(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公表特許公報(A)
(11)【公表番号】
(43)【公表日】2022-02-01
(54)【発明の名称】オンチップミニチュア電子源及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
H01J 1/316 20060101AFI20220125BHJP
H01J 9/02 20060101ALI20220125BHJP
【FI】
H01J1/316
H01J9/02 M
【審査請求】有
【予備審査請求】未請求
(21)【出願番号】P 2021525686
(86)(22)【出願日】2019-11-07
(85)【翻訳文提出日】2021-05-27
(86)【国際出願番号】 CN2019116135
(87)【国際公開番号】W WO2020098555
(87)【国際公開日】2020-05-22
(31)【優先権主張番号】201811340399.2
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(31)【優先権主張番号】201821854867.3
(32)【優先日】2018-11-12
(33)【優先権主張国・地域又は機関】CN
(81)【指定国・地域】
(71)【出願人】
【識別番号】507232478
【氏名又は名称】北京大学
【氏名又は名称原語表記】PEKING UNIVERSITY
【住所又は居所原語表記】No.5, Yiheyuan Road, Haidian District, Beijing 100871, China
(74)【代理人】
【識別番号】100145403
【氏名又は名称】山尾 憲人
(74)【代理人】
【識別番号】100132241
【氏名又は名称】岡部 博史
(74)【代理人】
【識別番号】100113170
【氏名又は名称】稲葉 和久
(72)【発明者】
【氏名】魏 賢龍
(72)【発明者】
【氏名】楊 威
【テーマコード(参考)】
5C227
【Fターム(参考)】
5C227AA08
5C227BB12
5C227BB13
5C227BB18
5C227BB29
5C227BB30
5C227FF59
5C227FF60
(57)【要約】
オンチップミニチュア電子源及びその製造方法である。当該オンチップミニチュア電子源は、熱伝導層(10)を備えており、同じ電極対の少なくとも1つの電極(122)は絶縁層の貫通孔(111)を介して熱伝導層(10)に接続される。このようにして、当該オンチップミニチュア電子源によって生成された熱は、当該電極(122)及び熱伝導層(10)を通して放熱することができ、それによって、オンチップ電子源の放熱能力を大幅に向上させることができる。従って、当該オンチップミニチュア電子源は、複数の単一電子源を同じ基板上に集積して、高度に集積された電子源集積アレイを形成することができ、その結果、当該オンチップ電子源は、より大きな全体的な放出電流を有し、より多くの適用要件を満たすことができる。当該オンチップミニチュア電子源は、例えば、X線管、マイクロ波管、フラットパネルディスプレイなどの、電子源を含む様々な電子デバイスに広く適用できる。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
オンチップミニチュア電子源であって、
熱伝導層と、
前記熱伝導層の上面に位置する絶縁層であって、抵抗スイッチング材料で作られ、少なくとも1つの貫通孔が設置されている、前記絶縁層と、
前記絶縁層の上面に位置する少なくとも1つの電極対であって、前記電極対の少なくとも1つの電極が前記貫通孔を介して前記熱伝導層と接触して接続する、前記少なくとも1つの電極対と、
を含み、
前記電極対の2つの電極の間にギャップがあり、
前記ギャップの下の絶縁層領域にトンネル接合が形成される、ことを特徴とするオンチップミニチュア電子源。
【請求項2】
前記ギャップの幅は10ミクロン以下である、ことを特徴とする請求項1に記載のオンチップミニチュア電子源。
【請求項3】
前記オンチップミニチュア電子源は、
リード電極層と、前記リード電極層の片側に位置する絶縁支持構造とを含むリード電極であって、前記リード電極層には少なくとも1つの穴が設けられている、前記リード電極をさらに含み、
前記絶縁支持構造は、前記リード電極層が前記電極対の上に懸架されるように、前記電極対と前記リード電極層との間に位置する、ことを特徴とする請求項1又は2に記載のオンチップミニチュア電子源。
【請求項4】
前記オンチップミニチュア電子源は、
前記熱伝導層の下に位置するヒートシンクをさらに含み、
前記熱伝導層は、前記ヒートシンクに貼り合わせられている、ことを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のオンチップミニチュア電子源。
【請求項5】
前記絶縁層は、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化ゲルマニウム、ダイヤモンド、及びアモルファスカーボンから1つ又は複数を選択する、ことを特徴とする請求項1から4のいずれか1項に記載のオンチップミニチュア電子源。
【請求項6】
前記電極対の電極材料は、金属、グラフェン、及びカーボンナノチューブから1つ又は複数を選択する、ことを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のオンチップミニチュア電子源。
【請求項7】
前記熱伝導層は、金属、ダイヤモンド、高濃度にドープされた半導体から1つ又は複数を選択する、ことを特徴とする請求項1から6のいずれか1項にオンチップミニチュア電子源。
【請求項8】
前記熱伝導層は、基板又は前記基板の上に設置された材料層である、ことを特徴とする請求項1から7のいずれか1項に記載のオンチップミニチュア電子源。
【請求項9】
オンチップミニチュア電子源の製造方法であって、
熱伝導層を提供するステップと、
前記熱伝導層の上に、抵抗スイッチング材料で作られ、少なくとも1つの貫通孔が設置されている絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層の表面の一部を覆う少なくとも1つの電極対を形成するステップであって、前記電極対の2つの電極の間にギャップがあり、前記電極対の少なくとも1つの電極が前記貫通孔を介して前記熱伝導層と接触して接続する、前記絶縁層の表面の一部を覆う少なくとも1つの電極対を形成するステップと、
前記ギャップの下の絶縁層がソフトブレイクダウンされ抵抗スイッチング特性を示すように制御して、前記ギャップの下の絶縁層領域にトンネル接合を形成するステップと、
