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特表2022-511618気相でイソシアネートを調製する方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】気相でイソシアネートを調製する方法
(51)【国際特許分類】
   C07C 263/10 20060101AFI20220125BHJP
   C07C 265/14 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
C07C263/10
C07C265/14
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021520423
(86)(22)【出願日】2018-12-26
(85)【翻訳文提出日】2021-04-09
(86)【国際出願番号】 CN2018123876
(87)【国際公開番号】W WO2020132936
(87)【国際公開日】2020-07-02
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】521147204
【氏名又は名称】万華化学集団股▲フン▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】WANHUA CHEMICAL GROUP CO., LTD.
【住所又は居所原語表記】No. 17, Tianshan Rd, YEDA, Yantai 264000 Shandong, China
(71)【出願人】
【識別番号】515153484
【氏名又は名称】万華化学(寧波)有限公司
【氏名又は名称原語表記】WANHUA CHEMICAL(NINGBO) CO.,LTD.
【住所又は居所原語表記】Wanhua Industrial Garden Huandao North Road,Daxie Economic Development Zone Ningbo,Zhejiang 315812,China
(74)【代理人】
【識別番号】110001494
【氏名又は名称】前田・鈴木国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】華 衛▲キ▼
(72)【発明者】
【氏名】李 同和
(72)【発明者】
【氏名】尚 永華
(72)【発明者】
【氏名】孫 淑常
(72)【発明者】
【氏名】王 京旭
(72)【発明者】
【氏名】韓 金平
(72)【発明者】
【氏名】李 強
(72)【発明者】
【氏名】李 文濱
(72)【発明者】
【氏名】李 晶
(72)【発明者】
【氏名】王 鵬飛
(72)【発明者】
【氏名】黎 源
【テーマコード(参考)】
4H006
【Fターム(参考)】
4H006AA02
4H006AB46
4H006AC55
4H006BC10
4H006BC11
4H006BE52
(57)【要約】
本発明は、不活性ガスが存在するかまたは存在しない条件下で、アミン含有ガス流れおよびホスゲン含有ガス流れを反応領域に進入させ、前記アミンと前記ホスゲンとを反応領域において気体形態で接触させてホスゲン化反応させて、反応領域において気体の目標イソシアネートを調製する、気相でイソシアネートを調製する方法を提供する。そのうち、前記ホスゲン含有材料流れを反応領域に進入させる前に予熱昇温し、且つ前記予熱昇温を行う前に、前記ホスゲン含有材料流れに含まれた物質Aの質量部が1%未満であり、前記物質Aは、NCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質である。本発明に係る方法は、ホスゲン加熱昇温および反応過程で熱交換器および機器において閉塞物を形成する状況を効果的に改善し、閉塞物の形成を低減することができることで、より長い運転周期を取得し、ホスゲン含有システムの点検修理回数を低減させ、装置の運転の安全性を向上させる。
【選択図】無し
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスが存在するかまたは存在しない条件下で、アミン含有ガス流れおよびホスゲン含有材料流れを反応領域に進入させ、反応領域において前記アミンと前記ホスゲンとを気体形態で接触させてホスゲン化反応させて、反応領域において気体の目標イソシアネートを調製する、気相でイソシアネートを調製する方法であって、
前記ホスゲン含有材料流れを反応領域に進入させる前に予熱昇温し、
前記予熱昇温を行う前に、前記ホスゲン含有材料流れに含まれた物質Aの質量部が1%未満であり、
前記物質Aは、NCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質である、ことを特徴とする気相でイソシアネートを調製する方法。
【請求項2】
前記予熱昇温を行う前に、ホスゲン含有材料流れに含まれた物質Aの質量部が0.5%未満であり、好ましくは、0.1%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予熱昇温は、前記ホスゲン含有材料流れを反応領域に進入させる前に、200℃以上まで予熱昇温することであり、好ましくは200~600℃まで予熱昇温し、より好ましくは250~450℃まで予熱昇温する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
精留、吸着、洗気のうちの1種または2種以上の組合せにより、前記予熱昇温前の前記ホスゲン含有材料流れを処理して、予熱昇温前の前記ホスゲン含有材料流れに含まれた前記物質Aの質量部を制御し、
好ましくは、精留および/または洗気により、前記予熱昇温前の前記ホスゲン含有材料流れを処理する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性ガスを前記アミン含有ガス流れに添加することによって前記反応領域に導入して、不活性ガスとアミンガスの体積比を0~20:1にし、および/または、
前記不活性ガスを前記ホスゲン含有材料流れに添加するることによって前記反応領域に導入して、不活性ガスとホスゲンの体積比を0~20:1にする、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応領域において、前記ホスゲンと前記アミンとの反応が0.01~0.5Mpa、好ましくは0.07~0.3MPa、より好ましくは0.09~0.2MPaの絶対圧力下で行われ、
前記反応領域の温度が200~600℃、好ましくは250~450℃に制御され、および/または、
前記アミンと前記ホスゲンの前記反応領域における平均反応時間が0.01~15sであることが好ましく、0.05~10sであることがより好ましく、0.1~5sであることがさらに好ましい、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ホスゲンとアミンにおけるアミノ基のモル比が2.2~20:1であり、4~10:1であることが好ましく、6~8:1であることがより好ましい、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アミン含有ガス流れおよび前記ホスゲン含有材料流れが反応領域に進入する流速がそれぞれ5~100m/sであり、10~80m/sであることが好ましい、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ホスゲン含有材料流れに、新鮮なホスゲンおよび/または循環するホスゲンが含まれ、および/または、
前記ホスゲン含有材料流れに、0~10wt%のHClガスが含まれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記物質Aにおける前記NCO基含有の物質は、目標イソシアネートを含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記目標イソシアネートの一般式がR(NCO)であり、
ただし、Rは、炭素原子数4~15の脂肪族、脂環族または芳香族炭化水素基であり、nは、1~10の整数であり、
好ましくは、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-ジメチルイソシアネートシクロヘキサン、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ジイソシアネートイソホロン、4,4’ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,8-ジイソシアナート-4-イソシアナートメチルオクタンまたはノナントリイソシアネートのうちの1種または2種以上の組合せから選ばれ、
前記アミンは、アニリン、シクロヘキシルアミン、1,4-ブタネジアミン、1,3-シクロヘキサンジメチルアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジメチレンジアミン、2,4または2,6-トルエンジアミン、1,8-ジアミノ-4-(アミノメチル)オクタンまたはトリアミノノナンのうちの1種または2種の組合せから選ばれる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記気相でイソシアネートを調製する方法は、連続して操作するように行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相でイソシアネートを調製する方法に関し、特に、ホスゲン加熱システムおよび反応システムにおけるコークス化を効果的に低下させることができるイソシアネートの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族または脂環族または芳香族アミンの気相ホスゲン化反応により、該当するイソシアネートを調製することができる。通常、気相ホスゲン化反応は、200~600℃で行われる。該方法は、高温下で行われるので、頻繁的な点検修理に起因してホスゲンが漏れるリスクを向上させず、長期にわたって安定的に操作することを実現するために、その設計が特殊な要求を満たしなければならない。
