(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置および方法
(51)【国際特許分類】
G01M 10/00 20060101AFI20220125BHJP
【FI】
G01M10/00
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2020544951
(86)(22)【出願日】2020-02-28
(85)【翻訳文提出日】2020-08-26
(86)【国際出願番号】 CN2020077094
(87)【国際公開番号】W WO2021128575
(87)【国際公開日】2021-07-01
(31)【優先権主張番号】201911361342.5
(32)【優先日】2019-12-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】513324321
【氏名又は名称】大連理工大学
(74)【代理人】
【識別番号】110002262
【氏名又は名称】TRY国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】年 廷凱
(72)【発明者】
【氏名】呉 昊
(72)【発明者】
【氏名】趙 維
(72)【発明者】
【氏名】李 東陽
(72)【発明者】
【氏名】鄭 ▲とく▼鳳
【テーマコード(参考)】
2G023
【Fターム(参考)】
2G023BA01
2G023BB01
2G023BC06
2G023BD11
(57)【要約】
【要約】本発明は岩土工事および工事地質の技術分野に属し、地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置および方法を提供する。当該装置は1セットの地すべり動力条件シミュレーションシステム、1セットの水動力条件シミュレーションシステムおよび1セットの非接触型測定システムを含む。地すべり動力条件シミュレーションシステムは、複数種類の地すべり塊の材料、地すべりの速度、地すべりの経路の幅、長さおよび傾斜角度をシミュレーションすることができ;水動力条件シミュレーションシステムは水流量、水流速、河道の傾斜角および河床の性質などの複数項目の水動力条件をシミュレーションすることができ;実験装置に配設される非接触型測定システムは単一の接触型点測定から全域の非接触型測定が実現でき、測定方法は精度が高くて便利である。本発明は構造が簡単であり、使用が便利であり、地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖の研究に確実的な室内実験シミュレーション装置および方法を提供する。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置であって、1セットの地すべり動力条件シミュレーションシステム、1セットの水動力条件シミュレーションシステムおよび1セットの非接触型測定システムを含み;
前記地すべり動力条件シミュレーションシステムはジャッキ(7)、地すべり槽(8)、貯蔵箱(9)、地すべり槽阻止板(10)、クレーンビーム(11)および昇降モータ(12)を含み、
前記の地すべり槽(8)は「U」型槽構造に類似し、地すべりの摺動経路をシミュレーションするために用いられ;
前記ジャッキ(7)、クレーンビーム(11)および昇降モータ(12)は地すべり槽(8)の傾斜角度を固定し調整するために用いられ、具体的には、地すべり槽(8)の前端下部はジャッキ(7)と接続され、ジャッキ(7)の標高を調整することで、地すべり槽(8)の前段を水槽(2)に位置合わせ;
地すべり槽(8)の後端上部はクレーンビーム(11)および昇降モータ(12)と接続され、
昇降モータ(12)の吊り紐および昇降モータ(12)のクレーンビーム(11)トラックレールでの位置を調整することで、地すべり槽(8)が水平面に対して0~90°の任意の傾斜角度を実現可能にし、地すべりの経路の傾斜角をシミュレーションするという目的に達し;
前記貯蔵箱(9)は地すべり塊材料を置くために用いられ、地すべり槽(8)上の任意の位置に置かれ、地すべりの幅と地すべりの経路の長さに基づいて異なる規格の貯蔵箱(9)を交換し;
前記の地すべり槽阻止板(10)は「L」型構造であり、地すべり槽(8)の長辺方向と平行に地すべり槽(8)の底面に固定され、地すべり槽(8)の一側面とともに地すべりの経路の幅を構成し、地すべり槽阻止板(10)の地すべり槽(8)の底面での位置が調整可能であり;
前記水動力条件シミュレーションシステムは、給水塔(1)、水槽(2)、管路遠心水ポンプ(3)、貯水タンク(4)および固定ホルダ(6)を含み;
前記管路遠心水ポンプ(3)は給水管が貯水タンク(4)と接続され、出水管が給水塔(1)と接続され;
前記固定ホルダ(6)は、上方プラットフォーム(6-1)、複数のねじ棒(6-2)、ナット(6-3)および底部プラットフォーム(6-4)を含み、ねじ棒(6-2)の底部は底部プラットフォーム(6-4)に固着され、プラットフォーム(6-1)はねじ棒(6-2)に置かれるとともに(6-3)ナットにより固定され、ナット(6-3)を回転することによってプラットフォーム(6-1)の傾斜角度を調整し、底部プラットフォーム(6-4)は貯水タンク(4)内に置かれ、給水塔(1)と水槽(2)はプラットフォーム(6-1)の左側に置かれ、水槽(2)の傾斜角度はプラットフォーム(6-1)の傾斜角度で調整され、地すべり動力条件シミュレーションシステムは水槽(2)の一方側に置かれ;
前記の給水塔(1)の一側面の底部に出水口(1-2)が設けられ、出水口(1-2)の上方に水流量を調節するための出水口バッフル(1-1)が設けられ、出水口(1-2)は水槽(2)と連通し;給水塔(1)の他側面の垂直方向に位置が調整可能な給水塔槽バッフル(1-3)が設けられ;
前記の貯水タンク(4)内に、貯水タンク(4)を左右両部分に分けるとともに、使用過程で貯水タンク(4)の左右両部分の水流が連通しない貯水タンク仕切り板(16)が設けられ;給水塔(1)における出水口(1-2)の大きさと給水塔槽バッフル(1-3)の位置を設置することで水流量と流速を調節し;
管路遠心水ポンプ(3)は貯水タンク(4)から水を給水塔(1)まで汲み上げ、水が出水口(1-2)から水槽(2)に流入し、余分な水は給水塔槽バッフル(1-3)の頂部から溢れて貯水タンク(4)に流入し、一定の水頭を形成し、出水口(1-2)から流出した水の水流量と流速が安定であり;
