(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】プリント回路基板を製造するための放射線硬化性インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
C09D 11/30 20140101AFI20220124BHJP
H05K 3/18 20060101ALI20220124BHJP
H05K 3/28 20060101ALI20220124BHJP
B41J 2/01 20060101ALI20220124BHJP
B41M 5/00 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
C09D11/30
H05K3/18 D
H05K3/28 D
B41J2/01 501
B41J2/01 127
B41M5/00 120
B41M5/00 100
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021528360
(86)(22)【出願日】2019-11-15
(85)【翻訳文提出日】2021-05-20
(86)【国際出願番号】 EP2019081430
(87)【国際公開番号】W WO2020104302
(87)【国際公開日】2020-05-28
(32)【優先日】2018-11-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】593194476
【氏名又は名称】アグフア-ゲヴエルト,ナームローゼ・フエンノートシヤツプ
(74)【代理人】
【識別番号】110000741
【氏名又は名称】特許業務法人小田島特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ロキュフィエ,ヨハン
(72)【発明者】
【氏名】トルフ,リタ
(72)【発明者】
【氏名】ソバジョ,マリオン
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
5E314
5E343
【Fターム(参考)】
2C056FB05
2C056FC01
2C056FD20
2C056HA44
2H186AA17
2H186AB11
2H186AB12
2H186AB23
2H186DA07
2H186FB11
2H186FB15
2H186FB34
2H186FB36
2H186FB37
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB55
4J039AD03
4J039AD21
4J039AE02
4J039BC07
4J039BC20
4J039BC33
4J039BC36
4J039BC53
4J039BC54
4J039BC56
4J039BE01
4J039BE12
4J039BE27
4J039CA07
4J039EA06
4J039EA20
4J039EA46
4J039EA48
4J039FA07
4J039GA16
4J039GA24
5E314AA27
5E314AA33
5E314CC03
5E343BB24
5E343BB28
5E343BB43
5E343BB44
5E343CC62
5E343DD76
5E343GG03
(57)【要約】
重合性化合物及び接着促進剤を含む放射線硬化性インクジェットインクであって、接着促進剤が式Iによる化学構造を有することを特徴とするインクジェットインク。
【化1】
(式中
R
1は、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基、及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択され、
R
2及びR
3は、独立して、水素及び置換又は非置換アルキル基からなる群から選択され、
Lは、n+m+o価の連結基を表し、
nは、1~9の範囲の整数を表し、
mは、1~9の範囲の整数を表し、
oは、0~8の範囲の整数を表し、
但し、n+m+oは、10以下であり、
Xは、酸素又はNR
4を表し、
R
4は、水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基、及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択される。)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
重合性化合物及び接着促進剤を含む放射線硬化性インクジェットインクであって、接着促進剤が式Iによる化学構造を有することを特徴とする、インクジェットインク。
【化1】
(式中
R
1は、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基、及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択され、
R
2及びR
3は、独立して、水素及び置換又は非置換アルキル基からなる群から選択され、
Lは、n+m+o価の連結基を表し、
nは、1~9の範囲の整数を表し、
mは、1~9の範囲の整数を表し、
oは、0~8の範囲の整数を表し、
但し、n+m+oは、10以下であり、
Xは、酸素又はNR
4を表し、
R
4は、水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基、及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択される。)
【請求項2】
R
1が置換又は非置換アルキル基である、請求項1に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項3】
R
2及びR
3が、独立して、水素及びメチル基からなる群から選択される、請求項1又は2に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項4】
Xが酸素を表す、先行する請求項のいずれか一項に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項5】
n+m+oが3又は4である、先行する請求項のいずれか一項に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項6】
n及びmが互いに独立して1又は2である、先行する請求項のいずれか一項に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項7】
重合性化合物が、アクリロイルモルホリン、環状トリメチルプロペンホルモールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及び2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレートからなる群から選択される、先行する請求項のいずれか一項に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項8】
フェノール樹脂又はヒドロキシスチレン系樹脂をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項9】
着色剤をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項10】
難燃剤をさらに含む、先行する請求項のいずれか一項に記載の放射線硬化性インクジェットインク。
【請求項11】
請求項1~10のいずれか一項に定義された放射線硬化性インクジェットインクを基板上に噴射し硬化させるインクジェット印刷工程を含む、プリント回路基板(PCB)の製造方法。
【請求項12】
硬化がUV放射線を使用して行われる、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
インクジェット印刷工程において、エッチングレジストが金属表面上に提供される、請求項11又は12に記載の方法。
【請求項14】
インクジェット印刷工程において、はんだマスクが提供される、請求項11~13のいずれか一項に記載の方法
【請求項15】
加熱工程も含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント回路基板を製造するための放射線硬化性インクジェットインク及びインクジェット方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プリント回路基板(PCB)の生産ワークフローは、特に短期生産のために、プロセス工程の量を低減し、PCBの生産の費用及び環境への影響を低減するために、標準ワークフローからデジタルワークフローに徐々に移行している。インクジェットは、はんだマスク上のエッチングレジストからレジェンド印刷に向かうPCB製造プロセスの異なる工程における好ましいデジタル製造技術の1つである。従って、好ましいインクジェットインクは、UV硬化性インクジェットインクである。
【0003】