を含むことを特徴とする方法。
【請求項10】
前記方法は、
リード電極層と前記リード電極層の片側に位置する絶縁支持構造を含むリード電極を製造するステップであって、前記リード電極層には少なくとも1つの穴が設けられている、前記リード電極を製造するステップをさらに含み、
前記ギャップの下の絶縁層がソフトブレイクダウンされ抵抗スイッチング特性を示すように制御して、前記ギャップの下の絶縁層領域にトンネル接合を形成する前記ステップの前又は後に、
前記リード電極層が前記電極対の上に懸架されるように、前記絶縁支持構造と前記電極対とを接続するステップ、及び/又は、前記絶縁支持構造と前記絶縁層とを接続するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記方法は、
前記熱伝導層の下にヒートシンクを形成するステップであって、前記ヒートシンクと前記熱伝導層とは接触している、前記熱伝導層の下にヒートシンクを形成するステップをさらに含む、ことを特徴とする請求項9又は10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
(関連出願の相互参照)
本出願は、2018年11月12日に中国専利局に提出した、出願番号が201811340399.2であって、発明の名称が「オンチップミニチュア電子源及びその製造方法」である中国特許出願、及び2018年11月12日に中国専利局に提出した、出願番号が201821854867.3であって、発明の名称が「オンチップミニチュア電子源」である中国特許出願に基づく優先権を主張するものであり、それらの全内容を本出願に参照により援用する。
【0002】
本出願は、電子科学技術の分野に関し、特に、オンチップミニチュア電子源及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0003】
真空電子デバイス(例えば、X線管、マイクロ波管、ブラウン管など)は、航空宇宙、医療健康、及び科学研究などの重要な分野に広く適用されているが、大型、高電力消費及び集積が難しいなどの問題にまだ直面する。これらの問題を解決するための解決策の1つは、小型化されたオンチップ真空電子デバイスを実現することである。電子源は、全ての真空電子デバイスに不可欠な重要なコンポーネントであり、後者にその作業に必要な自由電子ビームを提供する。現在、電子源の小型化及びオンチップ化は、真空電子デバイスの小型化及びオンチップ化を制限する主なボトルネックの1つであるため、高性能のオンチップミニチュア電子源は、真空エレクトロニクスの分野で緊急に必要とされている電子デバイスの一種である。
【0004】
オンチップミニチュア電子源の研究は1960年代に始まり、現在、様々なオンチップミニチュア電子源がある。しかしながら、既存のオンチップミニチュア電子源の全体的な放出電流は比較的小さく、より多くの適用要件を満たすことは困難である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
これを鑑みて、本出願は、オンチップミニチュア電子源及びその製造方法を提供して、オンチップミニチュア電子源の全体的な放出電流を増加させ、より多くの適用要件を満たすことができる。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の技術問題を解決するために、本出願は、次の技術案を採用する。
オンチップミニチュア電子源であって、
熱伝導層と、
前記熱伝導層の上面に位置する絶縁層であって、抵抗スイッチング材料で作られ、少なくとも1つの貫通孔が設置されている、前記絶縁層と、
前記絶縁層の上面に位置する少なくとも1つの電極対であって、前記電極対の少なくとも1つの電極が前記貫通孔を介して前記熱伝導層と接触して接続する、前記少なくとも1つの電極対と、を含み、
前記電極対の2つの電極の間にギャップがあり、
前記ギャップの下の絶縁層領域にトンネル接合が形成される。
【0007】
任意選択で、前記ギャップの幅は10ミクロン以下である。
【0008】
任意選択で、前記オンチップミニチュア電子源は、
リード電極層と、前記リード電極層の片側に位置する絶縁支持構造とを含むリード電極であって、前記リード電極層には少なくとも1つの穴が設けられる、前記リード電極をさらに含み、
前記絶縁支持構造は、前記リード電極層が前記電極対の上に懸架されるように、前記電極対と前記リード電極層との間に位置する。
【0009】
任意選択で、前記オンチップミニチュア電子源は、
前記熱伝導層の下に位置するヒートシンクをさらに含み、
前記熱伝導層は前記ヒートシンクに貼り合わせられている。
【0010】
任意選択で、前記絶縁層は、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化ゲルマニウム、ダイヤモンド、及びアモルファスカーボンから1つ又は複数を選択することができる。
【0011】
任意選択で、前記電極対の電極材料は、金属、グラフェン、及びカーボンナノチューブから1つ又は複数を選択することができる。
【0012】
任意選択で、前記熱伝導層は、金属、ダイヤモンド、高濃度にドープされた半導体から1つ又は複数を選択することができる。
【0013】
任意選択で、前記熱伝導層は、基板又は前記基板の上に設置された材料層である。
【0014】
オンチップミニチュア電子源の製造方法であって、
熱伝導層を提供するステップと、
前記熱伝導層の上に、抵抗スイッチング材料で作られ、少なくとも1つの貫通孔が設置される絶縁層を形成するステップと、
前記絶縁層の表面の一部を覆う少なくとも1つの電極対を形成するステップであって、前記電極対の2つの電極の間にギャップがあり、前記電極対の少なくとも1つの電極が前記貫通孔を介して前記熱伝導層と接触して接続する、前記絶縁層の表面の一部を覆う少なくとも1つの電極対を形成するステップと、
前記ギャップの下の絶縁層がソフトブレイクダウンされ抵抗スイッチング特性を示すように制御して、前記ギャップの下の絶縁層領域にトンネル接合を形成するステップを含む。
【0015】
任意選択で、前記方法は、
リード電極層と前記リード電極層の片側に位置する絶縁支持構造を含むリード電極を製造するステップであって、前記リード電極層には少なくとも1つの穴が設けられている、前記リード電極を製造するステップをさらに含み、
前記ギャップの下の絶縁層がソフトブレイクダウンされ抵抗スイッチング特性を示すように制御して、前記ギャップの下の絶縁層領域にトンネル接合を形成する前記ステップの前又は後に、
