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特表2022-511532天然ガス混合物から低水素含量を分離するための方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】天然ガス混合物から低水素含量を分離するための方法
(51)【国際特許分類】
   B01D 53/22 20060101AFI20220124BHJP
   B01D 61/44 20060101ALI20220124BHJP
   B01D 61/58 20060101ALI20220124BHJP
   B01D 71/02 20060101ALI20220124BHJP
   F25J 1/00 20060101ALI20220124BHJP
   C01B 3/56 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
B01D53/22
B01D61/44 500
B01D61/58
B01D71/02 500
F25J1/00 C
C01B3/56 Z
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532136
(86)(22)【出願日】2019-12-09
(85)【翻訳文提出日】2021-07-12
(86)【国際出願番号】 NL2019050814
(87)【国際公開番号】W WO2020122709
(87)【国際公開日】2020-06-18
(31)【優先権主張番号】62/777,318
(32)【優先日】2018-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】520223284
【氏名又は名称】ハイドロゲン オンサイト、 エス.エル.
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】龍華国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】ガルーチ、ファウスト
(72)【発明者】
【氏名】ノーディオ、マリア ルイサ ヴィットリア
(72)【発明者】
【氏名】ワッシエ、ソロモン アッセファ
(72)【発明者】
【氏名】ソレ、ホセ ルイス ヴィヴィエンテ
(72)【発明者】
【氏名】タナカ、デイヴィッド アルフレッド パチェコ
【テーマコード(参考)】
4D006
4D047
4G140
【Fターム(参考)】
4D006GA17
4D006GA41
4D006HA41
4D006JA42Z
4D006JA52Z
4D006JA66Z
4D006JA70Z
4D006KA12
4D006KA15
4D006KA52
4D006KA55
4D006KA57
4D006KE07R
4D006KE08R
4D006KE12R
4D006KE16R
4D006MA03
4D006MB03
4D006MB04
4D006MC02
4D006MC03
4D006MC05
4D006PA01
4D006PB18
4D006PB66
4D006PB68
4D047AA10
4D047AB07
4D047BA03
4D047BB06
4G140FA01
4G140FB02
4G140FB05
4G140FC01
4G140FE01
(57)【要約】
本発明は、天然ガス混合物から低水素含量を分離するための方法に関し、本方法は、a)水素を含むストリームを提供する段階と、b)保持液および透過液を取得するために、a)の水素を含むストリームを入口ストリームとして第1の膜ユニットに移送する段階であって、透過液中の水素のモル分率が、保持液中の水素のモル分率よりも高い、段階と、c)さらなる水素の分離および精製のために、保持液を電気化学式水素コンプレッサ(EHC)に移送する段階とを含む。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
天然ガス混合物から低水素含量を分離するための方法であって、前記方法は、
a)水素を含むストリームを提供する段階と、
b)保持液および透過液を取得するために、a)の水素を含む前記ストリームを入口ストリームとして第1の膜ユニットに移送する段階であって、前記透過液中の水素のモル分率が、前記保持液中の水素のモル分率よりも高い、段階と、
c)さらなる水素の分離および精製のために、前記保持液を電気化学式水素コンプレッサ(EHC)に移送する段階とを含む、
方法。
【請求項2】
