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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】AAVトリプルプラスミドシステム
(51)【国際特許分類】
   C12N 15/63 20060101AFI20220124BHJP
   C12N 15/864 20060101ALI20220124BHJP
   C12N 5/10 20060101ALI20220124BHJP
   A61K 35/76 20150101ALI20220124BHJP
   A61K 48/00 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20220124BHJP
   C12N 15/35 20060101ALN20220124BHJP
   C12N 15/11 20060101ALN20220124BHJP
   C12N 15/113 20100101ALN20220124BHJP
   C12N 15/12 20060101ALN20220124BHJP
   C12N 15/52 20060101ALN20220124BHJP
【FI】
C12N15/63 Z ZNA
C12N15/864 100Z
C12N5/10
A61K35/76
A61K48/00
A61P43/00
C12N15/35
C12N15/11 Z
C12N15/113 Z
C12N15/12
C12N15/52 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021516750
(86)(22)【出願日】2019-10-24
(85)【翻訳文提出日】2021-04-22
(86)【国際出願番号】 US2019057916
(87)【国際公開番号】W WO2020086881
(87)【国際公開日】2020-04-30
(31)【優先権主張番号】62/750,603
(32)【優先日】2018-10-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.TRITON
(71)【出願人】
【識別番号】315010787
【氏名又は名称】バクスアルタ インコーポレイテッド
(71)【出願人】
【識別番号】515351758
【氏名又は名称】バクスアルタ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100139723
【弁理士】
【氏名又は名称】樋口 洋
(74)【代理人】
【識別番号】100116540
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 香
(72)【発明者】
【氏名】チョイ,ヴィヴィアン
(72)【発明者】
【氏名】リー,シン
【テーマコード(参考)】
4B065
4C084
4C087
【Fターム(参考)】
4B065AA93X
4B065AB01
4B065AC14
4B065BA02
4B065CA44
4C084AA13
4C084NA05
4C084NA14
4C084ZB21
4C087AA01
4C087AA02
4C087BC83
4C087CA12
4C087NA05
4C087NA14
4C087ZB21
(57)【要約】
組換えアデノ随伴ウイルスを産生するためのトリプルプラスミドシステムが開示される。一態様では、本発明は、(i)5’および3’AAV末端逆位反復配列(ITR)に隣接する少なくとも1つの異種核酸配列と、それらITRの外側のスタッファー配列とを含む導入遺伝子含有プラスミド;(ii)AAV複製(Rep)遺伝子配列とキャプシド(Cap)遺伝子配列とを含むプラスミド;および(iii)アデノウイルス(Ad)ヘルパープラスミド;を含む、組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)産生のためのプラスミドシステムに関する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)の産生のためのプラスミドシステムであって、
(i)5’および3’AAV末端逆位反復配列(ITR)に隣接する少なくとも1つの異種核酸と、それらITRの外側のスタッファー配列とを含む導入遺伝子含有プラスミド;
(ii)AAVの複製(Rep)遺伝子配列とキャプシド(Cap)遺伝子配列とを含むプラスミド;および
(iii)アデノウイルス(Ad)ヘルパープラスミド;
を含む、プラスミドシステム。
【請求項2】
前記スタッファー配列が、導入遺伝子含有プラスミドがrAAVキャプシドにパッケージングされないように、導入遺伝子含有プラスミドのバックボーンのサイズを増加させる、請求項1に記載のプラスミドシステム。
【請求項3】
前記導入遺伝子含有プラスミドのバックボーンが野生型AAVゲノムよりも大きい、請求項1または2に記載のプラスミドシステム。
【請求項4】
前記スタッファー配列が、エンハンサー、プロモーター、スプライシング制御因子、ノンコーディングRNA、アンチセンス配列、コード配列、またはそれらの任意の組み合わせを欠いている、請求項1~3のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項5】
前記スタッファー配列が、エンハンサー、プロモーター、スプライシング制御因子、ノンコーディングRNA、アンチセンス配列、およびコード配列を欠いている、請求項4に記載のプラスミドシステム。
【請求項6】
前記スタッファー配列が、ヒトゲノムに見られる不活性なイントロンDNA配列を含む、請求項1~5のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項7】
前記スタッファー配列が、1000~5000ヌクレオチド長の間の核酸配列または1000~2000ヌクレオチド長の間の核酸配列を含む、請求項1~6のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項8】
前記スタッファー配列が、GAPDHイントロン2、そのフラグメント、またはその変異体を含む、請求項1~7のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項9】
前記スタッファー配列が、配列番号9と少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項10】
前記スタッファー配列が、配列番号9と少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸からなる、請求項1~9のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項11】
前記スタッファー配列が、配列番号9またはそのフラグメントを含む、請求項1~8のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項12】
前記スタッファー配列が、配列番号9またはそのフラグメントからなる、請求項1~8のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項13】
前記導入遺伝子含有プラスミドが、図3Aと同じ順序の構造を有するプラスミドを含み、eGFPおよびSEAP導入遺伝子は少なくとも1つの異種核酸で置き換えることができる、請求項1~12のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項14】
前記導入遺伝子含有プラスミドが、図3Bと同じ順序の構造を有するプラスミドを含み、eGFP導入遺伝子を少なくとも1つの異種核酸で置き換えることができる、請求項1~12のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項15】
前記導入遺伝子含有プラスミドが、5’から3’の方向で、配列番号2、4、少なくとも1つの異種核酸、配列番号8、3、およびスタッファー配列の核酸配列を含み、各核酸配列は、その対応する機能的フラグメントもしくは誘導体、またはその配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列で置換することができまたはそれをコードする、請求項1~12のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項16】
前記導入遺伝子含有プラスミドが、発現カセットの外側であるが5’ITRと3’ITRとの間に、DNA力価タグをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項17】
前記導入遺伝子含有プラスミドが、i)3’ITRの上流でかつポリA配列の下流、またはii)3’ITRの上流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の下流;またはiii)5’ITRの下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の上流;またはiv)5’ITRの下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列のプロモーターの上流;またはv)5’ITRの下流でかつ3’ITRの上流に、DNA力価タグをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項18】
前記導入遺伝子含有プラスミドが、i)配列番号3の上流でかつ配列番号8の下流;またはii)配列番号3の上流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の下流;またはiii)配列番号2の下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の上流;またはiv)配列番号2の下流でかつ配列番号4の上流;またはv)配列番号2の下流でかつ配列番号3の上流に、DNA力価タグをさらに含む、請求項1~15のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項19】
前記導入遺伝子含有プラスミドが、5’から3’の方向で、配列番号43、4、少なくとも1つの異種核酸配列、配列番号8、3、およびスタッファー配列の核酸配列を含み、各核酸配列は、その対応する機能的フラグメントもしくは誘導体、またはその配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列で置換することができまたはそれをコードする、請求項1~12のいずれか一項に記載のプラスミドシステム
【請求項20】
前記導入遺伝子含有プラスミドが、発現カセットの外側であるが5’ITRと3’ITRとの間に、DNA力価タグをさらに含む、請求項19に記載のプラスミドシステム。
【請求項21】
前記導入遺伝子含有プラスミドが、i)3’ITRの上流でかつポリA配列の下流、またはii)3’ITRの上流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の下流;またはiii)5’ITRの下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の上流;またはiv)5’ITRの下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列のプロモーターの上流;またはv)5’ITRの下流でかつ3’ITRの上流に、DNA力価タグをさらに含む、請求項19または20に記載のプラスミドシステム。
【請求項22】
前記導入遺伝子含有プラスミドが、i)配列番号3の上流でかつ配列番号8の下流;またはii)配列番号3の上流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の下流;またはiii)配列番号43の下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の上流;またはiv)配列番号43の下流でかつ配列番号4の上流;またはv)配列番号43の下流でかつ配列番号3の上流に、DNA力価タグをさらに含む、請求項19または20に記載のプラスミドシステム。
【請求項23】
前記AAV Rep遺伝子配列が、AAV血清型2、5、8、9、またはそれらのハイブリッドに由来する、請求項1~22のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項24】
前記AAV Cap遺伝子配列が、AAV血清型2、5、8、9、またはそれらのハイブリッドに由来する、請求項1~23のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項25】
Rep遺伝子配列およびCap遺伝子配列を含むプラスミドがプロモーターをさらに含む、請求項1~24のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項26】
前記プロモーターがAAVプロモーターである、請求項25に記載のプラスミドシステム。
【請求項27】
前記プロモーターがAAV P5プロモーターである、請求項26に記載のプラスミドシステム。
【請求項28】
前記Adヘルパープラスミドが、E1a、E1b、E2a、E4orf6、またはVA RNAから選択される1つまたは複数のアデノウイルス遺伝子を含む、請求項1~27のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項29】
前記Adヘルパープラスミドが、5’から3’の方向で、配列番号18、17、16、および20の核酸配列を含み、各核酸配列は、その対応する機能的フラグメントもしくは誘導体、またはその配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列で置換することができる、請求項28に記載のプラスミドシステム。
【請求項30】
前記Adヘルパープラスミドが、5’から3’の方向で、配列番号21、16、39、40、22、23、および20の核酸配列を含み、各核酸配列は、その対応する機能的フラグメントもしくは誘導体、またはその配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列で置換することができまたはそれをコードする、請求項28に記載のプラスミドシステム。
【請求項31】
前記Adヘルパープラスミドが、図5のいずれかの構築物と同じ順序の構造を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項32】
前記Adヘルパープラスミドが、配列番号14と少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項33】
前記Adヘルパープラスミドが、配列番号15と少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含む、請求項1~28のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項34】
前記異種核酸配列が、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする目的の異種遺伝子である、請求項1~33のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項35】
前記ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質が、酵素、抗体、MHC分子、T細胞受容体、B細胞受容体、アプタマー、アビマー、受容体結合リガンド、ターゲティングペプチド、治療薬、または遺伝子編集分子である、請求項34に記載のプラスミドシステム。
【請求項36】
前記異種核酸が、アンチセンス、siRNA、shRNA、miRNA、EGS、gRNA、sgRNA、リボザイム、またはアプタマーなどの核酸配列である、請求項1~35のいずれか一項に記載のプラスミドシステム。
【請求項37】
請求項1~36のいずれか一項に記載のプラスミドシステムを含む宿主細胞。
【請求項38】
請求項37に記載の宿主細胞によって産生された組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)。
【請求項39】
普遍的なベクター力価測定を可能にするDNA力価タグであって、導入遺伝子含有プラスミド内の異種核酸配列の核酸配列の上流または下流のいずれかにある約60ヌクレオチド~約100ヌクレオチド長の核酸タグ配列を含み、前記核酸タグ配列が、少なくとも2つの異なる導入遺伝子含有プラスミドで使用されて少なくとも2つの異なるタイプのAAVベクター間での普遍的なベクターゲノム力価測定を可能にすることができる、DNA力価タグ。
【請求項40】
前記核酸タグ配列が約100ヌクレオチド長である、請求項39に記載のDNA力価タグ。
【請求項41】
前記核酸タグ配列が、導入遺伝子含有プラスミドの3’ITR配列の上流にあるが、導入遺伝子含有プラスミドの発現カセット内にはない、請求項39または請求項40に記載のDNA力価タグ。
【請求項42】
前記核酸タグ配列が、導入遺伝子含有プラスミドの5’ITR配列の下流にあるが、導入遺伝子含有プラスミドの発現カセット内にはない、請求項39または請求項40に記載のDNA力価タグ。
【請求項43】
前記DNA力価タグが、配列番号61~70の核酸配列のいずれか1つを含む、請求項39~42のいずれか一項に記載のDNA力価タグ。
【請求項44】
請求項1~36のいずれか一項に記載のプラスミドシステムで細胞に形質導入し、さらにrAAVを単離することを含む、組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)を製造する方法。
【請求項45】
請求項44に記載の方法によって製造された組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)。
【請求項46】
請求項1~36のいずれか一項に記載のプラスミドシステムを含む組成物。
【請求項47】
請求項38または請求項45に記載のrAAVを含む医薬組成物。
【請求項48】
核酸配列を対象の細胞に送達または移送する方法であって、請求項38または請求項45に記載のrAAVを対象に投与し、それによって核酸配列を細胞に送達することを含む、方法。
