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特表2022-511408高品質の培養肉、組成物およびその生産方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】高品質の培養肉、組成物およびその生産方法
(51)【国際特許分類】
   C12N 5/071 20100101AFI20220124BHJP
   A23L 13/00 20160101ALI20220124BHJP
【FI】
C12N5/071
A23L13/00 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525007
(86)(22)【出願日】2019-11-14
(85)【翻訳文提出日】2021-06-09
(86)【国際出願番号】 IL2019051243
(87)【国際公開番号】W WO2020100143
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】62/767,525
(32)【優先日】2018-11-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521193290
【氏名又は名称】アレフ ファームス リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100114775
【弁理士】
【氏名又は名称】高岡 亮一
(74)【代理人】
【識別番号】100121511
【弁理士】
【氏名又は名称】小田 直
(74)【代理人】
【識別番号】100202751
【弁理士】
【氏名又は名称】岩堀 明代
(74)【代理人】
【識別番号】100208580
【弁理士】
【氏名又は名称】三好 玲奈
(74)【代理人】
【識別番号】100191086
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 香元
(72)【発明者】
【氏名】ラボン,ネタ
(72)【発明者】
【氏名】コーレン,イローナ
【テーマコード(参考)】
4B042
4B065
【Fターム(参考)】
4B042AC10
4B042AH01
4B042AK02
4B042AK20
4B042AP30
4B065AA90X
4B065AC20
4B065BA30
4B065BB03
4B065BB10
4B065BB20
4B065BB22
4B065BB29
4B065BB40
4B065BD22
4B065BD41
4B065BD42
4B065BD43
4B065BD50
4B065CA41
(57)【要約】
本発明は、クリーンミートまたは細胞ベースの肉とも呼ばれる培養肉の分野、特に、完全な動物由来の肉と少なくとも類似した知覚特性(色、味および芳香)と、向上した栄養価とを有する培養肉を生産するための細胞培養物に関する。本発明は、細胞培養物および高品質の培養肉を生産するための培養培地をさらに提供する。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の非ヒト動物由来細胞を含む非ヒト動物由来細胞培養物であって、前記細胞の少なくとも60%が、少なくとも1つの天然着色剤、コバラミン(ビタミンB12)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含み、前記細胞培養物が、肉のような色を特徴とする、非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項2】
前記細胞培養物の前記色が、ミオグロビンの色に類似している、請求項1に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項3】
前記非ヒト動物由来細胞が、約300nm~約700nmの1つの波長または複数の波長で吸光度を有する少なくとも1つの化合物を含む、請求項1または2に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項4】
前記少なくとも1つの天然着色剤が、少なくとも1つの非哺乳類生物から得られる抽出物である、請求項1~3のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項5】
前記少なくとも1つの天然着色剤が、カルテノイド、アントシアニン、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項1~4のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項6】
前記カルテノイドが、リコペン、カンタキサンチン、ベータ-カロテン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項5に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項7】
前記複数の細胞が、約0.1mg/100gの細胞~約100mg/100gの細胞の量の前記少なくとも1つのカルテノイドを提供する、請求項5または6に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項8】
前記複数の細胞が、約1mg/100gの細胞~約500mg/100gの細胞の量のビタミンB12を提供する、請求項1~7のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項9】
前記非ヒト動物由来細胞が、外因性鉄および/またはその塩をさらに含む、請求項1~8のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項10】
前記鉄が、第1鉄イオン、第2鉄イオン、それらの塩、およびヘムからなる群から選択される形態である、請求項8に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項11】
前記複数の細胞が、約0.01mg/100gの細胞~約50mg/100gの細胞の量の鉄またはその塩を提供する、請求項10に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項12】
前記非ヒト動物由来細胞が、酵母抽出物、細菌抽出物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の外因性サプリメントをさらに含む、請求項1~11のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項13】
前記非ヒト動物由来細胞が、葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の外因性サプリメントをさらに含む、請求項1~12のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項14】
前記ビタミンDが、ビタミンDおよびビタミンDからなる群から選択される、請求項13に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項15】
前記脂肪酸が、オメガ-3脂肪酸、オメガ-6脂肪酸、オメガ-9脂肪酸、ステアリン酸(18:0)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項13に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項16】
前記外因性サプリメントが、細胞内空間、膜内腔、膜上、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される部位に存在する、請求項1~15のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項17】
前記非ヒト動物由来細胞が、前記少なくとも1つの天然着色剤およびビタミンB12の組み合わせを含む、請求項1~16のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項18】
前記非ヒト動物由来細胞が、前記少なくとも1つの天然着色剤、ビタミンB12、ならびに鉄および/またはその塩の組み合わせを含む、請求項1~17のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項19】
前記少なくとも1つの外因性サプリメントが、食品グレードのものである、請求項1~18のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項20】
前記非ヒト動物由来細胞が、多能性幹細胞(PSC)および/またはそれから分化した細胞である、請求項1~19のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項21】
前記非ヒト動物由来細胞が、非ヒト動物体細胞および/またはそれから分化した細胞から再プログラムされた人工多能性幹細胞(iPSC)である、請求項1~19のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項22】
前記非ヒト動物由来細胞が、非胚性幹細胞(ESC)である、請求項1~19のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項23】
前記非ヒト動物由来細胞が、衛星細胞である、請求項1~19のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項24】
前記非ヒト動物由来細胞が、筋肉細胞およびその前駆細胞、脂肪細胞およびその前駆細胞、間質細胞およびその前駆細胞、内皮細胞およびその前駆細胞、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される、請求項1~21のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項25】
前記非ヒト動物が、ウシ、ヒツジ、ブタ、家禽、甲殻類、および魚からなる群から選択される、請求項1~24のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物。
【請求項26】
請求項1~25のいずれか一項に記載の非ヒト動物由来細胞培養物を含む、培養肉。
【請求項27】
前記培養肉が、食用スキャフォルドをさらに含む、請求項26に記載の培養肉。
【請求項28】
前記培養肉が、畜殺肉と類似した知覚特性を有する、請求項26または27に記載の培養肉。
【請求項29】
複数の非ヒト動物由来細胞を含む培養肉であって、前記細胞の少なくとも60%が、少なくとも1つの天然着色剤、コバラミン(ビタミンB12)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される外因性サプリメントを含み、前記培養肉が、畜殺肉のような色を特徴とする、培養肉。
【請求項30】
少なくとも1つの天然着色剤、コバラミン(ビタミンB12)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのサプリメントを含む、非ヒト動物由来細胞を増殖させるための強化細胞培養培地であって、前記サプリメントが、前記培地中で培養される細胞に肉のような色を与えるのに十分な量である、強化細胞培養培地。
【請求項31】
前記強化培地が、約300nm~約700nmの複数の波長で吸光度を有することを特徴とする、請求項30に記載の強化培地。
【請求項32】
前記培地が、少なくとも1つの天然着色剤およびコバラミン(ビタミンB12)からなるサプリメント組成物を含む、請求項30または31に記載の強化培地。
【請求項33】
前記強化培地が、鉄および/またはその塩をさらに含む、請求項30~32のいずれか一項に記載の強化培地。
【請求項34】
前記強化培地が、葉酸、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加のサプリメントをさらに含む、請求項33に記載の強化培地。
【請求項35】
前記ビタミンDが、ビタミンDおよびビタミンDからなる群から選択される、請求項34に記載の強化培地。
【請求項36】
前記少なくとも1つの脂肪酸が、オメガ-3脂肪酸、オメガ-6脂肪酸、オメガ-9脂肪酸、ステアリン酸(18:0)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される、請求項34に記載の強化培地。
【請求項37】
前記強化培地が、酵母抽出物、細菌抽出物、またはそれらの組み合わせをさらに含む、請求項30~36のいずれか一項に記載の強化培地。
【請求項38】
培養肉を生産するための方法であって、請求項30~37のいずれか一項に記載の強化培地中で非ヒト動物由来細胞を培養することと、肉のような色を特徴とする培養肉を生産することと、を含む、方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、クリーンミートまたは細胞ベースの肉または培養肉(cultivated meat)とも呼ばれる培養肉(cultured meat)の分野、特に、完全な動物由来の肉と少なくとも類似した知覚特性(色、味および芳香)と、向上した栄養価とを有する培養肉を生産するための細胞培養物に関する。本発明は細胞培養物および高品質の培養肉を生産するための培養培地をさらに提供する。
【背景技術】
【0002】