前記方法がさらに、段階b1)を含み、段階b)の前記透過液が、入口ストリームとして第2の膜ユニットに移送され、前記第2の膜ユニットにおいて第2の保持液および第2の透過液が生成され、前記第2の透過液中の水素のモル分率が、前記第2の保持液中の水素のモル分率よりも高く、前記第2の保持液は、入口ストリームとして段階b)の前記第1の膜ユニットに送り戻される、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
水素を含む前記入口ストリームを前記第1の膜ユニットまたは前記第2の膜ユニットに移送する前に、水素を含む前記入口ストリームが、熱交換器において前記第1の膜ユニットまたは前記第2の膜ユニットの動作温度まで加熱される、
請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記保持液を前記電気化学式水素コンプレッサ(EHC)に移送する前に、段階b)で取得された前記保持液が、熱交換器において前記電気化学式水素コンプレッサ(EHC)の動作温度まで冷却される、
請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記第1の膜ユニットおよび/または前記第2の膜ユニットを介して駆動力を高めるために真空ユニットが使用される、
請求項2または3に記載の方法。
【請求項6】
前記第2の膜ユニットを起源とする第2の保持液ストリームを前記第1の膜ユニットの入口に移送する前に、前記第2の保持液ストリームが、熱交換器において加熱される、
請求項2または3に記載の方法。
【請求項7】
前記第1の膜ユニットが、Pd系セラミック支持膜およびPd系金属支持膜の群から選択される、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
a)の水素を含む前記ストリームの入口圧力は、少なくとも5バールである、
請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の膜ユニットの前記透過液の圧力が、130ミリバールより低い、
請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
a)の水素を含む前記ストリームの水素濃度が、少なくとも10容積%である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記第1の膜ユニットの前記透過液の圧力が、5バールより低い、
請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記第2の膜ユニットの前記保持液の圧力が、10バールより低い、
請求項2または3に記載の方法。
【請求項13】
天然ガス混合物から低水素含量を分離するための装置であって、
水素を含むストリームのための入口、保持液のための出口、および透過液のための出口を有する第1の膜ユニットであって、前記透過液中の水素のモル分率が、前記保持液中の水素のモル分率よりも高い、第1の膜ユニットと、
前記保持液のための入口、出口カソード部位、および出口アノード部位を有する電気化学式水素コンプレッサ(EHC)であって、前記出口カソード部位の水素のモル分率が、前記出口アノード部位の水素のモル分率よりも高い、電気化学式水素コンプレッサと、を備える、
装置。
【請求項14】
第2の膜ユニットをさらに備え、前記第2の膜ユニットが、水素を含むストリームのための入口、第2の保持液のための出口、および第2の透過液のための出口を有し、前記第2の透過液中の水素のモル分率が、前記第2の保持液中の水素のモル分率よりも高く、前記第1の膜ユニットの前記保持液のための出口が、前記第2の膜ユニットの前記入口に接続される、
請求項13に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、天然ガス混合物から低水素含量を分離するための方法および装置に関する。
【背景技術】
【0002】
水素を再生可能なエネルギー源から生成することができる(オフピーク時間の間)ものの、その貯蔵があらゆるパワーツーガス用途における最大の欠点として残されているという事実は世界的な総意である。様々なプロジェクトにおいて、初期(または長期)の貯蔵、および様々な異なる用途(発電、給温、輸送用途、例えばガス燃料都市バスまたは乗用車)におけるその後の使用のために、既存の天然ガス配管網に水素を注入することが予見されてきた。水素の最大ブレンドレベルは、ガス配管網の基礎構造に応じて、5~20%、潜在的にはさらには25%である。グリーン水素をガス配管網に注入することにより、セクタ連結、ガスの脱炭、エネルギーの貯蔵および容易な流通(既存の基礎構造を用いた)、ならびにもちろん、水素のリスク低減などの数々の利点がもたらされる。ガス配管網への水素の最大ブレンドレベルは、欧州各国で大きく異なり、例えば、ベルギーおよび英国では最大3%であり、オランダおよびドイツでは10~14%である(容積パーセント)。平均的なガス濃度として、10%が水素注入の大規模展開の基準となるであろう。しかしながら、ここでの主な課題は、注入された水素が、いかに効率的かつ安価に天然ガス配管網から分離および精製され得るかということである。したがって、他の重要な側面は、さらなる用途のために天然ガス混合物からこの低濃度の水素を分離することである。
