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特表2022-511388トリウム-228及びその娘核を含む水溶液から鉛-212を生成する方法
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  • 特表-トリウム-228及びその娘核を含む水溶液から鉛-212を生成する方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】トリウム-228及びその娘核を含む水溶液から鉛-212を生成する方法
(51)【国際特許分類】
   G21G 4/08 20060101AFI20220124BHJP
   G01N 30/88 20060101ALI20220124BHJP
   G01N 30/26 20060101ALI20220124BHJP
   B01J 20/281 20060101ALI20220124BHJP
   A61P 35/00 20060101ALN20220124BHJP
   A61K 51/00 20060101ALN20220124BHJP
【FI】
G21G4/08 G
G01N30/88 B
G01N30/26 A
B01J20/281 X
A61P35/00
A61K51/00 100
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021517761
(86)(22)【出願日】2019-09-17
(85)【翻訳文提出日】2021-05-24
(86)【国際出願番号】 FR2019052165
(87)【国際公開番号】W WO2020065180
(87)【国際公開日】2020-04-02
(31)【優先権主張番号】1858833
(32)【優先日】2018-09-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】FR
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521125578
【氏名又は名称】オラノ・メッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100133400
【弁理士】
【氏名又は名称】阿部 達彦
(72)【発明者】
【氏名】レミ・デュロー
(72)【発明者】
【氏名】ジュリアン・トルグ
【テーマコード(参考)】
4C084
【Fターム(参考)】
4C084AA12
4C084NA14
4C084ZB26
(57)【要約】
本発明は、非常に高い放射性純度の鉛-212を、トリウム-228及びその娘核を含む水溶液から生成する方法に関する。
応用:核医学、特に、癌治療のための標的アルファ放射線治療に有用な、鉛-212をベースとした放射性医薬品の製造。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) トリウム-228及びその娘核が、第1のpH値のpHとpHより大きい第2のpH値のpHの間のpHを有する酸性水溶液中にある場合、トリウム及びラジウムに対して選択的に鉛を保持する第1の固定相(20)を含む、第1のクロマトグラフィーカラム(10)を用意する工程と、
b) 第1のクロマトグラフィーカラム(10)に水溶液A1を添加する工程であって、水溶液A1が、pH~pHの間のpHを有する工程と、
c) pH~pHの間のpHを有する酸性水溶液A2で、第1の固定相(20)を少なくとも1度洗浄する工程と、
d) pHより大きいpHを有する水溶液A3で、鉛-212を第1の固定相(20)から溶出させ、それにより鉛-212を含む水溶液A4を得る工程と
を含む、水溶液A1に存在する鉛-212を精製する工程と、次いで
e) 第2のクロマトグラフィーカラム(40)に水溶液A4を添加する工程であって、第2のクロマトグラフィーカラム(40)は、トリウム-228及びその娘核が、第1のpH値のpHとpHより大きい第2のpH値のpHの間のpHを有する酸性水溶液中にある場合、トリウム及びラジウムに対して選択的に鉛を保持する第2の固定相(50)を含む工程と、
f) pH~pHの間のpHを有する酸性水溶液A5で、第2の固定相(50)を少なくとも1度洗浄する工程と、
g) pHより大きいpHを有する水溶液A6で、第2の固定相(50)から鉛-212を溶出させる工程と
を含む、水溶液A4に存在する鉛-212を精製する工程と
を含む連続的工程を含む、トリウム-228及びその娘核を含む酸性水溶液A1から、鉛-212を生成するための方法。
【請求項2】
水溶液A2が、水溶液A1のpHより大きいpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)が、水溶液A2による第1の固定相(20)の1度目の洗浄と、pH~pHの間のpHであるが、水溶液A2より大きいpHを有する水溶液A2’による第1の固定相(20)の2度目の洗浄とを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
水溶液A3及びA6が、鉛錯化剤を含む水溶液である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1のクロマトグラフィーカラム(10)が、互いに反対側の第1の末端及び第2の末端を有し、水溶液A1及びA2が、第1のクロマトグラフィーカラム内を第1の末端から第2の末端へと循環しており、水溶液A3が、第1のクロマトグラフィーカラム内を第2の末端から第1の末端へと循環している、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程d)と工程e)との間に、水溶液A4を酸性化して、水溶液A4のpHをpH~pHの間の値にすることを更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水溶液A4の酸性化が、酸性水溶液A7による第1の固定相(20)の少なくとも1度の洗浄と、洗浄によって出た水溶液のすべて、又は一部を水溶液A4に加えることとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水溶液A5が、水溶液A4のpHより大きいpHを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程f)が、水溶液A5による第2の固定相(50)の1度目の洗浄と、pH~pHの間のpHであるが、水溶液A5より大きいpHを有する水溶液A5’による第2の固定相(50)の2度目の洗浄とを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第2のクロマトグラフィーカラム(40)が、互いに反対側の第1の末端及び第2の末端を有し、水溶液A4及びA5が、第2のクロマトグラフィーカラム内を第1の末端から第2の末端へと循環しており、水溶液A6が、第2のクロマトグラフィーカラム内を第2の末端から第1の末端へと循環している、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1及び/又は第2の固定相(20、50)が、水に対して非混和性の有機希釈剤において、好ましくは8個以上の炭素原子を有するアルコールにおいて、クラウンエーテルを含む溶液で含浸させた固体支持体を含む材料で作製される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