家畜、特に肉生産のためのウシの成長を維持するために、水、穀物、土地、エネルギーを含む多くの消費可能な資源が利用されている。世界の急速に増加する人口は、前述の貴重な資産の使用のさらなる増加につながるであろう。したがって、全人口を養うために必要な非ヒト動物の成長を縮小する方法で肉および肉製品を生産することが非常に望ましい。主な肉源としてのウシおよび家禽を置き換えることは、ウシおよび家禽対象を苦しませる混雑した居住環境および時には残酷な状態を防ぐので、倫理的にも有益である。これらの理由から、培養肉製品は、人道上の理由で肉を控える人々によって消費される可能性もある。培養肉は、消費される食物含有量を制御する方法でもあり、今日、飼育されている動物の多くは、成長ホルモンと抗生物質を投与されており、最終的には消費者の食卓に行き着く。また、インビトロで肉を生産することにより、タンパク質含有量、脂肪量および組成、ならびに鉄、ビタミンB12、亜鉛などを含む必要な微量元素やビタミンを制御することで、肉の栄養価を改善し、より健康的にすることができる。さらに、厳格な規制と管理された条件下で生産された肉を消費すると、汚染が伝染する可能性が低くなるため、より安全に消費できる。培養細胞の特性を視覚的、栄養的、風味と香りで肉製品の特性に少なくとも類似させ、潜在的に改善すると同時に、製品の安全性を高めることは困難な作業である。
【0003】
カロテノイドファミリーのサプリメントは、橙色/赤色/茶色で知られている。カロテノイドは、植物、藻類、および光合成細菌によって合成される天然に存在する有機色素の600を超えるメンバーのファミリーである。カロテノイドは、これらすべての生物によって脂肪やその他の基本的な有機代謝ビルディングブロックから生成される。ヒトはカロテノイドを生成することはできないが、食事からカロテノイドを蓄積することはできる。
【0004】
カロテノイドは、キサントフィル(酸素を含む)とカロテン(純粋な炭化水素であり、酸素を含まない)の2つのクラスに分けられる。すべてのカロテノイドはテトラテルペノイドであり、8つのイソプレン分子から生成され、40個の炭素原子を含んでいることを意味する。非置換のベータイオノン環を含むカロテノイド(ベータ-カロテン、アルファカロテン、ベータクリプトキサンチン、およびガンマカロテンを含む)は、ビタミンA活性を有する(つまり、レチノールに変換できる)。
【0005】
カロテンクラスのフィトエンおよびフィトフルエンカロテノイドを含む非プロビタミンAカロテノイドは、例えばリコペンなどの視覚的に着色されたカロテノイドの生合成経路における前駆体カロテノイドである。カロテノイドは、その健康増進特性で長い間認識されており、通常、それらの抗酸化作用および抗炎症作用に起因する。リコペンは、幹細胞を増殖させる細胞ための組成物中の抗酸化剤として使用されている(例えば、米国特許出願第US2016/0081917号および同第2005/0260748号)。リコペンは、食品の外因性着色剤としても使用される。
【0006】
コバラミンとしても知られているビタミンB12は、シアノ-、メチル-、デオキシアデノシル-およびヒドロキシ-コバラミンを含む多くの形態を含む。コバルトは、この水溶性ビタミンに独特の赤い色を与える。コバラミンは、ウシやヒツジのルーメン内の嫌気性微生物から合成され、ヒトは通常、食事中のB12の主な供給源である動物性食品から予め形成されたコバラミンを消費する。コバラミンは、通常、神経系の機能、ホモシステイン代謝およびDNA合成に必須である(Truswell AS.Nutr Diet.2007.64(s4):S120-S125)。コバラミンが不足すると、血球の形態学的変化ならびに血液学的および神経学的な有害な症状の発症につながる可能性がある。
【0007】
鉄は哺乳類の食事に欠かせない微量栄養素の1つである。鉄は、赤血球(erythrocyte)(赤血球(red blood cell))のヘモグロビンの成分であり、ミオグロビンの形で体中の酸素を輸送するために必要であり、筋肉内の酸素の貯蔵と使用に必要である(Geissler C et al.-2011.Nutrients.3(3):283-316)。赤身の肉に含まれる種類の鉄(ヘム鉄)は、ナッツ、種子、葉物野菜(非ヘム鉄)などの植物性食品に含まれる鉄よりも、体に吸収されやすく使用される。
【0008】
鉄分サプリメントは、体内の鉄分が低レベルであることに対する解決策である。サプリメントで頻繁に使用される鉄の形態には、硫酸第一鉄、グルコン酸第一鉄、クエン酸第二鉄、および硫酸第二鉄などの第一鉄および第二鉄塩が含まれる。溶解性が高いため、栄養補助食品中の第一鉄は第二鉄よりも生物学的に利用可能である(Murray-Kolbe LE,Beard J.In:Coates PM,Betz JM,Blackman MR,et al.,eds.Encyclopedia of Dietary Supplements.2nd ed.London and New York:Informa Healthcare;2010:432-438)。
【0009】
ビスグリシン酸第一鉄は鉄アミノ酸キレートである。これは、キレート化と呼ばれるプロセスで共有結合した第一鉄とアミノ酸グリシンの2つの分子との反応によって形成される。ビスグリシン酸第一鉄は、鉄の吸収、貯蔵を改善し、従来使用されている鉄塩よりもヘモグロビンレベルを高めると主張されている。(Bovell-Benjamin A C et al.2000.Am.J.Clin.Nutr.71:1563-1569;Layrisse M.et al.2000.J.Nutr.130(9):2195-2199&Erratum,12,3106)。ビスグリシン酸第一鉄は、副作用の報告なしに2~23mg/日の補助的な食事性鉄を提供する食品の鉄強化のために、発展途上国での多くの野外試験で使用されてきた。さらに、鉄ビスグリシネートを使用した食事性鉄補給は、1日あたり約15~120mgの鉄を提供し、鉄欠乏の幼児、成人男性、妊娠中の女性、および正常な鉄の状態の非妊娠中の女性によって十分に許容されている。(The EFSA Journal(2006)299,1-17)。ビスグリシン酸第一鉄による治療は、ヘモグロビンとフェリチンの血清レベル、ならびに強化または補給試験の開始時に鉄が不足していた個人の総鉄結合能(TIBC)と鉄貯蔵に実質的な改善をもたらしたが、鉄豊富個体において鉄過剰の証拠はなかった(Szarfarc S.C.et al.2001.Arch.Latinoam.Nutr.51:42-47)。
【0010】
酵母抽出物は、酵母細胞からの天然成分で構成されている:タンパク質、アミノ酸、炭水化物、ビタミン、およびミネラル。酵母抽出物を作るために、酵母細胞の内容物が酵素によって分解され、細胞壁が取り除かれる。酵母抽出物は、グルタメートとその誘導体をはじめとする多くの味覚成分を含む食品成分である。酵母抽出物は、複数の味覚増強特性を提供する。酵母抽出物は様々な風味のある食品、特に肉のような香りが必要な場合に人気のあるフレーバー源である(Ames JM and Elmore JS.1992.Flavour Fragr J7:89-103)。
【0011】
ルーメンフローラ抽出物は、ウシルーメンのフローラを構成する定義済みまたは未定義の微生物に由来する抽出物の多様なグループである。それらは酵素反応によって分解される。ウシでは、ルーメンが、飼料を小さな栄養素に消化してウシの血流にさらに吸収される原因となる多くの種類のバクテリアによって充填される。バクテリアの高い代謝回転は、それらの分解された残り物を消化された飼料の一部にする。群れのルーメンを培養する特定のフローラは、その肉製品の独特の味に貢献する。
【0012】
天然肉の有益な特性を損なうことなく肉の消費に取って代わり実際に肉を食べることに近い食事体験を提供できる、培養肉製品に対する大きな需要がある。
【発明の概要】
【0013】
本発明は、培養された非ヒト動物由来細胞を提供し、細胞は、細胞を構成する培養肉に「肉のような」色および官能特性を提供し、培養肉の栄養価を改善する外因性サプリメントで高められる。本発明は、培養された非ヒト動物由来細胞、培養された非ヒト動物由来細胞を含む培養肉、および培養肉を含む製品を生産するための培養培地をさらに提供する。
【0014】
本発明は、外因性サプリメントであるカロテノイド(ベータ(β)-カロテン、リコペン、カンタキサンチンを含む)およびコバラミン(ビタミンB12を含む)の少なくとも1つを含む培地でウシ由来細胞を培養すると、細胞内または細胞上でのサプリメントの取り込みならびに蓄積および/または付着し、それにより細胞の着色をもたらすという予想外の発見に部分的に基づく。また、少なくとも1つのカロテノイドとビタミンB12を含む外因性サプリメントの特定の組み合わせをウシ由来細胞の培地に添加すると、畜殺された肉に似た外観の培養肉製品が得られる。培地に鉄および/またはその塩、酵母抽出物およびミネラル(例えば、セレンおよび亜鉛およびそれらの塩)の少なくとも1つをさらに補充すると、肉のような風味および芳香、ならびに濃縮された栄養価がさらに提供される。
【0015】
非ヒト動物由来細胞を含む培養肉の基礎含有量は、完全な動物に由来する肉の含有量とは異なることを明確に理解されたい。本発明の教示は、少なくとも同等の、好ましくは完全な生物由来の肉よりも優れた栄養価を有する培養肉を提供する。
【0016】
発明の培養肉および培養肉を含む製品は、現在使用されている肉よりも有利であり、培養肉は、制御可能な含有量の外因性サプリメントを有する非ヒト動物由来細胞を含む。本発明の製品は、細胞の培養中に必要な量のサプリメントを投与することによって達成され、それにより、細胞内および/または細胞上へのサプリメントの取り込みを効率的に制御する。さらに、本発明の教示は、肉を模倣する既知の製品よりも有利であり、非ヒト動物由来細胞を含む培養肉に、外因性サプリメントを含む多くの細胞を提供し、培養肉ならびにそれを含む製品は、最終細胞含有製品に最小限の食品グレードのサプリメントが追加され、「クリーンラベル」要件に対応し得る。
【0017】
一態様によれば、本発明は、複数の非ヒト動物由来細胞を含む非ヒト動物由来細胞培養物を提供し、細胞の少なくとも60%は、少なくとも1つの天然着色剤、コバラミン(ビタミンB12)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含み、細胞培養物は、肉のような色を特徴とする。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0018】
天然着色剤とビタミンB12のそれぞれが、細胞の肉のような色に寄与することができることは明確に理解されるべきである。
【0019】
特定の例示的な実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、少なくとも1つの天然着色剤とビタミンB12との組み合わせを含む。
【0020】
特定の実施形態によれば、細胞培養物の色は、ミオグロブリンの色に類似している。ミオグロビンの色は、その酸化還元状態に依存する(AMSA Meat Color Measurement Guidelines,Revised December 2012)。
【0021】
特定の実施形態によれば、細胞培養物の色は茶色である。特定の実施形態によれば、細胞培養物の色は赤から明るい赤である。特定の実施形態によれば、細胞培養物の色はピンク紫がかった色である。
【0022】
特定の例示的な実施形態によれば、細胞培養物の色は、茶色から赤色の範囲で変化する。これらの実施形態によれば、細胞培養物の細胞は、約300nm~約700nmの複数の波長で吸光度を有する少なくとも1つの化合物を含む。
【0023】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、鉄および/またはその塩をさらに含む。
【0024】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加の外因性サプリメントをさらに含む。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0025】
特定の例示的な実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、少なくとも1つの着色剤、ビタミンB12、ならびに鉄および/またはその塩の組み合わせを含む。
【0026】
特定の実施形態によれば、ビタミンDは、ビタミンDおよびビタミンDからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0027】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約1mg/100gの細胞~約500mg/100gの細胞の量のビタミンB12を提供する複数の細胞を含む。いくつかの実施形態によれば、ビタミンB12は、5mg/100gの細胞~約100mg/100gの細胞の量である。
【0028】
特定の例示的な実施形態によれば、オメガ3[ドコサヘキサエン酸(DHA)、エイコサペンタエン酸(EPA)、アルファ-リノレン酸(ALA)]、オメガ6[リノール酸(LA)、ガンマ-リノレン酸(GLA)、カレンジン酸、アラキドン酸]、オメガ9[エルカ酸/cis-13-ドコセン酸、オレイン酸、エライジン酸]からなる群から選択される不飽和脂肪酸中の脂肪酸およびそれらの任意の組み合わせ。特定の実施形態によれば、脂肪酸は飽和脂肪酸である。特定の例示的な実施形態によれば、飽和脂肪酸はステアリン酸(18:0)である。
【0029】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、少なくとも2つ、または少なくとも3つの不飽和脂肪酸をさらに含む。
【0030】
特定の実施形態によれば、天然着色剤は、少なくとも1つの非哺乳類生物から得られる抽出物である。特定の実施形態によれば、非哺乳類生物は、植物、真菌、および藻類からなる群から選択される。
【0031】
特定の例示的な実施形態によれば、天然着色剤はカロテノイドである。特定の実施形態によれば、カロテノイドは、カロテンおよびキサントフィルからなる群から選択される。追加の実施形態によれば、天然着色剤はアントシアニンである。
【0032】
