106はU.S. Pat. No. 8,008,449 および WO2006/121168に記載されている抗-PD-1 抗体である。MK-3475 または SCH-900475としても知られているMerck 3745はU.S. Pat. No. 8,345,509 および WO2009/114335に記載されている抗-PD-1 抗体である。hBAT または hBAT-1としても知られているCT-011(ピジリズマブ)はWO2009/101611に記載されている抗-PD-1 抗体である。B7-DCIgとしても知られているAMP-224はWO2010/027827 および WO2011/066342に記載されているPD-L2-Fc融合可溶性受容体である。アテゾリムマブはU.S. Pat. No. 8,217,149に記載されている抗-PD-L1 抗体である。アベルマブはUS 20140341917に記載されている抗-PD-L1 抗体である。CA-170はWO2015033301 および WO2015033299に記載されているPD-1アンタゴニストである。その他の抗-PD-1 抗体はU.S. Pat. No. 8,609,089, US 2010028330, および/または US 20120114649に記載されている。ある態様では、PD-1阻害剤はニボルマブ、ペムブロリズマブまたはピジリズマブから選択される抗-PD-1 抗体である。ある態様では、PD-L1アンタゴニストはアベルマブ、BMS-936559, CA-170, ドゥルバルマブ、MCLA-145, SP142, STI-A1011, STIA1012, STI-A1010, STI-A1014, A110, KY1003 およびアテゾリムマブからなる群から選択され、好ましいものはアベルマブ、ドゥルバルマブまたはアテゾリムマブである。
【0018】
ある態様では、CTLA-4 (細胞毒性 T-リンパ球抗原-4)アンタゴニストは抗-CTLA-4 抗体、ヒト抗-CTLA-4 抗体、マウス抗-CTLA-4 抗体、哺乳動物抗-CTLA-4 抗体、ヒト化抗-CTLA-4 抗体、モノクローナル抗-CTLA-4 抗体、ポリクローナル抗-CTLA-4 抗体、キメラ抗-CTLA-4 抗体、MDX-010 (イピリムマブ)、トレメリムマブ、抗-CD28 抗体、抗-CTLA-4 アドネクチン、抗-CTLA-4 ドメイン抗体、1本鎖抗-CTLA-4 断片、重鎖抗-CTLA-4 断片、軽鎖抗-CTLA-4 断片、共刺激性経路を作動するCTLA-4の阻害剤、PCT 公報 WO 2001/014424に開示されている抗体、PCT 公報 WO 2004/035607に開示されている抗体、U.S. 公報 No. 2005/0201994に開示されている抗体、およびEP特許 No. EP 1212422 Bに開示されている抗体からなる群から選択される。さらなる CTLA-4 抗体は U.S. Pat. Nos. 5,811,097; 5,855,887; 6,051,227; および 6,984,720; PCT 公報 WO 01/14424 および WO 00/37504; ならびにU.S. 公報 Nos. 2002/0039581 および 2002/086014に記載されている。本発明の方法に使用できるその他の抗-CTLA-4 抗体は、例えば以下の文献に開示されているものを含む: WO 98/42752; U.S. Pat. Nos. 6,682,736 および 6,207,156; Hurwitz et al., Proc. Natl. Acad. Sci. USA, 95(17): 10067-10071 (1998); Camacho et al., J. Clin: Oncology, 22(145): Abstract No. 2505 (2004) (抗体 CP-675206); Mokyr et al., Cancer Res., 58:5301-5304 (1998), および U.S. Pat. Nos. 5,977,318, 6,682,736, 7,109,003, および 7,132,281。好ましい臨床的CTLA-4 抗体はヒトモノクローナル抗体(MDX-010 やCAS No. 477202-00-9 をもつイピリミマブとも呼ばれ、Medarex, Inc., Bloomsbury, N.J.から入手できる)がWO 01/14424に開示されている。CTLA-4 アンタゴニスト(抗体)については、これらが知られており、トレメリムマブ(CP-675,206) およびイピリミマブを含む。
【0019】
ある態様では、免疫治療は患者にCTLA-4アンタゴニストとPD-1アンタゴニストの組合せを投与することからなる。
【0020】
その他の免疫チェックポイント阻害剤は、可溶性Ig融合タンパク質(Brignone et al., 2007, J. Immunol. 179:4202-4211)であるIMP321のようなリンパ球活性化遺伝子-3 (LAG-3) 阻害剤を含む。その他の免疫チェックポイント阻害剤は、B7-H3 および B7-H4阻害剤のようなB7阻害剤を含む。特に、抗-B7-H3 抗体 MGA271 (Loo et al., 2012, Clin. Cancer Res. July 15 (18) 3834)がある。さらに、TIM-3 (T-細胞免疫グロブリンドメインおよびムチンドメイン3)阻害剤(Fourcade et al., 2010, J. Exp. Med. 207:2175-86 および Sakuishi et al., 2010, J. Exp. Med. 207:2187-94)を含む。本明細書では、用語「TIM-3」は当業界における一般的意味をもち、T-細胞免疫グロブリンおよびムチンドメイン含有分子3をいう。TIM-3の天然リガンドはガラクチン9(Gal9)である。したがって、本明細書で用いる用語「TIM-3阻害剤」はTIM-3の機能を阻害できる化合物、物質または組成物をいう。例えば、前記阻害剤はTIM-3の発現または活性を阻害する、TIM-3シグナル伝達経路を調整またはブロックする、および/またはTIM-3のガラクチン-9との結合をブロックすることができる。TIM-3への特異性をもつ抗体は当業界で周知であり、典型的には WO2011155607, WO2013006490 および WO2010117057に記載されている。
【0021】
ある態様では、免疫チェックポイント阻害剤はIDO阻害剤である。IDO阻害剤の例はWO 2014150677に記載されている。IDO阻害剤の限定的でない例は、1-メチル-トリプトファン(IMT)、β- (3-ベンゾフラニル)-アラニン、β-(3-ベンゾ(b)チエニル)-アラニン)、6-ニトロ-トリプトファン、6- フルオロ-トリプトファン、4-メチル-トリプトファン、5 -メチル-トリプトファン、6-メチル-トリプトファン、5-メトキシ-トリプトファン、5 -ヒドロキシ-トリプトファン、インドール3-カルビノール、3,3'- ジインドリルメタン、エピガロカテキンガレート、5-Br-4-Cl-インドキシル1,3-ジアセテート、9- ビニルカルバゾール、アセメタシン、5-ブロモ-トリプトファン、5-ブロモインドキシルジアセテート、3- アミノ-ナフトエ酸、ピロリジンジチオカルバメート、4-フェニルイミダゾール、ブラシニン誘導体、チオヒダントイン誘導体、β-カルボリン誘導体、またはブラシレキシン誘導体である。好ましくは、IDO阻害剤は1-メチル-トリプトファン、β- (3-ベンゾフラニル)-アラニン、6-ニトロ-L-トリプトファン、3- アミノ-ナフトエ酸およびβ-[3-ベンゾ(b)チエニル]-アラニンまたはその誘導体もしくはプロドラッグから選択される。
【0022】
本明細書では、用語「共投与」は、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤と免疫チェックポイント阻害剤の組合せを同じ患者に投与する手順をいう。CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤と免疫チェックポイント阻害剤は本質的に同時に同時投与されるか、順次に投与され得る。投与が順次になされる場合は、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤は免疫チェックポイント阻害剤の前に投与される。CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤と免疫チェックポイント阻害剤は同じベヒクルで投与される必要はない。CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤と免疫チェックポイント阻害剤は1回以上投与され、組合せの各成分の投与回数は同じであっても異なっていてもよい。また、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤と免疫チェックポイント阻害剤は同じ部位に投与する必要はない。
【0023】
ここで用いる用語「組合せ」および「組合せ治療」は交換可能であり、少なくとも2つの化合物を同時に、別々に、または順次に投与することを含む治療をいう。本明細書では、用語「共投与」は、少なくとも2つの化合物の組合せを同じ患者に投与する手順をいう。前記少なくとも2つの化合物は本質的に同時に同時投与されるか、順次に投与され得る。少なくとも2つの化合物は異なるベヒクルまたは組成物で別々に投与することができる。また、少なくとも2つの化合物は同じベヒクルまたは組成物(医薬組成物など)中で投与することもできる。少なくとも2つの化合物は1回以上投与され、組合せの各成分の投与回数は同じであっても異なっていてもよい。
【0024】
特に、本発明の方法は、CD8+ T細胞の低い腫瘍浸潤によって特徴付けられる癌の治療にとりわけ適している。したがって、本発明のさらなる目的は、i)患者から得られる腫瘍組織試料中のCD8+ T細胞の密度を定量する、ii)工程i)で定量した密度を予め定めた参照値と比較する、そしてiii) 工程i)で定量したCD8+ T細胞の密度が対応の予め定めた参照値よりも低いときに、組合せ治療的に有効量のCD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤と免疫チェックポイント阻害剤を患者に投与することを含む、必要とする患者の癌を治療する方法に関する。
【0025】
ある態様では、本発明の方法は、CD8+ T細胞の低い腫瘍浸潤とCD163+腫瘍関連マクロファージの高い腫瘍浸潤によって特徴付けられる癌の治療に特に適している。したがって、本発明のさらなる目的は、i)患者から得られる腫瘍組織試料中のCD8+ T細胞の密度とCD163+腫瘍関連マクロファージの密度を定量する、ii)工程i)で定量した密度を予め定めた参照値と比較する、そしてiii) 工程i)で定量したCD163+腫瘍関連マクロファージの密度が対応の予め定めた参照値よりも高く、工程i)で定量したCD8+ T細胞の密度が対応の予め定めた参照値よりも低いときに、組合せ治療的に有効量のCD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤と免疫チェックポイント阻害剤を患者に投与することを含む、必要とする患者の癌を治療する方法に関する。
【0026】
本明細書では、用語「腫瘍組織試料」は患者由来のあらゆる組織腫瘍試料をいう。前記組織試料はインビトロ評価の目的で得られる。ある態様では、腫瘍試料は患者から切除された腫瘍から得られ得る。ある態様では、腫瘍試料は患者の原発腫瘍で行われるか、あるいは患者の原発腫瘍から遠い転移試料で行われる生検から得られ得る。例えば、結腸直腸癌にかかった患者の腸で行われる内視鏡生検である。ある態様では、腫瘍組織試料は(i)全体の原発腫瘍(全部)、(ii)腫瘍の中心からの組織試料、(iii)腫瘍を直接周む組織から得られる組織試料であって、腫瘍の「侵襲周辺」と特に呼ばれるもの、(iv)腫瘍に近いリンパ島、(v)腫瘍に最も近いリンパ節、(vi)(例えば治療後の患者の追跡のために行う)前手術で回収した腫瘍組織試料、および(vii)遠位の転移を含む。本明細書では、「侵襲周辺」は当業界における一般的意味をもち、腫瘍を囲む細胞環境をいう。ある態様では、腫瘍組織試料は、それが腫瘍の中心由来、腫瘍の侵襲周辺由来、最も近いリンパ節由来であるかどうかにかかわらず、腫瘍中心から、あるいは腫瘍の侵襲周辺から除去された組織片またはスライスを含み、手術による腫瘍切除後、あるいは生検用に組織試料を回収後、さらには1またはいくつかの生物学的マーカーの定量後、特に組織学的または免疫組織化学的方法によって、フローサイトメトリー法によって、ゲノム分析やプロテオミクス解析を含む遺伝子またはタンパク質発現分析の方法を行ったものを含む。もちろん、腫瘍組織試料は種々の周知の回収後の準備法や保存法(固定、保存、凍結など)に供され得る。試料は新鮮、凍結、固定(ホルマリン固定など)、あるいは包埋(パラフィン包埋など)されたものであってよい。
【0027】
ある態様では、細胞密度の定量は免疫組織化学(IHC)で決定される。例えば、細胞密度の定量は、腫瘍組織試料を当該細胞の細胞表面マーカーに特異的な結合相手(抗体など)と接触させることによって行う。典型的には、細胞密度の定量は、腫瘍組織試料を、CD8+ 細胞についてはCD8 に、そしてCD163+腫瘍関連マクロファージについては CD163 に特異的な結合相手(抗体など)と接触させることによって行う。典型的には、細胞密度は腫瘍組織試料の表面領域の1単位当たりで数えられる細胞数として、例えば、腫瘍組織試料の表面領域のcm2または mm2当たりで数えられる細胞数として表される。ある態様では、細胞密度は試料の単位容積当たりの細胞数として、例えば、腫瘍組織試料のcm3当たりの細胞数としても、表され得る。ある態様では、細胞密度は全細胞(これを100%とする)当たりの特定の細胞のパーセンテージからなることもできる。免疫組織化学法は典型的には以下の工程を含む:i)腫瘍組織試料をホルマリンで固定する、ii)前記腫瘍組織試料をパラフィン中に包埋する、iii)前記腫瘍組織試料を染色用に切片にする、iv)切片をマーカーに特異的な結合相手とインキュベートする、v)切片をリンスする、vi)切片を典型的にはビオチニル化した第二抗体とインキュベートする、そしてvii)抗原-抗体複合体を典型的にはアビジン-ビオチン-ペルオキシダーゼ複合体で明らかにする。したがって、腫瘍組織試料をまず結合相手とインキュベートする。洗浄後、興味のあるマーカーと結合した標識抗体を、標識抗体によって生じる標識の種類に応じた適当な手法、例えば、放射性、蛍光または酵素標識で明らかにする。複数の標識を同時に行うこともできる。あるいは、本発明の方法は(強度染色シグナルに対する)増幅系と結合した第二抗体および酵素分子を使うこともできる。そのような結合した第二抗体は商業的に入手可能であり、例えば、Dako, EnVision システムである。対比染色は例えば、H&E, DAPI, Hoechstを用い得る。その他の染色法は当業者に明らかなあらゆる適切な方法、例えば、自動、半自動もしくは手動のシステムを用いて実施できる。例えば、1以上の標識を抗体につけて、標的タンパク質(すなわちマーカー)の検出を可能とする。標識の例には、放射性同位体、蛍光色素、リガンド、化学発光剤、酵素、およびこれらの組合せを含む。ある態様では、標識は量子ドットである。第一および/または第二アフィニティリガンドと結合できる標識の非限定的な例には、蛍光色素または金属(フルオレセイン、ローダミン、フィコエリスリン、フルオレサミン)、発色団染料(ロドプシンなど)、化学発光化合物(ルミナール、イミダゾールなど)および生物発光性タンパク質(ルシフェリン、ルシフェラーゼなど)、ヘプテン(ビオチンなど)を含む。