(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】混合相磁石リングを備える軽量の非対称磁石アレイ
(51)【国際特許分類】
A61B 5/055 20060101AFI20220124BHJP
G01N 24/00 20060101ALI20220124BHJP
G01R 33/383 20060101ALI20220124BHJP
H01F 7/02 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
A61B5/055 331
G01N24/00 600P
G01R33/383
H01F7/02 D
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021530318
(86)(22)【出願日】2019-11-10
(85)【翻訳文提出日】2021-07-20
(86)【国際出願番号】 IB2019059646
(87)【国際公開番号】W WO2020109896
(87)【国際公開日】2020-06-04
(32)【優先日】2018-11-29
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(32)【優先日】2019-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521228190
【氏名又は名称】エプシタウ リミテッド
【氏名又は名称原語表記】EPSITAU LTD.
【住所又は居所原語表記】Yishayahu 7 Tel Aviv,Israel
(74)【代理人】
【識別番号】100180781
【氏名又は名称】安達 友和
(72)【発明者】
【氏名】ハハム ヘイ,ノーム
【テーマコード(参考)】
4C096
【Fターム(参考)】
4C096AB32
4C096AD08
4C096CA05
4C096CA70
(57)【要約】
磁石アレイ(700)は、複数の磁石リング(711~720)とフレームとを備える。複数の磁石リングは、長手方向軸に沿って長手方向軸と同軸に配置され、複数の磁石リングの少なくとも1つ(712、713、719)が、回転対称性を有し、方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分と、長手方向-半径方向の面における有限の磁化成分との両方を有する。複数の磁石リングは、長手方向軸に平行な方向に沿った磁場を共同で生成するように構成されている。フレームは、複数の磁石リングを所定の位置に固定して保持するように構成されている。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
長手方向軸に沿って前記長手方向軸と同軸に配置された複数の磁石リングと、
前記複数の磁石リングを所定の位置に固定して保持するように構成されたフレームと、
を備え、
前記複数の磁石リングのうち少なくとも1つが、回転対称性を有し、方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分と、長手方向-半径方向の面における有限の磁化成分との両方を有し、
前記複数の磁石リングは、前記長手方向軸に平行な方向に沿った磁場を共同で生成するように構成されていることを特徴とする磁石アレイ。
【請求項2】
前記複数の磁石リングは、回転対称性を有して方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングを備え、所定の内部ボリューム内で少なくとも所与のレベルの均一性を有する磁場を共同で生成するように構成されていることを特徴とする、請求項1に記載の磁石アレイ。
【請求項3】
前記複数の磁石リングは、方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングを備え、前記磁石アレイの外側のフリンジフィールドを共同で最小化するように構成されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁石アレイ。
【請求項4】
各磁石リングは、長手方向軸の周りの、磁石リングの面内回転に対して、回転対称性を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁石アレイ。
【請求項5】
前記複数の磁石リングのうち少なくとも1つが、所定の内部ボリュームを囲み、
前記長手方向軸に沿って前記内部ボリュームの中心の一方の側に配置された磁石リングの最小内半径は、前記内部ボリュームの中心の他方の側に配置された磁石リングの最小半径とは異なることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁石アレイ。
【請求項6】
前記複数の磁石リングは、前記長手方向軸に対して反転非対称に配置されていることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁石アレイ。
【請求項7】
前記内部ボリュームは、前記長手方向軸の周りの回転楕円体であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁石アレイ。
【請求項8】
方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングは、単一の一体化した要素として作られることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁石アレイ。
【請求項9】
方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングは、等間隔に配置された同一のセグメントを備えるセグメント化されたリングとして作られることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁石アレイ。