前記の水槽(2)の右側先端の下方にバスケット(5)が設けられ、バスケット(5)の表面に複数のホールが設けられ、最大のホールのサイズは地すべり塊材料の最小直径よりも小さく、水流に流されて持ち去れたすべての地すべり塊材料を収集するために用いられ;
前記のバスケット(5)の上方は引張センサ(14)と接続され、引張センサ(14)のデータを分析することで、堰塞ダムのダム崩壊過程での土砂遷移質量の時間的変化曲線を取得し;
前記の貯水タンク(4)は貯水タンク仕切り板(16)に分割された右側区域の底部に水位センサ(15)が置かれ、実験過程での水位変化を記録し、堰塞ダムのダム崩壊過程で生じる洪水流量特徴を取得し;
前記非接触型測定システムはコンピュータと5台のスポーツカメラ(13)からなり、スポーツカメラ(13)により実験過程での二次元図像を収集し、無線データを介してコンピュータに伝送され;
前記の5台スポーツカメラ(13)は、1台のスポーツカメラ(13)が地すべり槽(8)を平行に撮像するために用いられ、残りの4台のスポーツカメラ(13)が、地すべり塊が水槽(2)に入る区域を垂直に撮像するために用いられ、それぞれのカメラにより撮像された画面オーバーラップ度が60%を超えるように配置される地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置。
【請求項2】
前記の地すべり槽(8)は有機ガラスであり、地すべり槽阻止板(10)の材料は全て有機ガラスである
ことを特徴とする請求項1に記載の地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置。
【請求項3】
前記の給水塔(1)の他側面に垂直方向の開口構造が設けられ、開口構造のエッジに固定クリップ(1-5)が取り付けられ、固定クリップ(1-5)、長尺状の給水塔槽バッフル(1-3)には均等に複数のねじ孔(1-4)が設けられ、給水塔槽バッフル(1-3)は固定クリップ(1-5)の底部から挿入され、ねじ挿入位置を制御して給水塔槽バッフル(1-3)の位置を調節する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置。
【請求項4】
地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験方法であって、以下のステップを含み:
第1ステップであって、実験方案におけるシミュレーションする必要がある地すべりの幅に基づいて地すべり槽阻止板(10)の位置を調整し;シミュレーションする必要がある地すべりの経路の長さと地すべりの体積に基づいて、対応する型番の貯蔵箱(9)を選択するとともに、それを地すべり槽(8)上における対応する位置に固定し;実験方案に基づいて対応する地すべり塊材料を選択し、異なる地すべり塊の性質をシミュレーションし;上記の操作を完成した後で、選択した地すべり塊材料を貯蔵箱(9)に入れるステップ;
第2ステップであって、水槽(2)に必要な角度に基づいて固定ホルダ(6)の傾斜角度を調整し、河道の傾斜角をシミュレーションし;地すべり槽(8)の前段を水槽(2)に完全に重ね合わせるようにジャッキ(7)の高さを調整し;地すべり槽(8)が実験に必要な傾斜角度を有するように、昇降モータ(12)を調整し、地すべりの経路の傾斜角度をシミュレーションするステップ;
第3ステップであって、必要な開口量まで出水口バッフル(1-1)を開け;その後、貯水タンク仕切り板(16)の左側を水で満たし、管路遠心水ポンプ(3)の水源供給とし;続いて、給水塔槽バッフル(1-3)を必要な高さに調整し;
第4ステップであって、バスケット(5)、スポーツカメラ(13)、引張センサ(14)および水位センサ(15)を配置するステップ;
第5ステップであって、管路遠心水ポンプ(3)をオンにし、給水塔(1)における水位は給水塔槽バッフル(1-3)の設定高さまで上昇して水が溢れ、出水口(1-2)から流出した水流が水槽(2)で実験時に必要な一定の水流流量を形成し、河道の一定の水流量をシミュレーションし;その後、貯蔵箱(9)を開けて地すべり塊材料を開放し、地すべりの運動過程をシミュレーションし;最後に、地すべり塊材料が水槽(2)に入り、地すべり堰塞ダムを形成し;実験が進むにつれて、形成された地すべり堰塞ダムがダム崩壊を発生しさらにダム崩壊洪水を引起すことが観察できるステップ;
第6ステップであって、実験データを分析し、河道閉塞の時間、ダム崩壊の洪水流量、ダム崩壊過程での土砂質量遷移の特徴および地すべり堰塞ダムの幾何形態の変化の特徴をシミュレーションして取得し;
6.1)地すべり槽(8)を平行に撮像するスポーツカメラ(13)のデータから、粒子画像流速測定法に基づいて地すべり塊の速度場を測定し、地すべりの速度変位の特徴を取得し;
6.2)水位センサ(15)に基づいて分析し貯水タンク(4)における水位の上昇停止と水位の上昇回復の時刻を取得し、地すべり塊が水槽(2)を閉塞する時間を取得し、この時間は、河道閉塞の時間であり;続いて、貯水タンク(4)における水位上昇の回復の時刻から水槽(2)における地すべり塊が流され終わるまでの時刻の区間に、水位センサ(15)に記録される貯水タンク(4)における水位上昇の時間に伴う関係を分析することによって、ダム崩壊洪水の流量を取得し;この時間の区間内に、引張センサ(14)は、バスケット(5)に收集されたダム崩壊の物質質量の時間に伴う変化関係であるダム崩壊過程での土砂質量遷移の特徴を記録し;最後に、異なる時刻で水槽(2)を監視する4台のスポーツカメラ(13)の同一時刻の二次元画像を抽出し、運動からの構造復元アルゴリズムに基づいて、この時刻に水槽(2)に入る地すべり塊の三次元形態を復元し、異なる時刻で、水槽(2)における地すべり塊材料の幾何特徴を取得し、異なる時刻での地すべり塊の三次元形態を比較することによって、分析して水流による流し侵食作用の下で地すべり堰塞ダムの幾何形態の時間とともに変化する特徴を取得するステップ;および、
第7ステップであって、第3ステップで給水塔槽バッフル(1-3)の高さと出水口バッフル(1-1)の開口量を調整することによって、他の一定の水頭と一定の水流組合せを取得し;第4から第6ステップを繰返して、複数グループの実験シミュレーション工事を完成するステップ