前記リード電極層が前記電極対の上に懸架されるように、前記絶縁支持構造と前記電極対とを接続するステップ、及び/又は、前記絶縁支持構造と前記絶縁層とを接続するステップをさらに含む。
【0016】
任意選択で、前記方法は、
前記熱伝導層の下にヒートシンクを形成するステップであって、前記ヒートシンクと前記熱伝導層とは接触している、前記熱伝導層の下にヒートシンクを形成するステップをさらに含む。
【発明の効果】
【0017】
従来技術と比較して、本出願は、次の有益な効果を有する。
上記の技術案によれば、本出願によるオンチップミニチュア電子源は熱伝導層を備えており、同じ電極対の少なくとも1つの電極が絶縁層の貫通孔を介して熱伝導層に接続されている。このようにして、当該オンチップミニチュア電子源によって生成された熱は、当該電極及び熱伝導層によって放熱することができ、それにより、オンチップ電子源の放熱能力を大幅に向上させることができる。従って、当該オンチップミニチュア電子源は、複数の単一電子源を同じ基板上に集積して、高度に集積された電子源集積アレイを形成することができ、その結果、当該オンチップ電子源は、より大きな全体的な放出電流を有し、より多くの適用要件を満たすことができる。例えば、本出願によるオンチップミニチュア電子源は、例えば、X線管、マイクロ波管、フラットパネルディスプレイなどの、電子源を含む様々な電子デバイスに広く適用できる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【
図1】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の三次元構成の概略図である。
【
図2】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の
図1の破線A-A’に沿った断面構造の概略図である。
【
図3】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の構成原理の概略図である。
【
図4】本出願の実施例によるオンチップミニチュア電子源におけるトンネル接合エネルギーバンド構造の概略図である。
【
図5】本出願の実施例によるオンチップミニチュア電子源製造方法の概略フローチャートである。
【
図6(1)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
【
図6(2)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
【
図6(3)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
【
図6(4)】本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
【
図7】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の三次元構成の概略図である。
【
図8】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の
図7の破線B-B’に沿った断面構造の概略図である。
【
図9】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の概略フローチャートである。
【
図10(1)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
【
図10(2)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
【
図10(3)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
【
図10(4)】本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスのうちの1つに対応する断面構造の概略図である。
【
図11】本出願の実施例3による他のオンチップミニチュア電子源の三次元構成の概略図である。
【
図12】本出願の実施例3によるオンチップミニチュア電子源の
図11の破線C-C’に沿った断面構造の概略図である。
【
図13】本出願の実施例3による他のオンチップミニチュア電子源の製造方法の概略フローチャートである。
【
図14】本出願の実施例3によるリード電極に対応する断面構造の概略図である。
【
図15】本出願の実施例4による他のオンチップミニチュア電子源の三次元構成の概略図である。
【
図16】本出願の実施例4によるオンチップミニチュア電子源の
図15の破線D-D’に沿った断面構造の概略図である。
【
図17】本出願の実施例4による他のオンチップミニチュア電子源の製造方法の概略フローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0019】
オンチップミニチュア電子源の研究は、1960年代に始まり、現在、例えば、マイクロチップ構造に基づく電界放出オンチップ電子源、金属(M)-絶縁体(I)-金属(M)トンネル接合に基づくトンネル電子源、負の電子親和力オンチップ電子源、オンチップミニチュア熱放出電子源など、様々な種類のオンチップ電子源がある。
【0020】
その中で、電界放出オンチップ電子源の主な問題は、動作電圧が高く、安定した動作が超高真空を必要とし、アレイの均一性が低いなどである。MIMトンネル電子源及び負の電子親和力電子源の主な問題は、電子放出効率が低く、放出電流密度が小さいことである。ミニチュアオンチップ熱放出電子源の主な問題は、放出効率が低く、放出電流密度が小さいことに加えて、局所温度が高く、消費電力が大きいなどの問題もある。
【0021】
上記のオンチップ電子源に存在する問題を解決するために、本出願の一実施例として、本出願の実施例は、抵抗スイッチング材料に基づく表面トンネル電子源を提供する。当該表面トンネル電子源は、平面マルチゾーン構造の表面トンネルミニチュア電子源である。具体的に、基板を含み、基板の表面に、接続された2つの導電領域と1つの絶縁領域とが形成され、絶縁領域は2つの導電領域の間に位置し、2つの導電領域に接続され、それによってトンネル接合を形成する。当該表面トンネル電子源は、1つの電極対をさらに含み、電極対を介して表面トンネル電子源に電圧を印加すると、電子がトンネル接合における低電位の導電領域から絶縁領域を通って高電位の導電領域にトンネルし、高電位の導電領域の絶縁領域に近い境界から真空に放出することができる。
【0022】
従来の多層MIM構造の垂直トンネル電子源に比べて、表面トンネル電子源の電子は、放出中に複数の材料層を通過する必要がなく、より高い放出効率を有する。
【0023】