【0003】
水素分離のための従来の技術は、圧力変動吸着法(PSA)である。このユニットは、高圧で非水素成分を吸着するために使用される吸着材料に基づく。PSAシステムにおいて、分離および精製された水素は高圧で送達される一方、非水素化合物はより低い圧力で排出される。しかしながら、流入するガス混合物が高圧ストリーム(天然ガス配管網)からのものである場合、天然ガス配管網に送り戻すために、非水素ストリームを圧縮する必要がある。そのため、2つの機械的コンプレッサがシステムにおいて必要とされる。第1のコンプレッサは、水素の分離のための吸着圧力に達するためのものであり、第2のコンプレッサは、天然ガスを圧縮して配管網に戻すために必要である。しかしながら、低水素濃度の分離のためにそのようなシステムが用いられる場合、このシステムは、低水素ガスを再注入して配管網に戻すために相当な量の圧縮エネルギーおよび圧縮力の源を必要とし、これは、非常に非経済的である。
【0004】
PSAシステムは、大規模かつより高い水素濃度では効率的に機能するが、低濃度では非効率的となる。例えば、ストリーム中の水素が10%より低い場合、1容積の水素当たり10容積のガスを高圧の比率まで加圧する必要があるため、PSAの選択肢は非効率的である。PSAユニットは、精製する必要があるガス混合物中の不純物の量の関数としてサイズ決めされているため、低水素濃度では、PSAユニットは非常に大きくなる。加えて、吸着圧力が高いほど、排出される水素の純度は高くなるが、(非水素化合物を)加圧して配管網に戻すのに必要とされるエネルギー消費量が大きくなる。
【0005】
PSAユニットは、大規模システムのために市場で市販されている一方、小規模ユニットについては、そのようなシステムの水素分離コストがかなり高くなる。燃料電池用途のために水素を使用する場合、高い純度および低い圧力が必要とされるため、PSAユニットは低水素濃度の分離にはさらにより非効率的となる。低水素濃度(25%より低い、典型的には10%)からの天然ガス配管網からの水素分離はコストがかかり、エネルギー集約的であり、かつ効率的ではない。
【0006】
近年、世界のエネルギー消費は変化しており、これは、温室効果ガスの排出の低減のための新たなグリーンエネルギー源の必要性により駆り立てられている。グリーンな技術としての再生可能エネルギーの急速な発展により配管網の管理において多くの問題が生じている(それらの製造の間欠性に起因して)が、これらはスマートグリッドおよび貯蔵システムを統合することにより解決され得る。将来の水素エネルギー社会は、エネルギー貯蔵の問題を解決するための可能解を提示し得る。日中に生じ得る再生可能な電力過剰生産を利用して、電気分解装置により水素を製造する可能性は、配管網/エネルギー貯蔵問題を解決するための1つの可能解を提供する。したがって、電気エネルギーの化学エネルギーへの変換、および生成された化学エネルギーの貯蔵が実現可能な選択肢となる。その点で、天然ガスパイプライン網に水素をブレンドする概念はより魅力的となっており、これは、最終使用の地点に近い下流で分離および精製技術を使用して純粋な水素を市場に送達することを可能にするためである。加えて、水素を流通させるために、天然ガス配管網の大幅な拡大が利用され得る。比較的低い水素濃度では、ブレンドのためにパイプライン網の作動にわずかな変更が必要とされ得、また、専用の水素パイプラインを構築するコストがかかる可能性がある。全体として、バイオマス、太陽光、風力、または原子力などの低炭素エネルギー源から水素が製造される場合に、水素を天然ガス配管網に加えることにより温室効果ガスの排出を大幅に低減することができる。
【0007】
次に、水素ブレンド化合物は下流で抽出されて、自動車もしくは燃料電池用途で直接使用され得るか、または従来の発電装置を介した発電のためのエネルギーキャリアとして用いられ得る。ブレンドされた水素は、異なる用途(例えば、燃料電池)のために分離および精製され、水素濃度が低いまたは0である天然ガス配管網がエンドユーザに供給され得る。
【0008】
そのため、本発明の目的は、ブレンドされた天然ガス配管網から水素を分離および精製するための異なるシステム構成を設計することである。
【0009】