その他の多数の有用な蛍光発光および発色団が Stryer L (1968) Science 162:526-533 およびBrand L and Gohlke J R (1972) Annu. Rev. Biochem. 41:843-868に記載されている。アフィニティリガンドは酵素(ホースラディッシュペルオキシダーゼ、アルカリホスファターゼ、β-ラクタマーゼなど)、放射性同位体(3H, 14C, 32P, 35S または 125Iなど) および粒子(金など)でも標識できる。異なるタイプの標識を種々の化学反応、例えば、アミン反応またはチオール反応を用いてアフィニティリガンドと結合することができる。しかし、アミンやチオール以外の反応基、例えば、アルデヒド、カルボン酸やグルタミンなども使用できる。多くの酵素染色法が興味のあるタンパク質の検出用に当業界で知られている。例えば、酵素相互作用はペルオキシダーゼやアルカリホスファターゼを用いて、またはDAB, AEC や Fast Redのような異なる色原体を用いて可視化できる。その他の例では、抗体はペプチドやタンパク質と結合して、標識した結合相手または抗体を介して検出できる。間接的IHCアッセイでは、第二抗体または第二結合相手は標識されていないので、第一結合相手との結合を検出する必要がある。得られる染色した標本は検出可能なシグナルを可視化し、染色のデジタル画像などの画像を得るためのシステムを用いてそれぞれ画像化される。画像入手の方法は当業者によく知られている。例えば、試料を染色すると、光学的もしくは非光学的画像装置のいずれかを用いて染色または生物マーカー標識を検出でき、例えば、直立もしくは倒立光学顕微鏡、共焦点走査型顕微鏡、カメラ、走査型もしくはトンネル電子顕微鏡、走査型プローブ顕微鏡、および画像赤外検出器などを用いる。ある例では、画像はデジタルで捕える。次に得られた画像を用いて、試料中のマーカーの量を定量的もしくは半定量的に決定する。免疫組織化学で用いるのに適した種々の自動試料処理、スキャニングおよび分析システムが当業界で利用可能である。このようなシステムには自動染色および顕微鏡スキャニング、コンピュータ化画像分析、連続切片比較(試料の方向と大きさにおける変化を制御するため)、デジタルなレポート作成、および試料の保存記録と追跡(組織切片を乗せるスライドなど)を含む。慣用の光顕微鏡をデジタルの画像処理システムに結び付けて、免疫染色試料を含む細胞や組織の定量分析を行うための細胞画像システムが市販されている。例えば、CAS-200 システム(Becton, Dickinson & Co.)を参照。特に、検出は手動で、もしくはコンピュータプロセッサやソフトウェアを含む画像処理方法で行うことができる。例えば、このようなソフトウェアを用いて、当業者に公知の方法を用いて、染色の質や染色強度を含む要因に基づいて、画像を設定、調整、標準化および/または可視化することができる(例えば、公開のU.S. 特許公開No. US20100136549を参照)。画像は定量的もしくは半定量的に分析され、試料の染色強度に基づいてスコア化される。定量的もしくは半定量的な組織化学とは、特定のバイオマーカー(すなわちマーカー)の存在を同定し定量するために組織化学を行う、試料のスキャニングおよびスコア化方法をいう。定量的もしくは半定量的方法では画像ソフトウェアを用いて、染色密度もしくは染色量を検出するか、または人の眼によって染色を検出することもでき、ここでは訓練されたオペレーターが結果を数値で評価する。例えば、ピクセルカウントアルゴリズム(Aperio Spectrum Software, Automated QUantitatative Analysis platform (AQUA(登録商標) platform)など)や染色度を定量的もしくは半定量的に測定するその他の標準法を用いて画像を定量分析できる;例えば、U.S. Pat. No. 8,023,714; U.S. Pat. No. 7,257,268; U.S. Pat. No. 7,219,016; U.S. Pat. No. 7,646,905; 公開のU.S. 特許公開 No. US20100136549 および20110111435; Camp et al. (2002) Nature Medicine, 8:1323-1327; Bacus et al. (1997) Analyt Quant Cytol Histol, 19:316-328を参照。全染色領域の合計に対する強い陽性染色(茶色の染色など)の比率を計算して評価する。検出したバイオマーカー(すなわちマーカー)の量を定量して陽性ピクセルおよび/またはスコアのパーセンテージとする。例えば、前記量を陽性ピクセルのパーセンテージとして定量することができる。ある例では、前記量は染色領域のパーセンテージ、例えば、陽性ピクセルのパーセンテージとして定量できる。例えば、試料は少なくとも、もしくはおよそ少なくとも、もしくはおよそ0, 1%, 2%, 3%, 4%, 5%, 6%, 7%, 8%, 9%, 10%, 11%, 12%, 13%, 14%, 15%, 16%, 17%, 18%, 19%, 20%, 21%, 22%, 23%, 24%, 25%, 26%, 27%, 28%, 29%, 30%, 31%, 32%, 33%, 34%, 35%, 40%, 45%, 50%, 55%, 60%, 65%, 70%, 75%, 80%, 85%, 90%, 95% もしくはそれ以上の全染色領域に対する陽性ピクセルをもつことができる。ある態様では、試料の組織化学染色の強度もしくは量を数値で表すスコアが試料に与えられ、これは試料中に存在する標的バイオマーカー(マーカーなど)の量を表す。光学密度または領域パーセンテージ値を目盛りつきのスコア、例えば、整数スケールにすることができる。したがって、ある態様では、本発明の方法は以下の工程を含む:i)マーカー(前述の抗体など)と選択的に相互作用できる結合相手を用いて、自動スライド染色システムによって得られた組織片の1以上の免疫染色したスライスを提供する、ii)高解像度のスキャンキャプチャで工程i)のスライドのデジタル化を行う、iii)デジタル写真上で組織片のスライスを検出する、iv)同じ表面をもつ均一に分散した単位でサイズ参照グリッドを提供し、前記グリッドは分析する組織片のサイズに適合する、そしてv)各単位中の染色細胞の強度を検出、定量、および測定し、これによって各単位の染色細胞の数もしくは密度を評価する。
【0028】
ある態様では、予め定めた値が閾値またはカットオフ値となる。典型的には、「閾値」または「カットオフ値」は実験的に、経験的に、あるいは理論的に決定できる。また閾値は、当業者に理解されるように、既存の実験的および/または臨床的条件に基づいて任意に選択できる。例えば、正しく保存された過去の患者試料中の細胞密度の過去の測定値を予め定めた参照値の樹立に用いることができる。閾値は試験の機能ならびに利益/リスクのバランス(偽陽性や偽陰性の臨床的結果)にしたがって、最適な感度と特異性が得られるように決定しなければならない。典型的には、最適な感度と特異性(したがって閾値)は実験データに基づく受信者操作特性(ROC: Receiver Operating Characteristic)曲線を用いて決定される。例えば、参照群中の細胞密度を定量した後、試験試料中の測定密度の統計処理のためにアルゴリズム分析を用いて、試料の分類に有意性をもつ分類基準を得ることができる。ROC曲線のフルネームは受信者操作者特性曲線(receiver operator characteristic curve)であり、これは受信者操作特性曲線(receiver operation characteristic curve)としても知られている。これは主として臨床の生化学的診断試験に用いられる。ROC曲線は真の陽性率(感度)と偽の陽性率(1-特異性)の連続変数を反映する包括的指標である。これは感度と特異性の関係を画像合成法で明らかにする。一連の異なるカットオフ値(診断試験の正常な結果と異常な結果との間の閾値または臨界値、境界値)は一連の感度と特異性値を計算するための連続変数として設定される。したがって、曲線を描くために、感度は垂直座標として用いられ、特異性は水平座標として用いられる。曲線(AUC)の下の領域が多いほど、診断精度が高い。ROC曲線上、座標図の左上に最も近い点が、高い感度と高い特異性値の両方をもつ臨界的な点である。ROC曲線のAUC値は1.0 と0.5との間である。AUC>0.5の場合には、AUCが1に近づくほど、診断結果はよりよくなる。AUCが 0.5 と0.7との間の場合には、精度は低い。AUCが 0.7 と0.9との間の場合には、精度は中程度である。AUCが0.9より大きい場合には精度は極めて高い。このアルゴリズム法は好ましくはコンピュータで実施される。当業界で既存のソフトウェアもしくはシステムを用いてROC曲線を描くことができ、例えば、MedCalc 9.2.0.1 医用統計ソフトウェア、SPSS 9.0, ROCPOWER.SAS, DESIGNROC.FOR, MULTIREADER POWER.SAS, CREATE-ROC.SAS, GB STAT VI0.0 (Dynamic Microsystems, Inc. Silver Spring, Md., USA)など。ある態様では、予め定めた参照値は患者の生存期間と関連する。OS生存期間はある型の癌を特定の期間生存した人のパーセンテージに基づき表されることを当業者は認識するであろう。癌の統計では全体としての5年生存率がよく用いられる。一般に、OS率では、癌の生存者が5年の時点でまだ治療を受けているのか、癌から自由になった(回復した)のかを特定しない。DSFはより特定した情報を与え、これは回復した特定の癌をもつ人の数である。また、無増悪生存(PFS: progression-free survival)率(まだ癌をもつが、病気が増悪しない人の数)は、治療で一定の成果を得たが、癌は完全には消失していない人を含む。本明細書では、「短い生存期間」との表現は、患者が同じ癌を患う一般的患者集団で見られる中央値(または平均)よりも低い生存期間であることを意味する。患者が短い生存期間をもつとき、患者は「乏しい予後」となることを意味する。逆に、「長い生存期間」との表現は、患者が同じ癌を患う一般的患者集団で見られる中央値(または平均)よりも高い生存期間であることを意味する。患者が長い生存期間をもつとき、患者は「良好な予後」となることを意味する。
【0029】
本発明のさらなる目的は、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる治療的有効量の薬剤を被験者に投与することを含む、必要とする被験者における免疫チェックポイント治療に抵抗性である癌を治療する方法に関する。
【0030】
本明細書では、用語「免疫チェックポイント治療に抵抗性」は、最も広い文脈で用いられ、細胞の成長を阻害、細胞を殺傷、もしくは1以上の細胞機能の阻害のための、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤(PD-1アンタゴニストなど)の有効性が低いこと、および細胞の成長を阻害、細胞を殺傷、もしくは1以上の細胞機能の阻害をするように設計された薬剤への暴露を生き残る細胞の能力をいう。細胞によって示される抵抗性は、例えば薬剤に以前に暴露されたことによって獲得されたか、あるいは固有または生得のものであるかも知れない。細胞によって示される抵抗性は、薬剤が細胞に対して完全に無効であるという意味で完全であるか、あるいは薬剤の有効性が減少しているという意味で部分的でありうる。したがって、用語「抵抗性」は癌が繰り返し突発(outbreak)すること、あるいは突発や進行の前に疾患が治癒していたかどうかとは独立して癌が進行することをいう。
【0031】
本発明のさらなる目的は、癌を患う被験者に治療計画の一部として投与する免疫チェックポイント阻害剤の有効性/効力を増加する方法に関し、該方法は、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる医薬的有効量の薬剤を少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤と組合せて被験者に投与することを含む。
【0032】
本明細書では、表現「免疫チェックポイントの有効性を増加する」とは、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤が、CD8+ T細胞の増殖、移動、持続性および/または細胞毒性活性を増強する、免疫チェックポイント阻害剤の能力を増加することのできる能力をいう。免疫チェックポイント阻害剤がT CD8細胞殺傷活性を増加する能力は当業界で周知のいかなるアッセイを用いても決定できる。典型的には、アッセイはCD8+ T 細胞を標的細胞(例えば、CD8+ T細胞によって認識され、および/または溶解される標的細胞)と接触させるインビトロアッセイである。例えば、本発明の免疫チェックポイント阻害剤は、CD8+ T細胞による特定の溶解を約20%以上、好ましくは少なくとも約30%、少なくとも約40%、少なくとも約50%、または本発明の免疫チェックポイント阻害剤と接触させるCD8+ T 細胞もしくは CD8 T 細胞系と同じエフェクター:標的細胞比で得られる特定の溶解以上に増加する能力について選択できる。古典的な細胞毒性アッセイの例は慣用である。
【0033】
本明細書では、癌に関して、表現「増加した治療効率」は、癌細胞または固形腫瘍の成長の遅延または減少、あるいは癌細胞の総数または全体的な腫瘍負荷を減少することをいう。したがって、「改善された治療結果」または「増加した治療効率」は、例えば、腫瘍サイズの減少、癌の進行時間の増加、進行なしの生存の増加、全体としての生存時間の増加、平均寿命の増加、または生活の質の改善を含む臨床的に受容可能なあらゆる基準による患者の症状の改善を意味する。特に、「改善」または「増加」は、治療結果または効率の臨床的に受容可能なあらゆる指標を1%, 5%, 10%, 25%, 50%, 75%, 100%, または100% 以上改善または増加することをいう。本明細書では、免疫チェックポイント阻害剤とCD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤を含む組合せ組成物の活性および/または効率を比較するという文脈において用いるとき、表現「と比較して」は、当業者にとって比較しうると知られている量を用いる比較をいう。
【0034】
本発明のさらなる目的は、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる治療的有効量の薬剤を被験者に投与することを含む、癌を患う被験者における、投与された免疫チェックポイント阻害剤への抵抗性を防ぐ方法に関する。
【0035】
本明細書では、用語「CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤」は、前記集団を枯渇させることのできるあらゆる化合物をいう。本明細書では、CD163+腫瘍関連マクロファージに関して「枯渇する」との用語は、被験者の腫瘍中のCD163+ TAMの数の測定しうる減少をいう。減少は少なくとも約10%, 例えば、少なくとも約20%, 30%, 40%, 50%, 60%, 70%, 80%, 90%, 95%, 96%, 97%, 98%, 99%, またはそれ以上でありうる。ある態様では、前記用語は被験者の腫瘍中のCD163+ TAMの数を検出限界以下に減少することをいう。
【0036】