いくつかの実施形態によれば、カロテノイドは、α-カロテン、β-カロテン、リコペン、カンタキサンチン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0033】
いくつかの実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約0.1mg/100gの細胞~約100mg/100gの細胞の量の少なくとも1つのカロテノイドを提供する複数の細胞を含む。
【0034】
特定の実施形態によれば、カロテノイドは、リコペン、ベータ-カロテン、カンタキサンチン、ビキシン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。特定の例示的な実施形態によれば、カロテノイドはリコペンである。特定の追加の例示的な実施形態によれば、カロテノイドはベータ-カロテンである。さらに特定の例示的な実施形態によれば、カロテノイドはカンタキサンチンである。追加の例示的な実施形態によれば、カロテノイドはビキシンである。さらなる例示的な実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、リコペンとカンタキサンチンの組み合わせを含む。
【0035】
特定の実施形態によれば、培養物の非ヒト動物由来細胞は、少なくとも1つの天然着色剤とビタミンB12の組み合わせを含む。特定の例示的な実施形態によれば、培養物の非ヒト動物由来細胞は、少なくとも1つのカロテノイドおよびビタミンB12の組み合わせを含む。特定の現在の例示的な実施形態によれば、カロテノイドは、ベータ-カロテン、リコペン、およびカンタキサンチンからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0036】
さらなる例示的な実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、ビタミンB12、カンタキサンチン、およびリコペンの組み合わせを含む。
【0037】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約1mg/100gの細胞~約100mg/100gの細胞のベータ-カロテンの量を提供する複数の細胞を含む。いくつかの実施形態によれば、ベータ-カロテンは、10mg/100gの細胞~約50mg/100gの細胞の量である。
【0038】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約0.1mg/100gの細胞~約50mg/100gの細胞のリコペンの量を提供する複数の細胞を含む。いくつかの実施形態によれば、リコペンは、1mg/100gの細胞~約20mg/100gの細胞の量である。
【0039】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約1mg/100gの細胞~約100mg/100gの細胞のカンタキサンチンの量を提供する複数の細胞を含む。いくつかの実施形態によれば、カンタキサンチンは、10mg/100gの細胞~約50mg/100gの細胞の量である。
【0040】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約0.01mg/100gの細胞~約50mg/100gの細胞の鉄および/またはその塩の量を提供する複数の細胞を含む。特定の実施形態によれば、鉄は、約0.1mg/100gの細胞~約40mg/100gの細胞の量である。特定の実施形態によれば、鉄の量は、約0.5mg/100gの細胞~約5mg/100gの細胞の量である。
【0041】
特定の実施形態によれば、鉄は、第一鉄イオン、第二鉄イオン、それらの塩およびヘムからなる群から選択される形態である。特定の例示的な実施形態によれば、鉄は、ビスグリシン酸第一鉄の形態である。さらなる例示的な実施形態によれば、鉄はヘムの形態である。
【0042】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、亜鉛および/またはその塩をさらに含む。特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約0.1mg/100gの細胞~約10mg/100gの細胞の亜鉛の量を提供する複数の細胞を含む。特定の例示的な実施形態によれば、複数の細胞は、約0.5mg/100gの細胞~約5mg/100gの細胞の亜鉛の量を提供する。
【0043】
非ヒト動物由来細胞における外因性サプリメントの量を測定するための当技術分野で知られている任意の方法を、本発明の教示に従って使用することができる。本発明の特定の例示的な実施形態によれば、外因性サプリメントは着色され、それにより、その培養培地から細胞内および/または細胞上への取り込み、および/または細胞内または細胞上の量は、各サプリメントに固有の波長で分光光度計によって測定できる。
【0044】
本発明のある量のサプリメントを含む細胞または複数の細胞は、サプリメントを細胞内に含む、細胞膜内に含む、細胞膜または他の細胞部分に付着した、およびそれらの任意の組み合わせを指すことが明確に理解されるべきである。
【0045】
特定の実施形態によれば、本発明の外因性サプリメントは、食品グレードのサプリメントである。外因性サプリメントは、天然資源から単離することも、合成することもできる。特定の現在の例示的な実施形態によれば、外因性サプリメントは、ヒトの消費に適した食品グレードのものである。
【0046】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、多能性幹細胞(PSC)および/またはそれから分化した細胞である。
【0047】
さらなる実施形態によれば、PSCは、非ヒト動物体細胞から再プログラムされた人工PSC(iPSC)および/またはそれから分化した細胞である。
【0048】
他の実施形態によれば、PSCは非胚性幹細胞(ESC)である。
【0049】
他の実施形態によれば、PSCは胚性幹細胞である。
【0050】
いくつかの実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、筋肉細胞に分化した多能性幹細胞である。特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、脂肪細胞(脂肪細胞)および/またはその前駆細胞に分化した多能性幹細胞である。いくつかの実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、間質細胞(結合組織)および/またはその前駆細胞に分化した多能性幹細胞である。特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、内皮細胞(血管)および/またはその前駆細胞に分化した多能性幹細胞である。
【0051】
いくつかの実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、筋肉細胞および/またはその前駆細胞に分化した衛星細胞である。
【0052】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、筋肉細胞、脂肪細胞、間質細胞、線維芽細胞、周皮細胞、内皮細胞、およびそれらの前駆細胞からなる群から選択される。
【0053】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物は、ウシ、ヒツジ、ブタ、家禽、甲殻類および魚からなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。それぞれの可能性は、本発明の別個の実施形態を表す。
【0054】
特定の例示的な実施形態によれば、非ヒト動物はウシである。いくつかの例示的な実施形態によれば、ウシは、Bos Taurus種のものである。
【0055】
特定の実施形態によれば、上記の実施形態のいずれか1つの細胞培養物は、培養肉を形成する。培養肉は、本発明の細胞培養物からなり得るか、またはスキャフォルドを含むがこれらに限定されない追加の化合物を含み得る。培養肉で使用するために当技術分野で知られている任意の食用スキャフォルドは、食用タンパク質スキャフォルド、食用ヒドロゲルスキャフォルド、食用多糖スキャフォルドなどを含み、本発明の細胞培養物で使用することができる。いくつかの実施形態によれば、スキャフォルドは、植物、藻類、または微生物に由来する。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0056】
特定の実施形態によれば、細胞培養物は、少なくとも1つの追加の食品グレードのサプリメントをさらに含む。適切な追加のサプリメントには、飽和脂肪酸、不飽和脂肪酸、脂質、香料、着色剤、テクスチャラント、食用繊維などが含まれるが、これらに限定されない。
【0057】
特定の例示的な実施形態によれば、培養肉は、筋肉細胞およびその前駆細胞、脂肪細胞およびその前駆細胞、間質細胞およびその前駆細胞、内皮細胞およびその前駆細胞を含む非ヒト動物由来細胞の組み合わせを含む。
【0058】
別の態様によれば、本発明は、少なくとも1つの天然着色剤、コバラミン(ビタミンB12)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含む非ヒト動物由来細胞を提供し、ここで、ウシ由来細胞は、肉のような色を特徴とする。
【0059】
さらなる態様によれば、本発明は、複数の非ヒト動物由来細胞を含む培養肉を提供し、細胞の少なくとも60%は、少なくとも1つの天然着色剤、コバラミン(ビタミンB12)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含み、培養肉は、肉のような色を特徴とする。特定の例示的な実施形態によれば、細胞培養物は培養肉を形成する。
【0060】
特定の実施形態によれば、外因性サプリメントは該細胞の細胞内空間、膜内腔、細胞膜上、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される部位に存在する。
【0061】
細胞の色とサプリメントの濃度は、上記のとおりである。
【0062】
さらに別の態様によれば、本発明は、非ヒト動物由来細胞を増殖させるための濃縮細胞培養液体培地を提供し、培地は、少なくとも1つの天然着色剤、シアノコバラミン(ビタミンB12)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのサプリメントを含み、サプリメントは、非ヒト動物由来細胞に肉のような色を与えるのに十分な量である。
【0063】
特定の実施形態によれば、細胞培養培地は、少なくとも1つの着色剤およびビタミンB12を含むサプリメントの組み合わせを含む。
【0064】
特定の実施形態によれば、細胞培養培地は、少なくとも1つの着色剤およびビタミンB12からなるサプリメントの組み合わせを含む。
【0065】
特定の実施形態によれば、濃縮細胞培養液体培地は、約300nm~約700nmの間の複数の波長での吸光度を有することを特徴とする。
【0066】
さらに別の態様によれば、本発明は、非ヒト動物由来細胞を増殖させるための濃縮細胞培養液体培地であって、少なくとも1つの天然着色剤と少なくとも1つのコバラミン(ビタミンB12)の組み合わせを含む濃縮細胞培養液体培地を提供する。
【0067】
特定の実施形態によれば、本発明の強化培地は、鉄および/またはその塩、酵母抽出物、細菌抽出物、またはそれらの組み合わせからなる群から選択されるサプリメントをさらに含む。
【0068】
少なくとも1つの天然着色剤は、上記のとおりである。
【0069】
いくつかの実施形態によれば、葉酸、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの不飽和脂肪酸、少なくとも1つの飽和脂肪酸、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの追加のサプリメントをさらに含む濃縮細胞培養液体培地。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0070】
特定の実施形態によれば、ビタミンDは、ビタミンDおよびビタミンDからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0071】
特定の例示的な実施形態によれば、不飽和脂肪酸は、オメガ3脂肪酸、オメガ6脂肪酸、オメガ9脂肪酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。特定の実施形態によれば、濃縮細胞培養液体培地は、少なくとも2つの不飽和脂肪酸を含む。特定の追加または代替の実施形態によれば、飽和脂肪酸はステアリン酸である。
【0072】
上記の培地のサプリメントは、酵母または細菌抽出物に存在するサプリメントに追加されることを明確に理解されたい。
【0073】
いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約0.1μg/ml~約50mg/mlの濃度の少なくとも1つのカロテノイドを含む。
【0074】
特定の実施形態によれば、培地中のカロテノイド濃度は、約1μg/ml~約10mg/mlである。特定の例示的な実施形態によれば、強化培地は、約1μg/ml~約5mg/mlの濃度の少なくとも1つのカロテノイドを含む。特定のさらなる例示的な実施形態によれば、強化培地は、約1μg/ml~約1.5mg/mlの濃度の少なくとも1つのカロテノイドを含む。
【0075】
いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約0.5mg/ml~100mg/mlの濃度のビタミンB12を含む。特定の例示的な実施形態によれば、強化培地は、約1mg/mlから約50mg/mlの濃度のビタミンB12を含む。他の例示的な実施形態によれば、強化培地は、約1mg/mlから約15mg/mlの濃度のビタミンB12を含む。