を含むことを特徴とする地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は岩土工事および工事地質の技術分野に属し、特に地すべりで滑り落ちた土砂による河道閉塞の進化全過程の物理実験シミュレーションの研究分野に関し、現在、地すべり動力条件と水動力条件を同時にシミュレーションできるものが欠乏しており、かつ、実験データの収集が困難であることに対して、地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置および方法を提起している。
【背景技術】
【0002】
山間部の川沿いの両岸の大型斜面体や高い斜面は、地震、豪雨などの災害負荷の下で破壊とアンバランスが起こりやすく、地すべり塊は一定の速度や高速で渓谷方向に運動し、運動中に各種抵抗によって動力が絶えず減少し、最後に河床の中のある位置に止まったり、対岸に達して山体と衝突して崩壊や分解したりして、地すべりで滑り落ちた土砂による河道閉塞を引起すとともに堰塞ダムを形成する。堰塞ダムは寿命が極めて短く、一連の二次地質災害を誘発し、地域的な大型地質災害連鎖を引き起こすことが多く、その形成と崩壊は大量の人員死傷と財産損失を引き起こし、川沿いの大型水利工事、水力発電施設、交通水上運輸、道路鉄道などの工事の分野の建設と運営に大きな危害をもたらす。
【0003】
中国西南地区は、強い地震活動帯にあり、山が縦横し、水系が密集し、川の侵食作用が強く、河床と両側の山体との段差が顕著で、各種類の環境負荷の下で、地すべり堰塞ダムを非常に形成しやすい。西部大開発戦略の実施に伴い、各種の大型インフラ(例えば、南水北調西線、「三江地区」水電開発、西電東送、西気東送、川蔵鉄道と西部地区高速道路網など)が建設済み、建設中、あるいは国家発展企画に入れられ、この地区は更に深刻な大型地すべり堰塞ダムの災害の問題に直面する。
【0004】
災害による損失をできるだけ小さくするためには、地すべりで滑り落ちた土砂による河道閉塞の形成および進化全過程について系統的な研究を展開する必要がある。中国の実用新案特許明細書CN 206594138 Uには、地すべりダムの形態的特徴を研究するシミュレーション装置が開示されており、このモデル装置は異なる地すべり条件、例えば、地すべり速度、地すべり角度および地すべり塊の幾何特徴、地すべり堰塞ダムの形態的特徴への影響をシミュレーションすることができる。
【0005】
上記開示された特許では、地すべり動力条件に対するシミュレーションが実現されているが、地すべりで滑り落ちた土砂による河道閉塞の過程は重要な水力学条件に関することが多く、現在開示された特許について、地すべり動力条件と水動力条件を同時にシミュレーションすることができる実験装置がない。このため、実験室の環境で地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖の形成という進化全過程に対するシミュレーションを実現できる新しい実験装置と実験方法が求められている。
【発明の概要】
【0006】
現在、地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置および方法が欠乏していることに対して、本発明が解决しようとする技術課題は、異なる地すべり動力学条件と水動力学条件をシミュレーションすることができる実験装置を提起すると同時に、当該実験装置が効率的な非接触型測定システムを含むことである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の目的を実現するために、本発明は以下の技術的手段を用いる。
【0008】
地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置であって、該装置は、1セットの地すべり動力条件シミュレーションシステム、1セットの水動力条件シミュレーションシステムおよび1セットの非接触型測定システムを含む。
【0009】
前記地すべり動力条件シミュレーションシステムは、ジャッキ7、地すべり槽8、貯蔵箱9、地すべり槽阻止板10、クレーンビーム11および昇降モータ12を含む。前記の地すべり槽8は有機ガラス材料で作製され、「U」 型槽構造に類似し、地すべりの摺動経路をシミュレーションするために用いられ、地すべり槽8の水平面に対する傾斜角度は、0~90°の任意の角度の調整が実現できる。前記ジャッキ7、クレーンビーム11および昇降モータ12は、地すべり槽8の傾斜角度を固定し調整するために用いられ、具体的には、前記の地すべり槽8はジャッキ7と昇降モータ12によってそれぞれ前後の両端が固定される;ジャッキ7の標高を調整することで、地すべり槽8の前段を水槽2に位置合わせる。昇降モータ12の吊り紐および昇降モータ12のクレーンビーム11のトラックレールでの位置を調整することで、地すべり槽8が水平面に対して0~90°の任意の傾斜角度を有するようにし、地すべりの経路の傾斜角をシミュレーションするという目的に達する。前記貯蔵箱9は予め地すべり塊材料を置くことに用いられ、地すべり槽8の任意の位置に置かれ、地すべりの幅と地すべりの経路の長さに基づいて異なる規格の貯蔵箱9を交換する。前記の地すべり槽阻止板10は、有機ガラス材料で作製され、「L」型構造であり、地すべり槽8の長辺方向に平行に置かれるとともに地すべり槽8の底面に固定され、地すべり槽8の一側面とともに地すべりの経路の幅を構成し、即ち、地すべり槽阻止板10と地すべり槽8の一側面とともに地すべり塊材料の運動幅を規制することによって、地すべりの幅をシミュレーションするという目的に達する。前記の地すべり槽阻止板10は実験の要求に応じて、地すべり槽8の短辺方向での位置を調整することによって、地すべりの幅を調整するという目的に達するとともに、「L」型構造の設計により地すべり槽阻止板10が地すべり塊の摺動過程でずれないように確保し、地すべりの幅の安定性を確保する。
【0010】