【0003】
早期の特許出願、たとえば、EP593334B1およびEP699657B1では、ホスゲンまたは塩化水素ガスを利用または破壊する可能性が開示されており、ホスゲンを再循環することに関連する具体的な問題が検討されていない。しかしながら、近代的な産業化生産過程では、安全性、環境保護性および経済性などの点から考え、ホスゲン化過程においていずれもホスゲンを再利用する形態が採用されている。
【0004】
特許出願DE102009032413.5、GB737442では、いずれも、イソシアネートをホスゲン化合成する反応過程で、ホスゲンを回収し、ホスゲンの循環を実現する方法が記載されている。GB737442では、回収したホスゲンのHCl含有量が0.5~0.7%であるという指標が記載されている。
【0005】
特許出願EP11160575.4では、気相ホスゲン化過程でホスゲンにおけるCOの含有量が限定されており、気相でアミンをホスゲン化してイソシアネートを生成する過程で最初の低い(1%未満である)一酸化炭素材料流れを反応材料流れとして用いることにより、ホスゲンが高温下で一酸化炭素および塩素ガスに分解するという問題が解決されている。
【0006】
特許出願DE102005037328.3では、アミン含有材料流れを混合する前にホスゲン含有材料流れにおける塩素ガスの質量部が1000重量ppm未満であり、および/またはホスゲン含有材料流れにおける臭素の質量部が50重量ppm未満であるため、気相ホスゲン化法に存在する高温下での塩素ガスの腐食問題が解決され、ホスゲンにおける臭素の含有量を制御することにより、期待しない下流側製品イソシアネートの色度向上の問題が解決されている。
【0007】
特許出願DE102005037328.3では、気相ホスゲン化反応過程で、再循環するホスゲン材料流れから塩化水素を分離して、ジアミン含有材料流れと混合する前にホスゲン含有材料流れにおける塩化水素の質量部を15重量%未満にすることが要求されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、気相でイソシアネートを調製する方法を提供する。該方法は、ホスゲン加熱昇温および反応過程で熱交換器および機器において閉塞物を形成する状況を効果的に改善し、閉塞物の形成を低減することができることで、より長い運転周期を取得し、ホスゲン含有システムの点検修理回数を低減させ、装置の運転の安全性を向上させる。
【0009】
その目的を達成するために、本発明は、以下の技術手段を講じた。
【0010】
不活性ガスが存在するかまたは存在しない条件下で、アミン含有ガス流れおよびホスゲン含有材料流れを反応領域に進入させ、前記アミンと前記ホスゲンとを反応領域において気体形態で接触させてホスゲン化反応させて、反応領域において気体の目標イソシアネートを調製する、気相でイソシアネートを調製する方法であって、前記ホスゲン含有材料流れを反応領域に進入させる前に予熱昇温し、前記予熱昇温を行う前に、前記ホスゲン含有材料流れに含まれた物質Aの質量部が1%未満であり、前記物質Aは、NCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質である、気相でイソシアネートを調製する方法。
【0011】
一部の好適な実施形態において、前記予熱昇温を行う前に、前記ホスゲン含有材料流れに含まれた物質Aの質量部が0.5%未満に制御されることが好ましく、0.1%未満に制御されることがより好ましい。もちろん、より低いレベルに制御されてもよい。
【0012】
気相ホスゲン化過程では、アミンおよびホスゲンを気相状態に維持する必要がある。反応前、アミン含有材料流れおよびホスゲン含有材料流れをそれぞれ200℃以上、たとえば200~600℃、好ましくは200~450℃に予め加熱しながら、反応領域に進入させた後、反応領域の温度も200~600℃、好ましくは200~450℃に制御する。反応材料および反応生成物の高温下での安定性は、気相ホスゲン化反応の重要な考慮要素となる。アミンおよびイソシアネートの高温下での停滞時間を短縮させるために、従来技術に用いられた形態は、たとえば、加熱気化過程でアミンの高温下での停滞時間をできるだけ短縮させる必要があると同時に、反応により生成したイソシアネートが高温下で安定しないので、急冷降温の形態で反応により生成したイソシアネートガスをできるだけ速く低温安定状態に冷却させる必要がある。従来技術において異なる形態でアミンおよびイソシアネートの高温下での停滞時間をできるだけ短縮させるが、アミンおよびイソシアネートの高温下での分子鎖切断、分解、重合などの問題を依然として根絶しにくい。
【0013】
イソシアネートの調製に用いられる有機アミン(アミンと略称)は、高温下で分子鎖切断を発生する、或いは小分子のアミンまたはオレフィン性二重結合含有の成分に分解する可能性がある。これらの分解による成分は、アミン材料流れに伴って光化学反応器に進入して該当する小分子イソシアネートまたはオレフィン性二重結合含有の成分を生成する。気相ホスゲン化反応により生成した目標イソシアネート(すなわち、生産過程で生成した目標イソシアネート生成物)も高温下で分子鎖切断、分解を発生して、小分子イソシアネートまたはオレフィン性二重結合含有の成分を生成する。本発明に記載される物質Aに関するNCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質とは、上述した期待しないNCO基含有の物質(非目標イソシアネート)および/またはオレフィン性二重結合含有の成分を指す。
【0014】
アミンであろうと、イソシアネートであろうと、高温下で分解し、最終に、反応により分子量の小さいイソシアネートまたはオレフィン性二重結合含有の物質を生成する。これらの分子量の小さいイソシアネートまたはオレフィン性二重結合含有の物質は、低い沸点を有するだけでなく、ホスゲンの再利用過程で、循環するホスゲン流れに分布しやすい。それと同時に、これらの小分子イソシアネートが高い反応活性を有し、オレフィン性二重結合含有の物質の二重結合が重合しやすい特性を有するため、受熱過程で重合体を生成し、タールおよび閉塞物を形成することがより容易となる。気相ホスゲン化反応では、ホスゲン流れを200~600℃に加熱し、ホスゲン化反応の温度も200~600℃の範囲内にする必要があるため、ホスゲン加熱昇温および反応過程では、ホスゲンに含まれたNCO系物質および\またはオレフィン系物質が重合反応を極めて発生しやすく、熱交換器および反応機器におけるコークス化を引き起こす以外、熱交換能力の降下、熱交換器の塞ぎ、反応システムの塞ぎ、副反応の増加などの問題を引き起こして、装置の運転周期に影響を及ぼす。本願の発明者は、前記予熱昇温を行う前に、前記ホスゲン含有材料流れに含まれた物質A(NCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.1%未満に制御することにより、これらの問題を効果的に改善するとともに、熱交換器の塞ぎ、反応システムの塞ぎなどの現象を効果的に回避することができることで、装置の運転周期を延長することができることを見出した。
【0015】
当該分野では、イソシアネートの調製過程で、反応領域から得た基本的に気体となる反応混合物から、過量の反応していないホスゲンおよび形成した塩化水素ガスを分離することにより、分離された少なくとも一部の過量のホスゲンを反応領域までに再循環させ、このようなホスゲンを循環するホスゲンと呼ぶ。本発明に記載されるホスゲン含有材料流れにおけるホスゲンは、新鮮なホスゲンおよび/または循環するホスゲンを含む。ホスゲン含有材料流れの反応領域(反応空間)への導入は、単一のホスゲン含有材料流れで行われてもよいし、複数のサブホスゲン含有流れで行われてもよい。2つ以上のサブホスゲン含有流れで反応領域へホスゲン含有材料流れを導入する場合に対して、サブホスゲン含有流れを共に反応領域に添加して合流のホスゲン含有材料流れ(または、ホスゲン材料流れと呼ばれる)を生成するとともに、ホスゲン材料流れにおける物質A(すなわち、NCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部が各々のサブホスゲン含有流れにおける物質A(すなわち、NCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部に由来する。その場合、このような形態で、合流のホスゲン含有材料流れにおける物質Aの質量部を算出する。NCO基含有の物質の含有量の計算に対して、物質Aには、含有可能性のある、反応が調製しようとする目標イソシアネートが含まれない。
【0016】
各種のサブホスゲン含有流れ(たとえば、循環するホスゲンおよび新鮮なホスゲン)は、反応領域に導入された前に合併して合流のホスゲン含有ガス流れを形成してから、反応空間に導入される。複数のサブ流れ(各種の場合で、循環するホスゲン、新鮮なホスゲンまたはその混合物であってもよい)を同一または異なる位置で反応空間に導入して、反応過程でホスゲン含有材料流れを導入することができる。
【0017】
本発明において、用語「新鮮なホスゲン」とは、ホスゲン化反応において再循環しておらず、一般的に塩素ガスおよび一酸化炭素からホスゲンを合成した後、いずれのホスゲン反応に関する反応段階を経由していないホスゲン含有材料流れを指す。
【0018】