【請求項10】
前記複数の磁石リングはそれぞれ、楕円、円、多角形のうちいずれかを含む形状を有することを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁石アレイ。
【請求項11】
複数の磁石リングの一又は複数の追加のアレイを備え、
前記追加のアレイにおける複数の磁石リングが、前記長手方向軸から各自の角度に設定された各自の長手方向軸と同軸であることを特徴とする、請求項1又は2に記載の磁石アレイ。
【請求項12】
磁石アレイを製造する方法であって、
前記方法は、
複数の磁石リングを長手方向軸に沿って前記長手方向軸と同軸に配置することと、
フレームを使用して前記複数の磁石リングを所定の位置に固定して保持することと、
を含み、
前記複数の磁石リングのうち少なくとも1つが、回転対称性を有し、方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分と、長手方向-半径方向の面における有限の磁化成分との両方を有し、
前記複数の磁石リングは、前記長手方向軸に平行な方向に沿った磁場を共同で生成するように構成されていることを特徴とする方法。
【請求項13】
前記複数の磁石リングは、方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングを備え、所定の内部ボリューム内で少なくとも所与のレベルの均一性を有する磁場を共同で生成するように構成されていることを特徴とする、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記複数の磁石リングは、回転対称性を有して方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングを備え、前記磁石アレイの外側のフリンジフィールドを共同で最小化するように構成されていることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項15】
各磁石リングは、長手方向軸の周りの、磁石リングの面内回転に対して、回転対称性を有することを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項16】
前記複数の磁石リングのうち少なくとも1つが、所定の内部ボリュームを囲み、
前記長手方向軸に沿って前記内部ボリュームの中心の一方の側に配置された磁石リングの最小内半径は、前記内部ボリュームの中心の他方の側に配置された磁石リングの最小半径とは異なることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項17】
前記複数の磁石リングは、前記長手方向軸に対して反転非対称に配置されていることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項18】
前記内部ボリュームは、前記長手方向軸の周りの回転楕円体であることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項19】
方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングは、単一の一体化した要素として作られることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項20】
方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングは、等間隔に配置された同一のセグメントを備えるセグメント化されたリングとして作られることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項21】
前記複数の磁石リングはそれぞれ、楕円、円、多角形のうちいずれかを含む形状を有することを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【請求項22】
前記方法は、
複数の磁石リングの一又は複数の追加のアレイを配置すること、
を含み、
前記追加のアレイにおける複数の磁石リングが、前記長手方向軸から各自の角度に設定された各自の長手方向軸と同軸であることを特徴とする、請求項12又は13に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本出願は、2018年11月29日に出願された米国仮特許出願第62/772,638号及び2019年1月23日に出願された米国仮特許出願第62/795,575号の利益を主張し、これらの開示内容が参照により本明細書に組み込まれる。
【0002】
本発明は、概して磁石アセンブリ、特に永久磁石を備える軽量の磁石アセンブリ及びその設計方法に関する。
【背景技術】
【0003】
強力で均一な磁場を達成することを目的とした永久磁石アレイの設計が、以前に特許文献で報告されている。例えば、米国特許第7,423,431号には、第1の表面と、イメージング(画像化)装置のイメージングボリューム(体積)に対応するように構成された段付きの第2の表面とを有する永久磁石本体を備えるイメージング装置用の永久磁石アセンブリが記載され、段付きの第2の表面は、少なくとも4つの段部を有する。
【0004】
別の例として、米国特許第6,411,187号には、医療及び他の用途で使用するための調整可能なハイブリッド磁気装置が記載され、このハイブリッド磁気装置は、イメージングボリュームにおける第1の磁場を生成するための磁束発生器と、イメージングボリューム内で向上した大きさを有する実質的に均一な磁場を提供するために第1の磁場に重ね合わされた第2の磁場を生成するための永久磁石アセンブリとを備える。永久磁石アセンブリは、複数の環状又はディスク状の同心磁石を備え、複数の同心磁石はそれらの対称軸に沿って離間し得る。ハイブリッド磁気装置は、ハイブリッド磁気装置のイメージングボリュームにおける磁場の強度を増加させるための高透磁率ヨークを備え得る。