【0076】
いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約10μg/ml~約5g/mlの濃度の酵母抽出物を含む。特定の例示的な実施形態によれば、強化培地は、約50μg/ml~約1g/mlの濃度の酵母抽出物を含む。特定の例示的な実施形態によれば、強化培地は、約500μg/ml~約50mg/mlの濃度で酵母抽出物を含む。
【0077】
いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約100μg/ml~約1,250μg/mlの濃度の鉄および/またはその塩を含む。特定の例示的な実施形態によれば、強化培地は、約100μg/ml~約1000μg/mlの濃度で鉄塩を含む。
【0078】
いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約0.1μg/ml~約50μg/mlの濃度の亜鉛またはその塩を含む。いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約0.1μg/ml~約15μg/mlの濃度の亜鉛またはその塩を含む。
【0079】
さらに追加の態様によれば、本発明は、肉のような色を特徴とする培養肉を生産するための方法を提供し、この方法は、本発明の強化培地中で非ヒト動物由来細胞を培養することを含む。
【0080】
特定の実施形態によれば、強化培地は、少なくとも1つの天然着色剤、ビタミンB12、鉄および/またはその塩、酵母抽出物、細菌抽出物、またはそれらの組み合わせを含む。これらの実施形態によれば、培養肉は、非ヒト動物由来の肉と類似した知覚特性によってさらに特徴づけられる。
【0081】
本明細書に開示される態様および実施形態のそれぞれの任意の組み合わせは、本発明の開示内に明示的に包含されることを理解されたい。
【0082】
本発明の他の目的、特性および利点は、以下の記載および図面から明らかになるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0083】
図1】培地からウシ細胞へのベータ-カロテンの取り込みを示す。図1A:1mgの増殖培地あたり100μgの初期濃度のベータ-カロテン。図1B:1mgの増殖培地あたり10μgの初期濃度のベータ-カロテン。
図2】1mgの増殖培地あたり750μgのビスグリシン酸第一鉄を含む培地で24時間インキュベートしたウシ細胞内のビスグリシン酸第一鉄の蓄積を示す。
図3】1mgの増殖培地あたり1000μgのシアノコバラミン(Cbl)を含む培地で24時間インキュベートしたウシ細胞内のシアノコバラミン(Cbl)の蓄積を示す。
図4】エライジン酸とDHAの組み合わせに6日間曝露されたBEF細胞の写真を示す。脂肪滴(オイルレッドOを含む)は、細胞内に濃い灰色のポットとして見える。
【発明を実施するための形態】
【0084】
最近の10年間で、培養肉とその製品の必要性が認識されてきたが、高品質で手頃な価格の製品は入手できない。本発明は、培養肉を形成する非ヒト動物由来細胞培養物の増殖速度、味、芳香、色および栄養価を改善し、そのような製品を一歩先に得る努力をする組成物および方法を提供する。
【0085】
便宜上および明確にするために、明細書、実施例、および特許請求の範囲で使用される特定の用語が本明細書に記載される。
【0086】
定義
「クリーンミート」または「培養肉(cultured meat)」または「インビトロ肉」という用語は、本明細書では、畜殺された動物からではなく、インビトロの非ヒト動物細胞培養から増殖した肉を説明するために交換可能に使用される。インビトロ動物細胞培養から増殖した肉を説明するために当技術分野で使用できる追加の用語には、実験室で増殖した肉、試験管肉、管ステーキ、合成肉、細胞培養肉、組織操作された肉、操作された肉、人工肉、肉アナログおよび人工肉を含む。
【0087】
本明細書で使用される場合、サプリメントに関する「外因性」という用語は、培養培地から細胞によって取り込まれる物質/化合物を指す。外因性サプリメントは、細胞内に天然に存在する化合物(内因性化合物)または非ヒト動物由来細胞に天然に見られない化合物(異種化合物)であり得る。
【0088】
本明細書で使用される場合、「天然着色剤」という用語は、植物、藻類、真菌などを含む天然源に見出され得る色素を指す。本発明の天然着色剤は、天然源に由来することができるか、または化学的に合成することができることを明確に理解されたい。
【0089】
単独で使用される場合の「肉」、「肉のような」、「非ヒト動物由来の肉」という用語は、本明細書では互換的に使用され、ウシ、ヒツジ、ブタ、家禽、甲殻類および魚を含む非ヒト動物由来の肉を指す。
【0090】
本明細書で使用される場合、肉および/または培養肉に関する「知覚特性」という用語は、真の肉/培養肉の外観、味、香り、食感を指す。
【0091】
本明細書で使用される場合、「多能性幹細胞(PSC)」という用語は、無制限に増殖することができ、体内にすべての他の細胞を生じさせることができる細胞を指す。
【0092】
本明細書で使用される場合、「人工多能性幹細胞(iPSC)」という用語は、再プログラミングプロセスによって分化した細胞から直接生成されるタイプの多能性幹細胞を指す。
【0093】
本明細書で使用される場合、「胚性幹細胞(ESC)」という用語は、胚盤胞に由来するタイプの多能性幹細胞を指す。
【0094】
「再プログラミング」という用語は、ある特定の細胞型から別の細胞型への変換を指す。本発明の特定の実施形態によれば、再プログラミングは、体細胞型の、人工多能性幹細胞、またはiPSCとして知られる多能性幹細胞型への変換である。
【0095】
一態様によれば、本発明は、複数の非ヒト動物由来細胞を含む細胞培養物を提供し、細胞の少なくとも60%は、少なくとも1つの天然着色剤、コバラミン(ビタミンB12)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含み、細胞培養物は、肉のような色を特徴とする。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0096】
特定の実施形態によれば、細胞の少なくとも60%は、外因性の鉄またはその塩をさらに含む。
【0097】
特定の実施形態によれば、細胞培養物の非ヒト動物由来細胞は、少なくとも1つの天然着色剤およびビタミンB12の組み合わせを含む。特定の例示的な実施形態によれば、細胞培養物の非ヒト動物由来細胞は、少なくとも1つの天然着色剤、ビタミンB12、および鉄またはその塩の組み合わせを含む。
【0098】
特定の実施形態によれば、複数の非ヒト動物由来細胞の少なくとも60%は、少なくとも1つの外因性サプリメントを含む。特定の実施形態によれば、複数の非ヒト動物由来細胞の少なくとも65%、70%、75%、80%は、少なくとも1つの外因性サプリメントを含む。他の実施形態によれば、複数の非ヒト動物由来細胞の少なくとも85%は、少なくとも1つの外因性サプリメントを含む。さらに追加の実施形態によれば、複数の非ヒト動物由来細胞の60~100%が、少なくとも1つの外因性サプリメントを含む。他の実施形態によれば、複数の非ヒト動物由来細胞の60~90%、または60~80%または60~70%は、少なくとも1つの外因性サプリメントを含む。
【0099】
特定の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1つの天然着色剤、コバラミン(ビタミンB12)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される外因性サプリメントを含む非ヒト動物由来細胞を提供し、非ヒト動物由来細胞は、肉のような色を特徴とする。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0100】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、鉄またはその塩をさらに含む。
【0101】
特定の実施形態によれば、本発明は、少なくとも1つの天然着色剤、コバラミン(ビタミンB12)、鉄またはその塩、酵母抽出物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される外因性サプリメントを含む非ヒト動物由来細胞を提供し、非ヒト動物由来細胞は、肉のような色を特徴とする。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0102】
特定の実施形態によれば、本発明は、複数の非ヒト動物由来細胞を含む培養肉を提供し、細胞は、少なくとも1つの天然着色剤、コバラミン(ビタミンB12)、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含み、培養肉は、肉のような色を特徴とする。いくつかの実施形態によれば、培養肉は、複数の非ヒト動物由来細胞を含み、細胞は、鉄またはその塩をさらに含む。さらに別の実施形態によれば、培養肉は、複数の非ヒト動物由来細胞を含み、細胞は、少なくとも1つの天然着色剤、コバラミン(ビタミンB12)、鉄またはその塩、酵母抽出物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含み、培養肉は、肉のような色を特徴とする。特定の例示的な実施形態によれば、複数の非ヒト動物由来細胞が培養肉を形成する。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0103】
特定の実施形態によれば、細胞培養物および/または培養肉の色は、ミオグロビンの色に類似している。特定の実施形態によれば、細胞培養物および/または培養肉の色は、赤身の肉の切り身に似ている。特定の実施形態によれば、細胞培養物および/または培養肉の色は、畜殺された肉に似ている。特定の実施形態によれば、細胞培養物および/または培養肉の色は茶色である。特定の実施形態によれば、細胞培養物および/または培養肉の色は、赤から明るい赤である。特定の実施形態によれば、細胞培養物および/または培養肉の色はピンク紫がかった色である。
【0104】
特定の例示的な実施形態によれば、細胞培養物および/または培養肉の色は、茶色から赤色の範囲で変化する。
【0105】
特定の実施形態によれば、細胞培養物および/または培養肉の非ヒト動物由来細胞は、葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される外因性サプリメントをさらに含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0106】
特定の実施形態によると、ビタミンDは、ビタミンDおよびビタミンDからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0107】
反芻動物の腸に到達する脂肪酸のプロファイルは、動物が消費したものとは大きく異なる。これは、細菌活動の結果としてルーメン内で発生する広範なバイオ水素化によるものである(Drackley,J.K.Overview of Fat Digestion and Metabolism in Dairy Cows;University of Illinois:Urbana,IL,USA,2007;pp.1-9)。有利なことに、本発明の教示は、非ヒト動物由来細胞によって取り込まれる脂肪酸プロファイルを制御することを可能にし、したがって、予め設定された所望の脂肪酸プロファイルを有する培養肉およびその製品を提供する。
【0108】
特定の実施形態によれば、脂肪酸は、DHA、EPAおよびALAを含むがこれらに限定されないオメガ3脂肪酸、LA、GLA、カレンジン酸、およびアラキドン酸を含むがこれらに限定されないオメガ6脂肪酸、エルカ酸/シス-13-ドコセン酸、オレイン酸およびエライジン酸を含むがこれらに限定されないオメガ9脂肪酸、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される不飽和脂肪酸である。特定の実施形態によれば、脂肪酸は飽和酸である。いくつかの実施形態によれば、飽和酸はステアリン酸である。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0109】
ステアリン酸は独特の飽和脂肪酸であり、食品に見出される他の飽和脂肪酸とは対照的に、血中のコレステロール濃度を上昇させるが、効果が異なり、血中脂肪の増加を引き起こさない。
【0110】
特定の実施形態によれば、細胞培養物および/または培養肉の非ヒト動物由来細胞は、少なくとも2つの脂肪酸をさらに含む。
【0111】
培養肉製品を市場に投入する上での障害の1つは、顧客が見慣れた肉の外観を求めているため、その外観である。本発明の培養された非ヒト動物由来細胞は、天然着色剤およびビタミンB12のうちの少なくとも1つを含み、これらは、完全な動物由来の肉を模倣する色を細胞に提供する。さらに、これらの特定の着色化合物は、色に加えて消費者にとって有益な価値があるために選択される。
【0112】
肉の色はいくつかの方法で測定できる。新鮮な動物由来の肉の色は、主に3つの肉色素の相対的な比率によって決まる:紫色の還元ミオグロビン(Mb)、赤色のオキシミオグロビン(MbO)、茶色のメトミオグロビン(MetMb)。特定の方法によれば、580nm:630nmでの吸光度の比が決定され、1.0を超える比はより多くの赤みを示す(Strange,E D et al.1974.Food Sci.39:988-992)。2番目の方法は、650/570nmの比率を決定することである。
【数1】
1.1の値は硬化した色がないことを示し、
【数2】
1.6は中程度のフェードを示し、
【数3】
1.7~2.0は硬化した色が目立つことを示し、
【数4】
2.2~2.6は優れた硬化色を示す(Hunt,M.C.,およびD.H.Kropf.1988.未公開データ)。
【0113】