【請求項49】
前記対象の細胞が培養中であるか、または対象に存在する、請求項48に記載の方法。
【請求項50】
対象における疾患または障害を処置または予防する方法であって、それを必要とする対象に請求項38または請求項45に記載のrAAVを投与することを含む、方法。
【請求項51】
宿主細胞に請求項38または請求項45に記載のrAAVを接触させることを含む、宿主細胞に形質導入する方法。
【発明の詳細な説明】
【関連出願の相互参照】
【0001】
この出願は、2018年10月25日に出願された米国仮特許出願第62/750,603号の優先権を主張し、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本出願は、ASCII形式で電子的に提出された配列表を含み、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。2019年10月22日に作成された上記のASCIIコピーは、250478_00l858_SL.txtという名前で、サイズは274,165バイトである。
【背景技術】
【0003】
アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒト、ならびに霊長類、ウシ、ネコ、およびイヌなどの他の様々な動物種に感染するDNAパルボウイルスである。AAVによる増殖感染はヘルパーウイルス(例えば、アデノウイルスまたはヘルペスウイルス)の存在下でのみ生じるため、AAVはパルボウイルス科に属し、ディペンドウイルス属に分類される。この小型のノンエンベロープウイルスは、複製(Rep)およびキャプシド(Cap)タンパク質のセットをコードする4.6キロベース(kb)の一本鎖DNAゲノムを含む。例えば、Repタンパク質(Rep78、Rep68、Rep52、およびRep40)は、AAVゲノムの複製、レスキュー、および組み込みに関与し、Capタンパク質(VP1、VP2、およびVP3)は構造機能を提供し、ビリオンキャプシドを形成する。5’および3’末端のRepおよびCapオープンリーディングフレームに隣接するのは、145bpの末端逆位反復配列(Inverted Terminal Repeat )(ITR)である。ITRは、核酸複製の起点としておよびウイルスのパッケージングシグナルとしてシスで機能する。
【0004】
感染が生じると、AAVのライフサイクルには2つの段階がある:1)溶菌段階(lytic stage)および2)溶原段階(lysogenic stage)である。ヘルパーウイルスの助けを借りて、溶菌段階が始まる。この段階中に、AAVは増殖感染を開始し、ゲノム複製、ウイルス遺伝子発現、およびビリオン産生をもたらす。アデノウイルスヘルパーの場合、AAV発現に関してヘルパー機能を提供するアデノウイルスタンパク質には、E1a、E1b、E2a、E4、およびVA RNAが含まれる。アデノウイルスは、AAVの増殖感染に適切な環境を提供することにより、細胞の遺伝子発現を調節するのを助ける。非特許文献1を参照されたい。
【0005】
AAVは、遺伝子治療用に改変することができる多用途のウイルスである。遺伝子治療に使用される、DNAゲノム中にウイルス遺伝子を欠く組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)は、主に、細胞の核にそのDNAカーゴを輸送および送達するために細胞膜を通過するように改変されたタンパク質ベースのナノ粒子である。rAAV DNAゲノムは、形質導入された細胞の核内でエピソームとして存続する環状コンカテマーを形成することができる。rAAV DNAは宿主ゲノムに組み込まれないため、長期的な遺伝子発現および耐久性に寄与し、これが、rAAVが遺伝子治療に理想的である理由の1つである。
【0006】
組換え型のAAV(rAAV)は、ベクターのパッケージングおよびDNA複製に必要な唯一のシスエレメントであるITRを保持しながら、全てのウイルス遺伝子を治療用導入遺伝子発現カセットに置き換えることにより、ベクターとして開発された。例えば、特許文献1~8を参照されたい。rAAV産生の初期の方法は、1)AAVヘルパープラスミド(一般に、AAV RepおよびCapコード領域を含むが、AAV ITRを欠いているため、それ自体を複製またはパッケージングできない)、および2)ITR含有プラスミド(一般に、ウイルス複製およびパッケージング機能を提供するAAV ITRに囲まれた目的の選択された導入遺伝子を包含する)を含む2プラスミドシステムに依存していた。ヘルパープラスミドと選択された遺伝子を搭載するITR含有プラスミドとの両方を、一過性トランスフェクションにより産生に適した細胞に導入することができる。次に、トランスフェクトした細胞に、アデノウイルスまたは単純ヘルペスウイルスなどのヘルパーウイルスを感染させてよく、それらはAAV RepおよびCap領域の転写および翻訳を指示するヘルパープラスミド上に存在するAAVプロモーターをトランス活性化する。Adヘルパーウイルスに関して、E1a、E1b、E2a、E4、およびVA RNA遺伝子は、rAAV産生に必要なヘルパー機能を提供できる。rAAVを作製するためのプロデューサー細胞へのヘルパーウイルスの感染は、rAAVの産生に効果的であった;しかしながら、結果として、宿主から免疫応答を誘導し得るヘルパーウイルス粒子も産生する可能性がある。特定のプラットフォームでは、AAVの製造に必要なウイルスヘルパー遺伝子を製造細胞株(例えば、HEK293細胞)に安定的にトランスフェクトさせることができ、それによって微量レベルの残留ヘルパーウイルスから生じる宿主免疫系による抗ヘルパーウイルス免疫応答の可能性を低減することができる。
【0007】
最近、トリプルプラスミドトランスフェクション法が開発された。この方法は、AAV血清型特異的なRepおよびCapプラスミド、ならびに導入遺伝子含有プラスミドを使用するが、第3のプラスミド上に必須ヘルパーウイルス遺伝子を供給することによりヘルパーウイルス感染の使用を排除し(すなわち、ウイルスコード配列が除去または低減され)、したがって、宿主免疫系による潜在的な抗ヘルパーウイルス免疫応答を低下させる。第3のプラスミド上にウイルスヘルパー遺伝子を供給すると、トランスフェクトされた細胞でのヘルパーウイルスの産生が大幅に減少し、rAAVのみが提供される。接着性HEK293細胞のマルチプラスミド一過性トランスフェクションは、rAAV産生に一般的に使用される方法である。
【0008】
マルチプラスミドシステムでは、適切なプラスミドサイズを維持することが重要である。したがって、プラスミドが最適なサイズであることを確実にするために、核酸配列(別名「スタッファー配列」)を追加することが重要な場合がある。例えば、ITR含有プラスミドのプラスミドバックボーンがベクターキャプシドにパッケージングされることを防ぐために、バックボーンが大きすぎてキャプシドに効果的にパッケージングされないようにスタッファー配列を追加することが必要となり得る。ただし、そのプラスミドがパッケージングされるようになる稀な場合に、スタッファー配列が「サイレント」であり、免疫系を活性化しないことが重要である。
【0009】
したがって、必要とされているのは、rAAVを製造するための改良されたトリプルプラスミドベースのシステムである。そのプラスミドシステムは、導入遺伝子の最適な発現を維持しながら、トランスフェクションの改善および免疫原性の低下をもたらすはずである。本開示の実施形態は、そのようなプラスミドシステムに関する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】米国特許第4,797,368号明細書
【特許文献2】米国特許第5,153,414号明細書
【特許文献3】米国特許第5,139,941号明細書
【特許文献4】米国特許第5,252,479号明細書
【特許文献5】米国特許第5,354,678号明細書
【特許文献6】国際公開第1991/018088号
【特許文献7】国際公開第1993/024641号
【特許文献8】国際公開第1994/13788号
【非特許文献】
【0011】
【非特許文献1】Daya and Berns Clinical Microbiology Reviews Oct 2008, p. 583-593
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0012】
背景技術の欄で明記したように、当技術分野では、rAAVベースの遺伝子治療のためのrAAVプラスミドシステムを改善することに対する大きなニーズがある。本開示は、このニーズおよび他のニーズを満たす。本開示の実施形態は、一般に、rAAVの産生のためのプラスミドシステム、より具体的には、トリプルプラスミドベースのシステムに関する。
【0013】
一態様では、本発明は、(i)5’および3’AAV末端逆位反復配列(ITR)に隣接する少なくとも1つの異種核酸配列と、それらITRの外側のスタッファー配列とを含む導入遺伝子含有プラスミド;(ii)AAVの複製(Rep)およびキャプシド(Cap)遺伝子配列を含むプラスミド;および(iii)アデノウイルス(Ad)ヘルパープラスミド;を含む、組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)の産生のためのプラスミドシステムに関する。
【0014】
ある実施形態において、スタッファー配列は、導入遺伝子含有プラスミドのバックボーンのサイズを増加させる。ある実施形態において、スタッファー配列は、導入遺伝子含有プラスミドのバックボーンがrAAVキャプシドにパッケージングされることを阻止するように、導入遺伝子含有プラスミドのバックボーンのサイズを増加させる。ある実施形態において、rAAVへのプラスミドバックボーンの取り込みは検出限界未満である。ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドのバックボーンは、スタッファー配列の付加後に野生型AAVゲノムよりも大きい。
【0015】
ある実施形態において、スタッファー配列は、エンハンサー、プロモーター、スプライシング制御因子、ノンコーディングRNA、アンチセンス配列、コード配列、またはそれらの任意の組み合わせを欠いている。ある実施形態において、スタッファー配列は、エンハンサー、プロモーター、スプライシング制御因子、ノンコーディングRNA、アンチセンス配列、およびコード配列を欠いている。ある実施形態において、スタッファー配列は、ヒトゲノムに見られる不活性なイントロンDNA配列を含む。
【0016】
ある実施形態において、スタッファー配列は、1000~5000ヌクレオチド長の間の核酸配列、または1000~2000ヌクレオチド長の間の核酸配列を含む。
【0017】
ある実施形態において、スタッファー配列は、GAPDHイントロン2、そのフラグメント、またはその変異体を含む。ある実施形態において、スタッファー配列は、不活化されたゲンタマイシン遺伝子を含む。
【0018】
ある実施形態において、スタッファー配列は、配列番号9と少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含む。ある実施形態において、スタッファー配列は、配列番号9またはそのフラグメントを含む。ある実施形態において、フラグメントは、800~1000ヌクレオチド長である。
【0019】
ある実施形態において、スタッファー配列は、配列番号9と少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸からなる。ある実施形態では、スタッファー配列は、配列番号9またはそのフラグメントからなる。ある実施形態において、フラグメントは、800~1000ヌクレオチド長である。
【0020】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、図3Aと同じ順序の構造を有するプラスミドを含み、eGFPおよびSEAP導入遺伝子は、少なくとも1つの異種核酸配列で置き換えることができる。
【0021】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、図3Bと同じ順序の構造を有するプラスミドを含み、eGFP導入遺伝子は、少なくとも1つの異種核酸配列で置き換えることができる。
【0022】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、5’から3’の方向で、5’ITR(例えば、配列番号2または43)、プロモーター(例えば、配列番号4)、少なくとも1つの異種核酸配列、ポリA(polyA)配列(例えば、配列番号8)、3’ITR(例えば、配列番号3)、およびスタッファー配列(例えば、配列番号9)の核酸配列を含み、各核酸配列は、その対応する機能的フラグメントもしくは誘導体、またはその配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列で置換することができまたはそれをコードする。
【0023】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、発現カセットの外側であるが5’ITRと3’ITRとの間にDNA力価タグ(titer tag)をさらに含む。
【0024】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、i)3’ITRの上流でかつポリA配列の下流;またはii)3’ITRの上流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の下流;またはiii)5’ITRの下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の上流;またはiv)5’ITRの下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列のプロモーターの上流;またはv)5’ITRの下流でかつ3’ITRの上流;にDNA力価タグをさらに含む。
【0025】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、i)3’ITR(例えば、配列番号3)の上流でかつポリA配列(例えば、配列番号8)の下流;またはii)3’ITR(例えば、配列番号3)の上流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の下流;またはiii)5’ITR(例えば、配列番号2または43)の下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の上流;またはiv)5’ITR(例えば、配列番号2または43)の下流でかつプロモーター(例えば、配列番号4)の上流;またはv)5’ITR(例えば、配列番号2または43)の下流でかつ3’ITR(例えば、配列番号3)の上流;にDNA力価タグをさらに含む。
【0026】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、5’から3’の方向で、5’ITR(例えば、配列番号2または43)、プロモーター(例えば、配列番号4)、少なくとも1つの異種核酸配列、ポリA配列(例えば、配列番号8)、3’ITR(例えば、配列番号3)、およびスタッファー配列(例えば、配列番号9)の核酸配列を含み、各核酸配列は、その対応する機能的フラグメントもしくは誘導体、またはその配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列で置換することができまたはそれをコードする。
【0027】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、発現カセットの外側であるが5’ITRと3’ITRとの間にDNA力価タグをさらに含む。
【0028】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、i)3’ITRの上流でかつポリA配列の下流;またはii)3’ITRの上流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の下流;またはiii)5’ITRの下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の上流;またはiv)5’ITRの下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列のプロモーターの上流;またはv)5’ITRの下流でかつ3’ITRの上流;にDNA力価タグをさらに含む。
【0029】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、i)3’ITR(例えば、配列番号3)の上流でかつポリA配列(例えば、配列番号8)の下流;またはii)3’ITR(例えば、配列番号3)の上流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の下流;またはiii)5’ITR(例えば、配列番号2または43)の下流でかつ少なくとも1つの異種核酸配列の上流;またはiv)5’ITR(例えば、配列番号2または43)の下流でかつプロモーター(例えば、配列番号4)の上流;またはv)5’ITR(例えば、配列番号2または43)の下流でかつ3’ITR(例えば、配列番号3)の上流;にDNA力価タグをさらに含む。
【0030】
ある実施形態において、AAV Rep遺伝子配列は、AAV血清型2、5、8、9、またはそれらのハイブリッドに由来する。ある実施形態において、AAV Cap遺伝子配列は、AAV血清型2、5、8、9、またはそれらのハイブリッドに由来する。ある実施形態において、RepおよびCap遺伝子配列を含むプラスミドは、プロモーターをさらに含む。ある実施形態では、プロモーターはAAVプロモーターである。ある実施形態では、プロモーターはAAV P5プロモーターである。
【0031】
ある実施形態において、Adヘルパープラスミドは、E1a、E1b、E2a、E4orf6、またはVA RNAから選択される1つまたは複数のアデノウイルス遺伝子を含む。
【0032】
ある実施形態において、Adヘルパープラスミドは、5’から3’の方向で、配列番号18、17、16、および20の核酸配列を含み、各核酸配列は、その対応する機能的フラグメントもしくは誘導体、またはその配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列で置換することができる。