【0005】
米国特許第10,018,694号には、磁気共鳴画像(MRI)機器用の磁石アセンブリが記載され、磁石アセンブリは、2つ又はそれ以上のリング(環)に配置される複数の磁石セグメントを備え、磁石セグメントは、同じリングにおける隣接する磁石セグメントから等間隔に離れて配置され、隣接するリングにおける磁石セグメントから離れて配置される。一実施形態によれば、複数の磁石セグメントは、2つ又はそれ以上のリングに配置され、磁石セグメントの少なくとも一部の磁化方向は、それぞれのリングによって定義される平面に沿っておらず、結果として生じる磁場プロファイルに対するより大きな制御を提供する。
【0006】
米国特許第5,900,793号には、それらの対称軸に沿って離間する複数の環状同心磁石からなるアセンブリと、永久磁化される等角セグメントを使用してそのようなアセンブリを構築する方法を記載されている。
【発明の概要】
【0007】
本発明の一実施形態は、複数の磁石リングとフレームとを備える磁石アレイを提供する。複数の磁石リングは、長手方向軸に沿って長手方向軸と同軸に配置される。複数の磁石リングのうち少なくとも1つが、回転対称性を有し、方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分と、長手方向-半径方向の面における有限の磁化成分との両方を有する。複数の磁石リングは、長手方向軸に平行な方向に沿った磁場を共同で生成するように構成されている。フレームは、複数の磁石リングを所定の位置に固定して保持するように構成されている。
【0008】
幾つかの実施形態において、複数の磁石リングは、回転対称性を有して方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングを備え、所定の内部ボリューム内で少なくとも所与のレベルの均一性を有する磁場を共同で生成するように構成されている。
【0009】
幾つかの実施形態において、複数の磁石リングは、方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングを備え、磁石アレイの外側のフリンジフィールドを共同で最小化するように構成されている。
【0010】
一実施形態において、各磁石リングは、長手方向軸の周りの、磁石リングの面内回転に対して、回転対称性を有する。
【0011】
別の実施形態において、複数の磁石リングのうち少なくとも1つが、所定の内部ボリュームを囲み、長手方向軸に沿って内部ボリュームの中心の一方の側に配置された磁石リングの最小内半径は記内部ボリュームの中心の他方の側に配置された磁石リングの最小半径とは異なる。
【0012】
幾つかの実施形態において、複数の磁石リングは、長手方向軸に対して反転非対称に配置されている。
【0013】
幾つかの実施形態において、内部ボリュームは、長手方向軸の周りの回転楕円体である。
【0014】
一実施形態において、方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングは、単一の一体化した要素として作られる。別の実施形態において、方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する少なくとも1つの磁石リングは、等間隔に配置された同一のセグメントを備えるセグメント化されたリングとして作られる。
【0015】
幾つかの実施形態において、複数の磁石リングはそれぞれ、楕円、円、多角形のうちいずれかを含む形状を有する。
【0016】
幾つかの実施形態において、磁石アレイは、複数の磁石リングの一又は複数の追加のアレイを備える。追加のアレイにおける複数の磁石リングが、長手方向軸から各自の角度に設定された各自の長手方向軸と同軸である。
【0017】
本発明の一実施形態によれば、磁石アレイを製造する方法がさらに提供される。該方法は、複数の磁石リングを長手方向軸に沿って長手方向軸と同軸に配置することを含む。複数の磁石リングのうち少なくとも1つが、回転対称性を有し、方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分と、長手方向-半径方向の面における有限の磁化成分との両方を有し、複数の磁石リングは、長手方向軸に平行な方向に沿った磁場を共同で生成するように構成されている。フレームを使用して、複数の磁石リングが所定の位置に固定して保持される。
【0018】
本発明は、その実施形態の以下の詳細な説明から、以下の図面と併せて、より十分に理解される。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【
図1】本発明の一実施形態による、第1の磁石アセンブリと第2の磁石アセンブリとを備える非対称磁石アレイの斜視図である。
【
図2】
図2A及び
図2B~2Dはそれぞれ、本発明の別の実施形態による、非対称磁石アレイの斜視図、並びに、アセンブリによって別個に生成された磁力線のプロット(図)及びアセンブリによって共同で生成された磁力線のプロットである。
【
図3】本発明の一実施形態による、
図1及び
図2の磁石アレイにおけるリングのいずれかであり得るセグメント化(分割)された磁石リングの斜視図である。
【
図4】本発明の一実施形態による、3つのシータ磁石リングを備える非対称磁石アレイの斜視図である。
【
図5】本発明の一実施形態による、
図4の磁石アレイによって生成された磁力線のプロットである。
【
図6】本発明の一実施形態による、
図4の磁石アレイにおけるリングのいずれか1つであり得るシータ磁石リングの斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
概要