異なる製造工程において、異なる基板に対するインクジェットインクの接着性は、極めて重要である。接着性能を最大にするために、接着促進剤がしばしば必要とされる。
【0004】
エッチングレジスト用途では、接着性は、噴射され硬化されたエッチングレジストの剥離性能と釣り合っていなければならない。剥離の際に、エッチングレジストは、アルカリ性媒体中で金属表面から完全に除去されなければならず、十分に制御された量の脱プロトン化可能な官能基を必要とする。
【0005】
いくつかのクラスの接着促進剤が先行技術に開示されており、それらの大部分は、本質的に酸性である。
【0006】
特許文献1(Avecia)は、接着促進剤としての1~30重量%の1つ以上の酸性基を含むアクリレート官能性モノマーと、剥離中の溶解促進剤とを含む非水性耐エッチング性ジェットインクを開示している。
【0007】
特許文献2(Avecia)は、好ましくは、(メタ)アクリル化カルボン酸、(メタ)アクリル化リン酸エステル及び(メタ)アクリル化スルホン酸等の(メタ)アクリレート酸接着促進剤を含む、耐エッチング性インクジェットインクを開示している。
【0008】
酸性接着促進剤を使用する場合、その単一化合物は、エッチング中の接着性と剥離挙動の両方を制御しなければならない。従って、中性接着促進剤を剥離制御モノマーと組み合わせて使用し、互いに独立してエッチング性能及び剥離性能の両方の最適化を可能にすることが有利である。
【0009】
中性接着促進剤のいくつかのクラスが、しばしば歯科用途において開示されている。
【0010】
特許文献3(Girrback Dental GmbH)では、アクリル化チオエーテルが歯科用途における接着促進剤として報告されている。アクリル化チオエーテルはまた、主に合成樹脂上への噴射を標的とする特定の増感剤と組み合わせて、インクジェットインク中のモノマーとしてJP2010006977(FujiFilm Corporation)に開示されている。しかしながら、開示された組成物のいずれも、PCB製造においてエッチングレジストインクジェットインクとして使用することができない。
【0011】
特許文献4(2018年3月2日出願)は、接着促進剤としてチオエーテルアクリレートを含む放射線硬化性インクジェットインクが使用されるPCBの製造方法を開示している。
【0012】
そのような接着促進剤の特性を、それらを含むインクが使用される用途に応じて最適化することは、適切な出発チオエーテルの入手可能性によって制限される。多くの場合、チオエーテルアクリレートを調製するために多段階合成が必要とされ、PCB製造プロセスにおいて、チオエーテルアクリレートを含む放射線硬化性インクジェットインクの許容できない費用増加をもたらす。
【0013】
従って、非常に汎用性があり、費用対効果の高いアプローチによって入手可能な接着促進剤が必要とされている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0014】
【特許文献1】国際公開第2004/026977号パンフレット
【特許文献2】国際公開第2004/106437号パンフレット
【特許文献3】独国特許第10063332号明細書
【特許文献4】欧州特許出願公開第18159698.2号明細書
【発明の概要】
【0015】
本発明の目的は、優れた噴射、安定性及び剥離性能を維持しつつ、良好な接着性を特徴とする、PCB製造プロセスで使用するための放射線硬化性インクジェットインクを提供することである。
【0016】
本発明の別の目的は、汎用性があり、費用対効果の高いアプローチによって製造される場合がある接着促進剤を含む、そのような放射線硬化性インクジェットインクを提供することである。
【0017】
本発明の目的は、請求項1に記載の放射線硬化性組成物によって実現される。
【0018】
本発明のさらなる目的は、以下の説明から明らかになるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0019】
定義
例えば単官能性重合性化合物における用語「単官能性」は、重合性化合物が1つの重合性基を含むことを意味する。
【0020】
例えば二官能性重合性化合物における用語「二官能性」は、重合性化合物が2つの重合性基を含むことを意味する。
【0021】
例えば多官能性重合性化合物における用語「多官能性」は、重合性化合物が3つ以上の重合性基を含むことを意味する。
【0022】
用語「アルキル」は、アルキル基中の炭素原子の各数について可能な全ての変異体、即ち、メチル、エチル、3つの炭素原子の場合:n-プロピル及びイソプロピル;4つの炭素原子の場合:n-ブチル、イソブチル及び第3級ブチル;5つの炭素原子の場合:n-ペンチル、1,1-ジメチル-プロピル、2,2-ジメチルプロピル及び2-メチル-ブチル等を意味する。
【0023】
特に明記しない限り、置換又は非置換アルキル基は、好ましくは、C1~C6-アルキル基である。
【0024】
特に明記しない限り、置換又は非置換アルケニル基は、好ましくは、C2~C6-アルケニル基である。
【0025】
特に明記しない限り、置換又は非置換アルキニル基は、好ましくは、C2~C6-アルキニル基である。
【0026】
特に明記しない限り、置換又は非置換アルカリール基は、好ましくは、1つ、2つ、3つ又はそれを超えるC1~C6-アルキル基を含むフェニル又はナフチル基である。
【0027】
特に明記しない限り、置換又は非置換アラルキル基は、好ましくは、フェニル基又はナフチル基を含むC7~C20-アルキル基である。
【0028】
特に明記しない限り、置換又は非置換アリール基は、好ましくは、フェニル基又はナフチル基である。
【0029】
特に明記しない限り、置換又は非置換ヘテロアリール基は、好ましくは、1つ、2つ又は3つの酸素原子、窒素原子、硫黄原子、セレン原子又はそれらの組み合わせで置換された5員環又は6員環である。
【0030】
例えば置換アルキル基における用語「置換」は、アルキル基がそのような基に通常存在する原子、即ち、炭素及び水素以外の原子で置換されている場合があることを意味する。例えば、置換アルキル基は、ハロゲン原子又はチオール基を含む場合がある。非置換アルキル基は、炭素原子及び水素原子のみを含む。
【0031】
特に明記しない限り、置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基、置換アルカリール基、置換アリール及び置換ヘテロアリール基は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及び第3級ブチル、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸エステル、スルホンアミド、-Cl、-Br、-I、-OH、-SH、-CN及び-NO2からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換されている。
【0032】
放射線硬化性インクジェットインク
放射線硬化性インクジェットインクは、以下に記載される重合性化合物及び接着促進剤を含む。
【0033】
放射線硬化性インクジェットインクは、光開始剤、共開始剤、着色剤、ポリマー分散剤、重合阻害剤、難燃剤又は界面活性剤等の他の成分をさらに含み得る。
【0034】
放射線硬化性インクジェットインクは、いずれかのタイプの放射線、例えば電子ビーム放射線によって硬化される場合があるが、好ましくは、UV放射線、より好ましくは、UV LEDからのUV放射線によって硬化される。従って、放射線硬化性インクジェットインクは、好ましくは、UV硬化性インクジェットインクである。
【0035】
信頼性のある工業用インクジェット印刷のために、放射線硬化性インクジェットインクの粘度は、全て1000s-1の剪断速度で、好ましくは、45℃で20mPa.s以下、より好ましくは、45℃で1~18mPa.s、最も好ましくは、45℃で4~14mPa.sである。
【0036】
好ましい噴射温度は、10~70℃、より好ましくは20~55℃、最も好ましくは25~50℃である。
【0037】
良好な画像品質及び接着性のために、放射線硬化性インクジェットインクの表面張力は、好ましくは、25℃で18~70mN/mの範囲、より好ましくは、25℃で20~40mN/mの範囲である。
【0038】
接着促進剤
接着促進剤は、式Iによる化学構造を有する。
【化1】
(式中
R
1は、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基、及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択され;
R
2及びR
3は、独立して、水素及び置換又は非置換アルキル基からなる群から選択され;
Lは、n+m+o価の連結基を表し;
nは、1~9の整数を表し;
mは、1~9の整数を表し;
oは、0~8の整数を表し;
但し、n+m+oは、最大10であり;
Xは、酸素又はNR
4を表し;
R
4は、水素、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基、及び置換又は非置換アリール又はヘテロアリール基からなる群から選択される。)
【0039】
Xは、好ましくは、酸素を表す。