前記水動力条件シミュレーションシステムは給水塔1、水槽2、管路遠心水ポンプ3、貯水タンク4および固定ホルダ6を含む。前記管路遠心水ポンプ3は管路遠心ポンプを選択し、管路遠心水ポンプ3の給水管は貯水タンク4と接続され、出水管は給水塔1と接続される。前記固定ホルダ6は、上方プラットフォーム6-1、複数のねじ棒6-2、ナット6-3および底部プラットフォーム6-4を含み、ねじ棒6-2の底部は底部プラットフォーム6-4に固着され、プラットフォーム6-1はねじ棒6-2に置かれるとともにナット6-3により固定され、ナット6-3を回転することでプラットフォーム6-1の傾斜角度を調整し、上方プラットフォーム6-1と底部プラットフォーム6-4との間の距離を調整してもよく、ここで、底部プラットフォーム6-4は4本の角パイプで溶接されてなる。前記の給水塔1の一側面の底部に出水口1-2が設けられ、出水口1-2の上方に、水流量を調節するための出水口バッフル1-1が設けられ、出水口1-2は水槽2と連通する;給水塔1の他側面に垂直方向の開口構造が設けられ、開口構造のエッジに固定クリップ1-5が取り付けられ、固定クリップ1-5、長尺状の給水塔槽バッフル1-3には均等間隔にねじ孔1-4が設けられ、給水塔槽バッフル1-3は固定クリップ1-5の底部から挿入され、ねじ挿入位置を制御して給水塔槽バッフル1-3の位置を調節し、さらに貯水タンク4の左側領域を放水する。前記給水塔1と水槽2は固定ホルダ6のプラットフォーム6-1の左側に置かれ、固定ホルダ6の底部プラットフォーム6-4は貯水タンク4内に置かれる。貯水タンク4内に、貯水タンク4を左右の両部分に分けるとともに、使用過程で貯水タンク4の左右両部分の水流が連通しない貯水タンク仕切り板16が設けられる。前記の水流量と流速は給水塔1上の出水口1-2の大きさと給水塔1の棒状槽の給水塔槽バッフル1-3の高さを設置することで調節される。前記の水槽2の傾斜角度はプラットフォーム6-1の傾斜角度で調整され、地すべり動力条件シミュレーションシステムは水槽2側に置かれる。管路遠心水ポンプ3は貯水タンク4から水を汲んで給水塔1に搬送し、給水塔槽バッフル1-3には一定の水止め高さが設定されているため、余分な水が給水塔1から溢れて貯水タンク4に流入すると、一定の水頭を形成し、出水口1-2から流出する水の水流量と流速を安定させるように確保する。前記の水槽2の右側先端の下方にバスケット5が設けられ、バスケット5の表面に複数のホールが設けられ、最大のホールのサイズは地すべり塊材料の最小直径よりも小さく、水流に流され持ち去れたすべての地すべり塊材料を収集することができるように確保する;前記のバスケット5の上方は引張センサ14と接続され、引張センサ14のデータを分析することで、堰塞ダムのダム崩壊過程での土砂遷移質量の時間的変化曲線を取得する。前記の貯水タンク4は貯水タンク仕切り板16に分割された右側領域の底部に水位センサ15が置かれ、実験過程での水位変化を記録して、さらに堰塞ダムのダム崩壊過程で生じる洪水流量特徴を取得する。
【0011】
前記非接触型測定システムはコンピュータと5台のスポーツカメラ13からなり、スポーツカメラ13は全てコンピュータと接続される。スポーツカメラ13により実験過程の二次元画像を収集し、無線データを介してコンピュータに伝送される。前記の5台スポーツカメラ13は、1台のスポーツカメラ13が地すべり槽8を平行に撮像するために用いられ、取得した図像データが粒子画像流速測定法(PIVアルゴリズム)に基づいて地すべり塊の速度場を測定し、別の4台のスポーツカメラ13により地すべり塊が水槽2に入る領域を垂直に撮像し、それぞれのカメラの撮像した画面のオーバーラップ度は60%を超える必要があり、それぞれのカメラの同一時刻の二次元画像を抽出するとともに、運動からの構造復元アルゴリズム(SfMアルゴリズム)に基づいて、この時刻で水槽2に入る地すべり塊の三次元形態を復元するように配置される。複数の時刻での地すべり塊の三次元形態の比較により、分析して水流による流し侵食作用の下で地すべり堰塞ダムの形態特徴の時間とともに変化する特徴を取得する。前記のPIVアルゴリズムとSfMアルゴリズムは成熟したコンピュータ視覚技術アルゴリズムであり、ここで初めてそれを非接触型測定手段として地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化の研究に適用する。
【0012】
地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験方法は以下のステップを含み、
第1ステップであって、実験方案におけるシミュレーションする必要がある地すべりの幅に基づいて地すべり槽阻止板10の位置を調整し、シミュレーションする必要がある地すべりの経路の長さと地すべりの体積に基づいて、対応する型番の貯蔵箱9を選択するとともに、それを地すべり槽8上における対応する位置に固定する。実験方案に基づいて対応する地すべり塊材料を選択し、異なる地すべり塊の性質をシミュレーションする。上記の操作を完成した後で、選択した地すべり塊材料を貯蔵箱9に入れる。
【0013】
第2ステップであって、水槽2に必要な角度に基づいて固定ホルダ6の傾斜角度を調整し、河道の傾斜角をシミュレーションする。地すべり槽8の前段を水槽2に完全に重ね合わせるようにジャッキ7の高さを調整する。地すべり槽8が実験に必要な傾斜角度を有するように、昇降モータ12を調整し、地すべりの経路の傾斜角度をシミュレーションする。
【0014】
第3ステップであって、必要な開口量まで出水口バッフル1-1を開ける。その後、貯水タンク仕切り板16の左側を水で満たし、管路遠心水ポンプ3の水源供給とする。続いて、給水塔槽バッフル1-3を必要な高さに調整する。
【0015】
第4ステップであって、バスケット5、スポーツカメラ13、引張センサ14および水位センサ15を配置する。
【0016】
第5ステップであって、管路遠心水ポンプ3をオンにし、給水塔1における水位が給水塔槽バッフル1-3の設定高さまで上昇して水が溢れると、出水口1-2から流出した水流は水槽2で実験時に必要な一定の水流流量を形成し、河道の一定の水流量をシミュレーションする;その後、貯蔵箱9を開けて地すべり塊材料を開放し、地すべりの運動過程をシミュレーションする;最後に、地すべり塊材料が水槽2に入り、地すべり堰塞ダムを形成している。実験が進むにつれて、形成された地すべり堰塞ダムがダム崩壊を発生しさらにダム崩壊洪水を引起すことが観察できる。
【0017】
第6ステップであって、実験データを分析し、河道閉塞の時間、ダム崩壊の洪水流量、ダム崩壊過程の土砂質量遷移の特徴と地すべり堰塞ダムの幾何形態の変化の特徴を取得する。
【0018】
6.1)地すべり槽8を平行に撮像するスポーツカメラ13のデータから、地すべりの速度変位の特徴を取得する。
【0019】