医療、航空宇宙、電子、自動車産業など様々な領域で、強力で均一な磁場が必要とされる。一例として、人間の脳の磁気共鳴画像法(MRI)で使用される磁石は、通常、0.1~3テスラの強度の磁場を提供する。これは、約3000立方センチメートル(例えば、半径9cmの球の内部)のイメージングボリューム(体積)内で数百万分率(parts per million:ppm)まで均一である。しかし、そのような磁石は、かなりのサイズ及び重量を有するために、用途が限られる。さらに、一般に磁石の設計では、重量、磁場の均一性、及び所定の均一性を達成できるボリュームのサイズの間には、厳しく制限されたトレードオフがある。
【0021】
以下に記載される本発明の実施形態は、強力で均一な磁場(例えば、0.1~1テスラの範囲内)を生成する軽量の永久磁石アレイを提供する。開示される磁石アレイの幾つかは、例えば救急車内の頭部MRIシステムなどの救急医療脳移動MRIシステム用に構成されている。しかし、一般に、開示された技術は、任意の他の適切なシステムに適用され得る。
【0022】
本明細書では、内部ボリューム(体積)が、長手方向(軸方向)(Z)、半径方向(r)、及び方位角(θ)の座標からなる円筒座標系(基準系)を使用して、長手方向軸の周りの回転楕円体の体積として定義される。内部ボリュームの例は、長軸が長手方向軸に沿う長球、短軸が長手方向軸に沿う扁球である。横方向の平面は、任意のr-θ平面(つまり、長手方向のz軸に直交する平面)としてさらに定義される。内部ボリュームの特定の定義は、磁場が少なくとも所与のレベルの均一性を有するMRIシステムのイメージングボリュームである。
【0023】
本発明の幾つかの実施形態において、フレームを備える磁石アレイが提供され、該フレームは、所定の位置に固定されて、中心の長手方向軸に沿った異なる位置で、中心の長手方向軸と同軸の複数の磁石リングを保持するように構成されている。磁石リングは側面にあり、少なくとも1つのリングが、長手方向軸が通過する(つまり、リングが内部ボリュームと交差する)内部ボリュームに含まれる領域を囲む。本明細書では、フレームは、リングを所定の位置に保持するその機械的機能によって定義され、これは、様々な方法で、例えば、ヨークを使用するか、又はリングを周囲の材料(例えば、エポキシ)に埋め込むことによって、作られ得る。
【0024】
複数の磁石リングは、長手方向軸に対して反転非対称に配置される。本開示の文脈及び特許請求の範囲において、「長手方向軸に対して反転非対称」という用語は、長手方向軸に垂直な平面が磁石アレイの対称面ではないことを意味する。つまり、磁石アレイは、軸に沿った任意の点で、長手方向軸に対して反転下で対称ではない。反転非対称は、点非対称又は鏡像非対称ともいう。簡潔さのために、以下の説明において磁石アレイの「非対称」という場合、上記で定義された反転非対称を意味する。
【0025】
複数の磁石リングは、内部ボリューム内で少なくとも所与のレベルの均一性の長手方向軸に平行な方向に沿って磁場を共同で生成するように構成される。磁石アレイは、各磁石リングに、長手方向軸の周りのリングの面内回転に対して回転対称性(連続的又は離散的)を有する磁場を生成させる。
【0026】
幾つかの実施形態では、開示された磁石アレイのいずれかの磁石リングのそれぞれは、楕円、最も一般的には円、又は多角形のうちの1つを含む形状を有する。磁石リングはそれぞれ、単一の一体化した要素又は個別の磁石セグメントのアセンブリからなる。磁石リングは、内部ボリューム内の磁場の均一性を最大化し任意選択で磁場が5ガウスを超える磁石の周りの領域によって定義される安全ゾーンを最小化するように設計された磁化方向で予め磁化される。
【0027】
頭部MRI用途のために典型的に構成される幾つかの実施形態では、開示される非対称永久磁石アレイが、第1の内径を有する2つ又はそれ以上の磁石リングを備える第1の磁石アセンブリと、第2の内径を有する2つ又はそれ以上の磁石リングを備える第2の磁石アセンブリとを備えるとして説明され得る。第1の内径は、イメージングボリュームの最大横径よりも大きく、第2の内径は、イメージングボリュームの最大横径よりも小さいか、又はイメージングボリュームの最大横径と等しい。
【0028】
通常、複数の磁石リングは、異なる長手方向軸の位置にある。第2の磁石アセンブリは、イメージングボリュームに対して非対称に配置されている。したがって、開示される磁石アレイの非対称構造は、人間の頭部に合うように最適化され、脳を含む内部ボリューム(イメージングボリュームと同じ)への物理的アクセスが、第2のアセンブリではなく第1のアセンブリによって行われる。第1の磁石アセンブリ及び第2の磁石アセンブリは、内部ボリューム内に少なくとも所与のレベルの均一性の長手方向軸に平行な磁場を共同で生成するように構成される。
【0029】
幾つかの実施形態では、少なくとも1つの磁石リングを備える磁石アレイが提供され、少なくとも1つの磁石リングは、回転対称であり、磁化成分M=(Mr,Mθ,Mz)によって特徴付けられ、長手方向-半径(放射)方向の面における有限の磁化成分(即ち、磁化の非ゼロ投影)を有することに加えて、方位(θ)座標に沿った有限の磁化成分(即ち、磁化の非ゼロ方位投影)を有する。このような磁石リングを、以下「シータ磁石リング」という。非対称アレイにそのようなシータ磁石リングを少なくとも1つ含めると、長手方向-半径方向の面においてのみ磁化を有する回転対称の一体化した又はセグメント化されたリングのみからなる同じ重量の磁石アレイによって達成されるものと比較して、内部ボリューム内の均一性を向上させ得る。
【0030】
上記の様々な種類の磁石リングは、通常、例えばネオジム、鉄、及びホウ素の合金(NdFeB)などの強強磁性材料からなり、そのキュリー温度は最大周囲動作温度をはるかに上回る。他の材料オプションには、フェライト、サマリウムコバルト(SmCo)磁石、又は任意の他の永久磁石材料が含まれる。リングの設計及び種類に応じて、リングセグメントは、球、円柱、楕円体、又は例えば直方体、くさび形、角のあるセグメントなどの形状の多角柱の形状を有し得る。
