(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-01-31
(54)【発明の名称】機能性香料で感染症を制御する組成と方法
(51)【国際特許分類】
A01N 27/00 20060101AFI20220124BHJP
A01P 3/00 20060101ALI20220124BHJP
A01P 1/00 20060101ALI20220124BHJP
A01N 31/14 20060101ALI20220124BHJP
A01N 31/02 20060101ALI20220124BHJP
A01N 31/06 20060101ALI20220124BHJP
A01N 31/08 20060101ALI20220124BHJP
A01N 35/04 20060101ALI20220124BHJP
A01N 35/02 20060101ALI20220124BHJP
A01N 43/16 20060101ALI20220124BHJP
A61P 31/00 20060101ALI20220124BHJP
A61P 31/04 20060101ALI20220124BHJP
A61P 31/06 20060101ALI20220124BHJP
A61P 31/12 20060101ALI20220124BHJP
A61P 31/16 20060101ALI20220124BHJP
A61Q 13/00 20060101ALI20220124BHJP
A61K 31/01 20060101ALI20220124BHJP
A61K 31/045 20060101ALI20220124BHJP
A61K 31/11 20060101ALI20220124BHJP
A61K 31/335 20060101ALI20220124BHJP
A61K 31/085 20060101ALI20220124BHJP
【FI】
A01N27/00
A01P3/00
A01P1/00
A01N31/14
A01N31/02
A01N31/06
A01N31/08
A01N35/04
A01N35/02
A01N43/16 C
A61P31/00
A61P31/04
A61P31/06
A61P31/12
A61P31/16
A61Q13/00 101
A61K31/01
A61K31/045
A61K31/11
A61K31/335
A61K31/085
【審査請求】未請求
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021532322
(86)(22)【出願日】2019-12-03
(85)【翻訳文提出日】2021-08-03
(86)【国際出願番号】 US2019064254
(87)【国際公開番号】W WO2020117819
(87)【国際公開日】2020-06-11
(32)【優先日】2018-12-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】518407593
【氏名又は名称】グローバル バイオライフ インコーポレーテッド
【氏名又は名称原語表記】GLOBAL BIOLIFE INC.
【住所又は居所原語表記】4800 Montgomery Lane, Suite 210, Bethesda, MD 20814, U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】100065248
【氏名又は名称】野河 信太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100159385
【氏名又は名称】甲斐 伸二
(74)【代理人】
【識別番号】100163407
【氏名又は名称】金子 裕輔
(74)【代理人】
【識別番号】100166936
【氏名又は名称】稲本 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100174883
【氏名又は名称】冨田 雅己
(74)【代理人】
【識別番号】100189429
【氏名又は名称】保田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100213849
【氏名又は名称】澄川 広司
(72)【発明者】
【氏名】トンプソン,ダリル,エル.
(72)【発明者】
【氏名】ヴァン リース,ニコラス,エー.
(72)【発明者】