ある態様では、薬剤はCD163への結合アフィニティをもち、被験者の腫瘍中のCD163+ TAMの枯渇に至らしめる抗体である。特に、抗体は上で定義したCD163の細胞外ドメインに結合する。
【0037】
よって、本明細書では、用語「抗体」は抗原結合領域をもつあらゆる抗体様分子をいい、したがって、この用語は以下のような抗原結合ドメインを含む抗体断片を含む:Fab', Fab, F(ab')2, 単一ドメイン抗体(DABs), TandAbs ダイマー, Fv, scFv (一本鎖 Fv), dsFv, ds-scFv, Fd, 線形抗体, ミニボディ, ダイアボディ, 二重特異性抗体断片、バイボディ、トリボディ(scFv-Fab融合、それぞれ二重特異性または三重特異性); sc-ダイアボディ; kappa(lamda) bodies (scFv-CL 融合); BiTE (二重特異性 T-cell Engager, T細胞をひきつけるためのscFv-scFv タンデム); DVD-Ig (二重可変ドメイン抗体, 二重特異性フォーマット); SIP (小免疫タンパク質、ミニボディの一種); SMIP ("小分子免疫薬剤" scFv-Fc ダイマー; DART (ds-安定化ダイアボディ "Dual Affinity ReTargeting"); 1以上のCDRを含む小抗体ミメティックなどである。種々の抗体に基づく構築物や断片の調製および使用技術は当業界で周知である(Kabat et al., 1991, 特に参照することにより本明細書に援用される)。さらに、特にダイアボディはEP 404, 097 および WO 93/1 1 161に記載されている; また線形抗体はZapata et al. (1995)に記載されている。抗体は慣用の技術で断片とすることができる。例えば、F(ab')2 断片は抗体をペプシンで処理することで作製できる。得られるF(ab')2 断片をジスルフィド結合を減少するように処理してFab' 断片を得ることができる。パパイン消化によって、Fab 断片を形成し得る。Fab, Fab' および F(ab')2, scFv, Fv, dsFv, Fd, dAbs, TandAbs, ds-scFv, ダイマー, ミニボディ, ダイアボディ, 二重特異性抗体断片およびその他の断片も組換え法で合成または化学合成できる。抗体断片を作製する技術は当業界で周知であり、文献にも記載されている。例えば、Beckman et al., 2006; Holliger & Hudson, 2005; Le Gall et al., 2004; Reff & Heard, 2001 ; Reiter et al., 1996のそれぞれを参照;また Young et al., 1995 は有効な抗体断片の作製を記載し可能にしている。ある態様では、本発明の抗体は一本鎖抗体である。本明細書では、用語「単一ドメイン抗体」は当業界での一般的意味をもち、軽鎖を天然にもたないラクダ科の哺乳類に見られるようなタイプの抗体の一本鎖重鎖可変ドメインをいう。このような単一ドメイン抗体は“nanobody(登録商標)”でもある。(単一)ドメイン抗体の一般的記載は上述の先行文献およびEP 0 368 684, Ward et al. (Nature 1989 Oct 12; 341 (6242): 544-6), Holt et al., Trends Biotechnol., 2003, 21(11):484-490; および WO 06/030220, WO 06/003388を参照されたい。
【0038】
本明細書では、用語「結合」は抗体が表面分子とアフィニティをもつことを示す。本明細書では、用語「アフィニティ」は抗体がエピトープと結合する強さをいう。抗体のアフィニティは解離定数Kdで示され、これは[Ab] x [Ag] / [Ab-Ag]で定義され、ここで[Ab-Ag]は抗体-抗原複合体のモル濃度、[Ab]は非結合抗体のモル濃度、[Ag]は非結合抗原のモル濃度である。アフィニティ定数Ka は1/Kdで定義される。mAb のアフィニティを決める好ましい方法は、Harlow, et al., Antibodies: A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, N.Y., 1988), Coligan et al., eds., Current Protocols in Immunology, Greene Publishing Assoc. and Wiley Interscience, N.Y., (1992, 1993), および Muller, Meth. Enzymol. 92:589-601 (1983)に見られ、これらの文献は参照することによりすべてを本明細書に援用される。mAbのアフィニティを決める当業界で公知の好ましい標準法はBiacore装置を用いる。
【0039】
天然の抗体では、2本の重鎖が互いにジスルフィド結合で結合し、各重鎖は軽鎖とジスルフィド結合で結合している。2つのタイプの軽鎖、ラムダ(1) とカッパ(k)がある。抗体分子の機能的活性を決める5つの主な重鎖クラス(またはアイソタイプ):IgM, IgD, IgG, IgA および IgE がある。各鎖は異なる配列ドメインを含む。軽鎖は2つのドメイン、可変ドメイン(VL)と定常ドメイン(CL)を含む。重鎖は4つのドメイン、可変ドメイン(VH)と3つの定常ドメイン(CHI, CH2 および CH3,これらは CHと総称される)を含む。軽鎖可変ドメイン(VL)と重鎖可変ドメイン(VH)の両方は抗原の結合認識と特異性を決定する。軽鎖定常ドメイン(CL)と重鎖定常ドメイン(CH)は、抗体鎖の会合、分泌、経胎盤可動性、補体結合、およびFc受容体(FcR)との結合などの重要な生物学的性質を与える。Fv断片は免疫グロブリンのFab断片のN-末端部であり、1本の軽鎖と1本の重鎖の可変部分からなる。抗体の特異性は、抗体結合部位と抗原決定基との間の構造相補性に存在する。抗体結合部位は主として高度可変または相補性決定領域(CDR)由来の残基からなる。ときには、非高度可変領域またはフレームワーク領域(FR)由来の残基が抗体結合部位に関与するか、もしくは全体のドメイン構造、それ故結合部位に影響を及ぼす。相補性決定領域またはCDRは一緒になって、自然の免疫グロブリン結合部位の天然Fv領域のアフィニティと特異性とを決定するアミノ酸配列をいう。免疫グロブリンの軽鎖および重鎖はそれぞれ3つのCDRをもち、それぞれL-CDR1, L-CDR2, L- CDR3 および H-CDR1, H-CDR2, H-CDR3と呼ばれる。したがって、抗原結合部位は典型的には6つのCDRを含み、重鎖および軽鎖可変領域のそれぞれ由来のCDRセットを含む。フレームワーク領域(FR)はCDR間に挟まれたアミノ酸配列をいう。抗体可変ドメインにある残基はKabatらによって考えられたシステムで慣用的に番号付けられる。このシステムはKabat et al., 1987, Sequences of Proteins of Immunological Interest, US Department of Health and Human Services, NIH, USA (以後において“Kabat et al.”という)に定めてある。この番号付けシステムを本明細書で用いる。Kabatの残基指定は配列番号のアミノ酸残基の連続的番号付け(linear numbering)と必ずしも直接対応しない。実際の連続的アミノ酸配列は、フレームワークであれ、相補性決定領域(CDR)であれ、基本の可変ドメイン構造の構造成分を短縮または挿入したことに対応して、厳密なKabatの番号付けよりも少ないか、もしくは多いアミノ酸を含み得る。残基の正確なKabat番号付けは、抗体の配列を「標準の」Kabat番号付けした配列と並べてホモロジーを調べることによって各抗体について決定される。重鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号システムで残基31-35B (H-CDR1)、残基 50-65 (H-CDR2) および残基 95-102 (H-CDR3)に位置する。軽鎖可変ドメインのCDRは、Kabat番号システムで残基24-34 (L-CDR1)、残基50-56 (L-CDR2) および残基89-97 (L-CDR3)に位置する。
【0040】
ある態様では、抗体はヒト化抗体である。本明細書で「ヒト化」とは、CDR領域以外のアミノ酸のいくつか、ほとんど、もしくは全てをヒト免疫グロブリン分子由来の対応のアミノ酸で置換した抗体をいう。ヒト化の方法はU.S. Pat. Nos. 4,816,567, 5,225,539, 5,585,089, 5,693,761, 5,693,762 および 5,859,205(参照として本明細書に援用する)に記載されているが、これらに限定されない。
【0041】
ある態様では、抗体は完全ヒト抗体である。完全ヒトモノクローナル抗体は、ヒト免疫グロブリン重鎖および軽鎖遺伝子座の大部分でマウスをトランスジェニックに免疫することによっても作製できる。例えば、U.S. Pat. Nos. 5,591,669, 5,598,369, 5,545,806, 5,545,807, 6,150,584およびこれらで引用された文献(その内容を参照として本明細書に援用する)を参照されたい。
【0042】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は抗体依存性細胞障害を仲介する。本明細書では、用語「抗体依存性細胞障害」または「ADCC: antibody-dependent cell-mediated cytotoxicity」は、非特異的細胞毒性細胞(例えばナチュラルキラー(NK)細胞、好中球やマクロファージ)が標的細胞上で結合抗体を認識し、次いで標的細胞のリーシスを引き起こす細胞仲介の反応をいう。特定の作用メカニズムに限定する意図はないが、ADCCを仲介する細胞毒性細胞は一般にFc受容体(FcR)を発現する。
【0043】
本明細書では、「Fc領域」は、第1の定常領域免疫グロブリンドメインを除く抗体の定常領域を含むポリペプチドを含む。したがって、FcはIgA, IgDおよびIgGの終わり2つの定常領域免疫グロブリン、およびIgE および IgMの終わり3つの定常領域免疫グロブリン、ならびにこれらのドメインとの柔軟性のあるヒンジN-末端をいう。IgAとIgMについては、FcはJ鎖を含みうる。IgGについては、Fcは免疫グロブリンドメインCgamma2 および Cgamma3 (Cγ2 and Cγ3) ならびにCgamma1 (Cγ1) と Cgamma2 (Cγ2)との間のヒンジを含む。Fc領域の境界は変わりうるが、ヒトIgG重鎖Fc領域は通常カルボキシ末端に残基C226 またはP230を含むと定義されるが、ここでの番号付けはKabatらによるEUインデックスによる(1991, NIH Publication 91-3242, National Technical Information Service, Springfield, Va.)。「Kabatに記載されるEUインデックス」とは上述したKabatらに記載されたヒトIgG1 EU抗体の残基番号付けをいう。Fcは孤立したこの領域または抗体、抗体断片もしくはFc融合タンパク質という文脈におけるこの領域をいう。Fcバリアントタンパク質は、Fc領域を含む抗体、Fc融合、またはあらゆるタンパク質もしくはタンパク質ドメインでありうる。特に好ましいのは、バリアントFc領域を含むタンパク質であり、これはFc領域の天然には生じないバリアントである。天然には生じないFc領域(本明細書では「バリアントFc領域」ともいう)のアミノ酸配列は野生型アミノ酸配列と比較して少なくとも1つのアミノ酸残基の置換、挿入および/または欠失を含む。挿入や置換の結果としてバリアントFc領域の配列に見られる新しいアミノ酸残基は天然には生じないアミノ酸残基と呼ばれ得る。注記:限定するわけではないが、Kabat 270, 272, 312, 315, 356, および 358を含む多数のFc位置には多型が観察され、よって示される配列と先行技術の配列との間には若干の違いがありうる。
【0044】
用語「Fc受容体」または「FcR」は抗体のFc領域と結合する受容体をいうのに用いる。ADCC、NK細胞を仲介する初代細胞はFcγRIIIを発現するが、単球はFcγRI, FcγRII, FcγRIII および/または FcγRIVを発現する。造血細胞上でのFcRの発現はRavetch and Kinet, Annu. Rev. Immunol., 9:457-92 (1991)にまとめられている。分子のADCC活性を評価するには、U.S. Pat. No. 5,500,362 または 5,821,337などに記載のインビトロADCCアッセイを行い得る。このようなアッセイ用の有用なエフェクター細胞は末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞を含む。あるいは、または追加として、問題の分子のADCC活性はインビボ、例えば、Clynes et al., Proc. Natl. Acad. Sci. (USA), 95:652-656 (1998)に記載の動物モデルで評価もできる。本明細書で用語「エフェクター細胞」は1以上のFcRを発現し、エフェクター機能を行う白血球である。この細胞は少なくともFcγRI, FCγRII, FcγRIII および/または FcγRIVを発現し、ADCCエフェクター機能を行う。ADCCを仲介するヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)およびナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞毒性T細胞および好中球を含む。
【0045】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は全長抗体である。ある態様では、全長抗体はIgG1抗体である。ある態様では、全長抗体はIgG3抗体である。
【0046】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体はFcγRIA, FcγRIIA, FcγRIIB, FcγRIIIA, FcγRIIIB, および FcγRIVへの増加したアフィニティをもつバリアントFc領域を含む。ある態様では、本発明の抗体は少なくとも1のアミノ酸置換、挿入または欠失を含むバリアントFc領域を含み、前記少なくとも1のアミノ酸残基の置換、挿入または欠失がFcγRIA, FcγRIIA, FcγRIIB, FcγRIIIA, FcγRIIIB, および FcγRIVへの増加したアフィニティをもたらす。ある態様では、本発明の抗体は少なくとも1のアミノ酸置換、挿入または欠失を含むバリアントFc領域を含み、前記少なくとも1のアミノ酸残基が残基239, 330, および 332からなる群から選択され、ここでアミノ酸残基はEUインデックスにしたがって番号付けされる。ある態様では、本発明の抗体は少なくとも1のアミノ酸置換を含むバリアントFc領域を含み、前記少なくとも1のアミノ酸置換がS239D, A330L, A330Y, および1332Eからなる群から選択され、ここでアミノ酸残基はEUインデックスにしたがって番号付けされる。