クラウンエーテルが、ジシクロヘキサノ-18-クラウン-6、又はジベンゾ-18-クラウン-6であり、シクロへキシル又はベンジル基が、1つ又は複数の直鎖又は分岐C~C12アルキル基で置換されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
クラウンエーテルが、4,4’(5’)-ジ-tert-ブチルシクロヘキサノ-18-クラウン-6であり、有機希釈剤が、イソデカノールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水溶液A1及びA4が、1mol/L~2mol/Lの硝酸を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
水溶液A2が、0.01mol/L以上1mol/L未満の硝酸を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
水溶液A2が、0.5mol/L以上1mol/L未満の硝酸を含み、工程c)が、水溶液A2による第1の固定相(20)の1度目の洗浄と、0.1mol/L以上0.5mol/L未満の硝酸を含む水溶液A2’による第1の固定相(20)の2度目の洗浄とを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
水溶液A5が、0.1mol/L以上1mol/L未満の硝酸を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
水溶液A5が、0.5mol/L以上1mol/L未満の硝酸を含み、工程f)が、水溶液A5による第2の固定相(50)の1度目の洗浄と、0.01mol/L以上0.5mol/L未満の硝酸を含む水溶液A5’による第2の固定相(50)の2度目の洗浄とを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
水溶液A3及びA6は、少なくとも5に等しく、多くとも9に等しいpHを有する、アンモニウム又はナトリウムのクエン酸塩、シュウ酸塩又は酢酸塩の水溶液である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
トリウム-228及びその娘核が、水溶液A1中で放射平衡にある、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程a)の前に、トリウム-228及びその娘核が酸性水性相にある場合、選択的に鉛を保持する固定相を含むクロマトグラフィーカラム内で、水溶液A1を循環させる工程と、クロマトグラフィーカラム内を循環していた水溶液A1を収集する工程とを含む、水溶液A1中に存在する鉛-208を除去する工程を更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ラジオアイソトープとしても知られる放射性同位元素の生成の分野に関する。
【0002】
より具体的には、トリウム-228及び子孫核種としても知られるその娘核を含む水溶液から、非常に高い放射性純度の鉛-212を生成することを可能にする方法に関する。
【0003】
この方法は、したがって、核医学での使用、特に、癌治療のための標的アルファ放射線治療での使用に適切な、鉛-212をベースとした放射性医薬品の製造に用途を見出す可能性がある。
【背景技術】
【0004】
鉛-212は、鉛の希少な放射性同位元素であり、数年の間、癌、特に、膵癌、卵巣癌、結腸癌、乳癌及び前立腺癌の、特に標的アルファ線治療としても知られる標的アルファ放射線治療による治療のための、有望な研究対象となっている。
【0005】
鉛-212はまた、医用画像用として、特にコンピュータ断層撮影とともに単一光子放射断層撮影による検査の実行用として関心を持たれていることが示されている、ラジオアイソトープの中の1つである。
【0006】
どちらの場合においても、鉛-212の使用は、鉛-212は、どちらも放射性医薬品の形状で、すなわち(標的アルファ線治療の場合)破壊されるべき細胞を、又は(医用画像の場合)抗体等の観察すべき細胞を、非常に特異的に標的にすることができる分子に、通常はキレート剤によって結合する生成物の形状で、患者に注入されることを意味している。
【0007】
このため、鉛-212は、極めて厳しい品質要件を満たさなければならず、特に放射性純度に関しては、理想的には、少なくとも99.95%に等しくするべきである。
【0008】
この点に関して、鉛-212等のラジオアイソトープの放射性純度という用語は、放射性壊変によってそれが得られる元のラジオアイソトープ、並びにその放射性壊変連鎖の一部ではない他のラジオアイソトープに対して、このラジオアイソトープが有する純度を示すが、それ自体の放射性壊変によって生じるラジオアイソトープ、すなわちその娘核に対して、このラジオアイソトープが有する純度を示すのではない。
【0009】
トリウム-232の放射性壊変又は崩壊連鎖を表す添付の図1に示すように、鉛-212は、トリウム-232の放射性系列に属し、その娘核種である。鉛-212はまた、この連鎖のトリウム-232と鉛-212の間に組み込まれている、トリウム-228及びラジウム-224の娘核種である。
【0010】
医療用の鉛-212を生成するために、すなわち上述の放射性純度要件を満たすために、国際PCT出願WO第2013/174949号及びWO第2017/093069号(以下、参照文献[1]及び[2]とする)は、
- ラジウム-224が保持される固体媒体を含むジェネレータで、ラジウム-224の放射性壊変によって、鉛-212を生成する工程と、
