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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】電子部品の気密パッケージ
(51)【国際特許分類】
   H01L 23/29 20060101AFI20220124BHJP
   B81B 7/02 20060101ALI20220124BHJP
   B81C 1/00 20060101ALI20220124BHJP
   A61F 9/007 20060101ALI20220124BHJP
   H01L 23/28 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
H01L23/30 B
B81B7/02
B81C1/00
A61F9/007 190A
H01L23/28 F
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021526508
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(85)【翻訳文提出日】2021-05-14
(86)【国際出願番号】 EP2019084275
(87)【国際公開番号】W WO2020115332
(87)【国際公開日】2020-06-11
(31)【優先権主張番号】PCT/EP2018/084059
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】515328853
【氏名又は名称】ピクシウム ビジョン エスエー
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】マーティン・ドテール
(72)【発明者】
【氏名】ジャン-ルネ・テネイルロウ
(72)【発明者】
【氏名】セオドア・アイ・カミンズ
【テーマコード(参考)】
3C081
4M109
【Fターム(参考)】
3C081AA01
3C081AA17
3C081BA22
3C081BA30
3C081CA14
3C081CA15
3C081CA26
3C081CA27
3C081CA29
3C081CA31
3C081DA03
3C081DA04
3C081DA06
3C081DA07
3C081DA10
3C081DA11
3C081DA22
3C081EA01
3C081EA39
3C081EA41
4M109AA02
4M109CA04
4M109EA01
4M109EC07
4M109EE06
(57)【要約】
本発明は、電子機器の分野に関し、特に、生体医療用途のためなどの、埋込み型電子機器に関し、更に詳細には、インビボでの生体医療用途のための気密パッケージ電子機器及びそのような電子機器のパッケージ方法に関する。
【選択図】図1A

【特許請求の範囲】
【請求項1】
気密パッケージ(10)によりカプセル封入された電子部品(101)を含み、
前記パッケージが、カプセル上層(103)及びカプセル下層(104)を含み、前記カプセル上層及び前記カプセル下層(103及び104)は、2重層(105、105’)を形成するように、少なくとも一部が重なり合っていることを特徴とする埋込み型機器。
【請求項2】
前記2重層(105、105’)が、前記電子部品(101)の側壁(106、106’)の少なくとも一部、より好ましくは全部を覆っている、請求項1に記載の埋込み型機器。
【請求項3】
前記2重層(105、105’)が、前記電子部品(101)の全体ではなく、一部のみを覆っている、請求項1から2のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項4】
前記2重層(105、105’)が、前記電子部品(101)の側壁(106、106’)のみを覆っており、前記電子部品(101)の上面及び下面を覆っていない、請求項1から3のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項5】
前記カプセル上層(103)及び/又は前記カプセル下層(104)が、生体適合性である、請求項1から4のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項6】
前記カプセル上層(103)及び/又は前記カプセル下層(104)が、耐腐食性である、請求項1から5のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項7】
前記カプセル上層(103)及び/又は前記カプセル下層(104)が、金属と、酸化物、窒化物、及び炭化物、好ましくは、金属酸化物、金属窒化物、及び金属炭化物を含むセラミックと、ダイヤモンドライクカーボンと、ダイヤモンドと、ガラスと、ポリマーと、これらの組合せ、又はこれらの複数層とを含む又はからなる、請求項5から6のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項8】
前記金属が、Ti、Pt、ステンレス鋼、チタン-ニッケル、パラジウム、ニオブ、タンタル、これらの組合せ又は合金、及びこれらの複数層から選択される1つである、
前記セラミックが、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、炭化チタン、酸化チタン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、これらの組合せ、及びこれらの複数層から選択される1つである、及び/又は
前記ポリマーが、フルオロカーボン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、シリコーン、PDMS、パリレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカーボネートウレタン、シリコーン、シリコーン-ポリエステル-ウレタン、durimide(感光性ポリイミド)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレン、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、これらの組合せ、及びこれらの複数層から選択される1つである、
請求項7に記載の埋込み型機器。
【請求項9】
前記パッケージが、更に少なくとも1つのトップコート(107)を含み、
好ましくは、前記トップコート(107)と前記カプセル上層(103)とが、少なくとも一部で、又は完全に重なり合っている、請求項1から8のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項10】
前記トップコート(107)が、生体適合性である、請求項9に記載の埋込み型機器。
【請求項11】
前記トップコート(107)が、耐腐食性である、請求項9から10のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項12】
前記トップコート(107)が、透明である、請求項9から10のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項13】
前記トップコート(107)が、セラミック、SiC又はSiOCを含むガラス、SiO、ダイヤモンド又はダイヤモンドライクカーボン、酸化アルミニウム、酸化チタン、これらの組合せ、及びこれらの複数層から選択される材料を含む又はからなる、請求項9から12のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項14】
前記埋込み型機器が、好ましくは前記トップコート(107)が、
更に、前記電子部品(101)と電気的に接続している電子トレース(108)を含み、
前記電子トレース(108)が、好ましくは、前記トップコート(107)中に、又は前記トップコート(107)から突出して、電極を形成している、請求項9から13のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項15】
前記電子トレースが電極を形成しており、前記電極が好ましくは生体適合性及び耐腐食性である、請求項14に記載の埋込み型機器。
【請求項16】
前記電子トレースが、白金、黒色/多孔質白金、イリジウム、イリジウム/白金、酸化イリジウム、PEDOT:PSS、窒化チタン、ドープダイヤモンド又はドープダイヤモンドライクカーボン、グラフェン、及びこれらの組合せから選択される材料を含む又はからなる、請求項14から15のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項17】
前記気密パッケージ(10)によりカプセル封入されている前記電子部品(101)が、層(102)を含む、請求項1から16のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項18】
前記層(102)が、セラミック又はガラスを含む又はからなり、
任意に、酸化ケイ素から選択され、
任意に、シリコン基板を酸化することにより得られる、請求項17に記載の埋込み型機器。
【請求項19】
前記埋込み型機器が、
前記カプセル上層(103)上に、少なくとも1つの更なるカプセル上層(103a)、及び/又は
前記カプセル下層(104)をカプセル封入する、少なくとも1つの更なる下部カプセル封入(104a)を含む
請求項1から18のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項20】
少なくとも1つの更なる2重層(105a、105b、105c)を形成するように、前記更なるカプセル層(103a、104a)が重なり合っており、
任意に、前記更なる2重層(105a、105b、105c)は、前記電子部品(101)の前記側壁(106、106’)の少なくとも一部、より好ましくは、全部を覆っている、請求項19に記載の埋込み型機器。
【請求項21】
前記少なくとも1つの更なる2重層(105a、105b、105c)が、前記電子部品(101)の側壁(106、106’)のみを覆っており、前記電子部品(101)の上面及び下面を覆っていない、請求項20に記載の埋込み型機器。
【請求項22】
前記カプセル上層(103、103’)及び/又は前記カプセル下層(104、104’)が、耐腐食性であり、任意に、生体適合性である、請求項19又は21に記載の埋込み型機器。
【請求項23】
前記少なくとも1つの更なるカプセル上層(103a)及び/又は前記少なくとも1つの更なるカプセル下層(104a)が、生体適合性であり、任意に、耐腐食性である、請求項19から22のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項24】
前記カプセル上層(103)及び/又は前記カプセル下層(104)、及び/又は
任意に、前記少なくとも1つの更なるカプセル上層(103a)及び/又は前記少なくとも1つの更なるカプセル下層(104a)が、
同じ又は異なる材料を含む又はからなる、請求項1から23のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項25】
前記埋込み型機器が、環境に晒されるフォトダイオード及び/又は電極(109)を含み、
好ましくは、前記フォトダイオード及び/又は電極(109)の最上面が環境に晒されるように、前記トップコート及び/又は前記カプセル上層に埋め込まれている、請求項1から24のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項26】
前記埋込み型機器が、目に埋込み可能なように構成されており、
好ましくは、網膜インプラントとして、網膜上又は網膜下に埋込み可能なように構成されている、請求項1から25のいずれかに記載の埋込み型機器。
【請求項27】
請求項1から26のいずれかに前記パッケージ機器を少なくとも1つ含むことを特徴とする、埋込み型システム。
【請求項28】
埋込み型機器をパッケージする方法であって、
(a)少なくとも1つの電子部品(101)を基板(110)上に提供する工程と、
(b)前記電子部品(101、101’)に、少なくとも1つのカプセル上層(103、103’)を塗工する工程と、
(c)前記電子部品(101、101’)に、少なくとも1つのカプセル下層(104、104’)を塗工する工程と、を含み、
前記カプセル上層(103、103’)及び前記カプセル下層(104、104’)は、2重層(105、105’、105a、105b、105c)を形成するように、少なくとも一部で重なり合っていることを特徴とする方法。
【請求項29】
埋込み型機器をパッケージする方法であって、
(i)少なくとも1つ、好ましくは互いに間隔を空けて配された複数の電子部品(101、101’)が基板上(110)に設けられた組立部品(100)を提供し、隣接する前記電子部品(101、101’)と基板(110)とが、前記電子部品(101、101’)間の溝(111)を画定する工程と、
(ii)前記組立部品(100)に少なくとも1つのカプセル上層(103、103’)を塗工して、前記電子部品(101、101’)をコーティングし、前記溝(111)に下引きする工程と、
(iii)前記組立部品(100)に剥離層(112)を塗工する工程と、
(iv)部分的に前記剥離層(112)を取り除き、前記下引きされた溝(111)内に残存量の前記剥離層(112)を残す工程と、
(v)好ましくは、前記組立部品(100)を、上下逆に反転する工程と、
(vi)前記組立部品の下面から、(a)前記基板(110)、(b)前記カプセル上層(103)、及び(c)前記残存量の前記剥離層(112)を取り除く工程と、
(vii)前記組立部品(100)に少なくとも1つのカプセル下層(104、104’)を塗工し、好ましくは、前記電子部品(101、101’)及び前記溝(111)をコーティングする工程と、を含み、
前記カプセル上層(103、103’)及び前記カプセル下層(104、104’)は、少なくとも一部が重なり合って、2重層(105、105’)を形成するように塗工されることを特徴とする方法。