【0047】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体のグリコシル化が変更される。例えば、アグリコシル化抗体(すなわちグリコシル化を欠く抗体)が作製できる。例えば、抗原への抗体のアフィニティを増加するようにグリコシル化を変更できる。このような炭水化物の変更は、抗体配列内の1以上のグリコシル化の位置を変えることによって達成できる。例えば、1以上のアミノ酸置換により1以上の可変領域フレームワークのグリコシル化の位置を排除し、これによってこの位置でのグリコシル化を排除することができる。このようなアグリコシル化は、抗体の抗原へのアフィニティを増加し得る。このようなアプローチはCoらによるU.S. 特許Nos. 5,714,350 および 6,350,861 にさらに詳細に記載されている。追加的に、または代替的に、抗体を異なるタイプのグリコシル化、例えば、低いフコシル残基量をもつか、フコシル残基をもたない低フコシル化または非フコシル化抗体、または増加したバイセクティング(bisecting)GlcNac構造をもつ抗体に変更することができる。このような改変グリコシル化パターンは抗体のADCC能力を増加することが示された。このような炭水化物の変更は、例えば改変グリコシル化機構をもつ宿主細胞中で抗体を発現させることによって達成できる。改変グリコシル化機構をもつ細胞は当業界で記載されており、本発明の組換え抗体を発現する宿主細胞として用いられて、改変グリコシル化をもつ抗体を産生する。例えば、HangらによるEP 1 ,176,195は機能的に破壊されたFUT8遺伝子をもつセルラインを記載し、この遺伝子はセルライン中で発現された抗体が低フコシル化またはフコシル残基なしを示すようなフコシルトランスフェラーゼをコードする。したがって、ある態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は低フコシル化または非フコシル化パターンを示すセルライン、例えば、フコシルトランスフェラーゼをコードするFUT8遺伝子の発現が少ない哺乳類セルライン中で組換え発現させることによって作製できる。PrestaによるPCT 公報 WO 03/035835は、フコースをAsn(297)-結合炭水化物に付着する能力が低く、宿主細胞中で発現する抗体の低フコシル化をもたらすバリアントCHOセルラインであるLecl3細胞を記載する。(またShields, R.L. et al, 2002 J. Biol. Chem. 277:26733-26740を参照)。UmanaらによるPCT 公報 WO 99/54342 は、糖タンパク質改変性グリコシルトランスフェラーゼ(例えばβ(l,4)-NアセチルグルコサミニルトランスフェラーゼIII (GnTIII))を発現するように遺伝子操作され、遺伝子操作されたセルライン中で発現した抗体が増加したバイセクティングGlcNac構造を示し、抗体の増加したADCC活性を示す結果をもたらすセルラインについて記載する。(またUmana et al, 1999 Nat. Biotech. 17: 176-180参照)。さらにEureka Therapeuticsは、フコシル残基をもたらさない改変哺乳動物グリコシル化パターンをもつ抗体を産生できる遺伝子操作したCHO哺乳動物細胞を記載する (http://www.eurekainc.com/a&boutus/companyoverview.html)。あるいは、本発明のヒトモノクローナル抗体は哺乳動物様グリコシル化パターンに遺伝子操作され、グリコシル化パターンとしてフコースを欠く抗体を産生し得る酵母や糸状菌中で作製できる(例えば EP1297172B1を参照)。
【0048】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は補体依存性細胞毒性を仲介する。「補体依存性細胞毒性」または「CDC: complement dependant cytotoxicity」は、補体活性化を開始して補体の存在下に標的を溶解する分子の能力をいう。補体活性化経路は補体系の第1成分(C1q)が同種抗原と複合体を作った分子(抗体など)と結合することによって開始される。補体活性化を評価するには、例えばGazzano-Santaro et al., J. Immunol. Methods, 202:163 (1996)に記載のCDCアッセイを実施し得る。
【0049】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は抗体依存性の食作用を仲介する。本明細書で用語「抗体依存性の食作用(antibody-dependent phagocytosis)」または「オプソニン化」は、FcγRsを発現する非特異的細胞毒性細胞が標的細胞上の結合抗体を認識して標的細胞の食作用を引き起こす細胞仲介性の反応をいう。
【0050】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は、CD163に対する第1の抗原結合部位と上述のエフェクター細胞に対する少なくとも1つの第2の抗原結合部位を含む多重特異性抗体である。この態様では、第2の抗原結合部位が、例えばヒトエフェクター細胞上の抗原と結合することによって殺傷メカニズムを補充するのに用いられる。ある態様では、エフェクター細胞はナチュラルキラー細胞のようなADCCを誘導することができる。例えば、単球、FcRを発現するマクロファージが標的細胞の特異的殺傷と免疫系のその他の成分に抗原を提示するのに関与する。ある態様では、エフェクター細胞は標的抗原または標的細胞を貪食し得る。エフェクター細胞上での特定のFcRの発現はサイトカインなどの体液因子によって制御されているのかも知れない。エフェクター細胞は標的抗原を貪食、または標的細胞を貪食もしくは溶解できる。適切な細胞毒性薬剤および第2の治療剤を以下に例示し、これらは毒素(放射性標識ペプチドなど)、化学治療剤、およびプロドラッグを含む。ある態様では、第2の結合部位は上で定義したFc受容体と結合する。ある態様では、第2の結合部位はNK細胞の表面分子と結合して該細胞を活性化する。ある態様では、第2の結合部位はNKp46と結合する。本発明の多重特異性抗体分子の例は限定するものではないが、以下のものを含む:(i)ILCの特定の表面分子と特異的な1つ、および第2抗原と特異的なもう1つと化学的ヘテロ結合により架橋された2つの抗体;(ii)2つの異なる抗原結合領域を含む1つの抗体;(iii) 2つの異なる抗原結合領域、例えば、追加のペプチドリンカーでタンデムに結合された2つのscFvを含む一本鎖抗体;(iv)軽鎖と重鎖のそれぞれが短いペプチド結合によってタンデムにつながる2つの可変ドメインを含む二重可変ドメイン抗体(DVD-Ig)(Wu et al., Generation and Characterization of a Dual Variable Domain Immunoglobulin (DVD-IgTM) Molecule, In : Antibody Engineering, Springer Berlin Heidelberg (2010)); (v) 化学結合した二重特異性(Fab')2 断片;(vi) Tandab、これは2つの一本鎖ダイアボディが融合して、標的抗原のそれぞれに対する結合部位をもつ4価の二重特異性抗体となったものである;(vii)フレキシボディ、これはscFvとダイアボディの組合せで多重特異性分子となったものである;(viii)プロテインキナーゼA中の「二量化およびドッキングドメイン」に基づく、いわゆる「ドックアンドロック(dock and lock)」分子であって、これはFabに適用すると、異なるFab断片と結合した2つの同じFab断片からなる三価の二重特異性結合タンパク質を生じる;(ix)例えば、ヒトFab-armの両端に融合した2つのscFvを含むいわゆるサソリ(Scorpion)分子;および(x)ダイアボディである。二重特異性抗体についてのその他の例は、相補的CH3ドメインをもち、ヘテロ二量化となるIgG様分子である。このような分子は公知の技術、例えば、Triomab/Quadroma (Trion Pharma/Fresenius Biotech), Knob-into-Hole (Genentech), CrossMAb (Roche) および静電マッチ(Amgen), LUZ-Y (Genentech), Strand Exchange Engineered Domain body (SEEDbody)(EMD Serono), Biclonic (Merus) および DuoBody (Genmab A/S) 技術などを用いて調製できる。
【0051】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は、治療部分、すなわち医薬と結合させることである。治療部分は、例えば細胞毒素、化学療法剤、サイトカイン、免疫抑制剤、免疫促進剤、溶解性ペプチド、または放射線同位体である。このような結合体は本明細書では「抗体-医薬結合体(antibody-drug conjugates)」または「ADC」とよぶ。
【0052】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は、細胞毒性部分と結合する。細胞毒性部分は以下のものからなる群から選択され得る:すなわち、タキソール;サイトカラシンB;グラミシジンD;臭化エチジウム;エメチン;ミトマイシン;エトポシド;テノポシド;ビンクリスチン;ビンブラスチン;コルヒチン;ドキソルビシン;ダウノルビシン;ジヒドロキシアントラシンジオン;メイタンシンやその類似体もしくは誘導体のようなチューブリン阻害剤;モノメチルアウリスタチンEまたはFまたはその類似体もしくは誘導体のような抗有糸分裂薬;ドラスタチン10または15またはその類似体;イリノテカンまたはその類似体;ミトキサントロン;ミスラマイシン;アクチノマイシンD;1-デヒドロテストステロン;グルココルチコイド;プロカイン;テトラカイン;リドカイン;プロプラノロール;プロマイシン;カリケマイシンまたはその類似体もしくは誘導体;メトトレキサート、6メルカプトプリン、6チオグアニン、シタラビン、フルダラビン、5フルオロウラシル、デカルバジン、ヒドロキシウレア、アスパラギナーゼ、ゲムシタビンまたはクラドリビンのような代謝拮抗剤;メクロレタミン、チオエパ、クロラムブシル、メルファラン、カルムスチン(BSNU)、ロムスチン(CCNU)、シクロホスファミド、ブスルファン、ジブロモマンニトール、ストレプトゾトシン、ダカルバジン(DTIC)、プロカルバジン、ミトマイシンCのようなアルキル化、シスプラチンまたはカルボプラチンなどのプラチナ誘導体;デュオカルマイシンA、デュオカルマイシンSA、ラケルマイシン(CC-1065) またはその類似体もしくは誘導体;ダクチノマイシン、ブレオマイシン、ダウノルビシン、ドキソルビシン、イダルビシン、ミトラマイシン、ミトマイシン、ミトキサントロン、プリカマイシン、アントラマイシン(AMC)など抗生物質;ピロロ[2,l-c][l,4]-ベンゾジアゼピン(PDB);ジフテリア毒素およびジフテリアA鎖およびその活性断片およびハイブリッド分子のような関連分子、リシンAまたは脱グリコシル化リシンA鎖毒素のようなリシン毒素、コレラ毒素、SLT I、SLT II、SLT IIV、LT 毒素、C3 毒素、Shiga 毒素のようなShiga-様毒素、百日咳毒素、テタヌス毒素、ダイズBowman-Birkプロテアーゼ阻害剤、緑膿菌外毒素、アロリン、サポリン、モデシン、ゲラニン、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ-サルシン、シナアブラギリタンパク質(Aleurites fordii proteins)、ジアンチンタンパク質、PAPI、PAPII、および PAP-Sなどのヨウシュヤマゴボウタンパク質(Phytolacca americana protein)、ツルレイシ阻害剤、クルシン、クロチン、シャボンソウ阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン、レストリクトシン、フェノマイシンおよびエノマイシン毒素;リボヌクレアーゼ(RNase); DNase I、ブドウ球菌腸毒素A;ヤマゴボウ抗ウイルスタンパク質;ジフテリン毒素;および緑膿菌エンドトキシン等である。
【0053】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は、アウリスタチンまたはそのペプチド類似体、誘導体もしくはプロドラッグと結合する。アウリスタチンは微小管ダイナミクス、GTP加水分解および核と細胞分裂に干渉し(Woyke et al (2001) Antimicrob. Agents and Chemother. 45(12): 3580-3584)、抗癌(US5663149)および抗真菌活性をもつ(Pettit et al., (1998) Antimicrob. Agents and Chemother. 42: 2961-2965)。例えば、アウリスタチンEはパラアセチル安息香酸またはベンゾイル吉草酸と反応して、それぞれAEB およびAEVBを生じ得る。その他の典型的なアウリスタチン誘導体にはAFP、MMAF (モノメチルアウリスタチン F)、および MMAE (モノメチルアウリスタチン E)を含む。適切なアウリスタチンおよびアウリスタチン類似体、誘導体およびプロドラッグ、ならびにアウリスタチンを抗体(Abs)に結合する適切なリンカーについては、U.S. Patent Nos. 5,635,483, 5,780,588 および6,214,345 ならびに国際特許出願公開WO02088172, WO2004010957, WO2005081711, WO2005084390, WO2006132670, WO03026577, WO200700860, WO207011968 および WO205082023などに記載されている。
【0054】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は、ピロロ[2,l-c][l,4]-ベンゾジアゼピン(PDB)またはその類似体、誘導体もしくはプロドラッグと結合する。適切なPDBおよびPDB誘導体、ならびに関連技術はHartley J. A. et al., Cancer Res 2010; 70(17) : 6849-6858; Antonow D. et al., Cancer J 2008; 14(3) : 154-169; Howard P.W. et al., Bioorg Med Chem Lett 2009; 19: 6463-6466 および Sagnou et al., Bioorg Med Chem Lett 2000; 10(18) : 2083-2086などに記載されている。ある態様では、抗体は典型的にはWO2017059289に記載されているピロロベンゾジアゼピン(PBD)と結合する。
【0055】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は、アントラサイクリン、マイタンシン、カリケマイシン、デュオカルマイシン、ラケルマイシン(CC-1065)、ドラスタチン10、ドラスタチン15、イリノテカン、モノメチルアウリスタチンE、モノメチルアウリスタチンF、PDB、またはそのいずれかの類似体、誘導体、もしくはプロドラッグからなる群から選択されるものと結合する。