本発明の別の目的は、より良好な効率、低コスト、低濃度での優れた分離能力、容易な大規模実現可能性、および簡素性を提供する、天然ガス混合物から低水素含量を分離するための方法を提供することである。
【発明の概要】
【0010】
そのため、本発明は、天然ガス混合物から低水素含量を分離するための方法に関し、本方法は、a)水素を含むストリームを提供する段階と、b)保持液および透過液を取得するために、水素を含むストリームを入口ストリームとして第1の膜ユニットに移送する段階であって、透過液中の水素のモル分率が、保持液中の水素のモル分率よりも高い、段階と、c)さらなる水素の分離および精製のために、保持液を電気化学式水素コンプレッサ(EHC)に移送する段階とを含む。
【0011】
本方法は、全体の水素回収、純度、および水素の全コストを改善しながら、互いの相当な相乗効果をもたらす。本発明の一実施形態では、配管網から生じる天然ガス(10%のH2、90%のCH4、およびいくらかの不純物で構成される)は、膜分離ユニットの必要とされる温度まで加熱される。硫黄などの不純物は、脱硫ユニットを使用して最初に除去され得る。第1の膜モジュールにおいて、大部分の水素が分離される。次に、第1の膜モジュールからの保持液側は、残りの水素をさらに回収するために電気化学式水素コンプレッサ(EHC)に送られる。膜モジュールおよびEHCからの分離および精製された水素は混合され、さらなる用途のために送られ得る。本発明者らは、本発明のいくつかの利点は、高い水素回収、高い純度、高い効率性、低いエネルギー消費、容易な大規模実現可能性であることを見出した。加えて、本発明者らは、特に、膜および電気化学コンプレッサの種類およびサイズを変更することにより、回収および純度が適合され得ることを見出した。
【0012】
プロトンの透過のみを許容し、非常に少量の他の混入物が透過することができるプロトン膜のおかげで、電気化学式水素コンプレッサ(EHC)は、水素を他の混入物から精製しながら、同時に、水素を圧縮および精製することができる。EHCは、以下の等式(1)、(2)、および(3)で示される電気化学反応を介した水素の圧縮からなる。
【化1】
【化2】
【化3】
【0013】
EHCは可動部分を有さないため、圧縮された水素は、可動部分のための潤滑剤として必要な油で汚染されておらず、システムのために必要とされるメンテナンスは低い。可動部分がないことにより騒音の発生が回避されるため、放音が制約となる多くの用途のためにEHCはより適している。EHCはまた、大規模実現可能性を容易にするコンパクトなデバイスであるという利点も有する。通常、大規模なシステムでは、必要とされる体積流量を処理するために、単一のユニットは電気的に直列に、かつガス流に対して平行に配置され、各電池に同じ電流が流れることにより電池が同じ条件で動作する。
【0014】
分極曲線は、EHCの電気化学抵抗に関する情報を提供する。通常、過電圧と呼ばれる電圧損失は、活性領域、オーミック領域、および物質移動限界領域の3つの領域に分割され得る。低電流密度領域では、活性の過電圧が顕著であることが認められた。中間領域では、主に膜抵抗に起因する電池の内部抵抗は、この領域における放電曲線の線形傾向をもたらす主要な要因となる。高電流密度領域では、全体的な電池反応速度は、反応物質の欠乏により制限される。その結果として、物質移動限界過電圧が支配的な要因となり、一定の印加電圧で電流密度の急激な衰えを引き起こす。電気化学式水素コンプレッサ(EHC)は典型的には、アノード側およびカソード側において65℃の温度および8バールの圧力で動作する。印加電圧は0.3Vである。
【0015】
一実施形態によれば、本方法はさらに段階b1)を含み、段階b)の透過液が、入口ストリームとして第2の膜ユニットに送られ、第2の膜ユニットにおいて第2の保持液および第2の透過液が生成され、第2の透過液中の水素のモル分率は、第2の保持液中の水素のモル分率よりも高く、第2の保持液は、入口ストリームとして段階b)の膜ユニットに送り戻される。そのような実施形態は、第2の膜モジュールによって達成されるさらなる精製のおかげで、第1の膜ユニットのみの実施形態と比較して、非常に高い水素純度(99.99%)を保証する。そのような実施形態は、水素を含むストリームの実質的な精製を確実にする、連続する2つの膜モジュールにより、比較的高い純度を保証する。
【0016】
一実施形態によれば、水素を含むストリームを膜ユニットに移送する前に、水素を含むストリームは、熱交換器において膜ユニットの動作温度まで加熱される。膜ユニットの作業温度は約400℃であるため、水素を含むストリームを膜ユニットに移送する前に、水素を含むストリームを膜ユニットの動作温度まで加熱することが好ましい。そのような実施形態は、第1の膜ユニットおよび/または第2の膜ユニットに適用される。