【請求項30】
前記2重層(105、105’)が、前記電子部品(101)の前記側壁(106、106’)の少なくとも一部、より好ましくは、全部を覆うように形成される、請求項28から29のいずれかに記載の方法。
【請求項31】
前記2重層(105、105’)が、前記電子部品(101)の側壁(106、106’)のみを覆っており、前記電子部品(101)の上面及び下面を覆っていない、請求項28から30のいずれかに記載の方法。
【請求項32】
前記方法が、更に、トップコート(107)を提供する工程を含み、
前記工程が、
(a)好ましくは請求項1から31のいずれかに規定されているように、前記電子部品(101、101’)の上面にトップコート(107)を塗工し、(b)部分的に前記トップコート(107)を取り除き、(c)好ましくは請求項1から31のいずれかに規定されているように、少なくとも前記トップコート(107)及びカプセル層(103、103’)が好ましくは少なくとも一部で重なり合うように、少なくとも1つのカプセル上層(103、103’)を前記電子部品(101、101’)に塗工する、
又は
(a’)好ましくは請求項1から31のいずれかに規定されているように、前記電子部品(101、101’)に少なくとも1つのカプセル上層(103、103’)を塗工し、(b’)部分的にカプセル上層(103、103’)を前記電子部品(101、101’)から取り除き、(c’)好ましくは請求項1から31のいずれかに規定されているように、少なくともトップコート(107)及びカプセル層(103、103’)が好ましくは少なくとも一部で重なり合うように、前記トップコート(107)を前記電子部品(101、101’)に塗工する
ことにより行われる、請求項28から31のいずれかに記載の方法。
【請求項33】
前記工程(2)が、化学的又は物理的プロセスにより、好ましくはウェット又はドライエッチング及び/又はリフトオフにより、前記トップコート(107)又は前記カプセル上層(103、103’)を部分的に取り除くことを含む、請求項32に記載の方法。
【請求項34】
前記トップコート(107)が、堆積法により塗工され、
前記堆積法が、化学蒸着法(CVD)、物理蒸着法(PVD)、原子層堆積法(ALD)、及び下層酸化法を含み、
前記化学蒸着法(CVD)が、PECVDを含む、請求項32から33のいずれかに記載の方法。
【請求項35】
前記方法が、更に、電子トレース(108)及び/又は電極(109)を、好ましくは前記トップコート(107)中に、堆積法及び/又はパターニングにより形成する工程を含み、
前記堆積法が物理蒸着法及び電着法を含み、前記パターニングがリフトオフ又はエッチングを含む、請求項28から34のいずれかに記載の方法。
【請求項36】
前記方法が、前記工程(iv)の前に、前記組立部品の上面を一時的キャリア(113)に付着させる工程を含む、請求項29から35のいずれかに記載の方法。
【請求項37】
前記基板(110)、前記カプセル上層(103)及び/又は前記剥離層(112)が、物理的手段及び化学的手段からそれぞれ独立して選択される手段により取り除かれ、
前記物理的手段及び前記化学的手段が、研削、エッチング、及び/又はストリッピングを含む、請求項29から35のいずれかに記載の方法。
【請求項38】
前記カプセル上層(103)及び/又は前記カプセル下層(104)が、生体適合性である、請求項28から37のいずれかに記載の方法。
【請求項39】
前記カプセル上層(103、103a)及び/又は前記カプセル下層(104、104a)が、耐腐食性である、請求項28から38のいずれかに記載の方法。
【請求項40】
前記カプセル上層(103、103a)及び/又は前記カプセル下層(104、104a)が、
金属、セラミック、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンド、ガラス、低透過性及び/又は緻密な(明細書)ポリマー、及びこれらの複数層から任意に選択される材料を含む又はからなり、
前記金属は、チタン、白金、ステンレス鋼、チタン-ニッケル、パラジウム、ニオブ、タンタル、これらの合金及び複数層を含み、
前記セラミックは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、炭化チタン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、金属窒化物、及び金属炭化物、並びにこれらの複数層を含み、
前記ポリマーが、フルオロカーボン、ポリウレタン、PEEK、シリコーン、PDMS、パリレン、及びポリイミドを含む、
請求項28から39のいずれかに記載の方法。
【請求項41】
前記剥離層(112)が、ポリマー材料から選択される材料、
好ましくは、樹脂から選択される材料、
より好ましくは、感光性樹脂及び可溶性ポリマー材料から選択される材料、
を含む又はからなる、請求項30から40のいずれかに記載の方法。
【請求項42】
前記トップコート(107)が、生体適合性である、請求項32から41のいずれかに記載の方法。
【請求項43】
前記トップコート(107)が、耐腐食性である、請求項32から42のいずれかに記載の方法。
【請求項44】
前記トップコート(107)が、透明である、請求項32から43のいずれかに記載の方法。
【請求項45】
前記トップコート(107)が、
セラミック、PECVD SiC又はSiOCを含むガラス、SiO、ダイヤモンド又はダイヤモンドライクカーボン、酸化アルミニウム、酸化チタン、及びこれらの複数層から選択される材料を含む又はからなる、請求項32から44のいずれかに記載の方法。
【請求項46】
前記方法が、請求項1から26のいずれかに記載のパッケージ機器を提供する、請求項28から45のいずれかに記載の方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電子機器分野、特に、生体医療用途等のための埋込み型電子機器に関する。より詳細には、本発明は、インビボでの生体医療用途の気密パッケージ電子機器、及び、前記電子機器を製造するための電子部品のパッケージ方法に関する。
【背景技術】
【0002】
電子機器は広範に使用されており、しばしば、厳しい環境条件下でも機能することが要求される。例えば、チップ等の埋込み型電子機器は、生体機能を行う、請け負う、制御する、又はモニタリングする等、インビボでの生体医療用途に用いられる。具体例としては網膜インプラントが挙げられる。そのような埋込み型電子機器は、通常、体液及び組織と直接接触する。したがって、電子機器、特にインビボでの生体医療用途に用いられる埋込み型電子機器は、下記の(1)及び(2)を達成するようにパッケージされなければならない。(1)前記埋込み型機器の腐食、ダメージ、機能不良等を引き起こすかもしれない酸化還元活性又は腐食性化合物の前記機器への侵入等、生体の水性環境によりもたらされるいかなる侵害からも埋込み型機器を保護する。(2)前記電子機器からの有害物の生体組織中への漏れ、又は、体内での前記埋込み型機器による機械的摩擦等の患者の身体へのその他の悪影響から身体を保護する。
【0003】
埋込み型電子機器をパッケージするための従来技術のアプローチでは、通常、前記機器は金属筐体に収容される。この公知のパッケージ方法において、パッケージは、もともとのチップよりかなり大きく、埋込みの際により大きな切開が必要となり、したがって、治癒及び炎症プロセスがより広範囲となってしまう。更に、インプラントが大きいほど、大きい繊維状カプセル封入となってしまい、前記インプラントの使用期間中の患者に局所的組織刺激を起こすリスクが高くなる。本発明の気密パッケージは、例えば、元々の機器のサイズと実質的に同様か、又はほんの僅か大きい寸法であるような小さいものである点で、従来技術のアプローチより優れたものである。小さな寸法の機器は、より少ない外傷性の埋込みと、より早い傷の治癒を可能とする。個々の電子機器を金属筐体に収容する従来の方法と比較し、本発明の方法は、同種又は異種の多数の電子機器又は部品の同時処理に適用することができ、使用される基板又は部品の材料に実質的に殆ど依存することがないという利点がある。更に、前記パッケージングは、前記電子機器又は部品を処理した後のクリーンルーム等のクリーン環境で行うことができ、このようにして、汚染及び/又はダメージを回避することができる。更に、本発明のパッケージング方法は、良好な気密封止をもたらす重なった層及び均一な厚みを有するカプセル封入を達成する非常に良好な段差被覆を提供する。
【0004】
特許文献1は、バイオ医療機器をパッケージングする他の方法を開示しており、前記方法は、製造中の劣化からカプセル層を保護するための一時的バリアとしての剥離層の本発明の使用を伴っていない。この処理方法の違いにより、特許文献1では2層で気密なカプセル封入を可能とせず、気密封止を達成するには更なるコーティングが必要となる。具体的には、本発明のパッケージング方法は、電子機器全体、特に側壁を覆う気密封止2重層の提供を可能とする。このような2重層構造は、気密封止を確実にするために特に有利である。単層ではピンホール(即ち、微小欠陥)を含んでいることがあり、前記ピンホールが、もしかすると腐食性を有するかもしれない周囲の媒体に対する侵入口を形成するかもしれないためである。第2の層の材料が前記ピンホールを塞ぎ、カプセル封入の気密封止を確実なものとする。従来技術の方法では、電子機器の全ての辺を完全に囲む2重層封止を提供することができなかった。その主な理由としては、コーティングの際に前記電子機器が固定される必要があり、固定することにより前記電子機器の表面のある箇所がアクセス不可能になるからである。前記機器を反転し、フォトレジス等の剥離層を一時的保護バリアとして使用する本発明のパッケージング方法が提供されて初めて、形状追従性封止材料を両側から側壁に堆積することができるようになり、よって、完全に周囲を封止する2重層を提供できるようになった。特許文献1に開示のパッケージ機器とは対照的に、本発明のパッケージング方法は、更に、前記機器の側壁が傾斜している必要はなく、バイオ医療インプラントに一般的に存在する真っ直ぐで直角な表面をコーティングすることができる形状追従性の高いコーティングと伴に用いることができる。更に、特許文献1は網膜インプラントに関するものではなく、トップコートの使用を想定しているものではなく、本発明に記載の透明トップコートの使用を想定していないことは言うまでもない。
【0005】
封入されたチップを囲む更なるカプセル層を必要とせず、ピンホールの数を低減した信頼性の高い気密カプセル封入をたった2つの重なった層により得られることが、本発明の方法及びパッケージの利点である。
【0006】
特許文献2及び特許文献3は、積層されたカプセル層によるパッケージによりカプセル封入されことにより多層カプセル封入された電子部品を含む埋込み型医療機器を開示している。
【発明の概要】
【0007】
本発明の実施形態は、インビボでの生物学的又は生体医療用途のための埋込み型電子機器等のパッケージ電子機器を製造するための、電子部品を気密パッケージする方法、及び前記方法により得られたパッケージ電子機器に関する。本発明に係る前記パッケージは、有利に、向上した気密バリアを付与し、前記気密バリアは、好ましくは、前記電子機器又はその機能性電子部品と、埋込みされた際のインビボ環境等の使用環境との相互作用を最小限に抑える。したがって、本発明のパッケージは、好ましいことに、1)腐食又は回路短絡効果等による前記機器の機能不良を回避する等、インビボ条件下での前記電子機器の機能維持を確保し、2)埋め込まれた際、周辺組織への前記機器の電子部品の材料の漏れ/溶脱又は拡散、又は、体内での埋め込まれた機器の機械的摩擦等の他の阻害要因から体を守る。言い換えると、本発明の機器を特徴づける前記気密パッケージは、外的要因に対する信頼性の高いバリアを形成するものである。より詳細には、本発明は、インビボ環境から前記機器が影響をうけることなく、また、前記電子部品の非生理学的材料又は非生体適合性材料が前記埋込み型機器周辺の組織に拡散することがない、双方向拡散バリアを提供することができる。本発明のパッケージの有利な特性は、好ましくは、前記電子部品を完全にカプセル封入する層状カプセルを提供することにより得られる。それにより得られたパッケージ機器は、2重層構造を形成するように前記電子部品を埋め込んだ層が少なくとも一部で重なり合っており、これは、好ましくは、本発明のパッケージ方法を用いて得る、又は得られる。
【0008】
第1の実施形態において、本発明は、電子部品と、前記電子部品をカプセル封入する気密パッケージとを含む埋込み型パッケージ機器に関し、前記パッケージが、カプセル上層及びカプセル下層を含み、前記カプセル上層及びカプセル下層は2重層を形成するように、少なくとも一部が重なり合っている。好ましくは、前記2重層構造は、少なくとも一部、より好ましくは完全に、前記電子部品の側壁まで延在して覆っている。このように、前記機器のパッケージにより、有利に、電子部品に気密封止が付与されてもよい。本願明細書において、前記「気密」、「気密な封止」及び「気密封止」の用語は、前記機器の機能にネガティブな影響を与える望ましくない外的要因に対して不透過性である、又は本質的に不透過性であることを意味する。即ち、「気密」封止又はカプセル封入は、前記機器の腐食又は他の機能障害を好適に最小限に抑える又は避けるように、有効な方法で、前記埋込み型機器を、その環境、特に、水性のインビボ環境から好適に遮断する。好ましくは、「気密」封止又は層は、前記機器への体液の浸入を防止する。前記「気密」の用語は、更に、前記埋込み型機器が身体から同様に遮断されることを意味してもよい。
【0009】
前記パッケージ機器は、通常、側壁表面と、上下面により形付けられている。前記「カプセル上層」及び「カプセル下層」の用語は、通常、カプセル封入される前記電子部品の上方(上)面、及び、前記電子部品の下面の少なくとも一部を覆うものである。したがって、前記電子機器の前記「上方面」は、1つ以上の層により、完全に又は部分的に覆われており、前記層の最表層が前記パッケージ埋込み型機器の上面を形成している。一方、パッケージされる前記電子部品の下面は、1つ以上の層により覆われており、前記層の最表面が前記パッケージ埋込み型機器の下面を形成している。