6.2)水位センサ15に基づいて分析して貯水タンク4における水位の上昇停止と水位の上昇回復の時刻を取得することによって、地すべり塊が水槽2を閉塞する時間を取得し、この時間は、河道閉塞の時間である。続いて、貯水タンク4における水位上昇の回復の時刻から水槽2における地すべり塊が流され終わるまでの時刻の区間に、水位センサ15に記録される貯水タンク4における水位上昇の時間に伴う関係を分析することによって、ダム崩壊洪水の流量を取得する。この時間の区間内に、引張センサ14は、バスケット5に收集されたダム崩壊の物質質量の時間に伴う変化関係であるダム崩壊過程の土砂質量遷移の特徴を記録する。最後に、異なる時刻で水槽2を監視する4台のスポーツカメラ13の同一フレームの画面を抽出し、異なる時刻で、水槽2における地すべり塊材料の幾何特徴を取得し、異なる時刻でのこの種類の材料の堆積高さ、長さを比較し、地すべり堰塞ダムの幾何形態の変化の特徴を取得する。
【0020】
第7ステップであって、第3ステップで給水塔槽バッフル1-3の高さと出水口バッフル1-1の開口量を調整することによって、他の一定の水頭と一定の水流組合せを取得する。第4から第6ステップを繰返して、複数グループの実験シミュレーション工事を完成する。
【0021】
本発明の動作原理(革新点)は、先ず、地すべり槽阻止板10の地すべり槽8での位置を変更することによって複数種類の地すべりの幅をシミュレーションする;貯蔵箱9内の材料を変更することによって複数種類の地すべり塊のタイプをシミュレーションする;貯蔵箱9の大きさおよび地すべり槽8での位置を変更することによって、複数種類の摺動経路の距離と地すべり塊の体積量をシミュレーションする;クレーンビーム11および昇降モータ12を調整することによって、地すべり槽8の角度の変化を実現し、複数種類の地すべりの経路の傾斜角をシミュレーションする。次に、給水塔槽バッフル1-3の高さを変更することによって、給水塔1内の複数種類の一定の水頭を実現する;給水塔槽バッフル1-3の高さと出水口バッフル1-1の位置を調整することによって、複数種類の水流量と水流速度をシミュレーションする;水槽2で河道をシミュレーションするとともに、ねじ棒6-2を調整して、プラットフォーム6-1の複数種類の傾斜角を実現することによって、複数種類の河道の傾斜角をシミュレーションする。最後に、配置される5台のスポーツカメラ13で、粒子画像流速測定法(PIV)と運動からの構造復元アルゴリズム(SfM)に基づいて実験過程での地すべり塊の速度場と堰塞ダム形成進化全過程の形態特徴を取得する。
【発明の効果】
【0022】
本発明特許の有益な効果は下記の通りである。
【0023】
(1)当該装置は、実験室環境内で地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化する全過程をシミュレーションすることを実現する;
(2)当該装置は、地すべり塊材料の性質、摺動経路の距離、摺動経路の幅、地すべりの経路の傾斜角度および地すべり速度などの複数種類の地すべり動力条件をシミュレーションすることができる;
(3)当該装置は水流量、水流速、河道の傾斜角および河床の性質等の複数項目の水動力条件をシミュレーションすることができる;
(4)当該実験装置に1セットの非接触型測定システムが配設され、単一の接触型点測定から全域の非接触型測定が実現でき、測定方法は精度が高くて便利である。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【
図1】地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置の三次元模式図である。
【
図2】地すべり槽、貯蔵箱および地すべり槽阻止板の三次元模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、技術的手段と図面を組み合わせて本発明を実施するための形態を詳しく説明する。
【0026】
図1に示すように、前記の地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置は1セットの地すべり動力条件シミュレーションシステム、1セットの水動力条件シミュレーションシステムおよび1セットの非接触型測定システムからなる。
【0027】
前記の地すべり動力条件シミュレーションシステムはジャッキ7、地すべり槽8、貯蔵箱9、地すべり槽阻止板10、クレーンビーム11および昇降モータ12からなる。前記地すべり槽8は長さ1200mm、幅600mm、高さ 500mmであり、厚みの20mmの有機ガラス材料で作製されてなる。前記貯蔵箱9は厚みの10mmの有機ガラスで作製されてなり、貯蔵箱9は地すべり槽8での任意の位置に置かれてもよく、地すべりの幅と地すべりの経路の長さによって、異なる規格の貯蔵箱を交換することができる。前記地すべり槽阻止板10は長さ1200mm、高さ500mmであり、厚みの20mmの有機ガラス材料で作製されてなる。前記の地すべり槽8はジャッキ7と昇降モータ12によってそれぞれ前後両端が固定される。ジャッキ7の標高を調整することによって、地すべり槽8の前段を水槽2に位置合わせる。昇降モータ12の吊り紐および昇降モータ12のクレーンビーム11トラックレールでの位置を調整することで、地すべり槽8がある傾斜角度を有するようにし、地すべりの経路の傾斜角度をシミュレーションするという目的に達する。地すべり槽阻止板10は地すべり槽8の任意の位置に固定されてもよいため、地すべり槽阻止板10と地すべり槽8の一側面とともに地すべり塊材料の運動幅を規制することによって、地すべりの幅をシミュレーションするという目的に達する。貯蔵箱9は予め地すべり塊材料を置くことに用いられ、複数種類の型番サイズを具備し、地すべりの幅に基づいて対応する型番の貯蔵箱9を交換することができる。
【0028】