- 強酸性水溶液の形状で、鉛-212をジェネレータから抽出する工程と、
- 液体クロマトグラフィーによって鉛-212を精製する工程と、
を含む方法を提示している。
【0011】
このクロマトグラフィーは、強酸性で鉛を保持するが、この水溶液中に存在しやすい放射性不純物は保持しない固定相を含むクロマトグラフィーカラムに、強酸性水溶液を添加することによって実行され、次いで固定相を、同じく強酸性水溶液で洗浄し、カラムから前記放射性不純物を除去し、その時点までにpHが5~9の間の水溶液で鉛-212を溶出するが、これによって、鉛-212が精製された形状で回収できるようになる。
【0012】
参照文献[1]及び[2]に記載の方法による鉛-212の生成は、ラジウム-224が前もって生成されていることを要求する。
【0013】
ジェネレータは、通常は、固体固定相を含む液体クロマトグラフィーカラムであり、固体固定相上に親ラジオアイソトープが選択的に保持され、定期的に液相で洗浄され、それにより親ラジオアイソトープの放射性壊変によって、このカラムに形成する娘核ラジオアイソトープを溶出させることが可能になる。
【0014】
ジェネレータの固定相が、特定の金属元素に対して持たなければならない親和性を考慮して、ラジウム-224及び鉛-212のジェネレータでそれぞれ使用される固定相が、互いに異なるだけでなく、鉛-212を精製するために参照文献[1]及び[2]で使用する固定相材料とも異なる固定相材料からなることが理解される。
【0015】
しかし、鉛-212の生成を簡略化するために、同様に、その費用を低減するために、異なるジェネレータの数と、現在この生成に使用されている固定相材料の数との両方を低減できることが望ましいだろう。
【0016】
更に、各ジェネレータは、理論上、このジェネレータの固定相上に固定される親ラジオアイソトープの量が、満足な収率を有する娘核ラジオアイソトープの生成を確保するのに十分である限り、使用することができる。
【0017】
しかし実際には、親ラジオアイソトープを固定相に長時間保つと、放射線分解によるこの固定相の漸進的な分解を引き起こし、親ラジオアイソトープを保持するための固定相の能力に徐々に影響を及ぼして、このラジオアイソトープのリークが出現し、これらのリークの出現を防ぐために、ジェネレータの定期的な整備を実施しなければならなくなり、このような整備にも関わらず、ジェネレータを早期に廃棄する結果となることがわかった。しかし、この場合も、この早期の廃棄は、鉛-212の生成費用の増加の一因となる。
【0018】
上記を考慮して、本発明者らは、参照文献[1]及び[2]で得られた鉛-212の放射性純度に匹敵する放射性純度を有するが、それよりも顕著に低い費用で、顕著にこの生成の整備を低減することによって、鉛-212を生成することを可能にする方法を提供することを、自らの目的とした。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0019】
【特許文献1】国際PCT出願WO第2013/174949号
【特許文献2】国際PCT出願WO第2017/093069号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0020】
本発明の目的は、正確にはトリウム-228及びその娘核を含む酸性水溶液A1から、鉛-212を生成するための、これらの要件を満たす方法を提示することである。
【課題を解決するための手段】
【0021】
この方法は、
a) トリウム-228及びその娘核が、第1のpH値のpHとpHより大きい第2のpH値のpHの間のpHを有する酸性水溶液中にある場合、トリウム及びラジウムに対して選択的に鉛を保持する第1の固定相を含む、第1のクロマトグラフィーカラムを用意する工程と、
b) 第1のクロマトグラフィーカラムに水溶液A1を添加する工程であって、水溶液A1が、pH~pHの間のpHを有する工程と、
c) pH~pHの間のpHを有する酸性水溶液A2で、第1の固定相を少なくとも1度洗浄する工程と、
d) pHより大きいpHを有する水溶液A3で、鉛-212を第1の固定相から溶出させ、それにより鉛-212を含む水溶液A4を得る工程と
を含む、水溶液A1に存在する鉛-212を精製する工程と、次いで
e) 第2のクロマトグラフィーカラムに水溶液A4を添加する工程であって、第2のクロマトグラフィーカラムは、トリウム-228及びその娘核が、第1のpH値のpHとpHより大きい第2のpH値のpHの間のpHを有する酸性水溶液中にある場合、トリウム及びラジウムに対して、選択的に鉛を保持する第2の固定相を含む工程と、
f) pH~pHの間のpHを有する水溶液A5で、第2の固定相を少なくとも1度洗浄する工程と、
g) pHより大きいpHを有する水溶液A6で、第2の固定相から鉛-212を溶出させる工程と
を含む、水溶液A4に存在する鉛-212を精製する工程とを含む。
【0022】
2つの固定相のみを使用し、ラジウム-224のジェネレータも鉛-212のジェネレータも使用せずに、非常に高い放射性純度の鉛-212を含む水溶液が、以上により得られる。
【0023】
上記及び下記で、トリウム-228の“娘核”という用語は、図1に示すトリウム-232の壊変連鎖において、トリウム-228から下流に組み込まれているすべてのラジオアイソトープ(すなわちラジウム-224、ラドン-220、ポロニウム-216、鉛-212、ビスマス-212、タリウム-208及びポロニウム-212)並びに鉛の安定同位元素であり、この連鎖を終了させる鉛-208を指す。
【0024】
更に、“...~...”、“...~...の範囲”、及び“...~...の間”という表現は、同等であり、境界が含まれていることを示す。
【0025】
本発明によると、第1及び第2の固定相は、同一又は異なる材料から作製でき、これらの材料が、特定の酸性度(本明細書では、第1の固定相ではpH~pHの間、第2の固定相ではpH~pHの間に含まれると定義する)を有し、トリウム-228及びその娘核が存する酸性水溶液と接触する場合は鉛を保持できるが、トリウム及びラジウムは保持しないすべての材料から選択できる。第1及び第2の固定相が同一の材料からなる場合、pHはpHに等しく、一方pHはpHに等しい。
【0026】
そのような材料は、不活性固体支持体、無機固体支持体(シリカ若しくはアルミナ粒子、又はシリカゲル等)、有機固体支持体(ポリマー等)、又は無機-有機固体支持体を含むことができ、イオン交換、イオン抽出、分子認識、又は他の任意の機構によって鉛イオン(Pb2+)を保持するが、トリウム及びラジウムイオンは保持しない有機分子で、グラフト又は含浸によって官能基を持たせられる。