【0017】
一実施形態によれば、保持液を電気化学式水素コンプレッサ(EHC)に移送する前に、段階b)で取得された保持液は、熱交換器において電気化学式水素コンプレッサ(EHC)の動作温度まで冷却される。保持液出口ストリームは、好ましくは、水素を含むストリームを加熱している間に、前述の熱交換器において冷却される。本発明者らは、電気化学式水素コンプレッサ(EHC)がより高い温度では良好な性能を提供するが、動作条件を選択する際には、プロトン膜の加湿のための適切な水分管理を考慮しなければならないことに気づいた。
【0018】
一実施形態によれば、第1および/または第2の膜ユニットを介して駆動力を高めるために真空ユニットが使用される。
【0019】
一実施形態によれば、第2の膜ユニットを起源とする第2の保持液ストリームを第1の膜ユニットの入口に移送する前に、第2の保持液ストリームが熱交換器において加熱される。第2の膜ユニットの作業温度は約400℃であるため、第2の保持液ストリームを第1の膜ユニットの入口に移送する前に、第2の膜ユニットを起源とする第2の保持液ストリームを熱交換器において加熱することが好ましい。
【0020】
一実施形態によれば、第1の膜ユニットは、Pd系セラミック支持膜およびPd系金属支持膜の群から選択される。Pd系金属支持膜は、セラミック支持膜と比較して、水素透過がより低いが、透過選択性はより高い。
【0021】
一実施形態によれば、a)の水素を含むストリームの入口圧力は、少なくとも5バールである。本発明者らは、保持液の圧力を高めることにより、より低い表面積が必要とされるが、水素を含むストリームが透過するためのより高い駆動力によって純度が高まることを見出した。より大きい圧力差のおかげで膜に沿って駆動力がより大きくなるため、より小さい膜表面積が必要とされる。
【0022】
一実施形態によれば、第1の膜ユニットの透過液の圧力は、130ミリバールより低い。本発明者らは、同じHRFに達するために、より低い真空を用いて膜表面積が低減されることを見出した。電気化学式水素コンプレッサ(EHC)の投資コストは全体の流通に対して関連のある影響を有するため、第1の膜ユニットの保持液の圧力をより低くすることが有益である。
【0023】
一実施形態によれば、a)の水素を含むストリームの水素濃度は、少なくとも10容積%である。本発明者らは、水素を含むストリームのH濃度の増加により、膜面積の減少および最終純度のわずかな上昇がもたらされたことを見出した。本発明者らは、この効果は、より高い混入物の駆動力(入口でのより高いメタン濃度)に関連すると想定する。
【0024】
一実施形態によれば、第1の膜ユニットの透過液の圧力は、5バールより低い。第1の膜ユニットの透過液の圧力の低減により、第1のモジュールの表面積の減少がもたらされ、それにより、エネルギー消費が低減される。
【0025】
一実施形態によれば、第2の膜ユニットの保持液の圧力は、10バールより低い。第2の膜の保持液の圧力のそのような低減は、全体のエネルギー消費に対してポジティブな影響を及ぼす。
【0026】
本発明はさらに、天然ガス混合物から低水素含量を分離するための装置に関し、本装置は、水素を含むストリームのための入口、保持液のための出口、および透過液のための出口を有する第1の膜ユニットであって、透過液中の水素のモル分率が、保持液中の水素のモル分率よりも高い、第1の膜ユニットと、保持液のための入口、出口カソード部位、および出口アノード部位を有する電気化学式水素コンプレッサ(EHC)であって、出口カソード部位の水素のモル分率が、出口アノード部位の水素のモル分率よりも高い、電気化学式水素コンプレッサとを含む。
【0027】
一実施形態では、本装置は第2の膜ユニットをさらに含み、第2の膜ユニットは、水素を含むストリームのための入口、第2の保持液のための出口、および第2の透過液のための出口を有し、第2の透過液中の水素のモル分率は、第2の保持液中の水素のモル分率よりも高く、第1の膜ユニットの保持液のための出口は、第2の膜ユニットの入口に接続される。
【0028】
本装置は、1または複数の熱交換器、コンプレッサ、および真空ポンプをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0029】
図1】本発明の実施形態1のプロセスフロー図である。
図2】本発明の実施形態2のプロセスフロー図である。
図3】本発明の実施形態3のプロセスフロー図である。
図4】本発明の実施形態の性能の計算結果である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