【0031】
磁石アレイを実現するための2つの開示される技術(例えば、非対称形状を使用、シータ磁石リングを使用)は、別個に又は組み合わせて、特に軽量の磁石ソリューションを必要とする用途において強力で均一な磁石アレイの使用を可能にする。
【0032】
頭部MRI用途のための非対称磁石アレイ
図1は、本発明の一実施形態による、第1の磁石アセンブリ110と第2の磁石アセンブリ120とを備える非対称磁石アレイ100の斜視図である。示されるように、第1の磁石アセンブリ110及び第2の磁石アセンブリ120はそれぞれ、内部ボリューム130を通過する「Z軸」で表す中心の長手方向軸と同軸である少なくとも2つの磁石リングを備える。多数の磁石リングは、Z軸に沿って可変の横断方向の寸法及び可変の変位を有する。
図1では、例として、第1のアセンブリ110は、4つの磁石リング111~114からなるものとして示され、第2のアセンブリ120は、4つの磁石リング121~124からなるものとして示されている。第1の磁石アセンブリ110及び第2の磁石アセンブリ120における各リングは、一体化したリング、又はセグメント化されたリング、即ち、個別のセグメントを備えるリングである。セグメントは、球、円柱、楕円体、又は多角柱、好ましくは直方体の形状を有し得る。リングは、不規則な形状の断面を含む任意の断面を有し得ることが理解される。単一のリングに属する全てのセグメントは、共通の形状及び材料組成、並びに長手方向(Z)、半径方向、及び方位角方向において同じ磁気モーメント成分を共有する。しかし、これらの特性の一又は複数が、リング毎に異なり得る。
【0033】
セグメント化されたリングの場合、セグメントの磁気モーメントに言及することは、セグメントが空間における特定の方向に均一に磁化されることを意味し、その半径方向、長手方向、及び方位角方向がセグメントの重心で計算される。
【0034】
一体化したリングの場合、Mは、方位角座標に依存しない方位角、半径方向、及び長手方向の成分を有する空間で連続的に変化する。複雑な形状を有する一体化した磁石部分は、Mr、Mθ、又はMzがZ又はRに応じて徐々に又は段階的に変化するように磁化され、機械的には1つの連続した部分で構成されるが、磁化の観点から効果的に幾つかのリングを作り得ることが理解される。ここでの文脈において、この種の実施は、リングの境界が機械的セグメンテーションではなく磁化の観点によって決定される複数のリングを有すると見なされる。
【0035】
リングの周囲形状は、例えば円、楕円、多角形などの任意の閉じた曲線であり得る。場合によっては、周囲形状の選択は、内部ボリューム130の断面形状に依存する。リングの回転対称性は、とりわけ、その周囲形状も回転対称であること(例えば、円又は等角等辺の多角形の形状)を意味することが理解される。全てのリングが円形である特別な場合において、第1の磁石アセンブリ110のリング111~114の最小内半径はR1で示され、第2の磁石アセンブリ120のリング121~124の最小内半径はR2で示される。所与のターゲット半径Riについて、ターゲット半径Riは、例として、画像化(イメージング)に使用される回転楕円体の内部ボリュームの最大半径を定義する内部ボリューム130の横方向半径140を有し、磁場が少なくとも所与のレベルの均一性を有する場合、R1及びR2の値は、Ri<R1及び0≦R2≦Riの関係を満たす。R2=0の場合、第2の磁石アセンブリ120のリングの少なくとも1つは一体化した円盤状である。第2の磁石アセンブリ120は、R2よりも大きくさらにR1よりも大きい内半径を有するリングを含み得ることが理解される。磁石アセンブリは、通常0~10cm(ただし、これに限定されない)の間隙(ギャップ)でZ方向に離れて配置される。ここでの目的では、リングが両方の磁石アセンブリに対してZ方向に延在する場合、リングの一部は第1の磁石アセンブリに含まれ、他の部分は第2の磁石アセンブリに含まれていると見なされる。この場合、アレイ間の間隙は0になる。
【0036】
一実施形態では、非対称アレイにおいて、内部ボリュームの中心の一方の側に配置されたリングの最小半径は、内部ボリュームの中心の他方の側に配置されたリングの最小半径とは異なる。内部ボリュームの中心は、任意の適切な方法で定義され、例えば、内部ボリューム内にある長手方向軸のセクションの中心である。さらに、内部イメージングボリュームがアレイによって部分的にのみ囲まれている場合、中心は、内部ボリューム内及びアレイ内にある長手方向軸のセクションの中心と見なされる。前者の実施形態に従うアレイは、上記のように異なる最小内半径を有する2つのサブアセンブリから構成されるものとして説明され得る。
【0037】
内部ボリューム130は、アセンブリ110によって少なくとも部分的に囲まれた単連結領域であり、これは、典型的には、楕円体又は球である。示されるように、内部ボリューム130は、磁石アレイ110によって囲まれ、リング112~113が内部ボリューム130を囲んでいる。一実施形態では、内部ボリューム130は、半軸が約0.5R1、0.5R1、及び0.3R1に等しい扁球楕円体である。このようなリングのパラメータは、リングの内側及び外側の半径、そのZ変位、又はZ軸方向の厚さに限定されない。さらに、磁気モーメント角度は全て、例えば有限要素、有限差分、分析アプローチなどの計算方法を使用して最適化され、勾配降下最適化アルゴリズムと組み合わせて、イメージングボリュームにおける特定の磁界強度について、最小重量で、最高の均一性を実現する。これは、各アセンブリが多数のリングを含み、その全てが最適化されているために、可能である。
【0038】