別の方法は、特定の波長での吸光度に基づくのではなく、CIEシステムとも呼ばれる三刺激値の測定に基づいている。これは、ヒトの目と脳の知覚を模倣することによって、一種の精神物理学的サンプル分析を実行するように設計された比色法である。この方法は、L*a*b*の座標値に定量化されたヒトの目の3つの原色受容体に基づいている。a*/b*の比率が大きい(またはb*/a*が減少している)場合は、赤みが多く、変色が少ないことを示す(Setser,C S.1984.J.Food Qual.6:183-197)。L*:明るい対暗いであり、低い数値(0~50)は暗いことを示し、高い数値(51~100)は明るいことを示す。
【0114】
a*:赤色対緑色であり、正の数は赤を示し、負の数は緑を示す。
【0115】
b*:黄色対青色であり正の数は黄色を示し、負の数は青色を示す。
【0116】
L*C*h色空間はL*a*b*に似ているが、直交座標の代わりに円筒座標を使用して、色の記述が異なる。
【0117】
この色空間では、L*は明度を表し、C*は彩度(彩度(color saturation))を表し、hは色相角(0~360°)を表す。
【0118】
C*:彩度-スケール0~100。値が大きいほど、試料中の色素量が多いことを表す。
【0119】
hスケール:色相角(0-360°)。0(=360°)付近のh値は赤色を示す。180°付近のh値は青色を示す。
【0120】
彩度と色相は、L*a*b*のa*座標とb*座標から計算される。明度(ΔL*)、彩度(ΔC*)、および色相(ΔH*)のデルタは、正(+)または負(-)の場合がある。これらは次のように表される。
ΔL*(L*試料からL*標準を引いたもの)=明度と暗さの差:
(+)=より明るい、(-)=より暗い;
ΔC*(C*試料からC*標準を引いたもの)=彩度の差:
(+)=より明るい、(-)=より鈍い;
ΔH*(H*試料からH*標準を引いたもの)=色相の差。
【0121】
当技術分野で知られている、本発明の非ヒト動物由来細胞培養物および/または培養肉の色を測定するための任意の方法を、本発明の教示に従って使用することができる。
【0122】
特定の実施形態によれば、細胞培養物は、約300nmから約700nmの波長または複数の波長での吸光度を有する少なくとも1つの化合物を含む。コバラミン(ビタミンB12)の吸光度のピークは361nmにあり、ベータカロテンの吸光度のピークは450nm、480nm、および520nmにあり、リコペンの吸光度のピークは360nm、443nm、471nm、502nmにあり、カンタキサンチンのピークは480nmにある。
【0123】
天然着色剤色素または色付与化合物のスペクトル吸光度を測定するための当技術分野で知られている任意の方法を、本発明の教示に従って使用することができる。
【0124】
いくつかの実施形態によれば、着色化合物の含有量は、当技術分野で知られているように、化学反応および/またはHPLCおよび/またはUPLCによって測定される。
【0125】
いくつかの実施形態によれば、色素は最初に細胞から抽出され、色素抽出物の吸光度は分光光度計によって測定される。他の実施形態によれば、色素抽出物の吸光度は比色計によって測定される。
【0126】
特定の例示的な実施形態によれば、天然着色剤はカロテノイドである。
【0127】
特定の例示的な実施形態によれば、本発明の教示による非ヒト動物由来細胞培養物および/または培養肉に色を提供するカロテノイドは、α-カロテン、β-カロテン、リコペン、クリプトモナキサンチン、アロキサンチン、ゼアキサンチン、ビオラキサンチン、α-ゼアキサンチン、リコペルセン、ヘキサヒドロリコペン、トルレン、シンシアキサンチン、ペクテノキサンチン、クラスタキサンチン、ガザニアキサンチン、OH-クロロバクテリア、ロロキサンチン、ルテイン、リコキサンチン(warmingol)、サプロキサンチン、オシラキサンチン、フレキサントフィル、ロドビブリン、スフェロイデン、ジアジノキサンチン、ルテオキサンチン、ムタトキサンチン、シトロキサンチン、ゼアキサンチンフラノキシド、ネオクロム、フォリアクロム、トロリクロム、クロレラキサンチン、カプサンチン、カプソルビン、クリプトカプシン、2,2’-ジケトスピリロキサンチン、エキネノン、3’-ヒドロキシエキネノン、フレキシキサンチン、3-OH-カンタキサンチン(アドニルビン、フェニコキサンチン)、ヒドロキシスフェリオデノン、オケノン、ペクテノロン、フェニコンスポナキサンチン、アスタキサンチン、フコキサンチン、イソフコキサンチン、フィサリアン、シフォニン、β-アポ-2’-カロテナール、アポ-2-リコペナール、アポ-6’-リコペナール、アザフリンアルデヒド、ビキシン、シトラナキサンチン、クロセチン、クロセチンセミアルデヒド、クロアポ-6’-リコペノエート、パラセントロン、シンタキサンチン、アクチニオエリトリン、ペリジニン、ピロキサンチニノール、セミα-カロテノン、セミ-3-カロテノン、トリファシアキサンチン、レトロカロテノイドおよびレトロアポカロテノイド、エシュショルツキサンチン、エシュショルツキサントン、ロドキサンチン、タンゲラキサンチン、ノナプレノキサンチン、デカプレノキサンチン、C.p.4502-[4-ヒドロキシ-3-(ヒドロキシメチル)-2-ブテニル]-2’-(3-メチル-2-ブテニル)-b、b-カロテン、C.p.4732’-(4-ヒドロキシ-3-メチル-2-ブテニル)-2-(3-メチル-2-ブテニル)-3’,4’-ジデヒドロ-1’,2’-ジヒドロ-b,y-カロテン-1’-オール、およびバクテルベリンからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0128】
特定の実施形態によれば、カロテノイドは、ベータ-カロテン、リコペン、カンタキサンチン、ビキシン、ベタレイン、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0129】
特定の実施形態によれば、カロテノイドは、カロテンリコペンである。
【0130】
リコペンは、確立された抗酸化特性を持つ天然の赤色色素分子である。合成リコペンおよび天然由来のリコペンは、様々な食品の栄養補助食品として0.5~7%の範囲のレベルで使用された場合、U.S.FDAによって安全であると報告されている(一般に安全と認められている、GRAS(Generally Recognized as Safe))。安全性試験では、3g/(kg*d)までの食事性または配合リコペン(Trumbo,P.R.J.Nutr.2005,135,2060S-2061S)の摂取レベルで有害作用は観察されなかった。
【0131】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約0.1mg/100gの細胞~約50mg/100gの細胞の量のリコペンを提供する複数の細胞を含む。いくつかの実施形態によれば、リコペンは、1mg/100gの細胞~約20mg/100gの細胞の量である。
【0132】
特定の実施形態によれば、カロテノイドはキサントフィルカンタキサンチンである。
【0133】
カンタキサンチンは、キサントフィルグループに属する赤橙色のカロテノイドである。この天然に存在する色素は、バクテリア、藻類、およびいくつかの真菌に存在する。カンタキサンチンは、フラミンゴの羽、鯉の皮、甲殻類の殻の色にも関与する。カンタキサンチンは、飼料添加物として家禽(ブロイラー、産卵鶏)で広く使用されている。カンタキサンチンは、鶏の皮、卵黄、鮭、鱒の色を改善するために動物飼料に添加される。合成カンタキサンチンは、自然と同一の化合物である。合成化合物は、動物由来の食品に特徴的な赤橙の色相を与える。カロテノイドのサイズ、形状、または形態も、それらの着色特性において重要な役割を果たす。さらに、カロテノイドとタンパク質の相互作用は、カンタキサンチンの様々な赤色の原因である。(Esatbeyoglu,T.,&Rimbach,G.2016.Molecular Nutrition & Food Research,61(6),1600469.doi:10.1002/mnfr.201600469)。米国食品医薬品局によると、カンタキサンチンの推奨される上限用量は、固形または半固形食品1ポンドあたりまたは液体食品1パイントあたり30ミリグラムである。
【0134】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約1mg/100gの細胞~約100mg/100gの細胞の量のカンタキサンチンを提供する複数の細胞を含む。いくつかの実施形態によれば、カンタキサンチンは、10mg/100gの細胞~約50mg/100gの細胞の量である。
【0135】
特定の実施形態によれば、カロテノイドは、カロテンベータ-カロテンである。
【0136】
ベータ-カロテン(またはβカロテン)は、動物では合成されないが、植物や微生物によって生合成されるイソプレノイド化合物である。ベータ-カロテンは、ヒトのカロテノイドの主要な既知の機能であるビタミンAの重要な供給源として機能する。2012年4月20日に公開されたFDA情報によると、β-カロテンはGRASとして確認されている。栄養補助食品や着色料として使用できる。抗酸化栄養素としてのβ-カロテンの使用も許可されている。
【0137】
ビタミンAの方程式は次のとおりである。1μgのレチノール=6μgのベータ-カロテン。ビタミンAの推奨上限は3mg/日であり、これは18mg/日のベータ-カロテンを意味する。
【0138】
さらに、毎日30mgを超えるベータ-カロテンを摂取すると、皮膚(足の裏や手のひらを含む)の黄色がかった色を特徴とする高カロテン血症を引き起こす可能性がある。これは無害で可逆的である(Mason,P.2001.Dietary Supplements.Pharmaceutical press,London)。
【0139】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約1mg/100gの細胞~約100mg/100gの細胞の量のベータ-カロテンを提供する複数の細胞を含む。いくつかの実施形態によれば、ベータ-カロテンは、10mg/100gの細胞~約50mg/100gの細胞の量である。
【0140】
以下の実施例のセクションに例示されるように、細胞は、細胞の色および栄養価の両方に影響を与える、ベータ-カロテン、リコペン、カンタキサンチン、および/またはビタミンB12からなる群から選択される外因性サプリメントで強化された培地でロードされた。濃縮された細胞は、有益な量の前記栄養素を提供する。
【0141】
いくつかの実施形態によれば、カロテノイドはビキシンである。
【0142】
アナトーに含まれるカロテノイドファミリーのもう1つのメンバーであるビキシンは、熱帯植物のベニノキ(Bixa orellana)の種子から得られる天然の食用色素である。ベニノキの種子およびそれらから得られた抽出物は、ヨーロッパおよび北米で食品着色料として200年以上使用されており、食品に赤橙黄色の着色を与える(Smith,JおよびWallin,H.2006.Annatto Extracts:Chemical and Technical Assessment)。今日、ビキシンは世界中で使用されている主な自然色の中で2番目に位置する(Giridhar P.およびParimalan RA.Asia Pac J Mol Biol Biotechnol.2010.18:77~79;Chuyen H V and Hoi N T.Eun JB.Int J Food Sci Tech.2012.47:1333-1338)。両方の色サプリメントは、FDAと欧州食品安全機関(EFSA)の両方による使用が承認されている。
【0143】
追加の特定の例示的な実施形態によれば、天然着色剤は、少なくとも1つのベタレインである。いくつかの実施形態によれば、ベタレインは、ベタシアニンおよびベタキサンチンからなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、ベタシアニンは、ベタニン、イソベタニン、プロベタニン、およびネオベタニンからなる群から選択される。いくつかの実施形態によれば、ベタキサンチンは、ブルガキサンチン、ミラキサンチン、ポルチュラキサンチン、およびインジカキサンチンからなる群から選択される。
【0144】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、少なくとも1つのベタレインの約0.1mg/100grの細胞~約600mg/100grの細胞の量のベタレインを提供する複数の細胞を含む。
【0145】
ベタレインは、ナデシコ目の植物に見られる赤色と黄色のインドール由来色素のクラスであり、アントシアニン色素に取って代わる。ベタレインには2つのカテゴリーがある。ベタニン、イソベタニン、プロベタニン、ネオベタニンを含む、赤みがかった色から紫色のベタシアニンと、ブルガキサンチン、ミラキサンチン、ポルチュラキサンチン、およびインジカキサンチンを含む、黄色から橙色のベタキサンチンとである。ベタレインは、食品着色料、特にビート由来のベタニンとして一般的に使用されている。最近、ベタニンには抗酸化剤としての健康上の利点もあることが示唆されている。
【0146】
上記のように、ビタミンB12は必須ビタミンであり、カロテノイドとして人体によって合成されず、動物由来の製品を摂取することによって得られる。ビタミンB12構造の一部を形成するコバルトは、その明確な赤色を与え、したがって、ビタミンB12は、本発明の教示によれば、着色剤および必須ビタミンとしての二重の機能を有する。
【0147】
米国医学研究所(IOM、現在は保健医療課(HMD))は、1998年にビタミンB12の推定平均必要量(EAR)と推奨栄養所要量(RDA)を更新した。14歳以上の女性と男性のビタミンB12の現在のEARは2.0μg/日である。RDAは2.4μg/日である。
【0148】