【0027】
更に、水溶液A1、A2及びA5に存在する酸は、強酸又は弱酸の任意の酸であってもよく、この酸は、好ましくは、水溶液A1、A2及びA5において同一である。
【0028】
上述のとおり、工程c)は、酸性水溶液A2で、第1の固定相を少なくとも1度洗浄する工程を含む。
【0029】
この洗浄は、第1のクロマトグラフィーカラムから、特に第1の固定相の間隙容量から、鉛以外のトリウム-228及びその娘核、及び特に、工程b)において、第1のクロマトグラフィーカラム内で保持され得るラジウム-224を除去することを本質的に意図している。このため、この洗浄は、水溶液A1のpHと同一のpHを有する水溶液A2で実行することができる。
【0030】
しかし、有利には、この洗浄は、第1の固定相が水溶液A3と接触するのを準備するために使用することもでき、上述のとおり、水溶液A3は、鉛が酸性水溶液中に存在する場合、第1の固定相の材料によって鉛が保持される、pHと呼ばれるpH範囲の上限より大きいpH-したがって、酸性度範囲の下限未満の酸性度-を有する。
【0031】
この場合、水溶液A2は、pH~pHの間のpHを有するが、水溶液A1のpHより大きいpHを有する溶液である。
【0032】
好ましくは、工程c)は、第1のクロマトグラフィーカラムから、第1のクロマトグラフィーカラム内で保持され得る、鉛以外のトリウム-228及びその娘核を除去するだけでなく、第1の固定相が、水溶液A3と接触するのを準備する機能を有する、2度の連続する第1の固定相の洗浄を含む。
【0033】
この場合、工程c)は、第1の固定相(20)を、pH~pHの間であるが、水性相A1のpHより大きいpHを有する水性相A2で洗浄し、第2の固定相(20)を、pH~pHの間であるが、水溶液A2のpHより大きいpHを有する水溶液A2’で洗浄する第1の洗浄を含む。
【0034】
本発明によると、工程d)で使用する水溶液A3は、有利には、鉛錯化剤を含む水溶液である。
【0035】
この錯化剤は、特にクエン酸イオン、シュウ酸イオン、又は酢酸イオンから選択できる。錯化剤はまた、グリシン若しくはエチレンジアミン四酢酸(又はEDTA)等のアミノポリカルボン酸、又はナトリウム塩等のそれらの塩からなることができる。この溶液は、アンモニウム又はナトリウムのクエン酸塩、シュウ酸塩又は酢酸塩の水溶液であり、pHが5~9の間であり、はるかに良好には、5~7の間であることが好ましい。
【0036】
このことを考慮して、任意のクロマトグラフィーカラムと同様に、第1のクロマトグラフィーカラムは、互いに反対側の第1の末端及び第2の末端を有し、水溶液A1及びA2は、このカラム内をその第1の末端からその第2の末端へ循環しており、一方水溶液A3は、好ましくは逆の方向、すなわちカラムの第2の末端からカラムの第1の末端へ循環している。
【0037】
水溶液A4が、pHより大きいpHを有する場合、本方法は、有利には、工程d)とe)との間に、水溶液A4を、そのpHがpH~pHの間の値になるよう酸性化することを更に含む。明らかであるが、第2の固定相の材料が、第1の固定相の材料と同一である場合、且つ水溶液A4が、pHより大きいpHを有する場合、水溶液A4の酸性化は、そのpHを、pH~pHの間の値にすることを目的としている。
【0038】
この酸性化は、単純に水溶液A4に酸を加えることによって実行できる。
【0039】
しかし、本発明の範囲内では、第1の固定相を、酸性水溶液A7で少なくとも1度洗浄し、且つ水溶液A4に、この洗浄で得られた水溶液のすべて又は一部を加えることによって、水溶液A4を酸性化することが好ましい。
【0040】
したがって有利には、水溶液A7の容積及びその酸の濃度は、水溶液A4にすべて又は一部の水溶液A7を加えることが、それ自体で、第2の固定相の材料が第1の固定相の材料と同一である場合、水溶液A4のpHをpH~pHの間の値、又はpH~pHの間の値にし得るように、はるかに良好には、水溶液A1のpH値に等しいか、実質的に等しくし得るように、選択される。
【0041】
水溶液A7は、好ましくは第1のクロマトグラフィーカラム内で、このカラムの第2の末端からその第1の末端へ循環している。
【0042】
上述のとおり、工程f)は、酸性水溶液A5で、第2の固定相を少なくとも1度洗浄することを含む。
【0043】
この場合も、この洗浄は、上記の工程e)において、第2のクロマトグラフィーカラム、特に第2の固定相の間隙容量から、第2のクロマトグラフィーカラム内で保持され得る鉛以外のトリウム-228及びその娘核の痕跡量を除去するにとどまらず、第2の固定相が、水溶液A6と接触するのを準備することを可能にすることが好ましく、その水溶液A6は、水溶液A3と同様に、鉛が酸性水溶液に存在する場合、第2の固定相の材料によって鉛が保持されるpH範囲の上限より大きいpH-したがって、酸性度の範囲の下限未満の酸性度-を有する。
【0044】
このため、工程f)の洗浄は、水溶液A4のpHと同一のpHを有する水溶液A5で実行できるが、pH~pHの間のpHを有するが、水溶液A4のpHより大きいpHを有する水溶液A5で洗浄を実行することが好ましい。
【0045】
工程c)と同様に、工程f)は、好ましくは2度の連続する第2の固定相の洗浄、すなわち、pH~pHの間のpHを有するが、水性相A4のpHより大きいpHを有する水溶液A5で実行する1度目の洗浄と、pH~pHの間のpHを有するが、水溶液A5のpHより大きいpHを有する酸性水溶液A5’で実行する2度目の洗浄とを含む。
【0046】
工程g)で使用する水溶液A6は、有利には、鉛錯化剤を含む水溶液である。
【0047】
上記のとおり、この錯化剤は、クエン酸イオン、シュウ酸イオン又は酢酸イオン、グリシン又はアミノポリカルボン酸(EDTA等)、及びこれらの酸の塩から選択できる。
【0048】
この場合も、この溶液は、アンモニウム若しくはナトリウムのクエン酸塩、シュウ酸塩又は酢酸塩の水溶液であり、pHが5~9の間であり、特に好ましくは、pH5~7の間を示すことが好ましい。
【0049】
更に、水溶液A6は、好ましくは、酸性化した水溶液A4及び水溶液A5が循環している方向と逆の方向に、第2のクロマトグラフィーカラム内を循環している。
【0050】
本発明の好ましい実施では、第1及び第2の固定相は、抽出によって鉛を保持する固定相材料で作製され、より具体的には、通常は、長鎖炭化水素アルコール、すなわちC以上の、水に対して非混和性の有機希釈剤において、抽出用溶剤としてクラウンエーテル、特に、シクロへキシル、又はベンジル基が、1つ又は複数の直鎖、又は分岐C~C12アルキル基で置換されている、ジシクロヘキサノ-18-クラウン-6、又はジベンゾ-18-クラウン-6を含む溶液で含浸させた固体支持体を含む材料で作製される。