【氏名】メイヤー,トーマス,エー.
【テーマコード(参考)】
4C083
4C086
4C206
4H011
【Fターム(参考)】
4C083DD08
4C083EE09
4C083KK02
4C086AA01
4C086AA02
4C086CA01
4C086MA03
4C086MA04
4C086MA06
4C086NA14
4C086ZB33
4C086ZB35
4C206AA01
4C206AA02
4C206BA03
4C206BA04
4C206CA08
4C206CA14
4C206CA17
4C206CA27
4C206CB03
4C206CB05
4C206MA03
4C206MA04
4C206NA05
4C206NA14
4C206ZB33
4C206ZB35
4H011AA02
4H011AA04
4H011BA06
4H011BB01
4H011BB03
4H011BB05
4H011BB08
4H011DF04
(57)【要約】
組成物は、β-ピネン、ボルネオール、桂皮アルデヒド、シトラール、d-リモネン、ユーカリプトール、オイゲノール、ファルネソール、リナロール、チモール、及びバニリンを含む。さらに、組成物の抗菌剤及び抗ウイルス剤としての使用方法も開示される。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
0.25~7%のβ-ピネン、
0.25~25%のボルネオール、
5~30%の桂皮アルデヒド、
0.25~25%のシトラール、
0.25~5%のd-リモネン、
1~10%のユーカリプトール、
1~15%のオイゲノール、
10~30%のファルネソール、
25~50%のリナロール、
0.5~7%のチモール、及び
2~7%のバニリン
を含む組成物。
【請求項2】
0.25~3%のβ-ピネン、
0.25~25%のボルネオール、
10~25%の桂皮アルデヒド、
0.25~5%のシトラール、
0.25~5%のd-リモネン、
1~8%のユーカリプトール、
5~15%のオイゲノール、
20~30%のファルネソール、
25~50%のリナロール、
0.5~7%のチモール、及び
5~20%のバニリン
を含む請求項1の組成物。
【請求項3】
3~7%のβ-ピネン、
1~5%のボルネオール、
5~20%の桂皮アルデヒド、
1~5%のシトラール、
1~5%のd-リモネン、
5~10%のユーカリプトール、
10~15%のオイゲノール、
10~20%のファルネソール、
30~50%のリナロール、
2~7%のチモール、及び
5~20%のバニリン
を含む請求項1の組成物。
【請求項4】
0.5~5%のβ-ピネン、
1~5%のボルネオール、
10~30%の桂皮アルデヒド、
1~5%のシトラール、
1~5%のd-リモネン、
1~5%のユーカリプトール、
1~7%のオイゲノール、
20~25%のファルネソール、
25~50%のリナロール、
0.5~2%のチモール、及び
2~7%のバニリン
を含む請求項1の組成物。
【請求項5】
1~3%のβ-ピネン、
1~5%のボルネオール、
15~25%の桂皮アルデヒド、
1~3%のd-リモネン、
5~10%のユーカリプトール、
5~15%のオイゲノール、
25~50%のリナロール、
0.5~2%のチモール、及び
5~10%のバニリン
を含む組成物。
【請求項6】
治療有効量の請求項1の組成物を、治療を必要とする患者に投与することを含む、感染症を治療又は感染症の発生を制限するための治療方法。
【請求項7】
前記感染症が、大腸菌、MRSA、インフルエンザ、ライノウイルス及び結核菌による感染からなる群から選択される、請求項6の方法。
【請求項8】
組成物が、
0.25~3%のβ-ピネン、
0.25~25%のボルネオール、
10~25%の桂皮アルデヒド、
0.25~5%のシトラール、
0.25~5%のd-リモネン、
1~8%のユーカリプトール、
5~15%のオイゲノール、
20~30%のファルネソール、
25~50%のリナロール、
0.5~7%のチモール、及び
5~20%のバニリン
を含む請求項6の方法。
【請求項9】
感染症が、大腸菌、MRSA、インフルエンザ、ライノウイルス及び結核菌による感染からなる群から選択される、請求項8の方法。
【請求項10】
組成物が、
3~7%のβ-ピネン、
1~5%のボルネオール、
5~20%の桂皮アルデヒド、
1~5%のシトラール、
1~5%のd-リモネン、
5~10%のユーカリプトール、
10~15%のオイゲノール、
10~20%のファルネソール、