表面トンネル電子源の場合、放出電流の実際の適用要件(一般にミリアンペア以上)を満たすために、同じ基板の表面で表面トンネル電子源のアレイ集積を実行して、全体的な放出電流を増加させる必要がある。しかし、表面トンネル電子源が動作している場合、基板の表面に位置する構成要素が発熱し、基板の熱伝導能力が低いので、集積アレイの数が多すぎると、熱が基板の表面に急速に蓄積し、デバイスの温度が急速に上昇し、最終的にデバイスが故障になる。デバイスの正常な機能を保証するために、アレイ集積の数を、100を超えないように制限する必要があり、これにより、全体的な放出電流が大幅に制限される。
【0024】
表面トンネル電子源の放熱性能を向上させて、全体的な放出電流を増加させるために、本出願の他の実施例として、本出願は、オンチップミニチュア電子源を提供して、熱伝導層と、熱伝導層の上面に位置する絶縁層であって、抵抗スイッチング材料で作られ、少なくとも1つの貫通孔が設置されている、前記絶縁層と、絶縁層の上面に位置する少なくとも1つの電極対と、を含み、電極対の少なくとも1つの電極は、貫通孔を介して熱伝導層と接触して接続し、電極対の2つの電極の間にギャップがある。このようにして、当該オンチップミニチュア電子源では、電極は、絶縁層の貫通孔を介して熱伝導層に接続される。このようにして、当該オンチップミニチュア電子源によって生成された熱は、電極及び熱伝導層によって放熱することができ、それにより、オンチップ電子源の放熱能力を大幅に向上させることができる。従って、当該オンチップミニチュア電子源は、複数の単一電子源を同じ基板上に集積して、高度に集積された電子源集積アレイを形成することができる。当該オンチップ電子源は、より大きな全体的な放出電流を有し、より多くの適用要件を満たすことができる。例えば、本出願によるオンチップミニチュア電子源は、例えば、X線管、マイクロ波管、フラットパネルディスプレイなどの、電子源を含む様々な電子デバイスに広く適用できる。
【0025】
本出願の上記の目的、特徴及び利点をより明らかに理解可能にするために、本出願の具体的な実施形態を、添付の図面を参照して以下に詳細に説明する。
【0026】
なお、本出願の実施例では、オンチップミニチュア電子源に設置されるトンネル接合は、1つ又は複数である。以下では、最初に、1つのトンネル接合だけが設置されるオンチップミニチュア電子源の実現方法を紹介する。
(実施例1)
【0027】
図1及び
図2を参照して、
図1は、本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の三次元構成の概略図であり、
図2は、当該オンチップミニチュア電子源の
図1における破線A-A’に沿った断面構造の概略図である。
【0028】
オンチップミニチュア電子源であって、
熱伝導層10と、
熱伝導層10の上面に位置する絶縁層11であって、抵抗スイッチング材料で作られ、貫通孔111が設置されている、前記絶縁層11と、
絶縁層11の上面に位置する電極対であって、第1の電極121と第2の電極122を含み、第2の電極122が貫通孔111を介して熱伝導層10と接触して接続する電極対と、
を含み、
第1の電極121と第2の電極122との間にギャップ13があり、ギャップ13の下の絶縁層11内にトンネル接合14が形成される。
【0029】
本出願の技術案を明確に理解するために、
図3は、本出願の実施例によるオンチップミニチュア電子源の原理構成図を示す。
図3に示すように、第1の電極121と第2の電極122との間のギャップ13の下に位置する絶縁層11がソフトブレイクダウンされ、このようにして、当該絶縁層領域内に、全体のギャップ13の下にある絶縁層11を横切る導電フィラメントが形成され、それにより、当該絶縁層領域は絶縁状態から導電状態に遷移し、その後、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移した後、導電フィラメントが切断され、ギャップ13の下の絶縁層領域に
図3に示すようなトンネル接合14を形成する。当該トンネル接合14は、第1の電極121から第2の電極122まで、接続された第1の導電領域141、絶縁領域142、及び第2の導電領域143を順番に含む。
【0030】
当該ギャップ13の下の絶縁層11の領域に形成されたトンネル接合のエネルギーバンド図を
図4に示す。このようにして、第1の電極121と第2の電極122とに電圧を印加した後、電子は、低電位の第1の導電領域141から絶縁領域142にトンネルし、絶縁領域142で加速して、真空エネルギー準位を超えるエネルギーを得て、高電位の第2の導電領域143に到達した後に放出される。
【0031】
なお、本出願の実施例では、「上面」は、2つの隣接する層が接触していることを意味する。
【0032】
また、熱伝導層10は、熱伝導性を有する基板であってもよく、基板上に設置される熱伝導性材料層であってもよい。熱伝導層10が基板上に設置される熱伝導性材料層である場合、当該基板の熱伝導性を限定しない。つまり、当該基板は、良好な熱伝導性を有する場合と有さない場合とがある。
【0033】
本出願の実施例では、熱伝導性を有する基板を例として、熱伝導層10について説明する。
【0034】
一例として、熱伝導層10を形成するための材料は、金属、ダイヤモンド、高濃度にドープされた半導体から、1つ又は複数を選択することができる。
【0035】
動作時に本出願の実施例によるオンチップミニチュア電子源への電気信号の提供を容易にするために、一例として、熱伝導層10を形成するための材料は、良好な導電性を有する材料であり得る。一例として、当該良好な導電性を有する材料は、例えば、金属又は高濃度にドープされた半導体であり得る。
【0036】
本出願の実施例では、絶縁層11は抵抗スイッチング材料で作られる。抵抗スイッチング材料とは、最初に、電気絶縁材料であり、電圧を印加してソフトブレイクダウンすると、抵抗スイッチング状態を示し、電子放射能力を持つものになり、抵抗スイッチング材料が活性化されると、電気絶縁材料から導電性材料に遷移するものを指す。
【0037】
一例として、絶縁層11は、酸化ケイ素、酸化タンタル、酸化ハフニウム、酸化タングステン、酸化亜鉛、酸化マグネシウム、酸化ジルコニウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、酸化ニッケル、酸化ゲルマニウム、ダイヤモンド、及びアモルファスカーボンから1つ又は複数を選択することができる。上記の材料は、ソフトブレイクダウンされた後、いずれも低抵抗状態から高抵抗状態への遷移を実現し、電子放出能力を持つことができる。
【0038】
本出願の一例として、絶縁層11に設けられた貫通孔111は、プロセス条件や実際の要件に応じて、長方形や円形などの異なる形状に設定できる。