【0051】
より好ましくは、抽出用溶剤として4,4’(5’)-ジ-tert-ブチルシクロヘキサノ-18-クラウン-6を含む固定相材料が使用され、好ましくはイソデカノールに溶解している。
【0052】
この種類の固定相材料は、瓶詰めされた粒子の形状だけでなく、使用準備済のクロマトグラフィーカラム、又はカートリッジの形状で、Triskem International社及びEichrom Technologies, Inc.社から、商標Pb Resinとして、特に入手可能である。
【0053】
そのような固定相材料は、例えば硝酸又は塩酸等の酸性媒体中にあり、pH値が、通常は2以下の場合、鉛を保持する。
【0054】
しかし、本発明の範囲内では、工程b)で使用する水溶液A1は、硝酸、有利には、1mol/L~2mol/Lの割合の硝酸、はるかに良好には、2mol/Lの割合の硝酸を含む溶液であることが好ましい。
【0055】
本方法で使用する他方の酸性水溶液も、硝酸を含むことがやはり好ましい。
この場合、
- 工程c)が、1度の洗浄のみを含む場合、水溶液A2は、好ましくは、0.01mol/L以上1mol/L未満である硝酸濃度を有し、一方
- 工程c)が、2度の洗浄を含む場合、
* 水溶液A2は、好ましくは、0.5mol/L以上1mol/L未満である硝酸濃度を有し、0.5mol/Lの濃度が、特に好ましく、且つ
* 水溶液A2’は、好ましくは、0.01mol/L以上0.5mol/L未満である硝酸濃度を有し、0.1mol/Lの濃度が、特に好ましい。
【0056】
好ましくは、工程f)で使用する水性相A4は、水性相A1と同様に、1mol/L~2mol/L、はるかに良好には、2mol/Lの硝酸を含む。
【0057】
更に、
- 工程f)が、1度の洗浄のみを含む場合、水溶液A5は、好ましくは、0.01mol/L以上1mol/L未満である硝酸濃度を有し、一方、
- 工程f)が、2度の洗浄を含む場合、
* 水溶液A5は、好ましくは、0.5mol/L以上1mol/L未満である硝酸濃度を有し、0.5mol/Lの濃度が、特に好ましく、且つ
* 水溶液A5’は、好ましくは、0.01mol/L以上0.5mol/L未満である硝酸濃度を有し、0.1mol/Lの濃度が、特に好ましい。
【0058】
水溶液A3及びA6に関して、水溶液A3及びA6は、好ましくは、アンモニウム又はナトリウムのクエン酸塩、シュウ酸塩又は酢酸塩の水溶液からなり、クエン酸イオン、シュウ酸イオン、又は酢酸イオンが、鉛-212に対してその錯化力を行使できるように、且つこれにより、鉛-212が第1及び第2の固定相のそれぞれから溶出することを容易にするように、水溶液A3及びA6のpHは、少なくとも5に等しく、多くとも9に等しく、特に好ましくは、pH5~7の間を示す。
【0059】
有利には、トリウム-228及びその娘核は、水溶液A1中で放射平衡にある。
【0060】
生成すべき鉛-212の比放射能を最適化しようとする場合、工程a)の前に、トリウム-232の壊変連鎖を終了させ、鉛の安定同位元素として水溶液A1中に蓄積されやすい、鉛-208を除去することを目的とする工程を設けることが可能である。
【0061】
この場合、この工程は、トリウム-228及びその娘核が、酸性水溶液中にある場合、鉛を選択的に保持する固定相を含むクロマトグラフィーカラム内で、水溶液A1を循環させることと、クロマトグラフィーカラム内を循環していた水溶液A1を収集することとを含む。
【0062】
次いで、鉛-212が、水溶液A1中に存在するラジウム-224の壊変によって再形成され、工程a)に進むことができるようにするだけで済むが、これは、工程a)に進む前に、約48時間の待機を伴う。
【0063】
本発明によると、鉛-208を水性相A1から除去するのに使用する固定相は、第1及び第2の固定相と同一の材料、又は異なる材料からなることができる。しかし、使用される異なる固定相材料の数を低減することが目的であるため、水性相A1から鉛-208を除去するために使用する固定相の構成材料は、第1及び第2の固定相を形成する材料と同一の材料であることが好ましい。
【0064】
すでに述べた利点に加えて、本方法は、参照文献[1]及び[2]の実施例で使用する酸性水溶液中に存在する酸である塩酸を使用せずに実施できるという利点を含む。塩酸は、鉛-212の生成を実施する機器を、長期的に損傷する高腐食性の酸であるので、塩酸の使用を回避することは実に有利である。
【0065】
本発明による方法のさらなる特徴及び利点は、下記の追加の説明を読めば明らかになり、この説明は、この方法の好ましい実施に関するものである。
【0066】
明らかに、この好ましい実施は、単に本発明の主題を説明する方法によって与えられるのみであり、決してこの主題を制限することを表すのではない。
【図面の簡単な説明】
【0067】
図1】先に記載した、トリウム-232の放射性壊変連鎖を表す図である。
図2】本発明による方法の好ましい実施の、異なる工程を概略的に表す図である。
【発明を実施するための形態】
【0068】
本発明による方法の好ましい実施の、異なる工程(参照番号1~7)を概略的に表す図2を参照する。
【0069】
この実施で、本方法は、下記、
1. その固定相(参照符号20)がPb Resin(商標)粒子からなる第1のクロマトグラフィーカラム(参照符号10)に、好ましくは放射平衡にあるトリウム-228及びその娘核を含む硝酸水溶液A1を添加して、この溶液中に含有される鉛-212を、固定相20上に固定する工程と、
2. 固定相20を、濃度を減少させた2種類の硝酸水溶液A2及びA2’で2度連続して洗浄して、先行する工程で、カラム10内で保持され得る鉛-212以外のラジオアイソトープをカラム10から除去し、一方では固定相20が下記の工程で、より高いpHの水溶液と接触するのを準備する工程と、
3. 鉛-212を、酢酸アンモニウム水溶液A3で固定相20から溶出させて、ビーカー、フラスコ、又は同様のもの等の容器(参照符号30)で鉛-212を含む溶出液、すなわち水溶液A4を収集する工程と、
4. 固定相20を、硝酸水溶液A7で洗浄して、この洗浄によって出された溶液を容器30で収集し、この容器中に存在する溶出液を酸性化する工程と、
5. その固定相(参照符号50)がPb Resin(商標)粒子からなる第2のクロマトグラフィーカラム(参照符号40)に、容器30中に存在する溶出液/洗浄溶液混合物、すなわち酸性化水溶液A4を添加して、この混合物中に含有される鉛-212を、固定相50上に固定する工程と、