EFSAは、情報の集合的なセットを食事基準値と呼ぶ。18歳以上の女性と男性の場合、ビタミンB12の適切な摂取量(AI)は4.0μg/日に設定されている。妊娠中の女性のAIは4.5μg/日、授乳中の女性のAIは5.0μg/日である。1~17歳の子供では、AIは1.5から3.5μg/日まで年齢とともに増加する。
【0149】
しかし、EFSAとIOMは、ビタミンB12の許容上限摂取量(UL)の設定を必要とする十分な証拠がないことを読み解いた。
【0150】
本発明はここで、ウシ胚性線維芽細胞および筋芽細胞を1mlあたり1mgのシアノコバラミンを含む増殖培地中でインキュベートすると、細胞に明確な赤ピンク色を与える量のビタミンをもたらしたことを示す。
【0151】
さらに、本発明は、ウシ由来細胞が、調べた濃度で培地からビタミンB12を直線的に取り込むことができ、約10mg/100gの細胞~約100mg/100gの細胞の量に達することを示す。
【0152】
鉄は、正常な赤血球の発達と健康な免疫機能を確保するために不可欠な微量栄養素である。鉄欠乏症は貧血を引き起こす可能性があり、子供の発達に悪影響を与えることが示されている。食事性鉄の吸収は、変動する動的なプロセスである。摂取された量と比較して吸収された鉄の量は通常少ないが、状況や鉄の種類に応じて、5%から最大35%の範囲になる場合がある。鉄の最も吸収された形は、動物性食品からのものである。動物性食品や一部の植物性食品からの鉄の吸収はヘム鉄の形であり、摂取量の15%から35%の吸収を可能にし、より効率的である。動物のヘム鉄は、血液と筋肉、そして肉とミトコンドリアのヘム含有タンパク質に由来する。本発明の培養肉は、培養肉の栄養価を向上させる鉄で強化された細胞を含む。
【0153】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約0.01mg/100gの細胞~約50mg/100gの細胞の量の鉄またはその塩を提供する複数の細胞を含む。特定の実施形態によれば、鉄は、約0.1mg/100gの細胞~約40mg/100gの細胞の量である。特定の実施形態によれば、鉄の量は、約0.5mg/100gの細胞~約5mg/100gの細胞である。
【0154】
特定の実施形態によれば、培養肉の非ヒト動物由来細胞は、葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの不飽和脂肪酸、少なくとも1つの飽和脂肪酸、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される外因性サプリメントをさらに含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0155】
コエンザイムQ10は、ユビキノン、ユビデカレノン、コエンザイムQとしても知られ、CoQ10、CoQ、またはQ10と略されることもある。ビタミンに似ているこの脂溶性物質は、すべての呼吸する真核細胞、主にミトコンドリアに存在する。これは電子伝達系の構成要素であり、ATPの形でエネルギーを生成する好気性細胞呼吸に関与する。CoQ10は栄養補助食品として販売されている。CoQ10の確立された理想的な投与量はない。典型的な1日量は100~200ミリグラムである。CoQ10は水に溶けない結晶性粉末である。CoQ10は、水への溶解度を高めることによって吸収を高めるために、いくつかの方法で変更することができる。
【0156】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、コエンザイムQ10をさらに含む。特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約0.5mg/100gの細胞~約20mg/100gの細胞の量でコエンザイムQ10を提供する複数の細胞を含む。
【0157】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、葉酸をさらに含む。特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約50μg/100gの細胞~約500μg/100gの細胞の間の量の葉酸を提供する複数の細胞を含む。
【0158】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、ビタミンEをさらに含む。特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約0.5mg/100gの細胞~約50mg/100gの細胞のビタミンEの量を提供する複数の細胞を含む。特定の実施形態によれば、複数の細胞は、約1mg/100gの細胞~約10mg/100gの細胞のビタミンEの量を提供する。
【0159】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、セレンおよび/またはその塩をさらに含む。特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約5.0μg/100gの細胞~約60μg/100gの細胞の量のセレンを提供する複数の細胞を含む。
【0160】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、ビタミンDをさらに含む。特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約0.01μg/100gの細胞~約150μg/100gの細胞の量のビタミンDを提供する複数の細胞を含む。特定の実施形態によれば、ビタミンDの量は、約0.1μg/100gの細胞~約100μg/100gの細胞である。特定の実施形態によれば、ビタミンDの量は、約0.1μg/100gの細胞~約15μg/100gの細胞である。
【0161】
特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞は、少なくとも1つの不飽和脂肪酸をさらに含む。特定の実施形態によれば、非ヒト動物由来細胞培養物は、約5mg/100gの細胞~約2500mg/100gの細胞の量の不飽和脂肪酸を提供する複数の細胞を含む。特定の実施形態によれば、少なくとも1つの不飽和脂肪酸の量は、約5mg/100gの細胞~約1500mg/100gの細胞である。特定の実施形態によれば、少なくとも1つの不飽和脂肪酸の量は、約5mg/100gの細胞~約500mg/100gの細胞である。特定の実施形態によれば、少なくとも1つの不飽和脂肪酸の量は、約5mg/100gの細胞~約50mg/100gの細胞である。
【0162】
特定の実施形態によれば、培養肉の非ヒト動物由来細胞は、リコペン、カンタキサンチン、およびそれらの組み合わせ、ビタミンB12、鉄またはその塩、少なくとも2つの脂肪酸、セレンおよび/またはその塩、亜鉛および/またはその塩、ビタミンE、コエンザイムQ10、ならびにビタミンDからなる群から選択される少なくとも1つの天然着色剤を含む。
【0163】
さらに別の態様によれば、本発明は、非ヒト動物由来細胞を増殖させるための濃縮細胞培養液体培地を提供し、培地は、少なくとも1つの天然着色剤、シアノコバラミン(ビタミンB12)、およびそれらの組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのサプリメントを含み、サプリメントは、非ヒト動物由来細胞に肉のような色を与えるのに十分な量である。
【0164】
特定の実施形態によれば、濃縮細胞培養液体培地は、約300~約700nmの間の複数の波長での吸光度を有することを特徴とする。シアノコバラミン(ビタミンB12)のピーク吸光度は361nmであり、カロテンのピーク吸光度は、ベータカロテンは450、480、520nmであり、リコペンのピークは360、443、471、502nmである。ビキシンは360、470~476、501~507nmであり、ベタニンのピーク吸光度は535nm、カンタキサンチンのピークは480nmである。
【0165】
さらに別の態様によれば、本発明は、肉のような色を有する培養肉を生産するための濃縮細胞培養液体培地を提供し、培地は、少なくとも1つの天然着色剤およびシアノコバラミン(ビタミンB12)を含む外因性サプリメントの組み合わせを含む。
【0166】
特定の実施形態によれば、本発明は、肉のような色を有する培養肉を生産するための濃縮細胞培養液体培地を提供し、培地は、少なくとも1つの天然着色剤、シアノコバラミン(ビタミンB12)、および鉄またはその塩を含む外因性サプリメントの組み合わせを含む。特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12および鉄またはその塩からなる外因性サプリメントの組み合わせを含む。
【0167】
培養肉製品の魅力的な外観の必要性に加えて、味は非常に重要である。培養肉の味は、天然または合成のフレーバーを加えることによって改善される可能性がある。酵母抽出物は食品業界ではフレーバー前駆体として知られており、通常、肉以外の料理に肉ブイヨンの味を与えるために添加される。本発明はここで、予期せぬことに、酵母抽出物を含む培地で非ヒト動物由来細胞を培養すると、改善された肉のような味を有する食品を形成する培養細胞が得られることを開示する。
【0168】
特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12および酵母抽出物を含むサプリメント組成物を含む。特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12および酵母抽出物からなるサプリメント組成物を含む。
【0169】
特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12、鉄またはその塩、および酵母抽出物を含むサプリメント組成物を含む。特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12、鉄またはその塩、および酵母抽出物からなるサプリメント組成物を含む。
【0170】
さらに別の態様によれば、本発明は、肉のような色を有する培養肉を生産するための濃縮液体細胞培養培地を提供し、培地は、少なくとも1つの天然着色剤、シアノコバラミン(ビタミンB12)、鉄またはその塩、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるサプリメントを含み、サプリメントは、培養肉に肉のような色を与えるのに十分な量である。
【0171】
さらに別の態様によれば、本発明は、肉のような色を有する培養肉を生産するための濃縮細胞培養液体培地を提供し、培地は、少なくとも1つの天然着色剤、シアノコバラミン(ビタミンB12)、鉄またはその塩、酵母抽出物、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択されるサプリメントを含み、サプリメントは、培養肉に肉のような色を与えるのに十分な量である。
【0172】
いくつかの実施形態によれば、葉酸、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの不飽和脂肪酸、少なくとも1つの飽和脂肪酸、ならびにそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つのサプリメントをさらに含む強化培地。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0173】
特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12、ならびに葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/または塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含むサプリメント組成物を含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12、ならびに葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントからなるサプリメント組成物を含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0174】
特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12、鉄またはその塩、ならびに葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含むサプリメント組成物を含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12、鉄またはその塩からなるサプリメント組成物、ならびに葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0175】
特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12、酵母抽出物、ならびに葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含むサプリメント組成物を含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12、酵母抽出物、ならびに葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントからなるサプリメント組成物を含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0176】