イソシアネートを調製する反応装置が運転する初期段階では、反応に用いられるホスゲンは、主に新鮮なホスゲンから由来する。装置が安定して運転した後、アミンおよびホスゲン化反応におけるイソシアネートの高温下での分解の影響を受けて、循環するホスゲンにおけるNCO系物質(すなわち、NCO基含有の物質)および/またはオレフィン性二重結合系物質の質量部がだんだん向上し、ホスゲン材料流れの昇温および反応過程で一連の期待しない閉塞物を形成して、反応に対して不可逆の影響を及ぼす。そのため、反応が開始した後、予熱昇温前のホスゲン含有材料流れに含まれた平均の物質A(NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質)の質量部を1%未満に制御する必要がある。
【0019】
本発明に対して、反応混合物から循環するホスゲンを取得する方法は、当該技術分野に周知されており(たとえば特許文献GB737442Aに、該当する内容がすでに開示されており)、本発明の重点ではないので、繰り返し説明しない。
【0020】
ホスゲン含有材料流れに含まれた物質A(NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質)の質量部を1%未満に制御することは、該材料流れにおけるNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を除去することによって行われることができる。さらに、当該技術分野に周知された慣用の分離方法によって制御することができる。本発明では、直接的に従来の分離方法を利用して予熱昇温前のホスゲン含有材料流れに含まれた物質A(NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質)を除去する目的を達成することができ、物質A(NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質)の質量部を所要範囲に制御できれば、それを特に限定しなくてもよい。例えば、精留、吸着、洗気および他の類似する形態のうちの1種または複数種の組合せが用いられてもよい。一部の実施形態において、前記予熱昇温を行う前に、前記ホスゲン含有材料流れに含まれた前記物質Aの質量部は、精留、吸着、洗気のうちの1種または2種以上の組合せにより制御される。
【0021】
ホスゲン材料流れにおけるNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質の制御は、好ましくは精留および/または洗気によって行われてもよいし、精留と洗気の組合せによって行われてもよい。好適な洗気媒体は、反応と同じ溶剤を用いることが好ましい。好適に用いられる溶剤は、たとえば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのうちの1種または2種の組合せであってもよい。組み合わせた洗気および精留において、洗気媒体を用いることにより、NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を含むホスゲン材料流れからNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質をリンスして、NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質の含有量が一定のレベルのホスゲン材料流れを取得しながら、ホスゲン、NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を含む洗気材料流れを取得する。好ましくは、ホスゲン含有の洗気材料流れをホスゲン精製システムまでに帰還させ、洗気材料流れにおけるNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を一定の含有量に達させた後、精留によりこのような洗気材料流れから分離して、NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を取得する。洗気および精留の操作は、圧力1~10バー(絶対圧力)で行われ、好ましくは1~5バー(絶対圧力)で行われることができる。
【0022】
一部の実施形態において、吸着によってホスゲン材料流れにおけるNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を分離する。たとえば、ホスゲン循環システムにより得られた循環するホスゲン材料流れを、吸着ユニットにより、好ましくは活性炭を用いて吸着して、循環するホスゲンにおけるNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質の含有量を一定の範囲に制御する。
【0023】
一部の実施形態において、分離処理された循環するホスゲンと新鮮なホスゲンとを混合した後、物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の含有量が1%未満のホスゲン材料流れを得る。
【0024】
本発明において、ホスゲン含有材料流れは、0~10wt%のHClガスを含んでもよい。
【0025】
本発明に係る方法において、追加する不活性媒体(或いは、本発明において「不活性ガス」とも呼ばれる)が用いられてもよい。不活性媒体は、反応空間において反応温度下で気体形態となるとともに、反応過程に存在する化合物と反応できない媒体である。不活性媒体は、一般的に反応前にアミンおよび/またはホスゲンと混合されるが、材料流れと別に導入されてもよい。たとえば、ヘリウムガスまたはアルゴンガスの希有ガスなどの窒素ガス、或いは、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、二酸化炭素または一酸化炭素などの芳香族化合物が用いられてもよいし、これらの不活性媒体のうちの1種または複数種の組合せが用いられてもよい。好ましくは、窒素ガスおよび/またはクロロベンゼンが不活性媒体として用いられる。不活性媒体は、アミン含有またはホスゲン含有材料流れに導入されて不活性媒体とアミンガスまたはホスゲンのガス体積比を0~20:1にする。ホスゲン含有材料流れへ1つまたは複数の追加する不活性材料流れを導入すれば、本発明に係る方法を実施する場合、これらのガス流れが合流のホスゲン含有材料流れのサブ流れとしてホスゲン含有材料流れの計算に含まれ、すなわち、ホスゲン含有材料流れにおける物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を計算する際に考えられる。
【0026】
一部の実施形態において、前記アミン含有ガス流れは、不活性ガスをさらに含み、不活性ガスとアミンガスの体積比を0~20:1にする。不活性ガスは、前記アミン含有ガス流れに添加されることにより前記反応領域に導入される。
【0027】
および/または、前記ホスゲン含有材料流れは、不活性ガスをさらに含み、不活性ガスとホスゲンの体積比を0~20:1にする。不活性ガスは、前記ホスゲン含有材料流れに添加されることにより前記反応領域に導入される。
【0028】
一部の実施形態において、反応領域において、前記ホスゲンと前記アミンとの反応が0.01~0.5Mpa、好ましくは0.07~0.3MPa、より好ましくは0.09~0.2MPaの絶対圧力下で行われる。本発明の方法において、反応領域における一般的な圧力に基づき、反応領域における温度が、用いられるアミンの沸点よりも高くいものを選択し、反応領域の温度を一般的に200~600℃、好ましくは250~450℃に制御する。
【0029】
一部の実施形態において、前記アミンと前記ホスゲンとの前記反応領域における平均反応時間(または、平均接触時間と呼ばれる)が0.01~15sであり、0.05~10sであることが好ましく、0.1~5sであることがより好ましい。平均反応時間は、アミンとホスゲンとが混合し始めるから、反応混合物が反応空間(反応領域)から離れて後処理段階に進入するまでの時間である。
【0030】
気相でイソシアネートを調製する場合、アミンと比べ、ホスゲンは過量に用いられるものである(すなわち、化学計量が過量である)。一部の実施形態において、前記ホスゲンとアミンにおけるアミノ基のモル比が2.2~20:1であり、たとえば2.2:1、5:1、10:1、15:1、20:1などであってもよく、4~10:1であることが好ましく、6~8:1であることがより好ましい。
【0031】
一部の実施形態において、前記アミン含有ガス流れおよび前記ホスゲン含有材料流れが反応領域に進入する流速がそれぞれ5~100m/sであり、10~80m/sであることが好ましい。
【0032】
前記目標イソシアネートの一般式がR(NCO)である。目標イソシアネートは、生産ニーズにより決定され、たとえば、脂肪族、脂環族または芳香族イソシアネートのうちの1種または2種の組合せであってもよく、それを特に限定しない。好ましくは、Rは、炭素原子数4~15の脂肪族、脂環族または芳香族炭化水素基であり、nは、1~10の整数である。好ましくは、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-ジメチルイソシアネートシクロヘキサン、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ジイソシアネートイソホロン、4,4’ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,8-ジイソシアナート-4-イソシアナートメチルオクタンまたはノナントリイソシアネートのうちのいずれか1種または複数種から選ばれる。
【0033】
本発明では、用いられるアミンは、当該分野においてイソシアネートを調製する時に使用を許可する各種のアミンであってもよく、生産ニーズによれば、具体的なアミン原料を具体的に確定し、それを特に限定しない。一部の実施形態において、前記アミンは、たとえば、アニリン、シクロヘキシルアミン、1,4-ブタネジアミン、1,3-シクロヘキサンジメチルアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジメチレンジアミン、2、4または2,6-トルエンジアミン、1,8-ジアミノ-4-(アミノメチル)オクタンまたはトリアミノノナンから選ばれる。