前記の水動力条件シミュレーションシステムは、給水塔1、水槽2、水ポンプ3、貯水タンク4、バスケット5、固定ホルダ6および貯水タンク仕切り板16からなる。前記給水塔1は高さ1600mm、長さ500mm、幅500mmである。前記給水塔1の一方側に1本の幅200mmの棒状槽が開設されている。前記水槽2は有機ガラス板で作製されてなり、水槽2は厚さ20mm、長さ4600mm、幅300mm、高さ200mmである。前記貯水タンク4は長さ5000mm、幅 800mm、高さ600mmである。前記の貯水タンク4は1枚の貯水タンク仕切り板16を有する。貯水タンク仕切り板16の左側は主に給水塔1に必要な水を貯留し、貯水タンク仕切り板16の右側は主に水槽2の先端から流出した水を收集する。貯水タンク仕切り板16の左右両側の水は互いに流通できない。前記の給水塔1は水槽2と接続されるとともに固定ホルダ6に固定され、上記の3つの部材は一緒に貯水タンク4内に置かれる。地すべり動力条件シミュレーションシステムは水槽2の一方側に置かれ、ここに地すべり槽8は水槽2の先端から1000mm離れる。管路遠心水ポンプ3は貯水タンク4の外に置かれ、管路遠心水ポンプ3の給水管は貯水タンク4と接続され、管路遠心水ポンプ3の出水管は給水塔1と接続される。
【0029】
前記の非接触型測定システムは5台の同一型番のスポーツカメラ13と1台のノートパソコンからなる。スポーツカメラ13は、1台のスポーツカメラ13が地すべり槽8を平行に撮像し、4台のスポーツカメラ13が地すべり塊の川に入る領域を垂直に撮像するように配置される。カメラの撮像した図像は無線LANを介してコンピュータ端末に伝送される。地すべり槽8を平行に撮像した図像データはPIV技術により地すべり塊の速度場を測定する。地すべり塊の川に入る領域を垂直に撮像した図像データはSfMアルゴリズムにより水流による流し侵食作用で時間とともに変化する堰塞ダム形態特徴を取得する。
【0030】
図2に示すように、前記の地すべり槽8は有機ガラス材料で矩形断面槽に作製された。前記の地すべり槽阻止板10は有機ガラス材料で「L」型構造に作製された。前記の地すべり槽阻止板10は地すべり槽8の長辺方向に平行に置かれるとともに地すべり槽8に固定され、地すべり槽8の一側面とともに地すべりの経路の幅を構成し、即ち、地すべり槽阻止板10と地すべり槽8の一側面とともに地すべり塊材料の運動幅を規制することによって、地すべりの幅をシミュレーションするという目的に達する。前記の地すべり槽阻止板10は実験の必要に応じて、地すべり槽8の短辺方向での位置を調整することによって、地すべりの幅を調整するという目的に達するとともに、「L」型構造の設計により地すべり槽阻止板10が地すべり塊の摺動過程でずれないように確保し、地すべりの幅の安定性を維持する。
【0031】
図3に示すように、前記の給水塔1は出水口バッフル1-1、出水口1-2、給水塔槽バッフル1-3、ねじ孔1-4および固定クリップ1-5からなる。給水塔の一方側に1本の幅200mmの棒状槽が開設され、棒状槽に給水塔槽バッフル1-3、ねじ孔1-4および固定クリップ1-5が設けられる。給水塔槽バッフル1-3の高さを調整することによって、給水塔1における最大の貯水量を調整することができる。ねじ孔1-4と固定クリップ1-5は調整された給水塔槽バッフル1-3を固定するために用いられる。給水塔1の一方側に幅300mmと高さ150mの出水口1-2が開設されている。1枚の出水口バッフル1-1を設けることで出水口1-2の高さを調整することによって、出水の断面積を調整するという目的に達する。十分に大きな管路遠心水ポンプ3は貯水タンク4から水を汲んで給水塔1に搬送し、出水口バッフル1-1は一定の水止め高度が設けられるため、余分な水は給水塔1から溢れて貯水タンク4に流入すると、一定の水頭が形成され、出水口1-2から流出した水の水流量と流速の安定性を確保する。
【0032】
図4に示すように、前記の固定ホルダ6はプラットフォーム6-1および6本の長さ1200mm、直径20mmのねじ棒6-2からなる。プラットフォームの高さはねじ棒における6-3ナットを回転することで任意に調節可能である。したがって、必要に応じて、プラットフォームの傾斜角度を調整し、さらに、水槽2の傾斜角度を調整するという目的に達する。
【0033】
また、
図1に示すように、1台の引張センサ14と1台の水位センサ15をそれぞれ配置し実験過程のデータを収集する。引張センサ14は水槽2の先端に置かれたバスケット5と接続される。バスケット5の最大のホールのサイズは地すべり塊の材料の最小直径よりも小さく、水流に流され持ち去れたすべての地すべり塊材料を収集することを確保する。引張センサ14のデータを分析することで、堰塞ダムのダム崩壊過程での土砂遷移質量の時間的変化曲線を取得する。水位センサ15は4-貯水槽の底部に置かれ、実験過程での水位変化を記録して、さらに堰塞ダムのダム崩壊過程で生じる洪水流量特徴を取得する。
【0034】
上記の実験装置の実現に基づいて、地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験方法は以下のステップを含み、
第1ステップであって、実験方案におけるシミュレーションする必要がある地すべりの幅に基づいて地すべり槽阻止板10の位置を調整し、シミュレーションする必要がある地すべりの経路の長さと地すべりの体積に基づいて、対応する型番の貯蔵箱9を選択するとともに、それを地すべり槽8上における対応する位置に固定する。実験方案に基づいて対応する地すべり塊材料を選択し、異なる地すべり塊の性質をシミュレーションする。上記の操作を完成した後で、選択した地すべり塊材料を貯蔵箱9に入れる。
【0035】
第2ステップであって、水槽2に必要な角度に基づいて固定ホルダ6の傾斜角度を調整し、河道の傾斜角をシミュレーションする。地すべり槽8の前段を水槽2に完全に重ね合わせるようにジャッキ7の高さを調整する。地すべり槽8が実験に必要な傾斜角度を有するように、昇降モータ12を調整し、地すべりの経路の傾斜角度をシミュレーションする。
【0036】
第3ステップであって、必要な開口量まで出水口バッフル1-1を開ける。その後、貯水タンク仕切り板16の左側を水で満たし、管路遠心水ポンプ3の水源供給とする。続いて、給水塔槽バッフル1-3を必要な高さに調整する。
【0037】
第4ステップであって、バスケット5、スポーツカメラ13、引張センサ14および水位センサ15を配置する。
【0038】
第5ステップであって、管路遠心水ポンプ3をオンにし、給水塔1における水位が給水塔槽バッフル1-3の設定高さまで上昇して水が溢れると、出水口1-2から流出した水流は水槽2で実験時に必要な一定の水流流量を形成し、河道の一定の水流量をシミュレーションする;その後、貯蔵箱9を開けて地すべり塊材料を開放し、地すべりの運動過程をシミュレーションする;最後に、地すべり塊材料が水槽2に入り、地すべり堰塞ダムを形成している。実験が進むにつれて、形成された地すべり堰塞ダムがダム崩壊を発生しさらにダム崩壊洪水を引起すことが観察できる。