【0056】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は、アントラサイクリンまたはその類似体、誘導体、もしくはプロドラッグと結合する。ある態様では、抗体はマイタンシンまたはその類似体、誘導体、もしくはプロドラッグと結合する。ある態様では、抗体はカリケマイシンまたはその類似体、誘導体、もしくはプロドラッグと結合する。ある態様では、抗体はデュオカルマイシンまたはその類似体、誘導体、もしくはプロドラッグと結合する。ある態様では、抗体はラケルマイシン(CC-1065) またはその類似体、誘導体、もしくはプロドラッグと結合する。ある態様では、抗体はドラスタチン10またはその類似体、誘導体、もしくはプロドラッグと結合する。ある態様では、抗体はドラスタチン15またはその類似体、誘導体、もしくはプロドラッグと結合する。ある態様では、抗体はモノメチルアウリスタチンEまたはその類似体、誘導体、もしくはプロドラッグと結合する。ある態様では、抗体はモノメチルアウリスタチンFまたはその類似体、誘導体、もしくはプロドラッグと結合する。ある態様では、抗体はピロロ[2,l-c][l,4]-ベンゾジアゼピンまたはその類似体、誘導体、もしくはプロドラッグと結合する。ある態様では、抗体はイリノテカンまたはその類似体、誘導体、もしくはプロドラッグと結合する。
【0057】
ある態様では、CD163+ TAMの枯渇に適した抗体は、核酸または核酸関連分子と結合する。このような態様の1つでは、結合される核酸は細胞毒性リボヌクレアーゼ(RNase)またはデオキシ リボヌクレアーゼ(例えば DNase I)、アンチセンス核酸、阻害性RNA分子(例えばsiRNA分子)または免疫刺激性核酸(例えば免疫刺激性CpGモチーフ含有DNA分子)である。ある態様では、抗体はアプタマーまたはリボザイムと結合する。
【0058】
抗体への分子の結合技術は当業界でよく知られている(例えば Arnon et al., “Monoclonal Antibodies For Immunotargeting Of Drugs In Cancer Therapy,” in Monoclonal Antibodies And Cancer Therapy (Reisfeld et al. eds., Alan R. Liss, Inc., 1985); Hellstrom et al., “Antibodies For Drug Delivery,” in Controlled Drug Delivery (Robinson et al. eds., Marcel Deiker, Inc., 2nd ed. 1987); Thorpe, “Antibody Carriers Of Cytotoxic Agents In Cancer Therapy: A Review,” in Monoclonal Antibodies '84: Biological And Clinical Applications (Pinchera et al. eds., 1985); “Analysis, Results, and Future Prospective of the Therapeutic Use of Radiolabeled Antibody In Cancer Therapy,” in Monoclonal Antibodies For Cancer Detection And Therapy (Baldwin et al. eds., Academic Press, 1985); および Thorpe et al., 1982, Immunol. Rev. 62:119-58. See also, e.g., PCT 公開 WO 89/12624などを参照)。典型的には核酸分子をそれぞれ機能性に応じ、N-ヒドロキシスクシンイミドエステルまたはマレイミドを介して、抗体上のリシンまたはシステインと共有結合する。(遺伝子)操作したシステインを用いる結合、あるいは非天然のアミノ酸を導入する方法が結合の均質性を改善するために報告されている (Axup, J.Y., Bajjuri, K.M., Ritland, M., Hutchins, B.M., Kim, C.H., Kazane, S.A., Halder, R., Forsyth, J.S., Santidrian, A.F., Stafin, K., et al. (2012))。非天然アミノ酸を用いる抗体-医薬結合体の部位特異的合成。Proc. Natl. Acad. Sci. USA 109, 16101-16106.; Junutula, J.R., Flagella, K.M., Graham, R.A., Parsons, K.L., Ha, E., Raab, H., Bhakta, S., Nguyen, T., Dugger, D.L., Li, G., et al. (2010)。ヒト上皮増殖因子受容体2受容体陽性乳癌を標的とする改善された治療指標をもつ(遺伝子)操作したチオ-トラスツズマブ-DM1結合体。Clin. Cancer Res.16, 4769-4778。Junutula et al. (2008) は、従来の結合法と比べて改善された治療指標を示すと主張する「THIOMABs」(TDCs)と呼ばれるシステインベースの部位特異的結合体を開発した。抗体に取り込まれた非天然アミノ酸への結合体もADCについて探索されているが、このアプローチの一般性はまだ確立していない(Axup et al., 2012)。特に、当業者はアシル供与体グルタミン含有タグ(例えば、Gin-含有ペプチドタグまたはQ-タグ)またはポリペプチド(遺伝子)操作(例えば、アミノ酸欠失、挿入、置換またはポリペプチドの変異)によって反応性に作られた内因性グルタミンで(遺伝子)操作されたFc-含有ポリペプチドを検討することもできる。次いで、トランスグルタミナーゼをアミン供与剤(例えば、反応性アミンを含むか、これと結合した小分子)と共有結合的に架橋して、アシル供与体グルタミン含有タグまたは利用可能な/暴露された/反応性の内因性グルタミンを介してFc-含有ポリペプチドと部位特異的に結合したアミン供与剤との(遺伝子)操作したFc-含有ポリペプチド結合体の安定で均質な集団を形成するることができる(WO 2012059882)。
【0059】
典型的には、CD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させることのできる薬剤と免疫チェックポイント阻害剤は治療的有効量で患者に投与する。本明細書では、用語「治療的有効量」は、必要な投与量と期間で望ましい治療結果を達成するために有効な量をいう。活性薬剤の治療的有効量は個人の病状、年齢、性別および体重、ならびに個人中で望ましい応答を引き出す活性薬剤の能力などの要因によって変化し得る。また、治療的有効量は治療上の有益な効果が抗体または抗体部分の毒性または有害な効果を上回るような量である。活性薬剤の効率的な投与量または投与計画は治療すべき疾患または症状に依存し、当業者によって決定され得る。当業界で通常の技術をもつ医師は容易に決定することができ、求められる医薬組成物の有効量を処方することができる。例えば、医師は医薬組成物で用いる活性薬剤の投与量を、望まれる治療効果を得るために必要とされるよりも低いレベルから始めて、望まれる効果が得られるまで徐々に投与量を増加することができる。一般に、本発明の組成物の適切な投与量は、特定の治療計画にしたがう治療効果をもたらすための最小の投与量である、当該化合物の量である。一般に、このような有効な投与量は上述の要因に依る。例えば、治療用の治療的有効量は病気の進行を安定化させる能力で測定できる。典型的には癌を阻害する化合物の能力は、例えば、ヒト腫瘍中での有効性を予測する動物モデル系で評価できる。治療化合物の治療的有効量は腫瘍の大きさを減少し、あるいは患者の症状を改善し得る。当業者は患者の大きさ、患者の症状の重篤度、および特定の組成物または選択する投与経路のような要因に基づいて量を決定できる。本発明の阻害剤の治療的有効量の非限定的な範囲の一例は、約0.1-100 mg/kg、例えば約0.1-50 mg/kg、例えば約0.1-20 mg/kg、例えば約0.1-10 mg/kg、例えば約0.5、例えば0.3、約1、約3 mg/kg、約5 mg/kg または約8 mg/kgである。本発明の阻害剤の治療的有効量の非限定的な範囲の一例は、0.02-100 mg/kg、例えば約0.02-30 mg/kg、例えば約0.05-10 mg/kg または0.1-3 mg/kg、例えば約0.5-2 mg/kgである。投与は例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内または皮下であり、例えば標的部位の近くに投与される。上述の治療方法および使用における投与計画は最適の望ましい応答(例えば治療応答)を提供するように調整される。例えば、1回のボーラスで投与、時間をかけて数回に分けた用量で投与、あるいは治療状況の危急に応じて比例して増減できる。ある態様では、治療の有効性を治療中、例えば予め決めた時点でモニターする。ある態様では、治療の有効性を疾患領域の可視化、または本明細書で記載した診断法、例えば1以上のPET-CTスキャン、例えば本発明の標識阻害剤、本発明の阻害剤に由来する断片またはミニ抗体を用いてモニターできる。所望する場合は、医薬組成物の有効な日用量を2、3、4、5,6回またはそれ以上に分けた投与量を1日のうち適当な間隔で、場合により、単位投与量形で、別々に投与する。ある態様では、本発明のヒトモノクローナル抗体は、あらゆる望ましくない副作用を最小にするために、長時間、例えば24時間以上かけてゆっくり連続注入して投与する。本発明の阻害剤の有効量は1週間、2週間もしくは3週間ごとの投与期間を用いても投与され得る。投与期間は例えば8週間、12週間もしくは臨床的進行が樹立されるまでに制限され得る。本発明による治療の非限定的な例は、本発明の阻害剤の1日投与量を1日当たり約0.1-100 mg/kg、例えば0.2, 0.5, 0.9, 1.0, 1.1, 1.5, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 40, 45, 50, 60, 70, 80, 90 または 100 mg/kgを、治療開始後、1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19, 20, 21, 22, 23, 24, 25, 26, 27, 28, 29, 30, 31, 32, 33, 34, 35, 36, 37, 38, 39, または 40日のうちの少なくとも1つで、あるいは1, 2, 3, 4, 5, 6, 7, 8, 9, 10, 11, 12, 13, 14, 15, 16, 17, 18, 19 または 20週のうちの少なくとも1つで、あるいはその全ての組合せで、24, 12, 8, 6, 4, また2時間毎に、あるいはその全ての組合せで1回または分割投与で提供し得る。
【0060】
典型的には、活性薬剤は医薬的に受容可能な担体を含む医薬組成物の形で患者に投与する。これらの組成物に用い得る医薬的に受容可能な担体は、イオン交換剤、アルミナ、ステアリン酸アルミニウム、レシチン、ヒト血清アルブミンなどの血清タンパク質、リン酸塩などの緩衝剤、グリシン、ソルビン酸、ソルビン酸カリウム、飽和植物性脂肪酸の部分グリセリド混合物、水、塩または電解質、硫酸プロタミンなど、リン酸水素二ナトリウム、リン酸水素カリウム、塩化ナトリウム、亜鉛塩、コロイダルシリカ、三ケイ酸マグネシウム、ポリビニルピロリドン、セルロース系物質、ポリエチレングリコール、カルボキシメチルセルロースナトリウム、ポリアクリル酸、ワックス、ポリエチレン-ポリオキシプロピレン-ブロックポリマー、ポリエチレングリコールおよび羊毛脂を含むが、これに限定されない。患者への投与用には、組成物は患者への投与用に製剤化される。本発明の組成物は経口、非経口、吸入スプレー、局所、直腸、経鼻、頬、膣または埋め込みレザバーで投与され得る。ここでは皮下、静脈内、筋肉内、関節内、滑膜内、胸骨内、クモ膜下腔内、肝内、病巣内および頭蓋内注射、または注入法で投与される。本発明の組成物の滅菌注射剤は水性または油性懸濁液であり得る。懸濁液は適切な分散剤または湿潤剤および懸濁剤を用いて当業界で公知の技術により製剤化される。滅菌注射剤は非毒性で非経口的に受容可能な希釈剤または溶媒中の滅菌注射溶液または懸濁液であってもよく、例えば1,3-ブタンジオール中の溶液である。用いることのできる受容可能なベヒクルおよび溶媒は水、リンゲル液および等張性塩化ナトリウム溶液である。さらに、滅菌固定油が溶媒または懸濁剤として慣用的に用いられ得る。この目的には、合成モノ-またはジグリセリドを含むいかなるブランドの固定油も用いることができる。オレイン酸やそのグリセリド誘導体などの脂肪酸は注射の製造に有用であり、オリーブオイルやひまし油などの天然の医薬的に受容可能なオイル、特にそのポリオキシエチル化したものは有用である。これらのオイル溶液または懸濁剤は、長鎖アルコール希釈剤、またはエマルジョンおよび懸濁剤を含む医薬的に受容可能な投与形態の製造に通常用いられるカルボキシメチルセルロースや同様の分散剤などの分散剤も含んでよい。医薬的に受容可能な固体、液体、またはその他の投与形の製造によく用いられる、Tween, Spanなどのその他よく常用される界面活性剤およびその他の乳化剤も製剤の目的に使用できる。本発明の組成物はあらゆる経口的に受容可能な投与形で経口的に投与されことができ、カプセル、錠剤、水性懸濁液または溶液を含むが、これに限定されない。経口用の錠剤の場合、よく用いる担体はラクトースおよびコーンスターチを含む。ステアリン酸マグネシウムなどの滑沢剤も典型的に添加される。カプセル形での経口投与用に有用な希釈剤は、例えばラクトースを含む。経口用に水性懸濁液が必要な場合は、活性成分を乳化剤および懸濁剤と組合せる。所望するときは、ある種の甘味料、香料および着色料も添加してよい。あるいは、本発明の組成物は直腸投与用の座薬の形で投与できる。これらは薬剤を室温で固体であるが直腸温度で液体となり、したがって直腸で溶けて医薬を放出する適切な非刺激性賦形剤と混合することにより製造できる。このような物質はココアバター、蜜蝋およびポリエチレングリコールを含む。本発明の組成物は、特に治療標的が眼、皮膚または下部腸管を含む局所投与によって容易に近づける領域および器官を含む場合は、局所投与することもできる。適切な局所製剤はこれらの各領域または器官のために容易に製造できる。局所投与用には、1以上の担体に懸濁または溶解した活性成分を含む適切な軟膏中で製剤できる。本発明の組成物の局所投与用の担体は鉱物油、流動ワセリン、白ワセリン、プロピレングリコール、ポリオキシエチレン、ポリオキシプロピレン化合物、乳化ワックスおよび水を含むが、これに限定されない。あるいは、1以上の医薬的に受容可能な担体中に懸濁または溶解した活性化合物を含む適切なローションまたはクリーム中で組成物を製剤することもできる。適切な担体は鉱物油、ソルビタンモノステアレート、ポリソルベート60、セチルエステルワックス、セテアリルアルコール、2-オクチルドデカノール、ベンジルアルコールおよび水を含むが、これに限定されない。下部腸管への局所適用は直腸座薬製剤(上記参照)または適切な浣腸製剤で行うことができる。パッチも使用できる。本発明の組成物は鼻エアロゾルまたは吸入で投与することもできる。このような組成物は医薬製造業界で周知の技術で製造され、ベンジルアルコールまたは他の適切な保存料、生物利用可能性を増すための吸収促進剤、フルオロカーボン、および/または他の慣用の可溶化剤または分散剤を用いて、食塩水中の溶液として製造され得る。例えば、本発明の医薬組成物中に存在する抗体は、100 mg (10 mL) または 500 mg (50 mL)1回使用バイアル中に10 mg/mLの濃度で提供され得る。製品は静脈投与用に、9.0 mg/mL 塩化ナトリウム、7.35 mg/mL クエン酸ナトリウム二水和物、0.7 mg/mL ポリソルベート80および注射用滅菌水中で製剤される。pHは6.5に調整する。本発明の医薬組成物中の抗体にとって適切な投与量の一例は約1 mg/m2と 500 mg/m2の間である。しかし、これらの計画は例示的なものであり、最適な計画と投与は、臨床試験で決定されなければならない医薬組成物中の特定の抗体のアフィニティと忍容性を考慮に入れて採用されることは理解されよう。注射(例えば筋肉内、静脈内)用の本発明の医薬組成物は滅菌緩衝水(例えば、筋肉内用には1 ml)および本発明の阻害剤を約1 ng から約100 mgまでの間、例えば約50 ng から約 30 mg またはより好ましくは約 5 mg から約25 mgで含むように製剤され得る。