【0034】
一部の実施形態において、前記反応は、連続して操作するように行われ、すなわち、原料を連続して供給し、反応生成物を連続して排出することである。
【0035】
本発明に係る技術方案は、以下の有益な効果を有する。
【0036】
本発明に係る気相でアミンおよびホスゲンを反応させて該当するイソシアネートを生成する方法は、ホスゲン加熱昇温および反応過程で熱交換器および機器において閉塞物を形成することを回避することができることで、より長い運転周期を取得し、ホスゲン含有システムの点検修理回数を低減させ、装置の運転の安全性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下は、本発明の技術方案をより良く理解するために、実施例を結び付けて本発明の内容についてさらに説明する。しかし、本発明の内容は、以下の実施例に限定されるのもではない。
【0038】
以下の実施例または比較例において、ホスゲン材料流れ(すなわち、ホスゲン含有材料流れ)における物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部は、気相クロマトグラフにより測定された。測定方法は、アジリン7890A気相クロマトグラフにより測定され、クロマトグラフィックカラムの型番がJ&W112-2112CAM15m、0.25mm、0.25μmであり、検出器がFID検出器であり、供給口の温度が250℃であった。カラム温度の昇温手順は、50℃で2min維持した後、10℃/minの速度で100℃までに昇温して2min維持し、そして25℃/minの速度で250℃までに昇温して2min維持し、検出器の温度が250℃であった。まず、ガスクロマトグラフィー質量分析で、ホスゲン材料流れにおけるNCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質の気相クロマトグラフにおける停滞時間を確定し、次に、プロピルイソシアネートを外部標準物として、外部標準法で、ホスゲン材料流れにおける物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を確定した。
【0039】
以下の実施例において、ホスゲン材料流れにおける物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部は、精留によって制御された。充填塔の理論プレート数が25であり、循環するホスゲンの精製過程で、連続精留の形態で循環するホスゲン材料流れを純化し、塔頂圧力を2barに制御し、塔頂温度を10℃程度に制御し、塔釜温度を160℃に制御した。還流比を制御することにより、ホスゲン材料流れにおける物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を所要範囲内に制御した。
【0040】
実施例1
【0041】
窒素ガスを1,6-ヘキサンジアミンと混合した後(窒素ガスと1,6ヘキサンジアミンガスの体積比が0.5:1である)、ホスゲンと共に管式反応器で連続して反応させた。1,6-ヘキサンジアミンとホスゲンの供給圧力が0.25MPaであり、この2種の材料流れの供給温度が310℃であり(材料流れを予熱することにより該供給温度に達し)、反応領域における絶対圧力が0.09MPaであり、大気圧よりもやや低い。ホスゲンと1,6-ヘキサンジアミンの供給のモル比が6:1であり、反応領域の温度が420℃であり、材料流れの反応器への進入の流速が70m/sであり、平均接触時間が2sである。精留によって、ホスゲン含有材料流れ(本実施例におけるホスゲン含有材料流れは1つの新鮮なホスゲンと1つの循環するホスゲンからなる)を管式反応器に進入させて予熱昇温する前に、それに含まれた物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を0.5%に制御した。
【0042】
反応生成物を反応領域から離させた後、圧力が0.08MPaのプロセス領域に進入させた。クロロベンゼンでリンスして得た1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート溶液を精留・精製した後、ホスゲンおよびHClを含有しない1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート溶液を得た。その後、精留・分離・純化によって、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート製品を得た。反応装置が連続して3ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が約15Kpaとなった。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器において微量の固体物が存在するが、反応の継続に影響しなかった。
【0043】
実施例2
【0044】
精留によって、運転過程で、ホスゲン含有材料流れを管式反応器に進入させる前、且つ予熱昇温を行う前に、含まれた物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を0.8%に制御した。その他の試験条件が実施例1と同様であり、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート製品を得た。反応装置が連続して2ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が約15Kpaとなった。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器において微量の固体物が存在するが、反応の継続に影響しなかった。
【0045】
実施例3
【0046】
精留によって、運転過程で、ホスゲン含有材料流れを管式反応器に進入させる前、且つ予熱昇温を行う前に、含まれた物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を0.1%に制御した。その他の試験条件が実施例1と同様であり、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート製品を得た。反応装置が連続して3ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が12Kpa程度に維持した。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器および管路において固体付着物がなく、管式反応器において微量の固体物が存在するが、反応の継続に影響しなかった。
【0047】
実施例4
【0048】
窒素ガスを1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサンと混合した後(窒素ガスと1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサンガスの体積比が0.6:1であり)、ホスゲンと共に管式反応器で連続して反応させた。1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサンとホスゲンの供給圧力が0.3MPaであり、この2種の材料流れの供給温度が330℃であり(材料流れを予熱することにより該供給温度に達し)、反応領域の絶対圧力が0.12MPaであり、大気圧よりもやや高い。ホスゲンと1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサンの供給モル比が5:1であり、反応領域の温度が400℃であり、材料流れの反応器への進入の流速が65m/sであり、平均接触時間が1.8sである。精留によって、運転過程でホスゲン含有材料流れ(ホスゲン含有材料流れは、1つの新鮮なホスゲンと1つの循環するホスゲンからなる)を管式反応器に進入させて予熱昇温する前に、含まれた物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を0.6%に制御した。
【0049】
反応生成物を反応領域から離させた後、圧力が0.1MPaのプロセス領域に進入させた。クロロベンゼンでリンスして得たジイソシアネートイソホロン溶液を精留・精製した後、ホスゲンおよびHClを含有しないジイソシアネートイソホロン溶液を得た。その後、精留・分離・純化によって、ジイソシアネートイソホロン製品を得た。反応装置が連続して2.5ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器出口と入口の圧力差が約15Kpaとなった。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器において微量の固体物が存在するが、反応の継続に影響しなかった。
【0050】
比較例1
【0051】
比較例1は、ほとんど実施例1と同様であり、その相違点が以下の通りである。物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を2.5%に制御して、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート製品を得た。反応装置が連続して1ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が50Kpa程度に向上し、明らかに変化した。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器に明らかな固体物が存在し、反応の継続に影響した。
【0052】
比較例2
【0053】