当業者に本発明をより良く理解させるために、本発明の実施形態における技術的スキームは、以下の本発明の実施形態において図面と組み合わせることにより明らかかつ完全に説明される。モジュールという用語は、膜、圧力支持構造、供給入口、出口の透過液および保持液ストリーム、ならびに全体的な支持構造で構成される完全なユニットを説明するために使用される。膜を通る流れは透過液と呼ばれる。膜によって排除された材料は保持液と呼ばれる。本記載において、透過液中の水素のモル分率は、保持液中の水素のモル分率よりも高い。
【0031】
パラジウム膜、真空ポンプ、機械的コンプレッサ、および電気化学式水素コンプレッサの技術を組み合わせることにより、10%のHおよび90%のCHの混合物からの水素の分離および精製について、3つの異なる実施形態が提案される。すべての異なる実施形態の基準は、1日当たり25kgのHの製造であり、すべての膜表面積および供給速度はこの製造に基づいていた。
【0032】
図1は、本発明の実施形態1のためのプロセスフロー図10を示す。6246.1mol/hの全流量で流入するストリーム1(配管網から生じる)は、出口保持液ストリーム6を使用して(出口保持液ストリーム6が冷却されている間に)熱交換器2において最初に予熱され、次に、ヒータ3は、400℃の膜作業温度に達するのに必要な追加の熱を供給する。ヒータ3の後に、ストリーム4は、1.2mの表面積を有する膜モジュール5に送られる。選択された膜は、400℃で2.2*10mol/s/m/Paの水素透過、および1バールの圧力差におけるHとCH4との間の比率として定義される20000の理想的な透過選択性(実験的に取得された)を有するPd系セラミック支持膜である。膜の保持液側は8バール(配管網から生じるストリームと同じ)である一方、透過液側は、真空ポンプ9を使用することにより100ミリバールに保持した(膜を介した駆動力を高めるため)。透過液ストリーム7は、真空ポンプ9に入る前に冷却器8で冷却される(真空ポンプの最大入口温度は75℃である)。膜モジュール5の保持液ストリーム6は次に熱交換器2に送られ、そのように冷却された下流12は、さらなる水素分離および精製のために、6mΩのプロトン膜抵抗および並列な350個の電池を有し、65℃の作業温度の電気化学式水素コンプレッサ13(EHC)に送られる。保持液出口ストリーム6は、前述の熱交換器2において、配管網から生じるストリーム1を加熱しながら冷却される。加えて、電気化学式水素コンプレッサ13の出口カソード側から生じる水素11は、さもなければ大気圧で得ることが難しくなり得る適切なプロトン膜加湿を確かにするために8バールに保持される。次に、電気化学式水素コンプレッサ13からのストリーム11の減圧の後に、膜モジュール5の透過液側からの精製された水素15および電気化学式水素コンプレッサ13のカソード側からの水素11はストリーム16として混合される。電気化学式水素コンプレッサ13の出口アノード側ストリーム14は配管網に送り戻され、ストリーム14中の水素濃度は0であるかまたは低い(どの構成が選択されたかに依拠する)。
【0033】
図2は、分子ふるい炭素膜(CMSM)およびPd系セラミック支持膜の2つの膜モジュール、真空ポンプ、ならびにEHCを組み合わせる、本発明の実施形態2のプロセスフロー図20を示す。この構成は、いかなる機械的コンプレッサも間に伴わずに2つの膜モジュール間の接続を可能にする高圧ガス配管網(約40~80バール)に対して提案される。考慮される配管網圧力は40バールであり、全供給速度は実施形態1と同様である。供給物1は、70℃の動作温度に達するために、最初に熱交換器2において加熱される。次に、熱交換器2およびヒータ3の後に、加熱されたストリーム4は、5.02mの表面積を有する第1の膜モジュール5に送られ、これは、CMSMの水素透過は70℃で7~10mol/s/m/Paであり、40バールで550の理想的な選択性を有するので大きな表面積である。膜モジュール5に十分な駆動力を与え、第2の膜モジュール17との圧力差を保持するために、透過液側は3バールに保持される。透過液側7は熱交換器8において加熱され、ヒータ16においてさらに加熱され、そのように加熱されたストリーム18の温度は約400℃であり、これは、Pd系膜からなる第2の膜モジュール17の動作温度である。選択された膜は、400℃および1バールの圧力差で2.2~10mol/s/m/Paの水素透過、および20000の理想的な選択性を有するセラミック支持Pd系である。1日当たり25kgの最終的な分離を達成するために、0.62mの膜面積が必要とされる。第2の膜モジュール17の透過液側20(真空ポンプ22を使用する)は、ヒータ21を使用することにより実施形態1と同じに保持した。第2の膜モジュール17の出口保持液19は再利用され、第1の膜モジュール5の入口ストリームとして使用される。第1の膜モジュール5の出口保持液6は熱交換器2において加熱され、次に、水素をさらに精製するために電気化学式水素コンプレッサ13(EHC)に送られる。電気化学式水素コンプレッサ13(EHC)から分離された水素11のストリームと、Pd系膜からなる第2の膜モジュール17から生じる水素23のストリームとを混合した後に、混合されたストリーム24はエンドユーザに送られる一方、保持液ストリーム14は配管網に戻るように供給される。