6. 固定相50を、濃度を減少させた2種類の硝酸水溶液A5及びA5’で2度連続して洗浄し、先行する工程で、カラム40内で保持され得る鉛-212以外のラジオアイソトープの痕跡量を、カラム40から除去し、一方では固定相50が下記の工程で、より高いpHの水溶液と接触するのを準備する工程と、
7. 鉛-212を、酢酸アンモニウム水溶液A6で、固定相50から溶出させて、容器(参照符号60)で鉛-212を含む溶出液を収集する工程と
を含む。
【0070】
これらのすべての工程は、下記で詳述するが、室温、すなわち20℃~25℃の温度で実施される。
【0071】
更に、使用するすべての溶液は、好ましくは、Optima(商標)グレード、又はOptima(商標)グレード若しくは“Trace Metalsグレード”の試薬を使用して調製される。
【0072】
*工程1:
クロマトグラフィーカラム10は、例えば、0.104mL~1.25mLの範囲のベッドボリューム(又はBV)を有し、Pb Resin(商標)粒子(50μm~100μmの間の大きさ)で、例えば、カラムのBVに応じて42mg~500mgの割合の粒子で充填されているカラムである。
【0073】
0.01mol/L~10mol/Lの間の酸性度の硝酸で、Pb Resin(商標)は、その同位元素(212Pb及び208Pb)に関係なく鉛を保持するが、その同位元素に関係なく、鉛以外のトリウム-228又はその娘核、特にラジウムは保持しない。
【0074】
ただし、鉛に対する親和性は、1mol/L~2mol/Lの間の硝酸濃度で最適となる。
【0075】
カラム10への添加は、このカラム内に数BVの水溶液A1を循環させることによって実行し、水溶液A1は、
- 好ましくは放射平衡にあるトリウム-228及びその娘核、及びとりわけトリウム-228の放射性壊変によって出されたラジウム-224、及びラジウム-224の放射性壊変によって出された鉛-212と、
- 上記を考慮して、固定相20上で鉛-212を最適に保持するために、好ましくは、1mol/L~2mol/Lの割合、はるかに良好には2mol/Lの割合の硝酸と
を含む。
【0076】
水溶液A1は、カラム10内を、好ましくは0.5BV/分~2BV/分の間の流速で循環している。
【0077】
0.104mL~1.25mLのBVに対して、使用する水溶液A1の容積は、有利には80mL~400mLの間であり、一方、この溶液中のトリウム-228の活性は、2mCi~11mCiの間である。
【0078】
*工程2:
上述のとおり、この工程は、固定相20を2度連続して洗浄することからなり、それぞれが、
- カラム10から、とりわけ固定相20の間隙容量から、上記の工程1のカラム10内で保持され得る鉛-212以外のラジオアイソトープ、特に、トリウム-228及びラジウム-224を除去することと、
- 固定相20が、鉛-212を溶出させるために、下記の工程3で使用するアンモニウム塩水溶液と接触するのを準備し、それによりこの溶出が容易になることと
の機能を有する。
【0079】
このため、これらの洗浄で使用する水溶液A2及びA2’は、2種類の硝酸溶液であるが、1度目の洗浄で使用する水溶液A2は、上記の工程1で、固定相上に鉛-212を固定するのに使用する水溶液A1の酸性度より低い酸性度を有し、一方、2度目の洗浄で使用する水溶液A2’は、同様に、水溶液A2の酸性度より低い酸性度を有する。
【0080】
ただし、水溶液A2及びA2’の酸性度は、本方法のこの段階で、鉛-212が溶出することを回避するために選択されなければならない。
したがって、
- 水溶液A2は、好ましくは、0.5mol/L以上1mol/L未満の硝酸を含み、はるかに良好には、0.5mol/Lの硝酸を含み、一方、
- 水溶液A2’は、好ましくは0.01mol/L以上0.5mol/L未満の硝酸を含み、はるかに良好には、0.1mol/Lの硝酸を含む。
【0081】
使用するBVの数値は、例えば、水溶液A2に対して20BV、且つ水溶液A2’に対して10BVである。
【0082】
水溶液A2及びA2’の、カラム10内の循環速度に関しては、例えば、両方の溶液で1.6BV/分である。
【0083】
*工程3:
固定相20からの鉛-212の溶出は、カラム10内で数BVの酢酸アンモニウム水溶液A3を、上記工程1の添加、及び上記工程2の洗浄を実行した方向と逆の方向で循環させることによって実行する。
【0084】
酢酸イオンが、鉛-212に対してその錯化力を行使できるように、水溶液A3のpHは、少なくとも5に等しいが、下記工程4で、溶出液を酸性化するために、過度に大きな数値のBVの水溶液A7を使用せざるを得ないことを回避するために、好ましくは、多くとも7に等しい。
【0085】
理想的には、pHが6.5に等しい0.4mol/Lの酢酸アンモニウムを含み、1.6BV/分の速度でカラム10内を循環している25BVの水溶液A3を使用する。
【0086】
*工程4:
この工程で行う固定相20の洗浄は、カラム10を洗浄するだけでなく、下記の工程5を実行するために、先行する工程で収集した溶出液、すなわち水溶液A4を酸性化するのに役立つ。
【0087】
したがって、この洗浄は、カラム10内で、上記の工程1の添加及び上記の工程2の洗浄が実行された方向と逆の方向に、数BVの硝酸水溶液A7を循環させること、及びこの洗浄によって出た溶液を、上記の工程3で溶出液を収集した容器30に収集することによって実施する。この収集は、有利には、洗浄で得られた溶液が、カラム10から出る時に溶出液と混合するように、撹拌しながら実行する。
【0088】
この洗浄で使用する水溶液A7のBVの数値、及びこの溶液の硝酸濃度は、有利には、溶出液/洗浄溶液の混合液、すなわち酸性化水溶液A4が得られるように選択され、硝酸濃度が、下記の工程5で使用する固定相50上のこの混合液、すなわち換言すると、1mol/L~2mol/Lの硝酸を含む酸性化水溶液A4に含有される鉛-212を最適に固定することを可能にする。
【0089】
通常は、2mol/L~4mol/Lの硝酸を含む、10BV~20BVの水溶液A7を使用する。
【0090】
したがって、例えば0.4mol/Lの酢酸アンモニウムを含む25BVの水溶液A3によって得られた溶出液に対しては、3mol/Lの硝酸を含む15BVの水溶液A7が、申し分なく適切であることがわかった。
【0091】
水溶液A7のカラム10内での循環速度は、例えば、1.6BV/分である。
【0092】