比較例2は、ほとんど実施例1と同様であり、その相違点が以下の通りである。物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を1.5%に制御して、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート製品を得た。反応装置が連続して2ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が50Kpa程度に向上し、明らかに変化した。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器において明らかな固体物が存在し、反応の継続に影響した。
【0054】
比較例3
【0055】
比較例3は、ほとんど実施例4と同様であり、その相違点が以下の通りである。物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を2.0%に制御して、ジイソシアネートイソホロン製品を得た。反応装置が連続して1.2ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が45Kpa程度に向上し、明らかに変化した。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器において明らかな固体物が存在し、反応の継続に影響した。
【0056】
当業者であれば、本明細書の教示下で、本発明に対して修正または調整を行うことができることを理解すべきである。これらの修正または調整は、本発明の特許請求の範囲内に限定されるべきである。
【手続補正書】
【提出日】2021-04-09
【手続補正1】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、気相でイソシアネートを調製する方法に関し、特に、ホスゲン加熱システムおよび反応システムにおけるコークス化を効果的に低下させることができるイソシアネートの調製方法に関する。
【背景技術】
【0002】
脂肪族または脂環族または芳香族アミンの気相ホスゲン化反応により、該当するイソシアネートを調製することができる。通常、気相ホスゲン化反応は、200~600℃で行われる。該方法は、高温下で行われるので、頻繁的な点検修理に起因してホスゲンが漏れるリスクを向上させず、長期にわたって安定的に操作することを実現するために、その設計が特殊な要求を満たしなければならない。
【0003】
早期の特許出願、たとえば、EP593334B1およびEP699657B1では、ホスゲンまたは塩化水素ガスを利用または破壊する可能性が開示されており、ホスゲンを再循環することに関連する具体的な問題が検討されていない。しかしながら、近代的な産業化生産過程では、安全性、環境保護性および経済性などの点から考え、ホスゲン化過程においていずれもホスゲンを再利用する形態が採用されている。
【0004】
特許出願DE102009032413.5、GB737442では、いずれも、イソシアネートをホスゲン化合成する反応過程で、ホスゲンを回収し、ホスゲンの循環を実現する方法が記載されている。GB737442では、回収したホスゲンのHCl含有量が0.5~0.7%であるという指標が記載されている。
【0005】
特許出願EP11160575.4では、気相ホスゲン化過程でホスゲンにおけるCOの含有量が限定されており、気相でアミンをホスゲン化してイソシアネートを生成する過程で最初の低い(1%未満である)一酸化炭素材料流れを反応材料流れとして用いることにより、ホスゲンが高温下で一酸化炭素および塩素ガスに分解するという問題が解決されている。
【0006】
特許出願EP2111392では、アミン含有材料流れを混合する前にホスゲン含有材料流れにおける塩素ガスの質量部が1000重量ppm未満であり、および/またはホスゲン含有材料流れにおける臭素の質量部が50重量ppm未満であるため、気相ホスゲン化法に存在する高温下での塩素ガスの腐食問題が解決され、ホスゲンにおける臭素の含有量を制御することにより、期待しない下流側製品イソシアネートの色度向上の問題が解決されている。
【0007】
特許出願DE102005037328.3では、気相ホスゲン化反応過程で、再循環するホスゲン材料流れから塩化水素を分離して、ジアミン含有材料流れと混合する前にホスゲン含有材料流れにおける塩化水素の質量部を15重量%未満にすることが要求されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、気相でイソシアネートを調製する方法を提供する。該方法は、ホスゲン加熱昇温および反応過程で熱交換器および機器において閉塞物を形成する状況を効果的に改善し、閉塞物の形成を低減することができることで、より長い運転周期を取得し、ホスゲン含有システムの点検修理回数を低減させ、装置の運転の安全性を向上させる。
【0009】
その目的を達成するために、本発明は、以下の技術手段を講じた。
【0010】
不活性ガスが存在するかまたは存在しない条件下で、アミン含有ガス流れおよびホスゲン含有材料流れを反応領域に進入させ、前記アミンと前記ホスゲンとを反応領域において気体形態で接触させてホスゲン化反応させて、反応領域において気体の目標イソシアネートを調製する、気相でイソシアネートを調製する方法であって、前記ホスゲン含有材料流れを反応領域に進入させる前に予熱昇温し、前記予熱昇温を行う前に、前記ホスゲン含有材料流れに含まれた物質Aの質量部が1%未満であり、前記物質Aは、NCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質である、気相でイソシアネートを調製する方法。
【0011】
一部の好適な実施形態において、前記予熱昇温を行う前に、前記ホスゲン含有材料流れに含まれた物質Aの質量部が0.5%未満に制御されることが好ましく、0.1%未満に制御されることがより好ましい。もちろん、より低いレベルに制御されてもよい。
【0012】
気相ホスゲン化過程では、アミンおよびホスゲンを気相状態に維持する必要がある。反応前、アミン含有材料流れおよびホスゲン含有材料流れをそれぞれ200℃以上、たとえば200~600℃、好ましくは200~450℃に予め加熱しながら、反応領域に進入させた後、反応領域の温度も200~600℃、好ましくは200~450℃に制御する。反応材料および反応生成物の高温下での安定性は、気相ホスゲン化反応の重要な考慮要素となる。アミンおよびイソシアネートの高温下での停滞時間を短縮させるために、従来技術に用いられた形態は、たとえば、加熱気化過程でアミンの高温下での停滞時間をできるだけ短縮させる必要があると同時に、反応により生成したイソシアネートが高温下で安定しないので、急冷降温の形態で反応により生成したイソシアネートガスをできるだけ速く低温安定状態に冷却させる必要がある。従来技術において異なる形態でアミンおよびイソシアネートの高温下での停滞時間をできるだけ短縮させるが、アミンおよびイソシアネートの高温下での分子鎖切断、分解、重合などの問題を依然として根絶しにくい。
【0013】
イソシアネートの調製に用いられる有機アミン(アミンと略称)は、高温下で分子鎖切断を発生する、或いは小分子のアミンまたはオレフィン性二重結合含有の成分に分解する可能性がある。これらの分解による成分は、アミン材料流れに伴って光化学反応器に進入して該当する小分子イソシアネートまたはオレフィン性二重結合含有の成分を生成する。気相ホスゲン化反応により生成した目標イソシアネート(すなわち、生産過程で生成した目標イソシアネート生成物)も高温下で分子鎖切断、分解を発生して、小分子イソシアネートまたはオレフィン性二重結合含有の成分を生成する。本発明に記載される物質Aに関するNCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質とは、上述した期待しないNCO基含有の物質(非目標イソシアネート)および/またはオレフィン性二重結合含有の成分を指す。
【0014】
アミンであろうと、イソシアネートであろうと、高温下で分解し、最終に、反応により分子量の小さいイソシアネートまたはオレフィン性二重結合含有の物質を生成する。これらの分子量の小さいイソシアネートまたはオレフィン性二重結合含有の物質は、低い沸点を有するだけでなく、ホスゲンの再利用過程で、循環するホスゲン流れに分布しやすい。それと同時に、これらの小分子イソシアネートが高い反応活性を有し、オレフィン性二重結合含有の物質の二重結合が重合しやすい特性を有するため、受熱過程で重合体を生成し、タールおよび閉塞物を形成することがより容易となる。気相ホスゲン化反応では、ホスゲン流れを200~600℃に加熱し、ホスゲン化反応の温度も200~600℃の範囲内にする必要があるため、ホスゲン加熱昇温および反応過程では、ホスゲンに含まれたNCO系物質および\またはオレフィン系物質が重合反応を極めて発生しやすく、熱交換器および反応機器におけるコークス化を引き起こす以外、熱交換能力の降下、熱交換器の塞ぎ、反応システムの塞ぎ、副反応の増加などの問題を引き起こして、装置の運転周期に影響を及ぼす。本願の発明者は、前記予熱昇温を行う前に、前記ホスゲン含有材料流れに含まれた物質A(NCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を1%未満、好ましくは0.5%未満、より好ましくは0.1%未満に制御することにより、これらの問題を効果的に改善するとともに、熱交換器の塞ぎ、反応システムの塞ぎなどの現象を効果的に回避することができることで、装置の運転周期を延長することができることを見出した。
【0015】