【0034】
図3は、本発明の実施形態3のプロセスフロー図30を示し、このプロセスフロー図において、機械的コンプレッサが間にある2つの膜モジュール、真空ポンプ、およびEHCが組み合わされている。第1の膜モジュール5は、実施形態1および2で採用された膜と比較してより低い選択性で高い水素透過を可能にする極薄(1~3pm)のパラジウム層を有するPd系セラミック支持膜である。水素透過および理想的な透過選択性は、それぞれ、4*10mol/s/m/Paおよび4000であった。前の膜モジュールと連続して接続される第2の膜モジュール17は、2*10mol/s/m/Paの水素透過および60000の理想的な透過選択性を有するPd系二重スキン膜である。第2の膜モジュール17は主に、水素純度の増加を担う。配管網から生じるストリーム1は、実施形態1および2と同じ供給速度および組成を有し、また、熱交換器2およびヒータ3において最初に加熱され、ここで、第1の膜モジュール5の出口保持液ストリーム12は、電気化学式水素コンプレッサ13(EHC)の作業温度である65℃まで冷却される。電気化学式水素コンプレッサ13(EHC)の出口アノード側14は、天然ガス配管網に送り戻される。ヒータ3の後に、ストリームは、1.2mの表面積を有する第1の膜モジュール5に送られる一方、透過液側は100ミリバールの圧力に保持され、これは真空ポンプ20を使用して達成された。第1の膜モジュール5からの透過液ストリーム7は、熱交換器30に送られ、ストリーム25は、真空ポンプ20に送られる。次に、真空ポンプ20の出口ストリーム27はコンプレッサ28において8バールまで圧縮され、次に、カスケード式の2つの熱交換器30、31の後に、ストリーム29として、0.15mの表面積を有する第2の膜モジュール17に送られる。そのように取得されたストリーム32は、第2の膜モジュール17のための供給ストリームである。第2の膜モジュール17からの保持液ストリーム33(主に、いくらかの不純物および残りの回収不能なH)は,さらなる精製のために第1の膜モジュール5に送り戻される。第2の膜モジュール17からの精製された水素のストリーム36および電気化学式水素コンプレッサ13(EHC)のカソード側からのストリーム11は次にストリーム37として混合され、エンドユーザに送られる。
【0035】
発明者は、異なる構成の性能を計算した。本記載において、構成Aは実施形態1を指し、構成Bは実施形態2を指し、構成Cは実施形態3を指す。結果は表1に示される。
【0036】
真空ポンプおよび電気化学式水素コンプレッサに接続されたセラミック支持Pd系膜を含む構成Aからは、99.93%の純度で83.39%を回収することができた。1.62mの表面積を有するPd系膜は、328.9mol/hのHおよび0.3mol/hのCHを回収する。保持液側における濃度分極は、水素の駆動力の点で役立ち、すなわち、保持液の圧力が高いほど、バルクとパラジウム表面との間の物質移動限界が高くなる。次に、保持液側は電気化学式水素コンプレッサ(EHC)に送られ、ここで、100%の純度の追加の191.9mol/hの水素が分離された。印加電圧を変動させることにより、EHCからの水素回収を変化させることが可能である(EHPの効率は60%(エネルギー消費の最適値)と見なされた一方、その結果として電圧が変化した)。
【0037】
構成Bは、第2の膜モジュールを用いて達成されるさらなる精製のおかげで、構成Aと比較して非常に高い水素純度(99.99%)を保証する。膜は、52.66%の水素を分離することを担い、6.32mの表面積および91.61%の純度を有する。91.61%の水素を含む場合にストリームをさらに精製しやすいので、達成される最終純度が構成Aよりも高い。必要な電気消費は、システムの作業温度に達するのに必要な熱のみに関連し、5.62kWh/kg Hであった。この構成で分離された全水素の製造量は、1日当たり25kgであり、1.81%の水素のみが配管網に送り戻される。したがって、構成Bでは、6kWh/kg Hより低い電力消費で高い純度(99.99)の水素を製造することがさらに可能である。