必要であれば、次の工程に進む前に、酸性化溶液A4の硝酸濃度を上方に調整しようとする場合は硝酸を加え、この濃度を下方に調整しようとする場合は超純水(25℃で、抵抗率:18.2MΩ.cm)を加えることによって、酸性化溶液A4の硝酸濃度を調整できる。
【0093】
*工程5:
酸性化水溶液A4中に存在する鉛-212は、医療用に要求される放射性純度基準をまだ満たしてない。
【0094】
したがって、工程5は、特に酸性化水溶液A4中に依然として存在するトリウム-228及びラジウム-224の痕跡量に対して、鉛-212を更に精製するために、Pb Resin(商標)粒子を充填したクロマトグラフィーカラムに、この溶液をもう一度添加することからなる。
【0095】
この目的のために使用するクロマトグラフィーカラム40は、カラム10と全く同じであり、同一のベッドボリューム、及び同一の質量のPb Resin(商標)粒子を有するカラムであってもよい。
【0096】
ただし、図2に見られるように、この鉛の濃度を有する鉛-212の精製を伴うために、カラム10の寸法よりとりわけ小さい寸法を有するカラム40を使用することが好ましい。
【0097】
したがって、具体的には、BV及びPb Resin(商標)粒子の質量が、カラム10の1/4~1/7のカラム40を使用することが可能である。
【0098】
固定相50への酸性化水溶液A4の添加は、好ましくは、0.5BV/分~2BV/分の間の流速で、カラム40内でこの溶液を循環させることによって実行する。
【0099】
*工程6:
この工程で行う2度の洗浄は、上記工程2で得られるものと同一の機能、すなわち、
- カラム40から、とりわけ固定相50の間隙容量から、上記工程5でカラム40内に保持され得る鉛-212以外のラジオアイソトープの痕跡量、特にトリウム-228及びラジウム-224の痕跡量を除去することと、
- 固定相50が、下記工程7で鉛-212を溶出させるために使用する酢酸アンモニウム水溶液A6と接触するのを準備し、それにより、鉛-212の溶出を容易にすることと
を有する。
【0100】
このため、2度の洗浄は、好ましくは、それぞれ上記工程2で使用する水溶液A2及びA2’と同一の濃度の硝酸水溶液A5及びA5’で、この工程2について記載した条件と同様の条件下で実行する。
【0101】
*工程7:
固定相20の鉛-212の溶出と同様に、固定相50からの鉛-212の溶出は、例えば2BV/分の流速でカラム40内を循環しており、0.4mol/Lの酢酸アンモニウムを含む溶液(pH=6.5)等の、pHが、少なくとも5に等しく、より良好には、5~7の間である、数BVの酢酸アンモニウム水溶液A6を、カラム40内で循環させることによって実行する。
【0102】
この溶出の間に収集した溶出液画分は、好ましくは、鉛-212が意図される医療用途に従って保存される。
【0103】
したがって、鉛-212を希釈する費用のみで、すべての溶出液画分を保存することが可能であるので、鉛-212が豊富である溶出液画分のみを保存し、鉛-212が濃縮している水溶液を得ることが可能である。
【0104】
本発明による方法は、上記の実施形態に従って、
- 工程1:255mgのPb Resin(商標)粒子を含有し、0.63mLに等しいBVのカラム10であって、6.1mCiのトリウム-228及び2mol/Lの硝酸を含む275BVの水溶液A1が、1mL/分の流速で循環しているカラム10と、
- 工程2:0.5mol/Lの硝酸を含み、1mL/分の流速で20BVの水溶液A2と、次いで、0.1mol/Lの硝酸を含み、1mL/分の流速で10BVの水溶液A2’と、
- 工程3:pHが6.5に等しく、0.4mol/Lの酢酸アンモニウムを含み、1mL/分の流速で25BVの水溶液A3と、
- 工程4:3mol/Lの硝酸を含み、1mL/分の流速で15BVの水溶液A7と、
- 工程5:52mgのPb Resin(商標)粒子を含有し、BVが0.104mLに等しいカラム40であって、工程4の最後に得た酸性化水溶液A4-このカラムのBVを考慮して、カラム40に対して220BVの水溶液に等しい-が、0.2mL/分の流速で循環していたカラム40と、
- 工程6:0.5mol/Lの硝酸を含み、1mL/分の流速で20BVの水溶液A5と、次いで0.1mol/Lの硝酸を含み、0.2mL/分の流速で、10BVの水溶液A5’と、
- 工程7:pHが6.5に等しく、0.4mol/Lの酢酸アンモニウムを含み、0.2mL/分の流速で40BVの水溶液A6と
を使用して実施した。
【0105】
以上により、トリウム-228に対して少なくとも99.99%に等しく、ラジウム-224に対して少なくとも99.95%に等しい放射性純度、すなわち参照文献[1]及び[2]で得られた放射性純度に等しい放射性純度を有する鉛-212を含む水溶液を得た。
【0106】
この放射性純度は、鉛-212、トリウム-228及びラジウム-224の活性を、γスペクトロメトリーによって計測し、下記式を適用することによって測定した。
トリウム-228に対する鉛-212の純度=[212Pb活性/(212Pb活性+228Th活性)]×100
ラジウム-224に対する鉛-212の純度=[212Pb活性/(212Pb活性+224Ra活性)]×100
(参考文献)
[1]WO-A-2013/174949
[2]WO-A-2017/093069
【符号の説明】
【0107】
10 第1のクロマトグラフィーカラム
20 固定相
30 容器
40 第2のクロマトグラフィーカラム
50 固定相
60 容器
図1
図2
【手続補正書】
【提出日】2021-05-26
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
a) トリウム-228及びその娘核が、第1のpH値のpHとpHより大きい第2のpH値のpHの間のpHを有する酸性水溶液中にある場合、トリウム及びラジウムに対して選択的に鉛を保持する第1の固定相(20)を含む、第1のクロマトグラフィーカラム(10)を用意する工程と、
b) 第1のクロマトグラフィーカラム(10)に水溶液A1を添加する工程であって、水溶液A1が、pH~pHの間のpHを有する工程と、
c) pH~pHの間のpHを有する酸性水溶液A2で、第1の固定相(20)を少なくとも1度洗浄する工程と、
d) pHより大きいpHを有する水溶液A3で、鉛-212を第1の固定相(20)から溶出させ、それにより鉛-212を含む水溶液A4を得る工程と
を含む、水溶液A1に存在する鉛-212を精製する工程と、次いで