【0039】
第6ステップであって、実験データを分析し、河道閉塞の時間、ダム崩壊の洪水流量、ダム崩壊過程の土砂質量遷移の特徴および地すべり堰塞ダムの幾何形態の変化の特徴を取得する。先ず、地すべり槽8を監視するスポーツカメラ13により地すべりの速度変位の特徴を取得する。続いて、水位センサ15に基づいて分析して貯水タンク4における水位の上昇停止と水位の上昇回復の時刻を取得し、地すべり塊が水槽2を閉塞する時間を取得し、この時間は、河道閉塞の時間である。続いて、貯水タンク4における水位上昇の回復の時刻から水槽2における地すべり塊が流され終わるまでの時刻の区間に、水位センサ15に記録される貯水タンク4における水位上昇の時間に伴う関係を分析することによって、ダム崩壊洪水の流量を取得する。この時間の区間内に、引張センサ14は、バスケット5に收集されたダム崩壊の物質質量の時間に伴う変化関係であるダム崩壊過程の土砂質量遷移の特徴を記録する。最後に、異なる時刻で水槽2を監視する4台のスポーツカメラ13の同一フレームの画面を抽出し、異なる時刻で、水槽2における地すべり塊材料の幾何特徴を取得し、異なる時刻でのこの種類の材料の堆積高さ、長さを比較し、地すべり堰塞ダムの幾何形態の変化の特徴を取得する。
【0040】
第7ステップであって、第3ステップで給水塔槽バッフル1-3の高さと出水口バッフル1-1の開口量を調整することによって、他の一定の水頭と一定の水流組合せを取得する。第4から第6ステップを繰返して、複数グループの実験シミュレーション工事を完成する。
【0041】
上記の前記実施例は本発明の実施の形態を示すものだけであり、これによって本発明の特許の範囲を制限すると理解することはできず、当業者にとっては、本発明の発明思想から逸脱することなく、いくつかの変形や改良が可能であり、これらは本発明の保護の範囲に属することを指摘すべきである。
【符号の説明】
【0042】
1給水塔;2水槽;3管路遠心水ポンプ;4貯水タンク;5バスケット;6固定ホルダ;7ジャッキ;8地すべり槽;9貯蔵箱;10地すべり槽阻止板;11クレーンビーム;12昇降モータ;13スポーツカメラ;14引張センサ;15水位センサ;16貯水タンク仕切り板;1-1出水口バッフル;1-2出水口;1-3給水塔槽バッフル;1-4ねじ孔;1-5固定クリップ;6-1プラットフォーム;6-2ねじ棒;6-3ナット;6-4底部プラットフォーム;10-1支持ロッド。
【手続補正書】
【提出日】2022-01-06
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置であって、1セットの地すべり動力条件シミュレーションシステム、1セットの水動力条件シミュレーションシステムおよび1セットの非接触型測定システムを含み;
前記地すべり動力条件シミュレーションシステムはジャッキ(7)、地すべり槽(8)、貯蔵箱(9)、地すべり槽阻止板(10)、クレーンビーム(11)および昇降モータ(12)を含み、
前記の地すべり槽(8)は「U」型槽構造に類似し、地すべりの摺動経路をシミュレーションするために用いられ;
前記ジャッキ(7)、クレーンビーム(11)および昇降モータ(12)は地すべり槽(8)の傾斜角度を固定し調整するために用いられ、具体的には、地すべり槽(8)の前端下部はジャッキ(7)と接続され、ジャッキ(7)の標高を調整することで、地すべり槽(8)の前段を水槽(2)に位置合わせ;
地すべり槽(8)の後端上部はクレーンビーム(11)および昇降モータ(12)と接続され、
昇降モータ(12)の吊り紐および昇降モータ(12)のクレーンビーム(11)トラックレールでの位置を調整することで、地すべり槽(8)が水平面に対して0~90°の任意の傾斜角度を実現可能にし、地すべりの経路の傾斜角をシミュレーションするという目的に達し;
前記貯蔵箱(9)は地すべり塊材料を置くために用いられ、地すべり槽(8)上の任意の位置に置かれ、地すべりの幅と地すべりの経路の長さに基づいて異なる規格の貯蔵箱(9)を交換し;
前記の地すべり槽阻止板(10)は「L」型構造であり、地すべり槽(8)の長辺方向と平行に地すべり槽(8)の底面に固定され、地すべり槽(8)の一側面とともに地すべりの経路の幅を構成し、地すべり槽阻止板(10)の地すべり槽(8)の底面での位置が調整可能であり;
前記水動力条件シミュレーションシステムは、給水塔(1)、水槽(2)、管路遠心水ポンプ(3)、貯水タンク(4)および固定ホルダ(6)を含み;
前記管路遠心水ポンプ(3)は給水管が貯水タンク(4)と接続され、出水管が給水塔(1)と接続され;
前記固定ホルダ(6)は、上方プラットフォーム(6-1)、複数のねじ棒(6-2)、ナット(6-3)および底部プラットフォーム(6-4)を含み、ねじ棒(6-2)の底部は底部プラットフォーム(6-4)に固着され、プラットフォーム(6-1)はねじ棒(6-2)に置かれるとともに(6-3)ナットにより固定され、ナット(6-3)を回転することによってプラットフォーム(6-1)の傾斜角度を調整し、底部プラットフォーム(6-4)は貯水タンク(4)内に置かれ、給水塔(1)と水槽(2)はプラットフォーム(6-1)の左側に置かれ、水槽(2)の傾斜角度はプラットフォーム(6-1)の傾斜角度で調整され、地すべり動力条件シミュレーションシステムは水槽(2)の一方側に置かれ;
前記の給水塔(1)の一側面の底部に出水口(1-2)が設けられ、出水口(1-2)の上方に水流量を調節するための出水口バッフル(1-1)が設けられ、出水口(1-2)は水槽(2)と連通し;給水塔(1)の他側面の垂直方向に位置が調整可能な給水塔槽バッフル(1-3)が設けられ;
前記の貯水タンク(4)内に、貯水タンク(4)を左右両部分に分けるとともに、使用過程で貯水タンク(4)の左右両部分の水流が連通しない貯水タンク仕切り板(16)が設けられ;給水塔(1)における出水口(1-2)の大きさと給水塔槽バッフル(1-3)の位置を設置することで水流量と流速を調節し;
管路遠心水ポンプ(3)は貯水タンク(4)から水を給水塔(1)まで汲み上げ、水が出水口(1-2)から水槽(2)に流入し、余分な水は給水塔槽バッフル(1-3)の頂部から溢れて貯水タンク(4)に流入し、一定の水頭を形成し、出水口(1-2)から流出した水の水流量と流速が安定であり;