【0010】
前記機器は、例えば、周辺の細胞又は組織への電気刺激等によりインビボ環境と連通するフィードスルー又は穴を含んでいてもよいことが理解される。前記パッケージ埋込み型機器の「上方部」は、例えば、刺激を付加する又は記録する電極又はフォトダイオードを含有することにより、前記機器とその環境とが相互作用することを可能にする機能性構造又は機能を含む。よって、前記パッケージ埋込み型機器の「上面」は、その上方部を(部分的に)覆い、「下面」は下方部を覆う。ある態様では、前記上面又はその一部では、コート層を外部環境と接触する最外層として外部に晒していてもよい。本発明によりパッケージ機器を提供する製造方法に関し、前記製造方法は、1つ以上のカプセル層を前記上面に塗工する初期工程により特徴づけられ、前記上面塗工後にはじめて、前記下面は、1つ以上のカプセル下層を塗工することにより形成される。
【0011】
第2の実施形態において、本発明は、本発明による機密パッケージ機器を含む埋込み型システムを提供する。
【0012】
第3の実施形態において、本発明は、埋込み型機器を提供又は製造するためのパッケージ方法に関し、前記方法は、(a)少なくとも1つの電子部品を基板上に提供する工程、(b)前記電子部品に、少なくとも1つのカプセル上層を塗工する工程、及び(c)前記電子部品に、少なくとも1つのカプセル下層を塗工する工程を含み、前記カプセル上層及び前記カプセル下層は、2重層構造を形成するように、少なくとも一部で重なり合っている。本発明の方法は、多数のパッケージ電子機器を随時製造するように、エレクトロニックダイス等として、複数の電子部品を加工できるようにしてもよく、これにより、費用効果が高くスケーラブル(低価格で大規模化可能)な、特にチップ製造のための、製造方法となり有利である。
【0013】
前記第2の実施形態の態様でもある更なる実施形態では、本発明は、パッケージ埋込み型機器を提供する電子部品のパッケージ方法に関し、前記方法は、(i)電子部品プロト構造に溝を導入することにより、少なくとも1つ、好ましくは互いに間隔を空けて配された複数の電子部品が基板上に設けられた組立部品を提供し、隣接する前記電子部品とそれらの共通の基板とが前記溝をサポート又は画定している工程、(ii)前記組立部品に少なくとも1つのカプセル上層を塗工して、前記電子部品をコーティングし、前記溝に下引きする工程、(iii)前記組立部品に剥離層を塗工する工程、(iv)部分的に前記剥離層を取り除き、前記下引きされた溝内に前記剥離層に残存分を残す工程、(v)前記組立部品(100)を、上下逆に反転する工程、(vi)前記組立部品の下面から、(a)前記基板、(b)前記カプセル上層、及び(c)前記剥離層の残存分を取り除く工程、、及び(vii)前記組立部品に少なくとも1つのカプセル下層を塗工する工程、を含み、前記カプセル上層及び前記カプセル下層は、少なくとも一部が重なり合って、2重層を形成するように塗工される。本発明の方法によると、前記カプセル上層及び前記剥離層を追加することにより、前記組立部品の上面又は上方面を始めに処理する。続いて、前記組立部品は、好ましくは、上下逆に反転され(よって、好ましくは下から、それより劣るが若干好ましくは上から、前記下面が処理され)て、前記組立部品の下側から前記基板、及び前記溝中の前記剥離層下の前記カプセル上層が取り除かれる。よって、前記剥離層の残存分が各溝に残され、残された前記剥離層の残存分が、前記溝の側壁を下引きする前記カプセル上層を劣化から保護する。続いて、前記剥離層は、通常、完全に取り除かれる。最後に、前記カプセル下層が、前記組立部品の下面及び側壁に塗布される。本発明の方法は、好ましくは前記剥離層を処理及び保護のため残存させる際に前記組立部品を反転することにより、前記電子部品の側壁まで延在する積層されたカプセル層により気密パッケージが達成され、これにより向上した気密性が得られるため有利である。
【0014】
埋込み型機器をパッケージするための本発明の第3及び4実施態様による方法により、本発明の第1の態様のパッケージ機器を好ましく作製することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
図1A図1Aは、本発明の好ましい態様に係るパッケージ機器1を示すものである。
図1B図1Bは、本発明の好ましい態様に係るパッケージ機器1を示すものである。
図1C図1Cは、本発明の好ましい態様に係るパッケージ機器1を示すものである。
図1D図1Dは、本発明の好ましい態様に係るパッケージ機器1を示すものである。
図1E図1Eは、本発明の好ましい態様に係るパッケージ機器1を示すものである。
図1F図1Fは、本発明の好ましい態様に係るパッケージ機器1を示すものである。
図2-1】図2-1は、工程309から313により特徴付けられた、本発明の好ましい態様に係る、電子部品を含むカプセル封入パッケージ機器を作製又は製造する方法を示すものである。
図2-2】図2-2は、工程314により特徴付けられた、本発明の好ましい態様に係る、電子部品を含むカプセル封入パッケージ機器を作製又は製造する方法を示すものである。
図2-3】図2-3は、工程315から工程317により特徴付けられた、本発明の好ましい態様に係る、電子部品を含むカプセル封入パッケージ機器を作製又は製造する方法を示すものである。
図3図3は、気密パッケージにより電子部品が埋め込まれた、本発明に係るパッケージ機器を示すものである。
図4A図4Aは、異なる態様に基づき、トップコート107を塗工する任意の工程400を例示するものである。
図4B図4Bは、異なる態様に基づき、トップコート107を塗工する任意の工程400を例示するものである。
図4C図4Cは、異なる態様に基づき、トップコート107を塗工する任意の工程400を例示するものである。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に本発明が詳細に説明されるが、本発明は、本願明細書に記載の特定の方法、プロトコール及び試剤に限定されることなく、それらは変更されてもよいことが理解されるべきである。また、本願明細書で使用される用語は本発明の範囲を限定するものではなく、本発明の範囲は添付の請求項によってのみ規定されるものであることが理解されるべきである。特に言及されない限り、本願明細書中で使用される技術用語及び科学的用語の全ては、当業者により一般的に理解される意味と同じものを意味する。
【0017】
以下に、本発明の特徴が説明される。これら特徴は、具体的な態様として説明される。しかし、これら態様は、更なる態様を作製するために、どのように組み合わせても、また、いくつ組み合わせてもよいことが理解されるべきである。多様に記載された例及び好ましい態様は、前記記載された態様により本発明が限定されるものであると解釈されるべきではない。本記載は、任意の数の開示された及び/又は好ましい特徴を有する明記された態様と組み合わされた態様をサポートし、包含するものであると解釈されるべきである。更に、本願明細書に記載された全ての特徴の順序及び組み合わせの全ては、特にその他に理解されない限り、本願明細書の記載によってサポートされるものであると考慮される。
【0018】
更に、記載及び請求項中の第1、第2等の用語は、同様の要素間で違いを出すために使用されており、時間的な、空間的な、等級付け、又は他の方法での順序を必ずしも示すものではない。使用された前記用語は適切な状況下で交換可能であり、記載された本発明の態様は説明又は示された以外の順序で行うことができることが理解されるべきである。記載された方法工程は適切に順序を変更できることが言及されるべきである。以下の記載において、実例として、工程の順序が変更されたいくつかの例及び態様が説明されるが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0019】
更に、記載及び請求項中の上、下、上方、下方等の用語は、説明目的のために使用されており、必ずしも位置関係を示しているものではない。使用された前記用語は適切な状況下で交換可能であり、記載された本発明の態様は説明又は示された以外の配向で行うことができることが理解されるべきである。
【0020】
文脈上必要がない限り、本願明細書及びそれに続く請求書を通して、「含む」の用語及びその変形である「含有する」等は、言及されている部材、整数、又は工程を含むことを意味しており、その他の言及されていない部材、整数、又は工程を除外するものではない。「~から構成される」の用語は、前記「含む」の用語の特定の態様であり、その他の言及されていない部材、整数、又は工程を除外する。本発明の文脈において、前記「含む」の用語は「~から構成される」の用語を包含するものである。したがって、前記「含む」は、前記「~から構成される」と伴に「~からなる」をも包含し、例えば、Xを「含む」組成物は、Xのみから構成されてもよく、又はX+Y等、Xに加えて更なるものを含んでいてもよい。
【0021】
特に言及又は文脈によって明らかに矛盾しない限り、本発明を説明する文脈において(特に請求項の文脈において)使用される冠詞は、単数及び複数の両方を包含するものであると解釈されるべきである。数値の範囲の詳述は、単に、範囲内の個々の数値を参照する簡略な方法として用いられているものである。特に記載がない限り、各数値は、各数値がそれぞれ本願明細書に記載されているかの如く、本願明細書内に取り込まれる。本願明細書におけるいずれの言語も、本発明を実施するのに必要であるが、請求項で規定されていない要素を意味すると解釈されるべきではない。
【0022】
「実質的に」の用語は、「完全に」の意味を除外するものではなく、例えば、Yを「実質的に」含まない組成物は、Yを完全に含まなくてもよい。必要に応じて、本発明の定義から前記「実質的に」の用語は省略されることがある。
【0023】
数値xと関連して使用される用語「約」は、x±10%を意味する。
【0024】
第1の実施形態では、本発明は、電子部品を含む気密パッケージ電子機器に関する。好ましくは、前記機器は、埋込み型機器である。より好ましくは、前記電子機器は、目に埋め込むのに好適な、又は目に埋め込むように構成されている網膜インプラントであってもよい。本発明に係る前記電子機器は、積層又は2重層構造である気密パッケージを含み、好ましくは、前記気密パッケージは前記電子部品の側壁上に延在する又は少なくとも一部を覆う。これにより、前記パッケージは、長期埋込みが好適になるための前記機器の気密カプセル封入を向上する。好ましくは、前記気密パッケージは、例えば、体液又は細胞の侵入、及び金属等の非生体適合性剤の電子部品からインビボ環境への拡散など、埋込み後の水性のインビボ環境からの悪影響を防止又は軽減する。好ましくは、前記パッケージ機器は、少なくとも2つの耐腐食性カプセル層、即ち、カプセル上層及びカプセル下層により、封入又は埋め込まれる。前記気密パッケージ機器は、また、2つを越える数のカプセル層を有していてもよい。例えば、前記機器は、互いに重ね合わされる1つ以上のカプセル上層及び/又は、互いに部分的に又は完全に重ね合わされる1つ以上のカプセル下層を含んでいてもよい。最外層は好ましくは生体適合性を有していてもよい。前記気密パッケージ機器は、前記請求項で請求された電子機器に更なる特性を付与するトップコート等、更なるコーティングを含んでいても良い。例えば、気密パッケージ光起電力(網膜)インプラントの場合、前記トップコート及び/又は前記カプセル上層は、可視光線又は近赤外線(IR)等の光信号により暗号化されたデータを受け取るために、透明材料により形成されていてもよい。埋込み型刺激装置又は埋込み型記録装置として使用される本発明の電子機器の場合、前記トップコート又は前記カプセル上層は、電極を埋め込んでいてもよい。したがって、好ましくは、前記電子機器の上面に位置する前記電極及び/又は前記フォトダイオードは、その環境に晒されるのが好ましく、よって、少なくとも前記電極及び/又は前記フォトダイオードの最表面がどのカプセル層によっても覆われていない。より好ましくは、前記電極及び/又は前記フォトダイオードは、少なくとも1つのカプセル層、特に、トップコート及び/又はカプセル上層に、埋め込まれている。前記カプセル上層及び前記カプセル下層はそれぞれ、1つ以上の導電性(底)層から構成されていてもよく、前記層は、例えば、電線としてパターニングされていてもよく、よって、前記機器の上面と下面とが1つ以上の電気接続を形成していてもよい。
【0025】
パッケージ埋込み型機器1の例が、実例として、図1A~F及び図3に示されるが、これらに限定されるものではない。本発明に係る前記パッケージ電子機器は、気密パッケージによりカプセル封入された電子部品101を含み(前記気密パッケージは、前記電子部品101を囲み封入している層により形付けられる)、前記パッケージは、少なくともカプセル上層103及びカプセル下層104を含む。前記カプセル上層103及び前記カプセル下層104は、例えば、前記カプセル封入機器の側壁で、2重層構造105及び105’の領域を形成するように少なくとも一部が重なり合っていている。したがって、前記カプセル上層及び前記カプセル下層は、通常、それぞれ、パッケージされる前記電子部品の上面及び下面を(少なくとも部分的に)覆うだけではなく、例えば、鉛直方向に、前記上面及び前記下面を越えて延在するように設計されており、よって、前記機器の側壁をも(少なくとも部分的に)覆う。図1A~Dに例示された態様では、前記カプセル下層104は、前記2重層構造105及び105’の領域において、前記カプセル封入機器の最表層を形成している。しかし、そのような2重層構造105及び105’の領域において、前記カプセル上層103が前記機器の最表層を形成している組立部品100も本願明細書では説明される。
【0026】