磁石アレイ100の非対称性の一態様は、異なるリングが異なる横断方向寸法及び磁気モーメント方向を有し、リングが長手方向軸に対して反転非対称性を有するアレイに配置される(つまり、Z軸反転に関して非対称である)ことである。本開示の文脈及び特許請求の範囲において、「長手方向軸に対して反転非対称」という用語は、長手方向軸に垂直な平面が磁石アレイの対称面ではないことを意味する。つまり、磁石アレイは、軸に沿った任意の点で、長手方向軸に対して反転下で対称ではない。反転非対称は、点非対称又は鏡像非対称ともいう。簡潔さのために、以下の説明において磁石アレイの「非対称」という場合、上記で定義された反転非対称を意味する。
【0039】
設計における非対称性は、例えば人間の頭部などの本質的に非対称な標本をイメージングする場合に特に有利である。例えば、そのような1つの場合において、アセンブリ110に属するリングは、主に第1の所定の方向(例えば、r方向)に磁化され得るが、アセンブリ120に属するリングは、主に別の方向(例えば、z方向)に磁化され得ることが分かっている。
【0040】
最後に、個々のリングの磁化の方向を最適化して、内部ボリュームにおける均一性及びフリンジフィールドの低減の両方を得て、磁石リングに近い磁力線を閉じる磁気回路を作り得る。一実施形態では、個別の磁石セグメントはそれぞれ、磁石アレイの外側のフリンジフィールドを最小化するそれぞれの磁化方向で予め磁化されている。
【0041】
図2A及び
図2B~2Dは、本発明の別の実施形態による、非対称磁石アレイ200の斜視図、並びに、アセンブリによって別個に生成された磁力線のプロット及び共同で生成された磁力線のプロットである。均一性は、(より詳細について磁力線がイメージングゾーンでより密に描かれているため)磁力線の均一な密度によっては明らかではなく、むしろ磁力線のz軸方向の位置合わせ(整列)によって明らかである。
【0042】
図2Aに示すように、内部ボリューム230は、第1の磁石アセンブリ210によって少なくとも部分的に囲まれた単連結領域であり、これは、典型的には、楕円体又は球体である。非対称アレイの第2の磁石アセンブリ220は、内部ボリューム230を「キャップ」(蓋を)する。上記のように、異なるリングは、磁石アレイの均一性及びフリンジフィールドを最適化するために異なる磁化方向を有し得る。例えば、あるリングは、別のリングとは実質的に異なる方向(例えば、45度を超える)の磁化ベクトルを有し得る。例えば、永久磁石セグメントの磁化ベクトルは、あるリングでは主にr方向を指し、別のリングでは主にZ方向を指し得る。さらに、同じアセンブリに属する2つのリングは、実質的に異なる磁化方向を有し得る。例えば、第1のアセンブリのあるリングは、主にr方向に磁化を有し、第1のアセンブリの別のリングは、主に-z方向に磁化を有し、第1のアセンブリの第3のリングは、r-z平面において-45度に磁化を有し得る。一実施形態では、2つ又はそれ以上のリングが、互いに45度を超えて異なる方向に磁化ベクトルを有する。
【0043】
特定の場合(図示せず)において、アセンブリ210の複数のリングは、15cmから30cmの間のそれらの内半径に分散され、25cmの長さでそれらのZ位置に分散され、一方、アセンブリ220の複数のリングは、内半径が0.05cmから30cmの間に分散され、12cmの長さでZ位置に分散され、2つのアセンブリ間のZ方向における変位は0cmから10cmの間である。
【0044】
図2Bは、内部ボリューム230の内側及び外側の第1の磁石アセンブリ210(それぞれがr-z平面におけるリングの磁化の方向を有する正方形によって断面図で示されるリング)によって生成される磁場の磁力線を示す。示されるように、内側ボリューム230内の磁力線は、大部分はz軸に沿って整列するが、磁場が非常に不均一になる内部ボリューム230の上部で鋭く曲がる。
【0045】
図2Cは、内部ボリューム230の内側及び外側の第2の磁石アセンブリ220によって生成される磁場の磁力線を示す。ここでも見られるように、内部ボリューム230の内側の磁力線は、大部分はz軸に沿って整列する。しかし、内部ボリューム230の内側の磁力線は、z軸に対して
図2Bの磁力線とは反対側に傾斜し、内部ボリューム230の底部で非常に不均一になる。
【0046】
図2Dに示すように、磁石アセンブリ210及び220は、組み合わされて完全なアレイ200になると、互いの磁場の不均一性を補償して、所定の閾値よりも良好な程度でz軸に沿って均一な磁場を達成する。
【0047】
図2A~2Dは、10個のリングを含む例示的なアレイを示す。アレイは、全てが上記のように最適化されたより多くのリング(例えば、数十又は数百のリング)を含み得ることが理解される。アレイに含まれるリングが多いほど、より優れた磁石性能が実現され得る(例えば、より高い均一性レベル、より大きな磁場、より大きなイメージングボリュームなど)。性能の向上には、要素の数が多いためにアレイの複雑さ及び製造コストが増加するという難点がある。したがって、当業者は、特定の用途に応じて必要な数のリングを検討する必要がある。
【0048】
図3は、本発明の一実施形態による、
図1及び
図2の磁石アレイ100及び200のリングのいずれかであり得る1つのセグメント化された磁石リング300の斜視図である。
図3では、各磁石セグメント310は、同様の長手方向(Z)成分及び半径方向(r)成分を有する、r-Z平面にある磁化ベクトル320を有する。さらに、セグメント化された各リングは、360/N度に等しい方位角周期を有する回転対称性を有する。ここで、Nは、リングにおけるセグメントの数である。(一体化したリングの場合、つまり、N→∞の場合、回転対称性は連続的である)。幾つかの実施形態では、開示されるリングは、N≧8次の回転対称性を有する。開示されるアレイは回転対称性を有するリングを含み、したがって、結果として生じる磁場は長手方向軸に沿うことが理解される。しかし、内部ボリュームにおける均一性及びフリンジフィールドを最適化する方法で非回転対称である非対称アレイリングに組み込むことが可能である。そのような場合、磁場は任意の軸に沿ってもよい。そのようなアレイは回転対称アレイよりも実質的に悪い可能性があるが、開示されるようなリングを伴う非対称性の使用は、対称アレイと比較してアレイの均一性を実質的に向上させ得る。