【0033】
ある実施形態において、Adヘルパープラスミドは、5’から3’の方向で、配列番号21、16、39、40、22、23、および20の核酸配列を含み、各核酸配列は、その対応する機能的フラグメントもしくは誘導体、またはその配列と少なくとも60%、少なくとも65%、少なくとも70%、少なくとも75%、少なくとも80%、少なくとも85%、少なくとも90%、少なくとも95%、少なくとも96%、少なくとも97%、少なくとも98%、もしくは少なくとも99%の同一性を有する配列で置換することができまたはそれをコードする。
【0034】
ある実施形態において、Adヘルパープラスミドは、図5のいずれかの構築物と同じ順序の構造を含む。
【0035】
ある実施形態において、Adヘルパープラスミドは、配列番号14と少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含む。
【0036】
ある実施形態において、Adヘルパープラスミドは、配列番号15と少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含む。
【0037】
ある実施形態において、異種核酸配列は、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする目的の異種遺伝子である。ある実施形態において、ペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質は、酵素、抗体、MHC分子、T細胞受容体、B細胞受容体、アプタマー、アビマー、受容体結合リガンド、ターゲティングペプチド、治療薬、または遺伝子編集分子(gene editing molecule)である。ある実施形態において、異種核酸配列は、アンチセンス、siRNA、shRNA、miRNA、EGS、gRNA、sgRNA、リボザイム、またはアプタマーなどの核酸配列である。
【0038】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のプラスミドシステムのいずれか1つを含む宿主細胞に関する。
【0039】
別の態様では、本発明は、本明細書に記載のプラスミドシステムのいずれか1つによって産生されたrAAVに関する。
【0040】
別の態様では、本発明は、普遍的なベクター力価測定(universal vector titering)を可能にするDNA力価タグに関し、それは、導入遺伝子含有プラスミド内の異種核酸配列の核酸配列の上流または下流のいずれかにある約60ヌクレオチド~約100ヌクレオチド長の核酸タグ配列を含み、その核酸タグ配列を少なくとも2つの異なる導入遺伝子含有プラスミドで使用して、少なくとも2つの異なるタイプのAAVベクター間での普遍的なベクターゲノム力価測定を可能にすることができる。ある実施形態において、核酸タグ配列は、約100ヌクレオチド長である。
【0041】
ある実施形態において、核酸タグ配列は、導入遺伝子含有プラスミドの3’ITR配列の上流にあるが、導入遺伝子含有プラスミドの発現カセット内にはない。
【0042】
ある実施形態において、核酸タグ配列は、導入遺伝子含有プラスミドの5’ITR配列の下流にあるが、導入遺伝子含有プラスミドの発現カセット内にはない。
【0043】
ある実施形態において、DNA力価タグは、配列番号61~70の核酸配列のいずれか1つを含む。
【0044】
別の態様において、本発明は、本明細書に記載のプラスミドシステムのいずれか1つを用いて細胞に形質導入し、さらにrAAVを単離することを含む、rAAVを製造する方法に関する。別の態様では、本発明は、前記方法によって製造されたrAAVに関する。
【0045】
別の態様では、本発明は、本発明のプラスミドシステムを含む組成物に関する。
【0046】
別の態様では、本発明は、本発明のプラスミドシステムによって産生されたrAAVを含む医薬組成物に関する。
【0047】
別の態様では、本発明は、本発明のプラスミドシステムによって産生されたrAAVを対象に投与し、それにより、核酸配列を細胞に送達するすることを含む、核酸配列を対象の細胞に送達または移送する方法に関する。ある実施形態において、対象の細胞は、培養中であるか、または対象に存在する。
【0048】
別の態様において、本発明は、それを必要とする対象に、本発明のプラスミドシステムによって産生されたrAAVを投与することを含む、対象における疾患または障害を処置または予防するための方法に関する。
【0049】
別の態様では、本発明は、宿主細胞を本発明のプラスミドシステムによって産生されたrAAVと接触させることを含む、宿主細胞に関する。
【0050】
本開示のこれらおよび他の目的、特徴、および利点は、添付の説明、特許請求の範囲、および図面と併せて、以下の明細書を読むことでより明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0051】
図1】本開示のいくつかの実施形態による、rAAVの産生のための例示的なトリプルプラスミドシステムを示す。
図2】本開示のいくつかの実施形態による、導入遺伝子としてeGFPおよびSEAPを組み込んだrAAV産生のための例示的な導入遺伝子含有プラスミドを示す。
図3A】一本鎖(ss)rAAVの産生のための導入遺伝子含有プラスミドの例示的な遺伝子構築物を示す。
図3B】自己相補的(sc)rAAVの産生のための導入遺伝子含有プラスミドの例示的な遺伝子構築物を示す。
図4A】本開示のいくつかの実施形態による、異なるAAV RepおよびCap遺伝子を組み込んだ例示的なAAV Rep-Capプラスミドを示す。
図4B】AAV血清型2由来のプロモーターを組み込んだ例示的なAAV Rep-Capプラスミドを示す。
図5】短い(上のパネル)および長い(下のパネル)実施形態における例示的なAdヘルパープラスミドを示す。
図6】本開示によるプラスミドからの異なるAAV血清型由来のCapタンパク質の発現レベルを示すウエスタンブロットである。
図7】本開示によるプラスミドからの異なるAAV血清型由来のCapタンパク質の発現レベルを示すウエスタンブロットである。モノクローナルB1クローンをブロット解析に使用した。
図8】本開示によるプラスミドからの異なるAAV血清型由来のCapタンパク質のAAV P5駆動発現レベルを示すウエスタンブロットである。-:P5プロモーターを含まないプラスミド構築物;+:P5プロモーターを含むプラスミド構築物。モノクローナルB1クローンをブロット解析に使用した。
図9】本開示による短いAdヘルパープラスミドを使用したウイルスゲノムコピー数のqPCRアッセイの結果を示す。1:陰性対照1(pHelper+pAAV-RC2(Agilent));2:陰性対照2(pHelper+pTRUF11);3:陽性対照(pHelper+pAAV-RC2+pTRUF11);4:短いAdヘルパー試験(Short-Helper(配列番号14)+pAAV-RC2+pTRUF11)。
図10】本開示による、長いAdヘルパープラスミドを使用したウイルスゲノムコピー数のqPCRアッセイの結果を示す。1:陰性対照1(pTRUF11+pAAV-RC2(Rep2Cap2(Agilent));2:陽性対照2(pHelper+pAAV-RC2+pTRUF11);3:短いAdヘルパー試験(Short-Helper(配列番号14)+pUC19-Rep2Cap8+pITRss(配列番号1));4:長いAdヘルパー試験(Long-Helper(配列番号15)+pUC19-Rep2Cap8+pITRss(配列番号1))。
図11】rAAV産生用の対応する導入遺伝子含有プラスミドを使用して産生された一本鎖(上のパネル)または自己相補的(下のパネル)DNAゲノムを含むrAAVの細胞溶解物1mlあたりのウイルスゲノムコピー数を示す。上のパネルについて、1:陰性対照(pHelper+AAV-RC2);2:陽性対照(pHelper+pAAV-RC2+pTRUF11);3:ssITR(pHelper+pAAV-RC2+ssITR)(配列番号1)。下のパネルについて、1:陰性対照(pHelper+AAV-RC2);2:陽性対照(pHelper+pAAV-RC2+pTRUF11);3:scITR(pHelper+pAAV-RC2+scITR)(配列番号42)。
図12】陽性および陰性対照とともに、本開示によるトリプルプラスミドシステムの多様なキャプシド血清型の細胞溶解物1mlあたりのウイルスゲノムコピー数を示す。1:陰性対照(pHelper+pTRUF11);2:陽性対照(pHelper+pTRUF11+pAAV-RC2);3:pHelper+pTRUF11+pUC19-P5-Rep2Cap2(配列番号31);4:pHelper+pTRUF11+pUC19-Rep2/5Cap5(配列番号24);5:pHelper+pTRUF11+pUC19-P5-Rep2Cap8(配列番号35);6:pHelper+pTRUF11+pUC19-P5-Rep2Cap9(配列番号37);7:Short-Helper(配列番号14)+ssITR(配列番号1)+pUC19-P5-Rep2Cap2(配列番号31);8:Short-Helper(配列番号14)+ssITR(配列番号1)+pUC19-Rep2/5Cap5(配列番号24);9:Short-Helper(配列番号14)+ssITR(配列番号1)+pUC19-P5-Rep2Cap8(配列番号35);10:Short-Helper(配列番号14)+ssITR(配列番号1)+pUC19-P5-Rep2Cap9(配列番号37);11:Short-Helper(配列番号14)+ssITR(配列番号1)+pAAV-RC2。
図13A】qPCR分析のためにSV40 polyAと100ヌクレオチド長のDNA力価タグの両方を使用した、一本鎖ITR(ssITR)導入遺伝子プラスミドの溶解物1mlあたりのウイルスゲノムコピー数を示す。
図13B】qPCR分析のためにSV40 poly Aと100ヌクレオチド長のDNA力価タグの両方を使用した、自己相補的ITR(scITR)プラスミドの溶解物1mlあたりのウイルスゲノムコピー数を示す。
図14A】本開示のいくつかの実施形態による、異なるAAV RepおよびCap遺伝子を組み込んだ例示的なAAV Rep-Capプラスミドを示す。
図14B】本開示のいくつかの実施形態による、異なるAAV RepおよびCap遺伝子を組み込み、さらにP5プロモーターを組み込んだ例示的なAAV Rep-Capプラスミドを示す。
図15A】一本鎖(ss)rAAVの産生のための導入遺伝子含有プラスミドの例示的なene構築物を示す。修飾プラスミドは、より高い開発性を備えた改良されたプラスミドバックボーンを含んでいた。
図15B】自己相補的(sc)rAAVの産生のための導入遺伝子含有プラスミドの例示的なene構築物を示す。修飾プラスミドは、より高い開発性を備えた改良されたプラスミドバックボーンを含んでいた。
図16A】qPCR分析のために100ヌクレオチド長のDNA力価タグを使用した、修飾一本鎖ITR(ssITR)導入遺伝子プラスミドの溶解物1mlあたりのウイルスゲノムコピー数を示す。
図16B】qPCR分析のために100ヌクレオチド長のDNA力価タグを使用した、修飾自己相補的ITR(scITR)プラスミドの溶解物1mlあたりのウイルスゲノムコピー数を示す
【発明を実施するための形態】
【0052】
背景技術の欄で明記したように、当技術分野では、rAAVベースの遺伝子治療薬を作製するためにrAAV産生のための技術を特定することに対する大きなニーズがある。本開示は、このニーズおよび他のニーズを満たす。本開示の実施形態は、一般に、rAAV産生に関し、より具体的には、rAAVを産生するためのトリプルプラスミドベースのシステムに関する。
【0053】
本開示の様々な実施形態の原理および特徴の理解を容易にするために、様々な例示的な実施形態を以下に説明する。本開示の例示的な実施形態が詳細に説明されているが、他の実施形態も企図されていることを理解されたい。したがって、本開示の範囲を以下の説明または実施例に記載される構成要素の構造および配置の詳細に限定することは意図されていない。本開示は、他の実施形態が可能であり、様々な方法で実現または実施することができる。また、例示的な実施形態を説明する際に、明確にするために特定の用語を使用する。
【0054】
各用語は、当業者によって理解されるその最も広い意味を意図し、同様の目的を達成するために同様の方法で動作する全ての技術的同等物を含むことが意図されている。開示された技術の実施形態は、これら具体的な詳述なしで実施できることを理解されたい。他の例では、この説明の理解を曖昧にしないために、周知の方法、構造、および技法を詳細には示していない。「一実施形態」、「実施形態」、「例示的な実施形態」、「いくつかの実施形態」、「ある実施形態」、「様々な実施形態」などへの言及は、そのように記載された開示技術の実施形態が、特定の特徴、構造、または特性を含み得るが、全ての実施形態が必ずしもその特定の特徴、構造、または特性を含むわけではないことを示す。さらに、「一実施形態において」という句の繰り返しの使用は、そうである場合もあるが、必ずしも同じ実施形態を指すとは限らない。
【0055】
明細書および添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」および「the」は、文脈が明確に別段の指示をしない限り、複数形の参照も含むことに留意されたい。例えば、構成要素への言及は、複数の構成要素の構成も含むことが意図されている。成分を含む組成物への言及は、指定されたものに加えて他の成分を含むことが意図されている。言い換えれば、「a」、「an」、および「the」という用語は、数量の制限を示すのではなく、参照されるアイテムの「少なくとも1つ」の存在を示す。
【0056】
本明細書で使用される場合、「および/または」という用語は、「および」を意味する場合があり、「または」を意味する場合があり、「排他的論理和」を意味する場合があり、「1つ」を意味する場合があり、「一部であるが全てではない」を意味する場合があり、「どちらでもない」を意味する場合があり、および/または「両方」を意味する場合がある。「または」という用語は、包括的な「または」を意味することが意図される。
【0057】
範囲は、本明細書では、「約」または「ほぼ」または「実質的に」1つの特定の値から、および/または「約」または「ほぼ」または「実質的に」別の特定の値までとして表現され得る。そのような範囲が表される場合、他の例示的な実施形態は、その1つの特定の値からおよび/または他の特定の値までを含む。さらに、「約」という用語は、当業者によって決定される特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味し、これは、値がどのように測定または決定されるか、すなわち、測定システムの制限に部分的に依存する。例えば、「約」は、当技術分野の慣行に従って、許容可能な標準偏差内を意味し得る。あるいは、「約」は、所与の値の最大±20%、好ましくは最大±10%、より好ましくは最大±5%、より好ましくはさらに最大±1%の範囲を意味し得る。あるいは、特に生物学的システムまたはプロセスに関して、この用語は、値の1桁以内、好ましくは2倍以内を意味し得る。特定の値が出願および特許請求の範囲に記載されている場合、特に明記しない限り、「約」という用語は暗黙的であり、この文脈において、特定の値の許容可能な誤差範囲内を意味する。
【0058】
「含む(comprising)」または「含有する(containing)」または「含まれる(including)」とは、少なくとも指定された化合物、要素、粒子、または方法ステップが組成物または物品または方法に存在することを意味するが、他の化合物、材料、粒子、方法ステップが指定されたものと同じ機能を有している場合でも、他のそのような化合物、材料、粒子、方法ステップを排除しない。
【0059】
この説明全体を通して、様々な構成要素が特定の値またはパラメータを有するとして特定され得るが、これらの項目は、例示的な実施形態として提供されている。実際、多くの比較可能なパラメータ、サイズ、範囲、および/または値が実装され得るため、例示的な実施形態は本開示の様々な態様および概念を限定しない。「第1」、「第2」などの用語、「一次」、「二次」などは、順序、量、または重要性を示すのではなく、ある要素を別の要素と区別するために使用される。
【0060】
「特に」、「好ましくは」、「典型的に」、「一般的に」、および「しばしば」のような用語は、請求された開示の範囲を制限するため、あるいは特定の特徴がクレームされた開示の構造または機能に重大、必須、または重要であることを暗示すために本明細書で使用されているわけではない。むしろ、これらの用語は、本開示のある実施形態において利用することができるまたは利用することができない代替または追加の特徴を強調することを意図するにすぎない。「実質的に」および「約」のような用語は、任意の定量的比較、値、測定、または他の表示に起因し得る固有の不確実性の程度を表すために本明細書で使用されることにも留意されたい。
【0061】
本明細書に開示される寸法および値は、記載された正確な数値に厳密に限定されるものとして理解されるべきではない。そうではなく、別に明記されていない限り、そのような各寸法は、記載された値とその値を取り囲む機能的に同等の範囲の両方を意味することが意図される。例えば、「50mm」として開示される寸法は、「約50mm」を意味することが意図される。
【0062】
1つまたは複数の方法ステップへの言及は、明示的に特定されたそれらのステップの間に追加の方法ステップまたは介在する方法ステップの存在を排除するものではないことも理解されたい。同様に、組成物中の1つまたは複数の成分への言及は、明示的に特定されたもの以外の追加の成分の存在を排除しないことも理解されたい。
【0063】
本明細書で使用される場合、「対象」、「患者」、「個体」、および「動物」という用語は、本明細書で交換可能に使用され、ヒトおよび獣医動物(例えば、ネコ、イヌ、ウシ、ウマ、ヒツジ、ブタなど)および実験動物モデルを含むがこれらに限定されない哺乳動物を指す。好ましい実施形態では、対象はヒトである。
【0064】