特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12、鉄またはその塩、酵母抽出物、ならびに葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/またはその塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントを含むサプリメント組成物を含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。特定の実施形態によれば、培地は、少なくとも1つの着色剤、B12、鉄またはその塩、酵母抽出物、ならびに葉酸(ビタミンB9)、亜鉛および/その塩、セレンおよび/またはその塩、ビタミンD、ビタミンE、コエンザイムQ10、少なくとも1つの脂肪酸、およびそれらの任意の組み合わせからなる群から選択される少なくとも1つの外因性サプリメントからなるサプリメント組成物を含む。それぞれの可能性は、本発明の個別の実施形態を表す。
【0177】
いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約100μg/ml~約5mg/mlの濃度の葉酸を含む。
【0178】
いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約5ng/ml~約500ng/mlの濃度のセレンおよび/またはその塩を含む。
【0179】
いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約0.1pM~約100μMの濃度のビタミンDを含む。特定の例示的な実施形態によれば、強化培地は、約0.1nM~約1μMの濃度のビタミンDを含む。
【0180】
いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約10nM~約250μMの濃度のビタミンEを含む。
【0181】
いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約10μM~約350μMの濃度の少なくとも1つの不飽和脂肪酸を含む。
【0182】
いくつかの実施形態によれば、強化培地は、約5μg/ml~約2mg/mlの濃度のコエンザイムQ10を含む。
【0183】
抗菌ペプチド(AMP)は、動物、植物、昆虫、細菌に存在する天然タンパク質の多様なグループである。これらのペプチドは、病原性生物からの宿主の防御機構の一部であり、化学防腐剤の代替物であることがわかっている。
【0184】
特定の実施形態によれば、本発明の培地は、培養細胞の汚染を防止するAMPをさらに含む。上記のように、これらのペプチドは天然の防腐剤である。AMPは、チーズ、ヨーグルト、ポルトガルの発酵肉など、古くから多くの種類の食品に存在するバクテリアによって生成され、ヒトが消費しても安全であることが示されているため、食品業界での使用が承認されている。
【0185】
一般的に使用されるAMPは、分子量3.5KDa、34アミノ酸、正電荷、ならびにBacilluses、Micrococcuses、Staphylococcrus aureuses、Listeria monocytogenes、およびClostridiumsを含むグラム陽性菌に対する抗菌活性、およびグラム陰性菌に対する抗菌活性が低いペプチドであるナイシンである。ナイシンは、低温殺菌チーズ、乳製品デザート、缶詰、塩漬け肉、およびシーフードの保護と保存期間の延長のために使用される。(Thomas L.V.およびDelves-Broughton,J.2005.In:Davidson M P et al.,Antimicrobial in foods,Third Edition,Published by CRC Press,pp.237-274)。ナイシンは数十年にわたって食品産業で使用されているが、耐性のある食品腐敗菌の発生は検出されていない。
【0186】
アントシアニンは、フェノールのグループに属する着色された水溶性色素である。pH3未満では、アントシアニン溶液は最も強い赤色を示す。このような溶液のpH上げると、通常、赤色は4~5のpH範囲で無色に見えるまで退色する。pHがさらに上昇すると、紫色および青色のアントシアニン溶液が生じ、貯蔵または熱処理すると、色素沈着が青色から黄色に変化することが観察されている。アクリル化および共色素沈着したアントシアニジンは熱安定性が高いため、様々なpH条件でも構造を維持する。アントシアニンは、心血管疾患、がん、糖尿病、一部の代謝性疾患、微生物感染症など、いくつかの病気の予防に使用できる付加価値のある着色剤である。これらの化合物はまた、視覚能力を改善し、神経保護効果がある。(Khoo,H E et al.2017.Food Nutr.Res.61:1361779)。
【0187】
さらに追加の態様によれば、本発明は、肉のような色を特徴とする培養肉を生産するための方法を提供し、この方法は、本発明の濃縮細胞培養培地中で非ヒト動物由来細胞を培養することを含む。
【0188】
本発明の培地中での非ヒト動物由来細胞の培養は、培養肉生産の任意の段階で実施することができる。特定の実施形態によれば、より強い、畜殺された肉のような色を得るために、低い細胞分裂率の時に本発明の強化培地を添加することが好ましい場合がある。特定の実施形態によれば、本発明の強化培地は、増殖の終わりに向けて肉培養物を形成する非ヒト動物由来細胞に添加される。特定の例示的な実施形態によれば、培地は、実質的に一定のグルコース取り込み速度(GUR)を有する細胞に添加される。いくつかの実施形態によれば、強化培地は、培養が完了する約1日から約3日前まで細胞に添加される。
【0189】
以下の実施例は、本発明のいくつかの実施形態をさらに詳しく示すために提示される。しかしながら、それらは決して本発明の広い範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。当業者は、本発明の範囲から逸脱することなく、本明細書に開示された原理の多くの変形および修正を容易に考案することができる。
【実施例
【0190】
材料および方法
UPLA-UV/Visカロテン分析
【0191】
ベータ-カロテン、リコペン、およびカンタキサンチンは、以下の条件下でAnalyst Research LaboratoriesのUPLC-UV/Vis装置によって分析された。
機器:Waters ACQUITY UPLCシステム
カラム:Phenomenex Kinetex 2.6pm Cis 100x2.1mm;部品番号OOD-4462-AN
カラム温度:50℃
オートサンプラー温度:5℃
検出器:フォトダイオードアレイ波長範囲250~499nm
解像度:3.6nm
サンプルレート:10ポイント/秒
移動相A:アセトニトリル:メタノール:酢酸アンモニウム緩衝液 25:25:50
移動相B:アセトニトリル:メタノール:ジクロロメタン:ヘキサン 70:25:2.5:2.5
流量:0.5mL/分
注入量:ニードルオーバーフィル付きの17pLの部分ループ
弱い洗浄体積:600μL
強い溶媒体積:200μL
シールウォッシュ:1分
実行時間:8分
次の注入遅延:5分
勾配条件を以下の表1に示す。
【表1】
【0192】
試料および対照試料溶液の準備
ベータ-カロテン、リコペン、またはカンタキサンチンは、次のように1回の複製で調製された。
【0193】
100mgの試料/対照試料をホモジナイズに適したポリプロピレンバイアルに移した。100mg/1mmのガラスビーズを加え、続いて2mLの再構成溶液を加えた。試料を30秒間ホモジナイズして、細胞を破壊した。UPLC-UV/Visを使用してバイアルを遠心分離した後、分析のために上清をUPLCバイアルに移した。
【0194】
スパイク対照試料溶液の調製
試料は、次のように1回の複製で準備された。
100mgの対照試料をホモジナイズに適したポリプロピレンバイアルに移した。100mg/1mmのガラスビーズを加え、続いて2mLの標準溶液を加えた。試料を30秒間ホモジナイズして、細胞を破壊した。バイアルを遠心分離した後、分析のために上清をUPLCバイアルに移した。
【0195】
試料中のカロテノイドの定量
ベータ-カロテン、リコペン、カンタキサンチンの試料中のカロテノイド含有量は、各カロテノイドから別々に調製された「標準」溶液に対するシングルポイントキャリブレーションによって決定された。各カロテノイドのピーク面積は、ピーク最大値の波長で決定された。
【0196】
HPLC-UV/Vis
BEF細胞は、24時間異なる濃度のビタミンB12に曝された。細胞ペレットをHPLCで分析した。
【0197】
分析方法:
分析は、以下の条件を使用してHPLCによって実行された。
HPLC-UV/Vis操作条件
機器:Agilent1100システム
カラム:Waters Symmetry 5μm C18 150x4.6mm
カラム温度:30℃
オートサンプラー温度:5℃
検出器:361nmのUV
移動相A:水中の0.025%TFA
移動相B:アセトニトリル
流量:1.0mL/分
注入体積:100μl
実行時間:30分
勾配条件を以下の表2に示す。
【表2】
【0198】
標準ストック溶液の調製
標準ストック溶液は、次のように二重に調製した。
10mgのビタミンB12 V2876標準物質を20mLの琥珀色のメスフラスコに移し、HPLC水で体積を調整して混合した。
【0199】
作業標準溶液の準備:
作業標準は、次のように二重に調製された。
1mLの標準ストック溶液を50mLの琥珀色のメスフラスコに移し、HPLC水で体積を調整して混合した。
【0200】
試料および対照試料溶液の調製
試料は、次のように1回の複製で準備された。
50mgの試料/対照を、ホモジナイザーに適したポリプロピレンバイアルに移した。50mgの1mmガラスビーズを加え、続いて2mLの希釈剤(水)を加えた。
【0201】
試料を30秒間ホモジナイズして、細胞を破壊した。バイアルを遠心分離した後、分析のために上清をHPLCバイアルに移した。
【0202】
スパイク対照試料溶液の調製
試料は、次のように1回の複製で準備された。
50mgの対照試料をホモジナイザーに適したポリプロピレンバイアルに移した。
【0203】
50mgの1mmガラスビーズを加え、続いて2mLの作業用標準溶液を加えた。
【0204】
試料を30秒間ホモジナイズして、細胞を破壊した。バイアルの遠心分離後、分析のために上清をHPLCバイアルに移した。
【0205】
試料中のビタミンB12の定量
試料中のビタミンB12含有量は、作業標準溶液に対するシングルポイントキャリブレーションによって決定された。
【0206】
ビタミンB12でスパイクした対照試料のスパイク回復
【表3】
【0207】
細胞
BEF-胚の骨格筋組織に由来するウシ胚性線維芽細胞の培養物。培養中の細胞の90%-100%はBEFである。
BEM-胚の骨格筋組織に由来するウシ胚性筋芽細胞の培養物。
BCL-ウシの臍帯の裏打ちに由来する線維芽細胞の培養物。
【0208】
実施例1:ウシ由来細胞を着色するためのベータ-カロテンの使用
ウシ胚性線維芽細胞(BEF)を、着色化合物の取り込みについて試験した。ウシの細胞の自然な色は白から黄色である。ベータ-カロテンは、人体によってビタミンAに変換できるプロビタミンAである。ベータカロテンは黄橙赤色である。
【0209】
1つの実験において、水溶性ベータカロテンは、標準培地中1.2×10個の細胞(DMEM、10%FCSおよび1%ペニシリン/ストレプトマイシン)に加えた。ウシ細胞は、3つの濃度の水溶性ベータ-カロテン(1、10、および100μg/ml)とともに、38.5℃、5%CO下で、インキュベートされた。ベータ-カロテン添加の24時間後、細胞(24時間後の細胞濃度が1.4×10細胞/mlであった)をトリプシン処理によって回収した。細胞を洗浄し、PBSに再懸濁した。ベータ-カロテン含有量は、細胞が除去された培地および収集された細胞の吸収スペクトル(300~700nm)を分光光度計によって分析することによって評価された。図1は、培地からウシ細胞へのベータ-カロテンの取り込みを示す。ウシ細胞の存在の結果としての増殖培地中のベータカロテンの光学密度は、24時間のインキュベーションで変化した。450、480、および520nmのピークは、24時間後にそれぞれ2.7、2.3、および2.4倍減少した。培地中のベータカロテンの減少は、強い橙色をしているように見えた細胞内または細胞に付着したその量の増加を反映す。100μgのベータカロテンを1.4×10細胞に適用すると、細胞による合計40μgのベータカロテンの取り込みが起こる。
【0210】
追加の実験では、BEF細胞を標準培地(DMEM高グルコース、10%FCS、1%Pen-Strep)中のベータ-カロテン10%エマルジョンレッド(DSM、カタログ番号5012538004)とともに、110μg/mlのベータ-カロテンの最終濃度で38℃で24時間、5%CO下でインキュベートした。
【0211】
次に、細胞をトリプシン処理によって収集し、ペレットをPBSで3回洗浄した。細胞ペレットの色は橙色であった。63×10個の細胞(重量316mg)を上記のUPLC法で分析した。細胞内のカロテノイドの量の定量は、前記試料を参照ベータ-カロテン10%エマルジョンレッドと比較することによって実行された。
【0212】
以下の表4に見られるように、0.11mg/mlのベータ-カロテンを細胞に適用すると、200μgのベータ-カロテン/grの細胞が取り込まれた。エマルジョン形態のベータ-カロテンは、水溶性ベータ-カロテンの取り込みから生じる細胞の橙色と比較して、細胞に赤橙色をもたらすことに留意されたい。したがって、エマルジョン形態でのベータ-カロテンの使用は、本発明の教示によれば有利である。
【0213】
実施例2:鉄の摂取
ウシ由来細胞の着色のためのビスグリシン酸第一鉄の使用
ビスグリシン酸第一鉄は、暗褐色の水溶性化合物である。BCL細胞に由来するウシ線維芽細胞によるビスグリシン酸第一鉄の取り込みを、上記のように、1500μg/ml、750μg/ml、および375μg/mlの3つの濃度のベータ-カロテンについて調べた。
【0214】
1500μg/mlの濃度のビスグリシン酸第一鉄は、ウシ細胞に対して毒性があることがわかった。750μg/mlの濃度で、細胞は薄茶色に着色された(図2)。375μg/mlは細胞を着色しなかった。