【0040】
R1は、好ましくは、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基及び置換又は非置換アルカリール基からなる群から選択され、置換又は非置換アルキル基が特に好ましい。
【0041】
R1、R2、R3及びR4について上記で言及された置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基、置換アルカリール基、置換アリール及び置換ヘテロアリール基は、好ましくは、メチル、エチル、n-プロピル、イソプロピル、n-ブチル、イソブチル及び第3級ブチル、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン、アルデヒド、スルホキシド、スルホン、スルホン酸エステル、スルホンアミド、-Cl、-Br、-I、-OH、-SH、-CN並びに-NO2からなる群から選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0042】
R1、R2、R3及びR4について上記で言及された置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基、置換アルカリール基、置換アリール及び置換ヘテロアリール基は、より好ましくは、エステル、アミド、エーテル、チオエーテル、ケトン及び-OHからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0043】
R1、R2、R3及びR4について上記で言及された置換アルキル基、置換アルケニル基、置換アルキニル基、置換アラルキル基、置換アルカリール基、置換アリール及び置換ヘテロアリール基は、最も好ましくは、エステル、エーテル及び-OHからなる群から選択される1つ以上の置換基で置換される。
【0044】
R2及びR3は、好ましくは、独立して、水素及びメチル基からなる群から選択され、水素が特に好ましい。
【0045】
Xは、好ましくは、酸素又はNHを表し、酸素が特に好ましい。
【0046】
好ましくは、n+m+oは、6以下、より好ましくは、3又は4である。
【0047】
好ましくは、n及びmは、互いに独立して1又は2である。
【0048】
接着促進剤は、好ましくは、アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミドからなる群から選択される多官能性モノマーの活性化二重結合への触媒マイケル付加によって調製され、アクリレート及びメタクリレートがより好ましく、アクリレートが最も好ましい。
【0049】
アクリレート、メタクリレート、アクリルアミド及びメタクリルアミドからなる群から選択される異なるモノマー単位が、前記多官能性モノマー中に存在する場合がある。
【0050】
合成戦略は、典型的には、本発明による接着促進剤の混合物をもたらし、これは好ましくは、さらに精製することなくインク中で使用される。
本発明によるチオエーテル系接着促進剤の例を表1に示す。
【表1-1】
【表1-2】
【0051】
放射線硬化性インクジェットインク中の接着促進剤の量は、インクジェットインクの総重量に対して、好ましくは0.1~20重量%、より好ましくは0.5~15重量%、最も好ましくは1~10重量%である。
【0052】
量が少なすぎると、金属表面へのインクジェットインクの接着性が不十分になる場合があり、量が多すぎると、インク粘度が増大する場合があり、貯蔵寿命がより重要になる場合がある。
【0053】
重合性化合物
重合性化合物は、好ましくは、フリーラジカル重合性化合物である。
【0054】
フリーラジカル重合性化合物は、モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーであってもよい。モノマーは、希釈剤とも呼ばれる。
【0055】
これらのモノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーは、異なる程度の官能性、即ち、異なる量のフリーラジカル重合性基を有する場合がある。
【0056】
単、二、三及び高官能性モノマー、オリゴマー及び/又はプレポリマーの組み合わせを含む混合物を使用する場合がある。放射線硬化性インクジェットインクの粘度は、モノマーとオリゴマーの比を変えることによって調節される場合がある。
【0057】
好ましい態様では、モノマー、オリゴマー又はポリマーは、重合性基として少なくとも1つのアクリレート基を含む。
【0058】
好ましいモノマー及びオリゴマーは、欧州特許出願公開第1911814号の段落[0106]~[0115]に列挙されているものである。
【0059】
好ましい態様では、放射線硬化性インクジェットインクは、ビニルエーテル基及びアクリレート又はメタクリレート基を含むモノマーを含む。このようなモノマーは、欧州特許出願公開第2848659号、段落[0099]~[0104]に開示されている。ビニルエーテル基及びアクリレート基を含む特に好ましいモノマーは、2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレートである。
【0060】
はんだマスクを形成するために使用される場合、重合性化合物は、好ましくは、アクリロイルモルホリン、環状トリメチルプロペンホルモールアクリレート、イソボルニルアクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、及び2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレートからなる群から選択される。
【0061】
放射線硬化性インクジェットインクがエッチングレジストを形成するために使用される場合、好ましい重合性化合物は、国際公開第2013/113572号、段落[0056]~[0058];国際公開第2015/132020号、段落[0031]~[0052];又は国際公開第2016/050504号、段落[0028]~[0066]に開示されている。
【0062】
光開始剤
放射線硬化性インクジェットは、好ましくは、少なくとも1つの光開始剤を含む。
【0063】
光開始剤は、好ましくは、フリーラジカル光開始剤である。
【0064】
フリーラジカル光開始剤は、化学線(actinic radiation)に暴露されたときにフリーラジカルの形成によってモノマー及びオリゴマーの重合を開始する化学化合物である。NorrishI型開始剤は、励起後に開裂し、直ちに開始ラジカルを生じる開始剤である。NorrishII型開始剤は、化学線によって活性化され、実際の開始フリーラジカルとなる第2の化合物からの水素引き抜きによってフリーラジカルを形成する光開始剤である。この第2の化合物は、重合相乗剤又は共開始剤と呼ばれる。I型及びII型光開始剤の両方を、本発明において単独で又は組み合わせて使用することができる。
【0065】
適切な光開始剤は、CRIVELLO,J.V.,et al.Photoinitiators for Free Radical,Cationic and Anionic Photopolymerization.2nd edition.Edited by BRADLEY,G..London,UK:John Wiley and Sons Ltd,1998.p.276-293に開示されている。
【0066】
フリーラジカル光開始剤の特定の例は、以下の化合物又はそれらの組み合わせを含む場合があるが、それらに限定されない:ベンゾフェノン及び置換ベンゾフェノン;1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン;イソプロピルチオキサントン等のチオキサントン;2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニルプロパン-1-オン;2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン;ベンジルジメチルケタール;ビス(2,6-ジメチルベンゾイル)-2,4,4-トリメチルペンチルホスフィンオキシド;2,4,6-トリメチルベンゾイル-ジフェニルホスフィンオキシド;2,4,6-トリメトキシベンゾイルジフェニルホスフィンオキシド;2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルホリノプロパン-1-オン;2,2-ジメトキシ-1,2-ジフェニルエタン-1-オン又は5,7-ジヨード-3-ブトキシ-6-フルオロン。
【0067】
適切な市販のフリーラジカル光開始剤は、CIBA SPECIALTY CHEMICALSから入手可能なIrgacure(商標)184、Irgacure(商標)500、Irgacure(商標)369、Irgacure(商標)1700、Irgacure(商標)651、Irgacure(商標)819、Irgacure(商標)1000、Irgacure(商標)1300、Irgacure(商標)1870、Darocur(商標)1173、Darocur(商標)2959、Darocur(商標)4265及びDarocur(商標)ITX;BASF AGから入手可能なLucerin(商標)TPO;LAMBERTIから入手可能なEsacure(商標)KT046、Esacure(商標)KIP150、Esacure(商標)KT37及びEsacure(商標)EDB;SPECTRA GROUP Ltd.から入手可能なH-Nu(商標)470及びH-Nu(商標)470Xを含む。