本明細書で使用される場合、「遺伝子治療」という用語は、疾患または状態に関連する1つまたは複数の症状(例えば、臨床的要因)の緩和、軽減、またはその再発を防止するために、治療遺伝子(例えば、第VIII/IX/X因子)をコードする核酸を患者に提供する任意の治療アプローチを含む。この用語は、治療遺伝子(その遺伝子の任意の改変形態(例えば、第VIII/IX/X因子のバリアント)を含む)をコードする核酸を含む任意の化合物、薬物、手順、またはレジメンを、疾患または状態を有する個体の健康を維持または改善するために投与することを包含する。当業者は、例えば、本開示に従って得られた結果に基づいて、遺伝子治療のコースまたは遺伝子治療薬の用量を変更できることを理解するであろう。
【0065】
本明細書で使用される場合、用量または量に適用される「治療(上)有効」という用語は、状況、障害または状態を処置(例えば、予防または改善)するために対象に投与したときにそのような処置を有効にするのに十分な化合物または医薬組成物の量を指す。例えば、血友病の処置に有用な薬物の治療有効量は、血友病に関連する1つまたは複数の症状を予防または緩和することができる量であり得る。「治療有効量」は、投与される化合物または細菌または類似体、ならびに疾患およびその重症度、処置される哺乳動物の年齢、体重、体調および反応性に応じて変化するであろう。正確な用量は、処置の目的に依存し、既知の技術を使用して当業者によって確認可能である(例えば、Lieberman, Pharmaceutical Dosage Forms (vols. 1-3, 1992); Lloyd, The Art, Science and Technology of Pharmaceutical Compounding (1999); Pickar, Dosage Calculations (1999);およびRemington: The Science and Practice of Pharmacy, 20th Edition, 2003, Gennaro, Ed., Lippincott, Williams & Wilkinsを参照されたい)。
【0066】
本明細書で使用される場合、「ベクター」という用語は、核酸(例えば、遺伝子治療構築物をコードする)を宿主細胞に移送するために使用される任意のビヒクルを指す。いくつかの実施形態において、ベクターは、標的核酸と共に、ビヒクルを複製するように機能するレプリコンを含む。いくつかの実施形態において、ベクターは、標的核酸(例えば、治療遺伝子または治療遺伝子バリアントをコードするコドン改変ポリヌクレオチド)を導入するためのウイルス粒子である。遺伝子治療に有用な多くの改変真核生物ウイルスが当技術分野で知られている。例えば、アデノ随伴ウイルス(AAV)は、ヒトがウイルスの自然宿主であり、ネイティブウイルスがいずれの病気にも寄与することは知られておらず、ウイルスが誘導する免疫応答が軽度であるため、ヒトの遺伝子治療での使用に特に適している。「組換えAAV」(rAAV)および「AAV」は、本願全体で同じ意味で使用される。
【0067】
「プラスミド」という用語は、所与の細菌細胞において自律的に複製することができる染色体外環状DNAを指す。例示的なプラスミドには、pBR322、pUC、pUC19、pUC57、pJ241、またはpJ247、pBluescript、pREP4、pCEP4、pCI、およびp Polyに由来するものが含まれるが、これらに限定されない (Lathe et al., Gene 57 (1987), 193-201)。プラスミドは、標準的な分子生物学技術によって改変することもできる(Sambrook et al., Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor (1989), N.Y.)。それは、(例えば、細胞栄養要求性の相補性または抗生物質耐性によって)トランスフェクトされた細胞を選択または識別するための選択遺伝子、安定化エレメント(例えば、cer配列)または組込みエレメント(integrative element)(例えば、LTRウイルス配列およびトランスポゾン)も含み得る。
【0068】
本明細書で使用される場合、「プラスミドバックボーン」という用語は、典型的には、適切なプラスミドで形質転換された宿主のみの特異的成長に必要である、複製起点(例えば、配列番号20および26)および抗生物質選択遺伝子を含むDNAの配列を指す。ある実施形態において、これらのエレメントは、rAAVキャプシドにパッケージングされることは意図されていない。
【0069】
本明細書で使用される場合、「遺伝子」という用語は、ポリペプチド鎖をコードするDNA分子のセグメント(例えば、コード領域)を指す。いくつかの実施形態において、遺伝子には、ポリペプチド鎖の産生に関与する、コード領域の直前の、後の、および/またはその間に介在する領域(例えば、プロモーター、エンハンサー、ポリアデニル化配列、5’非翻訳領域、3’-非翻訳領域、またはイントロンなどの調節エレメント)が配置される。
【0070】
本明細書で使用される場合、「調節エレメント」という用語は、細胞におけるコード配列の発現を提供する、プロモーター、エンハンサー、ターミネーター、ポリアデニル化配列、イントロンなどの核酸配列を指す。
【0071】
本明細書で使用される場合、「プロモーターエレメント」という用語は、コード配列の発現を制御するのを助ける核酸配列を指す。一般的に、プロモーターエレメントは遺伝子の翻訳開始部位の5’に位置する。しかしながら、ある実施形態では、プロモーターエレメントは、イントロン配列内、またはコード配列の3’に位置する場合もある。いくつかの実施形態において、遺伝子治療に有用なプロモーターは、標的タンパク質の天然遺伝子に由来する。いくつかの実施形態では、遺伝子治療に有用なプロモーターは、標的生物の特定の細胞または組織での発現に特異的である(例えば、肝臓特異的プロモーター)(Wu Z et al. Molecular Therapy 16(2):280-9. Choi VW et al. Molecular Therapy Methods & Clinical Development 2015. 2:15022;これらは両方とも、意図された全ての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる)。さらに他の実施形態では、複数の十分に特徴付けられたプロモーターエレメントのうちの1つが本明細書に記載の遺伝子治療で使用される。十分に特徴付けられたプロモーターエレメントの非限定的な例には、CMV初期プロモーター(例えば、hCMVie(配列番号4))、3-アクチンプロモーター、およびメチルCpG結合タンパク質2(MeCP2)プロモーターが含まれる。いくつかの実施形態において、プロモーターは、標的タンパク質の実質的に定常的な発現を駆動する構成的プロモーターである。他の実施形態では、プロモーターは、特定の刺激(例えば、特定の処置または薬剤への曝露)に応答して標的タンパク質の発現を駆動する誘導性プロモーターである。AAV媒介遺伝子治療のためのプロモーターの設計のレビューについては、その内容が全ての目的のためにその全体が参照により明示的に組み込まれるGray et al., Human Gene Therapy 22:1143-53 (2011)を参照されたい。
【0072】
本明細書で使用される場合、「導入遺伝子」という用語は、動物のゲノムに導入される任意の核酸を広く指し、おそらく通常はゲノムに存在しない配列を有する遺伝子または核酸、所与のゲノム中に存在するが通常は転写および翻訳(「発現」)されない遺伝子、あるいはゲノム中に導入することが望まれる任意の他の遺伝子または核酸を含むがこれらに限定されない。これには、通常非トランスジェニックゲノムに存在し得るが発現を変更することが望まれる遺伝子、または非変異形態または改変もしくはバリアント形態で導入することが望まれる遺伝子が含まれ得る。導入遺伝子は、規定された遺伝子座に特異的に標的化される場合があり、または染色体内にランダムに組み込まれる場合があり、または染色体外で複製するDNAであってもよい。導入遺伝子は、選択された核酸の最適な発現に必要であり得る、1つまたは複数の転写調節配列、およびイントロンなどの他の任意の核酸を含み得る。導入遺伝子は、わずか数ヌクレオチド長であってよいが、好ましくは、少なくとも約50、100、150、200、250、300、350、400、または500ヌクレオチド長またはそれ以上であり、例えば、ウイルスゲノム全体であってもよい。導入遺伝子は、コード配列またはノンコーディング配列、あるいはそれらの組み合わせであり得る。導入遺伝子は通常、適切な条件下で1つまたは複数の導入遺伝子の発現を駆動することができる調節エレメントを含む。
【0073】
本明細書で使用される場合、コード配列および/または制御配列などの核酸配列に関連する「異種」という用語は、通常は一緒に結合されない、および/または通常は特定の細胞に関連しない配列を示す。したがって、「異種」核酸配列は、核酸配列がAAV以外の生物に由来するか、または合成的に誘導されたものであることを意味する。ある実施形態では、異種核酸配列(例えば、目的の異種遺伝子)は、凝固因子、酵素、抗体、または他の目的のポリペプチドなどであるがこれらに限定されないポリペプチドをコードすることができる。ある実施形態において、異種核酸配列は、アンチセンス、siRNA、shRNA、miRNA、EGS、gRNA、sgRNA、リボザイム、またはアプタマーなどであるがこれらに限定されない構造的または治療的機能を有するRNAをコードすることができる。同様に、通常は細胞内に存在しない構築物で形質転換された細胞は、本発明の目的のために異種であると見なされるであろう。
【0074】
「作動可能に連結された」とは、配列の1つの機能が別の配列によって影響を受けるように物理的に連結された2つ以上の核酸配列エレメントの関連性を指す。例えば、調節DNA配列がコードDNA配列の発現に影響を与える(すなわち、コード配列または機能的RNAがプロモーターの転写制御下にある)ように2つの配列が位置する場合、調節DNA配列は、RNAまたはポリペプチドをコードするDNA配列に「作動可能に連結された」または「関連する」と言われる。コード配列は、センス方向またはアンチセンス方向で調節配列に作動可能に連結され得る。
【0075】
本明細書で使用される場合、「核酸」という用語は、デオキシリボヌクレオチドまたはリボヌクレオチド、および一本鎖または二本鎖形態のそれらのポリマー、ならびにそれらの相補体を指す。この用語は、既知のヌクレオチド類似体または修飾された骨格残基または結合を含む核酸を包含し、これらは、合成のもの、天然に存在するもの、および非天然のものであってよく、参照核酸と同様の結合特性を有しかつ参照ヌクレオチドと同様の方法で代謝される。そのような類似体の例には、ホスホロチオエート、ホスホルアミデート、メチルホスホネート、キラル-メチルホスホネート、2-O-メチルリボヌクレオチド、およびペプチド-核酸(PNA)が含まれるが、これらに限定されない。
【0076】
「アミノ酸」という用語は、天然に存在するアミノ酸と同様に機能するアミノ酸類似体およびアミノ酸模倣物を含む、天然に存在するおよび非天然のアミノ酸を指す。天然に存在するアミノ酸には、遺伝暗号によってコードされるアミノ酸、ならびに翻訳後修飾されたアミノ酸、例えば、ヒドロキシプロリン、γ-カルボキシグルタメート、およびO-ホスホセリンが含まれる。天然に存在するアミノ酸には、例えば、D-およびL-アミノ酸が含まれ得る。本明細書で使用されるアミノ酸は非天然アミノ酸も含み得る。アミノ酸類似体は、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造、すなわち、水素、カルボキシル基、アミノ基、およびR基に結合する任意の炭素を有する化合物を指し、例えば、ホモセリン、ノルロイシン、メチオニンスルホキシド、またはメチオニンメチルスルホニウムなどである。そのような類似体は、修飾されたR基(例えば、ノルロイシン)または修飾されたペプチド骨格を有するが、天然に存在するアミノ酸と同じ基本的な化学構造を保持する。アミノ酸模倣物は、アミノ酸の一般的な化学構造とは異なる構造を有するが、天然に存在するアミノ酸と同様に機能する化合物を指す。アミノ酸は、本明細書では、一般に知られている3文字の記号、またはIUPAC-IUB生化学命名委員会が推奨する1文字の記号のいずれかで表記される。同様に、ヌクレオチドは、一般的に受け入れられている1文字のコードで表記され得る。
【0077】
本明細書で使用される「誘導体」という用語は、対応する完全長の野生型の核酸、ペプチドまたはタンパク質と比較して、1つまたは複数の変異および/または化学修飾を含む核酸、ペプチド、またはタンパク質あるいはそれらのバリアントまたは類似体を指す。核酸が関与する化学修飾の非限定的な例には、例えば、塩基部分、糖部分、リン酸部分、リン酸-糖骨格、またはそれらの組み合わせへの修飾が含まれる。
【0078】
本明細書に記載のプラスミドシステムで有用であり得る変異遺伝子構築物をコードする核酸配列は、野生型(すなわち、変異していない)配列と同一であってよく、または遺伝暗号の冗長性または縮重の結果として野生型コード配列と同じポリペプチドをコードする異なるコード配列であってもよい。当業者は、核酸中の各コドン(通常メチオニンの唯一のコドンであるAUG、および通常トリプトファンの唯一のコドンであるTGGを除く)を修飾して、機能的に同一の分子を生成できることを認識するであろう。したがって、同じポリペプチドをコードする核酸の各バリエーションは、実際の遺伝子治療構築物に関してではなく、発現産物に関して記載の各配列に暗に含まれる。
【0079】
アミノ酸配列に関して、当業者は、コードされた配列中の単一アミノ酸またはアミノ酸のごく一部を変更、追加または削除する核酸またはペプチド配列への個々の置換、欠失または付加が、その変更によりアミノ酸が化学的に類似したアミノ酸に置換される「保存的に改変されたバリアント」であることを認識するであろう。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的置換表は、当技術分野でよく知られている。そのような保存的に改変されたバリアントは、本開示の多型バリアント、種間ホモログ、および対立遺伝子に追加され、またそれらを除外しない。機能的に類似したアミノ酸を提供する保存的アミノ酸置換は、当技術分野でよく知られている。例えば、触媒的アミノ酸、構造的アミノ酸、または立体的に重要なアミノ酸など、特定のアミノ酸の機能性に応じて、アミノ酸の様々な集団が互いの保存的置換と見なされ得る。
【0080】
2つ以上の核酸またはペプチド配列の文脈における「同一」または「同一性」パーセント(%)という用語は、以下に説明するデフォルトのパラメータを用いてBLASTまたはBLAST 2.0配列比較アルゴリズムを使用してあるいは手動アラインメントおよび目視検査により測定した場合に、同一であるか、または特定のパーセンテージの同一アミノ酸残基またはヌクレオチド(すなわち、比較ウインドウまたは指定された領域にわたり最大の一致となるように比較および整列させた場合に、特定領域にわたり、約60%の同一性、好ましくは65%、70%、75%、80%、85%、90%、91%、92%、93%、94%、95%、96%、97%、98%、99%、またはそれ以上の同一性)を有する2つ以上の配列または部分配列を指す。
【0081】
当技術分野で知られているように、タンパク質(または以下で論じる核酸)が既知の配列と配列同一性または類似性を有するかどうかを特定するために、いくつかの異なるプログラムを使用することができる。配列同一性および/または類似性は、Smith & Waterman, Adv. Appl. Math., 2:482 (1981)の局所配列同一性アルゴリズム、Needleman & Wunsch, J. Mol. Biol., 48:443 (1970)の配列同一性アラインメントアルゴリズムによる、Pearson & Lipman, Proc. Natl. Acad. Sci. U.S.A., 85:2444 (1988)の類似性探索法による、これらのアルゴリズムのコンピューター化された実装(Wisconsin Genetics Software Package, Genetics Computer Group, 575 Science Drive, Madison, WisのGAP、BESTFIT、FASTA、およびTFASTA)による、Devereux et al., Nucl. Acid Res., 12:387-395 (1984) に記載されるベストフィットシーケンスプログラム、好ましくはデフォルト設定を使用して、または検査によるものを含むが、これに限定されない当技術分野で知られている標準的技術を使用して決定される。好ましくは、同一性パーセントは、次のパラメータに基づいてFastDBによって計算される:1のギャップペナルティ;0.33のギャップサイズペナルティ;および、30の結合ペナルティ("Current Methods in Sequence Comparison and Analysis," Macromolecule Sequencing and Synthesis, Selected Methods and Applications, pp 127-149 (1988), Alan R. Liss, Inc、参照によってその全てが組み込まれる)。
【0082】
本開示によれば、当技術分野の技術の範囲内で、従来の分子生物学、微生物学、および組換えDNA技術を使用することができる。そのような技術は、文献で完全に説明されている。例えば、とりわけ、Sambrook, Fritsch & Maniatis, Molecular Cloning: A Laboratory Manual, Second Edition (1989) Cold Springa Harbor Laboratory Press, Cold Spring Harbor, New York (herein "Sambrook et al., 1989"); DNA Cloning: A Practical Approach, Volumes I and II (D.N. Glover ed. 1985); Oligonucleotide Synthesis (M.J. Gait ed. 1984); Nucleic Acid Hybridization (B.D. Hames & S.J. Higgins eds.(1985); Transcription and Translation (B.D. Hames & S.J. Higgins, eds. (1984); Animal Cell Culture (R.I. Freshney, ed. (1986); Immobilized Cells and Enzymes (IRL Press, (1986); B. Perbal, A Practical Guide To Molecular Cloning (1984); F.M. Ausubel et al. (eds.), Current Protocols in Molecular Biology, John Wiley & Sons, Inc. (1994);を参照されたい。