前記パッケージ電子機器1は、一般的に、チップ、刺激装置、及び制御又はモニタリング機器等、いかなる電子機器であってもよい。前記電子機器は、好ましくは埋込み型である。前記パッケージ電子機器は、生物学的又は生体医療用途に有用なものであるものが好ましく、特に、インビボ用途であるものが好ましい。例示的な埋込み型電子機器は、国際公開第2016/180517号及びPCT/EP2018/069159等に記載の網膜下又は網膜上インプラント、並びに、視角野を刺激するためなどの脳インプラントを含む。これらインプラントにより、患者の目又は脳内等で神経細胞を電気的に刺激すること(例えば、視角野を刺激することにより視覚を取り戻すため、又はパーキンソン病の治療のために神経細胞を刺激すること)、及び/又は患者の神経細胞の電気信号を記録することができる。本願明細書に記載される前記気密パッケージは、埋込み箇所で、前記埋め込まれた電子機器が水性のインビボ環境に影響されることなく、長期のインプラント半減期を確保する。
【0027】
本発明に係る前記電子機器1は、1つ以上の電子部品101を含んでいてもよく、前記電子部品101は、直方体形状であることが有利であり、外に向かって突出する(直方体から突出する、又は直方体の面から突出する)立体形状のトランジスタ等のパッケージされる電子要素を好ましくは含まず、ダイスとも呼ばれる集積回路であってもよい。前記部品の他の種としては、0レベルパッケージ化MEMS、薄膜キャップ化MEMS等の微小電気機械システム(メムス、MEMS)が挙げられる。前記MEM機器は、例えば、パッシブ部品、アクチュエーター、センサー等を含む。前記部品の更なる例示としては、マイクロ流体デバイスが挙げられる。更なる例示は、二次電池等の電池、回路、トランジスタ、抵抗器、フォトダイオード、キャパシタ等が挙げられる。電子部品101は、実際には、例えば、集積回路上のメモリーチップなど、複数の電子ユニットの積層を表していてもよい。電子部品101を形成する積層ユニットは、パッケージ埋込み型電子機器1が、電子ユニットの積層を含む電子部品101を含むように、全体がカプセル封入されていてもよい。
【0028】
前記電子ユニットに加え、前記電子部品101は、(非カプセル)層102を含んでいてもよい。前記層102は、前記電子部品101の下面に位置していてもよく(図1C及びD参照)、或いは、上面に位置していてもよい。前記層102は、好適な基板材料のいずれかを含む又はから構成されていてもよく、例えば、前記材料は、シリコン材料等の半導体材料、絶縁材料、ガラス材料、ポリマー材料、及び、使用可能であれば、金属等の導電性材料を含む。前記層102は、好ましくは、セラミック又はガラスを含む又はから構成されていてもよく、前記セラミック又はガラスは、任意に酸化ケイ素及び二酸化ケイ素から選択され、任意に、シリコン基板の酸化により得られる。前記層102は、前記パッケージ方法の過程で、特に、前記基板110を取り除く工程で、前記電子部品101を保護するバリアとして有利に作用する。例えば、前記層102は、基板110を取り除く工程において、分解/劣化しにくい材料により構成されてもよい。前記電子部品101、層102、及び基板110は、好ましくはsilicon on insulator又はSOIウエハ構造を形成するように選択されてもよく、前記ウエハ構造は容易に入手可能で、汎用されている。このため、前記層102は、シリコン基板110上に配置された酸化ケイ素の層として構成されていてもよい。特に、フォトダイオード又は他の感光性電子部品101では、所望の電子的及び又は光学的特性を有する電子ユニットと部品101の層102との界面を形成するため、前記二酸化ケイ素層102は、好ましくは、前記電子部品上に熱成長されてもよい。
【0029】
前記カプセル上層103及びカプセル下層104からなる2重層構造105及び105’が、電子部品101の側壁106及び106’の少なくとも一部、より好ましくは全部を覆うことが好ましい。側壁106、106’の少なくとも一部を覆う又は延在にする2重層構造は、向上した気密カプセル封入を有利に与え、ある態様においては、好ましくは、カプセル上層103及びカプセル下層104をそれぞれ囲む更なるカプセル層の必要性をなくす。前記2重層(105、105’)は、好ましくは、前記電子部品(101)を完全には覆っておらず、一部のみを覆っており、例えば、前記2重層(105、105’)は前記電子部品(101)の側壁(106、106’)のみを覆っているが、前記電子部品(101)の上面及び下面は2重層(105、105’、105a、105b、105c、105d)により覆われていない。或いは、前記2重層(105、105’)は、前記電子部品(101)の側壁(106、106’)及び下面を覆っているが、前記上面は覆っておらず、フォトダイオード及び/又は電極(109)を露出していてもよい。他の態様では、前記電子部品(101)の下面のみが2重層(105、105’、105a、105b、105c、105d)で覆われている。
【0030】
カプセル上層103及び/又はカプセル下層104は、電気部品101に気密封止を与えるものができることが好ましい。前記「気密封止」、「気密な封止」、及び「気密」の用語は、明細書の他の箇所で規定されている。カプセル上層103及び/又はカプセル下層104は、有利には、生体適合性を有していてもよい。「生体適合性」及び「バイオ適合性」の用語は、被移植体への好ましくない局所的又は全身的影響を誘発することなく、被移植体で医療機器が目的の機能を発揮できる能力を意味する。前記カプセル上層103及びカプセル下層104は、耐腐食性を有していてもよい。「耐腐食性」の用語は、通常、インビボ状態下で経験されるような水性環境との反応に対する材料の耐性を意味する。酸化還元(レドックス)活性化合物は、前記機器の材料を腐食させることがある。インビボでのインプラントの腐食は、前記インプラントが、一般的に、その環境において酸化又は化学的に攻撃されることを意味する。「耐腐食性」は、劣化、及び、レドックス反応等の化学的変性/劣化に対する耐久性である。
【0031】
前記電子部品の側壁106、106’を好ましくは少なくとも部分的に覆うように重なり合っている1つのカプセル上層103及び1つのカプセル下層104から構成される気密パッケージ、即ち、更なるカプセル層を含まない気密パッケージに特徴づけられる態様(例えば、更なる上表面のコーティングを有する図1Aの態様、又は図1B~Dの態様、及び図3の態様を参照)としては、前記電子機器1のインビボ適応性及び適切な機能の両者を確実なものとするため、前記カプセル上層103及びカプセル下層104は生体適合性及び耐腐食性の両者を有することが好ましい。当業者は、好ましくは生体適合性及び/又は耐腐食性を示す前記カプセル上層103及びカプセル下層104の好適な材料を容易に選択することができる。前記カプセル上層103及び前記カプセル下層104に好適な材料の例示としては、金属、セラミック(酸化物、窒化物、及び炭化物を含む)、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンド、ガラス、ポリマー(特に、低透過性及び/又は緻密なポリマー)、及びこれらの組合せが挙げられる。詳細には、好適な金属は、チタン(Ti)、白金(Pt)、ステンレス鋼、チタン-ニッケル、パラジウム、ニオブ、タンタル、及びこれらの組合せ又は合金から選択されてよく、好適なセラミックは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、炭化チタン、窒化チタン、酸化チタン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、及びこれらの組合せから選択されてよく、好適なポリマーは、フルオロカーボン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、シリコーン、PDMS、パリレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカーボネートウレタン、シリコーン、シリコーン-ポリエステル-ウレタン、durimide(感光性ポリイミド)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレン、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、これらの組合せ、及びこれらの複数層から選択されてもよい。前記カプセル上層103及び前記カプセル下層104は、同じ又は異なる材料を含む、或いは、同じ又は異なる材料から構成されていてもよい。前記カプセル上層103及び前記カプセル下層104は、例示された前記材料の単層又多層(例えば、1つ超の(低)層)を含む又はから構成される。
【0032】
上述されたように、前記気密パッケージは、少なくとも1つの更なるカプセル上層103a、及び/又は更なるカプセル下層104a(例えば、図1E及び1Fの態様参照)を含んでいてもよく、前記更なるカプセル上層103a、及び/又は更なるカプセル下層104aは、好ましくは、前記側壁で少なくとも1つの更なる2重層構造105a、105cを形成するか、前記下側(図1E)で少なくとも1つの更なる2重層構造105dを形成するか、前記側壁(図1F)で少なくとも2つの更なる2重層構造(105a、105b、及び105c)を形成する。そのような更なる2重層構造105b、105cは、前記機器の下面及び又は側壁で、カプセル外層104及び104aとなるものであってもよい。特に、そのような更なるカプセル下層104aは、前記電子部品101の側壁106、106’の少なくとも一部、より好ましくは、完全に覆っていてもよい。それにより、図1E及び1Fの態様で示されるように、内部2重層構造105を形成しているカプセル上層103とカプセル下層104とにより3重カプセル層の側壁配置が形成される。前記カプセル下層104は、更に、前記更なるカプセル下層104aと伴に、第2の2重層構造105cを形成し、よって、前記側壁に3重層構造が形成される。好ましくは、前記少なくとも1つの更なる2重層(105a、105b、105c)は、前記側壁(106、106’)のみを覆うが、前記電子部品(101)の上面及び下面は覆っていない。前記カプセル上層103が、最外層である前記更なるカプセル下層104aと前記側壁領域で最内カプセル層となる前記カプセル下層104とに挟まれるように、類似の配置は、前記カプセル下層104が前記側壁領域で最内カプセル層として設けられる。また、前記更なるカプセル下層104aは、前記機器の下面で、カプセル下層104と他の2重層構造105dを形成していてもよい。図1F図1Eの態様を例示するが、カプセル層103上に部分的な更なるカプセル上層103aを含んでおり、よって、本発明によるパッケージ電子機器1の上面の周囲部でも2重層構造を形成する。3つの2重層構造105a、105b、及び105c(4つの側壁層)は、前記機器101の側壁に配置されている。1つを越える、又は2つを越える積層カプセル層を使用することにより気密カプセル封入が向上され有利であり、外部影響に対してより信頼性の高いバリアを提供できる。そのような多層構造を用いた態様は、前記更なる層が前記埋込み型機器を顕著に大きくしないため、埋込み手術において、傷の治癒を遅らせることなく、局所的組織刺激のリスクも低い。
【0033】
このため、気密パッケージには、少なくとも1つの更なるカプセル上層103a及び/又は少なくとも1つの更なるカプセル下層104aが付与されていてもよい。更なるカプセル上層103aは、好ましくは、カプセル層103上に塗布される。更なるカプセル下層104aは、好ましくは、カプセル下層104上に塗布される。よって、更なるカプセル上層103a及びカプセル下層104aが、好ましくは、気密パッケージの最外層を形成し、埋込みされた際に、環境、即ち、生体組織と直接接触する。カプセル上層103及びカプセル下層104は、電子部品101の最外層103a及び104a、並びに、上面及び下面で挟まれていてもよい。したがって、カプセル上層103及びカプセル下層104は、これに限定されないが、生体適合性材料(特に、カプセル上層103及びカプセル下層104が生体組織と直接接触していない場合)から構成されてもよい。しかし、カプセル上層103及びカプセル下層104は、環境による腐食から電子部品101を保護するために、例示された耐腐食性材料を含む又はから構成されることが好ましい。更なるカプセル上層103a及び/又はカプセル下層104aが存在する場合、これに限定されることはないが、更なるカプセル上層103a及び/又はカプセル下層104aは耐腐食性材料(特に、層103及び104が好適に電子部品101を腐食から保護するものである場合)から構成されていてもよい。層103a及び104aが存在する場合、層103a及び104aは生体適合性材料から構成されるのが好ましい。
【0034】
更なるカプセル上層103a及びカプセル下層104aは、それぞれ、単層又は多層(例えば1つを越える(底)層)から構成されていてもよい。更なるカプセル上層103a及びカプセル下層104aは、同じ材料で構成されていてもよく、異なる材料で構成されていてもよい。
【0035】
例えば、「積層」又は多数のカプセル層を有する好ましい態様は、金属等の耐腐食性材料からなるカプセル上層103及びカプセル下層104を含んでいてもよく、前記カプセル上層103及びカプセル下層104は、シリコーン、パリレン、ハイドロゲル等の生体適合性材料からなる更なるカプセル上層及び/又はカプセル下層に更に埋め込まれていてもよい。
【0036】
(更なる)カプセル上層103、103a及びカプセル下層104、104aは、任意の多層構造の場合は特に、パッケージ機器の上面と下面と、又はパッケージ機器の一部との間に電気的接続を形成することができる少なくとも1つの導電性(底)層を更に含んでいてもよい。前記回路構成は、パッケージ機器の上面上に位置するのが好ましい。これら(底)層のうちの1つ以上は、前記パッケージ機器の上面と下面との間の電気的接続を1つ以上形成するために、例えば、電気線の形状に、パターニングされていてもよい。例えば、電子部品101は、前記電子部品の上面及び/又は下面上に回路構成を有していてもよく、前記上面及び/又は下面は、少なくとも1つのカプセル層の一部である複数層の電気線の1つにより相互接続していてもよい。したがって、カプセル層103、103a、104、104aは、白金、チタン、炭化ケイ素、酸化ケイ素、又は窒化ケイ素等の少なくとも1つのパターン化又は非パターン化電気導電性又は絶縁性(底)層を含んでいてもよい。1つの態様において、金属等の前記導電性カプセル封入(底)層は、全て、互いに電気的に接続されていてもよく、前記電子部品101の回路構成の電気的アースに接続されていてもよい。他の態様では、少なくとも1つのカプセル層103、103a、104、104aの(パターン化)パッシブ導電性線(トラック)又は導電性のベタ(底)層は、前記回路構成と電気的接続を形成していてもよい。