【0061】
本発明を以下の図面および実施例でさらに説明する。しかしながら、これらの実施例や図面はいかなる意味でも本発明の範囲を限定するものと解釈してはならない。
【図面の簡単な説明】
【0062】
【
図1-1】
図1:CD163+ TAMの枯渇と標的化脂質ナノ粒子は腫瘍退行を促進する。 (
図1A)脂質ナノ粒子(LNP)と結合した瓩D163mAbの模式図である。 (
図1B)黒色腫をもつマウスにおけるCD163+ TAMの治療的枯渇を示す。マウス(1群につきn=6)に1x10
6 YUMM1.7 細胞を右脇腹に皮下注射した。x 5 mm、マウスに瓩D163-dxrLNP((瓩D163-dxr) ) または ctrlIgG-dxrLNP (ctrlIgG-dxr ) (2 mg/kg dxr) を2日毎に2週間処置した。PBS (ベヒクル) または空の瓩D163-LNP(瓩D163-ctl)を対照として用いた。
【
図1-2】(
図1C)終わりの時点で、TAM および CD163+ TAMのレベルをフローサイトメトリーで分析して生細胞の頻度を計算した。結果は3回の独立した実験を表す。 (
図1D) 1x10
6 YUMMER1.7 細胞を右脇腹に接種したマウスを無作為に群に分けて、10日目から2 mg/kg のdxr または対照を2日毎に2週間処置した。 統計的有意差はMann-Whitneyのt検定を用いて計算した; * p< 0.05, ** p< 0.01, *** p< 0.001 および **** p< 0.0001。
【
図2】
図2:CD163+ TAMの枯渇は抗-PD-1抵抗性CTL応答を促進する。 (
図2A)腫瘍をもつマウスを瓩D163-dxrLNPまたはベヒクルで、aPD-1 mAb またはアイソタイプコントロールIgGと組み合わせて処置した。 (
図2B)マウスを瓩D163-dxrLNPまたはベヒクルで2日毎に10日間処置し、次いでマウスにaPD-1 mAbを週に2回与えた。各群につきn=6。** p< 0.01。
【
図3-1】
図3:CD163+ TAMの枯渇と全マクロファージ枯渇との有効性を、瓩SF1ブロッキング抗体を用いて比較する処置研究 (
図3A)蝕知可能な腫瘍をもつマウスを無作為に群に分け、瓩D163-dxr(n=6) または PBS (n=4)で2日毎に2週間静脈内注射、あるいは瓩SF1(n=6) または対照(CtrlIgG, n=6 または PBS, n=6)で5日毎に腹腔内注射のいずれかで処置した。統計的有意差は2元配置分散分析とTukey事後検定によって計算した; *** p< 0.001 および **** p< 0.0001。終わりの時点で、mTAM, iTAM および Mn (
図3B) または CD4
+ TIL および IFN・SUP>+ CD8
+ TIL (
図3C)の総数をフローサイトメトリーで分析し、生細胞の頻度から計算した。データはn=6の平均+/- SEMで表す。
【
図3-2】
図3:CD163+ TAMの枯渇と全マクロファージ枯渇との有効性を、瓩SF1ブロッキング抗体を用いて比較する処置研究(
図3A)蝕知可能な腫瘍をもつマウスを無作為に群に分け、瓩D163-dxr(n=6) または PBS (n=4)で2日毎に2週間静脈内注射、あるいは瓩SF1(n=6) または対照(CtrlIgG, n=6 または PBS, n=6)で5日毎に腹腔内注射のいずれかで処置した。統計的有意差は2元配置分散分析とTukey事後検定によって計算した; *** p< 0.001 および **** p< 0.0001。終わりの時点で、mTAM, iTAM および Mn (
図3B) または CD4
+ TIL および IFN・SUP>+ CD8
+ TIL (
図3C)の総数をフローサイトメトリーで分析し、生細胞の頻度から計算した。データはn=6の平均+/- SEMで表す。
【実施例】
【0063】
材料および方法
マウスの飼育およびマウス黒色腫モデルの開始
自発的な黒色腫形成23を誘導するために、条件対立遺伝子BRAFCA/+, PTENlox4-5/lox4-5 および Tyr::CreERT2 +/-をもつマウスの毛を刈り、5週齢のマウスの右脇腹上で7.8 mg/mL の4-ヒドロキシタモキシフェン(4-HT) 1 μLを局所投与した。同系腫瘍を誘導するために、8週齢のオスまたはメスのマウスに100 μl の滅菌PBS pH 7.4中のYale University Mouse Melanoma (YUMM1.7)25 細胞1x106個を右後部側面に皮下注射した。デジタルカリパスで腫瘍の大きさをx、y、zで測定し、楕円容積の方程式(容積=0.5233xyz)を用いて腫瘍容積を計算した。全てのマウスはCentre d’immunologie Marseille-Luminyの動物施設に入れ、水と食餌は自由に与えて、12時間/12時間の明暗サイクルとした。全ての動物実験は試験に動物を使用するための制限原則(3つのR、すなわち置き換え(replacement)、減少(reduction)および洗練(refinement))に沿って承認され実施し、フランス高等教育および研究省によって認められた。
【0064】
腫瘍の消化、フローサイトメトリーおよびセルソーティング
フローサイトメトリーおよびFACSソーティング用の腫瘍は刻んで、1 mg/ml コラゲナーゼ II (Sigma)、50 μg/ml DNAseI (Roche) および 0.1% (w/v) BSAを含むRPMI1640中で、30分、37 ℃で穏やかに撹拌しながら消化した。次いで、単細胞懸濁液を70 μm のセルストレーナーに通して遠心により回収した。赤血球溶血(RBC lysis)のために、細胞懸濁液を0.85% NH4Clで2分、室温でインキュベートし、遠心で回収してFACS バッファー(1xPBS pH 7.4、1 mM EDTA pH 8.0、3% FCS および 0.1% NaN3)中に再懸濁した。フローサイトメトリーおよびFACSソーティングのために、腫瘍由来の単細胞懸濁液を2.4.G2抗体と4℃ で10 分インキュベートし、次いで、特定の抗体(詳細は補充の表1参照)と4℃で30 分インキュベートした。分析前に細胞をSytox Blue (Thermo Fischer Scientific)とインキュベートして死細胞を区別した。IFNγの細胞内染色のために、表面染色した細胞をPBS中、生/死固定可能バイオレットで20分インキュベートして死細胞を区別し、次に固定、透過性とし、BD Perm/Wash バッファー(BD Biosciences)で洗浄し、Perm/Washバッファー中で希釈したIFNγ抗体と4℃で30分インキュベートした。350nmレーザーを備えたLSR-2 または Fortessa X-20(BD Biosciences)で分析した。続くデータ分析は、Mac 用のFlowJo ソフトウェアV10.4 (Tree Star)で行った。免疫表現型検査を行った(抗体についての補充の表2参照)。
【0065】
リポソームの調製
ドキソルビシンを封入する長期循環型リポソームは本質的に以前記載した26ように調製し30、CD163を標的とするよう改変した。簡単に述べると、HSPC、mPEG2000-PE およびコレステロール(55:40:5のモル比) (Lipoid GmBH, Ludwigshafen, Germany and Sigma Aldrich A/S, Glostrup, Denmark)の混合物からエタノール注入法を用いてリポソーム製剤を作った。脂質をEtOH中に65℃、15分で溶解し、次に以降の応用に適した水性バッファー中、65℃、1時間で水和した(10%EtOHまで)。リポソームをAvanti ミニエクストルーダーキット(Avanti Polar Lipids, AL, US)を用いて0.1 μm フィルターで25回押し出すことによって形成し、150 mM NaCl (0,9% NaCl)に2回透析し、2回目の透析は4℃で一晩行った。カルセイン(calLNP)の封入は200 mM カルセイン溶液(pH 7.4)中で脂質を水和することにより行い、透析を5回繰り返して過剰なカルセインを除去した。ドキソルビシンの遠隔充填には脂質を300 mM (NH4)1HPO3中で水和した。押し出しと透析の後、リポソームを含む(NH4)1HPO3を塩酸ドキソルビシンと、ドキソルビシン:脂質を1:5の比率で65℃、30分混合した。次に、脂質含量、医薬含量および封入効率をAscentis C18 カラム(Sigma Aldrich A/S)を備えたDionex Ultimate3000 HPLC システム(Thermo Scientific, Hvidovre, Denmark)を用いて高圧サイズ排除クロマトグラフィー(UV 吸光度 210 nm)で評価した。リポソームの大きさを動的光散乱法とDynaPro NanoStar システム (Wyatt Technology Europe GmbH, Dernbach, Germany)を用いて評価した。CD163を標的とするリポソームの改変はαCD163 抗体クローン3E10B1026,31 またはアイソタイプコントロールIgG (BioXcell)の後挿入法を用いて上述したように行った。
【0066】
インビボ処置
腫瘍がおよそ5mm x 5 mmの測定しうる大きさになったら、脂質ナノ粒子に封入したドキソルビシン(dxrLNP)を抗CD163 IgGと結合したもの(αCD163-dxrLNP)2 mg/kgをマウスに後眼窩注射(retroorbital injection)した。対照として、アイソタイプコントロールIgG (CtrlIgG-dxrLNP)と結合したdxrLNP中のドキソルビシン2 mg/kg、または同量のαCD163と結合した空のLNP(αCD163-LNP)またはベヒクル(滅菌 PBS pH 7.4)をマウス群に与えた。マウスには2日毎に約14日間処置した。カルセイン充填LNPのインビボ実験のために、マウスに0.67 mM脂質溶液100 μlを1回注射した。CD4+および CD8+ T-細胞枯渇試験および抗-PD-1 mAb 処置のために、マウスにaCD4 (クローンGK1.5)、aCD8b (クローン53-5.8)、aPD-1 (クローンRMP1-14) またはアイソタイプコントロールIgG (IgG1 または IgG2a) (全てBioXcell) のいずれか250 μgを週に2回腹腔内注射し、1回目の注射はαCD163-dxrLNPによる処置の1日前であった。
【0067】
免疫組織化学および免疫蛍光
全腫瘍または背中皮膚の5mmスライスを4%ホルマリンで固定し、ビブラトーム切片用にはアガロースに、クリオスタット切片用にはOCTに、または組織学用にはパラフィン中に埋め込んだ。ビブラトームおよびクリオスタット切片の免疫蛍光用には、それぞれ200 μm または10 μm厚さの切片を切り出し、pAb ウサギ抗-CD163-ATTO56532、CD146-Alexa647 (クローンME-9F1; BD Bioscience)、CD3e-APC (クローン145-2C11; BD Bioscience) および CD8b-FITC (53-5.8; BD Bioscience) を抗-FITC A488 (A11096; Life Technologies) と一緒に、ビブラトーム切片用には0.1M Tris pH 7.2, 1% Triton X-100, 0.5% BSA 中で、またはクリオスタット切片用には 1xPBS, 2%BSA 中でインキュベートした。Hoechst 33342 (Sigma Aldrich)で核を可視化した。画像はスペクトル分解と20倍の対物レンズを用いるZeiss LSM780共焦点顕微鏡で得た。IHC切片はH&E および pAb ウサギ抗CD163で染色した。
【0068】
ハイスループット遺伝子発現分析
RNeasy Micro Kit (Qiagen)を用いてソーティングされた集団から全RNAを精製し、Quant-IT RiboGreen RNA アッセイキット(Thermo Fischer)を用いて濃度を決定した。High Capacity cDNA Reverse Transcriptase Kit (Applied Biosystems)を用いて第1鎖cDNA合成を行い、全RNA 2.5 ngを用い製造者の指示書にしたがい、Fluidigm PreAmp Master Mix (Fluidigm Corporation) を用いて興味のある遺伝子の前増幅を行った。興味のある遺伝子を増幅するためにデザインされたエクソンにまたがるプライマーはPrimer-Blast (詳細は補充のTable 3 を参照)を用いて計算した。興味のある遺伝子のフォワードプライマーとリバースプライマーを組み合わせて遺伝子特異的アッセイを行った。感度増加のために、興味のある遺伝子をプールしたアッセイを用いてPCRを14サイクル行って前増幅し、エクソヌクレアーゼ1処理(New England Biolabs)して取り込まれなかったプライマーを除去した。最終の前増幅したcDNAをTEバッファー中で1:5に希釈した。ハイスループット遺伝子発現分析は96.96 ダイナミックアレイとFluidigm (Fluidigm Europe B.V.)の Biomark HD システムを用いて、製造者の指示書と標準の設定で実施した。得られたデータをReal-Time PCR 分析ソフトウェア(Fluidigm Europe B.V.)で分析し、得られたCT値をCphに正規化してdCT値を得た。ヒートマップ、Z-スコアおよびOneマイナスピアソン相関を用いる階層的クラスタリングをMorpheus (https://software.broadinstitute.org/morpheus/)を用いて作製した。PCAプロットはQlucore Omics (Qlucore AB, Lund, Sweden)を用いて作製した。
【0069】
統計的分析
処置研究のための統計的分析は2元配置分散分析と、続くTukey事後検定で行った。群間の比較のための統計的検定は、Mann-Whitneyまたは適切な場合にはKruskal-Wallisのようなノンパラメトリック検定を用いて行った。p<0.05のとき、データは統計的に有意であると考えた。p値は* p< 0.05, ** p< 0.01, *** p< 0.001 および **** p< 0.0001で示す。全ての統計的分析はMac用のGraphpad Prism 7で行った。
【0070】
結果
CD163発現マクロファージは自然発生的Braf
V600E
誘発黒色腫に浸潤する