30~50%のリナロール、
2~7%のチモール、及び
5~20%のバニリン
を含む請求項6の方法。
【請求項11】
感染症が、大腸菌、MRSA、インフルエンザ及びライノウイルスによる感染からなる群から選択される、請求項10の方法。
【請求項12】
組成物が、
0.5~5%のβ-ピネン、
1~5%のボルネオール、
10~30%の桂皮アルデヒド、
1~5%のシトラール、
1~5%のd-リモネン、
1~5%のユーカリプトール、
1~7%のオイゲノール、
20~25%のファルネソール、
25~50%のリナロール、
0.5~2%のチモール、及び
2~7%のバニリン
を含む請求項6の方法。
【請求項13】
感染症が、大腸菌、MRSA、インフルエンザ、ライノウイルス、及び結核菌による感染からなる群から選択される、請求項12の方法。
【請求項14】
治療有効量の請求項5の組成物を、治療を必要とする患者に投与することを含む、感染症を治療又は感染症の発生を制限するための治療方法。
【請求項15】
感染症が、大腸菌、MRSA、インフルエンザ、ライノウイルス及び結核菌による感染からなる群から選択される、請求項14の方法。
【請求項16】
石鹸、ローション、洗剤、シャンプー、香料、ボディスプレー、柔軟剤及び乾燥シートからなる群から選択される配合物への混合をさらに含む、請求項1の組成物。
【請求項17】
スプレー又はミストとして適用するための溶液として処方される、請求項1の組成物。
【請求項18】
スプレー又はミストとして適用するための溶液として処方される、請求項2の組成物。
【請求項19】
スプレー又はミストとして適用するための溶液として処方される、請求項3の組成物。
【請求項20】
スプレー又はミストとして適用するための溶液として処方される、請求項4の組成物。
【請求項21】
スプレー又はミストとして適用するための溶液として処方される、請求項5の組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感染症を制御するための組成物及び方法、特に、いくつかの異なる機能的成分を含む組成物及び方法に関する。
【背景技術】
【0002】
感染症は、広範かつ増大する問題である。バクテリア、ウイルス、真菌、及び寄生生物は、触れるもの、飲んだり食べたりするもの、呼吸したりするものをも含む環境に蔓延している。多くは無害又は有益でさえあるが、非常に有害で感染症を引き起こし、病気や死に至るものもある。感染症は、世界中の全死亡の3分の1を引き起こす。
【0003】
感染症は、世界中のすべての人々に影響を及ぼし、発展途上国の、非常に若い、高齢な、及び他の病状の治療を受けている人々を含む脆弱な集団の間で特に危険である。感染症は病院で特に懸念されており、高齢者介護施設で一般的であり、生活の質の低下、他の病気への感染性、既存の状態の合併症、及び死亡につながる。
【0004】
メチシリン耐性黄色ブドウ球菌(MRSA)、抗生物質耐性緑膿菌、及び大腸菌、クレブシエラ・ニューモニエなどの腸内細菌科は、世界保健機関によって新しい治療法の開発における優先事項として示されている最も危険なバクテリアである。バクテリアが原因の感染症の現在の標準治療である抗生物質は、抗生物質を分解する分泌物の生成や抗生物質の侵入や付着を妨げる構造の変化などの進化的変異を通じてバクテリアが治療に対する耐性を発達させるため、効果が低下しつつある。
【0005】
バクテリアを打ち負かす方法には、複製の阻害、バイオフィルム形成の阻害、及びクオラムセンシングの阻害が含まれる。バクテリアの複製を阻害するために、抗菌剤はバクテリアが成長し繁殖するプロセスを妨害し得る。バクテリアのバイオフィルムの形成を阻害するために、抗菌剤は、バクテリアがそれら同士又は他の表面に付着するプロセスを妨害し得る。クオラムセンシングを阻害するために、抗菌剤は、バクテリアが情報を伝え、受け、及び応答するプロセスを妨害し得る。
【0006】
ノロウイルス、ヘルペス、及び多くの種類のインフルエンザ及びライノウイルスなどのウイルスは、現在のすべての予防措置にもかかわらず、持続する世界的な健康上の懸念である。インフルエンザだけでも、年間300万から500万の感染症を引き起こし、30万から65万人の死者を出すと推定されている。
【0007】