【0068】
光開始剤の好ましい量は、放射線硬化性インクジェットインクの総重量の0.1~20重量%、より好ましくは2~15重量%、最も好ましくは3~10重量%である。
【0069】
感光性をさらに高めるために、放射線硬化性インクジェットは、共開始剤をさらに含む場合がある。共開始剤の適切な例は、3つの群に分類することができる:1)メチルジエタノールアミン、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン、トリエチルアミン及びN-メチルモルホリン等の第3級脂肪族アミン;(2)アミルパラジメチル-アミノベンゾエート、2-n-ブトキシエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2-(ジメチルアミノ)-エチルベンゾエート、エチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート、及び2-エチルヘキシル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエート等の芳香族アミン;並びに(3)ジアルキルアミノアルキル(メタ)アクリレート(例えば、ジエチルアミノエチルアクリレート)又はN-モルホリノアルキル-(メタ)アクリレート(例えば、N-モルホリノエチル-アクリレート)等の(メタ)アクリレートアミン。好ましい共開始剤は、アミノベンゾエートである。
【0070】
フェノール化合物
放射線硬化性インクジェットインクは、好ましくは、フェノール化合物、より好ましくは、少なくとも2つのフェノール基を含むフェノール化合物を含む。フェノール化合物は、2つ、3つ、4つ又はそれを超えるフェノール基を含む場合がある。
【0071】
好ましいフェノール化合物は、2つのフェノール基を含む。
【0072】
特定の好ましいフェノール化合物は、式IIによる構造を有する:
【化2】
(式中、
R
5及びR
6は、独立して、水素原子、置換又は非置換アルキル基、ヒドロキシル基及び置換又は非置換アルコキシ基からなる群から選択され、
Yは、CR
7R
8、SO
2、SO、S、O及びCOからなる群から選択され、
R
7及びR
8は、独立して、水素原子、置換又は非置換アルキル基、置換又は非置換アルケニル基、置換又は非置換アルキニル基、置換又は非置換アルカリール基、置換又は非置換アラルキル基、置換又は非置換(ヘテロ)アリール基からなる群から選択され、
R
7及びR
8は、5~8員環を形成するために必要な原子を表す場合がある。)
【0073】
Yは、好ましくは、CR7R8又はSO2であり、R7及びR8は、好ましくは、水素原子又はアルキル基を表す。
【0074】
別の好ましい態様では、フェノール化合物は、少なくとも2つのフェノール基を含むポリマーである。好ましくは、少なくとも2つのフェノール基を含むポリマーは、分岐又は超分岐ポリマーである。
【0075】
少なくとも2つのフェノール基を含む好ましいポリマーは、フェノール樹脂、即ちノボラック又はレゾールである。
【0076】
フェノール樹脂は、フェノール化合物とアルデヒド又はケトンとの反応生成物である。使用できるフェノールは:フェノール、o-クレゾール、p-クレゾール、m-クレゾール、2,4-キシレノール、3,5-キシレノール、又は2,5-キシレノールである。使用できるアルデヒドは、ホルムアルデヒド、アセトアルデヒド又はアセトンである。
【0077】
ノボラック調製のために最も広く使用されている方法は、フェノール/クレゾール及びホルムアルデヒドの酸触媒一段階合成であり、これは、樹脂の統計的構造をもたらす(下記の反応スキームを参照されたい)。
【化3】
【0078】
一般に、塩酸、硫酸、p-トルエン硫酸又はシュウ酸が触媒として使用される。様々な割合のホルムアルデヒド及びフェノール/クレゾールが、通常のノボラック樹脂において通常使用される。より高いフェノール含有量は、分岐の程度を増加させるが、反応はオルト位及びパラ位で起こり得る。より高いp-クレゾール含有量を有する樹脂については、パラ位がメチル基の存在によってブロックされることにより、より線状のポリマーが得られる。
【0079】
フェノールとホルムアルデヒドのノボラックコポリマーは、反応がオルト位及びパラ位の両方で起こるので、高度の分岐を有するであろう。粘度を低下させるためには、高度の分岐及び/又は低分子量が好ましい。クレジルノボラック(cresylic novolac)については、m-クレゾールの使用がo-クレゾール及びp-クレゾールと比較して容易に高分子量を与えることができる。
【0080】
フェノール樹脂は、塩基触媒反応で調製することもでき、これはレゾールの形成をもたらす。レゾールは、メチロール基も有するフェノールポリマーである。
【0081】
はんだマスクインクジェットインクに組み込む場合、ノボラック樹脂は高温(>150℃)でしか反応しないので、十分なインク安定性を得るためにノボラック樹脂が好ましい。レゾールは、より低い温度で既に反応する場合があり、メチロール基の存在により、インクジェットインクの耐薬品性が劣る場合がある。
【0082】
少なくとも2つのフェノール基を有する、より明確に定義された分岐ポリマーは、米国特許第5554719号及び米国特許第2005250042号に開示されているように、4-ヒドロキシフェニルメチルカルビノールを使用して調製される場合がある。4-ヒドロキシフェニルメチルカルビノールから調製された少なくとも2つのフェノール基を有する特定の好ましい分岐ポリマーは、Du Pont Electronic Polymersによって開発されており、Hydrite Chemical Companyによって商品名PB-5(CASRN 166164-76-7)で供給されている。
【0083】
本発明によるフェノール化合物の例は、表2に示されるが、これらに限定されるものではない。
【表2-1】
【表2-2】
【表2-3】
【表2-4】
【表2-5】
【表2-6】
【0084】
少なくとも2つのフェノール基を有するポリマーの典型的な例は、以下の表3に示されるが、これらに限定されるものではない。
【表3-1】
【表3-2】
【0085】
フェノール化合物の量は、インクジェットインクの総重量に対して、好ましくは0.5~20重量%、より好ましくは1~15重量%、最も好ましくは2.5~10重量%である。
【0086】
着色剤
放射線硬化性インクジェットは、実質的に無色のインクジェットインクであってもよく、又は少なくとも1つの着色剤を含んでもよい。例えば、インクジェットインクがエッチングレジストとして使用される場合、着色剤は、導電性パターン(patter)の製造業者に一時的なマスクを明確に見えるようにし、品質の目視検査を可能にする。インクジェットインクがはんだマスクを適用するために使用される場合、インクジェットインクは、典型的には着色剤を含む。はんだマスクの好ましい色は、緑色であるが、黒色又は赤色等の他の色を使用してもよい。
【0087】
着色剤は、顔料又は染料であってもよいが、好ましくは、放射線硬化性インクジェットのインクジェット印刷プロセス中にUV硬化工程によって漂白されない染料である。顔料は、黒色、白色、シアン色、マゼンタ色、黄色、赤色、橙色、紫色、青色、緑色、褐色、これらの混合物等であってもよい。着色顔料は、HERBST,Willy,et al.Industrial Organic Pigments,Production,Properties,Applications.3rd edition.Wiley - VCH,2004.ISBN 3527305769によって開示されているものから選択される場合がある。
【0088】
適切な顔料は、国際公開第2008/074548号の段落[0128]~[0138]に開示されている。
【0089】
インクジェットインク中の顔料粒子は、インクジェット印刷装置、特に噴射ノズルを通るインクの自由な流れを可能にするのに十分に小さくなければならない。また、最大の色強度のために、また沈降を遅くするために小さい粒子を使用することが望ましい。最も好ましくは、平均顔料粒径は、150nm以下である。顔料粒子の平均粒径は、動的光散乱の原理に基づいて、Brookhaven Instruments Particle Sizer BI90plusを使用して測定することが好ましい。
【0090】
一般に、染料は、顔料よりも高い光退色を示すが、噴射性に問題を生じない。アントラキノン染料は、UV硬化性インクジェット印刷に使用される通常のUV硬化条件下でほんのわずかな光退色しか示さないことが見出された。
【0091】
好ましい態様では、放射線硬化性インクジェットインク中の着色剤は、LANXESSからのMacrolex(商標)Blue 3R(CASRN 325781-98-4)等のアントラキノン染料である。
【0092】