図1に示す貫通孔111の形状は、長方形である。
【0039】
なお、第2の電極122は、貫通孔111の周りの絶縁層を覆ってもよい。
【0040】
また、第1の電極121又は第2の電極122は、電極を構成するための任意の材料であり得る。一例として、第1の電極121又は第2の電極122は、金属、グラフェン、及びカーボンナノチューブから1つ又は複数を選択することができる。
【0041】
オンチップミニチュア電子源の動作を実現するために、第1の電極121と第2の電極122との間に電圧を印加する。
【0042】
また、一例として、第1の電極121と第2の電極122との間にあるギャップ13の幅は、10μm以下であり得る。ギャップ13の小さな幅は、トンネル接合14における小さな幅の絶縁領域の形成を制御するのに有益であることで、導電領域の表面バリアよりも高い電圧が印加された後、顕著な電子トンネル及び電子放出が発生でき、絶縁領域が電圧によって破壊されないことを保証している。
【0043】
上記は、本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の具体的な実現方法である。当該具体的な実現方法では、熱伝導層10を設置するとともに、第2の電極122は絶縁層11の貫通孔111を介して熱伝導層10に接続する。このようにして、当該オンチップミニチュア電子源によって生成された熱は、第2の電極122及び熱伝導層10によって放熱することができ、それにより、オンチップ電子源の放熱能力を大幅に向上させる。従って、当該オンチップミニチュア電子源は、複数の単一電子源を同じ基板上に集積して、高度に集積された電子源集積アレイを形成することができる。当該オンチップ電子源は、より大きな全体的な放出電流を有し、より多くの適用要件を満たすことができる。例えば、本出願によるオンチップミニチュア電子源は、例えば、X線管、マイクロ波管、フラットパネルディスプレイなどの、電子源を含む様々な電子デバイスに広く適用できる。
【0044】
また、上記の実施例1では、各電極対の第2の電極122が、貫通孔111を介して熱伝導層10に接続されることで、オンチップミニチュア電子源の放熱の加速を実現するが、実際には、熱伝導層10が絶縁材料で作られる場合、第1の電極121及び第2の電極122は、それぞれ異なる貫通孔111を介して熱伝導層10と接触して接続し、オンチップミニチュア電子源の放熱能力をさらに向上させる効果を達成することができる。
【0045】
上記の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の実現方法に基づいて、対応して、本出願は、当該オンチップミニチュア電子源の製造方法の具体的な実現方法も提供する。
【0046】
図5から
図6(4)を参照して、
図5は本出願の実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の概略フローチャートであり、
図6(1)から
図6(4)は本出願実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスに対応する断面構造の概略図である。
【0047】
実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法は、次のステップを含む。
【0048】
S501:熱伝導層10を提供する。
【0049】
熱伝導層10は、上記の
図1によるオンチップミニチュア電子源と同じ熱伝導層10の材料を選択することができる。簡潔にするために、ここで説明を繰り返さない。
【0050】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、
図6(1)に示す。
【0051】
S502:熱伝導層10の上に、抵抗スイッチング材料で作られる絶縁層11を形成する。
【0052】
当該ステップは、具体的に、本分野で一般的に使用される薄膜堆積プロセス又は熱酸化プロセスを使用して、熱伝導層10の上に絶縁層を形成することである。
【0053】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、
図6(2)に示す。
【0054】
S503:絶縁層11に貫通孔111を形成する。
【0055】
貫通孔111は、ドライエッチング又はウェットエッチングプロセスによって形成することができる。一例として、ドライエッチングは、反応性ガスエッチング又はプラズマエッチングなどであり得る。
【0056】
ウェットエッチングを使用して絶縁層11に貫通孔111を形成する場合、当該ステップは具体的に、絶縁層11に電子ビームフォトレジストをスピンコーティングし、電子ビームの露光、現像と定着、ウェットエッチング、脱接着などのプロセスステップを通じて、絶縁層11に1つの長方形の貫通孔111を形成することであり得る。
【0057】
当該ステップを実行した後の断面構造の概略図を、
図6(3)に示す。
【0058】
S504:絶縁層11の表面の一部を覆う電極対を形成し、当該電極対は第1の電極121及び第2の電極122を含み、第2の電極122は貫通孔111を介して熱伝導層10と接触して接続し、第1の電極121と第2の電極122との間にギャップ13がある。
【0059】
一例として、当該ステップは具体的に、本分野で一般的に使用される電極堆積プロセスを使用して、絶縁層11と貫通孔111の内壁に電極材料層を堆積し、電子ビームフォトレジストのスピンコーティング、電子ビームの露光、現像と定着、金属膜堆積、ストリッピング及びその他のプロセスステップで、絶縁層11の表面の一部を覆う第1の電極121と、貫通孔111の内壁を覆う第2の電極122と、第1の電極121と第2の電極122との間にあるギャップ13とを形成することであり得る。
【0060】
さらに,第2の電極122が貫通孔111の内壁を覆った後、当該第2の電極122は貫通孔111を介して熱伝導層10と接触して接続することで、オンチップミニチュア電子源の放熱能力を大幅に向上させることができる。
【0061】
なお、本出願の実施例では、第2の電極122は、貫通孔111の内壁の全体を覆う必要はなく、その内壁の一部のみを覆うものであればよい。
【0062】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、
図6(4)に示す。
【0063】
S505:ギャップ13の下の絶縁層11がソフトブレイクダウンされ抵抗スイッチング特性を示すように制御して、ギャップ13の下の絶縁層にトンネル接合14を形成する。
【0064】