BRAFにおける活性化変異はヒト黒色腫で最もよく見られ、しばしばPTEN およびCDKN2Aのような腫瘍抑制遺伝子の喪失を伴う。適切な腫瘍形成ドライバー変異に基づく遺伝子操作マウス(GEM)モデルの入手が増えたことにより、ヒト疾患とマウス腫瘍モデルの関連性が大きく改善された。転移性黒色腫のTyr::CreER; BrafCA; Ptenf/f マウスモデルは、メラニン形成細胞限定チロシナーゼ(Tyr)プロモーターを用いてタモキシフェン誘導性Cre-リコンビナーゼ(CreERT2)の発現をもたらし、これが次には構成的に活性なBrafV600E(BrafCA) の発現とfloxされたPten 対立遺伝子 (Ptenf/f)23の削除の引き金を引く。このようなマウスでは、4-ヒドロキシタモキシフェン(4-HT)の皮下(s.c.)投与は、最初20日頃から小さな着色病巣を生じ、これが40日頃に無色素性腫瘍に進行し、次いで指数関数的成長を示す(データ示さず)。未処置のマウスでは、CD163+ マクロファージが真皮および脂肪組織中に均一に分散する(データ示さず)。しかしながら、4-HT処置後はCD163+ マクロファージが真皮中の着色した前黒色腫病巣の境界に蓄積する(データ示さず)。着色病巣が急速に成長する無色素性腫瘍に変化すると、CD163+ マクロファージが浸潤の先端に蓄積し、一方ごくわずかなCD163+マクロファージが腫瘍内に存在する(データ示さず)。BrafV600E 腫瘍中の腫瘍浸潤性骨髄細胞(TIM)区画をさらに試験するために、腫瘍組織の単細胞懸濁液のフローサイトメトリーを実施した。CD45-陰性腫瘍細胞、リンパ球および顆粒球 (CD45.2+, CD19-, CD5-, NK1.1-, SiglecF-, Ly6G-および CD11b+)をゲーティングで除いた後、F4/80 および CD169発現に基づき単球/マクロファージの2つの主要な集団を見出した。以前に別のモデル24で記載したように、F4/80- CD169-集団は主としてLy6C+単球(MN) および Ly6C+ MHCII+ 未成熟マクロファージ(intTAM)からなっていた。より大きなF4/80+ CD169+集団はLy6Cに陰性であり、CD163 およびMHCIIの多様な発現を示し、これは成熟した腫瘍関連マクロファージ(TAM)の表現型であることを示唆する(データ示さず)。まとめると、TAMは圧倒的に豊富な細胞型であり、CD11b+ 分画の60%を占める(データ示さず)。平均して、全腫瘍浸潤性白血球の20%がTAMであり、これは腫瘍浸潤性CD8+ T細胞の数より100倍多い(データ示さず)。CD163+ マクロファージは全TAMの25%以下を占めるのみであって、より豊富なMHCII- 集団とより少ないMHCII+ 細胞の集団とに分けることができた。
【0071】
同所性Braf
V600E
誘発黒色腫中のCD163発現TAMの特性付け
腫瘍成長の無色素性ステージ25を模倣するBrafV600E誘発マウスモデル由来のセルラインを用いて、比較しうるドライバー変異をもつ移植した同所性腫瘍が、自然発生的無色素性腫瘍中に見られるのと同様なTAM集団を生じさせるのかどうかを試験した。YUMM1.7 セルライン (Yale University Mouse Melanoma)はBrafV600Eの活性化ならびに Pten および Cdkn2aの不活化で誘導した自然発生的黒色腫に由来する。YUMM1.7細胞は自然発生的BrafV600E 腫瘍と似た成長特性をもつ腫瘍を生じる(データ示さず)。YUMM1.7腫瘍のフローサイトメトリー分析は、F4/80 および CD169 発現に基づく単球/マクロファージ集団とは異なり、自然発生的 BrafV600E腫瘍と似ていることを明らかにした。しかしながら、F4/80- CD169-および F4/80+ CD169+ 集団は2つのモデルで同じであるように見えたが、同所性腫瘍に存在する顕著なF4/80-CD169+ 集団もあった(データ示さず)。この集団はいくらかのLy6C+MNに加えて(データ示さず)、自然発生的モデルで述べたように、主としてintTAMからなっていた(データ示さず)。したがって、初期腫瘍ではMN (F4/80- CD169-) およびintTAMが高い比率で存在し、一方成熟TAM (F4/80+ CD169+) の比率が着実に増加して後期腫瘍では最も多くなる(データ示さず)。面白いことに、同所性腫瘍はほぼMHCII-陰性であるCD163hi および CD163loTAMの両方で浸潤された(データ示さず)。免疫組織学的(IHC)分析は、CD163hi/lo TAMは空間的分布において異なり、CD163hi細胞は主として腫瘍周辺に局在していたが、一方CD163lo 細胞は腫瘍組織内部に位置していた(データ示さず)。さらに、MHCII- CD163lo TAM の比率は腫瘍の進行とともに増加したが、MHCII- CD163hi 細胞の比率は一定であった(データ示さず)。
【0072】
この黒色腫モデルにおける異なる単球/マクロファージ集団をさらに特徴付けるために、MN、intTAM および4つの成熟TAM 集団をフローサイトメトリーで単離し、Fluidigm Biomark システムを用いて遺伝子発現の高密度定量PCR (qPCR)分析を行った(データ示さず)。CD163hi/loTAM (MHCII- CD163lo; MHCII- CD163hi) および CD163-陰性 TAM (MHCII-CD163-; MHCII+ CD163-)の両方とともに、MN および intTAM集団を分析した(データ示さず)。遺伝子発現データは階層的クラスタリングおよび主成分分析で解析し、主要M2-マクロファージ関連遺伝子のクラスターがIl4ra, Mrc1, Stab1, Slco2b1を含むCD163-発現TAMサブセット(クラスターIII)を上方制御することを明らかにした(データ示さず)。面白いことに、特にCD163hiサブセットでは、Il10, Ido1 および Lgals1を含むCD8+ T 細胞機能への影響と関連することが知られている遺伝子も上方制御した(データ示さず)。
【0073】
我々はまた、炎症性遺伝子の異なるクラスターが腫瘍関連単球(MN) (クラスターI; Cxcl10, Il1b, Irf5, Ccr2, Il18を含む) および intTAM (クラスターII; Cxcl9, Ciita, Irf7を含む)中で上方制御され、これらの遺伝子が成熟TAM中では下方制御されることを観察し、これはM2-様表現型(クラスターIII)での獲得と一致する。クラスターIおよびIIで示される遺伝子の多くはIFN-応答性であり、通常は免疫刺激活性と関連するM1-様表現型を反映する。このことは、主成分分析とネットワーク分析と合わせて(データ示さず)、補充された(recruited)MNがM2-様TAM表現型へと漸進的に分極することを示唆する。この分析は腫瘍浸潤性MN中でのNr4a1の高い発現をも示した。核受容体Nr4a1 (Nur77) は、高発現が通常は循環中のLy6C単球でのみ検出される(データ示さず)ので、いわゆるパトローリング単球または非古典的単球のマーカーとして一般にはみなされている。腫瘍関連MN中でのNr4a1発現をさらに研究するために、Tg(Nr4a1-GFP)マウス由来のYUMM1.7腫瘍を分析し、フローサイトメトリー分析で血液中にLy6C+ 腫瘍関連 MN およびパトローリング(Ly6Clo) 単球に同等のレベルのGFP発現のあること(データ示さず)を示し、それぞれintTAM および成熟TAM中で徐々に減少した(データ示さず)。腫瘍関連MNは循環中の非古典的単球集団に由来し、これが成熟TAMへと分化するにつれてNr4a1発現を下方制御するのかもしれないことを示唆する。
【0074】
標的化脂質ナノ粒子付きのCD163発現TAMの特異的枯渇は腫瘍の退行を促進する
CD163+ TAM を枯渇させるために、Cd163-IRES-iCre トランスクリプト(CD163-iCre)由来のiCreリコンビナーゼを発現するノックインマウスを作製し、これをLSLのcre-仲介性枯渇後にCsf1rプロモーターの制御下にDTR発現するCsf1r-LSL-DTRマウスと交配した。ジフテリア毒素(DT)4 ng/kgを単回注射すると24時間後に50%に近いCD163+ TAMを特異的に枯渇した(データ示さず)。補充された単球にわずかな増加があった以外は、残る骨髄区画には何ら影響は見られなかった(データ示さず)。次に、DT注射を繰り返すことによってCD163+ TAMの持続的枯渇を達成することを試みた。Csf1r-LSL-DTR野生型と比べてCD163-iCre+/-, Csf1r-LSL-DTR+/- マウスでは顕著に腫瘍成長が減少したが、CD163+ マクロファージの持続的枯渇は重篤な副作用を引き起こし、連続使用には適していないことを示した(データ示さず)。
【0075】
我々は以前に抗-CD163 mAbと結合した脂質ナノ粒子(LNP)
26を用いて CD163-発現細胞を特異的に標的化する方法を開発した(
図1A)。これらのLNPは、非特異的な食細胞の取り込みを小さくし、CD163+細胞への標的化の特異性を増す5%ポリエチレングリコール(PEG; 2000 mw)を含む。抗-CD163 mAbは、抗体のリシン側鎖に共有結合されたポリエチレン(3400 mw)脂質アンカーを介してLNPに取り込まれる(αCD163-LNP)。αCD163-LNPの特異性を示すために、マウスCD163(データ示さず)およびマウスチオグリコール酸誘発マクロファージ(データ示さず)を発現する組換えCHO K1 細胞を用いた;αCD163-LNPに自己消光濃度のカルセインを充填して(αCD163-cal-LNP; αCD163-cal)、細胞の取り込みをモニターし、対照はカルセイン充填LNPのみ(cal-LNP)およびアイソタイプコントロール抗体と結合したLNP (ctrl-IgG-cal-LNP; IgG-cal)を含んだ。自己消光濃度のカルセインを封入するため、カルセイン充填LNPがエンドサイトーシスで取り込まれてLNPが標的細胞のリソソーム内の区画で分解されるときにのみ蛍光が観察される。非標的LNP (cal-LNP または ctrl-IgG-cal-LNP)をCD163発現CHO K1 細胞とインキュベートするときには、カルセイン蛍光の増加はなく(データ示さず)、主要マウスマクロファージ中のctrl-IgG-cal-LNPでわずかな増加のみが観察された(データ示さず)。これらのアッセイは、高いカルセイン蛍光がαCD163-cal-LNPとインキュベートしたときのCD163発現細胞に特異的であることを示した。我々の黒色腫モデルにおけるCD163発現TAMへのαCD163-LNPの標的化を評価するため、腫瘍保持マウスにαCD163-LNPおよび非標的化対照LNPを静脈内(i.v.)注射し、次いでインビボ蛍光画像を行った;注射の4時間後にαCD163-標的化LNPおよび非標的化LNPの両方の腫瘍領域で蛍光を検出できた(データ示さず)。しかしながら、フローサイトメトリーによる腫瘍組織の分析では、非標的化LNPと比較して、αCD163-LNP投与後のCD163
+ TAMにカルセインの取り込みが増加することを示した(データ示さず)。次に、αCD163-標的化LNPがCD163+マクロファージをインビボで特異的に枯渇させる能力を試験するために、細胞毒性LNPを作製した。LNPにDNA損傷剤であるドキソルビシン(dxr)を充填してマウスの無作為群に、ベヒクル、空のαCD163-LNP (αCD163-ctrl) または dxr-充填した標的化または非標的化LNP (それぞれαCD163-dxr または IgG-dxr)のいずれかの単回投与量を静脈内注射し、24時間後にフローサイトメトリーで脾臓中のCD163+赤脾髄マクロファージ(RPM)に及ぼす影響を測定した;αCD163-dxrの単回注射は対照と比較してCD163
+ RPMの数を特異的に約50%減少した(データ示さず)。次に、黒色腫保持マウスにおける腫瘍成長に及ぼすCD163
+ TAM枯渇の影響を試験した。CD163
+TAMの効率のよい持続的枯渇を達成するために、蝕知可能な腫瘍をもつマウスを無作為化し、αCD163-dxrまたは適切な対照で2日毎に2週間処置した。非標的化細胞毒性LNP (IgG-dxr)による処置は腫瘍成長を遅らせ得たが、αCD163-dxrで処置したマウスは2週後にほぼ完全な腫瘍の退行を示した(
図1Bおよび1D)。興味深いことに、次に行った腫瘍のフローサイトメトリー分析は、IgG-dxrで処置したマウス中の全TAM数の減少を示し(
図1C)、これはTAMサブセットの無差別な総標的化を示唆する。しかしながら、CD163-標的化LNPはCD163
+TAMの小さい分画を枯渇しただけで、全TAM数にはほとんど影響がなかった(
図1C)。たとえ非標的化LNPと比較しても、CD163-標的化LNPの腫瘍退行に及ぼす大きな影響を考慮すると、このことは、TAMサブセットの総標的化はCD163
+ TAMの枯渇によって与えられる治療効果を事実上破棄するものであるかも知れないことを示唆する。別のTAMサブセットがCD163
+ TAM枯渇による腫瘍退行に貢献していることを示唆する。
【0076】
CD163
+
TAMの標的化枯渇は腫瘍浸潤性骨髄細胞を再教育する
CD163+ TAM枯渇の腫瘍免疫微小環境(TME)における結果をさらに分析するために、αCD163-dxrで処置後の腫瘍に、空のD163-標的化LNP (αCD163-ctrl)およびベヒクルで処置したマウスと比較して、ハイコンテント免疫表現型検査をフローサイトメトリーで行った。CD163+ TAMの枯渇は腫瘍浸潤性白血球区画の極めて有意な全体的拡大と関連しており、全細胞の5から30%へと増加した(データ示さず)。異なる免疫細胞タイプの分析によって、これは主としてCD4+ およびCD8+の両方の腫瘍浸潤性T 細胞(TIL)、ならびに特にLy6C+単球数の増加によるものであることが明らかになった(データ示さず)。CD163+ TAM枯渇後の腫瘍浸潤性骨髄(TIM)細胞区画をさらに特徴付けるために、我々が以前に確立したゲーティング戦略を用いてフローサイトメトリー分析を行った(データ示さず)。αCD163-dxr-処置マウスでは、腫瘍関連MNおよびintTAMの補充に劇的な増加があり、合わせて組織1グラム当たり3億個以上の細胞となり(データ示さず)、その結果成熟TAMの比率が劇的に減少した(データ示さず)。興味深いことに、CD163+ TAM枯渇後に腫瘍に浸潤したintTAMはCD11c発現に有意な増加がみられ(データ示さず)、対照の腫瘍由来のintTAMと比較して、Ciita および Cxcl9の発現増加(データ示さず)を含む異なる遺伝子発現プロファイルを示し(データ示さず)、これは活性化単球由来樹状細胞(moDC)に典型的な免疫刺激性表現型であることを示唆する。重要なことは、αCD163-dxrLNP処置マウス由来のintTAMは、Nr4a1 やCx3cr1のようなパトローリング単球または非古典的単球と通常関連する遺伝子の発現が有意に減少し、一方Cxcr4発現は変化なく、古典的Ly6Chi 単球と関連するFcgr2bは増加した(データ示さず)。さらに、αCD163-dxrLNP処置マウス由来のintTAMはPdl2 および CD209d、ならびにT細胞ケモカインのCxcl9 および Ccl17の発現増加も示した(データ示さず)。CD163+ TAM枯渇マウス由来のintTAMにおける非古典的単球と関連する遺伝子の発現減少は、古典的炎症性単球サブセットの補充によって腫瘍浸潤性骨髄細胞が再教育される可能性を示す。
【0077】
炎症性単球(Ly6C+, Nr4a1-, Cx3cr1lo)の動員はケモカイン受容体CCR2の発現に大きく依存し、CCR2-欠失マウス(Ccr2-/-)では厳しく障害を受ける。これとは対照的に、パトローリング単球(Ly6Clo, Nr4a1+, Cx3cr1hi)の分布はCcr2-/-マウスでわずかな影響を受けるのみである27。CD163+ TAM枯渇後にLy6C+ MN およびintTAMの蓄積に与えるCCR2-依存性単球補充の貢献を評価するため、野生型(WT)の群および黒色腫をもつCcr2-/-マウスを作製し、上述したようにαCD163-dxr またはベヒクルで処置した。興味深いことに、ベヒクル処置したマウスでは腫瘍の進行はCCR2-欠失によって影響を受けなかった(データ示さず)。さらに、腫瘍関連MN および intTAMの蓄積はわずかに減少したが、成熟TAMはベヒクル処置したCcr2-/-マウスでは影響がなかった(データ示さず)。しかしながら、αCD163-dxr処置による腫瘍成長の阻害はCcr2-/-マウスで有意に破棄され(データ示さず)、CD163+ TAM枯渇で引き起こされたintTAM補充の完全な逆転を伴った(データ示さず)。これらのデータは、黒色腫をもつマウスでのCD163+ TAM枯渇は、新鮮なLy6C+単球のCCR2-依存性補充およびM1-様表現型をもつ免疫刺激性マクロファージの蓄積をもたらし、これが腫瘍進行の阻害に有意に貢献していることを示した。