他の好ましい染料は、クリスタルバイオレット及び銅フタロシアニン染料を含む。
【0093】
好ましい態様では、着色剤は、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づいて、0.5~6.0重量%、より好ましくは1.0~2.5重量%の量で存在する。
【0094】
ポリマー分散剤
放射線硬化性インクジェット中の着色剤が顔料である場合、放射線硬化性インクジェットは、顔料を分散させるための分散剤、より好ましくはポリマー分散剤を含むことが好ましい。
【0095】
適切なポリマー分散剤は、2種のモノマーのコポリマーであるが、3種、4種、5種、又はさらにそれを超えるモノマーを含む場合がある。ポリマー分散剤の特性は、モノマーの性質及びポリマー中のそれらの分布の両方に依存する。コポリマー分散剤は、好ましくは、以下のポリマー組成を有する:
・ 統計的に重合したモノマー(例えば、ABBAABABに重合したモノマーA及びB);
・ 交互重合モノマー(例えば、ABABABABに重合したモノマーA及びB);
・ 勾配(テーパー状)重合モノマー(例えば、AAABAABBABBBに重合したモノマーA及びB);
・ ブロックコポリマー(例えば、AAAAABBBBBBに重合したモノマーA及びB)、ここで、ブロックの各々のブロック長(2、3、4、5又はさらにそれを超える)は、ポリマー分散剤の分散能力のために重要である;
・ グラフトコポリマー(グラフトコポリマーは、主鎖に結合したポリマー側鎖を有するポリマー主鎖からなる);及び
・ これらのポリマーの混合形態、例えばブロック状勾配コポリマー。
【0096】
適切なポリマー分散剤は、欧州特許出願公開第1911814号の「分散剤」のセクション、より具体的には[0064]~[0070]及び[0074]~[0077]に列挙されている。
【0097】
ポリマー分散剤の商業的な例は、以下である:
・ BYK CHEMIE GMBHから入手可能なDISPERBYK(商標)分散剤;
・ NOVEONから入手可能なSOLSPERSE(商標)分散剤;
・ EVONIKからのTEGO(商標)DISPERS(商標)分散剤;
・ MUENZING CHEMIEからのEDAPLAN(商標)分散剤;
・ LYONDELLからのETHACRYL(商標)分散剤;
・ ISPからのGANEX(商標)分散剤;
・ CIBA SPECIALTY CHEMICALS INCからのDISPEX(商標)及びEFKA(商標)分散剤;
・ DEUCHEMからのDISPONER(商標)分散剤;及び
・ JOHNSON POLYMERからのJONCRYL(商標)分散剤。
【0098】
重合阻害剤
放射線硬化性インクジェットインクは、インクの熱安定性を改善するための少なくとも1つの阻害剤を含む場合がある。
【0099】
適切な重合阻害剤は、フェノール型酸化防止剤、ヒンダードアミン光安定剤、蛍光体型酸化防止剤、(メタ)アクリレートモノマーに一般的に使用されるヒドロキノンモノメチルエーテル、及びヒドロキノンを含む。t-ブチル-カテコール、ピロガロール、2,6-ジ-tert.ブチル-4-メチルフェノール(=BHT)を使用する場合もある。
【0100】
適切な市販の阻害剤は、例えば、Sumitomo Chemical Co.Ltd.製のSumilizer(商標)GA-80、Sumilizer(商標)GM及びSumilizer(商標)GS;Rahn AGからのGenorad(商標)16、Genorad(商標)18及びGenorad(商標)20;Ciba Specialty ChemicalsからのIrgastab(商標)UV10及びIrgastab(商標)UV22、Tinuvin(商標)460及びCGS20;Kromachem LtdからのFloorstab(商標)UVレンジ(UV-1、UV-2、UV-5及びUV-8)、Cytec Surface SpecialtiesからのAdditol(商標)Sレンジ(S100、S110、S120及びS130)である。
【0101】
阻害剤は、好ましくは重合性阻害剤である。
【0102】
これらの重合阻害剤を過剰に添加すると、硬化速度が低下する場合があるため、配合に先立ち、重合を防止できる量を決定することが好ましい。重合阻害剤の量は、放射線硬化性インクジェットインク全体の5重量%未満であることが好ましく、3重量%未満であることがより好ましい。
【0103】
界面活性剤
放射線硬化性インクジェットは、少なくとも1種の界面活性剤を含む場合がある。
【0104】
界面活性剤は、アニオン性、カチオン性、非イオン性、又は双性イオン性であってもよく、通常、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づいて1重量%未満の総量で添加される。
【0105】
適切な界面活性剤は、フッ素化界面活性剤、脂肪酸塩、高級アルコールのエステル塩、高級アルコールのアルキルベンゼンスルホン酸塩、スルホコハク酸エステル塩、及びリン酸エステル塩(例えば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム及びジオクチルスルホコハク酸ナトリウム)、高級アルコールのエチレンオキシド付加物、アルキルフェノールのエチレンオキシド付加物、多価アルコール脂肪酸エステルのエチレンオキシド付加物、並びにそれらのアセチレングリコール及びエチレンオキシド付加物(例えば、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、並びにAIR PRODUCTS & CHEMICALS INCから入手可能なSURFYNOL(商標)104、104H、440、465及びTG)を含む。
【0106】
好ましい界面活性剤は、フッ素系界面活性剤(フッ素化炭化水素等)及びシリコーン界面活性剤から選択される。シリコーン界面活性剤は、好ましくはシロキサンであり、アルコキシル化、ポリエーテル変性、ポリエーテル変性ヒドロキシ官能性、アミン変性、エポキシ変性、及び他の変性、又はそれらの組み合わせであり得る。好ましいシロキサンは、ポリマー、例えばポリジメチルシロキサンである。
【0107】
好ましい市販のシリコーン界面活性剤は、BYK ChemieからのBYK(商標)333及びBYK(商標)UV3510を含む。
【0108】
好ましい態様では、界面活性剤は、重合性化合物である。
【0109】
好ましい重合性シリコーン界面活性剤は、(メタ)アクリル化シリコーン界面活性剤を含む。最も好ましくは、(メタ)アクリル化シリコーン界面活性剤は、アクリレートがメタクリレートよりも反応性が高いため、アクリル化シリコーン界面活性剤である。
【0110】
好ましい態様では、(メタ)アクリル化シリコーン界面活性剤は、ポリエーテル変性(メタ)アクリル化ポリジメチルシロキサン又はポリエステル変性(メタ)アクリル化ポリジメチルシロキサンである。
【0111】
好ましくは、界面活性剤は、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づいて0~3重量%の量で、放射線硬化性インクジェットインク中に存在する。
【0112】
難燃剤
好ましい難燃剤は、アルミナ三水和物及びベーマイト等の無機難燃剤、並びに有機ホスフェート(例えば、リン酸トリフェニル(TPP)、レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)、ビスフェノールAジフェニルホスフェート(BADP)、及びリン酸トリクレシル(TCP));有機ホスホネート(例えば、ジメチルメチルホスホネート(DMMP));及び有機ホスフィネート(例えば、アルミニウムジメチルホスフィネート)等の有機リン化合物である。
【0113】
他の好ましい有機リン化合物は、米国特許第8273805号に開示されている。
インクジェットインクの調製
【0114】
着色放射線硬化性インクジェットインクの調製は、当業者に周知である。好ましい調製方法は、国際公開第2011/069943号の段落[0076]~[0085]に開示されている。
【0115】
プリント回路基板の製造方法
本発明によるプリント回路基板(PCB)の製造方法は、上述したような放射線硬化性インクジェットインクを基板上に噴射し硬化させるインクジェット印刷工程を含む。
【0116】
好ましい態様によれば、PCBの製造方法は、エッチングレジストが金属表面、好ましくは銅表面上に提供されるインクジェット印刷工程を含む。
【0117】
エッチングレジストは、金属表面上に放射線硬化性インクジェットインクを噴射し硬化させることによって金属表面上に提供され、それにより金属表面の保護領域を形成する。次いで、金属表面の保護されていない領域の金属がエッチングによって除去される。エッチング後、エッチングレジストの少なくとも一部が金属表面の保護領域から除去される。
【0118】
金属表面は、好ましくは、基板に取り付けられた金属箔又はシートである。
【0119】
非導電性である限り、金属シートに接合される基板の種類に実際の制限はない。基板は、セラミック、ガラス、又はポリイミド等のプラスチックで作製される場合がある。
【0120】
金属シートは、通常、9~105μmの厚さを有する。
【0121】