ウイルスを打ち負かす方法には、ウイルス侵入の阻害、複製の阻害、及び出芽及び放出の阻害が含まれる。ウイルスの侵入を阻害するために、抗ウイルス剤は、ICAM-1又はヘリカーゼの破壊を介してウイルスが宿主細胞に感染する能力を妨げ得る。ウイルス複製を減少又は防止するために、抗ウイルス剤は、ポリメラーゼ又はプロテアーゼの産生又は使用を妨害し得る。ウイルスの子孫の放出を防ぐために、抗ウイルス剤はノイラミニダーゼの産生又は使用を妨害し得る
【0008】
真菌は、複数の病原性感染症の原因である。人々を病気にする約300の真菌が存在する。真菌感染症は、他の病気の治療を受けている患者に合併症を引き起こし、深刻な病気となり、死を引き起こす可能性がある。
【0009】
真菌を打ち負かすか、又は真菌感染を制御する方法は、アポトーシスを誘導すること、及び有害な毒素の放出を防止又は低減することを含む。アポトーシスを誘発するために、抗真菌剤はメタカスパーゼを活性化し、活性酸素種の生成に拍車をかけ、細胞の超微細構造の崩壊を引き起こし、DNA断片化を引き起こし、ホスファチジルセリンの表出化を引き起こし得る。有害な毒素の生合成を低減又は防止するために、抗真菌剤は、aflR、aflT、aflD、aflM、及びaflP生合成毒素遺伝子の発現をダウンレギュレートし得る。
【0010】
熱帯熱マラリア原虫などの寄生生物は非常に危険であり、マラリアを引き起こす。マラリアは、年間2億1,200万人以上の感染及び40万人以上の死亡を引き起こすと推定される疾患である。
【0011】
熱帯熱マラリア原虫などの寄生生物を打ち負かす方法には、栄養素をエネルギーに代謝するために使用されるシステムの中断及び酵素機能への干渉が含まれる。代謝を中断するために、駆虫剤はイソプレノイドの生合成を阻害し得る。酵素機能に干渉するために、駆虫剤はプラスメプシンII酵素などの阻害のための重要な酵素を標的にし得る。
【0012】
結核は、単一の感染性病原体による死亡の主要な原因である。結核菌は、この病気の原因となる細菌で、現在感染している人が咳やくしゃみをしたり、感染した体液を空気中に放出したりすると、空気伝播する。結核は2016年に160万人以上の死者と、1,000万人以上の病気を引き起こし、世界で9番目に多い死因となっている。
【0013】
結核菌を打ち負かす方法には、病原体の直接阻害、ならびにバイオフィルム及びクオラムセンシング機能の阻害が含まれる。結核菌を直接阻害するために、抗菌剤は病原体の細胞壁を分解し得る。バイオフィルム及びクオラムセンシング機能を阻害するために、抗菌剤はこれらの機能で使用される遺伝子とタンパク質を標的にし得る。
【発明の概要】
【0014】
本発明は、香料を介した微生物病原体の負の効果に対処するための組成物及び方法に関する。意図されているのは、人間への使用に一般に安全と認められる(GRAS)ことが知られている特定の物質を、バクテリア、ウイルス、真菌、及び寄生生物などの微生物に対する相乗効果のための香料と組み合わせる手段である。これらの特性を持つ芳香性化学物質を使用すると、石鹸、ローション、洗剤、シャンプー、香料、ボディスプレー、柔軟剤、乾燥シートなどを含む、広く使用される多くの製品を効果的で安全な抗菌送達剤として使用できる。
【0015】
本発明は、その一形態において、
0.25~7%のβ-ピネン、
0.25~25%のボルネオール、
5~30%の桂皮アルデヒド、
0.25~25%のシトラール、
0.25~5%のd-リモネン、
1~10%のユーカリプトール、
1~15%のオイゲノール、
10~30%のファルネソール、
25~50%のリナロール、
0.5~7%のチモール、及び
2~7%のバニリン
を含む組成物に関する。
【0016】
組成物の1つの特定の形態において、成分は以下の通りである:
0.25~3%のβ-ピネン、
0.25~25%のボルネオール、
10~25%の桂皮アルデヒド、
0.25~5%のシトラール、
0.25~5%のd-リモネン、
1~8%のユーカリプトール、
5~15%のオイゲノール、
20~30%のファルネソール、
25~50%のリナロール、
0.5~7%のチモール、及び
5~20%のバニリン。
【0017】
別の形態では、組成物は、
3~7%のβ-ピネン、
1~5%のボルネオール、
5~20%の桂皮アルデヒド、
1~5%のシトラール、
1~5%のd-リモネン、
5~10%のユーカリプトール、
10~15%のオイゲノール、
10~20%のファルネソール、
30~50%のリナロール、
2~7%のチモール、及び
5~20%のバニリン
を含む。
【0018】
さらに別の形態では、組成物は、
0.5~5%のβ-ピネン、
1~5%のボルネオール、
10~30%の桂皮アルデヒド、