【0049】
個別のセグメント310は、等間隔に配置され、例えば、好ましくは非導電性である接着剤を使用して互いに取り付けられるか、又は好ましくは絶縁材料で満たされた(ただし、これに限定されない)隣接するセグメント間の間隙330と機械的に一緒に保持される。また、回転対称のセグメント化されたリングは複数の種類のセグメントの組み合わせを含み得ることが理解されよう。リング300の全体の熱安定性のために、接着剤又は間隙は、例えば酸化ケイ素、窒化ケイ素、酸化アルミニウムなどの熱伝導性でもある材料からなることが好ましい。個々の磁石セグメント310は、上述の高強磁性材料からなるものであり、そのキュリー温度は、例えばアレイ200などの要素を含む関連システム、例えばモバイルMRIシステムなどの動作温度よりもはるかに高い。
【0050】
図1~3の説明は例としてのみ役立つことを意図しており本発明の範囲内で多くの他の実施形態が可能であると理解される。例えば、r-z-θ平面における磁石モーメントベクトルの回転は、代替的な実施形態では、異なるリングについて異なりうる別個の回転角で個々の磁石セグメント310を回転させることによって達成され得る。さらに、磁石アレイ100及び200はそれぞれ、静的又は動的シミングシステムのいずれかと組み合わせられて、内部ボリューム130及び230内の磁場の均一性をさらに向上させ得る。動的シミング又は勾配パルス磁場が使用される場合、隣接する磁石セグメント310間に電気絶縁性接着剤又は空の間隙が存在することは、磁場の均一性に対する渦電流の悪影響を最小限に抑えるのに役立つ。さらに、磁石アレイ100及び200は、内部ボリューム130及び230内の磁場強度を増強するために、z軸と同心に配置される抵抗コイルと組み合わせられ得る。
【0051】
シータ磁石リングを備える磁石アレイ
図4は、本発明の一実施形態による、3つのシータ磁石リング(712、713、719)を備える非対称磁石アレイ700の斜視図である。
例として、磁石アレイ700は、内部ボリューム730を通過する軸Zを囲む10個の磁石リング711~720を備える。磁石リングの一部は、一体化したものであり得、一部はセグメント化されものであり得、任意選択で隣接する磁石セグメント間に間隙(ギャップ)を有し得る。複数のリングは、Z軸に沿った異なる位置に配置され、一般に、横断方向の寸法、半径方向の厚さ、及び軸方向の厚さが異なる。
【0052】
上記に示したアレイのように、磁石アレイ700は、基準の円筒座標系を定義する。各磁石リングは、回転対称であって磁化成分M=(Mr,Mθ,Mz)によって特徴付けられる磁化を有する。所定のセグメント化されたリング内の全てのセグメントが、上述の円筒座標系において、磁気モーメントの3つの成分M=(Mr,Mθ,Mz)によって表される同じ磁化成分を有する。結果として、セグメント化された各リングは、360/N度に等しい方位角周期を有する回転対称性を有する。ここで、Nは、リングにおけるセグメントの数である。
【0053】
セグメント化されたリングの場合、セグメントの磁気モーメントに言及することは、セグメントが空間における特定の方向に均一に磁化されることを意味し、その半径方向、長手方向、及び方位角方向がセグメントの重心で計算される。一体化したリングの場合、Mは空間で連続的に変化し、シータに依存しない方位角、半径方向、及び長手方向の成分を有する。
【0054】
磁化Mは、一般に、リング毎に異なる。磁石アレイにおける複数の磁石リングのうち少なくとも1つは、「シータ磁石リング」であり、つまり、r-Z平面における磁化の非ゼロ投影に加えて、シータ方向(Mθ≠0)における磁化の非ゼロ投影を有する。方位角磁化のみの磁石リングは実質的な磁場を生成しないので、r-Z平面上の非ゼロ投影は不可欠である。
【0055】
基本的に、特定のリングにゼロ以外のシータ成分を導入すると、イメージングボリューム内の全磁場に対するそのリングの相対的な寄与が減少するという影響があるため、リングの形状とは関係のない追加の自由度が提供される。このようは追加の自由度は、アレイが様々な幾何学的制約(例えば、リングの位置、半径方向/軸方向の厚さなど)の影響を受ける場合に最も有利であり、このような制約は、通常、機械的又は製造上の制限から生じる。コンピュータ化された磁場シミュレーションツールを使用して、設計者は、シータ磁石リングにおける非ゼロシータ成分の大きさを、全ての磁石リングの幾何学的特性(例えば、高さ、外半径、内半径、厚さ、z軸位置)と共に、調整又は「チューニング」して、例えばポータブル頭部MRIシステムについて、必要に応じて、高レベルの磁場の均一性、又は大きな内部ボリュームを実現することができる。
【0056】
例えば、リング712、713、719はそれぞれ、(0,√3/2,-1/2)、(1√3,1/√3,-1√3)、(1/√2,1/√2,0)で与えられる円筒座標(Mr、Mθ、Mz)における磁化方向を有するシータ磁石リングであり得る。一実施形態では、方位角(θ)座標に沿った有限の磁化成分を有する一又は複数の磁石リングと残りのリングとが、内部ボリューム内に少なくとも所与のレベルの均一性を有する磁場を共同で生成するように構成される。
【0057】
磁石リング711~715の磁石セグメントは、上述の強磁性材料でからなり得る。セグメントは通常、磁気モーメントの成分の特定の値で予め磁化されている。セグメントの形状は、上述のセグメントの形状(例えば、くさび型、角のあるセグメントなど)のいずれかであり得る。
【0058】