当該ステップは具体的に、第1の電極121及び第2の電極122に電圧を印加し、電圧値を徐々に増加しながら電流の大きさを監視し、限界電流を100μAなどの特定の電流値に設定し、電流が急激に増加したときに電圧の増加を停止し、このとき、ギャップ13の下の絶縁層11がソフトブレイクダウンされ抵抗スイッチング特性を示すことであり得る。このようにして、当該絶縁層領域に、ギャップ13の下の絶縁層11の全体を横切る導電フィラメントが形成され、それにより、当該絶縁層領域は絶縁状態から導電状態に遷移し、その後、低抵抗状態から高抵抗状態に遷移した後に、導電フィラメントが切断され、ギャップ13の下の絶縁層領域に
図3に示すトンネル接合14を形成し、当該トンネル接合14は第1の電極121から第2の電極122まで、接続された第1の導電領域141、絶縁領域142及び第2の導電領域143を順番に含む。
【0065】
なお、熱伝導層10が導電性を有する場合、第2の電極122は熱伝導層10と接触して接続するので、第2の電極122は熱伝導層10に電気的に接続されている。この場合、このステップは、第1の電極121と熱伝導層10とに電圧を印加して、ギャップ13の下の絶縁層11がソフトブレイクダウンされ、抵抗スイッチング特性を示し、ギャップ13の下の絶縁層内にトンネル接合14を形成することであり得る。
【0066】
当該ステップを実行した後の構成概略図を、
図1と
図2に示す。
【0067】
上記は、実施例1によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の具体的な実現方法である。
【0068】
上記の実施例は、1つのトンネル接合14のみを含むオンチップミニチュア電子源及びその製造方法を示している。オンチップミニチュア電子源の全体的な放出電流を向上させるために、オンチップミニチュア電子源に複数のトンネル接合対のアレイを設置してもよい。これに基づいて、本出願は、オンチップミニチュア電子源の全体的な放出電流の実施例も提供する。実施例2を参照してください。
(実施例2)
【0069】
図7と
図8を参照して、
図7は、本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の三次元構成の概略図であり、
図8は当該オンチップミニチュア電子源の
図7のB-B’に沿った断面構造の概略図である。
【0070】
オンチップミニチュア電子源であって、
熱伝導層70と、
熱伝導層70の上面に位置する絶縁層71であって、抵抗スイッチング材料で作られ、複数の貫通孔711が設置されている、前記絶縁層71と、
絶縁層71の上面に位置する複数の電極対と、を含み、
各電極対は第1の電極721及び第2の電極722を含み、各第2の電極722は1つの貫通孔711に対応し、各第2の電極722は貫通孔を介して熱伝導層70と接触して接続し、複数の第2の電極722は互いに離隔され、
各対の第1の電極721と第2の電極722との間にいずれもギャップ73があり、
各ギャップ73の下の絶縁層にいずれもトンネル接合74が形成される。
【0071】
なお、本出願の実施例では、各ギャップ73の下の絶縁層に形成されるトンネル接合74は、上記の実施例1におけるトンネル接合14の構成と同じであるため、簡潔にするために、ここで説明を繰り返さない。
【0072】
なお、熱伝導層70と絶縁層71の材料は、実施例1による熱伝導層10と絶縁層11の材料と同じであるため、簡潔にするために、ここで説明を繰り返さない。
【0073】
本出願の実施例によるオンチップミニチュア電子源では、絶縁層71上の貫通孔711は、プロセス条件や実際の要件に応じて、長方形や円形などの異なる形状に設定できる。当該実施例では、絶縁層71に円形の貫通孔711が設置されたオンチップミニチュア電子源を例として説明する。
【0074】
一例として、絶縁層71に複数の互いに離隔された円形の貫通孔711が設置されている。
【0075】
なお、第1の電極721は絶縁層71を覆う連続電極層であり、各第2の電極722は円形貫通孔711の内壁を覆う電極アイランドであり、当該電極アイランドと第1の電極721との間に電気的遮蔽が存在する。
【0076】
一例として、第2の電極722は、貫通孔711の周りの絶縁層を覆う。
【0077】
貫通孔711の形状は円形であるため、対応して、第1の電極721と各第2の電極722との間のギャップは、円形ギャップであってもよい。第2の電極722は複数があるため、第1の電極721と第2の電極722との間に複数の電極対を含む電極対アレイを形成し、対応して、複数のギャップ73はギャップアレイを形成する。
【0078】
なお、本出願の実施例では、各ギャップ73の幅は、10μm以下であってもよい。
【0079】
また、当該複数の第2の電極722のぞれぞれは、絶縁層71における円形貫通孔711を介して熱伝導層70に接続される。このようにして、オンチップミニチュア電子源が動作中に生成した熱は、第2の電極722及び熱伝導層70によって放熱することができ、それにより、オンチップミニチュア電子源の放熱能力を大幅に向上させ、同じ熱伝導層70に複数のオンチップミニチュア電子源を集積するのに有利である。
【0080】
なお、本出願の実施例によるオンチップミニチュア電子源が動作する場合、第1の電極721と各第2の電極722に電圧を印加することができ、電子が各トンネル接合から放出され、大きな放出電流を形成することができる。
【0081】
また、熱伝導層70が導電性を有する材料層である場合、各第2の電極722がいずれも熱伝導層70と接触して接続するので、本出願の他の例として、電圧を印加するプロセスを簡略化するために、第1の電極721と熱伝導層70とに電圧を印加することができる。各第2の電極722はいずれも熱伝導層70と接触して接続するので、熱伝導層70に印加された電気信号は、各第2の電極722に伝送され、これにより、各第2の電極722に電圧をそれぞれに印加するプロセスが不要になる。
【0082】
なお、上記の実施例では、全ての電極対の第1の電極721を共通電極とし、言い換えれば、当該第1の電極721は全ての電極対の第1の電極として使用することができる。実際には、本出願の他の実施例として、各電極対の第1の電極は、互いに独立してもよい。
【0083】
上記は、本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の実現方法である。当該実現方法では、当該オンチップミニチュア電子源の内部に複数のトンネル接合が形成される。このようにして、電子は、当該複数のトンネル接合から放出され、大きな全体的な放出電流を形成する。
【0084】