金属表面の性質に制限はない。金属表面は、好ましくは、銅、アルミニウム、ニッケル、鉄、スズ、チタン又は亜鉛からなるが、これらの金属を含む合金であってもよい。非常に好ましい態様では、金属表面は、銅で作製される。銅は、電気伝導率が高く、比較的安価な金属であるため、プリント回路基板を作製するのに非常に適している。
【0122】
本方法は、装飾的なエッチングされた金属パネルを製造するために使用される場合もある。
【0123】
使用される金属表面は、導電性パターンが準備される態様について上述された金属から選択されてもよい。この場合、中実の金属パネルを使用することが好ましい。しかしながら、基板に取り付けられた金属箔を使用してもよい。金属箔に接合される基板の種類には、実際の制限はない。基板は、セラミック、ガラス若しくはプラスチック、又はさらには第2の(より安価な)金属プレートから作製されてもよい。この金属は、合金であってもよい。
【0124】
このような装飾的な金属パネルは、純粋に装飾的である以外に、情報を提供する等の目的を果たす場合がある。例えば、耐エッチング性放射線硬化性インクジェットインクが、人又は会社の名称等の情報として印刷され、次いで除去されて、マットなエッチングされた背景上に光沢のある輝く名称をもたらすアルミニウムネームプレートも、装飾的要素を含む装飾的金属パネルと見なされる。エッチングは、金属表面の光学特性の変化、例えば、光沢の変化をもたらす。硬化した放射線硬化性インクジェットインクを金属表面から除去した後、エッチングされた金属表面とエッチングされていない金属表面との間に美的効果が生じる。
【0125】
インクジェット印刷方法の好ましい態様では、金属表面は放射線硬化性インクジェットインクを印刷する前に洗浄される。これは、金属表面が手で取り扱われ、手袋が着用されない場合に特に望ましい。この洗浄は、金属表面への放射線硬化性インクジェットインクの接着を妨害し得る塵埃粒子及びグリースを除去する。PCBでは、銅は、しばしばマイクロエッチングによって洗浄される。接着性を改善するために、銅の酸化物層を除去し、粗さを導入する。
【0126】
インクジェット方法は、装飾的なエッチングされたガラスパネルを製造するためにも使用される場合がある。そのような方法は、例えば国際公開第2013/189762号(AGC)に開示されている。
【0127】
別の好ましい態様によれば、PCBの製造方法は、はんだマスクが提供されるインクジェット印刷工程を含む。
【0128】
はんだマスクは、典型的には、導電性パターンを含む誘電体基板上に放射線硬化性インクジェットインクを噴射し硬化させることによって提供される。
【0129】
噴射され硬化した放射線硬化性インクジェットインクに、熱処理が適用されることが好ましい。熱処理は、好ましくは、80℃~250℃の温度で行われる。温度は、好ましくは100℃以上、より好ましくは120℃以上である。はんだマスクの炭化を防止するために、温度は、好ましくは200℃以下、より好ましくは160℃以下である。
【0130】
熱処理は、典型的には、15~90分間で行われる。
【0131】
熱処理の目的は、はんだマスクの重合度をさらに高めることである。
【0132】
電子デバイスの誘電体基板は、いずれの非導電性材料であってもよい。基板は、典型的には、紙/樹脂複合体又は樹脂/ガラス繊維複合体、セラミック基板、ポリエステル又はポリイミドである。
【0133】
導電性パターンは、典型的には、金、銀、パラジウム、ニッケル/金、ニッケル、スズ、スズ/鉛、アルミニウム、スズ/アルミニウム及び銅等の、電子デバイスを準備するために従来より使用されているいずれかの金属又は合金から作製される。導電性パターンは、好ましくは銅から作製される。
【0134】
放射線硬化性はんだマスクインクジェットインクは、両方の態様において、インクを電子ビーム又は紫外線(UV)放射等の化学線に暴露することによって硬化する場合がある。好ましくは、放射線硬化性インクジェットインクはUV放射線によって、より好ましくはUV LED硬化を用いて硬化される。
【0135】
PCBの製造方法は、2つ、3つ、またはそれを超えるインクジェット印刷工程を含む場合がある。例えば、方法は、2つのインクジェット印刷工程を含む場合があり、ここで一方のインクジェット印刷工程において、金属表面上にエッチングレジストが設けられ、他方のインクジェット印刷工程において、導電性パターンを含む誘電体基板上にはんだマスクが設けられる。
【0136】
第3のインクジェット印刷工程がレジェンド印刷のために用いられる場合がある。
エッチング
【0137】
上述したような金属表面のエッチングは、エッチャントを使用して行われる。エッチャントは、好ましくはpH<3、又は8<pH<10を有する水溶液である。
【0138】
好ましい態様では、エッチャントは、2未満のpHを有する酸性水溶液である。酸エッチャントは、好ましくは、硝酸、ピクリン酸、塩酸、フッ化水素酸及び硫酸からなる群から選択される少なくとも1つの酸を含む。
【0139】
当技術分野で知られている好ましいエッチャントは、Kalling’s N°2、ASTM N°30、Kellers Etch、Klemm’s Reagent、Kroll’s Reagent、Marble’s Reagent、Murakami’s Reagent、Picral及びVilella’s Reagentを含む。
【0140】
別の好ましい態様では、エッチャントは、9以下のpHを有するアルカリ性水溶液である。アルカリ性エッチャントは、好ましくは、アンモニア又は水酸化アンモニウム、水酸化カリウム及び水酸化ナトリウムからなる群から選択される少なくとも1つの塩基を含む。
【0141】
エッチャントは、二塩化銅、硫酸銅、フェリシアン化カリウム、及び三塩化鉄等の金属塩を含んでいてもよい。
【0142】
PCB用途における金属表面のエッチングは、好ましくは、数秒~数分、より好ましくは5~200秒の時間枠で行われる。エッチングは、好ましくは35~60℃の温度で行われる。
【0143】
製造又は装飾的金属パネルのような他の用途における金属表面のエッチング時間は、エッチング工程中に除去しなければならない金属の種類及び量に応じて、実質的により長い場合がある。エッチング時間は、15分、30分、又はさらには60分を超えてもよい。
【0144】
ガラス表面をエッチングする方法において、エッチング液は、フッ化水素酸の水溶液であることが好ましい。典型的には、エッチング液は、0~5のpHを有する。
【0145】
エッチングに続いて、残留エッチャントを除去するために水ですすぐことが好ましい。
【0146】
剥離
エッチング後、硬化した放射線硬化性インクジェットインクは、例えば、電気又は電子デバイスが残留する金属表面(導電性パターン)と接触することができるように、又はエッチングされた金属パネルの装飾的特徴が完全に見えるようになるように、金属表面から少なくとも部分的に除去されなければならない。例えば、トランジスタ等の電子部品は、プリント回路基板上の導電性(銅)パターンと電気的に接触できる必要がある。好ましい態様では、硬化した放射線硬化性インクジェットインクは、金属表面から完全に除去される。
【0147】
好ましい態様では、硬化した放射線硬化性インクジェットインクは、アルカリ性剥離浴によって除去される。このようなアルカリ性剥離浴は、通常、pH>10の水溶液である。
【0148】
別の態様では、硬化した放射線硬化性インクジェットインクは、乾燥層間剥離によって除去される。この「乾燥剥離」技術は、現在、プリント回路基板の製造の分野では知られておらず、製造プロセスにおいていくつかの生態学的及び経済的利点を導入する。乾燥剥離は、腐食性のアルカリ性剥離浴及びその固有の液体廃棄物の必要性を排除するだけでなく、より高いスループットを可能にする。乾燥剥離は、例えば、接着箔及びロール・ツー・ロールラミネータ・デラミネータを使用することによって実施することができる。接着箔は、最初に、金属表面上に存在する硬化した放射線硬化性インクジェットインク上にその接着面で積層され、続いて剥離され、それにより、硬化した放射線硬化性インクジェットインクを金属表面から除去する。ロール・ツー・ロールラミネーター・デラミネーターによる層間剥離は、数秒で行うことができ、一方、アルカリ性剥離は、数分かかることがある。
【0149】
インクジェット印刷装置
放射線硬化性インクジェットインクは、印刷ヘッドに対して移動している基板上に、ノズルを介して制御された方法で小滴を噴射する1つ以上の印刷ヘッドによって噴射される場合がある。
【0150】
インクジェット印刷システムの好ましい印刷ヘッドは、圧電ヘッドである。圧電インクジェット印刷は、電圧が印加されたときの圧電セラミック変換器の動きに基づいている。電圧を印加することにより、印刷ヘッド内の圧電セラミック変換器の形状が変化し、空隙が生じ、次いで、そこにインクが充填される。電圧を再び取り除くと、セラミックは元の形状に膨張し、印刷ヘッドからインク滴が噴出する。しかしながら、本発明によるインクジェット印刷方法は、圧電インクジェット印刷に限定されるものではない。他のインクジェット印刷ヘッドを使用することができ、これは、連続タイプ等の様々なタイプを含む。
【0151】