【0083】
開示のプラスミドシステム
一態様では、本開示は、組換えアデノ随伴ウイルスベクター(rAAV)を操作(engineering)および産生するためのトリプルプラスミドシステムを提供する。ある実施形態では、3つのプラスミドバックボーンは全て同じである。ある実施形態において、3つのプラスミドバックボーンのうち少なくとも1つは異なる。ある実施形態では、3つのプラスミドバックボーンは全て異なる。ある実施形態では、3つのプラスミドバックボーンは全て、完全なAAVゲノムの再構築につながり得る組換えの発生を防ぐために異なる。ある実施形態において、3つのプラスミドは、例えば、これらに限定されないが、pUC19、pBR322、pUC57、pJ241、またはpJ247に基づくプラスミドバックボーンを含む。ある実施形態において、3つのプラスミドは、pUC19、pJ241、およびpJ247に基づくプラスミドバックボーンを含む。
【0084】
ある実施形態において、1つのプラスミドは、rAAV産生構築物のための導入遺伝子含有プラスミドとして機能し、第2のプラスミドは、AAV Rep-Cap構築物として機能し、第3のプラスミドは、アデノウイルス(Ad)ヘルパー構築物として機能する。各タイプの例示的プラスミドを図1に示す。
【0085】
rAAV産生のための導入遺伝子含有プラスミド
rAAV産生のための導入遺伝子含有プラスミドは、少なくとも1つの目的の異種核酸配列(例えば、アンチセンスRNA分子、shRNA、miRNA、リボザイム、または目的ポリペプチドをコードする遺伝子)を運ぶように操作され、AAVゲノムの内部が、発現カセット内の目的の異種核酸配列に置き換えられる。本明細書で使用される「発現カセット」は、適切な宿主細胞(例えば、哺乳動物)において特定の異種核酸配列の発現を導くことができる核酸配列を意味し、これは、終結シグナルに作動可能に連結され得る目的の核酸配列に作動可能に連結されたプロモーターを含むことができる。目的の異種核酸配列を含む発現カセットはキメラであってよい。発現カセットはまた、天然に存在するが、異種発現に有用な組換え形態で得られたものであってもよい。
【0086】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、抗生物質耐性遺伝子を含まない。ある実施形態では、導入遺伝子含有プラスミドは、アンピシリン耐性遺伝子(例えば、配列番号71および73)を含まない。抗生物質耐性遺伝子はプラスミド産生の選択マーカーとして一般的に使用されているが、抗生物質耐性遺伝子(例えば、アンピシリン耐性遺伝子)を含めると安全性の懸念が生じる可能性がある。例えば、患者の細菌への遺伝子の水平伝播が生じる可能性があるが、遺伝子がプラスミドに存在しなければそれが防止される。環境微生物への抗生物質耐性形質の拡散の不必要なリスクを回避するために、重要な臨床使用の抗生物質に関連する抗生物質選択マーカーの使用を避けることが特に重要である(例えば、アンピシリン)。医薬組成物中に残留抗生物質(例えば、ペニシリンおよび他のβ-ラクタム抗生物質)が含まれる可能性があるため、患者に重篤な過敏反応を引き起こす抗生物質の抗生物質耐性遺伝子を使用することも避けるべきである。
【0087】
本発明による例示的な導入遺伝子含有プラスミドは、図2、3A、3B、15A、および15B、ならびに配列番号1、42、71、および73に示され、または配列番号1、42、71、および73と少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有するプラスミドである。図2、3A、3B、15A、および15Bは、本発明の導入遺伝子含有プラスミドのエレメントの順序の例を提供する。
【0088】
配列番号71および73による導入遺伝子含有プラスミドは、アンピシリン耐性遺伝子の全ての痕跡を除去し、また追加のスタッファー配列として機能する不活性化ゲンタマイシン耐性遺伝子(例えば、オープンリーディングフレームから開始コドンが除去された)を含むため有利である。
【0089】
導入遺伝子含有プラスミドは、転写の方向に作動可能に連結された成分、すなわち転写開始領域含む制御エレメント、目的のDNAおよび転写終結領域を少なくとも提供するように、既知の技術を使用して構築される。制御エレメントは、哺乳動物細胞で機能するように選択される。作動可能に連結された成分を含む得られた構築物は、機能的なAAV末端逆位反復(ITR)配列に隣接している(5’および3’)。ポリアデニル化部位などの終結シグナルもプラスミドに含めることができる。
【0090】
ITRは、パッケージングに必要な唯一のシスエレメントであることが示されており、rAAVを作製するためにウイルス遺伝子を完全に欠失させることを可能にする。ローリングサークルDNA複製メカニズムは、ITR内のD配列の存在により、ITRに隣接する導入遺伝子発現カセットのDNA配列を主に増幅(すなわち複製)するが、プラスミドDNAバックボーン(例えば、複製起点、抗生物質耐性遺伝子発現カセットなど)も、隣接するD配列ドメインがないため低頻度ではあるが、ベクターキャプシドにパッケージされ得る。AAVは、野生型ウイルスゲノム(約4.7kbase)と同様であるかそれよりも小さいゲノムサイズのパッケージングに効率的である。バックボーンがキャプシドにパッケージングされるのに不都合となる程度にバックボーンのサイズを増加させることにより、プラスミドバックボーンのパッケージングを阻止することができる。バックボーンの拡大は、追加の「スタッファー」配列(すなわち、フィラー成分)によって達成することができ、野生型AAVゲノムよりも大きいプラスミドバックボーンサイズをもたらす。理論に拘束されることを望まないが、拡大されたプラスミドバックボーンの存在は、rAAVがプラスミドバックボーンをベクターキャプシド内にパッケージングする可能性を低減できることが示唆されている。いくつかの実施形態において、拡大されたプラスミドバックボーンは、スタッファー配列を使用することによって作製される。
【0091】
ある実施形態において、スタッファー配列は、エンハンサー、プロモーター、スプライシング制御因子、ノンコーディングRNA、アンチセンス配列、および/またはコード配列のうちの少なくとも1つを欠いているという点で、生物学的活性に関してサイレントである。ある実施形態において、エンハンサー、プロモーター、スプライシング制御因子、ノンコーディングRNA、アンチセンス配列、およびコード配列のそれぞれが存在しない。
【0092】
ある実施形態において、スタッファー配列は、ヒトゲノムに見られる不活性なイントロンDNA配列を含む。ヒトゲノムからのDNA配列を利用することにより、プラスミドがキャプシドにパッケージングされた場合に、スタッファー配列が免疫応答を誘導する可能性が低くなる。スタッファー配列がオープンリーディングフレームを含まないことも重要である。
【0093】
スタッファー配列は、プラスミドバックボーンがベクターキャプシドにパッケージングされないように、プラスミドバックボーンのサイズがrAAVの最適なパッケージングサイズよりも大きくなるくらい十分に大きい必要がある。スタッファー配列は、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも30、少なくとも40、少なくとも50、少なくとも60、少なくとも70、少なくとも80、少なくとも90、少なくとも100、少なくとも200、少なくとも300、少なくとも400、少なくとも500、少なくとも600、少なくとも700、少なくとも800、少なくとも900、少なくとも1000、少なくとも2000、少なくとも3000、少なくとも4000、少なくとも5000、少なくとも6000、少なくとも7000、少なくとも8000、少なくとも9000、または少なくとも10000ヌクレオチドからなり得る。ある実施形態において、スタッファー配列は、1000~5000ヌクレオチド長の間の核酸を含む。ある実施形態において、スタッファー配列は、1000~2000ヌクレオチド長の間の核酸を含む。ある実施形態において、スタッファー配列は、800~1500ヌクレオチド長の間の核酸を含む。ある実施形態において、スタッファー配列は、800~1000ヌクレオチド長の間の核酸を含む。
【0094】
好ましい実施形態では、スタッファー配列は、ヒトGAPDHイントロン2(NG007073.2)を含む。理論に拘束されることを望まないが、ヒトGAPDHイントロン2の使用は、ヒトゲノムにすでに存在するため免疫原性が低く、したがって、偶然にパッケージングされた場合に免疫応答を誘導しないはずである。GAPDHイントロン2は、単一の天然に存在する配列であるため、スタッファー配列として理想的である。DNA配列の不自然な強化をもたらす、追加のヌクレオチドを含めたり、複数の配列を連結したりする必要はない。
【0095】
ある実施形態において、スタッファー配列は、配列番号9またはそのフラグメントと、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。ある実施形態において、スタッファー配列は、配列番号9またはそのフラグメントを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0096】
ある実施形態において、スタッファー配列は、不活化されたゲンタマイシン遺伝子を含む。ある実施形態において、ゲンタマイシン遺伝子は、それが発現されないように改変されている。例えば、開始コドンが除去され得る。
【0097】
ある実施形態において、スタッファー配列は、配列番号72またはそのフラグメントと、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。ある実施形態において、スタッファー配列は、配列番号72またはその非機能的フラグメントを含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0098】
導入遺伝子含有プラスミドは、様々なAAV血清型のいずれかからのITRを使用して構築できる。これらのITRの塩基対は、相補的DNA鎖の合成を可能にする。ITRは、目的の異種核酸配列を含むrAAVの複製およびパッケージングを可能にするためにそのようなプラスミドで機能的であり続ける。AAVプラスミドの末端反復配列内の変異は、機能的なAAVベクターの作製において十分に許容される。例えば、Samulski et al,1983;Muzyczka et al,1984;および米国特許第9,163,259号(これらは全ての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。2つのITRの1つが欠失されたプラスミドでさえ、構築物内の既存のITRが完全なAAV ITR配列を含む限り、AAV配列がレスキューされ、複製され、また感染性ビリオンが産生され得る。
【0099】
AAV ITR領域の核酸配列は既知である。ITRは、野生型核酸配列を有する必要はなく、例えば、ヌクレオチドの挿入、欠失または置換によって改変され得る。さらに、AAV ITRは、AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、AAV11、またはそれらのキメラを含むがこれらに限定されない、いくつかのAAV血清型のいずれかに由来し得る。さらに、AAVベクター内の選択された核酸配列に隣接する5’および3’ITRは、それらが意図したように機能する限り、すなわち宿主細胞ゲノムからの目的配列の切除およびレスキューを可能にする限り、必ずしも同一である必要はなく、また同じAAV血清型または分離株に由来する必要はない。この明細書に記載されているrAAVの5’ITR配列の例として配列番号2および43が使用されているが、その末端解離部位(terminal resolution site)を保有する任意の5’ITR配列が、同じ機能を有するベクターを産生すると予想される。同様に、本明細書に記載されているrAAVの3’ITR配列の例として配列番号3が使用されているが、末端解離部位を保有する任意の3’ITR配列が、同じ機能を持つベクターを産生すると予想される。
【0100】
ある実施形態において、5’ITR配列は、配列番号2または配列番号43、またはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体と、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含むか、それからなるか、または本質的それからなる。ある実施形態において、5’ITRは、配列番号2または配列番号43、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0101】
ある実施形態において、3’ITR配列は、配列番号3またはその機能的フラグメントもしくは誘導体と、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。ある実施形態において、3’ITRは、配列番号3またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0102】
ある実施形態において、上記のようなスタッファー配列を含む導入遺伝子含有プラスミドは、発現カセットに作動可能に連結されている。
【0103】
ある実施形態において、発現カセットはプロモーターを含む。ある実施形態において、少なくとも1つの異種核酸配列(例えば、目的の異種遺伝子)は、異種核酸配列が適切なまたは望ましい条件下で患者の標的細胞で発現され得るように、pol IIプロモーター(構成的、細胞特異的、または誘導性)に作動可能に連結される。構成的、細胞特異的、および誘導性プロモーターの多数の例が当技術分野で知られており、当業者は、特定の使用目的のためのプロモーターを容易に選択することができ、例えば、筋細胞特異的発現のための筋肉特異的骨格筋α-アクチンプロモーターまたは筋肉特異的クレアチンキナーゼプロモーター/エンハンサーの選択、強力なレベルの連続的またはほぼ連続的発現のための構成的CMVプロモーター(例えば、hCMVie(配列番号4))の選択、または誘導性発現のための誘導性エクジソンプロモーターの選択である。誘導性発現は、当業者が合成されるタンパク質の量を制御することを可能にする。このようにして、治療薬の濃度を変えることが可能である。よく知られている誘導性プロモーターの他の例は、ステロイドプロモーター(例えば、エストロゲンおよびアンドロゲンプロモーター)およびメタロチオネインプロモーターである。ある実施形態において、プロモーターは、pol IIIプロモーターである。ある実施形態において、プロモーターは、U6プロモーターである。ある実施形態において、プロモーターは、H1プロモーターである。ある実施形態において、遺伝子発現カセットはプロモーターを含まない。
【0104】
ある実施形態では、導入遺伝子含有プラスミドはマルチシストロン性であり、すなわち、複数の遺伝子を運ぶ。発現される遺伝子ごとに固有のmRNA転写産物を生成するプロモーターとは異なり、マルチシストロン性プラスミドは、同じmRNAから2つ以上の別個のタンパク質を同時に発現する。このような場合、複数の遺伝子は、各遺伝子の個別の翻訳を可能にするエレメント(例えば、内部リボソーム侵入部位(IRES)または2Aペプチド)によって分離される。
【0105】
本明細書に記載されているrAAVのIRES配列の例として配列番号6が使用されているが、末端解離部位を保有する任意の5’ITR配列が、同じ機能を持つベクターを産生すると予想される。
【0106】
IRESは、別のリボソーム動員部位として機能することにより、mRNAの内部領域からの翻訳の開始を可能にする。ある実施形態において、IRES配列は、配列番号6またはその機能的フラグメントもしくは誘導体と、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。ある実施形態において、IRESは、配列番号6またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0107】
ある実施形態において、導入遺伝子含有プラスミドは、2Aペプチドをコードする。2Aペプチド(以下の表1の非限定的な例を参照)は、IRESエレメントの欠点のいくつかを克服するために作製された。特に、2Aペプチドは「自己切断(self-cleaving)」であり、これらペプチドは、リボソームに2AエレメントのC末端でのペプチド結合の合成をスキップさせ、2A配列の末端と下流の次のペプチドとの間の分離をもたらす。「切断」は、C末端にあるグリシン残基とプロリン残基の間で生じ、上流のシストロンはその末端に付加されたいくつかの追加の残基を有するが、下流のシストロンはプロリンで始まることを意味する。2A切断は真核細胞で普遍的であり、何人かの科学者はほぼ100%の切断を報告している。具体的な2Aペプチドの選択は、最終的には細胞タイプや実験条件などの多くの要因に依存し、当業者はどれを選択すべきか理解するであろう。
【表1】
【0108】
一実施形態では、プラスミドは、AAVからの5’ITRおよび3’ITRを含み、これらITRは少なくとも1つの遺伝子を取り囲む。ある実施形態において、スタッファー配列は、3’ITRの下流に位置する。ある実施形態では、スタッファー配列は5’ITRの上流にある。ITRは、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、および/またはAAV11、あるいはそれらのキメラに由来し得る。ある実施形態において、ITRは、AAV血清型AAV2および/またはAAV5に由来する。ある実施形態において、ITRは、配列番号2、3または43、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体であり得る。いくつかの実施形態において、遺伝子は、例えば、限定されないが、eGFP(例えば、配列番号5)および/またはSEAP(例えば、配列番号7)などのレポーター遺伝子である。いくつかの実施形態において、スタッファー配列は、GAPDHイントロン2、またはそのフラグメントもしくは変異体である。いくつかの実施形態において、スタッファー配列は、配列番号9またはそのフラグメントである。ssAAV(図3A)およびscAAV(図3B)のrAAVを生成するためのプラスミドで使用するための例示的な遺伝子構築物を図3に示す。