【0037】
本発明による前記電子機器1は、図1B~Dに記載されているように、少なくとも1つのトップコート107を更に含んでいてもよい。トップコート107は、前記パッケージの気密性を有利に確実なものとするために、少なくとも一部でカプセル上層103と重なっていてもよい。トップコート107は、通常、本発明の機器の上面等、本発明の気密パッケージの最外層を形成するため、前記トップコート107は埋込みされた際に生体組織と直接接触するため、生体適合性であることが好ましい。トップコート107は、また、耐腐食性でもあることが好ましい。トップコート107は、本発明の機器の気密パッケージに更なる機能を加える好適な材料により構成されていてもよい。特に埋込み型電子機器1としての網膜インプラントの場合、例えば、トップコート107は光透明材料から構成されていてもよい。有利なことに、光(例えば、IR又は可視光)透過性トップコートは、光起電力網膜刺激装置等の網膜刺激装置に有用である。詳細には、トップコート107は、SiC、SiOC等を含むセラミック、SiO、ガラス、ダイヤモンド又はダイヤモンドライクカーボン、酸化アルミニウム、酸化チタン、及びこれらの組合せから選択される材料を含む又は前記材料から構成されていてもよい。トップコート107は、前述の材料の単層又は多層((底)層を表す)から構成されていてもよい。各(底)層は、特に上述のように、同一の材料から構成されてもよく、好ましくは異なる材料から構成されてもよい。トップコート107の前述の材料は、非結晶性でもよく、結晶性でもよく、また、非結晶性及び結晶性の両方として提供されてもよい。
【0038】
上述のように、埋込み型電子機器1は、好ましくは、網膜インプラント又は網膜刺激装置等の電気刺激装置であってもよい。このため、気密パッケージは、例えば、前記気密パッケージのトップコート107及び/又はカプセル上層103により、電子トレース108を含み及び/又は、前記電子部品101の一部であり電気的に接続している電極109を覆う、囲む、又は埋め込んでいてもよい。好ましくは、電極109は、前記気密パッケージ内又は気密パッケージ上に延在して配置され、特に、トップコート107内又はトップコート107を突き出て配置されていてもよい。そのような態様は、図1Dに示されている。トップコート107は、電気、光、又は化学信号(例えば、データ通信のための)を部品101へ、又は、部品101から通過又は交換するための穴又はフィードスルーを含んでいてもよい。前記フィードスルーは、例えば、電気又はイオン信号を通信する電極109を含んでいてもよい。配置可能な他のフィードスルーの例示としては、液体フィードスルーであってもよい。フィードスルーは、(例えば、信号を検出するため、又は標的細胞又は組織を電気的に刺激するための)電気信号を受信又は送信するための導線と接続されていてもよい。フィードスルーは、更なる電極又は前記部品101から遠隔にある機器と接続された又は通信しているフレキシブル回路に接続されていてもよい。
【0039】
好ましくは、前記電子部品101は、電極109をフィードスルーとして有する集積回路又はダイスである。電極109は、好ましくは、前記集積回路内又は上に配置された電子トレース108と電気的に連通していることが好ましく、例えば、前記集積回路を介して生成された電気信号を変換してもよい。しかし、当業者であれば、電子トレース108及び/又は電極109の規定が電気刺激装置又は網膜刺激装置に規定されるものではないことは、容易に理解できるはずである。電子トレースは、例えば、センサー、制御装置、又は他の用途に使用される装置内に配置されてもよい。埋込み型機器1では、選択された電子トレース108及び/又は電極109は、埋込みされた際、生体組織と直接接触されるのが好ましい。このため、電極109は、好ましくは、生体適合性材料からなっていてもよい。好ましくは、電子トレース108及び/又は電極109は、腐食又は電子部品101へのダメージを削減又は回避するために、耐腐食性材料からなっていてもよい。電子トレース108及び/又は電極109は、好ましくは、白金、黒色/多孔質白金、イリジウム、イリジウム/白金、酸化イリジウム、ポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルフォネート(PEDOT:PSS)、PEDOT:PSS、(多孔性)窒化チタン、ドープダイヤモンド又はドープダイヤモンドライクカーボン、及びグラフェンから選択される材料を含む、又は前記材料から構成されていてもよい。
【0040】
好ましい態様では、本発明の機器1は、図1C又はDに示された通りであってもよく、少なくとも1つの電子部品101を含み、前記電子部品101は、好ましくは集積回路又はダイスを含み、任意に、パッシブ又はアクティブ回路等の電子ユニットを更に含む。前記電子部品101は、カプセル上層103及びカプセル下層104を含む気密パッケージに完全に包まれている又は埋め込まれており、前記カプセル上層103及びカプセル下層104はそれぞれ、金属、好ましくはチタンで構成されている。電子部品101、101’は、通常、前記電子部品の下面に位置する層102を含んでいてもよく、前記層は、セラミック又はガラス、金属、又はこれらの組合せ、好ましくは二酸化ケイ素から構成されている。具体的な態様では、前記層102は、例えば、セラミック又はガラスの1層と金属の1層から構成される、或いは、2層の金属層から構成される2重層構造であると予見される。前記部品101、101’の一部としての電極109は、好ましくは、多孔性白銀ブラック等の白金(Pt)、(多孔性)TiN、酸化イリジウム、又はポリ(3,4-エチレンジオキシチオフェン)ポリスチレンスルフォネート(PEDOT:PSS)から構成され、前記電子部品101と、周囲の体液、組織又は細胞との電気接続を形成する。トップ層107に埋め込まれるように上方に突き出る、又はトップ層107を超えて突き出る等、電極109は、前記部品101、101’と、埋込みされた際の生体組織等の周囲環境との電気的接続を形成するように構成されてもよい。好ましい態様において、電子トレース108は、前記部品101、101’の上面又は上方面等、前記電子部品101、101’の一部として提供されてもよい。
【0041】
前記機器1の気密パッケージは、好ましくはトップ層107を含み、前記トップ層は好ましくは透明である。前記トップ層107は、好ましくはセラミック層から構成されていてもよく、より好ましくはセラミック多層から構成されてもよく、更に好ましくは、非結晶性炭化ケイ素等の炭化ケイ素を含む又はから構成されるセラミック多層から構成されてもよい。前記トップ層107は、また、電子トレースを含んでいてもよく、前記電子トレースは好ましくはチタン(Ti)、金(Au)、白金(Pt)、銅(Cu)、パラジウム(Pd)、アルミニウム(Al)、又はこれらの多層から選択される。
【0042】
図3は、本発明のパッケージ埋込み型機器1の他の態様を示す。図3の機器は、更なるコート層107を含む。前記カプセル上層103は、先端領域で前記コート層107と重なる。このような機器1は、例えば、図4Aの工程(工程300)を組み合わせた本発明の方法を実施することにより得られてもよい。
【0043】
前記機器1は、目に埋め込まれるための気密パッケージによりパッケージされた、好ましくは、網膜上又は網膜下に埋め込まれるために構成された、網膜インプラントであるのが好ましい。或いは、前記機器1は、神経皮質に埋め込まれるために、特に、視覚データ処理に関連する神経皮質細胞と接続するために構成されていてもよい。
【0044】
第2の実施形態において、本発明はシステムを提供し、前記システムは、例えば、好適には目に埋め込むように構成された、少なくとも1つの前記パッケージ埋込み型機器1を含む。前記機器1は、請求項に記載の前記機器1を製造する方法により得られるものであってもよい。前記システムは、また、他の埋込み型又は外部(非埋込み型)機器又は部品を含んでいてもよい。本発明のシステムは、また、1つを超える数の、例えば、複数の埋込み型機器1を含んでいてもよい。上述のように、パッケージされる電子部品101は、集積回路又はダイス、CMOSロジックス(操作、プログラム可能装置等)、MEMS(例えば、圧力検知のための膜、ドラッグリザーバー、ドラッグデリバリーのためのマイクロ流体等)、バッテリー、アンテナ(例えば、二次電池を充電するためのアンテナ、再プログラム可能機器をプログラムするためのアンテナ)を含んでいてもよい。
【0045】
システムは、機器101と通信するビデオ眼鏡及び外部ポケットプロセッサ等の外部機器と一緒に提供されていてもよい。通常、前記機器101は、赤外線通信、パターン化された光、RF通信、又はその他好適な手段等を介した無線通信により外部機器と通信していてもよい。或いは、前記機器101は、皮内ワイヤ等の有線通信により外部機器と通信していてもよい。好ましい態様では、本発明に係るシステムの埋込み型部品は、前記機器1として示され、例えば、網膜インプラントとして図1Dに示される気密パッケージ部品101を含んでいてもよい。前記パッケージ部品101は、好ましくは目に埋め込まれてもよく、より好ましくは、網膜上又は網膜下インプラントとして好適であり、そのように構成されている。前記パッケージ電子部品101、101’は、積層されているか、及び/又は好適な支持体上に互いに離れていてもよく、その両方であってもよい。機能的に異なるパッケージ電子部品101、101’は、共通の支持体上の金属等、電子トレースを介して電気的に接続されていてもよい。前記支持体は、柔軟性又は伸縮性があるものであってもよい。前記パッケージ電子部品101、101’は好適な付着手段により前記支持体に付着していてもよい。前記システムは、電気フィードスルー、流体フィードスルー等の包括的な(グローバル)フィードスルーと伴に提供されていてもよい。
【0046】
第3の実施形態では、本発明は、埋込み型パッケージ機器1を作製又は製造する方法を提供し、前記方法は、(a)基板110上に位置する少なくとも1つの電子部品101を提供する工程、(b)少なくとも1つのカプセル上層103、103aを電子部品101に塗工する工程、及び(c)少なくとも1つのカプセル下層104、104aを電子部品101に塗工する工程を含み、前記カプセル上層103、103a、及びカプセル下層104、104aは少なくとも一部で重なり合って、前記機器1の側壁部分に2重層構造を形成する等、2重層構造105、105’、105a、105b、105c、105dを前記機器1の下面及び/又は上面に形成する。前記2重層(105、105’、105a、105b、105c、105d)は、好ましくは、完全ではなく、部分的に前記電子部品(101)を覆い、例えば、前記2重層(105、105’)は前記電子部品(101)の側壁(106、106’)覆うが、前記電子部品(101)の上面及び下面は2重層(105、105’、105a、105b、105c、105d)により覆われていない。或いは、前記2重層(105、105’)は、前記電子部品(101)の側壁(106、106’)及び下面を覆っているが、前記上面は覆われておらずフォトダイオード及び/又は電極(109)が露出していてもよい。他の態様では、前記電子部品(101)の下面のみ2重層(105、105’、105a、105b、105c、105d)により覆われている。
【0047】
前記第3の実施形態の態様であってもよい第4の実施形態では、本発明は、埋込み型パッケージ機器を作製または製造する方法(例えば図2に示すような)を提供し、前記方法は、下記の309、310、311、312、313、314、及び315、任意の工程316及び317を、好ましくはこの順序で含む。
【0048】
工程309では、組立部品100は、連続層102と、前記連続層上に配置された連続電子部品原構造101とを有す原構造として提供される。前記組立部品100は、その下側を基板110により支持されている。
【0049】
工程310では、少なくとも1つ、好ましくは複数の電子部品101及び101’の組立部品100が提供され、前記電子部品101及び101’は、溝又は間隔により互いに隔離されて基板110上に配置されている。隣接する電子部品101、101’及び基板110が溝111を形付ける。前記溝111は、前記電子部品101、101’の側壁106、106’により外側を囲まれている。本例では、前記組立部品は、ウエハ110上のダイス101、101’である組立部品であってもよい。有利には、基板110は、より多くの部品101、101’、例えば、少なくとも10、少なくとも20、少なくとも50、少なくとも100、又は少なくとも500の部品101、101’を支持していてもよい。工程310による組立部品100の提供とは、本発明の方法が適用される前記電子部品の基本構造としての、少なくとも1つの連続電子部品原構造101(図2の工程309で示されるような)に溝111を導入することが含まれる。前記組立部品は、(部品101及び層102の文脈で記載されているように)好適な材料から構成されており、例えば電気回路構成、フォトダイオード、他のセンサー/刺激装置機能等の潜在的ないくつかの電子及び/又は光学機能を有しており、前記電子及び/又は光学機能は、基板110上/中に配置され、いくつかのパターン化された(底)層により形成される。工程310により、溝111を挿入することで電子部品101、101’のそれぞれを隔離し、よって単独化される。電子部品101、101’を隔離する溝111は、ドライ又はウェットエッチングにより導入される。電子部品のそれぞれを隔離する工程により、1つの電子部品原構造に基づき、同じ基板(通常、平板)110上に多数の電子部品を製造することができる。これにより、本発明のパッケージ方法を複数の(原構造によって)同一の又は異なる電子部品101、101’に対して同時に行うことができ、よって、時間及びコスト効率のよい製造方法が可能となる。
【0050】