1~5%のシトラール、
1~5%のd-リモネン、
1~5%のユーカリプトール、
1~7%のオイゲノール、
20~25%のファルネソール、
25~50%のリナロール、
0.5~2%のチモール、及び
2~7%のバニリン
を含む。
【0019】
さらに別の形態では、組成物は、
1~3%のβ-ピネン、
1~5%のボルネオール、
15~25%の桂皮アルデヒド、
1~3%のd-リモネン、
5~10%のユーカリプトール、
5~15%のオイゲノール、
25~50%のリナロール、
0.5~2%のチモール、及び
5~10%のバニリン
を含む。
【0020】
本発明は、別の形態において、
0.25~7%のβ-ピネン、
0.25~25%のボルネオール、
5~30%の桂皮アルデヒド、
0.25~25%のシトラール、
0.25~5%のd-リモネン、
1~10%のユーカリプトール、
1~15%のオイゲノール、
10~30%のファルネソール、
25~50%のリナロール、
0.5~7%のチモール、及び
2~7%のバニリン
を含む治療有効量の組成物を投与することにより、感染症を治療又はその発生を制限する方法に関する。
【0021】
1つの有利な形態において、この方法は、大腸菌、MRSA、インフルエンザ及びライノウイルスなどの感染症を治療する。
【0022】
様々な代替形態において、限定された感染症を治療又はその発生を制限するための方法は、前述の組成物のいずれかを投与することを含む。
【0023】
本組成物は、患者への局所適用のために、又は表面消毒剤として使用できることが想定されている。さらに、組成物は、嗅覚器系及び呼吸器系に投与するための成分(すなわち、香料)の微生物特性を利用するように処方すること、例えば液体又はミストとして処方することができる。鼻腔及び気道におけるこれらの抗菌性香料の存在は、抗菌性香料による病原体との相互作用のための十分な部位がもたらし、そのことにより感染症を制御又は排除する。
【0024】
さらに、本明細書に開示されている組成物は、スプレー、ミスト、又はそうでなければこれらの香料を空気中に放出して、微生物との空気対空気接触により微生物が引き起こす感染症からの保護層となり、有益な効果及び安全性の向上をもたらすように処方することができる。
【0025】
さらに、本明細書に開示されている組成物は、プロテアーゼ、ヘリカーゼ、及びノイラミニダーゼの阻害を介してエボラやマールブルグなどの病原体によって引き起こされる深刻な流行の蔓延と戦うために、空港、病院、トリアージ施設、即応施設、及び生物防御(bio-defense)対応場所の広く開放された領域での使用を含む様々な用途での展開のために処方することができる。
【0026】
さらに、組成物は、結核の蔓延を防止又は低減するために、空港、飛行機、クルーズ船、入国港、検問所、及び出国港などの移動の集中する空間などで、様々な用途に使用することができる。
【発明を実施するための形態】
【0027】
詳細な説明
本発明は、いくつかの異なる成分を含む特有の組成物を対象とし、その成分の多くは「香料」として分類される。一形態では、組成物は以下の成分とその量
0.25~7%のβ-ピネン、
0.25~25%のボルネオール、
5~30%の桂皮アルデヒド、
0.25~25%のシトラール、
0.25~5%のd-リモネン、
1~10%のユーカリプトール、
1~15%のオイゲノール、
10~30%のファルネソール、
25~50%のリナロール、
0.5~7%のチモール、及び
2~7%のバニリン
を含む。
【0028】
別の形態では、組成物は以下の成分
0.25~3%のβ-ピネン、
0.25~25%のボルネオール、
10~25%の桂皮アルデヒド、
0.25~5%のシトラール、
0.25~5%のd-リモネン、
1~8%のユーカリプトール、
5~15%のオイゲノール、
20~30%のファルネソール
25~50%のリナロール、
0.5~7%のチモール、及び
5~20%のバニリン
を有する。
【0029】
さらに別の形態では、組成物は以下の成分
3~7%のβ-ピネン、
1~5%のボルネオール、
5~20%の桂皮アルデヒド、
1~5%のシトラール、
1~5%のd-リモネン、
5~10%のユーカリプトール、
10~15%のオイゲノール、
10~20%のファルネソール、
30~50%のリナロール、
2~7%のチモール、及び
5~20%のバニリン
を有する。
【0030】
さらに別の形態では、組成物は以下の成分
0.5~5%のβ-ピネン、
1~5%のボルネオール、