【0109】
Rep-Capプラスミド
第2のプラスミドは、AAV複製(Rep)およびキャプシド(Cap)遺伝子配列を含む。AAV Rep-Capプラスミドは、主要なAAV遺伝子のオープンリーディングフレーム(ORF)、すなわちRep遺伝子およびCap遺伝子の両方を含む。Repタンパク質は、とりわけ、AAVのDNA複製の起点(Ori)の認識、結合、およびニッキング;DNAヘリカーゼ活性;ならびにAAV(または他の異種)プロモーターからの転写の調節;を含む、多くの機能を有することが示されている。Capタンパク質は、必要なパッケージング機能を提供し、ウイルスキャプシドシェルを組み立てる。本明細書では、AAVヘルパー機能を使用して、AAVベクターから失われているAAV機能をトランスで補完する。RepおよびCap遺伝子は翻訳されて、複数の異なるタンパク質(Rep78、Rep68、Rep52、Rep40-AAVのライフサイクルに必要;VP1、VP2、VP3-キャプシドタンパク質)を産生する。Repおよび/またはCap遺伝子は、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、および/またはAAV11、またはそれらのキメラに由来し得る。ある実施形態において、AAV Repおよび/またはCap遺伝子は、遺伝子操作されたAAVおよび/または化学的に修飾されたAAVをコードする。例えば、全ての意図された目的のために参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第7,259,151号に記載されているものなど、免疫原性が低くなるように変異させたAAVビリオンを参照されたい。AAV血清型の選択は、AAV血清型の向性(tropism)に基づいて選択できる。以下の表2は、最も広く使用されているAAV血清型の向性の例を示すが、これらに限定されない。AAVの向性は、シュードタイピング(すなわち、異なるウイルス血清型由来のITRからのキャプシドとゲノムの混合)を介して変更することもできる。これらの血清型はスラッシュを使用して示されるため、AAV2/5は、血清型5のキャプシドにパッケージングされた血清型2のITRを運ぶゲノムを含むウイルスを表す。これらのシュードタイプウイルスを使用すると、形質導入効率を改善できるだけでなく、向性を変化させることができる。例えば、AAV2によって効率的に形質導入されないニューロンでは、脳内により広く分布され、形質導入効率が向上されることが示されているAAV2/5を使用できる。複数の異なる血清型に由来するハイブリッドキャプシドを使用することもでき、これもウイルスの向性を変化させる。例えば、8つの血清型に由来するハイブリッドキャプシドを含むAAV-DJは、どの野生型の血清型よりもin vitroで高い形質導入効率を示す;in vivoでは、広範囲の細胞タイプにわたり非常に高い感染力を示す。変異体AAV-DJ8は、AAV-DJの特性を示すが、脳への取り込みが強化されている。RepおよびCap遺伝子発現産物の両方をコードする一般的に使用されるプラスミドpAAV/AdおよびpIM29+45など、多くのAAVヘルパープラスミドが記載されている。例えば、Samulski et al. (1989) J. Virol. 63:3822-3828; and McCarty et al. (1991) J. Virol. 65:2936-2945、および米国特許第5,139,941号;同第6,001,650号;同第6,376,237号;同第7,259,151号(これらのそれぞれは、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる)を参照されたい。
【表2】
【0110】
本発明による例示的なRep-Capプラスミドは、図4A、4B、14A、および14B、ならびに配列番号24、31、33、35、37、41、59および60に示され、あるいは、配列番号24、31、33、35、37、41、59または60と、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有するプラスミドである。図4A、4B、14A、および14Bは、本発明のAAV Rep-Capプラスミドのプラスミド中のエレメントの順序の例を提供する。
【0111】
ある実施形態において、Rep遺伝子は、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、および/またはAAV11、またはそれらのキメラに由来し得る。ある実施形態において、AAV Rep遺伝子は、遺伝子操作されたAAVおよび/または化学的に修飾されたAAVである。ある実施形態において、Rep遺伝子は、AAV血清型2(Rep2)および/またはRep5からの遺伝子を含み、それにはキメラ(例えば、AAV Rep2/5)も含まれる。
【0112】
ある実施形態において、Cap遺伝子は、AAV血清型AAV1、AAV2、AAV3、AAV4、AAV5、AAV6、AAV7、AAV8、AAV9、AAV10、および/またはAAV11、またはそれらのキメラに由来し得る。ある実施形態において、AAV Cap遺伝子は、遺伝子操作されたAAVおよび/または化学的に修飾されたAAVである。前述の実施形態のいずれにおいても、Cap遺伝子は、Rep遺伝子と同じAAV血清型に由来しても、Rep遺伝子とは異なるAAV血清型に由来してもよい。前述の実施形態のいずれかにおいて、プラスミドは、AAV血清型2、5、8、および/または9(それぞれ、Cap2、Cap5、Cap8、およびCap9)のいずれかに由来するCap遺伝子をさらに含み、それら血清型由来のCapタンパク質のハイブリッドを含むキメラタンパク質も含まれる。
【0113】
ある実施形態において、Rep-Capプラスミドは、AAV血清型2からのRep遺伝子配列、および2つ以上の血清型から組み合わせたキメラRepタンパク質として、例えばRep2/5、およびAAV2、AAV5、AAV8、および/またはAAV9を含む任意のAAVキャプシド血清型からのキャプシド遺伝子配列を含むが、これらに限定されない。
【0114】
ある実施形態において、Rep遺伝子配列は、配列番号11、12、28または30、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体と、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。ある実施形態において、Rep遺伝子配列は、配列番号11、12、28または30、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0115】
ある実施形態において、Cap遺伝子配列は、配列番号13、29、32または36、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体と、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。ある実施形態において、Cap遺伝子配列は、配列番号13、29、32または36、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0116】
ある実施形態において、プロモーター配列は、配列番号34またはその機能的フラグメントもしくは誘導体と、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。ある実施形態において、プロモーター配列は、配列番号34またはその機能的フラグメントもしくは誘導体を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0117】
一実施形態では、Rep-Capプラスミドは、本明細書に記載のAAV RepおよびCapタンパク質の発現を制御するためのAAVプロモーターをさらに含む。プロモーターは、任意の所望のプロモーターであってよく、プロモーターに機能的に連結された核酸の発現レベルおよびベクターが使用される細胞タイプなどの既知の考慮事項によって選択され得る。すなわち、プロモーターは、組織/細胞特異的であってよい。プロモーターは、原核生物、真核生物、真菌、核、ミトコンドリア、ウイルス、または植物のプロモーターであってよい。プロモーターは、ベクターによって形質導入される細胞タイプに対して外因性であっても内因性であってもよい。プロモーターには、例えば、細菌プロモーター、SV40または誘導性メタロチオネインプロモーターなどの既知の強力なプロモーター、またはAAV P5プロモーターなどのAAVプロモーターが含まれ得る。さらに、標的化された遺伝子発現のためにキメラ調節プロモーターを利用してもよい。当技術分野で知られているこれらの調節システムの例には、大腸菌のtetリプレッサーに融合したVP16活性化ドメインを含むキメラタンパク質であるtetトランスアクチベータータンパク質(tTA)を利用するテトラサイクリンベースの調節システム、EPTGベースの調節システム、CIDベースの調節システム、およびエクジソン(Ecdysone)ベースの調節システムが含まれる。他のプロモーターには、アクチン遺伝子、免疫グロブリン遺伝子、サイトメガロウイルス(CMV)(例えば、hCMVie(配列番号4))、アデノウイルス、ウシパピローマウイルス、アデノウイルス主要後期プロモーターなどのアデノウイルスプロモーター、誘導性熱ショックプロモーター、呼吸器多核体(RS)ウイルス、ラウス肉腫ウイルス(RSV)などに由来するプロモーターが含まれる。プロモーターは、任意のAAV血清型のプロモーターであってよく、p19プロモーターまたはp40プロモーターであってよい。ある実施形態において、プロモーターは、AAV2 P5プロモーターまたはAAV5 P5プロモーターまたはAAV P5プロモーターであり得る。さらに、プロモーター活性を保持するP5プロモーターのより小さなフラグメントは、例えば、P5プロモーターに一連の欠失を構築すること、欠失をレポーター遺伝子に連結すること、およびレポーター遺伝子が発現されるか否か、すなわち転写および/または翻訳されるか否かを決定することを含む、標準的な手順によって容易に決定することができる。可能なプロモーターの例は、国際公開第2005/017101号に見ることができ、それは全ての意図された目的のために参照により本明細書に組み込まれる。ある実施形態において、AAVプロモーターは、AAV血清型2に由来する。AAV2プロモーターP5を含む例示的なP5-Rep-Capプラスミドは、図4Bおよび14B、ならびに配列番号34に示される。
【0118】
Rep-Capプラスミドに適したプラスミドバックボーンには、pHLP19、pUC18、pUC19、およびpAAV-RC2が含まれるが、これに限定されず、また米国特許第6,001,650号および同第6,156,303号(それら両方は、全ての目的のために参照によりその全体が本明細書に組み込まれる)に記載されているプラスミドバックボーンも参照されたい。ある実施形態において、Rep-CapプラスミドバックボーンはpUC19である。
【0119】
Adヘルパープラスミド
一実施形態において、Adヘルパープラスミドは、Ad2および/またはAd5を含むがこれらに限定されないアデノウイルス遺伝子を含む。一実施形態では、Adヘルパープラスミドは、Ad5遺伝子を含む。Ad5はrAAVに対する効率的なヘルパーウイルスであるため、Ad5遺伝子配列が使用される。アデノウイルス遺伝子の全搭載(full-complement)はヘルパー機能に必要ないことが知られている。実際に、全搭載しないことがより望ましい。例えば、DNA複製および後期遺伝子合成が不可能なアデノウイルス変異体は、AAV複製のために許容されることが示されている。Ito et al., (1970) J. Gen. Virol. 9: 243; Ishibashi et al, (1971) Virology 45: 317。したがって、Adヘルパープラスミドは、rAAV産生に必要な必要Ad遺伝子のみを運ぶ最小サイズであり、かつ縮小プラスミドサイズの構築物として機能するように設計される。E1領域に欠陥がある、またはE4領域が欠失されているアデノウイルスは、AAV複製を支持できないことが示されている。したがって、E1Aおよび/またはE4領域は、直接的または間接的にAAV複製に必要である可能性が高い。Laughlin et al., (1982) J. Virol. 41: 868; Janik et al., (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 1925; Carter et al., (1983) Virology 126: 505。他の特徴づけられたAd変異体には以下のものが含まれる:E1B(Laughlin et al. (1982), supra; Janik et al. (1981), supra; Ostrove et al., (1980) Virology 104: 502);E2A(Handa et al., (1975) J. Gen. Virol. 29: 239; Strauss et al., (1976) J. Virol. 17: 140; Myers et al., (1980) J. Virol. 35: 665; Jay et al., (1981) Proc. Natl. Acad. Sci. USA 78: 2927; Myers et al., (1981) J. Biol. Chem. 256: 567);E2B(Carter, Adeno-Associated Virus Helper Functions, in I CRC Handbook of Parvoviruses (P. Tijssen ed., 1990));E3(Carter et al. (1983), supra);およびE4 (Carter et al. (1983), supra; Carter (1995))。E1Bコード領域に変異を有するアデノウイルスによって提供されるアクセサリー機能の研究は相反する結果を生み出したが、Samulski et al., (1988) J. Virol. 62: 206-210は、最近、E1B55kがAAVビリオン産生に必要であるが、E1B19kは必要ないことを報告した。さらに、国際公開第97/17458号およびMatshushita et al., (1998) Gene Therapy 5: 938-945は、様々なAd遺伝子をコードするアクセサリータンパク質を記載する。特に好ましいアクセサリー機能プラスミドは、アデノウイルスVA RNAコード領域、アデノウイルスE4 ORF6コード領域、アデノウイルスE2A 72kDコード領域、アデノウイルスE1Aコード領域、および無傷のE1B55kコード領域を欠くアデノウイルスE1B領域を含む。これらのプラスミドの例は、国際公開第01/83797号に記載されている。この段落に記載されている各参考文献は、全ての目的のためにその全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0120】
本発明による例示的なAdヘルパープラスミドは、図5および配列番号14および15に示されており、あるいは配列番号14および15と、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有するプラスミドである。図5は、本発明のAdヘルパープラスミドのプラスミド中のエレメントの順序の例を提供する。
【0121】
ある実施形態において、Adヘルパープラスミドは、E2a、E4(orf6)、VA1 RNA遺伝子、およびパルボウイルスVPキャプシド遺伝子ユニットのためのアデノウイルス遺伝子配列を含み得るが、これらに限定されない。ある実施形態において、Adヘルパープラスミドは、VA、E4、およびE2A遺伝子を含み得る。rAAV産生のために細胞に効率的にトランスフェクトすることができるプラスミドの量には制限があるため、これらのAd遺伝子を運ぶプラスミドのサイズを小さくすることは、トランスフェクションに使用される3つのプラスミド全てのモル含有量を増加し、より高い収量のrAAVを産生する可能性を高めるのに役立つ。
【0122】
一実施形態では、Adヘルパープラスミドは、E2A、E4 ORF1、2、3、4、および6/7、ならびにVA(「短いAdヘルパープラスミド」)を含む。例示的な短いAdヘルパープラスミドを図5の上のパネルに示す。ここで説明する短いプラスミドは、トランスフェクションのステップ中の「プラスミド負荷」を減らし、3つのプラスミド全てのプラスミドの全体的なコピー数を増やして、rAAV産生のための遺伝子発現および複製のためのプラスミドテンプレートの数を増加させることができる。プラスミド負荷の低減は、驚くべきことにより大きなバッチに有益である。これは、小さな研究規模の産生では重要なパラメータではないかもしれないが、スケールアップするとはるかに重要になる可能性がある。この例示的な短いAdヘルパープラスミドは約12kbである。別の実施形態において、Adヘルパープラスミドは、E2A、E4 ORF1、2、3、4、および6/7、およびVA、ならびにプロテアーゼおよびファイバーをコードする遺伝子およびプロモーターpVIIIを含む(「長いAdヘルパープラスミド」)。例示的な長いAdヘルパープラスミドを図5の下のパネルに示す。この例示的な長いAdヘルパープラスミドは約18kbである。
【0123】
短い構築物と長い構築物の違いを図5に示す。3つの必須遺伝子エレメントの向き(orientation)が異なる。長いバージョンは、rAAVの産生に影響を与える機能を有し得るアデノウイルスゲノムからの追加のエレメントを運ぶ。短いバージョンは、rAAVの産生を支持できることが知られている最小限の遺伝子配列を含む。
【0124】