また、各第2の電極722はいずれも熱伝導層70と接触して接続するので、当該オンチップミニチュア電子源が動作中に生成した熱は、第2の電極722及び熱伝導層70によって直ちに放熱することができ、オンチップミニチュア電子源の放熱能力を大幅に向上させる。
【0085】
上記は、本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の実現方法である。実施例2によるオンチップミニチュア電子源の実現方法に基づいて、対応して、本出願は、当該オンチップミニチュア電子源の製造方法の具体的な実現方法も提供する。
【0086】
図9から
図10(4)を参照して、
図9は本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の概略フローチャートであり、
図10(1)から
図10(4)は本出願の実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の一連の製造プロセスに対応する断面構造の概略図である。
【0087】
実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法は、次のステップを含む。
S901:熱伝導層70を提供する。
【0088】
当該ステップを実行した後の断面構造の概略図を、
図10(1)に示す。
【0089】
S902:熱伝導層70に抵抗スイッチング材料で作られる絶縁層71を形成する。
【0090】
熱伝導層70をシリコン基板としてS902の具体的な実現方法を説明する。
【0091】
熱伝導層70がシリコン基板である場合、当該ステップは具体的に、シリコン基板を反応管に入れ、反応管を800~1000℃に加熱して、シリコン基板の表面に酸化ケイ素層を生成させ、酸化ケイ素層を絶縁層71とする。
【0092】
当該ステップを実行した後の断面構造の概略図を、
図10(2)に示す。
【0093】
S903:絶縁層71に複数の貫通孔711を形成する。
【0094】
当該ステップでは貫通孔711を形成する具体的な実現方法は、上記の実施例1における貫通孔111を形成する具体的な実現方法と同じであるので、簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。
【0095】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、
図10(3)に示す。
【0096】
S904:絶縁層71の上に第1の電極721及び複数の第2の電極722を形成し、第1の電極721と各第2の電極722との間にいずれもギャップ73があり、各第2の電極722は貫通孔711を介して熱伝導層70に接続される。
【0097】
当該ステップは具体的に、一般的に使用される電極堆積プロセスを使用して、絶縁層71と貫通孔711の内壁に電極材料層を堆積し、電子ビームフォトレジストのスピンコーティング、電子ビームの露光、現像と定着、金属膜堆積、ストリッピング及びその他のプロセスステップで、第1の電極721及び第2の電極722を形成することであり得る。第1の電極721は絶縁層71の上を覆う電極層であり、各第2の電極722は1つの貫通孔711及びその周りの絶縁層71を覆う電極層であってもよい。
【0098】
また、絶縁層71に形成された複数の第2の電極722のそれぞれは、絶縁層71の円形貫通孔711を介して熱伝導層70に接続されることで、オンチップミニチュア電子源の放熱能力を大幅に向上させ、同じ熱伝導層70に複数のオンチップミニチュア電子源を集積するのに有利である。
【0099】
当該ステップを実行した後の断面構造の概略図を、
図10(4)に示す。
【0100】
S905:前記ギャップ73アレイの下の絶縁層がソフトブレイクダウンされ抵抗スイッチング特性を示すように制御して、前記ギャップ73の下の絶縁層にトンネル接合74を形成する。
【0101】
当該ステップの具体的な実現方法は、上記の実施例1におけるS505の具体的な実現方法と同じであるため、簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。
【0102】
当該ステップを実行した後の断面構造の概略図を、
図8に示す。
【0103】
上記は、実施例2によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の具体的な実現方法である。
本出願の他の実施例として、オンチップミニチュア電子源における電子を迅速に放出することができるために、オンチップミニチュア電子源にリード電極を設置してもよい。これに基づいて、本出願は、オンチップミニチュア電子源の他の実現方法も提供して、実施例3を参照してください。
(実施例3)
【0104】
なお、本出願の実施例によるオンチップミニチュア電子源は、上記の実施例1又は実施例2に基づいて改善することができる。一例として、本出願の実施例は、実施例2に基づいて改善されている。
【0105】
図11と
図12を参照して、
図11は本出願の実施例3による他のオンチップミニチュア電子源の三次元構成の概略図であり、
図12は当該オンチップミニチュア電子源の
図11のC-C’に沿った断面構造の概略図である。
【0106】
当該実施例によるオンチップミニチュア電子源は、実施例2における全ての構成要素に加えて、リード電極110を含み、
リード電極110はリード電極層1101と、リード電極層1101の片側に位置する絶縁支持構造1102とを含み、リード電極層1101の上に複数の穴1103が設置されている。
【0107】
絶縁支持構造1102は、リード電極110が電極対の上に懸架されるように、電極対とリード電極層1101との間に位置する。
【0108】
上記は、本出願の実施例によるオンチップミニチュア電子源の具体的な構成である。具体的な構成では、ミニチュア電子源が動作する場合、リード電極110に正の電圧を印加し、トンネル接合74から放出された電子がリード電極110によって加速され、穴1103を通ってオンチップミニチュア電子源の外部空間に引き出される。
【0109】
なお、リード電極層1101に設置される穴1103は電子の放出チャネルに相当するので、リード電極層1101に設置される複数の穴は、オンチップミニチュア電子源から外部空間への電子の引き出しをより助長する。実際に、リード電極層1101に1つの穴1103が設置される解決策も、本出願の保護範囲に含まれる。
【0110】
実施例3によるオンチップミニチュア電子源の他の実現方法に基づいて、対応して、本出願は、当該オンチップミニチュア電子源の製造方法の具体的な実現方法も提供する。
【0111】
図13から
図14を参照して、
図13は本出願の実施例3による他のオンチップミニチュア電子源の製造方法の概略フローチャートであり、