工程311では、少なくとも1つのカプセル上層103は、組立部品100の上面に塗工され、よって、電子部品101、101’の上面を水平にコーティングし、溝111の壁を垂直に下引きする。前記カプセル上層103の好適な材料は上述のとおりである。カプセル上層103、103aが、好ましくは形状追従性材料により構成されていてもよく、それによりカプセル上層103、103aが電子部品101、101’の輪郭及び溝111を追従し、よって、部品101、101’及び溝111の壁を覆うことが理解される。カプセル上層103のための形状追従性材料及び、非方向性又は部分方向性物理蒸着技法、スパッタリング、化学蒸着法等の堆積法の好ましい選択により、信頼性が高く、再現性のある段差状(非平面)被覆(水平表面及び垂直側壁被覆を含む)が、通常、達成される。上述のように、工程311は、また、同じ又は異なる材料の単層又は多層を追加することを含んでいてもよい。工程311は、また、通常、カプセル上層103を塗工した後、組立部品100に少なくとも1つの更なるカプセル上層103a(図2、工程311には図示されていない)を塗工することを含んでいてもよい。(更なる)カプセル上層103、103aの少なくとも1つは、環境に対して前記部品101を十分に気密封止する耐腐食性材料から選択される。周囲の生体細胞、組織、又は体液に与える刺激又はダメージを軽減又は回避するため、前記パッケージの最外カプセル上層103、或いは、更なるカプセル上層が設けられる場合は、最外カプセル層103aは、好ましくは、生体適合性材料により構成される。
【0051】
工程312では、剥離層112は、事前にコートされた部品101及び101’、及び下引きされた溝111を覆うように、通常、組立部品100の上面に塗工される。前記剥離層112は、好ましくはポリマー材料を含む又はから構成されていてもよく、前記ポリマー材料は、好ましくは樹脂、より好ましくは、感光性樹脂(フォトレジスト)、及び可溶性ポリマー材料から選択される。前記感光性樹脂又はフォトレジスト(フォトポリマー又は光活性樹脂としても知られる)は、通常、電磁スペクトルの紫外線又は可視光領域における光を露光した際に特性が変わるオリゴマー又はポリマーである。詳細には、光照射により、感光性樹脂は、不溶性の架橋ネットワークポリマーに重合される(“ネガティブフォトレジスト”)か、又は、固体ポリマーが半液体、或いは可溶性又は溶解性となるように分解される(“ポジティブフォトレジスト”)。本発明においては、一般的に知られているポジ型感光性樹脂が使用される。前記剥離層112は、前記部品101及び101’の一時的保護、より詳細には、後続の工程のためのカプセル上層103及び103aの一時的保護として塗工される。したがって、前記剥離層112は、好ましくは、電子部品101及び101’又はカプセル上層103及び103aに影響を与えることなく取り除くことが可能な材料により構成される。前記剥離層112の除去は、好ましくは、半導体分野で一般的に用いられているような、フォトレジスト現像剤又はフォトレジストストリッピング剤を塗布することにより行われてもよい。
【0052】
工程313では、前記剥離層112が前記組立部品から取り除かれ、前記部品101及び101’の表面上のカプセル上層103が露出される。前記除去工程は、研削、ドライ又はウェットエッチング、及び/又はウェット溶液又はプラズマ中でのストリッピング等、好適な物理的又は化学的手段により行われてもよい。好ましくは、前記除去は、下引きされた溝に剥離層112に残存分を残してもよく、前記残存分は、通常、前記溝の下面を覆う。この剥離層112の残存分は、後続する処理工程により劣化から、溝111を下引きするカプセル上層を保護する保護バリア又は「プラグ」を形成するためのものである。
【0053】
剥離層112がポジティブフォトレジストにより構成されている好ましい態様では、特に、工程313は、(1)組立部品100を、上面にのみ当てられた光(溝111の底部には当てられない)で露光する副工程、及び(2)組立部品100にフォトレジスト現像剤を塗工する副工程を含んでいてもよい。このように、確実に、前記組立部品100の上面又はその付近のフォトレジスト剥離層112のみが除去され、非露光のフォトレジストの残存分が溝111の底部に残存する。或いは、剥離層112は、ネガティブフォトレジストにより構成されていてもよい。このような状況下、工程313は、(1)組立部品100を、溝111の底部のみに当てられた光(上面には当てられない)で露光する副工程、及び(2)組立部品100にフォトレジスト現像剤を塗工する副工程を含んでいてもよい。このように、確実に、組立部品100の上面の非露光のフォトレジスト剥離層112のみが除去され、フォトレジストの残存分が溝111の底部に残存する。
【0054】
工程314(図2、工程314aに示されたように)では、組立部品100は、上下逆に反転され(非図示)、処理される。前記機器を反転することにより、前記機器の下面を上からアクセス可能にすることで、前記下面の処理を容易にする。このため、組立部品100は、暫定的に一時的キャリア113に付着されてもよい。暫定的付着は、いかなる好適な接着又は付着手段により達成されてもよく、前記接着又は付着手段は、好ましく可逆性であり、例えば、好適な接着剤によるものである。好ましくは、前記接着剤は、調整可能な接着接続により特徴づけられ、前記接着接続は、例えば、前記組立部品100を前記一時的キャリア113から脱着するように、熱、UV線、レーザー光、又は他の光照射により低減されるなど、変更することができる。前記一時的キャリア113は、シリコン又はガラス等の、好適な固体材料により構成されていてもよい。
【0055】
この処理により、積層又は2重層のカプセル層構造105、105’を有利に提供することができ、前記カプセル層構造105、105’は、そのパッケージにより前記電子部品101、101’の気密封止を確実なものとする。
【0056】
工程314は、組立部品100の下側から層を取り除く複数の副工程を含んでおり、前記副工程は、下引きされた溝111が、最終的にカプセル下層104、104’(後続する工程315参照)により下引きされて、少なくとも一部又はより好ましくは完全に電子部品の側壁106、106’を覆う2重層構造105、105’を形成するために、解放されたままにされるように行われる。
【0057】
工程314aでは、基板110が除去され、前記電子部品101、101’の下面が露出され、任意に、層102及び溝111を下引きしているカプセル上層により覆われる。工程314aは、また、前記基板の「薄膜化」と呼ばれるものでもよい。基板110は、研削、エッチング等の好適な物理的又は化学的手段により除去されてもよい。好ましくは、任意の層102は、薄膜化又は前記除去工程による他のダメージから前記部品101、101’の下面を保護するバリアとして機能してもよく、よって、電子部品101、101’に影響を与えることなく前記基板110の除去を精密に制御できてもよい。前記「薄膜化」は、好ましくは、前記基板110が除去されるまで行われる(工程314b)、より好ましくは、前記溝111内に残留している前記剥離層112の残留分が層103、103’を除去することにより露出されるまで、行われる(副工程314c)。このように、前記電子部品101、101’は、前記剥離層112を介して溝111を下引きしているカプセル上層103、103’のみにより接続されている。
【0058】
副工程314cでは、カプセル上層103、103’が除去され、よって、下引きされた溝内の保護バリアを形成している残存剥離層112を露出する。前記保護バリアにより、後続の処理に対し、例えば、基板110の除去時、カプセル上層103、103’を完全な状態に保持できる。有利には、この方法により、最初にカプセル上層103、103’を形成し、続いて、好ましくは電子部品101、101’の側壁まで延在して完全に覆っているカプセル下層104、104’を塗工することにより2重層構造105、105’を作製することがでる。これにより、高効率で向上した気密カプセル封入が達成される。
【0059】
副工程314dでは、残存剥離層112が除去され、よって、カプセル下層104を塗工するために、下引きされた溝111が露出される。好ましくは、剥離層112は、剥離層112を溶解又は除去できる状態又は薬品に前記層112を晒すことにより除去してもよい。一般的に、前記除去は、エッチング、ストリッピング、又は前記剥離層112を除去可能な好適な薬剤又は溶剤による他の処理等の好適な物理的又は化学的手段により行われてもよい。フォトレジスト剥離層112の場合、除去は、好ましくは、光照射及びフォトレジスト現像剤の塗布、フォトレジスト現像剤の塗布単独、ウェット溶液中でのフォトレジストストリッピング、又はプラズマ照射をすることにより行われてもよい。
【0060】
処理中に各層を除去する好適な技術の選択は、公知である。適切な技術の選択は、通常、除去される層の材料に依存する。適切な除去技術は、通常、除去される材料の性質に基づき選択されることが理解される。即ち、各層は、組立部品100の対象外の層又は材料ではなく、除去対象の層のみを優先的に除去する技術により除去される。
【0061】
工程315では、好ましくは上方から処理するために上下逆の配置で、少なくとも1つのカプセル下層104、104aが組立部品100に塗工され、前記電子部品101、101’の下面と、前記カプセル上層103、103aで下引きされた溝111とがコーティングされる。前記カプセル下層104、104aの好適な材料は上述のとおりである。前記カプセル下層104、104aは、好ましくは、前記電子部品101、101’及び前記溝111の輪郭を追従することができる、形状追従性材料により構成されているか、少なくとも部分的に方向性がある技術により付着されてもよく、よって、前記部品101、101’及び事前にカプセル上層103、103aで下引きされた溝111の内壁が覆われることが理解される。カプセル下層104、104aの形状追従性材料及び堆積法技術の好ましい選択により、非常に好適な段(ステップ)状被覆が、通常、得られる。上述のように、工程315では、同じ又は異なる材料の単層又は多層が塗工されてもよい。前記カプセル下層104の塗工に加え、工程315では、通常、カプセル下層104の塗工後に、少なくとも1つの更なるカプセル下層104a(工程315では非図示)を前記組立部品100に塗工する副工程を更に含んでいてもよい。少なくとも1つのカプセル下層104、104aは、好ましくは、環境に対して部品101、101’を十分に気密封止する耐腐食性材料から選択される。周囲の生体細胞、組織、又は体液に与える刺激又は影響を低減又は回避するため、環境との界面となる前記最外カプセル下層104、104aは、好ましくは生体適合性材料により構成されている。上述のように、工程315は、同じ又は異なる材料の単層又は多層を追加することを含んでいてもよい。
【0062】
本発明の方法は、少なくとも一部で重なり合って2重層構造105、105’、105aが形成されるようにカプセル上層103、103a及びカプセル下層104、104aを好ましく塗工する。前記2重層構造105、105aは、好ましくは少なくとも一部、より好ましくは完全に、前記電子部品の側壁106、106’を覆う。これは、特に、剥離層112を、溝111を下引きするカプセル上層103、103aの保護バリアとして使用することにより(工程314参照)、及び、カプセル下層104、104aの塗工前に好ましくは、前記組立部品100の向きを上下逆に変更(「反転する」)ことにより(組立部品100の上下逆の処理を可能にするように)行われる。
【0063】
1つ以上のカプセル上層103、103a及び/又はカプセル下層104、104a(又は少なくともその一部)は、例えば、電子部品101、101’の上面及び下面間の電気的接合を可能とする連続トラック(continuous tracks)(例えば、少なくとも側壁箇所において)を導入するために、例えば、リソグラフィー及びエッチング、又はリフトオフを前記処理中に使用することにパターン化されていてもよい。
【0064】
任意の工程316では、組立部品100は支持層114に固定又は固着し、好ましくは、それに引き続き、工程315で得られた組立部品100は一時的キャリア113から取り除かれた。固定又は固着は、例えば好適な接着剤によるなどの、好適な付着手段により達成されてもよい。前記接着剤は、好ましくは、調整可能な接着接続により特徴づけられ、前記接着接続は、特に、熱及び/又はUV光及び/又はレーザー光を照射することにより低減されるなど、変更することができる。支持層114は、好ましくは、薄膜等の可撓性材料により構成され、それにより電子部品101、101’の輸送又は保存が可能になる。例示材料としては、所謂、半導体「ダイシングテープ」等の可撓性ポリマーを含む。有利なことに、可撓性フィルムの使用により、ダイス等の前記電子部品101、101’を「ダイピッキング」処理により取り除くことができる。前記「ダイピッキング」処理により、前記ダイスが1つ以上のピンで裏面から押し出され、真空「ピックアップ治具」を使用して前記ダイスを浮かせて、全面から取り出される。この工程は、通常、自動「ダイピッキング」機により行われる。
【0065】
前記支持層114からの剥離は、工程317に示される。得られた機器1は、工程315で得られたカプセル上層103及びカプセル下層104によりカプセル封入されている。又は、工程316で、支持層114から剥離される。工程317により得られた前記組立部品100は、しっかりとカプセル封入され、インビボ埋込みに所望な気密性を有す本発明の態様を表す。それは、図2の態様で示される本発明の方法により得られた、側壁全体を覆っているカプセル層103及び104により形成された2重層構造105、105’により特徴づけられる。
【0066】