ある実施形態では、VA配列は、配列番号16または48~50、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体と、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸配列を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。ある実施形態において、VA配列は、配列番号16または48~50、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0125】
ある実施形態では、E4配列は、配列番号17、40、47または55~58、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体と、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸配列を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。ある実施形態において、E4配列は、配列番号17、40、47または55~58、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0126】
ある実施形態では、E2A配列は、配列番号18、39、46または51、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体と、少なくとも約40%、約50%、約60%、約65%、約70%、約75%、約80%、約85%、約90%、約91%、約92%、約93%、約94%、約95%、約96%、約97%、約98%、もしくは約99%の同一性を有する核酸配列を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。ある実施形態において、E2A配列は、配列番号18、39、46または51、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体を含むか、それからなるか、または本質的にそれからなる。
【0127】
Adヘルパープラスミドに適したプラスミドには、pJ241が含まれるが、これに限定されず、また米国特許第6,001,650号および第6,156,303号(それら両方、参照により本明細書にその全体が組み込まれる)に記載されているプラスミドも参照されたい。ある実施形態では、AdヘルパープラスミドのバックボーンはpUC57である。
【0128】
追加の遺伝子
さらなる実施形態では、3つのプラスミド全てが選択マーカーを含む。選択マーカーの例には、G418(neorを含む)、ピューロマイシン(purorを含む)、ハイグロマイシンB(hygrを含む)、ブラストサイジンS(bsrrを含む)、ミコフェノール酸および6-チオ(グアニン)(gptを含む)およびガンシクロビルまたは1(2’-デオキシ-2’-フルオロ-β-D-アラビノフラノシル)-5-ヨードウラシル(FIAU)(HSV-tkを含む)、ゲンタマイシン、および/またはカナマイシン(kanrを含む)を含むがこれらに限定されない薬剤耐性遺伝子などのポジティブセレクションマーカーが含まれるが、これらに限定されない。さらなる実施形態では、3つ全てのプラスミド上の薬物選択マーカーはカナマイシンである。ある実施形態において、カナマイシン遺伝子は、配列番号19または25、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体を含むか、またはそれからなる。ある実施形態において、ゲンタマイシン遺伝子は、配列番号44または72、あるいはそれらの機能的フラグメントもしくは誘導体を含むか、またはそれからなる。
【0129】
一実施形態では、3つのプラスミドのうちの1つまたは複数は、1つまたは複数のレポーター遺伝子を運ぶ。いくつかのレポーター遺伝子が当技術分野で知られており、いくつかは市販されている(上記のAlamおよびCookを参照)。レポーター遺伝子は、生物および分子生物学の操作に特に適したプラスミド内に挿入できる。レポーター遺伝子の発現がプロモーターの制御下にあるように、目的のプロモーターをクローニング部位に挿入することができる(Rosenthal, N., Methods Enzymol. 152: 704-720 (1987); and Shiau, A. and Smith, J. M., Gene 67: 295-299 (1988)を参照されたい)。既知の方法を使用して、これらのプラスミドを細胞タイプまたは生物全体に導入する(Sambrook et al., Molecular Biology, A Laboratory Manual, Cold Spring Harbor Laboratory Press (1989); およびNolan, In: Molecular Cloning, Cold Spring Harbor Laboratory Press, (1989)を参照されたい)。レポーター遺伝子の例には、β-ガラクトシダーゼ(LacZ)、ホタルルシフェラーゼ、ウミシイタケ(Renilla)ルシフェラーゼ、ガウシア(Gaussia)ルシフェラーゼ、クロラムフェニコールアセチルトランスフェラーゼ(CAT)、分泌型胚性アルカリホスファターゼ(SEAP)、シアン蛍光タンパク質(CFP)、緑色蛍光タンパク質(GFP)、強化型GFP(eGFP)、黄色蛍光タンパク質(YFP)、強化型YFP(eYFP)、青色蛍光タンパク質(BFP)、強化型BFP(eBFP)、ディスコソマサンゴ(Discosoma coral)由来の赤色蛍光タンパク質(DsRed)、および/またはMmGFP(Zemicka-Goetz et al. (1997) Development 124: 1133-1137)、または当業者によく知られている他のものが含まれるが、これらに限定されない。別の実施形態では、3つのプラスミドのうちの1つまたは複数は、eGFPとSEAPの両方を含むレポーター構築物を運び、内部リボソーム侵入部位(IRES)がeGFPとSEAPとの間に位置する。そのような実施形態では、核に局在するeGFPは、rAAVのベクター形質導入指向性を決定するために使用でき、一方、細胞外に分泌されるSEAPは、in vitro設定で培地中またはin vivo設定で対象の血流中のいずれかで、形質導入効率の定量的測定を可能にすることができる。LacZは、クローン化された遺伝子によるlacZ遺伝子の破壊に基づき、所望のクローンの色に基づく選択を可能にする。
【0130】
一実施形態では、各プラスミドは、固有のDNA力価タグを含む。ある実施形態では、DNA力価タグは、導入遺伝子含有プラスミドにのみ現れる。ある実施形態では、DNA力価タグは、全てのプラスミドシステムに現れる。この固有のDNA力価タグを含めて、例えばqPCR(またはddPCR)ベースのベクターゲノム力価測定アッセイにより、普遍的なベクターゲノム力価測定を可能にし、存在するベクターの量を定量化できる。ある実施形態では、DNA力価タグは、それが確実にパッケージ化されるように、発現カセットの外側であるが、2つのITRの間にあってよい。例えば、DNA力価タグは3’ITR配列の上流にあってよい。別の例として、DNA力価タグは5’ITR配列の下流にあってよい。ある実施形態において、DNA力価タグは、それが対象のゲノム内に内因的に現れないように構築される。例えば、配列を対象のDNAと比較することができる(例えば、Blast検索または他のアラインメント検索ツールを介して)。また、qPCR分析の実行に使用されるプライマーを分析して、それらがビリオンのパッケージングに使用される宿主細胞で見られるいずれの配列も識別しないことを確実にすることができる。
【0131】
DNA力価タグは、効率的なqPCR分析を可能にするだけでなく、プラスミドの最小限のゲノムスペースしか取らない。ある実施形態において、DNA力価タグ配列は、約60ヌクレオチド~約100ヌクレオチド長(例えば、配列番号10)であり、ヒトまたは標準的な実験動物に存在しない配列に基づいて設計される。ある実施形態において、DNA力価タグ配列は、約60ヌクレオチド~約80ヌクレオチド、約65ヌクレオチド~約95ヌクレオチド、約70ヌクレオチド~約90ヌクレオチド、または約75ヌクレオチド~約85ヌクレオチドである。ある実施形態において、DNA力価タグ配列は、約60ヌクレオチド~約70ヌクレオチド、約65ヌクレオチド~約75ヌクレオチド、約70ヌクレオチド~約80ヌクレオチド、約75ヌクレオチド~約85ヌクレオチド、約80ヌクレオチド~約90ヌクレオチド、約85ヌクレオチド~約95ヌクレオチド、または約90ヌクレオチド~約100ヌクレオチドである。ある実施形態において、DNA力価タグ配列は、少なくとも約60ヌクレオチド、少なくとも約65ヌクレオチド、少なくとも約70ヌクレオチド、少なくとも約75ヌクレオチド、少なくとも約80ヌクレオチド、少なくとも約85ヌクレオチド、少なくとも約90ヌクレオチド、少なくとも約95ヌクレオチド、または少なくとも約100ヌクレオチドである。ある実施形態において、DNA力価配列のストレッチは、100ヌクレオチド長である。ある実施形態において、100ヌクレオチドの力価タグは、迅速なqPCRアッセイにおいて有利となることができ、また全体的なプラスミドサイズおよびパッケージング制限のために効率的なパッケージングを可能にすることができる。
【0132】
DNA力価タグをコードする核酸配列の非限定的な例には、配列番号61~70が含まれる。
【0133】
異種核酸配列
本発明のプラスミドによって作製される組換えAAVは、対象の1つまたは複数の細胞または組織に投与することができる。したがって、本発明は、対象の細胞または組織を調節するのに有用となり得る異種核酸配列の送達を包含する。例えば、rAAVは、細胞または組織の活性または産物をアップレギュレートまたはダウンレギュレートすることができる。
【0134】
ある実施形態において、異種核酸配列は、1つまたは複数のペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードする目的の異種遺伝子であり得る。ある実施形態において、異種核酸配列は、対象における疾患の処置または予防に有用となり得る、目的の特定の標的に結合するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードすることができる。そのような異種核酸配列および関連するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の例には、抗体、MHC分子、T細胞受容体、B細胞受容体、アプタマー、アビマー、受容体結合リガンド、またはターゲティングペプチドをコードする遺伝子が含まれるが、これらに限定されない。本発明において有用な抗体は、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、抗体フラグメント(例えば、Fab、Fab’、F(ab’)2、Fv、Fcなど)、キメラ抗体、二重特異性抗体、ヘテロコンジュゲート抗体(heteroconjugate antibody)、一本鎖(ScFv)、それらの変異体、抗体部分を含む融合タンパク質、ヒト化抗体、ならびに必要な特異性の抗原認識部位を含む免疫グロブリン分子の他の任意の改変された構成(抗体のグリコシル化バリアント、抗体のアミノ酸配列バリアント、および共有結合的に修飾された抗体を含む)を包含することができる。抗体は、マウス、ラット、ヒト、またはその他の起源のもの(キメラまたはヒト化抗体を含む)であってよい。抗体には、IgG、IgA、IgM(またはそれらのサブクラス)などの任意のクラスの抗体が含まれ、抗体は特定のクラスのものである必要はない。その重鎖の定常ドメインの抗体アミノ酸配列に応じて、免疫グロブリンは異なるクラスに割り当てられる。免疫グロブリンには、IgA、IgD、IgE、IgG、およびIgMの5つの主要なクラスがあり、これらのいくつかはさらに、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA1、およびIgA2などのサブクラス(アイソタイプ)に分類され得る。免疫グロブリンの異なるクラスに対応する重鎖定常ドメインは、それぞれアルファ(α)、デルタ(δ)、イプシロン(ε)、ガンマ(γ)、およびミュー(μ)と呼ばれる。様々なクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造および三次元形状はよく知られている。
【0135】
ある実施形態において、異種核酸配列(例えば、目的の異種遺伝子)は、対象における疾患の処置または予防に有用であり得るペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードし得る。例えば、異種核酸配列は、疾患Yの処置のためのタンパク質Xをコードすることができる。タンパク質Xは、例えば、変異タンパク質の代わりになるか、または変異タンパク質をブロックするように作用することができる。そのような核酸配列および関連する疾患には、グリコーゲン蓄積症1A型に関連する、グルコース-6-ホスファターゼをコードする核酸配列;Pepck欠損症に関連するホスホエノールピルビン酸-カルボキシキナーゼをコードするDNA;ガラクトース血症に関連するガラクトース-1リン酸ウリジルトランスフェラーゼをコードするDNA;フェニルケトン尿症に関連するフェニルアラニンヒドロキシラーゼをコードするDNA;メープルシロップ尿症に関連する分岐鎖α-ケト酸脱水素酵素をコードするDNA;チロシン血症1型に関連するフマリルアセト酢酸加水分解酵素をコードするDNA;メチルマロン酸血症に関連するメチルマロニルCoAムターゼをコードするDNA;中鎖アセチルCoA欠損症に関連する中鎖アシルCoA脱水素酵素をコードするDNA;オルニチントランスカルバミラーゼ欠損症に関連するオルニチントランスカルバミラーゼをコードするDNA;シトルリン血症に関連するアルギニノコハク酸シンテターゼをコードするDNA;家族性高コレステロール血症に関連する低密度リポタンパク質受容体タンパク質をコードするDNA;クリグラー・ナジャー病に関連するUDP-グルクロノシルトランスフェラーゼをコードするDNA;重症複合免疫不全症に関連するアデノシンデアミナーゼをコードするDNA;痛風およびレッシュ・ナイハン(Lesch-Nyhan)症候群に関連するヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼをコードするDNA;ビオチニダーゼ欠損症に関連するビオチニダーゼをコードするDNA;ファブリー病に関連するα-ガラクトシダーゼ-AをコードするDNA;ゴーシェ病に関連するβ-グルコセレブロシダーゼをコードするDNA;スライ(Sly)症候群に関連するβ-グルクロニダーゼをコードするDNA;ツェルベルガー(Zellweger)症候群に関連するペルオキシソーム膜タンパク質70kDaをコードするDNA;急性間欠性ポルフィリン症に関連するポルフォビリノーゲンデアミナーゼをコードするDNA;α-1アンチトリプシン欠乏症(肺気腫)の処置のためのα-1アンチトリプシンをコードするDNA;遺伝性血管性浮腫(HAE)の処置のためのC1-エステラーゼをコードするDNA;フェニルケトン尿症の処置のためのフェニルアラニンヒドロキシラーゼをコードするDNA;ポンペ(Pompe)病の処置のための酸性α-グルコシダーゼをコードするDNA;ウィルソン(Wilson)病の処置のためのATP7BをコードするDNA;ムコ多糖症I型(MPSI)の処置のためのα-L-イズロニダーゼをコードするDNA;ムコ多糖症II型(MPSII)の処置のためのイズロン酸スルファターゼをコードするDNA;ムコ多糖症IIIA型(MPSIIIA)の処置のためのヘパランスルファミダーゼをコードするDNA;ムコ多糖症IIIB型(MPSIIIB)の処置のためのN-アセチルグルコサミニダーゼをコードするDNA;ムコ多糖症IIIC型(MPSIIIC)の処置のためのヘパラン-α-グルコサミニドN-アセチルトランスフェラーゼをコードするDNA;ムコ多糖症IIID型(MPSIIID)の処置のためのN-アセチルグルコサミン-6-スルファターゼをコードするDNA;ムコ多糖症IVA型(MPSIVA)の処置のためのガラクトース-6-硫酸スルファターゼをコードするDNA;ムコ多糖症IVB型(MPSIVB)の処置のためのβ-ガラクトシダーゼをコードするDNA;ムコ多糖症VI型(MPSVI)の処置のためのN-アセチルガラクトサミン-4-スルファターゼをコードするDNA;ムコ多糖症VII型(MPSVII)の処置のためのβ-グルクロニダーゼをコードするDNA;ムコ多糖症IX型(MPSIX)の処置のためのヒアルロニダーゼをコードするDNA;サラセミアまたは腎不全による貧血の処置のためのエリスロポエチンをコードするDNA;虚血性疾患の処置のための血管内皮増殖因子をコードするDNA、アンジオポエチン-1をコードするDNA、および線維芽細胞増殖因子をコードするDNA;例えば、アテローム性動脈硬化症、血栓症、または塞栓症に見られるような、閉塞した血管の処置のためのトロンボモジュリンおよび組織因子経路インヒビターをコードするDNA;パーキンソン病の処置のための芳香族アミノ酸デカルボキシラーゼ(AADC)をコードするDNA、およびチロシンヒドロキシラーゼ(TH)をコードするDNA;うっ血性心不全の処置のための、ベータアドレナリン受容体をコードするDNA、ホスホランバン(phospholamban)のアンチセンスをコードするDNA、またはホスホランバンの変異型をコードするDNA、サルコ(エンド)プラスミックレティキュラムアデノシントリホスファターゼ-2(sarco(endo)plasmic reticulum adenosine triphosphatase-2)(SERCA2)をコードするDNA、および心臓型アデニル酸シクラーゼをコードするDNA;様々ながんの処置のためのp53などの腫瘍抑制遺伝子をコードするDNA;炎症性および免疫性障害およびがんの処置のための様々なインターロイキンの1つなどのサイトカインをコードするDNA;筋ジストロフィーの処置のためのジストロフィンまたはミニジストロフィンをコードするDNA、およびユートロフィンまたはミニユートロフィンをコードするDNA;シュタルガルト病の処置のためのABCA4をコードするDNA;および、糖尿病の処置のためのインスリンをコードするDNAが含まれるが、これらに限定されない。
【0136】