10~30%の桂皮アルデヒド、
1~5%のシトラール、
1~5%のd-リモネン、
1~5%のユーカリプトール、
1~7%のオイゲノール、
20~25%のファルネソール、
25~50%のリナロール、
0.5~2%のチモール、及び
2~7%のバニリン
を有する。
【0031】
さらに別の形態では、組成物は以下の成分
1~3%のβ-ピネン、
1~5%のボルネオール、
15~25%の桂皮アルデヒド、
1~3%のd-リモネン、
5~10%のユーカリプトール、
5~15%のオイゲノール、
25~50%のリナロール、
0.5~2%のチモール、及び
5~10%のバニリン
を有する。
【0032】
これらの組成物は、特有の抗菌性及び抗ウイルス性を有する。組成物は、様々な疾患の治療又はその発生を制限し、そして様々な微生物、病原体などを殺すように及び/又はそれらに対する消毒剤として使用するように処方することができる。例えば、組成物は、消毒剤として微生物を殺すために、及びそれぞれの疾患又は病的状態を治療するために患者に投与されるために使用することができる。組成物は、大腸菌、MRSAインフルエンザ、ライノウイルス、及び結核菌を含むがこれらに限定されない様々な病原体に対して有効である。
【0033】
組成物は、患者による使用のための様々な形態で処方することができ、表面消毒剤として使用することができる。したがって、組成物は、表面への適用のためのスプレー又はミストとして処方することができる。さらに、組成物は、患者の局所使用のために処方することができる。さらに別の形態では、製剤は、嗅覚器系又は呼吸器系用の液体又はミストの形態であり得る。
【実施例】
【0034】
実施例
【0035】
以下の実施例は、本組成物及びそれらの使用の追加の理解を提供する。これらの実施例は、いかなる開示の範囲を制限するものではない。
【0036】
実施例1
【0037】
バクテリアのクオラムセンシングの阻害は、β-ピネン、シトラール、d-リモネンなどのテルペンによって、大腸菌やシュードモナス・プチダなどのバクテリア種に対して観察されるようにAHLシステムの阻害のなどの方法でバニリンなどのフェノール類によって、及びシュードモナス・フルオレッセンス、ビブリオ・ハーベイ、及び緑膿菌などのバクテリア種に対して観察されるようにRpfF、LuxS、LasR、ExpL、及びExpRなどのクオラムセンシング受容体に結合することで桂皮アルデヒドやオイゲノールなどのフェノール類によって達成される。
【0038】
実施例2
【0039】
バクテリア複製の阻害は、エンテロバクター・サカザキなどのバクテリア種に対して観察されるように、シトラールなどのテルペンによって達成される。
【0040】
実施例3
【0041】
バクテリアのバイオフィルム形成の阻害は、桂皮アルデヒド、オイゲノール、チモール、及びバニリンなどのフェノール類によって、ならびにエンテロバクター・サカザキ、化膿レンサ球菌、黄色ブドウ球菌(メシチリン耐性系を含む)、アシネトバクター・バウマニ、サルモネラ・セントポール、サルモネラ・エンテリティディス、大腸菌、ビブリオ・アンギララム、ビブリオ属、及びビブリオ・ベルニフィカスなどのバクテリア種に対して観察されるようにシトラール、ファルネソール、及びリナロールなどのテルペンによっても達成される。
【0042】
実施例4
【0043】
さらに、β-ピネン、ボルネオール、シトラール、d-リモネン、ファルネソール、及びリナロールなどのテルペン、ならびにオイゲノール、チモール及びバニリンなどのフェノール類は、大腸菌、緑膿菌、ミラビリス変形菌、クレブシエラ・ニューモニエ、アシネトバクター・バウマニ、黄色ブドウ球菌、エンテロコッカス・フェカリス、及び枯草菌などのバクテリア種に対して効能を有する。
【0044】
実施例5
【0045】
ウイルス侵入の阻害は、インフルエンザウイルス誘発性肺炎に対して観察されるようにICAM-1分子を阻害するユーカリプトールなどのテルペンによって達成することができる。
【0046】
実施例6
【0047】
ウイルス複製の阻害は、HSV-1、インフルエンザA/PR/8、インフルエンザA、黄熱、MNV-1(ヒトノロウイルスの代替)などのウイルス病原体に対して観察されるように、β-ピネン、ボルネオール、シトラール、d-リモネンなどのテルペンによって、ならびに桂皮アルデヒド及びオイゲノールなどのフェノール類によって達成される。
【0048】
実施例7
【0049】
ウイルスの子孫放出の阻害は、ノイラミニダーゼ酵素を阻害するバニリンなどのフェノール類によって達成される。