図14は本出願の実施例3によるリード電極に対応する断面構造の概略図である。
【0112】
図13に示すように、当該オンチップミニチュア電子源の製造方法は、次のステップを含む。
【0113】
S1301~S1305は、S501~S505と同じであるため、簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。S1305を実行した後の断面構造の概略図を、
図8に示す。
【0114】
S1306:リード電極110を製造する。
【0115】
リード電極110は、リード電極層1101と、リード電極層1101の片側に位置する絶縁支持構造1102を含み、リード電極層1101に少なくとも1つの穴1103が設置されている。一例として、リード電極層1101上に複数の穴1103を設置してもよい。
【0116】
なお、リード電極層1101上の穴1103は、プロセス条件及び要件に応じて、異なる形状に設置することができる。一例として、穴1103を円形に設置する。
【0117】
一例として、電子をより迅速に外部空間に引き出すために、各穴1103の中心は1つの円形の第2の電極722の中心と位置合わせされ、円形の穴1103の半径は、第2の電極722の半径よりも大きい。
【0118】
当該ステップを実行した後の断面構造の概略図を、
図14に示す。
【0119】
S1307:絶縁支持構造1102と第1の電極721とを接続する。
【0120】
当該ステップは具体的に、絶縁支持構造1102と第1の電極721とを結合によって互いに接続し、当該絶縁支持構造1102は、リード電極層1101が第1の電極721及び第2の電極722の上に懸架されるように、第1の電極721とリード電極層1101との間に位置することであり得る。
【0121】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、
図12に示す。
【0122】
なお、絶縁支持構造1102と上記のS1305以降に形成された構成とを接続して一体構造を形成するために、上記の例のような絶縁支持構造1102と第1の電極721との接続に限定されず、絶縁支持構造1102と第2の電極722とを接続してもよく、又は、絶縁支持構造1102と絶縁層71とを接続してもよい。
【0123】
なお、本出願は、S1301からS1305及びS1306の順序を限定しない。また、本出願では、S1305は、S1307の前又は後に実行してもよい。
【0124】
上記は、実施例3によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の具体的な実現方法である。
【0125】
本出願の他の実現方法として、オンチップミニチュア電子源の放熱能力を大幅に向上させるために、熱伝導層70の下にヒートシンクを形成してもよい。これに基づいて、本出願は、オンチップミニチュア電子源の他の実現方法も提供し、実施例4を参照してください。
(実施例4)
【0126】
なお、実施例4によるオンチップミニチュア電子源は、実施例1から実施例3のいずれかによるオンチップミニチュア電子源に基づいて改善することができる。一例として、実施例4によるオンチップミニチュア電子源は、実施例3によるオンチップミニチュア電子源に基づいて改善されている。
【0127】
図15と
図16を参照して、
図15は本出願の実施例4による他のオンチップミニチュア電子源の三次元構成の概略図であり、
図16は当該オンチップミニチュア電子源の
図15の破線D-D’に沿った断面構造の概略図である。
【0128】
当該実施例によるオンチップミニチュア電子源は、実施例3における全ての構成要素に加えて、
熱伝導層70の下に位置するヒートシンク150をさらに含んでもよい。
【0129】
ヒートシンク150と熱伝導層70は、密接に貼り合わせて良好な熱接触を形成することによって、オンチップミニチュア電子源が動作中に生成した熱は、第2の電極722、熱伝導層70、及びヒートシンク150を順番に通して効率的に放熱することができる。
【0130】
上記は、本出願の実施例4によるオンチップミニチュア電子源の実現方法であり、当該方法では、オンチップミニチュア電子源は、実施例3によるオンチップミニチュア電子源を基礎とし、ヒートシンク150をさらに設置し、当該オンチップミニチュア電子源は、実施例3によるオンチップミニチュア電子源と同じ有益な効果を有し、オンチップミニチュア電子源の放熱能力を大幅に向上させることができる。
【0131】
実施例4によるオンチップミニチュア電子源の他の実現方法に基づいて、対応して、本出願は、当該オンチップミニチュア電子源の製造方法の具体的な実現方法も提供する。
【0132】
図17を参照して、
図17は、本出願の実施例4による他のオンチップミニチュア電子源の製造方法の概略フローチャートである。
【0133】
実施例4によるオンチップミニチュア電子源の製造方法は、次のステップを含む。
S1701~S1707はS1301~S1307と同じであるため、簡潔にするために、ここで詳細に説明しない。S1707を実行した後の断面構造の概略図を、
図12に示す。
【0134】
S1708:熱伝導層70の下にヒートシンク150を形成する。
【0135】
当該ステップは具体的に、熱伝導性接着剤層によって熱伝導層70とヒートシンク150とを接続して、熱伝導層70とヒートシンク150とを密接に貼り合わせて、良好な熱接触を形成することであり得る。それにより、オンチップミニチュア電子源が動作中に生成した熱は、第2の電極722、熱伝導層70、及びヒートシンク150を順番に通して効率的に放熱することができる。
【0136】
当該ステップを実行した後の対応する断面構造の概略図を、
図16に示す。
【0137】
上記は、実施例4によるオンチップミニチュア電子源の製造方法の具体的な実現方法であり、当該実現方法によって製造されたオンチップミニチュア電子源は、実施例3によるオンチップミニチュア電子源と同じ利点があるため、簡潔にするために、ここで説明を繰り返さない。
【0138】
上記は、本出願の好ましい実施形態にすぎない。本出願は、好ましい実施例で上記のように開示されているが、本出願を限定することを意図するものではない。当業者は、本出願の技術案の範囲から逸脱することなく、上記に開示された方法及び技術的内容を使用して、本出願の技術案に多くの可能な変更及び修正を加えるか、又は同等の変更を加えた等価実施例に変更することができる。従って、本出願の技術案の内容から逸脱することなく、本出願の技術的本質に基づいて上記の実施例に加えた任意の簡単な補正、同等の変更及修正は全て、本出願の技術案の保護範囲に含まれる。
【国際調査報告】