ある実施形態において、異種核酸配列(例えば、目的の異種遺伝子)は、血液凝固タンパク質をコードするペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質をコードすることができ、これらのタンパク質は、血液障害(例えば、血友病)を有する対象の細胞に送達され得る。そのような核酸および関連するペプチド、ポリペプチド、またはタンパク質の例には、血友病Bの処置の対象に対する第IX因子をコードするDNA、血友病Aの処置の対象に対する第VIII因子、第VII因子欠乏症の処置のための第VII因子、第X因子欠乏症の処置のための第X因子、第XI因子欠乏症の処置のための第XI因子、第XIII因子欠乏症の処置のための第XIII因子、およびプロテインC欠乏症の処置のためのプロテインCが含まれるが、これらに限定されない。
【0137】
本発明はまた、遺伝性および/または後天性疾患のために宿主細胞ゲノムと相互作用して遺伝子発現レベルに上方または下方の影響を与えることができる、操作された人工DNA結合ドメインペプチド、転写活性化因子または転写抑制因子およびヌクレアーゼの発現を含む。
【0138】
本発明はまた、遺伝性および/または後天性疾患のためにタンパク質の遺伝子発現または活性を変化させることができる細胞のDNA、RNAおよび/またはタンパク質と相互作用し得る、アンチセンス、siRNA、shRNA、miRNA、EGS、gRNA、sgRNA、リボザイム、またはアプタマーを含むがこれらに限定されない異種核酸配列の発現を含む。
【0139】
本発明はまた、細胞に感染させて遺伝子操作された細胞治療材料または医薬品を作製するために使用される、rAAVを含むがこれらに限定されない、細胞治療のための中間のおよび/または重要な原材料の発現を含む。
【0140】
本発明はまた、細胞内の目的のゲノム遺伝子座(すなわち、標的)を修飾するために使用される遺伝子編集分子である異種核酸配列を含む。そのような修飾には、遺伝子の標的遺伝子座における遺伝子配列の破壊、欠失、修復、突然変異、付加、改変、または修飾が含まれるが、これらに限定されない。遺伝子編集分子の例には、ジンクフィンガーヌクレアーゼ(ZFns)などのエンドヌクレアーゼ、転写活性化因子様エフェクターヌクレアーゼ(TALEN)、メガヌクレアーゼ、制限エンドヌクレアーゼ、リコンビナーゼ、およびクラスター化等間隔短鎖回分リピート(Clustered Regularly Interspersed Short Palindromic Repeat)(CRISPR)/CRISPR関連(Cas)タンパク質が含まれるが、これらに限定されない。
【0141】
rAAVの送達
本明細書に記載の組換えAAVは、それを必要とする対象に本発明のプラスミドによって作製されたrAAVの有効量を投与することにより、目的の疾患の処置および/または予防のために治療上有用な濃度で使用することができる。本発明のプラスミドによって作製されたrAAVで処置される対象には、疾患を処置または予防するのに既知の効力を有する他の治療薬またはデバイスも投与することができる。
【0142】
対象へのrAAVの送達は、筋肉内注射または対象の血流への投与によるものであってよい。血流への投与は、静脈、動脈、または他の任意の血管導管への注射によるものであってよく、また分離式肢灌流(isolated limb perfusion)による血流への変異体ビリオンであり、これは、外科技術においてよく知られている技術であり、本質的に技術者がrAAVの投与の前に体循環から四肢(腕または脚)を隔離することを可能にする方法である。さらに、特定の条件では、変異体ビリオンを対象のCNSに送達することが望ましい場合がある。「CNS」とは、脊椎動物の脳および脊髄の全ての細胞および組織を意味する。したがって、この用語には、神経細胞、グリア細胞、星状細胞、脳脊髄液(CSF)、間質腔、骨、軟骨、脳室内、頭蓋内、大槽注射、髄腔内、頸動脈内、鼻腔内などが含まれるが、これらに限定されない。in vitroで形質導入されたrAAVまたは細胞を、例えば、脳室領域への注射によってCNSまたは脳に直接送達させることができ、また定位注射(stereotactic injection)などの当技術分野で知られている脳神経外科技術を使用して、針、カテーテル、または関連するデバイスを用いて、線条体(例えば、線条体の尾状核または被殻)、脊髄および神経筋接合部、または小脳小葉に送達させることができる。例えば、Stein et al., J Virol 73:3424-3429, 1999; Davidson et al., PNAS 97:3428-3432, 2000; Davidson et al., Nat. Genet. 3:219-223, 1993; and Alisky and Davidson, Hum. Gene Ther. 11:2315-2329, 2000(これらのそれぞれは、全ての目的のためにその全体が本明細書に組み込まれる)を参照されたい。眼への投与の場合、方法には、網膜下、硝子体内、経強膜、または頭蓋内が含まれ得る。
【0143】
【表3-1】
【表3-2】
【表3-3】
【実施例
【0144】
本開示はまた、以下の実施例によって説明および実証される。しかしながら、本明細書のいずれかでのこれらおよび他の例の使用は、単なる例示にすぎず、開示または例示された用語の範囲および意味を決して制限するものではない。同様に、本開示は、本明細書に記載の好ましい実施形態に限定されない。実際に、本明細書を読むと、本開示の多くの修正および変形が当業者に明らかとなり、そのような変形は、精神または範囲において開示から逸脱することなく行うことができる。したがって、開示は、添付の特許請求の範囲の用語と、それら請求項が権利を与えられるものの同等物の全範囲によってのみ制限されるべきである。
【0145】
実施例1:キャップタンパク質のin vitro発現
この実施例では、pUC19ベースのプラスミドからのAAV293(Agilent)細胞におけるキャプシドタンパク質のin vitro発現を、Rep2およびCap2遺伝子(Agilent)を保持する対照のpAAV-RC2ベースのプラスミドからの同じキャプシドタンパク質の発現レベルと比較して調べた(図4A)。
【0146】
様々なRepおよびCap遺伝子を持つ4つのプラスミドの第1のセットは、Rep2Cap2-pAAV-RC(すなわち、図4Aに示すpAAV-RC2)を用いて開始して、pAAV-RCバックグラウンドで作製した。pAAV-RC2を使用して、Rep2/5Cap5-pAAV-RC、Rep2Cap8-pAAV-RC、およびRep2Cap9-pAAV-RCを作製した(図4A)。
【0147】
4つのプラスミドの第2のセットは、第1のセットと同じ複製およびキャプシドタンパク質を使用して、pUC19-Kanバックグラウンドで作製した。したがって、Rep2Cap2-pUC19-Kan、Rep2/5Cap5-pUC19-Kan、Rep2Cap8-pUC19-Kan、およびRep2Cap9-pUC19-Kan(図4Aおよび14A)。
【0148】
実験のために、8つのプラスミドのそれぞれを、AdヘルパープラスミドであるpHelper(Agilent)(例えば、配列番号45)とともに、1:1の比率で別々にトランスフェクトした。
【0149】
モノクローナルB1抗体を使用したウエスタンブロッティングにより、pUC19-KanベースのプラスミドからのCapタンパク質の発現レベルを、pAAV-RC2ベースのプラスミドからの同じCapタンパク質の発現レベルと比較した(図6)。陽性対照であるAAV2参照標準物質(RSM)およびAAV8 RSMは、AAV2およびAAV8 Capタンパク質を含む参照標準物質であるが、陰性対照は、Cap搭載プラスミドを含まないHEK293からの細胞溶解物であった。キャプシドタンパク質の発現レベルは、pUC19ベースのプラスミドおよびpAAV-RC2ベースのプラスミドの両方でAAV5>AAV8>AAV9>AAV2であった。
【0150】
図7は、より明確にCapタンパク質VP1-VP3の量を特異的に分析するために、サンプルを減らして行ったウエスタンブロット分析である。
【0151】
次に、AAV2 P5プロモーターをRep2Cap2-pUC19-Kan、Rep2Cap8-pUC19-Kan、およびRep2Cap9-pUC19-Kanプラスミドに追加した(例えば、図4Bおよび14B)。図8は、P5プロモーターを使用しない場合と比較して、上記と同じ条件下で試験したP5プロモーターを使用して発現させたAAV血清型2、8、および9由来のCapタンパク質の発現レベルを示す。P5プロモーターはより高いレベルのキャプシドタンパク質の発現をもたらすことが分かった。導入遺伝子含有プラスミドとAdヘルパープラスミドは1:1の比率で投与された。
【0152】
実施例2:短いAdヘルパープラスミドと長いAdヘルパープラスミドの機能試験
この実施例の目的は、短いAdヘルパープラスミドと長いAdヘルパープラスミドの機能を市販のpHelperと比較して試験することであった。組み合わせてそれらを使用する前に、各プラスミドを個別に試験して、それぞれが機能することを確認した。
【0153】
図9は、HEK293宿主細胞系で短いAdヘルパープラスミド(配列番号14)を使用した陽性試験結果を示す。短いAdヘルパープラスミド(配列番号14)は、2つのITRの間に導入遺伝子としてGFPを運ぶpTRUF11導入遺伝子含有プラスミド、およびAAV Rep2およびCap2遺伝子を運ぶAgilent RC2プラスミドと一緒に、短いヘルパープラスミドをコトランスフェクトすることによって試験した。陰性対照は、1)市販のAdヘルパープラスミド(pHelper)、およびAgilentプラスミドRC2、ならびに2)pHelperおよびpTRUF11とで構成された;陽性対照は、pHelper、pTRUF11、およびAgilent RC2プラスミドで構成された。48時間後、HEK293細胞をTriton X-100で溶解し、ベンゾナーゼヌクレアーゼで処理してDNAおよびRNAを分解した。AAV粒子を含む細胞溶解物をDNase Iで処理し、qPCRを行う前に段階希釈して、細胞溶解物1mlあたりのウイルスゲノムコピー数を決定した。図9はqPCRアッセイの結果を示し、列1および2は陰性対照を表し、列3は陽性対照を示し、列4は短いAdヘルパープラスミドを他の2つのプラスミドと一緒に使用してrAAVを産生した場合に得られたウイルスゲノムコピー数を示す。
【0154】
同様の実験を行って、開示に従い長いAdヘルパープラスミド(配列番号15)を試験した(図10)。図10は、qPCRにより決定された、陰性対照(列1)、陽性対照(列2)、短いAdヘルパープラスミド(配列番号14)+Rep-Cap搭載プラスミド+ITR-GFP搭載プラスミド(列3)、および長いAdヘルパープラスミド+Rep-Cap搭載プラスミド+ITR-GFP搭載プラスミド(列4)の細胞溶解物1mlあたりのウイルスゲノムコピー数を示す。したがって、長いAdヘルパープラスミドもAAVの産生をもたらした。
【0155】
実施例3:トリプルプラスミドシステムを使用したrAAVビリオンの産生
本開示による一本鎖(ss)および自己相補的(sc)-ITR搭載プラスミドがrAAVビリオンを形成する能力を試験した。この実験では、プラスミドをHEK293細胞(Agilent)にコトランスフェクトした。各トランスフェクションについて、Ad-ヘルパープラスミド、Rep-Capプラスミド、および導入遺伝子含有プラスミドを1:1:1のモル比で使用し、10cmプレートあたり10μgの全DNAを使用した。陰性対照は市販のAdヘルパープラスミド(Agilent)と市販のRep-Cap搭載プラスミド(Agilent)であったが、陽性対照は異なるITR搭載プラスミド(ATCC)を使用した。図11の上のパネルは、ss-ITR搭載プラスミドについて細胞溶解物1mlあたりのウイルスゲノムコピー数(上記のようにqPCRで測定)を示し、下のパネルは、sc-ITR搭載プラスミドについて細胞溶解物1mlあたりのウイルスゲノムコピー数を示す。両方のパネルにおいて、列1は陰性対照のコピー数を示し、列2は陽性対照を表し、列3は本開示によるプラスミドを表す。
【0156】
次に、本開示による3つのプラスミドを、qPCRアッセイのためにHEK293細胞にコトランスフェクトした(ここでも、1:1:1の比率)。陰性対照(図12の列1)は、市販のAdヘルパープラスミドおよびITR搭載プラスミドであった。陽性対照(図12の列2)は、市販のRep-Cap搭載プラスミドを含んでいた。列3~6は、AAV血清型2、5、8、または9(図の上部に記載されている)からのRepおよびCapタンパク質をコードするpUC19ベースのプラスミドとともに、同じ市販のAdヘルパープラスミドおよびITR搭載プラスミドでトランスフェクトした細胞からのAAVゲノムコピー数に対応する。図12の列7~10は、本開示による、Adヘルパープラスミド、pUC19ベースのRep-Cap搭載プラスミド、およびITR搭載プラスミドでトランスフェクトした細胞からのAAVゲノムコピー数に対応する。図12の列11は、本開示によるAdヘルパープラスミドおよびss-ITRプラスミド、ならびに市販のRep-Cap搭載プラスミドでトランスフェクトした細胞からのAAVゲノムコピー数に対応する別の陽性対照である。
【0157】
実施例4:rAAVの精製および産生
本開示に従う3つのプラスミドを含むプラスミドシステムでHEK293細胞をコトランスフェクトした。細胞を化学的に溶解し、細胞ペレットおよび培地を回収した。細胞溶解物を清澄化し、ベンゾナーゼで処理した。清澄化した溶解物を適切なアフィニティーカラムに流した(例えば、AAV8キャプシドを含むプラスミドシステムの場合、アフィニティーカラムはAVBであった;AAV9を含むプラスミドシステムの場合、アフィニティーカラムはAAV9-POROS CaptureSelectであった)。バッファー交換後、rAAVをカラムから溶出した。次に、rAAVを、限定ではなく例として、qPCRによって特徴付けして、ウイルスゲノムのコピー数を決定した(図9~13、16を参照)。純度および同一性を決定するために銀染色により、エンドトキシン活性および微生物汚染を測定するためにリムルスアメーバ様細胞溶解物(Limulus amebocyte lysate)(LAL)アッセイにより、また生物学的活性を決定するためにin vitro形質導入アッセイにより、rAAVをさらに評価することができる。他の特性評価アッセイには、ウイルスゲノムのサイズおよび完全性を試験するためのアルカリ電気泳動、キャプシドを調べるためのELISA、rAAV粒子の感染性を決定するための細胞間伝播特異性評価(infectious center assay)、およびrAAV粒子を観察するための電子顕微鏡が含まれる。適切な抗体を使用することにより特定タンパク質のウエスタンブロッティングを行うこともできる(図6~8を参照)。
【0158】
実施例5:ベクターゲノムの力価を測定するためのタグの使用
ポリA配列などの配列をqPCRの定量化に使用できるが、このような配列を普遍的な力価測定に使用することは理想的ではない。例えば、各導入遺伝子は、異なるポリA配列(例えば、SV40、bGH polyAなど)を使用する場合があり、それにより、全ての導入遺伝子プラットフォームにわたりベクターを定量化するためにそれを使用することを不可能にする。したがって、導入遺伝子カセットの外側にある別個のDNA力価タグ(すなわち、導入遺伝子mRNA転写物の一部として転写されない)を、任意の導入遺伝子カセットを普遍的に定量化するその能力について試験した。
【0159】
3’ITR配列の上流に100ヌクレオチドのDNA力価タグを含めた。この同じ力価タグを、rAAV産生用の任意の導入遺伝子含有プラスミドで使用して、qPCR技術による普遍的なベクターゲノム力価測定を可能にし、これはあらゆるプロジェクトのための単一の参照標準として使用できる。SV40 polyAまたは100ヌクレオチドのDNA力価タグを標的配列として使用して、qPCR滴定の結果を同じバッチのAAVについて比較した。
【0160】
2つの異なるウイルスベクター:rAAV8-ssITR(配列番号1)およびrAAV8-scITR(配列番号42)を、一本鎖(配列番号1)または自己相補的(配列番号42)導入遺伝子含有プラスミドのいずれかである導入遺伝子含有プラスミドを用いて産生させた。2つの異なる標的配列を使用して同様のqPCR力価が得られ、100ヌクレオチドのDNA力価タグがqPCRベースのベクター滴定のためにこの分野で広く使用されているSV40 polyAと同等に機能することを示す(図13A(rAAV8-ssITR)および13B(rAAV8-scITR))。
【0161】
実施例6:ベクターゲノムの力価を測定するためのタグの使用
DNA力価タグの有用性をさらに確認するために、実施例5で使用したのと同じ100ヌクレオチドのDNA力価タグを、2つの追加のウイルスベクター:rAAV9-ssITR(配列番号71)およびrAAV9-scITR(配列番号73)において3’ITR配列の上流に含めた。
【0162】
いくつかの可能な実施形態が上に開示されているが、本開示の実施形態はそのように限定されない。これらの例示的な実施形態は、網羅的であることまたは開示の範囲を不必要に制限することを意図するものではなく、当業者が開示を実施できるように、本開示の原理を説明するために選択および説明されている。実際に、本明細書に記載されているものに加えて、本開示の様々な変更が、前述の説明から当業者に明らかになるであろう。このような変更は、添付の特許請求の範囲内に含まれることが意図されている。さらに、本開示の様々な実施形態の範囲は、添付の特許請求の範囲およびその同等物によってのみ限定されるため、本明細書で使用される用語は、例示的な実施形態を説明する目的でのみ使用され、用語は限定することを意図していない。したがって、本開示の範囲は、前述の説明および上記の実施形態ではなく、以下の特許請求の範囲によって示され、その同等物の意味および範囲内に入る全ての変更は、それに含まれることが意図されている。
【0163】
本明細書で引用される全ての特許、出願、刊行物、試験方法、文献、および他の資料は、本明細書に物理的に存在するかのように、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
図1
図2
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13A
図13B
図14A
図14B
図15A
図15B
図16A
図16B
【配列表】
2022511348000001.app
【国際調査報告】