【0050】
実施例8
【0051】
真菌アポトーシスの誘導は、メタカスパーゼの活性化、活性酸素種の生成、細胞超微細構造の崩壊を引き起こすこと、DNA断片化を引き起こすこと、及びリンゴ青かび病菌などの真菌に対して観察されるようにファルネソール及びリナロールなどのテルペンによるホスファチジルセリンの表出化を誘発することによって達成される。
【0052】
実施例9
【0053】
真菌による有害な毒素の生合成の阻害は、黄色麹菌などの真菌に対して桂皮アルデヒド及びオイゲノールなどのフェノール類によって、ならびにシトラール及びファルネソールなどのテルペンによって、aflR、aflT、aflD、aflM、及びaflP生合成毒素遺伝子の発現をダウンレギュレートすることによって達成される。
【0054】
実施例10
【0055】
イソプレノイドの生合成を防止又は低減することによって寄生生物の代謝系を遮断することは、寄生生物熱帯熱マラリア原虫に対して観察されるように、d-リモネン、ファルネソール、及びリナロールなどのテルペンによって達成される。
【0056】
実施例11
【0057】
プラスメプシンII酵素などの酵素を標的とすることによる寄生生物の酵素機能への干渉は、寄生生物熱帯熱マラリア原虫に対するチモールなどのフェノール類によって達成される。
【0058】
実施例12
【0059】
結核菌の細胞壁を分解することによって結核菌を直接阻害することは、β-ピネン、d-リモネン、及びリナロールなどのテルペン、ならびに桂皮アルデヒド、オイゲノール及びチモールなどのフェノール類によって達成される。
【0060】
実施例12
【0061】
結核菌のLuxR様遺伝子及びタンパク質を標的とすることによるバイオフィルム及びクオラムセンシング機能の阻害は、β-ピネン、d-リモネン及びリナロールなどのテルペン、ならびに桂皮アルデヒド、オイゲノール、及びチモールなどのフェノール類によって達成することができる。
【0062】
好ましい実施形態
以下の好ましい実施形態の例は、本組成物のさらなる理解のために提供される。
【0063】
以下F1として参照される1つの好ましい実施形態では、組成物は、5%以下及び0.5%以上のβ-ピネン、5%以下及び1%以上のボルネオール、30%以下及び10%以上の桂皮アルデヒド、5%以下及び1%以上のシトラール、5%以下及び1%以上のd-リモネン、5%以下及び1%以上のユーカリプトール、7%以下及び1%以上のオイゲノール、25%以下及び20%以上のファルネソール、50%以下及び25%以上のリナロール、2%以下及び0.5%以上のチモール、及び7%以下及び2%以上のバニリンからなる。
【0064】
以下F2として参照される組成物において、3%以下及び0.025%以上のβ-ピネン、3%以下及び0.25%以上のボルネオール、25%以下及び10%以上の桂皮アルデヒド、5%以下及び0.25%以上のシトラール、5%以下及び0.25%以上のd-リモネン、8%以下及び1%以上のユーカリプトール、15%以下及び5%以上のオイゲノール、30%以下及び20%以上のファルネソール、50%以下及び25%以上のリナロール、2%以下及び0.5%以上のチモール、及び10%以下及び5%以上のバニリンからなる。
【0065】
以下F3として参照されるさらに別の組成物において、7%以下及び3%以上のβ-ピネン、5%以下及び1%以上のボルネオール、20%以下及び5%以上の桂皮アルデヒド、5%以下及び1%以上のシトラール、5%以下及び1%以上のd-リモネン、10%以下及び5%以上のユーカリプトール、15%以下及び10%以上のオイゲノール、20%以下及び10%以上のファルネソール、50%以下及び30%以上のリナロール、7%以下及び2%以上のチモール、及び20%以下及び5%以上のバニリンからなる。
【0066】
好ましい実施形態F1、F2、及びF3の独立したアッセイは、以下の結果となる:
【表1】
MIC
99は、病原体の99%を除去するために観察された試験品の最小阻害濃度である。
【0067】
本発明の原理の理解を促進する目的で、本発明は様々な実施形態に関して説明されており、その様々な修正は、本明細書を読むと当業者には明らかであることを理解されたい。本明細書に記載の物品の様々な実施形態の特徴は、物品内で組み合わせることができる。したがって、本明細書に記載の発明は、添付の特許請求の範囲に含まれるような変更をカバーすることを意図していることを理解されたい。
【国際調査報告】