インクジェット印刷ヘッドは、通常、移動するインク-レシーバ表面を横切る横方向に往復走査する。しばしば、インクジェット印刷ヘッドは、戻るときに印刷しない。高い面積スループットを得るためには、双方向印刷が好ましい。別の好ましい印刷方法は、「シングルパス印刷プロセス」によるものであり、これは、金属プレートの幅全体に及ぶページ幅インクジェット印刷ヘッド又は複数の互い違いインクジェット印刷ヘッドを使用することによって行うことができる。シングルパス印刷プロセスでは、インクジェット印刷ヘッドは、通常静止したままであり、金属基板がインクジェット印刷ヘッドの下で輸送される。
【0152】
硬化装置
放射線硬化性インクジェットインクは、電子ビーム又は紫外線放射等の化学線に曝露することによって硬化させることができる。好ましくは、放射線硬化性インクジェットインクは、紫外線放射によって、より好ましくはUV LED硬化を用いて硬化される。
【0153】
インクジェット印刷では、硬化手段は、インクジェットプリンターの印刷ヘッドと組み合わされて配置される場合があり、インクジェットプリンターと一緒に移動し、その結果、硬化性液体は、噴射された直後に硬化放射線に曝露される。
【0154】
このような構成では、UV LEDを除いて、印刷ヘッドに接続され、印刷ヘッドと共に移動する十分小さな放射線源を提供することが困難になる可能性がある。従って、光ファイバ束又は内部反射可撓性チューブ等の可撓性放射線伝導手段によって放射線源に接続された、静止固定放射線源、例えば硬化UV光源を使用する場合がある。
【0155】
あるいは、化学線は、ミラーを含む複数のミラーを放射ヘッド上に配置することによって、固定源から放射線ヘッドに供給されてもよい。
【0156】
放射線源はまた、硬化される基板を横切って延在する細長い放射線源であってもよい。これは、印刷ヘッドによって形成された画像の次の列がその放射線源の下を段階的に又は連続的に通過するように、印刷ヘッドの横断経路に隣接していてもよい。
【0157】
放射光の一部が光開始剤又は光開始剤系によって吸収され得る限り、いずれの紫外線光源、例えば、高圧又は低圧水銀ランプ、冷陰極管、ブラックライト、紫外線LED、紫外線レーザー及びフラッシュライトも、放射線源として使用されてよい。これらのうち、好ましい放射線源は、300~400nmの主波長を有する比較的長い波長のUV寄与を示すものである。具体的には、光散乱が低減され、その結果、より効率的な内部硬化もたらされるため、UV-A光源が好ましい。
【0158】
UV放射は、一般に、以下のようにUV-A、UV-B及びUV-Cとして分類される:
・ UV-A:400nm~320nm
・ UV-B:320nm~290nm
・ UV-C:290nm~100nm。
【0159】
好ましい態様では、放射線硬化性インクジェットインクは、UV LEDによって硬化される。インクジェット印刷装置は、好ましくは360nmより大きい波長を有する1つ以上のUV LED、好ましくは380nmより大きい波長を有する1つ以上のUV LED、最も好ましくは約395nmの波長を有するUV LEDを含むことが好ましい。
【0160】
さらに、異なる波長又は照度の2つの光源を連続的に又は同時に使用してインク画像を硬化させることが可能である。例えば、第1のUV源は、UV-C、特に260nm~200nmの範囲に富むように選択することができる。次いで、第2のUV源は、UV-Aに富む、例えばガリウムドープランプ、又はUV-A及びUV-Bの両方において高い異なるランプであってもよい。2つのUV源の使用は、例えば、速い硬化速度及び高い硬化度の利点を有することが見出されている。
【0161】
硬化を促進するために、インクジェット印刷装置は、多くの場合、1つ以上の酸素枯渇ユニットを含む。酸素枯渇ユニットは、硬化環境中の酸素濃度を低下させるために、調節可能な位置及び調節可能な不活性ガス濃度を有する窒素又は他の比較的不活性なガス(例えば、CO2)のブランケットを配置する。残留酸素レベルは、通常、200ppmという低さに維持されるが、一般に200ppm~1200ppmの範囲である。
【実施例】
【0162】
材料
以下の実施例で使用される全ての材料は、特に明記しない限り、ALDRICH CHEMICAL Co(ベルギー)及びACROS(ベルギー)等の標準供給源から容易に入手可能であった。使用した水は、脱イオン水であった。
【0163】
CTFAは、ARKEMAからSartomer(商標)SR531として入手可能な環状トリメチルプロパンホルマールアクリレートである。
【0164】
VEEAは、NIPPON SHOKUBAI(日本)から入手可能な2-(ビニルエトキシ)エチルアクリレートである。
【0165】
SR335は、ARKEMAからSartomer(商標)SR335として入手可能なラウリルアクリレートである。
【0166】
ACMOは、RAHNから入手可能なアクリロイルモルホリンである。
【0167】
CD420は、ARKEMAからSartomer(商標)CD420として入手可能な単官能性環状アクリルモノマーである。
【0168】
TMPTAは、ARKEMAからSartomer(商標)SR351として入手可能なトリメチロールプロパントリアクリレートである。
【0169】
ITXは、LAMBSON SPECIALTY CHEMICALSからの、イソプロピルチオキサントン異性体の混合物であるSpeedcure(商標)ITXである。
【0170】
EPDは、RAHN AGからGenocure(商標)EPDの商品名で入手可能なエチル-4-(ジメチルアミノ)ベンゾエートである。
【0171】
BAPOは、BASFからIrgacure(商標)819として入手可能なビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシド光開始剤である。
【0172】
INHIBは、表4による組成を有する重合阻害剤を形成する混合物である。
【表4】
【0173】
Cupferron(商標)ALは、WAKO CHEMICALS LTDからのアルミニウムN-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンである。
【0174】
DPGDAは、ARKEMAからSartomer SR508として入手可能なジプロピレンジアクリレートである。
【0175】
Ebecryl 1360は、ALLNEXからのポリシロキサンヘキサアクリレートスリップ剤である。
【0176】
Cyanは、SUN CHEMICALSから入手可能なシアン顔料であるSUN FAST BLUE 15:4である。
【0177】
Yellowは、BASFからの黄色顔料であるCROMOPHTAL YELLOW D 1085Jである。
【0178】
Disperbyk 162は、分散剤であり、BYK(ALTANA)から入手可能な溶液から沈殿させた。
【0179】
PB5は、HYDRITE CHEMICAL COMPANYからPB5として入手可能な分岐ポリ(4-ヒドロキシスチレン)である。
【0180】
FR01は、ADEKA PALMAROLからADK Stab FP600の商品名で市販されている難燃剤である。
【0181】
ACROSからのアクリル酸99.5%。
【0182】
方法
粘度
インクの粘度を、CAMBRIDGE APPLIED SYSTEMSからの「Robotic Viscometer Type VISCObot」を使用して、45℃及び1000s-1の剪断速度で測定した。
【0183】
工業用インクジェット印刷の場合、45℃及び1000s-1の剪断速度での粘度は、好ましくは5.0~15mPa.sである。より好ましくは、45℃及び1000s-1の剪断速度での粘度は、15mPa.s未満である。
【0184】
はんだマスクインクジェットインクの接着性
接着性は、ISO2409:1992Paints and varnishes cross-cut test(国際標準1992-08-15)に従って、BRAIVE INSTRUMENTSからのBraive No.1536クロスカットテスターを使用し、切断間の間隔を1mmとし、Tesatape(商標)4104 PVCテープと組み合わせて600gの重さを使用して評価した。評価は、表5に記載の基準に従って行い、クロスカットにおける接着性とクロスカットの外側の接着性との両方を評価した。
【表5】
【0185】
耐半田性
はんだマスクインクジェットインクの耐半田性は、SOLDER CONNECTIONから入手可能な「K」グレード63:37スズ/鉛はんだで充填された、L&M PRODUCTSから入手可能なSPL600240 Digital Dynamic Solder Potを使用して評価した。はんだの温度は、290℃に設定した。
【0186】
Q-チップを使用して、SOLDER CONNECTIONからのはんだフラックスSC7560Aを、サンプルの表面に塗布して(即ち、接着性で記載されるような銅表面上のはんだマスクインクジェットのコーティング)、表面を洗浄した。サンプルをはんだポットの上方に10分間置くことによってはんだフラックスを乾燥させた。
【0187】
サンプルをはんだポットに入れた後、はんだ波を10秒間生成し、その後、サンプルを少なくとも10分間冷却した。