【0078】
CD163
+
TAM枯渇は抗-PD-1抵抗性CTL応答を促進する
CD163+ TAM枯渇後の黒色腫の免疫表現型解析では、腫瘍浸潤性T細胞(TIL)における有意な増加を示した(データ示さず)。CD163+TAM枯渇のTIL補充と活性化に及ぼす影響をさらに分析するために、追加のフローサイトメトリー分析を行った。TIL (CD45.2+, CD19-, NK1.1-, SiglecF-, Ly6G- および CD11b-, CD3e+,CD5+,)をゲーティングして、ベヒクルまたは空のαCD163-LNP (αCD163-ctrl)と比較して、αCD163-dxr処置した黒色腫をもつマウス中でCD4+ と CD8+ TILの両方が大きく増加していることを確認した(データ示さず)。対照で処置したマウスではCD8+ TILはIFNγ および PD-1の異種発現を示した(データ示さず)が、αCD163-dxrで処置したマウスではCD8+ TILの大部分は高レベルのIFNγを発現し、PD-1を発現しなかった(データ示さず)。我々は腫瘍切片の共焦点顕微鏡によって黒色腫中へのCD8+ TILの浸潤が増加したことを確認し(データ示さず)、これはCD163+ TAMの枯渇と相関していた(データ示さず)。活性化CTLの増加した浸潤と一致して、CD163+ TAM枯渇により腫瘍中でIFNγ (Ifng)の組織全体での発現が劇的に増加し(データ示さず)、これはTNFα, IL-1β(Il1b) および IL-18 (Il18)を含む他の炎症性サイトカインの発現増加を伴い(データ示さず)、またメモリーT細胞誘引性ケモカインCXCL9 (Cxcl9)の発現増加も伴った(データ示さず)。
【0079】
CD163+ TAM枯渇による組織全体でのCxcl9の発現増加は、新しく補充されたintTAM中での並行したCxcl9発現増加と相関していた(データ示さず)。CXCL9はメモリーCD8+ T 細胞の強力な化学誘引物質であり、T 細胞誘導のIFNγによる抗原提示細胞(APC)中でのCxcl9発現の誘導がCTL応答の増加にとって不可欠であることが示されている。このため、CD163+ TAM枯渇によって誘導されたCCR2-依存性intTAMの補充(データ示さず)がTIL区画で観察された変化と関連するのかを研究することとなった。αCD163-dxrまたはベヒクルのみで処置したWT およびCcr2-/-マウス由来の黒色腫中のTILをフローサイトメトリーで分析した;WT およびCcr2-/-マウスの両方でCD163+ TAM枯渇はCD4+ および CD8+ TILの増加をもたらした(データ示さず)が、CD4+TILおよび特にIFNγ-産生 CD8+TILの数が、WTマウスと比較して、Ccr2-/-マウスでは有意に減少した(データ示さず)。これらのデータは、CD163+ TAM枯渇後のintTAMのCCR2-依存性補充がCD4+ および CD8+ TILの補充と活性化にそれぞれ貢献することを示唆する。
【0080】
CD163+ TAM枯渇による腫瘍退行へのCD4+および CD8+ TILの貢献を確立するために、αCD163-dxrによる処置中にαCD4 および αCD8b mAbを投与してCD4+ および CD8+ TILを枯渇させた。CD4+ および CD8+ T細胞の枯渇はどちらも黒色腫をもつマウス中のαCD163-dxr-処置による腫瘍成長の制御を完全に逆転した(データ示さず)。CD163+ TAMの枯渇における腫瘍進行の阻害はTILの活性化によって決定されることを明瞭に示す。興味深いことに、CD4+ TILのみの枯渇は、CD163+TAMの枯渇後に浸潤性intTAM および IFNγ-産生CD8+ TILの数を顕著に減少した(データ示さず)。さらに、遺伝子発現分析ではCD4+ および CD8+ T細胞の両方を枯渇すると広範なIfng発現を減少したが、Cxcl9 および Il1bの広範な発現はCD4+ T-細胞を枯渇したマウスでのみ減少した(データ示さず)。
【0081】
αCD163-dxr 処置後のYUMM1.7 細胞
28でのPD-L1の発現およびintTAMでのPD-L2の発現増加(データ示さず)を考慮して、観察された処置の効果がPD-1チェックポイントの阻害によって影響を受けたのかどうかを調査しようと試みた。我々はαPD-1 mAb または対照mAbを腫瘍をもつマウスに、単独で、αCD163-dxrと組合せて10日間(
図2A)、あるいはαCD163-dxr処置後に(
図2B)投与した。以前の研究で示したように、αPD-1 mAb処置単独ではYUMM1.7腫瘍の成長に何ら影響しなかった(
図2A)。さらに、αCD163-dxrはαPD-1による付随的処置を伴うか、あるいは伴わないときに腫瘍の成長を効率よく制御した(
図2A)が、αPD-1単独をαCD163-dxrに置き換えると、腫瘍はすぐに再発した(
図2B)。
【0082】
αCSF1ブロック抗体を用いる、CD163
+
TAM枯渇の有効性を全マクロファージ枯渇と比較する処置研究
αCSF1ブロック抗体を用いて、CD163
+ TAM枯渇の有効性を全マクロファージと比較するために、蝕知可能な腫瘍をもつマウスをαCD163-dxrで2日毎に2週間、またはαCSF1 (n=6)で腹腔内に5日毎に処置した。抗-CSF1を用いるTAMサブセットの全枯渇は、CD163+ TAMの特異的標的化と比較して、腫瘍成長の阻害は明白ではなかった(
図3A)。興味深いことに、抗-CSF1処置は骨髄由来の単球(MN)を含む全てのTAMサブセットにおける強い減少と関連していた(
図3B)。さらに、抗-CSF1処置後のiTAMの減少は、CD163+ TAMの特異的枯渇と比較して、腫瘍浸潤性CD4+ およびIFNγ-産生CD8+ T細胞の数の減少と関連していた(
図3Bおよび3C)。
【0083】
議論
現在、腫瘍関連マクロファージ(TAM)の多くの重要な疾患促進機能を目立たせる十分な実験的および臨床的証拠が存在し、癌の進行におけるその重要な役割を強調する。したがって、TAMを標的とする新規な治療戦略の開発への興味が増している。今日まで、ほとんどの戦略はマクロファージの分化と生存を制御するCSF-1/CSF1R-シグナリング、または単球の動員と補充を制御するCCL2/CCR2 axisに焦点をあててきた。しかしながら、これらの戦略は実験モデルや臨床試験で限られた効果を示した。最近の研究は、ヒトの癌のTAMサブセットには広範囲な不均一性があり、これが臨床の進行に重要な関連を持ち得ることを明らかにした。実際、いくつかの臨床研究で、一定のTAMサブセットが患者の良好な予後と関連することを示した。よって、より標的化した治療のさらなる開発を助長するためには、特定のTAMサブセットの機能をさらに理解するためにさらなるデータが必要である。
【0084】
その内在的免疫刺激の可能性にもかかわらず、TAMの主要な腫瘍促進機能の1つは免疫抑制であると考えられる。腫瘍微小環境(TME)が、マクロファージを、活性化よりも、腫瘍浸潤性T細胞(TIL)機能の抑制と関連する代替的活性化状態に分極化することが示唆された。TILの活性化の引き金を引く免疫チェックポイント阻害剤(ICI: Immune-checkpoint inhibitors)が、ある種の癌、特に悪性黒色腫の治療に前例のない影響を与えた。しかしながら、大部分の患者は、原発腫瘍中の低いTILレベルとしばしば相関する現存のICI治療に応答していない。
【0085】
我々は、現在主流のICI治療である抗-PD-1に抵抗性である黒色腫と臨床的に関連するマウスモデルにおけるTAMの役割を研究することにした。まず、自発性および同所性黒色腫双方における腫瘍浸潤性骨髄(TIM)区画を特徴付けた;TAMは腫瘍中のCD11b+ 白血球の60%までを構成しており、全腫瘍浸潤性白血球のうち平均して20%がTAMであり、これはCD8+腫瘍浸潤性 T 細胞(TIL)の数の100倍多かった。臨床データは、TAMによるCD163発現と、黒色腫を含む広範囲の癌における乏しい予後とを強く関連付けた。しかしながら、腫瘍の進行におけるこれらの細胞の機能的関連性はまだ明確でない。CD163+ TAMはマウス黒色腫の全TAMのわずかな分画(<25 %)を表すに過ぎない。CD163+ TAMの遺伝子発現分析は、M2-様マクロファージ(Il4ra, Mrc1, Stab1, Slco2b1を含む)と関連する遺伝子クラスターの上方制御を明らかにした。興味深いことに、Il10, Ido1 および Lgals1を含むT細胞活性化を阻害することが知られている遺伝子も特異的に上方制御した。このことは、炎症性遺伝子の特徴的クラスターが腫瘍浸潤性単球(MN) (Cxcl10, Il1b, Irf5, Ccr2, Il18など)および未成熟TAM (intTAM; Cxcl9, Ciita, Irf7)を上方制御するのと対照的に、これらの遺伝子はCD163+ TAMで下方制御し、これはM2-様表現型での取得と合致する。MNおよびintTAM中で上方制御する遺伝子の多くは、IFN-応答性であり、M1-様表現型を反映して、通常免疫刺激活性と抗-腫瘍機能と関連する。このことは、補充されたMNはM2-様TAM表現型へと徐々に分極していくことを示す。
【0086】
CD163+ TAMの腫瘍進行への特異的貢献を評価するため、我々はCD163-標的化細胞毒性脂質ナノ粒子(LNP)を開発した。CD163-標的化LNPはCD163+ TAMの小さな分画のみを枯渇させたもので、全TAM数にはほとんど影響を及ぼさない。しかしながら、CD163+ TAMの選択的枯渇は腫瘍成長を大きく減少した。興味深いことに、全TAM数を有意に減少した非標的化細胞毒性LNPは腫瘍成長の減少という点ではCD163-標的化LNPほどには有効でないことを我々は観察した。このことは、TAMサブセットの全標的化はCD163+ TAMの特異的枯渇によって与えられる治療効果を実際は破棄するものであることを示唆した。これは、他のTAMサブセットはCD163+ TAM枯渇によって腫瘍の退行をもたらしうることを示唆する。この仮説を探求するために、黒色腫中のTIM区画へのCD163+ TAM枯渇の影響を評価した。我々は、CD163+ TAM枯渇後に腫瘍に浸潤したintTAMがCD11chi であり、Ciita, Cxcl9 および CD209dの発現を増加したことを観察し、これは単球由来樹状細胞(moDC)29に典型的な免疫刺激性表現型であることを示す。CD11chiintTAMの補充はCCR2-欠失マウスでブロックされ、CD163+TAM枯渇で誘導される腫瘍成長の減少を破棄した。したがって、CCR2-依存性の炎症性単球の動員は腫瘍退行に顕著に貢献した。CD163+ TAM枯渇はまた、いずれも腫瘍成長の制御に必要な黒色腫中のCD4+ および CD8+ TILの数を増加した。興味深いことに、CD4+ および CD8+ TILの補充はどちらもCCR2-依存性であり、炎症性単球の補充とおそらくはCD11chiintTAMの蓄積にとって必要であることを示す。これはおそらくは、メモリーT細胞の補充に必須のケモカインであるCXCL9のこれらの細胞中での増加した発現によって仲介されており、Ciitaを介する増加したMHC II発現と関連する抗原提示細胞(APC)活性の増強と結びつく。予測したように、CD163+ TAM枯渇後のCD4+ TIL蓄積の阻害は、IFNγ-産生 CD8+ TILの数を顕著に減少し、CD8+ TILの活性化を助けるCD4+ T細胞の役割と一致する。しかしながら、CD8+ TILではなく、CD4+ TILの枯渇は、浸潤性CD11chi intTAMの数も顕著に減少した。CD4+TILは炎症性単球の動員に特異的に貢献し、これが次にCD8+ TILの補充と蓄積を促進することを示唆する。
【0087】
まとめると、我々の研究は、悪性黒色腫におけるCD163+ TAMの大きな免疫抑制機能を示す。さらに、CD163+TAMの特異的枯渇は腫瘍浸潤性単球を免疫刺激性機能と腫瘍退行へと向かわせる再プログラミングをもたらす。これらのデータは、TAMサブセットを特異的に標的化することに基づく新規な治療戦略を提示するのみでなく、単球由来マクロファージを無差別に標的とする治療アプローチの効率の低さを説明するものである。したがって、TIL補充と活性化を増殖させるように炎症性単球に求めることが、全単球/マクロファージを標的とする治療の利用性を限定するのかもしれない。
【0088】
文献
本出願中を通して、多数の文献が本発明の関係する当業界の状況を記載する。これらの文献の開示は本開示中に参照として取り込まれる。
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【配列表】
【手続補正書】
【提出日】2021-05-18
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の癌の治療に使用するためのCD163への結合アフィニティをもつ抗体であって、前記使用は、CD163への結合アフィニティをもつ抗体を治療的有効量で患者に投与して、これによってCD163+腫瘍関連マクロファージの集団を枯渇させ、腫瘍浸潤性CD8+ T細胞の量を増加させることを含む、前記抗体。
【請求項2】
癌が黒色腫である、請求項1に記載の使用のための抗体。
【請求項3】
癌が免疫チェックポイント治療に抵抗性である、請求書1または2に記載の使用のための抗体。
【請求項4】
使用が免疫チェックポイント阻害剤の有効性/効力を増加するためである、請求項1から3のいずれかに記載の使用のための抗体。
【請求項5】
癌の治療に使用するための、少なくとも1つの免疫チェックポイント阻害剤とCD163への結合アフィニティをもつ抗体との治療的に有効な組合せを含む組合せ。
【請求項6】
抗体が被験者の腫瘍中のCD163+ TAMの枯渇に至らしめる、請求項5に記載の使用のための組合せ。
【請求項7】
免疫チェックポイント阻害剤がPD-1 アンタゴニスト, PD-L1 アンタゴニスト, PD-L2 アンタゴニスト, CTLA-4 アンタゴニスト, VISTA アンタゴニスト, TIM-3 アンタゴニスト, LAG-3 アンタゴニスト, IDO アンタゴニスト, KIR2D アンタゴニスト, A2AR アンタゴニスト, B7-H3 アンタゴニスト, B7-H4 アンタゴニスト, および BTLA アンタゴニストからなる群から選択される、請求項5または6に記載の使用のための組合せ。
【請求項8】
癌が免疫チェックポイント治療に抵抗性である、請求項5から7までのいずれかに記載の使用のための組合せ。
【請求項9】
使用が免疫チェックポイント阻害剤の有効性/効力を増加させるためである、請求項5から8までのいずれかに記載の使用のための組合せ。
【請求項10】
抗体がCD163の細胞外ドメインに結合する、請求項5から9までのいずれかに記載の使用のための組合せ。
【請求項11】
抗体が抗体-依存性細胞-仲介性細胞毒性を仲介する、請求項5から10までのいずれかに記載の使用のための組合せ。
【請求項12】
抗体が抗体-医薬結合体である、請求項5から11までのいずれかに記載の使用のための組合せ。
【請求項13】
抗体が細胞毒性部分と結合されている、請求書12に記載の使用のための組合せ。
【国際調査報告】