開示されている、磁気リングのアレイにおける少なくとも1つのリングの磁化ベクトル(Mθ≠0)におけるゼロ以外のシータ成分の導入により、アレイの内部ボリューム内の磁場の均一性を大幅に向上させるか、或いは、所与のレベルの均一性について内部ボリュームを大幅に拡大させることができる。この利点は、空間的に連続した磁化を有する固体磁石部分(ピース)を備える固体リングに適用される。また、間隙のない連続したセグメントを有する、セグメント化された磁石リング、及びセグメントが空隙によって又は非磁性材料で満たされた間隙によって分離されているリングにも適用される。間隙はまた、永久磁石ではないが、例えば常磁性体、反強磁性体、反磁性体、強磁性体、フェリ磁性体などの(ただし、これらに限定されない)かなりの透磁率を有する材料で満たされ得ることが理解される。
【0059】
図5は、本発明の実施形態による、
図4の磁石アレイ700によって生成された磁力線のプロットである。均一性は、(より詳細について磁力線がイメージングゾーンでより密に描かれているため)磁力線の均一な密度によっては明らかではなく、むしろ磁力線のz軸方向の位置合わせ(整列)によって明らかである。示されるように、アレイ700は、ほぼリングまで延びるz軸方向の整列により、z軸に沿って均一な磁場を達成する。図示されないが、シータ磁石リングは均一性を向上させる。したがって、リング磁石の非対称アレイに幾つかのシータ磁石リングを含めることは、MRI救急車などのモバイルMRIの用途に特に役立ち得る。
【0060】
図4及び
図5は、合計10個のリングを含む例示的なアレイ400を示し、そのうち3個はシータ磁石リングである。アレイは、より多くのシータ磁石リング(例えば、数十又は数百のリング)を含むことが可能で、それらは全て上記のように最適化されることが理解される。アレイに含まれるシータ磁石リングが多いほど、より優れた磁石性能が実現され得る(例えば、より高い均一性レベル、より大きな磁場、より大きなイメージングボリュームなど)。性能の向上には、要素の数が多いためにアレイの複雑さ及び製造コストが増加するという難点がある。したがって、当業者は、特定の用途に応じて必要な数のリングを検討する必要がある。
【0061】
図6は、本発明の実施形態による、
図4の磁石アレイ700におけるリングのいずれか1つであり得るシータ磁石リングの斜視図である。
【0062】
図6(I)は、第1の例示的なシータ磁石リング900aの斜視図を示す。
図6(I)において、シータ磁石リングは、20個の直方体の磁石セグメント910を備える。矢印920で示すように、各セグメント920の磁気モーメントは、ゼロの軸方向(Z)成分と、ゼロ以外の半径方向(r)成分及びシータ(θ)成分とを有する。
【0063】
図6(II)は、20個の直方体の磁石セグメント930を備える第2の例示的なシータ磁石リング900bの斜視図を示す。矢印940で示すように、各セグメント930の磁気モーメントは、ゼロの半径方向(r)成分と、ゼロ以外の軸方向(Z)の成分及びシータ(θ)方向の成分とを有する。
【0064】
図6(III)は、20個の直方体の磁石セグメント950を備える第3の例示的なシータ磁石リング900cの斜視図を示す。矢印960で示すように、各セグメント950の磁気モーメントは、ゼロ以外の半径方向(r)成分、シータ方向(θ)成分、及び軸方向(Z)成分を有する。
【0065】
上記の説明は例として役立つことのみを意図しており本発明の範囲内で多くの他の実施形態が可能であると理解される。例えば、磁石アレイ700は、静的又は動的シミングシステムのいずれかと組み合わせられて、イメージングボリューム730内の磁場の均一性をさらに向上させ得る。さらに、提示される磁石アレイは非対称であるが、シータ磁石リングは、それらの均一性を高めるためにヨークの有無に関わらず、対称アレイ又は任意の他の種類の磁石アレイでも使用され得る。
【0066】
さらに、記載のアレイ(共通の軸と同軸の複数のリングを有する)を、リングが第1の共通の長手方向軸からある角度にある一又は複数の異なる軸と同軸である一又は複数の追加のリングアレイと組み合わせることが可能である。アレイの組み合わせにより、空間内の任意の方向に磁場が共同で生成される。追加のリングアレイはシータ相リングも含み得るが、このようなリングは、z’軸が独自の共通で同軸の軸として定義された独自の円筒座標系に従って定義される。
【0067】
例えば、同軸の軸が互いに45度異なるリングの2つのアレイを設けることが可能である。各アレイは、一又は複数のシータ磁石リングを含み、アレイ軸のそれぞれに沿って内部ボリュームに実質的に均一な磁場を得るように最適化され得る。2つのアレイの組み合わせにより、第1の長手方向軸と第2の長手方向軸との間にある方向に均一な磁場が生じる。
【0068】
動的シミング又は勾配パルス磁場が使用される場合、磁場の均一性に対する渦電流の悪影響を最小限に抑えるために、隣接する磁石要素間の間隙に電気絶縁材料が存在するセグメント化されたリングが好ましい。さらに、磁石アレイ700は、それぞれ定義された内部ボリューム内の磁場強度を増強するために、Z軸と同心に配置された抵抗コイルと組み合わせられ得る。
【0069】
本明細書に記載の実施形態は主にモバイルMRIの用途に対応するが、本明細書に記載の方法及びシステムは、例えば走査型電子顕微鏡(SEM)などの強力で均一で軽量の磁石を必要とする航空宇宙用途などの他の用途にも使用され得る。
【0070】
したがって、上記の実施形態は例として引用されており、本発明は、上記で詳細に示され説明されたものに限定されないことが理解される。むしろ、本発明の範囲は、上記の様々な特徴の組み合わせ及びサブコンビネーションの両方、並びに上述の説明を読んだときに当業者に思い付くであろう、先行技術に開示されていないその変形及び修正を含む。本特許出願に参照により組み込まれる文書は、本明細書において明示的又は黙示的になされた定義と矛盾する方法でこれらの組み込まれた文書に用語が定義されている場合を除いて、本出願と一体化した部分と見なされるべきであり、本明細書における定義のみが考慮されるべきである。
【国際調査報告】