前記の水槽(2)の右側先端の下方にバスケット(5)が設けられ、バスケット(5)の表面に複数のホールが設けられ、最大のホールのサイズは地すべり塊材料の最小直径よりも小さく、水流に流されて持ち去れたすべての地すべり塊材料を収集するために用いられ;
前記のバスケット(5)の上方は引張センサ(14)と接続され、引張センサ(14)のデータを分析することで、堰塞ダムのダム崩壊過程での土砂遷移質量の時間的変化曲線を取得し;
前記の貯水タンク(4)は貯水タンク仕切り板(16)に分割された右側区域の底部に水位センサ(15)が置かれ、実験過程での水位変化を記録し、堰塞ダムのダム崩壊過程で生じる洪水流量特徴を取得し;
前記非接触型測定システムはコンピュータと5台のスポーツカメラ(13)からなり、スポーツカメラ(13)により実験過程での二次元図像を収集し、無線データを介してコンピュータに伝送され;
前記の5台スポーツカメラ(13)は、1台のスポーツカメラ(13)が地すべり槽(8)を平行に撮像するために用いられ、残りの4台のスポーツカメラ(13)が、地すべり塊が水槽(2)に入る区域を垂直に撮像するために用いられ、それぞれのカメラにより撮像された画面オーバーラップ度が60%を超えるように配置される地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置。
【請求項2】
前記の地すべり槽(8)は有機ガラスであり、地すべり槽阻止板(10)の材料は全て有機ガラスである
ことを特徴とする請求項1に記載の地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置。
【請求項3】
前記の給水塔(1)の他側面に垂直方向の開口構造が設けられ、開口構造のエッジに固定クリップ(1-5)が取り付けられ、固定クリップ(1-5)、長尺状の給水塔槽バッフル(1-3)には均等に複数のねじ孔(1-4)が設けられ、給水塔槽バッフル(1-3)は固定クリップ(1-5)の底部から挿入され、ねじ挿入位置を制御して給水塔槽バッフル(1-3)の位置を調節する
ことを特徴とする請求項1または2に記載の地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験装置。
【請求項4】
請求項1~3のいずれか一項に記載の実験装置に基づく、地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験方法であって、以下のステップを含み:
第1ステップであって、実験方案におけるシミュレーションする必要がある地すべりの幅に基づいて地すべり槽阻止板(10)の位置を調整し;シミュレーションする必要がある地すべりの経路の長さと地すべりの体積に基づいて、対応する型番の貯蔵箱(9)を選択するとともに、それを地すべり槽(8)上における対応する位置に固定し;実験方案に基づいて対応する地すべり塊材料を選択し、異なる地すべり塊の性質をシミュレーションし;上記の操作を完成した後で、選択した地すべり塊材料を貯蔵箱(9)に入れるステップ;
第2ステップであって、水槽(2)に必要な角度に基づいて固定ホルダ(6)の傾斜角度を調整し、河道の傾斜角をシミュレーションし;地すべり槽(8)の前段を水槽(2)に完全に重ね合わせるようにジャッキ(7)の高さを調整し;地すべり槽(8)が実験に必要な傾斜角度を有するように、昇降モータ(12)を調整し、地すべりの経路の傾斜角度をシミュレーションするステップ;
第3ステップであって、必要な開口量まで出水口バッフル(1-1)を開け;その後、貯水タンク仕切り板(16)の左側を水で満たし、管路遠心水ポンプ(3)の水源供給とし;続いて、給水塔槽バッフル(1-3)を必要な高さに調整し;
第4ステップであって、バスケット(5)、スポーツカメラ(13)、引張センサ(14)および水位センサ(15)を配置するステップ;
第5ステップであって、管路遠心水ポンプ(3)をオンにし、給水塔(1)における水位は給水塔槽バッフル(1-3)の設定高さまで上昇して水が溢れ、出水口(1-2)から流出した水流が水槽(2)で実験時に必要な一定の水流流量を形成し、河道の一定の水流量をシミュレーションし;その後、貯蔵箱(9)を開けて地すべり塊材料を開放し、地すべりの運動過程をシミュレーションし;最後に、地すべり塊材料が水槽(2)に入り、地すべり堰塞ダムを形成し;実験が進むにつれて、形成された地すべり堰塞ダムがダム崩壊を発生しさらにダム崩壊洪水を引起すことが観察できるステップ;
第6ステップであって、実験データを分析し、河道閉塞の時間、ダム崩壊の洪水流量、ダム崩壊過程での土砂質量遷移の特徴および地すべり堰塞ダムの幾何形態の変化の特徴をシミュレーションして取得し;
6.1)地すべり槽(8)を平行に撮像するスポーツカメラ(13)のデータから、粒子画像流速測定法に基づいて地すべり塊の速度場を測定し、地すべりの速度変位の特徴を取得し;
6.2)水位センサ(15)に基づいて分析し貯水タンク(4)における水位の上昇停止と水位の上昇回復の時刻を取得し、地すべり塊が水槽(2)を閉塞する時間を取得し、この時間は、河道閉塞の時間であり;続いて、貯水タンク(4)における水位上昇の回復の時刻から水槽(2)における地すべり塊が流され終わるまでの時刻の区間に、水位センサ(15)に記録される貯水タンク(4)における水位上昇の時間に伴う関係を分析することによって、ダム崩壊洪水の流量を取得し;この時間の区間内に、引張センサ(14)は、バスケット(5)に收集されたダム崩壊の物質質量の時間に伴う変化関係であるダム崩壊過程での土砂質量遷移の特徴を記録し;最後に、異なる時刻で水槽(2)を監視する4台のスポーツカメラ(13)の同一時刻の二次元画像を抽出し、運動からの構造復元アルゴリズムに基づいて、この時刻に水槽(2)に入る地すべり塊の三次元形態を復元し、異なる時刻で、水槽(2)における地すべり塊材料の幾何特徴を取得し、異なる時刻での地すべり塊の三次元形態を比較することによって、分析して水流による流し侵食作用の下で地すべり堰塞ダムの幾何形態の時間とともに変化する特徴を取得するステップ;および、
第7ステップであって、第3ステップで給水塔槽バッフル(1-3)の高さと出水口バッフル(1-1)の開口量を調整することによって、他の一定の水頭と一定の水流組合せを取得し;第4から第6ステップを繰返して、複数グループの実験シミュレーション工事を完成するステップ
を含むことを特徴とする地すべり-堰塞ダム-ダム崩壊の洪水災害連鎖という進化過程シミュレーションの実験方法。
【国際調査報告】