当該分野では、イソシアネートの調製過程で、反応領域から得た基本的に気体となる反応混合物から、過量の反応していないホスゲンおよび形成した塩化水素ガスを分離することにより、分離された少なくとも一部の過量のホスゲンを反応領域までに再循環させ、このようなホスゲンを循環するホスゲンと呼ぶ。本発明に記載されるホスゲン含有材料流れにおけるホスゲンは、新鮮なホスゲンおよび/または循環するホスゲンを含む。ホスゲン含有材料流れの反応領域(反応空間)への導入は、単一のホスゲン含有材料流れで行われてもよいし、複数のサブホスゲン含有流れで行われてもよい。2つ以上のサブホスゲン含有流れで反応領域へホスゲン含有材料流れを導入する場合に対して、サブホスゲン含有流れを共に反応領域に添加して合流のホスゲン含有材料流れ(または、ホスゲン材料流れと呼ばれる)を生成するとともに、ホスゲン材料流れにおける物質A(すなわち、NCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部が各々のサブホスゲン含有流れにおける物質A(すなわち、NCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部に由来する。その場合、このような形態で、合流のホスゲン含有材料流れにおける物質Aの質量部を算出する。NCO基含有の物質の含有量の計算に対して、物質Aには、含有可能性のある、反応が調製しようとする目標イソシアネートが含まれない。
【0016】
各種のサブホスゲン含有流れ(たとえば、循環するホスゲンおよび新鮮なホスゲン)は、反応領域に導入された前に合併して合流のホスゲン含有ガス流れを形成してから、反応空間に導入される。複数のサブ流れ(各種の場合で、循環するホスゲン、新鮮なホスゲンまたはその混合物であってもよい)を同一または異なる位置で反応空間に導入して、反応過程でホスゲン含有材料流れを導入することができる。
【0017】
本発明において、用語「新鮮なホスゲン」とは、ホスゲン化反応において再循環しておらず、一般的に塩素ガスおよび一酸化炭素からホスゲンを合成した後、いずれのホスゲン反応に関する反応段階を経由していないホスゲン含有材料流れを指す。
【0018】
イソシアネートを調製する反応装置が運転する初期段階では、反応に用いられるホスゲンは、主に新鮮なホスゲンから由来する。装置が安定して運転した後、アミンおよびホスゲン化反応におけるイソシアネートの高温下での分解の影響を受けて、循環するホスゲンにおけるNCO系物質(すなわち、NCO基含有の物質)および/またはオレフィン性二重結合系物質の質量部がだんだん向上し、ホスゲン材料流れの昇温および反応過程で一連の期待しない閉塞物を形成して、反応に対して不可逆の影響を及ぼす。そのため、反応が開始した後、予熱昇温前のホスゲン含有材料流れに含まれた平均の物質A(NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質)の質量部を1%未満に制御する必要がある。
【0019】
本発明に対して、反応混合物から循環するホスゲンを取得する方法は、当該技術分野に周知されており(たとえば特許文献GB737442Aに、該当する内容がすでに開示されており)、本発明の重点ではないので、繰り返し説明しない。
【0020】
ホスゲン含有材料流れに含まれた物質A(NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質)の質量部を1%未満に制御することは、該材料流れにおけるNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を除去することによって行われることができる。さらに、当該技術分野に周知された慣用の分離方法によって制御することができる。本発明では、直接的に従来の分離方法を利用して予熱昇温前のホスゲン含有材料流れに含まれた物質A(NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質)を除去する目的を達成することができ、物質A(NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質)の質量部を所要範囲に制御できれば、それを特に限定しなくてもよい。例えば、精留、吸着、洗気および他の類似する形態のうちの1種または複数種の組合せが用いられてもよい。一部の実施形態において、前記予熱昇温を行う前に、前記ホスゲン含有材料流れに含まれた前記物質Aの質量部は、精留、吸着、洗気のうちの1種または2種以上の組合せにより制御される。
【0021】
ホスゲン材料流れにおけるNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質の制御は、好ましくは精留および/または洗気によって行われてもよいし、精留と洗気の組合せによって行われてもよい。好適な洗気媒体は、反応と同じ溶剤を用いることが好ましい。好適に用いられる溶剤は、たとえば、トルエン、キシレン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどのうちの1種または2種の組合せであってもよい。組み合わせた洗気および精留において、洗気媒体を用いることにより、NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を含むホスゲン材料流れからNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質をリンスして、NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質の含有量が一定のレベルのホスゲン材料流れを取得しながら、ホスゲン、NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を含む洗気材料流れを取得する。好ましくは、ホスゲン含有の洗気材料流れをホスゲン精製システムまでに帰還させ、洗気材料流れにおけるNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を一定の含有量に達させた後、精留によりこのような洗気材料流れから分離して、NCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を取得する。洗気および精留の操作は、圧力1~10バー(絶対圧力)で行われ、好ましくは1~5バー(絶対圧力)で行われることができる。
【0022】
一部の実施形態において、吸着によってホスゲン材料流れにおけるNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質を分離する。たとえば、ホスゲン循環システムにより得られた循環するホスゲン材料流れを、吸着ユニットにより、好ましくは活性炭を用いて吸着して、循環するホスゲンにおけるNCO系物質および/またはオレフィン性二重結合系物質の含有量を一定の範囲に制御する。
【0023】
一部の実施形態において、分離処理された循環するホスゲンと新鮮なホスゲンとを混合した後、物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の含有量が1%未満のホスゲン材料流れを得る。
【0024】
本発明において、ホスゲン含有材料流れは、0~10wt%のHClガスを含んでもよい。
【0025】
本発明に係る方法において、追加する不活性媒体(或いは、本発明において「不活性ガス」とも呼ばれる)が用いられてもよい。不活性媒体は、反応空間において反応温度下で気体形態となるとともに、反応過程に存在する化合物と反応できない媒体である。不活性媒体は、一般的に反応前にアミンおよび/またはホスゲンと混合されるが、材料流れと別に導入されてもよい。たとえば、ヘリウムガスまたはアルゴンガスの希有ガスなどの窒素ガス、或いは、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、キシレン、二酸化炭素または一酸化炭素などの芳香族化合物が用いられてもよいし、これらの不活性媒体のうちの1種または複数種の組合せが用いられてもよい。好ましくは、窒素ガスおよび/またはクロロベンゼンが不活性媒体として用いられる。不活性媒体は、アミン含有またはホスゲン含有材料流れに導入されて不活性媒体とアミンガスまたはホスゲンのガス体積比を0~20:1にする。ホスゲン含有材料流れへ1つまたは複数の追加する不活性材料流れを導入すれば、本発明に係る方法を実施する場合、これらのガス流れが合流のホスゲン含有材料流れのサブ流れとしてホスゲン含有材料流れの計算に含まれ、すなわち、ホスゲン含有材料流れにおける物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を計算する際に考えられる。
【0026】
一部の実施形態において、前記アミン含有ガス流れは、不活性ガスをさらに含み、不活性ガスとアミンガスの体積比を0~20:1にする。不活性ガスは、前記アミン含有ガス流れに添加されることにより前記反応領域に導入される。
【0027】
および/または、前記ホスゲン含有材料流れは、不活性ガスをさらに含み、不活性ガスとホスゲンの体積比を0~20:1にする。不活性ガスは、前記ホスゲン含有材料流れに添加されることにより前記反応領域に導入される。
【0028】
一部の実施形態において、反応領域において、前記ホスゲンと前記アミンとの反応が0.01~0.5Mpa、好ましくは0.07~0.3MPa、より好ましくは0.09~0.2MPaの絶対圧力下で行われる。本発明の方法において、反応領域における一般的な圧力に基づき、反応領域における温度が、用いられるアミンの沸点よりも高くいものを選択し、反応領域の温度を一般的に200~600℃、好ましくは250~450℃に制御する。
【0029】
一部の実施形態において、前記アミンと前記ホスゲンとの前記反応領域における平均反応時間(または、平均接触時間と呼ばれる)が0.01~15sであり、0.05~10sであることが好ましく、0.1~5sであることがより好ましい。平均反応時間は、アミンとホスゲンとが混合し始めるから、反応混合物が反応空間(反応領域)から離れて後処理段階に進入するまでの時間である。