本発明の方法は、トップコート107を付与する任意の工程317を更に含んでいてもよい。前記トップコート107は、工程311でカプセル上層103、103aを付与する前に付与されてもよい。或いは、トップコート107は、工程311でカプセル上層103、103aを付与した後に付与してもよい。例えば、工程312前、又は工程316後に付与される。前記塗布工程400が工程311の前に行われるとしたら、前記塗布工程400は、前述のとおり溝111が組立部品100(即ち、図2の工程310の工程309の前記組立部品100)に導入される前、又は前記溝が導入された後に行われる(工程311の前の工程310の組立部品100に塗布される)。本発明の方法の過程でいつ前記トップコート107が組立部品100に塗工されるかにより、前記カプセル上層103、103aは前記コート層107の少なくとも一部を覆っていてもよく、或いは、前記コート層107は少なくとも一部でカプセル層103、103aと重なっていてもよい。工程316の後に工程400によりトップコート107が塗工される場合、前記トップコート107は好ましくは、前記層103、103a上に更なる層を形成し、環境と直接接触する、前記機器1の最上層を形成する。
【0067】
1つの態様では、トップコート107は、好ましくは、カプセル層103、103aの塗工前に、前記電子部品101、101’(又は組立部品100の上面)に塗工される。前記塗工は好ましい手段により行われ、好ましくは、堆積法により行われる。前記堆積法としては、プラズマCVD(PECVD)等の化学蒸着法(CVD)、物理蒸着法(PVD)、原子層堆積法(ALD)、及び下層酸化法が挙げられる。続いて、前記トップコート107が好ましくは部分的に取り除かれ、その後、前記トップコート107とカプセル層103、103aが好ましくは少なくとも一部で重なり合うように少なくとも1つのカプセル上層103、103aが塗工される。少なくとも1つのカプセル上層103、103aが前記コート層107と少なくとも前記コート層107の端部で重なり合うようになっているのが好ましい。前記組立部品の端部を露出するため、トップコート107の部分的除去が好ましくは検討される。前記除去は、化学的又は物理的プロセス等の好適な手段により行われ、好ましくはウェット又はドライエッチング及び/又はリフトオフにより行われる。得られる前記パッケージによる前記トップコート107と前記カプセル上層103、103aとの部分的な重なりは、トップコート107の意図された機能を干渉することなく、電子部品101、101’を気密に封入する。
【0068】
或いは、トップコート107は、工程311でカプセル上層103、103aが塗工された後に、塗工されてもよい。このため、少なくとも1つのカプセル上層103、103aは、電子部品101、101’の上面から塗工される。続いて、例えば、カプセル上層103、103aが除去された箇所に、トップコート107が塗工されるように、前記カプセル上層103、103aは、好ましくは部分的に電子部品101、101’から除去される。例えば、前記電子部品101、101’の端部を含む周辺部分は少なくとも1つのカプセル上層103、103aで覆われたままで、カプセル上層103、103aは、前記電子部品101、101’の上面の中央部分から取り除かれてもよい。化学的又は物理的プロセス等のいかなる好適な手段が適用され、好ましくは、ウェット又はドライエッチング及び/又はリフトオフが適用される。トップコート107とカプセル層103、103aとが好ましくは少なくとも一部で重なり合うように前記トップコート107は前記電子部品101、101’に塗工される。上述のとおり、トップコート107は好ましくは堆積法により塗工され、前記堆積法としては、プラズマCVD(PECVD)等の化学蒸着法(CVD)、物理蒸着法(PVD)、原子層堆積法(ALD)、及び下層酸化法が挙げられる。
【0069】
トップコート107を示す得られた態様は、適用された特定の基礎となる方法及び本発明の方法の過程での工程400を行う段階による。そのようなトップコート107塗工の別の態様は、図4A~Cに示されている。
【0070】
図4A~Cに示された態様の全ては、本発明の異なる段階での、工程400の好ましい別の態様を示している。図4Aの工程400により、前記溝により隔離されている前記部品101、101’(図2による方法の工程310参照)は、その上面及び前記溝の垂直な内壁表面(或いは、前記溝111を形成している前記電子部品101、101’の側壁106、106’)に沿ってコーティング(コート層107)されている。前記コート層107は、エッチング又はリフトオフによってパターン化される。前記エッチング処理が用いられる際、前記材料107が最初に付着され、その後、フォトレジストが塗工及びパターン化され、前記フォトレジストに覆われていない領域の前記材料107がエッチングにより取り除かれる。最後に、前記フォトレジストが取り除かれる。
【0071】
リフトオフが用いられる際、前記フォトレジストのパターニングは前記材料107の堆積前に行われ、前記材料107の堆積後、前記材料107の堆積前にフォトレジストが取り除かれた領域に堆積した層107が残されるように、前記レジスト及びフォトレジスト上の前記材料107が取り除かれた。
【0072】
しかし、図4Bの工程400による態様は、塗工層107の塗工が(電子部品101、101’をそれぞれ隔離する)溝111の導入の前に塗工される点で図4Aとは異なる。前記パターニング又はリフトオフ処理は、図4Bに基づく前記パターニング又はリフトオフ工程400後に、溝111のみが導入されるように、行われる。図4A及び4Bの態様の両者は、その後、工程311(図2の)が行われ、露出された上面に前記カプセル上層103が塗工され、よって、前記溝111も下引きされる。図4Cの工程400は、工程の順序が異なる点で、図4A及び4Bの態様の工程400とは異なる。図4Cの工程310及び(図2の)工程311の態様が最初に行われるため、工程311(カプセル上層103塗工)が行われて初めて、前記電子部品101、101’がコート層107によりコーティングされる。したがって、図4Cの工程400の態様は、図4A及び4Bの態様とは対照的に、前記コート層107が前記カプセル上層103に(部分的に)重なり合うようになっている。
【0073】
エッチング又はリフトオフに含まれるのは、工程400のこれら態様の全てに共通である。
【0074】
工程400の前記エッチングプロセスにおいて、トップコート107は、前記部品101、101’の表面に塗工される。続いて、スピンコート等の好適な方法を用いて、フォトレジスト層が塗工され、前記フォトレジスト層は、任意に、熱を与えることにより乾燥(ベーク)される。その後、得ようとするトップコート107の所望なパターンを規定するマスクを付与し、「マスクされた」フォトレジストを露光する。続いて、好適な現像剤が塗布され、それにより前記フォトレジストが除去される。ポジ型フォトレジストの場合、露光された場所が除去される。ネガ型フォトレジストの場合、露光されなかった場所のレジストが除去される。前記「現像工程」後、熱を付与することにより、前記レジストの硬化が任意で行われる。ウェット又はドライエッチングが続いて、前記フォトレジストで覆われたトップコート107を残したまま、前記フォトレジストに覆われていない前記トップコート107の箇所を部分的に取り除いてもよい。最後に、好適なストリッピング溶液中でのストリッピング又はプラズマで残りのレジストを取り除き、前記マスクで規定されたようにパターン化されたトップコート107を得た。
【0075】
工程400の他のリフトオフプロセスでは、フォトレジストは、例えば、スピンコートにより、前記部品101、101’の上面、又はトップコート107を支持する他の層上に塗工される。任意に、熱を付与して乾燥(ベーク)される。続いて、得ようとするトップコート107の所望なパターンを規定するマスクが前記フォトレジストに付与され、「マスクされた」フォトレジストを露光する。その後、好適な現像剤が塗布され、それにより前記フォトレジストが除去される。ポジ型フォトレジストの場合、露光された場所が除去される。ネガ型フォトレジストの場合、露光されなかった場所のレジストが除去される。前記「現像工程」後、熱を付与することにより、前記レジストの硬化が任意で行われる。カプセル上層103(又はトップコート107を部分的に覆うような他の層)が前記フォトレジスト上に付着される。最後に、好適なストリッピング溶液が付与され、任意に、超音波を同時に付与し、前記パターン化されたフォトレジスト及びそれを覆う層と一緒にリフトオフし、下地のフォトレジストが事前に除去された領域のカバー層のみが残された。
【0076】
図4A~4Cに示す得られた組立部品100のそれぞれは、例えば、工程312により前記製造方法を継続することにより(図2参照)、本発明の方法に従って更に処理されてもよい。
【0077】
更に、本発明の方法は、例えば、電子部品101、101’の上側又は下側に、例えば、電子トレース108、フォトダイオード及び/又は電極109を設ける任意の工程500を有していてもよい。前記任意の工程500は、通常、電子部品101の上面が露出されていて更なる改造(modification)が可能な場合に、例えば工程309又は310で、行われる。或いは、前記任意の工程500は、外層が塗工された後、例えば工程316又はその後に、行われてもよい。この他のアプローチは、事前に塗布された層又はコーティングを、少なくとも領域ごとに、取り除くことにより可能となる。したがって、工程500は、前記電子部品101を改造(modify)する。これにより、電子トレース108及び/又は電極109が、前記電子部品101、101’の表面上であって、通常、トップコート107及びカプセル上層103、103a下に好適な堆積法により、下記により詳細に説明されているように、塗工されてもよい。前記堆積法は化学蒸着法(CVD)、電子ビーム蒸着及び(反応性)スパッタリング等の物理蒸着法、電気化学堆積法、電着法、及び、リフトオフ及びエッチング等のパターニングを含む。
【0078】
垂直又は上方に突出する構造(例えば、電極、図1D等参照)による前記電子部品101の改造(modification)は、前記カプセル上層103、103a及び/又はコート層107の特性に影響を与えるかもしれない。前記構造は、例えば、1つの以上の前記層を遮る穴を示してもよい。好ましくは、電極109は、例えば、トップコート107内に設けられる又はトップコート107を超えて延在していてもよく、及び/又は、追加で又はそれに代わって、カプセル上層103/103a内に設けられる又はカプセル上層103/103aを超えて延在していてもよい。
【0079】
前記部品101、101’の表面が、電極堆積箇所で、通常は、完全に露出されるように、トップコート107及び/又はカプセル上層103、103aが部分的に取り除かれることにより前記気密パッケージが提供された後に、電極109も導入されてもよい。前記部品101、101’の表面上の前記電極109は、例えば、金属又は他の電極材料層を堆積されることにより追加されてもよい。最初に、電極109を形成するための穴又はフィードスルーを形成するために、トップコート107及び/又はカプセル上層103/103aを部分的に取り除いてもよい。前記除去は、エッチング等の好適な技術により行われてもよい。続いて、トップコート107及び/又はカプセル上層103/103aに電極材料を塗工する。例えば、余剰な前記電極材料は、続いて、前記電極材料が好ましくはトップコート107及び/又はカプセル上層103/103aの穴又はフィードスルーの箇所のみ残留するように、及び任意にトップコート107及び/又はカプセル上層103/103aと部分的に重なり合うように、エッチング、リフトオフ等により取り除かれる。そのような態様は、電極109の直径が、前記穴又はフィードスルーの寸法より大きい場合に、検討されてもよい。
【0080】
或いは、電極109は、トップコート107及び/又はカプセル上層103/103a下に電子トレース108により形成されてもよい。このため、下地の電子トレース108の箇所を露出する穴又はフィードスルーを形成するために、例えば、エッチング又はリフトオフにより、トップコート107及び/又はカプセル上層103/103aは、部分的に取り除かれる。
【0081】
上記記載は、本発明の特定の態様を詳述するものである。しかし、上記記載がいかに詳述なものであっても、本発明は多様に実施されることが理解されるであろう。本発明の特定の特徴又は実施形態を説明する際に使用される特定の技術用語は、前記技術用語が関連している本発明の特徴又は実施態様の特定の性質を含むように限定するものであると再定義されると解釈されるべきではない。
【0082】
様々な態様に適用される本発明の新規の特徴が上記詳細な記載に示され、説明され、指摘されているが、示された機器又はプロセスの形状及び詳細における様々な省略、代用、及び変更は、当業者であれば本発明の意図から逸脱することなく行われることが理解される。本発明の範囲は、前記記載にではなく、添付の請求項により規定されるものである。本願請求項と等価の意味及び範囲内での変更の全ては、本発明の範囲内であると考えられるべきである。
【0083】
項目
1.気密パッケージ(10)によりカプセル封入された電子部品(101)を含み、
前記パッケージが、カプセル上層(103)及びカプセル下層(104)を含み、前記カプセル上層及び前記カプセル下層(103及び104)は、2重層(105、105’)を形成するように、少なくとも一部が重なり合っていることを特徴とする、埋込み型機器。
2.前記2重層(105、105’)が、前記電子部品(101)の側壁(106、106’)の少なくとも一部、より好ましくは全部を、覆っている、項目1に記載の埋込み型機器。
3.前記2重層(105、105’)が、前記電子部品(101)の全体ではなく、一部のみを覆っている、項目1から2のいずれかに記載の埋込み型機器。
4.前記2重層(105、105’)が、前記電子部品(101)の側壁(106、106’)のみを覆っており、前記電子部品(101)の上面及び下面を覆っていない、項目1から3のいずれかに記載の埋込み型機器。
5.前記カプセル上層(103)及び/又は前記カプセル下層(104)が、生体適合性である、項目1から4のいずれかに記載の埋込み型機器。
6.前記カプセル上層(103)及び/又は前記カプセル下層(104)が、耐腐食性である、項目1から5のいずれかに記載の埋込み型機器。