【0188】
次いで、銅表面上のはんだマスクインクジェットインクの接着性を、冷却したサンプル上のテープ試験で評価した。TESA AG(ドイツ)からの黒色テープTesa 4104/04をコーティング上に貼り付け、その直後にテープを手で除去した。
【0189】
視覚的評価は、0(非常に良好な接着)~5(非常に乏しい接着)の範囲の接着品質をもたらした。
【0190】
実施例1
この実施例は、本発明による接着促進剤の調製を例示する。
LC-MS分析
【0191】
本発明によるチオエーテルアクリレートを、Alltech Alltima C18(150mm×3.2mm)カラムを使用して、40℃の温度で0.5ml/分の流速で、イオン化技術としてESIを用いて、AmaZon(商標)SL質量分析計(Brueker Daltonicsにより供給)で分析した。
溶離液A(水中10mmolギ酸)及び溶離液B(アセトニトリル中10mmolギ酸)を使用して、表6に示すように勾配溶出を用いた。
【表6】
【0192】
チオエーテルの混合物(THIOMIX-1)中でのThio-1の合成
反応スキームを下記に示す。
【化4】
【0193】
トリメチロールプロパントリアクリレート29.62g(0.1mol)を酢酸エチル350mlに溶解した。フェノチアジン0.99g及び炭酸カリウム6.9g(0.05mol)を加え、この混合物を室温で撹拌した。酢酸エチル50ml中の2-メルカプト-エタノール7.8g(0.1mol)の溶液を加え、この混合物を55℃に加熱した。反応を55℃で2時間継続させた。この反応混合物を室温に冷却させた。炭酸カリウムを濾過により除去し、溶媒を減圧下で蒸発させた。マイケル付加生成物の混合物37.4gを単離した。
【0194】
THIOMIX-1を、上述したようにLC-MSを使用して特徴付けた。以下の表7で提案される構造は、分子質量に基づく。この分子質量に基づく異性体構造は、潜在的な代替構造と考えることができる。
【表7】
【0195】
混合物は、さらに精製することなく、インク配合物において直接使用された。
【0196】
チオエーテルの混合物(THIOMIX-2)中でのThio-2の合成
反応スキームを下記に示す。
【化5】
【0197】
ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート28.92g(50mmol)を酢酸エチル350mlに溶解した。BHT 0.22g(1mmol)及び炭酸カリウム3.45g(25mmol)を加え、この混合物を室温で撹拌した。2-メルカプト-エタノール11.71g(150mmol)の溶液を加え、この混合物を1時間半還流した。この混合物を室温に冷却させた。塩を濾過により除去し、溶媒を減圧下で蒸発させた。マイケル付加生成物の混合物38gを粘性油として単離した。
【0198】
THIOMIX-2を、上述したようにLC-MS方法を用いて特徴付けた。以下の表8に提案される構造は、分子質量に基づく。この分子質量に基づく異性体構造は、潜在的な代替構造と考えることができる。
【表8-1】
【表8-2】
【0199】
混合物は、さらに精製することなく、インク配合物において直接使用された。
【0200】
チオエーテルの混合物(THIOMIX-4)中でのThio-4の合成
反応スキームを下記に示す。
【化6】
【0201】
ペンタエリスリトールテトラアクリレート35.23g(0.1mol)を酢酸エチル350mLに溶解した。BHT 1.1g(5mmol)及び炭酸カリウム6.9g(0.05mol)を加え、この混合物を室温で撹拌した。オクチルメルカプタン29.2g(0.2mol)の溶液を加え、この混合物を1時間半還流した。この混合物を室温に冷却させた。塩を濾過により除去し、溶媒を減圧下で蒸発させた。マイケル付加生成物の混合物64gを粘性油として単離した。
【0202】
THIOMIX-4を、上述したようにLC-MS方法を用いて特徴付けた。以下の表9で提案される構造は、分子質量に基づく。この分子質量に基づく異性体構造は、潜在的な代替構造と考えることができる。
【表9-1】
【表9-2】
【0203】
混合物は、さらに精製することなく、インク配合物において直接使用された。
【0204】
チオエーテルの混合物(THIOMIX-6)中でのThio-6の合成
反応スキームを下記に示す。
【化7】
【0205】
ジ-トリメチロールプロパンテトラアクリレート23.31g(0.05mol)を酢酸エチル35mlに溶解した。BHT 0.22g及び炭酸カリウム3.45g(0.025mol)を加え、この混合物を室温で撹拌した。酢酸エチル50ml中の2-メルカプト-エタノール7.81g(0.1mol)の溶液を加え、この混合物を45℃で2時間加熱した。反応混合物を室温に冷却させた。炭酸カリウムを濾過により除去し、溶媒を減圧下で蒸発させた。マイケル付加生成物の混合物31gを粘性油として単離した。
【0206】
THIOMIX-6を、上述したようにLC-MS方法を用いて特徴付けた。以下の表10で提案される構造は、分子質量に基づく。この分子質量に基づく異性体構造は、潜在的な代替構造と考えることができる。
【表10-1】
【表10-2】
【0207】
混合物は、さらに精製することなく、インク配合物において直接使用された。
【0208】
チオエーテルの混合物(THIOMIX-7)中でのThio-7の合成
反応スキームを下記に示す。
【化8】
【0209】
ペンタエリスリトールテトラアクリレート105.7g(0.3mol)を酢酸エチル450mLに溶解した。BHT 0.44g及び炭酸カリウム20.7g(0.15mol)を加え、この混合物を室温で撹拌した。酢酸エチル150ml中の2-メルカプト-エタノール46.8g(0.6mol)の溶液を加え、この混合物を4時間半還流した。この混合物を室温に冷却させた。炭酸カリウムを濾過により除去し、溶媒を減圧下で除去した。マイケル付加生成物の混合物150gを粘性油として単離した。
【0210】
THIOMIX-7を、上述したようにLC-MSを使用して特徴付けた。以下の表11で提案される構造は、分子質量に基づく。この分子質量に基づく異性体構造は、潜在的な代替構造と考えることができる。
【表11-1】
【表11-2】
【0211】
上記の混合物から分かるように、THIOMIX-7は、マイケル付加反応とエステル交換反応の組み合わせに基づいて形成され、本発明によるチオエーテルの複雑な混合物をもたらす。
【0212】
この混合物を、さらに精製することなく、インク配合物において直接使用した。
【0213】
実施例2
この実施例は、本発明によるUV硬化性インクジェットインクが銅に対する良好な接着性と良好な耐半田性とを組み合わせたはんだマスクインクジェットインクとして使用される場合があることを示す。
【0214】
調製Green顔料分散液GPD
表12による組成を有する濃縮Green顔料分散液、GPDを調製した。
【表12】
【0215】
GPDは、以下のように調製した:2-(2-ビニルオキシエトキシ)エチルアクリレート138g、4重量%の4-メトキシフェノール、10重量%の2,6-ジ-tert-ブチル-4-メチルフェノール及び3,6重量%のアルミニウム-N-ニトロソフェニルヒドロキシルアミンを含むジプロピレングリコールジアクリレート溶液2gと、Cyan 30gとYellow 30gとをDISPERLUX(商標)ディスペンサーを使用して混合した。撹拌を30分間継続した。容器を、0.4mmイットリウム安定化ジルコニアビーズ(TOSOH Co.からの「高耐摩耗性ジルコニア粉砕媒体」)900gを充填したNETZCH MiniZetaミルに接続した。混合物を120分間(滞留時間45分)にわたってミル上で循環させ、ミル内の回転速度は、約10.4m/sであった。完全な粉砕手順の間、ミル内の内容物を冷却して温度を60℃未満に保った。粉砕後、分散液を容器内に排出した。
【0216】
比較インクCOMP-1及び本発明のインクINV-1~INV-5の調製
比較放射線硬化性インクジェットインクCOMP-1及び本発明の放射線硬化性インクジェットインクINV-1~INV-5を表13に従って調製した。重量百分率(重量%)は全て、放射線硬化性インクジェットインクの総重量に基づく。
【表13-1】
【表13-2】
【0217】
比較サンプルCOMP-1及び本発明のサンプルINV-1~INV-05は、Anapurna M2050i(8パス、45℃噴射温度、LED 395nmランプを使用した各パス後の100%ピンキュア)を使用して、35μmのブラッシングしたCuラミネート又はブラッシングしたFRラミネート上の35μmのブラッシングしたCuラミネート上にインクを噴射することによって得た。さらに、150℃で60分間の熱硬化を行った。
【0218】
比較インクCOMP-01及び本発明のインクINV-01~INV-05の耐半田性を、上述したように試験した。結果を表14に示す。
【表14】
【0219】
表14の結果から、本発明による接着促進剤を含む本発明のはんだマスクインクジェットインクは、全て、酸性接着促進剤を含むはんだマスクインクジェットインクと比較して、同等の接着性及び耐半田性を有することが明らかである。
【国際調査報告】