【0030】
気相でイソシアネートを調製する場合、アミンと比べ、ホスゲンは過量に用いられるものである(すなわち、化学計量が過量である)。一部の実施形態において、前記ホスゲンとアミンにおけるアミノ基のモル比が2.2~20:1であり、たとえば2.2:1、5:1、10:1、15:1、20:1などであってもよく、4~10:1であることが好ましく、6~8:1であることがより好ましい。
【0031】
一部の実施形態において、前記アミン含有ガス流れおよび前記ホスゲン含有材料流れが反応領域に進入する流速がそれぞれ5~100m/sであり、10~80m/sであることが好ましい。
【0032】
前記目標イソシアネートの一般式がR(NCO)である。目標イソシアネートは、生産ニーズにより決定され、たとえば、脂肪族、脂環族または芳香族イソシアネートのうちの1種または2種の組合せであってもよく、それを特に限定しない。好ましくは、Rは、炭素原子数4~15の脂肪族、脂環族または芳香族炭化水素基であり、nは、1~10の整数である。好ましくは、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-ジメチルイソシアネートシクロヘキサン、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ジイソシアネートイソホロン、4,4’ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,8-ジイソシアナート-4-イソシアナートメチルオクタンまたはノナントリイソシアネートのうちのいずれか1種または複数種から選ばれる。
【0033】
本発明では、用いられるアミンは、当該分野においてイソシアネートを調製する時に使用を許可する各種のアミンであってもよく、生産ニーズによれば、具体的なアミン原料を具体的に確定し、それを特に限定しない。一部の実施形態において、前記アミンは、たとえば、アニリン、シクロヘキシルアミン、1,4-ブタネジアミン、1,3-シクロヘキサンジメチルアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジメチレンジアミン、2、4または2,6-トルエンジアミン、1,8-ジアミノ-4-(アミノメチル)オクタンまたはトリアミノノナンから選ばれる。
【0034】
一部の実施形態において、前記反応は、連続して操作するように行われ、すなわち、原料を連続して供給し、反応生成物を連続して排出することである。
【0035】
本発明に係る技術方案は、以下の有益な効果を有する。
【0036】
本発明に係る気相でアミンおよびホスゲンを反応させて該当するイソシアネートを生成する方法は、ホスゲン加熱昇温および反応過程で熱交換器および機器において閉塞物を形成することを回避することができることで、より長い運転周期を取得し、ホスゲン含有システムの点検修理回数を低減させ、装置の運転の安全性を向上させる。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下は、本発明の技術方案をより良く理解するために、実施例を結び付けて本発明の内容についてさらに説明する。しかし、本発明の内容は、以下の実施例に限定されるのもではない。
【0038】
以下の実施例または比較例において、ホスゲン材料流れ(すなわち、ホスゲン含有材料流れ)における物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部は、気相クロマトグラフにより測定された。測定方法は、アジリン7890A気相クロマトグラフにより測定され、クロマトグラフィックカラムの型番がJ&W112-2112CAM15m、0.25mm、0.25μmであり、検出器がFID検出器であり、供給口の温度が250℃であった。カラム温度の昇温手順は、50℃で2min維持した後、10℃/minの速度で100℃までに昇温して2min維持し、そして25℃/minの速度で250℃までに昇温して2min維持し、検出器の温度が250℃であった。まず、ガスクロマトグラフィー質量分析で、ホスゲン材料流れにおけるNCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質の気相クロマトグラフにおける停滞時間を確定し、次に、プロピルイソシアネートを外部標準物として、外部標準法で、ホスゲン材料流れにおける物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を確定した。
【0039】
以下の実施例において、ホスゲン材料流れにおける物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部は、精留によって制御された。充填塔の理論プレート数が25であり、循環するホスゲンの精製過程で、連続精留の形態で循環するホスゲン材料流れを純化し、塔頂圧力を2barに制御し、塔頂温度を10℃程度に制御し、塔釜温度を160℃に制御した。還流比を制御することにより、ホスゲン材料流れにおける物質A(NCO含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を所要範囲内に制御した。
【0040】
実施例1
【0041】
窒素ガスを1,6-ヘキサンジアミンと混合した後(窒素ガスと1,6ヘキサンジアミンガスの体積比が0.5:1である)、ホスゲンと共に管式反応器で連続して反応させた。1,6-ヘキサンジアミンとホスゲンの供給圧力が0.25MPaであり、この2種の材料流れの供給温度が310℃であり(材料流れを予熱することにより該供給温度に達し)、反応領域における絶対圧力が0.09MPaであり、大気圧よりもやや低い。ホスゲンと1,6-ヘキサンジアミンの供給のモル比が6:1であり、反応領域の温度が420℃であり、材料流れの反応器への進入の流速が70m/sであり、平均接触時間が2sである。精留によって、ホスゲン含有材料流れ(本実施例におけるホスゲン含有材料流れは1つの新鮮なホスゲンと1つの循環するホスゲンからなる)を管式反応器に進入させて予熱昇温する前に、それに含まれた物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を0.5%に制御した。
【0042】
反応生成物を反応領域から離させた後、圧力が0.08MPaのプロセス領域に進入させた。クロロベンゼンでリンスして得た1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート溶液を精留・精製した後、ホスゲンおよびHClを含有しない1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート溶液を得た。その後、精留・分離・純化によって、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート製品を得た。反応装置が連続して3ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が約15Kpaとなった。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器において微量の固体物が存在するが、反応の継続に影響しなかった。
【0043】
実施例2
【0044】
精留によって、運転過程で、ホスゲン含有材料流れを管式反応器に進入させる前、且つ予熱昇温を行う前に、含まれた物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を0.8%に制御した。その他の試験条件が実施例1と同様であり、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート製品を得た。反応装置が連続して2ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が約15Kpaとなった。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器において微量の固体物が存在するが、反応の継続に影響しなかった。
【0045】
実施例3
【0046】
精留によって、運転過程で、ホスゲン含有材料流れを管式反応器に進入させる前、且つ予熱昇温を行う前に、含まれた物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を0.1%に制御した。その他の試験条件が実施例1と同様であり、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート製品を得た。反応装置が連続して3ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が12Kpa程度に維持した。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器および管路において固体付着物がなく、管式反応器において微量の固体物が存在するが、反応の継続に影響しなかった。
【0047】
実施例4
【0048】
窒素ガスを1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサンと混合した後(窒素ガスと1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサンガスの体積比が0.6:1であり)、ホスゲンと共に管式反応器で連続して反応させた。1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサンとホスゲンの供給圧力が0.3MPaであり、この2種の材料流れの供給温度が330℃であり(材料流れを予熱することにより該供給温度に達し)、反応領域の絶対圧力が0.12MPaであり、大気圧よりもやや高い。ホスゲンと1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサンの供給モル比が5:1であり、反応領域の温度が400℃であり、材料流れの反応器への進入の流速が65m/sであり、平均接触時間が1.8sである。精留によって、運転過程でホスゲン含有材料流れ(ホスゲン含有材料流れは、1つの新鮮なホスゲンと1つの循環するホスゲンからなる)を管式反応器に進入させて予熱昇温する前に、含まれた物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を0.6%に制御した。