7.前記カプセル上層(103)及び/又は前記カプセル下層(104)が、金属と、酸化物、窒化物、及び炭化物、好ましくは、金属酸化物、金属窒化物、及び金属炭化物を含むセラミックと、ダイヤモンドライクカーボンと、ダイヤモンドと、ガラスと、ポリマーと、これらの組合せ、又はこれらの複数層とを含む又はからなる、項目5から6のいずれかに記載の埋込み型機器。
8.前記金属が、Ti、Pt、ステンレス鋼、チタン-ニッケル、パラジウム、ニオブ、タンタル、これらの組合せ又は合金、及びこれらの複数層から選択される1つである、
前記セラミックが、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、炭化チタン、酸化チタン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム、これらの組合せ、及びこれらの複数層から選択される1つである、及び/又は
前記ポリマーが、フルオロカーボン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケトン(PEEK)、シリコーン、PDMS、パリレン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリカーボネートウレタン、シリコーン、シリコーン-ポリエステル-ウレタン、durimide(感光性ポリイミド)、環状オレフィンポリマー(COP)、環状オレフィンコポリマー(COC)、ポリメチルメタクリレート(PMMA)、ポリフェニレン、ポリスルホン、ポリフェニルスルホン、これらの組合せ、及びこれらの複数層から選択される1つである、
項目7に記載の埋込み型機器。
9.前記パッケージが、更に少なくとも1つのトップコート(107)を含み、
好ましくは、前記トップコート(107)と前記カプセル上層(103)とが、少なくとも一部で、又は完全に重なり合っている、項目1から8のいずれかに記載の埋込み型機器。
10.前記トップコート(107)が、生体適合性である、項目9に記載の埋込み型機器。
11.前記トップコート(107)が、耐腐食性である、項目9から10のいずれかに記載の埋込み型機器。
12.前記トップコート(107)が、透明である、項目9から10のいずれかに記載の埋込み型機器。
13.前記トップコート(107)が、セラミック、SiC又はSiOCを含むガラス、SiO、ダイヤモンド又はダイヤモンドライクカーボン、酸化アルミニウム、酸化チタン、これらの組合せ、及びこれらの複数層から選択される材料を含む又はからなる、項目9から12のいずれかに記載の埋込み型機器。
14.前記埋込み型機器が、好ましくは前記トップコート(107)が、
更に、前記電子部品(101)と電気的に接続している電子トレース(108)を含み、
前記電子トレース(108)が、好ましくは、前記トップコート(107)中に、又は前記トップコート(107)から突出して、電極を形成している、項目9から13のいずれかに記載の埋込み型機器。
15.前記電子トレースが電極を形成しており、前記電極が好ましくは生体適合性及び耐腐食性である、項目14に記載の埋込み型機器。
16.前記電子トレースが、白金、黒色/多孔質白金、イリジウム、イリジウム/白金、酸化イリジウム、PEDOT:PSS、窒化チタン、ドープダイヤモンド又はドープダイヤモンドライクカーボン、グラフェン、及びこれらの組合せから選択される材料を含む又はからなる、項目14から15のいずれかに記載の埋込み型機器。
17.前記気密パッケージ(10)によりカプセル封入されている前記電子部品(101)が、層(102)を含む、項目1から16のいずれかに記載の埋込み型機器。
18.前記層(102)が、セラミック又はガラスを含む又はからなり、
任意に、酸化ケイ素から選択され、
任意に、シリコン基板を酸化することにより得られる、項目17に記載の埋込み型機器。
19.前記埋込み型機器が、
前記カプセル上層(103)上に、少なくとも1つの更なるカプセル上層(103a)、及び/又は
前記カプセル下層(104)をカプセル封入する、少なくとも1つの更なる下部カプセル封入(104a)を含む、
項目1から19のいずれかに記載の埋込み型機器。
20.少なくとも1つの更なる2重層(105a、105b、105c)を形成するように、前記更なるカプセル層(103a、104a)が重なり合っており、
任意に、前記更なる2重層(105a、105b、105c)は、前記電子部品(101)の前記側壁(106、106’)の少なくとも一部、より好ましくは、全部を覆っている、項目19に記載の埋込み型機器。
21.前記少なくとも1つの更なる2重層(105a、105b、105c)が、前記電子部品(101)の側壁(106、106’)のみを覆っており、前記電子部品(101)の上面及び下面を覆っていない、項目20に記載の埋込み型機器。
22.前記カプセル上層(103、103’)及び/又は前記カプセル下層(104、104’)が、耐腐食性であり、任意に、生体適合性である、項目19又は21に記載の埋込み型機器。
23.前記少なくとも1つの更なるカプセル上層(103a)及び/又は前記少なくとも1つの更なるカプセル下層(104a)が、生体適合性であり、任意に、耐腐食性である、項目19から22のいずれかに記載の埋込み型機器。
24.前記カプセル上層(103)及び/又は前記カプセル下層(104)、及び/又は
任意に、前記少なくとも1つの更なるカプセル上層(103a)及び/又は前記少なくとも1つの更なるカプセル下層(104a)が、
同じ又は異なる材料を含む又はからなる、項目1から23のいずれかに記載の埋込み型機器。
25.前記埋込み型機器が、環境に晒されるフォトダイオード及び/又は電極(109)を含み、
好ましくは、前記フォトダイオード及び/又は電極(109)の最上面が環境に晒されるように、前記トップコート及び/又は前記カプセル上層に埋め込まれている、項目1から24のいずれかに記載の埋込み型機器。
26.前記埋込み型機器が、目に埋込み可能なように構成されており、
好ましくは、網膜インプラントとして、網膜上又は網膜下に埋込み可能なように構成されている、項目1から25のいずれかに記載の埋込み型機器。
27.項目1から26のいずれかに前記パッケージ機器を少なくとも1つ含むことを特徴とする、埋込み型システム。
28.埋込み型機器をパッケージする方法であって、
(a)少なくとも1つの電子部品(101)を基板(110)上に提供する工程と、
(b)前記電子部品(101、101’)に、少なくとも1つのカプセル上層(103、103’)を塗工する工程と、
(c)前記電子部品(101、101’)に、少なくとも1つのカプセル下層(104、104’)を塗工する工程と、を含み、
前記カプセル上層(103、103’)及び前記カプセル下層(104、104’)は、2重層(105、105’、105a、105b、105c)を形成するように、少なくとも一部で重なり合っていることを特徴とする方法。
29.埋込み型機器をパッケージする方法であって、
(i)少なくとも1つ、好ましくは互いに間隔を空けて配された複数の電子部品(101、101’)が基板上(110)に設けられた組立部品(100)を提供し、隣接する前記電子部品(101、101’)と基板(110)とが、前記電子部品(101、101’)間の溝(111)を画定する工程と、
(ii)前記組立部品(100)に少なくとも1つのカプセル上層(103、103’)を塗工して、前記電子部品(101、101’)をコーティングし、前記溝(111)に下引きする工程と、
(iii)前記組立部品(100)に剥離層(112)を塗工する工程と、
(iv)部分的に前記剥離層(112)を取り除き、前記下引きされた溝(111)内に前記剥離層(112)の残存分を残す工程と、
(v)好ましくは、前記組立部品(100)を、上下逆に反転する工程と、
(vi)前記組立部品の下面から、(a)前記基板(110)、(b)前記カプセル上層(103)、及び(c)前記剥離層(112)の残存分を取り除く工程と、
(vii)前記組立部品(100)に少なくとも1つのカプセル下層(104、104’)を塗工し、好ましくは、前記電子部品(101、101’)及び前記溝(111)をコーティングする工程と、を含み、
前記カプセル上層(103、103’)及び前記カプセル下層(104、104’)は、少なくとも一部が重なり合って、2重層(105、105’)を形成するように塗工されることを特徴とする方法。
30.前記2重層(105、105’)が、前記電子部品(101)の前記側壁(106、106’)の少なくとも一部、より好ましくは、全部を覆うように形成される、項目28から29のいずれかに記載の方法。
31.前記2重層(105、105’)が、前記電子部品(101)の側壁(106及び106’)のみを覆っており、前記電子部品(101)の上面及び下面を覆っていない、項目28から30のいずれかに記載の方法。
32.前記方法が、更に、トップコート(107)を提供する工程を含み、
前記工程が、
(a)好ましくは項目1から31のいずれかに規定されているように、前記電子部品(101、101’)の上面にトップコート(107)を塗工し、(b)部分的に前記トップコート(107)を取り除き、(c)好ましくは項目1から31のいずれかに規定されているように、少なくとも前記トップコート(107)及びカプセル層(103、103’)が好ましくは少なくとも一部で重なり合うように、少なくとも1つのカプセル上層(103、103’)を前記電子部品(101、101’)に塗工する、又は
(a’)好ましくは項目1から31のいずれかに規定されているように、前記電子部品(101、101’)に少なくとも1つのカプセル上層(103、103’)を塗工し、(b’)部分的にカプセル上層(103、103’)を前記電子部品(101、101’)から取り除き、(c’)好ましくは項目1から31のいずれかに規定されているように、少なくともトップコート(107)及びカプセル層(103、103’)が好ましくは少なくとも一部で重なり合うように、前記トップコート(107)を前記電子部品(101、101’)に塗工する
ことにより行われる、
項目28から31のいずれかに記載の方法。
33.前記工程(2)が、化学的又は物理的プロセスにより、好ましくはウェット又はドライエッチング及び/又はリフトオフにより、前記トップコート(107)又は前記カプセル上層(103、103’)を部分的に取り除くことを含む、項目32に記載の方法。
34.前記トップコート(107)が、堆積法により塗工され、
前記堆積法が、化学蒸着法(CVD)、物理蒸着法(PVD)、原子層堆積法(ALD)、及び下層酸化法を含み、
前記化学蒸着法(CVD)が、PECVDを含む、項目32から33のいずれかに記載の方法。
35.前記方法が、更に、電子トレース(108)及び/又は電極(109)を、好ましくは前記トップコート(107)中に、堆積法及び/又はパターニングにより形成する工程を含み、
前記堆積法が物理蒸着法及び電着法を含み、前記パターニングがリフトオフ又はエッチングを含む、項目28から34のいずれかに記載の方法。
36.前記方法が、前記工程(iv)の前に、前記組立部品の上面を一時的キャリア(113)に付着させる工程を含む、項目29から35のいずれかに記載の方法。
37.前記基板(110)、前記カプセル上層(103)及び/又は前記剥離層(112)が、物理的手段及び化学的手段からそれぞれ独立して選択される手段により取り除かれ、
前記物理的手段及び前記化学的手段が、研削、エッチング、及び/又はストリッピングを含む、項目29から35のいずれかに記載の方法。
38.前記カプセル上層(103)及び/又は前記カプセル下層(104)が、生体適合性である、項目28から37のいずれかに記載の方法。
39.前記カプセル上層(103、103a)及び/又は前記カプセル下層(104、104a)が、耐腐食性である、項目28から38のいずれかに記載の方法。
40.前記カプセル上層(103、103a)及び/又は前記カプセル下層(104、104a)が、
金属、セラミック、ダイヤモンドライクカーボン、ダイヤモンド、ガラス、低透過性及び/又は緻密な(明細書)ポリマー、及びこれらの複数層から任意に選択される材料を含む又はからなり、
前記金属は、チタン、白金、ステンレス鋼、チタン-ニッケル、パラジウム、ニオブ、タンタル、これらの合金及び複数層を含み、
前記セラミックは、酸化ケイ素、窒化ケイ素、炭化ケイ素、オキシ炭化ケイ素、炭化チタン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化ジルコニウム等の金属酸化物、金属窒化物、及び金属炭化物、並びにこれらの複数層を含み、
前記ポリマーが、フルオロカーボン、ポリウレタン、PEEK、シリコーン、PDMS、パリレン、及びポリイミドを含む、
項目28から39のいずれかに記載の方法。
41.前記剥離層(112)が、ポリマー材料から選択される材料、
好ましくは、樹脂から選択される材料、
より好ましくは、感光性樹脂及び可溶性ポリマー材料から選択される材料、
を含む又はからなる、項目30から40のいずれかに記載の方法。
42.前記トップコート(107)が、生体適合性である、項目32ら41のいずれかに記載の方法。
43.前記トップコート(107)が、耐腐食性である、項目32から42のいずれかに記載の方法。
44.前記トップコート(107)が、透明である、項目32から43のいずれかに記載の方法。
45.前記トップコート(107)が、
セラミック、PECVD SiC又はSiOCを含むガラス、SiO、ダイヤモンド又はダイヤモンドライクカーボン、酸化アルミニウム、酸化チタン、及びこれらの複数層から選択される材料を含む又はからなる、項目32から44のいずれかに記載の方法。
46.前記方法が、項目1から26のいずれかに記載のパッケージ機器を提供する、項目28から45のいずれかに記載の方法。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0084】
【特許文献1】米国特許出願公開第2015/0297136 A1号明細書
【特許文献2】米国特許出願公開第2013/330498 A1号明細書
【特許文献3】米国特許出願公開第2011/039050 A1号明細書
図1A
図1B
図1C
図1D
図1E
図1F
図2-1】
図2-2】
図2-3】
図3
図4A
図4B
図4C
【国際調査報告】