e) 第2のクロマトグラフィーカラム(40)に水溶液A4を添加する工程であって、第2のクロマトグラフィーカラム(40)は、トリウム-228及びその娘核が、第1のpH値のpHとpHより大きい第2のpH値のpHの間のpHを有する酸性水溶液中にある場合、トリウム及びラジウムに対して選択的に鉛を保持する第2の固定相(50)を含む工程と、
f) pHpH の間のpHを有する酸性水溶液A5で、第2の固定相(50)を少なくとも1度洗浄する工程と、
g) pHより大きいpHを有する水溶液A6で、第2の固定相(50)から鉛-212を溶出させる工程と
を含む、水溶液A4に存在する鉛-212を精製する工程と
を含む連続的工程を含む、トリウム-228及びその娘核を含む酸性水溶液A1から、鉛-212を生成するための方法。
【請求項2】
水溶液A2が、水溶液A1のpHより大きいpHを有する、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
工程c)が、水溶液A2による第1の固定相(20)の1度目の洗浄と、pH~pHの間のpHであるが、水溶液A2より大きいpHを有する水溶液A2’による第1の固定相(20)の2度目の洗浄とを含む、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
水溶液A3及びA6が、鉛錯化剤を含む水溶液である、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1のクロマトグラフィーカラム(10)が、互いに反対側の第1の末端及び第2の末端を有し、水溶液A1及びA2が、第1のクロマトグラフィーカラム内を第1の末端から第2の末端へと循環しており、水溶液A3が、第1のクロマトグラフィーカラム内を第2の末端から第1の末端へと循環している、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
工程d)と工程e)との間に、水溶液A4を酸性化して、水溶液A4のpHをpH~pHの間の値にすることを更に含む、請求項1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
水溶液A4の酸性化が、酸性水溶液A7による第1の固定相(20)の少なくとも1度の洗浄と、洗浄によって出た水溶液のすべて、又は一部を水溶液A4に加えることとを含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
水溶液A5が、水溶液A4のpHより大きいpHを有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
工程f)が、水溶液A5による第2の固定相(50)の1度目の洗浄と、pH~pHの間のpHであるが、水溶液A5より大きいpHを有する水溶液A5’による第2の固定相(50)の2度目の洗浄とを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
第2のクロマトグラフィーカラム(40)が、互いに反対側の第1の末端及び第2の末端を有し、水溶液A4及びA5が、第2のクロマトグラフィーカラム内を第1の末端から第2の末端へと循環しており、水溶液A6が、第2のクロマトグラフィーカラム内を第2の末端から第1の末端へと循環している、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
第1及び/又は第2の固定相(20、50)が、水に対して非混和性の有機希釈剤において、クラウンエーテルを含む溶液で含浸させた固体支持体を含む材料で作製される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
クラウンエーテルが、ジシクロヘキサノ-18-クラウン-6、又はジベンゾ-18-クラウン-6であり、シクロへキシル又はベンジル基が、1つ又は複数の直鎖又は分岐C~C12アルキル基で置換されている、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
クラウンエーテルが、4,4’(5’)-ジ-tert-ブチルシクロヘキサノ-18-クラウン-6であり、有機希釈剤が、イソデカノールである、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
水溶液A1及びA4が、1mol/L~2mol/Lの硝酸を含む、請求項1から13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
水溶液A2が、0.01mol/L以上1mol/L未満の硝酸を含む、請求項1から14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
水溶液A2が、0.5mol/L以上1mol/L未満の硝酸を含み、工程c)が、水溶液A2による第1の固定相(20)の1度目の洗浄と、0.1mol/L以上0.5mol/L未満の硝酸を含む水溶液A2’による第1の固定相(20)の2度目の洗浄とを含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
水溶液A5が、0.1mol/L以上1mol/L未満の硝酸を含む、請求項1から16のいずれか一項に記載の方法。
【請求項18】
水溶液A5が、0.5mol/L以上1mol/L未満の硝酸を含み、工程f)が、水溶液A5による第2の固定相(50)の1度目の洗浄と、0.01mol/L以上0.5mol/L未満の硝酸を含む水溶液A5’による第2の固定相(50)の2度目の洗浄とを含む、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
水溶液A3及びA6は、少なくとも5に等しく、多くとも9に等しいpHを有する、アンモニウム又はナトリウムのクエン酸塩、シュウ酸塩又は酢酸塩の水溶液である、請求項1から18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
トリウム-228及びその娘核が、水溶液A1中で放射平衡にある、請求項1から19のいずれか一項に記載の方法。
【請求項21】
工程a)の前に、トリウム-228及びその娘核が酸性水性相にある場合、選択的に鉛を保持する固定相を含むクロマトグラフィーカラム内で、水溶液A1を循環させる工程と、クロマトグラフィーカラム内を循環していた水溶液A1を収集する工程とを含む、水溶液A1中に存在する鉛-208を除去する工程を更に含む、請求項1から20のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】