【0038】
他方で、構成Cは、構成AおよびBと比較してより高い水素純度を提供するが、必要なエネルギー消費(7.95kWh/kg H)が最も高かった。
【0039】
構成「A1」では、選択された膜の種類はPd系金属支持膜であり、これは、セラミック支持膜と比較してより低い水素透過を有するが、より高い透過選択性を有する。この理由から、1日当たり25kgを分離するのに必要な膜面積は現在の構成では2.92mに増加する一方、純度は99.99%まで上昇する。エネルギー消費は、構成「A」と同様であり、「B」および「C」よりも低い。さらに、保持液の圧力を、HRFおよび純度の適切の理解のために変動させた。
【0040】
構成「A2」は、8バールの代わりに、天然ガス配管網から生じる15バールの入口圧力に基づく。結果から、保持液の圧力を高めることにより、マスタ構成「A」(1.62m)と比較してより小さい表面(1.43m)が必要とされるが、混入ガスが透過するためのより高い駆動力に起因して、純度が99.93%から99.88%に落ちることに気づくことが可能である。より高い圧力差に起因する膜に沿ったより大きい駆動力のために、より小さい膜表面積が必要とされ、エネルギー消費はマスタ構成「A」と非常に類似している。
【0041】
構成「A3」では、純度の点から全体的なシステムの性能に対する異なる真空の影響を実証するために、透過液の圧力は100ミリバールから70ミリバールに変更されている。同じHRFに達するために、膜表面積は、70ミリバールの真空で、マスタ構成「A」の1.62mから1.54mに低減されている。
【0042】
構成「A4」は、以前のケースのような10%の代わりに、15%の天然ガス配管網からのH濃度が考慮され、これにより、1.62から1.56mへの膜面積の低減、およびマスタ構成(99.93%)と比較してわずかに高い最終純度(99.96%)がもたらされた。本発明者らによれば、この効果は、より高い混入物の駆動力(入口におけるより高いメタン濃度)に関連する。
【0043】
構成「A5」は、そのうちの10%がHであり、90%がCHである、1784.6mol/hの配管網からのより低い全流量に基づく。99.77%の純度で、膜のHRFを48.80%から79.67%に増加させ、全HRFを79.52%から91.86%に増加させることが可能である。水素純度は、2つの異なる理由の組み合わせから減少する。1つ目の理由は、EHPから分離される水素がより少ないことに関連し、これは、100%の純度を保証し得る一方、2つ目の理由は、より低い流量において生じるより高い物質移動限界である。構成「A5」の主な利点は、天然ガス配管網に戻る水素濃度が低い(0.90%)ことに起因する、天然ガス配管網のより良好な品質にある。
【0044】
構成「A6」の目的は、膜表面および最終的な分離コストを犠牲にして、EHPにより分離された水素の流量を低減して、エネルギー消費を低減することである。同じHRFを保持するための膜面積は2.41mに増加され、エネルギー消費は、構成「A」の5.19から4.72kWh/kg Hに低減される。
【0045】
構成「B1」は、用いられる膜の種類の点で構成「B」とは異なる。構成Bでは、透過選択性が550である分子ふるい炭素膜が考慮され、ケース「B1」では、選択性が5000である極薄Pd系セラミック支持膜が第1の膜モジュールで採用される。分子ふるい炭素膜(CMSM)とは対照的に、Pd系膜の動作温度が高い(400℃)ことに起因してエネルギー消費が上昇する。エネルギー消費は、5.62kWh/kg Hの代わりに6.03となる。ケース「B1」において、より小さい表面積が必要とされる場合であっても、より高い膜コストおよびより高いエネルギー消費に起因して、第1の膜モジュールにおいてPd系膜を採用するのは経済的利便性が低くなる。他方で、分子ふるい炭素膜は、特に、高圧配管網において水素を分離するのに有望であるように見える。
【0046】
構成「B2」は、構成「B」に基づくが、主な違いは、第1の膜モジュールのより低い透過液の圧力である(3バールの代わりに2バール)。より関連性のある駆動力のおかげで第1のモジュールの表面積が低減される一方で、保持液入口圧力が減少するため第2のモジュールの膜表面は大きくなる。
【0047】
構成「C」は、ストリームの実質的な精製を確実にする連続する2つの膜モジュールに起因して、比較的高い純度を保証することができる。構成「C1」は、8バールの代わりに4バールである第2の膜モジュールのより低い保持液の圧力に基づく。この構成では、膜面積は2.42から1.87mに低減され、エネルギー消費は7.95から6.38kWh/kg Hに減少する。
図1
図2
図3
図4
【国際調査報告】