【0049】
反応生成物を反応領域から離させた後、圧力が0.1MPaのプロセス領域に進入させた。クロロベンゼンでリンスして得たジイソシアネートイソホロン溶液を精留・精製した後、ホスゲンおよびHClを含有しないジイソシアネートイソホロン溶液を得た。その後、精留・分離・純化によって、ジイソシアネートイソホロン製品を得た。反応装置が連続して2.5ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器出口と入口の圧力差が約15Kpaとなった。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器において微量の固体物が存在するが、反応の継続に影響しなかった。
【0050】
比較例1
【0051】
比較例1は、ほとんど実施例1と同様であり、その相違点が以下の通りである。物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を2.5%に制御して、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート製品を得た。反応装置が連続して1ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が50Kpa程度に向上し、明らかに変化した。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器に明らかな固体物が存在し、反応の継続に影響した。
【0052】
比較例2
【0053】
比較例2は、ほとんど実施例1と同様であり、その相違点が以下の通りである。物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を1.5%に制御して、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート製品を得た。反応装置が連続して2ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が50Kpa程度に向上し、明らかに変化した。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器において明らかな固体物が存在し、反応の継続に影響した。
【0054】
比較例3
【0055】
比較例3は、ほとんど実施例4と同様であり、その相違点が以下の通りである。物質A(NCO含有の物質およびオレフィン性二重結合含有の物質)の質量部を2.0%に制御して、ジイソシアネートイソホロン製品を得た。反応装置が連続して1.2ヶ月運転した後、ホスゲン加熱器の出口と入口の圧力差が45Kpa程度に向上し、明らかに変化した。そして、反応装置を停止させて点検修理処理を行った。ホスゲン加熱器、管路および管式反応器において明らかな固体物が存在し、反応の継続に影響した。
【0056】
当業者であれば、本明細書の教示下で、本発明に対して修正または調整を行うことができることを理解すべきである。これらの修正または調整は、本発明の特許請求の範囲内に限定されるべきである。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性ガスが存在するかまたは存在しない条件下で、アミン含有ガス流れおよびホスゲン含有材料流れを反応領域に進入させ、反応領域において前記アミンと前記ホスゲンとを気体形態で接触させてホスゲン化反応させて、反応領域において気体の目標イソシアネートを調製する、気相でイソシアネートを調製する方法であって、
前記ホスゲン含有材料流れを反応領域に進入させる前に予熱昇温し、
前記予熱昇温を行う前に、前記ホスゲン含有材料流れに含まれた物質Aの質量部が1%未満であり、
前記物質Aは、NCO基含有の物質および/またはオレフィン性二重結合含有の物質である、ことを特徴とする気相でイソシアネートを調製する方法。
【請求項2】
前記予熱昇温を行う前に、ホスゲン含有材料流れに含まれた物質Aの質量部が0.5%未満であり、好ましくは、0.1%未満である、ことを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記予熱昇温は、前記ホスゲン含有材料流れを反応領域に進入させる前に、200℃以上まで予熱昇温することであり、好ましくは200~600℃まで予熱昇温し、より好ましくは250~450℃まで予熱昇温する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
精留、吸着、洗気のうちの1種または2種以上の組合せにより、前記予熱昇温前の前記ホスゲン含有材料流れを処理して、予熱昇温前の前記ホスゲン含有材料流れに含まれた前記物質Aの質量部を制御し、
好ましくは、精留および/または洗気により、前記予熱昇温前の前記ホスゲン含有材料流れを処理する、ことを特徴とする請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
前記不活性ガスを前記アミン含有ガス流れに添加することによって前記反応領域に導入して、不活性ガスとアミンガスの体積比を0~20:1にし、および/または、
前記不活性ガスを前記ホスゲン含有材料流れに添加するることによって前記反応領域に導入して、不活性ガスとホスゲンの体積比を0~20:1にする、ことを特徴とする請求項1~4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
前記反応領域において、前記ホスゲンと前記アミンとの反応が0.01~0.5Mpa、好ましくは0.07~0.3MPa、より好ましくは0.09~0.2MPaの絶対圧力下で行われ、
前記反応領域の温度が200~600℃、好ましくは250~450℃に制御され、および/または、
前記アミンと前記ホスゲンの前記反応領域における平均反応時間が0.01~15sであることが好ましく、0.05~10sであることがより好ましく、0.1~5sであることがさらに好ましい、ことを特徴とする請求項1~5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
前記ホスゲンとアミンにおけるアミノ基のモル比が2.2~20:1であり、4~10:1であることが好ましく、6~8:1であることがより好ましい、ことを特徴とする請求項1~6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記アミン含有ガス流れおよび前記ホスゲン含有材料流れが反応領域に進入する流速がそれぞれ5~100m/sであり、10~80m/sであることが好ましい、ことを特徴とする請求項1~7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記ホスゲン含有材料流れに、新鮮なホスゲンおよび/または循環するホスゲンが含まれ、および/または、
前記ホスゲン含有材料流れに、0~10wt%のHClガスが含まれる、請求項1~8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
前記物質Aにおける前記NCO基含有の物質は、目標イソシアネートを含まない、請求項1~9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
前記目標イソシアネートの一般式がR(NCO)であり、
ただし、Rは、炭素原子数4~15の脂肪族、脂環族または芳香族炭化水素基であり、nは、1~10の整数であり、
好ましくは、フェニルイソシアネート、シクロヘキシルイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,3-ジメチルイソシアネートシクロヘキサン、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、ジイソシアネートイソホロン、4,4’ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、m-フェニレンジメチレンジイソシアネート、トルエンジイソシアネート、1,8-ジイソシアナート-4-イソシアナートメチルオクタンまたはノナントリイソシアネートのうちの1種または2種以上の組合せから選ばれ、
前記アミンは、アニリン、シクロヘキシルアミン、1,4-ブタネジアミン、1,3-シクロヘキサンジメチルアミン、1,6-ヘキサンジアミン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、1-アミノ-3,3,5-トリメチル-5-アミノメチルシクロヘキサン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンジアミン、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジメチレンジアミン、2,4または2,6-トルエンジアミン、1,8-ジアミノ-4-(アミノメチル)オクタンまたはトリアミノノナンのうちの1種または2種の組合せから選ばれる、請求項1~10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
前記気相でイソシアネートを調製する方法は、連続して操作するように行われる、請求項1~11のいずれか一項に記載の方法。
【国際調査報告】