【0215】
ウシ由来細胞の濃縮のための鉄の使用
完全コンフルエンスのBEF細胞を、標準培地(DMEM高グルコース、10%FCS、1%Pen-Strep)中に溶解した硫酸鉄(II)七水和物(Sigma、カタログ番号F8633)とともに、最終濃度が0.5mMとなるように、38℃で24時間、5%のCO下でインキュベートした。
【0216】
次に、細胞をトリプシン処理によって収集し、ペレットをPBSで3回洗浄した。ICP-MS法を使用して、1107mgの重量の細胞を分析した。
【0217】
誘導結合プラズマ質量分析(ICP-MS)は、環境試料中の微量金属を分析するための強力なツールである。これは、水試料中の多数の元素のサブμg/L濃度の測定に適用できる。この方法では、高周波誘導結合プラズマによって生成されたイオンを測定する。液体中の分析対象種は噴霧され、結果として生じるエアロゾルはアルゴンガスによってプラズマトーチに輸送される。高温で生成されたイオンはプラズマガスに同伴され、インターフェースを介して質量分析計に導入される。プラズマで生成されたイオンは、質量電荷比(m/z)に従ってソートされ、チャネル電子増倍管で定量化される(US EPAが発行した6020b誘導結合プラズマ質量分析法)。
【0218】
標準培地でインキュベートしたBEF細胞は8.36μg鉄/gの細胞しか含まなかったが、上記のように硫酸鉄七水和物を含む培地サプリメントで細胞をインキュベートすると、25.11μg鉄/gの細胞をもたらし、約3倍増加した。
【0219】
実施例3:シアノコバラミンの摂取
ウシ由来細胞の着色のためのシアノコバラミンの使用
シアノコバラミン(Cbl)は水溶性ビタミンB12で、赤色を有する。BEF細胞によるシアノコバラミンの取り込みを、ベータ-カロテンについて上記のように、1000、100、および10μg/mlの3つの濃度、および24時間のインキュベーション時間で調べた。
【0220】
1000μg/mlの高濃度に曝されると、細胞は赤ピンクに着色した(図3)。100μg/mlおよび10μg/mlでは、ウシ細胞の色に視覚的な変化はありないであった。
【0221】
ウシ由来細胞の濃縮のためのシアノコバラミンの使用
【0222】
完全コンフルエントなBEF細胞を、標準培地(DMEM高グルコース、10%FCS、1%Pen-Strep)中のビタミンB12(シアノコバラミン、Sigma、カタログ番号V2876)とともに、最終濃度13.3、6.67、3.33、および1.67mg/mlまで38℃で24時間、5%CO下でインキュベートした。
【0223】
次に、細胞をトリプシン処理によって収集し、ペレットをPBSで3回洗浄した。細胞ペレットの色は、ビタミンB12の濃度に応じて、様々な強度で赤ピンクであった。12.8×10個の細胞(重量764mg)を、上記のようにHPLC法で分析するために移した。細胞内のビタミンB12の量の定量は、試料を参照ビタミンB12と比較することによって実行した。
【0224】
表3に見られるように、1.67、3.33、6.67、および13.3mg/mlのビタミンB12を細胞に適用すると、直線的に取り込まれた。
【表4】
【0225】
実施例4:ウシ由来細胞の濃縮のための亜鉛の使用
完全コンフルエンスのBEFおよびBEM細胞(大部分はBEF細胞)を含む混合物を、標準培地(DMEM高グルコース、10%FCS、1%Pen-Strep)に溶解した塩化亜鉛(Sigma、カタログ番号Z0152)と100μMの最終濃度(13μg/ml)まで38℃で72時間、5%CO下でインキュベートした。次に、細胞をトリプシン処理によって収集し、ペレットをPBSで3回洗浄した。17.8×10個の細胞(重量1200mg)は、IPC-MSメソッドを使用して分析した。
【0226】
塩化亜鉛を添加していない標準培地で培養した細胞には、8.5μgの亜鉛/grの細胞しか含まれなかった。100μMの塩化亜鉛を細胞に適用すると、30.44μgの亜鉛/grの細胞の取り込み、すなわち約3.6倍の増加が生じた。
【0227】
例5:オメガ3およびオメガ9
Cis-4,7,10,13,16,19-ドコサヘキサエン酸(DHA、またはSigmaD2534)およびエライジン酸(Caymen chemicals、カタログ番号90250)を標準培地(DMEM高グルコース、10%FCS、1%Pen-Strep)に溶解し、最終濃度を50μMとした。
【0228】
BEF細胞を50,000細胞/ウェルで6ウェルプレートに播種し、38℃、5%CO下でインキュベートした。翌日、細胞がプレート表面に付着した後、エライジン酸とDHAを含む培地を細胞に加えた。標準培地でインキュベートした細胞は、対照としてのみ用いた。培地は1日おきに6日間交換された。アッセイの最後に、細胞をPBS pH=7.4で洗浄し、ホルムアルデヒド4%バッファーpH=7.4で20分間固定した。ウェルを大量のPBS pH=7.4で3回洗浄した。オイルレッドO(Sigma O1391)作業溶液を各ウェルに15分間加えた。ウェルは、大量のdHOで3回洗浄した。
【0229】
図4に見られるように、エライジン酸とDHA(1:1の比率)を含む培地で処理された細胞は、細胞内に脂肪滴を蓄積し始めた。
【0230】
オイルレッドO染色を半定量的に測定した。オイルレッドO染色を100%イソプロパノールで5分間抽出した。吸光度は、492nmの波長で測定された。エライジン酸とDHAの組み合わせで有意な染色が観察された(対照の0.0352と比較して0.1207のOD492吸光度)。
【0231】
実施例6:リコペンの取り込み
1つの実験では、完全コンフルエンスのBEF細胞を、標準培地(DMEM高グルコース、10%FCS、1%Pen-Strep)中のRedivivo(Lycopene)10%CWS/S-TG(DSM、カタログ番号5003792004)と0.11mg/mlの最終濃度まで38℃で24時間、5%COでインキュベートした。
【0232】
次に、細胞をトリプシン処理によって収集し、ペレットをPBSで3回洗浄した。細胞ペレットの色は黄色であった。13×10個の細胞(重量147mg)をUPLC法で分析した。細胞内のカロテノイド量の定量は、試料を参照-Redivivo(リコペン)10%CWS/S-TGと比較することにより実行した。
【0233】
以下の表4に示すように、0.11mg/mlのリコペンを細胞に適用すると、10μgのリコペン/gの細胞が取り込まれた。
【0234】
追加の実験では、完全コンフルエンスのBEM細胞を、標準培地(DMEM高グルコース、20%FCS、1%Pen-Strep)中のResolute Ruby A Lycored(カタログ番号400280、水溶性リコペンの別の配合)と0.002mg/mlの最終濃度まで38℃で24時間、5%CO下でインキュベートした。
【0235】
次に、細胞をトリプシン処理によって収集し、ペレットをPBSで3回洗浄した。細胞ペレットの色は暗赤色であった。13×10個の細胞(重量160mg)をUPLC法で分析した。細胞内のカロテノイドの量の定量は、試料を参照物質であるResolute Ruby A Lycoredと比較することによって実行された。
【0236】
表4に見られるように、0.002mg/mlのリコペンを細胞に適用すると、30μgのリコペン/gの細胞が取り込まれた。
【0237】
リコペンの食事摂取量は、調査対象の人口によって大きく異なる。平均的なイタリア人は総カロテノイドの14.3mg/日を消費する(Lucarini et al.2006)。米国では、リコペンの典型的な食事摂取量は1日あたり約2~5ミリグラム(mg)である(Krinsky and Johnson,2005)。
【0238】
実施例7:カンタキサンチンの取り込み
完全コンフルエンスのBEF細胞とBEM細胞の混合物を、標準培地(DMEM高グルコース、10%FCS、1%Pen-Strep)中のカンタキサンチン10%CWS/S(カタログ番号5005256004)と、最終濃度1.1mg/mlまで38℃で24時間、5%CO下でインキュベートした。
【0239】
次に、細胞をトリプシン処理によって収集し、ペレットをPBSで3回洗浄した。細胞ペレットの色は赤橙色であった。20×10個の細胞(重量855mg)をUPLC法で分析した。細胞内のカロテノイド量の定量は、試料を参照物質のカンタキサンチン10% CWS/Sと比較することによって実行された。
【0240】
表4に示すように、1.1mg/mlのカンタキサンチンを細胞に適用すると、420μgのカンタキサンチン/gの細胞が取り込まれた。
【0241】
Color Additives Approved for Use in Human Food part73,Subpart Aによると、固形または半固形食品1kgあたりまたは液体食品1パイントあたり66mgを超えない着色添加剤は、FDAにより発行されるバッチ認証を免除される。
【表5】
【0242】
実施例8:ウシ由来細胞の味を濃縮するための酵母抽出物の使用
完全コンフルエンスのBEF細胞を、標準培地(DMEM高グルコース、10%FCS、1%Pen-Strep)中に溶解した酵母抽出物とともに、最終濃度がそれぞれ0.5%または2%となるように、38℃で24時間、5%CO下でインキュベートした。3種類の酵母抽出物を調べる:高グルタミン酸酵母抽出物を含む酵母抽出物、例えば、Springerカタログ番号4101/0-PW-Lおよびその同等物、塩基性酵母抽出物を含む酵母抽出物、例えばSpringerカタログ番号04/02/20-MGおよびその同等物、および高I+G酵母抽出物を含む酵母抽出物、例えばSpringerカタログ番号2012/20-MG-L AFおよび同等物。
【0243】
次に、細胞をトリプシン処理によって収集し、ペレットをPBSで3回洗浄する。細胞ペレットを電子鼻と電子舌で分析し、対照(酵母抽出物なし)と比較する。
【0244】
人工舌は、標的分子が受容体と反応するによって引き起こされる電位または電流の変化を測定することに依存する場合が多い。したがって、これらのデバイスはしばしば電子舌またはe-舌と呼ばれ、自然の舌と同じように機能する。人工舌は、苦味、酸味、塩味、うま味(風味)、および甘味を感じることができる。例示的な味覚センサーは、商品化された味覚感知システムSA402BおよびTS-5000Z(Kiyoshi Toko.2012.Nature 486:S18-S19 doi:10.1038/486S18a)である。
【0245】
電子鼻は、再現性のある測定値を取得するように設計された機器内の哺乳類の嗅覚システムを模倣するように設計されており、アロマ混合物の識別と分類を可能にする。電子鼻システムは通常、マルチセンサーアレイ、情報処理ユニット(人工ニューラルネットワーク(ANN)、デジタルパターン認識アルゴリズムを備えたソフトウェア、および参照ライブラリデータベース)で構成される。人工鼻装置の何百もの異なるプロトタイプが開発された(例えば、Wilson A D and Baietto M.2009.Sensors 9:5099-5148;doi:10.3390/s90705099を参照されたい)。
【0246】
実施例9:ビタミンB12、カンタキサンチン、およびリコペンの組み合わせの摂取
1つの実験では、ビタミンB12(Sigma、カタログ番号V2876)、カンタキサンチン10% CWS/S(カタログ番号5005256004)、純水中のLycopene Resolute Ruby A(Lycored、カタログ番号400280)の混合物を、以下の表5に示す最終濃度で調製した。サプリメント混合物の色は、American Meat Science Associationが発行したガイドラインに従って、比色計によってL*a*b*パラメータについて測定された。パラメータは、ミートカットからのL*a*b*の値と比較され、同等であることがわかった(表6)。
【表6】
【表7】
【0247】
完全コンフルエントBEF細胞を、上記サプリメント混合物で38℃で24時間、5%CO下でインキュベートする。
【0248】
次に、細胞をトリプシン処理によって収集し、ペレットをPBSで3回洗浄した。細胞ペレットの色は、比色計でL*a*b*またはL*C*hパラメータを設定することによって分析される。
【0249】
別の実験では、ビタミンB12(Sigma、カタログ番号V2876)、カンタキサンチン10% CWS/S(カタログ番号5005256004)、純水中のRedivivo Lycopen 10%CWS/S-TG(カタログ番号5003792004)を含むサプリメント混合物を、それぞれ最終濃度0.5mg/ml、3.5mg/ml、0.9mg/mlに調製する。栄養素(ビタミンB12、カンタキサンチン、リコペン)の混合物の色は、比色計によってL*a*b*パラメータについて測定される。パラメータは、赤身の肉のカットからのL*a*b*の値と比較される。
【0250】
完全コンフルエントBEF細胞を、上記サプリメント混合物で38℃で24時間、5%CO下でインキュベートする。次に、細胞をトリプシン処理によって収集し、ペレットをPBSで3回洗浄する。細胞ペレットの色は、UPLC法によって、および/または比色計によってL*a*b*またはL*C*hパラメータを設定することによって分析される。
【0251】
前述の特定の実施形態の説明は、本発明の一般的な性質を完全に明らかにするので、他の人は、現在の知識を適用することによって、過度の実験なしに、および一般的な概念から逸脱することなく、かかる特定の実施形態の様々な用途に容易に修正および/または適合することができ、したがって、かかる適合および変更は、本開示の実施形態の均等物の意味および範囲内で理解されるべきであり、そのように意図されている。本明細書で用いられる表現または用語は、説明を目的としたものであり、限定を目的としたものではないことを理解されたい。様々な本開示の機能を実施するための手段、材料、およびステップは、本発明から逸脱することなく、様々な代替形態をとることができる。

図1A
図1B
図2
図3
図4
【国際調査報告】